JP2005239433A - 成形用ガラス素材の製造方法およびガラス光学素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カン・ワレの生じやすい硝種、形状を適用する場合でも、カン・ワレを生じにくく、歩留低下を有効に抑止できる成形用ガラス素材を提供すること、及び上記ガラス素材を用い、カン・ワレを抑制してガラス光学素子を製造できる方法を提供すること。
【解決手段】所定形状に予備成形したガラス塊の表面に自己組織化膜を形成し、ついで紫外線照射処理を行う、プレス成形用ガラス素材の製造方法。所望の光学素子の形状に基づいて精密加工を施した成形型により、加熱軟化した状態のガラス素材をプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法。前記ガラス素材として上記方法により得られるガラス素材を用いる。
【選択図】図5

Description

本発明は、得ようとする光学素子形状に基づいて精密に形状加工を行った成形型を用いて、加熱軟化したガラス素材をプレス成形することにより、ガラスレンズ等のガラス光学素子を製造する方法において使用するガラス素材(プリフォーム)の製造方法、及びそれを用いたガラス光学素子の製造方法に関するものである。
予め、所望の光学素子形状に基づいて、精密に形状加工した成形型を用いて、ガラスレンズやプリズム、回折格子など、高い形状精度、面精度を有する光学素子を製造する方法(精密モールドプレス)が知られている。精密モールドプレスにおいては、高温下でガラスと成形型が密着するため、界面で反応が生じ、成形されたガラス光学素子表面にクモリ、白濁が生じ、またはワレ等の欠陥が生じやすい問題があった。
そこで、プレス成形に適した高温下で、成形型の表面(成形面)とガラス素材の間で融着が生じることを防止し、離型性を向上させる目的で、ガラス素材表面に膜を設けることが知られている。
特公平2−31012号公報(特許文献1)には、ガラスと型の相互に対向する表面のうち少なくとも一方に炭素膜を形成することにより、融着を防止する方法が記載されている。
また、特開平10−167762号公報(特許文献2)にはシランカップリング剤を、スプレー又はスピンコーターでガラス素材表面に塗布することで、融着や曇りを防止する方法が、開示されている。
特公平2−31012号公報 特開平10−167762号公報
特許文献1に記載の方法では、炭素膜の成膜装置として大掛かりなものが必要である。その上、成膜工程中の膜厚制御を精密に行わないと、均一かつ適切な膜厚範囲の炭素膜が得られない。炭素膜が不均一である場合、融着防止機能が不充分となり、硝材によってはカン・ワレが生じ、成形された光学素子にクモリや白濁が生じやすくなる。
特許文献2に記載された、シランカップリング剤をスプレーやスピンコーターによって塗布する方法では、ガラス表面にシランカップリング剤を付着させるだけである。そのため、均一で、かつ離型性、滑り性に優れたシランカップリング剤膜を得ることは困難であり、やはり微少融着、カン・ワレが生じることが避けられなかった。
そこで、本発明者らは、プレス成形用ガラス素材のプレスによる変形および離型を促進することができ、得られるガラス素子のカン・ワレを抑止することもでき、さらには、白濁やクモリなどの表面の外観不良を生じることなくガラス素材を得るために用いる成形用ガラス素材を、生産性よく、かつ、低コストにて製造する方法を提供すべく種々の検討を行った。
その結果、本発明者らは、有機化合物を出発原料とした、自己組織化膜を表面に形成した、成形用ガラス素材(モールドプレス用のガラスプリフォーム)を用いれば、成膜工程が非常に簡便である上、プレス成形時の融着が有効に防止され、外観性能の良い光学素子の成形が可能であることを見出し、別途、特許出願した。
そして、本発明は、上記成形用ガラス素材について、さらに、カン・ワレの生じやすい硝種、形状を適用する場合でも、カン・ワレを生じにくく、歩留低下を有効に抑止できる成形用ガラス素材を提供することを目的としてなされたものである。
さらに、本発明は、上記成形用ガラス素材を用い、カン・ワレを抑制してガラス光学素子を製造できる方法を提供することにある。
本発明は、以下の手段によって、課題を解決する。
(1)所定形状に予備成形したガラス塊の表面に自己組織化膜を形成し、ついで紫外線照射処理を行うことを特徴とする、プレス成形用ガラス素材の製造方法。
(2)前記紫外線照射処理は、紫外線照射光源として、低圧水銀灯、エキシマランプ、又はエキシマレーザーを用い、照射量を100mJ/m 2以上とすることを特徴とする、(1)に記載の製造方法。
(3)照射量を1000〜8000mJ/m 2の範囲とすることを特徴とする、(2)に記載の製造方法。
(4)前記自己組織化膜を形成するガラス塊として、表面の表面自由エネルギーが50 mJ/m2以上であるガラス塊を用いることを特徴とする、(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記自己組織化膜の形成は、自己組織化膜を形成したガラス塊の表面の、表面自由エネルギーが40 mJ/m2以下となるように行うことを特徴とする、(1)〜(4)のいずれかに記載の製造方法。
(6)ガラス塊は、Tiの酸化物、Nbの酸化物、Wの酸化物、Biの酸化物、及びLaの酸化物のいずれか1つ以上を含有する光学ガラスからなることを特徴とする、(1)〜(5)のいずれかに記載の製造方法。
(7)前記有機化合物が、クロロトリアルキルシラン化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物、トリクロロアルキルシラン化合物、アルキルジメチル(ジメチルアミノ)シラン化合物、アルカンチオール化合物、ジアルキルスルフィド化合物、ジアルキルジスルフィド化合物、ジメチルアンモニウム化合物から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載の製造方法。
(8)所望の光学素子の形状に基づいて精密加工を施した成形型により、加熱軟化した状態のガラス素材をプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法において、前記ガラス素材として(1)〜(7)のいずれかに記載の方法により得られるガラス素材を用いることを特徴とする、前記製造方法。
