JP2015034247A - コーティング剤及び塗工物 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、主鎖にビニリデン型の1,3−ジオール構造を有するヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体を含有するコーティング剤及びそれが基材の表面に塗工されてなる塗工物に関する。
ビニルアルコール系重合体(以下、「ビニルアルコール系重合体」を「PVA」と略記することがある)は、数少ない結晶性の水溶性高分子である。その優れた水溶性、皮膜特性(強度、耐油性、造膜性、酸素ガスバリア性など)を利用して、PVAは、乳化剤、懸濁剤、界面活性剤、繊維加工剤、各種バインダー、紙加工剤、接着剤、フィルムなどに広く用いられている。特殊な場合を除き、PVAは使用に際して水溶液の状態を経るが、その際の取り扱い性に難点を有することがある。例えば、紙加工剤として使用される際、水溶液を調製し、単独あるいは他薬剤と混合した液をコーティング剤(塗工液)とすることがある。PVA水溶液の調製後、特に水温が低い冬期において時間とともに水溶液の粘度が上昇して流動性が低下し、極端な場合はゲル化により流動性を失うことがある。また、水溶液を調製する際の攪拌によって発泡し、生じた泡が消えにくい、すなわち泡切れが悪いこともある。そのため、コーティング剤中に泡を含んだ状態で塗工された場合、泡の部分が塗工欠陥となり、塗工物の物性(耐水性、耐油性など)が低下することもある。
PVA水溶液の粘度安定性を改善する方法として、PVAに疎水基またはイオン性基を導入する方法が知られている。しかし、疎水基を導入する方法では、PVAの水に対する溶解性が低下して、水溶液の調製に高温が必要となったり、調製した水溶液の曇点が低くなったりすることがある。イオン性基を導入する方法では、形成した皮膜の耐水性が低くなることがある。
特許文献1には、水溶液の泡立ちを抑えたヒドロキシアルキル基を側鎖に有するPVAが開示されている。しかしながら、低温における水溶液の粘度安定性についてはまだまだ満足のいくものではなく、更なる向上が求められている。特許文献2、3には、水溶液の粘度安定性を向上させた側鎖に1,2−グリコール結合を有するPVAが開示されている。しかしながら、当該PVAは、樹脂中に残存するアリルエーテルの影響により塗工物の物性が低下することがある。
また、特許文献4には、側鎖に1,2−グリコール結合を有するPVAとジルコニウム化合物を含有してなる樹脂組成物が開示されている。しかし、ジルコニウム化合物とのキレート効果が十分でないため、低温反応時に十分な耐水性を得られないことがある。
本発明は、粘度安定性に優れるとともに発泡が少なく、しかも、耐水性、印刷適性および耐油性に優れる塗工物を与えることのできるコーティング剤、および、当該コーティング剤が基材の表面に塗工されてなる、耐水性、印刷適性および耐油性に優れる塗工物を提供することを目的とする。
本発明者らが鋭意検討した結果、主鎖に1,3−ジオール構造を有するヒドロキシメチル基含有PVAを含有するコーティング剤を用いることによって上記課題を解決できることを見出し、当該知見に基づいてさらに検討を重ねて本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、
[1]ビニルアルコール単位、及び下記式(1)で示される構造単位を含むヒドロキシメチル基含有PVAを含有するコーティング剤;
[1]ビニルアルコール単位、及び下記式(1)で示される構造単位を含むヒドロキシメチル基含有PVAを含有するコーティング剤;
[2]前記ヒドロキシメチル基含有PVAにおける前記式(1)で示される構造単位の含有率が0.1〜10モル%である、[1]に記載のコーティング剤;
[3]前記ヒドロキシメチル基含有PVAにおけるけん化度が80〜99.9モル%である、[1]または[2]に記載のコーティング剤;
[4]架橋剤をさらに含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載のコーティング剤;
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のコーティング剤が基材の表面に塗工されてなる塗工物;
[6]感熱記録紙、インクジェット記録紙、剥離紙原紙または耐油紙である、[5]に記載の塗工物;
に関する。
[3]前記ヒドロキシメチル基含有PVAにおけるけん化度が80〜99.9モル%である、[1]または[2]に記載のコーティング剤;
[4]架橋剤をさらに含有する、[1]〜[3]のいずれかに記載のコーティング剤;
[5][1]〜[4]のいずれかに記載のコーティング剤が基材の表面に塗工されてなる塗工物;
[6]感熱記録紙、インクジェット記録紙、剥離紙原紙または耐油紙である、[5]に記載の塗工物;
に関する。
本発明によれば、粘度安定性に優れるとともに発泡が少なく、しかも、耐水性、印刷適性および耐油性に優れる塗工物を与えることのできるコーティング剤、および、当該コーティング剤が基材の表面に塗工されてなる、耐水性、印刷適性および耐油性に優れる塗工物が提供される。
本発明のコーティング剤が含有するヒドロキシメチル基含有PVAは、ビニルアルコール単位、及び下記式(1)で示される構造単位を含む。
上記のヒドロキシメチル基含有PVAは、上記式(1)で示される構造単位(つまり、重合体の主鎖に1,3−ジオール構造を有する構造)を有することにより、結晶性を低下させ、溶解性や粘度安定性などの取り扱い性を向上させることができる。また、当該ヒドロキシメチル基含有PVAを含有するコーティング剤を基材表面に塗工した際、得られる塗工物は1,3−ジオール構造の高い水素結合力により、結晶性の低下に起因する皮膜強度の低下を軽減させることができるため、耐水性、印刷適性および耐油性に優れる。
