JP2004131536A - ポリマー改質剤とその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】改質するポリマーとの相溶性が良い重合体を付与するモノマーと、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーとを、遷移金属とその配位子の存在下、重合開始剤を用いて、適宜の順にリビングラジカル重合して、少なくともひとつの重合体ブロックが改質するポリマーとの相溶性が良い重合体からなり、かつ他の少なくともひとつの重合体ブロックがポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体からなり、共重合体全体の数平均分子量が3,000〜100,000であるブロック共重合体を生成し、これを有効成分とすることを特徴とするポリマー改質剤の製造方法。
【選択図】 なし
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種のポリマーに添加して、このポリマーの特性、とくに透湿性を改質するためのポリマー改質剤に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
皮膚面に貼り付けて使用する粘着シートは、通常、基材の片面に粘着剤層を設けてなるものであり、この粘着剤層を介して適用するべき皮膚面に貼り付けて使用される。このような粘着シートに用いる粘着剤は、一般に、ゴム系粘着剤と、アクリル系粘着剤とに大別される。
【0003】
ゴム系粘着剤は、天然ゴムやイソプレンゴム、スチレン/イソプレン/スチレン系ゴムなどのゴム質ポリマーに粘着付与剤や軟化剤などを配合してなるものであり、皮膚面に対してすぐれた接着力を有している。しかし、この粘着剤は、一般に、疎水性が高く透湿性が低いため、貼り付け使用中に皮膚面からの発汗などにより皮膚面が蒸れて皮膚刺激を起こすなどの問題があった。
【0004】
また、アクリル系粘着剤は、(メタ)アクリレート系重合体を主剤成分とし、水酸基含有モノマーやカルボキシル基含有モノマーを共重合させることにより、またこれらのモノマーとともに、アルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレートやアルコキシアルキル(メタ)アクリレートなどを共重合させることにより、透湿性を付与するようにしている(特許文献1,2,3参照)。しかし、この透湿性と皮膚面への接着性を両立させるのが難しかった。
【0005】
【特許文献1】
特開2000−8013号公報(第2〜4頁、第7頁)
【特許文献2】
特開平10−158621号公報(第2〜4頁、第7頁)
【特許文献3】
特開2002−65841号公報(第2〜3頁、第7〜8頁)
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
このように、従来の粘着剤では、皮膚面に対する接着性と透湿性をともに満足するものは得られていなかった。そこで、前記したアクリル系粘着剤における共重合方式に代えて、ゴム質ポリマーや(メタ)アクリレート系重合体などの主剤ポリマーに対し、その接着性を損なうことなく透湿性を付与する透湿性付与剤をポリマー改質剤として添加する試みがなされている。
【0007】
このようなポリマー改質剤としては、分子中に水酸基、カルボキシル基またはその塩、アミド基などの親水性基を含有するポリマー、たとえば、ポリエチレングリコール、ポリビニルエチルエーテル、ポリヒドロキシプロピルアクリレートなどが考えられる。しかし、これらのポリマーでは、改質する粘着剤ポリマーとの相溶性に劣ると、白濁したり、ブリードやマイグレートなどの現象により表面に偏析することがあり、それに伴い接着性の低下を招きやすい。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑み、各種のポリマーに対して相溶性にすぐれ、各種のポリマーに添加したときの白濁や偏析現象などがみられず、透湿性向上効果にすぐれたポリマー改質剤を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するため、鋭意検討した結果、少なくとも2種の特定のビニル系モノマーを、特定の重合活性化剤と重合開始剤を用いて、適宜の順にリビングラジカル重合させて、少なくともひとつの重合体ブロックが改質するポリマーとの相溶性が良く、かつ他の少なくともひとつの重合体ブロックが透湿性付与成分として機能する特定分子量のブロック共重合体を生成し、これを有効成分とすることにより、各種のポリマーに対して相溶性にすぐれ、各種のポリマーに添加したときの白濁や偏析現象などがみられず、透湿性向上効果にすぐれたポリマー改質剤が得られることを知り、本発明を完成した。
【0010】
すなわち、本発明は、少なくともひとつの重合体ブロックが改質するポリマーとの相溶性が良い重合体からなり、かつ他の少なくともひとつの重合体ブロックがつぎの一般式(1);
(式中、R1 は水素原子またはメチル基、R2 は水素原子または炭素数1〜
4のアルキル基、mは2〜6の数、nは2〜15の数である)
で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体からなり、共重合体全体の数平均分子量が3,000〜100,000であるブロック共重合体を有効成分とすることを特徴とするポリマー改質剤、とくに、上記のブロック共重合体が、改質するポリマーとの相溶性が良い重合体ブロックAと一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体ブロックBとからなる、A−B型、A−B−A型またはB−A−B型である上記構成のポリマー改質剤に係るものである。
また、本発明は、改質する各種のポリマーに上記構成のポリマー改質剤を添加してなるポリマー組成物を提供できるものである。
【0011】
また、本発明は、改質するポリマーとの相溶性が良い重合体を付与するモノマーと、つぎの一般式(1);
(式中、R1 は水素原子またはメチル基、R2 は水素原子または炭素数1〜
4のアルキル基、mは2〜6の数、nは2〜15の数である)
