JP2004081686A - ラケット - Google Patents
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Abstract
【解決手段】グリップ部、シャフト部、スロート部およびヘッド部を連続的に構成する繊維強化樹脂製のフレーム本体と、該フレーム本体に連結して上記ヘッド部とで打球面を囲むガット張架部を形成するヨークを備えているラケットにおいて、ヨークの外面に剛性の低い筒状弾性材を介在させて板状弾性材を取り付け、該筒状弾性材と板状弾性材のガット穴にストリングを通して、板状弾性材に巻き付けることにより張架している。
【選択図】 図4
Description
【発明が属する技術分野】
本発明はラケットに関し、硬式テニス用として好適に用いられ、打球面に張架するストリングの支持部分の構成を改良することにより、打球時における振動減衰性を図ると共に反発性を高めるものである。
【0002】
【従来の技術】
近年,ラケットフレームは、軽量性,高剛性,高強度,耐久性等の性能が要求されており、その構成材料は繊維強化樹脂(以下、FRPと称す)が主流となっている。通常、ラケットフレームは炭素繊維のような高強度,高弾性率の繊維で強化された熱硬化性樹脂から成形されている。この熱硬化性樹脂をマトリクス樹脂とする繊維強化樹脂は剛性が高く反発性に優れたものであるが、衝撃を受けた時に振動が発生しやすく、プレーヤーがテニスエルボーになりやすい問題がある。
【0003】
そのため、近年、振動減衰性に優れた熱可塑性樹脂をマトリクス樹脂とし、連続繊維にて強化を施した繊維強化熱可塑性樹脂製のラケットフレームが提供されている。この繊維強化熱可塑性樹脂からなるラケットフレームは熱可塑性樹脂の持つ靭性の高さを反映して,従来の熱硬化性樹脂製ラケットでは達しなかった耐衝撃性、振動減衰性などの特性が得られている。
しかしながら、一般に熱可塑性樹脂は熱硬化性樹脂と比較して、弾性率・強度の環境依存性が大きく、ラケットフレームの使用環境により、剛性等の特性が変化しやすいという欠点がある。
加えて、スピンをかけるといったプレースタイルに対応するため、ラケットの操作性が重要視され、ますます軽量化(慣性モーメントの低減)が望まれるようになってきている。また、打球面の幅広い部分を打点として、スピンをかけることとなり、スイートエリアの拡大も望まれている。
また、競技者向けには、打球面の安定性が要求され、いわゆる面内方向の剛性が重要な性能であることが判ってきた。
【0004】
そこで、軽量かつ高剛性・高強度(すなわち、高反発、高い面安定性)でありながら、振動減衰性の良いラケットが望まれるようになった。
反発性能を向上させる手段として、下記の3通りの方法が従来、採用されている。
▲1▼ラケットフレームの重量を付加し、慣性モーメントを増大させる。
▲2▼打球面を大きくする。
▲3▼ラケットフレームの面外剛性を上げ、面内剛性を下げる。
しかしながら、上記▲1▼の手段ではラケットフレームの操作性の低下を伴い、軽量化を図れない。▲2▼の手段ではラケットフレームの重量が増加し、慣性モーメントが増大して、操作性の低下を伴う。さらに、▲3▼の手段では積層構造、断面形状の変更を伴い、高弾性にすれば強度が低下し、強度を考慮すれば重量増加を伴う問題がある。
【0005】
さらに、特開平7−275401号では、図7に示すように、スロート部2にヨーク3とほぼ平行に第2ヨーク4を設け、ヨーク3と共に第2ヨーク4にもガット穴5を設けたテニスラケット1を提供しており、ヨーク3と第2ヨーク4のどちらのガット穴5にもガット6を張設することが可能で、選択することにより反発性能とスピン性能との両立を可能としている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平7−275401号のテニスラケット1では、振動減衰性について考慮されておらず、かつ、第2ヨーク4にガット6を張設した場合、ヨーク3にガット6を通すことにより、ガット6がヨーク3によって固定されてしまうため、ガットの伸縮範囲がフェイス面内に抑えられ、十分に反発性能が向上しない問題がある。
【0007】
本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、振動減衰性に優れると共に軽量で剛性が安定し、反発性の高いラケットを提供することを課題としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、グリップ部、シャフト部、スロート部およびヘッド部を連続的に構成する繊維強化樹脂製のフレーム本体と、該フレーム本体に連結して上記ヘッド部とで打球面を囲むガット張架部を形成するヨークを備えているラケットにおいて、
