JP4245161B2 - 粘性及び付着性が低減された米由来組成物 - Google Patents

粘性及び付着性が低減された米由来組成物 Download PDF

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Description

本発明は、粘性及び付着性が低減された米由来組成物に関する。詳しくは、嚥下障害者用の食品を製することができ、粘性、糊性が低く、食する時に口腔内や咽頭部等に付着し難く、米味の風味が良好である米由来組成物に関する。
高齢者の人口の増加に伴い、食物を飲み込む動作に障害をきたす嚥下障害者の人口も増加する傾向にある。加えて、脳血管障害、腫瘍等の疾病によって嚥下障害を伴うことも多い。嚥下障害者にとって、水のようにさらっとした食物は、誤嚥(誤って気管に食物がはいること)しやすく、それが原因で誤嚥性肺炎をおこすことがしばしば認められている。また、粘着性のある食物では喉につかえ、窒息の危険性がある。このため、これらの嚥下機能に障害がある者に対しては、極端な場合、食事の経口摂取を断念して濃厚流動食による経鼻経管栄養や高カロリー輸液による完全経静脈栄養などの方法により、誤嚥のリスクを回避した形で栄養摂取が行われている。しかしながら、QOL(Quality of Life)の観点から、できるかぎり経口摂取が望ましく、その際には誤嚥を防ぐため、食事の物性調整が必要となる。
一方、ご飯やお粥は、日本人の主食であるため、嚥下障害者にとっても、それらを安全においしく食べられることは重要である。ところが、嚥下障害者に米成分を含む食品を食べさせるには、米の粒子が誤嚥の原因となるため、お粥状としたものを、更にミキサー等にかけてペースト状に加工する必要がある。従って、この嚥下障害者用に米食品を加工することは、時間と手間を要し大きな負担となる。更には、ミキサー等で米粒をペースト状に加工する際に、十分ペースト状にされ、均一になったか否か(米の粒子が残っていないか)の管理が容易でないといった問題がある。また、通常の米を炊く処理(徐々に105℃程度まで温度を上げ、トータルで20〜30分加熱)をしたご飯やお粥は、粘度が高く糊状であり、口腔内や咽頭部等に貼り付き易い(付着性が高い)が、この糊状でべたつきのある性質は、ミキサー等にかけてペースト状に加工しても依然として改善されないので、嚥下障害者が誤嚥の原因とならないように水等で薄めることになるが、味も薄まってしまい米味の風味が低減してしまうという問題がある。
米を主材とする嚥下容易な食品として、例えば、特許文献1、2などの発明が特許出願されている。特許文献1に開示されている発明は、米又は米粉が加水及び加熱処理されることによりアルファー化され、その後アルファー化された状態で乾燥されて、粉末、顆粒又はフレーク状に形成されている乾燥食材であって、食する際には、加水することでペースト状の食品とし、水分量及び糊量の含有量により、固さ、粘度を調整するものである。また、特許文献2に開示された発明は、アルファー化米及び/又はその粉末にでんぷん粉末とゼラチン粉末を配合して成る嚥下容易な粥状食品の素であって、食する際には、加水することで粥状の食品とし、水分量及び糊量の含有量により、固さ、粘度を調整するものである。そして、いずれの発明もアルファー化は100℃前後で30分程度煮熱することで行っている。
特開2002−51712号公報 特開2002−17275号公報
しかしながら、特許文献1に開示されている発明は、米又は米粉を加水及び加熱処理してアルファー化し、その後、アルファー化された状態で乾燥する必要があり、乾燥工程を要するので製造が繁雑である。また、付着性に関する開示はなされていない。一方、特許文献2に開示されている発明は、ゼリー状のものや、プリン状のものが提案されているが、付着性についての検討も開示もなされていない。いずれにしても、アルファー化した米や米粉は、上述したような粘度が高く糊状であり、口腔内や咽頭部等に貼り付き易いという問題は依然として残されたままである。
本発明の目的は、米、米粉、米デンプン等を加熱(食用処理)したときに、粘性、糊性や口腔内や咽頭部等への付着性が低く、米味の風味が良好な米由来組成物を提供することにある。
上記課題を解決するため本発明者らが鋭意研究した結果、未加熱処理の米、米粉、米デンプン等を水存在下で高温瞬間加熱処理することにより、粘性、糊性や付着性が低く、米の風味が良好な米由来組成物を製造できるということを見出し、更には、該米由来組成物は、高濃度で米由来成分が入った種々の加工食品の素材として用いられ、特に、粘性、糊性及び付着性が高い食品を摂取することができない燕下障害者用の米味を有する食品(米味食品と称する)に好適に用いることができることを見出して、本発明を完成させるに至った。
本発明は、より具体的には以下のようなものを提供する。
(1) 米、米粉、及び米デンプンからなる群から選ばれる少なくとも一つと、水との混合物を高温瞬間加熱処理してなる米由来組成物。