で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーとを、遷移金属とその配位子の存在下、重合開始剤を用いて、適宜の順にリビングラジカル重合して、少なくともひとつの重合体ブロックが改質するポリマーとの相溶性が良い重合体からなり、かつ他の少なくともひとつの重合体ブロックが上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体からなり、共重合体全体の数平均分子量が3,000〜100,000であるブロック共重合体を生成し、これを有効成分とすることを特徴とするポリマー改質剤の製造方法に係るものであり、とくに、上記の遷移金属と配位子の組み合わせがCu+1−ビピリジン錯体である上記構成のポリマー改質剤の製造方法に係るものである。
【0012】
【発明の実施の形態】
リビングラジカル重合法に関しては、たとえば、(1)Pattenらによる報告、“Radical Polymerization Yielding Polymers with Mw/Mn 〜 1.05 by Homogeneous Atom Transfer Radical Polymerization ”Polymer Preprinted,pp 575−6,No37(March 1996)、(2)Matyjasewskiらによる報告、“Controlled/LivingRadical Polymerization. Halogen Atom Transfer Radical Polymerization Promoted by a Cu(I)/Cu(II)Redox Process ”Macromolecules 1995,28,7901−10(October 15,1995)、(3)同著PCT/US96/03302,International Publication No.WO96/30421 (October 3,1996)、(4)M.Sawamotoらの報告、“Ruthenium−mediated Living Radical polymerization of Methyl Methacrylate ”Macromolecules,1996,29,1070.などが知られている。
【0013】
本発明者らは、このリビングラジカル重合法に着目して、活性化剤として遷移金属とその配位子を使用し、これらの存在下、重合開始剤を使用して、改質するポリマーとの相溶性が良い重合体を付与するモノマーとポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーとを、適宜の順にリビングラジカル重合させることにより、少なくともひとつの重合体ブロックが改質するポリマーに対し相溶性が良い重合体からなり、かつ他の少なくともひとつの重合体ブロックがポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体からなるブロック共重合体を、容易に生成できることを見い出した。
【0014】
このブロック共重合体とは、改質するポリマーとの相溶性が良い重合体ブロックAと、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体ブロックBとからなるものであり、代表的には、A−B型、A−B−A型またはB−A−B型のブロック共重合体が挙げられる。その他、A−B−A−B型、A−B−A−B−A型などの任意のブロック共重合体を生成できる。また、トリブロック以上のブロック共重合体では、2種以上の重合体ブロックA(または2種以上の重合体ブロックB)がそれぞれ異なる単量体組成から構成されていてもよい。たとえば、A−B−A型ではA1−B−A2型(A1とA2が異なる単量体組成)となっていてもよく、B−A−B型ではB1−A−B2型(B1とB2が異なる単量体組成)となっていてもよい。
【0015】
このようなブロック共重合体は、A−B型では、重合系内に重合体ブロックAを生成するモノマー、つまり改質するポリマーとの相溶性が良い重合体を付与するモノマーを添加して重合させたのち、重合体ブロックBを生成するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーを添加して重合させるか、これと逆の順に添加して重合させることにより、ジブロック体を生成すればよい。また、A−B−A型(またはB−A−B型)では、上記のようにジブロック体を生成したのち、さらに重合体ブロックA(または重合体ブロックB)を生成するモノマーを添加して重合を続け、トリブロック体を生成すればよい。
【0016】
A−B−A型のブロック共重合体については、2官能の重合開始剤を用いて、まず、重合体ブロックBを生成するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーを添加して重合させ、ついで、重合体ブロックAを生成するモノマーを添加して重合させることにより、最初に生成した重合体ブロックBの両末端に重合体ブロックAを生成させるという方式で、合成することも可能である。同様に、B−A−B型のブロック共重合体についても、2官能の重合開始剤を用いて、上記方式に準じて合成することが可能である。
【0017】
このような種々の方法でリビングラジカル重合させるにあたり、後で添加するモノマーは、先に添加したモノマーの重合率が少なくとも60重量%を超えた時点、とくに好ましくは80重量%を超えた時点で、添加するのがよい。先に添加したモノマーの重合率が低すぎると、ランダム共重合体部分が多くなり、ポリマー改質剤としての性能に劣りやすい。ここで、上記の重合率とは、〔(加熱し揮発成分を除去したポリマー重量)/(揮発成分を除去する前の重合溶液の重量)〕×100(%)、で定義される割合を意味している。
【0018】
本発明における改質するポリマーとの相溶性が良い重合体を付与するモノマーとしては、リビングラジカル重合が可能なビニル系モノマーを広く使用できる。具体的には、一般式(2);CH2 =CR3 COOR4 (式中、R3 は水素原子またはメチル基、R4 は炭素数2〜14のアルキル基である)で表される(メタ)アクリレート系モノマー、中でも、n−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレートなどの炭素数4〜12のアルキル基を有する(メタ)アクリレート系モノマーのほか、スチレン、α−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−メトキシスチレンなどのスチレン系モノマー、イソボルニルアクリレートやジシクロペンタニルアクリレートなどが用いられる。これらのモノマーの中から、改質するポリマーの種類に応じて、このポリマーとの相溶性が良い重合体を付与するモノマーが選択使用される。
