JP2004052329A - 便器とその成形型および製造方法 - Google Patents

便器とその成形型および製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】ボール部をその上縁でリムで取り囲んだ便器を製造する上での新たな製造手法を提供する。
【解決手段】便器10は、便器の周囲外観を形成する外観壁20でボール部TBを形作る便器内面壁30を取り囲み、この外観壁20と便器内面壁30とを第1内外壁連結部40を介して連結させる。ボール部TBの上縁を取り囲むリム50は、便器内面壁30の上端に第1リム連結部51を介して連結され、外観壁20の上端部分のリム包囲壁22に第2リム連結部52を介して連結されている。この便器をその外観が広がったものとするには、その形状に併せて外観壁20とリム包囲壁22を広げ、それに併せて第2リム連結部52や第1内外壁連結部40を長くする。
【選択図】    図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、便器とその成形型および便器の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
一般に、便器は、ボール部を有する便器本体を備え、このボール部をその上縁でリムで取り囲んでいる。こうした便器の製造に当たっては、リムと便器本体のそれぞれの素地を別々に型成形し、両素地を接合して焼成させている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、便器の形状やその外観意匠は、多種多様である。よって、この周囲外観を形成する便器本体もその外観、例えば広がりの様子や形状も多様となり、こうした便器本体を個別に型成形する必要があった。
【0004】
しかしながら、便器本体とこれが有するボール部との連結については、従来から特別の配慮がなされてはいなかった。つまり、ボール部を便器本体で取り囲むようにし、ボール部をその上端で便器本体内壁に滑らかに連続させて両者を形成しているに過ぎなかった。このため、ボール部にあっても、便器本体の変更に併せて、例えば、便器本体のワイド化や形状変更に併せてボール部の形状自体を設計して、便器本体と一体にボール部を型成形しているのが現状であった。
【0005】
このため、外観意匠が異なった便器では、ボール部の内壁面もその形状が相違する。よって、ボール部における溜水状況やボール部への洗浄水の給水機構、給水時のボール部での洗浄水挙動等の洗浄機能は、便器ごとに相違する。これら洗浄機能は、便器性能を作用するため、便器の外観意匠設計と並行してボール部への給水設計や洗浄水挙動検討等を、便器ごとに行う必要があり、煩雑であった。また、便器製造には、便器自体の設計や成形型の設計・製造も必要であることから、便器製造に長時間を要していた。
【0006】
リムについても同様であり、リムは便器本体にただ単に載置して連結されているに過ぎなかった。このため、リムにあっても、便器本体の変更に併せて、例えば、便器本体のワイド化に併せてリムの形状自体を設計して、便器本体に対応させたリムを型成形しているのが現状であった。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされ、ボール部をその上縁でリムで取り囲んだ便器を製造する上での新たな手法を提供すると共に、便器製造の簡略化を図ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段およびその作用・効果】
かかる課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の便器は、便器の周囲外観を形成する外観壁でボール部を形作る便器内面壁を取り囲み、この外観壁と便器内面壁とを内外壁連結部を介して連結させる。そして、便器の周囲外観を、外観壁と、この外観壁の側でリムを取り囲むリム包囲壁とで形成し、リムを、ボール部側では便器内面壁上端に連結して支え、外観壁の側ではリム包囲壁を介して外観壁に連結して支える。このようにすることで、便器の周囲外観が変わっても、この外観変更を外観壁とリム包囲壁の形状変更だけで対処できると共に、外観壁変更に伴って外観壁と便器内面壁の内外壁連結部の状況(例えば、形状や大きさ等)を変えればよい。よって、便器の周囲外観変更に際して便器内面壁についてはその形状変更を要しないので、ボール部を形作る便器内面壁を、便器の周囲外観に拘わらず共通化できる。
【0009】
また、リムは、ボール部上縁周りのものである都合上、ボール部に臨む排便用の開口(リム開口)を有する。このリム開口は、その開口形状を、便器の周囲外観に拘わらず規格化することが可能である。ところで、既述したように、リムはボール部側で便器内面壁上端により支えられ、この便器内面壁は便器の周囲外観に拘わらず共通化されている。よって、ボール部側でのリムと便器内面壁上端との連結箇所についても、便器の周囲外観に拘わらず共通化できる。また、便器の周囲外観が変われば、リムにあっては、リム包囲壁を介した外観壁との連結状況について便器の周囲外観変更に合わせてその形状や大きさ等を変更すれば足りる。
【0010】
このように、本発明の便器によれば、外観意匠が異なる少なくとも二種類の便器あっても、ボール部を形作る便器内面壁を共通のものとすることで、ボール部における溜水状況、ボール部に洗浄水を給水したときのボール部での洗浄水挙動等の洗浄機能を標準化できる。このため、外観意匠設計、ボール部への給水設計等の簡略化、設計期間・製造期間の短縮化を図ることができる。なお、二種類に限らず、多種多様な外観意匠の便器であっても、同様の効果を奏することができる。
【0011】
また、便器の周囲外観変更に伴い、外観壁やリム包囲壁の一方或いは両者の形状変更、外観壁と便器内面壁との内外壁連結部の状況変更、リムとリム包囲壁との連結状況変更といったことを行うだけでよい。よって、便器の周囲外観を含む便器意匠の自由度を高めることができる。
【0012】
上記の構成を有する本発明の便器は、以下の態様を採ることもできる。即ち、前記外観壁と前記便器内面壁とは、前記便器内面壁の上端近傍の上端側連結箇所における前記内外壁連結部と、前記便器内面壁の下端側の下端側連結箇所における前記内外壁連結部で連結されているものとできる。
【0013】
こうすれば、便器内面壁を二箇所の内外壁連結部で外観壁に強固に固定でき、便器内面壁の保持の安定性が高まり、好ましい。
【0014】
また、前記リムは、便座の着座面となる着座部位を便器周囲側に延長させて、前記リム包囲壁上端と連結されているものとできる。
【0015】
こうすれば、便座着座面に段差を残さないので、見栄えの向上を図ることができる。特に、リムとリム包囲壁上端との連結部位をリム外周のコーナーとすれば、見栄えがより一層向上する。
【0016】
更に、便器の周囲外観変更に伴い、外観壁のリム包囲壁の形状にあわせて便座の着座部位を延長することで、リムとリム包囲壁との連結を容易に行うことができる。
【0017】
こうした便器周囲への着座部位の延長の様子は、着座部位から水平に延長する場合の他、着座部位からやや下方に傾斜して延長するようにすることもできる。
【0018】
この他、前記リムは、便座の着座面となる部位の下方が中空部とされ、該中空部位の下端部で前記便器内面壁上端と連結されたものとし、この中空部を、前記ボール部に洗浄水を給水する際の導水路とすることもできる。
【0019】
