JP2004047416A - 非水電解質電池 - Google Patents
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Abstract
【課題】容量密度が高い新規な正極活物質を用いた非水電解質電池を得る。
【解決手段】遷移金属及び/または遷移金属化合物(例えば、Cu及び/またはCu化合物など)を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、周期律表VIB族及びVIIB族の元素のリチウム化合物(例えば、LiClまたはLiFなどのハロゲン化リチウム)が、正極、非水電解質、及び負極の少なくともいずれかに含まれていることを特徴としている。
【選択図】 図1
【解決手段】遷移金属及び/または遷移金属化合物(例えば、Cu及び/またはCu化合物など)を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、周期律表VIB族及びVIIB族の元素のリチウム化合物(例えば、LiClまたはLiFなどのハロゲン化リチウム)が、正極、非水電解質、及び負極の少なくともいずれかに含まれていることを特徴としている。
【選択図】 図1
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な正極活物質を用いた非水電解質電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塩化銅は、安価でかつ正極としての理論容量密度が高いため、リチウム電池研究の初期に一次電池用活物質として検討された。しかしながら、塩化銅は電解液の溶媒として有機溶媒を用いると、電解液への溶解性が著しいため、自己放電が非常に大きいという問題があった。
【0003】
そこで、塩化銅が溶解しない溶媒について種々検討された結果、SO2系の無機溶媒が見出された。しかしながら、SO2系の無機溶媒中では、正極の電位が3.0V以下で、正極導電剤の上で電解液の副反応(還元反応)が生じるため、完全に放電することができないという問題があった。
【0004】
上記塩化銅と同様に、フッ化銅も高い容量密度を期待することができるので、一次電池用活物質として、リチウム電池研究の初期に検討された。しかしながら、フッ化銅も電解液への溶解性の問題があり、一次電池及び二次電池用の正極活物質として十分に検討されていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述のように、塩化銅及びフッ化銅は、高い理論容量密度を有するにもかかわらず、非水電解質電池の正極活物質として十分に検討されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、容量密度が高い新規な正極活物質を用いた非水電解質電池を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の局面の非水電解質電池は、遷移金属及び/または遷移金属化合物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、周期律表VIB族またはVIIB族の元素のリチウム化合物が、正極、非水電解質、及び負極の少なくともいずれかに含まれていることを特徴としている。
【0008】
周期律表VIB族の元素として、具体的には、O、S、Se、Te、及びPoなどが挙げられる。周期律表VIIB族の元素として、具体的には、F、Cl、Br、I、及びAtなどが挙げられる。従って、リチウム化合物として、具体的には、ハロゲン化リチウム、酸化リチウム、硫化リチウム、及びセレン化リチウムなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0009】
ハロゲン化リチウムとして、特に好ましくは、LiCl及びLiFが用いられる。
本発明の第1の局面において正極に用いられる遷移金属としては、遷移金属であれば特に限定されるものではないが、例えば、Cu、Fe、Ni、Mn、Co、Ti、及びMoなどが挙げられる。遷移金属化合物としては、これらの遷移金属の酸化物、硫化物、ハロゲン化物、及び酸素酸塩などが挙げられる。
【0010】
本発明の第1の局面の非水電解質電池においては、上述のように、正極に遷移金属及び/または遷移金属化合物が含まれ、上記リチウム化合物が、正極、非水電解質、及び負極の少なくともいずれかに含まれる。非水電解質中に溶解したリチウム化合物が、一般に充放電反応に関与するので、非水電解質中にリチウム化合物を含ませることが好ましいが、非水電解質には多量のリチウム化合物を溶解させることができないので、正極及び/または負極にもリチウム化合物を含ませることが好ましい。一般には、正極にリチウム化合物を含ませる。
【0011】
リチウム化合物は、放電生成物の形態である。例えば、リチウム化合物がLiClである場合、充電によってLiClを、LiとClに分け、Liを放出するとともにClを貯蔵する必要がある。また、放電の際にはLiとClからLiClを生成させる必要がある。同様に、リチウム化合物がLiFである場合、充電によってLiFをLiとFに分け、Liを放出するとともにFを貯蔵する必要があり、放電の際にはLiとFからLiFを生成させる必要がある。
【0012】
リチウム化合物が、Li2O、Li2S、またはLi2Seなどである場合も同様である。すなわち、充電によってLiとO、LiとS、またはLiとSeに分け、Liを放出するとともに、O、S、またはSeを貯蔵する。また、放電の際には、O、S、またはSeがLiと反応し、Li2O、Li2S、またはLi2Seに戻る。
遷移金属及び遷移金属化合物は、このように充電により生成したClまたはF等を貯蔵するために用いられる。
【0013】
<Clの貯蔵>
Clは、以下のようにして遷移金属または遷移金属化合物に貯蔵することができる。
【0014】
(遷移金属及び遷移金属のハロゲン化物)
遷移金属を用いる場合には、遷移金属の塩化物を形成させることによりClを貯蔵することができる。遷移金属としては、Cu、Ni、Fe、Ti、Co、Mnなどが挙げられ、できるだけ貴な金属を用いれば、電位を高くすることができるため都合がよい。但し、Au及びAgのような貴金属は高価なため実用性が失われるので、実用性の観点からはCuが最も好ましい。
【0015】
塩化銅にはCuCl2とCuClの2種類があり、CuCl2は放電によりCuClを経てCuまで還元される。従って、Cu+LiClの代わりに、CuCl+LiClを使ってもよい。
【0016】
また、CuBr、CuBr2、CuI等の遷移金属のハロゲン化物を用いてもよい。
Cl以上の原子量をもつハロゲン元素の銅化合物を用いる場合には、以下のように2つの場合に分けて考えることができる。1つはCuClを用いた場合、もう1つはClより重いハロゲン元素を用いた場合である。CuClを用いた場合、充電の際にCuClがCuCl2に酸化され、放電の際にCuCl2がCuClに還元される反応が生じる。Clより重いハロゲン元素を用いた場合、ハロゲン元素は原子量が大きくなるに従い、酸化性が弱くなるため、充電の際にCl−イオンで酸化されると考えられる。
【0017】
すなわちCuBrを用いた場合には、Cl−1によってCuBrClまたはCuClになると考えられる。CuBr2の場合には、Cl−によってCuBrClまたはCuCl2になると考えられる。
【0018】
充電によりCu+2LiClからCuCl2を生成する場合、その理論容量は361mAh/gとなり、非常に大きいため、高い容量密度の電池を期待することができる。放電電位は3.4Vと2.6Vの2段階となるが、3.4Vの部分のみを使用すれば、約180mAh/gの理論容量が得られる。2.6Vの部分のみを使用すれば、約253mAh/gの理論容量が得られる。
【0019】
(遷移金属の硫化物)
Clは、遷移金属の硫化物に貯蔵してもよい。硫化物に+電荷を与えることにより、イオン性の化合物を形成させて、Cl−を保持することができる。硫化物としては、CuSのような非層間化合物であってもよいし、TiS2及びMoS2のような層間化合物であってもよい。
【0020】
CuSを用いた場合には、充電によりCuSが酸化され、CuS全体で電子が不足する状態となるが、この電荷補償としてCl−が供給され、見かけ上(CuS)x+・xCl−という構造が生成すると考えられる。(CuS)x+は、(Cu2+S2−)x+であると考えられ、その実態は現在のところ不明である。しかしながら、S2−が部分的あるいは全体的に酸化されたものと考えれば、例えばx=2の場合、Cu2+・S・2Cl−と考えることもできる。これは、CuCl2とSの固溶体とも考えられるが、後述の実施例で示すように、放電電位及び放電曲線の形状がCuCl2と異なることから断定はできない。いずれにしても、CuSがCl−が存在する電解液中で充放電できることは実施例から明らかである。もし、CuCl2が生成するのではなく、Cu2+・S・2Cl−のような状態が生成するなら、この充電生成物の溶解性は、CuCl2と異なることが予想され、CuCl2が溶解するような通常の有機溶媒でも使用できる可能性があると考えられる。
【0021】
CuSのような非層間化合物の場合には、上述のような機構でClが保持されると考えられる。非層間化合物の硫化物としては、CuSの他に、Cu2S、FeS、FeS2、NiS、MnS、CoSなどが挙げられる。
【0022】
硫化物が層間化合物である場合には、層間にCl−が挿入され、これを脱離することができると考えられる。このような層間化合物の硫化物としては、TiS2、MoS2などが挙げられる。
また、金属の表面をこれらの金属硫化物で覆うことにより、溶解しやすい金属の溶解を抑制し、充放電効率を向上させ得ると考えられる。
【0023】
(遷移金属の酸化物)
Clは、遷移金属の酸化物に貯蔵させてもよい。遷移金属酸化物は、遷移金属の価数を変化させることができるので、充電によって酸化されて増加する酸化数は遷移金属の価数変化により受け入れることができる。従って、その価数変化に応じてClを保持することが可能である。例えば、Clではなく、Liイオンの場合、このような現象は数多く観察されており、MnO2、MoO3、MoO2などにLiイオンを可逆的に保持させ得ることが確認されている。酸化物がLiイオンを保持する場合、酸化物は還元されることになる。酸化物は酸化されている状態で安定であるから、これが還元された場合、安定性は減少することになる。しかしながら、Clを保持させる場合、酸化物は酸化されることになり、安定性が減少するとは考えにくい。従って、Liイオンを保持する場合より安定性が高くなるので、可逆性の高い化合物が得られる可能性が高い。充電により酸化されるので、酸化数が低い遷移金属酸化物の方がより多くのClを保持できると考えられる。酸化数が低い遷移金属酸化物としては、MoO2、MnO、Mn2O3、Mn3O4、Fe3O4などが挙げられる。酸化数が高い酸化物であっても、その遷移金属がとり得る最高酸化数でない場合には、Clを保持できると考えられる。例えば、MnO2のMnの酸化数は4価であるが、Mnは7価までとり得るから、これを酸化することが可能であり、Clを保持することが可能であると考えられる。この場合、遷移金属の酸化数が高いので、放電電位がより高くなることが期待できる。高い酸化数の酸化物としては、MoO3、MnO2などが挙げられる。
【0024】
(遷移金属の酸素酸塩)
また、遷移金属の酸素酸塩にClを貯蔵させることができる。この種の化合物は、上述の遷移金属酸化物と同様の機構でClを貯蔵することができると考えらる。酸素酸塩としては、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、炭素酸塩などが挙げられる。Clの貯蔵量の観点からは、酸化数の低いものが好ましく、放電電位の観点からは高い酸化数のものが好ましいと考えられる。しかしながら、電位が高すぎると、電解液の分解が優先して生じるので、電位が高すぎるものは好ましくない。Clを保持させることができる遷移金属の酸素酸塩としては、FeSO4、Fe3(PO4)2、FePO4、CoPO4、NiPO4、MnPO4などが挙げられる。
【0025】
<Fの貯蔵>
Fは、以下のようにして遷移金属または遷移金属化合物に貯蔵することができる。
【0026】
(遷移金属及び遷移金属のハロゲン化物)
遷移金属を用いる場合、フッ化物を形成させることによりFを貯蔵することができる。Clの場合と同様に、Cu、Ni、Fe、Ti、Co、Mnなどの遷移金属などを用いることができるが、できるだけ貴な金属を用いれば、電位が高くなるため都合がよい。但し、AuやAgのような貴金属は高価なため実用性が失われるので、実用性の観点からはCuが最も好ましい。
【0027】
金属フッ化物が生成する場合、同時に金属の溶解反応も生じる。これは副反応であるので、できるだけ抑制しなければならない。その手段として、金属表面をFイオン導電体で被覆することが考えられる。遷移金属としてCuを用いる場合、Cu粉末やCu箔の表面を、CaF2またはCeF3などのフッ素イオン導電体で被覆する。被覆方法は、メカノフージョンやCuCa合金のフッ素化(フッ素ガスにさらす、HFで処理するなど)が考えられる。他の方法として、Cu粉末やCu箔自体の表面をフッ素化する方法も考えられる。フッ素化には、F2ガスで処理する方法や、アルカリ水溶液で処理し、表面を水酸化銅にした後、HF溶液で処理する方法及びHF中で焼成する方法などが考えられる。
【0028】
また、金属の溶解反応を抑制する方法として、LiPF6などのフッ素を含むリチウム塩を高濃度で添加する方法が挙げられる。例えば、LiPF6の濃度を高めることにより、LiF+PF5→LiPF6の平衡反応が左側にずれることにより、CuF2の生成を生じやすくすることができる。