【0019】
本発明におけるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーとは、つぎの一般式(1);
(式中、R1 は水素原子またはメチル基、R2 は水素原子または炭素数1〜
4のアルキル基、mは2〜6の数、nは2〜15の数である)
で表されるモノマーであり、式中、mは2〜6の数であるが、好ましくは2または3であり、より好ましくは2である。mが大きくなると透湿性に劣る場合があり、また原料の入手が難しくなる。なお、1分子中に、たとえば、mが2のものと3のものとが含まれていてもよい。つまり、これらのランダムまたはブロック共重合鎖を有していてもよい。
具体的には、m=2のモノマーでは、たとえば、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート(R1 =CH3 基、R2 =CH3 基)、メトキシポリエチレングリコールモノアクリレート(R1 =H、R2 =CH3 基)、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(R1 =CH3 基、R2 =H)、ポリエチレングリコールモノアクリレート(R1 =H、R2 =H)などがある。
【0020】
これらのモノ(メタ)アクリレートにおいて、nは2〜15、好ましくは4〜12の数であり、たとえば、n=2であれば、メトキシジエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシジエチレングリコールモノアクリレート、ジエチレングリコールモノメタクリレート、ジエチレングリコールモノアクリレートとなり、n=3であれば、メトキシトリエチレングリコールモノメタクリレート、メトキシトリエチレングリコールモノアクリレート、トリエチレングリコールモノメタクリレート、トリエチレングリコールモノアクリレートとなる。nが長くなると重合性に劣り、また短くなると透湿性に劣るようになる。
【0021】
これらのモノ(メタ)アクリレートの中でも、R2 =CH3 基であるメトキシポリエチレングリコールモノメタクリレートやメトキシポリエチレングリコールモノアクリレートなどが、重合のしやすさから、望ましい。また、これらのモノ(メタ)アクリレートは、1種のみを単独で使用してもよいし、重合のしやすさから、2種以上の混合物として使用してもよい。
市販品としては、m=2のモノマーでは、後記の実施例の欄に示す日本油脂社製の「ブレンマーPME400」、「ブレンマーAME400」、「ブレンマーPE350」などが挙げられ、その他、日本油脂社製の「ブレンマーPME200」(R1 =CH3 基、R2 =CH3 基、n=4)、「ブレンマーAE400」(R1 =H、R2 =H、n=10)などが挙げられる。また、m=3のモノマーでは、日本油脂社製の「ブレンマーAP−150」(n=3)、「ブレンマーAP−400」(n=6)、「ブレンマーAP−550」(n=9)(いずれも、R1 =H、R2 =H)などがある。
また、mが2と3とのランダム共重合鎖を有するモノマーとして、日本油脂社製の「ブレンマー70PEP−350B」〔R1 =CH3 基、R2 =H、n=5(m=2)+2(m=3)〕が、また、mが2と4とのランダム共重合鎖を有するモノマーとして、日本油脂社製の「ブレンマー70PEP−400」〔R1 =CH3 基、R2 =H、n=5(m=2)+2(m=4 )〕が挙げられる。
なお、市販品しては、nが異なるものの混合物として市販されていることが多いが、このような混合物であってもかまわない。
【0022】
本発明において、上記のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの使用量は、改質するポリマーとの相溶性が良い重合体を付与するモノマーとの合計量中、つまり全モノマー中、10〜95重量%とするのがよい。本発明では、リビングラジカル重合法によりブロック共重合体を生成するため、透湿性付与成分としての上記モノマーを上記範囲内での任意の割合で共重合させることが可能である。なお、上記モノマーが10重量%より少なくなると、改質するポリマーに対して多量配合しなければ透湿性向上効果が得らず、この場合、改質するポリマー本来の性能である接着性などを損なう結果となり、好ましくない。より少ない配合量で大きな透湿性向上効果を得るためには、上記モノマーの使用量は、全モノマー中、30重量%以上であるのが望ましい。
【0023】
本発明のリビングラジカル重合にあたり、使用する遷移金属としては、Cu、Ru、Fe、Rh、VまたはNiがあり、通常、これら金属のハロゲン化物(塩化物、臭化物など)の中から、用いられる。また、配位子は、遷移金属を中心にして配位して錯体を形成するものであつて、ビピリジン誘導体、アミン誘導体、メルカプタン誘導体、トリフルオレート誘導体などが好ましく用いられる。遷移金属とその配位子の組み合わせの中でも、Cu+1−ビピリジン錯体が、重合の安定性や重合速度の面で、最も好ましい。
【0024】
さらに、重合開始剤としては、α−位にハロゲンを含有するエステル系またはスチレン系誘導体が好ましく、とくに2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸誘導体、塩化(または臭化)1−フエニル誘導体が好ましい。
具体的には、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸メチル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸エチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸エチル、塩化(または臭化)1−フェニルエチル、2−ブロモ(またはクロロ)イソ酪酸エチルなどが好ましく用いられる。