こうすれば、中空部自体も便器の周囲外観に拘わらず共通化できる。よって、次の利点がある。
このリムの中空部(リム中空部)は、ボール部にその上縁から洗浄水を給水する導水路(いわゆるリム導水路)として利用できる。よって、このリム導水路が呈する給水機能にあっても、多種多様な外観意匠の便器において標準化できる。この結果、ボール部の呈する洗浄機能の標準化と相俟って便器設計の簡略化、設計期間の短縮化をより促進することができる。
【0020】
本発明は、こうした便器の製造に用いる成形型について次の構成を採った。
即ち、この成形型は、前記便器内面壁の内壁形状に適合した凸形状の凸部を有するボール中型を備え、このボール中型の前記凸部の基部を、前記外観壁と前記便器内面壁とを連結させる前記内外壁連結部を前記基部表面への泥漿堆積を経て形成するものとした。
【0021】
この成形型によれば、ボール中型とその基部によって、便器内面壁と外観壁との内外壁連結部を形成し、この両者を連結させる。
【0022】
更に、前記基部を取り囲むよう該基部に組み付け装着される基部装着型を備え、この基部装着型を、前記基部が形成する前記内外壁連結部と異なる前記内外壁連結部を前記基部装着型表面への泥漿堆積を経て形成するものとすることができる。
【0023】
この成形型によれば、ボール中型の基部に基部装着型を備え付けることによっても、便器内面壁と外観壁との内外壁連結部を形成できる。よって、この基部装着型を内外壁連結部に合わせて複数用意すれば、種々の内外壁連結部を有する便器、即ち、便器の周囲外観に応じて変更される外観壁と便器内面壁をこの内外壁連結部で連結させた多種多様な外観意匠の便器をそれぞれ製造できる。また、これら便器ごとに異なる中型を用意する必要がないので、中型の取扱の簡略化、型保管場所の省スペース化、泥漿流し込み装置への中型組み付けの段取りの簡略化等を図ることができる。
【0024】
また、上記した課題の少なくとも一部を解決するため、本発明の便器製造方法は、ボール部を有する便器本体と、前記ボール部をその上縁で取り囲み前記ボール部に臨む排便用開口を有するリムとを連結した便器の製造方法であって、
前記便器本体となる便器素地を型成形する工程(1)と、
前記リムとなるリム素地を型成形する工程(2)と、
型成形された前記リム素地と前記便器素地とを接合して、素地焼成を行う工程(3)とを有し、
前記工程(1)は、
前記ボール部を形作る便器内面壁の内壁形状に適合した凸状型面の凸部を有するボール中型と、
便器の周囲外観を形成すると共に前記リムを取り囲むリム包囲壁を有する外観壁の外壁形状に適合した型面を有する側型とを準備する工程と、
前記準備した各型を型合わせして前記側型で前記ボール中型の前記凸部を取り囲み、各型の型面で、前記リム包囲壁を含む前記外観壁と前記便器内面壁およびこの両者を連結する内外壁連結部の素地形成のためのキャビティを形成する工程と、
前記キャビティへの泥漿の流し込み、前記各型の型面への泥漿堆積、排泥、土締め、型抜きを経て、前記外観壁素地が前記便器内面壁素地を取り囲んで前記外観壁素地が前記内外壁連結部素地を介して前記便器内面壁素地と連結した前記便器素地を取得する工程とを有し、
前記工程(2)は、
前記排便用開口の内壁形状に適合した凸状型面の凸部を有するリム上型と、前記排便用開口の下端側形状に適合した型面を有するリム下型とを準備する工程と、
前記準備した各型を型合わせして、各型の型面で、前記リム素地と、前記リム素地を前記リム包囲壁素地に連結するリム連結部の素地を形成するためのキャビティを形成する工程と、
前記キャビティへの泥漿の流し込み、前記各型の型面への泥漿堆積、排泥、土締め、型抜きを経て、前記リム連結部の素地を有する前記リム素地を取得する工程とを有し、
前記工程(3)は、
前記リム素地の前記リム連結部素地を前記リム包囲壁素地と接合する共に、前記リム素地を前記便器内面壁素地の上端と接合する工程を有し、
前記ボール中型の前記凸部は、前記側型の有する前記型面形状に拘わらず規格化された凸形状を有する
ことをその要旨とする。
【0025】
上記した本発明の製造方法によれば、便器の周囲外観を外観壁とリム包囲壁で形成し、リムをリム包囲壁と便器内面壁上端で支えた便器を容易に製造できる。こうして製造された便器では、ボール部を形作る便器内面壁の形成のためのボール中型が側型の型面形状に拘わらず規格化された凸形状を有することから、共通化された便器内面壁を有するものとなる。その一方、側型の型面については、便器の周囲外観をなす外観壁の形状・意匠に合わせて適宜変更できる。
【0026】
この場合、外観壁変更に伴う外観壁と便器内面壁との内外壁連結部は、各型が形成するキャビティで容易にその形状や大きさ等を変えることができる。よって、共通化した便器内面壁と多種多様な形状・意匠の外観壁とを容易に連結できる。
【0027】
また、リムについては、排便用開口形状を、そのキャビティを規格化できることから、便器の周囲外観に拘わらず規格化できる。しかも、リムを便器内面壁上端に連結させる連結箇所についても、共通の便器内面壁上端に合わせてキャビティにて規格化できる。リム包囲壁とのリム連結部については、リム上・下型の型面が形成するキャビティ形状を適宜変更することで、外観壁のリム包囲壁に合わせて形成でき、リム包囲壁をリムに連結できる。
【0028】
従って、本発明の便器製造方法によれば、外観意匠が異なる少なくとも二種類の便器でありながらボール部の便器内面壁を共通のものとする便器を容易に製造できる。しかも、本発明の製造方法によれば、便器内面壁の共通化を通して、それぞれの便器におけるボール部の溜水状況やボール部での洗浄水挙動等の洗浄機能の標準化や、外観意匠設計やボール部への給水設計等の簡略化、設計期間の短縮化を実現することができる。なお、多種多様な外観意匠の便器についても同様の効果を奏するようにすることもできる。
【0029】
上記構成を有する本発明の便器製造方法では、前記リム上型と前記リム下型とは、便座の着座面となる着座部位の下方を中空部とし、該中空部の下端部で前記便器内面壁上端と連結される連結部を形成するよう、前記キャビティを形成するものとすることができる。
【0030】
こうすれば、中空部自体も便器の周囲外観に拘わらず共通化した便器を容易に製造できる。このため、このリムの中空部(リム中空部)を、ボール部にその上縁から洗浄水を給水する導水路(いわゆるリム導水路)として規格化して利用でき、このリム導水路が呈する給水機能をも、多種多様な外観意匠の便器において標準化する。この結果、ボール部の呈する洗浄機能の標準化と相俟って、便器製造に際しての、便器設計の簡略化、設計期間の短縮化をより促進することができる。
【0031】
また、前記リム上型と前記リム下型とは、前記リムを前記リム包囲壁に連結する前記リム連結部が、前記リムの前記着座部位から便器周囲側に延長するよう、前記キャビティを形成するものとすることができる。
【0032】
こうすれば、便座着座面に段差がなく見栄えの高い便器を、上記のような共通化・規格化を図った上で容易に製造できる。また、このリム連結部は、キャビティ形状によりリムの着座部位から種々の長さのものとされる。よって、便器の周囲外観変更に伴うリム包囲壁の形状にあわせて上記のリム連結部を着座部位から延長すれば、多様な外観意匠を有しつつ上記のような共通化・規格化を図った便器を容易に製造できる。この場合、リムの着座部位から便器周囲側へのリム連結部の延長の様子は、キャビティの様子により、種々のものとできる。例えば、着座部位から水平にリム連結部を延長させたり、着座部位からやや下方に傾斜してリム連結部を延長させたりするよう、キャビティを形成すれば、このように延長したリム連結部を有するリムを容易に製造できる。