本発明によれば、米、米粉、米デンプン(以下、米成分と称する)からなる群から選ばれる少なくとも一つと水との混合物は、短時間で高温状態に到達して加熱処理されるので、得られた組成物は、粘度及び付着性が低くて糊性がなく、流動性に優れ、米成分の割合が多くてもさらっとしたとろみを有する液状体であって、口腔内や咽頭部等への付着性が低く、米味の風味も良好なものである。このため、この組成物は、デキストリンや増粘多糖類等を用いてとろみを付与しないでも、嚥下・咀嚼機能が低下している嚥下障害者用の米味食品としてそのままで供することができる。また、この組成物は、食べ易くするためにゲル化剤等を加えてゼリー状やプリン状等の食品に加工するとしても、粘性及び付着性が低いので、加工し易く、また得られた食品も米味を有する粘性及び付着性が少ないものが得られ、しかもその固さも自在に調整できるので、嚥下障害者用の米風味の食品として好適に供することができる。また、この組成物は良好な米味の風味を有しているので、他の食材に米味の風味を付与する米風味付与剤として使用することもできる。尚、この組成物は、液状体のままでの利用の他に、乾燥して乾燥食材としてもよい。乾燥食材にすることで、保存性、保管性、取扱い性等により優れることになる。
ここで、高温瞬間加熱処理とは、米成分と水との混合物の温度を米が通常食用処理する温度(60℃以上、特に105〜145℃)まで、ほぼ瞬間的に加熱する処理、又は、混合物を瞬間的に加熱して、少なくとも50℃以上高い温度までにする処理のことをいう。具体例としては、20℃の混合物の懸濁液を、特殊な機械で、145℃(加熱前の温度20℃+125℃)に加熱することをいう。
(2) 前記高温瞬間加熱処理は、前記混合物の温度を瞬間的に100以上、165℃以下にするものである(1)に記載の米由来組成物。
本発明によれば、米成分と水との混合物は、瞬間的に100〜165℃の温度に加熱されるので、通常の米を炊く処理(例えば、徐々に105℃程度まで上げ、トータルで20〜30分加熱)で得られたものに比べ粘性及び付着性が大幅に低減されたものとなる。また、米の風味も優れたものとなる。
(3) 前記米由来組成物中の前記水の含有量は、60質量%以上であり、前記米由来組成物の粘度が、前記混合物を非瞬間加熱処理してなる組成物の粘度に対して、1/10以下である(1)又は(2)に記載の米由来組成物。
本発明の米由来組成物は、非瞬間加熱処理して得られた米由来組成物に比べて、大幅に粘度が低下したものであるので、糊性が少なく、口腔内や咽頭部等への付着性も低いことになる。このため、米由来組成物をそのままの状態で嚥下障害者が食しても誤嚥することがない。また、組成物にゲル化剤等を加えて米味風味のゼリー等の食品に加工する場合に、米味風味の高い食品を製することができる。また、得られた食品も糊性が低いので、口腔内や咽頭部等への付着性が低くて食し易く、嚥下障害者が摂取しても誤嚥することがない。また、米味の風味を付与するために、他の食材にこの米由来組成物を添加しても食材の粘度を上げることがないので、加工し易いことになる。尚、米由来組成物の水の含有量としては、60質量%以上(米成分の含有量が40質量%以下)であれば、上記の効果は得られるが、この組成物をそのまま食品として加工する際の作業性から、水の含有量が80質量%以上(米成分の含有量が20質量%以下)であるのが好ましい。ここで、非瞬間加熱処理とは、概して、通常の米やお粥を炊く処理や、通常の加熱機器による加熱処理を指す。例えば、通常の米を炊くときの加熱処理としては、約105℃まで昇温させるのに5〜10分間程度かかる。また、通常の加熱機器による加熱処理として、電子レンジで加熱した場合には、約90℃まで昇温させるのに1〜2分間程度、レトルト殺菌機で加熱した場合、約100℃まで2分間程度、約121℃まで5分間程度かかる。
(4) 前記米由来組成物中の前記水の含有量は、95質量%から96質量%であり、20℃における粘度が400mPa・s以下である(1)から(3)いずれか記載の米由来組成物。
(5) 前記米由来組成物中の前記水の含有量は、93質量%から94質量%であり、20℃における粘度が2000mPa・s以下である(1)から(3)いずれか記載の米由来組成物。
(6) 前記米由来組成物中の前記水の含有量は、90質量%から92質量%であり、20℃における粘度が6000mPa・s以下である(1)から(3)いずれか記載の米由来組成物。
本発明の米由来組成物の粘度は、米成分の割合が約10質量%と高くても6000mPa・s以下と低く、流動性に優れ、さらっとした液状を呈しているので、ゼリー状やプリン状等の食品に加工し易く、また、加工された食品の粘性も低く、食しても口腔内や咽頭部等へ付着し難い。
(7) (1)から(6)のいずれか一項に記載の米由来組成物を、全部又は一部含有する飲食品。
本発明によれば、飲食品は、良好な米味を有して粘性及び付着性が低い米由来組成物を含有しているので、米味の風味を有し、粘性や付着性の低いものである。このため、この食品を食しても口腔内や咽頭部等へ付着し難いため、嚥下障害者用の飲食品として好適に使用することができる。
(8) 前記飲食品が、嚥下障害者用である(6)に記載の飲食品。
上記(6)で述べたように米由来組成物を含有する飲食品は、米味の風味を有し、粘性が低く、食しても口腔内や咽頭部等へ付着し難いので、嚥下障害者用の米味食品として適している。
(9) (1)から(6)のいずれか一項に記載の米由来組成物を、全部又は一部含有する米風味付与剤。
米、米粉、米デンプン等の米成分と水との混合物を高温瞬間加熱処理して得られた組成物は、米成分を原料としているので、良好な米味を有することになり、この組成物を添加することで食品に米風味を付与できることになる。
(10) 米、米粉、及び米デンプンからなる群から選ばれる少なくとも一つと、水との混合物を加熱処理する米由来組成物の製造方法であって、前記加熱処理が、高温瞬間加熱処理である米由来組成物の製造方法。
