JP2007213715A - フッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜の製造方法およびそれにより得られたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜 - Google Patents

フッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜の製造方法およびそれにより得られたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜 Download PDF

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Abstract

【課題】 表面保護膜として各種用途に有用な表面エネルギーが低く、離型性、摺動性に優れ、かつ硬度の高いダイヤモンドライクカーボン薄膜を大面積に均一な膜厚で効率よく製造する方法を提供する。
【解決手段】 フッ素化炭化水素化合物を含むガスを、イオン化電流によりプラズマ化し、それにより生じた各イオンを、被成膜部材上に吸引衝突、付着させて、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成させることを特徴とするフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜の製造方法である。
【選択図】 図1

Description

本発明は、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜の製造方法およびそれにより得られたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜に関する。さらに詳しくは、本発明は、フッ素化炭化水素化合物を原料とし、イオンビーム蒸着法により、表面エネルギーが低く、離型性、摺動性に優れ、かつ硬度の高いフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を大面積に均一な膜厚で効率よく製造する方法、およびこの方法により得られた前記性状を有するフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜に関するものである。
ダイヤモンドライクカーボン(DLC)は、炭素または炭素と水素から構成される非晶質の物質で、ダイヤモンド結合とグラファイト結合が無秩序に混在した構造を持つ。このDLCは、窒化チタンや窒化クロムなどのセラミックスを超える硬度と、二硫化モリブデンやグラファイトなどの固体潤滑材に匹敵する潤滑性を併せ持った耐摩耗低摩擦材料であり、また、低ガス透過性、高絶縁性、耐食性、高熱伝導性、赤外線透過性、水素吸蔵性など有用な機能を併せ持った多機能性材料である。
近年、他の元素をドーピングすることにより、特性のさらなる向上が図られている。窒素、ボロン、酸素、フッ素などの軽い元素や、チタン、クロム、タングステン、モリブデンなどの金属およびシリコンなどを添加することにより、電気伝導率の制御、極低摩擦化、耐摩耗性向上、基材との密着性の向上、耐熱性の向上などが可能になることが知られている。
DLCは、このような性質を有することから、例えば切削工具、離型性を向上させた樹脂金型、電子材料、光情報記録媒体、偏光板保護フィルム等の表面保護膜としての利用が図られている。表面保護膜としてのダイヤモンドライクカーボン薄膜は、被成膜部材の表面に直接成膜される他、密着力の向上を目的として、被成膜部材の表面にTi、Si、Cr等の薄膜(中間膜)を介して成膜される。
光情報記録媒体の1種である磁気ディスクは、基板上に、少なくとも磁性層と保護層と潤滑層がこの順に形成されており、そして、前記保護層として、アモルファスのDLC膜が一般に設けられている。このアモルファスのDLC膜は、通常反応性ガスとして炭化水素ガスを用い、プラズマCVD法により形成される水素化DLC膜である。
また、液晶表示装置用の偏光板においては、映り込み防止のために、偏光板保護フィルム面に反射防止層を設けることが行われており、さらにこの反射防止層上に、通常保護層が設けられている。この保護層としてDLC膜の使用が試みられており、そして視認性の点から、DLC膜の薄さが求められていた。
このような状況下で、DLC形成時にフッ素系ガスを導入し、フッ素添加DLCとすることで、DLCの薄膜化が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この技術においては、フッ化エチレン、フッ化エタン、フロン23などの比較的に毒性の強いフッ素系ガスを使用するために、取り扱い性や安全性の面で問題がある。
