JP3894561B2 - ガラス製品の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、加熱軟化したガラス素材を成形型内でプレス成形するガラス製品、特にガラス光学素子の製造方法に関する。
精密光学ガラス素子を簡便に生産性よく成形する方法として、モールドプレス法がある。モールドプレス法は、予めガラスを溶融固化もしくは冷間加工して所定の形状にした成形用ガラス素材を成形用型内に投入し、加熱軟化により成形可能になった状態でこれを押圧し、成形されたガラス素子が型内に保持された状態でこれを冷却してガラス素子を得る方法である。精密加工された金型を用いるため、この方法によれば、成形後のガラス素子の研磨加工を要しない。
モールドプレス法によってガラス素子を成形する場合、成形用ガラス素材と金型とがガラスの軟化点以上の高温で密着する。そのため、ガラスと型の界面で反応が生じてガラスの一部が金型表面に融着したり、ガラス素子の表面にクモリ、白濁が生じたり、ワレ等の欠陥が発生し、良好なガラスレンズを得るには困難があった。
これらの問題に対し、ガラス素材の表面をあらかじめ改質する方法が知られている。
特開平9−71424号公報(特許文献1)には、成形用ガラス素材をその粘度が109 〜1014ポアズの範囲に存するような温度で103 Pa以下の減圧下に暴露する方法が開示されている。この方法では、ガラス素子表面のクモリや白濁の発生の原因を、成形用ガラス素材の表面の反応性や揮発と解釈し、これらを低減するために、上述のとおり、減圧下での加熱処理を行う。
この方法によれば、一定の効果が見られるものの、減圧下での加熱処理と云う手段では成形用ガラス素材の表面層の状態が不均一となるためか、同一金型で繰り返し成形、たとえば500回以上の連続成形を行うと、金型の表面もしくは金型に設けた離型膜の表面に部分的に融着が発生して不良率が急増し、十分に満足のいく結果は得られなかった。
また、成形用ガラス素材の表面に膜を形成する方法が知られている。
特公平2−31012号公報(特許文献2)には、ガラスと型の相互に対向する表面のうち少なくとも一方に炭素膜を形成することにより、融着を防止する方法が記載されている。
特開平8−277125号公報(特許文献3)には、酸化イットリウムや酸化セリウムなどIIIA属の金属酸化物を真空蒸着やスパッタ法で、ガラス表面に被膜として形成する方法が開示されている。
特開平11−236225号公報(特許文献4)には、Mo、W及びNbなどの硫化物やセレン化物を真空蒸着やスパッタ法でガラス表面に被膜として形成する方法が開示されている。
特開平9−71424号公報 特公平2−31012号公報 特開平8−277125号公報 特開平11−236225号公報
上記特許文献に記載の方法によれば、一定の効果が見られるものの、同一金型で繰り返し成形、例えば、1000回以上の連続成形を行うと、徐々に、又は突発的に成形後の光学ガラス素子表面の白濁、曇り、ワレが発生し、十分に満足のいくものではなかった。
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであって、プレス成形の際の融着、及びそれに起因する成形体表面のクモリ、白濁、もしくはワレが抑止されたガラス製品を得ることができるガラス製品の製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
[請求項1]予備成形されたガラス素材を加熱軟化する工程、および成形型により加圧成形する工程を含む、ガラス製品の製造方法であって、前記ガラス素材を、有機系溶剤を用いたまたはUVオゾン処理による精密洗浄に供してガラス素材表面の有機系汚れを除去し、精密洗浄された前記ガラス素材をロット毎に表面自由エネルギーを抜き取り検査し、前記表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m 2 以上のロットの前記ガラス素材のみを前記加熱軟化工程に供し、次いで加圧成形工程に供することを特徴とする製造方法。
[請求項2]前記精密洗浄されたガラス素材を前記加熱軟化工程に供するまでの間、前記ガラス素材の表面自由エネルギーが60mJ/m 2 以上を維持できる環境で保持する、請求項1に記載の製造方法。
[請求項3]予備成形されたガラス素材を加熱軟化する工程、および成形型により加圧成形する工程を含む、ガラス製品の製造方法であって、前記ガラス素材を、有機系溶剤を用いたまたはUVオゾン処理による精密洗浄に供してガラス素材表面の有機系汚れを除去し、精密洗浄された前記ガラス素材をロット毎に表面自由エネルギーを抜き取り検査し、前記表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m 2 以上のロットの前記ガラス素材のみに表面層を形成し、当該ガラス素材を前記加熱軟化工程に供し、次いで加圧成形工程に供することを特徴とする製造方法。
[請求項4]前記表面層が膜厚0.1nm以上1μm以下である炭素を主成分とする薄膜であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
[請求項5]前記精密洗浄されたガラス素材に前記表面層を形成するまでの間、前記ガラス素材の表面自由エネルギーが60mJ/m 2 以上を維持できる環境で保持する、請求項3または4に記載の製造方法。
以上説明したように、本発明によれば、ガラス素材を成形用型でプレス成形し、光学素子を製造するに際して、予備成形されたガラスの表面自由エネルギーが60mJ/m2以上である成形用ガラス素材、または表面自由エネルギーが60mJ/m2以上である成形用ガラス素材に表面層を形成したガラス素材を用いることにより、クモリ、白濁および/もしくはワレ等を生じることなく安定してガラス製品を生産することができる。
