JP2007066726A - リチウム二次電池及びリチウム二次電池用負極の製造方法 - Google Patents

リチウム二次電池及びリチウム二次電池用負極の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 負極にケイ素を含む活物質を用いたリチウム二次電池において、高温貯蔵時のガス発生を抑制するとともに、良好な充放電サイクル特性を得る。
【解決手段】 ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーと酸化リチウムとを含む合剤層を集電体上に配置して焼成した負極と、正極と、非水電解質とを備えることを特徴としており、好ましくは、非水電解質中に二酸化炭素が溶解されていることを特徴としているリチウム二次電池。
【選択図】 図1

Description

本発明は、リチウム二次電池及びリチウム二次電池用負極の製造方法に関するものである。
近年、高出力及び高エネルギー密度の新型二次電池の1つとして、非水電解質を用い、リチウムイオンを正極と負極との間で移動させて充放電を行うようにしたリチウム二次電池が利用されている。
このようなリチウム二次電池においては、負極として、負極活物質にケイ素を含む材料を用いたものが検討されている。しかしながら、ケイ素を含む材料を活物質として用いた電極は、リチウムの吸蔵・放出の際に活物質の体積が膨張・収縮することによる活物質の微粉化や、活物質の集電体からの剥離を生じるため、電極内の集電性が低下し、充放電サイクル特性が悪くなるという問題がある。
また、リチウムの吸蔵・放出の際に活物質の体積が膨張・収縮することにより、活物質粒子表面に割れが起こり、活性な新生面が生じるため、この部分で非水電解質の分解や、リチウムイオンと非水電解質の反応が起こり、新たな被膜が形成されるため、充放電効率が低下するという問題などがある。
本出願人は、凹凸を有する導電性金属箔の集電体の表面上に、ケイ素材料とバインダーを含む合剤層を焼結して配置したリチウム二次電池用負極が、合剤層と集電体との高い密着性により電極内に高い集電性が発現し、良好な充放電サイクル特性を示すことを見出している(特許文献1)。
しかしながら、このようなリチウム二次電池を充電状態で高温に貯蔵した場合、電池内部において非水電解質の分解反応等によりガスが発生し、電池容器が膨れてしまうという問題が生じる。特に、負極活物質としてケイ素を含む活物質を用いた場合、炭素活物質を用いた場合に比べ、高温貯蔵時のガス発生量が多くなる。
これは、ケイ素を負極活物質に用いた場合、リチウムの吸蔵・放出の際に活物質の体積が膨張・収縮することにより、活物質粒子表面に割れが起こり、活性な新生面が生じることによる。これにより、負極活物質の表面積が充放電毎に増大し、非水電解質と接する面積が大きくなるため、高温貯蔵時において負極表面で非水電解質の分解量は大きくなり、ガス発生も大きくなる。一方、負極活物質に炭素材料を用いた場合、炭素負極は、リチウムの吸蔵・放出による活物質の割れが生じないため、ケイ素負極を用いた場合に比べ、二酸化炭素の発生が少ない。このため、ケイ素負極を用いた場合において、高温貯蔵時に発生するガスを抑制することが望まれている。
リチウムイオン電池における高温貯蔵時のガス発生を抑制する方法として、リチウム二次電池内に酸化リチウムを添加することが提案されている(特許文献2及び特許文献3)。
上記の公報においては、いずれも、炭素負極を用いたリチウム二次電池において、酸化リチウムをリチウム二次電池内部の正極、負極、電池缶壁面等に添加しており、これにより高温貯蔵時に発生する二酸化炭素を吸収し、電池の膨れの増加を抑制することができる旨記載されている。高温貯蔵時に電解液等の分解により発生する二酸化炭素を、酸化リチウムが効果的に吸収し、その結果、電池の膨れ増加を抑制することができる旨記載されている。
ケイ素を含む活物質を負極に用いた場合、活物質の割れ表面から発生するガスが顕著なため、負極中に酸化リチウムを添加することは効果的であると思われる。
しかしながら、ケイ素を含む活物質を負極に用いた場合、負極中に酸化リチウムを添加すると、良好な充放電サイクル特性が得られないという問題を生じる。これは、ケイ素を含む活物質を負極に用いた場合、リチウムの吸蔵・放出の際に、活物質の体積が膨張・収縮するため、負極中に酸化リチウムを添加すると、応力緩和が阻害され、極板強度が低下するためである。これにより、活物質の剥離等が生じ、集電構造が保てないため、良好な充放電サイクル特性が得られない。