また、上記のような1官能の重合開始剤のほかに、既述した2官能の重合開始剤、つまり分子内に臭素や塩素を2箇所有するものとして、エチレンビス(2−ブロモ−2−メチルプロピオネート)なども用いられる。
【0025】
リビングラジカル重合において、重合開始剤としては、モノマー全体に対し、通常0.01〜10モル%、好ましくは0.1〜5モル%の割合で用いられる。また、遷移金属の使用量は、ハロゲン化物などの形態として、上記重合開始剤1モルに対し、通常0.01〜3モル、好ましくは0.1〜1モルの割合で用いられる。さらに、その配位子は、上記の遷移金属(ハロゲン化物などの形態)1モルに対し、通常1〜5モル、好ましくは2〜3モルの割合で用いられる。
重合開始剤と活性化剤をこのような使用割合にすると、リビングラジカル重合の反応性、生成するブロック共重合体の分子量などに好結果が得られる。
【0026】
このようなリビングラジカル重合は、無溶剤でも進行させることができるし、酢酸ブチル、トルエン、キシレンなどの溶剤の存在下で進行させてもよい。溶剤を用いる場合、重合速度の低下を防ぐため、重合終了後の溶剤濃度が50重量%以下となる少量の使用量とするのがよい。無溶剤または少量の溶剤量でも、重合熱の制御などに関する問題はなく、むしろ溶剤削減によって経済性や環境対策などの面で好ましい結果が得られる。また、重合条件としては、重合速度や触媒の失活の点より、70〜110℃の重合温度で、最終的な分子量や重合温度にも依存するが、約1〜100時間の重合時間とすればよい。
【0027】
このようにして得られるブロック共重合体は、共重合体全体の数平均分子量が3,000〜100,000、好ましくは10,000〜100,000の範囲にあるのがよい。数平均分子量とは、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)法によるポリスチレン換算にて求められる値である。分子量が低すぎると、改質するポリマーに添加したときに経日で表面にマイグレートしやすい。分子量が高すぎると、ポリマーとの相溶性が悪くなる。
【0028】
なお、ブロック共重合体全体の数平均分子量〔Mn〕は、Mn(計算値)=〔(モノマーの分子量)×(モノマーのモル比)〕/(重合開始剤のモル比)にて与えられることが知られている。このため、理論的には、用いるモノマーと重合開始剤の仕込み比率とを調節することにより、ブロック共重合体全体の数平均分子量を意図的に制御することが可能である。
【0029】
また、上記のブロック共重合体は、その分子鎖中にあらかじめ水酸基やエポキシ基などの官能基を含ませておき、これを改質するポリマーに添加したポリマー組成物を架橋処理して網状化ないし高分子量化する際に、改質するポリマーとの間で上記官能基を利用して相互架橋させると、ポリマー組成物からなる成形体表面へのブロック共重合体の偏析現象をより一段と防止できる。
したがって、本発明では、このような分子中に水酸基やエポキシ基などの官能基を含ませたブロック共重合体を生成するのが望ましい。
【0030】
このような官能基を含ませたブロック共重合体は、前記したリビングラジカル重合法において、分子内に水酸基またはエポキシ基を有する重合開始剤および/または分子内に水酸基またはエポキシ基を有するモノマーを用いることにより、容易に生成することができる。ここで、上記の重合開始剤を用いると、重合開始末端に上記官能基を導入でき、上記のモノマーを用いると、その添加時期に応じて重合体鎖の任意位置に導入できる。上記重合開始剤を使用し、かつ上記モノマーを重合後期に添加して重合すると、重合開始末端と重合停止末端とに、つまり分子両末端に上記官能基が導入された、いわゆるテレケリック型のブロック共重合体を生成でき、架橋効率を向上できるので、望ましい。
【0031】
分子内に水酸基またはエポキシ基を有する重合開始剤としては、α−位にハロゲンを含有するエステル系またはスチレン系誘導体であって、その分子内に水酸基またはエポキシ基を有するもので、リビングラジカル重合の進行を阻害するものでない限り、使用することができる。
具体的には、水酸基を有する重合開始剤として、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸2−ヒドロキシエチル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸4−ヒドロキシブチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸2−ヒドロキシエチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸4−ヒドロキシブチルなどが挙げられる。
また、エポキシ基を有する重合開始剤として、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸グリシジル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸グリシジル、2−ブロモ(またはクロロ)プロピオン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチル、2−ブロモ(またはクロロ)−2−メチルプロピオン酸3,4−エポキシシクロヘキシルメチルなどが挙げられる。
【0032】
分子内に水酸基を有するモノマーには、一般式(3);CH2 =CR5 COOR6 (式中、R5 は水素原子またはメチル基、R6 は水酸基を少なくとも1個有する炭素数2〜6のアルキル基である)で表されるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、たとえば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレートなどがある。
また、分子内にエポキシ基を有するモノマーとしては、一般式(4);CH2 =CR7 COOR8 (式中、R7 は水素原子またはメチル基、R8 はエポキシ基を少なくとも1個有する炭素数2〜6のアルキル基である)で表されるエポキシ基含有(メタ)アクリレート、たとえば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート、6−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0033】