【0029】
また、非水電解質に、リン酸トリメチル及びリン酸トリエチルなどのリン酸エステルを添加することにより、金属の溶解反応を抑制することができる。
さらに、Cuの上に、LiF、CaF2、CeF3等のフッ素イオン導電体の被膜をスパッタリング、CVD、蒸着、溶射などの物理的手法で形成し、Cuの溶解を防止する方法も考えられる。この場合、被膜を形成させる前に、銅金属表面の酸化被膜をArプラズマエッチングなどで除去できるという利点もある。
【0030】
Clの場合と同様に、遷移金属に代えて、遷移金属のハロゲン化物を用いてFを貯蔵させてもよい。遷移金属がCuである場合、ハロゲン化物としては、CuF、CuCl、CuBr、CuBr2、CuIなどが挙げられる。
【0031】
(遷移金属の硫化物)
Clの場合と同様に、遷移金属の硫化物によりFを貯蔵することができる。硫化物としては、CuSのような非層間化合物であってもよいし、TiS2及びMoS2のような層間化合物であってもよい。非層間化合物を形成する硫化物としては、CuS、Cu2S、FeS、FeS2、NiS、MnS、CoSなどが挙げられる。層間化合物である硫化物としては、TiS2、MoS2などが挙げられる。金属の表面を、これらの金属硫化物で覆うことにより、溶解しやすい金属の溶解を抑制し、充放電効率を向上させ得ることも考えられる。
【0032】
CuSを用いた場合には、充電によりCuSが酸化され、CuS全体で電子が不足する状態となり、この電荷補償としてF−が供給され、見かけ上(CuS)x+・xF−という構造が生成すると考えられる。(CuS)x+は、(Cu2+S2−)x+であると考えられ、その実態は現在のところ不明である。しかしながら、S2−が部分的あるいは全体的に酸化されたものと考えれば、例えばx=2の場合、Cu2+・S・2F−と考えることもできる。これは、CuF2とSの固溶体とも考えられるが、後述の実施例で示すように、放電電位及び放電曲線の形状がCuF2と異なることから断定はできない。いずれにしても、CuSがF−が存在する電解液中で充放電できることは実施例から明らかである。もし、CuF2が生成するのではなく、Cu2+・S・2F−のような状態が生成するなら、この充電生成物の溶解性は、CuF2と異なることが予想され、CuF2が溶解するような通常の有機溶媒でも使用できる可能性があると考えられる。
【0033】
CuSのような非層間化合物の場合には、上述のような機構でFが保持されると考えられる。
硫化物が層間化合物である場合には、層間にF−が挿入され、これを脱離することができると考えられる。
【0034】
(遷移金属の酸化物)
Clの場合と同様に、遷移金属酸化物にFを貯蔵させることができる。遷移金属酸化物は、遷移金属の価数が変化するので、充電において酸化されて増加する酸化数を遷移金属の価数変化で受け入れることができる。Fを貯蔵させる場合、酸化物はより酸化されることになるので、安定性が減少することはないと考えられる。
【0035】
充電により酸化されるので、遷移金属の酸化数が低い酸化物の方がより多くのFを貯蔵できると考えられる。例えば、低酸化数の酸化物として、MoO2、MnO、Mn2O3、Mn3O4、Fe3O4などが考えられる。一方、高い酸化数の酸化物もその遷移金属がとり得る最高酸化数でない場合には、Fを貯蔵できると考えられる。例えば、MnO2のMnの酸化数は4価であるが、Mnは7価までとり得るから、これを酸化することは可能であり、Fを貯蔵することも可能である。この場合、遷移金属の酸化数が高いので、放電電位がより高くなることが期待できる。高い酸化数の酸化物として、MoO3、MnO2などが挙げられる。
【0036】
(遷移金属の酸素酸塩)
Clの場合と同様に、遷移金属の酸素酸塩にFを貯蔵させるができる。酸素酸塩としては、Clの場合と同様に、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩などが挙げられる。Fの貯蔵量の観点からは低い酸化数のものが好ましく、放電電位の観点からは高い酸化数のものが好ましいと考えられる。しかしながら、電位が高すぎると、電解液の分解が優先して起こるので、電位があまりに高すぎるのは好ましくない。具体的な酸素酸塩としては、Clの場合と同様の化合物が挙げられる。
【0037】
本発明の第1の局面において、遷移金属がCuであり、リチウム化合物がLiClである場合、以下の非水電解質電池となる。
すなわち、Cu及び/またはCu化合物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、LiClが、正極、非水電解質、及び負極の少なくともいずれかに含まれている非水電解質電池となる。
【0038】
また、遷移金属がCuであり、リチウム化合物がLiFである場合、以下の非水電解質電池となる。
すなわち、Cu及び/またはCu化合物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、LiFが、正極、非水電解質、及び負極の少なくともいずれかに含まれている非水電解質電池となる。
【0039】
本発明の第2の局面の非水電解質電池は、遷移金属のハロゲン化物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備えることを特徴としている。
【0040】
本発明の第2の局面における遷移金属としては、遷移金属であれば特に限定されるものではないが、例えば、Cu、Fe、Ni、Mn、Co、Ti、及びMoなどが挙げられる。これらの中でも、特にCuが好ましく用いられる。
【0041】
本発明の第2の局面における遷移金属のハロゲン化物としては、遷移金属の塩化物、フッ化物、臭化物、及びヨウ化物などが挙げられる。これらの中でも、特に塩化物及びフッ化物が好ましく用いられる。
【0042】
本発明の第2の局面における遷移金属のハロゲン化物としては、塩化銅及びフッ化銅が特に好ましく用いられる。塩化銅は、CuCl2及びCuClのいずれであってもよい。フッ化銅は、CuF2及びCuFのいずれであってもよいが、一般にはCuF2が用いられる。
【0043】
本発明の第2の局面における正極材料は、充電生成物であるので、電池を組み立てた状態において、放電させることができる。従って、本発明の第2の局面の非水電解質電池は、非水電解質二次電池のみならず、非水電解質一次電池としても用いることができる。
【0044】
本発明の第1の局面及び第2の局面の非水電解質電池においては、正極における充電生成物が溶解しない電解質溶媒を用いることが必要である。正極における充電生成物が塩化銅またはフッ化銅である場合、塩化銅またはフッ化銅を溶解しない電解質溶媒を用いることが必要である。
【0045】
実施例において後述するように、トリフルオロプロピレンカーボネート(TFPC)のようなフッ素化炭酸エステル及びH(CF2)4CH2−O−CF2CF2Hのようなフッ素化エーテル等のフッ素化された有機溶媒が、塩化銅を溶解しないこと、並びにTFPCのようなフッ素化炭酸エステル及びCF3CH2O−CO−OCH2CF3のようなフッ素化炭酸エステル等のフッ素化された有機溶媒がフッ化銅を溶解しないことを見出している。
【0046】
TFPCは、環状炭酸エステルであるプロピレンカーボネート(PC)をフッ素化したものであるが、同じ炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)をフッ素化したものや、鎖状の炭酸エステルをフッ素化したもの、さらにはγ−ブチロラクトン(γBL)などのエステルやTHFなどのエーテルをフッ素化したものも塩化銅またはフッ化銅を溶解しない溶媒として使用できる可能性がある。
【0047】
本発明において、非水電解質には、フッ素を含むリチウム塩が溶質として含有されていることが好ましい。フッ素を含むリチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiF・(C6F5)3B、及びLiCl・(C6F5)3Bなどのルイス酸塩を挙げることができる。これらのフッ素を含むリチウム塩が電解質中に含有されていると、これらが媒介となって、CuとLiClまたはLiFとの反応が進行するものと思われる。例えば、LiClとLiPF6が反応して、LiFとLiPF5Clが生成し、PF5Cl−が、Cuと反応して、CuClとPF5とを生成し、PF5は、LiFと反応してLiPF6に戻ると考えられる。LiFとLiPF6の反応も、同様にして進行し、LiFとCuを、CuF2とLiに変化させることができると考えられる。
【0048】
上記のPF5と同様に、BF3、AsF5、SbF5、及び(C6F5)3Bも、同様に、LiClまたはLiFと錯体を形成し、CuとLiClまたはLiFとの反応に関与するものと思われる。
【0049】
また、非水電解質中に、AlCl3が含有されていると、LiClと反応してLiAlCl4を形成し、上記PF5と同様に、CuとLiClまたはLiFとの反応に関与するものと思われる。
【0050】
本発明における負極材料は、リチウムを吸蔵・放出し得る材料であれば特に限定されるものではないが、本発明の非水電解質電池が二次電池である場合、負極材料としては、炭素材料や、ケイ素、ゲルマニウム及び錫などのリチウムと合金化し得る材料が好ましく用いられる。特に、本発明の第1の局面においては、正極にリチウムが含まれており、充電反応から使用を開始することができる。従って、負極にはリチウムが含まれていなくてもよい。
【0051】
本発明の非水電解質電池が一次電池である場合には、充電の必要がないので、負極材料としてリチウム金属を用いることができる。この場合、正極にCuClを用いれば、2.6V程度の放電電圧を有する一次電池とすることができる。また、正極にCuCl2を用いれば、3.4Vと2.6Vの2種類の放電電圧を有する一次電池とすることができる。
【0052】
本発明によれば、容量密度が高い非水電解質電池とすることができる。現在最も一般的なリチウム二次電池の正極材料には、LiCoO2が用いられている。LiCoO2は、理論容量273.9mAh/gであるが、全てのリチウムを放出することができないので、実容量は150mAh/gであり、放電電位は3.8Vである。本発明において、Cu+2LiFを正極材料として用い、充電してCuF2を生成させる場合、その理論容量は464.67mAh/gであり、放電電位は3.5Vとなる。従って、LiCoO2を正極材料に用いた従来のリチウム二次電池よりも、高容量密度、高エネルギー密度のリチウム二次電池とすることができる。
【0053】
また、本発明の第1の局面の非水電解質電池においては、遷移金属及び/または遷移金属化合物を、リチウム化合物より過剰に存在させておくことにより、過充電の際の安全性を保つことができると考えられる。例えば、LiClまたはLiFに対して、Cu及び/またはCu化合物が過剰に存在すれば、過充電を行った場合、ClまたはFが完全に消費され、電解液の分解あるいは銅の溶解のみが生じると考えられる。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0055】
<実施例1(塩化銅の各種溶媒に対する溶解性の評価)>
塩化銅(CuCl)の各種溶媒に対する溶解性を以下のようにして評価した。アルゴン雰囲気のドライボックス中で、溶媒3mlにCuClを5.0mg添加して混合し、静置した後、この中にリチウム金属片を入れ放置した。以下の各種溶媒における1週間後のリチウム金属片の状態を図17〜図26に示す。
【0056】
図17:TFPC(トリフルオロプロピレンカーボネート)
図18:H(CF2)4CH2−O−CF2CF2H
図19:DEC(ジエチルカーボネート)
図20:DMC(ジメチルカーボネート)
図21:EMC(エチルメチルカーボネート)
図22:DME(ジメトキシエタン)
図23:PC(プロピレンカーボネート)
図24:BC(ブチレンカーボネート)
図25:GBL(γ−ブチロラクトン)
図26:4Me−DO(4−メチル−ジオキソラン)
【0057】
図17及び図18に示すように、TFPC及びH(CF2)4CH2−O−CF2CF2H中においては、1週間後の状態においてもリチウム金属片の表面に変化は認められなかった。これに対し、図19〜図26に示すように、その他の溶媒中においては、リチウム金属片の表面に銅が析出し着色していることが確認された。これは、溶媒中に溶解したCuClがリチウムと反応し、リチウム金属片の表面に銅が析出したことによるものと思われる。
従って、TFPC及びH(CF2)4CH2−O−CF2CF2Hには、CuClがほとんど溶解しないことが確認された。
【0058】
<実施例2(正極:Cu+LiCl)>
Cu粉末:8mg、LiCl:12mg、黒鉛:32mg、及び結着剤:16mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。なお、結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレンを用いた。以下の実施例においても同様の結着剤を用いた。得られたペレット状電極をAu板からなる集電体の上に貼り付け正極とした。
【0059】
得られた正極を用いて、図2に示すような構造の試験セルを作製した。図2に示すように、容器5内には、電解液が入れられており、この電解液中に正極1、負極2、及び参照極3が挿入されている。正極1と負極2の間にはセパレータ4が設けられている。負極2及び参照極3としては、リチウム金属を用いた。また、セパレータ4としては、ポリプロピレンを用いた。電解液としては、TFPCに、1モル/リットル(1M)のLiPF6と、100mg/リットルのLiClを含有させたものを用いた。