本発明によれば、プレス成形によってカン・ワレが発生し易い光学ガラスを用い、あるいはカン・ワレを生じやすい光学素子形状を適用する場合でも、カン・ワレが抑止でき、高い歩留でプレス成形を連続的に実施することが可能なプレス成形用ガラス素材を提供することができる。さらに、本発明によれば、そのようなプレス成形用ガラス素材を用いることで、カン・ワレが抑止でき、高い歩留でプレス成形を連続的に実施することが可能な、ガラス光学素子の製造方法を提供することができる。
本発明によれば、ガラス素材を成形用型でプレス成形し、光学素子を製造するに際して、プリフォームの表面に紫外線照射した自己組織化膜を付与することにより、特に、プレス成形温度域が極めて狭く、プレス時にカン・ワレが発生し易い硝材、もしくはガラス光学素子の形状であっても、高い歩留でプレス成形を連続的に実施することができる。
本発明のプレス成形用ガラス素材の製造方法は、所定形状に予備成形したガラス塊の表面に自己組織化膜を形成し、ついで紫外線照射処理を行うことを特徴とする。
[ガラス塊]
本発明において、ガラス塊及びガラス素材を構成するガラスとしては、特に制限はない。例えば、ホウ酸塩ガラス、ケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラス、フツリン酸塩ガラスからなる光学ガラスなどであることができる。
但し、モールドプレスに用いる光学ガラスは、軟化温度を低くする効果のある成分、例えばアルカリ金属酸化物を相当量含有させることが多い。これらにおいては、破壊強度が小さくなりやすく、プレス成形時にカン・ワレを生じやすい。
例えば、光学ガラスとして極めて有用な高屈折率ガラスには、Tiの酸化物、Nbの酸化物、Wの酸化物、Laの酸化物、Biの酸化物のいずれか1つ以上を含有すると有利である。このような光学ガラスは、プレス成形温度付近で、温度変化による粘度変化が大きく、適切なプレス成形温度幅が狭い、すなわち、カン・ワレが生じやすい。例えば、これらの硝材を用いるプレスでは、押圧時に素早くガラスが型内で延伸しなければ、降温によって粘性の高い状態で荷重がかかり、カン・ワレが生じてしまう。更に、粘性が低い状態でプレス成形すれば、成形面との反応が起きやすく、融着や、それに起因するガラス表面の白濁やクモリが生じやすい。このようなガラスは、後述するように、本発明のように、自己組織化膜を設けた後に、紫外線照射処理を行うと、高いカン・ワレ防止効果が得られる。
本発明では、光学ガラスから、所定の予備成形を行ったガラス塊を作製する。これは、プレス用ガラス素材として適した体積、形状をもつものであり、例えばガラスを溶融固化し、又は冷間加工することによって用意することができる。予備成形の形状は、球、扁平球、円柱などとすることができる。特に、溶融ガラスを滴下、又は流下して球形、又は扁平球形状に固化すると生産性がよい上、表面欠陥のない極めて平滑な表面をもつガラス塊が得られるため、好ましい。
こうして用意したガラス塊に、自己組織化膜を成膜し、さらに紫外線照射処理を施すことで、本発明のガラス素材が得られる。このガラス素材は、例えば、モールドプレス用の成形型内に供給され、加熱により軟化した状態でプレス成形されることによって、所定形状の光学素子とされる。
例えば、モールドプレスによって得ようとする光学素子が、両凹レンズや、凹メニスカスレンズである場合などには、ガラス素子とガラス素材の形状の相違が大きい(凸面又は平面から凹面を形成する)。又は、成形する光学素子の外径とガラス素材の最大径との比が大きい(例えば比が1.5以上)場合には、ガラスは大きく変形する必要があり、その延伸量が大きくなる。そのため、このような場合には、成形型の成形面とガラスとの界面での滑り性が十分でなければ、ガラス内に歪が生じ、カン・ワレの原因となりやすい。コバの薄いレンズや、レンズ周囲につば状の平坦部をもつ場合などにも、カン・ワレが発生しやすい。しかし、このような場合であっても、本発明の製造方法によれば、カン・ワレが発生しにくいガラス素材を得ることができる。
[自己組織化膜]
自己組織化膜とは、例えば、杉村博之、高井治;日本学術振興会薄膜第131委員会第199回研究資料 平成12.2.1 p.34-39、Seunghwan Lee, Young-Seok Shon, Ramon Colorado, Jr.,Rebecca L. Guenard, T. Randall Lee and Scott S. Perry;Langmuir 16巻(2000), p.2220-2224等の文献により知られている。本発明において自己組織化膜とは、有機化合物を出発原料として形成されたものをいう。その構造は、図1に示すように、溶液1中の分子2の官能基0(○部)が自己的に被成膜基材3の表面と反応し、被成形基材3の表面上に自己的に、自発的に配列・組織化して形成された、被覆率がほぼ100%の膜4である。5は配列・組織化した分子である。
自己組織化膜は英語ではself-assembled monolayer(SAM)と呼ばれており、一度の成膜処理で表面に形成される単分子層を指す場合もあるが、成膜を繰り返し処理することで、多分子層の成膜も可能であり、本発明で用いる自己組織化膜は、単分子層のみではなく、図2の様な多分子層の6や7を含む。
本発明で用いる自己組織化膜は、例えば、特定の有機化合物分子を選択し、この有機化合物分子を含有する溶液、例えば、有機化合物分子を有機溶媒に所定濃度で含有させたものにガラス塊を曝し、反応条件を整えることにより形成でき、有機化合物分子の配向性がそろった有機単分子膜である。有機化合物分子が、被成膜基材の表面の基と反応して配列することで膜が形成されるため、極めて被覆率が高い成膜が可能である。膜形成を効率的に行なうため、ガラス表面の前処理を行なってもよい。有機化合物分子としては、例えば、反応性の有機ケイ素含有化合物、有機硫黄含有化合物、有機フッ素含有化合物及び有機窒素含有化合物を挙げることができる。
これら有機化合物が、自己的・自発的に被成膜基材(ガラス)の表面との反応し得る官能基は、例えば、有機ケイ素含有化合物では主に−Cl基(後述する反応式(1))、有機硫黄含有化合物では主に−H基、又は(S−S)基、(後述する反応式(2)及び(3))、有機窒素含有化合物では主に−H基(後述する反応式(4))、であることができる。例えば、溶液1中の分子2と被成膜基材3の表面との反応は以下のものであることができる。
