JP2002194529A - 光学薄膜の作製方法 - Google Patents

光学薄膜の作製方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】不純物の混入が少なく、緻密性が高い光学層を
多層数有する光学薄膜を作製する方法を提供する。 【解決手段】マグネトロンスパッタ法により基板8面上
に多層の光学層を有する光学薄膜を形成する際、スパッ
タ槽1内に不活性ガスおよび反応性ガスを導入し、1.
3×10-1Pa以下の放電圧力の条件下において反応性
マグネトロンスパッタ法により基板8面上に順次光学層
を形成させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、多層の光学層を有
する光学薄膜、特に誘電体材料からなる多層の光学層を
有する光学薄膜の作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、多層膜系の誘電体光学薄膜を作製
するに当たっては、例えば電子ビーム蒸着等の蒸着法や
イオンビームスパッタ法等のスパッタ法といった製膜法
が用いられてきた。特に、光通信の分野では、WDM
(波長分割多重化)やDWDM(稠密波長分割多重)と
いった高密度伝送に用いられる光学多層膜の干渉効果を
利用する狭帯域フィルタとして100層以上にも及ぶ多
層にコーティングされた誘電体光学薄膜が利用されるた
め、多層膜の形成工程が継続する長時間にわたって安定
に動作し、しかも極めて精密に膜厚や光学特性を制御し
た薄膜形成プロセスが求められている。
【0003】このような誘電体光学多層薄膜を製造する
ために、特開平5−196810、特開平11−342
354などにより真空蒸着法を用いた製法が提案されて
いる。しかし、真空蒸着法においては、蒸発源が点源で
あるため基板の広い領域に対して均一な膜厚分布を得る
ことが困難である。また蒸着物質の温度分布、溶解状態
を常に均一で一定な状態に保つことが困難であり、長時
間にわたって安定した蒸着プロセスを維持することが難
しく、これらWDMやDWDM用フィルタ作製に要求さ
れる高精度の誘電体光学多層薄膜を安定に得ることは難
しい。
【0004】また、通常の真空蒸着プロセスにより作製
された光学薄膜は、原子の充填密度が低くポーラスなた
め、耐久性に問題があり、フィルタとしての信頼性に問
題があった。これらのうちで、イオン照射やプラズマ照
射を併用して、光学膜性能の信頼性改善を図れるが、真
空蒸着の制御性や安定性の問題は蒸発源自体に起因して
おり、これらの問題はイオンやプラズマ照射によっても
解決は困難である。
【0005】一方、真空蒸着プロセスの低い安定性、制
御性を改善する多層系光学薄膜の形成方法として、特開
平12−178731などではイオンビームスパッタ法
を用いた製法が提案されている。しかし、一般的にイオ
ンビームスパッタは膜の形成速度が遅いために、一つの
多層系光学薄膜を作製するのに、長時間を要し、生産性
が低い欠点がある。また、長時間運転に起因する装置上
のトラブルも製品歩留まりを下げる要因となり、これに
よっても、生産性がさらに低下する問題がある。さら
に、イオンソース本体およびその消耗部品が高価である
ため、運転コストが非常に高くなる欠点も生産上は大き
な問題である。
【0006】マグネトロンスパッタ法については、真空
蒸着法やイオンスパッタ法などに比べて通常は比較的高
い放電圧力(約1Pa程度)で形成されるために、形成
される薄膜はポーラスでその緻密性は低く、この低緻密
性に起因する光学特性の劣化、例えば屈折率などの経時
変化による光学特性変化が起り、信頼性の問題があっ
た。また、誘電体膜でも特に酸化物薄膜のマグネトロン
スパッタ法は、膜の形成速度が遅く、これを改善するた
めに放電パワーの供給を増加すると、ターゲット表面や
スパッタ槽内壁に付着した誘電体の絶縁膜に荷電が蓄積
して、放電が不安定になりアーキングなど異常放電が発
生し、膜の不良が発生する。
【0007】さらに、典型的なマグネトロンスパッタ法
は、基板とターゲットの距離が短いために、光学モニタ
を取付けて、精度よく制御するのが難しかった。これら
のために層数が非常に多く、しかも高精度の膜厚制御を
要求される誘電体光学薄膜多層膜を作製するプロセスに
は、一般的なマグネトロンスパッタ法はほとんど適用さ
れなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、従来技術が
有する前述の欠点を解消し、不純物の混入が少なく、緻
密性が高い光学層を多層数有する光学薄膜を作製する方
法を提供することを目的とする。また、量産性に優れ安
定したプロセスで精度よく多層膜を有する光学薄膜を作
製する方法を提供することを目的とする。また、本発明
は、さらに一層、緻密性に優れ、屈折率などの光学特性
の経時変化が少なく、耐久性の改善された多層の光学層
を有する光学薄膜を作製する方法を提供することを目的
とする。
【0009】また、本発明は、多層系光学フィルタ等の
製造に適し、充分高い光学層の膜形成速度が得られ、ま
た多層の光学層の形成の際に長時間にわたって放電の安
定性が得られ、高い生産安定性および精度の良い制御性
が得られる多層の光学層を有する光学薄膜を作製する方
法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明は、(1)スパッ
タ槽内にカソードと基板とターゲットとが配置されたマ
グネトロンスパッタ装置により前記基板面上に多層の光
学層を有する光学薄膜を形成する光学薄膜の作製方法で
あって、前記スパッタ槽内に不活性ガスおよび反応性ガ
スを導入し、1.3×10-1Pa以下の放電圧力の条件
下において反応性マグネトロンスパッタ法により前記基
板面上に順次光学層を形成させることを特徴とする光学