DLCは、通常数nmから数μmの厚みを持った薄膜として形成され、イオン化蒸着法、プラズマ化学的気相蒸着法(CVD法)、スパッタリング法、アークイオンプレーティング法などの様々なドライプロセスを利用することができる。
イオン化蒸着法やプラズマCVD法では、メタンやベンゼンなどの炭化水素系ガスをプラズマ化し、生成したイオンを50V〜1kV程度に加速して被処理物に衝突させることによりDLC層を形成する。スパッタリング法やアークイオンプレーティング法においては、イオン衝突によりカーボンターゲットから飛び出したカーボン粒子が被処理物に付着することでDLC層を形成する。
特許文献2には、電子ビーム励起プラズマCVD法を用いて高硬度で密着性のよいDLC膜を形成することが開示されている。また、特許文献3には、電子ビーム励起プラズマCVD法を用いて、炭化水素系ガスとシリコンを含むガスを原料として低摩擦なシリコン含有DLC膜を形成する方法が開示されている。
一方、DLC薄膜製造装置として、特定の構成のイオン源を少なくとも1基備えた装置が開示されている(例えば、特許文献4参照)。この装置を用いることにより、イオンビーム蒸着によって被成膜部材の表面または被成膜部材に設けられた中間層表面に、均質で密着性に優れた大面積のDLC薄膜を効率よく製造することができる。しかしながら、この装置においては、原料ガスとして、フッ素化炭化水素化合物の使用については、なんら言及されていない。
特開2003−98305号公報 特許第3016748号公報 特許第3034241号公報 特公平8−26456号公報
本発明は、このような事情のもとで、表面保護膜として各種用途に有用な表面エネルギーが低く、離型性、摺動性に優れ、かつ硬度の高いダイヤモンドライクカーボン薄膜を大面積に均一な膜厚で効率よく製造する方法、およびこの方法により得られた前記性状を有するダイヤモンドライクカーボン薄膜を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、前記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、原料ガスとして、フッ素化炭化水素化合物を含むガスを用い、特に特定の装置を使用したイオンビーム蒸着により、被成膜部材上にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成することにより、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) フッ素化炭化水素化合物を含むガスを、イオン化電流によりプラズマ化し、それにより生じた各イオンを、被成膜部材上に吸引衝突、付着させて、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成させることを特徴とするフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜の製造方法、
(2) フッ素化炭化水素化合物が、フッ素化芳香族化合物である上記(1)項に記載の方法、
(3) フッ素化芳香族化合物が、一般式(I)
Figure 2007213715
(式中、mおよびnは、それぞれ0〜6の整数を示し、かつm+nは1〜6である。)
で表される含フッ素ベンゼン類である上記(2)項に記載の方法、
(4) イオン源を少なくとも1基備えたダイヤモンドライクカーボン薄膜製造装置を用いて、被成膜部材上にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成させるに際し、
前記イオン源として、底部を有する筒状の導電性金属からなる反射電極と、この反射電極内に該反射電極と電気的に絶縁されて設けられた熱電子放出用陰極と、この熱電子放出用陰極よりも前記反射電極の開口端側に該反射電極と電気的に絶縁されて設けられた板状陽極と、前記反射電極の開口端の前方に設けられた導電性金属からなる基板と、前記反射電極の内部空間に開口端を有する作動ガス供給管とを少なくとも備え、成膜時における前記板状陽極の電位を基準としたときの前記反射電極、前記熱電子放出用陰極および前記基板の各電位がそれぞれ負電位であり、かつ、前記熱電子放出用陰極の電位の方が前記反射電極の電位より高く、前記反射電極の電位の方が前記基板の電位より高いものを用いる、上記(1)〜(3)項のいずれか1項に記載の方法、
