JP2004091774A - ビニルアルコール系重合体およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】シリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られる、下記式(I)および(II)を満足し、かつ4%水溶液にした時のpHが4〜8であることを特徴とするビニルアルコール系重合体。
20<P×S<370 ・・・(I)
P:ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
S:シリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100 ・・・(II)
A:ビニルアルコール系重合体を灰化した後、ICP発光分析により求められるケイ素原子の含有量(ppm)
B:ビニルアルコール系重合体を水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄し、乾燥したのち灰化し、ICP発光分析により求められるケイ素原子の含有量(ppm)
【選択図】 なし
Description
また、本発明は上記のビニルアルコール系重合体の製造方法に関する。さらに、本発明は上記のビニルアルコール系重合体を含有するコーティング剤、および該コーティング剤を基材に塗工してなるインクジェット記録材や感熱記録材などの塗工物に関する。
PVAの用途を拡大するためにPVAを変性する試みが種々なされており、その試みの1つとして、PVAへのケイ素(シリル基)の導入が挙げられる。シリル基含有PVAは、耐水性、ならびに無機物に対する反応性および接着性に特に優れている。シリル基含有PVAの製造法として、例えば、有機溶媒にトリエチルクロルシラン等のシリル化剤を溶解させた後、粉末状のPVAを添加し、攪拌下に反応させるという方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法は、均一な変性物を得るのが困難である、PVAの製造とは別にPVAをシリル化剤と反応させる必要がある等の欠点を有しており、工業的な観点から実施しうる方法であるとは言い難い。
しかしながら、これらの方法で得られたシリル基含有PVAは、(a)シリル基含有PVAの水溶液を調製する際に、水酸化ナトリウムなどのアルカリまたは酸を添加しなければ、シリル基含有PVAを水に溶解させることができない場合がある、(b)シリル基含有PVAの水溶液の粘度安定性が十分ではない、(c)シリル基含有PVAの水溶液から得られる皮膜の耐水性が十分ではない、(d)シリル基含有PVAと無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、シリル基含有PVAと無機物との間のバインダー力、および該皮膜の耐水性の両方を同時に満足させることが困難である、などの問題を有している。
イオン性親水基を導入したシリル基含有PVAが提案されており(特許文献6)、さらにシラノール基を側鎖に有するPVAが無機物と強い相互作用を有するとの報告がなされている(非特許文献1)が、このような変性PVAによっても、上記した(a)〜(d)の問題が解決されたとは言い難い。
また、本発明は上記のビニルアルコール系重合体の製造方法、上記のビニルアルコール系重合体を含有するコーティング剤、および該コーティング剤を基材に塗工してなるインクジェット記録材や感熱記録材などの塗工物を提供することを目的とする。
で示されるシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体であって、下記式(I)および(II)を満足し、かつその4%水溶液のpHが4〜8であることを特徴とするビニルアルコール系重合体である。
20<P×S<370 ・・・(I)
P:ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
S:一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100 ・・・(II)
A:ビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
B:水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄したビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
ここで、AおよびBは、それぞれ測定試料を灰化した後、ICP発光分析法により測定される。
で示されるシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体であって、下記式(I)および(II)を満足し、かつその4%水溶液のpHが4〜8であることが必要である。
20<P×S<370 ・・・(I)
P:ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
S:一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100 ・・・(II)
A:ビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
B:水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄したビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