薄膜の作製方法、を提供する。
【0011】なお、本発明において不活性ガスとしては
Arガスが一般的に用いられ、反応性ガスとしては、酸
化物系の光学層を形成する場合にはO2ガスまたは不活
性ガスを同伴したO2ガスが用いられ、また窒化物系の
光学層を形成する場合にはN2ガスまたは不活性ガスを
同伴したN2ガスが用いられる。その他反応性ガスとし
ては所望の光学層の種類に応じて適宜のガスが用いられ
る。また、用いられるターゲットとしてはプレーナー型
ターゲットが挙げられる。
【0012】また、本発明は、(2)スパッタ槽内にカ
ソードと基板とターゲットとが配置されたマグネトロン
スパッタ装置により前記基板面上に多層の光学層を有す
る光学薄膜を形成する光学薄膜の作製方法であって、光
学薄膜を形成するに先立ってスパッタ槽内を1.0×1
-4Pa以下に真空排気し、次いで同スパッタ槽内に不
活性ガスおよび反応性ガスを導入し、1.3×10-1
a以下の放電圧力の条件下においてマグネトロンスパッ
タ法により前記基板面上に順次光学層を形成させること
を特徴とする光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0013】また、本発明は、(3)光学薄膜は、光学
定数の異なる2種以上の光学層を順次交互に繰返し形成
してなる多層を有し、光学定数の異なる2種以上の光学
層は夫々当該光学層形成のための2種以上のターゲット
を用いて基板面上に順次多層に形成する上記(1)また
は(2)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0014】本発明において、光学薄膜を形成するに先
立ってスパッタ槽内の圧力を1.0×10-4Pa以下に
真空排気し、次いで同スパッタ槽内にArガスなどの不
活性ガスおよび反応性ガスを導入し、1.3×10-1
a以下の放電圧力の条件下において反応性マグネトロン
スパッタすることにより、スパッタ槽内に残存する水分
に起因する不純物の混入が少なく、したがって屈折率な
どの光学特性の経時変化が少なく、かつ充填密度が高く
緻密な光学層が得られる。
【0015】一方、光学薄膜を作製するに先立ってスパ
ッタ槽内の圧力が1.0×10-4Paより大の場合に
は、スパッタ中にスパッタ槽内に残存する水分のため
に、充分緻密性の高い光学層を得られず、したがって温
度や湿度の変化に対して光学特性が変化し、好ましくな
い。
【0016】また、スパッタ槽内の圧力を1.0×10
-4Pa以下に排気した後、スパッタ槽内にArガスおよ
び反応性ガスを導入し、マグネトロンスパッタ法により
前記基板面上に順に光学層を形成する際のスパッタ槽内
の放電圧力、すなわち動作圧力を1.3×10-1Paよ
り大で行うと、スパッタされた粒子がターゲットから基
板に到る途中でスパッタ槽内のArガスなどの不活性ガ
スとの衝突により運動エネルギーを失って基板に到達す
るので、緻密な光学層形成を行うのに必要なエネルギー
が得られず、充填密度の高い緻密な光学層の形成が阻害
される。
【0017】特に、光学層の形成では、層の残留応力を
小さくするために、スパッタ中には積極的な加熱は行わ
ないので、スパッタ槽内に残存するArガスやArイオ
ンが光学層内に取り込まれやすくなり、このために光学
層の充填率が低くなりやすい。これらのために、温度や
湿度の変化に対して光学特性が変化し、好ましくない。
【0018】また、本発明は、(4)光学定数の異なる
2種以上の光学層が夫々誘電体材料からなる上記(3)
に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0019】また、本発明は、(5)光学薄膜が透過波
長または反射波長の選択性を有する光学多層薄膜干渉フ
ィルタである上記(4)に記載の光学薄膜の作製方法、
を提供する。本発明は、前記光学多層薄膜干渉フィルタ
を製造するのに適している。
【0020】また、本発明は、(6)光学定数の異なる
2種以上の光学層を形成するための2種以上のターゲッ
トが基板の位置から略等距離に設置された夫々のカソー
ド上に装着されたマグネトロンスパッタ装置により前記
基板面上に多層の光学層を有する光学薄膜を形成する
際、各光学層ごとにスパッタさせるターゲットを切り替
えて所望の光学定数を有する光学層を順次、多層に形成
する上記(3)に記載の光学薄膜の作製方法、を提供す
る。
【0021】また、本発明は、(7)光学定数の異なる
2種以上の光学層を形成するための2種以上のターゲッ
トが基板の位置から略等距離に設置された夫々のカソー
ド上に装着されたマグネトロンスパッタ装置を用い、ス
パッタ槽内にArガスなどのスパッタ用の不活性ガスお
よび反応性ガスを導入し、1.3×10-1Pa以下の放
電圧力の条件下において反応性マグネトロンスパッタ法
により前記基板面上に順次光学層を形成させる際、不活
性ガスとは別に、基板直近から反応性ガスを、流量を調
整しながら導入することを特徴とする上記(6)に記載
の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0022】また、本発明は、(8)基板に近接しかつ
ターゲット位置とは基板に対して反対側の位置に設置さ
れた排気口からスパッタ槽内のガスを排気することによ
り基板直近で導入された反応性ガスのターゲット近傍で
の分圧を最小に抑えて、光学層の成膜速度の低下を最小
限に抑える上記(1)または(2)に記載の光学薄膜の
作製方法、を提供する。
【0023】また、本発明は、(9)光学薄膜の少なく
とも1層の光学層を形成する際、当該光学層を形成する
ためのターゲットが複数個設置されたマグネトロンスパ
ッタ装置を用い、これら複数個のターゲットを同時にス
パッタして前記光学層を得る上記(1)〜(8)のいず