本発明の米由来組成物は、米、米粉、米デンプン等の米成分を水と混合して均一な懸濁状の混合物とし、この混合物を室温から瞬間的に100〜165℃の温度までに加熱処理することで製造できるので、煩雑な工程を要せず、短時間で効率的に製造でき、作業性に優れる。
(11) 米、米粉、及び米デンプンからなる群から選ばれる少なくとも一つと、水との混合物を加熱処理して得られる米由来組成物の粘性及び付着性の低減化方法であって、前記加熱処理が、高温瞬間加熱処理である米由来組成物の粘性及び付着性の低減化方法。
加熱処理が高温瞬間加熱処理であるので、得られた組成物は、例えば、温度を徐々に105℃程度まで上げ、トータルで20〜30分程度加熱するといった通常の米やお粥を炊く処理で製造されたもののように粘性が高くなることはなく、粘性及び付着性が低減化ができる。
(12) 米以外の他の穀物と、水との混合物を高温瞬間加熱処理してなる穀物由来組成物。
麦、トウモロコシ、そば等の穀類成分においても、米、米粉、米デンプン等の米成分のように、穀類成分を水との混合物にして、この混合物を高温瞬間加熱処理することにより、それぞれの穀類の風味を有した、粘度が低くて、付着性も少ない穀類由来の組成物を得ることができる。
本発明の米由来組成物は、米、米粉、米デンプン等の米成分と水との混合物を、高温瞬間加熱処理して製造されるので、通常の米を炊く処理(例えば、徐々に105℃程度まで上げ、トータルで20〜30分加熱)で製造されたものに比べ、粘性及び付着性が大幅に低減されたものとなる。また、米の風味も優れている。
また、本発明の米由来組成物を含有する飲食品は、米風味を呈し、粘性及び付着性の低いものとなり、嚥下障害者用の飲食品として使用することができる。また、本発明の米由来組成物を利用して飲食品を加工する際に、この組成物自体が粘性及び付着性が低いので、加工し易い。
以下、本発明について具体的に説明する。本発明の米由来組成物は、米、米粉、及び米デンプンからなる群から選ばれる少なくとも一つを水に混合して混合物とし、この混合物を高温瞬間加熱処理することを特徴とする。これによって、通常の米を炊く処理(例えば、徐々に105℃程度まで上げ、トータルで20〜30分加熱)で製造されたものに比べ、粘性及び付着性が大幅に低減されたものとなる。また、粘性や付着性が改善されていないものを他の食品に添加すると風味が落ちるが、この米由来組成物は、米の風味も優れたものとなる。そして、この米由来組成物は、ゲル化剤等を添加して米風味の飲食品の製造に利用することができる。
本発明に用いられる米、米粉、及び米デンプン等の米成分は、精白されたうるち米やもち米であって、米粒や破砕した米粒、粉砕して粉末に加工した米粉、或いは米デンプン等であり、通常、食用処理する程度、具体的には60℃以上の熱が加えられていない未加熱処理のものである。そして、これら米成分は、水に対して40質量%以下、更には加熱処理時の作業効率、本発明の米由来組成物のハンドリングや、他の食品へ添加した場合の適正等を考慮すると、20質量%以下、好ましくは20〜0.1質量%、より好ましくは17〜0.1質量%、更に好ましくは10〜1質量%、最も好ましくは10〜5質量%の割合で配合された混合物に調製され、高温瞬間加熱処理される。尚、米や米粉(上新粉)等は、一般に14〜16%程度の水分が含まれていることが知られており、本発明では、通常水分含量20%以下のものを用いる。従って、例えば、水分含有14%の米粉を5質量%配合された混合物を処理した米由来組成物中の水の含量は、95.7%となり、水分含有14%の米粉を7質量%配合された混合物を処理した米由来組成物中の水の含量は、93.98%となり、水分含有14%の米粉を10質量%配合された混合物を処理した米由来組成物中の水の含量は、91.4%となる。
高温瞬間加熱処理は、混合物の温度が瞬間的に60〜165℃、好ましくは100〜165℃、より好ましくは100〜150℃、更に好ましくは110〜150℃、更により好ましくは120〜150℃、最も好ましくは120〜145℃とになるように加熱して行われる。ここで、「瞬間」又は「瞬間的」とは、上記の規定の温度に達するまでが、5秒以内であることであって、好ましくは4秒以内、より好ましくは3秒以内、更に好ましくは2秒以内、更により好ましくは1秒以内、最も好ましくは0.01〜1秒以内である。そして、昇温された温度で所定時間加熱される。この加熱時間は、加熱装置のスケールや処理する混合物の量にもよるが、1時間程度以内である。尚、作業効率や食品のダメージ(品質の劣化や着色)等から好ましくは5分以下、より好ましくは1分以下、更に好ましくは30秒以下、更により好ましくは10秒以下、更により好ましくは4秒以下、最も好ましくは0.01〜4秒である。この加熱処理は、具体的には、例えば、一般的に食品に使用されている高温瞬間滅菌装置により、100〜150℃の温度で、0.01〜1秒間で混合物の温度を規定の温度までに昇温し、その後、その温度に維持し、トータルで4〜60秒処理して行われる。尚、混合物の温度が60℃未満であると食用に供することができない。また、100℃未満であると長期保存すると老化が生じ易い状態となることがある。一方、165℃を超えると米成分が焦げ、焦げ臭が生じて、米味の風味が損なわれることになるので好ましくない。また、加熱の方式としては、プレート式、チューブラー式、表面掻取式等の間接加熱方式とインジェクション方式、インフュージョン方式等の直接加熱式等が挙げられるが、米成分と水との混合物の性状に限定されることなく均一に効率的に加熱することができる高温の蒸気を吹き込むインジェクション方式であるのが好ましい。この加熱処理により、米成分は変性して、米成分と水との混合物は懸濁液から白色の流動性に優れた液状体となる。尚、本発明について、昇温時間(規定の温度まで加熱に要する時間)と、規定の温度を維持する時間を合わせて、総加熱時間(加熱処理にかかる時間)と考えることができる。