本発明のポリマー改質剤は、このようなブロック共重合体を有効成分としたものであり、これを改質するポリマーに添加してなるポリマー組成物は、ブロック共重合体の重合体ブロックA、つまり改質するポリマーとの相溶性が良い重合体ブロックの働きにより、またこのブロック共重合体が適度な分子量を有していることにより、白濁や偏析などの現象をみることなく、ブロック共重合体の重合体ブロックB、つまりポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体ブロックの働きにより、すぐれ透湿性が付与される。
【0034】
本発明において、改質するポリマーには、アクリル系、ゴム系、シリコーン系などの粘着剤の主剤ポリマーが挙げられるが、粘着剤に限らず、透湿性を有することが望まれる各種用途のベースポリマーに対して同様に適用できることはいうまでもない。これらのポリマーに本発明のポリマー改質剤を添加するにあたり、ブロック共重合体を2種以上組み合わせて添加してもよい。
【0035】
本発明のポリマー組成物において、ポリマー改質剤の添加量としては、添加後のポリマー組成物全体中に占める重合体ブロックBの割合、つまりポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体ブロックの割合が10〜70重量%、好ましくは20〜60重量%となるようにするのがよい。重合体ブロックBの上記割合が10重量%未満となると、ポリマー組成物の透湿性の向上効果が乏しくなり、また70重量%を超えると、ポリマー組成物本来の特性、たとえば粘着性などが損なわれるおそれがある。
【0036】
本発明のポリマー組成物が、アクリル系、ゴム系、シリコーン系などの主剤ポリマーに対して本発明のポリマー改質剤を添加した粘着剤組成物であるときは、この粘着剤組成物を基材の片面に厚さが通常10〜50μmとなるように設けることにより、皮膚貼り付け用として有用な粘着シートとすることができる。ここで、基材としては、粘着剤層を支持できかつ透湿性を有するものであれば、その材質はとくに限定されないが、一般には、不織布や微細通気孔を形成したフィルム、さらには透湿性フィルムなどが好ましく用いられる。
【0037】
上記の透湿性フィルムとは、皮膚への貼り付け時に蒸れや白化などを生じることのない、水蒸気透過性を有するフィルムである。具体的には、ポリエーテルウレタンやポリエステルウレタンなどのウレタン系ポリマー、ポリエーテルポリアミドブロックポリマーなどのアミド系ポリマー、ポリアクリレートなどのアクリル系ポリマー、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン/酢酸ビニル共重合体などのポリオレフィン系ポリマー、ポリエーテルポリエステルなどのポリエステル系ポリマーなどから選ばれる1種または2種以上のポリマーのフィルム、これらのフィルムを複数枚積層した積層フィルムなどが挙げられる。このうち、ウレタン系ポリマーやアミド系ポリマーを使用したフィルムや積層フィルムは、水蒸気透過性にすぐれており、とくに好ましく用いられる。
【0038】
このような基材上に粘着剤層を設けるにあたり、基材上に前記した粘着剤組成物を直接塗設してもよいし、剥離処理フィルム上に粘着剤組成物を塗設したのちこれを基材上に転写してもよい。粘着剤組成物を架橋処理する際には、基材上または剥離処理フィルム上に塗設する際に(つまり、塗布し乾燥する際または乾燥後に)、あるいは基材への転写後に、行うことができる。
【0039】
このようにして得られる粘着シートは、基材を含めた全体の透湿度が40℃,30%RHで300g以上/m2 ・24時間、好ましくは800g以上/m2 ・24時間(通常3,000gまで/m2 ・24時間)となるように容易に設定できる。上記透湿度が300g未満/m2 ・24時間では、発汗量が多い部位などに貼り付けたときに蒸れなどの問題が起こりやすい。300g以上/m2 ・24時間という大きな透湿度とすることで、このような問題が起こりにくくなり、救急絆創膏、大型絆創膏、ドレッシング材、ドレープ材などの皮膚貼り付け用として、またその他の用途にも有利に使用できる。
【0040】
【実施例】
以下に、本発明の実施例を記載して、より具体的に説明する。
なお、以下の製造例において、製造原料には大部分は市販の原料を用いたが、水酸基を含有する重合開始剤である2−ブロモ−2−メチルプロピオン酸2−ヒドロキシエチル(以下、2−H2MPNという)は、下記のように合成した。
【0041】
<2−H2MPNの合成>
過剰のエチレングリコール22ミリリットル(395ミリモル)、トリエチルアミン50ミリリットル(359ミリモル)およびピリジン10ミリリットル(100ミリモル)を反応容器に入れ、これにアセトン500ミリリットルおよび2−ブロモイソブチリルブロミド75g(326ミリモル)を、発熱反応を抑えるために氷浴で冷却しながら、添加した。
終夜反応後、析出物をろ去し、これに酢酸エチル500ミリリットルおよび飽和食塩水250ミリリットルを加え、よく振とうした。しばらく静置したのち、上層の酢酸エチル層を希塩酸で2回、飽和食塩水250ミリリットルでも3回洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。硫酸マグネシウムを除去したのち、酢酸エチルを減圧留去し、粗生成物を得た。このようにして得られた粗生成物を、蒸留法(87〜90℃/0.25mmHg)で精製して、目的物である2−H2MPNを得た。その収量は45g(収率:65重量%)であった。
【0042】
なおまた、以下の実施例において、改質するポリマーとしては、下記の製造例1,2で製造したポリマー(イ),(ロ)を使用した。また、以下において、分子量の測定は、本文中に記載したGPC法により、行ったものである。
【0043】
製造例1
