JP2004151702A - プラスチック光ファイバ及びプラスチック光ファイバケーブル - Google Patents

プラスチック光ファイバ及びプラスチック光ファイバケーブル Download PDF

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Abstract

【課題】 光学特性や、耐曲げ光量損失、耐湿熱性に優れたプラスチック光ファイバを提供する。
【解決手段】 コアと、このコアの外周に形成された少なくとも1層のクラッドを有するプラスチック光ファイバにおいて、コア材として、ポリメタクリル酸メチル、又は1種類以上のビニル系単量体とメタクリル酸メチルとの共重合体を用い、クラッドとして、その少なくとも最外層に、テトラフルオロエチレン単位40〜90質量%と、下記一般式(I)
CF2=CF-(OCF2CF(CF3))aO-Rf (I)
(式中、Rfは炭素原子数が1〜8個のアルキル基もしくはフルオロアルキル基、又はアルコキシルアルキル基もしくはフルオロアルコキシルアルキル基を示し、aは0〜3の整数である。)
で表されるフルオロビニル化合物の単位10〜60質量%を含む共重合体を用いる。
【選択図】 なし

Description

本発明は、家庭内ホームネットワーク、および自動車や航空機、鉄道などのような移動媒体中での光情報通信などに用いられるプラスチック光ファイバ及びプラスチック光ファイバケーブルに関する。
従来、光ファイバとしては、広い波長領域にわたって優れた光伝送を行うことができる石英系光ファイバが幹線系を中心に実用化されているが、この石英系光ファイバは高価で加工性が低い。そのため、より安価で、軽量、大口径であり、端面加工や取り扱いが容易である等の長所を有するプラスチック光ファイバ(以下適宜「POF」と略する)が開発され、例えばライティングやセンサー等の分野や、FA、OA、LAN等の短・中距離通信用途の配線などの分野で実用化されている。
現在実用化されている通信用POFの大部分は、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)をコア材とするコア−クラッド(芯−鞘)構造からなるステップインデックス型POFであり、屋内配線あるいは自動車内配線のような短・中距離通信用途における高速通信媒体としての利用が期待されている。
屋内配線あるいは自動車内配線の用途におけるPOFは、高温多湿な環境下に屈曲した状態で敷設されることが多く、耐湿熱性や耐曲げ損失特性などが要求される。特に、自動車内通信媒体として用いられる場合には、POFが半径10mm、さらには半径5mmで屈曲されても、光ロス(曲げ光量損失)の少ないこと、さらには、POFが温度85℃、湿度95%の雰囲気下に長時間放置されても、伝送損失の増加が小さいことが要求されている。
最近では、POFの曲げによる光ロスを改善することを目的として、クラッドに低屈折率であるフッ化ビニリデン(ビニリデンフルオライド)とテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンからなる3元共重合体を用い、曲げ特性を向上させる技術が提案されている。
例えば、特許文献1(特開平11−101915号公報)には、第1クラッドが第2クラッドより屈折率の高い樹脂からなり、第2クラッドがフッ化ビニリデン成分が30〜92モル%、テトラフルオロエチレン成分0〜55モル%、ヘキサフルオロプロピレン成分8〜25モル%の範囲にある三元共重合体からなるPOFが開示されている。また、第1クラッドに最適なものとして(メタ)アクリル酸長鎖フルオロアルキルエステル/(メタ)アクリル酸短鎖フルオロアルキルエステル/(メタ)アクリル酸メチル共重合体が例示されている。
一方、特許文献2(特開2002-156533号公報)には、コアがメチルメタクリレートを主成分とする(共)重合体、第1クラッドがパーフルオロアルキルメタクリレート及びメチルメタクリレートを含有する共重合体、第2クラッドがヘキサフルオロプロピレン成分10〜25重量%、テトラフルオロエチレン成分35〜70重量%、フッ化ビニリデン成分15〜45重量%を含有する共重合体からなるPOFが開示されている。
また、特許文献3(特開2001−174646号公報)には、クラッドがフッ化ビニリデン成分20〜35モル%、テトラフルオロエチレン成分55モル%〜70モル%、ヘキサフルオロプロピレン成分10〜16モル%(これは、フッ化ビニリデン成分13〜24質量%、テトラフルオロエチレン成分60〜72質量%、ヘキサフルオロプロピレン成分15〜23質量%に相当する。)の範囲にある三元共重合体からなるPOFが開示されている。
