JP2004123522A - ガラス光学素子成形用型及びそれを用いた光学素子の製造方法 - Google Patents

ガラス光学素子成形用型及びそれを用いた光学素子の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】成形性、耐久性及び経済性に優れたガラス光学素子成形用型を提供すること、及びこの成形用型を用いたガラス光学素子の製造方法を提供すること。
【解決手段】成形型の成形面にフッ素を含有する炭素系膜を有するガラス光学素子成形用型。この成形型により加熱軟化したガラス素材をプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法。
【選択図】

Description

 本発明は、ガラス光学素子成形用型及びこの成形型を用いるガラス光学素子の製造方法に関する。より詳しくは、本発明は、ガラス素材をプレス成形して、レンズ、ミラー、グレーティング、プリズム、積層型回折光学素子等のガラスまたはガラスを含む複合体よりなる光学素子を製造する際に使用されるに適した成形用型に関する。
 研磨工程なしでガラス素材のプレス成形のみによってレンズを製造する技術は、従来の製造において必要とされた複雑な工程を省略し、簡単且つ安価にレンズを製造することを可能とした。そして、この技術は、近年、レンズのみならずプリズムやその他のガラスよりなる光学素子の製造にも使用されるようになってきた。このようなガラス光学素子のプレス成形に使用される型材に要求される性質としては、硬度、耐熱性、離型性、鏡面加工性等に優れていることが挙げられる。従来、この種の型材として金属、セラミックス及びそれらを他の物質でコーティングした材料等が、数多く提案されている。
 たとえば、型材表面にコーティングする炭素系膜として、以下のものが提案されている。
 特許文献1、2、3:
 ダイヤモンド薄膜もしくはダイヤモンド状炭素膜(DLC膜)、
 特許文献4、5、6:
 硬質炭素膜、
 特許文献7:
 水素で安定化した炭素のネットワーク構造と酸素で安定化したケイ素のネットワーク構造からなる膜材料(C:H- Si: O膜)、
 特許文献8:
 リチウム、カリウム及びナトリウムよりなる1種類以上の元素を含有する炭素を主成分とする炭素膜(アルカリ-C膜)、窒素イオンを注入した炭素を主成分とする膜材料(C:N膜)。
 一方、ガラス素材に炭素系膜をコーティングし、ガラスと型表面との離型性を改善する技術もある。ガラス素材表面にコーティングする炭素系膜として、特許文献9には、主として炭素とフッ素よりなる薄膜で、その元素の構成元素比がF/C=0.4〜2であり、かつ、膜厚が1.5〜10nmである離型層が提案されている。
特開昭61−183134号公報 特開昭61−281030号公報 特開平1−301864号公報 特開昭64−83529号公報 特開平8−259241号公報 特開平8−151217号公報 特開平9−110441号公報 特開平9−71426号公報 特開2001−192231号公報
 DLC膜、硬質炭素膜及びC:N膜を用いた型は、型とガラスの離型性が良く、ガラスの融着を起こしにくい。しかし、成形操作を数100回以上繰り返して行うと、前記膜の膜内の圧縮応力の緩和によるためか、膜が部分的に剥離し十分な成形性能が得られないことがある。
 ダイヤモンド薄膜を用いた型は、表面平滑性および離型性が不十分であり、高品質の成形品が得られないことがある。
 C:H- Si: O膜を用いた型は、成膜により、特に、離型性のバラツキが大きく、融着が多発し成形品において十分な成形性能が得られないことがある。融着は最表面にSi-O結合が多くなった場合に発生すると思われる。
 アルカリ-C膜を用いた型は、成形操作を数100回以上繰り返して行うと、膜表面に析出物が発生し、成形品にクモリや白濁などの欠陥が生じることがある。膜表面の析出物の源はアルカリ-C膜中のアルカリ成分と思われる。
 このように、従来提案されている光学素子成形用型では、成形性、耐久性及び経済性の全てにおいて優れたものは、依然としてないのが現状である。
 また、炭素系膜をコーティングしたガラス素材を使用する場合、コーティングがガラス素材全面に施されていれば、ガラス素材の変形前は、ガラス自身と型表面との直接の接触は防止される。しかし、ガラス素材をプレスし変形が進むことで、コーティングした炭素系膜が分断され、その結果、ガラス素材が、直接、型表面に接触する様になり、炭素系膜による離型性の効果は低下する。
 本発明は、上記事情に基づいてなされたもので、ガラス光学素子成形用型であって、成形性、耐久性及び経済性に優れた光学素子成形用型を提供することを目的とする。
 さらに本発明の目的は、この成形用型を用いたガラス光学素子の製造方法を提供することにある。
 上記課題を解決するための本発明は以下の通りである。
[請求項1]成形型の成形面にフッ素を含有する炭素系膜を有することを特徴とするガラス光学素子成形用型。
[請求項2]フッ素を含有する炭素系膜がフッ素を含有するダイヤモンド膜、フッ素を含有するダイヤモンド状炭素膜(以下、フッ素含有DLC)、フッ素を含有する水素化ダイヤモンド状炭素膜(以下、フッ素含有DLC:H)、フッ素を含有するテトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、フッ素含有ta-C)、フッ素を含有する水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、フッ素含有ta-C:H)、フッ素を含有するアモルファス炭素膜(以下、フッ素含有a-C)、フッ素を含有する水素化アモルファス炭素膜(以下、フッ素含有a-C:H)、またはフッ素を含有する自己組織化膜である請求項1記載の光学素子成形用型。
[請求項3]フッ素を含有する炭素系膜は、膜厚が0.5nm以上1000nm以下である請求項1または2に記載の光学素子成形用型。