【0060】
上記試験セルについて、充放電試験を行った。充放電の条件は、充放電電流を0.5mAとし、充電時間を11時間とし、放電終止電圧を2.0Vとした。充放電は、充電及び放電の順で行った。試験結果を図1に示す。図1は、充放電特性を示しており、横軸は充放電容量であり、縦軸は電圧である。
【0061】
図1に示すように、1サイクル目の充放電において、放電容量は300mAh/gであり、充放電効率は83%である。また、放電電位については、CuCl2の放電に対応する3.4Vと、CuClの放電に対応する2.6Vの2つの放電電位が確認された。
従って、TFPC中において、CuCl2及びCuClを充電生成物とする充放電が可能であることが確認された。
【0062】
<実施例3(正極:Cu箔)>
20mm×20mm×厚み0.018mmの大きさのCu箔55mgを正極として用いて、図2に示す試験セルを作製した。負極及び参照極としては、リチウム金属を用いた。また、電解液としては、1モル/リットル(1M)のLiPF6と100mg/リットルのLiClを含むTFPCを用いた。
【0063】
上記試験セルについて、充放電電流0.1mA、充電時間3時間、放電終止電圧2.0Vの条件で、充放電試験を行った。充放電試験は、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図3に示す。
【0064】
正極としてCu箔を用いており、Cu箔の表面のみで充放電反応が起こり、充電に長時間を要するため、充電を途中で打ち切っている。従って、図3に示すように高い充放電容量は得られていない。しかしながら、充放電効率は52%であり、放電電位については、CuCl2の放電に対応する3.4Vと、CuClの放電に対応する2.6Vの2つの放電電位が確認された。従って、本実施例においても、充放電が可能であることがわかる。
【0065】
<実施例4(正極:Cu+LiCl)>
Cu粉末:8mg、LiCl:12mg、黒鉛:32mg、及び結着剤:16mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形して、ペレット状電極を作製した。この電極を、Au板からなる集電体上に貼り付けて正極とした。
【0066】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiClと1モル/リットルのAlCl3を含むTFPCを用いた。
【0067】
得られた試験セルについて、充放電試験を行った。充放電の条件は、充放電電流0.4mA、充電時間10時間、放電終止電圧2.0Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図4に示す。
【0068】
図4から明らかなように、放電容量は250mAh/gであり、充放電効率は100%であった。また、放電電位として、CuCl2の放電に対応する3.4Vと、CuClの放電に対応する2.6Vの2つの放電電位が確認された。従って、本実施例の電池においても、充放電が可能であることが確認された。
また、本実施例の結果から、AlCl3とLiClを併用することにより、充放電効率及び充電電位が高くなり、分極が小さくなることがわかる。
【0069】
<実施例5(正極:Cu2O+LiCl)>
Cu2O粉末:13mg、LiCl:7.6mg、黒鉛:28mg、及び結着剤:14mgを混合し、150kg/cm2の圧力で、プレス成形して、ペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体の上に貼り付け正極とした。
【0070】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして、試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6と100mg/リットルのLiClを含むTFPCを用いた。
【0071】
作製した試験セルについて、充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間4時間、放電終止電圧2.5Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図5に示す。
【0072】
図5に示すように、充放電効率が100%を超えた。これは、Cu2Oと、LiClが化学的に反応して、CuClが生成したためであると考えられる。Cu2OとLiClが化学的に反応することについては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPCに過剰のLiClを添加し、これにCu2Oを添加して1週間放置したところ、Cu2Oの赤色が減色したことからも確認されている。
【0073】
<実施例6(正極:CuO+LiCl)>
CuO粉末:9mg、LiCl:9.5mg、黒鉛:28mg、及び結着剤:14mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形して、ペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体上に貼り付け正極とした。
【0074】
得られた正極を用い、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6と100mg/リットルのLiClを含むTFPCを用いた。
【0075】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電終止電圧4.5V、放電終止電圧2.5Vとして、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図6に示す。
【0076】
図6から明らかなように、充放電効率は100%を超えているが、これは、CuOとLiClが化学的に反応して、CuCl2が生成したためであると考えられる。CuOとLiClが化学的に反応することについては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPCに過剰のLiClを添加し、さらにこれにCuOを添加して1週間放置したところ、CuOの黒色が減色し、緑色に変化したことからも確認されている。
【0077】
<実施例7(正極:CuS+LiCl)>
CuS粉末:10mg、LiCl:9mg、黒鉛:268mg、及び結着剤134mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体上に貼り付け正極とした。
【0078】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPCを用いた。
得られた試験セルのサイクリックボルタモグラムを測定した。電位走査条件は、電位走査速度2V/h、電位走査範囲2.0〜4.5Vとした。サイクリックボルタモグラムを図7に示す。
【0079】
また、得られた試験セルについて充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間4時間、放電終止電圧2.0Vとして、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図8に示す。
【0080】
図7から明らかなように、本実施例の電池が充放電可能であることがわかる。
また、図8から明らかなように、本実施例の電池の充放電効率は100%であり、充放電容量は42mAh/gであった。放電曲線の形状は、CuCl2及びCuClと異なっており、なだらかな形状である。このことから、CuSとCuを混合して用いることにより、3.4Vと2.6Vの2段の放電電位をなだらかにつなぐように制御することが可能であると考えられる。また、CuSなどの硫化物に代えて、3V程度において可逆性を有する、V2O5、LiMn2O4、MnO2、斜方晶MnO2などの材料を用いても、同様の制御が可能であると考えられる。
【0081】
<実施例8(正極:Cu箔)>
20mm×20mm×厚み0.018mmの大きさのCu箔55mgを正極として用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。電解液としては、1モル/リットルのLiF・(C6F5)3Bと、飽和量のLiClを含むTFPCを用いた。
【0082】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.2mA、充電時間10時間、放電終止電圧2.0Vとして、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図9に示す。
【0083】
図9から明らかなように、充放電効率が80%であり、CuCl2の放電に対応する3.4Vと、CuClの放電に対応する2.6Vの2つの放電電位が確認された。従って、本実施例の電池が充放電可能であることが確認された。
【0084】
なお、実施例3で示すようにLiPF6を用いた場合充放電効率が52%程度であったが、本実施例では、LiF・(C6F5)3BとLiClを用いることにより、充放電効率が80%に向上している。
【0085】
<実施例9(フッ化銅の各種溶媒に対する溶解性の評価)>
フッ化銅(CuF2)の各種溶媒に対する溶解性を評価した。アルゴン雰囲気中のドライボックス中で、溶媒3mlにCuF25.0mgを添加して混合し、静置した後、この中にリチウム金属片を入れ放置した。各種溶媒中での1週間後のリチウム金属片の状態を、図27〜図29に示す。
【0086】
図27:TFPC(トリフルオロプロピレンカーボネート)
図28:CF3CH2O−CO−OCH2CF3
図29:エチレンカーボネートとジエチルカーボネート(EC/DEC)の体積比1:1混合溶媒
【0087】
図27及び図28から明らかなように、TFPC及びCF3CH2O−CO−OCH2CF3を用いた場合には、リチウム金属片の表面状態に変化は認められなかった。これに対し、EC/DECの混合溶媒を用いた場合には、リチウム金属片の表面に銅が析出し着色していることが確認された。これらのことから、TFPC及びCF3CH2O−CO−OCH2CF3にはフッ化銅がほとんど溶解しないことがわかる。
【0088】
<実施例10(正極:Cu+LiF)>
Cu粉末:12mg、LiF:20mg、黒鉛:32mg、及び結着剤:16mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体上に貼り付け正極とした。
【0089】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPC及び2モル/リットルのLiPF6を含むTFPCの2種類を用いた。
【0090】
得られた各試験セルについて、充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間3時間、放電終止電圧2.0Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図10に示す。
【0091】
図10に示すように、各試験セルの放電容量は約20mAh/gであり、充放電効率は40%であった。また、放電電位については、CuF2の放電に対応する3.5Vが確認された。図10から明らかなように、LiPF6の濃度の高い方が、充放電効率が高くなることがわかる。
以上のことから、本実施例の電池が充放電可能であることがわかる。
【0092】
<実施例11(正極:Cu+LiF)>
20mm×20mm×厚み0.018mmの大きさのCu箔55mgを正極として用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。電解液としては、1モル/リットルのLiPF6及び500mg/リットルのLiFを含むTFPCを用いた。
【0093】
得られた試験セルについて、充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間3時間、放電終止電圧2.0Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図11に示す。
【0094】
図11から明らかなように、充放電効率は47%であり、放電電位はCuF2の放電に対応する3.5Vが確認された。従って、本実施例の電池は充放電が可能であることが確認された。
【0095】
<実施例12(正極:Cu2O+LiF、正極:CuO+LiF)>
Cu2O粉末:8mg、LiF:20mg、黒鉛:28mg、及び結着剤:14mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体の上に貼り付け正極とした。
【0096】
得られた正極を用い、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPCを用いた。
得られた試験セルについて、充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電終止電圧4.5V、放電終止電圧2.5Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図12に示す。
【0097】
また、Cu2O粉末:8mg及びLiF:20mgに代えて、CuO粉末:5mg及びLiF:7mgを用いる以外は、上記と同様にして試験セルを作製し、作製した試験セルについて上記と同様にして充放電試験を行った。充放電特性を図13に示す。
【0098】
