JP2015174920A - コーティング剤及び塗工物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明は、ビニルアルコール系重合体(A)を含有するコーティング剤であって、上記ビニルアルコール系重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下であり、上記ビニルアルコール系重合体(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満であるコーティング剤である。当該コーティング剤は、架橋剤(C)をさらに含有することが好ましい。
【選択図】なし
Description
当該コーティング剤は、ビニルアルコール単位(−CH2−CHOH−)を含むビニルアルコール系重合体(A)(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある。)を含有する。また、当該コーティング剤は架橋剤(C)をさらに含有することが好ましく、これらの成分を溶解または分散させる媒体が水であることも好ましい。加えて、当該コーティング剤は本発明の効果を妨げない範囲で、填料等の他の成分を含有してもよい。また、当該コーティング剤を用いることで、強度に優れる塗工物を得ることができる。さらに、この塗工物は高い耐油性、耐水性及び印刷適性を有する。
PVA(A)は、数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下である。当該割合の下限としては、3.2が好ましく、3.4がより好ましく、3.6がさらに好ましく、また、当該割合の上限としては、6が好ましく、5がより好ましい。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
S(モル%)={(βのプロトン数/3)/(αのプロトン数+(βのプロトン数/3))}×100
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
当該コーティング剤は架橋剤(C)をさらに含有することが好ましい。このように、当該コーティング剤が架橋剤(C)をさらに含有することで、PVA(A)等が架橋され、当該コーティング剤から形成される皮膜の強度、耐油性及び耐水性がより向上する。
当該コーティング剤が含有してもよいその他の成分としては、例えば填料、分散剤、水溶性高分子、合成樹脂エマルジョン、可塑剤、pH調節剤、消泡剤、離型剤、界面活性剤等の添加剤が挙げられる。
当該コーティング剤の製造方法としては、特に限定されないが、例えばPVA(A)を製造する工程及びPVA(A)に架橋剤(C)等の任意成分を混合する工程を備える。
上記PVA(A)を製造する工程としては、例えばビニルエステル系単量体を含む単量体を重合する工程(以下、「重合工程」ともいう)、この重合工程により得られたビニルエステル系重合体をけん化する工程(以下、「けん化工程」ともいう)とを備える。また、ビニルエステル系重合体又はけん化後のPVAを加熱する工程(以下、「加熱工程」ともいう)をさらに備えることが好ましい。
本工程では、ビニルエステル系単量体を含む単量体の重合を行い、ビニルエステル系重合体を合成する。ビニルエステル系単量体を含む単量体としては、ビニルエステル系単量体のみを含むものであっても、上記したように、ビニルエステル系単量体と、単量体(a)及び/又は上記他の単量体とを含むものであってもどちらでもよい。
重合開始剤の使用量は、重合触媒などにより異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて適宜選択すればよい。例えば重合開始剤に2,2’−アゾビスイソブチロニトリル又は過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系単量体に対して0.01モル%〜0.2モル%が好ましく、0.02モル%〜0.15モル%がより好ましい。
本工程では、ビニルエステル系重合体をけん化する。この重合体をけん化することにより、重合体中のビニルエステル単位はビニルアルコール単位に変換される。
本工程では、ビニルエステル系重合体又はけん化後のPVAを加熱する。具体的には、けん化工程と同時に加熱することによりビニルエステル系重合体を加熱するか、けん化工程終了後に得られたPVAを加熱する。この加熱により分岐構造が形成されたPVA(A)を容易に得ることができ、当該コーティング剤の保存安定性並びに当該コーティング剤から形成される皮膜の強度、耐油性、耐水性及び印刷適性がより向上する。加熱処理は、空気または窒素雰囲気下で行うことが好ましい。また、加熱工程はけん化後のPVAに対して行われることが好ましい。
上記の製造方法により得られたPVA(A)及び任意成分を適宜混合することにより当該コーティング剤を製造することができる。
本発明の塗工物は、当該コーティング剤が基材表面に塗工されてなるものである。当該塗工物は、当該コーティング剤が表面に塗工されているため、印刷適性、耐水性及び耐油性に優れる。当該塗工物は、例えば感熱記録紙、剥離紙原紙、耐油紙、インクジェット記録紙等に好適に用いることができる。また、当該コーティング剤が上記基材の裏面側にさらに塗工されてもよい。