[請求項4]フッ素を含有する炭素系膜は、炭素元素とフッ素元素の構成元素比率(F/C)が原子比で0.01以上、2以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子成形用型。
[請求項5]加熱軟化したガラス素材を成形型によりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法であって、前記成形型が請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形用型であることを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
 本発明によれば、ガラス素材を成形用型でプレス成形し、光学素子を製造するに際して、該型母材の成形面にフッ素を含有する炭素膜もしくは水素化炭素膜を形成した光学素子成形用型を用いることにより、型とガラスの融着、クモリ、白濁および/もしくは膜剥離や膜クラック等を生じることなく耐久性良く安定して生産することができる。
 以下、本発明について詳細に説明する。
 本発明は、ガラス光学素子をプレス成形により製造する際に使用する成形用型であって、型母材の成形面にフッ素を含有する炭素系膜を形成したことを特徴とする。
 本発明において型母材として用いられる材料は、例えば、SiC、WC、TiC、TaC、BN、TiN、AlN、Si34、SiO2 、Al23 、ZrO2 、W、Ta、Mo、サーメット、サイアロン、ムライト、カーボン・コンポジット、カーボンファイバー、WC−Co合金、ステンレス、結晶化ガラスを含むガラス等から選ばれる。また、表面に貴金属系もしくはNi-P系の下地膜が形成された母材でもよい。特に、型母材としてSiC、WC、TiC、TaC、WC−Co合金、ステンレスを用いることが、これら材料はフッ素を含有する炭素系膜の密着性が高いため、離型膜として成形面に設けたフッ素を含有する炭素系膜の耐久性が優れるという観点から好ましい。
 型母材の成形面に設けられるフッ素を含む炭素系膜は、例えば、フッ素を含むダイヤモンド状炭素膜(以下、フッ素含有DLC)、フッ素を含む水素化ダイヤモンド状炭素膜(以下、フッ素含有DLC:H)、フッ素を含むテトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、フッ素含有ta-C)フッ素を含む水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、フッ素含有ta-C:H)、フッ素を含むアモルファス炭素膜(以下、フッ素含有a-C)、フッ素を含む水素化アモルファス炭素膜(以下、フッ素含有a-C:H)、フッ素を含む自己組織化膜等から選ばれる。成膜に際しては、後述する公知の方法にフッ素源としてフッ化炭素、フッ化炭化水素のガス蒸気を単独又は混合して導入する。炭素源は製法に応じて適宜公知の物を選択することができ、例えば、カーボンや炭化水素(ベンゼン、アセチレンなど)を挙げることができる。
 成膜に際し、型母材との密着性を上げる為に、下地層を設けてもよい。例えば、下地層は、フッ素を含まない炭素を主成分とする公知の炭素系膜(ダイヤモンド膜、ダイヤモンド状炭素膜(DLC)、水素化ダイヤモンド状炭素膜(DLC:H)、テトラヘドラルアモルファス炭素膜(ta-C)、水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(ta-C:H)、アモルファス炭素膜(a-C)、水素化アモルファス炭素膜(a-C:H)、自己組織化膜など)であることができる。
 また、本発明のフッ素を含む炭素系膜の成膜は、DC−プラズマCVD法、RF−プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR−プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のプラズマCVD法、イオンプレーティング法などのイオン化蒸着法、スパッタ法、蒸着法、FCA(Filtered Cathodic Arc)法やディッピング等の手法によって行うことができる。
 例えば、DC−プラズマCVD法の場合の成膜条件は、公知のDC−プラズマCVD法成膜装置を用い、炭素原料としては炭化水素を、フッ素源として炭化フッ素を用いることができる。炭素原料及びフッ素源として、炭化フッ素系のガスを用いてもよい。例えば、基板加熱を室温〜300℃とし、真空度を0.1〜500Paとし、ガス原料を含有するアルゴンガス流量は0.1〜10ml/minとし、DCパワーは1W〜300Wとすることができる。
 RF−プラズマCVD法の場合は、公知のRF−プラズマCVD法成膜装置を用い、上記DC−プラズマCVD法の場合と同様な炭素源、フッ素源を用いることができる。基板温度、真空度、アルゴン流量なども同様の条件が適用でき、RFパワーは1W〜300Wとすることができる。
 マイクロ波プラズマCVD法の場合は、公知のマイクロ波プラズマCVD法成膜装置を用い、上記同様の炭素源、フッ素源を使用できる。基板加熱を室温〜300℃とし、真空度を0.1〜500Paとし、ガス原料を含有するアルゴンガス流量は、0.1〜10ml/minとし、プラズマ制御パワーは1W〜300W、マイクロ波の周波数は例えば2450MHz、マイクロ波の出力は例えば0.02〜1.5kMとすることができる。
 ECR−プラズマCVD法の場合は、公知のECR−プラズマCVD法成膜装置を用いる。上記同様の原料を用い、基板加熱を室温〜300℃とし、真空度を0.1〜500Paとし、ガス原料を含有するアルゴンガス流量は、0.1〜10ml/minとし、プラズマ制御パワーは1W〜300Wを用いることができる。例えば、ECRプラズマはマイクロ波(周波数2.45GHz)と電磁石(磁束密度875G)による磁場とによる電子サイクロトロン共鳴により発生させることができる。
