JP2004276568A - インクジェット記録ヘッド - Google Patents
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Abstract
【課題】撥水性、耐摩耗性、密着性及び耐インク性に優れたインクジェット記録ヘッドが得られることを課題とする。
【解決手段】ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面に形成されたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29のフッ素含有の割合は、この順で段階的に増加している。このため、ダイヤモンドライクカーボン膜23側はフッ素の含有量が少ないので、ダイヤモンドライクカーボン膜23に密着しやすくなる。また、表面のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜29はフッ素の含有量が多いので、含有されているフッ素が多少剥離しても、撥水性が維持できる。
【選択図】 図3
【解決手段】ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面に形成されたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29のフッ素含有の割合は、この順で段階的に増加している。このため、ダイヤモンドライクカーボン膜23側はフッ素の含有量が少ないので、ダイヤモンドライクカーボン膜23に密着しやすくなる。また、表面のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜29はフッ素の含有量が多いので、含有されているフッ素が多少剥離しても、撥水性が維持できる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、被印字面にインク滴を吐出して印字を行うインクジェット記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
ノズル、スリットあるいは多孔質フィルム等から液体あるいは溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等の被印刷物に記録を行う、いわゆるインクジェット方式の記録装置は、小型で安価、静寂性等種々の利点がある。これらの理由から、最近ではレポート用紙、コピー用紙等に記録するインクジェット記録装置が数多く市販されており、記録装置の分野で大きな位置を占めるようになった。
【0003】
中でも、圧電素子を用いて圧力室内の圧力を変化させてインク滴を吐出するピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーの作用でインクを膨張させインク滴を吐出する熱インクジェット方式の記録装置は、高速印字、高解像度が得られる等、多くの利点を有している。
【0004】
これらのインクジェット方式の記録装置において、インクジェット記録ヘッドでは、ノズルからインク滴を吐出した際、インク滴がノズル周囲に付着したり、また、ノズルからインクが盛り上がるオーバーシュート現象によるインク漏れが生じる。このため、インク吐出方向が傾いたり、インク滴径および速度がばらつくことがあり、これによって、インクジェット記録ヘッドの印字性能が著しく低下する場合がある。そこで、インク滴がノズル周囲に付着するのを防ぐため、ノズル表面に撥水膜を施すことが行われている。
【0005】
その一つとして、撥水性に優れたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜を、ノズルプレート(例えば、ステンレス板)の表面に形成することが行われている(特許文献1)。しかし、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜はノズルプレートとの密着性が弱いという欠点を有しており、ノズルプレートの表面から剥離しやすい。
【0006】
そこで、ノズルプレートの表面に密着性が良好なダイヤモンドライクカーボン膜を形成し、その膜面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜を形成する方法が開示されている(特許文献2)。しかし、ノズルプレートの吐出口の目詰まりを防止する目的でノズルプレートの吐出口周辺をブレードでワイピングした場合に、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜中の炭素とフッ素間の結合が弱いことによって、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜のフッ素が剥離して撥水性が損なわれてしまう。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−296973号公報(第4−7項、第1図)
【特許文献2】
特許第2983679号(第25項、第1図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事実を考慮し、密着性、撥水性及び耐摩耗性に優れたインクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクを吐出する吐出口が形成されたノズルプレートと、前記ノズルプレートの表面に形成された撥水膜と、を備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、前記撥水膜は、前記ノズルプレート表面に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜の表面に形成されたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜で構成され、前記フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、前記ダイヤモンドライクカーボン膜側からフッ素含有の割合が段階的に増加していることを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、吐出口が形成されたノズルプレートの表面には、ダイヤモンドライクカーボン膜が形成され、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面にはフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている。
【0011】
ダイヤモンドライクカーボン膜は密着性に優れており、ノズルプレートの表面に密着し易く、且つ、後から形成するフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜との密着性も高い。
【0012】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、撥水性に非常に優れており、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜を形成することによって、吐出口から安定してインクが吐出される。また、このときフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、耐摩耗性に優れるので、ブレードのワイピングによる摩耗を防ぐことができる。
【0013】
さらに、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜のフッ素含有の割合は、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面側から段階的に増加している。このため、ダイヤモンドライクカーボン膜側はフッ素の含有量が少ないので、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜がダイヤモンドライクカーボン膜に密着しやすくなる。また、表面のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜はフッ素の含有量が多いので、含有されているフッ素が多少剥離しても、撥水性が維持できる。
【0014】
請求項2に記載の本発明のインクジェット記録ヘッドは、前記フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、FT−IR分光分析によるスペクトルにおいて、C−F結合に由来する1000〜1300cm−1のピーク面積とC−H結合に由来する2800〜3100cm−1のピーク面積とがいずれも0でなく、且つ、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいて、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度との比(F1S/C1S)が0<(F1S/C1S)<3であることを特徴としている。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜のFT−IR分光分析によるスペクトルにおいて、C−F結合に由来する1000〜1300cm−1のピーク面積とC−H結合に由来する2800〜3100cm−1のピーク面積がいずれも0でない、すなわち、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜には必ずC−F結合とC−H結合が存在するため、撥水性が保証される。また、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいて、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度との比の(F1S/C1S)が3以上のとき、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜中に存在するC−F結合の割合が多すぎるために、膜全体の硬度が低下して耐摩耗性が低下する。このため、0<(F1S/C1S)<3としたときに、耐摩耗性に優れるフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜が得られる。
【0016】
請求項3に記載の本発明のインクジェット記録ヘッドは、前記フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、C−F結合の割合が異なる3層からなり、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいて、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度の比(F1S/C1S)がノズルプレート側からそれぞれ0.05〜0.15、0.2〜0.5、1.0〜1.5であることを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、このように、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度の比(F1S/C1S)をノズルプレート側から段階的に強くすることで、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜の密着性が良く、撥水性、耐摩耗性及び耐擦過性に優れた撥水膜が形成される。
【0018】
請求項4に記載の本発明のインクジェット記録ヘッドは、前記ノズルプレートの表面をガスプラズマに曝し、その後から前記ダイヤモンドライクカーボン膜を形成することを特徴としている。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、ダイヤモンドライクカーボン膜の形成前に、前処理としてノズルプレートの撥水膜形成面を前処理用のガスプラズマに曝すことによって、ダイヤモンドライクカーボン膜の密着性が高まる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1には、本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド12が搭載されたインクジェットプリンタ10が示されている。
【0021】
インクジェット記録ヘッド12は、ノズル36(図2参照)が形成されたノズルプレート22が、記録用紙Pと対向するようにキャリッジ14上に搭載されている。このキャリッジ14は、主走査機構16によって主走査方向(矢印Aで示す)に移動される。これにより、インクジェット記録ヘッド12は、副走査機構18によって副走査方向(矢印Bで示す)へ搬送される記録用紙Pへ、画像情報に応じてインク滴を吐出することにより、記録用紙Pの全面に画像の記録を行う。
(インクジェット記録ヘッドの概略説明)
図2に示すように、インクジェット記録ヘッド12は、ノズルプレート22、連通孔プレート24、26、供給路プレート28、30、圧力発生室プレート32、および振動板34の合計7枚のプレートを位置合わせして積層し、接着剤等の接合手段によって接合することにより形成されている。
【0022】
ノズルプレート22には、インクを吐出するノズル36が設けられており、連通孔プレート24、26には、連通孔38、40がそれぞれ形成されている。また、供給路プレート28、30には供給孔42、44が形成されている。これらのノズル36、連通孔38、40、供給孔42、44は連通孔プレート24、26、供給路プレート28、30が積層された状態で連通し、圧力発生室プレート32に形成された圧力発生室48に繋がっている。
【0023】
一方、連通孔プレート24、26には、それぞれインクプール51、52が形成され、図示しないインク供給孔から供給されたインクが貯留されている。また、供給路プレート28には、このインクプール52と連結するように供給孔54が形成されている。さらに、供給路プレート30には供給溝56が形成されて、連通孔プレート24、26、供給路プレート28、30が積層された状態で、インクプール51、52と圧力発生室48とを連通させている。
【0024】
圧力発生室プレート32上には振動板34が積層され、振動板34の上には圧力発生手段としての単板型の圧電素子58が取り付けられている。圧電素子58は、圧力発生室48に相当する領域に接着されており、ハンダ68を介してフレキシブル配線基板70と接続されている。この構成により、駆動電圧波形が圧電素子58に印加されると、圧電素子58と共に振動板34がたわみ変形して圧力発生室48のインクを加圧し、ノズル36からインク滴を吐出させる。
【0025】
また、ノズルプレート22のインクが吐出される側の面(表面)には撥水膜60が形成されており、この撥水膜60によってノズル36周囲のインク漏れ等が防止でき、ノズル36から吐出するインク滴が常にノズルプレート22に対して垂直に吐出されるようになる。
(インクジェット記録ヘッドの製造方法)
以上が、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッド12の構成であり、次に、このインクジェット記録ヘッドの製造方法について説明する。
【0026】
ノズルプレート22の一方の面(表面)にプラズマ処理を施す。ノズルプレート22には、シリコンウエハー、ステンレス板、合成樹脂等が使用される。本実施形態においては、機械的強度、耐薬品性、薄膜化に優れている合成樹脂の熱硬化性のポリアミドイミドまたはポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン等が使用される。
【0027】
ノズルプレート22に合成樹脂を用いる場合、前処理としてノズルプレート22の表面をプラズマガスに曝すことが行われる。この前処理を行うことで、ノズルプレート22と後述するダイヤモンドライクカーボン膜との密着性が高まる。
【0028】
プラズマ処理に使用されるガスとしては、例えば、フッ素(F)含有ガス、水素ガス(H2)および酸素ガス(O2)等が挙げられる。フッ素(F)含有ガスおよび水素ガス(H2)を用いると、ノズルプレート22の表面はフッ素終端または水素終端され、この後に形成するダイヤモンドライクカーボン膜23の炭素との結合が安定する。また、酸素ガス(O2)を用いてプラズマ処理を行うと、ノズルプレート22の表面の有機物等の汚れが効率よく除去できるので、後から形成するダイヤモンドライクカーボン膜23がノズルプレート22の表面に付着しやすくなる。
【0029】
なお、プラズマ処理は同種類または異なる種類のプラズマを用いて複数回行っても構わない。例えば、最初にノズルプレート22の表面を酸素ガス(O2)プラズマに曝してノズルプレート22の表面の汚れを除去した後、フッ素(F)含有ガスプラズマまたは水素ガス(H2)プラズマに曝すことによって、ノズルプレート22の表面に形成するダイヤモンドライクカーボン膜23の密着性が高まる。また、この前処理は、必ずしも行わなければならないものではない。
【0030】
次に、図3(A)、(B)に示すように、メタンガス(CH4)でプラズマ処理し、ノズルプレート22の表面にダイヤモンドライクカーボン膜23を形成する。ダイヤモンドライクカーボン膜23は、天然ダイヤモンドと同じ炭素のSP3結合とグラファイトと同じ炭素のSP2結合、それに水素との結合を含むアモルファス構造となっており、高硬度で摩擦係数が小さく、撥水性、耐摩耗性、化学的安定性に優れている等の特徴を有する。また、比較的低温で容易に形成できるプラズマCVD法等によって形成可能であることから、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成する際にノズルプレート22に熱的損傷を与えることがない。
【0031】
次に、図3(C)、(D)に示すように、メタンガス(CH4)と6フッ化2炭素ガス(C2F6)の混合ガスでプラズマ処理し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面に、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25を形成する。その上に、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜27を形成し、更にその上に、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜29を形成する。フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29は、この順でフッ素の含有の割合が段階的に増加している。なお、詳細は後述する。
【0032】
また、本実施形態においては、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜を3層積層したが、フッ素の含有の割合が表面側が多いものであれば、少なくとも2層積層すればよい。また、フッ素の含有の割合が表面に行くに従って段階的に増える、4層以上のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜を積層しても良い。
【0033】
ダイヤモンドライクカーボン膜23及びフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29は、各々の膜厚が0.05〜1μmの範囲とされ、0.1〜0.5μmで形成することが好ましい。0.05μmより膜厚が薄いときには密着性が弱くなり、1μmよりも大きいときには、ノズルヘッド全体の厚みが大きくなってしまい、インクの吐出に影響を及ぼしてしまう。
【0034】
ダイヤモンドライクカーボン膜23及びフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29の形成方法として、プラズマCVD法を使用した。このプラズマCVD法は、ノズルプレート22の前処理と、ダイヤモンドライクカーボン膜23およびフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29の形成とに使用されるので、同じ装置を用いて行うことができる。
【0035】
ここで、プラズマCVD法によってダイヤモンドライクカーボン膜23およびフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成する工程を説明する。
【0036】
図4に示すように、ダイヤモンドライクカーボン膜23は、プラズマCVD装置80を用いてノズルプレート22の表面に形成される。
【0037】
プラズマCVD装置80は成膜室82を有しており、成膜室82内には電極84と、この電極84に対向するようにして電極86が設けられている。電極86は接地されており、電極84にはマッチングボックス91を介して高周波電源92が接続されている。また、電極84には、電極84上に設置された被成膜物を加熱するためのヒーター85が付設されている。
【0038】
まず、電極84に、被成膜物であるノズルプレート22を、被成膜面22Aを電極86側に向けて設置する。成膜室82には、圧力調整弁87を介して排気ポンプ88が接続されており、この排気ポンプ88を運転させて成膜室82の内部を所定の圧力(成膜圧力)まで減圧する。
