JP2004147639A - 咀嚼・嚥下訓練食,その製造方法およびその提供方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】前段ステップで、キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成るゲル化剤を水に対し0.3乃至1.1重量%含む咀嚼・嚥下前段訓練食を10℃乃至15℃の範囲の喫食温度で提供する。後段ステップで、可食範囲内で前記咀嚼・嚥下前段訓練食より粘性および弾性が増加し、粒状食材を含む咀嚼・嚥下後段訓練食を10℃乃至70℃の範囲の喫食温度で提供する。
【選択図】図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、咀嚼・嚥下困難者が咀嚼・嚥下の訓練をするのに適した咀嚼・嚥下訓練食,その製造方法およびその提供方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高齢化社会を迎えて、介護を要する高齢者が増えている。また、高齢者の約3割は咀嚼・嚥下機能低下者であると云われている。これらの咀嚼・嚥下機能低下者の寝たきり状態の防止、リハビリテーションの促進、介護者の負担の軽減のため、咀嚼・嚥下の訓練をし、咀嚼・嚥下機能低下者の食事を通常の健常者の食事に近づけるのに適した咀嚼・嚥下訓練食の開発が望まれている。
【0003】
嚥下機能低下とは、水や食べ物が飲み込めなくなったり、水や食べ物を食道ではなく、誤って気管や肺の方に行かせてしまうこと(誤嚥)を言う。嚥下機能低下は、栄養失調のみならず肺炎などの呼吸器障害を引き起こす。
【0004】
嚥下の動作は、口腔相、咽頭相及び食道相の3相からなる。
(1)口に取り込まれた食物は、舌と歯の巧みな運動により唾液と混ぜられ咀嚼される。咀嚼動作が繰り返される間に食物は飲み込み易い形状(食塊)に変化する。食塊は舌の運動によって舌の後ろ側(奥舌)へ移動し、奥舌まで来た食塊は奥舌と軟口蓋でつくられるドア(口峡)を通過して咽頭に送り込まれる。
【0005】
(2)咽頭に食塊が入ると、鼻と気管へ通じるドアが閉じられ、食道へ通じるドアが開いて食塊が一気に食道へ送り込まれる。舌根が咽頭後壁にさらに押しつけられ、咽頭内圧が高まり、咽頭壁にも蠕動運動が生じて食塊が食道へ送り込まれる(嚥下反射)。
【0006】
(3)食道に食塊が送り込まれると、逆流しないように食道括約筋が収縮し、食塊は蠕動運動によって胃へと運ばれる。
【0007】
健常者の場合には、上述の食塊の咽頭通過は一連の嚥下反射として起こり、0.5秒以内の一瞬のうちに終わる。しかし、嚥下障害者や高齢者の場合には、咽頭相の粘膜が老化し、咽頭蓋も弾力性を失っているので、咽頭相の動作をスムーズに行うことができず、鼻腔への食物の押し出しや誤嚥を起こし易い。嚥下障害者の約7割は仮性球麻痺患者であり丸呑み込みを特徴とするので、食塊をいかに0.5秒以内で咽頭相を通過させるかが重要となる。なお、嚥下困難者は咀嚼機能も失調していることが多い。咀嚼は、唾液を出して消化、殺菌を助け、嚥下の訓練に役立つものである。
【0008】
このような問題を解決し、咀嚼・嚥下機能低下者の寝たきり状態の防止、リハビリテーションの促進、介護者の負担の軽減のための嚥下食として、非特許文献1において、咀嚼・嚥下機能低下者用食品のゲルの堅さについて、1×104N/m2以下、ゲル中に固形物を含む場合は1×105N/m2以下と規定されている。
【0009】
特許文献1には水分含量72〜88%で澱粉質、米および増粘多糖類を含む嚥下機能低下者用食品について開示している。しかしながら、澱粉質を増粘剤として用いた場合は、付着性の高さや粘度の経時的増大による食品物性の変化といった欠点がある。
また、特許文献2に示すものが開発されている。しかしながら、特許文献2に示す従来の技術は、畜肉食品に限定されていた。
【0010】
一方、咀嚼・嚥下機能低下者への食事訓練方法について成書で紹介されている(例えば、非特許文献2参照)。しかしながら、咀嚼・嚥下機能低下者のリハビリテーションを行うにあたっては、咀嚼・嚥下機能低下者の障害の程度に応じて訓練食の物性を設定する必要があるが、咀嚼・嚥下機能低下者の障害度合いと訓練食の物性およびその提供方法については明らかにされていなかった。
また、咀嚼・嚥下機能低下者に食事に関するリハビリテーションを行ううえで、より適した咀嚼・嚥下訓練食の開発が望まれていた。
【0011】
【特許文献1】
特許第3061776号公報
【特許文献2】
特開2001−128646号公報
【非特許文献1】
厚生省生活衛生局食品保健課新開発食品保健対策室長通知(平成6年2月23日発行)衛新第15号「高齢者用食品の表示許可の取扱いについて」
【非特許文献2】
藤島一郎著「口から食べる 嚥下障害Q&A」中央法規出版、2002年8月5日
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、咀嚼・嚥下機能低下者に食事に関するリハビリテーションを行い、その食事を通常の健常者の食事に近づけるのに適した咀嚼・嚥下訓練食,その製造方法およびその提供方法を提供することを目的としている。
【0013】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成るゲル化剤を水に対し0.3乃至1.1重量%含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、この構成により(1)離水性が小さく、嚥下の際に気管に入りにくい、(2)べとつかず(付着せず)、ぱさつかない(口腔内で粒子に飛散しない)、(3)レトルト化に適した食品となる。嚥下反射の誘発が弱い嚥下困難者は、ほとんど咀嚼ができないため、「丸呑み込み」することが多い。このとき、窒息することがないよう食塊が咽頭を1秒以内でスムーズに通過するためには、食塊が小さな応力で大変形する必要がある。本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、このような変形が可能なものである。なお、咀嚼・嚥下訓練食は、「咀嚼・嚥下機能低下者向け訓練食」が含まれる概念である。
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、水分含量が高く、水分補給に役立つ。咀嚼・嚥下訓練食の要件としては、親水性があって嚥下が容易なものであること、水をはじき、粘膜に付着するような疎水性のものでないこと、嚥下前と嚥下中とで物性が変わらないことが重要である。本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、それらの要件を満たすものである。