上記ガット張架部の打球面と反対側の外面に、剛性に低い第1弾性材を介在して剛性の高い第2弾性材を配置し、これら第1、第2弾性材を挿通してストリングを張架していることを特徴とするラケットを提供している。
【0009】
上記構成のラケットでは、ガット張架部より外面に第1弾性材を介在させて第2弾性材のガット穴を通して折り返しているため、ストリング長さが大となり、かつ、このストリング長さを大とする部材をバネとなる弾性材としていることで、打球時におけるストリングの撓みが大となり反発性能を高めることができる。しかも、ガット張架部に当接する柔らかい第1弾性材より外側の第2弾性材の剛性を高めて硬い弾性材としているため、第1弾性材と第2弾性材とでダイナミックダンパーとして機能させることができ、ガット張架部に打球時に発生する振動を減衰することができる。
即ち、反発性を高めて飛び性能を向上させることと、振動減衰性を高めることの両立を図ることができる。
【0010】
上記第1弾性材の曲げ弾性率を1.0GPa以上10.0GPa未満としている。これは、1.0GPaより小さいと強度を確保することが出来ないためであり、10.0GPaより大きいとバネの役割を果たすことができず、反発性能を向上させることが出来ないためである。
一方、外側の第2弾性材の曲げ弾性率を10GPa以上15GPa以下としている。これは、10GPaより小さいと強度を確保することができないためであり、15GPaより大きいと振動減衰性能を向上させることができないためである。
【0011】
上記第2弾性材はガット張架部の外面に沿って延在する板形状としてガット穴を設けている一方、上記第1弾性材は1本のストリングを通す筒形状として上記第2弾性材の長さ方向の両側に配置し、この両側の第1弾性材に挟まれる上記第2弾性材とガット張架部の外面との間に空間をあけ、該空間に複数本のストリングを上記ガット張架部と第2弾性材とのガット穴に通して張架していることが好ましい。
上記第1、第2弾性材を取り付ける部分のガット張架部には、各1本のストリングを遊挿するガット穴を設けており、打球時にストリングが可動できるようにしている。なお、複数本のストリングを通す大きな穴とするよりも、各1本ずつ通す穴とする方がガット張架部の強度を低下させない為に好ましい。
【0012】
上記のように、第1弾性材を、ガット張架部に沿って延在する板状の第2弾性材の長さ方向両側部にのみ配置して、中央部には配置せず空間としていることにより、ストリングの可動範囲を大とすることができる。両側の第1弾性材は第2弾性材の支持するために必要となる。
【0013】
上記板形状とする第2弾性材は、ガット張架部の外面よりはみ出さないない幅とし、長さは30mm以上100mm以下、厚みは3mm以上15mm以下とすることが好ましい。
第2弾性材の長さ及び厚みを上記数値より小さいと、振動減衰性能を向上させることができず、また、上記数値を越えると、ラケットの重量が増加するためである。
【0014】
筒形状とする第1弾性材は、ガット張架部と第2弾性材の間に介在させる長さとしても良いが、ガット張架部と第2弾性材の間に介在させる大径筒部と、ガット張架部のガット穴に内嵌する小径筒部とを備えた2段形状とすることが好ましい。
この第1部材の大径筒部の肉厚は5mm以上20mm以下とすることが好ましく、上記厚さ以下であるとストリングの可動範囲を大きくすることができず、十分に反発性能を向上させることができないためであり、一方、これ以上厚くすると隣接するストリングと干渉するためである。
【0015】
上記第1弾性材は、ナイロン、ポリアミドエラストマー等の樹脂より成形する一方、第2弾性材は炭素繊維強化ナイロン、ガラス繊維強化ナイロン等の繊維強化樹脂で成形することが好ましい。
【0016】
上記第1、第2弾性材はヨークの外面に取り付けることが最も好ましい。
打球面のスイートエリアを通る縦ストリングはヨークとヘッド部のトップの間に張架されるため、この縦ストリングの長さを大とすると共に可動範囲を広げることで打球時の反発性能を高めることができる。
かつ、ヨークは面外1次、2次振動の腹となる振動幅が大きな部分であるため、ダイナミックダンパーを構成する第1、第2弾性材をヨーク外面に取り付けることにより、振動減衰性を高めることができる。
さらに、ラケットフレームの重心位置により近いヨークに第1、第2弾性材を付けることにより、ラケットフレームの重量やバランスに与える影響をより小さくすることができる。
【0017】
本発明のフレーム本体は繊維強化樹脂からなるパイプ状であり、使用される樹脂としては、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれでもよく、反発性の良い熱硬化性樹脂を用いても振動減衰性を高めることができる。