本発明は、予備成形されたガラス素材を加熱軟化する工程、および成形型により加圧成形する工程を含む、ガラス製品の製造方法であって、第1の態様は、60mJ/m2以上の表面自由エネルギーを有するガラス素材を、加熱軟化工程に供し、次いで加圧成形工程に供することを特徴とし、第2の態様は、60mJ/m2以上の表面自由エネルギーを有するガラス素材に表面層を形成した後に、加熱軟化工程および加圧成形工程に供することを特徴とする。いずれの態様においても、予備成形されたガラス素材として、表面自由エネルギーが60mJ/m2以上であるガラス素材を用いる。
成形された光学素子のクモリといった外観不良、及びワレが、主に、成形用ガラス素材と型表面もしくは型表面に設けられた離型膜表面との融着に起因することは、経験的に知られている。さらに、本発明者らは、詳細に調査した結果、この融着の大部分が、型表面もしくは離型膜表面に付着した異物を起点にして発生していることを究明した。ESCA等の表面分析の結果、この異物の主成分は、成形用ガラス素材中には含まれない有機系のものと同定された。そして、さらに検討した結果、成形用ガラス素材表面に存在する汚れが、突発的にプレス中に発生する、又は微量な汚れが、プレスを重ねることにより、型表面もしくは離型膜表面に徐々に濃縮されることがわかった。
また、成形用ガラス素材の表面に炭素膜を形成した場合でも、融着不良が急増するプレス回数は延長されるが、やはり、1000回程度の連続プレスで融着不良が急増していた。そこで、融着不良が急増した型表面について検討したところ、上記と同様に異物が付着しており、これをESCA等の表面分析した結果、同様に、この異物の主成分は、成形用ガラス素材中には含まれない有機系のものであった。成形用ガラス素材の表面に炭素膜を形成した場合でも、成形用ガラス素材表面の微量な汚れが、プレスを重ねることにより、型表面もしくは離型膜表面に濃縮されることがわかった。
成形用ガラス素材表面の有機系汚れは微量であるため、直接評価することは困難である。しかし、本発明者らは、成形用ガラス素材表面の有機系汚れを、純水、CH2I2、グリセリン、イソペンタン、パーフルオロヘキサン等の濡れ角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いて解析される表面自由エネルギーにより定量的に評価できることを見出した。表面自由エネルギー値が小さい成形用ガラス素材は、有機系汚れが多いことも判明した。そして、さらに、成形用ガラス素材の表面エネルギーとプレス回数による融着不良率の推移について調査した。
表面自由エネルギーは公知の接触角測定器を用いて測定することができる。即ち、上記液体の中から2種類の異なるものを用いて、測定対象の表面の濡れ角(接触角)を測定し、算定できる。例えば、純水およびCH2I2の濡れ角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いた表面自由エネルギーの評価を以下のように行うことができる。表面自由エネルギー(γ)は、固体又は液体の分散力(Dispersion Force)γdと固体又は液体の極性相互作用力(Polar Interaction Force)γpとの和で与えられる。
Figure 0003894561
(1)式を固体の表面自由エネルギー(γs)で考えると、
Figure 0003894561
となる。ここで添字のsはSolidを表わす。
また、同様に液体では
Figure 0003894561
であり、添字LはLiquidを表す。膜の表面自由エネルギーは、水とCH2I2(ジヨードメタン)の2種類の液体を用い、それぞれを固体上に同量滴下し、求めた接触角から表面自由エネルギーを算出する。
Owens-Wendt-Kaelble法により、以下の計算式を用いた。
Figure 0003894561
尚、2種類の液体のγL d及びγL pはそれぞれ表1の文献値を使用し、(3)式より2種類の液体それぞれのγLを求める。
Figure 0003894561
例えば、水の接触角が104.9°、ジヨードメタンの接触角は72.0°であれば、(4)式のθに代入し、その他のエネルギー値は表1の値を用いる。その結果
Figure 0003894561
上式(6)によって得られたγsdを(5)式に代入すると
Figure 0003894561

となり、これら(6)及び(7)式の値を(2)式に代入することにより
Figure 0003894561
従って、固体の表面自由エネルギーγsが22.30mJ/m2と求められる。
表2に、ホウ酸塩光学ガラスからなるガラスAの成形用ガラス素材について、表面自由エネルギーとプレス回数による融着不良率の推移を調査した結果を示す。この結果から、成形用ガラス素材の表面自由エネルギーが60mJ/m2以上では、融着発生が飛躍的に低減することが分かる。また、成形用ガラス素材の表面に炭素膜を形成した場合について同様の調査を行い、その結果を表3に示す。この場合でも、表面自由エネルギーが60mJ/m2以上の成形用ガラス素材に表面層を形成したものは、融着発生が飛躍的に低減することが分かる。
Figure 0003894561
Figure 0003894561
本発明は、この究明された結果をもとになされたものであり、表面自由エネルギーを60mJ/m2以上にした成形用ガラス素材を用いることで、融着不良を飛躍的に低減することができる。
表面エネルギーが60mJ/m2未満であるガラス素材をプレス成形に供し続けると、汚れの、型表面または型表面上に設けた離型膜表面への付着、濃縮が、少ないプレス回数でも発生し易くなる。その結果、界面で汚れ(有機物)が反応を起こし、ガラス素材の型表面または離型膜表面への融着、特にサブμmサイズの微小な融着が多数発生し、このため、光学的な鏡面仕上を施した型表面又は離型膜表面が粗れ、凹凸が生じる。これを転写することにより、成形された光学素子にクモリや白濁などの欠陥が生じる。また、融着した部位を基点として、光学素子のワレが生じる。上記表からは、表面自由エネルギーを65mJ/m2以上にした成形用ガラス素材を用いることがさらに好ましいことが分かる。