クロロトリアルキルシラン化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物、トリクロロアルキルシラン化合物、など、有機化合物中にCl原子をもつ基があると、これが反応性の官能基となり、反応式(1)のとおり、被成膜基材(ガラス)3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応して、脱HClが起こり、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
尚、清浄なガラス表面は反応性が高く、ガラスを大気に曝すと空気中の水分子と反応し、ガラス表面は全面的に-OH基に覆われているため、上記の反応が進む。
また、例えばアルカンチオール化合物の場合には、化合物中のチオール基のS原子と結合しているH原子が官能基となり、反応式(2)のとおり、被成膜基材3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応して、脱H2が起こり、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
更に、例えばジアルキルジスルフィド化合物の場合には、化合物中のS−S結合が官能基となり、反応式(3)のとおり、被成膜基材3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応して、脱H2が起こり、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
ジメチルアンモニウム化合物、アルキルジメチル(ジメチルアミノ)シラン化合物の場合には、化合物中のN原子に結合するH原子が官能基となり、反応式(4)のとおり、被成膜基材3の表面の−Cl基と自己的・自発的に反応して、脱HClが起こり、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
尚、ガラス表面を、塩素を含む乾燥雰囲気に曝した場合には、その表面が−Cl基で覆われることから、上記の反応が進む。
上述のとおり、自己組織化膜の形成するためには、自己的・自発的に被成膜基材表面の−OH基や−Cl基と反応する官能基を有する化合物を、その官能基の反応性を保全した状態で、被成膜基材表面と接触させることが必要である。例えば、自己組織化膜の原料となる有機化合物を、水分や塩素を相当量含んだ雰囲気中に放置すると、官能基の反応性が失われやすい。従って、有機化合物は、官能基の反応性を維持する状態で保管することが好ましい。
自己組織化膜を形成するための反応は、反応速度が大きいことが好適である。反応式(1)〜(4)で述べた、−Cl基、−H基、(S―S)基は、反応速度が優れて大きいため好適である。他方、官能基がOR基(アルコキシ基)など、反応速度が小さい基をもつ出発原料を用いると、下記反応式(5)で示される反応が生じるが、この反応の進行は遅く、成膜速度は相対的に小さい。
また、本発明に用いる自己組織化膜の出発原料として用いる有機化合物分子は、末端に上記官能基をもつが、他の末端(上記官能基を結合末端とすると、表面末端側)にアルキル基、アリール基、ビニル基、エポキシ基、またはフッ素を有することができる。好ましくは、アルキル基、アリール基である。このような基をもつと、後述する表面エネルギーを低く維持することができ、融着やワレ、クモリの抑止された、良好なプレス成形を行なうことができる。
自己組織化膜の出発原料として用いる有機化合物は、反応性の有機化合物であることができ、そのような有機化合物としては、有機ケイ素含有化合物、有機硫黄含有化合物、有機フッ素含有化合物及び有機窒素含有化合物を挙げることができる。さらにそのような化合物としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。但し、これらの化合物に限定されるものではなく、ガラス塊において自己組織化膜を形成できる物質であれば良い。
クロロトリアルキルシラン化合物として、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、(3-シアノプロピル)ジメチルクロロシラン、クロロトリフルオロメチルシランなどおよびこれらの誘導化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物として、ジクロロジメチルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、ジクロロジフルオロメチルシラン、ジクロロ-n-オクタデシルメチルシラン、n-オクチルメチルジクロロシラン、ジクロロシクロヘキシルメチルシランなどおよびこれらの誘導化合物、トリクロロアルキルシラン化合物として、トリクロロビニルシラン、n-オクタデシルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、n-オクタフルオロデシルトリクロロシラン、シアノヘキシルトリクロロシランなどおよびこれらの誘導化合物、トリクロロアリールシラン化合物としてフェニルトリクロロシラン、アルキルジメチル(ジメチルアミド)シラン化合物として、トリメチル(ジメチルアミド)シラン、トリエチル(ジメチルアミド)シラン、ペンタフルオロフェニルジメチル(ジメチルアミド)シラン、トリフルオロメチル(ジメチルアミド)シラン、tert-ブチルジメチル(ジメチルアミド)シラン、(3-シアノプロピル)ジメチル(ジメチルアミド)シランなどおよびこれらの誘導化合物、アルカンチオール化合物として、1‐ブタンチオール、1‐デカンチオール、1‐フルオロデカンチオール、o‐アミノチオフェノール、2‐メチル‐2‐プロパンチオール、n‐オクタデカンチオールなどおよびこれらの誘導化合物、ジアルキルスルフィド化合物として、エチルメチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、n‐ヘキシルスルフィド、フルオロエチルメチルスルフィド、フェニルビニルスルフィドなどおよびこれらの誘導化合物、エチルフェニルスルフィド及びその誘導化合物、ジアルキルジスルフィド化合物として、p‐トリルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、メチルプロピルジスルフィド、フルオロメチルプロピルジスルフィド、ジフルフリルジスルフィドなどおよびこれらの誘導化合物、メチルフェニルジスルフィドおよびその誘導化合物、ジメチルアンモニウム化合物として、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムアセテート、ジオクタデシルジメチルアンモニウムアセテート、臭化ジエイコシルジメチルアンモニウム、ヨウ化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジオクタフルオロデシルジメチルアンモニウムアセテート、ヨウ化ジメチルジオレイルアンモニウムなどおよびこれらの誘導化合物。
