JP2004041988A - 遮水構造物および漏水検知方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】遮水部は、絶縁性を有する遮水層と、前記遮水層よりも内側に設けられた上部電極と、前記遮水層よりも外側に設けられた下部電極とを備え、下部電極は、遮水層に接して設けられた第1導電層と、前記第1導電層よりも外側に位置する第2導電層とを有し、第1導電層と第2導電層との間には、絶縁性を有し、第2導電層を被覆する被覆層が設けられているとともに、第1導電層と第2導電層とを電気的に接続する導通部が設けられている漏水検知方法とする。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、遮水構造物および漏水検知方法に関し、より詳細には、廃棄物処分場などに設けられ、容易に遮水層の漏水を検知することができる信頼性に優れた遮水構造物および前記遮水構造物の漏水を検知する漏水検知方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
廃棄物処分場のような施設では、地下水や河川を汚染する恐れのある排水基準に満たない浸出水が発生する可能性がある。このような処分場は、通常、地盤の凹所に沿って敷設された遮水シートなどからなる遮水層を設け、砂層または覆土を設置した後に使用される。また、このような処分場では、遮水シートの敷設時や、砂層または覆土の設置時、処分場として使用する操業時に、汚染された水が周辺環境に流れ出さないことを確認するために、遮水シートの破損の有無を検知する漏水検査が行われている。
【0003】
従来、このような漏水検査を行うための漏水検知方法としては、例えば、遮水シートが敷設された地盤に電源から電流を供給して下部電極とするとともに、遮水シートの上部に上部電極を設置し、下部電極と上部電極との間の電流や、電位または電気抵抗を測定することにより遮水シートの漏水を検知する方法などが用いられている。
【0004】
また、近年、自然環境や生活圏への影響に対する関心の高まりから、安全を確実とするものが求められ、遮水層を二重に設けることにより遮水性能を向上させた二重遮水構造を有する遮水構造物が適用されるようになってきている。二重遮水構造としては、遮水シートからなる遮水層と、遮水シートの下側(外側)に設けられた難透水性の土質遮水層からなる遮水層とによって二重に遮水する構造などが挙げられる。土質遮水層としては、ベントナイトを含むものを用いることが多い。ベントナイトを含む土質遮水層は、膨潤性に富み、遮水効果に優れているという利点を有しているが、降雨などによって水が供給されると、泥土化して施工性や品質が著しく低下してしまうという欠点がある。このため、土質遮水層を形成した後に、土質遮水層の表面を被覆し、降雨などから土質遮水層を保護するビニルシートなどが設置されることが多い。
【0005】
また、従来から、遮水構造物を設けるための地盤の凹所には、凹所の表面が露出した状態となっている間、凹所の表面を被覆して降雨などから表面を保護するビニルシートなどが設置される場合がある。
【0006】
しかしながら、このようなビニルシートが遮水シートからなる遮水層と地盤との間に設置される場合には、遮水シートの漏水を検知するために上述した漏水検知方法を用いても、ビニルシートが絶縁層となり、下部電極と上部電極との間が絶縁されてしまうので、遮水シートの漏水が検知できないという問題があった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の課題に鑑みなされたものであり、遮水シートなどからなる遮水層と地盤との間に、絶縁性を有する層が設けられている場合にも、容易に遮水層の漏水を検知することができる信頼性に優れた遮水構造物を提供することを目的としている。
また、上記の遮水構造物の漏水を検知する漏水検知方法であり、容易に漏水を検知することができる漏水検知方法を提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の遮水構造物は、地盤の凹所に沿って敷設された遮水部を備える遮水構造物であって、
前記遮水部は、絶縁性を有する遮水層と、前記遮水層よりも内側に設けられ、前記遮水層の漏水検知に使用される上部電極と、前記遮水層よりも外側に設けられ、前記遮水層の漏水検知に使用される下部電極とを備え、
前記下部電極は、前記遮水層に接して設けられた第1導電層と、前記第1導電層よりも外側に位置する第2導電層とを有し、
前記第1導電層と前記第2導電層との間には、絶縁性を有し、前記第2導電層を被覆する被覆層が設けられているとともに、前記第1導電層と前記第2導電層とを電気的に接続する導通部が設けられていることを特徴とする。