60mJ/m2以上の表面自由エネルギーを有する成形用ガラス素材は、成形用ガラス素材を精密に洗浄することにより得られる。さらに、成形用ガラス素材の表面には、大気中の微少な有機系汚れが付着、吸着し、時間の経過とともに有機系汚れが増加し、これに伴い、表面自由エネルギーも洗浄後の時間経過とともに低下する。従って、洗浄後、プレスまでの間、成形用ガラス素材を清浄な環境下で保管することも重要である。
成形用ガラス素材の精密洗浄の方法としては、汚れの溶解の原理に基づく湿式法、UVオゾン処理を利用した乾式法等を適宜利用できる。
湿式法では、通常、「物理的剥離」→「基材表面エッチングをともなう汚れのリフトオフ」→「汚れの溶解」を、この順に行うことができる。
「物理的剥離」では、例えば、超音波やブラシッシングの手法が用いられる。洗浄効果を高めるための洗剤(酸性、中性、アルカリ性)などの薬液を添加し、物理作用と化学作用の相乗効果により、汚れを効率よく除去することもできる。具体的には、例えば、以下のように行うことができる。
超音波やブラッシング; 超音波は数KHz〜数MHz、ブラッシングは光学ブラッシング
洗剤(酸性、中性、アルカリ性)などの薬液; 一般的な光学用洗剤液(アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤など)
洗浄時間や温度; 0.5分〜15分、20℃〜70℃
洗浄後にはリンスを行い、リンス(すすぎ)には、一般的に、純水が用いられる。
「基材表面エッチングをともなう汚れのリフトオフ」では、成形用ガラス素材表面のエッチングに適した酸性もしくはアルカリ性の薬剤を添加した溶液に、成形用ガラス素材を浸漬する。効果を高めるために、超音波や加熱などの手段を用いてもよい。酸性もしくはアルカリ性の薬剤; 炭酸水素アンモニウム、フッ化水素アンモニウム、炭酸アンモニウム、水酸化アンモニウムなど薬剤を添加した溶媒; 純水洗浄時間や温度; 0.5分〜60分、20℃〜70℃この洗浄の後にもリンスを行い、リンス(すすぎ)には、一般的に、純水が用いられる。
また、「汚れの溶解」、とくに有機系汚れの溶解では、エチルエーテル、アセトン、イソプロピルアルコールなどの有機系溶剤に、成形用ガラス素材を浸漬する。効果を高めるために、超音波や加熱などの手段を用いてもよい。洗浄時間や温度; 0.5分〜15分、20℃〜70℃リンス(すすぎ)には、一般的に、イソプロピルアルコールが用いられ、リンス後、ベーパー乾燥が用いられる。
精密洗浄し、表面自由エネルギーが60mJ/m2以上になった成形用ガラス素材は、表面自由エネルギー低下の原因となる有機系汚染源から隔離することが好ましい。そのための成形用ガラス素材の保管方法としては、有機系汚染源が排除されたクリーン環境、たとえば、空気中の全有機炭素濃度が1000μgC/L以下に相当する環境が好ましい。より好ましくは、500μgC/L以下、更に好ましくは、100μgC/L以下である。ここでいう、全有機炭素濃度とは、雰囲気空気を、1L/min.の流速で純水中へバブリングした水試料について、公知のTOC(全有機炭素)測定装置を使用して全有機炭素濃度を測定し、その測定値から空気1L中の全有機炭素濃度を換算した値を用いる。
具体的には、バブリングした雰囲気空気の総量は20L、水試料のTOCが100μg/Lとすると、空気中の全有機炭素濃度は100μgC/L/20L=100μgC/Lとなる。全有機炭素濃度を1000μgC/L以下とする為には、アルコール等の有機物がガラス素材の保管、又は搬送環境に入らないように、成形用ガラス素材を隔離することが好ましい。
また、成形用ガラス素材の環境の清浄度を管理することが適切である。例えばISOクラス5以下のクリーンルームもしくはクリーンブースに相当する環境が好ましい。より好ましくは、クラス4、更にはクラス3以下がよい。ここでいうクラスとは、ISO-14644(Part1)に基く。1立方メートル中の粒径0.1μm以上の粒子数の10のべき数をとり10x個/m3のときISOクラスxと表す。
清浄度の測定は、公知のパーティクルカウンタ(光散乱式係数機)を用いて、ISO-14644に基づいた方法で測定ができる。
尚、乾式洗浄の場合には、公知の酸素プラズマクリーナー、水素プラズマクリーナー、UVオゾンクリーナーを用いることができ、又はアルゴンイオンエッチングを利用することができる。
上述のように、成形用ガラス素材表面には、大気中に存在する有機物も付着し、表面自由エネルギー低下の原因となる。そこで、プレス成形に60mJ/m2以上の表面自由エネルギーを有する成形用ガラス素材を確実に供給するために、成形用ガラス素材を加熱軟化する前に、成形用ガラス素材のロット毎に表面自由エネルギーの抜き取り検査することが好ましい。そして、検査の結果、表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2以上のロットの成形用ガラス素材のみ加熱軟化工程に供する。表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2未満のロットの成形用ガラス素材は、再度、精密洗浄に供する。尚、好ましくは、ロット内の複数のガラス素材の表面自由エネルギーのバラツキが中央値±5mJ/m2となるように、より好ましくは、中央値±2mJ/m2になるように保管、搬送環境をクリーン化する。
本発明を適用するガラス素材の組成や形状に特に制約は無い。但し、融着を起こしやすいガラス素材、即ち、成形面(もしくは、成形面上の離型膜)との反応性が高いフツリン酸塩、リン酸塩、ホウ酸塩、ホウリン酸塩、の光学ガラスからなるガラス素材に、本発明は特に有効である。
また、特に、離型し難い凹メニスカス、両凹等のレンズ形状、又は、成形面(又は成形面上の離型膜)との反応性の高い上記組成、更には、プレス温度が高いガラス素材(例えばTgが550℃以上)であって、金型の成形面もしくは離型膜が消耗し易い場合には、離型促進を目的に、予備成形されたガラスの表面自由エネルギーが60mJ/m2以上である成形用ガラス素材に表面層を形成することができる。より好ましくは、表面自由エネルギーが65mJ/m2以上であるガラス素材に表面層を形成する。