れかに記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0024】また、本発明は、(10)同時スパッタす
る複数個のターゲットが同一の材料からなり、かつ、導
入する反応ガスが同一種類からなる上記(9)に記載の
光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0025】また、本発明は、(11)同時スパッタす
る複数個のターゲットが異なる材料からなる上記(9)
に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0026】また、本発明は、同時スパッタする夫々の
ターゲットへ供給する放電電力や不活性ガスと反応性ガ
スの流量を制御することにより、所望の光学層の組成お
よび所望の光学定数を有する光学薄膜を形成できる。
【0027】また、本発明は、(12)マグネトロンス
パッタ法により基板面上に順次光学層を形成させる際、
イオンビームを基板の光学層の形成面に照射する上記
(1)〜(11)のいずれかに記載の光学薄膜の作製方
法、を提供する。
【0028】また、本発明は、(13)マグネトロンス
パッタ法により基板面上に順次光学層を形成させる際、
RF電力を基板に供給する上記(1)〜(11)のいず
れかに記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。本発明
においては、RF電力を基板に供給して基板に負のバイ
アス電圧を生じさせて、Arイオンや反応性ガスのイオ
ンを基板の光学層の形成面に照射させる。
【0029】また、本発明は、(14)光学層を形成す
る際、電気的中和用電子銃によりスパッタ槽内に発生す
る異常放電を抑制する上記(1)〜(13)のいずれか
に記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0030】上記(12)のイオンビームの基板への照
射の場合、または上記(13)のRF電力の基板への供
給によるRFバイアス印加の場合において光学層を形成
する際、電気的中和用電子銃(イオンニュートラライ
ザ)を用い、スパッタ槽内の空間電荷や、スパッタ槽の
壁面の蓄積電荷、カソードおよびターゲットとそれらの
周辺における蓄積電荷を電子銃から供給される電子流に
よって中和することにより異常放電を抑制し、放電が不
安定になることを防止する。
【0031】本発明において、複数個の同一材料のター
ゲットを同時にスパッタすれば、形成速度は、使用する
ターゲットの数に比例して、大幅に層形成速度を向上さ
せることができる。
【0032】また、本発明において、光学層として複合
酸化物層、複合窒化物層、複合ホウ化物層、複合炭化物
層、ケイ窒化物層、ホウ窒化物層等の複合化合物の層を
形成する場合、これら複合化合物層を形成するために、
これら層形成に対応する2種以上の異なる材料のターゲ
ットを用い、同時スパッタすることができる。この場
合、複数のターゲットの間の放電パワーの配分比率を調
整することで、所望の組成、光学定数を持った光学層を
精度よく形成できる。この場合も、光学層の形成の終点
近くでは、ターゲットへの供給パワー比を変えずに、全
体の放電パワーを減少させることで、層の形成速度を遅
くし、層厚の精度良い制御ができる。
【0033】また、本発明において、前記したように同
時スパッタ時に、基板にRF電力を印加して、基板近傍
のプラスイオンを基板の光学層の形成面に向けて照射さ
せたり、基板の光学層の形成面にイオンビームを照射し
たりすることにより、光学層の緻密性や耐環境信頼性を
さらに改善できる。
【0034】この際、イオンビームの照射イオンとし
て、酸素イオンビームを用いたり、または不活性ガスイ
オンを用いる場合には酸素ガスを基板直近に供給するこ
とにより、酸素不足の組成を持つSiO2やTa25
どの酸化物光学層を基板上で充分に酸化反応を進行さ
せ、完全で安定な酸化物組成を持つ酸化物光学層が得ら
れる。同様に、窒化物光学層の場合には照射イオンとし
て窒素イオンを用いたり、または不活性ガスイオンを用
いる場合には窒素ガスを基板直近に供給したりすればよ
い。
【0035】また、本発明は、(15)基板上に形成さ
れる光学層面に、スパッタ槽の外部または内部に配置さ
れた光源からレンズ系を通してモニタ用観測光を照射
し、該観測光の基板の透過光量または光学層の層面から
の反射光量を光検出器により測定して、形成された光学
層の層厚の変化による光量変化から形成層厚を求める光
学モニタにより各光学層の形成のスパッタの終点を検出
して、各光学層の層厚を所望の層厚に制御する上記
(1)〜(14)のいずれかに記載の光学薄膜の作製方
法、を提供する。
【0036】また、本発明は、(16)一つの基板に対
して光学モニタが複数個配置され、各光学モニタには該
光学モニタが測定する所望の領域を覆うシャッタが基板
面の上方に設置されており、一つの光学モニタにより検
出される領域においてシャッタの該当部分を開き、この
領域において形成されている光学層のスパッタの終点を
検出したとき、同領域に対応するシャッタ部分を閉じる
という操作を行い、次いで次の光学モニタにより検出さ
れる次の領域においてシャッタの該当部分を開き、この
領域において形成されている光学層のスパッタの終点を
検出したとき、同領域に対応するシャッタ部分を閉じる
という同様な操作を行い、順次配置された光学モニタの
個数に応じて前記操作を所定回数繰返す上記(15)に
記載の光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0037】また、本発明は、(17)光学モニタが所
望の層厚に対して終点が近いことを検出した時点で、光
学層の形成速度を遅くして、層厚を制御する上記(1
5)または(16)に記載の光学薄膜の作製方法、を提
