JP2005194437A - コーティング剤およびそれを塗工してなる塗工物 - Google Patents

コーティング剤およびそれを塗工してなる塗工物 Download PDF

Info

Publication number
JP2005194437A
JP2005194437A JP2004003477A JP2004003477A JP2005194437A JP 2005194437 A JP2005194437 A JP 2005194437A JP 2004003477 A JP2004003477 A JP 2004003477A JP 2004003477 A JP2004003477 A JP 2004003477A JP 2005194437 A JP2005194437 A JP 2005194437A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
group
vinyl alcohol
alcohol polymer
vinyl
coating agent
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2004003477A
Other languages
English (en)
Other versions
JP4575672B2 (ja
Inventor
Atsushi Naohara
敦 直原
Takeshi Kusufuji
健 楠藤
Naoki Fujiwara
直樹 藤原
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kuraray Co Ltd
Original Assignee
Kuraray Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kuraray Co Ltd filed Critical Kuraray Co Ltd
Priority to JP2004003477A priority Critical patent/JP4575672B2/ja
Publication of JP2005194437A publication Critical patent/JP2005194437A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4575672B2 publication Critical patent/JP4575672B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Paints Or Removers (AREA)
  • Inks, Pencil-Leads, Or Crayons (AREA)
  • Addition Polymer Or Copolymer, Post-Treatments, Or Chemical Modifications (AREA)
  • Paper (AREA)
  • Ink Jet (AREA)
  • Heat Sensitive Colour Forming Recording (AREA)
  • Ink Jet Recording Methods And Recording Media Thereof (AREA)

Abstract

【課題】 無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、皮膜が耐水性に優れており、無機物とのバインダー力を兼ね備えたシリル基を含有するビニルアルコール系重合体を含有するコーティング剤を提供すること。
【解決手段】 特定のシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体であって、下記式(I)、(II)および(III)を満足することを特徴とするビニルアルコール系重合体を含有することを特徴とするコーティング剤とする。
20<P×S<370 ・・・(I)
200<P<2740Y−3880Y+3240 ・・・(II)
0.9<Y<1.4 ・・・(III)
P:ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
S:一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
Y:ビニルアルコール系重合体中の1,2−グリコール結合量(モル%)
【選択図】 なし