【0039】
一方、成膜室82の外にはガス供給部90が設置されており、ガス供給部90を介して成膜室82内に原料ガスが導入されるようになっている。ガス供給部90は、成膜室82にガスを送る供給パイプ101から分岐して設けられた弁93、94、マスフローコントローラ95、96及び成膜用のガスボンベ97(例えば、メタン(CH4))、ガスボンベ98(例えば、6フッ化2炭素(C2F6))とで構成されている。
【0040】
マッチングボックス91を介して高周波電源92から電極84に高周波電力が導入されると、マスフローコントローラ95で投入量が調整されたメタン(CH4)が成膜室82へ導入され、メタンガスのプラズマ化が行われる。これによって、ノズルプレート22の表面にダイヤモンドライクカーボン膜23が形成される。
【0041】
また、マスフローコントローラ95、96で投入量が調整されたメタン(CH4)と6フッ化2炭素(C2F6)が成膜室82へ導入され、メタン(CH4)ガスと6フッ化2炭素(C2F6)ガスのプラズマ化が行われる。これによって、ノズルプレート22の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29が順次形成される。
【0042】
なお、先に説明したノズルプレート22の表面にフッ素含有ガスプラズマまたは水素ガスプラズマを曝す、前処理の工程においても、ガスボンベ97、98をフッ素含有ガス、水素ガスのガスボンベと交換して、同様にして成膜室82にフッ素含有ガスまたは水素ガスを導入すればよい。
【0043】
原料ガスには、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成するものとして、炭化水素化合物等のガスが、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成するものとして、フッ素化炭化水素化合物等が挙げられる。
【0044】
炭化水素化合物としては、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)等のアルカン、シクロプロパン(C3H8)、シクロブタン(C4H8)等のシクロアルカン、エチレン(C2H4)、プロペン(C3H6)、ブテン(C4H8)等のアルケン、アセチレン(C2H4)等のアルキン等が挙げられる。また、フッ素化炭化水素化合物としては、例えば、4フッ素化炭素(CF4)、6フッ素化2炭素(C2F6)、8フッ素化4炭素(C4F8)等が挙げられる。
【0045】
これらの炭化水素化合物およびフッ素化炭化水素化合は、単独で使用してもよく、二種類以上を混合して使用しても良い。
【0046】
さらに、上記ガスの他に、キャリアガスとして水素(H2)ガスや不活性ガスのヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)またはクリプトン(Kr)等のガスが使用されることもある。
【0047】
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜23およびフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29の形成方法として、プラズマCVD法以外にスパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いることも可能である。
【0048】
成膜室82内へ導入する炭化水素化合物ガス及びフッ化炭素化合物ガスの割合を調整することによって、FT−IR分光分析によるスペクトルにおいて、C−F結合に由来する1000〜1300cm−1のピーク面積(IR・C−F)と、C−H結合に由来する2800〜3100cm−1のピーク面積(IR・C−H)とがいずれも0でなく、且つ、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいて、F1Sに由来するピーク強度と、C1Sに由来するピーク強度との比(F1S/C1S)が0<(F1S/C1S)<3となるフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成する。
【0049】
図6には、炭化水素化合物とフッ素化炭化水素化合物の混合割合を変化させて形成されたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜の、FT−IR分光分析によるスペクトルが示されている。グラフ中で、1000〜1300cm−1の範囲に現れるピークがC−F結合に由来し、2800〜3100cm−1の範囲に現れるピークがC−H結合に由来するスペクトルである。これらのスペクトルのピーク面積(IR・C−F)、(IR・C−H)がいずれも0でないとき、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜中にフッ素が存在することを表す。したがって、このフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は撥水性があることが言える。
【0050】
0<(F1S/C1S)とは、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜がC−F結合を有することを表している。また、3<(F1S/C1S)となるとき、C−F結合の割合が大きすぎる、すなわち、フッ素が多すぎるということを意味しており、膜全体の硬度が低下して耐摩耗性が低下する。したがって、0<(F1S/C1S)<3のとき、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は耐摩耗性に優れていると言える。
【0051】
本実施形態では、C−F結合の割合を変化させたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を、先に形成したダイヤモンドライクカーボン膜23の表面に形成する。フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29のピーク強度比(F1S/C1S)は、それぞれ0.05〜0.15、0.2〜0.5、1.0〜1.5となるように形成される。
【0052】
ダイヤモンドライクカーボン膜23、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成する過程において、これらは連続で形成することが好ましい。ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成して大気に開放してしまうと、形成したダイヤモンドライクカーボン膜23の表面が空気中の不純物ガスを吸着してしまい、次に形成するフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25との境界面に密着性を劣化させる層が形成され、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25が剥離しやすくなる。
【0053】
次に、上記のように製造したノズルプレート22の裏面側に連通孔プレート24を接合し、図5(A)に示すように、エキシマレーザLでノズルプレート22にノズル36を穿設する。また、ノズルプレート22に接合された連通孔プレート24に、連通孔プレート26、供給路プレート28、供給路プレート30、圧力発生室プレート32を接合し、図5(B)に示すように、圧力発生室プレート32の開口を覆うようにして振動板34を接合する。
【0054】
次に、図5(C)に示すように、マトリックス状に圧電素子58がサンドブレスト加工された固定基板78を上にして、圧電素子58を振動板34に接着する。固定基板78と圧電素子58は、所定の温度で加熱したとき、発泡して接着力が大幅に低下する性質を有する熱発泡性接着フィルムを用いて接着されている。また、圧電素子58の両面には電極層がスパッタリングなどで予め形成されており、共通電極として兼用する振動板34と導電性接着剤で接着することで、圧電素子58と振動板34とは電気的に接続される。
【0055】
次に、図5(D)に示すように、固定基板78を加熱して熱発泡性接着フィルムの接着力を低減させて固定基板78を剥離し、図5(E)に示すように、各圧電素子58毎にハンダ68を介してフレキシブル配線基板70を接合する。
【0056】
最後に、図示しないインク供給装置等を取付けることにより、本実施形態のインクジェット記録ヘッド12が完成する。
【0057】
次に、本発明の実施の形態の作用について説明する。
【0058】
図2に示すように、インクジェット記録ヘッド12には、インクプール50から圧力発生室48、供給孔44、42、連通孔40、38およびノズル36へと連続するインクの通路が形成されており、インク供給装置(図示省略)から送られてきたインクは、振動板34に形成されたインク供給孔(図示省略)を介してインクプール51、52に貯留され、インク供給孔54及び供給溝56を経て、圧力発生室48内に充填される。
【0059】
ここで、画像情報に応じた駆動電圧波形が圧電素子58に印加されると、圧電素子58は振動板34と共に変形して圧力発生室48を膨張または圧縮させる。これによって、圧力発生室48に体積変化が生じ、圧力発生室48内に圧力波が発生する。この圧力波の作用によってインクが運動し、インクがノズル36から外部へ吐出される。
【0060】
ノズル36が形成されたノズルプレート22の表面には、ダイヤモンドライクカーボン膜23が形成され、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面には段階的にフッ素の含有の割合を変化させたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29が形成されている。
【0061】
ダイヤモンドライクカーボン膜23は密着性に優れており、ノズルプレート22の表面に密着し易く、且つ、後から形成するフッ素化ダイヤモンドライクカーボン25との密着性も高い。したがって、ノズルプレート22の表面に、密着性の高いフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29が形成される。
【0062】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29は、撥水性に非常に優れており、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成することによって、ノズル26から安定してインクが吐出される。また、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29は耐摩耗性に優れるので、ブレードのワイピングによる摩耗を防ぐことができる。