上記のヒドロキシメチル基含有PVAにおける式(1)で示される構造単位の含有率は特に限定されないが、重合体中の全構造単位を100モル%として、好ましくは0.1〜10モル%であり、より好ましくは0.2〜10モル%であり、さらに好ましくは0.3〜10モル%である。含有率が0.1モル%未満であると、得られるPVAの、水に対する溶解性、水溶液の粘度安定性、水溶液の発泡性の改善、得られる塗工物の印刷適性が不十分となることがある。含有率が10モル%を超えると、PVAの結晶性が低下し、上記塗工物の印刷適性、耐水性が低下する傾向がある。なお、本発明において重合体中の構造単位とは、重合体を構成する繰り返し単位のことをいう。
上記のヒドロキシメチル基含有PVAのJIS K6726に準拠して測定した粘度平均重合度は特に限定されないが、好ましくは100〜7,000であり、より好ましくは200〜5,000であり、さらに好ましくは200〜4,000である。粘度平均重合度が100未満になると、皮膜にした際に当該皮膜の皮膜強度が低下することがある。粘度平均重合度が7,000を超えるヒドロキシメチル基含有PVAは、工業的な製造が難しい。
上記のヒドロキシメチル基含有PVAのけん化度(すなわち、ヒドロキシメチル基含有PVAにおける水酸基とエステル結合との合計に対する水酸基のモル分率)は特に限定されないが、塗工物における耐水性、印刷適性の観点から、好ましくは80〜99.9モル%であり、より好ましくは90〜99.5モル%である。けん化度が80モル%未満になると、塗工物の印刷適性が十分に得られないことがある。また、けん化度が99.9モル%より高いPVAは、一般に製造が難しい。
上記のヒドロキシメチル基含有PVAの製造方法は特に限定されない。例えば、ビニルエステル系単量体と、それと共重合可能でありかつ式(1)で示される構造単位に変換可能な不飽和単量体とを共重合し、得られた共重合体のビニルエステル単位をビニルアルコール単位に変換し、一方で式(1)で示される構造単位に変換可能な不飽和単量体に由来する単位を式(1)で示される構造単位に変換する方法が挙げられる。式(1)で示される構造単位に変換可能な不飽和単量体の具体例を以下の式(2)に示す。
式(2)において、Rは炭素数1〜10のアルキル基を示す。Rの構造としては特に限定されず、一部に分岐、環状構造を有していてもよい。また、一部が他の官能基で置換されていてもよい。Rは好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、該アルキル基の例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基などの直鎖または分岐を有するアルキル基が挙げられる。また、Rが有していてもよい置換基としては、アルコキシ基、ハロゲン原子、水酸基などが挙げられる。
式(2)で示される不飽和単量体としては、例えば1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジプロピオニルオキシ−2−メチレンプロパン、1,3−ジブチリルオキシ−2−メチレンプロパンなどが挙げられる。中でも、1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパンが製造容易性の点で好ましく用いられる。
式(2)で示される不飽和単量体は、一般的にPVAの変性に用いられる他のアリル型不飽和単量体(例えば、アリルグリシジルエーテル等)に比べ、ビニルエステル系単量体との共重合反応が進行し易い。従って、上記のヒドロキシメチル基含有PVAは、重合時における変性量や重合度の制約が少なく、変性量及び重合度を高くすることができる。また、重合終了時に残留する未反応の当該不飽和単量体の量を少なくすることができることから、上記のヒドロキシメチル基含有PVAは工業的な製造時における環境面及びコスト面においても優れている。
上記のヒドロキシメチル基含有PVAの製造に用いられるビニルエステル系単量体は特に限定されないが、例えば、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、ラウリン酸ビニル、パルミチン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、オレイン酸ビニル、安息香酸ビニルである。経済的観点からは酢酸ビニルが好ましい。
式(2)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体とを共重合する重合方式は、回分重合、半回分重合、連続重合、半連続重合のいずれでもよく、重合方法には塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法などの公知の方法を適用できる。無溶媒またはアルコールなどの溶媒中で重合を進行させる塊状重合法または溶液重合法が、通常採用される。高重合度のビニルエステル系共重合体を得る場合には、乳化重合法の採用が選択
肢の一つとなる。溶液重合法の溶媒は特に限定されないが、例えばアルコールである。溶液重合法の溶媒に使用されるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールである。重合系における溶媒の使用量は、目的とするヒドロキシメチル基含有PVAの粘度平均重合度に応じて溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよく、例えば溶媒がメタノールの場合、溶媒と重合系に含まれる全単量体との重量比{=(溶媒)/(全単量体)}にして0.01〜10の範囲、好ましくは0.05〜3の範囲から選択するのがよい。
肢の一つとなる。溶液重合法の溶媒は特に限定されないが、例えばアルコールである。溶液重合法の溶媒に使用されるアルコールは、例えばメタノール、エタノール、プロパノールなどの低級アルコールである。重合系における溶媒の使用量は、目的とするヒドロキシメチル基含有PVAの粘度平均重合度に応じて溶媒の連鎖移動を考慮して選択すればよく、例えば溶媒がメタノールの場合、溶媒と重合系に含まれる全単量体との重量比{=(溶媒)/(全単量体)}にして0.01〜10の範囲、好ましくは0.05〜3の範囲から選択するのがよい。