ここで、AおよびBは、それぞれ測定試料を灰化した後、ICP発光分析法により測定される。
P=([η]×1000/8.29)(1/0.62)
0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100
の関係式を満足する必要がある。
(A−B)/(B)のさらに好ましい範囲は0.3/100〜25/100であり、特に好ましい範囲は0.4/100〜20/100である。(A−B)/(B)が50/100を超えると、シリル基含有PVAの水溶液の粘度安定性が悪化し、好ましくない。また、(A−B)/(B)が0.1/100に満たない場合には、シリル基含有PVAと無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、その皮膜の耐水性およびシリル基含有PVAの無機物とのバインダー力が低下する。さらに(A−B)/(B)が0.1/100に満たないビニルアルコール系重合体は、その製造の際の洗浄にコストがかかるため現実的ではない。
ここで、上記ケイ素原子の含有量(B)を求めるにあたり、ビニルアルコール系重合体の標準的な洗浄方法は、まず、水酸化ナトリウムを含有するメタノールによる洗浄操作(ビニルアルコール系重合体1重量部に対して、ビニルアルコール系重合体のビニルアルコール単量体単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを含有するメタノール溶液を10重量部添加し、得られた混合物を1時間煮沸した後、重合体をろ別する操作)を5回繰り返し、次いで、メタノールによるソックスレー抽出を1週間行う方法である。上記洗浄方法において、水酸化ナトリウムを含有するメタノールによる洗浄操作およびメタノールによるソックスレー抽出は、ビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量がほぼ変化しなくなるまで行われるものであり、この条件が満たされる範囲において、水酸化ナトリウムを含有するメタノールによる洗浄操作回数およびメタノールによるソックスレー抽出期間は適宜増減してもよい。
ケイ素原子の含有量(B)を求めるに当たり、ビニルアルコール系重合体は水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄され、その際にシロキサン結合(−Si−O−Si−)が切断される。このとき、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接組み込まれておらず、シロキサン結合を介してビニルアルコール系重合体の主鎖と結合していたシリル基含有単量体は、ビニルアルコール系重合体から切り離され、重合体中から取り除かれる。そのため、ケイ素原子の含有量(B)は、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接組み込まれていないシリル基含有単量体が取り除かれた状態でのケイ素原子の含有量を示していると考えられる。したがって、上記の関係式
0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100
における(A−B)は、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接導入されていないシリル基を有する単量体単位に由来するシリル基の含有量を示していると考えられる。
(A−B)/(B)の値が大き過ぎると、余剰のシリル基を含有する単量体単位と、主鎖に組み込まれたシリル基含有単量体単位との間でシロキサン結合(−Si−O−Si−)が多数形成されるために、ビニルアルコール系重合体の分子の運動性が制限されて、ビニルアルコール系重合体の水溶液の粘度安定性が低下したり、また、ビニルアルコール系重合体と無機物との相互作用が大きくなり過ぎて、ビニルアルコール系重合体と無機物との混合水溶液を調製する際に均一な溶液を得ることができなくなったりする場合があると考えられる。
200<P<3790×(0.2Y−1.40+2.87/Y) ・・・(III)
1.4≦Y≦3.0 ・・・(IV)
P:ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
Y:ビニルアルコール系重合体中の1,2−グリコール結合量(モル%)
ここでビニルアルコール系重合体のプロトンNMR測定に際しては、該重合体をけん化度99.9モル%以上に再けん化した後、メタノールにより十分に洗浄する。次いで該重合体を90℃で2日間減圧乾燥した後、DMSO−d6に溶解し、トリフルオロ酢酸を数滴加えて、80℃でそのプロトンNMRを測定する。ビニルアルコール系重合体に含まれる1,2−グリコール結合含有量は、ビニルアルコール単位のメチンに由来する3.2〜4.0ppmのピーク(積分値α)と、1,2−グリコール結合の1つのメチンに由来する3.25ppmのピーク(積分値β)とから、次式にしたがって算出することができる。
1,2−グリコール結合含有量(モル%)=100×β/α