特開平11−101915号公報 特開2002-156533号公報 特開2001−174646号公報
上記公報に開示される組成範囲にあるフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン3元共重合体の屈折率は1.34程度と比較的低いものである。通常、この程度の屈折率をもつ透明な樹脂を、クラッドの最外層に設けたPOFでは、半径10mmで屈曲された時に第1クラッドを透過した光の一部を反射する効果、すなわち曲げによる曲げ光量損失の低減効果は十分である。
しかし、上記公報に記載の3元共重合体は、屈折率が1.35程度又はそれ以下になる組成にした場合、テトラフルオロエチレン単位を高濃度で含有するために、結晶性が高く、常温で白濁している。このため、このような透明性の低い3元共重合体をクラッドの最外層に設けたPOFでは、曲げ半径10mm以下で屈曲された場合、最外層のクラッドが低屈折率であるにもかかわらず、曲げ光量損失の低減効果が不十分になる傾向が見られる。
また、上記のPOFが80℃以上の湿熱雰囲気下に長期間保持された場合、クラッド材の結晶化により、透明性がさらに低下する傾向があり、POFの伝送損失が著しく低下する傾向にあった。
さらに、上記の3元共重合体は、屈折率が1.35程度又はそれ以下になる組成にした場合、結晶性が高くなるため融点が190℃以上になる上、3元共重合体の分子量を調整しても溶融粘度を十分に調整できない。そのため、POFを紡糸する際、ノズル周辺部の温度を250℃以上の高温とする必要があり、コア材のメチルメタクリレート(MMA)単位を主構成単位とする(共)重合体の熱分解が原因となって、初期伝送損失や、特に長期の高温高湿下における伝送損失が増加する傾向があった。
また、コアの外周部にこのような透明性の低い3元共重合体を直接被覆して、コア-クラッドの2層構造のPOFを得た場合には、伝送損失が大きくなる傾向があった。
本発明の目的は、コア材にMMA単位を主構成単位とする樹脂を用い、最外層に位置するクラッドのクラッド材として、透明性に優れ、低屈折率(屈折率1.35以下)であり、POFの紡糸温度付近での溶融成形が容易な樹脂を用いることによって、光学特性や、耐曲げ光量損失、耐湿熱性に優れたプラスチック光ファイバ及びプラスチック光ファイバケーブルを提供することである。
本発明は、コアと、該コアの外周に形成された少なくとも1層のクラッドを有するプラスチック光ファイバであって、
前記コアは、ポリメタクリル酸メチル、又は1種類以上のビニル系単量体とメタクリル酸メチルとの共重合体からなり、
前記クラッドは、テトラフルオロエチレン単位40〜90質量%と、下記一般式(I)
CF2=CF-(OCF2CF(CF3))aO-Rf (I)
(式中、Rfは炭素原子数が1〜8個のアルキル基もしくはフルオロアルキル基またはアルコキシルアルキル基もしくはフルオロアルコキシルアルキル基を示し、aは0〜3の整数である。)
で表されるフルオロビニル化合物の単位10〜60質量%を含む共重合体からなる層を少なくとも最外層に有するプラスチック光ファイバに関する。
また本発明は、前記クラッドが、前記コアの外周に第1クラッド、第2クラッドの順で同心円状に積層された2層構造を有し、
ナトリウムD線による25℃での、コアの屈折率n1、第1クラッドの屈折率n2、第2クラッドの屈折率n3が、下記の関係式(1)
1>n2>n3 (1)
を満足する上記のプラスチック光ファイバに関する。
また本発明は、前記フルオロビニル化合物の単位が、下記一般式(II)
CF2=CFO(CH2n(CF2mX (II)
(式中、Xは水素原子またはハロゲン原子を示し、nは0又は1以上の整数、mは0又は1以上の整数を示す。)
で表わされる化合物の単位である上記のプラスチック光ファイバに関する。
また本発明は、前記第1クラッドが、下記一般式(III)
CH2=CX−COO(CH2m(CF2nY (III)
(式中、Xは水素原子またはメチル基、Yは水素原子またはフッ素原子を示し、mは1又は2、nは1〜12の整数を示す。)
で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの単位(A)15〜90質量%と、他の共重合可能な単量体の単位(B)10〜85質量%の共重合体とからなる共重合体であって、ナトリウムD線による25℃での屈折率が1.39〜1.475の範囲にある上記のプラスチック光ファイバに関する。