炭素負極を用いた場合、負極中に酸化リチウムを添加しても、リチウムの吸蔵・放出時に炭素活物質の体積変化が、ケイ素活物質の場合に比べ小さいため、酸化リチウムが炭素活物質の体積変化の応力緩和を阻害し、極板強度を低下するという問題はほとんど生じない。従って、炭素負極中に酸化リチウムを添加した場合、ケイ素負極を用いた場合と異なり、良好なサイクル特性が得られることになる。
このため、ケイ素負極を用いた場合、負極中の酸化リチウムが効果的に二酸化炭素を吸収して、高温貯蔵時の電池膨れを抑制したとしても、充放電サイクル特性との両立が困難になる。
特開2002−260637号公報 特開平6−140077号公報 特開2003−208923号公報
本発明の目的は、負極にケイ素を含む活物質を用いたリチウム二次電池において、高温貯蔵時のガス発生を抑制することができるとともに、充放電サイクル特性を高めることができるリチウム二次電池を提供することにある。
本発明のリチウム二次電池は、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーと酸化リチウムとを含む合剤層を集電体上に配置して焼成した負極と、正極と、非水電解質とを備えることを特徴としている。
本発明に従い、酸化リチウムを含む合剤層を集電体上に配置した後、焼成することにより、充放電サイクル特性に優れ、かつ高温貯蔵後における電池の厚み増加を抑制することができる。
活物質粒子と酸化リチウムとバインダーとを含む合剤層を集電体の表面上で焼成した負極は、活物質粒子と集電体との密着性が良好であり、リチウムの吸蔵・放出時の活物質粒子の体積の膨張・収縮によっても、活物質粒子の集電体からの剥離が起こりにくく、高い集電性を得ることができる。焼成を行わない場合、負極に添加した酸化リチウムのため、リチウムの吸蔵・放出時の活物質の体積の膨張・収縮による応力緩和が不十分となり、極板強度が低下し、良好なサイクル特性が得られない。
負極合剤層中に添加された酸化リチウムは、合剤層中において均一に分散していることが好ましい。酸化リチウムは、負極合剤層中において均一に分散していることにより、リチウムの吸蔵・放出時の活物質の体積の変化の応力緩和が良好になる。また、高温貯蔵時において、負極表面で発生した二酸化炭素を負極近傍で即座に吸収することができる。
本発明において、合剤層中に添加する酸化リチウムの粒子径は、特に限定されるものではないが、リチウムの吸蔵・放出時の活物質の体積変化による応力緩和を阻害しない程度に粒子径が小さいものであることが好ましい。酸化リチウムの平均粒子径は、好ましくは100μm以下であり、さらに好ましくは50μm以下であり、0.01〜10μmの範囲内であることがさらに好ましい。
活物質粒子、酸化リチウム及びバインダーを均一に混合させる装置としては、ロールミル、アトライター、バールミル、ペブルミル、サンドミル、ケディミル、メカノフュージョン、らいかい機等が挙げられる。
酸化リチウムは、負極中に添加することが好ましく、負極以外の場所に添加しても二酸化炭素の吸収効果は小さい。これは、一度気体として発生した二酸化炭素を吸収するよりも、活物質が割れて非水電解質と接している活物質の新生の界面で二酸化炭素が発生した際に即座に吸収する方が、より効果的に二酸化炭素を吸収できるからである。
本発明において用いられる酸化リチウムは、負極合剤層中の含有量として活物質粒子に対して0.01〜5重量%の範囲内であることが好ましい。すなわち、負極活物質粒子100重量部に対し、0.01〜5重量部の範囲内であることが好ましい。
酸化リチウムの含有量が、負極活物質に対して5重量%を超えると、ケイ素を含む活物質の体積変化による応力緩和ができなくなるとともに、負極合剤層中に占める負極活物質の量が減少するため、十分な容量が得られなくなる場合がある。一方、酸化リチウムの含有量が負極活物質に対して0.01重量%未満になると、酸化リチウムの二酸化炭素の吸収量に限度があるため、二酸化炭素を吸収して高温貯蔵後の電池膨れ増加を抑制するという本発明の効果が十分に得られない場合がある。
本発明のリチウム二次電池に用いる非水電解質の溶媒は、特に限定されるものではないが、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ビニレンカーボネートなどの環状カーボネートや、ジメチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、ジエチルカーボネートなどの鎖状カーボネートが挙げられる。特に、エチレンカーボネートが好ましく用いられる。また、環状カーボネートと鎖状カーボネートの混合溶媒を好ましく用いることができる。このような混合溶媒としては、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを含んでいることが特に好ましい。また、上記環状カーボネートと、1,2−ジメトキシエタン、1,2−ジエトキシエタンなどのエーテル系溶媒や、γ−ブチロラクトン、スルホラン、酢酸メチル等の鎖状エステル等との混合溶媒も例示される。