供する。光学層の形成速度を遅くすれば、より正確に層
厚(膜厚)を制御できる。
【0038】1種の光学層を形成するために、スパッタ
槽に同一材料からなる2個以上のターゲットを配置し、
これらターゲットを同時スパッタして光学層を形成する
際、前記光学モニタによる形成層厚の変化による光量変
化から各層の層厚を求める光学モニタの測定値が、各層
の形成層厚が所望の値に近づいたときに、一つのターゲ
ットのみを放電を継続し他のターゲットの放電を停止す
るようにすれば、全体の層形成速度を減速させて、終点
時間をより正確に測定して制御でき、その結果非常に正
確な所望の膜厚を有する光学薄膜が得られる。
【0039】また、本発明は、(18)カソードとし
て、ターゲットのエロージョン領域がターゲット面全域
になるように磁石が配置されたカソード、または、可動
磁石を有し、ターゲットのエロージョン領域がターゲッ
ト面全域になるように磁石が動く構成とされたカソー
ド、を用いる上記(1)〜(17)のいずれかに記載の
光学薄膜の作製方法、を提供する。
【0040】ターゲットのエロージョン領域がターゲッ
ト面全域になるような磁場配置とするためには、磁石配
置(必要に応じて形状)が工夫されたカソードを用いた
り、また、磁石が偏心回転したり揺動するカソードを用
いる。本発明においては、エロージョン領域がターゲッ
ト面全域になるようにすればよく、電場と磁場の方向が
直交するマグネトロン放電に限定されない。用いる磁石
としては、放電圧力領域をできるだけ低圧力側に広げる
観点とターゲットのエロージョン領域をターゲット面全
域にする観点から、強力な磁石を使用することが好まし
く、例えば希土類磁石(ネオジウム−鉄磁石やサマリウ
ム−コバルト磁石など)が挙げられる。
【0041】スパッタリングにおいては、金属ターゲッ
ト表面へアーキングの原因となる物質(すなわち反応性
スパッタ時に生成する誘電体物質)が堆積する一方で、
主に不活性ガスイオン(以下、代表的なArイオンで説
明)によってターゲット表面の金属原子やその反応性生
物(金属酸化物など)がスパッタエッチングされる現象
が起こる。ターゲットの表面では、常に、前記の堆積と
スパッタエッチングという競合する反応が起こってお
り、放電電力が充分に大きいとき、またはエロージョン
領域ではスパッタエッチングが主となり、安定にスパッ
タリングが継続する。しかし、反応性ガスの供給量が多
い場合には、エロージョン領域においても誘電体物質の
堆積が主となり、ここに電荷が蓄積されると、アーキン
グを生じ、さらには、放電停止に至る。
【0042】通常のマグネトロンスパッタで多く使用さ
れる圧力は、0.4〜5Paという高い圧力であり、不
活性ガスをターゲット付近に、反応性ガスを基板付近に
導入し、かつ、ターゲット付近の圧力を高める一方で基
板付近の圧力を低く抑えることによってガスの流れを生
じさせる。このガスの流れを利用して、ターゲット表面
への反応性ガスの拡散を防止でき、ある程度はターゲッ
ト表面上へのアーキング原因物質の堆積を抑制できる。
【0043】しかし、本発明のような低圧力下でのスパ
ッタリングでは、ガスの流れは分子流となり、気体の平
均自由工程は装置サイズに近くなるので、前述したよう
なガスの流れを利用した反応性ガスの拡散防止は期待で
きない。したがって、本発明のような低圧力下でのスパ
ッタリングでは、上記(18)に記載のカソードを用い
たアーキング抑制方法がきわめて有効である。
【0044】上記(18)に記載のカソードを用いるこ
とで、ターゲットのエロージョン領域がターゲット面全
域になり、アーキングの原因となる誘電体物質がターゲ
ット表面に堆積しにくくなり、アーキングが抑制され、
結果として、大電力の投入が可能となる、また、アーキ
ングに起因する膜質劣化や膜欠点を抑えられる。
【0045】本発明においては多層膜を形成することか
ら各誘電体薄膜の光学的吸収は最小であることが好まし
く、そのために誘電体薄膜を化学量論的な組成とするべ
く、槽内への反応ガス供給量は比較的多い条件で行われ
るが、前記カソードの使用でアーキングが抑制される結
果ターゲットに供給する放電電力を増やすことができ、
容易に、安定して、効率よく成膜できる。
【0046】また、前記の膜質劣化や膜欠点の抑制は、
きわめて多層を積層する上では生産性(歩留まり低下防
止)の観点から重要である。また、ターゲットのエロー
ジョン領域がターゲット面全域になることで、ターゲッ
トの使用効率も向上する。
【0047】
【発明の実施の形態】本発明の光学薄膜を作製するため
に用いるマグネトロンスパッタ装置の一例を図1に示
す。図1において、スパッタ槽1内、すなわち真空チャ
ンバ内に、カソード2とターゲット4と、基板8が装着
される基板ホルダ9とが配置されている。基板ホルダ9
には複数枚の基板8が装着されるように設計されてい
る。なお、図示されていないが、カソードの裏側(ター
ゲットが装着される側と反対側)には磁石が夫々配され
ている。ターゲットの材料としては、形成する光学層に
応じた材料からなるものが選択され、例えば、金属材料
からなるターゲット、誘電体材料からなるターゲットな
どが使用される。
【0048】WDMやDWDMといった高密度伝送に用
いられる光学多層膜の干渉効果を利用する狭帯域フィル
タを製造する場合、例えば1)SiO2層とTa25
とを交互に多数層積層する光学薄膜を製造する場合、ま
たは2)SiO2層とNb2 5層(もしくはTiO2層)
とを交互に多数層積層する光学薄膜を製造する場合に
は、SiまたはSiO2、TaまたはTa25、Tiま
たはTiO2、NbまたはNb25などの材料からなる
ターゲットが使用される。
【0049】本発明において用いられる基板の材料とし
ては、結晶化ガラス(例えばオハラ社製の「WMS1
3」など)や光学ガラス(例えばボロシリケートクラウ
ンガラス、具体的にはショット社製の「BK−7」な