さらに本発明は、上記のいずれかのプラスチック光ファイバの外周に、熱可塑性樹脂からなる被覆層を有するプラスチック光ファイバケーブルに関する。
本発明によれば、透光性能が良好で、耐曲げ光量損失、耐湿熱安定性に優れたPOF及びPOFケーブルを提供することができる。
以下、本発明の好適な実施の形態について説明する。
本発明のPOFは、コアとその外周に形成された少なくとも1層からなるクラッドを有する。コアとクラッドからなるPOFの外周に少なくとも一層の被覆層を設けることでPOFケーブルを形成することができる。
コアを構成する材料(コア材)としては、POFとして特に透光性に優れていることから、ポリメタクリル酸メチル、又は1種類以上のビニル系単量体とメタクリル酸メチルとの共重合体が用いられる。このような共重合体としては、透明性を十分に確保する点から、メタクリル酸メチル単位の含有量は50質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、70質量%以上がさらに好ましい。
本発明のPOFにおけるクラッドは、1層で形成されていても、2層以上の複数層から形成されても良いが、少なくとも最外層に位置するクラッド層は、テトラフルオロエチレン単位と一般式(I)で示されるフルオロビニル化合物の単位(以下適宜「FVE単位」と略する)とを有する特定の共重合体からなることが必要である。これらの2種の単位の合計を100質量%とした時、テトラフルオロエチレン単位とFVE単位との含有割合は、テトラフルオロエチレン単位40〜90質量%およびFVE単位10〜60質量%である。この共重合体は、屈折率(ナトリウムD線による25℃での屈折率をいう。以下同じ。)が低く、良好な透明性を有しながら、屈曲性および加工性に優れる。以下、この共重合体からなる樹脂を、従来の樹脂と区別して「ソフトPFA樹脂」と略す。
本発明におけるソフトPFA樹脂の構成単位であるFVE単位は、下記一般式(I)
CF2=CF-(OCF2CF(CF3))aO-Rf (I)
(式中、Rfは炭素原子数が1〜8個のアルキル基もしくはフルオロアルキル基またはアルコキシルアルキル基もしくはフルオロアルコキシルアルキル基を示し、aは0〜3の整数である。)
で表される化合物の単位である。
より好ましくは、FVE単位は下記一般式(II)
CF2=CFO(CH2n(CF2mX (II)
(式中、Xは水素原子またはハロゲン原子を示し、nは0又は1以上の整数、mは0又は1以上の整数を示す。但し、n+mは1以上8以下の整数。)
で表わされる化合物の単位である。
さらに具体的には、上記のFVE単位は、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCH2CF3、CF2=CFOCH2CF2CF3、CF2=CFOCH2CF2CF2CF3、CF2=CFOCH3、CF2=CFOCH2CH3及びCF2=CFOCH2CH2CH3からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物の単位であることが、原料の低コストの点から好ましい。
また、一般式(I)で表されるその他の化合物として、パーフルオロトリフルオロメトキシジフルオロメチルビニルエーテル(CF2=CFOCF2OCF3)、パーフルオロメトキシメチルビニルエーテル(CF2=CFOCH2OCH3)、パーフルオロメトキシヘキサフルオロプロピルビニルエーテル(CF2=CF−OCF2CF(CF3)O-CH3)、パーフルオロトリフルオロメトキシヘキサフルオロプロピルビニルエーテル(CF2=CF−OCF2CF(CF3)O-CF3)を挙げることができる。
本発明におけるクラッドの少なくとも最外層を形成するソフトPFA樹脂は、所望の特性が得られる範囲内で他の単量体単位を含有していてもよく、他の単量体単位の含有率は、ソフトPFA樹脂の全構成単位を100質量%としたとき、10質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。他の単量体単位としては、フッ化ビニリデン、フッ化ビニル、トリフルオロエチレン、ペンタフルオロプロピレン、ヘキサフルオロプロピレン、クロロトリフルオロエチレン、ヘキサフルオロアセトン等を挙げることができる。
ソフトPFA樹脂は、テトラフルオロエチレン単位の含有量が90質量%を超えると、溶融粘度が高くなり成形安定性が低下する傾向や、結晶性が高くなり白濁する傾向がある。一方、40質量%未満であると、硬度および耐熱性が低下する傾向がある。よって、成形安定性、透明性、硬度および耐熱性等の点から、ソフトPFA樹脂中のテトラフルオロエチレン単位の含有率は40〜90質量%が好ましい。