【0033】
また、ボール中型を、前記凸部の基部を、該基部表面への泥漿堆積を経て前記内外壁連結部を形成するものとすることができる。こうすれば、ボール中型とその基部によって、便器内面壁素地と、外観壁との内外壁連結部の素地を形成し、素地状態での便器内面壁と外観壁との両者を連結して一体とする。
【0034】
また、ボール中型の前記基部を取り囲むよう該基部に組み付け装着される基部装着型を備え、この基部装着型を、前記基部が形成する前記内外壁連結部と異なる前記内外壁連結部を前記基部装着型表面への泥漿堆積を経て形成するものとすることができる。こうすれば、ボール中型の基部に基部装着型を備え付けることによっても、便器内面壁と外観壁との内外壁連結部を形成できる。
【0035】
よって、この基部装着型を内外壁連結部に合わせて複数用意すれば、種々の内外壁連結部を有する便器、即ち、便器の周囲外観に応じて変更される外観壁と便器内面壁をこの内外壁連結部で連結させた多種多様な外観意匠の便器をそれぞれ製造できる。また、これら便器ごとに異なる中型を用意する必要がないので、ボール中型の取扱の簡略化、型保管場所の省スペース化、泥漿流し込み装置へのボール中型組み付けの段取りの簡略化等を図ることができ、便器製造コストの低減を図ることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づき説明する。まず、実施例の便器について説明し、その後、製造手順について説明する。図1は本実施例で製造する便器10をその略中央で断面視して示す説明図、図2はこの便器10と異なる周囲外観形状を有する便器100をその略中央で断面視して示す説明図である。
【0037】
図示するように、便器10は、便器の周囲外観を形成する外観壁20でボール部TBを形作る便器内面壁30を取り囲み、この外観壁20と便器内面壁30とを第1内外壁連結部40を介して連結させる。便器内面壁30は、外観壁20の底面側から延びた第2内外壁連結部48によっても、外観壁20と連結されている。
【0038】
便器10は、ボール部TBの上縁をリム50で取り囲み、リム50の排便用開口58をボール部TBに臨ませている。このリム50は、ボール部側では、便器内面壁30の上端に第1リム連結部51を介して連結され、外観壁20の側では、リム50を取り囲む外観壁20の上端部分のリム包囲壁22を介してこの外観壁20に連結して支えられている。この場合、リム包囲壁22は、リム50から延びた第2リム連結部52の端部下面に接合して連結している。
【0039】
便器100にあっても、上記の便器10と同様、便器の周囲外観を形成する外観壁120で便器内面壁130を取り囲み、この外観壁120と便器内面壁130とを、第1内外壁連結部140と第2内外壁連結部148で連結させている。また、便器100は、ボール部TBの上縁を取り囲むリム150を、ボール部側で第1リム連結部151を介して便器内面壁130の上端に連結し、外観壁120の側では、リム包囲壁122および第2リム連結部152で外観壁120と連結させている。
【0040】
この両便器は、外観壁20の呈する便器周囲外観と、外観壁120の呈する便器周囲外観で相違するものの、以下に詳述するように、リムと便器内面壁に共通点がある。
【0041】
ボール部TBに臨む排便用開口は、排便の用途から、その開口形状を便器の周囲外観に拘わらず規格化される。よって、本実施例では、リム50の排便用開口58とリム150の排便用開口158とを、実質上、同じ形状とした。なお、ここで云う実質上とは、その形状について全く同一である他、排便用途とする上でその形状が近似していればよいことを意味する。よって、排便用開口は一般に円形や楕円形とされるので、その円形形状や楕円形状の相違があっても、排便用途の機能の上で差異がなければ、排便用開口58と排便用開口158は実質上同じであると言える。
【0042】
また、リム50は、便座の着座面となる着座部位53の下方に中空部54を備え、リム150にあっても中空部154を備える。この両中空部は、同じ形状とされている。この場合、中空部形状が同じであることは、型成形・その後の焼成等の製造上の収縮等で起きる差異を含むものであり、リム成形に用いる成形型の型形状において略同一であることを意味する。
【0043】
図示するように、便器10では第1内外壁連結部40が短く便器100では第1内外壁連結部140が長くされている。つまり、便器100では、外観壁120を便器の周囲外観に併せてワイド化を図ったので、便器内面壁130を長い第1内外壁連結部140で連結した。ところが、便器10では、外観壁20と便器内面壁30とが比較的近くに位置することから、短い第1内外壁連結部40で両者を連結した。こうすることで、便器10と便器100とにおいて、便器内面壁30と便器内面壁130とを、これらが形作るボール部TBが共通化されたボール形状を持つよう、共通化した。この場合のボール部TB・便器内面壁の共通化の意味するところは、リムの場合と同様、これらの製造に用いる成形型の型形状において略同一であることを意味する。
【0044】
このように便器内面壁30、130が共通化されていることから、リム50、150を便器内面壁30、130に連結する第1リム連結部51、151についても、便器10と便器100で、その形状が同一とされている。この場合の第1リム連結部の形状同一の意味するところにあっても、上記したとおり、これらの製造に用いる成形型の型形状において略同一であることを意味し、それぞれの便器における便器内面壁上端にこの第1リム連結部が接合すればよい。
【0045】
また、便器10では第2リム連結部52を短く便器100では第2リム連結部152を長くして、それぞれの便器で外観壁とリムとを連結した。
【0046】
このように構成した便器10と便器100では、図示するように両者の便器の周囲外観が相違していても、この外観変更を外観壁20、120とリム包囲壁22、122の形状変更だけで対処できる。しかも、こうした外観壁変更に伴って、便器10と便器100では、第1内外壁連結部40と第1内外壁連結部140、第2リム連結部52と第2リム連結部152を上記したようにその長さや形状を変えればよい。よって、本実施例の両便器では、便器の周囲外観変更に際して、上記したように共通化した便器内面壁とし、その形成するボール部についてもその形状を共通化できる。
【0047】
また、それぞれのリム50、150についても、便器内面壁30、130が便器の周囲外観に拘わらず共通化されていることと相俟って、便器の周囲外観変更に合わせて第2リム連結部52、152を変更すれば足りる。そして、このリム50、150では、着座部位53下方の中空部54、154を同じ形状としている。
【0048】
以上説明したように、本実施例によれば、便器内面壁30、130を、引いてはその形成するボール部の形状を共通化したことから、多種多様な外観意匠の便器であっても、ボール部TBにおける溜水状況や、ボール部TBに洗浄水を給水したときのボール部TBでの洗浄水挙動等の洗浄機能を標準化できる。このため、新規な便器の製造に際しては、こうした洗浄機能設計を要しないことから、外観意匠設計やボール部への給水設計等を図れば好く、簡便となる。しかも、便器設計期間や製造期間の短縮化をも図ることができる。
【0049】