また、非水電解質の溶質としては、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiN(C25SO2)2、LiN(CF3SO2)(C49SO2)、LiC(CF3SO2)3、LiC(C25SO2)3、LiAsF6、LiClO4、Li210Cl10、Li212Cl12など及びそれらの混合物が例示される。また、LiXFy(式中、XはP、As、Sb、B、Bi、Al、Ga、またはInであり、XがP、AsまたはSbのときyは6であり、XがBi、Al、Ga、またはInのときyは4である)と、リチウムペルフルオロアルキルスルホン酸イミドLiN(Cm2m+1SO2)(Cn2n+1SO2)(式中、m及びnはそれぞれ独立して1〜4の整数である)またはリチウムペルフルオロアルキルスルホン酸メチドLiC(Cp2p+1SO2)(Cq2q+1SO2)(Cr2r+1SO2)(式中、p、q及びrはそれぞれ独立して1〜4の整数である)との混合溶質を用いてもよい。これらの中でも、LiPF6が特に好ましく用いられる。
本発明のリチウム二次電池の電解質は、リチウムイオン導電性を発現させる溶質としてのリチウム化合物とこれを溶解・保持する溶媒が電池の充電時や放電時あるいは保存時の電圧で分解しない限り、制約なく用いることができる。
また、本発明においては、非水電解質に、二酸化炭素が溶解されていることが好ましい。負極にケイ素を含む活物質を用い、非水電解質に二酸化炭素を溶解させた場合、優れた充放電サイクル特性が得られるからである。
しかしながら、非水電解質に二酸化炭素を溶解させた場合、良好な充放電サイクル特性が得られる一方、二酸化炭素を溶解させない場合に比べ、高温貯蔵時における二酸化炭素の発生量が大きくなるという問題がある。しかしながら、本発明に従い、酸化リチウムを負極中に含有させておくことにより、発生した二酸化炭素を、負極中に含有させた酸化リチウムが有効に吸収するため、電池膨れを抑制することができる。これにより、さらに良好な充放電サイクル特性を得ることができ、高温貯蔵時の電池膨れ低減との両立が可能となる。
非水電解質に溶解させる二酸化炭素の量は、0.01重量%以上であることが好ましく、さらに好ましくは0.05重量%以上であり、さらに好ましくは0.1重量%以上である。通常は、非水電解質に二酸化炭素を飽和するまで溶解させることが好ましい。
二酸化炭素の溶解量は、例えば、二酸化炭素を溶解させた後の非水電解質の重量と、二酸化炭素を溶解させる前の非水電解質の重量を測定することにより求めることができる。
本発明において用いる負極活物質粒子としては、ケイ素及び/またはケイ素合金の粒子が挙げられる。ケイ素合金としては、ケイ素と他の1種以上の元素との固溶体、ケイ素と他の1種以上の元素との金属間化合物、ケイ素と他の1種以上の元素との共晶合金などが挙げられる。合金の作製方法としては、アーク溶解法、液体急冷法、メカニカルアロイング法、スパッタリング法、化学気相成長法、焼成法などが挙げられる。特に、液体急冷法としては、単ロール急冷法、双ロール急冷法、及びガスアトマイズ法、水アトマイズ法、ディスクアトマイズ法などの各種アトマイズ法が挙げられる。
また、本発明において用いる負極活物質粒子としては、ケイ素及び/またはケイ素合金の粒子表面を金属等で被覆したものを用いてもよい。被覆方法としては、無電解めっき法、電解めっき法、化学還元法、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法などが挙げられる。粒子表面を被覆する金属としては、集電体として用いる金属箔と同じ金属であることが好ましい。金属箔と同じ金属を被覆することにより、焼結の際の集電体との結合性が大きく向上し、さらに優れた充放電サイクル特性を得ることができる。
本発明において用いる負極活物質粒子には、リチウムと合金化する材料からなる粒子が含まれていてもよい。リチウムを合金化する材料としては、ゲルマニウム、錫、鉛、亜鉛、マグネシウム、ナトリウム、アルミニウム、ガリウム、インジウム及びこれらの合金などが挙げられる。
本発明において用いる負極活物質粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、効果的な焼結を行うためには、100μm以下であることが好ましく、さらに好ましくは50μm以下、最も好ましくは10μm以下である。活物質粒子の粒子径が小さいほど、良好なサイクル特性が得られる傾向にある。