具体的には、熱硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ケイ素樹脂等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、ポリアミド樹脂、飽和ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ABS樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアセタール系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリエチレン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、AS樹脂、メタクリル樹脂、ポリプロピレン樹脂、フッ素樹脂等が挙げられる。
【0018】
また、繊維強化樹脂に用いられる強化繊維としては、一般に高性能強化繊維として用いられる繊維が使用できる。例えば、カーボン繊維、黒鉛繊維、アラミド繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、ボロン繊維、ガラス繊維、芳香族ポリアミド繊維、芳香族ポリエステル繊維、超高分子ポリエチレン繊維等が挙げられる。また金属繊維を用いてもよい。軽量で高強度であることからカーボン繊維が好ましい。これらの強化繊維は、長繊維、短繊維の何れであっても良く、これらの繊維を2種以上混合して用いても構わない。強化繊維の形状や配列については限定されず、例えば、単一方向、ランダム方向、シート状、マット状、織物(クロス)状、組み紐状などいずれの形状・配列でも使用可能である。
【0019】
なお、フレーム本体は、繊維強化プリプレグの積層体からなるものに限定されず、マンドレルにフィラメントワインデイングで強化繊維を巻き付けてレイアップを形成しておき、これを金型内に配置してリムナイロン等の熱可塑性樹脂を充填して形成したフレーム本体とすることもできる。
【0020】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1乃至図4は、本発明の実施形態を示す。
【0021】
ラケットフレーム10は、繊維強化樹脂製の連続したパイプからなり、該ラケットフレーム10によりヘッド部12、スロート部13、シャフト部14、グリップ部15を連続して形成し、両側のスロート部13にヨーク17の両端を連結して、ヘッド部12と共に打球面Fを囲むガット張架部Gを形成している。
上記ヨーク17には、反打球面側に筒状弾性材20を介在させて板状弾性材40を取り付け、さらに、該板状弾性材40の反打球面側にグロメット31を備えたバンパー30を取り付けている。
ヨーク17に設けるガット穴は、筒状弾性材20を挿入する大径のガット穴17aと1本のストリングSのみを遊挿する小径のガット穴17bとからなる。
【0022】
上記板状弾性材40は、66ナイロンに長さ1mmのカーボン繊維を22%充填したものからなり、図2に示すように、ヨーク17の形状に合わせて長さ方向に緩やかに屈曲させている。また、同一ピッチで6つのガット穴41を設けている。板状弾性材40の曲げ弾性率は、10GPa以上15GPa以下としており、本実施形態では、13GPaとしている。また、板状弾性材40の長さは70mm、厚さは9mmとしている。
【0023】
上記筒状弾性材20は、66ナイロンからなり、図3に示すように、小径筒部21と大径筒部22とからなる。該小径筒部21は、ヨーク17のガット穴17aに内嵌される一方、大径筒部22はヨーク17と板状弾性材40との間に介在される。小径筒部21の端面21aは、ヨーク17の打球面F側の外面と略同一面となるよう傾斜させている。また、大径筒部22の上面22aはヨーク17の反打球面側の外面形状に合わせて傾斜させると共に、下面22bは当接する板状弾性材40の形状に合わせて傾斜させている。小径筒部21の端面21aから大径筒部22の下面22bにかけてガット穴23を設けている。筒状弾性材20の曲げ弾性率は、1.0GPa以上10GPa未満としており、本実施形態では、2.9GPaとしている。また、大径筒部22の肉厚は8mmとしている。
【0024】
図4に示すように、バンパー30のグロメット31をすべて板状弾性材40のガット穴41に挿入して、バンパー30に板状弾性材40を沿わせ、バンパー30の両端のグロメット31を筒状弾性材20のガット穴23に挿入する。
次いで、筒状弾性材20の小径筒部21をヨーク17のガット穴17aに挿入して、ヨーク17に筒状弾性材20を介在させて板状弾性材40を取り付け、さらに、板状弾性材40の反打球面側にバンパー30を取り付けている。