ど)が挙げられる。
【0050】スパッタ槽1には、超高真空排気の可能な
真空ポンプ6が設置され、光学薄膜を作製するに先立っ
てスパッタ槽内の圧力が1.0×10-4Pa以下になる
まで排気される。7はガス導入系であり、Arガスなど
の不活性ガスからなるスパッタガスや酸素、窒素などの
反応性ガスを導入する。例えば、反応性スパッタ法の場
合には、反応性ガスとしてのO2ガス、N2ガス、また
は、O2ガス(またはN2ガス)とArガスとの混合ガ
ス、のガス導入系であり、これらガスがスパッタ槽1に
供給される。
【0051】なお、71は不活性ガスのガス導入口であ
り、72は反応性ガスのガス導入口である。これらのう
ち、例えばO2ガスのようにターゲット表面の結合状態
を変化させてスパッタ速度に影響を与える反応性ガスな
どを導入する場合には、ガス導入口72および真空ポン
プに繋がる排気口61は基板8の近くに配して、ターゲ
ット4の周りにはできるだけ反応性ガスが影響を与えな
いように配置することが好ましい。このために、排気口
61は基板8に近接し、かつターゲット4の位置とは基
板に対して反対側に位置して設置するのが好ましい。
【0052】また、基板ホルダ9には回転機構11が装
着され、基板8を高速回転させうるようにされている。
さらに、基板ホルダ9には基板にRFバイアスを生じさ
せるためのRF電力導入系12が設置されている。この
とき、通常光学薄膜の形成には、基板として光学ガラス
などの絶縁基板が使用されるので、基板全体にわたる均
一なRFバイアス印加ができるように、基板ホルダの基
板保持テーブル部分(基板ホルダにおける基板に接する
部分)には導電性材料からなるものを使用したり、また
は基板保持テーブル部分が絶縁材料からなるものの場合
には基板側の面に導電性膜が施されたものが使用され
る。
【0053】一方、光学モニタとして、基板8の下部に
はモニタ用観測光の受光器10、基板8の上部にはモニ
タ用観測光(例えばレーザ光)の光源3を設置し、これ
ら光源3および受光器10を用いて、観測光の透過特性
を用い光学膜厚を正確にモニタしながら成膜を行える。
光源3および受光器10の設置については、光ファイバ
などを用いてスパッタ槽1の内部に設置することもでき
る。また、光源と受光器を基板8上方に設置し、光の反
射特性を用いて光学膜厚を正確にモニタしながら成膜し
てもよい。透過または反射の単独の測定において、S/
N比が不充分で精度良く膜厚をモニタできない場合に
は、両者を併用して補完的に測定することで膜厚の制御
精度を向上させうる。
【0054】なお、基板全体にわたる均一なRFバイア
ス印加と、基板の透過光量の変化を測定するタイプの光
学モニタを使用する場合のモニタ用観測光の透過とを両
立させるためには、基板ホルダの基板保持テーブル部分
にモニタ用観測光が透過できる光透過孔部分を設け、基
板保持テーブル部分の下部に設けられた光の受光器にモ
ニタ用観測光が入射されるようにする必要がある。光透
過孔部分を設けた結果、光透過孔部分において、RFバ
イアスによって誘起される放電の分布が乱れるような場
合には、導電膜がコーティングされた基板保持テーブル
部分と基板との間に透明導電膜が施された透明基板(孔
があいていない基板)を介在させ、あたかも前記光透過
孔部分が存在しないかのごとくすることが好ましい。
【0055】また、図1では、光学定数の異なる2種以
上の光学層を形成するためのカソードを2個設置した例
について示しているが、上記(9)〜(11)のように
同時スパッタを順次継続するには最低4個のカソードお
よびターゲットが必要となる。これらカソードおよびタ
ーゲットは、スパッタ槽1の上部から見て基板8を中心
に回転軸の周りに対称的に配置されていれば、その上限
個数は特に限定されない。
【0056】前記の基板にRFバイアスを印加して光学
層の緻密性を向上させる代わりに、カソード2のいずれ
かをイオンソースで置き換えて、または別途イオンソー
ス14を装着して、光学層形成のためのスパッタ中に同
時に、例えばArイオンや酸素イオンビームを基板上に
形成中の光学層表面に照射できる。どちらの方法でも光
学層の緻密性、ひいては耐環境信頼性の向上が実現でき
る。イオンソースは、例えばマグネトロン型イオンソー
スやRFイオンソースが使用できる。
【0057】スパッタのためのマグネトロン放電が低圧
で行われるので、前記Arイオンまたは酸素イオンなど
のイオンビームは途中でほとんど散乱されることなく、
効果的に基板上に形成中の光学薄膜を照射しエネルギー
を供給して層表面での反応を促進して緻密化をもたらす
ので、RFバイアス法よりも効果的である。
【0058】また、イオンソースに付属する電気的中和
用電子銃5によってスパッタ槽内壁にスパッタされた誘
電体(絶縁物)膜表面の電荷蓄積に起因して発生する異
常放電を防止できる。電気的中和用電子銃による電荷中
和により、イオンソースを使用しない場合でも、RFバ
イアス法を使用しない場合でも、また、いずれも使用し
ない場合でも、異常放電を効果的に抑制できる。
【0059】上述したような装置を用いて、SiO2
とTa25層とが交互に多数層積層された光学多層膜干
渉フィルタ、またはSiO2層とNb25層(またはT
iO2層)とが交互に多数層積層された光学多層膜干渉
フィルタを、高速にしかも高精度に膜厚を制御して作製
できる。
【0060】スパッタを行うスパッタ槽1を1.0×1
-4Pa以下の残留ガス圧の充分低い値まで排気して、
残留水分が層内に取り込まれることに起因する光学多層
薄膜の信頼性の低下を防止する。特に、低圧下でスパッ
タする本発明の場合では、光学薄膜を形成するに先立っ
て、スパッタ槽内の圧力を1.0×10-4Pa以下の充
分低い圧力まで排気することがより好ましい。ガス導入
系7から所望のガスをスパッタ槽1に導入した後、1.
3×10-1Pa以下の放電圧力でスパッタされたターゲ
ット材粒子は、基板8に飛来し光学層を形成する。この
とき、複数のターゲットを同時に放電させることによ
り、層形成速度を2倍以上に促進できる。また、必要に
応じて前記イオンソース14からのArイオン照射や、
RF電力導入系12から導入された負のバイアス電圧に
より加速されるプラズマ中のイオンのエネルギーを受け
取って、基板8上に光学定数の異なる2種以上の誘電体
材料からなる光学層を交互に多数層形成できる。例え
ば、WDMやDWDMといった高密度伝送に用いられる
光学多層膜の干渉効果を利用する狭帯域フィルタを形成
する場合には、前記方法により基板8上に緻密なSiO
2とTa25の多層薄膜を交互に形成できる。
【0061】正確に所望の光学層厚になるように、前記
モニタ光の受光器10からの信号によって層形成プロセ
スを制御する際に、所望の層厚に達する直前に、例えば
一つのターゲットのみ放電を継続し他は停止することに
より、全体の層形成速度を減速させて、終点時間を正確
に測定しながら制御でき、その結果非常に精度良く所望
の層厚の光学層を有する光学薄膜が得られる。多層の光
学層を得る場合には、その後に再び別の所望のターゲッ
トを放電させ基板8に所望の光学層を形成せしめ前記同
様の操作を繰り返せばよい。
【0062】複数種のターゲットを同時に低圧放電させ
る場合には、これら複数種のターゲットへ供給する放電
電力の配分比を変えることなく終点直前に電力を減少さ
せて、層の形成速度を遅くした後に所望の層厚が得られ
た時点で放電を速やかに停止させるか、または基板8の
直前に置かれたシャッタ13を閉じる。
【0063】正確な層厚の制御とともに、基板の広い領
域にわたって均一な層厚および光学特性分布をもつよう
な多層の光学薄膜を作製することが、生産性の上で非常
に重要である。このために、通常基板ホルダ9上の基板
8は回転機構11によりスパッタ中に100〜1000
rpm程度の回転数で回転させることで、基板8上の層
厚分布の均一化を図れる。
【0064】さらに、狭帯域化が要請される光学多層薄
膜フィルタの作製では、モニタ用観測光により層厚の検
出を実施している近傍の領域しか所望の光学特性を満足
させることが難しいため、1個の基板に複数の光学モニ
タ系を取り付け、各々のモニタが検出している領域のみ
を、分割されたシャッタ13により、独立に開閉して広
い範囲での層厚の均一性を確保できる。
【0065】
【実施例】(例1)図1に示されたマグネトロンスパッ
タ装置の基板ホルダに厚さ7mmの透明ガラス基板(直
径200mmの円形基板)1枚を装着する。第1のカソ
ードにはSiのターゲットを、第2のカソードにはTa
のターゲットを装着する。光学薄膜を作製するに先立っ
てスパッタ槽内を0.8×10-4Paまで真空排気し、
次いで同スパッタ槽内に不活性ガスとしてのArガスお
よび反応性ガスとしてのO2ガスを導入し、1.1×1
-1Paの放電圧力の条件下においてSiのターゲット
とTaのターゲットとを順次切り替えてスパッタさせ、
反応性マグネトロンスパッタ法により前記基板面上に層
厚270nmのSiO2光学層と層厚190nmのTa2
5光学層とを各層順次交互に積層させ、合計積層数が
127層のWDM用狭帯域フィルタを製造する。
【0066】光学層形成の際、Arガスはガス導入口7
1からスパッタ槽へ導入させ、O2ガスとArガスの混
合ガス(Arガスの割合は20体積%)はガス導入口7
2からスパッタ槽内へ基板8の直近に向かうように導入
させる。合計のガス流量は約10sccmである。
【0067】なお、ガス導入口71と72の夫々からス
パッタ槽内に導入されるガスの体積割合は、SiO2
の形成時では約2:1とし、またTa25層の形成時で
は約1:2とする。各光学層の形成時に酸素イオンビー
ムの照射を行う場合は、基板直近に供給する混合ガスを
イオンソースに供給して基板に約200eVの酸素イオ
ンビームを照射させるとともに、電気的中和用電子銃を
作動させ、異常放電を抑制させる。また、光学層の形成
時は、基板ホルダを約500rpmの回転数で回転させ
る。
【0068】また、各光学層については、基板上の光学
層面にスパッタ槽外部におかれた光源からレンズ系を通
してモニタ用観測光としてレーザ光を、高速で回転する
基板表面に照射し、該レーザ光の基板および形成された
光学層への透過光量を受光器により受光して、形成層厚
の変化による光量変化から各層の層厚を求める光学モニ
タによりスパッタの終点を検出して、正確に所望の層厚
に制御して作製される。
【0069】本例で成膜される膜は、消衰係数が小さ
く、屈折率はバルクの値に近い。これら消衰係数や屈折
率の値から不純物成分が少なく、緻密性に優れた膜が成
膜されることが判る。以上のようにして、水分等の不純
物成分が少なく、緻密性に優れ、耐久性の改善されたS
iO2層とTa25層とが交互に積層された合計積層
数、120層のWDM用狭帯域フィルタを生産性よく安
定して得られる。
【0070】(例2)図1に示されたマグネトロンスパ
ッタ装置の基板ホルダに結晶化ガラスからなる基板(オ
ハラ社製「WMS13」、直径265mm、厚さ10m
m)をセットし、第1のカソードにはSiターゲット
(直径7インチ)を、第2のカソードにはTaターゲッ
ト(直径7インチ)を装着する。なお、第1および第2
のカソードはともに、ターゲットのエロージョン領域が
ターゲット面全域になるようにサマリウム−コバルト磁
石が偏心回転する構成とされたカソードである。
【0071】次いで、スパッタ槽内を1×10−4Pa
以下まで排気した後、Arガスを10sccmの流量で
供給し、15秒間シャッターを閉じて予備放電を行い、
Taターゲット表面の清浄化を行う。
【0072】続いて、Arガス7sccm、Oガス2
9sccmを導入し、Taターゲットを取り付けた第2
のカソードに3kW(12W/cm)の直流電力を供
給し放電させ、層厚が185nmになるまでTa
層の成膜を行う。このときのスパッタ槽内の圧力は0.
6×10−1Pa、放電電圧は540Vである。
【0073】続いて、Arガス10sccmの流量で供
給し、15秒間シャッターを閉じて予備放電を行い、S
iターゲット表面の清浄化を行う。続いて、Arガス1
0sccm、Oガス28sccmを導入し、Taター
ゲットを取り付けた第2のカソードに3kW(12W/
cm)の直流電力を供給し放電させ、層厚が265n
mになるまでSiO層の成膜を行う。このときのスパ
ッタ槽内の圧力は0.8×10−1Pa、放電電圧は6
40Vである。
【0074】以下同様な手順で、層厚185nmのTa
層と層厚265nmのSiO 層とを順次交互に
積層させ、ガラス基板上に、(HL)7−H−8L−
(HL)7−H−L−(HL)8−H−8L−(HL)
8−H−L−(HL)8−H−8L−(HL)8−H−
L−(HL)7−H−8L−(HL)7−H、の構成
(合計層数135層)のWDM用狭帯域フィルタ(10
0GHz仕様)を製造する。ここで、Hは層厚185n
mのTa層、Lは層厚265nmのSiO層を
表し、(HL)7はHとLが交互に7回積層されるこ
と、また、8LはL層の厚さが単独で8倍厚く(すなわ
ち2120nm)形成されること、を表す。
【0075】なお、各光学層の成膜時は、基板ホルダを
約500rpmの回転数で回転させる。また、各光学層
については、基板上の光学層面にスパッタ槽外部におか
れた光源からレンズ系を通してモニタ用観測光としてレ
ーザ光を、高速で回転する基板表面に照射し、該レーザ
光の基板および形成された光学層への透過光量を受光器
により受光して、形成層厚の変化による光量変化から各
層の層厚を求める光学モニタによりスパッタの終点を検
出して、正確に所望の層厚に制御して作製する。
【0076】本例では、大量の酸素が導入され、高い放
電電力が投入されているにもかかわらず、135層を成
膜する間、放電状態は安定している。本例のようにター
ゲットのエロージョン領域がターゲット面全域になるよ
うなカソードを用いることにより容易に異常放電を抑制
することができる。
【0077】また、Ta膜の成膜速度は1nm/
秒以上であり、波長1550nmにおける屈折率は2.
09、消衰係数は0.0001未満(光吸収がきわめて
小さい膜)である。また、SiO膜の成膜速度は1n
m/秒以上であり、波長1550nmにおける屈折率は
1.46、消衰係数は0.0001未満(光吸収がきわ
めて小さい膜)である。これら消衰係数や屈折率の値か
ら不純物成分が少なく、緻密性に優れた膜が成膜される
ことが判る。本例によれば、水分等の不純物成分が少な
く、緻密性に優れ、耐久性の改善された135層のWD
M用狭帯域フィルタを生産性よく安定して得ることがで
きる。
【0078】
【発明の効果】本発明によれば、不純物成分の混入が少
なく、更には緻密性に優れ、屈折率などの光学的特性の
経時変化が少なく、耐久性が改善され、非常に高精度の
膜厚をもって、所望の光学特性が要求される多層系の光
学薄膜、特に誘電体の多層膜からなる光学薄膜が得られ
る。また、このような多層系の光学薄膜に対して、量産
性に優れしかも安定で制御性の優れた薄膜作製プロセス
を行える。
【0079】特に、誘電体からなるSiO2層とTa2
5層とが交互に多数積層された合計積層数、約90層か
ら150層にも及ぶ高品質で耐久性の高いWDM用狭帯
域フィルタを生産性良く、安定して製造するのに最適で
ある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いられるマグネトロンスパッタ装置
の概念図。
【符号の説明】
1:スパッタ槽 2:カソード 3:光学モニタの光源 4:ターゲット 5:電気的中和用電子銃 6:真空ポンプ 7:ガス導入系 8:基板 9:基板ホルダ 10:光学モニタの受光器 11:回転機構 12:RF電力導入系 13:シャッタ 61:排気口 71:不活性ガスのガス導入口 72:反応性ガスのガス導入口
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 2H048 GA04 GA33 GA43 GA60 4K029 AA09 AA24 BA43 BA46 BB02 BC07 BD00 CA06 DA12 DC16 DC39 DC45 EA00 EA01 EA02 EA03 EA04

Claims (18)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】スパッタ槽内にカソードと基板とターゲッ
    トとが配置されたマグネトロンスパッタ装置により前記
    基板面上に多層の光学層を有する光学薄膜を形成する光
    学薄膜の作製方法であって、前記スパッタ槽内に不活性
    ガスおよび反応性ガスを導入し、1.3×10-1Pa以
    下の放電圧力の条件下において反応性マグネトロンスパ
    ッタ法により前記基板面上に順次光学層を形成させるこ
    とを特徴とする光学薄膜の作製方法。
  2. 【請求項2】スパッタ槽内にカソードと基板とターゲッ
    トとが配置されたマグネトロンスパッタ装置により前記
    基板面上に多層の光学層を有する光学薄膜を形成する光
    学薄膜の作製方法であって、光学薄膜を形成するに先立
    ってスパッタ槽内を1.0×10-4Pa以下に真空排気
    し、次いで同スパッタ槽内に不活性ガスおよび反応性ガ
    スを導入し、1.3×10-1Pa以下の放電圧力の条件
    下においてマグネトロンスパッタ法により前記基板面上
    に順次光学層を形成させることを特徴とする光学薄膜の
    作製方法。
  3. 【請求項3】光学薄膜は、光学定数の異なる2種以上の