ここで、R1で表される炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基などが挙げられる。R2で表されるアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基、オクチロキシ基、ラウリロキシ基、オレイロキシ基などが挙げられ、また、アシロキシル基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシル基またはアシロキシル基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、その置換基の例として、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基を挙げることができる。
または下記の一般式(3)
で示される化合物を挙げることができる。
上記式(2)においてnが1以上のシリル基を有する単量体とビニルエステル単量体を共重合させる場合には、得られるビニルエステル系重合体の重合度が低下する傾向がある。その点、ビニルトリメトキシシランは、ビニルエステル単量体と共重合させた場合に、得られるビニルエステル系重合体の重合度の低下を抑えることができるうえ、工業的な製造が容易で安価に入手できることから好ましく用いることができる。
これらの単量体の中でも、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシランおよび3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシランは、工業的な製造が比較的容易で安価に入手できることから好ましく用いることができ、また2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシランおよび2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリアセトキシシランはアミド結合が酸またはアルカリに対して著しく安定であることから、好ましく用いることができる。
けん化反応に用いることができる溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましく用いられ、その使用にあたり、メタノールの含水率が好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは0.003〜0.9重量%、特に好ましくは0.005〜0.8重量%に調整されているのがよい。
けん化反応は、好ましくは5〜80℃、より好ましくは20〜70℃の温度で行われる。けん化反応に必要とされる時間は、好ましくは5分間〜10時間、より好ましくは10分間〜5時間である。けん化反応は、バッチ法および連続法のいずれの方式にても実施可能である。けん化反応の終了後に、必要に応じて、残存するけん化触媒を中和しても良く、使用可能な中和剤として、酢酸、乳酸などの有機酸、および酢酸メチルなどのエステル化合物などを挙げることができる。
使用可能な洗浄液としては、メタノールなどの低級アルコール、酢酸メチルなどの低級脂肪酸エステル、およびそれらの混合物などを挙げることができ、これらの洗浄液には、少量の水、またはアルカリもしくは酸が添加されていても良い。
オーバーコート層の塗工量は、感熱記録装置のサーマルヘッドから感熱記録材の感熱発色層への熱伝導が阻害されない程度で適宜選択されるが、通常1〜10g/m2、好ましくは2〜7g/m2である。
また、本発明のビニルアルコール系重合体をアセトアルデヒドやブチルアルデヒド等のアルデヒド化合物を用いてアセタール化して得られるビニルアセタール系重合体は、安全ガラス用中間膜、セラミックスバインダー、インク分散剤、感光性材料等の用途に有用である。
下記の方法によりPVAを製造し、そのけん化度、シリル基を有する単量体単位の含有量、およびケイ素原子の含有量を求めた。
PVAのけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
けん化する前のビニルエステル系重合体をヘキサン−アセトンにより再沈精製して、重合体中から未反応のシリル基を有する単量体を完全に取り除き、次いで90℃減圧乾燥を2日間行った後、CDCl3溶媒に溶解したものを測定試料とし、500MHzのプロトンNMR測定装置(JEOL GX−500)によりPVAに含まれるシリル基を有する単量体単位の含有量を求めた。
PVAに含まれるケイ素原子の含有量は、前述した方法にしたがって、ジャーレルアッシュ社製ICP発光分析装置IRIS APを用いて求めた。
攪拌機、温度センサー、滴下漏斗および還流冷却管を備え付けた6Lセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2450部、メタノール315部、ビニルトリメトキシシランを1重量%含有するメタノール溶液735部を仕込み、攪拌下に系内を窒素置換した後、内温を60℃まで上げた。この系に2,2’−アゾビスイソブチロニトリルを0.8部含有するメタノール20部を添加し、重合反応を開始した。重合開始時点よりビニルトリメトキシシランを1重量%含有するメタノール55部を系内に添加しながら4時間重合反応を行い、その時点で重合反応を停止した。重合反応を停止した時点における系内の固形分濃度は34.6%であった。次いで、系内にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニル単量体を追い出し、ビニルエステル系重合体を40%含有するメタノール溶液を得た。