Description

本発明は、コーティング剤に関する。特に、特定のシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体を含有するコーティング剤に関する。また、そのようなコーティング剤基材に塗工してなる塗工物、特にインクジェット記録材および感熱記録材に関する。
ポリビニルアルコールで代表されるビニルアルコール系重合体(以下、ビニルアルコール系重合体を「PVA」と略記することがある)は水溶性の合成高分子として知られており、合成繊維ビニロンの原料として、あるいは紙加工、繊維加工、接着剤、乳化重合および懸濁重合用の安定剤、無機物のバインダー、フィルムなどの用途に広範囲に用いられている。PVAは他の合成高分子と比べて強度特性および造膜性が特に優れており、その特性を生かして、紙の表面特性を改善するためのクリアーコーティング剤として、あるいは顔料コーティングにおけるバインダーとして重用されている。
PVAの用途を拡大するためにPVAを変性する試みが種々なされており、そのうちの1つとして、ケイ素(シリル基)含有PVAが挙げられる。シリル基含有PVAは、耐水性、ならびに無機物に対する反応性および接着性に特に優れている。シリル基含有PVAの製造法として、例えば、有機溶媒にトリエチルクロルシラン等のシリル化剤を溶解させた後、粉末状のPVAを添加し、攪拌下に反応させるという方法が知られている(特許文献1)。しかしながら、この方法は、均一な変性物を得るのが困難である、PVAの製造とは別にPVAをシリル化剤と反応させる必要がある等の欠点を有しており、工業的な観点から実施しうる方法であるとは言い難い。
これらの問題を解決したシリル基含有PVAの製造法として、例えば、ビニルトリエトキシシラン等のビニルアルコキシシランと酢酸ビニルとの共重合体をけん化する方法(特許文献2)、シリル基を有するアクリルアミド誘導体と酢酸ビニル等のビニルエステルとの共重合体をけん化する方法(特許文献3)、特定の置換基を有するシリル基を含有する単量体とビニルエステルとの共重合体をけん化する方法(特許文献4)、シリル基を有するアリル系単量体とビニルエステルとの共重合体をけん化する方法(特許文献5)などが提案されている。
しかしながら、これらの方法で得られたシリル基含有PVAは、(a)ビニルアルコール系重合体の水溶液を調製する際に、水酸化ナトリウムなどのアルカリや酸を添加しなければ溶解できない場合がある、(b)調製した水溶液から得られる皮膜の耐水性が十分ではなく、また無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、耐水性とバインダー力を同時に満足させることが困難である等の問題を有している。
イオン性親水基を導入したシリル基含有PVAが提案されており(特許文献6)、さらにシラノール基を側鎖に有するPVAが無機物と強い相互作用を有するとの報告がなされている(非特許文献1)が、このような変性PVAによっても、上記した(a)および(b)の問題が解決されたとは言い難い。
特開昭55−164614号公報 特開昭50−123189号公報 特開昭58−59203号公報 特開昭58−79003号公報 特開平58−164604号公報 特開昭59−182803号公報 日本化学会誌、1994年、第4号、第365〜370頁
本発明は、ビニルアルコール系重合体の水溶液を調製する際に、水酸化ナトリウムなどのアルカリや酸を添加しなくても水への溶解が可能であり、水溶液から得られる皮膜の耐水性に優れており、さらに無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、皮膜が耐水性に優れており、無機物とのバインダー力を兼ね備えたシリル基を含有するビニルアルコール系重合体を含有するコーティング剤を提供することを目的とする。
上記課題は、下記の一般式(1)
Figure 2005194437
(Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数である。)
で示されるシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体であって、下記式(I)、(II)および(III)を満足することを特徴とするビニルアルコール系重合体を含有することを特徴とするコーティング剤を提供することによって解決される。
20<P×S<370 ・・・(I)
200<P<2740Y−3880Y+3240 ・・・(II)
0.9<Y<1.4 ・・・(III)
P:ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
S:一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
Y:ビニルアルコール系重合体中の1,2−グリコール結合量(モル%)
このとき、ビニルアルコール系重合体が下記式(IV)を満足し、かつ4%水溶液にした時のpHが4〜8であることが好適である。
0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100 ・・・(IV)
A:ビニルアルコール系重合体を灰化した後、ICP発光分析により求められるケイ素原子の含有量(ppm)
B:ビニルアルコール系重合体を水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄し、乾燥したのち灰化し、ICP発光分析により求められるケイ素原子の含有量(ppm)
またこのとき、シリル基を有する単量体が下記の一般式(2)
Figure 2005194437
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数であり、nは0〜4の整数である。)
または下記の一般式(3)
Figure 2005194437
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキレン基であるか、または酸素原子もしくは窒素原子を含む2価の炭化水素基であり、mは0〜2の整数である。)
で示される単量体であることも好適である。
本発明の好適な実施態様は、上記コーティング剤を基材に塗工してなる塗工物である。具体的には、上記コーティング剤を基材に塗工してなるインクジェット記録材や上記コーティング剤を基材に塗工してなる感熱記録材が特に好適な実施態様である。
本発明のコーティング剤は、ビニルアルコール系重合体の水溶液を調製する際に、水酸化ナトリウムなどのアルカリや酸を添加しなくても水への溶解が可能であり、水溶液から得られる皮膜の耐水性に優れており、さらに無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、皮膜が耐水性に優れており、無機物とのバインダー力を兼ね備えている。そのため、当該コーティング剤を基材に塗工してなる塗工物として好適に使用される。本発明のコーティング剤を基材に塗工してなるインクジェット記録材は、インク受理層の皮膜強度に優れ、印刷斑が抑制され、しかも耐水性に優れている。また、本発明のコーティング剤を基材に塗工してなる感熱記録材は、耐水性および耐可塑剤性に優れている。
本発明で使用するビニルアルコール系重合体は、上記したように、下記の一般式(1)
Figure 2005194437
(Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数である。)
で示されるシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体であって、下記式(I)、(II)および(III)を満足することが必要である。
20<P×S<370 ・・・(I)
200<P<2740Y−3880Y+3240 ・・・(II)
0.9<Y<1.4 ・・・(III)
P:ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
S:一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
Y:ビニルアルコール系重合体中の1,2−グリコール結合量(モル%)
本発明で使用するビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度(P)はJIS−K6726に準じて測定される。すなわち、シリル基含有PVAをけん化度99.5モル%以上に再けん化し、精製した後、30℃の水中で測定した極限粘度[η]から次式により求めることができる。
P=([η]×1000/8.29)(1/0.62)
本発明で使用するビニルアルコール系重合体において、シリル基を有する単量体単位の含有量S(モル%)は、けん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRから求められる。ここでけん化する前のビニルエステル系重合体のプロトンNMRを測定するに際しては、該ビニルエステル系重合体をヘキサン−アセトンにより再沈精製して重合体中から未反応のシリル基を有する単量体を完全に取り除き、次いで90℃減圧乾燥を2日間行った後、CDCl溶媒に溶解して分析に供する。
本発明で使用するビニルアルコール系重合体は、ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度(P)とシリル基を有する単量体単位の含有量(S)の積(P×S)が20<P×S<370の関係を満足する必要がある。P×Sは、好ましくは40<P×S<360、さらに好ましくは80<P×S<350の関係を満足するのがよい。P×Sが20以下の場合には、シリル基含有PVAから無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、十分な耐水性やバインダー力が発揮されず、インクジェット記録材に使用した場合にインク受理層の皮膜強度が低下する。P×Sが370以上の場合には、シリル基含有PVAの水溶液を調製する際にアルカリや酸を添加しなければ溶解できない場合がある。
上記式(II)において、P(ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度)が200以下の場合には、PVAが本来有する皮膜強度などの特長が失われる傾向があるとともに、感熱記録材に使用した場合に耐可塑剤性が悪化するおそれがある。また、Pが(2740Y−3880Y+3240)以上の場合には、水溶液の粘度安定性が低下する。さらに無機物とPVAとの混合水溶液を調製する際に均一な溶液を得ることが困難なため、無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、無機物とのバインダー力が低下し、インクジェット記録材に使用した場合にインク受理層の皮膜強度が低下することがある。
本発明で使用するビニルアルコール系重合体に含まれる1,2−グリコール結合含有量(Y)は、たとえばエチレンカーボネートを共重合させるか、または重合温度を変化させることによって調節することができる。ビニルアルコール系重合体中の1,2−グリコール結合含有量はプロトンNMRのピークから求めることができる。
ここでビニルアルコール系重合体のプロトンNMR測定に際しては、該重合体をけん化度99.9モル%以上に再けん化した後、メタノールにより十分に洗浄する。次いで該重合体を90℃で2日間減圧乾燥した後、DMSO−d6に溶解し、トリフルオロ酢酸を数滴加えて80℃でプロトンNMRを測定する。ビニルアルコール系重合体に含まれる1,2−グリコール結合含有量は、ビニルアルコール単位のメチンに由来する3.2〜4.0ppmのピーク(積分値α)と、1,2−グリコール結合の1つのメチンに由来する3.25ppmのピーク(積分値β)とから、次式にしたがって算出することができる。
1,2−グリコール結合含有量(モル%)=100×β/α
本発明で使用するビニルアルコール系重合体は下記式(IV)を満足することが好ましい。
0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100 ・・・(IV)
A:ビニルアルコール系重合体を灰化した後、ICP発光分析により求められるケイ素原子の含有量(ppm)
B:ビニルアルコール系重合体を水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄し、乾燥したのち灰化し、ICP発光分析により求められるケイ素原子の含有量(ppm)
(A−B)/(B)の好ましい範囲は0.1/100〜50/100であり、さらに好ましい範囲は0.3/100〜25/100であり、特に好ましい範囲は0.4/100〜20/100である。
ここで、上記ケイ素原子の含有量(B)を求めるにあたり、ビニルアルコール系重合体の標準的な洗浄方法は、まず、ビニルアルコール系重合体1重量部に対して、ビニルアルコール系重合体のビニルアルコール単量体単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを含有するメタノール溶液を10重量部添加して1時間煮沸した後、ろ別する操作を5回繰り返し、次いで、メタノールによるソックスレー抽出を1週間行う方法である。上記洗浄方法において、水酸化ナトリウムを含有するメタノールによる洗浄操作およびメタノールによるソックスレー抽出は、ビニルアルコール系重合体中のケイ素原子の含有量がほぼ変化しなくなるまで行われるものであり、この条件が満たされる範囲において、水酸化ナトリウムを含有するメタノールによる洗浄操作回数およびメタノールによるソックスレー抽出期間は適宜増減してもよい。
ビニルアルコール系重合体を灰化した後、ICP発光分析により求められるケイ素原子の含有量(A)は、ビニルアルコール系重合体中に含まれる全てのケイ素原子の含有量を示すと考えられる。また、ビニルアルコール系重合体を水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄し、乾燥したのち灰化し、ICP発光分析により求められるケイ素原子の含有量(B)は、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接組み込まれたシリル基含有単量体に由来するケイ素原子の含有量を示すと考えられる。ケイ素原子の含有量(B)を求めるに当たり、ビニルアルコール系重合体は水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄され、その際にシロキサン結合(−Si−O−Si−)が切断されるので、ケイ素原子の含有量(B)は、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接組み込まれたシリル基含有単量体以外のシリル基含有単量体が取り除かれた状態でのケイ素原子の含有量を示していると考えられる。したがって、上記の関係式0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100における(A−B)は、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接導入されていないシリル基を有する単量体単位に由来するシリル基の含有量を示していると考えられる。
ビニルアルコール系重合体における(A−B)/(B)の値が大きい場合には、ビニルアルコール系重合体に余剰のシリル基を有する単量体単位が多く含まれていることを意味しており、ビニルアルコール系重合体における(A−B)/(B)の値が小さい場合には、ビニルアルコール系重合体の主鎖に直接導入されていない、余剰のシリル基を有する単量体単位の量が少ないことを意味している。