平均粒子径の小さい活物質粒子を用いることにより、充放電反応でのリチウムの吸蔵・放出に伴う活物質粒子の体積の膨張・収縮の絶対量が小さくなるため、充放電反応時の電極内での活物質粒子間の歪みの絶対量も小さくなるので、バインダーの破壊が生じず、電極内の集電性の低下を抑制することができ、良好な充放電特性を得ることができる。
また、活物質粒子の粒度分布は、できる限り狭いことが好ましい。幅広い粒度分布であると、粒度が大きく異なる活物質粒子間において、リチウムの吸蔵・放出に伴う体積の膨張・収縮の絶対量に大きな差が存在することになるため、合剤層内で歪みが生じ、バインダーの破壊が生じる。このため、電極内の集電性が低下し、充放電サイクル特性が低下する。
本発明における負極集電体は、合剤層が配置される表面の算術平均粗さRaが、0.2μm以上であることが好ましい。このような算術平均粗さRaの表面を有する集電体を用いることにより、合剤層と集電体との接触面積を大きくすることができ、合剤層と集電体との密着性を向上させることができる。このため、電極内の集電性をさらに向上させることができる。特に、本発明においては、負極集電体の上に合剤層を配置した後、焼成して合剤層を焼結させているため、このように表面の算術平均粗さRaを有する負極集電体を用いることにより、活物質粒子と集電体との接触面積が大きくなり、焼結によって効果的に活物質粒子と集電体との密着性を大きく向上させることができる。また、集電体表面の凹凸部分にバインダーが入り込むことにより、バインダーと集電体との間にアンカー効果が発現するため、さらに高い密着性が得られる。このため、リチウムの吸蔵・放出に伴う活物質粒子の体積の膨張・収縮による合剤層の集電体からの剥離が効果的に抑制できる。集電体の両面に合剤層を配置する場合には、集電体の両面の算術平均粗さRaが0.2μm以上であることが好ましい。
算術平均粗さRaは、日本工業規格(JIS B 0601−1994)に定められている。算術平均粗さRaは、例えば、表面粗さ計により測定することができる。
上記の算術平均粗さRaと局部山頂の平均間隔Sは、100Ra≧Sの関係を有することが好ましい。局部山頂の平均間隔Sは、日本工業規格(JIS B 0601−1994)に定められており、例えば、表面粗さ計により測定することができる。
本発明において、負極集電体の厚みは特に限定されるものではないが、10〜100μmの範囲であることが好ましい。
本発明において、負極集電体表面の算術平均粗さRaの上限は、特に限定されるものではないが、集電体の厚みが10〜100μmの範囲であることが好ましいので、集電体表面の算術平均粗さRaの上限は実質的には10μm以下であることが好ましい。
本発明における負極集電体としては、導電性金属箔が好ましく用いられる。このような導電性金属箔としては、例えば、銅、ニッケル、鉄、チタン、コバルト等の金属またはこれらの組み合わせからなる合金のものを挙げることができる。特に、活物質材料中に拡散しやすい金属元素を含有するものが好ましい。このようなものとして、銅元素を含む金属箔、特に銅箔または銅合金箔が挙げられる。銅は、熱処理によって活物質であるケイ素材料中に拡散しやすいため、集電体と活物質材料との密着性が焼結により向上することが期待できる。また、このような焼結による集電体と活物質材料の密着性の向上を目的とする場合、活物質と接する集電体表面に銅元素を含む層が存在する金属箔を集電体として用いればよい。従って、銅以外の金属元素からなる金属箔を用いる場合には、その表面に銅または銅合金層を形成することが好ましい。
上述のように、本発明において用いる負極集電体は、上述のように、その表面に大きな凹凸を有することが好ましい。このため、耐熱性銅合金箔表面の算術平均粗さRaが十分に大きくない場合には、その箔表面に電解銅または電解銅合金を設けることにより、その表面に大きな凹凸を設けてもよい。電解銅層及び電解銅合金層は、電解法により形成することができる。
また、本発明においては、負極集電体の表面に大きな凹凸を形成するため、粗面化処理を施してもよい。このような粗面化処理としては、気相成長法、エッチング法、及び研磨法などが挙げられる。気相成長法としては、スパッタリング法、CVD法、蒸着法などが挙げられる。エッチング法としては、物理的エッチングや化学的エッチングによる方法が挙げられる。研磨法としては、サンドペーパーによる研磨やブラスト法による研磨などが挙げられる。
本発明において、負極合剤層の厚みXは、負極集電体の厚みY及びその表面の算術平均粗さRaと、5Y≧X、及び250Ra≧Xの関係を有することが好ましい。合剤層の厚みXが、5Yまたは250Raを超える場合、合剤層が、集電体から剥離する場合がある。