表面自由エネルギーが60mJ/m2以上である成形用ガラス素材は、上述のように精密洗浄し、有機物の汚染の少ないクリーン環境で保管し、さらには、成形用ガラス素材に表面層を形成する前に、成形用ガラス素材のロット毎に表面自由エネルギーの抜き取り検査をする。そして、表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2以上のロットの成形用ガラス素材のみを表面層形成工程に供する。表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2未満のロットの成形用ガラス素材は、再度、精密洗浄に供する。上記と同様に、あらかじめ、ロット内の表面自由エネルギーのバラツキが中央値±5mJ/m2以下、好ましくは±2mJ/m2以下であるときに、表面層を形成することが好ましい。
表面層については後述するが、表面層を形成すると、表面層形成前に比べて表面自由エネルギーは低下する。しかし、表面層を形成すると、ガラス素材の汚染速度が表面層を有さないガラス素材に比較して大きく低下するため、前述のようなクリーン環境で保管管理を行なわなくても、所定の効果(成形された光学素子にクモリや白濁などの欠陥が生じることを防止する効果)が得られるという利点がある。
ガラス素材に設ける表面層としては、炭素を主成分とする薄膜や自己組織化膜等を挙げることができる。炭素を主成分とする薄膜は、ダイヤモンド、ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC)、水素化ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC:H)、テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C)水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C:H)、アモルファス炭素膜(以下、a-C)、水素化アモルファス炭素膜(以下、a-C:H)等から選ばれる。
また、炭素を主成分とする薄膜の成膜(形成)は、CVD法、DC−プラズマCVD法、RF−プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR−プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のプラズマCVD法、イオンプレーティング法などのイオン化蒸着法、スパッタ法、蒸着法やFCA(Filtered Cathodic Arc)法等の手法によって形成される。炭素を主成分とする薄膜の膜厚は、0.1nm〜1μm程度であれば良く、特に0.5nm〜100nmが好適である。膜厚が薄すぎると離型性が低下する傾向があり、膜厚が厚過ぎると融着、クモリ、白濁および/もしくはワレの防止効果が飽和する傾向があり、また、成形用ガラス素材の表面層状態が不均一になり、バラツキが大きくなり易い。
自己組織化膜とは、杉村博之、高井治;日本学術振興会薄膜第131委員会第199回研究資料 平成12.2.1 p.34-39、Seunghwan Lee, Young-Seok Shon, Ramon Colorado, Jr.,Rebecca L. Guenard, T. Randall Lee and Scott S. Perry;Langmuir 16巻(2000), p.2220-2224等の文献により知られており、図3に示す様に、溶液4中の分子5が被成膜基材6の表面上に自己的に配列・組織化して形成された被覆率がほぼ100%の膜7である。自己組織化膜は、ガラス素材を、例えば、自己組織化膜用コーティング液へ浸漬することで形成できる。
自己組織化膜が設けられたガラス素材は、その最表面において、分子配列がそろった有機分子会合体を形成しており、接触する物体との摩擦を極めて低くすることができる。
例えば、特定の有機分子を選択し、この有機分子を含有する溶液、例えば、有機分子を非極性有機溶媒に所定濃度で含有させたものにガラス素材を曝し、反応条件を整えることにより、有機分子の配向性がそろった有機単分子膜が形成される。有機分子が、被成膜基材の表面の基と反応して配列することで膜が形成されるため、極めて被覆率が高い成膜が可能である。膜形成を効率的に行なうため、ガラス表面の前処理を行なってもよい。有機分子としては、例えば、反応性の有機ケイ素含有化合物、反応性有機硫黄含有化合物、反応性有機フッ素含有化合物及び反応性有機窒素含有化合物を挙げることができる。これら有機化合物が、自己的・自発的に被成膜基材(ガラス)の表面との反応する官能基は、例えば、有機ケイ素含有化合物では主に−Cl基(後述する反応式(1))、有機硫黄含有化合物では主に−H基、又は(S−S)基、(後述する反応式(2)及び(3))、有機窒素含有化合物では主に−H基(後述する反応式(4))、であることができる。例えば、溶液3中の分子4の官能基(○部)と被成膜基材5の表面との反応は以下のものであることができる。
クロロトリアルキルシラン化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物、トリクロロアルキルシラン化合物、など、有機化合物中にCl元素をもつ基があると、これが官能基となり、反応式(1)のとおり、被成膜基材(ガラス)5の表面の−OH基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材5の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
Figure 0003894561
尚、清浄なガラス表面は反応性が高く、ガラスをクリーンな大気に曝すと空気中の水分子と反応し、ガラス表面は全面的に-OH基に覆われているため、上記の反応が進むのである。