(A−B)/(B)の値が大き過ぎると、余剰のシリル基を含有する単量体単位と、主鎖に組み込まれたシリル基含有単量体単位との間でシロキサン結合(−Si−O−Si−)が形成されることにより、ビニルアルコール系重合体の分子の運動性が制限されるため、水溶液の粘度安定性が低下し、あるいは無機物との相互作用が大きくなり過ぎるために、例えば、無機物との混合水溶液を調製する際に均一な溶液を得ることができない場合があると考えられる。
(A−B)/(B)の値が小さ過ぎると、余剰のシリル基を含有する単量体単位と、主鎖に組み込まれたシリル基含有単量体単位との間で形成されるシロキサン結合(−Si−O−Si−)の割合が少なく、ビニルアルコール系重合体に含まれるシリル基の量が低下して、ビニルアルコール系重合体と無機物との相互作用が小さくなり、無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、耐水性および無機物とのバインダー力が低下し、インクジェット記録材に使用した場合にインク受理層の皮膜強度が低下すると考えられる。
さらに、本発明で使用するビニルアルコール系重合体は4%水溶液にした時のpHが4〜8であることが好ましい。pHのさらに好ましい範囲は4.5〜7であり、特に好ましい範囲は5〜6.5である。4%水溶液のpHが4に満たない場合には、ビニルアルコール系重合体水溶液の粘度安定性が低下することがあり、4%水溶液のpHが8を超える場合には、無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、耐水性が低下することがあるため好ましくない。
本発明で使用するビニルアルコール系重合体に含まれるシリル基を表す一般式(1)において、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数である。
ここで、Rで表される炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基などが挙げられる。Rで表されるアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基、オクチロキシ基、ラウリロキシ基、オレイロキシ基などが挙げられ、また、アシロキシル基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシル基またはアシロキシル基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、その置換基の例として、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基を挙げることができる。
本発明で使用するビニルアルコール系重合体は、ビニルエステル単量体と一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体とを共重合させ、得られるビニルエステル系重合体をけん化することにより製造することができる。
また、本発明で使用するビニルアルコール系重合体は、ビニルエステル単量体と一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体とを2−メルカプトエタノール、n−ドデシルメルカプタン、メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのチオール化合物の存在下で共重合させ、得られるビニルエステル系重合体をけん化することによっても製造することができる。この方法により、チオール化合物に由来する官能基が末端に導入されたビニルアルコール系重合体が得られる。
このようなビニルアルコール系重合体の製造に用いられるビニルエステル単量体としては、例えば、ギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、バレリン酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、安息香酸ビニル、ピバリン酸ビニルおよびバーサティック酸ビニル等が挙げられ、とりわけ酢酸ビニルが好ましい。
ビニルエステル単量体とのラジカル共重合に用いられる一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体として、下記の一般式(2)
Figure 2005194437
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数であり、nは0〜4の整数である。)
または下記の一般式(3)
Figure 2005194437
(式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキレン基であるかまたは酸素原子もしくは窒素原子を含む2価の炭化水素基であり、mは0〜2の整数である。)
で示される化合物を挙げることができる。
上記一般式(2)および一般式(3)において、Rで表される炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基などが挙げられる。Rで表されるアルコキシル基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、tert−ブトキシ基、ペントキシ基、ヘキシロキシ基、オクチロキシ基、ラウリロキシ基、オレイロキシ基などが挙げられ、また、アシロキシル基としては、アセトキシ基、プロピオニルオキシ基などが挙げられる。これらのアルコキシル基またはアシロキシル基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、その置換基の例として、メトキシ基、エトキシ基などのアルコキシル基を挙げることができる。また、Rで表される炭素数1〜5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、tert−ペンチル基、イソペンチル基などが挙げられる。Rで表される炭素数1〜5のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、ジメチルエチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基などが挙げられ、また、酸素原子または窒素原子を含む2価の炭化水素基としては、−CHCHNHCHCHCH−、−CHCHNHCHCH−、−CHCHNHCH−、−CHCHN(CH)CHCH−、−CHCHN(CH)CH−、−CHCHOCHCHCH−、−CHCHOCHCH−、−CHCHOCH−などが挙げられる。
上記式(2)で示される単量体としては、例えば、ビニルトリメトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルジメチルメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、ビニルジメチルエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルメチルジメトキシシラン、アリルジメチルメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルメチルジエトキシシラン、アリルジメチルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルイソブチルジメトキシシラン、ビニルエチルジメトキシシラン、ビニルメトキシジブトキシシラン、ビニルジメトキシブトキシシラン、ビニルトリブトキシシラン、ビニルメトキシジヘキシロキシシラン、ビニルジメトキシヘキシロキシシラン、ビニルトリヘキシロキシシラン、ビニルメトキシジオクチロキシシラン、ビニルジメトキシオクチロキシシラン、ビニルトリオクチロキシシラン、ビニルメトキシジラウリロキシシラン、ビニルジメトキシラウリロキシシラン、ビニルメトキシジオレイロキシシラン、ビニルジメトキシオレイロキシシランなどが挙げられる。
上記式(2)においてnが1以上のシリル基を有する単量体とビニルエステル単量体を共重合させる場合には、得られるビニルエステル系重合体の重合度が低下する傾向がある。その点、ビニルトリメトキシシランは、ビニルエステル単量体と共重合させた場合に、得られるビニルエステル系重合体の重合度の低下を抑えることができるうえ、工業的な製造が容易で安価に入手できることから好ましく用いることができる。
また、上記式(3)で示される単量体としては、例えば、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリエトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリ(β−メトキシエトキシ)シラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリメトキシシラン、1−(メタ)アクリルアミド−メチルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−イソプロピルトリメトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)−アミノプロピルトリメトキシシラン、(3−(メタ)アクリルアミド−プロピル)−オキシプロピルトリメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルトリアセトキシシラン、4−(メタ)アクリルアミド−ブチルトリアセトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリプロピオニルオキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリアセトキシシラン、N−(2−(メタ)アクリルアミド−エチル)−アミノプロピルトリアセトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルイソブチルジメトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−エチルジメチルメトキシシラン、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルメチルジアセトキシシラン、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルハイドロジェンジメトキシシラン、3−(N−メチル−(メタ)アクリルアミド)−プロピルトリメトキシシラン、2−(N−エチル−(メタ)アクリルアミド)−エチルトリアセトキシシランなどが挙げられる。
これらの単量体の中でも、3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリメトキシシランおよび3−(メタ)アクリルアミド−プロピルトリアセトキシシランは、工業的な製造が比較的容易で安価に入手できることから好ましく用いることができ、また2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリメトキシシランおよび2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロピルトリアセトキシシランはアミド結合が酸またはアルカリに対して著しく安定であることから、好ましく用いることができる。
シリル基を有する単量体とビニルエステル単量体とを共重合させる方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法が挙げられる。特に、重合温度が30℃より低い場合には、乳化重合法が好ましく、重合温度が30℃以上の場合には、無溶媒で行う塊状重合法またはアルコールなどの溶媒を用いて行う溶液重合法が通常採用される。乳化重合法の場合、溶媒として、水が挙げられ、メタノール、エタノールなどの低級アルコールを併用しても良い。また、乳化剤として、公知の乳化剤を使用することができる。開始剤としては、鉄イオン−酸化剤−還元剤を併用したレドックス系開始剤が重合をコントロールする上で好適に用いられる。塊状重合法や溶液重合法の場合、共重合反応を行うにあたって、反応の方式は回分式および連続式のいずれの方式にても実施可能である。溶液重合法を採用して共重合反応を行う際に、溶媒として使用されるアルコールとしては、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコールなどの低級アルコールが挙げられる。共重合反応に使用される開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−バレロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)などのアゾ系開始剤;過酸化ベンゾイル、n−プロピルパーオキシカーボネートなどの過酸化物系開始剤などの公知の開始剤が挙げられる。共重合反応を行う際の重合温度については特に制限はないが、5〜50℃の範囲が適当である。
シリル基を有する単量体とビニルエステル単量体とをラジカル共重合させる際には、本発明の効果が損なわれない範囲であれば、必要に応じて、共重合可能な単量体を共重合させることができる。このような単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ヘキセン等のα−オレフィン類;フマール酸、マレイン酸、イタコン酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸等のカルボン酸またはその誘導体;アクリル酸またはその塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸イソプロピル等のアクリル酸エステル類;メタクリル酸またはその塩、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル等のメタクリル酸エステル類;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド等のアクリルアミド誘導体;メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド等のメタクリルアミド誘導体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;エチレングリコールビニルエーテル、1,3−プロパンジオールビニルエーテル、1,4−ブタンジオールビニルエーテル等のヒドロキシ基含有ビニルエーテル類;アリルアセテート、プロピルアリルエーテル、ブチルアリルエーテル、ヘキシルアリルエーテル等のアリルエーテル類;オキシアルキレン基を有する単量体;酢酸イソプロペニル、3−ブテン−1−オール、4−ペンテン−1−オール、5−ヘキセン−1−オール、7−オクテン−1−オール、9−デセン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等のヒドロキシ基含有α−オレフィン類;エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタアリルスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸等のスルホン酸基を有する単量体;ビニロキシエチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシブチルトリメチルアンモニウムクロライド、ビニロキシエチルジメチルアミン、ビニロキシメチルジエチルアミン、N−アクリルアミドメチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドエチルトリメチルアンモニウムクロライド、N−アクリルアミドジメチルアミン、アリルトリメチルアンモニウムクロライド、メタアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ジメチルアリルアミン、アリルエチルアミン等のカチオン基を有する単量体などが挙げられる。これらのシリル基を有する単量体およびビニルエステル単量体と共重合可能な単量体の使用量は、その使用される目的および用途等によっても異なるが、通常、共重合に用いられる全ての単量体を基準にした割合で20モル%以下、好ましくは10モル%以下である。