メカニカルスターラ、窒素導入管および冷却管を備えた4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート45g、ブチルアクリレート40g、アクリル酸8g、2−ヒドロキシエチルアクリレート7gおよび酢酸エチル200gを投入し、系内を窒素置換した。これにベンゾイルパーオキサイド0.4gを加え、反応系を60℃に加熱して、窒素気流下で60℃で8時間重合し、さらに70℃で2時間重合した。
このようにして得たランダム共重合体は、数平均分子量〔Mn〕が88,000、重量平均分子量〔Mw〕が739,000で、分子量分布〔Mw/Mn〕が8.4であった。これを改質するポリマー(イ)とした。
【0044】
製造例2
メカニカルスターラ、窒素導入管、冷却管およびラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、スチレン100gを投入し、これに2,2′−ビピリジン1.95g(12.5ミリモル)を加えて、系内を窒素置換した。これに、窒素気流下、臭化銅715mg(5.0ミリモル)を加えて、反応系を90℃に加熱し、重合開始剤として2−H2MPNを1,055mg(5.0ミリモル)加えて、重合を開始し、溶剤を加えずに窒素気流下、90℃で12時間重合した。これに、ブチルアクリレート400gをラバーセプタムから加え、さらに20時間加熱して重合を続けた。その後、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート4.3g(25ミリモル)を加えて、終夜重合した。得られた重合物を酢酸エチルで20%程度に希釈し、触媒をろ去し、最後に酢酸エチルを留去/減圧加熱(60℃)することにより、重合物を精製した。
このようにして得たA−B型のジブロック共重合体は、数平均分子量〔Mn〕が89,500、重量平均分子量〔Mw〕が196,900で、分子量分布〔Mw/Mn〕が2.2であった。これを改質するポリマー(ロ)とした。
【0045】
実施例1
メカニカルスターラ、窒素導入管、冷却管およびラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート10gおよびブチルアクリレート15gを投入し、これに2,2′−ビピリジン2.73g(17.5ミリモル)を加えて、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、臭化銅1.0g(7.0ミリモル)を加えて、反応系を100℃に加熱し、重合開始剤として2−H2MPNを1.48g(7.0ミリモル)加えて、重合を開始し、溶剤を加えずに窒素気流下、8時間重合した。これに、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーとして日本油脂社製の「ブレンマーAME400」〔一般式(1)中、R1 =H、R2 =CH3 基、m=2、n=9〕25gをラバーセプタムから加えて、8時間重合した。その後、さらに6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1.55g(9.0ミリモル)を加え、80℃で8時間重合した。
このようにして得た分子両末端に水酸基を有するA−B型のブロック共重合体を、ポリマー(イ)用のポリマー改質剤(1)とした。
【0046】
実施例2
メカニカルスターラ、窒素導入管、冷却管およびラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーとして日本油脂社製の「ブレンマーPME400」〔一般式(1)中、R1 =CH3 基、R2 =CH3 基、m=2、n=9〕30gを投入し、これに2,2′−ビピリジン650mg(4.17ミリモル)を加えて、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、臭化銅260mg(1.67ミリモル)を加えて、反応系を80℃に加熱し、重合開始剤として2−H2MPNを352mg(1.67ミリモル)加えて、重合を開始し、溶剤を加えずに窒素気流下、12時間重合した。これに2−エチルヘキシルアクリレート20gをラバーセプタムから加え、90℃で14時間重合した。その後、さらに6−ヒドロキシヘキシルアクリレート1.43g(8.3ミリモル)を加えて、8時間重合した。
このようにして得た分子両末端に水酸基を有するA−B型のブロック共重合体を、ポリマー(イ)用のポリマー改質剤(2)とした。
【0047】
実施例3
メカニカルスターラ、窒素導入管、冷却管およびラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、日本油脂社製の「ブレンマーPME400」(前出)40gを投入し、これに2,2′−ビピリジン1,114mg(7.14ミリモル)を加えて、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、臭化銅409mg(2.86ミリモル)を加えて、反応系を80℃に加熱し、重合開始剤として2−H2MPNを603mg(2.86ミリモル)加えて、重合を開始し、溶剤を加えずに窒素気流下、5時間重合した。これに、ブチルアクリレート20gをラバーセプタムから加えて、14時間重合した。さらに、日本油脂社製の「ブレンマーPME400」(前出)40gを加えて、5時間重合した。最後に、さらに6−ヒドロキシヘキシルアクリレート2.46g(14.3ミリモル)を加えて、8時間重合した。
このようにして得た分子両末端に水酸基を有するB−A−B型のブロック共重合体を、ポリマー(イ)用のポリマー改質剤(3)とした。
【0048】
実施例4
メカニカルスターラ、窒素導入管、冷却管およびラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、ブチルアクリレート40gおよびスチレン40gを投入し、これに2,2′−ビピリジン1,040mg(6.67ミリモル)を加えて、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、臭化銅382mg(2.67ミリモル)を加えて、反応系を90℃に加熱し、重合開始剤として2−H2MPNを526mg(2.67ミリモル)加えて、重合を開始し、溶剤を加えずに窒素気流下、100℃で17時間重合した。これにポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーとして日本油脂社製の「ブレンマーPE350」〔一般式(1)中、R1 =CH3 基、R2 =H、m=2、n=8〕20gをラバーセプタムから加えて、8時間重合した。最後に、さらに6−ヒドロキシヘキシルアクリレート0.918g(5.34ミリモル)を加えて、8時間重合した。