式(2)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合に使用される重合開始剤は、公知の重合開始剤、例えばアゾ系開始剤、過酸化物系開始剤、レドックス系開始剤から重合方法に応じて選択される。アゾ系開始剤は、例えば2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)である。過酸化物系開始剤は、例えばジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジエトキシエチルパーオキシジカーボネートなどのパーカーボネート系化合物;t−ブチルパーオキシネオデカネート、α−クミルパーオキシネオデカネートなどのパーエステル化合物;過酸化アセチル;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキシド;2,4,4−トリメチルペンチル−2−パーオキシフェノキシアセテートである。過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過酸化水素などを上記開始剤に組み合わせて重合開始剤としてもよい。レドックス系開始剤は、例えば上記の過酸化物系開始剤と亜硫酸水素ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、酒石酸、L−アスコルビン酸、ロンガリットなどの還元剤とを組み合わせた重合開始剤である。重合開始剤の使用量は、重合触媒により異なるために一概には決められないが、重合速度に応じて選択される。例えば重合開始剤にアゾビスイソブチロニトリルあるいは過酸化アセチルを用いる場合、ビニルエステル系単量体に対して0.01〜0.2モル%が好ましく、0.02〜0.15モル%がより好ましい。重合温度は特に限定されないが、室温〜150℃程度が適当であり、好ましくは40℃以上かつ使用する溶媒の沸点以下である。
式(2)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合は、本発明の効果が得られる限り、連鎖移動剤の存在下で行ってもよい。連鎖移動剤は、例えばアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒドなどのアルデヒド類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;2−ヒドロキシエタンチオールなどのメルカプタン類;ホスフィン酸ナトリウム一水和物などのホスフィン酸塩類などである。なかでもアルデヒド類及びケトン類が好適に用いられる。重合系への連鎖移動剤の添加量は、添加する連鎖移動剤の連鎖移動係数及び目的とするヒドロキシメチル基含有PVAの重合度などに応じて決定することができるが、一般にビニルエステル系単量体100質量部に対して0.1〜10質量部が好ましい。
式(2)で示される不飽和単量体とビニルエステル系単量体との共重合により得られたビニルエステル系共重合体をけん化して、上記のヒドロキシメチル基含有PVAを得ることができる。該ビニルエステル系共重合体をけん化することによって、共重合体中のビニルエステル単位はビニルアルコール単位に変換される。また、式(2)で示される不飽和単量体に由来する単位のエステル結合も加水分解され、式(1)で表される1,3−ジオール構造に変換される。したがって、上記のヒドロキシメチル基含有PVAは、けん化後にさらに加水分解等の反応を行わなくても製造することができる。
ビニルエステル系共重合体のけん化は、例えばアルコールまたは含水アルコールに当該共重合体が溶解した状態で行うのがよい。けん化に使用するアルコールは、例えばメタノール、エタノールなどの低級アルコールであり、好ましくはメタノールである。けん化に使用するアルコールは、その重量の40重量%以下であれば、アセトン、酢酸メチル、酢酸エチル、ベンゼンなどの溶媒を含んでもよい。けん化に使用する触媒は、例えば水酸化カリウム、水酸化ナトリウムなどのアルカリ金属の水酸化物、ナトリウムメチラートなどのアルカリ触媒、鉱酸などの酸触媒である。けん化を行う温度は限定されないが、20〜60℃の範囲が好適である。けん化の進行に従ってゲル状の生成物が析出してくる場合には、生成物を粉砕した後、洗浄、乾燥して、ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体を得ることができる。けん化方法は、前述した方法に限らず公知の方法を適用できる。
上記のヒドロキシメチル基含有PVAは、本発明の効果が得られる限り、式(1)で示される構造単位、ビニルアルコール単位及びビニルエステル単位以外の構造単位をさらに含むことができる。当該構造単位は、例えばビニルエステル系単量体と共重合可能でありかつ式(1)で示される構造単位に変換可能な不飽和単量体、及びビニルエステル系単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体に由来する構造単位である。エチレン性不飽和単量体は、例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブチレン、1−ヘキセンなどのα−オレフィン類;アクリル酸及びその塩;アクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;メタクリル酸及びその塩;メタクリル酸エステル基を有する不飽和単量体;アクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、アクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、アクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、メタクリルアミドプロパンスルホン酸及びその塩、メタクリルアミドプロピルジメチルアミン及びその塩(例えば4級塩);メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、i−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、i−ブチルビニルエーテル、t−ブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、ステアリルビニルエーテル、2,3−ジアセトキシ−1−ビニルオキシプロパンなどのビニルエーテル類;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのシアン化ビニル類;塩化ビニル、フッ化ビニルなどのハロゲン化ビニル類;塩化ビニリデン、フッ化ビニリデンなどのハロゲン化ビニリデン類;酢酸アリル、2,3−ジアセトキシ−1−アリルオキシプロパン、塩化アリルなどのアリル化合物;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和ジカルボン酸及びその塩またはエステル;ビニルトリメトキシシランなどのビニルシリル化合物、酢酸イソプロペニルである。
当該ヒドロキシメチル基含有PVAにおける式(1)で示される構造単位、ビニルアルコール単位及びその他任意の構成単位の配列順序には特に制限はなく、ランダム、ブロック、交互などのいずれであってもよい。
本発明のコーティング剤は上記のヒドロキシメチル基含有PVAを含む。本発明のコーティング剤の好ましい態様としては、上記のヒドロキシメチル基含有PVAが水に溶解しているものが挙げられる。本発明のコーティング剤は、得られる皮膜の耐水性を向上させる観点から架橋剤をさらに含有するのが好ましい。
当該架橋剤としては特に限定されず、例えば、グリオキザール、尿素樹脂、メラミン樹脂、多価金属塩、多価イソシアネート、ポリアミドエピクロルヒドリン系の化合物(例:Ashland社製、Polycup 172)などが挙げられるが、安全性、経済性、反応性の観点から、ジルコニウム化合物、チタン化合物などの多価金属塩、ポリアミドエピクロルヒドリン系の化合物が特に好ましい。
本発明のコーティング剤が架橋剤を含有する場合、その含有量はコーティング剤の用途などに応じて適宜設定することができるが、得られる皮膜の耐水性を向上させる観点などから、本発明のコーティング剤に含まれる上記のヒドロキシメチル基含有PVA100質量部に対して、1〜50質量部の範囲内が好ましく、3〜30質量部の範囲内がより好ましい。
本発明のコーティング剤は、必要に応じてグリコール類、グリセリン等の可塑剤;アンモニア、カセイソーダ、炭酸ソーダ、リン酸等のpH調節剤;消泡剤、離型剤、界面活性剤等の各種の添加剤;上記したヒドロキシメチル基含有PVA以外のビニルアルコール系重合体、ビニルアルコール−ビニルエステル共重合体、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルプロピルセルロース、カゼイン、澱粉(酸化澱粉など)などの水溶性高分子;スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス、ポリアクリル酸エステルエマルジョン、ポリメタクリル酸エステルエマルジョン、酢酸ビニル−エチレン共重合体エマルジョン、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体エマルジョンなどの合成樹脂エマルジョンを、本発明の効果を阻害しない範囲内でさらに含有することもできる。
本発明のコーティング剤を紙用顔料コーティング剤として使用する場合には、必要に応じて各種填料が添加することができる。添加される填料としては特に制限はないが、カオリン、クレー、焼成クレー、炭酸カルシウム、酸化チタン、ケイソウ土、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、合成ケイ酸アルミニウム、合成ケイ酸マグネシウム、ポリスチレン微粒子、ポリ酢酸ビニル系微粒子、尿素−ホルマリン樹脂微粒子、沈降性シリカ、ゲル状シリカ、気相法により合成されたシリカ(以下、気相法シリカと称する)、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ、擬ベーマイト、タルク、ゼオライト、アルミナ、酸化亜鉛、サチンホワイト、有機顔料などが使用される。これら顔料の分散剤としては、ピロリン酸ナトリウム、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウムなどが使用される。紙用顔料コーティング剤として使用する場合のヒドロキシメチル基含有PVAの使用量は、顔料100質量部に対して0.5〜15質量部が好ましく、1〜10質量部がより好ましい。
本発明のコーティング剤の固形分濃度は特に制限されず、用途等に応じて適宜調整することができるが、塗布性等を考慮すると、1質量%以上65質量%以下が好ましく、1質量%以上40質量%以下がより好ましく、1質量%以上20質量%以下がさらに好ましく、2質量%以上15質量%以下が特に好ましい。
本発明のコーティング剤は、例えば感熱記録紙のオーバーコート層を形成するための紙用塗工剤のような耐水性が求められる用途に好適に用いることができる。この場合、填料に代表される添加剤の含有量は、ヒドロキシメチル基含有PVA100質量部に対して、50質量部以上150質量部以下であることが好ましく、80質量部以上120質量部以下であることがより好ましい。当該紙用塗工剤(オーバーコート層用塗料)の固形分濃度は、例えば10質量%以上65質量%以下の範囲で適宜調整することができる。
また、本発明のコーティング剤は、インクジェット記録紙のインク受理層を形成するための紙用塗工剤として用いることも好ましい。このような用途に使用することで、上記のヒドロキシメチル基含有PVAがインク受理層において填料のバインダーとして機能することができる。この場合、当該紙用塗工剤は、添加剤として上記填料を含有することが好ましい。この際、シリカ等の填料と上記ヒドロキシメチル基含有PVAとの含有比は特に制限されるものではないが、填料100質量部に対して、上記ヒドロキシメチル基含有PVAが3質量部以上100質量部以下であることが好ましく、5質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上30質量部以下であることがさらに好ましい。