【0015】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、保存性、品質安定性を有するよう6ヶ月以上の賞味期限を有するレトルト食品であることが好ましい。本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、咀嚼・嚥下訓練の程度に合わせて、容器や袋に詰め、加圧加熱殺菌をした保存食であることが好ましく、喫食温度を考慮してあることが好ましい。また、本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、ビタミン、ミネラルなどの栄養成分を含むことが好ましく、例えば、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンE、ナイアシン、亜鉛、マグネシウム、リンなどを含むことが好ましく、また、段階に応じて、ポリフェノール、食物繊維、アミノ酸、イノシトール6リン酸、オリザノールなどを含んでもよい。特に、本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、栄養のバランスを考慮した多種類少量で、地域食材を使用した地域密着型の食品であることが好ましい。
【0016】
咀嚼・嚥下訓練食で、キサンタンガム、ローカストビーンガム以外の増粘安定剤、例えば、ゼラチンを用いた場合には、加熱に弱く、レトルト食品に適さないという問題がある。咀嚼・嚥下訓練食のゲル化剤としては、0℃〜約15℃の温度範囲内で、ほぼ一定の構造を有していること、温度を変化した場合、ゲル構造が徐々に変化すること、保水力があり、離水し難いこと、低濃度ゲルの粘弾性は特異な性質を示すことを考慮することが望ましい。本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、食品中に発育し得る微生物が陰性でなければならないことから、容器包装詰加圧加熱殺菌食品(レトルト食品)で生産することが好ましく、このため、100℃以上の高温で長時間加熱した場合,ゲルが加水分解されないことが必要不可欠である。本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食のゲル化剤は、その要件を満たすものである。
【0017】
ゼラチンの問題点は製造時の加圧加熱殺菌を目的とした高温での長時間の加熱により、ゼラチンは加水分解してしまう。よって、長期の常温下での保存を目的とした、レトルト殺菌工程を必要とする本製品には使用できない。また、ゼラチンは口内の温度で容易に溶解するため、呑み込みの遅い患者の場合、口内で完全にゾル化してしまい、誤嚥の危険性が増す場合が考えられる。
キサンタンガムとローカストビーンガムの混合系の優位点は103℃〜115℃でのレトルト殺菌が行える。また、ゾル化する温度帯が50℃以上と高いため、口内に長時間停滞した場合にも誤嚥の危険性が増すことはない。
【0018】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食のゲル化剤で、キサンタンガムに対するローカストビーンガムの乾燥重量比が9:1未満の場合には、曳糸性の問題があり、その乾燥重量比が6:4を超える場合には、硬すぎるという問題がある。
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食のゲル化剤は、キサンタンガムに対しローカストビーンガムを特に9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成ることが好ましく、7:3の乾燥重量比が最適である。本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、ゲル化剤の水に対する比率が0.3重量%未満の場合には、ゲルが崩れるという問題があり、その比率が1.1重量%を超える場合には、硬すぎるという問題がある。
【0019】
キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比と配合量についてはキサンタンガム単体では、保形力は出るが弾力は出ず、嚥下に適したゲルにはならない。しかし、ローカストビーンガムと併用することで大きな相乗効果が生まれ、弾力性があり、変形しやすい嚥下に適したゲルができる。1:1の混合で最強強度(弾力)を発現するが、ゲル強度が強すぎると離水しやすくなる。また、ローカストビーンガムの比率が増えれば保形性が弱くなり、口内でのバラケの原因となる。よって、キサンタンガムとローカストビーンガムの比率は、6:4〜9:1が適切である。
【0020】
キサンタンガムとローカストビーンガムの混合物の水に対する配合比率は、0.3重量%より少ないとゲル強度が弱くなり、保形性が低下し食塊が口腔内で粒子に飛散し嚥下には不適切となる。一方1.1重量%より多いとゲル強度が強くなりすぎて変形しにくく、食塊の咽頭通過が困難になり、また離水もしやすく嚥下には不適切となる。
【0021】
喫食温度が約10℃〜15℃の開始食から嚥下IIまではゲル化剤を粘度調整に使用するが、約10℃〜70℃まで喫食温度に幅のある嚥下IIIと移行食の粘度調整は、温度帯での偏りがでないよう、澱粉で調整することが好ましい。この場合、澱粉の添加量は嚥下IIIでは組成物全重量に対し1重量%〜3重量%、移行食では3重量%〜5重量%である。この場合、工場での大量生産になるため、高温における安定性や、機械的撹拌に対する耐性に優れた、レトルト加工に適した化工澱粉を使用することが好ましい。また、製品の長期保存中の物性の変化を防止するため、老化しにくいワキシーコーンスターチを原料としたものを選択することが好ましい。また、最終製品の味に影響を与えないよう考慮し、化工澱粉特有の酸臭も少ないものを選択することが好ましい。このような澱粉として、市販の澱粉(例えば、グリコ栄養食品(株)製の商品名「ケミスター420」)などを用いることができる。
嚥下IIIにおいても、発酵米ぬか・ウーロン茶など(水分補給用アイテム)は、加熱しての喫食は想定していないので、澱粉より付着性が少なく呑み込みの良いゲル化剤での粘度調整を行うことが好ましい。
【0022】
本発明において用いられる水としては、セラミック処理により還元力を持たせた水など健康に良好な水が好ましい。本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、訓練段階に応じて、粘性および弾性を付与するデンプン質食材を含むものであってもよい。
デンプン質食材としては、米、パン、ウドンなどのアルファ化デンプンを含む加工食品が好ましい。米の場合、微生物農法、天日乾燥米など健康に良好なものが好ましい。
【0023】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、訓練段階に応じて、発酵米ぬかを含むものであってもよい。また、本発明において、水の代わりに発酵米ぬか抽出液を含んでもよい。また、使用する水は、セラミック処理による還元力を持った水であることが好ましい。