また、例えばアルカンチオール化合物の場合には、化合物中のS元素と結合しているH元素が官能基となり、反応式(2)のとおり、被成膜基材3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
Figure 0003894561
更に、例えばジアルキルジスルフィド化合物の場合には、化合物中のS−S結合が官能基となり、反応式(3)のとおり、被成膜基材3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
Figure 0003894561
ジメチルアンモニウム化合物、アルキルジメチル(ジメチルアミノ)シラン化合物の場合には、化合物中のN元素に結合するH元素が官能基となり、反応式(4)のとおり、被成膜基材3の表面の−Cl基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
Figure 0003894561
尚、この成膜を行う場合には、ガラス表面を、塩素を含むクリーンな乾燥雰囲気に曝し、その表面が−Cl基で覆われた状態として、上記の反応を進める。
上述のとおり、自己組織化膜の形成するためには、自己的・自発的に被成膜基材表面の−OH基や−Cl基と反応する官能基を有する化合物を、その官能基の反応性を保全した状態で、被成膜基材表面と接触させることが必要である。例えば、自己組織化膜膜の原料となる有機化合物を、水分や塩素を相当量含んだ雰囲気中に保管すると、官能基の反応性が失われやすい。従って、有機化合物は、官能基の反応性を維持する状態で保管することが好ましい。
自己組織化膜を形成するための反応は、反応速度が大きいことが好適である。反応式(1)〜(4)で述べた、−Cl基、−H基、 (S―S)基は、反応速度が優れて大きいため好適である。他方、官能基がOR基(アルコキシ基)など、反応速度が小さい基をもつ出発原料を用いると、下記反応式(5)の進行が遅く、成膜速度が相対的に小さい。
Figure 0003894561
また、本発明に用いる自己組織化膜の出発原料としての有機分子は、末端に上記官能基をもつが、他の末端(上記官能基を結合末端とすると、表面末端側)にアルキル基、アリール基、ビニル基、エポキシ基、またはフッ素を有することができる。好ましくは、アルキル基、アリール基である。このような基をもつと、融着やワレ、クモリの抑止された、良好なプレス成形を行なうことができる。
自己組織化膜の出発原料として用いる、反応性の有機ケイ硅素含有化合物、反応性有機硫黄含有化合物、反応性有機フッ素含有化合物及び反応性有機窒素含有化合物としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。但し、これらの化合物に限定されるものではなく、ガラス素材において自己組織化膜を形成できる物質であれば良い。
クロロトリアルキルシラン化合物として、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、(3-シアノプロピル)ジメチルクロロシラン、クロロトリフルオロメチルシランなどおよびこれらの誘導化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物として、ジクロロジメチルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、ジクロロジフルオロメチルシラン、ジクロロ-n-オクタデシルメチルシラン、n-オクチルメチルジクロロシラン、ジクロロシクロヘキシルメチルシランなどおよびこれらの誘導化合物、トリクロロアルキルシラン化合物として、トリクロロビニルシラン、n-オクタデシルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、n-オクタフルオロデシルトリクロロシラン、シアノヘキシルトリクロロシランなどおよびこれらの誘導化合物、トリクロロアリールシラン化合物としてフェニルトリクロロシラン、アルキルジメチル(ジメチルアミド)シラン化合物として、トリメチル(ジメチルアミド)シラン、トリエチル(ジメチルアミド)シラン、ペンタフルオロフェニルジメチル(ジメチルアミド)シラン、トリフルオロメチル(ジメチルアミド)シラン、tert-ブチルジメチル(ジメチルアミド)シラン、(3-シアノプロピル)ジメチル(ジメチルアミド)シランなどおよびこれらの誘導化合物、アルカンチオール化合物として、1‐ブタンチオール、1‐デカンチオール、1‐フルオロデカンチオール、o‐アミノチオフェノール、2‐メチル‐2‐プロパンチオール、n‐オクタデカンチオールなどおよびこれらの誘導化合物、ジアルキルスルフィド化合物として、エチルメチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、n‐ヘキシルスルフィド、フルオロエチルメチルスルフィド、フェニルビニルスルフィドなどおよびこれらの誘導化合物、エチルフェニルスルフィド及びその誘導化合物、ジアルキルジスルフィド化合物として、p‐トリルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、メチルプロピルジスルフィド、フルオロメチルプロピルジスルフィド、ジフルフリルジスルフィドなどおよびこれらの誘導化合物、メチルフェニルジスルフィドおよびその誘導化合物、ジメチルアンモニウム化合物として、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムアセテート、ジオクタデシルジメチルアンモニウムアセテート、臭化ジエイコシルジメチルアンモニウム、ヨウ化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジオクタフルオロデシルジメチルアンモニウムアセテート、ヨウ化ジメチルジオレイルアンモニウムなどおよびこれらの誘導化合物。
