JP2004325194A - 廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法 - Google Patents

廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法 Download PDF

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剛 小林
Yasushi Takagi
泰 高木
Muneharu Tobinaga
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Abstract

【課題】漏水箇所以外に電気的な漏洩箇所が発生せず、安価に且つ容易に施工できるようにする。また電極配置間隔を狭めなくても漏水箇所を精度よく特定でき、そのため電極設置費用の削減と工期短縮を図ることができるようにする。
【解決手段】電気絶縁性を有する遮水シート20を、凹地状に造成された地面全体に敷設することによって周辺地盤と隔絶した廃棄物埋立区域を画定し、廃棄物埋立区域と周辺地盤の間で通電することにより遮水シートからの漏水の有無や漏水位置を電気的に検知するシステムを備えた廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法である。遮水シートの外周部を打設コンクリートによる固定工22によって周辺地盤に押さえ付けて固定すると共に、遮水シートの外周端縁は固定工部分よりも外側へと延長されて周辺地盤から空気中へと立ち上がり、その立ち上がり部分20aが廃棄物埋立区域のほぼ全周にわたって形成維持されている。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、廃棄物処分場に設備されている電気的漏水検知システムの検知性能を確保するための電気的絶縁処理工法に関するものである。更に詳しく述べると本発明は、廃棄物埋立区域の外周部、遮水工横断構造物、あるいは遮水工貫通構造物などが電気的漏洩箇所とならないような対策を施した廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開平7−146202号公報
【0003】
一般的な廃棄物処分場では、図6に示すように、地面を掘り下げたり周辺に堤を築くことによって凹地状に造成し、浸出液が流出するのを防ぐために遮水シート10を敷設し、それによって周辺地盤と隔絶した廃棄物埋立区域を画定する構造になっている。敷き詰められた遮水シート10は、廃棄物埋立区域内で相互に接着あるいは溶着されて全面にわたって液密状態となっている。そして、埋め立てが進行しても、廃棄物埋立区域を画定している遮水シート10を適正に保形維持できるように(沈み込まないように)、遮水シート10の外周部は周辺地盤に固定される。具体的には、周囲にコンクリートを打設することによって遮水シートの外周端縁を周辺地盤に押さえ付ける固定工12が行われる。
【0004】
廃棄物処分場では、万一遮水シートに損傷が生じた場合、損傷箇所から浸出液が漏洩する。埋め立てられている廃棄物によっては、この漏水によって重大な地下水汚染や土壌汚染を引き起こす恐れがある。遮水工が十分な機能を果たすためには、施工完了時点で敷設された遮水シートの溶着部などからの漏水の有無を検査し、遮水工の健全性を確認することが重要である。更に供用中においても、廃棄物の搬入や埋め立てに重機を使用することから、何らかの原因で遮水シートに損傷が発生することが考えられるので、定期的に漏水の有無を監視する必要がある。もし漏水が発生している場合には、漏水位置を特定し速やかに修復する必要がある。漏水を検知する方法としては、電気的な方法が有効とされており、これまで様々なシステムが開発され使用されている。
【0005】
廃棄物処分場で用いられている遮水シート10は、厚さ1.5〜2mm程度の高密度ポリエチレンシートや加硫ゴムシートなどである。例えば高密度ポリエチレンシートは、1010Ωm以上の比抵抗を有しており、非常に高い電気絶縁性がある。このため図6に示すように、遮水シート10の内側の電流電極14aと外側の電流電極14bから通電すると、もし漏水がある場合には損傷部(漏水箇所)16を通じて電流が流れる。損傷部16が非常に小さいときは、例えば廃棄物側から地盤側への電流の向きを負とすると、地盤側に配設した多数の測定電極18の面での電位分布は、電流電極において電位が急激に立ち上がり、漏水箇所において電位の急激な落ち込みが発生する。電位の落ち込む位置は、ある基準電位電極からの相対電位を測定し、電位のコンター図を描くことで推定が可能である。
【0006】
例えば特許文献1で提案されている方法では、廃棄物処分場に敷設された電気絶縁性の遮水シートを挟んで外側と内側との間で通電する。そして、いずれか一方の側に格子状に分散配置した多数の測定電極の隣り合う電位差を順次測定して平面電界分布を取得し、他方、前記の多数の測定電極を用いて4極法配置により見掛け比抵抗分布を求め、前記平面電界分布と見掛け比抵抗分布を用いて漏洩電流の強度分布を求めてピークを抽出し、そのピークを漏水箇所と見なして個数と位置を求めている。
【0007】
この漏水位置検出方法に、更に逆解析の手法を組み合わせることで、検出性能をより一層高める方法が本発明者等によって開発されている(特願2002−304526参照)。これによって測定電極の配列間隔の10%程度以内の精度で漏水箇所を特定でき、漏水位置の特定精度を高めるために測定電極の配置密度を過度に高くする必要が無くなり、電極設置の費用の削減と工期の短縮を図ることができる。また、推定された漏水位置の誤差範囲は、従来のような経験値ではなく、統計的に求められるので修復の際に掘削する範囲を明確に指定できる。最新の電気的漏洩検知システムでは、例えば測定電極を10m程度の間隔で格子状に配列すれば、半径1m以内の精度で漏水位置を検知することが可能である。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来の廃棄物処分場の遮水工では、図6に示すように、遮水シート10の端縁は地中(打設したコンクリートによる固定工12の下部)で固定されている。従って、遮水機能は固定工12の部分までである。適正な遮水工が行われ且つ常時適正に管理されているならばともかく、固定工12の部分を覆うように廃棄物が触れたり雨水がかかった時点で、廃棄物埋立区域と周辺地盤とが電気的に導通し(固定工部分の廃棄物や水を通って内側電極と外側電極とを結ぶ電流経路が形成された状態となり)、その固定工部分から電流が漏洩する。
【0009】
更に、たとえ適正な遮水工が行われ且つ常時適正に管理されていても、廃棄物の搬入道路や浸出液集排水管など、遮水工を横断したり貫通する構造物が存在しており、そのような遮水工横断・貫通構造物は電気的漏洩箇所となりうる。
【0010】
電気式の漏水検知システムは、漏水箇所から漏洩する電流の変化(実際には漏洩する電流が作り出す電位の変化、あるいは抵抗値の変化など)から漏水の有無や漏水箇所を特定する手法であるから、もし漏水箇所以外に電気的な漏洩箇所が存在すると、漏水検知性能が低下し、甚だしい場合には漏水検知システムが正常に機能しない状況も生じうる。
【0011】
このような問題を解決するには、格子状に分散配置する測定電極の配列ピッチを極力狭める方法が考えられる。もし、漏水箇所が測定電極の極く近傍に存在すれば、たとえ廃棄物埋立区域の周辺で電気的漏洩が生じていても、漏水箇所を検知可能だからである。しかし、そのようにするには測定電極を数m(2〜3m)程度以下の間隔で設置しなければならない。廃棄物処分場は、一般に非常に広大な面積に及ぶものであるから、電極配列間隔を狭めると必要な電極数が著しく増加し、そのため電極設置費用が増大し工期も長くなり実用的ではない。
【0012】
本発明の目的は、本来の遮水シート破損による漏水箇所以外には電気的な漏洩箇所が発生しないような、安価に且つ容易に施工できる廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法を提供することである。本発明の他の目的は、電極配置間隔を狭めなくても漏水箇所を精度よく特定でき、そのため電極設置費用の削減と工期短縮を図ることができる廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は、電気絶縁性を有する遮水シートを、凹地状に造成された地面に全面にわたって敷設することによって周辺地盤と隔絶した廃棄物埋立区域を画定し、廃棄物埋立区域と周辺地盤との間で通電することにより遮水シートからの漏水の有無あるいは漏水位置を電気的に検知するシステムを備えた廃棄物処分場において、遮水シートの外周部を打設コンクリートによる固定工によって周辺地盤に押さえ付けて固定すると共に、遮水シートの外周端縁は固定工部分よりも外側へと延長されて周辺地盤から空気中へと立ち上がり、その立ち上がり状態が廃棄物埋立区域のほぼ全周にわたって維持されていることを特徴とする廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法である。遮水シート端縁の立ち上がり部分は、地面から5〜10cm程度の高さで突出していればよく、単に空気中に露出したままの状態でよい。勿論、日射による遮水シートの劣化を防ぐために覆いなどを設けてもよいが、その場合には電気的絶縁性が損なわれないように施す。
【0014】
本発明は、遮水シートが1重の場合にも適用できるし、上下(内外)2重の場合にも無論適用できる。遮水シートを2重に敷設する場合には、遮水シート同士の間に、露出した端部から雨水等が浸入しないような浸水防止構造を設ける必要がある。例えば、上層と下層の遮水シートの立ち上がり部を溶着あるいは接着で互いに接合し袋状とする。あるいは、遮水シートの立ち上がり部分を覆う構造でもよい。その場合、遮水シートとは別の断面逆U字型の部材で覆ってもよいし、上層の遮水シートを長くして下層の遮水シートの端縁を覆うように曲げて固定してもよい。
【0015】
廃棄物埋立区域と周辺地盤との間にコンクリート製等の遮水工横断構造物(搬入道路や排水溝など)が架設される場合には、遮水シートの立ち上がり部分の位置で幅方向全体にわたって電気的な縁切りを施す。搬入道路のような場合には狭い空隙でもよいが、間隙部に繊維強化樹脂製の蓋を被せたり、合成樹脂を充填する構造などが好ましい。
【0016】
また遮水シートを貫通して廃棄物埋立区域と周辺地盤との間に遮水工貫通構造物(浸出液集排水管など)が設けられている場合は、該遮水工貫通構造物を電気絶縁性のある合成樹脂製とし、遮水シートと遮水工貫通構造物との間は、絶縁材料によって液密状態とする。例えば合成樹脂製の浸出液集排水管の周囲を絶縁シートで囲み、片側はコーキングを施したり外周から機械的に締め付けて集排水管と接合し、反対側は遮水シートに溶着や接着などにより接合する。
【0017】
【実施例】
図1は、本発明に係る廃棄物処分場での電気絶縁処理工法の一実施例を示す説明図である。この実施例は、遮水シートが1重構造の場合である。廃棄物処分場は、基本的には従来同様、地面を掘り下げたり周囲に堤を築くことで凹地状に造成し、浸出液が流出するのを防ぐために遮水シート20を敷設し、それによって周辺地盤と隔絶した廃棄物埋立区域を画定する構造である。敷き詰められた遮水シート20は、廃棄物埋立区域内で相互に溶着あるいは接着されて全面にわたって完全な液密状態となっている。
【0018】
埋め立てが進行しても、廃棄物埋立区域を画定している遮水シート20が適正に保形維持できるように(沈み込まないように)、遮水シート20の外側は全周にわたって周辺地盤に強固に固定される。具体的には、周囲にコンクリートを打設することによって遮水シート20の外周端縁を周辺地盤に押さえ付ける固定工22を行う。
【0019】
ところで、現在、この種の廃棄物処分場では法令によって遮水構造を2重化することが決められており、このように遮水シート20が1重構造の場合には、底部外側に粘性土遮水層24を設けることが行われている。遮水シート20と粘性土遮水層24とで遮水構造が構成されるもので、もし遮水シート20に破損が生じ漏洩しても粘性土遮水層24が存在するために下方への浸透が防止できるようになっている。従って、漏洩の検知は遮水シート20についてのみ行われる。
【0020】
廃棄物処分場の遮水工に用いる遮水シート20は、従来同様、厚さ1.5〜2mm程度の高密度ポリエチレンシートあるいは加硫ゴムシートなどであり、非常に高い電気絶縁性がある。このことを利用した電気的な漏水検知システムでは、遮水シート20の外側(粘性土遮水層24中)に電流電極26を設け、遮水シート20の内側の保護砂層25の内部に縦横格子状に多数の測定電極28を平面的に配列する。外側の電流電極26から通電すると、もし漏水がある場合には電流は損傷部(漏水箇所)29を通じて矢印で示すように流れる。電気式の漏水検知システムによって、漏水箇所から漏洩する電流の変化(実際には漏洩する電流が作り出す電位の変化、あるいは抵抗値の変化など)から漏水の有無や漏水箇所を特定する。漏水検知方法やシステム自体は、従来公知の任意の技術を用いてよい。
【0021】
本発明では、遮水シート20の外周部をコンクリートを打設した固定工22によって周辺地盤に押さえ付けて固定すると共に、遮水シート20の外周端縁を固定工22よりも更に外側へ延長し、周辺地盤から空気中へと立ち上がり空気中に露出しているようになっている。遮水シート20の立ち上がり部分を符号20aで示す。その立ち上がり部分20aが廃棄物埋立区域のほぼ全周にわたって形成されており、立ち上がり状態が維持されている。このような電気絶縁処理工法に本発明の特徴がある。
【0022】
遮水シート20の立ち上がり部分20aは、地面から5〜10cm程度の高さがあれば十分である。前記のように、遮水シート20は、厚み1.5〜2mm程度の高密度ポリエチレンや加硫ゴムなどであり、十分に硬いために5〜10cmの立ち上がり部分20aは、そのままで地表面から確実に自立し続けることができる。このように地盤に敷設された遮水シート20が地盤から空気中に立ち上がるまで連続しているので、廃棄物埋立区域の内外は、完全に隔絶した状態となる。従って、固定工22の部分を回り込むように廃棄物埋立区域内外を迂回する電流経路は全く生じず、検出対象となる電流経路のみによる計測が可能となる。つまり、漏水箇所以外に電気的な漏洩箇所は存在しないために、漏水検知性能が低下することはなく、漏水検知システムは正常に所定の性能を発揮できることになる。
【0023】
図2は、本発明に係る廃棄物処分場における電気絶縁処理工法の他の実施例の説明図である。この実施例は、遮水シートが上層遮水シート30と下層遮水シート31との2重構造の場合である。廃棄物処分場は、基本的には従来同様、地面を掘り下げたり周囲に堤を築くことで凹地状に造成する。まず下層遮水シート31を全面にわたって敷設し、その底部内側に中間保護層34を設け、更にその上に上層遮水シート30を全面にわたって敷設する。敷き詰められた下層遮水シート31は、廃棄物埋立区域内で相互に溶着あるいは接着されて完全な液密状態となっており、同様に、敷き詰められた上層遮水シート30も、廃棄物埋立区域内で相互に溶着あるいは接着されて完全な液密状態となっている。これら上層遮水シート30と下層遮水シート31とによって周辺地盤と隔絶した廃棄物埋立区域を画定し、浸出液が流出するのを防ぐ構造である。
【0024】
このような2重構造の場合には、上層遮水シート30の内側(廃棄物埋立区域側)に電流電極26aを、下層遮水シート31の外側(周辺地盤側)に電流電極26bをそれぞれ設け、上層遮水シート30と下層遮水シート31との間(中間保護層34中)に縦横格子状に多数の測定電極28を平面的に配列する。内側の電流電極26aから通電すると、もし漏水がある場合には電流は損傷部(漏水箇所)29aを通じて矢印で示すように流れ、外側の電流電極26bから通電すると、もし漏水がある場合には電流は損傷部(漏水箇所)29bを通じて矢印で示すように流れる。電気式の漏水検知システムによって、漏水箇所から漏洩する電流の変化(実際には漏洩する電流が作り出す電位の変化、あるいは抵抗値の変化など)から、上層遮水シート30又は下層遮水シート31における漏水の有無や漏水箇所を特定する。漏水検知方法やシステム自体は、従来公知の任意の技術を用いてよい。
【0025】
上層及び下層の遮水シート30,31の外周側は全周にわたって周辺地盤に強固に固定される。具体的には、周囲にコンクリートを打設することによって上層及び下層の遮水シート30,31の外周端縁を周辺地盤に押さえ付ける固定工32を行う。本発明では、上層及び下層の遮水シート30,31の外周端縁を固定工32よりも外側へ延長し、周辺地盤から空気中へと立ち上がるようにする。上層遮水シート30の立ち上がり部分を符号30aで、また下層遮水シート31の立ち上がり部を符号31aで示す。それらの立ち上がり部分30a,31aが廃棄物埋立区域のほぼ全周にわたって維持形成されている。
【0026】
このような立ち上がり部分30a,31aが設けられていることによって、廃棄物埋立区域の内外は、完全に隔絶した状態となり、固定工32の部分を回り込む(迂回する)電流経路は全く生じず、検出対象となる電流経路のみによる計測が可能となる。つまり、漏水箇所以外に電気的な漏洩箇所は存在しないために、漏水検知性能が低下することはなく、漏水検知システムは所望の性能を発揮することになる。立ち上がり部分30a,31aの例を図2のA,Bに示す。
【0027】
2重構造の場合、上層遮水シート30と下層遮水シート31との間に雨水などが浸入すると、浸入した水によって迂回した電流経路が形成されてしまう恐れがある。そこで、図2のAに示すように、遮水シートの端部同士を溶着あるいは接着して袋とじ構造とし、端部から雨水が浸入しないようにする。上層遮水シートと下層遮水シートが同材質の場合は、このような溶着が簡便である。溶着部分を符号mで示す。あるいは図2のBに示すように、上層遮水シート30の端部30aを更に延長し、下方に曲げ返して下層遮水シート31の端部31aを覆うようにしてもよい。その他、上層遮水シートに別の部材を取り付け、それを下方に折り曲げて下層遮水シートの端部を覆うようにしてもよいし、あるいは他の部材を用いて上層遮水シートと下層遮水シートの両方の端縁を覆うようにしてもよい。これらは、上層遮水シートと下層遮水シートが異なる材質で構成され、溶着が不可能な場合に特に有効である。いずれにしても、このような手法で雨水の浸入を防止でき、不要な電流経路の生成を防ぎ、それによって漏水検出性能の低下を防止することができる。
【0028】
図3は、廃棄物処分場に廃棄物の搬入道路を設置する例である。廃棄物を埋め立てるためには、廃棄物処分場の内外に跨るように、運搬車両や重機が出入りする搬入道路40を設ける必要がある。それらの重量に耐えうるように、コンクリート等で施工するために、そのままでは遮水シートの固定工22の部分を横断した地点で廃棄物処分場の内外が電気的に接続され、電流が漏洩する状態となってしまう。そこで本発明では、遮水シート20の立ち上がり部分20aの位置で電気的な縁切りを施す。図3では、打設コンクリートによる固定工22の上方位置の搬入道路の部分を、幅方向全体にわたってコンクリート等に代えて電気絶縁性材料42で置き換える。例えば隙間に繊維強化プラスチック製の蓋を被せたり、合成樹脂等を充填する。通行する車両によっては、狭い空隙のままであってもよい。これによって、搬入道路を経由しての漏洩電流は阻止できる。
【0029】
より強固な構造を必要とする場合には、図4のように搬入道路を造成するのがよい。ここでは搬入道路50は、路床工51、砕石などによる路盤工52、アスファルト舗装による表層工53を行うことで施工する。アスファルトの電気抵抗は高いが、砕石などによる路盤の電気抵抗は低いため、そのままでは廃棄物処分場の内外が電気的に接続されてしまう。そこで、遮水シート20の固定工部分の上方は、道路全幅にわたって空隙とする。そして遮水シート20の端縁を表層工の高さ付近まで立ち上げ、空隙部分にコンクリート54を打設する。コンクリート54は、遮水シート20の端縁近傍を除いて、表層工53の表面位置に合わせて段差が無いようにする。最後に、遮水シート20の端縁の周囲に樹脂56を注入して固める。このようにすると、搬入道路50は、遮水シート20と注入した樹脂56によって完全に絶縁された状態となる。また大部分はコンクリート54で施工されているため、強度も十分大きくでき、走行する運搬車両や重機の重量にも十分に耐えることができる。
【0030】
図5は廃棄物処分場に浸出液集排水管60を設置する場合の例である。廃棄物処分場は遮水シート20によって完全な遮水状態となっているので、埋め立てた廃棄物や浸透する雨水による浸出液を集排水する機能が必要となる。そこで、浸出液集排水管60を、遮水シート20を貫通して廃棄物埋立区域と周辺地盤との間に設置する。本発明では、この浸出液集排水管60として、ヒューム管に代えて電気絶縁性の高い繊維強化プラスチック管あるいは塩化ビニル管を用いる。
【0031】
そして、浸出液集排水管60の周囲を筒状の絶縁シート62で取り囲み、一方の端部は全周にわたって遮水シートに溶着し液密状態とする。溶着箇所を符号mで示す。遮水シートが2重構造の場合には、上層遮水シートと下層遮水シートを浸出液集排水管の周囲で予め溶着し、間に水が入らないようにしておくことはいうまでもない。他方の端部は、図5のAに示すように緊締バンド64によって締め付けたり、Bに示すように絶縁物質66でコーキングする。このようにして浸出液集排水管の周囲からの漏水を防止し、不要な漏洩電流経路が生じないようにすることができる。
【0032】
これらの場合、浸出液集排水管の内部に水が滞留していると、それが漏洩電流経路を形成する要素となる。そこで、周辺部での排水設備として、浸出液集排水管60よりも低い位置に排水溝68を設け、排水が滴り落ちるようにする。すると、水が連続しないために、漏洩電流経路が形成されることはない。
【0033】
【発明の効果】
本発明は上記のように、遮水シートの外周部を固定工によって周辺地盤に押さえ付けて固定すると共に、遮水シートの外周端縁が固定工よりも更に外側へ延長されて周辺地盤から空気中へと立ち上がり、その立ち上がり状態が廃棄物埋立区域のほぼ全周にわたって維持されるようにした電気絶縁処理工法であるから、安価に且つ容易に施工できるし、漏水箇所以外に電気的な漏洩箇所が発生しない。そのため、電極配置間隔を狭めなくても漏水箇所を精度よく特定でき、電極設置費用の削減と工期短縮を図ることができる。
【0034】
本発明では、周辺地盤と廃棄物埋立区域との間に架設されるコンクリート製等の遮水工横断構造物が、遮水シートの立ち上がり部の位置で電気的な縁切りが施されており、また遮水シートを貫通して周辺地盤と廃棄物埋立区域との間に設けられている遮水工貫通構造物は合成樹脂からなり、遮水シートと遮水工貫通構造物との間は、絶縁材料によって液密状態となっているため、それらによる不要な漏洩電流経路が形成されることが無く、漏水箇所の検出性能を大幅に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電気絶縁処理工法の一実施例を示す説明図。
【図2】本発明に係る電気絶縁処理工法の他の実施例を示す説明図。
【図3】廃棄物処分場に廃棄物の搬入道路を取り付ける場合の説明図。
【図4】搬入道路でのシート部端部処理工の例を示す説明図。
【図5】廃棄物処分場に集排水管を設置する場合の説明図。
【図6】従来技術の説明図。
【符号の説明】
20 遮水シート
20a 立ち上がり部分
22 固定工

Claims (4)

  1. 電気絶縁性を有する遮水シートを、凹地状に造成された地面に全面にわたって敷設することによって周辺地盤と隔絶した廃棄物埋立区域を画定し、廃棄物埋立区域と周辺地盤との間で通電することにより遮水シートからの漏水の有無あるいは漏水位置を電気的に検知するシステムを備えた廃棄物処分場において、
    遮水シートの外周部を打設コンクリートによる固定工によって周辺地盤に押さえ付けて固定すると共に、遮水シートの外周端縁は固定工部分よりも外側へと延長されて周辺地盤から空気中へと立ち上がり、その立ち上がり状態が廃棄物埋立区域のほぼ全周にわたって維持されていることを特徴とする廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法。
  2. 遮水シートが上下2重に敷設されており、上層と下層の遮水シートの立ち上がり部分が浸水防止構造になっている請求項1記載の廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法。
  3. 廃棄物埋立区域と周辺地盤の間に架設されるコンクリート製等の遮水工横断構造物が、遮水シートの立ち上がり部の位置で電気的な縁切りが施されている請求項1又は2記載の廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法。
  4. 遮水シートを貫通して廃棄物埋立区域と周辺地盤の間に設けられている遮水工貫通構造物は合成樹脂からなり、遮水シートと遮水工貫通構造物との間は、絶縁材によって液密状態となっている請求項1乃至3のいずれかに記載の廃棄物処分場における電気的絶縁処理工法。
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