発酵米ぬかとしては、例えば、特開2001−238664号公報に記載のものが適している。すなわち、攪拌した米ぬかに、1ミリリットル当たり10の8乗以上に培養した乳酸菌・酵母菌等の微生物を微細な霧状にして、含水率25〜32%まで吹き付け、十分に攪拌した後、25℃以上の温度を保つ発酵槽に引き込み、この引き込んだ原料を、発酵槽内で山盛りにして表面を木小手で叩き固めて、空気を断った後、不織布で覆い、更に外側をビニールシートで密閉被覆し、外側からの空気を完全に遮断して発酵させる所謂、空断発酵をさせ、米ぬか本来の持つ抗酸化物質・抗菌物質を引き出すと共に、内部温度が50℃になったところで、空気に触れた表面の好気状態部分を約5cm削り落として内部に入れる切り返しを行い、内部の嫌気状態部分を外側に出してかぶせて山盛りにする工程を経て、すべての原料を一度、嫌気状態の過程を通し後、山盛りをすべて崩し、広げて空気に触れさせ自然乾燥させる平盛り工程に移し、自然乾燥後は、60℃の機械乾燥で含水率10%以下まで落として発酵米ぬか製品を製造することができる。
還元水に対し4重量%の量の発酵米ぬかを濾布に入れ、釜の中の還元水に入れ、釜を加熱し、沸騰したら熱量を調整して煮立たないよう40分間煮出す。この際、灰汁はこまめに取り除く。加熱を止めた後、加熱中に蒸発した分の還元水を補給して出来高を調整した後、孔径1μmの濾過器で濾過したものを発酵米ぬか抽出液とすることができる。
【0024】
その他の食材として、例えば、畜肉、魚介類、野菜、果物、野菜エキス、濃縮果汁、肉エキス、魚介エキス、蛋白加水分解物、白米、米粉、砂糖、果糖、でん粉、小麦粉、還元水飴、清酒、ワイン、ガラスープ、チキンコンソメ、調整豆乳、豆腐、醤油、植物油脂、豆板醤、ラージャン、発酵米ぬか、カレー粉、香辛料、ウスターソース、トマトケチャップ、チャツネ、ウーロン茶エキス、デキストリン、ゲル化剤(キサンタンガム、ローカストビーンガム)、調味料(アミノ酸等)、着色料、甘味料、豆腐用凝固剤などを含んでもよい。
【0025】
ゲル化剤であるキサンタンガムとローカストビーンガムは予め粉体にて混合しておくことが望ましい。キサンタンガムとローカストビーンガムの分散剤にはデキストリンや上新粉などを用いることもできる。キサンタンガムとローカストビーンガムをエタノール溶液として予め混合して使用することもできるが、嚥下・咀嚼訓練食中にエタノールが残留するため好ましくない。
【0026】
素材の混合は市販のミキサー(例えば、(株)愛工舎製作所製の商品名「カッターミキサーS50」)を使用できる。ただし、大量生産時には、容量の大きなものに切り替えてもよい。回転数は、3000r.p.mおよび1500r.p.m(1分間の回転数)の2段式が好ましい。この場合、3000r.p.mはゲル形成時、および具材カッティング(小)時に使用する。ゲル化剤、特にローカストビーンガムは水に溶けにくく、ダマの残らない均一な物性にする為には、高速(3000r.p.m以上)での2分以上の回転が好ましい。1500r.p.mは具材カッティング(中)時に使用する。
【0027】
素材の混合中は真空処理を行うことが望ましい。ミキサー内の真空処理を行わずに、ミキシングを行った場合、ゲル溶液は空気を抱き込むため、その溶液を充填包装し、レトルト処理した場合、空気の大半は溶液と分離し、製品の表面に気泡を形成し、製品外観の悪化および食感や滑らかさの悪化により嚥下が困難になる。さらに製品内部に残った微小気泡によっても食感や滑らかさの悪化し嚥下が困難になる。したがってより滑らかで呑み込みがよく、見た目も良く食欲をそそる製品を作るには、ミキシング時の真空処理が望ましい。
【0028】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、tanδが0.01以上100以下の範囲にあることが好ましい。但し、tanδ=G’’/G’であり、G’は外部からの力のエネルギーの貯蔵に関する実数部で貯蔵弾性率であり、G’’は粘性によるエネルギー損失に関する虚数部で動的損失である。
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、G’が10Pa以上1000Pa以下でかつG”が5Pa以上1000Pa以下の範囲にあることが好ましい。
【0029】
tanδ(=G’’/G’)について以下に詳細に説明する。
食品に外力を与えると、それに対応する応力や変形も周期的に変化する。しかし、このときに変形と応力はずれて現れる。いま応力pとひずみeの間にフックの法則を適用すると、弾性率は複素数で表現された弾性率G*となる。
p=G*e (1)
式(1)中のG*を実数部と虚数部に分けて表すと、
G*=G’+iG’’ (2)
となる。このG*は、複素弾性率と呼ばれる。実数部G’は、エネルギーの貯蔵部に関する部分で貯蔵弾性率であり、虚数部G’’は、粘性によるエネルギー損失に関する部分で動的損失である。また、tanδ(=G’’/G’)は損失正接と呼ばれる。
【0030】
貯蔵弾性G’は食塊の硬さの指標となり、動的損失G’’は咽頭相を通過する食塊の軟らかさおよび食塊中の粒状物によるザラつきの指標となり、損失正接tanδは咽頭相を通過する食塊の状態、即ち「のどごし」の指標となる。
【0031】
(動的粘弾性の測定)サンプルの動的粘弾性測定法について説明する。動的粘弾性は、市販のソリキッドメーター(例えば、レオロジ社製MR−3ソリキッドメーター)を用いて測定することができる。すなわち、供試試料をプレート型ステージに載せ、コーン型プランジャー(コーン径3.096cm、コーン角1.989°)を一定の深さに挿入し、さらに振り角1.995°で0.1〜2.0Hzの周波数で回転(一定の振り角で左右方向に回転)させて外力を与えた時の応答から貯蔵弾性率(G’)、損失正接(tanδ=G”/G’)、動的粘性率(η’)を室温で測定することができる。
【0032】
また、動的粘弾性測定は、市販の測定装置(例えば、株式会社ユービーエム製の商品名「Rheosol−G1000」)を用いて測定することができる。この場合、気温20℃において、直径40mm、厚さ5mmに成形した供試試料を円盤形平面ステージに載せ、直径40mmの平面プランジャーをステージから4.5mmの距離になるまで接近させて試料をステージとプランジャー間に挟み込み、その状態でプランジャーを1.0Hzの角振動数で歪み率20%になる振り角度で回転振動させて外力を与えた時の応答から貯蔵弾性率G’、動的損失G”、損失正接tanδを測定することができる。
【0033】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食の提供方法は、キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成るゲル化剤を水に対し0.3乃至1.1重量%含む咀嚼・嚥下前段訓練食を10℃乃至15℃の範囲の喫食温度で提供する前段ステップと、可食範囲内で前記咀嚼・嚥下前段訓練食より粘性および弾性が増加し、粒状食材を含む咀嚼・嚥下後段訓練食を10℃乃至70℃の範囲の喫食温度で提供する後段ステップとを、含むことを特徴とする。