また、ソフトPFA樹脂のFVE単位においては、パーフルオロアルキル基等の側鎖基が、酸素原子を介して主鎖(−CF2−CF−)に結合しており、その炭素−酸素結合(C−O)は、熱的にも化学的にも、炭素−フッ素結合(C−F)と同程度の安定性を有している(里川孝臣著、「ふっ素樹脂ハンドブック」日刊工業新聞社発行、1990年、p.285)。しかも、ヘキサフルオロプロピレン単位では、側鎖のCF3基がかなり大きい「かたまり」のため主鎖との結合において、立体的に障害を起こしているのに対して、FVE単位では、パーフルオロアルキル基等の側鎖基が酸素(−O−)を介して主鎖に結合しているため、側鎖基がかなり大きくても、側鎖基に起因する構造的な不安定性の要因が回避されており、熱的にも化学的にも安定である特徴がある。
上記の特徴に加えて、FVE単位は、パーフルオロアルキル基等の側鎖基がエーテル結合を介して主鎖(−CF2−CF−)に結合しているため、ヘキサフルオロプロピレン単位と比較すると、側鎖基の運動性が大きく、また嵩高い構造を有している。そのため、FVE単位を含有することで、テトラフルオロエチレンの共重合体が有している結晶性や融点、溶融粘度を大きく低減でき、さらに屈折率を低下させることができる。
この結晶性低減効果は、共重合体中にFVE単位を10質量%以上含有することで十分に発現する。一方、以下に述べる2つの理由により、共重合体におけるFVE単位は60質量%以下であることが好ましい。
1)FVE単位中のエーテル結合部分に含まれる酸素原子が多くなるにつれ、吸水性が高くなる傾向がある。そのため、クラッド材中のFVE単位の含有量が多すぎると、POFの耐湿熱性が低下する恐れがある。
2)FVE単位の含有量が多くなるにつれ、共重合体のエラストマー性が高くなる傾向がある。そのため、クラッド材中のFVE単位の含有量が多すぎると、POFの成形性安定性が低下する傾向がある。また、FVE単位の含有量が多すぎる共重合体を、クラッドの最外層に用いたPOFは、表面のべた付きが大きくなる傾向がある。そのため、POFを紡糸して巻き取ったボビンからPOFを解き取りにくくなる傾向がある。
以上の理由から、クラッドの少なくとも最外層を構成するソフトPFA樹脂のFVE単位の含有量は10〜60質量%であることが好ましい。
クラッドの少なくとも最外層を構成するソフトPFA樹脂としては、その屈折率が1.35以下であることが好ましく、1.34以下がより好ましい。このような屈折率の樹脂をクラッドの少なくとも最外層に用いることで、半径10mm以下で屈曲されても曲げ光量損失の少ないPOFを得ることが可能となる。一方、この屈折率は1.31以上であることが好ましい。これにより、FVE単位の含有量を比較的小さく抑えることができ、コアや内層のクラッドとの密着性を向上させることが可能となる。
また、上記ソフトPFA樹脂は、230℃、荷重5kgf(49N)で測定したメルトフローインデックスが、2〜100g/10分の範囲、より好ましくは、10〜50g/10分の範囲にあることが、POFの紡糸安定性の点から好ましい。メルトフローインデックスは、ソフトPFA樹脂の重合時に分子量を調整したり、低分子量のソフトPFA樹脂を適当量添加したりすることで、適宜調整することができる。
また、上記ソフトPFA樹脂は、示差走査熱熱量測定(DSC)を用いて10℃/分の加熱速度で測定した融解熱が1J/g未満であることが好ましい。融解熱が1J/g未満であるソフトPFA樹脂は、常温で透明性が高く、さらにはソフトPFA樹脂が溶融状態から室温付近まで冷却される場合、その冷却速度に関わらず常に透明性が保たれるため、POFのクラッド材として好適である。
以上から、上記組成のソフトPFA樹脂は、十分に低い屈折率を有し、また結晶性が低いため透明性、成形安定性に優れており、POFの最外層に位置するクラッド層の材料として用いることにより極めて優れたPOF及びPOFケーブルを提供することができる。
本発明のPOFにおけるクラッドは、複数層から形成される場合、製造コストを低減する観点から、第1クラッドの外周に、第2クラッドを同心円状に設けた2層構造を有することが好ましい。
クラッドがこのような2層構造を有する場合、コアの屈折率n1、第1クラッドの屈折率n2、第2クラッドの屈折率n3が、下記の関係式(1)を満たすことが必要である。
1>n2>n3 (1)
上記の関係式(1)を満たすことにより、POFが屈曲されて第1クラッドから光が漏れた場合でも、第2クラッドで光が反射されることによって、POFの曲げ光量損失の増加を抑制できる。