本発明に係る自己組織化膜は、自己組織化膜の出発原料である上記有機分子を溶解した有機溶液(以下、コーティング溶液)に予備成形されたガラスを浸漬することにより成膜することができる。前記有機溶液の溶媒は、好ましくは無水有機溶媒である。これは、出発原料の有機分子が水分子と反応することによってその反応性を失うことを避ける目的である。また、極性基をもつ溶媒を用いると、同様に有機分子との結合を形成して、有機分子が反応性を失うことがあるため、溶媒としては非極性のものを選択することが好ましい。即ち、用いる溶媒は、有機分子の官能基の反応性を維持するものとする。
具体的には、例えばヘキサンなどの無水非極性有機溶液、トルエン、クロロホルムなどの無水有機溶液、およびこれらの混合溶液であることが好ましい。
一方、アルコール類など極性を有する有機溶媒で自己組織化膜の出発化合物を希釈した場合には、下記反応式(6)のとおり、官能基とアルコール中の−OH基とが反応して、官能基が失われ、被成膜基材表面の−OH基や−Cl基と反応が起きにくくなることがある。従って、有機溶媒は-OH基などを有さないことが好ましい。
Figure 0003894561
上記コーティング溶液において、出発原料の濃度は、0.01〜10wt%の範囲とすることが好ましく、0.1〜5wt%の範囲とすることがより好ましい。濃度が、小さすぎると被覆率が不充分になるが、大きすぎても被覆率は上がらず、下がる傾向がある。例えば、自己組織化膜の出発原料をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン等の無水有機溶剤で希釈して調整したコーティング溶液にガラスを1分間程度浸漬した後、コーティング溶液から取り出し、洗浄後、室温〜100℃の温度で30分程度、乾燥する。
浸漬法以外にも、自己組織化膜の出発原料を含む蒸気、ミスト、ガスなどに予備成形されたガラスを暴露することにより自己組織化膜を得ることもできる。
自己組織化膜中では、自己的・自発的な官能基(○部)と被成膜基材6の表面との反応の結果、図3の様に、膜中の分子5が被成膜基材6の表面上に整然と配列する。従って、自己組織化膜が形成された場合には、規則性をもった原子の配列に対し、その結合状態のIR活性を反映したピークを呈するIR-RASなどの表面分析により検出することができる。
換言すれば、IR-RAS分析において、自己組織化膜が形成された場合は分子の規則的配列に由来するピークが観察される(例えば図4のように)が、自己組織化膜ではなく規則的な分子の配列がない膜の場合にはピークは観察されない。
自己組織化膜は英語ではself-assembled monolayer(SAM)と呼ばれており、一度の成膜処理で表面に形成される単分子層を指す場合もあるが、成膜を繰り返し処理することで、多分子層の成膜も可能であり、本発明における自己組織化膜は、単分子層のみではなく、図5に示す様な多分子層の9や10を含む。
本発明において、ガラス素材表面に形成される自己組織化膜の膜厚は0.1nm以上30nm以下であることが好ましい。自己組織化膜の膜厚が0.1nm未満および自己組織化膜の膜厚が30nmを超えると、プレスしたレンズ表面のクモリ、白濁および/もしくはワレの防止効果が低減する傾向がある。自己組織化膜の膜厚は0.5nm以上20nm以下であることがさらに好ましい。自己組織化膜の膜厚は、たとえばESCAやエリプソメーターによって測定することができる。
図1、2は本発明に使用される成形用ガラス素材を模式的に示す断面図である。本発明の第1の態様の方法で使用される成形用ガラス素材は、図1 に示すように、予備成形されたガラス素材1の表面2の表面自由エネルギーが60mJ/m2以上であるガラス素材である。また、本発明の第2の態様の方法で使用される成形用ガラス素材は、図2 に示すように、表面自由エネルギーが60mJ/m2以上である予備成形されたガラス素材1の表面に表面層3を形成したガラス素材である。
本発明のガラス製品の製造方法は、上記で説明した予備成形されたガラス素材を加熱軟化し、次いで成形型により加圧成形する。ガラス素材の加圧成形は、公知の手段で行うことができる。例えば、ガラス素材を精密に形状加工した成形型に導入し、その粘度が108〜1012ポイズ相当となる温度に加熱、軟化し、これを、押圧することによって、型の成形面をガラス素材に転写する。もしくは、あらかじめ、その粘度が108〜1012ポイズ相当の温度に昇温したガラス素材を、精密に形状加工した成形型に導入し、これを、押圧することによって、型の成形面をガラス素材に転写する。成形時の雰囲気は、非酸化性とすることが好ましい。この後、型とガラス素材を、冷却し、好ましくはTg以下の温度となったところで、離型し、成形された光学素子を取出す。
成形型の型母材としては、SiCのほか、WC、TiC、TaC、BN、TiN、AlN、Si34、SiO2 、Al23 、ZrO2 、W、Ta、Mo、サーメット、サイアロン、ムライト、カーボン・コンポジット(C/C)、カーボンファイバー(CF)、WC−Co合金等から選ばれる材料等から選ばれることができる。
さらに母材表面に離型膜を有する成形型が使用でき、母材表面に成膜される離型膜としては、ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC)、水素化ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC:H)、テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C)水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C:H)、アモルファス炭素膜(以下、a-C)、水素化アモルファス炭素膜(以下、a-C:H)等から選ばれる炭素系被膜、Si3N4,TiAlN,TiCrN,CrN,CrXNY,AlN,TiN等の窒化物被膜もしくは複合多層膜または積層膜(AlN/CrN,TiN/CrN等)、Pt-Au,Pt-Ir-Au,Pt-Rh-Auなど白金を主成分とする貴金属合金被膜などの膜を用いることもできる。