【0034】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食の提供方法では、例えば、5段階で咀嚼・嚥下訓練食を提供する。咀嚼・嚥下前段訓練食および咀嚼・嚥下後段訓練食としては、本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食が好ましい。前段ステップで咀嚼・嚥下前段訓練食を10℃乃至15℃の範囲の喫食温度で提供することにより、嚥下反射の誘発を促進し、咀嚼・嚥下の訓練効果を高めることができる。後段ステップで咀嚼・嚥下前段訓練食を10℃乃至70℃の範囲の喫食温度で提供することにより、快適な温度で喫食することができる。なお、後段ステップでは、季節などによる気温条件に応じて、喫食温度を10℃乃至70℃の範囲で変動させることが好ましく、例えば、冬季には高めの温度で、夏季には低めの温度に設定することが好ましい。後段ステップの喫食温度は、一般的には40℃が好ましい。粒状食材は、周囲の食材に比較して形状を保って見える食材であり、例えば、粥の米粒などから成る。
【0035】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食の提供方法は、好適な一例を挙げれば、5段階で構成して、前段ステップに含まれる第1ステップで、重湯ゼリー状の咀嚼・嚥下訓練食を提供し、前段ステップに含まれる第2ステップで、第1ステップより濃度を高めた咀嚼・嚥下訓練食を提供し、後段ステップに含まれる第3ステップで、少量の固形部分とほぼ均質なゲル状部分から成り、第2ステップの咀嚼・嚥下訓練食に比べて粘性を抑えてわずかに硬さを出現した3分粥に対応する咀嚼・嚥下訓練食を提供し、後段ステップに含まれる第4ステップで、流動部分の中に均一固形になるよう調整した5分粥に対応する咀嚼・嚥下訓練食を提供し、後段ステップに含まれる第5ステップで、流動部分の中に均一固形になるよう調整した全粥に対応する咀嚼・嚥下訓練食を提供することにより構成される。各ステップは、ハードルを低くし、喫食訓練が苦痛にならずに、励みになるよう工夫してあることが好ましい。
【0036】
図1に、咀嚼・嚥下訓練食の粘性と弾性の割合に関するtanδと5段階で構成した各ステップとの関係を示す。
図1に示すように、白粥の場合、デンプン水溶液は濃度が増加していくと、弾性(硬さ)(G)の増加よりも粘性(F)の増加の傾向が大きい。従って、円の平均はステップ3あたりから粘性増加が出現する。しかし、弾性・硬さ(G’)も増加しているため、咀嚼・嚥下訓練食の粘・弾性がG’とtanδの両側面からテクスチャー(舌ざわり・のどごし)に影響を与える。本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、このように、三次元的な構成を有することが好ましい。
【0037】
図1に示すように、咀嚼・嚥下訓練食の粘度は全て異なるため,キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比・濃度を変え、図1に示される楕円内に入るように調整することが好ましい。なお、咀嚼・嚥下訓練食には、楕円の範囲内で種々の食材を用いることができる。ステップ1および2の咀嚼・嚥下前段訓練食は、摂食しやすいようにカップ状の容器に収容することが好ましく、ステップ3乃至5の咀嚼・嚥下前段訓練食は加熱して摂取できるようパウチ状の容器に収容することが好ましい。また、ステップ1および2の咀嚼・嚥下前段訓練食は、嚥下反射の誘発が弱い嚥下困難者に対して、咽頭をスムーズに通過するために、食塊が均質性であることが望ましい。ステップ3乃至5の咀嚼・嚥下前段訓練食は、不均質であって、咀嚼・嚥下訓練を目的として加工し、tanδが増加(食塊の粘度が増加)するとともに、tanδが減少(食塊の硬さが増加)する性質を有することが望ましい。特に、ステップ3の咀嚼・嚥下前段訓練食は、均質性と不均質性の両者の性質を考慮するとき,粘度の影響がゲル状態に影響しないように加工することが望ましく、まだ嚥下し易いゲル状態に加工する必要がある。
【0038】
5段階のステップでは、ステップの段階的進行につれて、量、粒子の大きさおよび硬さが増加するように製造され、咀嚼回数が増加するようになっている。それぞれのステップは、咀嚼回数内で固形部分が均質な食塊になるように加熱などの処理によって調整される。ステップ3乃至5の咀嚼・嚥下訓練食は、デンプン質以外の食材、例えば、畜肉、鳥肉、魚肉、野菜などを含んでもよい。
【0039】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食の提供方法は、咀嚼・嚥下困難度の最も重い段階から最も軽い段階までを5段階に分けたとき、咀嚼・嚥下困難度の最も重い第1段階においてはG’が50Pa以上200Pa以下でかつG”が5Pa以上20Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜15℃で提供し、第2段階においてはG’が50Pa以上300Pa以下でかつG”が5Pa以上80Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜15℃で提供し、第3段階においてはG’が50Pa以上300Pa以下でかつG”が5Pa以上120Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜15℃で提供し、第4段階においてはG’が50Pa以上1000Pa以下でかつG”が5Pa以上1000Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜70℃で提供し、第5段階においては前記第4段階の咀嚼・嚥下訓練食より粘性および弾性が大きい範囲で柔らかく調整した食品を提供することを特徴とする。第1段階乃至第3段階の咀嚼・嚥下訓練食は、キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成るゲル化剤を水に対し0.3乃至1.1重量%含むことを特徴とする本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食から成ることが好ましい。
【0040】
この咀嚼・嚥下訓練食の提供方法において、咀嚼・嚥下困難度の最も重い第1段階は、開始食段階となる。第5段階は健常人への移行食段階となる。第5段階で、「咀嚼・嚥下訓練食以外の食品を提供する」場合、健常人の食品よりやや柔らかい食品を喫食温度20℃〜70℃で提供することが好ましい。
【0041】
第1段階から第5段階までの移行時期は、例えば、所定の量で1日に3食を提供し、2日で6回連続して30分以内で食べられるようになった時点とすることにより決定することが好ましい。この場合、所定の量は、一例では、第1段階および第2段階では70g、第3段階および第4段階では100g、第5段階では200gである。
【0042】
なお、咀嚼・嚥下訓練食としては、評価が重要であり、<主観的評価>としては、(1)食物の認知(色・外観)、(2)咀嚼と食塊形成、(3)香,味,温度,咀嚼音、(4)テクスチャー、(5)奥舌から咽頭への送り込み、(6)咽頭通過を考慮することが望ましく、<客観的評価>としては、(1)官能検査と物理測定の関連性と品質管理、(2)種々の需要に対する供給体制の確立、(3)迅速な測定法の確立を考慮することが望ましい。
