JP2004123521A - 成形用型の再生方法及び光学素子の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】コストの増大と大規模な装置を要することなく、母材表面への付着強度が改善され、その結果、プレス成形時に剥離などが発生しにくい炭素系離型膜を母材表面に設けることが可能である、成形用型の再生方法を提供する。さらに、この再生方法により再生された成形用型を用いたガラス光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】成形面に炭素系離型膜を有する成形用型から前記炭素系離型膜を除去し、次いで炭素系離型膜を再成膜することを含む、成形用型の再生方法。前記再成膜の前に成形面に自己組織化膜を成膜する。この再生方法によって再生された成形用型内で加熱軟化したガラス素材をプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法。加熱軟化したガラス素材を成形用型内でプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法において、前記成形用型が、成形用型の表面に自己組織化膜を成膜した後、炭素系離型膜を成膜した成形用型であること。
【選択図】

Description

 本発明は、ガラス素材をプレス成形してレンズ、プリズム等のガラス光学素子を製造する際に使用される成形型について、その成形面にある被覆層が劣化した場合、それを除去し、再生するのに適した成形用型の再生方法及びこの方法で再生された成形用型を用いるガラス光学素子の製造方法に関するものである。
 ガラス光学素子のプレス成形用成形型には、その成形面に離型膜として炭素系の膜を設けることが知られている。この炭素系離型膜は、多数回のプレス成形を行なうと、消耗し、充分機能しなくなる。それでもプレスを続けると、ガラスが成形面に融着したり、型母材とガラスが反応して、型を損傷する。したがって、離型膜は所定回のプレス毎に除去し、改めて成膜するという再生作業を行なうことが必要になる。
 従来、光学素子成形用型の再生方法として、特許文献1には、ガラス成形用型の成形面に設けられた硬質炭素膜を酸素プラズマアッシングにより除去し、次いで、フッ化水素またはその塩の水溶液により成形型の成形面を洗浄処理する、成形型の再生法が記載されている。
 特許文献2には、ガラス成形用型の成形面に設けられた炭素系被膜を、フッ素系ガスもしくはフッ素系ガスと酸素との混合ガスの減圧プラズマエッチングにより除去し、次いで、微小粒径の砥粒を用いた擦りを行ってエッチング後の残留物を除去することで成形型を再生する方法が記載されている。
 また、特許文献3には、膜の一部分を酸素含有ガスのプラズマによりエッチング又はアッシングし、型母材がエッチングされる前に、アルゴンガスのプラズマによるエッチング又はアッシングに切り替えて膜を除去する成形型の再生法が記載されている。
特開平2−38330号公報 特開平6-345447号公報 特許2505893号公報
 特許文献1に記載されているとおり、酸素プラズマアッシングによって硬質炭素膜を除去しただけでは、母材表面が酸素のプラズマにより浸食され、母材表面に酸化層の変質層が生成する。そして、この母材表面に炭素系被膜をした場合、炭素系被膜の母材表面への付着強度が弱くなり、プレス成形において、炭素系被膜のはく離など問題が発生する。
 そこで、特許文献1に記載の方法では、フッ化水素またはその塩の水溶液により、成形型の成形面を洗浄処理している。この洗浄処理によれば、母材表面に形成された酸化層の変質層は除去できる。しかし、この除去により母材表面がわずかに粗れ、成形型の再生を数100回以上繰り返すと、プレス成型品の表面にクモリや白濁が発生するという問題が新たに発生した。
 特許文献2には、プラズマエッチング処理後に、平均粒径0.5μmのダイヤモンド・ペーストを用いた擦り方法が記載されている。しかしこの方法では、成形面に残留するガラスの揮発成分などは除去できても、母材は硬質であるので、母材表面の酸化層やフッ化層などの変質層や粗れを除去することはできなかった。
 また、特許文献3に記載されている方法では、母材表面のプラズマによる浸食を防止するために、型母材がエッチングする前に酸素ガスのプラズマによるエッチング又はアッシングからアルゴンガスのプラズマによるエッチング又はアッシングに切り替えて膜を除去する。しかし、この方法では、切り替えのタイミングを判断することが必要である。切り替えタイミングの判断のためには、例えば、プラズマの発光分析により、エッチング物質の発光強度をモニターしながらエッチングする必要があるが、そのために付加的な装置と工程を要することから、コスト高となる。また、酸素ガスとアルゴンガスの2つのプラズマの使用もエッチングコストを倍加する。
 以上のように、従来の方法では、確実に、かつ経済性に優れた成形用型の再生方法は実現されていなかった。
 そこで本発明の目的は、酸素またはフッ素系ガスのプラズマなどにより成形用型母材成形面の炭素系離型膜を除去して成形用型を再生する方法において、母材表面がプラズマなどにより浸食され、母材表面に酸化層やフッ化層などの変質層が生成している場合であっても、コストの増大と大規模な装置を要することなく、母材表面への付着強度が改善され、その結果、プレス成形時に剥離などが発生しにくい炭素系離型膜を母材表面に設けることが可能である、成形用型の再生方法を提供することである。
 さらに本発明の目的は、この再生方法により再生された成形用型を用いたガラス光学素子の製造方法を提供することにある。
上記課題を解決する本発明は以下の通りである。
[請求項1]成形面に炭素系離型膜を有する成形用型から前記炭素系離型膜を除去し、次いで炭素系離型膜の再成膜することを含む成形用型の再生方法であって、前記再成膜の前に成形面に自己組織化膜を成膜することを特徴とする成形用型の再生方法。
[請求項2]自己組織化膜の膜厚は0.1nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項1記載の再生方法。