(5) ダイヤモンドライクカーボン薄膜製造装置において、イオン源を構成する熱電子放出用電極と板状陽極との間にイオン電流を生起させ、反射電極の内部空間に供給されたフッ素化炭化水素化合物を含むガスを、該イオン化電流によりプラズマ化し、それにより生じた各イオンを、負電位にある導電性金属からなる基板の反射電極の開口端側に配置された被成膜部材に電気的に吸引して衝突、付着させ、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成させる、上記(4)項に記載の方法、
(6) 被成膜部材が、導電性材料または絶縁性材料からなるものである上記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載の方法、
(7) 被成膜部材を、予めアルゴンボンバード処理する上記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載の方法、
(8) 同一のダイヤモンドライクカーボン薄膜製造装置を用い、被成膜部材上に中間層を形成させ、次いでその上にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を連続的に形成させる、上記(4)〜(7)項のいずれか1項に記載の方法、および
(9) 上記(1)〜(8)項のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とするフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜、
を提供するものである。
本発明の方法によれば、原料としてフッ素化炭化水素化合物を用い、イオンビーム蒸着により、表面保護膜として各種用途に有用な表面エネルギーが低く、離型性、摺動性に優れ、かつ硬度の高いフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を大面積に均一な膜厚で効率よく製造することができる。また原料として用いるフッ素化炭化水素化合物のフッ素化率を変えることにより、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜の表面エネルギーおよび硬度を制御することができる。
本発明のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン(フッ素化DLC)薄膜の製造方法においては、原料としてフッ素化炭化水素化合物が用いられる。
このフッ素化炭化水素化合物としては、例えばフッ素化アルカン、フッ素化シクロアルカン、フッ素化アルケン、フッ素化シクロアルケン、フッ素化芳香族化合物などを挙げることができる。これらのフッ素化炭化水素化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、これらの中でフッ素化芳香族炭化水素化合物が好ましい。
フッ素化芳香族炭化水素化合物としては、含フッ素ベンゼン類や含フッ素ナフタレン類などが挙げられるが、特に一般式(I)
Figure 2007213715
(式中、mおよびnは、それぞれ0〜6の整数を示し、かつm+nは1〜6である)
で表される含フッ素ベンゼン類が好適である。この一般式(I)で表される含フッ素ベンゼン類としては、モノフルオロベンゼン、ジフルオロベンゼン、トリフルオロベンゼン、テトラフルオロベンゼン、ペンタフルオロベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、トリフルオロメチルベンゼン、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、オクタフルオロトルエンおよびこれらの混合物を用いることができる。
本発明の方法においは、前記フッ素化炭化水素化合物を含むガスを、イオン電流によりプラズマ化し、それにより生じた各イオン、例えば炭素イオン、フッ素イオン、フッ化炭素イオンなどを被成膜部材上に吸引衝突、付着させて、フッ素化DLC薄膜を形成させる。
このようにして、被成膜部材上にフッ素化DLC薄膜を形成させるには、例えば特公平8−26456号公報に開示されているイオン源、すなわち底部を有する筒状の導電性金属からなる反射電極と、この反射電極内に該反射電極と電気的に絶縁されて設けられた熱電子放出用陰極と、この熱電子放出用陰極よりも前記反射電極の開口端側に該反射電極と電気的に絶縁されて設けられた板状陽極と、前記反射電極の開口端の前方に設けられた導電性金属からなる基板と、前記反射電極の内部空間に開口端を有する作動ガス供給管とを少なくとも備え、成膜時における前記板状陽極の電位を基準としたときの前記反射電極、前記熱電子放出用陰極および前記基板の各電位がそれぞれ負電位であり、かつ、前記熱電子放出用陰極の電位の方が前記反射電極の電位より高く、前記反射電極の電位の方が前記基板の電位より高いことを特徴とするイオン源を少なくとも1基備えたDLC薄膜製造装置を用いることができる。