また、多種多様な周囲外観を有する便器とするに当たり、外観壁20、120の形状変更、リム包囲壁22、122の形状変更、内外壁連結部40、140の長さ変更、第2リム連結部52、152の長さ変更等といったことを行うだけでよい。よって、便器の周囲外観を含む便器意匠の自由度を高めることができる。
【0050】
更に、本実施例では、便器内面壁30、130を、第1内外壁連結部40、140と第2内外壁連結部48、148の二箇所で外観壁20、120に連結した。よって、便器内面壁30、130を強固に固定でき、安定性に優れる。この場合、第2内外壁連結部48、148についてはこれを省略し、便器内面壁30、130を第1内外壁連結部40、140で外観壁20、120に連結するようにすることもできる。こうすれば、外観壁・便器内面壁とも、ボール中型および左右側型への型面への泥漿堆積で済むいわゆる一重成形の方式で素地成形ができるので、底型が不要となるなどの型構造の簡略化、製造工程の簡略化を通して、コスト低減を図ることができる。
【0051】
また、リム50、150を、それぞれの着座部位53、153から便器周囲側に延長させた第2リム連結部52、152でリム包囲壁22、122の上端と連結させた。このため、便座着座面に段差を残さないので、見栄えの向上を図ることができる。特に、本実施例では、リム50、150とリム包囲壁上端との連結をリム外周のコーナーとしたので、見栄えがより一層向上する。
【0052】
更に、本実施例では、便器の周囲外観が異なりながら、リム50、150が有する中空部54、154についても共通化した。よって、この中空部54、154をボール部TBにその上縁から洗浄水を給水するリム導水路として利用した場合、リム導水路が呈する給水機能(例えば、リム導水路における洗浄水の流れ方等)をも、多種多様な外観意匠の便器において標準化できる。この結果、ボール部TBの呈する洗浄機能の標準化と相俟って便器設計の簡略化、設計期間の短縮化をより促進することができる。
【0053】
次に、上記した本実施例の便器10、100の製造手順について説明する。図3は便器10の製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図、図4はリム50の製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図、図5は便器100の製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図、図6はリム150の製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図である。
【0054】
これら図面に示すように、便器10の製造には、まず、ボール中型60と、この型の左右に位置する側型62、63と、底型64と、リム上型65と、リム下型66を準備する。これら各型は、いずれも多孔質の型であり、型側からの吸引により、泥漿を型面に効率よく堆積させる。
【0055】
ボール中型60は、ボール部TBを形作る便器内面壁30の内壁形状に適合した凸状型面の凸部60aを備え、この凸部基部周囲に型端部60cを有する。この凸部60aは、側型62、63の有する型面形状に拘わらず規格化された凸形状を有し、便器100の製造に用いるボール中型160の凸部160aとその型面形状において既述したように同一とされている。
【0056】
左右の側型62、63は、リム包囲壁22とこれに続く外観壁20の外壁形状に適合した型面62a、63aを備え、ボール中型60を左右から取り囲む。底型64は、ボール中型60の凸部60aに合致した凹状型面の凹部64aを備え、この凹部周囲に型端部64bを有する。
【0057】
ボール中型60は型端部60cを左右の側型62、63の図における上部の位置決め部位とし、底型64は左右の側型62、63の下部の位置決め部位とする。よって、これら各型を型合わせると、左右の側型62、63の上下の位置決めにより、各型は便器製造(便器側素地形成)の都度に安定したキャビティを次のように形成する。
【0058】
ボール中型60と側型62、63は、凸部基部60bに側型の型面を対向させてリム包囲壁素地22kを形成するためのキャビティを形成する。側型62、63は、その残余の型面に外観壁素地20kを泥漿堆積を経て形成するためのキャビティを形成する。ボール中型60は、凸部基部60bの肩部型面60dに第1内外壁連結部素地40kを泥漿堆積を経て形成するためのキャビティを形成すると共に、底型64の凹部64aに凸部60aの先端側を対向させて便器内面壁素地30kの底部領域形成のためのキャビティを形成する。また、ボール中型60は、凸部基部60bに到るまでの凸部60aの型面に残余の便器内面壁素地30kを泥漿堆積を経て形成するためのキャビティを形成する。底型64は、上記した便器内面壁素地30kの底部領域形成のためのキャビティの他、凹部64aの頂上から側壁にかけての型面に第2内外壁連結部素地48kを泥漿堆積を経て形成するためのキャビティを形成する。
【0059】
これらキャビティのうち、本実施例では、リム包囲壁素地22kと便器内面壁素地30kの底部領域を形成するために型面を対向させたキャビティでは、それぞれの型面からの泥漿堆積を起こして素地形成する二重成形とし、それ以外のキャビティを、一つの型面への泥漿堆積を経て素地形成する一重成形とする。なお、底型64については、その形成する素地が第2内外壁連結部素地48kであって外部から見えないので、図示以外の形状の素地を形成するようにすることもできる。また、既述したように、第2内外壁連結部48を省略する場合には、底型64を用いる必要がないので、成形型が不要となる分、型構造・製造工程の簡略化を図り、コスト低減に寄与することができる。
【0060】
こうしてボール中型60、側型62、63および底型64の型合わせにより既述した各キャビティを形成すると、これらキャビティに泥漿を流し込み、型面からのエア吸引、所定時間の放置を経て、各型の型面に泥漿堆積を起こす。その後、キャビティからの泥漿排泥、堆積泥漿の土締めを行い、型抜きする。こうすることで、外観壁素地20kが便器内面壁素地30kを取り囲み、外観壁素地20kが第1内外壁連結部素地40kを介して便器内面壁素地30kと連結した便器素地を得る。この便器素地では、便器内面壁素地30kは第2内外壁連結部素地48kを介して外観壁素地20kと連結済みである。
【0061】
図4に示すように、リム上型65は、排便用開口58の内壁形状に適合した凸状型面の凸部65aを備え、この凸部基部周囲に凹所65bを有する。この凹所65bは、その形状がリム素地50kの着座部位素地53kと第2リム連結部素地52kの形状に適合するものとされている。リム下型66は、排便用開口58とリム素地50kの下端側形状に適合した型面を有する。この上下のリム型は、図4に示すように型合わせされると、図示しないピン等にて位置決めされ、各型は便器製造(リム素地形成)の都度に、リム素地50kおよびこの素地に繋がった第2リム連結部素地52k、第1リム連結部素地51kの形成用のキャビティを安定して形成する。
【0062】
こうしたキャビティ形成後には、各キャビティに泥漿を流し込み、型面からの泥漿含有水分の吸引、所定時間の放置を経て、各型の型面に泥漿堆積を起こす。その後、キャビティからの泥漿排泥、堆積泥漿の土締めを行い、型抜きする。こうすることで、第2リム連結部素地52kが着座部位素地53kに便器周囲方向に連続し、第1リム連結部素地51kが下端側に連結したリム素地50kを得る。