[請求項3]自己組織化膜が、有機珪素含有化合物、有機硫黄含有化合物、有機窒素含有化合物及び有機フッ素含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する請求項1または2に記載の再生方法。
[請求項4]自己組織化膜が、トリアルキルシラン化合物、ジアルキルシラン化合物、アルキルシラン化合物、アルキルジメチルシラン化合物、アリカンチオール化合物、ジアルキルスルフィド化合物およびジメチルアンモニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の再生方法。
[請求項5]成形面への自己組織化膜の成膜を、成形面と反応性を有する有機珪素含有化合物、有機硫黄含有化合物、有機窒素含有化合物及び有機フッ素含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する有機溶媒に成形用型を浸漬することで行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の再生方法。
[請求項6]前記成形面と反応性を有する有機珪素含有化合物、有機硫黄含有化合物、有機窒素含有化合物及び有機フッ素含有化合物が、クロロトリアルキルシラン化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物、トリクロロアルキルシラン化合物、アルキルジメチル(ジメチルアミノ)シラン化合物、アルカンチオール化合物、ジアルキルスルフィド化合物、ジアルキルジスルフィド化合物およびジメチルアンモニウム化合物から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする請求項5に記載の再生方法。
[請求項7]自己組織化膜を成膜後、炭素系離型膜の再成膜前に、成形用型を加熱処理して、前記成形面に形成した自己組織化膜を熱分解することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学素子成形用型の再生方法。
[請求項8]炭素系離型膜の除去を酸素プラズマアッシングにより行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の再生方法。
[請求項9]炭素系離型膜の除去をピラニア溶液処理により行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の再生方法。
[請求項10]加熱軟化したガラス素材を成形用型内でプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法において、前記成形用型が請求項1〜9のいずれか1項に記載の再生方法によって再生された成形用型であることを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
[請求項11]加熱軟化したガラス素材を成形用型内でプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法において、前記成形用型が、成形用型の表面に自己組織化膜を成膜した後、炭素系離型膜を成膜した成形用型であることを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
 本発明によれば、成形面に炭素系離型膜を施した成形用型を用いて光学素子の成形を行うことで、その成形用型の炭素系離型膜が劣化した場合、該炭素系離型膜を除去し、再生する方法において、炭素系離型膜の再成膜の前に、成形用型表面に自己組織化膜を成膜することにより、強固な炭素系離型膜を有する成形用型が再生でき、この再生成形用型を用いて、良好な精度の成型品を製造できる。さらに、本発明によれば、コストと時間がかからない光学素子成形用型の再生方法を提供することができる。
 本発明によれば、母材表面が酸素もしくはフッ素系ガスのプラズマにより浸食され、母材表面に酸化層やフッ化層などの変質層が生成しても、炭素系離型膜の再成膜の前に、成形用型表面に自己組織化膜を成膜することにより、母材表面への付着強度を増大した炭素系離型膜を母材表面に形成することができ、その結果、プレス成形時に炭素系離型膜の剥離など問題を防止できる。
 すなわち、母材表面に生成した酸化層やフッ化層は親水性であり、炭素系離型膜との間で強い結合を形成しにくい。しかしながら、本発明のように自己組織化膜を設けることにより、自己組織化膜の一端にある親水性基が母材表面と強い結合を形成し、かつ自己組織化膜の他端の親油性基が炭素系離型膜と強く結合することができる。このように、自己組織化膜は、型母材の表面を親油性基(-CH基など)に改質することができ、その結果、炭素系離型膜との間に、共有結合並みの強固な結合を生じさせることができる。このように自己組織化膜は、型母材と炭素系離型膜の間での接着機能をもつ。
 さらに、本発明によれば、フッ化水素またはその塩の水溶液により、成形型の成形面を洗浄処理する必要もないので、母材表面が粗れ、プレス成型品の表面にクモリや白濁が発生する問題も防止できる。
 以下、本発明に関して詳細に説明する。
 本発明の方法によって再生される成形用型は、成形面に炭素系被覆層を有するものであり、型母材として用いられる材料は、例えば、SiC、WC、TiC、TaC、BN、TiN、AlN、Si34、W、Ta、Mo、サーメット、サイアロン、ムライト、カーボン・コンポジット(C/C)、カーボンファイバー(CF)、WC−Co合金、ステンレス、結晶化ガラスを含むガラス材料、SiO2 、Al23 、ZrO2 等から選ばれる。また、型母材は、型母材の表面に貴金属やNi-Pなどの下地層を成膜したものでも良い。
 特にSiC、WC、TiC、TaC、WC−Co合金、ステンレスを型母材とする場合、炭素系離型膜を除去した後の成形用型の成形面への自己組織化膜の成膜および自己組織化膜面への炭素系離型膜の成膜の効率が優れており、これらの材料を型母材とする場合、特に、本発明の効果が顕著に得られる。これは、これらの母材においては酸素やフッ素のプラズマによるアッシング(エッチング)効果が高いことに起因する。すなわち、アッシング(エッチング)効果が高いために、型母材の表面に残存していた炭素がほぼ完全に無くなる。そのため、表面は、形成される-OH基(後述)によってほぼ100%覆われ、自己組織化膜の形成効率が高くなる。この点で、窒素を含有する型母材(BNなど)では、アッシング時に表面に窒素が残存するため、自己組織化膜の形成効率が上記より若干低くなる。但し、本発明の効果の発現が阻害される訳ではなく、本発明の効果は得られる。