負極合剤層の厚みXは、特に限定されるものではないが、1000μm以下が好ましく、さらに好ましくは10μm〜100μmである。
本発明において用いる負極バインダーは、焼結(焼成)のための熱処理後も完全に分解せずに残存しているものが好ましい。熱処理後もバインダーが分解せずに残存していることにより、焼結による活物質粒子と集電体間及び活物質粒子間の密着性の向上に加え、バインダーによる結着力も加わり、密着性をさらに高めることができる。また、算術平均粗さRaが0.2μm以上の金属箔を集電体として用いる場合、集電体の表面の凹凸部分にバインダーが入り込むことにより、バインダーと集電体の間にアンカー効果が発現し、さらに密着性が向上する。このため、リチウムの吸蔵・放出の際の活物質の体積の膨張・収縮による集電体からの活物質層の脱離を抑制することができ、良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
本発明における負極バインダーとしては、ポリイミドが好ましく用いられる。ポリイミドとしては、熱可塑性ポリイミド、熱硬化性ポリイミドが挙げられる。ポリイミドとしては、特に熱可塑性ポリイミドが好ましく用いられる。負極バインダーとして、ガラス転移温度を有する熱可塑性ポリイミドを用いる場合、ガラス転移温度より高い温度で負極を熱処理することにより、バインダーが活物質粒子や集電体と熱融着するので、密着性が大きく向上し、電極内の集電性を大きく向上させることができる。すなわち、負極合剤層と導電性金属箔負極集電体との焼結のための熱処理の温度が、負極バインダーのガラス転移温度より高ければ、焼結による密着性向上の効果に加え、バインダーの熱融着による密着性向上の効果も得られるため、電極内の集電性を大きく向上させることができる。
なお、ポリイミドは、ポリアミド酸を熱処理することによっても得ることができる。ポリアミド酸の熱処理により得られるポリイミドは、ポリアミド酸が熱処理により脱水縮合してポリイミドとなるものである。ポリイミドのイミド化率は80%以上のものが好ましい。イミド化率とは、ポリイミド前駆体(ポリアミド酸)に対する生成したポリイミドのモル%である。イミド化率80%以上のものは、例えば、ポリアミド酸のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)溶液を100〜400℃の温度で1時間以上熱処理することにより得ることができる。例えば、350℃で熱処理する場合、熱処理時間が約1時間でイミド化率80%となり、約3時間でイミド化率は100%となる。
本発明においては、焼結のための熱処理後もバインダーは完全に分解せずに残存していることが好ましいので、バインダーとしてポリイミドを用いる場合は、ポリイミドが完全に分解しない600℃以下で焼結処理を行うことが好ましい。
本発明において、負極合剤層中のバインダーの量は、合剤層の総重量の5重量%以上であることが好ましい。また、バインダーの占める体積は、合剤層の総体積の5%以上であることが好ましい。合剤層におけるバインダー量が少な過ぎると、バインダーによる電極内の密着性が不十分となる場合がある。また、合剤層中のバインダー量が多過ぎると、電極内の抵抗が増加するため、初期の充電が困難になる場合がある。従って、合剤層中のバインダー量は総重量の50重量%以下であることが好ましく、バインダーの占める体積は、合剤層の総体積の50%以下であることが好ましい。
本発明において用いる正極活物質としては、LiCoO2、LiNiO2、LiMn24、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.52、LiNi0.7Co0.2Mn0.12などのリチウム含有遷移金属酸化物や、MnO2などのリチウムを含有していない金属酸化物が例示される。また、この他にも、リチウムを電気化学的に挿入、脱離する物質であれば、制限なく用いることができる。
本発明において用いる正極バインダーとしては、リチウム二次電池の電極のバインダーとして用いることができるものであれば、制限なく用いることができる。例えば、ポリフッ化ビニリデンなどのフッ素系樹脂や、負極バインダーとして好ましく用いられるポリイミド樹脂などを用いることができる。
本発明のリチウム二次電池用負極の製造方法は、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子及び酸化リチウムをバインダー溶液中に混合分散させたスラリーを集電体の表面上に塗布することにより、活物質粒子、バインダー及び酸化リチウムを含む合剤層を集電体上に配置する工程と、合剤層を集電体上に配置した状態で合剤層を焼成する工程とを備えることを特徴としている。