そして、本発明の米由来組成物は、以下のようにして製造される。先ず、米、米粉、米デンプン等の米成分に水を添加し、ホモミキサー等の撹拌機で、混合して米成分が水中に均一に懸濁した混合物とする。次いで、この混合物を直接蒸気吹込み式高温瞬間殺菌機等の加熱装置に通して瞬間的に高温で加熱処理を行う。その後、冷却して室温程度までに温度を下げることで製造される。尚、冷却の方法としては、特に制限されず、冷蔵庫等で急速に冷却する急冷であってもよく、また、そのまま室内等に放置して徐々に冷却する緩慢冷却であってもよい。
具体例としては、ホモミキサーで混合物を撹拌して米成分が水中に均一な懸濁した懸濁液とし、この混合物を直接蒸気吹込み式高温瞬間殺菌機に投入し、148〜155℃の蒸気を混合物に吹込んで、トータルで4〜60秒間程度接触させて、混合物の温度を少なくとも120〜150℃に瞬間的(0.01〜1秒程度)に上昇させて、加熱処理を行う。この高温加熱処理後、減圧して吹込んだ蒸気を回収する。その後、プレートクーラーで室温程度までに急冷して製造される。尚、混合物を高温加熱した後に減圧することで、吹込まれた蒸気が回収されるので、米由来組成物の濃度が蒸気で薄められることがない。更には、蒸気の回収度合を調整することで、米由来組成物の濃度を調整することも可能である。
このようにして製造された米由来組成物は、粘度が低くて糊性がなく、流動性に優れ、米成分の割合が多くてもさらっとしたとろみを有する液状体であって、20℃での粘度が、通常の米を炊く処理(例えば、徐々に105℃程度まで上げ、トータルで20〜30分加熱)である通常の加熱処理によって得られたものの粘度に対して、米成分の配合割合にもよるが、少なくとも1/10以下であって、大幅に粘度が低いものである。この粘度の低減の比率は、好ましくは1/20以下、より好ましくは1/50以下、更に好ましくは1/100以下、更により好ましくは1/200、更により好ましくは1/500以下、最も好ましくは1/1000以下である。そして、この粘度の比率(本発明の米由来組成物の粘度/通常の加熱処理してなる組成物の粘度の比率)は、米成分の配合割合が多いほどに大きくなり、粘度の低減が大きい。例えば、145℃で4秒間の加熱条件で米成分の割合が5質量%の混合物を高温瞬間加熱処理して得られた組成物の粘度は約50mPa・sで、同配合割合の混合物を通常の加熱処理して得られたものの約1/80程度の粘度であり、また、同加熱条件で7質量%の混合物を高温瞬間加熱処理して得られた組成物の粘度は約150mPa・sで、同配合割合の混合物を通常の加熱処理して得られたものの約1/140程度の粘度であり、また、同加熱条件で10質量%の混合物を高温瞬間加熱処理して得られた組成物の粘度は約300mPa・sで、同配合割合の混合物を通常の加熱処理して得られたものの約1/210程度の粘度である。尚、粘度はB型粘度計により測定した。ここで、通常の食用処理とは、米の場合は上述の条件で行われているが、米粉の場合には、例えば、湯温90℃で10〜15分程度、或いは電子レンジにて90℃で10〜15分程度加熱される。
このように、米由来組成物は、粘度が低くて糊性がなく、流動性に優れ、米成分の割合が多くてもさらっとしたとろみを有する液状体であって、粘性及び付着性が低いので、お粥や重湯として食しても、口腔内や咽頭部等に付着しないため、咀嚼や嚥下機能が低下した嚥下障害者用の米味食品として提供できる。また、米成分の種類や配合割合を変えることで粥状ないし重湯状に調製できるので、症状にあわせて粥状ないし重湯状食品を提供できる。
本発明の米由来組成物は、高温瞬間加熱処理して製造されるので、米成分が通常のご飯やお粥を炊く際の加熱処理されたものとは異なった性状に変性し、食用時、又は、加工時に、再加熱しても粘性が増加することがない。また、米由来組成物自体は米味の風味を有していること、粘性及び付着性が低いものであることから、加工性に優れることになる。従って、ゼリー、プリン他の各種の飲食品に加工したり、利用することができる。
例えば、ゾル・ゲル剤を添加して、良好な米味がして食べやすい食品、例えば米味のゼリー状又はプリン状食品等に加工してもよい。粘性及び付着性が低減された米由来組成物から製するので、加工し易く、また、得られた食品も粘性及び付着性が低く、食しても腔内や咽頭部等に付着することがない、また、ゼリー状に固化しているので、嚥下や咀嚼機能が低下している嚥下障害者でも容易に口に入れることができる。そして、この食品の固化の固さや、米味の風味の程度は、米由来組成物の米成分の種類・配合割合、ゾル・ゲル剤の種類・添加量を変えることで自在に調整できるので、症状にあわせた食品を提供できる。
ここで、ゲル・ゾル化剤としては、摂食可能なものであれば特に制限はなく、例えば、寒天、ゼラチン、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、グアーガム等であって、これらを単独又は組み合わせて用いてもよい。また、添加するタイミングについても、特に制限がなく、米成分と水の混合物を高温瞬間加熱処理する前、又は処理した後のいずれであってもよい。