 再生前の成形用型及び再生の際に成形用型に成膜される炭素系離型膜は、炭素を含有する離型膜であり、他に水素、窒素などを含有してもよい。具体的には、ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC)、水素化ダイヤモンド状炭素膜(以下、DLC:H)、テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C)、水素化テトラヘドラルアモルファス炭素膜(以下、ta-C:H)、アモルファス炭素膜(以下、a-C)、水素化アモルファス炭素膜(以下、a-C:H)、窒素含有カーボン膜等から選ばれる。
 本発明の再生方法では、まず、成形面に、例えば、多数回のプレス成形により消耗し、劣化した炭素系離型膜を有する成形用型から炭素系離型膜を除去する。炭素系離型膜の除去方法には特に制限はないが、例えば、酸素プラズマアッシングやピラニア(piranha)溶液を用いる方法を挙げることができる。
 酸素プラズマアッシングは、例えば、特開平2−38330号公報に記載されている処理法であり、本発明では公知の装置での処理が可能である。例えば、劣化した炭素系離型膜を成形面に有する成形型を、公知のプラズマエッチング装置に配置し、次いで、装置内を10-2Torr以下に真空排気し、酸素ガスを導入して1Torr〜10Torr程度にしたのち、高周波電力により酸素プラズマアッシングを行うことができる。高周波電力は、例えば、0.1〜5KWが適用でき、温度は100〜200℃、処理時間は1〜100分とすることができる。
 ピラニア(piranha)溶液とは、一般的には、体積比で過酸化水素水(H2O2:31%):濃硫酸=3:7の混合溶液を熱した基板洗浄用の溶液である。文献(Hyun I. Kim, Thomas Koini, Randall Lee and Scott S. Perry:Tribology Letters., 4. (1998) 137-140など)に述べられているように、例えば、DLCなどの炭素系被膜の除去が可能である。本発明において使用するピラニア(piranha)溶液は、例えば、過酸化水素水:濃硫酸:濃硝酸=20〜40vol%:70〜40vol%: 0〜20vol%の混合比率であることが適当であり、処理温度は室温〜80℃の範囲であること適当である。
 尚、連続プレス後の成形用型成形面の炭素系離型膜上には、微小ながら若干のガラスもしくはガラスからの揮発成分などが付着・残留する場合がある。これらの中には、炭素系離型膜除去の際に除去しにくいものもある。従って、炭素系離型膜の除去の前に、成形型を酸溶液またはアルカリ溶液にて洗浄して、付着物を除去することが好ましい。
 酸溶液としては、濃度1wt%〜50 wt %のフッ酸、酸性フッ化アンモニウム水溶液、硝酸、硫酸、塩酸、硝酸と硫酸との混酸などを挙げることができる。アルカリ溶液としては、濃度5 wt %〜70 wt %の水酸化ナトリウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液などが、成形面への付着物の洗浄・除去に有効である。浸漬時間は数分〜数時間、浸漬液温は室温〜50℃程度が好ましい。
 本発明の再生方法では、炭素系離型膜を除去した後に、炭素系離型膜を再成膜する前に、炭素系離型膜を除去した成形面に自己組織化膜を成膜する。
 酸素プラズマアッシング又はピラニア溶液処理等によれば、母材表面の炭素系離型膜を有効に除去することは可能である。しかし、これらの方法で炭素系離型膜を除去すると、通常、母材表面が酸化され、酸化層が形成される。一般に、炭素系離型膜は酸化層に対しては付着強度が弱い。そこで本発明では、炭素系離型膜を再成膜する前に、炭素系離型膜を除去した成形面に自己組織化膜を成膜する。自己組織化膜は、炭素系離型膜及び酸化層のいずれに対しても付着強度が強く、かつ自己組織化膜自身の膜強度も強い。したがって、自己組織化膜は母材表面と炭素系離型膜と強固に結びつける接着剤の働きを有する。
 本発明において自己組織化膜とは、杉村博之、高井治;日本学術振興会薄膜第131委員会第199回研究資料 平成12.2.1 p.34-39、Seunghwan Lee, Young-Seok Shon, Ramon Colorado, Jr.,Rebecca L. Guenard, T. Randall Lee and Scott S. Perry;Langmuir 16巻(2000), p.2220-2224等の文献により知られており、図1に示す様に、溶液1中の分子2の官能基(○部)が自己的に被成膜基材3の表面と反応して、被成膜基材3の表面上に自己的に配列・組織化して形成された膜4である。自己組織化膜4が設けられた成形面の最表面において、分子配列がそろった有機分子会合対5を形成している。
 本発明に係る自己組織化膜は、例えば、特定の有機分子を選択し、この有機分子を含有する溶液、例えば、有機分子を有機溶媒に所定濃度で含有させたものに被成形基材(炭素系離型膜を除去した成形型の成形面)を曝し、反応条件を整えることにより、有機分子の配向性がそろった有機単分子膜が形成される。有機分子が、被成膜基材の表面の基と反応して配列することで膜が形成されるため、極めて被覆率が高い成膜が可能である。膜形成を効率的に行なうため、表面の前処理を行なってもよい。有機分子としては、例えば、成形面と反応性を有する有機ケイ素含有化合物、有機硫黄含有化合物、有機フッ素含有化合物及び有機窒素含有化合物を挙げることができる。これら成形面と反応性を有する有機化合物は、成形面と反応し得るいずれかの官能基を有するものである。