本発明の製造方法においては、合剤層を集電体上に配置した状態で合剤層を焼成し、合剤層を焼結させている。このような焼成は、例えば、真空下または窒素雰囲気下またはアルゴンなどの非酸化性雰囲気下で行なうことが好ましい。水素雰囲気などの還元性雰囲気下で行なってもよい。焼成する際の熱処理の温度は、集電体及び活物質粒子の融点以下の温度であることが好ましい。例えば、集電体として銅箔を用いる場合には、その融点である1080℃以下であることが好ましい。さらに好ましい焼成温度は、200〜500℃の範囲内であり、さらに好ましくは300〜450℃の範囲内である。焼成する方法としては、放電プラズマ焼結法やホットプレス法を用いてもよい。
また、酸化リチウムは、大気中の水分や二酸化炭素と反応して水酸化リチウムや炭酸リチウムに変化してしまうので、負極合剤層中に添加した酸化リチウムの一部も、負極製造工程において、水酸化リチウムや炭酸リチウムに変化していることが考えられる。酸化リチウムは、炭酸リチウムを減圧下に、加熱することにより得られるため、本発明に従い焼成工程を行なうことにより、負極合剤層中の水酸化リチウムや炭酸リチウムを再び酸化リチウムに変化させることができ、酸化リチウムが有するガス吸収剤としての効果をさらに高めることができる。
また、本発明の製造方法においては、集電体上に合剤層を配置した後、焼成する前に合剤層を集電体とともに圧延することが好ましい。このような圧延により、合剤層における充填密度を高めることができ、活物質粒子間の密着性及び活物質粒子と集電体との密着性を高めることができ、さらに良好な充放電サイクル特性が得ることができる。また、圧延することにより、負極合剤に添加した酸化リチウムが活物質粒子とより密着するため、高温貯蔵時に負極表面で発生した二酸化炭素を即座に吸収することができ、電池膨れをより効果的に抑制することできる。
本発明によれば、負極活物質としてケイ素を含む活物質を用いたリチウム二次電池において、高温貯蔵時のガスの発生を抑制し、高温貯蔵後の電池の膨れを抑制することができるとともに、良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施することが可能なものである。
(実施例1)
〔負極の作製〕
溶媒としてのN−メチル−2−ピロリドンに、活物質材料としての平均粒子径5.5μmのケイ素粉末(純度99.9%)、酸化リチウム(平均粒子径5μm)、及びバインダーとしてのポリイミドを、重量比が9:0.18(ケイ素粉末に対して2重量%):1となるように混合して添加し、負極合剤スラリーを作製した。
この負極合剤スラリーを、集電体である表面粗さ(算術平均粗さ)Raが0.5μmである電解銅箔(厚み35μm)の片面(粗面)に塗布し、乾燥した。得られたものを380×52mmの長方形状に切り抜き、圧延した後、アルゴン雰囲気下で400℃、1時間熱処理(焼成)し、焼結して負極を作製した。
〔正極の作製〕
出発原料として、Li2CO3及びCoCO3を用いて、Li:Coの原子比が1:1となるように秤量して乳鉢で混合し、これを直径17mmの金型でプレスし、加圧成形した後、空気中において、800℃、24時間焼成し、LiCoO2の焼成体を得た。これを乳鉢で粉砕し、平均粒径20μmに調製した。
得られたLiCoO2粉末94重量部と、導電剤として人工黒鉛粉末3重量部を、結着剤としてのポリフッ化ビニリデン3重量部を含む5重量%のN−メチルピロリドン溶液に混合し、正極合剤スラリーとした。
この正極合剤スラリーを、集電体であるアルミニウム箔の上に塗布し、乾燥した後圧延した。得られたものを402mm×50mmに切り抜き、正極とした。
〔非水電解質の作製〕
エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを体積比3:7で混合した溶媒に対し、LiPF6を1モル/リットル溶解して作製した非水電解質に、25℃において10分間二酸化炭素を吹き込み、二酸化炭素を飽和量となるまで溶解させた非水電解質を作製した。二酸化炭素の溶解量は、0.37重量%であった。
〔電池の作製〕
上記の負極、正極及び非水電解質をアルミニウムラミネートの外装体内に挿入したリチウム二次電池A1を作製した。
図1は、作製したリチウム二次電池を示す正面図である。図2は、図1のA−A線に沿う断面図である。正極及び負極はポリエチレン製多孔質体からなるセパレータを介して対向するように捲回し、電極体15として、図2に示すようにアルミニウムラミネートからなる外装体11内に挿入されている。正極にはアルミニウムからなる正極集電タブ13が取り付けられ、負極にはニッケルからなる負極集電タブ14が取り付けられ、これらは外装体11から外部に引き出されている。図1及び図2に示すように、外装体11の周辺はヒートシールにより閉口部12が形成されている。