また、本発明のコーティング剤は、その他、例えばバリアー剤等として用いることもできる。この場合も、上記各添加剤を適宜含有することができる。填料、消泡剤等に代表される添加剤の含有量は特に制限されるものではないが、ヒドロキシメチル基含有PVA100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましく、1質量部以上5質量部以下であることがより好ましい。また、当該コーティング剤の固形分濃度は、例えば1質量%以上20質量%以下の範囲で適宜調整することができる。
本発明のコーティング剤を紙等の基材の表面に塗工することにより各種塗工物を製造することができる。本発明のコーティング剤を塗工する方法は特に限定されず、公知のコーター(サイズプレスコーター、エアナイフコーター、ブレードコーター、ロールコーターなど)を用いればよい。コーティング剤の塗工後は、必要に応じて、乾燥工程、カレンダー工程(スーパーカレンダーを通す工程など)などの任意の工程を経てもよい。
本発明のコーティング剤を塗工する際の塗工量は特に制限はないが、通常、固形分換算で基材の片面あたりに0.1〜30g/m2程度である。基材としては、例えば紙が挙げられる。当該紙の種類に特に制限はないが、マニラボール、白ボール、ライナー等の板紙;一般上質紙、中質紙、グラビア用紙等の印刷紙などが挙げられる。
本発明の塗工物は、上記コーティング剤が基材の表面に塗工されてなる。当該塗工物は、上記コーティング剤が表面に塗工されているため、耐水性、印刷適性および耐油性に優れる。当該塗工物の具体例としては、感熱記録紙、インクジェット記録紙、剥離紙原紙、耐油紙等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。なお、以下において、「%」及び「部」は特に断りのない限り、それぞれ「質量%」及び「質量部」を表す。
PVAの一次構造については、270MHz 1H−NMRにより定量した。1H−NMR測定時のPVAの溶媒は重水素化DMSOを用いた。また、PVAの重合度(粘度平均重合度)及びけん化度は以下に示す方法で測定し、PVAの水溶液状態での粘度安定性及び発泡性、並びに塗工物の物性(塗工紙の耐水性(ウェットラブ法)、ピッキング、印刷適性及び耐油性)は、以下に示す方法で評価した。
[PVAの粘度平均重合度Pおよびけん化度]
PVAの粘度平均重合度Pおよびけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
PVAの粘度平均重合度Pおよびけん化度は、JIS−K6726に記載の方法により求めた。
[10%水溶液の粘度安定性]
各PVAの10%水溶液を調製後、5℃で保管し、1時間後及び12時間後の粘度を測定し、増粘倍率=(12時間後の粘度/1時間後の粘度)を求め、以下の通り評価し、これをコーティング剤における粘度安定性の指標とした。
A:増粘倍率が6倍未満である。
B:増粘倍率が6倍以上である。
各PVAの10%水溶液を調製後、5℃で保管し、1時間後及び12時間後の粘度を測定し、増粘倍率=(12時間後の粘度/1時間後の粘度)を求め、以下の通り評価し、これをコーティング剤における粘度安定性の指標とした。
A:増粘倍率が6倍未満である。
B:増粘倍率が6倍以上である。
[4%水溶液の発泡性]
各PVAの4%水溶液を調製し、垂直に立てたガラス管(内径4.5cm、高さ150cm)に深さ13cmになるように仕込み、1.5L/minの速度で、10分間のポンプ循環(ガラス管の下部から水溶液を抜き取りガラス管上部へ返送)を行った後、発生した泡の高さを測定した。その結果を以下の通り評価し、これをコーティング剤における発泡性の指標とした。
A:発泡した泡の高さが27cm未満
B:発泡した泡の高さが27cm以上40cm未満
C:発泡した泡の高さが40cm以上
各PVAの4%水溶液を調製し、垂直に立てたガラス管(内径4.5cm、高さ150cm)に深さ13cmになるように仕込み、1.5L/minの速度で、10分間のポンプ循環(ガラス管の下部から水溶液を抜き取りガラス管上部へ返送)を行った後、発生した泡の高さを測定した。その結果を以下の通り評価し、これをコーティング剤における発泡性の指標とした。
A:発泡した泡の高さが27cm未満
B:発泡した泡の高さが27cm以上40cm未満
C:発泡した泡の高さが40cm以上
[耐水性評価;ウェットラブ法]
塗工紙の表面に、20℃のイオン交換水約0.1mLを滴下した後、指先で数回こすり、コーティング剤成分の溶出状態を観察し、以下の5段階で評価した。
A:耐水性に優れており、ヌメリ感がない。
B:ヌメリ感が有るが、コーティング層には変化はない。
C:コーティング剤成分の一部が乳化する。
D:コーティング剤成分の全体が再乳化する。
E:コーティング剤成分が溶解する。
塗工紙の表面に、20℃のイオン交換水約0.1mLを滴下した後、指先で数回こすり、コーティング剤成分の溶出状態を観察し、以下の5段階で評価した。
A:耐水性に優れており、ヌメリ感がない。
B:ヌメリ感が有るが、コーティング層には変化はない。
C:コーティング剤成分の一部が乳化する。
D:コーティング剤成分の全体が再乳化する。
E:コーティング剤成分が溶解する。
[ピッキング評価;ウェットピック法]
塗工紙の塗工面を20℃の水にて湿潤させた後に、RI試験機(明製作所製)を用いて、ピッキングの発生状態を観察し、以下の5段階で評価した。
A:ピッキングの発生なし。
B:ピッキングがごく僅かに発生する。
C:ピッキングがかなり発生する。
D:ほぼ全面にピッキングが発生する。
E:全面にピッキングが発生する。
塗工紙の塗工面を20℃の水にて湿潤させた後に、RI試験機(明製作所製)を用いて、ピッキングの発生状態を観察し、以下の5段階で評価した。