図2に、白粥の特性曲線を示す。
【0043】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、例えば、白がゆ,海鮮がゆ,中華がゆ,かぼちゃがゆなどの主食や、とん汁,麻婆豆腐,クリームシチュー、カレー、コンソメ野菜などの副食として提供され、例えば、発酵米ぬか,ウーロン茶,梨などとともに提供することができる。
【0044】
また、本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食は、例えば、白がゆ、海鮮がゆ、中華がゆ、かぼちゃがゆなどのでんぷん質食品や、とん汁、コンソメ野菜などの汁物、麻婆豆腐、クリームシチュー、カレーなどのペースト状食品、および発酵米ぬかエキス、ウーロン茶、グレープジュース、梨ジュースなどの飲料へ、キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成るゲル化剤を水分に対し0.3乃至1.1重量%含むよう配合した食品として提供することもできる。
【0045】
本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食の水分含量は、90重量%以上99.7重量%以下が望ましい。水分が90重量%より少ない場合、固形分の増加により食感のザラつきや付着性が増加し、嚥下が困難になる。また水分が99.7重量%を越えるとゲル化剤が少なくなるためにゲル強度が弱くなり、保形性が低下し食塊が口腔内で粒子に飛散し嚥下には不適切となる。
【0046】
なお、本発明に係る咀嚼・嚥下訓練食の製造方法は、キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成るゲル化剤を水に対し0.3乃至1.1重量%溶解させることを特徴とする。さらに、粘性および弾性を付与するデンプン質食材を混合する工程を含んでもよい。また、発酵米ぬか抽出液を混合する工程を含んでもよい。tanδが0.01以上100以下の範囲になるよう調整する工程を含んでもよい。但し、前述のとおり、tanδ=G”/G’であり、G’は外部からの力のエネルギーの貯蔵に関する実数部で貯蔵弾性率であり、G”は粘性によるエネルギー損失に関する虚数部で動的損失である。また、G’が10Pa以上1000Pa以下でかつG”が5Pa以上1000Pa以下の範囲になるよう調整する工程を含んでもよい。G’は外部からの力のエネルギーの貯蔵に関する実数部で貯蔵弾性率であり、G”は粘性によるエネルギー損失に関する虚数部で動的損失である。
【0047】
本発明に係る水に対し0.3乃至1.1重量%溶解させるための咀嚼・嚥下訓練食用粉体は、キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成ることを特徴とする。その製造方法は、キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合することを特徴とする。
【0048】
【発明の実施の形態】
以下、図1を参照して、本発明の実施の形態の咀嚼・嚥下訓練食について説明する。
その咀嚼・嚥下訓練食は、三次元的な考察から、白粥を基準にして種々の主食および副食について開発・生産した介護訓練食である。
【0049】
介護訓練食は種々の食材の混合系である。従って、すべての介護訓練食は粘度など、物性が異なっている。多種類の介護訓練食を工業的に生産する場合、食材の採取時期や場所、製造条件などによって介護訓練食の性質が変化するため客観的な機器測定方法が品質管理に必要である。多種類の介護訓練食を工業的に生産する場合、迅速で簡便な物理的測定方法が品質管理に必要不可欠である。その測定方法が動的粘弾性であると考えられる。
【0050】
介護訓練食の分類には、ステップ1の基準およびステップ間の段階的な移行などをどのように設定するかによって加工方法が決定する。つばめプロジェクトにおける介護訓練食生産の特徴は白粥を基準にして、「三次元的に重湯ゲル1(ステップ1)から全粥(ステップ5)まで」を分類していることである。
白粥のような澱粉水溶液(ゾル状態)の動的粘弾性G’は硬さを示すとみられる。一方、動的損失G”はやわらかさを示すとみられる。白粥濃度が増加するとG’は増大する。
【0051】
一般に、G’>G”の場合、食塊は一定の形を保持する。しかし、G”>G’の場合、流動性が出現する。従って、tanδ(=G”/G’)は1よりも大きくなるにつれて流動性が増す。
このようなゾル状態の場合は粘着性が高い(上述したように粘着性と粘度の関連性は複雑である)。付着性の高い白粥の場合、嚥下反射の誘発が弱い人(嚥下の障害の強い人)には適さない。嚥下反射の誘発が弱い人は咀嚼も困難な場合が多い。そのため、食塊は直接奥舌から咽頭に送り込まれる。食塊の付着性(ベタ付き)が高い場合、スムーズに咽頭を通過し易いように、弱いゲル(weak gelと呼ぶ)状態にすることが必要不可欠である。
【0052】
食塊が弱いゲル(weak gel)の場合、小さな応力に対して大変形をして咽頭内を0.5秒以内でスムーズに通過することができる。
その状態における食塊は親水性に富んでいる場合、食塊の表面が水の膜を形成しやすいため、より咽頭の通過をスムーズにするとみられる。
つまり、ゼラチンゲルに類似した性質である。ゼラチンゲルが嚥下に適する(喉越しがよい)特性は沢山の側鎖基による保水力が大きいことで一層嚥下をスムーズにしている。
【0053】
ゼラチン以外のゲル形成物質はほとんどが植物性の多糖類である。これらの多糖類分子類は分子中にピラノース環などを含むヘテロポリサッカリドである。そのため、分子鎖間の凝集力は分子構造に影響するためゼラチンと同じ性質の均質ゲルを作製することが難しい。従って、物理的手法でゲルの性質をゼラチンゲルに類似するように調整しなければならない。それには、それぞれ多糖類の混合比や濃度などを調整する以外に方法はない。ここでは、キサンタンガムとローカストビーンガム混合系(Xan−Loc)試料について、混合比と濃度を変えてゲルの性質を調整する。ただし、ゲル濃度0−1.0%の範囲である。これらの植物性のゲル状基盤の特徴はゼラチンよりも高温度で食塊を調整することができる。
【0054】
工業的に生産される介護訓練食は保存食である。JASおよび食品衛生法にしたがって、食品の無菌状態(食品中に発育し得る微生物が陰性でなければならない)を長期間保持しなければならない。従って、工業的に製造される介護訓練食はレトルト食品であるためゼラチンをゲル状基盤として使用することができない。
【0055】