感熱記録紙は、基材が紙であり、当該コーティング剤が紙の表面に塗工されている。感熱記録紙は、当該コーティング剤が塗工されオーバーコート層を形成しているため、高い耐水性を有し、強度、耐油性及び印刷適性にも優れる。
剥離紙原紙は基材が紙であり、その表面に当該コーティング剤が塗工され目止め層を形成している。この目止め層の上に接着剤により接着層を形成することで、剥離紙を製造することができる。剥離紙原紙は当該コーティング剤を用いているため、目止め層が高い耐水性及び耐油性を有し、粘着ラベル、粘着テープ、工業用粘着紙、離型紙等に好適に用いることができる。
耐油紙は、基材が紙であり、当該コーティング剤が紙の表面に塗工される。これにより耐油紙は高い耐油性を有し、強度及び耐水性にも優れる。また、当該コーティング剤はPVA(A)を含有するため、安全性も高い。従って、耐油紙は食品等の包装材料として好適に用いることができる。
各実施例又は比較例において、PVA(A)の粘度平均重合度は、JIS K6726に記載の方法により求めた。
各PVA(A)のけん化度は、JIS K6726に記載の方法により求めた。
各PVAの変性率(PVA(A)における単量体(a)に由来する単位の含有率)は、PVA(A)の前駆体であるビニルエステル系重合体を用いて、上述の1H−NMRを用いた方法により求めた。
PVA(A)約10gを共通すり合わせ三角フラスコに量り採り、メタノール200mLを加えた後、12.5モル/L水酸化ナトリウム溶液を10mL加えて、かき混ぜ、40℃の水浴中で1時間加熱した。次に、フェノールフタレインを指示薬として加え、アルカリ性反応を認めなくなるまでメタノールで洗浄して水酸化ナトリウムを除去した。最後に、時計皿に移しメタノールがなくなるまで105℃で1時間乾燥させてPVA(B)を調製した。
ヘキサフルオロイソプロパノールを移動相に用い、示差屈折率検出器を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)測定により、ポリメタクリル酸メチル換算値として求めた。具体的には、以下の条件を採用した。
GPCカラム:東ソー社の「GMHHR(S)」2本
移動相:ヘキサフルオロイソプロパノール(トリフルオロ酢酸ナトリウムを20mmol/Lの濃度で含有)
流速:0.2mL/分
試料濃度:0.100wt/vol%
試料注入量:10μL
検出器:示差屈折率検出器
標準物質:ポリメタクリル酸(例えば、Agilent Technologies社の「EasiVial PMMA 4mL tri−pack」)
撹拌機、還流冷却管、窒素導入管、コモノマー滴下口及び重合開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル740部及びメタノール260部を仕込み、窒素バブリングをしながら30分間系内を窒素置換した。また単量体(a)としてマレイン酸モノメチルを選択し、マレイン酸モノメチルのメタノール溶液(濃度20%)を窒素ガスのバブリングにより窒素置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.25部を添加し重合を開始した。上記反応器に、上記マレイン酸モノメチルのメタノール溶液を滴下して重合溶液中の単量体組成比を一定に保ちながら、60℃で3時間重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止までに加えた単量体(a)の総量は0.9部であり、重合停止時の固形分濃度は33.3%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応の単量体の除去を行い、ビニルエステル系重合体のメタノール溶液(濃度35%)を得た。次に、このメタノール溶液にさらにメタノールを加えて調製したビニルエステル系重合体のメタノール溶液790.8部(溶液中の上記重合体200.0部)に、水酸化ナトリウムの10%メタノール溶液9.2部を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液の上記重合体濃度25%、上記重合体中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.01)。水酸化ナトリウムのメタノール溶液を添加後約15分でゲル状物が生成したので、これを粉砕器にて粉砕し、さらに40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500部を加え残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得た。この白色固体にメタノール2,000部を加えて室温で3時間放置洗浄した。この洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られた白色固体を乾燥機にて120℃で4.5時間加熱処理してPVA(A)(PVA−1)を得た。PVA−1の物性を表2に示す。
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用する単量体(a)の種類や添加量等の重合条件;けん化時におけるビニルエステル系重合体の濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件;並びに加熱処理条件を表1に示すように変更したこと以外は、合成例1と同様の方法により各種のPVA(A)を製造した。各PVA(A)及びそれから得られるPVA(B)の物性を表2に示す。なお、合成例13においては、PVA−13a及びPVA−13bの2種のPVA(A)を製造したのち、PVA−13aを45部に対しPVA−13bを55部となるように2種のPVA(A)を混合した。また、PVA−10及びPVA−12は、ヘキサフルオロイソプロパノールに完溶しなかったため、Mn及びMwは測定できなかった。
