JP2007252341A - 粉末嚥下補助食品 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、どのような嚥下障害者にも栄養バランスのとれたトロミ状の嚥下訓練食の献立が可能となる粉末嚥下補助食品を提供することである。
【解決手段】キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比を4:6乃至2:8の範囲で、混合ゲル化剤の濃度が粉末嚥下補助食品の全重量に対して、0.6重量%から0.8重量%であるゲル形成能を持つ増粘多糖類とデキストリンから粉末嚥下補助食品を作製した。
【選択図】図1
【解決手段】キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比を4:6乃至2:8の範囲で、混合ゲル化剤の濃度が粉末嚥下補助食品の全重量に対して、0.6重量%から0.8重量%であるゲル形成能を持つ増粘多糖類とデキストリンから粉末嚥下補助食品を作製した。
【選択図】図1
Description
本発明は、粉末嚥下補助食品に関するものである。
粉末嚥下補助食品は、ほとんどがデキストリンと増粘多糖類とから作製される。多くの嚥下補助食品が市販されている。嚥下に望ましい食塊の性質は咽頭内を0.5秒で通過することが不可欠である。その条件は弱いゲル状態であることが長期間における官能試験から明らかにされている。食品は、糖質、たんぱく質、脂質、ミネラル、ビタミンなどの栄養素を含む非常に複雑な混合系である。その上、ほとんどの食品は濁度を持っている。複雑な食品混合系に対して、単独で溶解する増粘多糖類は存在しない。これらが障害となっているため、市販の粉末嚥下補助食品の増粘多糖類はキサンタンガムが最も多く使用されている。キサンタンガムは水溶液で溶解すると、約30秒で粘度の急激な立ち上がりが起こる特性を持っているが、ミネラル、脂質、たんぱく質などには溶解度が著しく低下するか、あるいは溶解しない場合がある。従って、調理・加工のできる均質性のトロミ状嚥下食は限られている。トロミ状嚥下食はゲル状嚥下食と比較して貯蔵弾性率G´が低いため、主として、水分補給用の均質性嚥下食が多い。
食品のうち、牛乳や醤油などの液状食品、あめ、せんべい等の固形食品を除く、ほとんどの食品はゲル状態で供される。例えば、米飯や麺類、肉や魚、野菜等もすべてゲル状態で供されている。従って、これらを摂取すると、しばしば、口当たりがよいとか、歯ごたえよいとか、のど越しがよいというテクスチャー表現語が聴かされる。食品の感覚特性とは、人の五感で知覚できるものであり、食品の外観、色、味、香りやテクスチャーなどがあげられる。咀嚼する過程でテクスチャーが、総合的な食品の品質を評価しているといわれ、嚥下には食品のテクスチャーが必要不可欠である。テクスチャーとは目や口中の皮膚か筋肉感覚で知覚される食品の性質で、粗さ、滑らかさ、べた付き等である。また、嚥下に望ましいゲル状食品は粘性成分(付着性を示す)と弾性成分(硬さを示す)を含有している。嚥下困難者の食品の貯蔵弾性率G´は、ほぼ104Paまでと言われている。現状では、市販の粉末嚥下補助食品が食品に適用できる範囲が限定されているため、嚥下に望ましいゲル状嚥下食の粘弾性を明確に分類できるところまでに至っていない。それ故、施設、病院や在宅などでは、しばしばトラブルが生じているのが現状である。