【0063】
こうしてリム素地50kと便器本体素地が得られると、第2リム連結部素地52k下面とリム包囲壁素地22k上端、および第1リム連結部素地51k下端と便器内面壁素地30k上端に、素地繋ぎ用の泥漿をそれぞれ塗布等にて介在させる。この状態で、リム素地50kの第2リム連結部素地52kをリム包囲壁素地22kの上端に接合する共に、リム素地50kの第1リム連結部素地51kを便器内面壁素地30kの上端と接合する。その後、接合されたリム素地50kと便器本体素地の乾燥を待ち、素地焼成を行う。これにより、図1に示した便器10が完成する。
【0064】
便器100の製造についても、便器10の場合と同様であり、ボール中型160、側型162、163、底型164、リム上型165、リム下型166の多孔質の各型を準備する。
【0065】
ボール中型160は、ボール中型60と同様、規格化された凸形状の凸部160aを備え、凸部基部周囲を、左右の側型162、163の位置決め用の型端部160cとする。左右の側型162、163は、側型62、63に比して、外観壁120が便器10の外観壁20より広がるような型面162a、163aとされている。底型164は、底型64と同様、凸部160aに合致した凹状型面の凹部164aを備え、この凹部周囲を左右の側型162、163の位置決め用の型端部164bとする。これら各型にあっても、便器製造(便器側素地形成)の都度に安定したキャビティを、便器10の場合と同様に形成する。
【0066】
便器100にあっても便器10の場合と同様に、ボール中型160と側型162、163は、その有する凸部160aや凸部基部160b、肩部型面160dおよび型面162a、163bで、リム包囲壁素地122k形成用のキャビティと、外観壁素地120k形成用のキャビティと、第1内外壁連結部素地140k形成用のキャビティとを形成する。また、底型164を介して、便器内面壁素地30k用のキャビティと、第2内外壁連結部素地148k用のキャビティを形成する。これらキャビティのうち、リム包囲壁素地122k形成用のキャビティと外観壁素地120k形成用のキャビティと、第1内外壁連結部素地140k形成用のキャビティについては、用いる型の型面形状が相違することから、便器10と相違し、便器内面壁素地30k用のキャビティについては、便器10と同じである。
【0067】
こうして各型の型合わせにより既述した各キャビティを形成すると、便器10の場合と同様、キャビティへの泥漿流し込み、型面からのエア吸引、所定時間の放置を経て、各型の型面に泥漿堆積を起こす。その後、キャビティからの泥漿排泥、堆積泥漿の土締めを行い、型抜きする。こうすることで、外観壁素地120kが便器内面壁素地130kを取り囲み、外観壁素地120kが、便器10の第1内外壁連結部素地40kより長い第1内外壁連結部素地140kを介して便器内面壁素地130kと連結した便器素地を得る。
【0068】
図6に示すように、リム上型165にあっては、便器10の場合の凸部65aと同一の凸部165aを備え、この凸部基部周囲を、リム素地150kの着座部位素地153kと第2リム連結部素地152kの形状に適合した凹所165bとする。リム下型166は、排便用開口158とリム素地150kの下端側形状に適合した型面を有する。この上下のリム型は、図6に示したように型合わせされると、図示しないピン等にて位置決めされ、各型は便器製造(リム素地形成)の都度に、リム素地150kおよびこの素地に繋がった第2リム連結部素地152k、第1リム連結部素地151kの形成用のキャビティを安定して形成する。この場合、第1リム連結部素地151k形成用のキャビティにあっては、その形状・位置は便器10の場合と同様とされている。
【0069】
こうしたキャビティ形成後には、便器10の場合と同様、キャビティへの泥漿流し込み、型面からの泥漿含有水分の吸引、所定時間の放置を経て、各型の型面に泥漿堆積を起こす。その後、キャビティからの泥漿排泥、堆積泥漿の土締めを行い、型抜きする。こうすることで、第2リム連結部素地152kが着座部位素地153kに便器周囲方向に連続し、第1リム連結部素地151kが下端側に連結したリム素地150kを得る。このリム素地150kにあっては、上下の型面を便器10の場合と同じとすることで、その中空部154は便器10の中空部54と同一とされている。
【0070】
こうしてリム素地150kと便器本体素地が得られると、便器10の場合と同様、第2リム連結部素地152k下面とリム包囲壁素地122k上端、および第1リム連結部素地151k下端と便器内面壁素地130k上端への素地繋ぎ用の泥漿介在を経て、素地同士を接合する。その後、接合されたリム素地150kと便器本体素地の乾燥を待ち、素地焼成を行う。これにより、図2に示した便器100が完成する。
【0071】
以上説明したように、図3ないし図6に示した各成形型を用いた本実施例の製造方法によれば、便器の周囲外観を外観壁20、120とリム包囲壁22、122で形成し、リム50、150をリム包囲壁22、122と便器内面壁30、130上端で支えたそれぞれの便器10、100を容易に製造できる。こうして製造された便器10、100では、ボール部TBを形作る便器内面壁30、130の形成のためのボール中型60、160が上記各側型の型面形状に拘わらず規格化された凸形状の凸部60a、160aを有することから、共通化された便器内面壁を有するものとなる。その一方、側型の型面62a、63a、162a,163aについては、便器の周囲外観をなす外観壁20や外観壁120の形状・意匠に合わせて適宜変更できる。
【0072】
この場合、便器10の第1内外壁連結部40と便器100の第1内外壁連結部140は、各型が形成するキャビティで容易に素地状態でその形状や大きさ等を変えることができる。本実施例では、第1内外壁連結部140を第1内外壁連結部40より容易に長くできる。よって、共通化した便器内面壁30、130と多種多様な形状・意匠の外観壁20、120とを連結させた便器を容易に連結できる。
【0073】
また、リム50、150については、排便用開口形状と第1リム連結部51、151と中空部54、154について、上記したように便器10と便器100で共通のものとできる。第2リム連結部52、152も、リム上・下型の型面が形成するキャビティにより、リム包囲壁22、122に合わせて容易に長短形成でき、リム50、150をリム包囲壁22、122に連結できる。
【0074】
従って、本実施例の便器製造方法によれば、外観意匠が相違する便器10と便器100でありながら、この両便器でボール部TBおよび便器内面壁30、130を共通のものとした便器として、容易に製造できる。しかも、外観意匠が相違する便器10と便器100では、便器内面壁30、130の共通化を通して、ボール部TBでの溜水状況や洗浄水挙動等の洗浄機能の標準化を図ることができる。よって、外観意匠設計やボール部への給水設計等の簡略化、設計期間の短縮化を実現することができる。
【0075】
しかも、外観意匠が相違する便器10と便器100でありながら、それぞれの中空部54、154を便器の周囲外観に拘わらず共通化した便器として容易に製造できる。このため、この中空部54、154を、ボール部TBにその上縁から洗浄水を給水するリム導水路として規格化して利用でき、このリム導水路が呈する給水機能をも、外観意匠が相違する便器10と便器100で標準化する。この結果、ボール部TBの呈する洗浄機能の標準化と相俟って、新規な便器の製造に際しての給水機能設計が不要となり、便器設計の簡略化、設計期間の短縮化をより促進することができる。