本発明に係る自己組織化膜は、自己組織化膜の出発原料である上記有機化合物分子を溶解した有機溶液(以下、コーティング溶液)に予備成形されたガラス塊を浸漬(液相反応)することにより成膜することができる。前記有機溶液の溶媒は、好ましくは無水有機溶媒である。これは、出発原料の有機化合物分子が水分子と反応することによってその反応性を失うことを避けるためである。また、極性基をもつ溶媒を用いると、同様に有機化合物分子との結合を形成して、有機化合物分子が反応性を失うことがあるため、溶媒としては非極性のものを選択することが好ましい。即ち、用いる溶媒は、有機化合物分子の官能基の反応性を維持し得るものから選択されることが好ましい。具体的には、例えばヘキサンなどの無水非極性有機溶液、トルエン、クロロホルムなどの無水有機溶液、およびこれらの混合溶液であることが好ましい。
一方、アルコール類など極性を有する有機溶媒で自己組織化膜の出発化合物を希釈した場合には、下記反応式(6)に示すとおり、官能基とアルコール中の−OH基とが反応して、官能基が失われ、被成膜基材表面の−OH基や−Cl基と反応が起きにくくなることがある。従って、有機溶媒は-OH基などを有さないことが好ましい。
上記コーティング溶液において、出発原料の濃度は、0.005〜10vol%の範囲とすることが好ましく、0.05〜5vol%の範囲とすることがより好ましい。濃度が小さすぎると被覆率が不充分になるが、大きすぎても被覆率は上がらず、下がる傾向がある。
自己組織化膜を形成したガラス隗は、例えば、自己組織化膜の出発原料をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の無水有機溶剤で希釈して調製したコーティング溶液に被成膜基材(ガラス塊)を1分間程度浸漬した後、コーティング溶液から取り出し、洗浄後、室温〜100℃の温度で30分程度、乾燥することにより得られる。
又は、気相反応によって自己組織化膜膜を成膜することもできる。気相反応法は、たとえば、ガラス塊を容器内にセットし、容器内を0.1気圧程度まで排気した後、自己組織化膜の出発原料を上記と同様の無水有機溶剤で希釈して調整したコーティング溶液を配置し、又は噴霧することによって気化させ、その蒸気に数分間程度、ガラス塊を曝露することにより、自己組織化膜の出発原料とガラス表面と間に反応を生じさせ、自己組織化膜を形成する方法である。
容器内での自己組織化膜の出発原料の蒸気の量は、ガラス塊の表面を自己組織化膜で覆うために必要な量の1倍〜10000倍、好ましくは10〜1000倍が好ましい。ガラス塊の表面を自己組織化膜で覆うための自己組織化膜原料物質の必要量は、自己組織化膜原料物質の有機分子1分子の占有面積と、ガラス塊表面面積から求めることができる。
上記のような成膜法は、大がかりな設備を必要としない簡便な処理方法であり、かつガラス塊の表面層状態を均一かつ一定に管理できるという利点がある。
自己組織化膜が形成された場合には、規則性をもった原子の配列に対し、その結合状態のIR活性を反映したピークを呈するIR-RASなどの表面分析により検出することができる。 換言すれば、IR-RAS分析において、自己組織化膜が形成された場合は、例えば図4のように、分子の規則的配列に由来するピークが観察される。しかし、自己組織化膜ではなく規則的な分子の配列がない膜の場合にはピークは観察されない。
自己組織化膜は、熱力学的にも安定であり、用いた分子(例えば、有機化合物分子)の選択により、分子の末端に存在する官能基の性質に依存した物理・化学的性質(例えば表面自由エネルギー)を一律に、容易に制御することができる。表面自由エネルギーは、表面の反応性の尺度であり、値が低いと反応性が乏しく、値が大きいと反応性は強い。
清浄なガラス表面の反応性は高く、例えばガラスを大気に曝露すると、大気の水分と反応して、その表面は全面的に−OH基で覆われる。また、塩素を含む乾燥雰囲気に曝露した場合は、その表面は全面的に−Cl基で覆われる。従って、ガラス塊の表面は、全面的に、−OH基(もしくは−Cl基)で覆われるので、反応性の高い官能基とガラス塊表面の−OH基(もしくは−Cl基)との反応により、図1の様に、ガラス塊の表面に緻密に分子が配列した自己組織化膜が形成されるのである。
尚、自己組織化膜の成膜に際しては、ガラス塊の表面が清浄であることが適当である。清浄度は、表面自由エネルギーによって評価することができる。自己組織化膜の成膜に適した清浄な表面であるという観点から、ガラス塊の表面の表面自由エネルギーは、50mJ/m2以上であることが好ましい。後述する接触角においては、本発明のガラス塊は、純水の接触角が65度以下、CH2I2の接触角が60度以上であることが好ましい。
表面自由エネルギーが50mJ/m2未満であると、ガラス塊表面の汚染が多くなり、この汚染部では、自己組織化膜の成膜が損なわれ、自己組織化膜が成膜されていない部分(膜ヌケ)が多くなり、化学的耐久性および耐候性の保護機能が損なわれる場合がある。成膜時のガラス塊表面の表面自由エネルギーは60mJ/m2以上が好ましく、さらに、65mJ/m2以上がより好ましい。接触角においては、純水の接触角が55度以下、CH2I2の接触角が70度以上であることがより好ましい。
ガラス塊の清浄化は、光学的湿式洗浄、酸素プラズマによるクリーニング、UVオゾンクリーニングなどを用いて行うことができる。