この状態で、ヨーク17のガット穴17bとバンパー30のグロメット31にストリングSを挿通し、ラケットフレーム10のヘッド部12にストリングSを張架している。このとき、ヘッド部12の内周側から外周側へ挿通されるストリングSはバンパー30に巻き付けられ、打球面F側に折り返している。
【0025】
上記構成とすると、ヨーク17と板状弾性材40との間に筒状弾性材20を介在させて、板状弾性材40とヨーク17との間に空間を設けているため、ストリング長さが大となり、かつ、筒状弾性材20がバネの役割を果たすことで、打球時におけるストリングSの撓みが大となり反発性能を向上させることができる。特に、打球面のスイートエリアを通るストリングSを張架するヨーク17を上記のような構成としているため、効果的に反発性能を向上させることができる。
【0026】
また、板状弾性材40、筒状弾性材20がダイナミックダンパーの役割を果たすため、振動減衰性を向上することができる。
【0027】
なお、上記構成はヨークに適用することが最も好適であるが、ラケットフレームのいずれの位置に適用してもよい。中でもストリングの長さが最長となるヘッド部のトップ位置に、あるいは、ヨークとヘッド部のトップ位置の両方に、上記構成を適用することが好適である。
また、本実施形態では、板状弾性材の反打球面側にグロメットを備えたバンパーを取り付けて、該バンパーにストリングを巻き付けているが、バンパーを取り付けずに、板状弾性材に直接ストリングを巻き付けてもよい。
【0028】
以下、本発明のラケットの実施例及び比較例について詳述する。
実施例、比較例とも、フレーム本体は、繊維強化樹脂製の中空形状であり、厚み28mm,幅13mm〜16mmの断面形状を持ち、打球面積が116平方インチである同一形状とし、以下に示す方法により作成した。
カーボン繊維を強化繊維とした繊維強化熱硬化性樹脂のプリプレグシート(CFプリプレグ(東レT300,700,800,M46J))を、66ナイロンからなる内圧チューブを被覆したマンドレル(φ14.5)上に積層し、鉛直状の積層体を成型した。プリプレグ角度は0゜,22゜,30゜,90゜とし、積層した。マンドレルを抜き取って上記積層体を金型にセットした。金型を型締して、金型を150℃に昇温し、30分間の加熱を行うと同時に内圧チューブ内に9kgf/cm2の空気圧を付加し、加圧保持し、加熱加圧成形により作成した。
ラケットフレーム(重量/バランス)、板状弾性材及び筒状弾性材の材料、曲げ弾性率をそれぞれ下記の表1の通り設定した。
【0029】
【表1】
【0030】
(実施例)
上記実施形態のラケットと同様とした。
【0031】
(比較例)
ガット張架部に筒状弾性材及び板状弾性材を取り付けなかった。他の構成は上記第1実施例と同様とした。
【0032】
上記実施例及び比較例のラケットに関し、それぞれ、後述する方法により面外1次振動の減衰率、面外2次振動の減衰率、反発係数を測定した。また、実打テストを行った。その結果を上記表1に示す。
【0033】
(面外1次振動減衰率の測定)
実施例及び比較例のラケットを図5(A)に示すようにヘッド部12の上端を紐51で吊り下げ、ヘッド部12とスロート部13との一方の連続点に加速度ピックアップ計53をフレーム面に垂直に固定した。この状態で、図5(B)に示すように、ヘッド部12とスロート部13の他方の連続点をインパクトハンマー55で加振した。インパクトハンマー55に取り付けられたフォースピックアップ計で計測した入力振動(F)と加速度ピックアップ計53で計測した応答振動(α)をアンプ56A、56Bを介して周波数解析装置57(ヒューレットパッカード社製、ダイナミックシングルアナライザーHP3562A)に入力して解析した。解析で得た周波数領域での伝達関数を求め、テニスラケットの振動数を得た。振動減衰比(ζ)は下式より求め、面外1次振動減衰率とした。実施例及び比較例のラケットについて測定された平均値を上記表1に示す。
【0034】
ζ=(1/2)×(Δω/ωn)
To=Tn/√2
【0035】
(面外2次振動減衰率の測定)
ラケットを図5(C)に示すようにヘッド部12上端を紐51で吊り下げ、スロート部13とシャフト部14との連続点に加速度ピックアップ計53をフレーム面に垂直に固定した。この状態で、加速度ピックアップ計53の裏側のフレームをインパクトハンマー55で加振した。そして、面外1次振動減衰率と同等の方法で減衰率を算出し、面外2次振動減衰率とした。実施例及び比較例のラケットについて測定された平均値を上記表1に示す。
【0036】
(反発係数の測定)
反発係数は、図6に示すように、実施例及び比較例のラケットを垂直状態でフリーとなるようにグリップ部15を柔らかく固定し、その打球面にボール打出機から一定速度V1(30m/sec)でテニスボールを打球面に衝突させ、跳ね返ったボールの速度V2を測定した。反発係数は発射速度V1、反発速度V2の比(V2/V1)であり、反発係数が大きい程、ボールの飛びが良いことを示している。このような方法で反発係数を測定した。