このビニルエステル系重合体を40%含有するメタノール溶液に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.02、ビニルエステル系重合体の固形分濃度が30重量%となるように、メタノール、および水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。
けん化反応の進行に伴ってゲル化物が生成した直後にこれを反応系から取り出して粉砕し、次いで、この粉砕物に対して、けん化反応の開始から1時間が経過した時点で酢酸メチルを添加することで中和し、メタノールで膨潤したPVAを得た。このメタノールで膨潤したPVAに対して重量基準で6倍量(浴比6倍)のメタノールを加え、還流下に1時間洗浄し、次いで65℃で16時間乾燥してPVAを得た。
得られたPVAにおけるビニルトリメチルシラン単位の含有量は0.20モル%、1,2−グリコール結合量は1.56モル%、けん化度は98.5モル%、重合度は1700であった。また、上記したPVAに含まれるケイ素原子含有量の分析方法に従って求められた(A−B)/(B)の値は10.9/100であり、4%PVA水溶液のpHは6.0であった。
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、シリル基を有する単量体の種類およびその仕込み量、共重合成分の使用の有無、重合開始剤の種類およびその使用量、重合反応の条件、けん化反応の条件等を表1に示すように変化させた以外はPVA1と同様の方法により各種のPVA(PVA2〜12)を合成した。但し、重合温度が重合系の沸点を超える場合には、攪拌機、温度センサーおよびフィードポンプを備え付けた5Lオートクレーブを反応槽として使用した。得られたPVAについて分析した結果を表2に示す。
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA1と同様の方法によりPVA13を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表2に示す。
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA3と同様の方法によりPVA14を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表2に示す。
メタノールによる洗浄の操作を省略した以外はPVA1と同様の方法によりPVA15を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
けん化反応で得られたPVAを酢酸メチルで中和する前に、メタノールを用いたソックスレー抽出による洗浄の操作を加えた以外はPVA1と同様の方法によりPVA16を合成した。得られたPVAの分析値を表4に示す。
酢酸メチルの代わりに、けん化反応に用いた水酸化ナトリウムの5倍のモル数の酢酸を用いて中和を行い、さらにメタノールによる洗浄(浴比6倍)を室温で1時間行った以外はPVA1と同様の方法によりPVA17を合成した。得られたPVAの分析値を表4に示す。
酢酸メチルによる中和を行わず、さらにメタノールによる洗浄(浴比6倍)を室温で1時間実施した以外はPVA1と同様の方法によりPVA18を合成した。得られたPVAの分析値を表4に示す。
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、シリル基を有する単量体の使用の有無およびその仕込み量、共重合成分の使用の有無、重合開始剤の使用量、重合反応の条件等を表3に示すように変化させた以外はPVA1と同様の方法により、各種のPVA(PVA19〜23)を合成した。得られたPVAの分析値を表4に示す。なお、PVA23は水に不溶であったため、1%水酸化ナトリウム水溶液に溶解して、重合度を測定した。
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA19と同様の方法によりPVA24を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA21と同様の方法によりPVA25を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA1〜PVA14について、下記の評価方法によりPVA水溶液の粘度安定性、無機物を含有する皮膜の耐水性、ならびにPVAと無機物とのバインダー力を評価した。その結果を表5に示す。
PVA15〜PVA25について、下記の評価方法によりPVA水溶液の粘度安定性、無機物を含有する皮膜の耐水性、ならびにPVAと無機物とのバインダー力を評価した。その結果を表5に示す。
8%のPVA水溶液を調製して10℃恒温槽中に放置し、該PVA水溶液の温度が10℃になった直後の粘度と7日後の粘度を測定した。PVA水溶液の温度が10℃になった直後の粘度で7日後の粘度を除した値(7日後/直後)を求め、以下の基準にしたがって判定した。
A:1.5倍未満。
B:1.5倍以上2.5倍未満。
C:2.5倍以上4.0倍未満。
D:4.0倍以上であるが、PVAはゲル化していない。
E:PVAは流動性を失いゲル化している。