光学的湿式法では、「物理的剥離」→「基材表面エッチングをともなう汚れのリフトオフ」→「汚れの溶解」を、この順に行うことができる。「物理的剥離」では、超音波やブラシッシングを用い、好ましくは洗剤(酸性、中性、アルカリ性)などの薬液を添加し、汚れを効率よく除去する。リンス(すすぎ)には、純水を用いることができる。「基材表面エッチングをともなう汚れのリフトオフ」では、エッチングに適した酸性もしくはアルカリ性の薬剤を添加した溶液に、ガラス塊を浸漬する。超音波や加熱などを伴っても良い。リンス(すすぎ)には、純水を用いることができる。また、「汚れの溶解」、とくに有機系汚れの溶解では、エチルエーテル、アセトン、イソプロピルアルコールなどの有機系溶剤に、成形用ガラス塊を浸漬する。超音波や加熱などの手段を用いてもよい。リンス(すすぎ)には、イソプロピルアルコールなどを用い、ベーパー乾燥を用いることが好ましい。酸やアルカリを用いる場合、ヤケを生じないようにPH3〜9のものを使用することが好ましい。
プラズマ処理は、公知のプラズマ処理を用いて、例えば10-4Torr程度の減圧後、酸素ガスに置換した後、500WのRF発振パワーにて酸素プラズマを励起し、酸素プラズ中で数分間〜数10分間の時間、保持することにより、ガラス表面を清浄化することができる。ガラス塊の加熱温度は100℃〜200℃程度が好ましい。
UVオゾン処理は、公知のUVオゾン処理装置を用いて、例えば大気中で、エキシマランプなどUV光源を数10秒間〜数10分間の時間、ガラス塊に照射することにより、ガラス塊表面を清浄化する。
自己組織化膜が形成されたガラス塊表面は、反応性の低い状態となる。自己組織化膜成膜後のガラス塊の表面自由エネルギーは、好ましくは、50mJ/m2以下、より好ましくは40mJ/m2以下である。表面自由エネルギーの評価については後述する。表面エネルギーの評価に用いる接触角は、純水の接触角が50度以上、CH2I2の接触角が110度以下であることが好ましい。
本発明において、自己組織化膜が設けられたガラス塊は、その最表面において、分子配列がそろい、かつ、表面の反応性が極めて低い有機分子会合体を形成しており、接触する物体との摩擦を極めて低くすることができる。摩擦は、たとえば、市販のAFM(原子間力顕微鏡)装置を用いて、コンタクトモードによるLFM法(Lateral Force Measurement)により実測することが可能である。
なお、自己組織化膜の膜厚の評価は、ESCA又はエリプソメータなどによる表面分析により、分析可能である。
本発明に係る自己組織化膜の膜厚は0.1nm以上であること及び30nm以下であることが好ましい。ガラス塊に形成された自己組織化膜は、プレス成形の際に型の成形面によって伸ばされる。このとき、ガラス塊に形成する自己組織化膜の膜厚が小さ過ぎると、プレス成形による膜の伸びにより、膜の欠落部位が生じ、ガラスが型表面と直接接触して融着が発生し易くなる。一方、自己組織化膜の膜厚が大きすぎる場合、自己的に配列した有機化合物分子は相互に結合をもった構造体をつくり、このためプレス成形によって膜が伸びず、分断されやすい。この場合、得られる光学素子表面が粗れ、クモリや白濁が発生する。0.5nm以上であること及び20nm以下であることがより好ましく、0.5nm以上であること及び10nm以下であることが更に好適である。
自己組織化膜の膜厚の制御は、自己組織化膜の出発原料の選択により容易に行うことができる。すなわち出発原料として用いる有機化合物分子の長さにより、膜厚を制御することができる。そのため、成膜中に膜厚をモニタリングすることなく膜厚を制御することができる。また、同一の分子を用いれば、常に同じ膜厚に成膜できるため、ロット間、ロット内の膜厚ばらつきが抑止できる点で、優れた効果をもたらす。また、用いるガラスの種類により、ワレの生じやすい硝種に対しては、有機化合物分子の選択により、膜厚を大きく設定することが容易に行える。
[紫外線照射]
本発明では、上記の方法で自己組織化膜を成膜したガラス塊に、紫外線照射処理を行う。紫外線照射処理は、実質的に酸素を含まない雰囲気下で行うことが好ましい。また、実質的に水分を含まない乾燥雰囲気下が好ましい。
紫外線とは、通常波長400nm以下の波長の光をさし、波長290nm〜400nmの光を近紫外線、波長200nm以下の光を極紫外線または真空紫外線という。本発明に適用する紫外線の好ましい波長は、100nm〜300nmの範囲である。特に、240nm以下の短波長紫外線は空気中の酸素や水分により吸収されるので、紫外線照射は実質的に酸素や水分を含まない雰囲気下で行うことが好適である。酸素を含まない雰囲気とは、例えば、酸素含有量が1000ppm以下である。また、水分を含まない雰囲気とは、湿度が10%以下である。
本発明の紫外線の光源は低圧水銀ランプ、エキシマランプ、エキシマレーザーが好ましく、紫外線照射処理の照射量は試料表面で100mJ/m2以上が好ましい。紫外線照射量は500mJ/m2以上10000mJ/m2以下が更に好ましく、更に1000mJ/m2以上8000mJ/m2以下が好適に用いられる。
紫外線照射によって、自己組織化膜中の規則化された共有結合の少なくとも一部が、ファンデルワールス力による弱い結合となり、この際に表面自由エネルギーは若干上昇する傾向がある。
本発明に係る自己組織化膜に紫外線を照射した後の表面の表面自由エネルギーは、50mJ/m2以下が好ましく、40mJ/m2以下がより好ましい。自己組織化膜に紫外線を照射して得られたガラス素材の表面エネルギーが高くなると、型表面との間の反応が起きやすく、離型性が失われたり、カン・ワレが発生しやすくなるためである。
[自己組織化膜と紫外線照射による効果]
本発明者らは、自己組織化膜を有するガラス素材について、プレス成形におけるカン・ワレの発生機構、プリフォーム表面のコート膜のプレス成形に及ぼす影響、などについて詳細な実験検討を鋭意実施した。その結果、カン・ワレを抑止する方法を明らかにすることができた。
すなわち、上記条件下で、自己組織化膜を設けたガラス塊に紫外線照射処理することにより、自己組織化膜の膜質を改質してプレス中の膜の延伸性を向上させ、カン・ワレの原因となるプレス成形品中の歪(応力)発生を低減することを可能にした。
プレス成形によって生じるカン・ワレを防止するためには、プリフォームの表面に以下の4要件を満足する膜を形成することが有効である。
(1)被覆率が高い。
ガラス塊に対する膜の被覆率が不十分であると、膜が形成されていない部分では、ガラスが型表面と直接接触し、ガラスの型表面への融着が発生する。従って膜の被覆率を高く維持する成膜法が求められる。
(2)膜厚を制御できる。
ガラス素材に形成された膜は、プレス成形により伸ばされる。ガラス素材に形成する膜の膜厚が小さ過ぎると、プレス成形による膜の伸びや分断によって離型機能が不充分となり、融着が発生し易い。膜厚が厚過ぎても膜の分断や消耗によって、得られる光学素子表面が粗れ、クモリや白濁が発生する。ガラス素材に形成する膜の膜厚は、適性範囲に制御し、成膜ロット内はもちろん、成膜ロット間でも、膜厚のバラツキを抑止することが求められる。