図12に示すように、Cu2Oを用いた場合の充放電効率は60%であり、図13に示すように、CuOを用いた場合の充放電効率は79%であった。
以上のことから、本実施例の各電池は充放電可能であることが確認された。
【0099】
<実施例13(正極:CuS+LiF)>
CuS粉末:9mg、LiF:15mg、黒鉛:24mg、及び結着剤:12mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体上に貼り付けて正極とした。
【0100】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPCを用いた。
得られた試験セルについて、サイクリックボルタモグラムを測定した。電位走査速度は2V/hとし、電位走査範囲は2.0〜4.5Vとした。サイクリックボルタモグラムを図14に示す。
【0101】
また、得られた試験セルについて、充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間4時間、放電終止電圧2.2Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図15に示す。
【0102】
図15に示すように、充放電効率は90%であり、放電容量は30mAh/gであった。放電曲線の形状はCuF2と異なっているため、CuF2ではなく、CuSとFの複合体が生成している可能性が高い。
以上のことから、本実施例の電池は充放電可能であることが確認された。
【0103】
<実施例14(正極:Cu+LiF)>
Cu粉末:9mg、LiF:15mg、黒鉛:24mg、及び結着剤:12mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体上に貼り付け正極とした。
【0104】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6と10体積%のリン酸トリメチルを含むTFPCを用いた。
【0105】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間3時間、放電終止電圧2.0Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図16に示す。
【0106】
図16に示すように、放電電流は51mAh/gであり、充放電効率は95%であった。放電電位については、CuF2の放電に対応する3.5Vが確認された。
以上のことから、本実施例の電池は充放電可能であることが確認された。
【0107】
<実施例15(正極:CuS)>
CuS粉末:160mg、アセチレンブラック:20mg、及び結着剤:20mgを混合した後、この混合物50mgを150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAlからなる集電メッシュで挟み正極とした。
【0108】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含み、かつLiFを飽和させたTFPC溶液を用いた。
【0109】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。1サイクル目は、充電時間を3時間、放電終止電圧を2.5Vとして、充放電した。このときの充放電特性を図30に示す。
【0110】
図30に示すように、放電容量は3.75mAh/gであり、充放電効率は50%であった。
2サイクル目は、充電時間を5.5時間として試験を行ったが、充電状態で保存中に電圧が低下し、放電することができなかった。3サイクル目は、充電時間を7時間として試験を行ったが、充電中に電圧が低下した。2サイクル目及び3サイクル目の充放電特性を図31に示す。
【0111】
実施例13においては、CuSにLiFを添加して正極を作製している。本実施例との比較から、本実施例のようにCuSを単独で用いると、F−イオンの供給が不十分となり、良好な充放電特性が得られないことがわかる。従って、LiFを正極に含ませることが好ましいことがわかる。
【0112】
<実施例16(正極:CuF2+S)>
CuF2粉末:45.6mg、S粉末:14.4mg、アセチレンブラック:100mg、及び結着剤:40mgを混合した後、この混合物20mgを150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAlからなる集電メッシュで挟み、正極とした。
【0113】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含み、かつLiFを飽和させたTFPC溶液を用いた。
【0114】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。この試験セルは、初期において充電状態の試験セルであるので、1サイクル目は放電のみを行った。放電電流を0.1mA、放電時間を5時間として試験を行った。結果を図32に示す。
【0115】
図32から明らかなように、1サイクル目の放電において、3V付近にプラトーが観測された。
次に、2サイクル目は、充放電電流を0.1mA、充電時間を4時間、放電時間を5時間として充放電試験を行った。2サイクル目の充放電特性を図33に示す。
【0116】
図33から明らかなように、充電の際には、4V付近にプラトーが観測された。放電の際には、3.7V付近と3V付近にそれぞれプラトーが観測された。3V付近のプラトーは、未反応のCuF2が還元されたことによるものと考えられる。3.7V付近のプラトーは、充電生成物が放電することによるものと考えられる。実施例13のCuSとLiFの電極の場合においても、3.7V付近にプラトーが認められている(図15)。従って、本実施例のCuF2とSの電極の場合も、CuSとLiFの電極の場合と同じ充電生成物が生成している可能性が高いと考えられる。例えば、Cu2+・S・2F−のような充電生成物が生成しているものと思われる。
【0117】
<実施例17(正極:CuF2+LiF)>
CuF2粉末:29.7mg、LiF粉末:30.3mg、アセチレンブラック:100mg、及び結着剤:40mgを混合した後、この混合物20mgを150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAlからなる集電メッシュで挟み正極とした。
【0118】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含み、かつLiFを飽和させたTFPC溶液を用いた。
【0119】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。この試験セルは、1サイクル目の初期において充電状態であるので、1サイクル目は放電のみを行った。放電電流を0.1mA、放電終止電圧を2.5Vとして放電を行った。
【0120】
2サイクル目は、充放電電流を0.1mAとし、充電終止電圧を4.5Vとし、放電終止電圧を2.5Vとして充放電試験を行った。1サイクル目及び2サイクル目の充放電特性を図34に示す。
【0121】
図34に示すように、1サイクル目の放電においては、3V付近にプラトーが観測された。2サイクル目の充電においては、4V付近にプラトーが観測され、放電においては3.7V付近にプラトーが観測された。図34から明らかなように、本実施例の電池は充放電可能であることがわかる。
【0122】
【発明の効果】
本発明によれば、容量密度の高い非水電解質電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図2】本発明の実施例において作製した試験セルを示す模式図。
【図3】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図4】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図5】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図6】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図7】本発明の実施例におけるサイクリックボルタモグラムを示す図。
【図8】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図9】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図10】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図11】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図12】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図13】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図14】本発明の実施例におけるサイクリックボルタモグラムを示す図。
【図15】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図16】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図17】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図18】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図19】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図20】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図21】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図22】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図23】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図24】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図25】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図26】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図27】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図28】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図29】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図30】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図31】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図32】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図33】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図34】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【符号の説明】
1…正極
2…負極
3…参照極
4…セパレータ
5…容器
【発明の属する技術分野】
本発明は、新規な正極活物質を用いた非水電解質電池に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
塩化銅は、安価でかつ正極としての理論容量密度が高いため、リチウム電池研究の初期に一次電池用活物質として検討された。しかしながら、塩化銅は電解液の溶媒として有機溶媒を用いると、電解液への溶解性が著しいため、自己放電が非常に大きいという問題があった。
【0003】
そこで、塩化銅が溶解しない溶媒について種々検討された結果、SO2系の無機溶媒が見出された。しかしながら、SO2系の無機溶媒中では、正極の電位が3.0V以下で、正極導電剤の上で電解液の副反応(還元反応)が生じるため、完全に放電することができないという問題があった。
【0004】
上記塩化銅と同様に、フッ化銅も高い容量密度を期待することができるので、一次電池用活物質として、リチウム電池研究の初期に検討された。しかしながら、フッ化銅も電解液への溶解性の問題があり、一次電池及び二次電池用の正極活物質として十分に検討されていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述のように、塩化銅及びフッ化銅は、高い理論容量密度を有するにもかかわらず、非水電解質電池の正極活物質として十分に検討されていなかった。
【0006】
本発明の目的は、容量密度が高い新規な正極活物質を用いた非水電解質電池を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の第1の局面の非水電解質電池は、遷移金属及び/または遷移金属化合物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、周期律表VIB族またはVIIB族の元素のリチウム化合物が、正極、非水電解質、及び負極の少なくともいずれかに含まれていることを特徴としている。