シリル基を有する単量体とビニルエステル単量体とを共重合させることによって得られたビニルエステル系重合体は、次いで、公知の方法にしたがって溶媒中でけん化され、ビニルアルコール系重合体へと導かれる。
ビニルエステル系重合体のけん化反応の触媒としては通常アルカリ性物質が用いられ、その例として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、およびナトリウムメトキシドなどのアルカリ金属アルコキシドが挙げられる。アルカリ性物質の使用量は、ビニルエステル系重合体中のビニルエステル単量体単位を基準にしたモル比で0.004〜0.5の範囲内であることが好ましく、0.005〜0.05の範囲内であることが特に好ましい。けん化触媒は、けん化反応の初期に一括して添加しても良いし、あるいはけん化反応の初期に一部を添加し、残りをけん化反応の途中で追加して添加しても良い。
けん化反応に用いることができる溶媒としては、メタノール、酢酸メチル、ジメチルスルホキシド、ジエチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドなどが挙げられる。これらの溶媒の中でもメタノールが好ましく用いられ、その使用にあたり、メタノールの含水率が好ましくは0.001〜1重量%、より好ましくは0.003〜0.9重量%、特に好ましくは0.005〜0.8重量%に調整されているのがよい。
けん化反応は、好ましくは5〜80℃、より好ましくは20〜70℃の温度で行われる。けん化反応に必要とされる時間は、好ましくは5分〜10時間、より好ましくは10分〜5時間である。けん化反応は、バッチ法および連続法のいずれの方式にても実施可能である。けん化反応の終了後に、必要に応じて、残存するけん化触媒を中和しても良く、使用可能な中和剤として、酢酸、乳酸などの有機酸、および酢酸メチルなどのエステル化合物などを挙げることができる。
本発明で使用するビニルアルコール系重合体のけん化度について特に制限はないが、けん化度は好ましくは80モル%以上、より好ましくは85モル%以上、特に好ましくは90モル%以上である。そして、無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、皮膜の耐水性を良好なものにするという観点から、ビニルアルコール系重合体の最適のけん化度は95モル%以上である。
けん化反応により得られたビニルアルコール系重合体は、必要に応じて、洗浄することができ、この操作は、前述したビニルアルコール系重合体における(A−B)/(B)の値を調整する手段として有用である。
使用可能な洗浄液としては、メタノールなどの低級アルコール、酢酸メチルなどの低級脂肪酸エステル、およびそれらの混合物などを挙げることができ、これらの洗浄液には、少量の水、またはアルカリもしくは酸が添加されていても良い。
ビニルアルコール系重合体を洗浄するのに採用される方法は、ビニルエステル単量体とシリル基を有する単量体とを共重合させる際の重合率、共重合によって得られるビニルエステル系重合体の重合度、ビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体のけん化度等により異なり、これを一律に規定するのは困難である。その方法の一つとして、例えば、ビニルエステル単量体とシリル基を有する単量体との共重合体(ビニルエステル系重合体)をアルコール溶液中でけん化することによって得られる、乾燥する前のアルコールなどが含浸された湿潤状態のビニルアルコール系重合体の重量に対して1〜20倍量のメタノールなどの低級アルコール、酢酸メチルなどの低級脂肪酸エステル、またはそれらの混合物を洗浄液として用い、20℃〜洗浄液の沸点の温度条件にて30分〜10時間程度洗浄するという方法を挙げることができる。
本発明で使用するビニルアルコール系重合体は粉末の状態で保存および輸送することが可能である。ビニルアルコール系重合体を水に溶解させて、水溶液として使用する場合には、ビニルアルコール系重合体を水に分散させた後、攪拌しながら加温することにより均一な水溶液とすることができる。この場合には、水に対して水酸化ナトリウムなどのアルカリを特に添加しなくとも均一な水溶液を得ることができる。
本発明で使用するビニルアルコール系重合体は、水酸化ナトリウムなどのアルカリや酸を添加しなくても水への溶解が可能であり、水溶液から得られる皮膜の耐水性に優れており、さらに無機物を含有する皮膜を形成させた場合に、皮膜が耐水性に優れており、無機物とのバインダー力を兼ね備えている。本発明のコーティング剤は、このようなビニルアルコール系重合体を含有するものであり、当該コーティング剤を基材に塗工することによって塗工物が得られる。
まず、本発明のコーティング剤を基材に塗工してインクジェット記録材を製造する場合について説明する。この場合、コーティング層がインク受理層を構成することが好ましい。このとき、前記ビニルアルコール系重合体がインク受理層のバインダーとなる。その際、前記ビニルアルコール系重合体は単独で使用してもよく、他の水溶性または水分散性樹脂と併用してもよい。本発明で使用される前記ビニルアルコール系重合体と併用することができる他の水溶性樹脂としては、アルブミン、ゼラチン、カゼイン、澱粉、カチオン化澱粉、アラビヤゴム、ポリアミド樹脂、メラミン樹脂、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリ(メタ)アクリル酸ナトリウム、アニオン変性PVA、アルギン酸ナトリウム、水溶性ポリエステル、ならびにメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)などのセルロース誘導体などが挙げられ、水分散性樹脂としてはSBRラテックス、NBRラテックス、酢酸ビニル系エマルジョン、エチレン/酢酸ビニル共重合体エマルジョン、(メタ)アクリルエステル系エマルジョン、塩化ビニル系エマルジョンなどが挙げられるが、これらに制限されるものではない。
インクジェット記録材において、インク受理層に用いられる充填材としては、沈降シリカ、ゲル状シリカ、気相法シリカ、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、水酸化アルミニウム、擬ベーマイト、クレー、タルク、ケイソウ土、ゼオライト、炭酸カルシウム、アルミナ、酸化亜鉛、サチンホワイト、有機顔料などが挙げられるが、これらに制限されるものではない。ここで、ビニルアルコール系重合体と充填材との比率について特に制限はないが、通常、ビニルアルコール系重合体/充填材の重量比が5/100〜100/100の範囲内であることが好ましく、10/100〜80/100の範囲内であることがより好ましく、15/100〜60/100の範囲内であることが特に好ましい。ビニルアルコール系重合体/充填材の重量比が大きすぎても、また小さすぎても印刷斑が発生しやすくなる。
また、インクジェット記録材において、インクの定着剤としてカチオン性樹脂を併用することもできる。カチオン性樹脂は、水に溶解したとき離解してカチオン性を呈する1級〜3級アミンまたは4級アンモニウム塩を有するモノマー、オリゴマー、ポリマーであり、好ましくはオリゴマーまたはポリマーである。具体的には、ジメチルアミン・エピクロルヒドリン重縮合物、アクリルアミド・ジアリルアミン共重合物、ポリビニルアミン共重合物、ジメチルジアリルアンモニウムクロライド重合体、ポリエチレンイミンなどを例示することが出来るが、これらの例に限定されるものではない。
上記のインクジェット記録材に用いられる基材としては、従来公知の透明性または不透明性の支持基体がいずれも使用できる。透明性支持基体としては、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリメチルメタクリレート、酢酸セルロース、ポリカーボネート、ポリイミド、セロハン、セルロイドなどのフィルム、シートまたは透明性の高い紙などが挙げられる。不透明性支持基体としては、一般の紙、顔料コート紙、布、木材、金属板、合成紙、不透明化処理した合成樹脂系フィルムあるいはシートなどが挙げられる。
本発明のコーティング剤を基材に塗工してインクジェット記録材を製造する方法としては、本発明で使用される前記ビニルアルコール系重合体および必要に応じて充填材、インクの定着剤などを、水性媒体に溶解または分散させてコーティング剤を調製し、得られたコーティング剤を従来公知のサイズプレス、エアーナイフコーター、ロールコーター、バーコーター、ブレードコーター、カーテンコーター、キャストコーターなどを用いて基材に塗工する方法が挙げられる。ここで、水性媒体としては水が好適に使用される。水性溶媒として、水溶性の有機溶媒、酸、塩基および塩類などを溶解した水溶液を使用することもできる。本発明のコーティング剤を基材に塗工して、ビニルアルコール系重合体を基材中に含浸させるか、または基材の片面もしくは両面上に該ビニルアルコール系重合体からなるコート層を形成させることにより、耐水性、無機物とのバインダー力およびインク受理層の皮膜強度などに優れたインクジェット記録材が得られる。
次に、本発明のコーティング剤を基材に塗工して感熱記録材を製造する場合について説明する。このとき、本発明のコーティング剤を塗工することによって、オーバーコート層、感熱発色層またはアンダーコート層が形成される。中でも、本発明のコーティング剤は、オーバーコート層または感熱発色層を形成するために好適に用いられる。
本発明のコーティング剤でオーバーコート層を形成することにより、耐水性や耐可塑剤性に優れた感熱記録材が得られる。本発明のコーティング剤でオーバーコート層を形成する場合、本発明で使用される前記ビニルアルコール系重合体は一般的に架橋剤と併用される。ここで用いられる架橋剤としては、グリオキザール、グルタルアルデヒド等のアルデヒド化合物、炭酸ジルコニウムアンモニウム等のジルコニウム化合物、乳酸チタン等のチタン系化合物、コロイダルシリカ、ポリアミドアミンエピクロルヒドリン等のエポキシ化合物、ポリオキサゾリン等が好適に使用される。また、耐水性や耐可塑剤性などを損なわない範囲で、本発明で使用される前記ビニルアルコール系重合体は、以下に示すような公知の高分子または高分子の分散体と併用することができる。その高分子または高分子の分散体の具体例としては、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ソーダ、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド/アクリル酸エステル共重合体、アクリルアミド/アクリル酸エステル/メタクリル酸三元共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体アルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックス等が挙げられる。
本発明のコーティング剤を用いて感熱記録材におけるオーバーコート層を形成する場合、本発明で使用される前記ビニルアルコール系重合体と併用される充填材としては、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成クレー、酸化チタン、ケイソウ土、沈降シリカ、ゲル状シリカ、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸マグネシウム、ポリスチレン微粒子、ポリ酢酸ビニル系微粒子、尿素−ホルマリン樹脂微粒子等が挙げられる。オーバーコート層において、これら充填剤の好ましい添加量は、オーバーコート層の全成分の20重量%以上である。添加量が20重量%未満であると耐水性、耐油性および耐可塑剤性等が低下する場合がある。
オーバーコート層の塗工量は、感熱記録装置のサーマルヘッドから感熱記録材の感熱発色層への熱伝導が阻害されない程度で適宜選択されるが、通常1〜10g/m、好ましくは2〜7g/mである。
本発明のコーティング剤を用いて感熱発色層を形成することにより、耐水性や耐可塑剤性に優れた感熱記録材が得られる。感熱発色層に使用される感熱染料としては、一般の感圧記録材または感熱記録材に用いられるものであれば特に制限されない。感熱染料の具体的な例としては、3,3−ビス(p−ジメチルアミノフェニル)−6−ジメチルアミノフタリド(クリスタル・バイオレット・ラクトン)、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(1,2−ジメチルインドール−3−イル)フタリド、3−(p−ジメチルアミノフェニル)−3−(2−フェニルインドール−3−イル)フタリド、3,3−ビス−(9−エチルカルバゾール−3−イル)−5−ジメチルアミノフタリド等のトリアリールメタン系化合物;4,4´−ビスジメチルアミノベンズヒドリンベンジルエーテル、N−ハロフェニルロイコオーラミン等のジフェニルメタン系化合物;ローダミンB−アニリノラクタム、3−ジエチルアミノ−7−ベンジルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−ブチルアミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−7−(クロロアニリノ)フルオラン、3−ジエチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ピペリジノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−エチル−トリルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−シクロヘキシル−メチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(β−エトキシエチル)アミノフルオラン、3−ジエチルアミノ−6−クロロ−7−(γ−クロロプロピル)アミノフルオラン、3−(N−エチル−N−イソアミル)−6−メチル−7−フェニルアミノフルオラン、3−ジブチルアミノ−6−メチル−7−アニリノフルオラン等のキサンテン系化合物;ベンゾイルロイコメチレンブルー、p−ニトロベンゾイルロイコメチレンブルー等のチアジン系化合物;3−メチル−スピロ−ジナフトピラン、3−エチル−スピロ−ジナフトピラン、3−ベンジルスピロ−ジナフトピラン、3−メチルナフト−(3−メトキシ−ベンゾ)−スピロピラン等のスピロ系化合物などが挙げられる。これらの感熱染料は、感熱記録材の用途により適宜選択され、単独でまたは2種以上の混合物として使用される。