(3)膜表面の反応性が小さい。
ガラス素材に形成された膜の反応性が高いと、高温下での型表面との密着により、プレス成形中に型表面と反応し、得られる光学素子表面が粗れ、クモリや白濁が発生する。したがって、ガラス素材に形成する膜について、反応性の小さな膜質が求められる。
(4)膜表面の摩擦が小さい。
プレス成形によるガラス素材の変形は、ガラス素材に形成された膜と型表面との間の摩擦に依存する。膜と型表面との間の摩擦が小さければ、プレス成形によるガラス素材の変形が速くなり、その結果、融着やカン・ワレを低減できる。
さらに、生産性が高く、かつ、低コストである自己組織化膜は、前記の課題解決に極めて有効である。
被成形基材であるガラス素材3表面に形成された自己組織化膜5は、プレス成形時の被成形基材16の伸び変形に伴い、図5に模式的に示す様に、自己組織化膜17の配列分子が倒れることにより伸び変形すると考えられる。但し、この配列分子の倒れは、C−CやC−Hの共有結合の変形をともなうため、自己組織化膜の伸び変形には抵抗が働く。その結果、自己組織化膜の表面摩擦は低いにもかかわれず、膜の伸び変形が、プレス成形時のガラスの伸び変形に追いつかず、カン・ワレの原因となるプレス成形品中の歪発生を完全には防ぎきれない。
しかしながら、自己組織化膜に紫外線照射処理を行うと、自己組織化膜中の配列有機分子の一部のC−C共有結合やC−H共有結合が切断される。その結果、プレス成形中に、前記切断された分子もしくは原子が移動することにより、膜の伸び変形が大幅に向上し、カン・ワレを抑止することできることを発明者らは見出した。このようにすることで、自己組織化膜の優れた成膜性と、ガラスの伸び変形に適応する膜の延伸性を両立させることができる。
[表面自由エネルギーの評価]
表面自由エネルギーの値は、一般的には、純水、CH2I2、グリセリン、イソペンタン、パーフルオロヘキサン等を用いた接触角測定より定量的に評価でき、市販の接触角測定器を用いることにより評価することができる。表面自由エネルギーの値を得るには、上記液体の中から2種類の異なるものを用いて、測定対象の表面の接触角を測定し、算定することができる。
本発明では、例としてOwens-Wendt-Kaelble法を用いて表面自由エネルギーを評価した。例えば、純水およびCH2I2の接触角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いた表面自由エネルギーの評価を以下のように行うことができる。
表面自由エネルギー(γ)は、固体又は液体の分散力(Dispersion Force)γdと固体又は液体の極性相互作用力(Polar Interaction Force)γpとの和で与えられる。
(1)式を固体の表面自由エネルギー(γs)で考えると、下記式(2)となる。ここで添字のsはSolidを表わす。また、同様に液体では下記式(3)となり、添字LはLiquidを表す。
膜の表面自由エネルギーは、水とCH2I2(ジヨードメタン)の2種類の液体を用い、それぞれを固体上に同量滴下し、求めた接触角から表面自由エネルギーを算出する。
Owens-Wendt-Kaelble法により、以下の計算式を用いた。
尚、2種類の液体のγL d及びγL pはそれぞれ表1の文献値を使用し、(3)式より2種類の液体それぞれのγLを求める。
例えば、水の接触角が104.9°、ジヨードメタンの接触角は72.0°であれば、(4)式、(5)式のθに代入し、その他のエネルギー値は表1の値を用いる。その結果は以下の通りである。
また、ジヨードメタンの接触は72.0°を用いて(5)式と同様に計算すると
上式(6)によって得られたγs dを(5)式に代入すると

となり、これら(6)及び(7)式の値を(2)式に代入することにより下記の結果が得られる。
従って、固体の表面自由エネルギーγsが22.30mJ/m2と求められる。
膜の被覆率も、表面自由エネルギーより評価することができる。清浄なガラスの表面は反応性が高く、−OH基で覆われた後でも、その表面自由エネルギーの値は大きい。一方、自己組織化膜の表面に存在する結合(分子の末端に存在する官能基)は、ガラスの表面より反応性が低く、その表面自由エネルギーの値も小さい。したがって、膜表面の表面自由エネルギーは自己組織化膜の被覆率の目安になる。
たとえば、被覆率が100%の自己組織化膜の表面自由エネルギーをXmJ/m2、成膜していないガラスの表面自由エネルギーをY mJ/m2とすると、被覆率と表面自由エネルギーの間には直線関係があるので、表面自由エネルギーがZ mJ/m2の場合の膜の被覆率は、式(8)で与えられる。
自己組織化膜を用いると、被覆率が他の成膜法によるより高くなる。なお、ガラス塊表面を覆う膜の全てが自己組織化膜であることが好ましいが、一部、自己組織化されていない膜が混在しても、本発明の効果を得られる範囲であれば、本発明に含まれる。自己組織化膜の被覆率は、60%以上であることが好ましく、更に、被覆率は80%以上であることが好適である。尚、被覆率100%の状態とは、成膜時間と温度を変化させたときに、IR−RASで明確なピークが得られ、そのピーク高さが不変(飽和)となったものであるとすることができる。
表面自由エネルギーは、前述のとおり、表面の反応性と被覆率の尺度であり、値が低いと反応性が低く、かつ、被覆率が高い。本発明においては、プレス成形に用いるガラス素材の表面エネルギーが大きすぎると、成形型との反応性が高くなり、クモリ、白濁の防止効果が不充分となる。従って、自己組織化膜を形成し、紫外線処理して得たガラス素材は、その表面の表面自由エネルギーが40mJ/m2以下であることが好ましい。より好ましくは30mJ/m2以下である。純水の接触角は55度以上、CH2I2の接触角は110度以下であることが好ましい。
[得られた光学素子]
図3は本発明の光学素子成形用ガラス素材の構成を模式的に示す断面図である。本発明の製造方法により得られるガラス素材(プリフォーム)は、図3 に示すように予備成形されたガラス14の表面に紫外線照射された自己組織化膜15が形成されている。図5に示すように、紫外線照射しない自己組織化膜3は、プレス成形時に変形しにくいのに対し、紫外線照射した自己組織化膜17は、プレス成形時に変形し易く、その結果、カン・ワレが発生しにくい。