このようにして得た分子両末端に水酸基を有するA−B型のブロック共重合体を、ポリマー(ロ)用のポリマー改質剤(4)とした。
【0049】
実施例5
メカニカルスターラ、窒素導入管、冷却管およびラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、日本油脂社製の「ブレンマーPME400」(前出)30gを投入し、これに2,2′−ビピリジン975mg(6.25ミリモル)を加えて、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、臭化銅358mg(2.5ミリモル)を加えて、反応系を80℃に加熱し、重合開始剤として2−H2MPNを985mg(5.0ミリモル)加えて、重合を開始し、溶剤を加えずに窒素気流下、4時間重合した。これにブチルアクリレート10gおよびスチレン15gをラバーセプタムから加えて、10時間重合した。最後に、さらに6−ヒドロキシヘキシルアクリレート0.86g(5ミリモル)を加えて、8時間重合した。
このようにして得た分子両末端に水酸基を有するA−B型のブロック共重合体を、ポリマー(ロ)用のポリマー改質剤(5)とした。
【0050】
比較例1
メカニカルスターラ、窒素導入管、冷却管およびラバーセプタムを備えた4つ口フラスコに、2−エチルヘキシルアクリレート20gおよび日本油脂社製の「ブレンマーPME400」(前出)30gを投入し、これに2,2′−ビピリジン557mg(3.57ミリモル)を加えて、系内を窒素置換した。これに窒素気流下、臭化銅205mg(1.43ミリモル)を加えて、反応系を80℃に加熱し、重合開始剤として2−H2MPNを302mg(1.43ミリモル)加えて、重合を開始し、溶剤を加えずに窒素気流下、18時間重合した。
このようにして得たランダム共重合体を、ポリマー(イ)用のポリマー改質剤(6)とした。
【0051】
比較例2
日本油脂社製の「ブレンマーPME400」の使用量を30gから2.5gに、2−エチルヘキシルアクリレートの使用量を20gから47.5gに、それぞれ変更した以外は、実施例2と同様にして、分子両末端に水酸基を有するA−B型のブロック共重合体を得た。このブロック共重合体を、ポリマー(イ)および(ロ)用のポリマー改質剤(7)とした。
【0052】
以上の実施例1〜5で得られたポリマー改質剤(1)〜(5)および比較例1,2で得られたポリマー改質剤(6),(7)について、数平均分子量〔Mn〕、重量平均分子量〔Mw〕および分子量分布〔Mw/Mn〕を測定した結果は、下記の表1に示されるとおりであった。
【0053】
表1
【0054】
実施例6
ポリマー(イ)3.5gとポリマー改質剤(1)1.5gを酢酸エチル10ミリリットルで希釈した。これに架橋剤としてジフェニルメタンジイソシアネート0.05gを混合して、ポリマー組成物を調製した。
この組成物を、乾燥後の粘着剤層の厚さが50μmとなるように、剥離処理したフィルムに塗布し、120℃で5分間加熱した。50℃で1終夜熱乾燥したのち,不織布基材に転写して、粘着シートを作製した。
【0055】
実施例7〜10および比較例3〜5
ポリマー(イ)の使用量とポリマー改質剤の種類ないし使用量を、表2のように変更した以外は、実施例6と同様にして、ポリマー組成物を調製し、また、この組成物を用いて、実施例6と同様にして、粘着シートを作製した。
【0056】
参考例1
ポリマー(イ)の使用量を5gに変更し、ポリマー改質剤(1)の使用を省いた以外は、実施例6と同様にして、ポリマー組成物を調製し、また、この組成物を用いて、実施例6と同様にして、粘着シートを作製した。
【0057】
表2
【0058】
なお、上記の実施例6〜10、比較例3〜5および参考例1の各ポリマー組成物において、ポリマー(イ)とポリマー改質剤との合計量中、ポリマー改質剤の構成成分であるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマー成分の使用割合は、下記の表3に示されるとおりであった。
【0059】
表3
【0060】
上記の実施例6〜10、比較例3〜5および参考例1で作製した各粘着シートについて、下記の方法により、透湿度、粘着力および相溶性の評価を行った。これらの結果は、表4に示されるとおりであった。
【0061】
<透湿度>
20mlの蒸留水を内径40mm、高さ40mmのガラス製容器に入れ、直径50mmの円形に裁断した粘着シートの粘着剤層を下向きにして容器の口に貼り付け、固定した。粘着シートを貼り付けた容器全体の重量(W1 )を測定したのち、これを40℃,相対湿度30%RHの恒温恒湿機中に入れ、24時間放置後の重量(W2 )を測定した。透湿度(g/m2 )=(W1 −W2 )/(0.02×0.02×π)、を求めた。
なお、参考のため、粘着シートの基材である不織布のみについて、上記同様に透湿度を測定した結果は、3,440g/m2 であった。
【0062】
<粘着力>
幅20mmに切断した粘着シートを、被着体であるベークライト板に、重さ2kgのゴムローラを1往復させて圧着したのち、室温で30分間放置した。これを引張り試験機により、300mm/分の引張り速度で180度剥離し、その剥離に要する力を測定した。
【0063】
<相溶性>
粘着シートを目視判定し、透明であるものを○、明らかに白濁しているものを×、と評価した。
【0064】
表4
【0065】
上記表4の結果から明らかなように、ポリマー(イ)に対して相溶性が良い重合体ブロックと透湿性付与成分であるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体ブロックを有するポリマー改質剤(1)〜(3)を添加した実施例6〜10のポリマー組成物を用いた各粘着シートは、ポリマー改質剤を添加していない参考例1のポリマー組成物を用いた粘着シートに比べて、透湿性を大きく向上できるとともに、ポリマー(イ)とポリマー改質剤(1)〜(3)との相溶性が良好であるため、白濁などの問題を生じることがなく、また粘着力の著しい低下も抑えられていることがわかる。