嚥下食品は保存食である。現在、市販されている嚥下食品はレトルト食品、冷凍食品および粉末嚥下補助食品である。レトルト食品や冷凍食品は一品商品であり、粉末嚥下補助食品に比べて高価である。現状においては、飲み込み易く、且つ広範囲の貯蔵弾性率G´が得られる粉末嚥下補助食品は開発されていない。そのために、広範なゲル状嚥下食の調理・加工が制限されている。トロミ状嚥下食は化学構造上において高弾性が得られず、さらに、トロミ状態は温度変化に影響され易い。その結果、トロミ状嚥下食は、ほとんどが水分補給用に使用されている。最近は、施設における食費の全額負担などで、安価な粉末嚥下補助食品を使用して調理・加工をする傾向が出てきている。嚥下障害の程度は、各人により異なることが特徴である。従って、どの障害者にも適するトロミ状およびゲル状嚥下食を開発しようと考えれば、トロミ状およびゲル状嚥下食は訓練食であるということが必須条件となる。どのような嚥下障害者にも適する粉末嚥下補助食品の開発における第一の条件は嚥下し易く、第二の条件は貯蔵弾性率G´が広範囲に変えられる。第三の条件は温度が5℃か55℃の範囲で貯蔵弾性率G´や嚥下し易い条件(tanδが0.1-1.0の範囲)が変わらないことであり、かつ、10℃付近で低温摂取できることである。また、この温度は嚥下誘発を起こし易くする寒冷刺激に対応している。また、55℃は自動販売機の保温温度付近であり、それ以下の温度で、暖かく摂食できる。それ故、上記の三条件を充足することにより、ゲル状嚥下食の種類は飛躍的に増加する。その結果、どのような障害者にも、栄養のバランスのとれたトロミ状およびゲル状嚥下訓練食の献立が可能になる。粉末嚥下補助食品は安価であり、操作も簡単なメリットがある。
ゲル形成能を持つ増粘多糖類の種類は限られており、一種類で嚥下に望ましいトロミ状およびゲル状の粉末嚥下補助食品を開発することは不可能である。上記の三つの条件を満たすためには、ゲル形成能をもつ増粘多糖類の「特性」を生かして2種類以上の混合系をつくると、「限定された混合比」において嚥下し易いゲル(またはトロミ)状の性質が得られる。これらの共通した特徴は、ゲル(またはゾル)の結晶性と非晶性に一定の均衡関係が存在することが明らかになった。結晶性に関して、2種類以上の混合系の性質は、3次元網目構造の架橋点が最も多い増粘多糖類の化学構造からくるゲル化機構に影響されるため、嚥下に望ましいゲルの結晶性と非晶性の一定の均衡関係は増粘多糖類の種類で混合比などが影響される。これらは、ほぼ限定された混合比にあり、その前後の比率への変化は、上記の一定の均衡関係がどちらかに移動するため、結晶性が増加すればゲルは硬くなり(貯蔵弾性率G´は増加する)、非晶性が増加すればゲルは柔らかくなる(貯蔵弾性率G´は低下する)。それ故に両者の一定の均衡関係は変化し、嚥下し難くなる。これらを総合して考慮すると、嚥下に望ましいゲル(またはトロミ)は、ゲル形成能を持つ増粘多糖類の化学構造の差異から2種類以上の混合比は限定されるといえる。また、粉末嚥下補助食品の一例として特開2004−344165号公報がある。
特開2004−344165号公報
本発明は、どのような嚥下障害者にも栄養バランスのとれたトロミ状の嚥下訓練食の献立が可能となる粉末嚥下補助食品を提供することである。この粉末嚥下補助食品は、基本的には、上記の背景技術で記載した粉末嚥下補助食品と同様に増粘多糖類とデキストリンとから作製される。
本発明では、キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比を4:6乃至2:8の範囲で、混合ゲル化剤濃度が粉末嚥下補助食品の全重量に対して、0.6重量%から0.8重量%であるゲル形成能を持つ増粘多糖類とデキストリンとから成り、前記混合ゲル化剤の変形率11%における力学正接損失tanδが0.1から1.0の範囲内にあり、貯蔵弾性率G´および力学正接損失tanδの周波数依存性の勾配は平行性が保たれ、前記混合ゲル化剤の温度が55℃付近である二次転移点以下の温度では、貯蔵弾性率G´および力学正接損失tanδの変化がないことを特徴とする粉末嚥下補助食品を作製した。