離型膜の成膜は、DC−プラズマCVD法、RF−プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR−プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のプラズマCVD法、イオンプレーティング法などのイオン化蒸着法、スパッタ法、蒸着法やFCA(Filtered Cathodic Arc)法等の手法によっても良い。
本発明の製造方法で製造されるガラス製品は、例えば、レンズ、ミラー、グレーティング、プリズム、マイクロレンズ、積層型回折光学素子等の光学素子であることができ、光学素子以外のガラス成形品であることもできる。
[実施例]
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
市販の光学用精密洗浄機を用いて、湿式洗浄法にて高精度に洗浄され、かつ、洗浄後も窒素ガス中の清浄度の高い環境に保管した光学素子成形素材について、洗浄・保管ロット毎に抜き取り検査を行い、純水およびCH2I2の濡れ角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いて表面自由エネルギーを評価した。全てのロットについて、表面自由エネルギーの最低値は68mJ/m2以上と、本発明の請求範囲である表面エネルギーが60mJ/m2以上を満足していた。
尚、湿式洗浄法による高精度洗浄は、以下のように行った。
1)市水槽(超音波)1分→2)市水槽(超音波)1分→3)洗浄槽(超音波) 1分→4)純水槽(超音波) 1分→5)純水槽(超音波) 1分→6)イソプロピルアルコール槽(超音波) 1分→7)イソプロピルアルコール槽(超音波) 1分→8)ベーパー乾燥槽1)〜7)は30℃で行う。
窒素ガス中の清浄度の高い環境での保管は、具体的に以下の条件で行った。 真空デシケータ中に光学素子成形素材をセットし、10-2Torr以下まで真空引きした後、窒素を大気圧まで導入する窒素ガス置換を3回繰り返した後、その窒素雰囲気下で2時間保管した。真空デシケータ中の全有機炭素濃度が100μgC/L、清浄度クラスはISOクラス4であった。
純水およびCH2I2の濡れ角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いて行った表面自由エネルギーの評価を行った。
なお、本実施例の光学素子成形素材のガラス材料ホウ酸塩ガラスA は、ガラス転移温度が520℃であり、屈折率が1.69350、線膨張係数が69×10-7/℃である光学ガラスである。
この光学素子成形素材を成形装置内に設置した。設置に際し、搬送中の成形素材の環境は、全有機炭素濃度で1000μgC/L、清浄度クラスはISOクラス6であった。更に、成形装置内は、全有機炭素濃度で500μgC/L以下、清浄度クラスはISOクラス5であった。続いて、窒素ガス雰囲気中で、610℃まで加熱して150kg/cm2 の圧力で1分間加圧する。圧力を解除した後、冷却速度を−50℃/minで480℃になるまで冷却し、その後は−200℃/min以上の速度で冷却を行い、プレス成形物の温度が200℃以下に下がった後、成形物を取り出した。なお、成形型として、CVD法により作製した多結晶SiCの成形面をRmax=18nmに鏡面研磨したものを用いた後、成形面に離型膜として、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、DLC:H膜を成膜したものを用いた。
同一型で径12mmφの凸メニスカスレンズを連続プレスし、プレス回数2000回までの光学素子の外観を観察した結果、良好であった。
比較例1
洗浄後、クリーン化を行わない、空気中の全有機炭素濃度が12,000μgC/L以上の室内中に2日間保管した以外は実施例1と同様に、同一型での連続プレスを行った。実施例1と同様に、洗浄・保管ロット毎に抜き取り検査を行い、純水およびCH2I2の濡れ角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いて表面自由エネルギーを評価した。表面自由エネルギーの最低値は42mJ/m2であり、また、表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2未満であるロットが28%あった。
これらの光学素子成形素材を選別せずに連続プレスを開始した結果、650回で成形型のDLC:H離型膜表面に、サブμmサイズのガラスと思われる融着物が認められた。さらに、この成形型でプレスを続けたところ、成形した光学素子にワレが連続して発生し、もはやプレスを続行することは不可能になった。光学素子のワレは、成形型のDLC:H離型膜表面の融着部を起点に発生しており、成形型表面の離型膜の再生が必要であった。
実施例2
洗浄後、クリーン化を行わない、空気中の全有機炭素濃度が8,000μgC/Lの室内中に2日間保管にしたこと以外、実施例1と同様にして作製した光学素子成形素材について、実施例1と同様に洗浄・保管ロット毎に抜き取り検査を行い、純水およびCH2I2の濡れ角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いて表面自由エネルギーを評価した。表面自由エネルギーの最低値は45mJ/m2であり、また、表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2未満であるロットが19%あった。表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2未満であるロットを除き、表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2以上であるロットのみの光学素子成形素材を、実施例1と同様に、連続プレスした。