 光CVD法の場合は、公知の光CVD法成膜装置を用い、上記同様の原料を用いることができ、光源として低圧水銀ランプ,重水素ランプなどの紫外線光源を用い、基板加熱を室温〜300℃とし、真空度を10〜1000Paとし、ガス原料を含有するアルゴンガス流量は、0.1〜10ml/minとし、光源出力は5mW/cm2〜150 mW/cm2とすることができる。
 レーザーCVD法の場合は、公知のレーザーCVD法成膜装置を用い、同様の原料を使用できる。例えば、光源としてはエキシマレーザーなどの紫外線レーザーを用い、基板加熱を室温〜300℃とし、真空度を10〜1000Paとし、ガス原料を含有するアルゴンガス流量は、0.1〜10ml/minとし、レーザー出力は100mW/cm2〜2kW/cm2とすることができる。
 イオンプレーティング法の場合は、公知のイオンプレーティング法成膜装置を用い、炭素源として炭化水素、フッ素源として炭化フッ素を用いることができる。基板加熱を室温〜400℃とし、真空度を0.1〜1Paとし、炭化水素を含有するアルゴンガス流量を、例えば、1〜500ml/minとし、フッ素源のガスは、0.0001〜0.1 ml/minとすることができる。
 スパッタ法では、公知のスパッタ装置により、炭素源およびフッ素源として、フッ素含有カーボンターゲットを用いることができ、また他には、炭素源としてカーボンターゲットを、フッ素源として炭化フッ素系のガスを用いることができる。真空度は例えば、0.1〜10Paとし、アルゴンガス流量は1〜50ml/minとし、炭化フッ素系ガスの流量は、例えば、0.001〜0.05 ml/minとし、RF(またはDC)パワーは100〜500Wとし、基板は室温〜500℃とすることができる。
 FCA(Filtered Cathodic Arc)法では、公知のFCA(Filtered Cathodic Arc)法成膜装置を用い、炭素源は例えばカーボンを用い、フッ素源としては炭化フッ素系のガスを用いることができる。真空度は、例えば、0.1〜10Paとし、アルゴンガス流量は、例えば、0.1〜50ml/minとし、炭化フッ素系のガス流量は、0.001〜0.05 ml/minとし、基板加熱は、例えば、室温〜500℃とすることができる。
 ディッピング法については、以下で、自己組織化膜に関連して詳述する。
 また、フッ素を含む炭素系膜の下に下地層を設けることもできるが、その場合、上記と同様の成膜方法を適宜利用することができる。
 フッ素を含む自己組織化膜は、自己組織化膜にフッ素が含有されている物である。自己組織化膜とは、杉村博之、高井治;日本学術振興会薄膜第131委員会第199回研究資料 平成12.2.1 p.34-39、Seunghwan Lee, Young-Seok Shon, Ramon Colorado, Jr.,Rebecca L. Guenard, T. Randall Lee and Scott S. Perry;Langmuir 16巻(2000), p.2220-2224等の文献により知られている。具体的には、図1に示すように、溶液1中の分子2の官能基(○部)が自己的に型母材3の成形面と反応して、型母材3の成形面上に自己的に配列・組織化して形成された膜4であり、分子2にフッ素が含まれている。
 自己組織化膜4は、型母材の成形面の最表面において、分子配列がそろった有機分子会合体5を形成しており、接触する物体との摩擦を極めて低くすることができる。例えば、特定の有機分子を選択し、その有機分子を所定濃度で溶解した有機溶液(コーティング溶液に型の成形面を浸漬し、反応条件を整えることにより、有機分子の配向性がそろった有機単分子膜が形成される。有機分子が、被成膜基材の表面の基と反応して配列することで膜が形成されるため、極めて高い被覆率の成膜が可能である。自己組織化膜形成前に、膜形成を効率的に行なうための前処理を行なってもよい。自己組織化膜は、熱力学的にも安定であり、用いた有機分子によりその末端の官能基の性質に依存した物理・化学的性質(例えば表面自由エネルギー)を制御することができる。
 自己組織化膜は英語ではself-assembled monolayer(SAM)と呼ばれており、一度の成膜処理で表面に形成される単分子層を指す場合もある。しかし、成膜を繰り返し行うことで、多分子層の自己組織化膜を成膜することも可能であり、本発明における自己組織化膜は、単分子層のみではなく、多分子層の自己組織化膜も包含する。多分子層の自己組織化膜の一例を図2に示す。図中の6や7が多分子層の自己組織化膜である。図2中、8〜13は、異なる有機分子を示すが、自己組織化膜は、単一の有機分子からなるものであっても、複数種類の有機分子からなるものであってもよい。
 自己組織化膜を形成するために用いる有機分子としては、フッ素を含有し、かつ、成形面と反応性を有する、例えば、有機ケイ素含有化合物、有機硫黄含有化合物、及び有機窒素含有化合物等を挙げることができる。成形面と反応性を有する有機化合物は、具体的には成形表と反応し得る官能基を有する化合物である。
 これら有機化合物が、自己的・自発的に被成膜基材(型の成形面)の表面との反応する官能基は、例えば、有機ケイ素含有化合物では主に−Cl基(後述する反応式(1))、有機硫黄含有化合物では主に−H基、又は(S−S)基、(後述する反応式(2)及び(3))、有機窒素含有化合物では主に−H基(後述する反応式(4))、であることができる。
 例えば、溶液1中の分子2の官能基(○部)と被成膜基材3の表面との反応は以下のものであることができる。