[プレス成形]
本発明の製造方法によって用意されたガラス素材を用い、精密に形状加工された成形型によって、プレス成形することによって光学素子を得ることができる。
光学素子の製造は、ガラス素材を成形用型内に投入し、加熱軟化により成形可能になった状態でこれを押圧し、成形型の成形面を転写することによってガラス素子を成形することにより行うことができる。押圧開始時、又は押圧中に冷却を開始し、成形されたガラス素子を、型内で所定温度、好ましくはTg以下の温度まで保持しつつ降温する。その後、離型し、成形された光学素子を取出す。
例えば、ガラス素材を成形型内に配置した後、ガラス粘度で108〜1012dPa・s相当の温度に加熱し、プレス成形を行なってもよく、また、ガラス粘度で、108〜1012dPa・s粘度相当に加熱した成形型に、ガラス粘度で106〜108dPa・s相当温度に加熱したガラス素材を供給し、プレス成形してもよい。
成形時の雰囲気は、後述の離型膜などを保護するため、非酸化性とすることが好ましい。
型材としては、得ようとする光学素子形状に基づいて、精密な形状加工が可能であること、鏡面加工ができること、かつ繰り返しプレス荷重に耐える硬度や耐熱性を有した型素材であれば制限はない。例えば、SiC、WC、TiC、TaC、BN、TiN、AlN、Si34、SiO2 、Al23 、ZrO2 、W、Ta、Mo、サーメット、サイアロン、ムライト、カーボン・コンポジット(C/C)、カーボンファイバー(CF)、WC−Co合金等から選ばれる。
型母材表面には、離型膜を成膜することができ、離型膜としては、ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC)、水素化ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC:H)、テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C)水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C:H)、アモルファス炭素膜(以下、a-C)、水素化アモルファス炭素膜(以下、a-C:H)等から選ばれる膜を用いることが好ましい。これらは、DC−プラズマCVD法、RF−プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR−プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のプラズマCVD法、イオンプレーティング法などのイオン化蒸着法、スパッタ法、蒸着法やFCA法等の手法によって成膜される。
なお、本発明のガラス光学素子の製造方法においては、レンズ、ミラー、グレーティング、プリズム、マイクロレンズ、積層型回折光学素子等の光学素子を製造することができ、光学素子以外のガラスの成形品に対しても適用できることは言うまでもない。
実施例1
ガラス転移点(Tg)が480℃のTi、Nb、Wの酸化物を含むリン酸塩系ガラスからなる、球形のガラス塊を用い、周辺肉厚(コバ厚)が0.5mm、径15mm、中心肉厚2.2mmの薄肉両凸レンズをプレス成形した。
まず、溶融固化により、球形のガラス塊を成形したのち、出発原料を自己組織化膜の出発原料分子はオクチルトリクロロシラン(CH3(CH2)7SiCl3)とした、1vol%ヘキサン溶液を用意し、ガラス塊を1分浸漬し、洗浄、乾燥させた。このサンプルに、低圧水銀ランプ(主に185nmと254nmの紫外線光を放出)を用いて、窒素雰囲気中で、紫外線照射処理を行った。
紫外線照射の条件を変化させたとき、連続100ショットのプレス成形を行った場合の、カン・ワレが発生し始めるプレス温度を調査した結果を、表2に示す。すなわち、プレス成形を行なうときのガラス粘度が高いほど、カン・ワレが発生しやすいため、プレス成形時の粘度、すなわち、プレス成形温度を、カン・ワレ防止効果の指標とした。
結果として、自己組織化膜成膜後、紫外線照射処理を行わなかったものは、プレス成形温度592℃にてカン・ワレが発生したのに対し、100mJ/m 2以上の紫外線照射を行った場合には、カン・ワレが発生する温度が584℃以下であり、カン・ワレ発生抑止効果が認められた。
尚、585℃で前記レンズを同一型にて連続プレス成形した場合、自己組織化膜成膜後紫外線照射処理を行わなかったものの場合には10ショット目からカン・ワレが連続的に発生したが、1800〜2200(mJ/m 2)の紫外線を照射した場合には500ショットプレスをしたが、カン・ワレの発生は認められなかった。
紫外線照射を行った場合には、膜の伸び変形性が向上し、プレスに伴うガラス素材の変形速度が増大したため、低温でプレス成形しても発生する歪(応力)が低減し、カン・ワレ・の発生が抑止できたと考えられる。
実施例2
ガラス塊として、ガラス転移温度が480℃であるTi、Nb及びWの酸化物を含むリン酸塩系ガラスを用い、実施例1と同形状のガラスレンズを成形した。溶融固化した球形のガラス塊に、気相反応法により自己組織化膜を成膜した。自己組織化膜形成前の表面自由エネルギーは70mJ/mm2であった。すなわち、ガラス塊を容器内にセットし、その容器内を0.1気圧まで排気した後、オクチルトリクロロシラン(CH3(CH2)7SiCl3)をヘキサンで10vol%まで希釈して調整したコーティング溶液を容器内に噴霧することにより蒸発させた。
容器内に導入したオクチルトリクロロシランの量は、プリフォームの表面を自己組織化膜で覆うために必要な量の300倍である。必要量は自己組織化膜原料物質の有機分子1分子の占有面積と、ガラス塊表面面積から求めた。3分間、保持した後、0.1気圧程度まで排気して残存する有機溶液の蒸気を除去した後、容器内を大気圧に戻し、表面に自己組織化膜が形成されたガラス塊を、容器内から取り出した。
ガラス塊の表面をIR-RASで分析した結果、分子配列に基づくピークが観察され、膜は自己組織化されていることが確認された。また、ESCAで測定した自己組織化膜の膜厚は1.2nmであり、純水およびCH2I2の接触角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いて解析される表面エネルギーは25mJ/m2であった。