【0008】
周期律表VIB族の元素として、具体的には、O、S、Se、Te、及びPoなどが挙げられる。周期律表VIIB族の元素として、具体的には、F、Cl、Br、I、及びAtなどが挙げられる。従って、リチウム化合物として、具体的には、ハロゲン化リチウム、酸化リチウム、硫化リチウム、及びセレン化リチウムなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0009】
ハロゲン化リチウムとして、特に好ましくは、LiCl及びLiFが用いられる。
本発明の第1の局面において正極に用いられる遷移金属としては、遷移金属であれば特に限定されるものではないが、例えば、Cu、Fe、Ni、Mn、Co、Ti、及びMoなどが挙げられる。遷移金属化合物としては、これらの遷移金属の酸化物、硫化物、ハロゲン化物、及び酸素酸塩などが挙げられる。
【0010】
本発明の第1の局面の非水電解質電池においては、上述のように、正極に遷移金属及び/または遷移金属化合物が含まれ、上記リチウム化合物が、正極、非水電解質、及び負極の少なくともいずれかに含まれる。非水電解質中に溶解したリチウム化合物が、一般に充放電反応に関与するので、非水電解質中にリチウム化合物を含ませることが好ましいが、非水電解質には多量のリチウム化合物を溶解させることができないので、正極及び/または負極にもリチウム化合物を含ませることが好ましい。一般には、正極にリチウム化合物を含ませる。
【0011】
リチウム化合物は、放電生成物の形態である。例えば、リチウム化合物がLiClである場合、充電によってLiClを、LiとClに分け、Liを放出するとともにClを貯蔵する必要がある。また、放電の際にはLiとClからLiClを生成させる必要がある。同様に、リチウム化合物がLiFである場合、充電によってLiFをLiとFに分け、Liを放出するとともにFを貯蔵する必要があり、放電の際にはLiとFからLiFを生成させる必要がある。
【0012】
リチウム化合物が、Li2O、Li2S、またはLi2Seなどである場合も同様である。すなわち、充電によってLiとO、LiとS、またはLiとSeに分け、Liを放出するとともに、O、S、またはSeを貯蔵する。また、放電の際には、O、S、またはSeがLiと反応し、Li2O、Li2S、またはLi2Seに戻る。
遷移金属及び遷移金属化合物は、このように充電により生成したClまたはF等を貯蔵するために用いられる。
【0013】
<Clの貯蔵>
Clは、以下のようにして遷移金属または遷移金属化合物に貯蔵することができる。
【0014】
(遷移金属及び遷移金属のハロゲン化物)
遷移金属を用いる場合には、遷移金属の塩化物を形成させることによりClを貯蔵することができる。遷移金属としては、Cu、Ni、Fe、Ti、Co、Mnなどが挙げられ、できるだけ貴な金属を用いれば、電位を高くすることができるため都合がよい。但し、Au及びAgのような貴金属は高価なため実用性が失われるので、実用性の観点からはCuが最も好ましい。
【0015】
塩化銅にはCuCl2とCuClの2種類があり、CuCl2は放電によりCuClを経てCuまで還元される。従って、Cu+LiClの代わりに、CuCl+LiClを使ってもよい。
【0016】
また、CuBr、CuBr2、CuI等の遷移金属のハロゲン化物を用いてもよい。
Cl以上の原子量をもつハロゲン元素の銅化合物を用いる場合には、以下のように2つの場合に分けて考えることができる。1つはCuClを用いた場合、もう1つはClより重いハロゲン元素を用いた場合である。CuClを用いた場合、充電の際にCuClがCuCl2に酸化され、放電の際にCuCl2がCuClに還元される反応が生じる。Clより重いハロゲン元素を用いた場合、ハロゲン元素は原子量が大きくなるに従い、酸化性が弱くなるため、充電の際にCl−イオンで酸化されると考えられる。
【0017】
すなわちCuBrを用いた場合には、Cl−1によってCuBrClまたはCuClになると考えられる。CuBr2の場合には、Cl−によってCuBrClまたはCuCl2になると考えられる。
【0018】
充電によりCu+2LiClからCuCl2を生成する場合、その理論容量は361mAh/gとなり、非常に大きいため、高い容量密度の電池を期待することができる。放電電位は3.4Vと2.6Vの2段階となるが、3.4Vの部分のみを使用すれば、約180mAh/gの理論容量が得られる。2.6Vの部分のみを使用すれば、約253mAh/gの理論容量が得られる。
【0019】
(遷移金属の硫化物)
Clは、遷移金属の硫化物に貯蔵してもよい。硫化物に+電荷を与えることにより、イオン性の化合物を形成させて、Cl−を保持することができる。硫化物としては、CuSのような非層間化合物であってもよいし、TiS2及びMoS2のような層間化合物であってもよい。
【0020】
CuSを用いた場合には、充電によりCuSが酸化され、CuS全体で電子が不足する状態となるが、この電荷補償としてCl−が供給され、見かけ上(CuS)x+・xCl−という構造が生成すると考えられる。(CuS)x+は、(Cu2+S2−)x+であると考えられ、その実態は現在のところ不明である。しかしながら、S2−が部分的あるいは全体的に酸化されたものと考えれば、例えばx=2の場合、Cu2+・S・2Cl−と考えることもできる。これは、CuCl2とSの固溶体とも考えられるが、後述の実施例で示すように、放電電位及び放電曲線の形状がCuCl2と異なることから断定はできない。いずれにしても、CuSがCl−が存在する電解液中で充放電できることは実施例から明らかである。もし、CuCl2が生成するのではなく、Cu2+・S・2Cl−のような状態が生成するなら、この充電生成物の溶解性は、CuCl2と異なることが予想され、CuCl2が溶解するような通常の有機溶媒でも使用できる可能性があると考えられる。
【0021】
CuSのような非層間化合物の場合には、上述のような機構でClが保持されると考えられる。非層間化合物の硫化物としては、CuSの他に、Cu2S、FeS、FeS2、NiS、MnS、CoSなどが挙げられる。
【0022】
硫化物が層間化合物である場合には、層間にCl−が挿入され、これを脱離することができると考えられる。このような層間化合物の硫化物としては、TiS2、MoS2などが挙げられる。
また、金属の表面をこれらの金属硫化物で覆うことにより、溶解しやすい金属の溶解を抑制し、充放電効率を向上させ得ると考えられる。
【0023】
(遷移金属の酸化物)
Clは、遷移金属の酸化物に貯蔵させてもよい。遷移金属酸化物は、遷移金属の価数を変化させることができるので、充電によって酸化されて増加する酸化数は遷移金属の価数変化により受け入れることができる。従って、その価数変化に応じてClを保持することが可能である。例えば、Clではなく、Liイオンの場合、このような現象は数多く観察されており、MnO2、MoO3、MoO2などにLiイオンを可逆的に保持させ得ることが確認されている。酸化物がLiイオンを保持する場合、酸化物は還元されることになる。酸化物は酸化されている状態で安定であるから、これが還元された場合、安定性は減少することになる。しかしながら、Clを保持させる場合、酸化物は酸化されることになり、安定性が減少するとは考えにくい。従って、Liイオンを保持する場合より安定性が高くなるので、可逆性の高い化合物が得られる可能性が高い。充電により酸化されるので、酸化数が低い遷移金属酸化物の方がより多くのClを保持できると考えられる。酸化数が低い遷移金属酸化物としては、MoO2、MnO、Mn2O3、Mn3O4、Fe3O4などが挙げられる。酸化数が高い酸化物であっても、その遷移金属がとり得る最高酸化数でない場合には、Clを保持できると考えられる。例えば、MnO2のMnの酸化数は4価であるが、Mnは7価までとり得るから、これを酸化することが可能であり、Clを保持することが可能であると考えられる。この場合、遷移金属の酸化数が高いので、放電電位がより高くなることが期待できる。高い酸化数の酸化物としては、MoO3、MnO2などが挙げられる。
【0024】
(遷移金属の酸素酸塩)
また、遷移金属の酸素酸塩にClを貯蔵させることができる。この種の化合物は、上述の遷移金属酸化物と同様の機構でClを貯蔵することができると考えらる。酸素酸塩としては、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、炭素酸塩などが挙げられる。Clの貯蔵量の観点からは、酸化数の低いものが好ましく、放電電位の観点からは高い酸化数のものが好ましいと考えられる。しかしながら、電位が高すぎると、電解液の分解が優先して生じるので、電位が高すぎるものは好ましくない。Clを保持させることができる遷移金属の酸素酸塩としては、FeSO4、Fe3(PO4)2、FePO4、CoPO4、NiPO4、MnPO4などが挙げられる。
【0025】
<Fの貯蔵>
Fは、以下のようにして遷移金属または遷移金属化合物に貯蔵することができる。
【0026】
(遷移金属及び遷移金属のハロゲン化物)
遷移金属を用いる場合、フッ化物を形成させることによりFを貯蔵することができる。Clの場合と同様に、Cu、Ni、Fe、Ti、Co、Mnなどの遷移金属などを用いることができるが、できるだけ貴な金属を用いれば、電位が高くなるため都合がよい。但し、AuやAgのような貴金属は高価なため実用性が失われるので、実用性の観点からはCuが最も好ましい。
【0027】
金属フッ化物が生成する場合、同時に金属の溶解反応も生じる。これは副反応であるので、できるだけ抑制しなければならない。その手段として、金属表面をFイオン導電体で被覆することが考えられる。遷移金属としてCuを用いる場合、Cu粉末やCu箔の表面を、CaF2またはCeF3などのフッ素イオン導電体で被覆する。被覆方法は、メカノフージョンやCuCa合金のフッ素化(フッ素ガスにさらす、HFで処理するなど)が考えられる。他の方法として、Cu粉末やCu箔自体の表面をフッ素化する方法も考えられる。フッ素化には、F2ガスで処理する方法や、アルカリ水溶液で処理し、表面を水酸化銅にした後、HF溶液で処理する方法及びHF中で焼成する方法などが考えられる。
【0028】
また、金属の溶解反応を抑制する方法として、LiPF6などのフッ素を含むリチウム塩を高濃度で添加する方法が挙げられる。例えば、LiPF6の濃度を高めることにより、LiF+PF5→LiPF6の平衡反応が左側にずれることにより、CuF2の生成を生じやすくすることができる。
【0029】
また、非水電解質に、リン酸トリメチル及びリン酸トリエチルなどのリン酸エステルを添加することにより、金属の溶解反応を抑制することができる。
さらに、Cuの上に、LiF、CaF2、CeF3等のフッ素イオン導電体の被膜をスパッタリング、CVD、蒸着、溶射などの物理的手法で形成し、Cuの溶解を防止する方法も考えられる。この場合、被膜を形成させる前に、銅金属表面の酸化被膜をArプラズマエッチングなどで除去できるという利点もある。
【0030】
Clの場合と同様に、遷移金属に代えて、遷移金属のハロゲン化物を用いてFを貯蔵させてもよい。遷移金属がCuである場合、ハロゲン化物としては、CuF、CuCl、CuBr、CuBr2、CuIなどが挙げられる。
【0031】
(遷移金属の硫化物)
Clの場合と同様に、遷移金属の硫化物によりFを貯蔵することができる。硫化物としては、CuSのような非層間化合物であってもよいし、TiS2及びMoS2のような層間化合物であってもよい。非層間化合物を形成する硫化物としては、CuS、Cu2S、FeS、FeS2、NiS、MnS、CoSなどが挙げられる。層間化合物である硫化物としては、TiS2、MoS2などが挙げられる。金属の表面を、これらの金属硫化物で覆うことにより、溶解しやすい金属の溶解を抑制し、充放電効率を向上させ得ることも考えられる。
【0032】
CuSを用いた場合には、充電によりCuSが酸化され、CuS全体で電子が不足する状態となり、この電荷補償としてF−が供給され、見かけ上(CuS)x+・xF−という構造が生成すると考えられる。(CuS)x+は、(Cu2+S2−)x+であると考えられ、その実態は現在のところ不明である。しかしながら、S2−が部分的あるいは全体的に酸化されたものと考えれば、例えばx=2の場合、Cu2+・S・2F−と考えることもできる。これは、CuF2とSの固溶体とも考えられるが、後述の実施例で示すように、放電電位及び放電曲線の形状がCuF2と異なることから断定はできない。いずれにしても、CuSがF−が存在する電解液中で充放電できることは実施例から明らかである。もし、CuF2が生成するのではなく、Cu2+・S・2F−のような状態が生成するなら、この充電生成物の溶解性は、CuF2と異なることが予想され、CuF2が溶解するような通常の有機溶媒でも使用できる可能性があると考えられる。
【0033】
CuSのような非層間化合物の場合には、上述のような機構でFが保持されると考えられる。
硫化物が層間化合物である場合には、層間にF−が挿入され、これを脱離することができると考えられる。
【0034】
(遷移金属の酸化物)
Clの場合と同様に、遷移金属酸化物にFを貯蔵させることができる。遷移金属酸化物は、遷移金属の価数が変化するので、充電において酸化されて増加する酸化数を遷移金属の価数変化で受け入れることができる。Fを貯蔵させる場合、酸化物はより酸化されることになるので、安定性が減少することはないと考えられる。
【0035】