    光学層を順次交互に繰返し形成してなる多層を有し、光
    学定数の異なる2種以上の光学層は夫々当該光学層形成
    のための2種以上のターゲットを用いて基板面上に順次
    多層に形成する請求項1または2に記載の光学薄膜の作
    製方法。
  4. 【請求項4】光学定数の異なる2種以上の光学層が夫々
    誘電体材料からなる請求項3に記載の光学薄膜の作製方
    法。
  5. 【請求項5】光学薄膜が透過波長または反射波長の選択
    性を有する光学多層薄膜干渉フィルタである請求項4に
    記載の光学薄膜の作製方法。
  6. 【請求項6】前記2種以上のターゲットが基板の位置か
    ら略等距離に設置された夫々のカソード上に装着された
    マグネトロンスパッタ装置により前記基板面上に多層の
    光学層を有する光学薄膜を形成する際、各光学層ごとに
    スパッタさせるターゲットを切り替えて所望の光学定数
    を有する光学層を順次、多層に形成する請求項3に記載
    の光学薄膜の作製方法。
  7. 【請求項7】前記2種以上のターゲットが基板の位置か
    ら略等距離に設置された夫々のカソード上に装着された
    マグネトロンスパッタ装置を用い、スパッタ槽内に不活
    性ガスおよび反応性ガスを導入し、1.3×10-1Pa
    以下の放電圧力の条件下において反応性マグネトロンス
    パッタ法により前記基板面上に順次光学層を形成させる
    際、スパッタ用の不活性ガスとは別に、基板直近から反
    応性ガスを流量を調整しながら導入する請求項6に記載
    の光学薄膜の作製方法。
  8. 【請求項8】基板に近接しかつターゲット位置とは基板
    に対して反対側の位置に設置された排気口からスパッタ
    槽内のガスを排気することにより基板直近で導入された
    反応性ガスのターゲット近傍での分圧を最小に抑えて光
    学層の成膜速度の低下を最小限に抑える請求項1または
    2に記載の光学薄膜の作製方法。
  9. 【請求項9】光学薄膜の少なくとも1層の光学層を形成
    する際、当該光学層を形成するためのターゲットが複数
    個設置されたマグネトロンスパッタ装置を用い、これら
    複数個のターゲットを同時にスパッタして前記光学層を
    得る請求項1〜8のいずれかに記載の光学薄膜の作製方
    法。
  10. 【請求項10】同時スパッタする複数個のターゲットが
    同一の材料からなり、かつ、導入する反応ガスが同一種
    類からなる請求項9に記載の光学薄膜の作製方法。
  11. 【請求項11】同時スパッタする複数個のターゲットが
    異なる材料からなる請求項9に記載の光学薄膜の作製方
    法。
  12. 【請求項12】マグネトロンスパッタ法により基板面上
    に順次光学層を形成させる際、イオンビームを基板の光
    学層の形成面に照射する請求項1〜11のいずれかに記
    載の光学薄膜の作製方法。
  13. 【請求項13】マグネトロンスパッタ法により基板面上
    に順次光学層を形成させる際、RF電力を基板に供給す
    る請求項1〜11のいずれかに記載の光学薄膜の作製方
    法。
  14. 【請求項14】光学層を形成する際、電気的中和用電子
    銃によりスパッタ槽内に発生する異常放電を抑制する請
    求項1〜13のいずれかに記載の光学薄膜の作製方法。
  15. 【請求項15】基板上に形成される光学層面に、スパッ
    タ槽の外部または内部に配置された光源からレンズ系を
    通してモニタ用観測光を照射し、該観測光の基板の透過
    光量または光学層の層面からの反射光量を光検出器によ
    り測定して、形成された光学層の層厚の変化による光量
    変化から形成層厚を求める光学モニタにより各光学層の
    形成のためのスパッタの終点を検出し、各光学層の層厚
    を所望の層厚に制御する請求項1〜14のいずれかに記
    載の光学薄膜の作製方法。
  16. 【請求項16】一つの基板に対して光学モニタが複数個
    配置され、各光学モニタには該光学モニタが測定する領
    域を覆うシャッタが基板直前に設置されており、一つの
    光学モニタにより検出される領域においてシャッタの該
    当部分を開き、この領域において形成されている光学層
    のスパッタの終点を検出したとき、同領域に対応するシ
    ャッタ部分を閉じるという操作を行い、次いで次の光学
    モニタにより検出される次の領域においてシャッタの該
    当部分を開き、この領域において形成されている光学層
    のスパッタの終点を検出したとき、同領域に対応するシ
    ャッタ部分を閉じるという同様な操作を行い、順次配置
    された光学モニタの個数に応じて前記操作を所定回数繰
    返す請求項15に記載の光学薄膜の作製方法。
  17. 【請求項17】光学モニタが所望の光学層の層厚に対し
    て終点が近いことを検出した時点で、光学層の形成速度
    を遅くして、層厚を制御する請求項15または16に記
    載の光学薄膜の作製方法。
  18. 【請求項18】カソードとして、ターゲットのエロージ
    ョン領域がターゲット面全域になるように磁石が配置さ
    れたカソード、または、可動磁石を有し、ターゲットの
    エロージョン領域がターゲット面全域になるように磁石
    が動く構成とされたカソード、を用いる請求項1〜17
    のいずれかに記載の光学薄膜の作製方法。
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