【0009】
本発明の遮水構造物においては、下部電極が、遮水層に接して設けられた第1導電層と、前記第1導電層よりも外側に位置する第2導電層とを有し、第1導電層と第2導電層とを電気的に接続する導通部が設けられているので、電源から第2導電層に電流を供給し、導通部を介して第1導電層に電流を流すことができる。したがって、絶縁性を有する被覆層によって被覆された高品質な第2導電層を備え、なおかつ、下部電極と上部電極との間の電流や、電位または電気抵抗を測定する方法により、容易に遮水層の漏水を検知することが可能な遮水構造物を実現することができる。
【0010】
また、上記の遮水構造物においては、前記導通部が、複数設けられているものとすることができる。
このような遮水構造物とすることで、複数設けられた導通部のうちの1つの導通部と他の導通部との間の領域においては、第1導電層と第2導電層とからなる2つの導通経路が形成されることになり、第1導電層と第2導電層との間で互いに導電性を補うことが可能となる。
したがって、遮水層に漏水している部分がある場合に電流が第1導電層内を流れなければならない距離は、遮水層の破損箇所から、複数の導通部のうちで遮水層の破損箇所に最も近い導通部までの距離のみとなる。よって、下部電極に電流が供給される部分から遮水層の破損箇所までの距離が遠くても、下部電極が第1導電層のみからなる場合と比較して、第1導電層内を電流が流れる距離が短くなるようにすることができる。
【0011】
また、例えば、第1導電層を湿潤状態とした不織布からなるものとした場合、第1導電層の導電性が十分に得られない場合があるため、第1導電層をアルミシートが貼り付けられた不織布からなるものとすることが提案されている。しかしながら、アルミシートが貼り付けられた不織布は非常に高価であり、実用的ではなかった。
これに対し、上記の遮水構造物では、複数の導通部を設けることによって、第2導電層が第1導電層の導電性を補うことができるので、第1導電層の導電性が不十分である場合であっても、下部電極の導電性を十分に確保することができる。よって、遮水層の漏水検査の信頼性を向上させることができ、信頼性に優れた遮水構造物を提供することができる。
【0012】
また、上記の遮水構造物においては、前記遮水層は、遮水シートであり、前記第1導電層は、前記不織布であるものとすることができる。
このような遮水構造物においては、不織布を敷設して湿潤状態とするだけで第1導電層を形成することができ、遮水シートを敷設するだけで遮水層を形成することができ、施工が容易で手間かからない。さらに、材料自体も安価であるので、安価な遮水構造物を容易に提供することができる。
【0013】
さらに、上記の遮水構造物においては、前記被覆層は、前記第2導電層の表面を保護する樹脂シートであり、前記第2導電層は、土質遮水層であるものとすることができる。
本明細書において、「土質遮水層」とは、透水係数が10―6以下である土質層のことをいう。
【0014】
このような遮水構造物は、第2導電層が土質遮水層であるので、遮水層と土質遮水層とによって二重に遮水する二重遮水構造を有するものとなり、遮水性能を向上させることができ、信頼性の高い遮水構造物が得られる。また、土質遮水層からなる第2導電層は、上部からの衝撃などを吸収して遮水層を保護する保護層として機能させることができる。さらに、土質遮水層は、湿潤状態とした不織布と比較して、導電性が高いものであるため、第2導電層を土質遮水層からなるものとすることで、導電性に優れた下部電極が得られ、遮水層の漏水検知における信頼性を向上させることができる。このような遮水構造物は、特に、二重遮水構造の適用が義務づけられている管理型処分場などに好ましく適用されるものとなる。
【0015】
また、被覆層が、第2導電層の表面を保護する樹脂シートであるので、降雨などによって第2導電層の施工性や品質が低下するのを防ぐことができ、高品質な遮水構造物が得られる。また、被覆層が樹脂シートであるので、樹脂シートを敷設することにより容易に被覆層を形成することができる。さらに、樹脂シートは、一般に、一定の幅を有する長尺のものであるので、大規模な遮水構造物を形成する場合には、樹脂シートを敷設する際に、樹脂シートの幅によって決定される一定の間隔をあけて、樹脂シートと樹脂シートとの継ぎ目が形成される。例えば、複数の導通部を有する大規模な遮水構造物を形成する場合などに、上記のように一定の間隔で形成される樹脂シートと樹脂シートとの継ぎ目を利用すれば、複数の導通部を容易に等間隔で形成することができる。
【0016】
また、上記の遮水構造物においては、前記導通部は、シート状の導電材料からなり、前記シート状の導電材料が前記第1導電層と前記被覆層とに接触するように設けられた上層側部分と、前記シート状の導電材料が前記被覆層と前記第2導電層とに接触するように設けられた下層側部分とを有するものとすることができる。
このような遮水構造物とすることで、導通部が第1導電層の層厚や第2導電層の層厚に影響を及ぼすことを防止でき、例えば、導通部を設けない場合と比較して、第1導電層や第2導電層の層厚を大きく変更させたり、第1導電層や第2導電層の材質を変更させたりする必要はない。また、このような遮水構造物によれば、第1導電層と第2導電層とを確実に導通させることができる。
【0017】
また、上記の遮水構造物においては、前記導通部は、上層側部分と下層側部分との間に、前記シート状の導電材料の両面が前記被覆層に接触するように設けられた中間部分を有するものとすることができる。
このような遮水構造物によれば、導通部を設けることにより、被覆層に被覆されない領域が第2導電層に生じることはない。
また、このような上層側部分と下層側部分と中間部分とを有する導通部は、例えば、導通部だけでなく被覆層もシート状の材料を敷設して形成されたものである場合には、被覆層を構成するシート状の材料とシート状の材料との継ぎ目でシート状の材料を互いに重ね合わせ、被覆層を構成するシート状の材料が重ね合わされた部分に、導通部を構成するシート状の導電材料を挟み込むように挿入することにより容易に形成することができる。
【0018】
また、上記の遮水構造物においては、前記被覆層が、遮水性を有するものとすることができる。
このような遮水構造物とすることで、より一層遮水性を向上させることができ、より一層信頼性の高い遮水構造物が得られる。
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明の漏水検知方法は、上記のいずれかに記載の遮水構造物の漏水を検知する漏水検知方法であり、
前記上部電極に電流を流すとともに、前記第2導電層および前記導通部を介して前記第1導電層に電流を流すことにより前記下部電極に電流を流し、
前記上部電極と前記下部電極との間に流れる電流を測定することにより前記遮水層の漏水を検知することを特徴とする。
【0020】
本発明の漏水検知方法によれば、遮水層と第2導電層との間に、絶縁性を有し、第2導電層を被覆する被覆層が設けられていても、電源から第2導電層に電流を供給すれば導通部を介して第1導電層に電流が供給されるので、上部電極と前記下部電極との間に流れる電流を測定することによって容易に遮水層の漏水を検知することができる。
【0021】
また、上記の漏水検知方法においては、前記遮水部の外部の地盤から前記第2導電層に電流を流すことが望ましい。
このような漏水検知方法とすることで、遮水層と地盤との間に、絶縁性を有し、第2導電層を被覆する被覆層が設けられていても、電源から地盤に電流を供給すれば下部電極に電流が供給されるので、より一層容易に遮水層の漏水を検知することができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の遮水構造物および漏水検知方法を図面を参照して詳細に説明する。図1は、本発明の遮水構造物を適用した廃棄物処分場の一例を示した概略断面図である。なお、図1においては、図面を見やすくするために、導通部は複数個のうちの2個のみを代表して示している。また、図2は、図1に示した遮水構造物の一部を拡大して示した平面図である。なお、図2においては、導通部の平面的な配置を説明するために、被覆層を構成する樹脂シートと導通部を構成する導電材料のみを示している。また、図3は、図1に示した遮水構造物の一部を拡大して示した断面図である。
【0023】
図1に示す廃棄物処分場は、地盤1の凹所と、凹所内の全域に凹所に沿って設けられた遮水部2とから構成されている。この廃棄物処分場では、廃棄物は遮水部2内に投棄される。また、雨水等により発生する汚水は、遮水部2により遮水部2の外部へ浸出しないようにされている。
【0024】
地盤1の凹所は、地表から下に向かって掘削することにより人工的に形成することもできるし、山間部等の沢や谷間を用いる場合には、その地形を用いることもできる。
遮水部2は、図1に示すように、土質遮水層6(特許請求の範囲における「第2導電層」に相当する)と、被覆層3と、下部不織布12(特許請求の範囲における「第1導電層」に相当する)と、遮水層5と、上部不織布13(特許請求の範囲における「上部電極」に相当する)と、砂層または覆工4とが地盤1側から順に設けられたものである。
【0025】
砂層または覆土4は、廃棄物に隣接するものであり、廃棄物が投棄される際の衝撃などから、遮水層5を保護するために設置される。また、砂層または覆土4は、遮水層5を保護するために必要な高さとなるまで、砂または土を設置することによって形成される。
【0026】
遮水層5としては、必要な遮水性、耐久性、絶縁性が得られるものであればいかなる厚さや材質であっても良いが、合成ゴムまたはプラスチック製の遮水シートによって形成することが望ましい。具体的には、メタロセン系触媒で製造された線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、またはチーグラー・ナッタ系触媒で製造された線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)などのオレフィン系樹脂などから形成される遮水シートが好ましく使用される。また、遮水シートを用いる場合、遮水性能を向上させるために、必要に応じて複数枚重ねて使用してもよい。
【0027】
下部不織布12および上部不織布13としては、敷設することができ、湿潤状態とすることにより所定の導電性が得られるものであればいかなるものであっても使用可能である。
【0028】
土質遮水層6は、凹所を設けるための地盤1の掘削などにより発生した現地発生土に、ベントナイト(粒子の非常に細かい粘土)を混合した混合土などによって形成された難透水性を有するものである。図1に示す遮水構造物では、土質遮水層6が難透水性を有することにより、遮水層5と土質遮水層6とで二重に遮水する二重遮水構造とされている。また、土質遮水層6は、導電性を有するものであり、地盤1と導通している。さらに、土質遮水層6は、上部からの衝撃などを吸収して遮水層5を保護する保護層としても機能している。
【0029】
被覆層3としては、土質遮水層6を被覆することができ、降雨などによって土質遮水層6が泥土化して施工性や品質が低下するのを防止できる遮水性を有するものであればいかなる厚さや材質であっても使用可能である。また、被覆層3としては、土質遮水層6の表面に敷設することにより土質遮水層6を被覆できるシート状のものが好ましく、例えば、上述した遮水層5と同様の材質などによって形成される。
本実施形態においては、被覆層3は、一定の幅を有する長尺の樹脂シートによって形成されている。被覆層3には、図2に示すように、樹脂シートと樹脂シートとの継ぎ目3cが帯状に形成されている。継ぎ目3cは、被覆層3となる樹脂シートの幅によって決定される一定の間隔をあけて存在している。また、継ぎ目3cは、樹脂シートを土質遮水層6の表面形状に対応するように敷設することによって形成されたものであり、図2および図3に示すように、土質遮水層6を確実に被覆するために、隣接する樹脂シート3a、3bが互いに重ね合わせられている。
【0030】
また、遮水部2は、遮水層5の漏水検知に使用される上部電極と下部電極とを備えている。上部電極は、上部不織布13によって構成されている。また、下部電極は、下部不織布12と土質遮水層6とによって構成され、下部不織布12と土質遮水層6とは、図1および図3に示すように、複数の導通部15によって電気的に接続されている。
【0031】
導通部15は、導電性を有するものであればいかなる材質によって形成されていても良く、例えば、鉄、銅、鉛、アルミニウム、パラジウムなどの金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリパラフェニレンといった導電性ポリマー、カーボンブラック、グラファイトなどが挙げられる。
また、導通部15は、下部不織布12と土質遮水層6とを導通させることができればいかなる形状、大きさであっても良いが、シート状の導電材料14からなるものであることが好ましい。
【0032】
本実施形態においては、導通部15は、シート状の導電材料14からなり、図3に示すように、導電材料14が下部不織布12と被覆層3とに接触するように設けられた上層側部分15aと、導電材料14が被覆層3と土質遮水層6とに接触するように設けられた下層側部分15bと、上層側部分15aと下層側部分15bとの間に設けられ、導電材料14の両面が被覆層3に接触する中間部分15cとを有している。上層側部分15aと下層側部分15bと中間部分15cとは、隣接する樹脂シート3a、3bが重ね合わされた部分に、導電材料14を挟み込むように挿入することにより形成される。
また、本実施形態においては、図2に示すように、導通部15は、複数設けられ、一定の間隔で形成された樹脂シートと樹脂シートとの継ぎ目3cを利用することにより、等間隔で配置されている。
【0033】
次に、図1〜図3に示した遮水構造物の漏水を検知する漏水検知方法について説明する。
遮水構造物の漏水を検知するには、まず、電源9と電流測定手段10とを設ける。
【0034】
電源9は、図1に示すように、砂層または覆土4に埋設されて上部不織布13上に配置された上側検査用電極81と、遮水部2の外部の地盤1上に配置された下側検査用電極82とを有し、上側検査用電極81と下側検査用電極82とに電流を供給するものである。
ここで用いられる上側検査用電極81および下側検査用電極82としては、導電性ものであればいかなる材質でも良く、例えば、鉄、銅、鉛、アルミニウム、パラジウムなどの金属、ポリアニリン、ポリアセチレン、ポリピロール、ポリチオフェン、ポリアセン、ポリパラフェニレンといった導電性ポリマー、カーボンブラック、グラファイトなどが挙げられる。また、上側検査用電極81および下側検査用電極82は、平板、円柱状などいかなる形状であってもよく、保持性を向上させるために設置面側に突起などが設けられていてもよい。
電流測定手段10は、上側検査用電極81と下側検査用電極82との間に流れた電流を測定するものであり、上側検査用電極81と下側検査用電極82との間に流れた電流を測定することが可能なものであればいかなるものであっても使用できる。
【0035】
ついで、電源9から上側検査用電極81に電流を供給することにより、上部不織布13に電流を流す。また、電源9から下側検査用電極82に電流を供給することにより、遮水部2の外部の地盤1から土質遮水層6および導通部15を介して下部不織布12に電流を流す。そして、上側検査用電極81と下側検査用電極82との間に流れる電流を電流測定手段10によって測定することにより、遮水層5の漏水の有無を検知することができる。
【0036】
例えば、遮水層5の図1において符号5aで示す部分が破損している場合、下側検査用電極82から供給された電流は、矢印9aで示すように、主に下部不織布12と比較して導電性が高い土質遮水層6内を流れて、遮水層5の破損箇所に到達する。このとき、下側検査用電極82から供給された電流が、下部不織布12内を流れなければならない距離は、遮水層5の破損箇所から遮水層5の破損箇所に最も近い導通部15までの矢印9bで示す距離のみとなる。下部不織布12内を流れる距離が短いほど、下側検査用電極82から遮水層5の破損箇所までの導電性が向上し、電流が流れやすくなる。また、導通部15の数を多くすることにより、下部不織布12内を流れる距離を効果的に短くすることができる。
【0037】
このような遮水構造物および漏水検知方法によれば、遮水層5と土質遮水層6との間に、絶縁性を有し、土質遮水層6を被覆する被覆層3が設けられていても、電源9から遮水部2の外部の地盤1に電流を供給すれば、土質遮水層6および導通部15を介して下部不織布12に電流が供給される。したがって、上側検査用電極81と下側検査用電極82との間に流れる電流を測定することによって、上部不織布13と下部不織布12との間に流れる電流を測定することができ、容易に遮水層5の漏水を検知することができる。
また、下側検査用電極82から遮水層5の破損箇所までの導電性を向上させることができるので、遮水層5の漏水検知における信頼性を向上させることができる。
【0038】
なお、本発明の遮水構造物および漏水検知方法は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、下部不織布12および上部不織布13に代えて、導電性を有する材料からなる層を設けてもよい。
【0039】
また、遮水層5のみで十分な遮水性能が得られる場合には、難透水性を有する必要がないので、土質遮水層6に代えて、遮水層5を保護する保護土層を設けてもよい。さらに、地盤1の凹所内において遮水層5を充分に保護できるのであれば、土質遮水層6や、土質遮水層6に代えて設けられる保護土層を形成しなくても良い。
さらに、導通部15は、上述したように、複数設けられていることが望ましいが、少なくとも1個設けられていればよく、特に限定されない。
また、導通部15は、下部不織布12と土質遮水層6とを導通させることができるものであればよく、例えば、下部不織布12を敷設する際などに、被覆層3に被覆層3を貫通する穴を設け、下部不織布12と土質遮水層6とが直接接触するようにしたものであってもよい。
【0040】
また、遮水性能を向上させるためや、樹脂シートや導通部15の位置を固定するために、隣接する樹脂シート3a、3bの間や、隣接する樹脂シート3a、3bと導電材料14との間は、接着剤などによって接着されていてもよい。
【0041】
さらに、上側検査用電極81および下側検査用電極82は、電源9から供給される電流が遮水層5の漏水箇所を通して流れるのを検知することができるのであれば、どのような位置に設置されていても良い。
例えば、上側検査用電極81は、確実に上部不織布13に電流を供給するために、上述した例に示すように、上部不織布13上に直接接するように設置することが望ましいが、遮水部2の施工が終了した段階で砂層または覆土4上に配置してされていてもよい。この場合、砂層または覆土4を介して上部不織布13に電流が供給される。
また、下側検査用電極82は、土質遮水層6に埋設されていてもよいし、地盤1に埋設されていてもよい。
【0042】
また、本発明の漏水検知方法は、砂層または覆土4を設ける前の段階や、処分場として使用する操業時などにおいても好適に使用できる。
【0043】
【発明の効果】
上述したように、本発明の遮水構造物および漏水検知方法によれば、第2導電層および導通部を介して第1導電層に電流を流すことにより、下部電極に電流を供給することができる。よって、遮水層と第2導電層との間に、絶縁性を有し、第2導電層を被覆する被覆層が設けられていても、電源から第2導電層に電流を供給することにより導通部を介して第1導電層に電流を供給することができ、下部電極と上部電極との間に流れる電流を測定することによって容易に遮水層の漏水を検知することができる。
【0044】
また、導通部を複数設けることで、第2導電層によって第1導電層の導電性を補うことができる。したがって、下部電極に電流が供給される部分から遮水層の破損箇所までの距離が遠くても、下部電極が第1導電層のみからなる場合と比較して、第1導電層内を電流が流れる距離が短くなるようにすることができる。よって、第1導電層の導電性が不十分である場合であっても、下部電極の導電性を十分に確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の遮水構造物を適用した廃棄物処分場の一例を示した概略断面図である。
【図2】図1に示した遮水構造物の一部を拡大して示した平面図である。
【図3】図1に示した遮水構造物の一部を拡大して示した断面図である。
【符号の説明】
1…地盤
2…遮水部
3…被覆層
3a、3b…樹脂シート
3c…継ぎ目
4…砂層または覆土
5…遮水層
6…土質遮水層
12…下部不織布
13…上部不織布
14…導電材料
15…導通部
15a…上層側部分
15b…下層側部分
15c…中間部分
81…上側検査用電極
82…下側検査用電極
10…電流測定手段
9…電源
Claims (9)
- 地盤の凹所に沿って設けられた遮水部を備える遮水構造物であって、
前記遮水部は、絶縁性を有する遮水層と、前記遮水層よりも内側に設けられ、前記遮水層の漏水検知に使用される上部電極と、前記遮水層よりも外側に設けられ、前記遮水層の漏水検知に使用される下部電極とを備え、
前記下部電極は、前記遮水層に接して設けられた第1導電層と、前記第1導電層よりも外側に位置する第2導電層とを有し、
前記第1導電層と前記第2導電層との間には、絶縁性を有し、前記第2導電層を被覆する被覆層が設けられているとともに、前記第1導電層と前記第2導電層とを電気的に接続する導通部が設けられていることを特徴とする遮水構造物。 - 前記導通部が、複数設けられていることを特徴とする請求項1に記載の遮水構造物。
- 前記遮水層は、遮水シートであり、前記第1導電層は、前記不織布であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の遮水構造物。
- 前記被覆層は、前記第2導電層の表面を保護する樹脂シートであり、前記第2導電層は、土質遮水層であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の遮水構造物。
- 前記導通部は、シート状の導電材料からなり、
前記シート状の導電材料が前記第1導電層と前記被覆層とに接触するように設けられた上層側部分と、
前記シート状の導電材料が前記被覆層と前記第2導電層とに接触するように設けられた下層側部分とを有することを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の遮水構造物。 - 前記導通部は、前記上層側部分と前記下層側部分との間に、前記シート状の導電材料の両面が前記被覆層に接触するように設けられた中間部分を有することを特徴とする請求項5に記載の遮水構造物。
- 前記被覆層が、遮水性を有することを特徴とする請求項1ないし請求項6のいずれかに記載の遮水構造物。
- 請求項1ないし請求項7のいずれかに記載の遮水構造物の漏水を検知する漏水検知方法であり、
前記上部電極に電流を流すとともに、前記第2導電層および前記導通部を介して前記第1導電層に電流を流すことにより前記下部電極に電流を流し、
前記上部電極と前記下部電極との間に流れる電流を測定することにより前記遮水層の漏水を検知することを特徴とする漏水検知方法。 - 前記遮水部の外部の地盤から前記第2導電層に電流を流すことを特徴とする請求項8に記載の漏水検知方法。
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