A:ピッキングの発生なし。
B:ピッキングがごく僅かに発生する。
C:ピッキングがかなり発生する。
D:ほぼ全面にピッキングが発生する。
E:全面にピッキングが発生する。
[印刷適性]
RI印刷適性試験機を用いてスナップドライインク(大日本インキ(株)製)を5μmの膜厚で塗工紙の塗工面に塗工し、インク受理性および印刷光沢等を観察し、以下の3段階で総合的に評価した。
A:印字濃度が濃く、印字濃度むらがなく、印字部と非印字部との境界が明瞭。
B:印字濃度が幾分薄く、印字濃度むらが少しあり、印字部ににじみが少しあり、印字部と非印字部との境界が幾分不明瞭。
C:印字濃度が薄く、印字濃度むらがかなりあり、印字部ににじみがかなりあり、印字部と非印字部との境界が不明瞭。
RI印刷適性試験機を用いてスナップドライインク(大日本インキ(株)製)を5μmの膜厚で塗工紙の塗工面に塗工し、インク受理性および印刷光沢等を観察し、以下の3段階で総合的に評価した。
A:印字濃度が濃く、印字濃度むらがなく、印字部と非印字部との境界が明瞭。
B:印字濃度が幾分薄く、印字濃度むらが少しあり、印字部ににじみが少しあり、印字部と非印字部との境界が幾分不明瞭。
C:印字濃度が薄く、印字濃度むらがかなりあり、印字部ににじみがかなりあり、印字部と非印字部との境界が不明瞭。
[耐油性評価]
塗工紙上にサラダ油0.1mLを滴下し、20℃で10分間静置した。ガーゼで油を拭き取り、紙への裏抜けを目視にて確認し、下記の基準により判定した。
A:裏抜けしていない。
B: 一部裏抜けしている。
C:裏抜けしている。
塗工紙上にサラダ油0.1mLを滴下し、20℃で10分間静置した。ガーゼで油を拭き取り、紙への裏抜けを目視にて確認し、下記の基準により判定した。
A:裏抜けしていない。
B: 一部裏抜けしている。
C:裏抜けしている。
[製造例1]
(PVA1の製造)
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル640質量部、メタノール質量部、コモノマーとして1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン(DAMP)6.43質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15質量部を添加し重合を開始した。60℃で218分重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、酢酸ビニル/1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン共重合体(DAMP変性PVAc)のメタノール溶液(濃度33.5%)を得た。次に、このメタノール溶液149質量部にメタノール95.8質量部を加え(溶液中のDAMP変性PVAc50質量部)、さらに、4.72質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度13.3%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のDAMP変性PVAc濃度20%、DAMP変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約7分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で53分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル200質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール500質量部を加えて1時間加熱還流した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ、一般式(1)で示される構造単位を含むヒドロキシメチル基含有PVA(PVA1)を得た。重合度は1700、けん化度は98.7モル%、変性量(すなわち、ヒドロキシメチル基含有PVAにおける式(1)に示される構造単位の含有率)は0.9モル%であった。当該PVAの物性を表2に示す。
(PVA1の製造)
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル640質量部、メタノール質量部、コモノマーとして1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン(DAMP)6.43質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.15質量部を添加し重合を開始した。60℃で218分重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、酢酸ビニル/1,3−ジアセトキシ−2−メチレンプロパン共重合体(DAMP変性PVAc)のメタノール溶液(濃度33.5%)を得た。次に、このメタノール溶液149質量部にメタノール95.8質量部を加え(溶液中のDAMP変性PVAc50質量部)、さらに、4.72質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度13.3%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のDAMP変性PVAc濃度20%、DAMP変性PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約7分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で53分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル200質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール500質量部を加えて1時間加熱還流した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ、一般式(1)で示される構造単位を含むヒドロキシメチル基含有PVA(PVA1)を得た。重合度は1700、けん化度は98.7モル%、変性量(すなわち、ヒドロキシメチル基含有PVAにおける式(1)に示される構造単位の含有率)は0.9モル%であった。当該PVAの物性を表2に示す。