また、感熱発色層に使用される顕色剤としては、フェノール誘導体および芳香族カルボン酸誘導体が好ましく、特にビスフェノール類が好ましい。フェノール誘導体の具体例としては、p−オクチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−フェニルフェノール、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(p−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、1,1−ビス(p−ヒドロキシフェニル)−2−エチル−ヘキサン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン、ジヒドロキシジフェニルエーテルが挙げられる。芳香族カルボン酸誘導体の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸ブチル、3,5−ジ−tert−ブチルサリチル酸、3,5−ジ−α−メチルベンジルサリチル酸、ならびに上記のカルボン酸の多価金属塩等が挙げられる。
本発明のコーティング剤を用いて感熱発色層を形成する場合、耐水性や耐可塑剤性などを損なわない範囲で、本発明で使用される前記ビニルアルコール系重合体を以下に示すような公知の高分子または高分子の分散体と併用することができる。その高分子または高分子の分散体の具体例としては、澱粉及びその誘導体、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体、アラビヤゴム、ポリビニルアルコール、アクリル酸(またはメタクリル酸)エステル共重合体のアルカリ塩、ポリビニルピロリドン、アクリルアミド(またはメタクリルアミド)/アクリル酸(またはメタクリル酸)エステル共重合体、スチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、イソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、ジイソブチレン/無水マレイン酸共重合体のアルカリ塩、ポリアクリルアミド、アルギン酸ソーダ、ゼラチン、カゼイン等の水溶性高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸エステル、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、ポリブチルメタクリレート、エチレン/酢酸ビニル共重合体等のエマルジョン、スチレン/ブタジエン共重合体、スチレン/ブタジエン/アクリル系共重合体等のラテックス等が挙げられる。
感熱発色層に用いられる滑剤としては、高級脂肪酸、高級脂肪酸アミド、高級脂肪酸金属塩、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等が挙げられる。
また、感熱発色層に用いられる充填材としては、カオリン、クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成クレー、酸化チタン、ケイソウ土、沈降シリカ、ゲル状シリカ、コロイダルシリカ、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸マグネシウム、ポリスチレン微粒子、ポリ酢酸ビニル系微粒子、尿素−ホルマリン樹脂微粒子等が挙げられる。感熱発色層において、これら充填剤の好ましい添加量は、感熱発色層の全成分の20重量%以上である。
本発明のコーティング剤を基材に塗工して感熱記録材を製造する場合、従来公知のエアーナイフ法、プレート法、グラビア法、ロールコーター法、スプレー法、ディップ法、バー法、エクストルージョン法などの方法が利用可能である。
以下、実施例および比較例により本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の実施例および比較例において「部」および「%」は、特に断らない限り重量基準を意味する。
I.シリル基含有ビニルアルコール系重合体
下記の方法によりPVAを製造し、そのけん化度、シリル基を有する単量体単位の含有量、重量平均重合度、およびケイ素原子の含有量を求めた。また、以下の評価方法にしたがって、皮膜の性能および塗工物の性能を評価した。
[PVAの分析方法]
PVAの分析は、特に断らない限りJIS−K6726に記載の方法にしたがって行った。また、PVAに含まれるシリル基を有する単量体単位の量および1,2−グリコール結合の量は、前述した方法にしたがって、500MHzのプロトンNMR測定装置(JEOL GX−500)を用いて求めた。
[PVAに含まれるケイ素原子の含有量の分析方法]
PVAに含まれるケイ素原子の含有量は、前述した方法にしたがって、ジャーレルアッシュ社製ICP発光分析装置IRIS APを用いて求めた。
[皮膜の耐水性]
4%PVA水溶液を調製してこれを20℃で流延し、厚み40μmの皮膜を得た。得られた皮膜を120℃で10分間熱処理した後、縦10cm、横10cmの大きさに切り出し、試験片を作製した。この試験片を20℃の蒸留水に30分間浸漬した後、取り出し(回収し)、表面に付着した水分をガーゼで拭き取り、水膨潤時の重量を測定した。水膨潤時の重量を測定した試験片を105℃で16時間乾燥した後、乾燥時の重量を測定した。ここで水膨潤時の重量を乾燥時の重量で除した値を求めてこれを膨潤度(倍)とし、以下の基準にしたがって判定した。
◎:3.0倍未満。
○:3.0倍以上5.0倍未満。
△:5.0倍以上7.0倍未満。
×:7.0倍以上であるか、または浸漬した試験片を回収することができない。
[無機物を含有する皮膜の耐水性]
4%のPVA水溶液を調製し、PVA/コロイダルシリカの固形分基準の重量比が100/10となるように、コロイダルシリカ(日産化学工業製:スノーテックスST−O)の20%水分散液を加えた後、20℃で流延して厚み40μmの皮膜を得た。得られた皮膜を120℃で10分間熱処理した後、縦10cm、横10cmの大きさに切り出し、試験片を作製した。この試験片を20℃の蒸留水に24時間浸漬した後、取り出し(回収し)、表面に付着した水分をガーゼで拭き取り、水膨潤時の重量を測定した。水膨潤時の重量を測定した試験片を105℃で16時間乾燥した後、乾燥時の重量を測定した。ここで水膨潤時の重量を乾燥時の重量で除した値を求めてこれを膨潤度(倍)とし、以下の基準にしたがって判定した。
◎:3.0倍未満。
○:3.0倍以上4.0倍未満。
△:4.0倍以上5.0倍未満。
×:5.0倍以上であるか、または浸漬した試験片を回収することができない。
[PVAと無機物とのバインダー力]
シリカ(水沢化学工業製:ミズカシルP78D)およびシリカの重量に対し0.2%の分散剤(東亞合成化学工業製:アロンT40)をホモミキサーにて水に分散し、シリカの20%水分散液を調製した。このシリカ水分散液に、シリカ/PVAの固形分基準の重量比が100/25となるように、10%に調整したPVA水溶液を添加し、シリカ分散PVA水溶液を得た。
得られたシリカ分散PVA水溶液を、ワイヤーバーを用いて、上質紙の表面に82g/mの坪量で塗布した。その後、上質紙を熱風乾燥機を用い100℃で3分間乾燥して、評価用試料を得た。乾燥後の上質紙(評価用試料)における塗布量は15g/mであった。
評価用試料について、IGT印刷適性試験機を用い、印圧25kg/cmにて測定を行い、評価用試料の表面の紙むけが起こった時点の印刷速度(cm/sec)を以って表面強度とし、以下の基準にしたがってバインダー力を評価した。なお、IGT印刷適性試験機を用いて測定を行うにあたり、IGTピックオイルH(大日本インキ化学工業製)を用い、スプリング駆動Mの機構を採用した。
◎:200cm/sec以上。
○:180cm/sec以上200cm/sec未満。
△:160cm/sec以上180cm/sec未満。
×:160cm/sec未満。
以下の実施例および比較例で用いたPVAは以下のようにして製造した。
PVA1
攪拌機、温度センサー、滴下漏斗および還流冷却管を備え付けた6Lセパラブルフラスコに、酢酸ビニル2100部、メタノール771部、ビニルトリメトキシシランを0.5重量%含有するメタノール溶液629部を仕込み、攪拌下に系内を窒素置換した後、内温を45℃まで上げた。この系に2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.42部含有するメタノール20部を添加して重合反応を開始した。重合開始時点よりビニルトリメトキシシランを0.5重量%含有するメタノール24部、および2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)を0.13重量%含有するメタノール430部をそれぞれ系内に添加しながら3時間重合反応を行い、その時点で重合反応を停止した。重合反応を停止した時点における系内の固形分濃度は14.9%であった。次いで、系内にメタノール蒸気を導入することで未反応の酢酸ビニル単量体を追い出し、35%のビニルエステル系重合体を含むメタノール溶液を得た。
このビニルエステル系重合体を35%含有するメタノール溶液に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.02、ビニルエステル系重合体の固形分濃度が25重量%となるように、メタノール、および水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。
けん化反応の進行に伴ってゲル化物が生成した直後にこれを反応系から取り出して粉砕し、次いで、この粉砕物に対して、けん化反応の開始から1時間が経過した時点で酢酸メチルを添加することで中和し、メタノールで膨潤したPVAを得た。このメタノールで膨潤したPVAに対して重量基準で6倍量(浴比6倍)のメタノールを加え、還流下に1時間洗浄し、次いで65℃で16時間乾燥してPVAを得た。
得られたPVAにおけるビニルトリメチルシラン単位の含有量は0.10モル%、1,2−グリコール結合量は1.35モル%、けん化度は98.5モル%、重合度は2400であった。上記したPVAに含まれるケイ素原子含有量の分析方法に従って求められた(A−B)/(B)の値は10.9/100であり、4%PVA水溶液のpHは6.0であった。
PVA2〜4
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、シリル基を有する単量体の種類およびその仕込み量、重合開始剤の使用量、重合反応の条件、けん化反応の条件等を表1に示すように変化させた以外はPVA1と同様の方法により各種のPVA(PVA2〜4)を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表2に示す。
PVA5
攪拌機、温度センサー、滴下漏斗および還流冷却管を備え付けた5Lセパラブルフラスコに酢酸ビニル2000部、ビニルトリメトキシシラン3.8部、メタノール667部、蒸留水2000部、乳化剤(三洋化成製:ノニポール400)80部、ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート(三菱瓦斯化学製:スーパーライトC)13.4部、硫酸鉄七水塩0.534部を仕込み、攪拌下に系内を窒素置換した後、内温を5℃にした。2−メルカプトエタノール4.4部を水/メタノール=3/1(重量比)の混合溶媒1000部に溶解させて2−メルカプトエタノール溶液を調製し、そのうちの30部を5Lセパラブルフラスコに加えた。次いで、0.5%過酸化水素水溶液、先に調製した2−メルカプトエタノール溶液、およびビニルトリメトキシシランを1重量%含有するメタノール溶液を5Lセパラブルフラスコに逐次添加し、重合反応を開始した。5時間経過後、反応系を開放し、多量のメタノール中へ重合液を加えて重合反応を停止した。なお、5時間の重合反応の間に添加した0.5%過酸化水素水溶液の合計の添加量は72ml、2−メルカプトエタノール溶液の合計の逐次添加量は141ml、ビニルトリメトキシシラン溶液の合計の逐次添加量は39mlであり、固形分濃度は22.3%であった。
得られたビニルエステル系重合体を含むメタノール溶液を蒸留水中に滴下して再沈精製した後、ビニルエステル系重合体を蒸留水中で煮沸して、乳化剤を除去した。その後、減圧乾燥して、ビニルエステル系重合体の固形物を得た後、これにメタノールを加えて、35%のビニルエステル系重合体を含むメタノール溶液を得た。
このビニルエステル系重合体を35%含有するメタノール溶液に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.02、ビニルエステル系重合体の固形分濃度が25重量%となるように、メタノール、および水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液をこの順序で撹拌下に加え、40℃でけん化反応を開始した。
得られたPVAにおけるビニルトリメチルシランの含有量は0.10モル%、1,2−グリコール結合量は0.93モル%、けん化度は98.2モル%、重合度は1900であった。また、上記したPVAに含まれるケイ素原子含有量の分析方法に従って求められた(A−B)/(B)の値は0.3/100であり、4%PVA水溶液のpHは6.0であった。
PVA6
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA1と同様の方法によりPVA6を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表2に示す。
PVA7
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA3と同様の方法によりPVA7を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表2に示す。
PVA8
メタノールによる洗浄の操作を省略した以外はPVA1と同様の方法によりPVA8を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表2に示す。
PVA9
けん化反応で得られたPVAを酢酸メチルで中和する前に、メタノールによる洗浄の操作を5回実施した以外はPVA1と同様の方法によりPVA9を合成した。得られたPVAの分析値を表2に示す。
PVA10
酢酸メチルの代わりに、けん化反応に用いた水酸化ナトリウムの5倍のモル数の酢酸を用いて中和を行い、さらにメタノールによる洗浄(浴比6倍)を室温で1時間行った以外はPVA1と同様の方法によりPVA10を合成した。得られたPVAの分析値を表2に示す。
PVA11
酢酸メチルによる中和を行わず、さらにメタノールによる洗浄(浴比6倍)を室温で1時間実施した以外はPVA1と同様の方法によりPVA11を合成した。得られたPVAの分析値を表2に示す。
PVA12〜19
酢酸ビニルおよびメタノールの仕込み量、シリル基を有する単量体の使用の有無およびその仕込み量、共重合成分の使用の有無、重合開始剤の使用量、重合反応の条件、けん化反応の条件等を表3に示すように変化させた以外はPVA1と同様の方法により、各種のPVA(PVA12〜19)を合成した。
PVA20
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA12と同様の方法によりPVA20を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
PVA21
ビニルエステル系重合体に対して、ビニルエステル系重合体の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比が0.01となるように、水酸化ナトリウムを10重量%含有するメタノール溶液を添加してけん化反応を行った以外は、PVA14と同様の方法によりPVA21を合成した。得られたPVAについて分析した結果を表4に示す。
実施例1〜実施例11