図1は、本発明で用いることのできるイオン源の一例を示す端面図である。イオン源1は、底部を有する円筒状のモリデブンからなる反射電極2(最大径60mmφ)と、この反射電極2内に該反射電極2と電気的に絶縁されて設けられたタンタル製フィラメントからなる熱電子放出用陰極3と、この熱電子放出用陰極3よりも反射電極2の開口端側に該反射電極2と電気的に絶縁されて設けられたタングステン製の板状陽極4と、反射電極2の開口端の前方に設けられたステンレスからなる基板5と、反射電極2の内部空間に開口端を有する作動ガス供給管6とを備えている。例えば導電性物質からなる被成膜部材(図示せず)は基板5の下面、すなわち、板状陽極4と対向している側の面上に支持される。
そして、フッ素化DLC薄膜の成膜時において、板状陽極4の電位を基準としたときの反射電極2、熱電子放出用陰極3および基板5の各電位は、それぞれ負電位であり、かつ、熱電子放出用陰極3の電位の方が反射電極2の電位より高く、反射電極2の電位の方が基板5の電位より高く保たれる。反射電極2内の電気力線を図1中に2点鎖線で示す。
本発明においては、このようなイオン源を少なくとも1基備えたDLC薄膜製造装置を用いて、フッ素化DLC薄膜を製造することができる。この場合、前記DLC薄膜製造装置において、イオン源を構成する熱電子放出用電極と板状陽極との間にイオン電流を生起させ、反射電極の内部空間に供給されたフッ素化炭化水素化合物を含むガスを、該イオン化電流によりプラズマ化し、それにより生じた各イオンを、負電位にある導電性金属からなる基板の反射電極の開口端側に配置された被成膜部材に電気的に吸引して衝突、付着させ、フッ素化DLC薄膜を形成させる。
被成膜部材としては、導電性材料からなる部材および絶縁性材料からなる部材のいずれも用いることができる。
導電性材料からなる被成膜部材上にフッ素化DLC薄膜を形成させる場合、例えば特公平8−26456号公報に記載されている第2図で示されるDLC薄膜製造装置を用いることができ、また絶縁性材料からなる被成膜部材上にフッ素化DLC薄膜を形成させる場合、例えば特公平8−26456号公報に記載されている第7図で示されるDLC薄膜製造装置を用いることができる。
これらの装置を用いて、被成膜部材上にフッ素化DLC薄膜を形成させる条件としては、通常以下の条件が採用される。
・真空槽内の初期圧力
1.33×10−3Pa以下
・真空槽内の作業圧力
1.33〜1.33×10−1Pa
・熱電子放出用陰極の温度
熱電子を安定に放出するに十分な温度(概ね2500℃以上)
・板状陽極の印加電圧および電流
直流20〜100V(0.3〜3A)
・反射電極の印加電圧および電流
直流20〜200V(0.1〜0.5A)
・回転テーブル(基板)の印加電圧および電流
直流1000〜3000V(0.01〜1A)
・作動ガス(原料ガス)
フッ素化炭化水素化合物を含むガス
なお、作動ガスとしてのフッ素化炭化水素化合物を含むガスは、必要に応じ水素ガスを含むことができる。フッ素化DLC薄膜をさらに水素化することにより、該膜の緻密性を向上させることができる。
本発明の方法においては、同一のDLC薄膜製造装置を用い、被成膜部材上に中間層を形成させ、次いでその上にフッ素化DLC薄膜を連続的に形成させることができる。中間層を設けることにより、フッ素化DLC薄膜を、被成膜部材上に密着性よく形成することができる。前記中間層の形成は、特に導電性材料からなる被成膜部材に適用するのが有効である。
前記中間層としては、例えばSiC系薄膜を形成することができる。この場合、SiC系薄膜の成膜条件は、作動ガスとしてシロキサン系ガスを用いることを除き、前記のフッ素化DLC薄膜の形成条件と同様である。
DLC薄膜製造装置による中間層(SiC系薄膜)表面へのフッ素化DLC薄膜の成膜は、中間層を成膜した際の真空槽内の雰囲気を一旦、排気し、真空槽内の初期圧力を1.33×10−3Pa以下とした後に、新たに行うのがよい。このときの成膜条件は前述の通りである。
本発明の方法においては、フッ素化DLC薄膜あるいは中間層を成膜する前に、必要に応じて、被成膜部材の表面をイオンボンバードにより、洗浄することで、フッ素化DLC薄膜あるいは中間層の密着性をさらに向上させることができる。
イオンボンバードによる被成膜部材表面の洗浄は、例えば作動ガスとしてアルゴンガスを用い、熱電子放出用電極と板状陽極との間の放電(イオン化電流)によりアルゴンガスをプラズマ化し、これにより生じたアルゴンイオンを被成膜部材に電気的に衝突させることにより行うことができる。イオンボンバードにより被成膜部材表面を洗浄した場合は、洗浄時の雰囲気を一旦、排気してから、フッ素化DLC薄膜あるいは中間層の成膜を行うことが好ましい。