ステップ1のゲル状基盤は1%ゼラチン重湯ゲルにおける10℃−15℃の温度範囲(この温度範囲内では粘弾性はほとんど変わらない)のtanδを基準に設定する(ゼラチンとXan−Loc混合系では、分子構造および側鎖基の量や種類が異なるためG’の調整は困難である。tanδは同じ値でもゲルの硬さに差異がみられるところにそれぞれのゲルの特性が出現する)。Xan−Loc混合系ゲル(レトルトによる高温殺菌、ゲル化剤の構造や保水力の差異など)によって、1%ゼラチンとほぼ同じtanδの値に調整したが、G’の値はやや高い値を示す。ステップ2は白粥の濃度の増加に影響してG”/G’の値は僅かに増大する。
【0056】
従って、ステップ1およびステップ2の特性は(G’がG”より僅かに大きいため食塊はweak gelの状態にある)ベタ付き(付着性)、ぱさつき(食塊粒子の飛散)および離水(食塊の相分離状態)が生じない。ステップ1の性質をどのように設定するかによってステップ2以降の性質が決まる。
ステップ1およびステップ2はほとんど咀嚼ができない嚥下障害の強い人に適する均質性ゲルである。
【0057】
第一に、ステップ1からステップ2への均質性ゲルに対する軸(第一の軸とする)が形成される(図1参照)。第一の軸は、食塊の性質が重度の嚥下困難者に適するように加工されている。従って、第一の軸に対する『粘弾性の値や角度はほぼ不変である』。
【0058】
第二に、咀嚼・嚥下訓練食としてステップ3からステップ5への不均質性ゲルに対する軸(第二の軸とする)が形成される(図1参照)。第二の軸は咀嚼訓練による唾液量や脳に入る神経の刺激などの改善である。これらは不均質性ゲルのため、加工条件やレトルト前後などに粘弾性が影響される。従って、咀嚼過程におけるステップ間の第二の軸に対する『粘弾性の値や角度は基準物質の性質に応じて自由に設定できる』のが特徴である。それゆえに、介護訓練食中の食材の種類、性質や加工条件などに影響するためステップのtanδの範囲を設定しておく。
例えば、パンや麺類を基準に設定した場合、それぞれの介護訓練食によってtanδの値や咀嚼・嚥下軸の方向が変わる。また、咀嚼過程を重視して介護訓練食を固体(柔らかく加工しておく)で加工することも可能である。
【0059】
第三に、ステップ1からステップ5までの白粥の性質に類似したそれぞれの副食や水分補給などの軸(第三の軸とする)が形成される(図1参照)。
ステップ3からステップ5の間は第二の軸が可変であるため、それぞれのステップの軸に対する基準物質の設定の仕方によって楕円の大きさや値を自由に選択できる。楕円が大きくなると、ステップ間のハードルが高くなる。その場合、食塊が咽頭に詰まるなどの危険性が生じたり、段階的な移行に遅延が生じたりするため、ステップ3からステップ5までの間に1つステップを増加することも可能である。つまりステップ3からステップ5の間における第三の軸は『ステップ間の移行の難易によって自由に設定できる』。
【0060】
しかし、3つの軸は相互に深く関連している。図1の中の楕円は白粥を基準にして副食などがこの範囲に入るよう加工されている。楕円は加工条件で変化するため、ここでは縦軸の数値は書かない。図1の中のステップに対する楕円の大きさの変化はステップ間の移行を理解するための比喩である。
介護訓練食は典型的な粘弾性食品である。
食品工業的に大量生産する場合は客観的評価が必要不可欠である。物理的測定として動的粘弾性測定が迅速で再現性のよい値が得られる。
測定条件:周波数1Hz、測定温度15℃(なお、常温における温度変化に動的弾性率G’や損失正接tanδにほとんど差異がない)。
【0061】
<特徴1>ステップ1およびステップ2は均質系ゲル(重度の嚥下障害者、咀嚼ができないため咽頭を通過し易いように作られている)。
ステップ1,2の咀嚼・嚥下訓練食は、動的弾性率G’および損失正接tanδが表1に示す範囲にある。
【表1】
【0062】
<特徴2>ステップ3からステップ5は不均質系ゲル。咀嚼訓練が主目的のため、基準物質は自由に設定できる。
ステップ3,4,5の咀嚼・嚥下訓練食は、動的弾性率G’および損失正接tanδが表2に示す範囲にある。
【表2】
【0063】
<特徴3>硬さや柔らかさを増すと、ステップ間の楕円の大きさが増大する。つまり危険性が増加し、段階的な進行が遅延する。この場合はステップをひとつ増加する。
【0064】
【実施例1】
5段階のステップで提供される咀嚼・嚥下訓練食が、それぞれ以下の工程で製造される。
【0065】
(ステップ1の咀嚼・嚥下訓練食)
キサンタンガム0.4g(乾燥重量)に対しローカストビーンガム0.3g(乾燥重量)を混合して成るゲル化剤を、95℃の水66gに対し溶解させ、さらにそれらの全重量に対し4重量%の上新粉を溶解させて容器に流し込み、115℃で40分間レトルト処理し、ステップ1の咀嚼・嚥下訓練食を製造した。こうして製造された咀嚼・嚥下訓練食は、tanδが0.6乃至0.9の範囲にあり、G’×102/Paが0.1乃至0.7の範囲にあった。
【0066】
この咀嚼・嚥下訓練食70gを咀嚼・嚥下機能低下者に30分以内で食べ終わるようスプーンで食べさせた。咀嚼・嚥下機能低下者には、唾液をやっと飲み込める程度の者が選ばれた。1日に3食を提供し、2日で6回連続して30分以内で食べられるようになった時点でステップ2に移行した。
【0067】
(ステップ2の咀嚼・嚥下訓練食)
キサンタンガム0.4g(乾燥重量)に対しローカストビーンガム0.3g(乾燥重量)を混合して成るゲル化剤を、95℃の水62gに対し溶解させ、さらにそれらの全重量に対し6重量%の上新粉を溶解させて容器に流し込み、115℃で40分間レトルト処理し、ステップ2の咀嚼・嚥下訓練食を製造した。こうして製造された咀嚼・嚥下訓練食は、tanδが.0.5乃至1.1の範囲にあり、G’×102/Paが0.2乃至2.0の範囲にあった。
【0068】
この咀嚼・嚥下訓練食70gを咀嚼・嚥下機能低下者に30分以内で食べ終わるようスプーンで食べさせた。1日に3食を提供し、2日で6回連続して30分以内で食べられるようになった時点でステップ3に移行した。
【0069】
(ステップ3の咀嚼・嚥下訓練食)
キサンタンガム0.4g(乾燥重量)に対しローカストビーンガム0.2g(乾燥重量)を混合して成るゲル化剤を、95℃の水100gに対し溶解させ、さらにそれらの全重量に対し6重量%の3分粥(固形部1.8重量%)を混合して容器に流し込み、115℃で40分間レトルト処理し、ステップ3の咀嚼・嚥下訓練食を製造した。こうして製造された咀嚼・嚥下訓練食は、tanδが.0.3乃至2の範囲にあり、G’×102/Paが0.4乃至4の範囲にあった。
【0070】
この咀嚼・嚥下訓練食100gを咀嚼・嚥下機能低下者に30分以内で食べ終わるようスプーンで食べさせた。1日に3食を提供し、2日で6回連続して30分以内で食べられるようになった時点でステップ4に移行した。
【0071】
(ステップ4の咀嚼・嚥下訓練食)
キサンタンガム0.2g(乾燥重量)に対しローカストビーンガム0.1g(乾燥重量)を混合して成るゲル化剤を、95℃の水100gに対し溶解させ、さらにそれらの全重量に対し9重量%の5分粥(固形部4.5重量%)を混合して容器に流し込み、115℃で40分間レトルト処理し、ステップ4の咀嚼・嚥下訓練食を製造した。こうして製造された咀嚼・嚥下訓練食は、tanδが0.03乃至20の範囲にあり、G’×102/Paが1.0乃至50の範囲にあった。