第1クラッドに用いられる重合体としては、良好な透明性および耐熱性を有しながら、屈曲性および加工性に優れる重合体として、下記一般式(III)
CH2=CX−COO(CH2m(CF2nY (III)
(式中、Xは水素原子またはメチル基、Yは水素原子またはフッ素原子を示し、mは1又は2、nは1〜12の整数を示す。)
で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの単位(A)15〜90質量%と、他の共重合可能な単量体の単位(B)10〜85質量%からなり、屈折率が1.39〜1.475の範囲にある共重合体が挙げられる。
POFに対して特に広い帯域が要求される場合には、下記一般式(IV)
CH2=C(CH3)COO-(CH2m(CF2nCF3 (IV)
(式中、mは1又は2、nは5〜12の整数を示す。)
で表わされる長鎖フルオロアルキルメタクリレートの単位(C)0〜50質量%と、下記一般式(V)
CH2=C(CH3)COO-CH2(CF2mX (V)
(式中、Xは水素原子又はフッ素原子、mは1〜4の整数を示す。)
で表わされる短鎖フルオロアルキルメタクリレートの単位(D)0〜50重量%と、他の共重合可能な単量体の単位(E)50〜80質量%からなる共重合体であって、屈折率が1.45〜1.48の範囲にある共重合体を用いることができる。
但し、第1クラッドの屈折率が高すぎると、第2クラッドによる曲げ光量損失の抑制効果が十分発現されない傾向があるため、POFが使用される環境に応じて伝送帯域と曲げ光量損失とのバランスをとることが望ましい。
また、POFに対して特に低曲げ損失が要求される場合には、長鎖フルオロアルキルメタクリレート単位(C)0〜80質量%と、短鎖フルオロアルキルメタクリレート単位(D)10〜90質量%と、他の共重合可能な単量体単位(E)10〜50質量%とからなる共重合体であって、屈折率が1.39〜1.435の範囲にある共重合体を用いることができる。
また、POFに対して耐熱性が要求される場合には、下記一般式(VI)
CH2=C(F)COO-CH2(CF2mX (VI)
(式中、Xは水素原子又はフッ素原子、mは1〜4の整数を示す。)
で表わされるα−フルオロアクリル酸エステルの単位(F)からなる構造単位を有する共重合体であって、屈折率が1.38〜1.435の範囲にあり、ガラス転移温度が100℃以上である共重合体を用いることができる。
このようなα−フルオロアクリル酸エステルの単位としては、α−フルオロアクリル酸メチル、α−フルオロアクリル酸2,2,2−トリフルオロエチル、α−フルオロアクリル酸2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル等の単位が挙げられる。
以上に説明したように、本発明においては、第2クラッドとして前述のソフトPFA樹脂を用い、第1クラッドとして、上述の関係式(1)の条件をみたす材料を用いることで、半径10mm以下での曲げ損失光量を低減することができ、耐湿熱安定性の優れたPOFを得ることが可能となる。
本発明のPOFは、耐屈曲性および耐湿熱性を向上させるためにクラッドの外周に保護層を被覆することができる。この保護層としては、フッ素原子の割合が59質量%以上であるフッ素系樹脂を用いることができる。フッ素原子の割合が59質量%以上であれば、より十分な耐屈曲性、耐湿熱性、及び耐薬品性を達成することができる。
保護層の材料としては、例えば、ビニリデンフルオライド(フッ化ビニリデン)とテトラフルオロエチレンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロアセトンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとトリフルオロエチレンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体、ビニリデンフルオライドとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロアセトンとの共重合体、エチレンとテトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体等が挙げられるが、これに限定されるものではない。
本発明のPOFケーブルは、耐屈曲性および耐湿熱性を向上させるためにクラッドの外周あるいは保護層の外周に被覆層を密着配設してPOFケーブルとすることができる。この被覆層は、コアと直接接しないので、結晶化により透明性が低下しても特に問題は生じない。