本発明では、上記の特徴を有する粉末嚥下補助食品において、さらに、前記混合ゲル化剤の変形率が11%の時、貯蔵弾性率G´は10Paから10
2
Paであることを特徴とする粉末嚥下補助食品を作製した。
本発明では、上記の特徴を有する粉末嚥下補助食品において、さらに、キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比を4:6、3:7、2:8の内のいずれかとしたことを特徴とする粉末嚥下補助食品を作製した。
キサンタンガムとローカストビーンガムの混合ゲル化剤は、混合ゲル化剤の温度が55℃付近を越えると徐々に貯蔵弾性率G´の減少を生じて来る。そして、55℃付近の温度を二次転移点と称し、二次転移点以下の温度では、貯蔵弾性率G´およびtanδの変化がほとんど生じない。それ故、本発明では、キサンタンガムとローカストビーンガムの混合ゲル化剤の温度が55℃付近である二次転移点以下の温度では、貯蔵弾性率G´およびtanδの変化がない混合ゲル化剤とデキストリンとから成る粉末嚥下補助食品を作製した。
ほとんどの食品はゲル状態で供される。食品が口に入れた後に香り、味および温度が知覚され、つづいて咀嚼する過程でテクスチャーが最後に食品の総合的な品質が評価される。食品のテクスチャーが物理的性質によって引き起こされる感覚特性でるから、官能試験のような主観的に評価されるテクスチャーを物理的手法による客観的な動的粘弾性測定で品質管理することが必要不可欠である。ゲル状嚥下食に周期的外力を与えると、それに対応する応力や変形も周期的に変化する。動的粘弾性測定からゲル状嚥下食の貯蔵弾性率G´、損失弾性率G"、力学正接損失tanδ(=G"/G´)および変形率が得られる。これらの値は嚥下のし易さに深く関連している。嚥下のし易さとは、食塊が複雑な咽頭内を0.5秒以内でスムーズに一瞬のうちに通過することができる性質である。食塊がゲル状態であることは、粘弾性物質でもある。これらの性質の測定法は再現性の高い動的粘弾性測定で行うことができる。一瞬のうちに咽頭内を通過するためには、食塊が大変形し易いことが不可欠である。いま、トロミ状嚥下食およびゲル状嚥下食に応力を加えていくと、徐々に変形が起こる。応力が小さいうちは、「応力とひずみ」は線形性が成立する。しかし、応力が大きくなってくると線形性が保持できなくなり、やがて変形率の急激な変化する点が出現する。この点の変形率における、貯蔵弾性率G´および力学的正接損失tanδから得られる知見は、食塊が大変形をして咽頭を通過する性質を推察するために不可欠である。それ故に、ゲル状嚥下食の動的粘弾性には、変形率を求めておくことが必要不可欠である。動的粘弾性測定から得られる貯蔵弾性率G´はひずみを加えても壊れない強い結合の数、即ち、強い結合の数密度(単位体積あたりの数)に比例する。損失弾性率G"はひずみを加えたときに壊れ、熱エネルギーになる弱い結合の数、即ち、弱い結合の数密度に比例する。力学正接損失tanδは粘性成分に対する弾性成分の比であるから、力学正接損失tanδ>1であれば、ゲル状嚥下食は粘性成分に対して弾性成分が小さい。即ち、ゾル状態の方向に進行すること意味している。力学的正接損失tanδ<1であれば、ゲル状嚥下食は粘性成分に対して弾性成分が大きい。即ち、硬いゲルの状態の方向へ進行することを意味している。力学正接損失tanδはゲル状嚥下食の「嚥下し易さ」を解釈するうえで必要不可欠である。貯蔵弾性率G´が増加していくと、ゲルは硬くなり、やがて「ぱさつき感」が出現する。これらの食塊を嚥下すると、食塊は白由に変形できないため咽頭内をスムーズに通過できず、詰まったり、気管に入ったりする危険性がでる。逆に、損失弾性率G"が増加してくると、ゲルは付着性が出て、「べとつき感」が増してくる。これらの食塊を嚥下すると、咽頭に付着しやすくなり、スムーズに咽頭を通過できない。前者はゲルの結晶性領域、後者は非晶領域に対応するためゲルの結晶性と非晶性の一定の均衡関係を再現性の高い粘弾性測定することが粉末嚥下補助食品を品質管理する上に不可欠である。キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比が変わると、力学正接損失tanδの値も変化する。嚥下に望ましい力学正接損失tanδの値は0.1から1.0の範囲であるが、混合比が変化するとこの値も変化する。嚥下し易い力学正接損失tanδは0.2から1.0の範囲内であるということは、主観的評価としての官能試験から明らかにされている。この領域は弱いゲル状態で、ゲルが「変形しやすい性質もつ」のが特徴で「week-gel」と呼ぶ。
本発明によると、咽頭内を通るゲル状の食塊が大変形の状態で力学正接損失tanδが0.1から1.0の範囲でゲル状態が得られ、なお且つ、貯蔵弾性率G´を変化できる粉末嚥下補助食品が実現できた。この粉末嚥下補助食品に食品を添加した場合、上記の条件が変化しないために、貯蔵弾性率G´および力学正接損失tanδの周波数依存性の勾配で確認した。これらの結果、かなりの食品を添加しても上記の測定条件を確保できた。この濃度範囲内では、食品の添加によって、ゲルの結晶性と非晶性の一定の均衡関係を急激に変わるゲル構造に達していない。
本発明の粉末嚥下補助食品は、嚥下し易く、貯蔵弾性率G´を広範囲に変えることができ、温度が5℃から55℃の範囲で貯蔵弾性率G´および嚥下し易い条件(tanδが0.1から1.0の範囲である。)が変わらないという上記の三条件を満たし、かつ、10℃付近で低温摂取ができて、この温度では嚥下誘発を起こし易くする寒冷刺激に対応し、また、55℃は自動販売機の保温温度付近であることから、それ以下の温度で、暖かく摂食できるので、このような粉末嚥下補助食品を使用すると、広範囲の嚥下食品の調理・加工が可能である。その結果、1)栄養のバランスを考慮した献立表の作成が可能になり、2)咀嚼可能な障害者から咀嚼が困難な障害者に至るまでの嚥下食、つまり、嚥下訓練食の調理・加工が可能であり、3)食材が10重量%近く添加できることは、食間にお茶代わりに摂取できるため栄養不良状態の改善による寝たきり状態の防止、さらに4)機能性食品添加による生活習慣病の予防食など、粉末嚥下補助食品は、5)安価で操作が簡単で調理・加工ができる利点がある。また、本発明による混合系ゲルから成る嚥下食基材の効果として、凍結・解凍を反復してもほとんど粘弾性の性質が変化せず透明のゲルを形成し、離水も生じなく凍結耐性があり、115℃で50分の滅菌で完全に殺菌できてレトルト耐性もある。
キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比を4:6乃至2:8の範囲で、混合ゲル化剤濃度が粉末嚥下補助食品の全重量に対して、0.6重量%から0.8重量%であるゲル形成能を持つ増粘多糖類とデキストリンとから成り、前記混合ゲル化剤の変形率11%における力学正接損失tanδが0.1から1.0の範囲内にあり、貯蔵弾性率G´および力学正接損失tanδの周波数依存性の勾配は平行性が保たれ、前記混合ゲル化剤の温度が55℃付近である二次転移点以下の温度では、貯蔵弾性率G´および力学正接損失tanδの変化がないことを特徴とする粉末嚥下補助食品を作製した。
図1は、キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比を3:7とし、混合ゲル化剤濃度が粉末嚥下補助食品の全重量に対して、0.6重量%から0.8重量%であるゲル形成能を持つ増粘多糖類とデキストリンから成る粉末嚥下補助食品において、混合ゲル化剤の変形率11%における貯蔵弾性率G´x10(Pa)と周波数の関係を示す。図2は、前記の粉末補助食品において、混合ゲル化剤の変形率11%におけるtanδと周波数の関係を示す。これらの図は下記の表1に示す測定データに基づいて描いたものである。
キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比が3:7であり、粉末嚥下補助食品2重量%、添加した抹茶は1重量%のゲル試料を動的粘弾性測定した。測定条件は以下の通りである。
測定機種:Rheosol-G3000、 測定法:動的粘弾性測定
測定モード:周波数依存性 チャック:パラレルプレート
波形:正弦波 パラレル直径:40mm・・ギャップ:3mm
条件:25℃1deg トルクFs:2.04 ロードセル:10.2kg
測定モード:周波数依存性 チャック:パラレルプレート
波形:正弦波 パラレル直径:40mm・・ギャップ:3mm
条件:25℃1deg トルクFs:2.04 ロードセル:10.2kg
下記の表1は、キサンタンガム:ローカストビーンガムの混合比が3:7での2種類の濃度の混合ゲル化剤における粉末嚥下補助食品2重量%の測定データを例示する。
キサンタンガム:ローカストビーンガムの混合比が3:7の2種類の濃度の試料ゲル(各混合ゲル化剤)の貯蔵弾性率G´に対する周波数の勾配は、ほぼ線形性が成立し、かつ貯蔵弾性率G´に対する周波数の勾配(0.1Hz、1Hzおよび10Hzの3ケ所の間隔の平均値)でもほぼ平行にある。貯蔵弾性率G´に対する周波数の勾配が小さくなるにつれて、混合ゲル化剤の結晶性と非晶性の一定の均衡関係は前者の方向に移動する。逆に、周波数の勾配が大きくなるにつれて後者の方向に移動する。2種類の濃度の混合ゲル化剤の濃度変化に伴い貯蔵弾性率G´は大きく変化するが、G´の周波数における勾配に対する平行性は変わらない。これは、2種類の濃度の混合ゲル化剤における結晶性と非晶性の一定の均衡関係が保たれていることが主たる要因である。
キサンタンガム:ローカストビーンガムの混合比が3:7の混合ゲル化剤濃度が1重量%での貯蔵弾性率G´は、混合化剤濃度が0.8重量%での貯蔵弾性率G´より増大するが、周波数に対する勾配は小さくなる。また、混合ゲル化剤濃度が0.15%なると、貯蔵弾性率G´は急激に減少し、周波数に対する勾配は大きくなる。
キサンタンガム:ローカストビーンガムの混合比が3:7における2種類の濃度の試料ゲル(混合ゲル化剤)の力学正接損失tanδは、嚥下に適するといわれている0.1から1.0の範囲内にある。
図3において、力学正接損失tanδの変形率依存性を示す。キサンタンガム:ローカストビーンガムの混合比が3:7の2種類の濃度の混合ゲル化剤の貯蔵弾性率G´の測定条件は、変形率11%、温度25℃、周波数1Hzである。
キサンタンガム:ローカストビーンガムの混合比が3:7から成る粉末嚥下補助食品2重量%の力学正接損失tanδは、変形率が約11%以上で変化が見られる。変形率が11%までは、混合ゲル化剤の線形粘弾性が成立している。つまり、混合ゲル化剤に作用する応力の変化によっても、混合ゲル化剤の変形する割合は変化しない。
キサンタンガム:ローカストビーンガムの混合比が3:7である混合ゲル化剤は、混合ゲル化剤が1重量%になると、力学正接損失tanδは僅かに0.1よりも小さな値を示し、さらに周波数に対する勾配も平坦になる。また、混合ゲル化剤濃度が0.15重量%なると、力学正接損失tanδは変形率11%で測定不能になる。