充電により酸化されるので、遷移金属の酸化数が低い酸化物の方がより多くのFを貯蔵できると考えられる。例えば、低酸化数の酸化物として、MoO2、MnO、Mn2O3、Mn3O4、Fe3O4などが考えられる。一方、高い酸化数の酸化物もその遷移金属がとり得る最高酸化数でない場合には、Fを貯蔵できると考えられる。例えば、MnO2のMnの酸化数は4価であるが、Mnは7価までとり得るから、これを酸化することは可能であり、Fを貯蔵することも可能である。この場合、遷移金属の酸化数が高いので、放電電位がより高くなることが期待できる。高い酸化数の酸化物として、MoO3、MnO2などが挙げられる。
【0036】
(遷移金属の酸素酸塩)
Clの場合と同様に、遷移金属の酸素酸塩にFを貯蔵させるができる。酸素酸塩としては、Clの場合と同様に、リン酸塩、硫酸塩、ホウ酸塩、炭酸塩などが挙げられる。Fの貯蔵量の観点からは低い酸化数のものが好ましく、放電電位の観点からは高い酸化数のものが好ましいと考えられる。しかしながら、電位が高すぎると、電解液の分解が優先して起こるので、電位があまりに高すぎるのは好ましくない。具体的な酸素酸塩としては、Clの場合と同様の化合物が挙げられる。
【0037】
本発明の第1の局面において、遷移金属がCuであり、リチウム化合物がLiClである場合、以下の非水電解質電池となる。
すなわち、Cu及び/またはCu化合物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、LiClが、正極、非水電解質、及び負極の少なくともいずれかに含まれている非水電解質電池となる。
【0038】
また、遷移金属がCuであり、リチウム化合物がLiFである場合、以下の非水電解質電池となる。
すなわち、Cu及び/またはCu化合物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、LiFが、正極、非水電解質、及び負極の少なくともいずれかに含まれている非水電解質電池となる。
【0039】
本発明の第2の局面の非水電解質電池は、遷移金属のハロゲン化物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備えることを特徴としている。
【0040】
本発明の第2の局面における遷移金属としては、遷移金属であれば特に限定されるものではないが、例えば、Cu、Fe、Ni、Mn、Co、Ti、及びMoなどが挙げられる。これらの中でも、特にCuが好ましく用いられる。
【0041】
本発明の第2の局面における遷移金属のハロゲン化物としては、遷移金属の塩化物、フッ化物、臭化物、及びヨウ化物などが挙げられる。これらの中でも、特に塩化物及びフッ化物が好ましく用いられる。
【0042】
本発明の第2の局面における遷移金属のハロゲン化物としては、塩化銅及びフッ化銅が特に好ましく用いられる。塩化銅は、CuCl2及びCuClのいずれであってもよい。フッ化銅は、CuF2及びCuFのいずれであってもよいが、一般にはCuF2が用いられる。
【0043】
本発明の第2の局面における正極材料は、充電生成物であるので、電池を組み立てた状態において、放電させることができる。従って、本発明の第2の局面の非水電解質電池は、非水電解質二次電池のみならず、非水電解質一次電池としても用いることができる。
【0044】
本発明の第1の局面及び第2の局面の非水電解質電池においては、正極における充電生成物が溶解しない電解質溶媒を用いることが必要である。正極における充電生成物が塩化銅またはフッ化銅である場合、塩化銅またはフッ化銅を溶解しない電解質溶媒を用いることが必要である。
【0045】
実施例において後述するように、トリフルオロプロピレンカーボネート(TFPC)のようなフッ素化炭酸エステル及びH(CF2)4CH2−O−CF2CF2Hのようなフッ素化エーテル等のフッ素化された有機溶媒が、塩化銅を溶解しないこと、並びにTFPCのようなフッ素化炭酸エステル及びCF3CH2O−CO−OCH2CF3のようなフッ素化炭酸エステル等のフッ素化された有機溶媒がフッ化銅を溶解しないことを見出している。
【0046】
TFPCは、環状炭酸エステルであるプロピレンカーボネート(PC)をフッ素化したものであるが、同じ炭酸エステルであるエチレンカーボネート(EC)をフッ素化したものや、鎖状の炭酸エステルをフッ素化したもの、さらにはγ−ブチロラクトン(γBL)などのエステルやTHFなどのエーテルをフッ素化したものも塩化銅またはフッ化銅を溶解しない溶媒として使用できる可能性がある。
【0047】
本発明において、非水電解質には、フッ素を含むリチウム塩が溶質として含有されていることが好ましい。フッ素を含むリチウム塩としては、LiPF6、LiBF4、LiAsF6、LiSbF6、LiF・(C6F5)3B、及びLiCl・(C6F5)3Bなどのルイス酸塩を挙げることができる。これらのフッ素を含むリチウム塩が電解質中に含有されていると、これらが媒介となって、CuとLiClまたはLiFとの反応が進行するものと思われる。例えば、LiClとLiPF6が反応して、LiFとLiPF5Clが生成し、PF5Cl−が、Cuと反応して、CuClとPF5とを生成し、PF5は、LiFと反応してLiPF6に戻ると考えられる。LiFとLiPF6の反応も、同様にして進行し、LiFとCuを、CuF2とLiに変化させることができると考えられる。
【0048】
上記のPF5と同様に、BF3、AsF5、SbF5、及び(C6F5)3Bも、同様に、LiClまたはLiFと錯体を形成し、CuとLiClまたはLiFとの反応に関与するものと思われる。
【0049】
また、非水電解質中に、AlCl3が含有されていると、LiClと反応してLiAlCl4を形成し、上記PF5と同様に、CuとLiClまたはLiFとの反応に関与するものと思われる。
【0050】
本発明における負極材料は、リチウムを吸蔵・放出し得る材料であれば特に限定されるものではないが、本発明の非水電解質電池が二次電池である場合、負極材料としては、炭素材料や、ケイ素、ゲルマニウム及び錫などのリチウムと合金化し得る材料が好ましく用いられる。特に、本発明の第1の局面においては、正極にリチウムが含まれており、充電反応から使用を開始することができる。従って、負極にはリチウムが含まれていなくてもよい。
【0051】
本発明の非水電解質電池が一次電池である場合には、充電の必要がないので、負極材料としてリチウム金属を用いることができる。この場合、正極にCuClを用いれば、2.6V程度の放電電圧を有する一次電池とすることができる。また、正極にCuCl2を用いれば、3.4Vと2.6Vの2種類の放電電圧を有する一次電池とすることができる。
【0052】
本発明によれば、容量密度が高い非水電解質電池とすることができる。現在最も一般的なリチウム二次電池の正極材料には、LiCoO2が用いられている。LiCoO2は、理論容量273.9mAh/gであるが、全てのリチウムを放出することができないので、実容量は150mAh/gであり、放電電位は3.8Vである。本発明において、Cu+2LiFを正極材料として用い、充電してCuF2を生成させる場合、その理論容量は464.67mAh/gであり、放電電位は3.5Vとなる。従って、LiCoO2を正極材料に用いた従来のリチウム二次電池よりも、高容量密度、高エネルギー密度のリチウム二次電池とすることができる。
【0053】
また、本発明の第1の局面の非水電解質電池においては、遷移金属及び/または遷移金属化合物を、リチウム化合物より過剰に存在させておくことにより、過充電の際の安全性を保つことができると考えられる。例えば、LiClまたはLiFに対して、Cu及び/またはCu化合物が過剰に存在すれば、過充電を行った場合、ClまたはFが完全に消費され、電解液の分解あるいは銅の溶解のみが生じると考えられる。
【0054】
【発明の実施の形態】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではなく、本発明を逸脱しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
【0055】
<実施例1(塩化銅の各種溶媒に対する溶解性の評価)>
塩化銅(CuCl)の各種溶媒に対する溶解性を以下のようにして評価した。アルゴン雰囲気のドライボックス中で、溶媒3mlにCuClを5.0mg添加して混合し、静置した後、この中にリチウム金属片を入れ放置した。以下の各種溶媒における1週間後のリチウム金属片の状態を図17〜図26に示す。
【0056】
図17:TFPC(トリフルオロプロピレンカーボネート)
図18:H(CF2)4CH2−O−CF2CF2H
図19:DEC(ジエチルカーボネート)
図20:DMC(ジメチルカーボネート)
図21:EMC(エチルメチルカーボネート)
図22:DME(ジメトキシエタン)
図23:PC(プロピレンカーボネート)
図24:BC(ブチレンカーボネート)
図25:GBL(γ−ブチロラクトン)
図26:4Me−DO(4−メチル−ジオキソラン)
【0057】
図17及び図18に示すように、TFPC及びH(CF2)4CH2−O−CF2CF2H中においては、1週間後の状態においてもリチウム金属片の表面に変化は認められなかった。これに対し、図19〜図26に示すように、その他の溶媒中においては、リチウム金属片の表面に銅が析出し着色していることが確認された。これは、溶媒中に溶解したCuClがリチウムと反応し、リチウム金属片の表面に銅が析出したことによるものと思われる。
従って、TFPC及びH(CF2)4CH2−O−CF2CF2Hには、CuClがほとんど溶解しないことが確認された。
【0058】
<実施例2(正極:Cu+LiCl)>
Cu粉末:8mg、LiCl:12mg、黒鉛:32mg、及び結着剤:16mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。なお、結着剤としては、ポリテトラフルオロエチレンを用いた。以下の実施例においても同様の結着剤を用いた。得られたペレット状電極をAu板からなる集電体の上に貼り付け正極とした。
【0059】
得られた正極を用いて、図2に示すような構造の試験セルを作製した。図2に示すように、容器5内には、電解液が入れられており、この電解液中に正極1、負極2、及び参照極3が挿入されている。正極1と負極2の間にはセパレータ4が設けられている。負極2及び参照極3としては、リチウム金属を用いた。また、セパレータ4としては、ポリプロピレンを用いた。電解液としては、TFPCに、1モル/リットル(1M)のLiPF6と、100mg/リットルのLiClを含有させたものを用いた。
【0060】
上記試験セルについて、充放電試験を行った。充放電の条件は、充放電電流を0.5mAとし、充電時間を11時間とし、放電終止電圧を2.0Vとした。充放電は、充電及び放電の順で行った。試験結果を図1に示す。図1は、充放電特性を示しており、横軸は充放電容量であり、縦軸は電圧である。
【0061】
図1に示すように、1サイクル目の充放電において、放電容量は300mAh/gであり、充放電効率は83%である。また、放電電位については、CuCl2の放電に対応する3.4Vと、CuClの放電に対応する2.6Vの2つの放電電位が確認された。
従って、TFPC中において、CuCl2及びCuClを充電生成物とする充放電が可能であることが確認された。
【0062】
<実施例3(正極:Cu箔)>
20mm×20mm×厚み0.018mmの大きさのCu箔55mgを正極として用いて、図2に示す試験セルを作製した。負極及び参照極としては、リチウム金属を用いた。また、電解液としては、1モル/リットル(1M)のLiPF6と100mg/リットルのLiClを含むTFPCを用いた。
【0063】
上記試験セルについて、充放電電流0.1mA、充電時間3時間、放電終止電圧2.0Vの条件で、充放電試験を行った。充放電試験は、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図3に示す。
【0064】
正極としてCu箔を用いており、Cu箔の表面のみで充放電反応が起こり、充電に長時間を要するため、充電を途中で打ち切っている。従って、図3に示すように高い充放電容量は得られていない。しかしながら、充放電効率は52%であり、放電電位については、CuCl2の放電に対応する3.4Vと、CuClの放電に対応する2.6Vの2つの放電電位が確認された。従って、本実施例においても、充放電が可能であることがわかる。
【0065】
<実施例4(正極:Cu+LiCl)>
Cu粉末:8mg、LiCl:12mg、黒鉛:32mg、及び結着剤:16mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形して、ペレット状電極を作製した。この電極を、Au板からなる集電体上に貼り付けて正極とした。
【0066】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiClと1モル/リットルのAlCl3を含むTFPCを用いた。
【0067】
得られた試験セルについて、充放電試験を行った。充放電の条件は、充放電電流0.4mA、充電時間10時間、放電終止電圧2.0Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図4に示す。
【0068】
図4から明らかなように、放電容量は250mAh/gであり、充放電効率は100%であった。また、放電電位として、CuCl2の放電に対応する3.4Vと、CuClの放電に対応する2.6Vの2つの放電電位が確認された。従って、本実施例の電池においても、充放電が可能であることが確認された。
また、本実施例の結果から、AlCl3とLiClを併用することにより、充放電効率及び充電電位が高くなり、分極が小さくなることがわかる。
【0069】