被覆層の材料としては、POFの被覆材層として一般的に使用されている種々の熱可塑性樹脂を用いることができるが、POFケーブルが使用される環境や要求に応じて、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、およびフッ化ビニリデン系樹脂からなる群から選ばれる1種又は2種以上の混合物を用いることができる。
中でも、ポリアミド系樹脂は、耐熱性、耐屈曲性、耐溶剤特性に優れることから、耐熱性および耐環境特性を要求される用途向けのPOFの被覆材として好適である。また、加工性が良く、適度な融点を有しているため、POFの伝送性能を低下させることなく、容易にPOFを被覆することができる。
ポリアミド系樹脂としては、ナイロン10、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66などの各単量体の単位からなる単独重合体や、これら単量体単位の組合せからなる共重合体、柔軟なセグメントを導入したナイロン単量体単位を含むナイロン系エラストマーなどが挙げられる。これらは単独で使用しても、2種類以上を組み合わせて使用してもよく、また、必要に応じて、ポリアミド系樹脂以外の重合体や化合物を混合して使用してもよい。他の重合体や化合物などを混合する場合には、被覆材中のポリアミド系樹脂の含有量が、20質量%以上70質量%以下となる範囲で混合することが好ましい。
ポリアミド系樹脂の中では、特に、ナイロン11やナイロン12の単独重合体または共重合体が好ましい。これらは密着性に優れ、また、被覆工程における成形性が良好で、POFに熱的および機械的なダメージを与えにくく、さらに寸法安定性に優れる。このような密着性と寸法安定性との相乗効果により、ピストニングを効果的に防止することができる。
また、本発明のPOFケーブルでは、POFへの外光の入射を防止するために、被覆層にカーボンブラック等の着色剤を含有させることもできる。
また、本発明のPOFケーブルでは、難燃性を付与あるいは向上するために、被覆層を形成する材料に難燃剤を含有させてもよい。難燃剤としては、金属水酸化物、燐化合物、トリアジン系化合物などの公知の難燃剤を用いることができる。特に、ポリアミド系樹脂を被覆層の主成分として用いる場合は、トリアジン系化合物を用いることが好ましく、この中でもシアヌル酸メラミンがより好ましい。
また、本発明のPOFケーブルでは、少なくとも最外層を構成する被覆層に着色剤等を添加してもよい。これにより、POFケーブルの識別性、意匠性を容易に高めることができる。着色剤としては公知のものが用いられるが、染料系の着色剤は高温下などで光ファイバに移行し伝送損失を増加させるおそれがあるため、無機顔料を用いることが好ましい。
以下実施例により本発明をより具体的に説明する。なお、実施例における評価、測定は以下の方法により実施した。
(メルトフローインデックス)
メルトフローインデックス(MFR)は、日本工業規格JIS K7210に準じて測定した。230℃、荷重5kgf(49N)の条件下で直径2mm、長さ8mmのノズルから10分間に吐出される重合体量を測定した。
(屈折率)
溶融プレスにより厚さ200μmのフィルム状の試験片を形成し、アッベの屈折計を用い、25℃におけるナトリウムD線の屈折率(nD 25)を測定した。
(伝送損失)
25m−5mカットバック法により伝送損失(dB/km)を測定した。測定波長が650nm、入射光のNA(開口数)が、0.1、0.65の光を用いた。なお、伝送損失は、初期の伝送損失と、POFケーブルを温度85℃、湿度(RH)95%のオーブンに1000時間放置した後の伝送損失とを測定した。
(曲げ損失)
長さ11mのPOFケーブルの一端から光を入射させ、その状態で、POFケーブルを、1m間隔の10箇所において、半径10mm(R10mm)又は半径5mm(R5mm)で90度づつ屈曲させ、他端から出射される光量を測定した。このように屈曲させたPOFケーブルから出射される光量と、直線状の同POFケーブルについて同様に測定した出射光量とから曲げ損失を算出した。
(繰り返し屈曲回数)
長さ4mのPOFケーブルの一端に荷重500gf(4.9N)をかけ、このPOFケーブルの中央を直径15mmの2本の円管にて挟持した。このPOFケーブルの他端を一方の円管側に移動させてPOFケーブルが90度折れ曲がるように円管外周に巻き付けた後、他方の円管側に移動させてPOFケーブルが90度折れ曲がるように円管外周に巻き付けて合計180度屈曲させ、これを繰り返し、POFケーブルが切断した際の曲げ回数を測定した。
[実施例1]