キサンタンガム:ローカストビーンガムの混合比が3:7の混合系ゲルにおける貯蔵弾性率G´と混合ゲル化剤濃度の間に以下の関係式がする。
G´=kCα
Kおよびαは定数、Cは混合ゲル化剤濃度である。貯蔵弾性率G´は混合ゲル化剤濃度に対して2−4乗則が成立する。混合ゲル化剤の三次元網目構造が十分に進行していない混合ゲル化剤濃度領域では、貯蔵弾性率G´は混合ゲル化剤濃度の4乗に比例する。三次元網目構造が十分に進行した混合ゲル化剤濃度領域では、貯蔵弾性率G´は混合ゲル化剤濃度の2乗に比例する。この領域の差異は添加する食材の性質に影響する。ここでの混合ゲル化剤濃度が0.2重量%から0.8重量%の間では、2乗則が成立しており、この混合ゲル化剤濃度の範囲内の混合ゲル化剤の三次元網目構造は安定したゲル構造を有している。
G´=kCα
Kおよびαは定数、Cは混合ゲル化剤濃度である。貯蔵弾性率G´は混合ゲル化剤濃度に対して2−4乗則が成立する。混合ゲル化剤の三次元網目構造が十分に進行していない混合ゲル化剤濃度領域では、貯蔵弾性率G´は混合ゲル化剤濃度の4乗に比例する。三次元網目構造が十分に進行した混合ゲル化剤濃度領域では、貯蔵弾性率G´は混合ゲル化剤濃度の2乗に比例する。この領域の差異は添加する食材の性質に影響する。ここでの混合ゲル化剤濃度が0.2重量%から0.8重量%の間では、2乗則が成立しており、この混合ゲル化剤濃度の範囲内の混合ゲル化剤の三次元網目構造は安定したゲル構造を有している。
上記の実施例は、キサンタンガム:ローカストビーンガムの混合比が3:7の混合ゲル化剤とデキストリンとからなる嚥下補助食品について説明した。他方、キサンタンガム:ローカストビーンガムの混合比が4:6および2:8の混合ゲル化剤から成る嚥下補助食品においては、貯蔵弾性率G´の値は混合比が3:7の貯蔵弾性率と比較すると、わずかに低下するが、貯蔵弾性率G´および力学正接損失tanδの周波数の勾配も平行性が保たれており、また、貯蔵弾性率の混合ゲル化剤濃度の勾配も、混合比が3:7の貯蔵弾性率の混合ゲル化剤濃度の勾配と類似している。
G´ 貯蔵弾性率
X キサンタンガム
L ローカストビーンガム
X キサンタンガム
L ローカストビーンガム
Claims (5)
- キサンタンガムとローカストビーンガムの混合系ゲル濃度が0.2重量%から0.8重量%の範囲において、キサンタンガムとローカストビーンガムの混合比を4:6から2:8の範囲で作製した混合系ゲルから成ることを特徴とする粉末嚥下食基材。
- 前記混合系ゲルは、前記混合比を4:6、3:7、2:8の内のいずれかで作製したことを特徴とする請求項1に記載の粉末嚥下食基材。
- 前記混合系ゲルにおいて、混合系ゲルの変形率11%における力学正接損失tanδが0.1から1.0の範囲内にあり、貯蔵弾性率G´および力学正接損失tanδの周波数依存性の勾配もほぼ平行性が保たれていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の粉末嚥下食基材。
- 前記混合系ゲルの温度が55℃付近である二次転移点以下の温度では、貯蔵弾性率G´および力学正接損失tanδの変化がほとんどないことを特徴とする請求項3に記載の粉末嚥下食基材。
- 前記混合系ゲルの変形率が11%の時、貯蔵弾性率G´は10Paから102Pa、力学正接tanδが0.1から1.0の範囲内にあることを特徴とする請求項4に記載の粉末嚥下食基材。
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