PVA1〜PVA11について、皮膜の耐水性、無機物を含有する皮膜の耐水性、およびPVAと無機物とのバインダー力を評価した。その結果を表5に示す。
比較例1〜比較例10
PVA12〜PVA21について、皮膜の耐水性、無機物を含有する皮膜の耐水性、およびPVAと無機物とのバインダー力を評価した。その結果を表5に示す。
Figure 2005194437
Figure 2005194437
Figure 2005194437
Figure 2005194437
Figure 2005194437
表5の結果から、本発明で使用されるビニルアルコール系重合体は、皮膜の耐水性、無機物を含有する皮膜の耐水性、および無機物とのバインダー力がバランスよく優れていることが分かる(実施例1〜11)。特に、ビニルアルコール系重合体が前述の式(IV)[0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100]を満足し、かつ4%水溶液のpHが4〜8の条件を満たす場合には、各種物性のバランスがさらに優れたものとなる(実施例1〜7)。
一方、P(ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度)×S(シリル基を有する単量体単位の含有量)が20以下のビニルアルコール系重合体は、無機物を含有する皮膜の耐水性、および無機物とのバインダー力が十分ではなく(比較例6)、P×Sが370以上のビニルアルコール系重合体は、水に完全に溶解しないことから、評価することができなかった(比較例5)。
1,2−グリコール結合量(Y)が1.4モル%以上のビニルアルコール系重合体は、皮膜の耐水性が十分ではないことが分かる(比較例4)。
粘度平均重合度(P)が200以下のビニルアルコール系重合体は、皮膜の耐水性、無機物を含有する皮膜の耐水性、および無機物とのバインダー力が十分ではなく(比較例8)、粘度平均重合度(P)が(2740Y−3880Y+3240)の式から導かれる値以上の場合には、皮膜の耐水性については優れた結果が得られたが、無機物を含有する皮膜の耐水性、および無機物とのバインダー力については、無機物を含有する水溶液がゲル化したため評価することができなかった(比較例7)。
シリル基含有単量体を全く含まないビニルアルコール系重合体は、無機物を含有する皮膜の耐水性、および無機物とのバインダー力が十分ではないことが分かる(比較例1〜3、9および10)。
II.インクジェット記録紙の製造と評価
下記の方法により、インクジェット記録紙を製造し、そのインク受理層の皮膜強度、ならびにインクジェットプリンターを用いて該記録材に印刷を行ったときの印刷斑と耐水性を評価した。
実施例12
PVA1の10%水溶液を調製した。また、シリカ(グレース製:サイロイドP409)をホモミキサーにて水に分散し、シリカの20%水分散液を調製した。このシリカ水分散液に、シリカ/PVA/カチオンポリマーの固形分基準の重量比が100/25/3となるように、濃度10%のPVA1水溶液およびカチオンポリマー(住友化学製:スミレーズレジン1001)を添加し、必要量の水を添加して固形分濃度14%のインク受理層用塗工液を得た。次いで、調製したインク受理層用の塗工液を原紙(坪量:60g/mの上質紙)の表面に、ワイヤバーコーターを用いて固形分換算で11g/mの割合で塗工した後、100℃の熱風乾燥機で3分間乾燥してインクジェット記録紙を得た。
[インク受理層の皮膜強度]
得られたインクジェット記録紙について、IGT印刷適性試験機(熊谷理機工業(株)製)を用い、JIS P8129に準拠して皮膜強度の測定を行った。すなわち、印圧25kg/cmにて測定を行い、インクジェット記録紙の表面の紙むけが起こった時点の印刷速度(cm/sec)を以って表面強度とし、以下の基準にしたがってインク受理層の皮膜強度を評価した。なお、IGT印刷適性試験機を用いて測定を行うにあたり、IGTピックオイルM(大日本インキ化学工業製)を用い、スプリング駆動Bの機構を採用した。
◎:260cm/sec以上。
○:220cm/sec以上260cm/sec未満。
△:180cm/sec以上220cm/sec未満。
×:180cm/sec未満。
[印刷斑]
インクジェット記録紙に、インクジェットプリンター(EPSON製:PM−3300C)を用いてブラックインクのハーフトーンベタ印刷を行い、印刷斑を以下の基準にしたがって目視判定した。
◎:印刷斑が全く観察されず、良好な画像が得られた。
○:印刷斑がごく僅かに観察されたが、画像に大きな影響はなかった。
△:印刷斑が部分的に発生し、画像の品質が損なわれた。
×:印刷斑が全体に発生し、著しく画像の品質が損なわれた。
[耐水性]
インクジェット記録紙に、インクジェットプリンター(EPSON製:PM−3300C)を用いてブラックインクのベタ印刷を行った。該ベタ印刷の境界部分にシリンジを用いて水を1mL滴下し、24時間放置した後、印刷の滲みの程度を以下の基準にしたがって目視判定した。
◎:滲みが全く観察されない。
○:滲みがごく僅かに観察された。
△:滲みが部分的に観察された。
×:滲みが全体的に観察された。
実施例13〜24
実施例12において用いたシリル基を有するPVAに代えて、表6に示したシリル基を有するPVAを用い、PVAとシリカとの配合比を変更したこと以外は、実施例12と同様にしてインクジェット記録紙を製造し、そのインク受理層の皮膜強度を評価し、インクジェットプリンターを用いて当該記録材に印刷を行ったときの印刷斑と耐水性を評価した。その結果を表6に併せて示す。
比較例9〜18
実施例12において用いたシリル基を有するPVAに代えて、表6に示したPVAを用い、PVAとシリカとの配合比を変更したこと以外は、実施例12と同様にしてインクジェット記録紙を製造し、そのインク受理層の皮膜強度を評価し、インクジェットプリンターを用いて該記録材に印刷を行ったときの印刷斑と耐水性を評価した。その結果を表6に併せて示す。
Figure 2005194437
表6の結果から、本発明のコーティング剤でインク受理層を形成してインクジェット記録紙を製造した場合、該記録紙のインク受理層の皮膜強度が良好であり、また、インクジェットプリンターを用いて該記録紙に印刷を行ったときの印刷斑および耐水性が良好であることが分かる(実施例12〜24)。
特に、ビニルアルコール系重合体が前述の式(IV)[0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100]を満足し、かつ4%水溶液のpHが4〜8の条件を満たし、しかもビニルアルコール系重合体/シリカの重量比が15/100〜60/100の範囲内である場合には、各種物性のバランスがさらに優れたものとなる(実施例12〜18)。
一方、P(ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度)×S(シリル基を有する単量体単位の含有量)が20以下のビニルアルコール系重合体をインク受理層のバインダーに使用した場合、インク受理層の皮膜強度および記録紙の耐水性が十分ではなく(比較例14)、P×Sが370以上のビニルアルコール系重合体は、該ビニルアルコール系重合体が水に完全に溶解しないことから、評価することができなかった(比較例13)。
1,2−グリコール結合量(Y)が1.4モル%以上のビニルアルコール系重合体は、インク受理層の皮膜強度および皮膜の耐水性が十分ではないことが分かる(比較例12)。
粘度平均重合度(P)が200以下のビニルアルコール系重合体は、インク受理層の皮膜強度、印刷斑および記録紙の耐水性が十分ではなく(比較例16)、粘度平均重合度(P)が(2740Y−3880Y+3240)の式から導かれる値以上の場合には、無機物を含有する水溶液がゲル化したため評価することができなかった(比較例15)。
シリル基含有単量体を全く含まないビニルアルコール系重合体をインク受理層のバインダーに使用した場合、インク受理層の皮膜強度、ならびに記録紙の印刷品質および耐水性が十分ではないことが分かる(比較例9〜11、17および18)。
III.感熱記録材の製造と評価
下記の方法により、感熱記録紙を製造し、その耐水性および耐可塑剤性を評価した。
実施例25
(1)感熱染料、顕色剤および顔料の水性分散液の調製
[感熱染料の水性分散液Aの組成]
ロイコ染料(山本化成製、商品名:OBD−2) 20%
濃度10%のPVA(クラレ製:PVA203)水溶液 20%
水 60%
[顕色剤の水性分散液Bの組成]
顕色剤(日本曹達製:D−8) 20%
濃度10%のPVA(クラレ製:PVA203)水溶液 20%
水 60%
[顔料の水性分散液Cの組成]
ステアリン酸アミド 10%
焼成カオリン 20%
濃度5%のPVA(クラレ製:PVA205)水溶液 30%
水 40%
上記組成の水性分散液A、水性分散液Bおよび水性分散液Cをそれぞれ別々に調製し、ビーカー中で15分間の予備攪拌を行った。
次に水性分散液Aをサンドグラインダー(関西ペイント株式会社製:バッチ式卓上サンドグラインダー)に移し、ガラスビーズ(直径0.5mmのソーダ石英ガラス)300mLを加え、高回転数(2170rpm)、冷却下の条件で、6時間かけて分散質を分散させた。レーザー回折式粒度測定機(島津株式会社製:SALD−1000)により測定した結果、得られた感熱染料の水性分散液Aの分散粒子径は0.46μmであった。また、色差計(日本電色工業株式会社製:Z−1001DP)により測定した結果、水性分散液Aの白色度は−8.1であった。なお、白色度は0が完全に白色であることを示し、マイナスの値が大きくなるほど着色していることを示す。
同様に、水性分散液Bをサンドグラインダーに移し、ガラスビーズ(直径0.5mmのソーダ石英ガラス)300mLを加え、高回転数(2170rpm)、冷却下の条件で、6時間かけて分散質を分散させた。
また、水性分散液Cをホモジナイザーに移し、回転数10000rpmの条件で2分間かけて分散質を分散させた。
(2)感熱発色層用塗工液の調製
上記の水性分散液Aを2部、水性分散液Bを4部、水性分散液Cを2部およびPVA3の10%水溶液を2部混合して攪拌した後、必要量の水を加えて固形分濃度21%の感熱発色層用の塗工液を調製した。
(3)感熱オーバーコート層用塗工液の調製
エチレングリコール−プロピレングリコール共重合体(日本油脂株式会社製:プロノン104)0.2部、シリカ(塩野義製薬社製:カープレックスCS−5)50部に水72.5部を加えて十分に分散させながら、PVA1の12%水溶液690部をゆっくり室温で加えた後、さらにステアリン酸亜鉛分散液(中京油脂株式会社製、ハイドリンZ730;固形分濃度30%)を7.5部加えて、PVA1のシリカ分散水溶液を作成した。
得られたPVA1のシリカ分散水溶液を攪拌しながら、このシリカ分散水溶液に乳酸チタンの10%水溶液30部をゆっくり室温で加え、必要量の水を加えて固形分濃度15%の感熱オーバーコート層用塗工液を調製した。
(4)感熱記録紙の製造
原紙(坪量:52g/mの上質紙)の表面に、上記(2)で調製した感熱発色層用の塗工液を、ワイヤバーコーターを用いて固形分換算で6g/m塗工し、50℃で5分間乾燥した。得られた塗工紙をスーパーカレンダー(線圧:30kg/cm)にて表面処理し、その塗工紙表面に上記(3)で調製した感熱オーバーコート層用塗工液を、ワイヤバーコーターを用いて固形分換算で3g/m塗工した後、50℃で10分間乾燥した。さらに該塗工紙をスーパーカレンダー(線圧:30kg/cm)にて表面処理して感熱記録紙を製造した。
感熱記録紙を製造した直後に、感熱ファクシミリ用プリンター(リコー株式会社製:リファックス300)を用いて感熱記録紙に印字し、下記の方法にしたがってその耐水性および耐可塑剤性を評価した。その結果を表7に示す。
[耐水性]
印字された感熱記録紙を30℃蒸留水中に24時間浸漬し、以下の方法によりその記録濃度およびウエットラブの評価を行った。
・記録濃度
蒸留水浸漬前および蒸留水浸漬後において、それぞれ印字部分の発色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、型式:RD−514)を用いて測定した。蒸留水浸漬前における印字部分の発色濃度に対し、蒸留水浸漬後における印字部分の発色濃度の低下が少ないほど感熱記録紙の耐水性が優秀であるとして、最も耐水性が優秀な場合を5、最も耐水性が劣る場合を1とする5段階評価を行った。
・ウエットラブ
蒸留水浸漬後において、印字された部分の表面を指先で摩擦し、感熱記録紙の塗工層の溶出状態を観察した。感熱記録紙の塗工層の溶出が少ないほど感熱記録紙の耐水性が優秀であるとして、最も耐水性が優秀な場合を5、最も耐水性が劣る場合を1とする5段階評価を行った。
[耐可塑剤性]
印字された感熱記録紙に軟質ポリ塩化ビニルフィルムを重ね合わせ、30℃、300g/mの荷重下で24時間両者を接触させた。その接触前後において、それぞれ印字部分の発色濃度をマクベス濃度計(マクベス社製、型式:RD−514)を用いて測定した。両者を接触させる前における印字部分の発色濃度に対し、接触後における印字部分の発色濃度の低下が少ないほど感熱記録紙の耐可塑剤性が優秀であるとして、最も耐可塑剤性が優秀な場合を5、最も耐可塑剤性が劣る場合を1とする5段階評価を行った。
実施例26〜35
実施例25においてオーバーコート層に用いたシリル基を有するPVAに代えて、表7に示したシリル基を有するPVAを用いたこと以外は、実施例25と同様にして感熱記録紙を製造し、その耐水性および耐可塑剤性を評価した。その結果を表7に併せて示す。
比較例19〜28
実施例25においてオーバーコート層に用いたシリル基を有するPVAに代えて、表7に示したPVAを用いたこと以外は、実施例25と同様にして感熱記録紙を製造し、その耐水性および耐可塑剤性を評価した。その結果を表7に併せて示す。
Figure 2005194437
表7の結果から、本発明のコーティング剤でオーバーコート層および感熱発色層を形成して感熱記録紙を製造した場合、感熱記録紙の耐水性および耐可塑剤性が良好であることが分かる(実施例25〜35)。
特に、オーバーコート層に用いたビニルアルコール系重合体が、前述の式(IV)[0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100]を満足し、かつ4%水溶液のpHが4〜8の条件を満たす場合には、各種物性がさらに優れたものとなる(実施例25〜31)。
一方、P(ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度)×S(シリル基を有する単量体単位の含有量)が20以下のビニルアルコール系重合体をオーバーコート層のバインダーに使用した場合、オーバーコート層の耐水性および耐可塑剤性が十分ではなく(比較例24)、P×Sが370以上のビニルアルコール系重合体は、該ビニルアルコール系重合体が水に完全に溶解しないことから、評価することができなかった(比較例23)。
1,2−グリコール結合量(Y)が1.4モル%以上のビニルアルコール系重合体は、オーバーコート層の耐水性および耐可塑剤性が十分ではないことが分かる(比較例22)。
粘度平均重合度(P)が200以下のビニルアルコール系重合体は、オーバーコート層の耐水性および耐可塑剤性が十分ではなく(比較例26)、粘度平均重合度(P)が(2740Y−3880Y+3240)の式から導かれる値以上の場合には、無機物を含有する水溶液がゲル化したため評価することができなかった(比較例25)。
シリル基含有単量体を全く含まないビニルアルコール系重合体をオーバーコート層のバインダーに使用した場合、オーバーコート層の耐水性および耐可塑剤性が十分ではないことが分かる(比較例19〜21、27および28)。