また、本発明の米由来組成物は、良好な米味の風味を有するので、別の食材に添加されて、米味の食品の製造するための米風味付与剤としても使用することができる。例えば、大豆やコンニャク等の米とは異なる素材で作られた食品に、この付与剤を使用することにより、米風味の食品を提供できる。これにより、ダイエット用食品等に応用可能である。
また、米成分と水との混合物を高温瞬間加熱処理して得られた液状の組成物は、米成分が通常の米やお粥を炊く加熱処理で得られた組成物の米成分とは異なった性状に変性しているので、老化現象が発生し難く、保存性に優れる。従って、液状体のままでプラスチックの袋等に密閉して保存しておくことができる。更には、乾燥機等で水分を除去して乾燥した乾燥食材としてもよい。乾燥食材にすることで、より長期間保存することができることになる。また、液状でないので、保管や持ち運びにも優れることになる。ここで、老化現象とは、通常の米やお粥などを炊く処理(例えば、徐々に100℃程度にまで温度を上げ20〜30分加熱)して得られた米組成物を水分を含有した状態で50℃以下に静置(例えば、冷蔵庫内に静置)しておくと、固形状の場合には、固くなり、離水し、また、溶液状の場合には、離水することにより白濁部と透明部とに分離する現象のことをいう。尚、この老化現象は、100℃未満の加熱では、生ずることがあるので、高温瞬間加熱処理の温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは105℃以上、更に好ましくは110℃以上、更により好ましくは120℃以上であるのがよい。
以下、本発明を実施例によってより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、以下のいずれの試験例において、実施例の加熱処理前の混合物の温度は約20℃であり、高温瞬間加熱処理の温度到達時間は0.01〜1秒である。また、使用した上新粉の水分含有量は約14%である。また、上新粉の割合の単位w/w%は重量%を意味する。
<試験例1>[高温瞬間加熱処理による米由来組成物の粘度及び風味の検討]
米粉と水とを表1に示す配合割合で3種類の配合に調製し、それぞれの配合割合からなる混合物について、高温瞬間加熱処理と非瞬間加熱処理(通常の加熱処理)を行い、得られた米由来組成物の粘度を測定して粘性を検討した。また、同時に風味、食感も検討した。
Figure 0004245161
まず、上新粉(群馬製粉社製、商品名「米の粉」)と水とを表1の配合割合で混合して、上新粉(米粉)を水に懸濁させた3種類の混合物を調製する。そして、懸濁状態にあるこれら混合物を、よくかき混ぜ、直接蒸気吹込み式高温瞬間殺菌機(岩井機械社製「AUHT」)に投入し、145℃で4秒間加熱した。その後、直ちに上記の高温瞬間殺菌機に組み込まれたプレートクーラーにより、約15℃まで冷却させ、次いで500mlガラスビーカーに入れ、室温放置し、約20℃とした。
一方、比較例として、上記3種類の配合割合の混合物について、それぞれ500mlガラスビーカーに入れ、湯せんにより、90℃に加熱し、懸濁状態にある混合物を、沈殿が生じない程度にかき混ぜながら、混合物が均質になるまで加熱(約10〜15分間)し、次いで、冷蔵庫で約15℃まで冷却させ、その後、室温放置し、約20℃とした。
次に、上記の各加熱処理して得られた組成物について、B型粘度計(東京計器社製)により、20℃における粘度を測定した。その結果を表2に示した。
また、5名のパネラーにより官能検査を実施して、風味(口に含んだときの味や臭い)及び食感(口に含んだときに感じる食品の物性がもたらす感覚)について評価し、その結果を表2に示した。
Figure 0004245161
表2に示すように、配合1〜3のいずれの配合でも、得られた米由来組成物は実施例の方が、著しく粘度が低かった。すなわち、配合1の上新粉の割合が5w/w%の場合で約1/80、配合2の上新粉の割合が7w/w%の場合で約1/140、配合3の上新粉の割合が10w/w%の場合で約1/210、と実施例は比較例に比べて粘度が小さい結果であった。また、実施例と比較例との粘度の差は、上新粉の濃度が増すほど、拡がっていった。よって、この高温瞬間加熱処理は、上新粉の濃度が高くても、有効に働くことが確認された。
また、上新粉の濃度が10w/w%と高い実施例3においても、その粘度は、試験例1の比較例において最も粘度の低い比較例1の粘度(4400mPa・s)より低い結果であった。
また、5名のパネラーによる風味、食感の官能評価は、実施例では、通常に炊いた米と同じような風味がして、かつ、食したときに、口腔内に残らなかった(「粘着性」;低)。一方、比較例では、でんぷん糊の臭いがし、かつ、食したときに、口腔内に貼り付くような感じがした(「粘着性」;高)との結果であった。
これらの結果から、高温瞬間加熱処理をすることで、粘性及び付着性の低く、米の風味が良好な米由来組成物が得られることが確認された。また、米粉の配合割合が高いほど、より顕著に粘性が低減することが確認された。
また、上新粉を17w/w%含んだ混合物を高温瞬間加熱処理した米由来組成物は、本発明の効果を奏していたが、米由来組成物中の米成分の濃度が高いため、一定以上の粘度を有していたので、ハンドリングや加工適正が比較的悪かった。これらは、適当な濃度に薄めることにより、上新粉10w/w%以下のものと同様の取扱いができた。
<試験例2>[高温瞬間加熱処理した米由来組成物の再加熱による粘度変化の検討]