【0037】
(実打評価)
ラケットの振動吸収性、反発性についてアンケート調査を行った。5点満点(多い程良い)で採点し、中・上級者(テニス歴10年以上、現在も週3日以上プレーする条件を満たす女性)50名の採点結果の平均値をとった。
【0038】
表1に示すように、実施例は、面外1次の減衰率が1.1、面外2次の減衰率が0.9であるのに対し、比較例は、面外1次の減衰率が0.4、面外2次の減衰率が0.3であった。この結果より、実施例の本発明のラケットは振動減衰性に優れていることが確認できた。
また、反発係数についても実施例のラケットの方が比較例のラケットよりも高い値を示しており、反発性能にも優れていることが確認できた。
また、実打評価においても同様の結果を得ることができた。
【0039】
【発明の効果】
以上の説明より明らかなように、本発明によれば、ラケットフレームのガット張架部の外面に第1弾性材を介在させて第2弾性材を配置し、ストリングを該第2弾性材のガット穴を通して折り返しているため、ストリング長さが大となり、かつ、第1弾性材がバネの役割を果たすことで、打球時におけるストリングの撓みが大となり反発性能を向上させることができる。特に、スイートエリアを通るストリングを張架するヨークを上記のような構成とすると、効果的に反発性能を向上させることができる。
【0040】
しかも、ガット張架部に当接する柔らかい第1弾性材より外側の第2弾性材の剛性を高めて硬い弾性材としているため、第1弾性材と第2弾性材とでダイナミックダンパーとして機能させることができ、ガット張架部に打球時に発生する振動を減衰することができる。
即ち、反発性を高めて飛び性能を向上させることと、振動減衰性を高めることの両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ラケットフレームの概略正面図である。
【図2】板状弾性材の斜視図である。
【図3】(A)は筒状弾性材の斜視図、(B)は断面図である。
【図4】ヨークの要部拡大断面図である。
【図5】(A)(B)(C)はラケットフレームの振動減衰率の測定方法を示す概略図である。
【図6】反発係数の測定方法を示す図である。
【図7】(A)(B)は従来例を示す図面である。
【符号の説明】
10 ラケットフレーム
12 ヘッド部
13 スロート部
14 シャフト部
15 グリップ部
17 ヨーク
20 筒状弾性材
21 小径筒部
22 大径筒部
23 ガット穴
30 バンパー
31 グロメット
40 板状弾性材
41 ガット穴
Claims (7)
- グリップ部、シャフト部、スロート部およびヘッド部を連続的に構成する繊維強化樹脂製のフレーム本体と、該フレーム本体に連結して上記ヘッド部とで打球面を囲むガット張架部を形成するヨークを備えているラケットにおいて、
上記ガット張架部の打球面と反対側の外面に、剛性の低い第1弾性材を介在して剛性の高い第2弾性材を配置し、これら第1、第2弾性材を挿通してストリングを張架していることを特徴とするラケット。 - 上記第1弾性材の曲げ弾性率を1.0GPa以上10.0GPa未満、第2弾性材の曲げ弾性率を10GPa以上15GPa以下としている請求項1に記載のラケット。
- 上記第1弾性材は樹脂、第2弾性材は繊維強化樹脂で成形している請求項1または請求項2に記載のラケット。
- 上記第2弾性材はガット張架部の外面に沿って延在する板形状としてガット穴を設けている一方、上記第1弾性材は1本のストリングを通す筒形状として上記第2弾性材の長さ方向の両側に配置し、この両側の第1弾性材に挟まれる上記第2弾性材とガット張架部の外面との間に空間をあけ、該空間に複数本のストリングを上記ガット張架部と第2弾性材とのガット穴に通して張架している請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のラケット。
- 上記第1、第2弾性材を取り付ける部分のガット張架部には、各1本のストリングを遊挿するガット穴を設けている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のラケット。
- 上記第1弾性材は、ガット張架部と第2弾性材の間に介在させる大径筒部と、ガット張架部のガット穴に内嵌する小径筒部とを備えた形状としている請求項5に記載のラケット。
- 上記第1、第2弾性材を上記ヨークの外面に取り付けている請求項1乃至請求項6のいずれか1項に記載のラケット。
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