このガラス塊につき、窒素雰囲気中にて、低圧水銀ランプを用いて紫外線照射処理をおこなった。照射量は1200〜1500 mJ/m2であった。照射後の表面自由エネルギーは、35mJ/m2であった。このようにして得られたガラス素材を用いてモールドプレス成形を行った。
ガラス素材を成形装置内に設置し、窒素ガス雰囲気中で、590℃まで加熱し、150kg/cm2 の圧力で1分間加圧した。圧力を解除した後、冷却速度を−50℃/minで460℃になるまで冷却し、その後は−100℃/min以上の速度で冷却を行い、プレス成形物の温度が200℃以下に下がったら、成形物を取り出した。
なお、成形型としては、CVD法により作製した多結晶SiCの成形面をRmax=18nmに鏡面研磨した後、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、成形面にDLC:H膜(水素化ダイヤモンド状炭素膜)を成膜したものを用いた。
同一型で連続プレス成形した結果、プレス回数3000回までのカン・ワレの発生はなく、また、光学素子の外観を観察した結果、全数、良好であった。
比較例1
自己組織化膜成膜後、紫外線照射を行わないこと以外は実施例1と同様に、同じリン酸塩系ガラスのガラス素材を用いて、同形状のレンズを成形した。同一型で連続プレス成形した結果、プレスショット150ケからカン・ワレが発生し始め、プレスショット200ケからはカン・ワレが連続して発生する様になった。また、成形品のクモリや白濁の外観不良が発生した。
実施例3〜8
ガラス、自己組織化膜、紫外線照射の条件などを表3及び4のとおり変更した以外は、実施例1と同様に、紫外線照射した自己組織化膜を付与したプリフォームを作製し、同一型で連続プレスした。プレス回数5000回までのカン・ワレの発生はなく、また、光学素子の外観を観察した結果、表3及び4のとおり、全数、クモリ、白濁およびワレはなく、外観品質は良好もしくは極めて良好であった。
*自己組織化膜原料の量;ガラス素材表面を自己組織化膜で覆うために必要な量に対する倍数
**自己組織化の判定; IR-RASでの分析よりピークの有無にて自己組織化の有無を判定
○:自己組織化あり、×:自己組織化なし
***カン・ワレ;同一型で連続プレスし、プレス回数3000回までの光学素子のカン・ワレ
◎:3000回のプレスで、カン・ワレの発生数が10ケ以下。
○:3000回のプレスで、カン・ワレの発生数が100ケ以下。
×:プレス途中で、カン・ワレが発生し、プレス続行が不可になった。
****光学素子外観;同一型で連続プレスし、プレス回数3000回までの光学素子の外観
◎:3000回のプレスで、クモリが見られず。
○:3000回のプレスで、クモリ不良の発生が100ケ以下。
×:プレス途中で、ポツなどの不良が発生し、プレス続行が不可になった。
本発明は、ガラスレンズ等のガラス光学素子を製造する方法において使用するガラス素材(プリフォーム)の製造方法、及びそれを用いたガラス光学素子の製造方法に利用できる。
自己組織化膜の説明図。 複分子層からなる自己組織化膜の説明図。 紫外線照射した自己組織化膜を有する成形用ガラス素材の説明図。 自己組織化膜のIR-RAS分析結果。 紫外線照射しない自己組織化膜及び紫外線照射した自己組織化膜のプレス変形の仕方の模式図。
符号の説明
0 自己組織化膜の出発原料分子の官能基
1 自己組織化膜の出発原料を含み溶液(コーティング溶液)
2 溶液中の自己組織化膜の出発原料分子
3 被成膜基材
4 自己組織化膜
5 自己組織化膜の分子
6 複層化した自己組織化膜
7 複分子層からなる自己組織化膜
8 自己組織化膜の分子A
9 自己組織化膜の分子B
10 自己組織化膜の分子1
11 自己組織化膜の分子2
12 自己組織化膜の分子3
13 自己組織化膜の分子4
14 予備成形されたガラス
15 紫外線照射した自己組織化膜
16 プレス変形した被成膜基材
17 プレス変形した自己組織化膜

Claims (8)

  1. 所定形状に予備成形したガラス塊の表面に自己組織化膜を形成し、ついで紫外線照射処理を行うことを特徴とする、プレス成形用ガラス素材の製造方法。
  2. 前記紫外線照射処理は、紫外線照射光源として、低圧水銀灯、エキシマランプ、又はエキシマレーザーを用い、照射量を100mJ/m 2以上とすることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
  3. 照射量を1000〜8000mJ/m 2の範囲とすることを特徴とする、請求項2に記載の製造方法。
  4. 前記自己組織化膜を形成するガラス塊として、表面の表面自由エネルギーが50 mJ/m2以上であるガラス塊を用いることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記自己組織化膜の形成は、自己組織化膜を形成したガラス塊の表面の、表面自由エネルギーが40 mJ/m2以下となるように行うことを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の製造方法。
  6. ガラス塊は、Tiの酸化物、Nbの酸化物、Wの酸化物、Biの酸化物、及びLaの酸化物のいずれか1つ以上を含有する光学ガラスからなることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
  7. 前記有機化合物が、クロロトリアルキルシラン化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物、トリクロロアルキルシラン化合物、アルキルジメチル(ジメチルアミノ)シラン化合物、アルカンチオール化合物、ジアルキルスルフィド化合物、ジアルキルジスルフィド化合物、ジメチルアンモニウム化合物から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の製造方法。
  8. 所望の光学素子の形状に基づいて精密加工を施した成形型により、加熱軟化した状態のガラス素材をプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法において、前記ガラス素材として請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法により得られるガラス素材を用いることを特徴とする、前記製造方法。


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