[製造例2〜11]
(PVA2〜11の製造)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するコモノマーの添加量等の重合条件、けん化時におけるDAMP変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の方法により各種ヒドロキシメチル基含有PVAを製造した。各PVAの物性を表2に示す。
(PVA2〜11の製造)
酢酸ビニル及びメタノールの仕込み量、重合時に使用するコモノマーの添加量等の重合条件、けん化時におけるDAMP変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の方法により各種ヒドロキシメチル基含有PVAを製造した。各PVAの物性を表2に示す。
[製造例12]
(PVA12の製造)
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル700質量部、メタノール300質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、AIBN0.25質量部を添加し重合を開始した。60℃で180分重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。次に、これにメタノールを加えて調製したPVAcのメタノール溶液497質量部(溶液中のPVAc100質量部)に、14.0質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度10.0%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のPVAc濃度20%、PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約1分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で59分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2000質量部を加えて1時間加熱還流した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ無変性PVA(PVA12)を得た。重合度は1700、けん化度は98.5モル%であった。当該PVAの物性を表2に示す。
(PVA12の製造)
攪拌機、還流冷却管、アルゴン導入管、開始剤の添加口を備えた反応器に、酢酸ビニル700質量部、メタノール300質量部を仕込み、アルゴンバブリングをしながら30分間系内をアルゴン置換した。反応器の昇温を開始し、内温が60℃となったところで、AIBN0.25質量部を添加し重合を開始した。60℃で180分重合した後、冷却して重合を停止した。重合停止時の重合率は40%であった。続いて、30℃、減圧下でメタノールを時々添加しながら未反応のモノマーの除去を行い、ポリ酢酸ビニル(PVAc)のメタノール溶液(濃度30%)を得た。次に、これにメタノールを加えて調製したPVAcのメタノール溶液497質量部(溶液中のPVAc100質量部)に、14.0質量部の水酸化ナトリウムメタノール溶液(濃度10.0%)を添加して、40℃でけん化を行った(けん化溶液のPVAc濃度20%、PVAc中の酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比0.03)。水酸化ナトリウムメタノール溶液を添加後約1分でゲル化物が生成したので、これを粉砕機にて粉砕し、さらに40℃で59分間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル500質量部を加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和が終了したことを確認した後、濾別して白色固体を得、これにメタノール2000質量部を加えて1時間加熱還流した。上記の洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱水して得られた白色固体を真空乾燥機にて、40℃で24時間乾燥させ無変性PVA(PVA12)を得た。重合度は1700、けん化度は98.5モル%であった。当該PVAの物性を表2に示す。
[製造例13]
(PVA13の製造)
けん化時における水酸化ナトリウムのモル比を表1に示すように変更したこと以外は、製造例12と同様の方法により無変性PVA(PVA13)を製造した。当該PVAの物性を表2に示す。
(PVA13の製造)
けん化時における水酸化ナトリウムのモル比を表1に示すように変更したこと以外は、製造例12と同様の方法により無変性PVA(PVA13)を製造した。当該PVAの物性を表2に示す。
[製造例14〜16]
(PVA14〜16の製造)
メタノールの仕込み量、重合時に使用するコモノマーの種類や添加量等の重合条件、けん化時における変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の方法により各種変性PVAを製造した。各PVAの物性を表2に示す。
(PVA14〜16の製造)
メタノールの仕込み量、重合時に使用するコモノマーの種類や添加量等の重合条件、けん化時における変性PVAcの濃度、酢酸ビニル単位に対する水酸化ナトリウムのモル比等のけん化条件を表1に示すように変更したこと以外は、製造例1と同様の方法により各種変性PVAを製造した。各PVAの物性を表2に示す。
[実施例1]
(カオリン分散液の調製)