【0072】
この咀嚼・嚥下訓練食100gを咀嚼・嚥下機能低下者に30分以内で食べ終わるようスプーンで食べさせた。1日に3食を提供し、2日で6回連続して30分以内で食べられるようになった時点でステップ5に移行した。
【0073】
(ステップ5の咀嚼・嚥下訓練食)
水200gに対し18重量%の全粥(固形部18重量%)を混合して容器に流し込み、115℃で40分間レトルト処理し、ステップ5の咀嚼・嚥下訓練食を製造した。こうして製造された咀嚼・嚥下訓練食は、tanδが0.01乃至100の範囲にあり、G’×102/Paが2.0乃至100の範囲にあった。
【0074】
この咀嚼・嚥下訓練食200gを咀嚼・嚥下機能低下者に30分以内で食べ終わるようスプーンで食べさせた。1日に3食を提供し、2日で6回連続して30分以内で食べられるようになった時点で常食に移行し、リハビリテーションを終了した。
【0075】
【実施例2】
(開始食(第1段階):発酵米ぬかの例)
カッターミキサーに、発酵米ぬか抽出液(97.9%)、果糖(0.39%)、ステビア(0.01%)を投入する。なお、本明細書において、単に「%」と示すときは、重量%を示す。発酵米ぬか抽出液は、前述の「課題を解決するための手段」に示す方法で製造したものを用いる。ついで、キサンタンガム(0.49%)とローカストビーンガム(0.21%)とデキストリン(1%)を予混合したものを投入する。ミキサーを密閉し、ミキサー内の空気を脱気する。高速(3000r.p.m)で1分間撹拌した後、ミキサーの蓋を開け、ミキサーの内壁などにこびりついた溶け残りのゲル化剤を専用のヘラで削ぎ落とす。再びミキサーを密閉し、脱気する。高速(3000r.p.m)でさらに1分間撹拌し、溶け残りのゲル化剤を完全に溶かして終了する。こうして製造された咀嚼・嚥下訓練食は、G’が50Pa乃至200Paの範囲にあり、G”が5Pa乃至20Paの範囲にあった。
※開始食では滑らかな喉ごしが要求される為、繊維や非水溶性の食材は、使用しない。
【0076】
(嚥下I(第2段階):カレーの例)
カッターミキサーに、香辛料(0・1%)、砂糖(2%)、肉エキス(1.2%)、魚介エキス(0.3%)、野菜エキス(0.4%)、果汁(0.8%)、発酵米ぬか抽出液(5%)、ウスターソース(0.2%)、醤油(0.5%)、調味料(アミノ酸等)(0.3%)、還元水(87.5%)を投入する。ついで、キサンタンガム(0.49%)とローカストビーンガム(0.21%)とデキストリン(1%)を予混合したものを投入する。ミキサーを密閉し、ミキサー内の空気を脱気する。高速(3000r.p.m)で1分間撹拌した後、ミキサーの蓋を開け、ミキサーの内壁などにこびりついた溶け残りのゲル化剤を専用のヘラで削ぎ落とす。再びミキサーを密閉し、脱気する。高速(3000r.p.m)でさらに1分間撹拌し、溶け残りのゲル化剤を完全に溶かして終了する。こうして製造された咀嚼・嚥下訓練食は、G’が50Pa乃至300Paの範囲にあり、G”が5Pa乃至80Paの範囲にあった。
※嚥下食Iでも、滑らかな喉ごしが要求される為、繊維や非水溶性の食材は、なるべく使用しない。
【0077】
(嚥下II(第3段階):麻婆豆腐の例)
カッターミキサーに、ネギピューレ(1%)と還元水(10%)を投入する。ミキサーを密閉し、ミキサー内の空気を脱気する。高速(3000r.p.m)で1分間撹拌した後、ミキサーの蓋を開ける。ついで、砂糖(1.5%)、醤油(2.5%)、香味油(0.5%)、がらスープ(0.3%)、発酵米ぬか抽出液(5%)、豆腐(10%)、調味料(アミノ酸等)(0.3%)、カラメル色素(0.02%)、還元水(67.18%)を投入する。ついで、キサンタンガム(0.49%)とローカストビーンガム(0.21%)とデキストリン(1%)を予混合したものを投入する。ミキサーを密閉し、脱気する。高速(3000r.p.m)で1分間撹拌した後、ミキサーの蓋を開け、ミキサーの内壁などにこびりついた溶け残りのゲル化剤を専用のヘラで削ぎ落とす。再びミキサーを密閉し、脱気する。高速(3000r.p.m)でさらに1分間撹拌し、溶け残りのゲル化剤を完全に溶かして終了する。こうして製造された咀嚼・嚥下訓練食は、G’が50Pa乃至300Paの範囲にあり、G”が5Pa乃至120Paの範囲にあった。
※嚥下食IIでは、若干、繊維や非水溶性の食材を使用し、滑らかな喉ごしの中にザラつきを与える。
【0078】
(嚥下III(第4段階):コンソメ野菜の例)
釜に、チキンコンソメ(1.4%)、還元水飴(0.9%)、ワイン(0.9%)、野菜エキス(0.3%)、蛋白加水分解物(0.3%)、発酵米ぬか(0.2%)、でん粉(2.6%)、香辛料(0.01%)を投入する。次いで、予め還元水でブランチングし、カッターミキサーでピューレ状にした野菜(48.0%)を投入する。還元水(48.0%)を加え90℃まで昇温し終了。こうして製造された咀嚼・嚥下訓練食は、G’が10Pa乃至1000Paの範囲にあり、G”が5Pa乃至1000Paの範囲にあった。
※嚥下食IIIは、ピューレ状にし、トロミをつけて飲み込みやすくする。
【0079】
(嚥下III(第4段階):ウーロン茶の例)
カッターミキサーにウーロン茶エキス(0.2%)と還元水(98.6%)を投入する。次いで、キサンタンガム(0.35%)、ローカストビーンガム(0.15%)、デキストリン(0.75%)を予混合したものを投入する。ミキサーを密閉し、ミキサー内の空気を脱気する。高速(3000r.p.m)で1分間撹拌した後、蓋を開けミキサーの内壁などにこびりついた溶け残りのゲル化剤を専用のヘラで削ぎ落とす。再びミキサーを密閉し、脱気する。高速(3000r.p.m)でさらに1分間撹拌し、溶け残りのゲル化剤を完全に溶かして終了とする。こうして製造された咀嚼・嚥下訓練食は、G’が10Pa乃至1000Paの範囲にあり、G”が5Pa乃至1000Paの範囲にあった。
【0080】
(移行食(第5段階):白がゆの例)
白米を還元水で洗米し、1晩還元水に浸漬しておく。脱水した白米(10.8%)と還元水(89.2%)をレトルト用包材に充填する。
※移行食は、キザミにはせず一口大の大きさにし、軟らかい食材を使用する。
固形食材比率は
開始食(第1段階):ほぼ0
嚥下食I(第2段階):ほぼ0(お粥は米粉1%)
嚥下食II(第3段階):8〜11%(お粥は米粉2%)
嚥下食III(第4段階):21〜42%(お粥は米8%)
移行食(第5段階):24〜42%(お粥は米8%)
第1段階から第5段階の製品エリアを、図3に示す。開始食は、平らなスプーンで縦の断面を入れ、スライス型(約1.5×2×0.3cm)(スライス法)で取り出したとき、咽頭部をスムーズに通過するものである。嚥下食Iは粘膜への付着性が低くスライス法で「べたつき」、「ざらつき」のない物性である。嚥下食IIは嚥下食Iより粘膜の付着性が高く、「べたつき」、「ざらつき」が多少ある物性である。嚥下食IIIはピューレ状のものを追加し、流動部分が均一になる様に調整したものである。移行食はキザミより一口大とし、形のあるものに調整したものである。