【0076】
また、本実施例では、リム成形用の上下の型を、外観意匠が相違する便器10と便器100において、それぞれの第2リム連結部52、152が着座部位53、153から便器周囲側に水平に延長するようにキャビティを形成するものとした。このため、便座着座面に段差がなく見栄えの高い便器を、ボール部TBの共通化・規格化等を図った上で容易に製造できる。
【0077】
次に、上記した製造方法の変形例について説明する。図7は便器10と便器100に共通して使用することができる変形例(第1変形例)のボール中型260を示す説明図である。
【0078】
図示するように、このボール中型260は、既述したボール中型60と、その凸部基部60bを取り囲むよう当該基部に組み付け装着される基部装着型270を備える。この基部装着型270は、凸部基部60bに装着された状態で、ボール中型160が有する凸部基部160bを、凸部基部60bと協働して形成する。つまり、基部装着型270の下端型面272は、肩部型面60dと繋がって、ボール中型160の肩部型面160d(図5参照)を形成し、基部装着型270の周囲型面274は、ボール中型160の凸部基部160bの周囲型面を形成する。
【0079】
このボール中型260によれば、基部装着型270を取り外すことで便器10の製造に用いるボール中型60となり、基部装着型270を装着すれば、便器100の製造に用いるボール中型160となる。このため、基部装着型270の装着・取り外しにより、長短の第1内外壁連結部40、140を形成できるので、外観意匠が異なる便器10と便器100をこのボール中型260を用いてそれぞれ容易に製造できる。また、これら便器ごとに異なるボール中型60、160を用意する必要がないので、ボール中型の取扱の簡略化、型保管場所の省スペース化、泥漿流し込み装置へのボール中型組み付けの段取りの簡略化等を図ることができ、便器製造コストの低減を図ることができる。
【0080】
次に、他の変形例について説明する。図8は第2変形例の便器100Aをその略中央で断面視して示す説明図、図9はこの便器100Aが有するリム150Aの製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図である。
【0081】
図8に示すように、便器100Aは、その外観形状において便器100と変わるものではなく、便器100におけるリム包囲壁122を、リム側と外観壁側で形成した点に特徴がある。つまり、外観壁120は、その上端に既述した下方側リム包囲壁122aを備え、リム150Aは、第2リム連結部152の端部下端に上方側リム包囲壁122bを備え、この両者を接合することでリム包囲壁122としている。図示しないが、便器幅の狭い便器10についても同様にすることができる。
【0082】
こうした便器100Aの製造には、外観壁120と便器内面壁130の側にあっては図5に示した成形型において、ボール中型160の凸部基部160bの高さを控え、図5におけるリム包囲壁素地122kを短くする。リム150Aでは、その製造に、図9に示す成形型を用いる。
【0083】
図示するように、リム上型165とリム下型166を用いて既述したキャビティをリム150の素地成形と同様に形成し、リム下型166の側で、第2リム連結部素地152kに続く上方側リム包囲壁素地122bkを形成するためのキャビティ166cを形成する。このキャビティ形成に当たっては、型抜きを考慮して、リム下型166をその周囲を左右の分割型167で取り囲むようにすればよい。素地形成後は上記の実施例に倣って素地焼成等を行えば、便器100Aを容易に製造できる。そして、この変形例によっても、標準化されたボール部TBを有する便器を容易に製造できると共に、既述した効果を奏することができる。
【0084】
図10は便器100Aを更に変形した第3変形例の便器100Bをその略中央で断面視して示す説明図である。図示するように、この便器100Bでは、外観壁120をその上端が第1内外壁連結部140にほぼ揃ったものとし、リム包囲壁122をリム150Aの側で総て形成した点に特徴がある。便器10についても同様にすることができる。
【0085】
こうした便器100Bの製造には、外観壁120と便器内面壁130の側にあっては図5に示した成形型において、ボール中型160の凸部基部160bを側型162、163の型面に密着するようにし、図5に示すリム包囲壁素地122kを形成しないものとする。
【0086】
リム上型165とリム下型166にあっては、図9に示すキャビティ166cを、リム包囲壁素地122kの形成に足りるものとすればよい。素地形成後は上記の実施例に倣って素地焼成等を行えば、便器100Bを容易に製造できる。そして、この変形例によっても、標準化されたボール部TBを有する便器を容易に製造できると共に、既述した効果を奏することができる。
【0087】
図11は第4変形例の便器10Cをその略中央で断面視して示す説明図、図12は第4変形例の便器100Cをその略中央で断面視して示す説明図である。
【0088】
図示するように、便器10Cは、その外観形状において便器10と変わるものではなく、便器10における第1リム連結部51を便器内面壁30に続けて備えてリム50の下面をその上端で支持した点に特徴がある。便器100Cについても同様にすることができる。
【0089】
こうした便器10Cの製造には、図3に示した成形型において、図示する便器内面壁素地30kの上端に第1リム連結部素地51kが延びるよう、凸部基部60bの高さを控え、この第1リム連結部素地51k形成用のキャビティを形成する。リム50については、図4において第1リム連結部素地51kのないキャビティを形成してリム素地を形成して、このリム素地を便器内面壁素地30k上端の第1リム連結部素地51kに接合する。素地形成後は上記の実施例に倣って素地焼成等を行えば、便器10C、100Cを容易に製造できる。そして、この変形例によっても、標準化されたボール部TBを有する便器を容易に製造できると共に、既述した効果を奏することができる。なお、便器内面壁素地30kと第1リム連結部素地51kは一体と捕らえることができるので、この変形例では、便器内面壁30の上端にリム50を直接連結して支えるものとなる。
【0090】
図13は第5変形例の便器100Dをその略中央で断面視して示す説明図である。図示するように、便器100Dは、リム150とリム包囲壁122との連結の様子に特徴があり、第2リム連結部152を着座部位153からやや下方に傾斜させている。
【0091】
こうした便器100Dの製造には、図6に示した上下のリム成形型において、図示する着座部位素地153kから第2リム連結部素地152kがやや下方に傾斜して延びるよう、凹所165bの形状を変えてキャビティを形成する。この変形例によれば、標準化されたボール部TBを備えつつリム上端形状が相違する外観意匠の便器を容易に製造できると共に、既述した効果を奏することができる。
【0092】
図14は第6変形例の便器100Eをその略中央で断面視して示す説明図、図15はこの便器100Eが有するリム150Eの製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図である。
【0093】
図示するように、便器100Eにあっても、リム150Eとリム包囲壁122との連結の様子に特徴があり、第2リム連結部152を着座部位153より低い位置からリム包囲壁122に延ばしている。