【0066】
これに対し、ポリマー改質剤(1)の添加量が少なすぎる比較例3のポリマー組成物を用いた粘着シートは、透湿性の向上効果がほとんどみられない。また、ランダム共重合体からなるポリマー改質剤(6)を添加した比較例4のポリマー組成物を用いた粘着シートは、本発明のものに比べると、透湿性の向上効果がかなり低くなっている。さらに、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマー成分の割合が少なすぎるブロック共重合体からなるポリマー改質剤(7)を添加した比較例5のポリマー組成物を用いた粘着シートは、上記添加量を多くしても、透湿性の向上効果がほとんどみられない。
【0067】
実施例11
ポリマー(ロ)2gとポリマー改質剤(4)3gを酢酸エチル10ミリリットルで希釈した。これに架橋剤としてジフェニルメタンジイソシアネート0.05gを混合して、ポリマー組成物を調製した。
この組成物を、乾燥後の粘着剤層の厚さが50μmとなるように、剥離処理したフィルムに塗布し、120℃で5分間加熱した。50℃で1終夜熱乾燥したのち,不織布基材に転写して、粘着シートを作製した。
【0068】
実施例12および比較例6
ポリマー(ロ)の使用量とポリマー改質剤の種類ないし使用量を、表5のように変更した以外は、実施例11と同様にして、ポリマー組成物を調製し、また、この組成物を用いて、実施例11と同様にして、粘着シートを作製した。
【0069】
参考例2
ポリマー(ロ)の使用量を5gに変更し、ポリマー改質剤(4)の使用を省いた以外は、実施例11と同様にして、ポリマー組成物を調製し、また、この組成物を用いて、実施例11と同様にして、粘着シートを作製した。
【0070】
表5
【0071】
なお、上記の実施例11,12、比較例6および参考例2の各ポリマー組成物において、ポリマー(ロ)とポリマー改質剤との合計量中、ポリマー改質剤の構成成分であるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマー成分の使用割合は、下記の表6に示されるとおりであった。
【0072】
表6
【0073】
上記の実施例11,12、比較例6および参考例2で作製した各粘着シートについて、前記と同様にして、透湿度、粘着力および相溶性の評価を行った。これらの結果は、表7に示されるとおりであった。
【0074】
表7
【0075】
上記表7の結果から明らかなように、ポリマー(ロ)に対して相溶性が良い重合体ブロックと透湿性付与成分であるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体ブロックを有するポリマー改質剤(4),(5)を添加した実施例11,12のポリマー組成物を用いた粘着シートは、ポリマー改質剤を添加していない参考例2のポリマー組成物を用いた粘着シートに比べ、透湿性を大きく向上できるとともに、ポリマー(ロ)とポリマー改質剤(4),(5)との相溶性が良好であるため、白濁などの問題を生じることがなく、また粘着力の低下もほとんどみられないことがわかる。
【0076】
これに対し、ポリマー(ロ)に対して相溶性の良い重合体ブロックを有さず、かつ透湿性付与成分であるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体ブロックの含有割合の少ないポリマー改質剤(7)を添加した比較例6のポリマー組成物を用いた粘着シートは、透湿性の向上効果がほとんどみられず、またポリマー(ロ)とポリマー改質剤(7)との相溶性に劣るため、白濁などの問題が生じており、粘着力も大きく低下している。
【0077】
【発明の効果】
以上のように、本発明においては、改質するポリマーとの相溶性が良い重合体を付与するモノマーとポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーとを、特定の重合活性化剤と重合開始剤を用いて、適宜の順にリビングラジカル重合させて、改質するポリマーとの相溶性が良い重合体ブロックと透湿性付与成分として寄与するポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体ブロックとを有する特定分子量のブロック共重合体を生成し、これを有効成分とすることにより、各種のポリマーに対して相溶性にすぐれ、各種のポリマーに添加したときの白濁や偏析現象などがみられず、透湿性向上効果にすぐれたポリマー改質剤を提供できるという格別の効果が奏される。
Claims (5)
- ブロック共重合体は、改質するポリマーとの相溶性が良い重合体ブロックAと一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体ブロックBとからなる、A−B型、A−B−A型またはB−A−B型である請求項1に記載のポリマー改質剤。
- 改質するポリマーとの相溶性が良い重合体を付与するモノマーと、つぎの一般式(1);
(式中、R1 は水素原子またはメチル基、R2 は水素原子または炭素数1〜
4のアルキル基、mは2〜6の数、nは2〜15の数である)
で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーとを、遷移金属とその配位子の存在下、重合開始剤を用いて、適宜の順にリビングラジカル重合して、少なくともひとつの重合体ブロックが改質するポリマーとの相溶性が良い重合体からなり、かつ他の少なくともひとつの重合体ブロックが上記一般式(1)で表されるポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート系モノマーの重合体からなり、共重合体全体の数平均分子量が3,000〜100,000であるブロック共重合体を生成し、これを有効成分とすることを特徴とするポリマー改質剤の製造方法。 - 遷移金属と配位子の組み合わせがCu+1−ビピリジン錯体である請求項3に記載のポリマー改質剤の製造方法。
- 改質するポリマーに、請求項1または2に記載のポリマー改質剤を添加してなるポリマー組成物。
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