コア材としてPMMA(屈折率1.492)、第1クラッド材として、2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート(3FM)/2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート(17FM)/メタクリル酸メチル/メタクリル酸(51/31/17/1(質量部))の共重合体(屈折率1.416)、第2クラッド材として、テトラフルオロエチレン/パーフルオロトリフルオロメチルビニルエーテル(CF2=CFOCF3)の共重合体(65/35質量%、屈折率1.340、メルトフローインデックス25)を用いた。これらの重合体を溶融して、220℃の紡糸ヘッドに供給し、同心円状複合ノズルを用いて複合紡糸した後、140℃の熱風加熱炉中で繊維軸方向に2倍に延伸し、クラッド厚み10μm、直径1mmのPOFを得た。すなわち、この例ではクラッドが第1クラッド及び第2クラッドの2層からなる。
このPOFに、220℃に設定したクロスヘッドダイにてクロスヘッドケーブル被覆装置を用いて、ポリアミド12を被覆して厚みが250μmの一次被覆層を形成し、外径1.5mmのPOFケーブルを得た。
得られたPOFケーブルの各種評価を行い、その結果を表2に示した。
得られたPOFケーブルは伝送性能が良好で、曲げ損失が小さく、耐湿熱環境下での伝送特性も良好であった。
[実施例2]
POFの構成を表1に示す通り、実施例1で用いた第2クラッド材で単層構造のクラッドを形成した以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
[実施例3、4]
POFの構成を表1に示す通り、クラッド材を変更した以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
[比較例1]
第2クラッドとして、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(8/70/22質量%、屈折率1.340、メルトフローインデックス4)を用い、紡糸ヘッドの温度を250℃にした以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表2に示した。なお、クラッドの第2クラッドに使用した共重合体は、常温で白濁していた。
[比較例2]
クラッドを、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレン共重合体(8/70/22質量%、屈折率1.340、メルトフローインデックス4)の共重合体からなる単層構成とし、紡糸ヘッドの温度を250℃にした以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表2に示した。なお、クラッドに使用した重合体は、常温で白濁していた。
[比較例3]
第2クラッドとして、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン共重合体(80/20質量%、屈折率1.402、メルトフローインデックス15)にした以外は、実施例1と同様にしてPOFケーブルを作製した。得られたPOFケーブルの各種特性を評価し、その結果を表2に示した。
表2から明らかなように、実施例1〜4のPOFケーブルは、同程度の屈折率のソフトPFA樹脂をクラッドに用いたPOFケーブル(比較例1〜2)と比較して、半径10mm以下での曲げ損失が小さく、さらに繰り返し屈曲回数においても優れていた。また、比較例3のPOFケーブルは、半径10mm以下での曲げ損失が非常に大きかった。さらに、実施例1〜4のPOFケーブルの伝送特性は、湿熱試験後においても良好であった。単層のクラッドを有するPOF同士(実施例2と比較例2)を比較すると、比較例2のPOFは初期状態においても伝送損失が極めて劣っていた。
Figure 2004151702
表1中の略号は下記の化合物を示す。
VdF:フッ化ビニリデン
TFE:テトラフルオロエチレン
HFP:ヘキサフルオロプロピレン
PFTFMVE:パーフルオロトリフオロメチルビニルエーテル
PFEVE:パーフルオロエチルビニルエーテル
PFHFPVE:パーフルオロヘプタフルオロプロピルビニルエーテル
PA12:ナイロン12(ダイセルヒュルス社製、ダイアミド-L1640)
MMA:メタクリル酸メチル
MAA:メタクリル酸
3FM:2,2,2−トリフルオロエチルメタクリレート
4FM:2,2,3,3−テトラフルオロプロピルメタクリレート