4%のPVA水溶液を調製し、これにPVA/コロイダルシリカの固形分基準の重量比が100/10となるように、コロイダルシリカ(日産化学工業製:スノーテックスST−O)の20%水分散液を加えた後、20℃で流延して厚み40μmの皮膜を得た。得られた皮膜を120℃で10分間熱処理した後、縦10cm、横10cmの大きさに切り出し、試験片を作製した。この試験片を20℃の蒸留水に24時間浸漬した後、取り出し(回収し)、表面に付着した水分をガーゼで拭き取り、水膨潤時の重量を測定した。水膨潤時の重量を測定した試験片を105℃で16時間乾燥した後、乾燥時の重量を測定した。ここで水膨潤時の重量を乾燥時の重量で除した値を求めてこれを膨潤度(倍)とし、以下の基準にしたがって判定した。
A:5.0倍未満。
B:5.0倍以上8.0倍未満。
C:8.0倍以上12.0倍未満。
D:12.0倍以上であるが、蒸留水に浸漬後の試験片を回収できる。
E:蒸留水に浸漬した試験片を回収することができない。
シリカ(水沢化学工業製:ミズカシルP78D)およびシリカの重量に対し0.2%の分散剤(東亞合成化学工業製:アロンT40)をホモジナイザーにて水に分散し、シリカの20%水分散液を調製した。このシリカ水分散液に、シリカ/PVAの固形分基準の重量比が100/30となるように、10%に調整したPVA水溶液を添加し、必要量の水を添加することで濃度15%のシリカ分散PVA水溶液を得た。
得られたシリカ分散PVA水溶液を、ワイヤーバーを用いて、上質紙の表面に60g/m2の坪量で塗布した。その後、上質紙を熱風乾燥機を用い100℃で3分間乾燥して、評価用試料を得た。乾燥後の上質紙(評価用試料)における塗布量は11g/m2であった。
評価用試料について、IGT印刷適性試験機を用い、印圧50kg/cm2にて測定を行い、評価用試料の表面の紙むけが起こった時点の印刷速度(cm/sec)を以って表面強度とし、以下の基準にしたがってバインダー力を評価した。なお、IGT印刷適性試験機を用いて測定を行うにあたり、IGTピックオイルM(大日本インキ化学工業製)を用い、スプリング駆動Bの機構を採用した。
A:260cm/sec以上。
B:220cm/sec以上260cm/sec未満。
C:180cm/sec以上220cm/sec未満。
D:140cm/sec以上180cm/sec未満。
E:140cm/sec未満。
また、本発明に相当するビニルアルコール系重合体は、無機物を含有する皮膜の耐水性、および無機物とのバインダー力が優れていることから、インクジェット記録材におけるインク受理層のバインダーに好適であることが分かる。
さらに、4%水溶液のpHが4に満たないビニルアルコール系重合体は、水溶液の粘度安定性が低下し(比較例3)、4%水溶液のpHが8を超えるビニルアルコール系重合体は、無機物を含有する皮膜の耐水性、および無機物とのバインダー力が十分ではなかった(比較例4)。
また、P(ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度)×S(シリル基を有する単量体単位の含有量)が20以下のビニルアルコール系重合体は、無機物を含有する皮膜の耐水性、および無機物とのバインダー力が十分ではなく(比較例8)、P×Sが370以上のビニルアルコール系重合体は、水に完全に溶解しないことから、評価することができなかった(比較例9)。
シリル基含有単量体を全く含まないビニルアルコール系重合体の場合は、無機物を含有する皮膜の耐水性、および無機物とのバインダー力が十分ではなかった(比較例5〜7、10および11)。
下記の方法により、インクジェット記録紙を製造し、そのインク受理層の表面強度、ならびにインクジェットプリンターを用いて該記録紙に印刷を行ったときの印刷品質と耐水性を評価した。
PVA1の10%水溶液を調製した。また、シリカ(水沢化学工業製:ミズカシルP78D)をホモジナイザーにて水に分散し、シリカの20%水分散液を調製した。このシリカ水分散液に、シリカ/PVA/カチオンポリマーの固形分基準の重量比が100/30/3となるように、濃度10%のPVA1水溶液およびカチオンポリマー(昭和高分子製:ポリフィックス700)を添加し、必要量の水を添加して固形分濃度14%のインク受理層用塗工液を得た。
BL型粘度計を用いて30℃、30rpmの条件で測定した結果、調製直後の該塗工液の粘度は540mPa・sであった。30℃で1週間放置した後の該塗工液粘度は、調製直後の1.72倍であってほとんど変化しておらず、該塗工液の粘度安定性は良好であった。
原紙(坪量:60g/m2の上質紙)の表面に、上記で調製したインク受理層用の塗工液を、ワイヤバーコーターを用いて固形分換算で11g/m2の割合で塗工した後、100℃の熱風乾燥機で3分間乾燥してインクジェット記録紙を得た。
得られたインクジェット記録紙のインク受理層表面に粘着テープ(ニチバン製:セロテープ)を貼り、0.5kg/cm2の圧力を加えて圧着した後、25℃、60%RHで24時間放置した。その後、粘着テープを180度の角度で剥離して、粘着テープの粘着層表面に付着したインク受理層からの脱離物の多さを以下の基準にしたがって判定した。
A:インク受理層からの脱離物が粘着テープ表面に全く観察されない。
B:インク受理層からの脱離物が粘着テープ表面にごく僅かに観察された。
C:インク受理層からの脱離物が粘着テープ表面に部分的に観察された。
D:インク受理層からの脱離物が粘着テープ表面全体に観察された。
得られたインクジェット記録紙に、インクジェットプリンター(EPSON製:PM−970C)を用いてブラックインクのベタ印刷を行い、印刷品質を以下の基準にしたがって目視判定した。
A:印刷した領域全体で記録濃度が一様であり、良好な画像が得られた。
B:記録濃度の斑がごく僅かに観察されたが、画像に大きな影響はなかった。