 これら有機化合物が、自己的・自発的に被成膜基材(成形面)の表面と反応する官能基は、例えば、有機ケイ素含有化合物では主に−Cl基(後述する反応式(1))、有機硫黄含有化合物では主に−H基、又は(S−S)基、(後述する反応式(2)及び(3))、有機窒素含有化合物では主に−H基(後述する反応式(4))、であることができる。例えば、溶液1中の分子2の官能基(○部)と被成膜基材3の表面との反応は以下のものであることができる。
 クロロトリアルキルシラン化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物、トリクロロアルキルシラン化合物、など、有機化合物中にCl元素をもつ基があると、これが官能基となり、反応式(1)のとおり、被成膜基材(成形型の成形面)3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
Figure 2004123521
 尚、炭素系離型膜を除去した成形面は、空気中の水分子と反応し、表面は全面的に-OH基に覆われているため、上記の反応が進む。
 また、例えばアルカンチオール化合物の場合には、化合物中のS原子と結合しているH原子が官能基となり、反応式(2)のとおり、被成膜基材3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
Figure 2004123521
 更に、例えばジアルキルジスルフィド化合物の場合には、化合物中のS−S結合が官能基となり、反応式(3)のとおり、被成膜基材3の表面の−OH基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
Figure 2004123521
 ジメチルアンモニウム化合物、アルキルジメチル(ジメチルアミノ)シラン化合物の場合には、化合物中のN元素に結合するH元素が官能基となり、反応式(4)のとおり、被成膜基材3の表面の−Cl基と自己的・自発的に反応し、被成膜基材3の表面に前記化合物を出発原料とする自己組織化膜が形成される。
Figure 2004123521
 尚、この反応は成形面を、塩素を含む乾燥雰囲気に曝し、その表面が−Cl基で覆われた状態で行う。
 上述のとおり、自己組織化膜の形成するためには、自己的・自発的に被成膜基材表面の−OH基や−Cl基と反応する官能基を有する化合物を、その官能基の反応性を保全した状態で、被成膜基材表面と接触させる。例えば、自己組織化膜の原料となる有機化合物を、水分や塩素を相当量含んだ雰囲気中に放置すると、官能基の反応性が失われやすい。従って、有機化合物は、官能基の反応性を維持し得る状態で保管することが適当である。
 自己組織化膜を形成するための反応は、反応速度が大きいことが好適である。反応式(1)〜(4)で述べた、−Cl基、−H基、(S―S)基は、反応速度が優れて大きいため好適である。他方、官能基がOR基(アルコキシ基)など、反応速度が小さい基をもつ出発原料を用いると、例えば、下記反応式(5)で示される反応が生じるが、その進行は遅く、成膜速度が相対的に小さい。
Figure 2004123521
 また、本発明に用いる自己組織化膜の出発原料としての有機分子は、末端に成形面表面の官能基と反応する上記官能基を有するが、他の末端(上記官能基を結合末端とすると、表面末端側)に、アルキル基、アリール基、ビニル基、エポキシ基、またはフッ素を有することができる。好ましくは、表面末端側にC-H(炭化水素)基が存在すると、炭素系離型膜との結合性が高く、有用である。表面末端側にアルキル基またはアリール基が存在することがより好ましい。
 自己組織化膜の出発原料として用いる、成形面表面と反応性を有する有機ケイ素含有化合物、有機硫黄含有化合物、有機フッ素含有化合物及び有機窒素含有化合物としては、例えば、以下の化合物を挙げることができる。但し、これらの化合物に限定されるものではなく、成形面において自己組織化膜を形成できる物質であれば良い。
 クロロトリアルキルシラン化合物として、クロロトリメチルシラン、クロロトリエチルシラン、ペンタフルオロフェニルジメチルクロロシラン、tert-ブチルジメチルクロロシラン、(3-シアノプロピル)ジメチルクロロシラン、クロロトリフルオロメチルシランなどおよびこれらの誘導化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物として、ジクロロジメチルシラン、ジクロロメチルビニルシラン、ジクロロジフルオロメチルシラン、ジクロロ-n-オクタデシルメチルシラン、n-オクチルメチルジクロロシラン、ジクロロシクロヘキシルメチルシランなどおよびこれらの誘導化合物、トリクロロアルキルシラン化合物として、トリクロロビニルシラン、n-オクタデシルトリクロロシラン、イソブチルトリクロロシラン、n-オクタフルオロデシルトリクロロシラン、シアノヘキシルトリクロロシランなどおよびこれらの誘導化合物、トリクロロアリールシラン化合物としてフェニルトリクロロシラン、アルキルジメチル(ジメチルアミド)シラン化合物として、トリメチル(ジメチルアミド)シラン、トリエチル(ジメチルアミド)シラン、ペンタフルオロフェニルジメチル(ジメチルアミド)シラン、トリフルオロメチル(ジメチルアミド)シラン、tert-ブチルジメチル(ジメチルアミド)シラン、(3-シアノプロピル)ジメチル(ジメチルアミド)シランなどおよびこれらの誘導化合物、アルカンチオール化合物として、1‐ブタンチオール、1‐デカンチオール、1‐フルオロデカンチオール、o‐アミノチオフェノール、2‐メチル‐2‐プロパンチオール、n‐オクタデカンチオールなどおよびこれらの誘導化合物、ジアルキルスルフィド化合物として、エチルメチルスルフィド、ジプロピルスルフィド、n‐ヘキシルスルフィド、フルオロエチルメチルスルフィド、フェニルビニルスルフィドなどおよびこれらの誘導化合物、エチルフェニルスルフィド及びその誘導化合物、ジアルキルジスルフィド化合物として、p‐トリルジスルフィド、ジアリルジスルフィド、メチルプロピルジスルフィド、フルオロメチルプロピルジスルフィド、ジフルフリルジスルフィドなどおよびこれらの誘導化合物、メチルフェニルジスルフィドおよびその誘導化合物、ジメチルアンモニウム化合物として、ジヘキサデシルジメチルアンモニウムアセテート、ジオクタデシルジメチルアンモニウムアセテート、臭化ジエイコシルジメチルアンモニウム、ヨウ化ジメチルジオクタデシルアンモニウム、ジオクタフルオロデシルジメチルアンモニウムアセテート、ヨウ化ジメチルジオレイルアンモニウムなどおよびこれらの誘導化合物。