【0094】
こうした便器100Eの製造には、図15に示した上下のリム成形型において、図示する着座部位素地153kより低い位置から第2リム連結部素地152kが延びるよう、凹所165bの形状を変えてキャビティを形成する。外観壁120の側では、第2リム連結部素地152kが下がった分だけリム包囲壁素地122kの高さを控える。この変形例によれば、標準化されたボール部TBを備えつつリム上端形状が相違する外観意匠の便器を容易に製造できると共に、既述した効果を奏することができる。しかも、変形例では、着座部位153の形状を図1や図11に示す便器幅の狭い便器と同じ形状とした上で、図14に示すような便器幅の広い便器を容易に製造できる。そして、これら便器で着座部位153が同じであることから、当該着座部位に適した大きさ・形状に標準化された図示しない便座を共通に使用できる。このことは、便器幅に合わせた大きさ・形状の便座を便器ごとに用意する必要がないことを意味し、部品共通化によるコスト低減に有益である。
【0095】
次に、また別の変形例について説明する。上記した実施例およびその変形例は、中空部54、154を共通のものとしたので、これをリム導水路としてボール部に洗浄水を給水する便器に好適である。以下に説明する変形例は、こうしたリム導水手法を採るのではなく、リム下端とボール部上端との繋ぎ部分を洗浄水の通過経路として利用した便器にあって、便器周囲形状に拘わらず上記の共通化を図るものである。図16は変形例の洗浄水給水の様子を説明する説明図、図17は第7変形例の便器10Fをその略中央で断面視して示す説明図、図18はこの便器10Fと異なる周囲外観形状を有する便器100Fをその略中央で断面視して示す説明図である。
【0096】
図16に示すように、この便器10Fは、リム50の下方部分に洗浄水噴出口70を備え、洗浄水を、リム50下端とボール部TB上端との繋ぎ部分に噴出する。こうして噴出されたリムショット洗浄水RSは、繋ぎ部分に案内されながらボール部上縁(リム下端)に沿って略水平方向に旋回を起こし、この旋回する主流から各所で分岐した流れとなり、便器内面壁30に沿って伝わり落ちる。
【0097】
この便器10Fは、図1に示す便器10とリム50の形状が相違するに過ぎず、リム50が第1リム連結部51や第2リム連結部52を有する点、外観壁20と便器内面壁30が第1内外壁連結部40や第2内外壁連結部48で連結されている点、リム50は第2リム連結部52を介してリム包囲壁22と連結されている点で共通する。便器100Fにあっても同様であり、図2の便器100とリム形状で相違し、便器10Fとの対比では、便器10と便器100との対比と同様、外観変更に伴い第2リム連結部52、152や第1内外壁連結部40、140がその形状において相違する。なお、こうした便器10F、100Fでは、図4、図6の上下のリム型を、図17や図18に示すリム形状に合致したものに変更するだけである。
【0098】
こうした便器10Fと便器100Fでは、便器内面壁30の共通化の他、洗浄水噴出口70の形状・位置の共通化、リムショット洗浄水RSを案内するボール部上縁(リム下端)の共通化を図りつつ、その外観を多様とできる。よって、このようなリムショット洗浄水RSによる洗浄形式の便器にあっても、上記の標準化を図った便器を容易に製造できると共に、既述した効果を奏することができる。
【0099】
以上本発明の実施例について説明したが、本発明は上記の実施例や実施形態になんら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0100】
例えば、便器幅が広狭の便器10と便器100を製造するに当たり、それぞれ別々のリム50、150を素地成形したが、次のようにすることもできる。便器10の外観壁20と便器内面壁30に第1リム連結部51、第2リム連結部52を介してリム50を連結するに当たり、そのリム素地を、リム150のリム素地150kとする。
【0101】
このリム素地150kでは、第2リム連結部素地152kは外観壁20のリム包囲壁22を越えるので、この越えた分の素地を取り除き、リム50とする。こうすれば、リム50とリム包囲壁22上端とをリム外周のコーナーで連結する際に、そのコーナー形状を、リ第2リム連結部素地152kを取り除きながら容易に成型できる。このため、見栄えがより向上した便器を容易に製造できる。また、リム形状をリム連結部まで含めて統一化できるという利点もある。
【0102】
また、ボール中型60とボール中型160のように、その型面形状を共通化するに当たっては、次のようにすることもできる。上記した図1の便器10はリム50の中空部54をリム導水路としてボール部TBに洗浄水を給水するリム給水タイプの便器であり、図16の便器10Fは既述した通りリム50下方の洗浄水噴出口70から洗浄水を噴出するリムショットタイプの便器である。このように便器での給水は種々採用できるので、リム給水タイプの便器については、その外観意匠に拘わらずボール部TBの形状を共通化し、リムショットタイプの便器についても、こうした便器での外観意匠に拘わらずボール部TBの形状を共通化する。つまり、給水のタイプが同じ便器同士においてそのボール部TBの共通化を図り、給水タイプが異なる便器間では、ボール部TBが異なる形状であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施例で製造する便器10をその略中央で断面視して示す説明図である。
【図2】この便器10と異なる周囲外観形状を有する便器100をその略中央で断面視して示す説明図である。
【図3】便器10の製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図である。
【図4】リム50の製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図である。
【図5】便器100の製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図である。
【図6】リム150の製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図である。
【図7】便器10と便器100に共通して使用することができる変形例(第1変形例)のボール中型260を示す説明図である。
【図8】第2変形例の便器100Aをその略中央で断面視して示す説明図である。
【図9】この便器100Aが有するリム150Aの製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図である。
【図10】便器100Aを更に変形した第3変形例の便器100Bをその略中央で断面視して示す説明図である。
【図11】第4変形例の便器10Cをその略中央で断面視して示す説明図である。
【図12】第4変形例の便器100Cをその略中央で断面視して示す説明図である。
【図13】第5変形例の便器100Dをその略中央で断面視して示す説明図である。
【図14】第6変形例の便器100Eをその略中央で断面視して示す説明図である。
【図15】この便器100Eが有するリム150Eの製造に使用する各型を型合わせした状態を示す説明図である。
【図16】変形例の洗浄水給水の様子を説明する説明図である。
【図17】第7変形例の便器10Fをその略中央で断面視して示す説明図である。
【図18】この便器10Fと異なる周囲外観形状を有する便器100Fをその略中央で断面視して示す説明図である。