C:記録濃度の斑が部分的に発生し、画像の品質が損なわれた。
D:記録濃度の斑が全体的に発生し、著しく画像の品質が損なわれた。
インクジェット記録紙に、インクジェットプリンター(EPSON製:PM−970C)を用いてブラックインクのベタ印刷を行った。該ベタ印刷の境界部分にシリンジを用いて水を1mL滴下し、24時間放置した後、印刷の滲みの程度を以下の基準にしたがって目視判定した。
A:滲みが全く観察されない。
B:滲みがごく僅かに観察された。
C:滲みが部分的に広がっていた。
D:滲みが水を滴下したところ全体に広がっていた。
実施例15において用いたシリル基を有するPVAに代えて、表6に示したシリル基を有するPVAを用いたこと以外は、実施例15と同様にしてインクジェット記録紙を製造し、そのインク受理層の表面強度、インクジェットプリンターを用いて該記録材に印刷を行ったときの印刷品質と耐水性を評価した。その結果を表6に併せて示す。
実施例15において用いたシリル基を有するPVAに代えて、表6に示したPVAを用いたこと以外は、実施例15と同様にしてインクジェット記録紙を製造し、そのインク受理層の表面強度、インクジェットプリンターを用いて該記録材に印刷を行ったときの印刷品質と耐水性を評価した。その結果を表6に併せて示す。
特に、インク受理層のバインダーに使用したビニルアルコール系重合体が前述の式(III)[200<P<3790×(0.2Y−1.40+2.87/Y)]および式(IV)[1.4≦Y≦3.0]を満足する場合には、各種物性のバランスがさらに優れたものとなる(実施例15〜24、27および28)。
さらに、4%水溶液のpHが4に満たないビニルアルコール系重合体をインク受理層のバインダーに用いた場合には、インク受理層用塗工液の粘度安定性が低下し(比較例14)、pHが8を超えるビニルアルコール系重合体をインク受理層のバインダーに用いた場合には、インク受理層の表面強度、および記録紙の耐水性が十分ではなかった(比較例15)。
また、P(ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度)×S(シリル基を有する単量体単位の含有量)が20以下のビニルアルコール系重合体をインク受理層のバインダーに用いた場合には、インク受理層の表面強度、および記録紙の耐水性が十分ではなく(比較例19)、P×Sが370以上のビニルアルコール系重合体をインク受理層のバインダーに用いた場合には、該ビニルアルコール系重合体が水に完全に溶解しないことから、インクジェット記録紙の評価をすることができなかった(比較例20)。
シリル基含有単量体を全く含まないビニルアルコール系重合体をインク受理層のバインダーに用いた場合には、インク受理層の表面強度、ならびに記録紙の印刷品質および耐水性が十分ではなかった(比較例16〜18、21および22)。
下記の方法により、感熱記録紙を製造し、その耐水性および耐可塑剤性を評価した。
(1)感熱染料、顕色剤および顔料の水性分散液の調製
[感熱染料の水性分散液Aの組成]
ロイコ染料(山田化学株式会社製:S−205) 20%
濃度10%のPVA(クラレ製:PVA203)水溶液 20%
水 59.9%
消泡剤(クラリアント社製:ジョルシンLD−B) 0.1%
[顕色剤の水性分散液Bの組成]
ビスフェノールA 20%
濃度10%のPVA(クラレ製:PVA203)水溶液 20%
水 59.9%
消泡剤(クラリアント社製:ジョルシンLD−B) 0.1%
[顔料の水性分散液Cの組成]
ステアリン酸アミド 10%
シリカ(水沢化学株式会社製:ミズカシルP−527) 20%
濃度5%のPVA(クラレ製:PVA205)水溶液 30%
水 40%
次に水性分散液Aをサンドグラインダー(関西ペイント株式会社製:バッチ式卓上サンドグラインダー)に移し、ガラスビーズ(直径0.5mmのソーダ石英ガラス)300mLを加え、高回転数(2170rpm)、冷却下の条件で、6時間かけて分散質を分散させた。レーザー回折式粒度測定機(島津株式会社製:SALD−1000)により測定した結果、得られた感熱染料の水性分散液Aの分散粒子径は0.46μmであった。また、色差計(日本電色工業株式会社製:Z−1001DP)により測定した結果、水性分散液Aの白色度は−8.1であった。なお、白色度は0が完全に白色であることを示し、マイナスの値が大きくなるほど着色していることを示す。
同様に、水性分散液Bをサンドグラインダーに移し、ガラスビーズ(直径0.5mmのソーダ石英ガラス)300mLを加え、高回転数(2170rpm)、冷却下の条件で、6時間かけて分散質を分散させた。
また、水性分散液Cをホモジナイザーに移し、回転数10000rpmの条件で2分間かけて分散質を分散させた。
上記の水性分散液Aを2部、水性分散液Bを4部、水性分散液Cを2部およびPVA3の10%水溶液を2部混合して攪拌した後、必要量の水を加えて固形分濃度21%の感熱発色層用の塗工液を調製した。
BL型粘度計を用いて30℃、30rpmの条件で測定した結果、調製直後の該塗工液の粘度は290mPa・sであった。30℃で1週間放置した後の該塗工液の粘度は、調製直後の粘度の1.07倍であってほとんど変化しておらず、該塗工液の粘度安定性は良好であった。