 クロロトリアルキルシラン化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物、トリクロロアルキルシラン化合物、など、有機化合物中にCl原子をもつ基があると、これが官能基となり、反応式(1)のとおり、被成膜基材(成形面)3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。尚、基材は、大気に曝されると空気中の水分子と反応し、表面は全面的に-OH基に覆われる。そのため、下記の反応が進む。
Figure 2004123522
 また、例えばアルカンチオール化合物の場合には、化合物中のS原子と結合しているH原子が官能基となり、反応式(2)のとおり、被成膜基材3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
Figure 2004123522
 更に、例えばジアルキルジスルフィド化合物の場合には、化合物中のS−S結合が官能基となり、反応式(3)のとおり、被成膜基材3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
Figure 2004123522
 ジメチルアンモニウム化合物、アルキルジメチル(ジメチルアミノ)シラン化合物の場合には、化合物中のN原子に結合するH原子が官能基となり、反応式(4)のとおり、被成膜基材3の表面の−Cl基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。但し、この反応の場合、予め基材を、塩素を含む乾燥雰囲気に曝し、基材表面に塩素を結合させておく。
Figure 2004123522
 上述のとおり、自己組織化膜の形成するためには、自己的・自発的に被成膜基材表面の−OH基や−Cl基と反応する官能基を有する化合物を、その官能基の反応性を保全した状態で、被成膜基材表面と接触させることが必要である。例えば、自己組織化膜の原料となる有機化合物を、水分や塩素を相当量含んだ雰囲気中に放置すると、官能基の反応性が失われやすい。従って、有機化合物は、官能基の反応性を維持する状態で保管することが好ましい。
 自己組織化膜を形成するための反応は、反応速度が大きいことが好適である。反応式(1)〜(4)で述べた、−Cl基、−H基、(S―S)基は、反応速度が優れて大きいため好適である。他方、官能基がOR基(アルコキシ基)など、反応速度が小さい基をもつ出発原料を用いると、下記反応式(5)の進行が遅く、成膜速度は相対的に小さい。
Figure 2004123522
 また、本発明に用いる自己組織化膜の出発原料としての有機分子は、末端に上記官能基をもつものであるが、他の末端(上記官能基を結合末端とすると、表面末端側)にフッ素を有することが好ましい。もしくは、表面末端側には、アルキル基、アリール基、ビニル基、エポキシ基、好ましくは、アルキル基、アリール基を有し、分子中のいずれかの部分にフッ素を有する。このような基をもつと、表面エネルギーを低く維持し、融着やワレ、クモリの抑止された、良好なプレス成形を行なうことができる。
 成形面と反応性を有するフッ素含有有機ケイ素含有化合物、フッ素含有有機硫黄含有化合物、またはフッ素含有有機窒素含有化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。ただし、これらの化合物に限定されるものではなく、成形型の成形面において自己組織化膜を形成できる物質であればよい。
 例えば、フルオロアルキルシラン化合物(トリフルオロメチルシラン化合物、ジフルオロメチルシラン化合物、n-オクタフルオロデシルシラン化合物など)、1‐フルオロデカン化合物、フルオロエチルメチル化合物、フルオロメチルプロピル化合物、ジオクタフルオロデシルジメチル化合物などの分子であることができる。
 即ち、フッ素含有アルキルクロロシラン化合物(クロロトリフルオロメチルシラン、ジクロロジフルオロメチルシラン、n-オクタフルオロデシルトリクロロシランなど)、フッ素含有アルキルアミノシラン化合物(トリフルオロメチル(ジメチルアミノ)シランなど)、フッ素含有有機硫黄化合物(1‐フルオロデカンチオール、フルオロエチルメチルスルフィド、フルオロメチルプロピルジスルフィドなど)、フッ素含有有機窒素化合物(ジオクタフルオロデシルジメチルアンモニウムアセテートなど)などから選ばれる少なくとも1つの化合物を非極性有機溶媒もしくはトルエンなどに溶解した溶液(コーティング溶液)に、型母材を浸漬することにより、型母材上に自己組織化膜を成膜することができる。
 前記有機溶液の溶媒は、好ましくは無水有機溶媒である。無水状態の有機溶媒を用いるのは、出発原料の有機分子が水分子と反応することによってその反応性を失うことを避けるためである。また、極性基をもつ溶媒を用いると、同様に有機分子との結合を形成して、有機分子が反応性を失うことがあるため、溶媒としては非極性のものを選択することが好ましい。即ち、用いる溶媒は、有機分子の官能基の反応性を維持し得るものから選択することが好ましい。
 具体的には、例えばヘキサンなどの非極性有機溶液、トルエン、クロロホルムなどの有機溶液、およびこれらの混合溶液であって、無水状態のものであることが好ましい。
 一方、アルコール類など極性を有する有機溶媒で自己組織化膜の出発化合物を希釈した場合には、下記反応式(6)のとおり、官能基とアルコール中の−OH基とが反応して、官能基が失われ、被成膜基材表面の−OH基や−Cl基と反応が起きにくくなることがある。従って、有機溶媒は-OH基などを有さないことが好ましい。
Figure 2004123522
 上記自己組織化膜形成用のコーティング溶液において、出発原料の濃度は、0.01〜10wt%の範囲とすることが好ましく、0.1〜5wt%の範囲とすることがより好ましい。濃度が、小さすぎると被覆率が不充分になるが、大きすぎても被覆率は上がらず、下がる傾向がある。浸漬は、1分間程度行った後、コーティング溶液から成形型を取り出し、洗浄後、室温〜100℃の温度で30分程度、乾燥することにより得られる。
 浸漬法以外にも、自己組織化膜の出発原料を含む蒸気、ミスト、ガスなどに予備成形されたガラスを暴露することにより自己組織化膜を得ることもできる。自己組織化膜中では、自己的・自発的な官能基(○部)と被成膜基材3の表面との反応の結果、図1の様に、膜中の分子2が被成膜基材3の表面上に整然と配列する。従って、自己組織化膜が形成された場合には、規則性をもった原子の配列に対し、その結合状態のIR活性を反映したピークを呈するIR-RASなどの表面分析により検出することができる。
 換言すれば、IR-RAS分析において、自己組織化膜が形成された場合は分子の規則的配列に由来するピークが観察される(例えば図3のように)。しかし、自己組織化膜ではなく規則的な分子の配列がない膜の場合には上記ピークは観察されない。更に、ESCA(X線光電子分析)又は、TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)によれば、被成膜基材と膜との界面にある原子の特定が可能であり、上記規則的配列が自己組織化膜に由来するものであることが判る。
 自己組織化膜の膜厚は、たとえばESCAまたはTOF-SIMSやエリプソメーターによって測定することができる。
 また、フッ素を含有する自己組織化膜は、トリアルキルシラン化合物、ジアルキルシラン化合物、アルキルシラン化合物、アルキルジメチルシラン化合物、アルカンチオール化合物、ジアルキルスルフィド化合物、ジアルキルジスルフィド化合物、ジメチルアンモニウム化合物、などから選ばれた少なくとも1つの化合物を非極性有機溶媒もしくはトルエンなどに溶解した溶液(コーティング溶液)に、型母材を浸漬することにより、型母材上に成膜されるフッ素を含有しない自己組織化膜を形成し、さらにこの自己組織化膜をフッ化処理することにより、作製することもできる。自己組織化膜のフッ化処理は、例えば、フッ素を含有しない自己組織化膜を有する型母材を、フッ素を含む雰囲気(低濃度のHF、C2F6、C3F8、CHF3、CH2F2、CF4などを含む雰囲気)の中で処理することにより行うことができる。この処理は、例えば、50〜300℃の温度で数分〜数時間熱処理する方法、フッ素イオン注入、フッ素プラズマ処理などの方法により行うことができる。
 なお、フッ素処理を行う前駆体となる自己組織化膜の出発化合物としては、以下の化合物を挙げることができる。ただし、これらの化合物に限定されるものではなく、型母材表面において自己組織化膜を形成できる物質であればよい。
 即ち、クロロトリアルキルシラン化合物として、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、(3-シアノプロピル)ジメチルクロロシラン、クロロトリフルオロメチルシランなどおよびこれらの誘導化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物として、ジクロロジメチルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、ジクロロジフルオロメチルシラン、ジクロロ-n-オクタデシルメチルシラン、n-オクチルメチルジクロロシラン、ジクロロシクロヘキシルメチルシランなどおよびこれらの誘導化合物、トリクロロアルキルシラン化合物として、トリクロロビニルシラン、n-オクタデシルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、n-オクタフルオロデシルトリクロロシラン、シアノヘキシルトリクロロシランなどおよびこれらの誘導化合物、トリクロロアリールシラン化合物としてフェニルトリクロロシラン、アルキルジメチル(ジメチルアミド)シラン化合物として、トリメチル(ジメチルアミド)シラン、トリエチル(ジメチルアミド)シラン、ペンタフルオロフェニルジメチル(ジメチルアミド)シラン、トリフルオロメチル(ジメチルアミド)シラン、tert-ブチルジメチル(ジメチルアミド)シラン、(3-シアノプロピル)ジメチル(ジメチルアミド)シランなどおよびこれらの誘導化合物、アルカンチオール化合物として、1‐ブタンチオール、1‐デカンチオール、1‐フルオロデカンチオール、o‐アミノチオフェノール、2‐メチル‐2‐プロパンチオール、n‐オクタデカンチオールなどおよびこれらの誘導化合物、ジアルキルスルフィド化合物として、エチルメチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、n‐ヘキシルスルフィド、フルオロエチルメチルスルフィド、フェニルビニルスルフィドなどおよびこれらの誘導化合物、エチルフェニルスルフィド及びその誘導化合物、ジアルキルジスルフィド化合物として、p‐トリルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、メチルプロピルジスルフィド、フルオロメチルプロピルジスルフィド、ジフルフリルジスルフィドなどおよびこれらの誘導化合物、メチルフェニルジスルフィドおよびその誘導化合物、ジメチルアンモニウム化合物として、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムアセテート、ジオクタデシルジメチルアンモニウムアセテート、臭化ジエイコシルジメチルアンモニウム、ヨウ化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジオクタフルオロデシルジメチルアンモニウムアセテート、ヨウ化ジメチルジオレイルアンモニウムなどおよびこれらの誘導化合物、などの内から選ばれた少なくとも1つを用いることが出きる。
 本発明は、型母材との密着性が良く、硬度や耐摩耗性、摩擦係数という機械的性質やガラスとの離型性に優れた離型膜であるフッ素を含有する炭素系膜を型母材の成形面に設けることにより、優れた高耐久性のガラス光学素子成形用型を提供するものである。特に、本発明の光学素子成形用型は、成形温度を越える温度においても構造変化を起こさず、耐熱性に優れたものである。
 例えば、従来のDLC:H膜DLC膜、ta-C膜、ta-C:H膜などは、ディスオーダード(Disordered)クラスターとグラファイト(Graphite)クラスターの中距離秩序による1380cm-1付近(D-band)と1580cm-1付近(G-band)との2つのsp3結合とsp2 結合からなることが知られている。このことは、顕微ラマン分析からわかる。このような膜を成形温度近傍に保持すると、sp3 結合が減少する一方、sp2 結合が増加するために膜の機械的強度が低下する。通常、ナノサイズのsp3 結合集団(sp3クラスター)はアモルファス構造中に分散しており、sp3クラスターの周辺は全て未結合終端となる。そのため、sp3クラスター中のsp3 結合強度は弱く、熱により、容易にSP2結合もしくはアモルファス結合へ変化し、膜の機械的強度が低下する。一方、本発明のフッ素を含有する炭素系膜の膜構造では、原子エネルギーの小さいフッ素の効果により、sp3クラスターの未結合終端の一部がフッ素原子と結合して、sp3クラスターが安定化するために、成形温度を越える温度領域においても膜構造変化が起こらず安定であると考えられる。
 本発明の成形型の炭素系膜の膜厚は、0.5nm〜1000nmの範囲であれば良く、特に1nm 〜500nmが好適である。膜厚が薄すぎると十分な離型性や耐久性が得られず、膜厚が厚過ぎると型母材との密着性が低下するという問題が生じる。
 また、炭素系膜のフッ素含有量は元素の構成元素比(F/C)において原子比0.01以上2以下が好ましい。より好ましくは、0.1以上2以下である。F/Cが小さ過ぎると膜構造の安定性が得られにくく、大きすぎると硬度や耐摩耗性が低下する傾向があるからである。
 なお、本発明の成形型はレンズ、ミラー、グレーティング、プリズム等の光学素子の成形用に限定されるものではなく、光学素子以外のガラス、プラスチック等の成形品の成形に対しても適用できることは言うまでもない。
 さらに本発明は、加熱軟化したガラス素材を成形型によりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法を包含する。但し、この製造方法で使用される成形型は、上記本発明のフッ素を含有する炭素系膜を有する成形用型である。
 本発明のガラス光学素子の製造方法は、ガラス素材を加熱軟化し、次いで成形型により加圧成形する。ガラス素材の加圧成形は、公知の手段で行うことができる。例えば、本発明の成形型に導入し、その粘度が108〜1012ポイズ相当となる温度に加熱、軟化し、これを、押圧することによって、型の成形面をガラス素材に転写する。もしくは、あらかじめ、その粘度が106〜1010ポイズ相当の温度に昇温したガラス素材を、それより低温に加熱した本発明の成形型に導入し、これを、押圧することによって、型の成形面をガラス素材に転写する。成形時の雰囲気は、非酸化性とすることが好ましい。この後、型とガラス素材を、冷却し、好ましくはTg以下の温度となったところで、離型し、成形された光学素子を取出す。
 以下、本発明を実施例によりさらに説明する。
実施例1
 型母材として、CVD法により作製した多結晶のSiCの成形面をRmax=15nmに鏡面研磨したものを用いた(粗さ測定はAFM)行った。この型を良く洗浄した後、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、成形面にフッ素含有DLC:H膜を成膜した。DLC:H膜の炭素原料としてはベンゼン蒸気を、フッ素の原料としてはCF4ガスを用いた。成膜条件は以下の通りである。
 真空度は0.5×10-3Torr、ベンゼン蒸気含有アルゴンガス流量は100ml/min、CF4ガス流量は0.01ml/min、基板加熱は300℃とした。これらの成膜条件は、真空度は、例えば、10-4〜10-3Torrの範囲、ベンゼン蒸気含有アルゴンガス流量は、例えば、1〜500ml/minの範囲、CF4ガス流量は例えば、0.0001〜0.1 ml/minの範囲、基板加熱は例えば、なし〜400℃の範囲で適宜変更可能である。
 フッ素の原料としては、C26、C38、CHF3、CH22などのフッ化炭素、フッ化炭化水素のガスもしくはフッ化炭素、フッ化炭化水素の蒸気を、単独または混合して用いた場合でも、同様の成膜が可能である。
 SIMS(2次イオン質量分析)法による深さ方向分析の結果、膜厚は35nm、炭素とフッ素元素の構成元素比率はF/C=0.1であり、顕微ラマン分析の結果、DisorderedクラスターとGraphiteクラスターの中距離秩序による1380cm-1付近(D-band)と1580cm-1付近(G-band)との2つのピークを確認し、膜構造がDLC構造であることを確認した。尚、上記分析は、ESCA(X線光電子分析)法によっても良い。
 所定の量に調整した光学ガラス(バリウムホウケイ酸塩ガラスA、転移点Tg=500℃、軟化点Ts=540℃)の球状ガラス素材(プリフォーム)を型のキャビティー内に置き、これを成形装置内に設置する。窒素ガス雰囲気中で、620℃まで加熱して150kg/cm2 の圧力で1分間加圧する。圧力を解除した後、冷却速度を−50℃/minで480℃になるまで冷却し、その後は−200℃/min以上の速度で冷却を行い、プレス成形物の温度が200℃以下に下がったら、成形物を取り出す。上記のようにして、レンズを成形した。5000回を越える連続成形においても、良好な成形品を得ることができた。AFMで測定した光学素子表面の粗さは25nm以下であり、また、外観品質も良好であった。成形後の型表面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、膜クラックの発生がなく、更に、ガラスの融着は認められず、良好な型の表面性を有していた。
比較例1
 フッ素導入なしの条件とした以外は実施例1と同様にして、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、成形面にDLC:H膜を80nm成膜した。成膜前のSiC成形面の表面粗さはRmax=18nmであった。実施例1と同様に、光学ガラスの連続成形を開始したところ、2000回程度のプレスにて、成形面にクモリやボツなどの外観不良が発生し始めた。
実施例2
 FCA(Filtered Cathodic Arc)法成膜装置を用いて、SiC成形面に厚み350nmのフッ素含有ta-C膜を成膜した。炭素源はカーボン、フッ素源はCF4ガスを用いた。炭素とフッ素元素の構成元素比率はF/C=0.1であった。成膜条件は以下の通りである。
 真空度は1×10-3Torr、アルゴンガス流量は10ml/min、CF4ガス流量は0.01ml/min、基板加熱は300℃とした。尚、これらの成膜条件は、真空度は、例えば、10-4〜10-2Torrの範囲、アルゴンガス流量は、例えば、0.1〜50ml/minの範囲、CF4ガス流量は、例えば、0.001〜0.05 ml/minの範囲、基板加熱は、例えば、なし〜500℃の範囲で適宜変更可能である。成膜前のSiC成形面の表面粗さはRmax=25nmであった。
 得られた成形型を用いて実施例1と同様に、実施例1と同一の光学ガラスの連続成形を開始したところ、5000回までの連続成形において、ほぼ良好な成形品を得ることができ、外観品質もほぼ良好であった。成形後の型表面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、膜クラックの発生がなく、更に、ガラスの融着は認められず、良好な型の表面性を有していた。また、AFMで測定した成形後のSiC成形面の表面粗さはRmax=41nmであり、表面粗さはほぼ維持されていた。
実施例3
 スパッター法成膜装置を用いて、SiC成形面にF/C=3.5のフッ素含有DLC膜を成膜した。炭素源およびフッ素源として、フッ素含有カーボンターゲットを用いた。成膜条件は以下の通りである。
 真空度は1×10-3Torr、アルゴンガス流量は10ml/min、CF4ガス流量は0.01ml/min、RFパワーは200W、基板加熱は200℃とした。
 これらの成膜条件は、真空度は例えば、10-4〜10-2Torrの範囲、アルゴンガス流量は1〜50ml/minの範囲、CF4ガス流量は、例えば、0.001〜0.05 ml/minの範囲、RF(またはDC)パワーは100〜500Wの範囲、基板加熱はなし〜500℃の範囲で適宜変更可能である。
 膜厚は150nm、成膜前のSiC成形面の表面粗さはRmax=16nmであった。得られた成形型を用いて実施例1と同様に、連続成形を開始したところ、5000回までの連続成形において、ほぼ良好な成形品を得ることが、外観品質もほぼ良好であった。成形後の型表面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、膜クラックの発生がなく、更に、ガラスの融着は認められず、良好な型の表面性を有していた。また、AFMで測定した成形後のSiC成形面の表面粗さはRmax=46nmであり、表面粗さはほぼ維持されていた。
実施例4
 FCA(Filtered Cathodic Arc)法成膜装置を用いて、WC成形面に厚み520nmのフッ素含有ta-C膜を成膜した。炭素源はカーボン、フッ素源はCHF3ガスを用いた。成膜条件は、フッ素源をCHF3とした以外は、実施例2と同じである。
 炭素とフッ素元素の構成元素比率はF/C=1.5であった。なお、成膜前のWC成形面の表面粗さはRmax=52nmであった。
 得られた成形型を用いて実施例1と同様に、ホウ酸塩光学ガラスB、Tg520℃、Ts560℃の連続成形を開始したところ、5000回までの連続成形において、良好な成形品を得ることができ、外観品質も良好であった。成形後の型表面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、膜クラックの発生がなく、更に、ガラスの融着は認められず、良好な型の表面性を有していた。また、AFMで測定した成形後のSiC成形面の表面粗さはRmax=55nmであり、表面粗さは維持されていた。
実施例5
 FCA(Filtered Cathodic Arc)法成膜装置を用いて、フッ素源を用いないこと以外は、実施例4と同様に、第一層としてSiC成形面に厚み30nmのta-C膜(ta-C源:カーボン)を成膜した後、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、第二層としてta-C膜の上に厚み50nmのフッ素含有DLC:Hを成膜した。第二層目を成膜したイオンプレーティング法成膜装置の炭素源はベンゼン、フッ素源はCF4ガスを用いた。成膜条件は、実施例4と同様である。
 第二層目のフッ素含有DLC:H膜の炭素とフッ素元素の構成元素比率はF/C=2.5、第一層と第二層との2層膜(ta-C膜−フッ素含有DLC:H膜)における炭素とフッ素元素の構成元素比率はF/C=1.5であった。なお、成膜前のSiC成形面の表面粗さはRmax=28nmであった。
 得られた成形型を用いて実施例1と同様に、ホウ酸塩光学ガラスC(Tg560℃、Ts600℃)の連続成形を開始したところ、5000回までの連続成形において、良好な成形品を得ることができ、外観品質も良好であった。成形後の型表面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、膜クラックの発生がなく、更に、ガラスの融着は認められず、良好な型の表面性を有していた。また、AFMで測定した成形後のSiC成形面の表面粗さはRmax=30nmであり、表面粗さは維持されていた。
実施例6
 ディッピング法を用いて、ステンレス成形面に厚み5nmのフッ素含有自己組織化膜を成膜した。光学素子成形用型を良く洗浄した後、自己組織化膜の出発原料である、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシランを、ヘキサンで0.5wt%まで希釈して調整したコーティング溶液に光学素子成形用型を20℃で60秒浸漬した後、コーティング溶液から取り出し、洗浄後、室温で30分程度、乾燥した。光学素子成形用型の表面をESCAで分析した結果、表面層である自己組織化膜の膜厚は5nmであった。光学素子成形素材の表面をIR-RASで分析した結果、自己組織化膜に由来するピークが観察され、表面層は自己組織化されていることが確認された。炭素とフッ素元素の構成元素比率はF/C=2.0であった。なお、成膜前のステンレス成形面の表面粗さはRmax=78nmであった。
 得られた成形型を用いて実施例1と同様に、リン酸塩光学ガラスD、Tg365℃、Ts403℃の連続成形を開始したところ、5000回までの連続成形において、ほぼ良好な成形品を得ることができ、外観品質もほぼ良好であった。成形後の型表面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、膜クラックの発生がなく、更に、ガラスの融着は認められず、ほぼ良好な型の表面性を有していた。また、AFMで測定した成形後のステンレス成形面の表面粗さはRmax=88nmであり、表面粗さはほぼ維持されていた。
実施例7
 結晶化ガラス(HOYA製クリストロンゼロ)の成形面に、CVD法成膜装置を用いて、第一層として厚み5nmのC:H膜(C:H源:アセチレンガス)を成膜した後、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、C膜の上に、第二層として厚み25nmのフッ素含有DLC:Hを成膜した。第二層目を成膜したイオンプレーティング法成膜装置の炭素源はカーボン、フッ素源はCF4ガスを用いた。成膜条件は実施例1と同様である。
 第二層目のフッ素含有DLC:H膜の炭素とフッ素元素の構成元素比率はF/C=0.4、第一層と第二層との2層膜(C膜−フッ素含有DLC:H膜)における炭素とフッ素元素の構成元素比率はF/C=0.3であった。なお、成膜前のSiC成形面の表面粗さはRmax=41nmであった。
 得られた成形型を用いて実施例1と同様に、ホウ酸塩光学ガラスE(Tg500℃、Ts 535℃)連続成形を開始したところ、5000回までの連続成形において、ほぼ良好な成形品を得ることができ、外観品質もほぼ良好であった。成形後の型表面を光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡で観察した所、膜剥離、膜クラックの発生がなく、更に、ガラスの融着は認められず、ほぼ良好な型の表面性を有していた。また、AFMで測定した成形後のSiC成形面の表面粗さはRmax=48nmであり、表面粗さはほぼ維持されていた。
Figure 2004123522
Figure 2004123522
*プレス圧力;100〜200kg/cm2
**光学素子外観;同一型でプレスを5000回繰り返したまでの光学素子の外観
  ○:5000回までのプレスで、クモリ、白濁の生じたものが計50個以内
  ×:1000回までのプレスで、クモリ、白濁が連続的に発生。
***HOYA(株)製クリストロンゼロ
自己組織化膜の説明図。 複分子層からなる自己組織化膜の説明図。 実施例で得られた自己組織化膜のIR-RASスペクトル。
符号の説明
1 自己組織化膜の出発原料を含む溶液(コーティング溶液)
2 溶液中の分子
3 被成膜基材
4 自己組織化膜
5 自己組織化膜の分子
6 複層化した自己組織化膜
7 複分子層からなる自己組織化膜
8 自己組織化膜の分子A
9 自己組織化膜の分子B
10 自己組織化膜の分子1
11 自己組織化膜の分子2
12 自己組織化膜の分子3
13 自己組織化膜の分子4

Claims (5)

  1. 成形型の成形面にフッ素を含有する炭素系膜を有することを特徴とするガラス光学素子成形用型。
  2. フッ素を含有する炭素系膜がフッ素を含有するダイヤモンド膜、フッ素を含有するダイヤモンド状炭素膜(以下、フッ素含有DLC)、フッ素を含有する水素化ダイヤモンド状炭素膜(以下、フッ素含有DLC:H)、フッ素を含有するテトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、フッ素含有ta-C)、フッ素を含有する水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、フッ素含有ta-C:H)、フッ素を含有するアモルファス炭素膜(以下、フッ素含有a-C)、フッ素を含有する水素化アモルファス炭素膜(以下、フッ素含有a-C:H)、またはフッ素を含有する自己組織化膜である請求項1記載の光学素子成形用型。
  3. フッ素を含有する炭素系膜は、膜厚が0.5nm以上1000nm以下である請求項1または2に記載の光学素子成形用型。
  4. フッ素を含有する炭素系膜は、炭素元素とフッ素元素の構成元素比率(F/C)が原子比で0.01以上、2以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学素子成形用型。
  5. 加熱軟化したガラス素材を成形型によりプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法であって、前記成形型が請求項1〜4のいずれか1項に記載の成形用型であることを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
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