(比較例1)
実施例1の負極の作製において、圧延後、熱処理を行わないこと以外は、実施例1と同様の構成の電池B1を作製した。
(比較例2)
実施例1の負極の作製において、酸化リチウムを添加せず、また熱処理を行わないこと以外は、実施例1と同様の構成の電池B2を作製した。
(比較例3)
実施例1の負極の作製において、酸化リチウムを添加しないこと以外は、実施例1と同様の構成の電池B3を作製した。
〔充放電サイクル特性の評価〕
上記のようにして作製したリチウム二次電池A1及びB1〜B3について、充放電サイクル試験を行った。各電池を、25℃において、電流値600mAで4.2Vまで充電した後、電流値600mAで2.75Vまで放電し、これを1サイクルの充放電とした。1サイクル目の放電容量の80%に達するまでのサイクル数を測定し、サイクル寿命とした。なお、各電池のサイクル寿命は、電池B3のサイクル寿命を100とした指数である。
〔高温貯蔵時の電池膨れ評価〕
上記のようにして作製したリチウム二次電池A1、及びB1〜B3について、充電状態において高温貯蔵時の電池厚み評価を行った。各電池を、25℃において、電流値600mAで4.2Vまで充電した後、電流値600mAで2.75Vまで放電し、これを1サイクルの充放電とした。これを2サイクル行った後、電流値600mAで4.2Vまで充電した状態で、60℃、20日の高温貯蔵を行なった。高温貯蔵前後の電池厚みを測定し、電池厚み増加量を求めた。
表1に充放電サイクル試験のサイクル寿命、高温貯蔵後の電池厚み増加量を示す。ここで、電池厚み増加量は、電池B3における高温貯蔵前後の電池厚み増加量を100とした場合の相対値を示している。
Figure 2007066726
表1から明らかなように、ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子と酸化リチウムとバインダーとを含む合剤層を導電性金属箔集電体の表面上で、焼結することにより、サイクル寿命が飛躍的に向上することがわかる。これは、集電体表面のRaが0.2μm以上に粗化されているために、活物質粒子と集電体との密着性が向上することに加え、焼結により、集電体の表面凹凸部分にバインダーが入り込むことにより、バインダーと集電体間にアンカー効果が発現したためである。
また、負極に酸化リチウムを添加した電池B1は、酸化リチウムを添加しない電池B2に比べ、充放電サイクル特性が低いことがわかる。これは、負極中に酸化リチウムを添加したため、充放電時におけるケイ素活物質の体積膨張による応力緩和ができなくなり、極板強度が低下することが原因である。極板強度の低下は、活物質等の微粉化等が起こり、集電構造が壊れるため、良好な充放電サイクル特性が得られない。
しかし、負極中に酸化リチウムを添加した負極を熱処理した電池A1は、熱処理を行なわなかった電池B1に比べ、良好な充放電サイクル特性が得られることがわかる。熱処理を行なうことで、前述のように活物質とバインダー及び集電体との密着性が向上するため、酸化リチウムを添加しても極板強度の低下は起こらず、負極に酸化リチウムを添加させない電池B3と同等の良好なサイクル特性が得られることがわかった。
また、高温貯蔵時の電池厚み増加量は、酸化リチウムを添加した場合、電池厚み増加量が低減されていることがわかる。これは、負極中に添加された酸化リチウムが、負極表面及び正極等で発生した二酸化炭素を吸収したためだと考えられる。ケイ素を負極活物質に用いた場合、充放電に伴い活物質粒子表面に割れが生じ、負極表面積が増大し、高温貯蔵時における負極からのガス発生は炭素負極に比べ大きいが、負極中に酸化リチウムを添加することで、負極から発生した二酸化炭素を即座に吸収し、電池膨れ増加を抑制しているものと思われる。
以上の結果より、負極中に酸化リチウムを添加し、焼成した負極を用いることで、良好なサイクル特性が得られるとともに、高温貯蔵時の電池厚み増加を低減できることがわかる。
(実施例2及び3)
負極作製時における負極合剤スラリー中に酸化リチウムをケイ素粉末重量に対して0.01重量%、5重量%をそれぞれ添加したこと以外は、実施例1と同様の構成の電池A2及びA3をそれぞれ作製した。
上記のようにして作製したリチウム二次電池A2及びA3について、前述の充放電サイクル試験及び高温貯蔵時の電池膨れ評価を行なった。その結果を表2に示す。なお、電池厚み増加量は、電池B3における高温貯蔵前後の電池厚み増加量を100とした場合の相対値を示している。なお、表2には、電池A1及びB3の結果も示している。