【0063】
また、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29のフッ素の含有の割合はこの順で段階的に増加している。このため、ダイヤモンドライクカーボン膜23側のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン25はフッ素の含有量が少ないので、ダイヤモンドライクカーボン膜23に密着し易くなる。さらに、表面のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜29はフッ素の含有量が多いので、含有されているフッ素が多少剥離しても撥水性が維持できる。
【0064】
なお、本発明では合成樹脂製のノズルプレート22を使用したが、ノズルプレート22は金属及び熱可塑性樹脂で形成されていてもよい。
【0065】
ここで、実施例として、図3(D)に示すように、インクジェット記録ヘッド12のノズルプレート22に撥水膜60を形成し、撥水膜の評価を行った。
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27を形成する。
【0066】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27は、原料ガスのメタン(CH4)と6フッ化2炭素(C2F6)の流量比を変化させることにより、膜中のC−F結合の割合、つまりX線光電子分光分析によるスペクトルおいて、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度との比(F1S/C1S)を、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25では0.9、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜27では1.3とした。
<実施例2>
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27を形成する。
【0067】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25ではピーク強度比(F1S/C1S)を0.3、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜27ではピーク強度比(F1S/C1S)を1.3とした。
【0068】
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜23、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27の成膜条件は実施例1と同様とした。
<実施例3>
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成する。
【0069】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25ではピーク強度比(F1S/C1S)を0.05、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜27ではピーク強度比(F1S/C1S)を0.2、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜29ではピーク強度比(F1S/C1S)を1.0とした。
【0070】
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜23、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29の成膜条件は実施例1と同様とした。
<実施例4>
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成する。
【0071】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25ではピーク強度比(F1S/C1S)を0.15、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜27ではピーク強度比(F1S/C1S)を0.5、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜29ではピーク強度比(F1S/C1S)を1.5とした。
【0072】
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜23、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29の成膜条件は実施例1と同様とした。
<比較例1>
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25を形成する。
【0073】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25ではピーク強度比(F1S/C1S)を3とした。
【0074】
なお、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25の成膜条件は実施例1と同様とした。
<比較例2>
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25を形成する。
【0075】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25ではピーク強度比(F1S/C1S)を4とした。
【0076】
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜23、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25の成膜条件は実施例1と同様とした。
【0077】
実施例1〜4および比較例1、2の成膜状態を下記表1に示す。
【0078】
【表1】
評価方法
上記各実施例のインクジェット記録ヘッドを用いて撥水性、密着性および耐摩耗性の評価を行った。また、各評価には下記インクAを用いて測定を行った。評価は一般環境下(温度23±0.5℃、湿度55±5%R.H)にて行った。
実施例1〜4の撥水膜60及び比較例1、2の撥水膜をノズルプレートに成膜したときの、ノズルプレートの撥水性を評価した。
【0079】
前述撥水膜60の接触角を同膜上の5箇所で測定し、その平均値で評価を行った。評価基準は以下の通りである。
【0080】
○ : 60°以上
△ : 50°以上60°未満
× : 50°未満
実施例1〜4の撥水膜60及び比較例1、2の撥水膜をノズルプレートに成膜したときの、ノズルプレート22への撥水膜60の密着性を評価した。
【0081】
膜密着性は、テープ剥離試験(JISK5400−1990)の基盤目法を用いて評価した。評価基準は以下の通りである。
【0082】
◎ : 9〜10点
○ : 7〜8点
△ : 5〜6点
× : 5点未満
実施例1〜4の撥水膜60及び比較例1、2の撥水膜をノズルプレートに成膜したときの、撥水膜60の耐摩耗性を評価した。
【0083】
前述撥水膜60を10000回ワイピングし、その後の接触角を測定し、評価を行った。評価基準は以下の通りである。ワイピングは撥水膜60をインクに浸漬しながらポリウレタンブレードで擦ることにより行った。
ワイピング圧力 : 150gf
◎ : 65°以上
○ : 60°以上65°未満
△ : 50°以上60°未満
× : 50°未満
評価結果を次表に示す。
【0084】
なお、このインクにおける表面張力は30mN/mであった。
【0085】
【表2】
この評価結果から分かるように、ノズルプレート22の表面の撥水膜60として、先にダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成することによって、撥水性、密着性、耐摩耗性ともに向上する撥水膜60を得ることができる。
【0086】
また、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29のフッ素の含有の割合を変化させ、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいてF1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度の比(F1S/C1S )が、それぞれ0.05〜0.15、0.2〜0.5、1.0〜1.5とした時に、特に密着性、耐摩耗性に優れた撥水膜が得られる。
【0087】
【発明の効果】
本発明は上記構成にしたので、密着性、撥水性及び耐摩耗性に優れた撥水膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドを搭載するインクジェットプリンタを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドを示す側面の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るノズルプレートに撥水膜を形成する工程を示す側面の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る撥水膜を形成するプラズマCVD装置を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの製造工程を示す側面の断面図である。
【図6】炭化水素化合物ガスとフッ素化炭素化合物ガスの導入量比と、その流量比の元に形成された炭素膜のFT−IR分光分析によるスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
10 インクジェットプリンタ
12 インクジェット記録ヘッド
22 ノズルプレート
23 ダイヤモンドライクカーボン膜 (撥水膜)
25 フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜(撥水膜)
27 フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜(撥水膜)
29 フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜(撥水膜)
36 ノズル(吐出口)
60 撥水膜