このようにして形成されたフッ素化DLC薄膜の厚さは、通常0.01〜5μm程度であるが、用途に応じて、膜厚を制御することができる。
また、原料として用いるフッ素化炭化水素化合物中のフッ素原子の含有量が多くなるほど、形成されるフッ素化DLC薄膜の硬度は小さくなるが、接触角は大きくなり、また厚い膜厚のフッ素化DLC薄膜が得られる。
フッ素化DLC薄膜中のフッ素原子の含有量は、例えばX線光電子分光法により測定することができる。また、フッ素化DLC薄膜がダイヤモンドライクカーボン薄膜であることはラマンスペクトルにより確認することができる。
さらに、硬度はナノインデンターにより測定することができ、密着性(耐スクラッチ性)は、AE(アコースティック・エミッション)センサー付自動スクラッチ試験機により、測定することができる。また、摩擦係数はボールオンディスク摩擦磨耗試験機により測定することができる。
本発明の方法によれば、表面エネルギーが低く、離型性、摺動性に優れ、かつ硬度の高いフッ素化DLC薄膜を大面積に均一な膜厚で効率よく製造することができる。また、原料として用いるフッ素化炭化水素化合物のフッ素化率を変えることにより、フッ素化DLC薄膜の表面エネルギーおよび硬度を制御することができる。
本発明の方法で得られたフッ素化DLC薄膜は前記の優れた性状を有することから、例えば切削工具、金型、電子材料、光情報記録媒体、偏光板保護フィルムなどの表面保護膜として有用である。
本発明はまた、前述の本発明の方法で製造されたフッ素化DLC薄膜をも提供する。
次に、本発明を実施例により、さらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
なお、得られたダイヤモンドライクカーボン薄膜の性状は、以下に示す方法に従って求めた。
(1)フッ素含有量
XPS(X線光電子分光)装置[KRATOS社製、機種名「AXIS-ULTRA」を用い、フッ素原子含有量を、式[F/(F+C)]×100(質量%)により、算出した。
(2)硬度
ナノインデンター[CSM社製、機種名「NANO HARDNESS TESTER」]を用い、硬度を測定した。
(3)接触角
接触角度計[協和界面科学(株)製、機種名「FACE自動接触角計CA−VP型」]を用い、純水に対する接触角を測定した。
(4)摩擦係数
ボールオンディスク摩擦磨耗試験機[CSM社製、機種名「TRIBOMETER」]により、摩擦係数を測定した。
(5)ラマンスペクトル
ラマンスペクトル測定用機器[日本分光(株)製、機種名「Ventuno21」]を用い、ラマンスペクトルを測定した。
比較例1
DLC製造装置(イオン化蒸着装置)[ナノテック(株)製、機種名「DASH−330」]を用い、以下の工程に従って、DLC薄膜を形成した。
(1)アルゴンボンバード処理工程
装置の真空容器内を3.0×10−3Pa以下の真空圧に到達させたのち、アルゴンガスを1.1×10−1Pa〜1.7×10−1Paになるように導入した。イオン源アノード電流値を約0.3〜0.5A、イオン源フィラメント電流値を約30A、基板(超硬合金からなる被成膜部材)バイアス電圧値を約1.5〜2.0kVに設定し、放電を発生させ、アルゴンボンバード処理を約10分間行った。この処理以降、基板はイオン源に対して、均一に当たるように回転させた。
(2)中間層成膜工程
アルゴンボンバード処理後、アルゴンガスの導入を停止し、ヘキサメチルジシロキサンガスを2.0×10−1Pa〜3.8×10−1Paの真空圧になるように導入した。イオン源アノード電流値、基板バイアス電圧値は、前記(1)のアルゴンボンバード処理工程と同様とし、約20分間成膜した。
(3)DLC成膜工程
ベンゼンガス(C)ガスを2.0×10−1〜6.5×10−1Paになるように導入し、イオン源アノード電流値、イオン源フィラメント電流値、基板バイアス電圧値を、前記(2)の中間層成膜工程と同様にして約2時間成膜した。
得られたDLC薄膜のラマンスペクトルを図2に示すとともに、物性を表1に示す。
実施例1〜8
比較例1におけるDLC成膜工程において、ベンゼンガスの代わりに、モノフルオロベンゼン(CFH、実施例1)、ジフルオロベンゼン(C、実施例2)、トリフルオロベンゼン(C、実施例3)、テトラフルオロベンゼン(C、実施例4)、ペンタフルオロベンゼン(CH、実施例5)、ヘキサフルオロベンゼン(C、実施例6)、ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン((CF4、実施例7)オクタフルオロトルエン(CF5、実施例8)を用いた以外は、比較例1と同様な操作を行い、フッ素化DLC薄膜を成膜した。
実施例1〜6で得られた各フッ素化DLC薄膜のラマンスペクトルを図3に示すと共に、物性を表1に示す。
Figure 2007213715
本発明のフッ素化DLC薄膜の製造方法は、フッ素化炭化水素化合物を原料とし、イオンビーム蒸着法により、表面エネルギーが低く、離型性、摺動性に優れ、かつ硬度の高いフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を大面積に均一な膜厚で効率よく製造することができる。
本発明の方法で得られたフッ素化DLC薄膜は、前記の特性を有することから、例えば切削工具、金型、電子材料、光情報記録媒体、偏光板保護フィルムなどの表面保護膜として有用である。
本発明で用いることのできるイオン源の一例の概略を示す端面図である。 比較例1で得られたDLC薄膜のラマンスペクトル図である。 実施例1〜6で得られた各フッ素化DLC薄膜のラマンスペクトル図である。
符号の説明
1 イオン源
2 反射電極
3 熱電子放出用陰極
4 板状陽極
5 基板
6 作動ガス供給管

Claims (9)

  1. フッ素化炭化水素化合物を含むガスを、イオン化電流によりプラズマ化し、それにより生じた各イオンを、被成膜部材上に吸引衝突、付着させて、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成させることを特徴とするフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜の製造方法。
  2. フッ素化炭化水素化合物が、フッ素化芳香族化合物である請求項1に記載の方法。
  3. フッ素化芳香族化合物が、一般式(I)
    Figure 2007213715
    (式中、mおよびnは、それぞれ0〜6の整数を示し、かつm+nは1〜6である。)
    で表される含フッ素ベンゼン類である請求項2に記載の方法。
  4. イオン源を少なくとも1基備えたダイヤモンドライクカーボン薄膜製造装置を用いて、被成膜部材上にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成させるに際し、
    前記イオン源として、底部を有する筒状の導電性金属からなる反射電極と、この反射電極内に該反射電極と電気的に絶縁されて設けられた熱電子放出用陰極と、この熱電子放出用陰極よりも前記反射電極の開口端側に該反射電極と電気的に絶縁されて設けられた板状陽極と、前記反射電極の開口端の前方に設けられた導電性金属からなる基板と、前記反射電極の内部空間に開口端を有する作動ガス供給管とを少なくとも備え、成膜時における前記板状陽極の電位を基準としたときの前記反射電極、前記熱電子放出用陰極および前記基板の各電位がそれぞれ負電位であり、かつ、前記熱電子放出用陰極の電位の方が前記反射電極の電位より高く、前記反射電極の電位の方が前記基板の電位より高いものを用いる、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
  5. ダイヤモンドライクカーボン薄膜製造装置において、イオン源を構成する熱電子放出用電極と板状陽極との間にイオン電流を生起させ、反射電極の内部空間に供給されたフッ素化炭化水素化合物を含むガスを、該イオン化電流によりプラズマ化し、それにより生じた各イオンを、負電位にある導電性金属からなる基板の反射電極の開口端側に配置された被成膜部材に電気的に吸引して衝突、付着させ、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を形成させる、請求項4に記載の方法。
  6. 被成膜部材が、導電性材料または絶縁性材料からなるものである請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
  7. 被成膜部材を、予めアルゴンボンバード処理する請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
  8. 同一のダイヤモンドライクカーボン薄膜製造装置を用い、被成膜部材上に中間層を形成させ、次いでその上にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜を連続的に形成させる、請求項4〜7のいずれか1項に記載の方法。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の方法により製造されたことを特徴とするフッ素化ダイヤモンドライクカーボン薄膜。
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