【0081】
さらに、上記咀嚼・嚥下訓練食の提供方法として、咀嚼・嚥下訓練が苦痛を伴わずに行える好適な一例として、咀嚼・嚥下困難度の重い方から前段ステップをさらに開始食、嚥下I、嚥下IIの3段階、後段ステップを嚥下III、移行食の2段階に構成した提供方法を試みた。
さらに詳しくは、咀嚼・嚥下困難度の最も重い開始食段階においてはG’が50Pa以上200Pa以下でかつG”が5Pa以上20Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜15℃で提供し、嚥下I段階においてはG’が50Pa以上300Pa以下でかつG”が5Pa以上80Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜15℃で提供し、嚥下II段階においてはG’が50Pa以上300Pa以下でかつG”が5Pa以上120Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜15℃で提供する。さらに嚥下III段階においてはG’が10Pa以上1000Pa以下でかつG”が5Pa以上1000Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜70℃で提供し、移行食段階では健常人よりやや柔らかい食品を喫食温度10℃〜70℃で提供し、リハビリテーションを終了した。リハビリテーションの結果は良好であった。
【0082】
本発明は、上記実施例等に限定されるものではなく、特許請求の範囲内で種々の実施例が可能である。
【0083】
【発明の効果】
本発明によれば、咀嚼・嚥下機能低下者に食事に関するリハビリテーションを行い、その食事を通常の健常者の食事に近づけるのに適した咀嚼・嚥下訓練食およびその提供方法を提供することができる。これにより、咀嚼・嚥下機能低下者の寝たきり状態の防止、リハビリテーションの促進、介護者の負担の軽減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】咀嚼・嚥下訓練食の粘性と弾性の割合に関するtanδと5段階で構成した各ステップとの関係を示すグラフである。
【図2】白粥の特性曲線を示すグラフである。
【図3】咀嚼・嚥下訓練食の弾性・粘性から見た第1段階乃至第5段階の製品エリアを示すグラフである。
Claims (15)
- キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成るゲル化剤を水に対し0.3乃至1.1重量%含むことを特徴とする咀嚼・嚥下訓練食。
- 粘性および弾性を付与するデンプン質食材を含むことを特徴とする請求項1記載の咀嚼・嚥下訓練食。
- 発酵米ぬかを含むことを特徴とする請求項1または2記載の咀嚼・嚥下訓練食。
- 水の代わりに発酵米ぬか抽出液を含むことを特徴とする請求項1または2記載の咀嚼・嚥下訓練食。
- tanδが0.01以上100以下の範囲にあることを特徴とする請求項1、2、3または4記載の咀嚼・嚥下訓練食。但し、tanδ=G”/G’であり、G’は外部からの力のエネルギーの貯蔵に関する実数部で貯蔵弾性率であり、G”は粘性によるエネルギー損失に関する虚数部で動的損失である。
- G’が10Pa以上1000Pa以下でかつG”が5Pa以上1000Pa以下の範囲にあることを特徴とする請求項1,2、3、4または5記載の咀嚼・嚥下訓練食。但し、G’は外部からの力のエネルギーの貯蔵に関する実数部で貯蔵弾性率であり、G”は粘性によるエネルギー損失に関する虚数部で動的損失である。
- キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成るゲル化剤を水に対し0.3乃至1.1重量%溶解させることを特徴とする咀嚼・嚥下訓練食の製造方法。
- さらに、粘性および弾性を付与するデンプン質食材を混合する工程を含むことを特徴とする請求7記載の咀嚼・嚥下訓練食の製造方法。
- さらに、発酵米ぬか抽出液を混合する工程を含むことを特徴とする請求項7または8記載の咀嚼・嚥下訓練食の製造方法。
- tanδが0.01以上100以下の範囲になるよう調整する工程を含むことを特徴とする請求項7、8または9記載の咀嚼・嚥下訓練食の製造方法。但し、tanδ=G”/G’であり、G’は外部からの力のエネルギーの貯蔵に関する実数部で貯蔵弾性率であり、G”は粘性によるエネルギー損失に関する虚数部で動的損失である。
- G’が10Pa以上1000Pa以下でかつG”が5Pa以上1000Pa以下の範囲になるよう調整する工程を含むことを特徴とする請求項7,8,9または10記載の咀嚼・嚥下訓練食の製造方法。但し、G’は外部からの力のエネルギーの貯蔵に関する実数部で貯蔵弾性率であり、G”は粘性によるエネルギー損失に関する虚数部で動的損失である。
- キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成り、水に対し0.3乃至1.1重量%溶解させるための咀嚼・嚥下訓練食用粉体。
- キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合することを特徴とする咀嚼・嚥下訓練食用粉体の製造方法。
- キサンタンガムに対しローカストビーンガムを9:1乃至6:4の乾燥重量比で混合して成るゲル化剤を水に対し0.3乃至1.1重量%含む咀嚼・嚥下前段訓練食を10℃乃至15℃の範囲の喫食温度で提供する前段ステップと、
可食範囲内で前記咀嚼・嚥下前段訓練食より粘性および弾性が増加し、粒状食材を含む咀嚼・嚥下後段訓練食を10℃乃至70℃の範囲の喫食温度で提供する後段ステップとを、
含むことを特徴とする咀嚼・嚥下訓練食の提供方法。 - 咀嚼・嚥下困難度の最も重い段階から最も軽い段階までを5段階に分けたとき、咀嚼・嚥下困難度の最も重い第1段階においてはG’が50Pa以上200Pa以下でかつG”が5Pa以上20Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜15℃で提供し、第2段階においてはG’が50Pa以上300Pa以下でかつG”が5Pa以上80Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜15℃で提供し、第3段階においてはG’が50Pa以上300Pa以下でかつG”が5Pa以上120Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜15℃で提供し、第4段階においてはG’が50Pa以上1000Pa以下でかつG”が5Pa以上1000Pa以下の咀嚼・嚥下訓練食を喫食温度10℃〜70℃で提供し、第5段階においては前記第4段階の咀嚼・嚥下訓練食より粘性および弾性が大きい範囲で柔らかく調整した食品を提供することを特徴とする咀嚼・嚥下訓練食の提供方法。
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