【発明の属する技術分野】
本発明は、被印字面にインク滴を吐出して印字を行うインクジェット記録ヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術】
ノズル、スリットあるいは多孔質フィルム等から液体あるいは溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等の被印刷物に記録を行う、いわゆるインクジェット方式の記録装置は、小型で安価、静寂性等種々の利点がある。これらの理由から、最近ではレポート用紙、コピー用紙等に記録するインクジェット記録装置が数多く市販されており、記録装置の分野で大きな位置を占めるようになった。
【0003】
中でも、圧電素子を用いて圧力室内の圧力を変化させてインク滴を吐出するピエゾインクジェット方式や、熱エネルギーの作用でインクを膨張させインク滴を吐出する熱インクジェット方式の記録装置は、高速印字、高解像度が得られる等、多くの利点を有している。
【0004】
これらのインクジェット方式の記録装置において、インクジェット記録ヘッドでは、ノズルからインク滴を吐出した際、インク滴がノズル周囲に付着したり、また、ノズルからインクが盛り上がるオーバーシュート現象によるインク漏れが生じる。このため、インク吐出方向が傾いたり、インク滴径および速度がばらつくことがあり、これによって、インクジェット記録ヘッドの印字性能が著しく低下する場合がある。そこで、インク滴がノズル周囲に付着するのを防ぐため、ノズル表面に撥水膜を施すことが行われている。
【0005】
その一つとして、撥水性に優れたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜を、ノズルプレート(例えば、ステンレス板)の表面に形成することが行われている(特許文献1)。しかし、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜はノズルプレートとの密着性が弱いという欠点を有しており、ノズルプレートの表面から剥離しやすい。
【0006】
そこで、ノズルプレートの表面に密着性が良好なダイヤモンドライクカーボン膜を形成し、その膜面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜を形成する方法が開示されている(特許文献2)。しかし、ノズルプレートの吐出口の目詰まりを防止する目的でノズルプレートの吐出口周辺をブレードでワイピングした場合に、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜中の炭素とフッ素間の結合が弱いことによって、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜のフッ素が剥離して撥水性が損なわれてしまう。
【0007】
【特許文献1】
特開平10−296973号公報(第4−7項、第1図)
【特許文献2】
特許第2983679号(第25項、第1図)
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は上記事実を考慮し、密着性、撥水性及び耐摩耗性に優れたインクジェット記録ヘッドを提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の本発明のインクジェット記録ヘッドは、インクを吐出する吐出口が形成されたノズルプレートと、前記ノズルプレートの表面に形成された撥水膜と、を備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、前記撥水膜は、前記ノズルプレート表面に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜の表面に形成されたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜で構成され、前記フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、前記ダイヤモンドライクカーボン膜側からフッ素含有の割合が段階的に増加していることを特徴としている。
【0010】
請求項1に記載の発明によれば、吐出口が形成されたノズルプレートの表面には、ダイヤモンドライクカーボン膜が形成され、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面にはフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜が形成されている。
【0011】
ダイヤモンドライクカーボン膜は密着性に優れており、ノズルプレートの表面に密着し易く、且つ、後から形成するフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜との密着性も高い。
【0012】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、撥水性に非常に優れており、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜を形成することによって、吐出口から安定してインクが吐出される。また、このときフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、耐摩耗性に優れるので、ブレードのワイピングによる摩耗を防ぐことができる。
【0013】
さらに、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜のフッ素含有の割合は、ダイヤモンドライクカーボン膜の表面側から段階的に増加している。このため、ダイヤモンドライクカーボン膜側はフッ素の含有量が少ないので、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜がダイヤモンドライクカーボン膜に密着しやすくなる。また、表面のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜はフッ素の含有量が多いので、含有されているフッ素が多少剥離しても、撥水性が維持できる。
【0014】
請求項2に記載の本発明のインクジェット記録ヘッドは、前記フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、FT−IR分光分析によるスペクトルにおいて、C−F結合に由来する1000〜1300cm−1のピーク面積とC−H結合に由来する2800〜3100cm−1のピーク面積とがいずれも0でなく、且つ、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいて、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度との比(F1S/C1S)が0<(F1S/C1S)<3であることを特徴としている。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜のFT−IR分光分析によるスペクトルにおいて、C−F結合に由来する1000〜1300cm−1のピーク面積とC−H結合に由来する2800〜3100cm−1のピーク面積がいずれも0でない、すなわち、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜には必ずC−F結合とC−H結合が存在するため、撥水性が保証される。また、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいて、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度との比の(F1S/C1S)が3以上のとき、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜中に存在するC−F結合の割合が多すぎるために、膜全体の硬度が低下して耐摩耗性が低下する。このため、0<(F1S/C1S)<3としたときに、耐摩耗性に優れるフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜が得られる。
【0016】
請求項3に記載の本発明のインクジェット記録ヘッドは、前記フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、C−F結合の割合が異なる3層からなり、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいて、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度の比(F1S/C1S)がノズルプレート側からそれぞれ0.05〜0.15、0.2〜0.5、1.0〜1.5であることを特徴としている。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、このように、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度の比(F1S/C1S)をノズルプレート側から段階的に強くすることで、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜の密着性が良く、撥水性、耐摩耗性及び耐擦過性に優れた撥水膜が形成される。
【0018】
請求項4に記載の本発明のインクジェット記録ヘッドは、前記ノズルプレートの表面をガスプラズマに曝し、その後から前記ダイヤモンドライクカーボン膜を形成することを特徴としている。
【0019】
請求項4に記載の発明によれば、ダイヤモンドライクカーボン膜の形成前に、前処理としてノズルプレートの撥水膜形成面を前処理用のガスプラズマに曝すことによって、ダイヤモンドライクカーボン膜の密着性が高まる。
【0020】
【発明の実施の形態】
図1には、本発明の実施の形態に係るインクジェット記録ヘッド12が搭載されたインクジェットプリンタ10が示されている。
【0021】
インクジェット記録ヘッド12は、ノズル36(図2参照)が形成されたノズルプレート22が、記録用紙Pと対向するようにキャリッジ14上に搭載されている。このキャリッジ14は、主走査機構16によって主走査方向(矢印Aで示す)に移動される。これにより、インクジェット記録ヘッド12は、副走査機構18によって副走査方向(矢印Bで示す)へ搬送される記録用紙Pへ、画像情報に応じてインク滴を吐出することにより、記録用紙Pの全面に画像の記録を行う。
(インクジェット記録ヘッドの概略説明)