<実施例5(正極:Cu2O+LiCl)>
Cu2O粉末:13mg、LiCl:7.6mg、黒鉛:28mg、及び結着剤:14mgを混合し、150kg/cm2の圧力で、プレス成形して、ペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体の上に貼り付け正極とした。
【0070】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして、試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6と100mg/リットルのLiClを含むTFPCを用いた。
【0071】
作製した試験セルについて、充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間4時間、放電終止電圧2.5Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図5に示す。
【0072】
図5に示すように、充放電効率が100%を超えた。これは、Cu2Oと、LiClが化学的に反応して、CuClが生成したためであると考えられる。Cu2OとLiClが化学的に反応することについては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPCに過剰のLiClを添加し、これにCu2Oを添加して1週間放置したところ、Cu2Oの赤色が減色したことからも確認されている。
【0073】
<実施例6(正極:CuO+LiCl)>
CuO粉末:9mg、LiCl:9.5mg、黒鉛:28mg、及び結着剤:14mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形して、ペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体上に貼り付け正極とした。
【0074】
得られた正極を用い、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6と100mg/リットルのLiClを含むTFPCを用いた。
【0075】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電終止電圧4.5V、放電終止電圧2.5Vとして、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図6に示す。
【0076】
図6から明らかなように、充放電効率は100%を超えているが、これは、CuOとLiClが化学的に反応して、CuCl2が生成したためであると考えられる。CuOとLiClが化学的に反応することについては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPCに過剰のLiClを添加し、さらにこれにCuOを添加して1週間放置したところ、CuOの黒色が減色し、緑色に変化したことからも確認されている。
【0077】
<実施例7(正極:CuS+LiCl)>
CuS粉末:10mg、LiCl:9mg、黒鉛:268mg、及び結着剤134mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体上に貼り付け正極とした。
【0078】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPCを用いた。
得られた試験セルのサイクリックボルタモグラムを測定した。電位走査条件は、電位走査速度2V/h、電位走査範囲2.0〜4.5Vとした。サイクリックボルタモグラムを図7に示す。
【0079】
また、得られた試験セルについて充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間4時間、放電終止電圧2.0Vとして、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図8に示す。
【0080】
図7から明らかなように、本実施例の電池が充放電可能であることがわかる。
また、図8から明らかなように、本実施例の電池の充放電効率は100%であり、充放電容量は42mAh/gであった。放電曲線の形状は、CuCl2及びCuClと異なっており、なだらかな形状である。このことから、CuSとCuを混合して用いることにより、3.4Vと2.6Vの2段の放電電位をなだらかにつなぐように制御することが可能であると考えられる。また、CuSなどの硫化物に代えて、3V程度において可逆性を有する、V2O5、LiMn2O4、MnO2、斜方晶MnO2などの材料を用いても、同様の制御が可能であると考えられる。
【0081】
<実施例8(正極:Cu箔)>
20mm×20mm×厚み0.018mmの大きさのCu箔55mgを正極として用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。電解液としては、1モル/リットルのLiF・(C6F5)3Bと、飽和量のLiClを含むTFPCを用いた。
【0082】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.2mA、充電時間10時間、放電終止電圧2.0Vとして、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図9に示す。
【0083】
図9から明らかなように、充放電効率が80%であり、CuCl2の放電に対応する3.4Vと、CuClの放電に対応する2.6Vの2つの放電電位が確認された。従って、本実施例の電池が充放電可能であることが確認された。
【0084】
なお、実施例3で示すようにLiPF6を用いた場合充放電効率が52%程度であったが、本実施例では、LiF・(C6F5)3BとLiClを用いることにより、充放電効率が80%に向上している。
【0085】
<実施例9(フッ化銅の各種溶媒に対する溶解性の評価)>
フッ化銅(CuF2)の各種溶媒に対する溶解性を評価した。アルゴン雰囲気中のドライボックス中で、溶媒3mlにCuF25.0mgを添加して混合し、静置した後、この中にリチウム金属片を入れ放置した。各種溶媒中での1週間後のリチウム金属片の状態を、図27〜図29に示す。
【0086】
図27:TFPC(トリフルオロプロピレンカーボネート)
図28:CF3CH2O−CO−OCH2CF3
図29:エチレンカーボネートとジエチルカーボネート(EC/DEC)の体積比1:1混合溶媒
【0087】
図27及び図28から明らかなように、TFPC及びCF3CH2O−CO−OCH2CF3を用いた場合には、リチウム金属片の表面状態に変化は認められなかった。これに対し、EC/DECの混合溶媒を用いた場合には、リチウム金属片の表面に銅が析出し着色していることが確認された。これらのことから、TFPC及びCF3CH2O−CO−OCH2CF3にはフッ化銅がほとんど溶解しないことがわかる。
【0088】
<実施例10(正極:Cu+LiF)>
Cu粉末:12mg、LiF:20mg、黒鉛:32mg、及び結着剤:16mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体上に貼り付け正極とした。
【0089】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPC及び2モル/リットルのLiPF6を含むTFPCの2種類を用いた。
【0090】
得られた各試験セルについて、充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間3時間、放電終止電圧2.0Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図10に示す。
【0091】
図10に示すように、各試験セルの放電容量は約20mAh/gであり、充放電効率は40%であった。また、放電電位については、CuF2の放電に対応する3.5Vが確認された。図10から明らかなように、LiPF6の濃度の高い方が、充放電効率が高くなることがわかる。
以上のことから、本実施例の電池が充放電可能であることがわかる。
【0092】
<実施例11(正極:Cu+LiF)>
20mm×20mm×厚み0.018mmの大きさのCu箔55mgを正極として用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。電解液としては、1モル/リットルのLiPF6及び500mg/リットルのLiFを含むTFPCを用いた。
【0093】
得られた試験セルについて、充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間3時間、放電終止電圧2.0Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図11に示す。
【0094】
図11から明らかなように、充放電効率は47%であり、放電電位はCuF2の放電に対応する3.5Vが確認された。従って、本実施例の電池は充放電が可能であることが確認された。
【0095】
<実施例12(正極:Cu2O+LiF、正極:CuO+LiF)>
Cu2O粉末:8mg、LiF:20mg、黒鉛:28mg、及び結着剤:14mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体の上に貼り付け正極とした。
【0096】
得られた正極を用い、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPCを用いた。
得られた試験セルについて、充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電終止電圧4.5V、放電終止電圧2.5Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図12に示す。
【0097】
また、Cu2O粉末:8mg及びLiF:20mgに代えて、CuO粉末:5mg及びLiF:7mgを用いる以外は、上記と同様にして試験セルを作製し、作製した試験セルについて上記と同様にして充放電試験を行った。充放電特性を図13に示す。
【0098】
図12に示すように、Cu2Oを用いた場合の充放電効率は60%であり、図13に示すように、CuOを用いた場合の充放電効率は79%であった。
以上のことから、本実施例の各電池は充放電可能であることが確認された。
【0099】
<実施例13(正極:CuS+LiF)>
CuS粉末:9mg、LiF:15mg、黒鉛:24mg、及び結着剤:12mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体上に貼り付けて正極とした。
【0100】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含むTFPCを用いた。
得られた試験セルについて、サイクリックボルタモグラムを測定した。電位走査速度は2V/hとし、電位走査範囲は2.0〜4.5Vとした。サイクリックボルタモグラムを図14に示す。
【0101】
また、得られた試験セルについて、充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間4時間、放電終止電圧2.2Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図15に示す。
【0102】
図15に示すように、充放電効率は90%であり、放電容量は30mAh/gであった。放電曲線の形状はCuF2と異なっているため、CuF2ではなく、CuSとFの複合体が生成している可能性が高い。
以上のことから、本実施例の電池は充放電可能であることが確認された。
【0103】
<実施例14(正極:Cu+LiF)>
Cu粉末:9mg、LiF:15mg、黒鉛:24mg、及び結着剤:12mgを混合し、150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAu板からなる集電体上に貼り付け正極とした。
【0104】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6と10体積%のリン酸トリメチルを含むTFPCを用いた。
【0105】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。充放電条件は、充放電電流0.1mA、充電時間3時間、放電終止電圧2.0Vとし、充電及び放電の順で行った。充放電特性を図16に示す。
【0106】
図16に示すように、放電電流は51mAh/gであり、充放電効率は95%であった。放電電位については、CuF2の放電に対応する3.5Vが確認された。
以上のことから、本実施例の電池は充放電可能であることが確認された。
【0107】
<実施例15(正極:CuS)>
CuS粉末:160mg、アセチレンブラック:20mg、及び結着剤:20mgを混合した後、この混合物50mgを150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAlからなる集電メッシュで挟み正極とした。
【0108】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含み、かつLiFを飽和させたTFPC溶液を用いた。
【0109】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。1サイクル目は、充電時間を3時間、放電終止電圧を2.5Vとして、充放電した。このときの充放電特性を図30に示す。