Figure 2007066726
表2の結果から、負極合剤層中に酸化リチウムを添加した電池A1〜A3は、酸化リチウムを添加しない電池B3に比較して、添加濃度による差はあるものの、高温貯蔵後の電池厚み増加量が小さいことがわかる。
また、負極合剤層に添加する酸化リチウムの添加濃度を変化させた場合、活物質重量に対して2重量%添加したときに最も厚み増加量が低くなり、ガスの発生を抑制できていることがわかる。5重量%を添加した場合は、電池厚み増加量は2重量%添加した場合とほぼ同等の結果が得られている。
(比較例4)
ここでは、酸化リチウムの添加場所を検討するため、セパレータを袋状に加工し、酸化リチウムを袋状のセパレータの中に入れたものを用意し、それを電極体の最外周に貼り付けた。酸化リチウムの添加量は、ケイ素活物質重量に対して2重量%であり、最外周に酸化リチウムを入れたセパレータの袋をセパレータとして用いた以外は、実施例1と同様の構成で電池C1を作製した。
(比較例5)
酸化リチウムの熱処理温度の影響を検討するため、酸化リチウムを400℃、1時間熱処理したものを袋状のセパレータに入れた以外は、比較例4と同様の構成で電池C2を作製した。
上記のようにして作製したリチウム二次電池C1及びC2について、前記と同様の方法で高温貯蔵時の電池膨れ評価を行い、高温貯蔵時の電池厚み増加量を測定した。その結果を表3に示す。ここで、電池厚み増加量は、電池内部に酸化リチウムを添加しない電池B3の高温貯蔵前後の電池厚み増加量を100とした場合の相対値を示す。
Figure 2007066726
表3から明らかなように、酸化リチウムを最外周に添加した電池C1及びC2は、酸化リチウムを添加しない電池B3の電池厚み増加量とほぼ同等か、それ以上の電池厚み増加が見られ、酸化リチウムを負極合剤層以外に添加すると、ガス発生を抑制する効果がないことがわかる。これより酸化リチウムは、負極において二酸化炭素が発生する近傍で即座に二酸化炭素を吸収することが好ましく、負極中に酸化リチウムを添加することにより、本発明の効果が得られることがわかる。酸化リチウムを負極中に添加することにより、発生したガスを有効に吸収することができ、電池膨れを低減することができる。
また、電池C1と電池C2の比較から、酸化リチウムを電極体の最外周に配置した場合においても、酸化リチウムを熱処理することにより、電池厚みの増加量を低減できることがわかる。酸化リチウムは、大気中の水分や二酸化炭素を吸収して、その一部が水酸化リチウムまたは炭酸リチウムに変化しやすいため、酸化リチウムを熱処理することにより、水酸化リチウムや炭酸リチウムを再び酸化リチウムに戻すことができ、本来の酸化リチウムの二酸化炭素吸収機能を発揮することができたためであると考えられる。
本発明においては、合剤層中に酸化リチウムを含有させ、合剤層を負極上に配置した状態で焼成しており、この焼成の際酸化リチウムを熱処理している。このため、酸化リチウム本来の二酸化炭素吸収機能を発揮させることができ、二酸化炭素の吸収量を大きくすることができる。従って、高温貯蔵時の電池膨れ増加をより効果的に抑制することででき、良好な充放電サイクル特性を得ることができる。
本発明に従う実施例において作製したリチウム二次電池を示す正面図。 図1に示すA−A線に沿う断面図。
符号の説明
11…外装体
12…閉口部
13…正極集電タブ
14…負極集電タブ
15…電極体

Claims (4)

  1. ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子とバインダーと酸化リチウムとを含む合剤層を集電体上に配置して焼成した負極と、正極と、非水電解質とを備えることを特徴とするリチウム二次電池。
  2. 前記合剤層中の前記酸化リチウムの含有量が、前記活物質粒子に対して0.01〜5重量%であることを特徴とする請求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 前記非水電解質中に二酸化炭素が溶解されていることを特徴とする請求項1または2に記載のリチウム二次電池。
  4. ケイ素及び/またはケイ素合金を含む活物質粒子及び酸化リチウムをバインダー溶液中に混合分散させたスラリーを集電体の表面上に塗布することにより、前記活物質粒子、バインダー及び酸化リチウムを含む合剤層を前記集電体上に配置する工程と、
    前記合剤層を前記集電体上に配置した状態で前記合剤層を焼成する工程とを備えることを特徴とするリチウム二次電池用負極の製造方法。
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