PVA1に対して、消泡剤(クラリアント社製:ジョルシンLD−B)を0.15%添加し、PVA1の12%水溶液を調製した。エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体(日本油脂株式会社製:プロノン104)0.2部、シリカ(水沢化学株式会社製:ミズカシルP−527)50部に水72.5部を加えて十分に分散させながら、上記PVA1の12%水溶液690部をゆっくり室温で加えた後、さらにステアリン酸亜鉛分散液(中京油脂株式会社製、ハイドリンZ730;固形分濃度30%)を7.5部加えて、PVA1のシリカ分散水溶液を作成した。
得られたPVA1のシリカ分散水溶液を攪拌しながら、このシリカ分散水溶液に乳酸チタンの10%水溶液30部をゆっくり室温で加え、必要量の水を加えて固形分濃度15%のオーバーコート層用塗工液を調製した。
BL型粘度計を用いて30℃、30rpmの条件で測定した結果、調製直後の該塗工液の粘度は620mPa・sであった。30℃で1週間放置した後の該塗工液の粘度は、調製直後の粘度の2.24倍であった。
原紙(坪量:52g/m2の上質紙)の表面に、上記(2)で調製した感熱発色層用の塗工液を、ワイヤバーコーターを用いて固形分換算で6g/m2塗工し、50℃で5分間乾燥した。得られた塗工紙をスーパーカレンダー(線圧:30kg/cm)にて表面処理し、その塗工紙表面に上記(3)で調製したオーバーコート層用塗工液を、ワイヤバーコーターを用いて固形分換算で3g/m2塗工した後、50℃で10分間乾燥した。さらに該塗工紙をスーパーカレンダー(線圧:30kg/cm)にて表面処理して感熱記録紙を製造した。
感熱記録紙を製造した直後に、感熱ファクシミリ用プリンター(リコー株式会社製:リファックス300)を用いて感熱記録紙に印字し、下記の方法にしたがってその耐水性および耐可塑剤性を評価した。その結果を表7に示す。
印字された感熱記録紙を20℃蒸留水中に24時間浸漬し、以下の方法によりその記録濃度およびウエットラブの評価を行った。
・記録濃度
蒸留水浸漬前および蒸留水浸漬後において、それぞれ印字部分の発色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、型式:RD−514)を用いて測定した。蒸留水浸漬前における印字部分の発色濃度に対し、蒸留水浸漬後における印字部分の発色濃度の低下が少ないほど感熱記録紙の耐水性が優秀であるとして、最も耐水性が優秀な場合を5、最も耐水性が劣る場合を1とする5段階評価を行った。
・ウエットラブ
蒸留水浸漬後において、印字された部分の表面を指先で摩擦し、指に付いてきた塗工物の量を観察した。指に付いてきた塗工物の量が少ないほど感熱記録紙の耐水性が優秀であるとして、最も耐水性が優秀な場合を5、最も耐水性が劣る場合を1とする5段階評価を行った。
印字された感熱記録紙に軟質ポリ塩化ビニルフィルムを重ね合わせ、20℃、300g/m2の荷重下で24時間両者を接触させた。その接触前後において、それぞれ印字部分の発色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、型式:RD−514)を用いて測定した。両者を接触させる前における印字部分の発色濃度に対し、接触後における印字部分の発色濃度の低下が少ないほど感熱記録紙の耐可塑剤性が優秀であるとして、最も耐可塑剤性が優秀な場合を5、最も耐可塑剤性が劣る場合を1とする5段階評価を行った。
実施例29において用いたシリル基を有するPVAに代えて、表7に示したシリル基を有するPVAを用いたこと以外は、実施例29と同様にして感熱記録紙を製造し、その耐水性および耐可塑剤性を評価した。その結果を表7に併せて示す。
(1)感熱染料、顕色剤および顔料の水性分散液の調製
[感熱染料の水性分散液Aの組成]
ロイコ染料(山田化学株式会社製:S−205) 20%
濃度10%のPVA(クラレ製:PVA203)水溶液 20%
水 59.9%
消泡剤(クラリアント社製:ジョルシンLD−B) 0.1%
[顕色剤の水性分散液Bの組成]
ビスフェノールA 20%
濃度10%のPVA(クラレ製:PVA203)水溶液 20%
水 59.9%
消泡剤(クラリアント社製:ジョルシンLD−B) 0.1%
[顔料の水性分散液Cの組成]
ステアリン酸アミド 10%
シリカ(水沢化学株式会社製:ミズカシルP−527) 20%
濃度5%のPVA(クラレ製:PVA205)水溶液 30%
水 40%
次に水性分散液Aをサンドグラインダー(関西ペイント株式会社製:バッチ式卓上サンドグラインダー)に移し、ガラスビーズ(直径0.5mmのソーダ石英ガラス)300mLを加え、高回転数(2170rpm)、冷却下の条件で、6時間かけて分散質を分散させた。レーザー回折式粒度測定機(島津株式会社製:SALD−1000)により測定した結果、得られた感熱染料の水性分散液Aの分散粒子径は0.46μmであった。また、色差計(日本電色工業株式会社製:Z−1001DP)により測定した結果、水性分散液Aの白色度は−8.1であった。
同様に、水性分散液Bをサンドグラインダーに移し、ガラスビーズ(直径0.5mmのソーダ石英ガラス)300mLを加え、高回転数(2170rpm)、冷却下の条件で、6時間かけて分散質を分散させた。
また、水性分散液Cをホモジナイザーに移し、回転数10000rpmの条件で2分間かけて分散質を分散させた。
上記の水性分散液Aを2部、水性分散液Bを4部、水性分散液Cを2部およびPVA3の10%水溶液を2部混合して攪拌した後、乳酸チタンの10%水溶液0.3部をゆっくり室温で加え、必要量の水を加えて固形分濃度21%の感熱発色層用の塗工液を調製した。