【符号の説明】
10、10A〜10F…便器
20…外観壁
20k…外観壁素地
22…リム包囲壁
22k…リム包囲壁素地
30…便器内面壁
30k…便器内面壁素地
40…第1内外壁連結部
40k…第1内外壁連結部素地
48…第2内外壁連結部
48k…第2内外壁連結部素地
50…リム
50k…リム素地
51…第1リム連結部
51k…第1リム連結部素地
52…第2リム連結部
52k…第2リム連結部素地
53…着座部位
53k…着座部位素地
54…中空部
58…排便用開口
60…ボール中型
60a…凸部
60b…凸部基部
60c…型端部
60d…肩部型面
62…側型
62a…型面
64…底型
64a…凹部
64b…型端部
65…リム上型
65a…凸部
65b…凹所
66…リム下型
70…洗浄水噴出口
100、100A〜100F…便器
120…外観壁
120k…外観壁素地
122…リム包囲壁
122a…下方側リム包囲壁
122b…上方側リム包囲壁
122k…リム包囲壁素地
122bk…上方側リム包囲壁素地
130…便器内面壁
130k…便器内面壁素地
140…第1内外壁連結部
140k…第1内外壁連結部素地
148…第2内外壁連結部
148k…第2内外壁連結部素地
150…リム
150k…リム素地
151…第1リム連結部
151k…第1リム連結部素地
152…第2リム連結部
152k…第2リム連結部素地
153…着座部位
153k…着座部位素地
154…中空部
158…排便用開口
160…ボール中型
160a…凸部
160b…凸部基部
160c…型端部
160d…肩部型面
162…側型
162a…型面
164…底型
164a…凹部
164b…型端部
165…リム上型
165a…凸部
165b…凹所
166…リム下型
166c…キャビティ
167…分割型
260…ボール中型
270…基部装着型
272…下端型面
274…周囲型面
RS…リムショット洗浄水
TB…ボール部

Claims (12)

  1. ボール部の上縁に、これを取り囲むリムを備えた便器であって、
    便器の周囲外観を形成する外観壁と、該外観壁により取り囲まれて前記ボール部を形作る便器内面壁とを、内外壁連結部を介して連結し、
    前記リムは、前記ボール部の側で前記便器内面壁の上端と連結されて支えられると共に、前記外観壁の側で前記リムを取り囲むリム包囲壁を介して前記外観壁と連結されて支えられている、
    ことを特徴とする便器。
  2. 請求項1記載の便器であって、
    前記外観壁と前記便器内面壁とは、前記便器内面壁の上端近傍の上端側連結箇所における前記内外壁連結部と、前記便器内面壁の下端側の下端側連結箇所における前記内外壁連結部で連結されている、便器。
  3. 請求項1または請求項2記載の便器であって、
    前記リムは、便座の着座面となる着座部位を便器周囲側に延長させて、前記リム包囲壁上端と連結されている、便器。
  4. 請求項1ないし請求項3いずれか記載の便器であって、
    前記リムは、便座の着座面となる部位の下方が中空部とされ、該中空部位の下端部で前記便器内面壁上端と連結されている、便器。
  5. 請求項4記載の便器であって、
    前記リムの中空部は、前記ボール部に洗浄水を給水する際の導水路とされている、便器。
  6. 請求項1記載の便器の製造に用いる成形型であって、
    前記便器内面壁の内壁形状に適合した凸形状の凸部を有するボール中型を備え、
    該ボール中型の前記凸部の基部は、前記外観壁と前記便器内面壁とを連結させる前記内外壁連結部を前記基部表面への泥漿堆積を経て形成する、成形型。
  7. 請求項6記載の成形型であって、
    更に、前記基部を取り囲むよう該基部に組み付け装着される基部装着型を備え、
    該基部装着型は、前記基部が形成する前記内外壁連結部と異なる前記内外壁連結部を前記基部装着型表面への泥漿堆積を経て形成する、成形型。
  8. ボール部を有する便器本体と、前記ボール部をその上縁で取り囲み前記ボール部に臨む排便用開口を有するリムとを連結した便器の製造方法であって、
    前記便器本体となる便器素地を型成形する工程(1)と、
    前記リムとなるリム素地を型成形する工程(2)と、
    型成形された前記リム素地と前記便器素地とを接合して、素地焼成を行う工程(3)とを有し、
    前記工程(1)は、
    前記ボール部を形作る便器内面壁の内壁形状に適合した凸状型面の凸部を有するボール中型と、
    便器の周囲外観を形成すると共に前記リムを取り囲むリム包囲壁を有する外観壁の外壁形状に適合した型面を有する側型とを準備する工程と、
    前記準備した各型を型合わせして前記側型で前記ボール中型の前記凸部を取り囲み、各型の型面で、前記リム包囲壁を含む前記外観壁と前記便器内面壁およびこの両者を連結する内外壁連結部の素地形成のためのキャビティを形成する工程と、
    前記キャビティへの泥漿の流し込み、前記各型の型面への泥漿堆積、排泥、土締め、型抜きを経て、前記外観壁素地が前記便器内面壁素地を取り囲んで前記外観壁素地が前記内外壁連結部素地を介して前記便器内面壁素地と連結した前記便器素地を取得する工程とを有し、
    前記工程(2)は、
    前記排便用開口の内壁形状に適合した凸状型面の凸部を有するリム上型と、前記排便用開口の下端側形状に適合した型面を有するリム下型とを準備する工程と、
    前記準備した各型を型合わせして、各型の型面で、前記リム素地と、前記リム素地を前記リム包囲壁素地を介して前記外観壁素地に連結するリム連結部の素地を形成するためのキャビティを形成する工程と、
    前記キャビティへの泥漿の流し込み、前記各型の型面への泥漿堆積、排泥、土締め、型抜きを経て、前記リム連結部の素地を有する前記リム素地を取得する工程とを有し、
    前記工程(3)は、
    前記リム素地の前記リム連結部素地を前記リム包囲壁素地を介して前記外観壁素地と接合すると共に、前記リム素地を前記便器内面壁素地の上端と接合する工程を有し、
    前記ボール中型の前記凸部は、前記側型の有する前記型面形状に拘わらず規格化された凸形状を有する
    ことを特徴とする便器の製造方法。
  9. 請求項8記載の便器の製造方法であって、
    前記リム上型と前記リム下型とは、便座の着座面となる着座部位の下方を中空部とし、該中空部の下端部で前記便器内面壁上端と連結されるリム連結部を形成するよう、前記キャビティを形成する、便器の製造方法。
  10. 請求項8または請求項9記載の便器の製造方法であって、前記リム上型と前記リム下型とは、前記リムを前記リム包囲壁を介して前記外観壁に連結する前記リム連結部が、前記リムの前記着座部位から便器周囲側に延長するよう、前記キャビティを形成する、便器の製造方法。
  11. 請求項8記載の便器の製造方法であって、
    前記ボール中型は、前記凸部の基部を、該基部表面への泥漿堆積を経て前記内外壁連結部を形成する、便器の製造方法。
  12. 請求項11記載の便器の製造方法であって、
    前記ボール中型の前記基部を取り囲むよう該基部に組み付け装着される基部装着型を備え、
    該基部装着型は、前記基部が形成する前記内外壁連結部と異なる前記内外壁連結部を前記基部装着型表面への泥漿堆積を経て形成する、便器の製造方法。
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