カオリン(エンゲルハート社製「UW−90」)を40%の濃度になるように水に分散し、家庭用ミキサーに10分かけ、分散液を調製した。
(コーティング剤の調製)
PVA1の10%水溶液を調製し、PVA1の固形分40部に対して、上記カオリン分散液を固形分60部となるように混合し、溶液濃度15%となるよう水を混合し、コーティング剤を得た。
(塗工紙の製造)
坪量70g/m2の塗工紙原紙を60℃に加温し、その一方の表面に、上記コーティング剤を、塗工量が固形分換算で紙基材の片面当たり1.0g/m2になるようメイヤーバーを用いて手塗り塗工した。次に、熱風乾燥機を用いて100℃で3分間乾燥し、20℃、65%RHで72時間調湿し、紙基材の表面に塗工層が形成された塗工紙を得た。得られた塗工紙の評価結果を表2に示す。
(カオリン分散液の調製)
カオリン(エンゲルハート社製「UW−90」)を40%の濃度になるように水に分散し、家庭用ミキサーに10分かけ、分散液を調製した。
(コーティング剤の調製)
PVA1の10%水溶液を調製し、PVA1の固形分40部に対して、上記カオリン分散液を固形分60部となるように混合し、溶液濃度15%となるよう水を混合し、コーティング剤を得た。
(塗工紙の製造)
坪量70g/m2の塗工紙原紙を60℃に加温し、その一方の表面に、上記コーティング剤を、塗工量が固形分換算で紙基材の片面当たり1.0g/m2になるようメイヤーバーを用いて手塗り塗工した。次に、熱風乾燥機を用いて100℃で3分間乾燥し、20℃、65%RHで72時間調湿し、紙基材の表面に塗工層が形成された塗工紙を得た。得られた塗工紙の評価結果を表2に示す。
[実施例2〜11、比較例1〜5]
使用するPVAを表2に挙げたものに代えたこと以外は実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、塗工紙を製造した。塗工紙の評価結果を表2に示す。
使用するPVAを表2に挙げたものに代えたこと以外は実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、塗工紙を製造した。塗工紙の評価結果を表2に示す。
[実施例12〜15、比較例6]
使用するPVAを表2に挙げたものとし、使用するPVA100部に対し、表2に示す架橋剤を5部添加したこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、塗工紙を製造した。塗工紙の評価結果を表2に示す。
使用するPVAを表2に挙げたものとし、使用するPVA100部に対し、表2に示す架橋剤を5部添加したこと以外は、実施例1と同様にしてコーティング剤を調製し、塗工紙を製造した。塗工紙の評価結果を表2に示す。
Claims (6)
- 前記ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体における前記式(1)で示される構造単位の含有率が0.1〜10モル%である、請求項1に記載のコーティング剤。
- 前記ヒドロキシメチル基含有ビニルアルコール系重合体におけるけん化度が80〜99.9モル%である、請求項1または2に記載のコーティング剤。
- 架橋剤をさらに含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のコーティング剤。
- 請求項1〜4のいずれかに記載のコーティング剤が基材の表面に塗工されてなる塗工物。
- 感熱記録紙、インクジェット記録紙、剥離紙原紙または耐油紙である、請求項5に記載の塗工物。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013166233A JP2015034247A (ja) | 2013-08-09 | 2013-08-09 | コーティング剤及び塗工物 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2013166233A JP2015034247A (ja) | 2013-08-09 | 2013-08-09 | コーティング剤及び塗工物 |
Publications (1)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
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ID=52543011
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JP (1) | JP2015034247A (ja) |
Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017155081A (ja) * | 2016-02-29 | 2017-09-07 | 三菱鉛筆株式会社 | 筆記具用水性インク組成物 |
WO2021241731A1 (ja) * | 2020-05-29 | 2021-12-02 | 株式会社クラレ | 樹脂組成物、並びにそれを用いた水性塗工液及び多層構造体 |
-
2013
- 2013-08-09 JP JP2013166233A patent/JP2015034247A/ja active Pending
Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2017155081A (ja) * | 2016-02-29 | 2017-09-07 | 三菱鉛筆株式会社 | 筆記具用水性インク組成物 |
WO2021241731A1 (ja) * | 2020-05-29 | 2021-12-02 | 株式会社クラレ | 樹脂組成物、並びにそれを用いた水性塗工液及び多層構造体 |
CN115867604A (zh) * | 2020-05-29 | 2023-03-28 | 株式会社可乐丽 | 树脂组合物、以及使用其的水性涂布液和多层结构体 |
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