 本発明に係る自己組織化膜は、自己組織化膜の出発原料である上記有機分子を溶解した有機溶液(以下、コーティング溶液)に、炭素系離型膜を除去した成形面を浸漬することにより成膜することができる。前記有機溶液の溶媒は、好ましくは無水有機溶媒である。無水有機溶媒を用いるのは、出発原料の有機分子が水分子と反応することによってその反応性を失うことを避けるためである。また、極性基をもつ溶媒を用いると、同様に有機分子との結合を形成して、有機分子が反応性を失うことがあるため、溶媒としては非極性のものを選択することが好ましい。即ち、用いる溶媒は、有機分子の官能基の反応性を維持し得るものとすることが適当である。
 具体的には、例えばヘキサンなどの非極性有機溶液、トルエン、クロロホルムなどの有機溶液、およびこれらの混合溶液であって、いずれも無水状態のものであることが好ましい。
 一方、アルコール類など極性を有する有機溶媒で自己組織化膜の出発化合物を希釈した場合には、下記反応式(6)のとおり、官能基とアルコール中の−OH基とが反応して、官能基が失われ、被成膜基材表面の−OH基や−Cl基と反応が起きにくくなることがある。従って、有機溶媒は-OH基などを有さないことが好ましい。
Figure 2004123521
 自己組織化膜の形成用の上記コーティング溶液において、出発原料の濃度は、0.01〜10wt%の範囲とすることが好ましく、0.1〜5wt%の範囲とすることがより好ましい。濃度が、小さすぎると被覆率が不充分になる場合があり、大きすぎても被覆率は上がらず、下がる傾向がある。
 自己組織化膜を形成するために用いる上記のような浸漬法は、大がかりな設備を必要としない簡便な処理方法である。但し、浸漬法以外にも、自己組織化膜の出発原料を含む蒸気、ミスト、ガスなどに予備成形された成形型を暴露することにより自己組織化膜を得ることもできる。
 自己組織化膜中では、自己的・自発的な官能基(○部)と被成膜基材3の表面との反応の結果、図1の様に、膜中の分子2が被成膜基材3の表面上に5として示すように整然と配列する。従って、自己組織化膜が形成された場合には、規則性をもった原子の配列に対し、その結合状態のIR活性を反映したピークを呈するIR-RASなどの表面分析により検出することができる。
 換言すれば、IR-RAS分析において、自己組織化膜が形成された場合は分子の規則的配列に由来するピークが観察される(例えば図4のように)が、自己組織化膜ではなく規則的な分子の配列がない膜の場合にはピークは観察されない。更に、ESCA(X線光電子分析)又は、TOF-SIMS(飛行時間型二次イオン質量分析)によれば、被成膜基材と膜との界面にある原子の特定が可能であり、上記規則的配列が自己組織化膜に由来するものであることが判る。
 自己組織化膜は英語ではself-assembled monolayer(SAM)と呼ばれており、一度の成膜処理で表面に形成される単分子層を指す場合もあるが、成膜を繰り返し処理することで、多分子層の成膜も可能であり、本発明において自己組織化膜は、単分子層のみではなく、図2に示す様な多分子層の6や7を含む。
 本発明において、成形面に形成される自己組織化膜の膜厚は0.1nm以上30nm以下であることが好ましい。自己組織化膜の膜厚が0.1nm未満および自己組織化膜の膜厚が30nmを超えると、型表面と炭素系離型膜との接合強度が不十分となり、炭素系離型膜が剥離し易くなり、プレスしたレンズ表面のクモリ、白濁および/もしくはワレの防止効果が低減する傾向がある。自己組織化膜の膜厚は0.5nm以上20nm以下であることがさらに好ましい。
 表面層の膜厚は、たとえばESCA又はエリプソメーターによって測定することができる。
 本発明においては、成形面に自己組織化膜を形成した後に成形用型を加熱処理して、自己組織化膜を熱分解し、その後に、炭素系離型膜を再成膜することもできる。この熱分解工程は、成形用型を炭素系離型膜を成膜するための成膜機に導入した後に行っても、導入する前に行ってもよい。
 自己組織化膜は、有機化合物によって形成され、C、H、F、S、Siなどの元素を含有する。そして、上記熱分解により、Hなどの易分解成分は揮発し、Cを含有する炭素系薄膜になる。この様に型表面に炭素系薄膜を形成することにより、炭素系離型膜との結合強度をより高くすることができる。
 自己組織化膜を熱分解するための加熱処理温度は、200℃以上800℃以下であることが好ましい。温度が低すぎると、自己組織化膜中のHなどの分解が不十分になりやすく、加熱処理温度は200℃以上が好ましい。一方、温度が高すぎると、自己組織化膜中のC、H、F、Sなどの元素成分と型表面とが反応し、型表面が変質して、炭素系離型膜の付着強度が低下する場合がある。したがって、加熱処理温度は800℃以下であることが好ましい。自己組織化膜を熱分解する加熱処理温度は、さらに好ましくは、300℃以上700℃以下である。
 本発明の再生方法では、成形面に自己組織化膜を成膜し、必要により、熱分解した後に、炭素系離型膜を再成膜する。炭素系離型膜としては、既述のものを成膜する。
 炭素系離型膜の再成膜は、DC−プラズマCVD法、RF−プラズマCVD法、マイクロ波プラズマCVD法、ECR−プラズマCVD法、光CVD法、レーザーCVD法等のプラズマCVD法、イオンプレーティング法などのイオン化蒸着法、スパッタ法、蒸着法やFCA(Filtered Cathodic Arc)法等の手法によって行うことができる。
 例えば、DC−プラズマCVD法の場合の成膜条件は、公知のDC−プラズマCVD法成膜装置を用い、炭素原料としては炭化水素を用いることができる。例えば、基板加熱を室温〜300℃とし、真空度を0.1〜500Pa、ガス原料を含有するアルゴンガス流量は、0.1〜10ml/min、DCパワーは1W〜300Wとすることができる。RF−プラズマCVD法の場合は、公知のRF−プラズマCVD法成膜装置を用い、上記DC−プラズマCVD法の場合と同様な炭素源を用いることができる。基板温度、真空度、アルゴン流量なども同様の条件が適用でき、RFパワーは1W〜300Wとすることができる。