次に、試験例1で得られた実施例1〜3の米由来組成物について、再加熱処理することによる粘度の変化を検討した。
試験例1で得られた実施例1〜3の米由来組成物を500mlガラスビーカーに入れて冷蔵庫で冷やした後、冷蔵庫より取り出して、以下の再加熱処理手順に従って再加熱処理を行った。そして、各手順において、組成物の粘度を測定して表3及び図1に示した。粘度の測定方法は試験例1と同様の方法で行った。尚、参考として、試験例1で測定した高温加熱処理後の粘度も表3及び図1に合わせて示した。上新粉(米粉)は、試験例1と同じものを用いた。
再加熱処理手順:
(1):高温瞬間加熱処理して冷蔵庫に保管した試料を冷蔵庫から出し、室温放置して、液温を約10℃とする。
(2):更に、室温放置して、液温を約20℃とする。
(3):電子レンジ(500W)で液温を約90℃として、約10分間加熱する。
(4):電子レンジで加熱後、室温放置冷却して、液温を約20℃とする。
Figure 0004245161
表3及び図1に示すように、試験例1の高温瞬間加熱処理して得られた実施例1〜3の組成物について、その後、90℃で10分間の加熱処理を行っても、粘度が大幅に上がることは無く、再び室温の戻すと、ほぼ再加熱前の粘度に戻った。上新粉の濃度が10w/w%と高い実験例3においても、その粘度は、試験例1の比較例において最も粘度の低い試験例1の比較例1の粘度(4400mPa・s)より低い結果であった。また、上新粉の濃度が高い場合(上新粉10w/w%)は、再加熱処理後の粘度が多少高い結果であった。
これらの結果より、高温瞬間加熱処理した米由来組成物は、再加熱処理を施しても、粘度が急激に上がることはなく、再び室温の戻すともとの状態に戻るので、高温瞬間加熱処理して変性された米成分は、その後に90℃程度に再加熱されても、粘性はほとんど影響を受けないことが確認された。また、上新粉の濃度が高い場合(上新粉10w/w%)には、再加熱処理後の粘度が多少高い結果であり、濃度に対する依存性あることが確認された。尚、再加熱処理で温度をかけた後の組成物の温度が90℃での粘度は下がっているのは、組成物の液温が上がり、流動性が増したためと思われる。
<試験例3>[米由来組成物の高温瞬間加熱処理時の温度依存性の検討]
次に、米由来組成物を生成する高温瞬間加熱処理について、加熱温度による影響を検討した。
試験例1の配合2(上新粉7w/w%)の混合物について、(a)145℃、4秒(試験例1と同一条件)、(b)120℃、4秒、(c)100℃、4秒の3条件で高温瞬間加熱処理をした。その後、得られた組成物を直ちにプレートクーラーにより、約15℃まで冷却させ、次いで、500mlガラスビーカーに入れ、室温放置して約20℃とした。そして、試験例1と同様の方法で粘度を測定し、その結果を表4及び図2に示した。
また、上記の加熱処理して得られた各組成物について、試験例2と同様にして再加熱処理を行い、再加熱処理による粘度の変化を検討した。再加熱の条件は試験例2と同一とし、試験例2と同様に各手順での組成物の粘度を測定し、その結果を表4及び図2に示した。尚、粘度の測定方法は試験例1と同様の方法で行った。
再加熱処理手順:
(1):高温瞬間加熱処理して冷蔵庫に保管した試料を冷蔵庫から出し、室温放置して、液温を約10℃とする。
(2):更に、室温放置して、液温を約20℃とする。
(3):電子レンジ(500W)で液温を約90℃として、約10分間加熱する。
(4):電子レンジで加熱後、室温放置冷却して、液温を約20℃とする。
Figure 0004245161
この結果、高温瞬間加熱処理したものは、いずれの条件でも、粘度は非瞬間加熱処理(通常の加熱処理)したもの(試験例1における比較例2)の粘度に比較して大幅に低い数値であった。そして、処理温度が高いほど、粘度が低い結果であった。また、再加熱処理の結果も、実験例2と同様、粘度の上昇は特になかった。
これらの結果より、高温瞬間加熱処理の温度は少なくとも100℃程度以上であれば、粘性の低い米由来組成物が得られること、また、温度依存性があり、温度が高い程効果あることが確認された。そして、これらの実施例についても、試験例1の比較例1〜3と比較すれば、いずれも顕著な効果を奏していた。
<試験例4>[米由来組成物の高温瞬間加熱処理時の処理時間依存性の検討]
次に、米由来組成物を生成するための高温瞬間加熱処理について、処理時間による影響を検討した。
試験例1の配合2(上新粉7w/w%)の混合物について、試験例3で最も効果のあった温度145℃で、処理時間を4秒(試験例3の(a)条件)、と30秒の2条件で加熱処理をした。その後、得られた組成物を直ちにプレートクーラーにより、約15℃まで冷却させ、次いで500mlガラスビーカーに入れ、室温放置して約20℃とした。そして、試験例1と同様の方法で粘度を測定し、その結果を表5及び図3に示した。
そして、上記の加熱処理して得られた各組成物について、試験例2と同様にして再加熱処理を行い、再加熱処理による粘度の変化を検討した。再加熱の条件は試験例2と同一とし、試験例2と同様に各手順での組成物の粘度を測定し、その結果を表5及び図3に示した。粘度の測定方法は試験例1と同様の方法で行った。
再加熱処理手順:
(1):高温瞬間加熱処理して冷蔵庫に保管した試料を冷蔵庫から出し、室温放置して、液温を約10℃とする。
(2):更に、室温放置して、液温を約20℃とする。
(3):電子レンジ(500W)で液温を約90℃として、約10分間加熱する。