【0110】
図30に示すように、放電容量は3.75mAh/gであり、充放電効率は50%であった。
2サイクル目は、充電時間を5.5時間として試験を行ったが、充電状態で保存中に電圧が低下し、放電することができなかった。3サイクル目は、充電時間を7時間として試験を行ったが、充電中に電圧が低下した。2サイクル目及び3サイクル目の充放電特性を図31に示す。
【0111】
実施例13においては、CuSにLiFを添加して正極を作製している。本実施例との比較から、本実施例のようにCuSを単独で用いると、F−イオンの供給が不十分となり、良好な充放電特性が得られないことがわかる。従って、LiFを正極に含ませることが好ましいことがわかる。
【0112】
<実施例16(正極:CuF2+S)>
CuF2粉末:45.6mg、S粉末:14.4mg、アセチレンブラック:100mg、及び結着剤:40mgを混合した後、この混合物20mgを150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAlからなる集電メッシュで挟み、正極とした。
【0113】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含み、かつLiFを飽和させたTFPC溶液を用いた。
【0114】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。この試験セルは、初期において充電状態の試験セルであるので、1サイクル目は放電のみを行った。放電電流を0.1mA、放電時間を5時間として試験を行った。結果を図32に示す。
【0115】
図32から明らかなように、1サイクル目の放電において、3V付近にプラトーが観測された。
次に、2サイクル目は、充放電電流を0.1mA、充電時間を4時間、放電時間を5時間として充放電試験を行った。2サイクル目の充放電特性を図33に示す。
【0116】
図33から明らかなように、充電の際には、4V付近にプラトーが観測された。放電の際には、3.7V付近と3V付近にそれぞれプラトーが観測された。3V付近のプラトーは、未反応のCuF2が還元されたことによるものと考えられる。3.7V付近のプラトーは、充電生成物が放電することによるものと考えられる。実施例13のCuSとLiFの電極の場合においても、3.7V付近にプラトーが認められている(図15)。従って、本実施例のCuF2とSの電極の場合も、CuSとLiFの電極の場合と同じ充電生成物が生成している可能性が高いと考えられる。例えば、Cu2+・S・2F−のような充電生成物が生成しているものと思われる。
【0117】
<実施例17(正極:CuF2+LiF)>
CuF2粉末:29.7mg、LiF粉末:30.3mg、アセチレンブラック:100mg、及び結着剤:40mgを混合した後、この混合物20mgを150kg/cm2の圧力でプレス成形してペレット状の電極を作製した。この電極をAlからなる集電メッシュで挟み正極とした。
【0118】
得られた正極を用いて、実施例2と同様にして試験セルを作製した。なお、電解液としては、1モル/リットルのLiPF6を含み、かつLiFを飽和させたTFPC溶液を用いた。
【0119】
得られた試験セルについて充放電試験を行った。この試験セルは、1サイクル目の初期において充電状態であるので、1サイクル目は放電のみを行った。放電電流を0.1mA、放電終止電圧を2.5Vとして放電を行った。
【0120】
2サイクル目は、充放電電流を0.1mAとし、充電終止電圧を4.5Vとし、放電終止電圧を2.5Vとして充放電試験を行った。1サイクル目及び2サイクル目の充放電特性を図34に示す。
【0121】
図34に示すように、1サイクル目の放電においては、3V付近にプラトーが観測された。2サイクル目の充電においては、4V付近にプラトーが観測され、放電においては3.7V付近にプラトーが観測された。図34から明らかなように、本実施例の電池は充放電可能であることがわかる。
【0122】
【発明の効果】
本発明によれば、容量密度の高い非水電解質電池とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図2】本発明の実施例において作製した試験セルを示す模式図。
【図3】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図4】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図5】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図6】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図7】本発明の実施例におけるサイクリックボルタモグラムを示す図。
【図8】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図9】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図10】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図11】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図12】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図13】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図14】本発明の実施例におけるサイクリックボルタモグラムを示す図。
【図15】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図16】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図17】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図18】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図19】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図20】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図21】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図22】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図23】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図24】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図25】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図26】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図27】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図28】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図29】溶媒中において1週間放置した後のリチウム金属片の状態を示す図。
【図30】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図31】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図32】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図33】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【図34】本発明の実施例における充放電特性を示す図。
【符号の説明】
1…正極
2…負極
3…参照極
4…セパレータ
5…容器
Claims (27)
- 遷移金属及び/または遷移金属化合物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、周期律表VIB族またはVIIB族の元素のリチウム化合物が、前記正極、前記非水電解質、及び前記負極の少なくともいずれかに含まれている非水電解質電池。
- 前記リチウム化合物が、ハロゲン化リチウム、酸化リチウム、硫化リチウム、及びセレン化リチウムから選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項1に記載の非水電解質電池。
- 前記ハロゲン化リチウムが、LiClまたはLiFであることを特徴とする請求項2に記載の非水電解質電池。
- 前記遷移金属化合物が、遷移金属の酸化物、硫化物、ハロゲン化物または酸素酸塩であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
- 前記遷移金属がCuであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
- 前記遷移金属化合物がCu化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
- Cu及び/またはCu化合物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、LiClが、前記正極、前記非水電解質、及び前記負極の少なくともいずれかに含まれている非水電解質電池。
- Cu及び/またはCu化合物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備え、LiFが、前記正極、前記非水電解質、及び前記負極の少なくともいずれかに含まれている非水電解質電池。
- 前記Cu化合物が、Cu2O、CuS、Cu2S、CuCl、CuCl2、CuBr、CuBr2、及びCuIから選ばれる少なくとも1種の化合物であることを特徴とする請求項6〜8のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
- 遷移金属のハロゲン化物を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備える非水電解質電池。
- 前記遷移金属がCuであることを特徴とする請求項10に記載の非水電解質電池。
- 前記ハロゲン化物が、塩化物またはフッ化物であることを特徴とする請求項10または11に記載の非水電解質電池。
- CuCl2及び/またはCuClを含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備える非水電解質電池。
- CuF2を含む正極と、非水電解質と、リチウムを吸蔵・放出する材料を含む負極とを備える非水電解質電池。
- 前記正極にさらにSが含まれていることを特徴とする請求項13または14に記載の非水電解質電池。
- 前記非水電解質が、フッ素を含むリチウム塩を溶質として含有していることを特徴とする請求項1〜15のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
- 前記フッ素を含むリチウム塩が、LiPF6、LiBF4、LiF・(C6F5)3B、LiCl・(C6F5)3B、LiAsF6、及びLiSbF6から選ばれる少なくとも1種のリチウム塩であることを特徴とする請求項16に記載の非水電解質電池。
- 前記非水電解質が、AlCl3を含有していることを特徴とする請求項1〜17のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
- 前記非水電解質が、フッ素を含む溶媒を含有していることを特徴とする請求項1〜18のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
- 前記フッ素を含む溶媒がフッ素化炭酸エステルまたはフッ素化エーテルであることを特徴とする請求項19に記載の非水電解質電池。
- 前記フッ素化炭酸エステルが、フッ素化環状炭酸エステルまたはフッ素化鎖状炭酸エステルであることを特徴とする請求項20に記載の非水電解質電池。
- 前記フッ素化環状炭酸エステルが、トリフルオロプロピレンカーボネートであることを特徴とする請求項21に記載の非水電解質電池。
- 前記フッ素化鎖状炭酸エステルが、CF3CH2O−CO−OCH2CF3であることを特徴とする請求項21に記載の非水電解質電池。
- 前記フッ素化エーテルが、H(CF2)4CH2−O−CF2CF2Hであることを特徴とする請求項20に記載の非水電解質電池。
- 前記非水電解質が、リン酸エステルを含有することを特徴とする請求項1〜24のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
- 前記負極の材料が、炭素、ケイ素、ゲルマニウム、及び錫から選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜25のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
- 非水電解質二次電池であることを特徴とする請求項1〜26のいずれか1項に記載の非水電解質電池。
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