 マイクロ波プラズマCVD法の場合は、公知のマイクロ波プラズマCVD法成膜装置を用い、上記同様の炭素源を使用できる。基板加熱を室温〜300℃とし、真空度を0.1〜500Pa、ガス原料を含有するアルゴンガス流量は、0.1〜10ml/min、プラズマ制御パワーは1W〜300W、マイクロ波の周波数は例えば2450MHz、マイクロ波の出力は例えば0.02〜1.5kMとすることができる。
 ECR−プラズマCVD法の場合は、公知のECR−プラズマCVD法成膜装置を用いる。上記同様の原料を用い、基板加熱を室温〜300℃とし、真空度を0.1〜500Pa、ガス原料を含有するアルゴンガス流量は0.1〜10ml/min、プラズマ制御パワーは1W〜300Wを用いることができる。例えば、ECRプラズマはマイクロ波(周波数2.45GHz)と電磁石(磁束密度875G)による磁場とによる電子サイクロトロン共鳴により発生させることができる。
 光CVD法の場合は、公知の光CVD法成膜装置を用い、上記同様の原料を用いることができ、光源として低圧水銀ランプ、重水素ランプなどの紫外線光源を用い、基板加熱を室温〜300℃とし、真空度を10〜1000Pa、ガス原料を含有するアルゴンガス流量は、0.1〜10ml/min、光源出力は5mW/cm2〜150 mW/cm2とすることができる。
 レーザーCVD法の場合は、公知のレーザーCVD法成膜装置を用い、同様の原料を使用できる。例えば、光源としてはエキシマレーザーなどの紫外線レーザーを用い、基板加熱を室温〜300℃とし、真空度を10〜1000Pa、ガス原料を含有するアルゴンガス流量は、0.1〜10ml/min、レーザー出力は100mW/cm2〜2kW/cm2とすることができる。
 イオンプレーティング法の場合は、公知のイオンプレーティング法成膜装置を用い、炭素源として炭化水素を用いることができる。基板加熱を室温〜400℃とし、真空度を0.1〜1Pa、炭化水素を含有するアルゴンガス流量を、例えば、1〜500ml/minとすることができる。
 スパッタ法では、公知のスパッタ装置により、炭素源としてカーボンターゲットを用いることができる。真空度は例えば、0.1〜10Pa、アルゴンガス流量は1〜50ml/min、RF(またはDC)パワーは100〜500W、基板は室温〜500℃とすることができる。
 FCA(Filtered Cathodic Arc)法では、公知のFCA(Filtered Cathodic Arc)法成膜装置を用い、炭素源は例えばカーボンを用いることができる。真空度は、例えば、0.1〜10Pa 、アルゴンガス流量は、例えば、0.1〜50ml/min、基板加熱は、例えば、室温〜500℃とすることができる。
 炭素系離型膜の膜厚は、例えば、1nm〜1μm程度であれば良く、特に2nm〜100nmが好適である。膜厚が薄すぎると十分な離型性や耐久性が得られず、膜厚が厚過ぎると型母材との密着性が低下するという問題が生じる。
 本発明の方法により再生された成形用型の断面を図3に模式的に示す。この成形用型は、精密加工された型母材14の表面に、自己組織化膜もしくは加熱処理された自己組織化膜15、炭素系離型膜16を、直接、形成した成形用型である。自己組織化膜15は、たとえば、自己組織化膜の出発原料をベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサンなどの有機溶剤で希釈して調製したコーティング溶液に型母材14を1分間程度浸漬した後、コーティング溶液から取り出し、洗浄後、室温〜100℃の温度で30分程度、乾燥することにより得られる。次いで、その上に炭素系離型膜16が形成される。
 本発明の再生方法は、炭素系離型膜が劣化した成形用型に適用されるが、それ以外の炭素系離型膜を有する成形用型にも適用できる。
 また、本発明の再生方法は、レンズ、ミラー、グレーティング、プリズム等の光学素子用成形型に限定されるものではなく、光学素子以外のガラス、プラスチック等の成形品用の成形型に対しても適用できることは言うまでもない。
 [ガラス光学素子の製造方法]
 本発明は、加熱軟化したガラス素材を成形用型に供給し、プレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法を包含し、このガラス光学素子の製造方法は、成形用型が前記本発明の再生方法によって再生された成形用型であることを特徴とする。尚、加熱軟化したガラス素材のプレス成形等は、公知の方法で実施できる。
さらに本発明は、加熱軟化したガラス素材を成形用型に供給し、プレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法を包含し、このガラス光学素子の製造方法は、成形用型が、成形用型の表面に自己組織化膜を成膜した後、炭素系離型膜を成膜した成形用型であることを特徴とする。
 上述のように、炭素系離型膜を除去した成形面に自己組織化膜を形成し、その上に再度、炭素系離型膜を設けることは、成形用型の多数回使用により劣化した炭素系離型膜を除去、再生する場合に有効である。しかし、この手法は、成形用型に新たに炭素系離型膜を成膜する際にも、成形用型の洗浄による酸化層などが成形用型の表面に存在していても、炭素系離型膜が強固に付着でき、同じく有効である。そこで本発明では、新たに作成した成形用型の成形面に、前述と同様にして自己組織化膜を形成し、必要により、自己組織化膜を熱分解した後に、その上に、炭素系離型膜を形成することで得られた成形用型を用いるガラス光学素子の製造方法を包含する。このガラス光学素子の製造方法において、加熱軟化したガラス素材のプレス成形等は、公知の方法で実施できる。
 本発明のガラス光学素子の製造方法は、ガラス素材を加熱軟化し、次いで成形型により加圧成形する。ガラス素材の加圧成形は、公知の手段で行うことができる。例えば、ガラス素材を成形型に導入し、その粘度が108〜1012ポイズ相当の温度に昇温となる温度に加熱、軟化し、これを、押圧することによって、型の成形面をガラス素材に転写する。もしくは、あらかじめ、その粘度が108〜1012ポイズ相当の温度に昇温したガラス素材を、それより低温の成形型に導入し、これを、押圧することによって、型の成形面をガラス素材に転写する。成形時の雰囲気は、非酸化性とすることが好ましい。この後、型とガラス素材を、冷却し、好ましくはTg以下の温度となったところで、離型し、成形された光学素子を取出す。