5FM:2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルメタクリレート
17FM:2−(パーフルオロオクチル)エチルメタクリレート
Figure 2004151702

Claims (10)

  1. コアと、該コアの外周に形成された少なくとも1層のクラッドを有するプラスチック光ファイバであって、
    前記コアは、ポリメタクリル酸メチル、又は1種類以上のビニル系単量体とメタクリル酸メチルとの共重合体からなり、
    前記クラッドは、テトラフルオロエチレン単位40〜90質量%と、下記一般式(I)
    CF2=CF-(OCF2CF(CF3))aO-Rf (I)
    (式中、Rfは炭素原子数が1〜8個のアルキル基もしくはフルオロアルキル基またはアルコキシルアルキル基もしくはフルオロアルコキシルアルキル基を示し、aは0〜3の整数である。)
    で表されるフルオロビニル化合物の単位10〜60質量%を含む共重合体からなる層を少なくとも最外層に有するプラスチック光ファイバ。
  2. 前記クラッドは、前記コアの外周に第1クラッド、第2クラッドの順で同心円状に積層された2層構造を有し、
    ナトリウムD線による25℃での、コアの屈折率n1、第1クラッドの屈折率n2、第2クラッドの屈折率n3が、下記の関係式(1)
    1>n2>n3 (1)
    を満足する請求項1に記載のプラスチック光ファイバ。
  3. テトラフルオロエチレン単位と一般式(I)で表されるフルオロビニル化合物の単位を含む前記共重合体は、ナトリウムD線による25℃での屈折率が1.31〜1.35の範囲にあり、230℃、荷重5kgf(49N)で測定したメルトフローインデックスが2〜100g/10分の範囲にある請求項1又は2に記載のプラスチック光ファイバ。
  4. 前記フルオロビニル化合物の単位が、下記一般式(II)
    CF2=CFO(CH2n(CF2mX (II)
    (式中、Xは水素原子またはハロゲン原子を示し、nは0又は1以上の整数、mは0又は1以上の整数を示す。)
    で表わされる化合物の単位である請求項1、2又は3に記載のプラスチック光ファイバ。
  5. 前記フルオロビニル化合物の単位が、CF2=CFOCF3、CF2=CFOCF2CF3、CF2=CFOCF2CF2CF3、CF2=CFOCH2CF3、CF2=CFOCH2CF2CF3、CF2=CFOCH2CF2CF2CF3、CF2=CFOCH3、CF2=CFOCH2CH3及びCF2=CFOCH2CH2CH3からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物の単位である請求項4に記載のプラスチック光ファイバ。
  6. 前記第1クラッドが、下記一般式(III)
    CH2=CX−COO(CH2m(CF2nY (III)
    (式中、Xは水素原子またはメチル基、Yは水素原子またはフッ素原子を示し、mは1又は2、nは1〜12の整数を示す。)
    で表されるフルオロアルキル(メタ)アクリレートの単位(A)15〜90質量%と、他の共重合可能な単量体の単位(B)10〜85質量%の共重合体とからなる共重合体であって、ナトリウムD線による25℃での屈折率が1.39〜1.475の範囲にある請求項2、3又は4に記載のプラスチック光ファイバ。
  7. 前記クラッドの外周部に、フッ素原子の割合が59質量%以上であるフッ素系樹脂からなる保護層を有する請求項1〜6のいずれか一項に記載のプラスチック光ファイバ。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項に記載のプラスチック光ファイバの外周に、熱可塑性樹脂からなる被覆層を有するプラスチック光ファイバケーブル。
  9. 前記被覆層は、ポリアミド系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、塩素化ポリエチレン系樹脂、ポリウレタン系樹脂、及びフッ化ビニリデン系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂を主成分とする樹脂から形成される、請求項8に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
  10. 前記被覆層が、ナイロン11、ナイロン12又はこれらの共重合体を主成分とする樹脂からなる、請求項8に記載のプラスチック光ファイバケーブル。
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