(4):電子レンジで加熱後、室温放置冷却して、液温を約20℃とする。
Figure 0004245161
この結果、高温瞬間加熱処理は、処理時間が30秒でも粘度は非瞬間加熱処理(通常の加熱処理)したもの(試験例1における比較例2)の粘度に比較して大幅に低い数値で効果あり、また、処理時間が長いと粘度が高い結果であった。また、再加熱処理の結果も、実験例2と同様、粘度の上昇は特になかった。
これらの結果より、高温瞬間加熱処理の処理時間は30秒以下であれば、粘性の低い米由来組成物が得られること、また、処理時間が短い方が効果あることが確認された。そして、これらの実施例についても、試験例1の比較例1〜3と比較すれば、いずれも顕著な効果を奏していた。
<試験例5>[高温瞬間加熱処理した米由来組成物の老化現象の検討]
次に、米由来組成物が水分を含有した状態で放置された場合に老化現象を発生するかを検討した。
試験例3での処理温度を変えて高温瞬間加熱処理して得られた実施例2、4、5の米由来組成物、即ち145℃で4秒、120℃で4秒、100℃で4秒の加熱処理をして得られたそれぞれの米由来組成物をプレートクーラーで冷却後、500mlガラスビーカーに入れ、チューブに入れて密封して、冷蔵庫内で約5℃の温度下にて1週間放置して、その状態を観察した。
その結果、145℃で4秒間加熱処理した実施例2の組成物、及び120℃で4秒間加熱処理した実施例4の組成物は変化なく、組成物は白色の均一な液状態を呈していた。一方、100℃で4秒間加熱処理した実施例5の組成物は水分の脱離が生じ、静置した状態では、上部には半透明な水層で、下部は白色の米成分層に分かれていた。すなわち、処理温度が100℃で老化するが、120℃以上では老化しないことが確認された。
これらの結果より、高温瞬間加熱処理することで、生成された米由来組成物は通常の炊いた米とは異なる老化が発生しない分子構造になっているものと想定される。また、100℃では水分の脱離が生じたが、120℃及び145℃では老化が起こらなかったことから、高温瞬間加熱処理でも、加熱温度の違いにより、生成されるものが異なることが確認された。また、長期保存時の老化防止の観点からは、処理温度が高い方が、より効果が大きいことが確認された。
<試験例6>[高温瞬間加熱処理した米由来組成物を含有する食品の固さ及び付着性の検討 その1]
米成分と水との混合物にゲル化剤を添加し、この混合物を高温瞬間過熱処理して、米由来組成物を含有するゼリー食品を製造して、得られたゼリー食品の固さ及び付着性を検討した。
まず、表6に示す配合で、500mlガラスビーカーに水とゲル化剤を入れ、ミキサー(特殊機化社製「TKホモミキサー」)で10分間混合し、次に、上新粉(群馬製粉社製「米の粉」)を加え、更に2分間混合して、米成分と水との混合物を調製した。
Figure 0004245161
そして、懸濁状態にある混合物を、よくかき混ぜ、直接蒸気吹込み式高温瞬間殺菌機(岩井機械社製)に入れて、145℃で4秒間加熱した。その後、直ちにプレートクーラーにより、約15℃まで冷却させ、次いで100mlプラスチック製採水ビンに移して、冷蔵庫中で約5℃の温度にて一晩冷却して米ゼリーを得た。
次に、得られたゼリーについて、固さ(ゲル強度)及び付着性を、レオメーター(レオテック社製「NRM2002J」)にて測定した。測定は、テーブルスピード6cm/分の条件で、径15mmの円筒型プランジャーを試験体に3cm進入させ、直ちに同一条件で引き抜き、この時のプランジャー進入中の応力の最高値とプランジャー引き抜き時の応力の最高値とを測定し、固さ(ゲル強度)及び付着性として表7に示した。尚、固さ(ゲル強度)はプランジャー進入中の荷重の最高値であり、付着性はプランジャー引き抜き時の荷重の最高値である。
一方、比較例として、懸濁状態にある混合物を、よくかき混ぜ、電子レンジで90℃まで加熱して、途中で数回かき混ぜながら、糊化して均質になるまで約15分間加熱した。その後、100mlプラスチック製採水ビンに移して、冷蔵庫で約5℃の温度下で一晩冷却して米ゼリーを得た。そして、得られたゼリーの固さ(ゲル強度)及び付着性を、レオメーター(レオテック社、型式「NRM2002J」)にて測定して結果を表7に示した。
また、5名のパネラーにより官能検査を実施して、風味(口に含んだときの味や臭い)及び食感(口に含んだときに感じる食品の物性がもたらす感覚)について評価し、その結果を表7に示した。
Figure 0004245161
この結果、高温瞬間加熱処理した実施例7の方が、非高温瞬間加熱処理した比較例4に比べ、柔らかく、口腔内での付着性も低いこと、また、風味も、より炊いた米に近いことが確認された。従って、米成分と水との混合物にゲル化剤を添加して、高温瞬間加熱処理することで、食べやすく、風味のよいゼリーが作れ、嚥下障害者用にも向いている食品とすることができることが確認された。
<試験例7>[高温瞬間加熱処理した米由来組成物を含有する食品の固さ及び付着性の検討 その2]
試験例6でゲル化剤の種類を変えて、米成分と水との混合物にゲル化剤を添加し、この混合物を高温瞬間加熱処理して、米由来組成物を含有するゼリー食品を製造して、得られたゼリー食品の固さ(ゲル強度)及び付着性を検討した。
まず、表8に示す配合で、500mlガラスビーカーに水とゲル化剤を入れ、ミキサー(特殊機化社製「TKホモミキサー」)で10分間混合し、次に、上新粉(群馬製粉社製「米の粉」)を加え、更に2分間混合して、米成分と水との混合物を調製した。
Figure 0004245161