BL型粘度計を用いて30℃、30rpmの条件で測定した結果、調製直後の該塗工液の粘度は330mPa・sであった。30℃で1週間放置した後の該塗工液の粘度は、調製直後の粘度の2.17倍であった。
原紙(坪量:52g/m2の上質紙)の表面に、上記(2)で調製した感熱発色層用の塗工液を、ワイヤバーコーターを用いて固形分換算で6g/m2塗工し、50℃で5分間乾燥した。得られた塗工紙をスーパーカレンダー(線圧:30kg/cm)にて表面処理して感熱記録紙を製造した。実施例29と同様にして感熱記録紙の耐水性および耐可塑剤性を評価した。その結果を表7に併せて示す。
実施例46において用いたシリル基を有するPVAに代えて、表7に示したシリル基を有するPVAを用いたこと以外は、実施例46と同様にして感熱記録紙を製造し、その耐水性および耐可塑剤性を評価した。その結果を表7に併せて示す。
実施例29において用いたシリル基を有するPVAに代えて、表8に示したPVAを用いたこと以外は、実施例29と同様にして感熱記録紙を製造し、その耐水性および耐可塑剤性を評価した。その結果を表8に併せて示す。
実施例46において用いたシリル基を有するPVAに代えて、表8に示したPVAを用いたこと以外は、実施例46と同様にして感熱記録紙を製造し、その耐水性および耐可塑剤性を評価した。その結果を表8に併せて示す。
特に、オーバーコート層に用いたビニルアルコール系重合体が前述の式(III)[200<P<3790×(0.2Y−1.40+2.87/Y)]および式(IV)[1.4≦Y≦3.0]を満足する場合には、各種物性のバランスがさらに優れたものとなる。(実施例29〜38、41および42)
その中でも、(A−B)/(B)が50/100を超えるビニルアルコール系重合体をオーバーコート層に用いた場合には、オーバーコート層用塗工液を調製する際に均一な水溶液が得られなかった(比較例23)。(A−B)/(B)が0.1/100に満たないビニルアルコール系重合体をオーバーコート層に用いた場合には、感熱記録紙の耐水性が十分ではなかった(比較例24)。4%水溶液のpHが4に満たないビニルアルコール系重合体をオーバーコート層に用いた場合には、オーバーコート層用塗工液の粘度安定性が低下した(比較例25)。pHが8を超えるビニルアルコール系重合体をオーバーコート層用に用いた場合には、感熱記録紙の耐水性が十分ではなかった(比較例26)。
また、P(ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度)×S(シリル基を有する単量体単位の含有量)が20以下のビニルアルコール系重合体またはシリル基を持たないビニルアルコール系重合体を感熱発色層およびオーバーコート層に用いた場合には、感熱記録紙の耐水性が十分ではなかった(比較例27〜30、32および33)。P×Sが370以上のビニルアルコール系重合体をオーバーコート層に用いた場合には、該ビニルアルコール系重合体が水に完全に溶解しないことから、感熱記録紙の評価をすることができなかった(比較例31)。
さらに、本発明に相当するビニルアルコール系重合体を感熱発色層に使用せず、オーバーコート層が無い場合には、感熱記録紙の耐水性および耐可塑剤性が十分ではなかった(比較例34〜36)。
Claims (8)
- 下記の一般式(1)
で示されるシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体であって、下記式(I)および(II)を満足し、かつその4%水溶液のpHが4〜8であることを特徴とするビニルアルコール系重合体。
20<P×S<370 ・・・(I)
P:ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
S:一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100 ・・・(II)
A:ビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
B:水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄したビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量(単位:ppm)
ここで、AおよびBは、それぞれ測定試料を灰化した後、ICP発光分析法により測定される。 - ビニルアルコール系重合体が下記式(III)および(IV)を満足するものであることを特徴とする請求項1記載のビニルアルコール系重合体。
200<P<3790×(0.2Y−1.40+2.87/Y)・・・(III)
1.4≦Y≦3.0 ・・・(IV)
P:ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
Y:ビニルアルコール系重合体中の1,2−グリコール結合量(モル%) - シリル基を有する単量体が下記の一般式(2)
または下記の一般式(3)
で示される単量体であることを特徴とする請求項3記載のビニルアルコール系重合体の製造方法。 - 請求項1または2記載のビニルアルコール系重合体を含有することを特徴とするコーティング剤。
- 請求項5記載のコーティング剤を基材に塗工してなる塗工物。
- 請求項5記載のコーティング剤を基材に塗工してなるインクジェット記録材。
- 請求項5記載のコーティング剤を基材に塗工してなる感熱記録材。
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