 以下、本発明について実施例によりさらに詳細に説明する。
 実施例1
 型母材として、CVD法により作製した多結晶のSiCの成形面をRmax=14nmに鏡面研磨したものを用いた(粗さ測定はAFMにより行った。)。この型を良く洗浄した後、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、成形面にDLC:H膜を成膜した。ESCAによる深さ方向分析の結果、DLC:H膜の厚さは50nm であり、顕微ラマン分析の結果、ディスオーダード(Disordered)クラスターとグラファイト(Graphite)クラスターの中距離秩序による1380cm-1付近(D-band)と1580cm-1付近(G-band)との2つのピークを確認し、膜構造がDLC:Hであることを確認した。
 所定の量に調整した光学ガラスA(バリウムホウケイ酸塩ガラス、転移点Tg=500℃、軟化点Ts=540℃)の球状ガラス素材(プリフォーム)を型のキャビティー内に置き、これを成形装置内に設置する。窒素ガス雰囲気中で、620℃まで加熱して150kg/cm2 の圧力で1分間加圧する。圧力を解除した後、冷却速度を−50℃/minで480℃になるまで冷却し、その後は−100℃/min以上の速度で冷却を行い、プレス成形物の温度が200℃以下に下がったら、成形物を取り出す。上記のようにして、光学ガラスAを使用してレンズを成形した。連続成形においても、光学素子として、良好な成形品をえることができる。
 この様にして1000回成形を行った後の光学素子成形用型を、酸素プラズマアッシング処理装置内の基板上にセットして、チャンバー内が1x10-3Torrになるまで、真空排気した後、酸素ガスをチャンバー内が大気圧になるまで導入し、放電を行いプラズマを発生させ、酸素ガスのプラズマによるエッチング処理を20分間行った。成形面を光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、原子間力顕微鏡(AFM)によって観察した結果、残留物は認められず、DLC:H膜が完全に除去された。また、AFMにより粗さを測定した結果、Rmax=18nmであり、光学素子成形用型の表面形状は保全されていた。
 この処理後の光学素子成形用型を良く洗浄した後、自己組織化膜の出発原料である、n-オクタデシルトリクロロシランを、ヘキサンで1wt%まで希釈して調製したコーティング溶液に光学素子成形用型を20℃で60秒浸漬した後、コーティング溶液から取り出し、洗浄後、室温で30分程度、乾燥した。光学素子成形用型の表面をESCAで分析した結果、表面層である自己組織化膜の膜厚は4nmであった。
 光学素子成形素材の表面をIR-RASで分析した結果、図4に示すとおり、n-オクタデシルシラン自己組織化膜に由来するピークが観察され、表面層は自己組織化されていることが確認された。
 再び、自己組織化膜を形成した成形面に、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、基板温度300℃にて、厚さ50nmのDLC:H膜を成膜した。DLC:H膜には、粗さや膜抜けなどの異常もなく、光学ガラスAの連続成形においても、再度、光学素子として、良好な成形品を得ることができる。
 この様な、1000回成形、酸素プラズマエッチング処理、自己組織化膜成膜、DLC:H膜成膜、の再生処理を100回繰り返したが、成形用型の成形面における実質的な表面劣化やDLC:H膜の成膜力低下は微小であり、成形品の外観品質において問題となる点は認められなかった。
 比較例1
 実施例1と同様に、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、成形面にDLC:H膜を成膜した光学素子成形用型により、1000回成形を行った後の光学素子成形用型について、酸素プラズマアッシングの処理後、自己組織化膜の成膜を行わないで、再び、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、成形面に厚さ50nmのDLC:H膜を成膜して光学ガラスAの連続成形を開始した。その結果、100回程度のプレスにて、成形面にクモリやボツなどの外観不良が発生した。
 比較例2
 実施例1と同様に、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、成形面にDLC:H膜を成膜した光学素子成形用型により、1000回成形を行った後の光学素子成形用型について、酸素プラズマアッシングの処理後、良く洗浄した後、n-オクタデシルトリクロロシランを、ヘキサンで20wt%まで希釈して調製したコーティング溶液を、スピンコーターで光学素子成形用型に成膜した。この光学素子成形素材の表面をESCAおよびIR-RASで分析した結果、表面層には組織的な構造は認められなかった。すなわち、表面層は本発明の自己組織化膜ではないことが確認された。表面膜厚は200〜250nmであった。
 実施例1と同様に、DLC:H膜を成膜し、同一型で連続プレスしたところ、プレス回数80回で光学素子にワレが発生し、また、成形型にガラスと思われる融着物が認められた。
 実施例2〜6
 型母材、炭素系離型膜、離型膜成膜法、離型膜の膜厚、光学ガラス、プレス条件、炭素系離型膜の除去法、自己組織化膜、その成膜条件を表1及び2のとおり変更した以外は、実施例1と同様に、再生処理を100回繰り返した。表のとおり、成形用型の成形面における実質的な表面劣化や炭素系離型膜の成膜力低下は微小であり、成形品の外観品質において問題となる点は認められなかった。
 実施例7
 実施例1と同様に、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、成形面にDLC:H膜を成膜した光学素子成形用型により、1000回成形を行った後の光学素子成形用型について、酸素プラズマアッシングの処理後、良く洗浄した後、自己組織化膜の出発原料である、n-オクタデシルトリクロロシランを、ヘキサンで1wt%まで希釈して調整したコーティング溶液に光学素子成形用型を20℃で60秒浸漬した後、コーティング溶液から取り出し、洗浄後、室温で30分程度、乾燥した。光学素子成形用型の表面をESCAで分析した結果、表面層である自己組織化膜の膜厚は4nmであった。