そして、懸濁状態にある混合物を、よくかき混ぜ、直接蒸気吹込み式高温瞬間殺菌機(岩井機械社製)に入れて、145℃で4秒間加熱した。その後、直ちにプレートクーラーにより、約15℃まで冷却させ、次いで100mlプラスチック製採水ビンに移して、冷蔵庫で約5℃の温度下で一晩冷却して米ゼリーを得た。
次に、得られたゼリーについて、固さ(ゲル強度)及び付着性を、レオメーター(レオテック社製「NRM2002J」)を用いて測定した。測定は、試験例6と同様の方法で行い、結果を表9に示した。
一方、比較例として、レトルト平パウチに200g分取し、レトルト殺菌機(日阪製作所社製「RCS−40RTG」)で、121℃、15分間加熱した。その後、30秒冷却し、直ちに、開封して、100mlプラスチック製採水ビンに移して、冷蔵庫で約5℃の温度下で一晩冷却して米ゼリーを得た。そして、得られたゼリーの固さ(ゲル強度)及び付着性を同様にして測定し、表9に示した。
尚、レトルト殺菌機の加熱条件は100℃まで上昇するのに約2分間、121℃までに上昇するのに約5分間要した。
また、5名のパネラーにより官能検査を実施して、風味(口に含んだときの味や臭い)及び食感(口に含んだときに感じる食品の物性がもたらす感覚)について評価し、その結果を表9に示した。
Figure 0004245161
この結果、高温瞬間加熱処理した実施例8の方が、非高温瞬間加熱処理した比較例5に比べ、柔らかく、口腔内での付着性も低いこと、また、風味も、より炊いた米に近いことが確認された。従って、米成分と水との混合物にゲル化剤を添加して、高温瞬間加熱処理することで、食べやすく、風味のよりゼリーが作れ、嚥下障害者用にも向いている食品とすることができることが確認された。
また、試験例6に比べ、添加するゲル化剤の種類を変えることでゼリーの固さや付着性が異なる結果であった。これらの結果から、一般的に食品に用いられるゲル化剤を用いて、固さを調整できることが確認された。
以上、本発明の米由来組成物について、米、米粉、米デンプン等の米成分を原料とした実施例を挙げて説明してきたが、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。例えば、麦、トウモロコシ、そば等の米以外の穀物の穀粉、デンプン等であっても、米成分と同様に、穀物成分と水との混合物を高温瞬間加熱処理を行うことで粘性及び付着性が低減した穀物由来組成物を生成することができる。
本発明は、粘性及び付着性が低減された米風味を有する飲食品に利用できる。また、咀嚼・嚥下機能が低下した嚥下障害者用の飲食品としても利用できる。更には、飲食品に米風味を付与する米風味付与剤としても利用できる。
高温瞬間加熱処理で得られた米由来組成物が再加熱された場合の各手順での粘度を上新粉の配合割合別に示した図である。 高温瞬間加熱処理で得られた米由来組成物が再加熱された場合の各手順での粘度について、加熱処理温度別に示した図である。 高温瞬間加熱処理で得られた米由来組成物が再加熱された場合の各手順での粘度について、加熱処理時間別に示した図である。

Claims (11)

  1. 米粉と、水と、ゲル化剤との混合物を、0.01〜1秒以内に、100℃〜165℃になるように加熱処理してなる米由来組成物。
  2. 前記ゲル化剤が、寒天、ゼラチン、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びグアーガムからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の米由来組成物。
  3. 前記ゲル化剤が、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の米由来組成物。
  4. 前記ゲル化剤が、カラギーナン、キサンタンガム、及びジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項1に記載の米由来組成物。
  5. 請求項1から4のいずれか一項に記載の米由来組成物を、全部又は一部含有する飲食品。
  6. 前記飲食品が、嚥下障害者用である請求項5に記載の飲食品。
  7. 請求項1から4のいずれか一項に記載の米由来組成物を、全部又は一部含有する米風味付与剤。
  8. 米粉と、水と、ゲル化剤との混合物を加熱処理する米由来組成物の製造方法であって、
    前記加熱処理が、0.01〜1秒以内に、100℃〜165℃になるような加熱処理である米由来組成物の製造方法。
  9. 前記ゲル化剤が、寒天、ゼラチン、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、及びグアーガムからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項8に記載の米由来組成物の製造方法。
  10. 前記ゲル化剤が、寒天、カラギーナン、キサンタンガム、ローカストビーンガム、及びジェランガムからなる群から選ばれる少なくとも一つである請求項8に記載の米由来組成物の製造方法。
  11. 米粉と、水と、ゲル化剤との混合物を加熱処理して得られる米由来組成物の付着性の低減化方法であって、
    前記加熱処理が、0.01〜1秒以内に、100℃〜165℃になるような加熱処理である米由来組成物の付着性の低減化方法。
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