(コーティング剤の調製)
カオリンクレー(エンゲルハート社の「UW−90」)を40%の濃度になるように水に分散し、家庭用ミキサーに10分かけ、分散液を調製した。
坪量70g/m2の塗工紙原紙を60℃に加温し、その一方の表面に、メイヤーバーを用いて上記コーティング剤を手塗り塗工した。このコーティング剤の塗工量は、固形分換算で紙基材の片面当たり1.0g/m2であった。次に、熱風乾燥機を用いて100℃で3分間乾燥し、20℃、相対湿度65%で72時間調湿し、紙基材の表面に塗工層が形成された塗工紙を得た。
使用するPVA(A)及び架橋剤を表3に挙げたものに代えた以外は実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、塗工紙を製造した。
C−1:炭酸ジルコニウムアンモニウム(第一稀元素化学工業社の「C−7」)
C−2:オキシ硝酸ジルコニウム(第一稀元素化学工業社の「ジルコゾールZN」)
C−3:乳酸チタン(マツモトファインケミカル社の「TC−315」)
C−4:ポリアミドエピクロロヒドリン(Ashland社の「Polycup 172」)
上記実施例及び比較例のコーティング剤及び塗工紙について、以下の基準で評価を行った。評価結果を表3に示す。
PVAの4%水溶液を調製した後40℃で保管し、調製直後及び1ヶ月後の粘度を測定した。その結果に基づき、粘度変化率=(1ヶ月後の粘度/調製直後の粘度)を求め、以下の基準で評価した。
A:粘度変化率が0.8以上1.0以下である。
B:粘度変化率が0.7未満である。
塗工紙のコーティング剤塗工面(以下、「表面」とする)を20℃の水にて湿潤させた後に、RI試験機(明製作所製)を用いて、ピッキングの発生状態を観察し、以下の基準で評価した。なお、評価がA〜Cの場合、実用に適していると判断できる。
A:ピッキングの発生なし。
B:ピッキングがごく僅かに発生した。
C:ピッキングがかなり発生した。
D:ほぼ全面にピッキングが発生した。
E:全面にピッキングが発生した。
塗工紙の表面にサラダ油0.1mLを滴下し、20℃で10分間静置した。ガーゼで油を拭き取り、紙への裏抜けを目視にて確認し、以下の基準で評価した。
A:裏抜けしていない。
B:一部裏抜けしている。
C:裏抜けしている。
塗工紙の表面に、20℃のイオン交換水約0.1mLを滴下し、指先で数回擦った。コーティング剤の溶出状態を観察し、以下の基準で評価した。なお、評価がA〜Cの場合、実用に適する耐水性を備えていると判断できる。
A:耐水性に優れており、ヌメリ感がない。
B:ヌメリ感が有るが、コーティング層には変化はない。
C:コーティング剤の一部が乳化する。
D:コーティング剤の全体が乳化する。
E:コーティング剤が溶解する。
塗工紙の表面にRI印刷適性試験機を用いてスナップドライインク(大日本インキ社)を平均膜厚5μmとなるように塗工し、以下の基準で評価した。
A:印字濃度が濃く、印字濃度むらがなく、印字部と非印字部との境界が明瞭。
B:印字濃度が幾分薄く、印字濃度むらが少しあり、印字部ににじみが少しあり、印字部と非印字部との境界が幾分不明瞭。
C:印字濃度が薄く、印字濃度むらがかなりあり、印字部ににじみがかなりあり、印字部と非印字部との境界が不明瞭。
Claims (7)
- ビニルアルコール系重合体(A)を含有するコーティング剤であって、
上記ビニルアルコール系重合体(A)の数平均分子量(Mn(A))に対する重量平均分子量(Mw(A))の割合(Mw(A)/Mn(A))が3以上8以下であり、
上記ビニルアルコール系重合体(A)を水酸化ナトリウム溶液中において40℃で1時間処理して得られるビニルアルコール系重合体(B)の数平均分子量(Mn(B))に対する重量平均分子量(Mw(B))の割合(Mw(B)/Mn(B))が2以上3未満であるコーティング剤。 - 上記ビニルアルコール系重合体(A)が、単量体(a)の存在下でビニルエステル系単量体を重合後、けん化及び加熱処理することにより得られるものであり、
上記単量体(a)が、不飽和二重結合を有するカルボン酸、不飽和二重結合を有するカルボン酸のアルキルエステル、不飽和二重結合を有するカルボン酸の酸無水物、不飽和二重結合を有するカルボン酸の塩、及び不飽和二重結合を有するシリル化合物からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1に記載のコーティング剤。 - 架橋剤(C)をさらに含有する請求項1又は請求項2に記載のコーティング剤。
- 請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコーティング剤が基材の表面に塗工されてなる塗工物。
- 感熱記録紙である請求項4に記載の塗工物。
- 剥離紙原紙である請求項4に記載の塗工物。
- 耐油紙である請求項4に記載の塗工物。
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