 光学素子成形用型の表面をIR-RASで分析した結果、n-オクタデシルシラン自己組織化膜に由来するピークが観察され、表面層は自己組織化されていることが確認された。
 この光学素子成形用型を、N2雰囲気中で、350℃で2時間、加熱処理を行った後、再び、イオンプレーティング法成膜装置を用いて、基板温度300℃にて、成形面に厚さ50nmのDLC:H膜を成膜した。DLC:H膜には、粗さや膜抜けなどの異常もなく、光学ガラスAの連続成形においても、再度、光学素子として、良好な成形品をえることができた。
 実施例8〜10
 型母材、炭素系離型膜、離型膜成膜法、離型膜の膜厚、光学ガラス、プレス条件、炭素系離型膜の除去法、自己組織化膜、その成膜条件およびその加熱処理条件を表3のとおり変更した以外は、実施例7と同様に、再生処理を100回繰り返した。表のとおり、再生後の成形用型の成形面における実質的な表面劣化や炭素系離型膜の成膜力低下は微小であり、成形品の外観品質において問題となる点は認められなかった。
Figure 2004123521
Figure 2004123521
Figure 2004123521
*プレス圧力;100〜200kg/cm2
**HOYA(株)製クリストロンゼロ
***再生処理の結果;同一型で再生処理を100回繰り返したまでの光学素子の外観
 ◎:100回の再生繰り返しで、ワレ、クモリ、白濁が見られない
 ○:100回の再生繰り返しで、ワレ、クモリ、白濁の生じたものが計30個以内
 ×:再生繰り返しで、ワレが発生
自己組織化膜の説明図。 複分子層からなる自己組織化膜の説明図。 成形面に炭素系離型膜を施した成形用型の説明図。 実施例1で得られた自己組織化膜のIR-RASスペクトル。
符号の説明
 1 コーティング溶液
 2 溶液中の分子(○部:官能基)
 3 被成膜基材
 4 自己組織化膜
 5 自己組織化膜の分子
 6 複層化した自己組織化膜
 7 複分子層からなる自己組織化膜
 8 自己組織化膜の分子A
 9 自己組織化膜の分子B
 10 自己組織化膜の分子1
 11 自己組織化膜の分子2
 12 自己組織化膜の分子3
 13 自己組織化膜の分子4
 14 型母材
 15 自己組織化膜もしくは加熱処理された自己組織化膜
 16 炭素系離型膜

Claims (11)

  1. 成形面に炭素系離型膜を有する成形用型から前記炭素系離型膜を除去し、次いで炭素系離型膜を再成膜することを含む成形用型の再生方法であって、前記再成膜の前に成形面に自己組織化膜を成膜することを特徴とする成形用型の再生方法。
  2. 自己組織化膜の膜厚は0.1nm以上30nm以下であることを特徴とする請求項1記載の再生方法。
  3. 自己組織化膜が、有機珪素含有化合物、有機硫黄含有化合物、有機窒素含有化合物及び有機フッ素含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する請求項1または2に記載の再生方法。
  4. 自己組織化膜が、トリアルキルシラン化合物、ジアルキルシラン化合物、アルキルシラン化合物、アルキルジメチルシラン化合物、アリカンチオール化合物、ジアルキルスルフィド化合物およびジメチルアンモニウム化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の再生方法。
  5. 成形面への自己組織化膜の成膜を、成形面と反応性を有する有機珪素含有化合物、有機硫黄含有化合物、有機窒素含有化合物及び有機フッ素含有化合物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する有機溶媒に成形用型を浸漬することで行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の再生方法。
  6. 前記成形面と反応性を有する有機珪素含有化合物、有機硫黄含有化合物、有機窒素含有化合物及び有機フッ素含有化合物が、クロロトリアルキルシラン化合物、ジクロロジアルキルシラン化合物、トリクロロアルキルシラン化合物、アルキルジメチル(ジメチルアミノ)シラン化合物、アルカンチオール化合物、ジアルキルスルフィド化合物、ジアルキルジスルフィド化合物およびジメチルアンモニウム化合物から選ばれた少なくとも1つであることを特徴とする請求項5に記載の再生方法。
  7. 自己組織化膜を成膜後、炭素系離型膜の再成膜前に、成形用型を加熱処理して、前記成形面に形成した自己組織化膜を熱分解することを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学素子成形用型の再生方法。
  8. 炭素系離型膜の除去を酸素プラズマアッシングにより行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の再生方法。
  9. 炭素系離型膜の除去をピラニア溶液処理により行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の再生方法。
  10. 加熱軟化したガラス素材を成形用型内でプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法において、前記成形用型が請求項1〜9のいずれか1項に記載の再生方法によって再生された成形用型であることを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
  11. 加熱軟化したガラス素材を成形用型内でプレス成形することを含むガラス光学素子の製造方法において、前記成形用型が、成形用型の表面に自己組織化膜を成膜した後、炭素系離型膜を成膜した成形用型であることを特徴とするガラス光学素子の製造方法。
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