同一型で連続プレスし、プレス回数2000回までの光学素子の外観を観察した結果、良好であった。
実施例3
実施例2と同様に、表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2以上であるロットのみの光学素子成形素材について、アセチレンガスの熱分解CVD法にてa-C:Hを膜厚1nm成膜した。
成形素材は、実施例2と同様の室内に2日間保管し、搬送中の成形素材の環境は、全有機炭素濃度が500μgC/L、清浄度クラスはISOクラス6であった。更に、下記のCVD装置内の全有機炭素濃度は2000μgC/L、清浄度クラスはISOクラス5であった。
アセチレンガスの熱分解によるCVD法は、以下のように行った。
石英製のトレーにガラス素材を載せ、ベルジャー(反応容器)内に配置した。ベルジャー内を真空ポンプにより0.5torr以下に排気した後、加熱し480℃に維持した。ベルジャー内に窒素ガスを導入しながら真空ポンプにより排気を行うことにより、160torrに保ち、30分間パージを行った後、窒素カ゛スの導入を止めた。更に、ベルジャー内を真空ポンプで0.5torr以下に排気した後、アセチレンガスを20分間で40torr導入し、導入を止めた。そして冷却した後、窒素ガスで希釈しながら大気圧に戻し、ガラス素材を取り出した。
その後同一型で連続プレスした。プレス回数2000回までの光学素子の外観を観察した結果、表3のとおり、外観品質は良好もしくは極めて良好であった。
比較例2
洗浄後、クリーン化を行わない、空気中の全有機炭素濃度が20,000μgC/Lの室内中に1週間保管した以外、実施例1と同様に作製した光学素子成形素材について、洗浄・保管ロット毎に抜き取り検査を行い、純水およびCH2I2の濡れ角測定よりOwens-Wendt-Kaelble法を用いて表面自由エネルギーを評価した。表面自由エネルギーの最低値は38mJ/m2であり、また、表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2未満であるロットが42%あった。これらの光学素子成形素材を選別せずに、実施例3と同様にCVD法にてa-C:Hを膜厚1nm成膜した後、連続プレスを開始した。1200回で成形型のDLC:H離型膜表面に、サブμmサイズのガラスと思われる融着物が認められた。さらに、この成形型でプレスを続けた結果、成形した光学素子にワレが連続して発生し、もはやプレスを続行することは不可能になった。光学素子のワレは、成形型のDLC:H離型膜表面の融着部を起点に発生しており、成形型表面の離型膜の再生が必要であった。
実施例4〜11
実施例2と同様に、表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m2以上であるロットのみの光学素子成形素材について、表5、6の表面層を成膜したのち、同一型で連続プレスした。プレス回数2000回までの光学素子の外観を観察した結果、表5、6のとおり、外観品質は良好もしくは極めて良好であった。
Figure 0003894561
Figure 0003894561
Figure 0003894561
成形用ガラス素材の説明図。 表面層を有する成形用ガラス素材の説明図。 自己組織化膜の説明図。 自己組織化膜のIR-RASスペクトル 複分子層からなる自己組織化膜の説明図。
符号の説明
1 予備成形されたガラス
2 表面自由エネルギーが60mJ/m2以上である表面
3 表面自由エネルギーが60mJ/m2以上である表面の上に形成された表面層
4 自己組織化膜の出発原料を含む溶液(コーティング溶液)
5 溶液中の分子
6 被成膜基材
7 自己組織化膜
8 自己組織化膜の分子
9 複層化した自己組織化膜
10 複分子層からなる自己組織化膜
11 自己組織化膜の分子A
12 自己組織化膜の分子B
13 自己組織化膜の分子1
14 自己組織化膜の分子2
15 自己組織化膜の分子3
16 自己組織化膜の分子4

Claims (5)

  1. 予備成形されたガラス素材を加熱軟化する工程、および成形型により加圧成形する工程を含む、ガラス製品の製造方法であって、
    前記ガラス素材を、有機系溶剤を用いたまたはUVオゾン処理による精密洗浄に供してガラス素材表面の有機系汚れを除去し、精密洗浄された前記ガラス素材をロット毎に表面自由エネルギーを抜き取り検査し、前記表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m 2 以上のロットの前記ガラス素材のみを前記加熱軟化工程に供し、次いで加圧成形工程に供することを特徴とする製造方法。
  2. 前記精密洗浄されたガラス素材を前記加熱軟化工程に供するまでの間、前記ガラス素材の表面自由エネルギーが60mJ/m 2 以上を維持できる環境で保持する、請求項1に記載の製造方法。
  3. 予備成形されたガラス素材を加熱軟化する工程、および成形型により加圧成形する工程を含む、ガラス製品の製造方法であって、
    前記ガラス素材を、有機系溶剤を用いたまたはUVオゾン処理による精密洗浄に供してガラス素材表面の有機系汚れを除去し、精密洗浄された前記ガラス素材をロット毎に表面自由エネルギーを抜き取り検査し、前記表面自由エネルギーの最低値が60mJ/m 2 以上のロットの前記ガラス素材のみに表面層を形成し、当該ガラス素材を前記加熱軟化工程に供し、次いで加圧成形工程に供することを特徴とする製造方法。
  4. 前記表面層が膜厚0.1nm以上1μm以下である炭素を主成分とする薄膜であることを特徴とする請求項3記載の製造方法。
  5. 前記精密洗浄されたガラス素材に前記表面層を形成するまでの間、前記ガラス素材の表面自由エネルギーが60mJ/m 2 以上を維持できる環境で保持する、請求項3または4に記載の製造方法。
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