Claims (6)

  1. 下記の一般式(1)
    Figure 2005194437
    (Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数である。)
    で示されるシリル基を有する単量体単位を含有するビニルエステル系重合体をけん化することによって得られるビニルアルコール系重合体であって、下記式(I)、(II)および(III)を満足することを特徴とするビニルアルコール系重合体を含有することを特徴とするコーティング剤。
    20<P×S<370 ・・・(I)
    200<P<2740Y−3880Y+3240 ・・・(II)
    0.9<Y<1.4 ・・・(III)
    P:ビニルアルコール系重合体の粘度平均重合度
    S:一般式(1)で示されるシリル基を有する単量体単位の含有量(モル%)
    Y:ビニルアルコール系重合体中の1,2−グリコール結合量(モル%)
  2. ビニルアルコール系重合体が下記式(IV)を満足し、かつ4%水溶液にした時のpHが4〜8であることを特徴とする請求項1記載のコーティング剤。
    0.1/100≦(A−B)/(B)≦50/100 ・・・(IV)
    A:ビニルアルコール系重合体を灰化した後、ICP発光分析により求められるケイ素原子の含有量(ppm)
    B:ビニルアルコール系重合体を水酸化ナトリウムを含有するメタノールで洗浄し、次いでメタノールによるソックスレー抽出により洗浄し、乾燥したのち灰化し、ICP発光分析により求められるケイ素原子の含有量(ppm)
  3. シリル基を有する単量体が下記の一般式(2)
    Figure 2005194437
    (式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、mは0〜2の整数であり、nは0〜4の整数である。)
    または下記の一般式(3)
    Figure 2005194437
    (式中、Rは炭素数1〜5のアルキル基であり、Rはアルコキシル基またはアシロキシル基であって、これらの基は酸素を含有する置換基を有していてもよく、Rは水素原子またはメチル基であり、Rは水素原子または炭素数1〜5のアルキル基であり、Rは炭素数1〜5のアルキレン基であるか、または酸素原子もしくは窒素原子を含む2価の炭化水素基であり、mは0〜2の整数である。)
    で示される単量体であることを特徴とする請求項1または2記載のコーティング剤。
  4. 請求項1〜3のいずれか記載のコーティング剤を基材に塗工してなる塗工物。
  5. 請求項1〜3のいずれか記載のコーティング剤を基材に塗工してなるインクジェット記録材。
  6. 請求項1〜3のいずれか記載のコーティング剤を基材に塗工してなる感熱記録材。
JP2004003477A 2004-01-08 2004-01-08 コーティング剤およびそれを塗工してなる塗工物 Expired - Fee Related JP4575672B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004003477A JP4575672B2 (ja) 2004-01-08 2004-01-08 コーティング剤およびそれを塗工してなる塗工物