図2に示すように、インクジェット記録ヘッド12は、ノズルプレート22、連通孔プレート24、26、供給路プレート28、30、圧力発生室プレート32、および振動板34の合計7枚のプレートを位置合わせして積層し、接着剤等の接合手段によって接合することにより形成されている。
【0022】
ノズルプレート22には、インクを吐出するノズル36が設けられており、連通孔プレート24、26には、連通孔38、40がそれぞれ形成されている。また、供給路プレート28、30には供給孔42、44が形成されている。これらのノズル36、連通孔38、40、供給孔42、44は連通孔プレート24、26、供給路プレート28、30が積層された状態で連通し、圧力発生室プレート32に形成された圧力発生室48に繋がっている。
【0023】
一方、連通孔プレート24、26には、それぞれインクプール51、52が形成され、図示しないインク供給孔から供給されたインクが貯留されている。また、供給路プレート28には、このインクプール52と連結するように供給孔54が形成されている。さらに、供給路プレート30には供給溝56が形成されて、連通孔プレート24、26、供給路プレート28、30が積層された状態で、インクプール51、52と圧力発生室48とを連通させている。
【0024】
圧力発生室プレート32上には振動板34が積層され、振動板34の上には圧力発生手段としての単板型の圧電素子58が取り付けられている。圧電素子58は、圧力発生室48に相当する領域に接着されており、ハンダ68を介してフレキシブル配線基板70と接続されている。この構成により、駆動電圧波形が圧電素子58に印加されると、圧電素子58と共に振動板34がたわみ変形して圧力発生室48のインクを加圧し、ノズル36からインク滴を吐出させる。
【0025】
また、ノズルプレート22のインクが吐出される側の面(表面)には撥水膜60が形成されており、この撥水膜60によってノズル36周囲のインク漏れ等が防止でき、ノズル36から吐出するインク滴が常にノズルプレート22に対して垂直に吐出されるようになる。
(インクジェット記録ヘッドの製造方法)
以上が、本発明の第1の実施形態に係るインクジェット記録ヘッド12の構成であり、次に、このインクジェット記録ヘッドの製造方法について説明する。
【0026】
ノズルプレート22の一方の面(表面)にプラズマ処理を施す。ノズルプレート22には、シリコンウエハー、ステンレス板、合成樹脂等が使用される。本実施形態においては、機械的強度、耐薬品性、薄膜化に優れている合成樹脂の熱硬化性のポリアミドイミドまたはポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルケトン等が使用される。
【0027】
ノズルプレート22に合成樹脂を用いる場合、前処理としてノズルプレート22の表面をプラズマガスに曝すことが行われる。この前処理を行うことで、ノズルプレート22と後述するダイヤモンドライクカーボン膜との密着性が高まる。
【0028】
プラズマ処理に使用されるガスとしては、例えば、フッ素(F)含有ガス、水素ガス(H2)および酸素ガス(O2)等が挙げられる。フッ素(F)含有ガスおよび水素ガス(H2)を用いると、ノズルプレート22の表面はフッ素終端または水素終端され、この後に形成するダイヤモンドライクカーボン膜23の炭素との結合が安定する。また、酸素ガス(O2)を用いてプラズマ処理を行うと、ノズルプレート22の表面の有機物等の汚れが効率よく除去できるので、後から形成するダイヤモンドライクカーボン膜23がノズルプレート22の表面に付着しやすくなる。
【0029】
なお、プラズマ処理は同種類または異なる種類のプラズマを用いて複数回行っても構わない。例えば、最初にノズルプレート22の表面を酸素ガス(O2)プラズマに曝してノズルプレート22の表面の汚れを除去した後、フッ素(F)含有ガスプラズマまたは水素ガス(H2)プラズマに曝すことによって、ノズルプレート22の表面に形成するダイヤモンドライクカーボン膜23の密着性が高まる。また、この前処理は、必ずしも行わなければならないものではない。
【0030】
次に、図3(A)、(B)に示すように、メタンガス(CH4)でプラズマ処理し、ノズルプレート22の表面にダイヤモンドライクカーボン膜23を形成する。ダイヤモンドライクカーボン膜23は、天然ダイヤモンドと同じ炭素のSP3結合とグラファイトと同じ炭素のSP2結合、それに水素との結合を含むアモルファス構造となっており、高硬度で摩擦係数が小さく、撥水性、耐摩耗性、化学的安定性に優れている等の特徴を有する。また、比較的低温で容易に形成できるプラズマCVD法等によって形成可能であることから、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成する際にノズルプレート22に熱的損傷を与えることがない。
【0031】
次に、図3(C)、(D)に示すように、メタンガス(CH4)と6フッ化2炭素ガス(C2F6)の混合ガスでプラズマ処理し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面に、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25を形成する。その上に、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜27を形成し、更にその上に、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜29を形成する。フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29は、この順でフッ素の含有の割合が段階的に増加している。なお、詳細は後述する。
【0032】
また、本実施形態においては、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜を3層積層したが、フッ素の含有の割合が表面側が多いものであれば、少なくとも2層積層すればよい。また、フッ素の含有の割合が表面に行くに従って段階的に増える、4層以上のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜を積層しても良い。
【0033】
ダイヤモンドライクカーボン膜23及びフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29は、各々の膜厚が0.05〜1μmの範囲とされ、0.1〜0.5μmで形成することが好ましい。0.05μmより膜厚が薄いときには密着性が弱くなり、1μmよりも大きいときには、ノズルヘッド全体の厚みが大きくなってしまい、インクの吐出に影響を及ぼしてしまう。
【0034】
ダイヤモンドライクカーボン膜23及びフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29の形成方法として、プラズマCVD法を使用した。このプラズマCVD法は、ノズルプレート22の前処理と、ダイヤモンドライクカーボン膜23およびフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29の形成とに使用されるので、同じ装置を用いて行うことができる。
【0035】
ここで、プラズマCVD法によってダイヤモンドライクカーボン膜23およびフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成する工程を説明する。
【0036】
図4に示すように、ダイヤモンドライクカーボン膜23は、プラズマCVD装置80を用いてノズルプレート22の表面に形成される。
【0037】
プラズマCVD装置80は成膜室82を有しており、成膜室82内には電極84と、この電極84に対向するようにして電極86が設けられている。電極86は接地されており、電極84にはマッチングボックス91を介して高周波電源92が接続されている。また、電極84には、電極84上に設置された被成膜物を加熱するためのヒーター85が付設されている。
【0038】
まず、電極84に、被成膜物であるノズルプレート22を、被成膜面22Aを電極86側に向けて設置する。成膜室82には、圧力調整弁87を介して排気ポンプ88が接続されており、この排気ポンプ88を運転させて成膜室82の内部を所定の圧力(成膜圧力)まで減圧する。
【0039】
一方、成膜室82の外にはガス供給部90が設置されており、ガス供給部90を介して成膜室82内に原料ガスが導入されるようになっている。ガス供給部90は、成膜室82にガスを送る供給パイプ101から分岐して設けられた弁93、94、マスフローコントローラ95、96及び成膜用のガスボンベ97(例えば、メタン(CH4))、ガスボンベ98(例えば、6フッ化2炭素(C2F6))とで構成されている。
【0040】
マッチングボックス91を介して高周波電源92から電極84に高周波電力が導入されると、マスフローコントローラ95で投入量が調整されたメタン(CH4)が成膜室82へ導入され、メタンガスのプラズマ化が行われる。これによって、ノズルプレート22の表面にダイヤモンドライクカーボン膜23が形成される。
【0041】
また、マスフローコントローラ95、96で投入量が調整されたメタン(CH4)と6フッ化2炭素(C2F6)が成膜室82へ導入され、メタン(CH4)ガスと6フッ化2炭素(C2F6)ガスのプラズマ化が行われる。これによって、ノズルプレート22の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29が順次形成される。
【0042】
なお、先に説明したノズルプレート22の表面にフッ素含有ガスプラズマまたは水素ガスプラズマを曝す、前処理の工程においても、ガスボンベ97、98をフッ素含有ガス、水素ガスのガスボンベと交換して、同様にして成膜室82にフッ素含有ガスまたは水素ガスを導入すればよい。
【0043】
原料ガスには、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成するものとして、炭化水素化合物等のガスが、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成するものとして、フッ素化炭化水素化合物等が挙げられる。
【0044】
炭化水素化合物としては、メタン(CH4)、エタン(C2H6)、プロパン(C3H8)、ブタン(C4H10)等のアルカン、シクロプロパン(C3H8)、シクロブタン(C4H8)等のシクロアルカン、エチレン(C2H4)、プロペン(C3H6)、ブテン(C4H8)等のアルケン、アセチレン(C2H4)等のアルキン等が挙げられる。また、フッ素化炭化水素化合物としては、例えば、4フッ素化炭素(CF4)、6フッ素化2炭素(C2F6)、8フッ素化4炭素(C4F8)等が挙げられる。
【0045】
これらの炭化水素化合物およびフッ素化炭化水素化合は、単独で使用してもよく、二種類以上を混合して使用しても良い。
【0046】
さらに、上記ガスの他に、キャリアガスとして水素(H2)ガスや不活性ガスのヘリウム(He)、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)またはクリプトン(Kr)等のガスが使用されることもある。
【0047】
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜23およびフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29の形成方法として、プラズマCVD法以外にスパッタリング法、イオンプレーティング法等を用いることも可能である。
【0048】
成膜室82内へ導入する炭化水素化合物ガス及びフッ化炭素化合物ガスの割合を調整することによって、FT−IR分光分析によるスペクトルにおいて、C−F結合に由来する1000〜1300cm−1のピーク面積(IR・C−F)と、C−H結合に由来する2800〜3100cm−1のピーク面積(IR・C−H)とがいずれも0でなく、且つ、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいて、F1Sに由来するピーク強度と、C1Sに由来するピーク強度との比(F1S/C1S)が0<(F1S/C1S)<3となるフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成する。
【0049】
図6には、炭化水素化合物とフッ素化炭化水素化合物の混合割合を変化させて形成されたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜の、FT−IR分光分析によるスペクトルが示されている。グラフ中で、1000〜1300cm−1の範囲に現れるピークがC−F結合に由来し、2800〜3100cm−1の範囲に現れるピークがC−H結合に由来するスペクトルである。これらのスペクトルのピーク面積(IR・C−F)、(IR・C−H)がいずれも0でないとき、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜中にフッ素が存在することを表す。したがって、このフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は撥水性があることが言える。
【0050】
0<(F1S/C1S)とは、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜がC−F結合を有することを表している。また、3<(F1S/C1S)となるとき、C−F結合の割合が大きすぎる、すなわち、フッ素が多すぎるということを意味しており、膜全体の硬度が低下して耐摩耗性が低下する。したがって、0<(F1S/C1S)<3のとき、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は耐摩耗性に優れていると言える。
【0051】
本実施形態では、C−F結合の割合を変化させたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を、先に形成したダイヤモンドライクカーボン膜23の表面に形成する。フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29のピーク強度比(F1S/C1S)は、それぞれ0.05〜0.15、0.2〜0.5、1.0〜1.5となるように形成される。
【0052】
ダイヤモンドライクカーボン膜23、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成する過程において、これらは連続で形成することが好ましい。ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成して大気に開放してしまうと、形成したダイヤモンドライクカーボン膜23の表面が空気中の不純物ガスを吸着してしまい、次に形成するフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25との境界面に密着性を劣化させる層が形成され、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25が剥離しやすくなる。
【0053】
次に、上記のように製造したノズルプレート22の裏面側に連通孔プレート24を接合し、図5(A)に示すように、エキシマレーザLでノズルプレート22にノズル36を穿設する。また、ノズルプレート22に接合された連通孔プレート24に、連通孔プレート26、供給路プレート28、供給路プレート30、圧力発生室プレート32を接合し、図5(B)に示すように、圧力発生室プレート32の開口を覆うようにして振動板34を接合する。
【0054】
次に、図5(C)に示すように、マトリックス状に圧電素子58がサンドブレスト加工された固定基板78を上にして、圧電素子58を振動板34に接着する。固定基板78と圧電素子58は、所定の温度で加熱したとき、発泡して接着力が大幅に低下する性質を有する熱発泡性接着フィルムを用いて接着されている。また、圧電素子58の両面には電極層がスパッタリングなどで予め形成されており、共通電極として兼用する振動板34と導電性接着剤で接着することで、圧電素子58と振動板34とは電気的に接続される。
【0055】
次に、図5(D)に示すように、固定基板78を加熱して熱発泡性接着フィルムの接着力を低減させて固定基板78を剥離し、図5(E)に示すように、各圧電素子58毎にハンダ68を介してフレキシブル配線基板70を接合する。
【0056】
最後に、図示しないインク供給装置等を取付けることにより、本実施形態のインクジェット記録ヘッド12が完成する。
【0057】
次に、本発明の実施の形態の作用について説明する。
【0058】
図2に示すように、インクジェット記録ヘッド12には、インクプール50から圧力発生室48、供給孔44、42、連通孔40、38およびノズル36へと連続するインクの通路が形成されており、インク供給装置(図示省略)から送られてきたインクは、振動板34に形成されたインク供給孔(図示省略)を介してインクプール51、52に貯留され、インク供給孔54及び供給溝56を経て、圧力発生室48内に充填される。
【0059】
ここで、画像情報に応じた駆動電圧波形が圧電素子58に印加されると、圧電素子58は振動板34と共に変形して圧力発生室48を膨張または圧縮させる。これによって、圧力発生室48に体積変化が生じ、圧力発生室48内に圧力波が発生する。この圧力波の作用によってインクが運動し、インクがノズル36から外部へ吐出される。
【0060】
ノズル36が形成されたノズルプレート22の表面には、ダイヤモンドライクカーボン膜23が形成され、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面には段階的にフッ素の含有の割合を変化させたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29が形成されている。
【0061】
ダイヤモンドライクカーボン膜23は密着性に優れており、ノズルプレート22の表面に密着し易く、且つ、後から形成するフッ素化ダイヤモンドライクカーボン25との密着性も高い。したがって、ノズルプレート22の表面に、密着性の高いフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29が形成される。
【0062】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29は、撥水性に非常に優れており、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成することによって、ノズル26から安定してインクが吐出される。また、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29は耐摩耗性に優れるので、ブレードのワイピングによる摩耗を防ぐことができる。
【0063】
また、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29のフッ素の含有の割合はこの順で段階的に増加している。このため、ダイヤモンドライクカーボン膜23側のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン25はフッ素の含有量が少ないので、ダイヤモンドライクカーボン膜23に密着し易くなる。さらに、表面のフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜29はフッ素の含有量が多いので、含有されているフッ素が多少剥離しても撥水性が維持できる。
【0064】
なお、本発明では合成樹脂製のノズルプレート22を使用したが、ノズルプレート22は金属及び熱可塑性樹脂で形成されていてもよい。
【0065】
ここで、実施例として、図3(D)に示すように、インクジェット記録ヘッド12のノズルプレート22に撥水膜60を形成し、撥水膜の評価を行った。
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27を形成する。
【0066】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27は、原料ガスのメタン(CH4)と6フッ化2炭素(C2F6)の流量比を変化させることにより、膜中のC−F結合の割合、つまりX線光電子分光分析によるスペクトルおいて、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度との比(F1S/C1S)を、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25では0.9、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜27では1.3とした。
<実施例2>
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27を形成する。
【0067】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25ではピーク強度比(F1S/C1S)を0.3、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜27ではピーク強度比(F1S/C1S)を1.3とした。
【0068】
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜23、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27の成膜条件は実施例1と同様とした。
<実施例3>
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成する。
【0069】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25ではピーク強度比(F1S/C1S)を0.05、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜27ではピーク強度比(F1S/C1S)を0.2、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜29ではピーク強度比(F1S/C1S)を1.0とした。
【0070】
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜23、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29の成膜条件は実施例1と同様とした。
<実施例4>
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成する。
【0071】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25ではピーク強度比(F1S/C1S)を0.15、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜27ではピーク強度比(F1S/C1S)を0.5、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜29ではピーク強度比(F1S/C1S)を1.5とした。
【0072】
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜23、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29の成膜条件は実施例1と同様とした。
<比較例1>
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25を形成する。
【0073】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25ではピーク強度比(F1S/C1S)を3とした。
【0074】
なお、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25の成膜条件は実施例1と同様とした。
<比較例2>
ノズルプレート22の表面に、ダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25を形成する。
【0075】
フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25ではピーク強度比(F1S/C1S)を4とした。
【0076】
なお、ダイヤモンドライクカーボン膜23、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25の成膜条件は実施例1と同様とした。
【0077】
実施例1〜4および比較例1、2の成膜状態を下記表1に示す。
【0078】
【表1】
評価方法
上記各実施例のインクジェット記録ヘッドを用いて撥水性、密着性および耐摩耗性の評価を行った。また、各評価には下記インクAを用いて測定を行った。評価は一般環境下(温度23±0.5℃、湿度55±5%R.H)にて行った。
実施例1〜4の撥水膜60及び比較例1、2の撥水膜をノズルプレートに成膜したときの、ノズルプレートの撥水性を評価した。
【0079】
前述撥水膜60の接触角を同膜上の5箇所で測定し、その平均値で評価を行った。評価基準は以下の通りである。
【0080】
○ : 60°以上
△ : 50°以上60°未満
× : 50°未満
実施例1〜4の撥水膜60及び比較例1、2の撥水膜をノズルプレートに成膜したときの、ノズルプレート22への撥水膜60の密着性を評価した。
【0081】
膜密着性は、テープ剥離試験(JISK5400−1990)の基盤目法を用いて評価した。評価基準は以下の通りである。
【0082】
◎ : 9〜10点
○ : 7〜8点
△ : 5〜6点
× : 5点未満
実施例1〜4の撥水膜60及び比較例1、2の撥水膜をノズルプレートに成膜したときの、撥水膜60の耐摩耗性を評価した。
【0083】
前述撥水膜60を10000回ワイピングし、その後の接触角を測定し、評価を行った。評価基準は以下の通りである。ワイピングは撥水膜60をインクに浸漬しながらポリウレタンブレードで擦ることにより行った。
ワイピング圧力 : 150gf
◎ : 65°以上
○ : 60°以上65°未満
△ : 50°以上60°未満
× : 50°未満
評価結果を次表に示す。
【0084】
なお、このインクにおける表面張力は30mN/mであった。
【0085】
【表2】
この評価結果から分かるように、ノズルプレート22の表面の撥水膜60として、先にダイヤモンドライクカーボン膜23を形成し、ダイヤモンドライクカーボン膜23の表面にフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29を形成することによって、撥水性、密着性、耐摩耗性ともに向上する撥水膜60を得ることができる。
【0086】
また、フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜25、27、29のフッ素の含有の割合を変化させ、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいてF1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度の比(F1S/C1S )が、それぞれ0.05〜0.15、0.2〜0.5、1.0〜1.5とした時に、特に密着性、耐摩耗性に優れた撥水膜が得られる。
【0087】
【発明の効果】
本発明は上記構成にしたので、密着性、撥水性及び耐摩耗性に優れた撥水膜が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドを搭載するインクジェットプリンタを示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドを示す側面の断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るノズルプレートに撥水膜を形成する工程を示す側面の断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る撥水膜を形成するプラズマCVD装置を示す図である。
【図5】本発明の実施形態に係るインクジェット記録ヘッドの製造工程を示す側面の断面図である。
【図6】炭化水素化合物ガスとフッ素化炭素化合物ガスの導入量比と、その流量比の元に形成された炭素膜のFT−IR分光分析によるスペクトルを示す図である。
【符号の説明】
10 インクジェットプリンタ
12 インクジェット記録ヘッド
22 ノズルプレート
23 ダイヤモンドライクカーボン膜 (撥水膜)
25 フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜(撥水膜)
27 フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜(撥水膜)
29 フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜(撥水膜)
36 ノズル(吐出口)
60 撥水膜
Claims (4)
- インクを吐出する吐出口が形成されたノズルプレートと、前記ノズルプレートの表面に形成された撥水膜と、を備えたインクジェット記録ヘッドにおいて、
前記撥水膜は、前記ノズルプレート表面に形成されたダイヤモンドライクカーボン膜と、前記ダイヤモンドライクカーボン膜の表面に形成されたフッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜で構成され、
前記フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、前記ダイヤモンドライクカーボン膜側からフッ素含有の割合が段階的に増加していることを特徴とするインクジェット記録ヘッド。 - 前記フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、FT−IR分光分析によるスペクトルにおいて、C−F結合に由来する1000〜1300cm−1のピーク面積とC−H結合に由来する2800〜3100cm−1のピーク面積とがいずれも0でなく、且つ、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいて、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度との比(F1S/C1S)が0<(F1S/C1S)<3であることを特徴とする請求項1に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記フッ素化ダイヤモンドライクカーボン膜は、フッ素含有の割合が異なる3層からなり、X線光電子分光分析によるスペクトルにおいて、F1Sに由来するピーク強度とC1Sに由来するピーク強度の比(F1S/C1S)がノズルプレート側からそれぞれ0.05〜0.15、0.2〜0.5、1.0〜1.5であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のインクジェット記録ヘッド。
- 前記ノズルプレートの表面をガスプラズマに曝し、その後から前記ダイヤモンドライクカーボン膜を形成することを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれかに記載のインクジェット記録ヘッド。
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