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004003477A JP4575672B2 (ja) 2004-01-08 2004-01-08 コーティング剤およびそれを塗工してなる塗工物

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005194437A true JP2005194437A (ja) 2005-07-21
JP4575672B2 JP4575672B2 (ja) 2010-11-04

Family

ID=34818369

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004003477A Expired - Fee Related JP4575672B2 (ja) 2004-01-08 2004-01-08 コーティング剤およびそれを塗工してなる塗工物

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4575672B2 (ja)

Cited By (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2012173127A1 (ja) 2011-06-14 2012-12-20 株式会社クラレ ビニルアルコール系重合体、これを含む水溶液、コーティング剤、インクジェット記録材、感熱記録材及び剥離紙原紙
WO2013042744A1 (ja) 2011-09-22 2013-03-28 株式会社クラレ ビニルアルコール系重合体を含有する組成物
JP2013237254A (ja) * 2011-09-22 2013-11-28 Kuraray Co Ltd 感熱記録材、その製造方法及びこの感熱記録材を用いた印刷物の製造方法
JP2013240975A (ja) * 2011-09-22 2013-12-05 Kuraray Co Ltd インクジェット記録材、その製造方法、及びそれを用いた印刷物の製造方法
WO2014112625A1 (ja) * 2013-01-21 2014-07-24 日本合成化学工業株式会社 シリル基含有ポリビニルアルコール系樹脂及びその用途
CN104237206A (zh) * 2014-08-29 2014-12-24 中国航空工业集团公司北京航空材料研究院 测定硅粉中铁、锰、铝、钛、镍、钙、镁元素的分析方法
JP2015174920A (ja) * 2014-03-14 2015-10-05 株式会社クラレ コーティング剤及び塗工物
WO2022004636A1 (ja) * 2020-06-30 2022-01-06 株式会社クラレ 変性ビニルアルコール系重合体、水溶液、及び変性ビニルアルコール系重合体の製造方法

Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6174887A (ja) * 1984-09-20 1986-04-17 Kuraray Co Ltd 感熱記録用シ−ト
JPH03175404A (ja) * 1989-12-05 1991-07-30 Kuraray Co Ltd 偏光フイルムおよびその製造法
JP2000309607A (ja) * 1998-12-09 2000-11-07 Kuraray Co Ltd ビニルアルコール系重合体および組成物
JP2002347331A (ja) * 2001-05-28 2002-12-04 Kuraray Co Ltd 被記録材
JP2004043644A (ja) * 2002-07-11 2004-02-12 Kuraray Co Ltd ビニルアルコール系重合体およびその製造方法

Patent Citations (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6174887A (ja) * 1984-09-20 1986-04-17 Kuraray Co Ltd 感熱記録用シ−ト
JPH03175404A (ja) * 1989-12-05 1991-07-30 Kuraray Co Ltd 偏光フイルムおよびその製造法
JP2000309607A (ja) * 1998-12-09 2000-11-07 Kuraray Co Ltd ビニルアルコール系重合体および組成物
JP2002347331A (ja) * 2001-05-28 2002-12-04 Kuraray Co Ltd 被記録材
JP2004043644A (ja) * 2002-07-11 2004-02-12 Kuraray Co Ltd ビニルアルコール系重合体およびその製造方法

Cited By (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN103732639A (zh) * 2011-06-14 2014-04-16 株式会社可乐丽 乙烯醇类聚合物、含有该聚合物的水溶液、涂层剂、喷墨记录材料、热敏记录材料和剥离纸原纸
CN103732639B (zh) * 2011-06-14 2016-08-24 株式会社可乐丽 乙烯醇类聚合物、含有该聚合物的水溶液、涂层剂、喷墨记录材料、热敏记录材料和剥离纸原纸
WO2012173127A1 (ja) 2011-06-14 2012-12-20 株式会社クラレ ビニルアルコール系重合体、これを含む水溶液、コーティング剤、インクジェット記録材、感熱記録材及び剥離紙原紙
US9309431B2 (en) 2011-06-14 2016-04-12 Kuraray Co., Ltd. Vinyl alcohol polymer, aqueous solution, coating agent, ink jet recording material, thermal recording material and base paper for release paper containing same
US9243161B2 (en) 2011-09-22 2016-01-26 Kuraray Co., Ltd. Composition containing vinyl alcohol polymer
WO2013042744A1 (ja) 2011-09-22 2013-03-28 株式会社クラレ ビニルアルコール系重合体を含有する組成物
JP2013237254A (ja) * 2011-09-22 2013-11-28 Kuraray Co Ltd 感熱記録材、その製造方法及びこの感熱記録材を用いた印刷物の製造方法
JP2013240975A (ja) * 2011-09-22 2013-12-05 Kuraray Co Ltd インクジェット記録材、その製造方法、及びそれを用いた印刷物の製造方法
JPWO2013042744A1 (ja) * 2011-09-22 2015-03-26 株式会社クラレ ビニルアルコール系重合体を含有する組成物
JP2014156595A (ja) * 2013-01-21 2014-08-28 Nippon Synthetic Chem Ind Co Ltd:The シリル基含有ポリビニルアルコール系樹脂及びその用途
WO2014112625A1 (ja) * 2013-01-21 2014-07-24 日本合成化学工業株式会社 シリル基含有ポリビニルアルコール系樹脂及びその用途
JP2015174920A (ja) * 2014-03-14 2015-10-05 株式会社クラレ コーティング剤及び塗工物
CN104237206A (zh) * 2014-08-29 2014-12-24 中国航空工业集团公司北京航空材料研究院 测定硅粉中铁、锰、铝、钛、镍、钙、镁元素的分析方法
WO2022004636A1 (ja) * 2020-06-30 2022-01-06 株式会社クラレ 変性ビニルアルコール系重合体、水溶液、及び変性ビニルアルコール系重合体の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP4575672B2 (ja) 2010-11-04

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR100601014B1 (ko) 비닐 알콜계 중합체 및 이의 제조방법
KR100568454B1 (ko) 비닐 알콜계 중합체 및 이의 제조방법
TWI623555B (zh) 乙烯醇系聚合物、包含其之水溶液、塗布劑、噴墨記錄材、感熱記錄材及剝離紙原紙
US9243161B2 (en) Composition containing vinyl alcohol polymer
TWI553026B (zh) 聚氧化烯改性乙烯醇系聚合物及其用途
JP3816908B2 (ja) ビニルアルコール系重合体およびその製造方法
JP4575672B2 (ja) コーティング剤およびそれを塗工してなる塗工物
JP2013079374A (ja) ビニルアルコール系重合体を含有する組成物
JP3774450B2 (ja) ビニルアルコール系重合体およびその製造方法
JP4381578B2 (ja) 感熱記録材料
JP5956888B2 (ja) 感熱記録材、その製造方法及びこの感熱記録材を用いた印刷物の製造方法
JP4194875B2 (ja) 感熱記録材料
JP4913341B2 (ja) 樹脂組成物およびそれを用いた記録材
JP2016124172A (ja) 組成物の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060727

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080516

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20100301

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100309

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100510

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20100608

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20100708

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100817

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100820

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4575672

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130827

Year of fee payment: 3

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees