JP2004010877A - 結晶性エポキシ樹脂、及びその製法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】グリオキザールとフェノールを縮合反応させて得られる4官能化合物において、フェノールの反応位置がパラ位である割合が95%以上であるものを原料とし、アルカリ金属の存在下、エピクロルヒドリンと反応させ、加熱減圧下で未反応のエピクロルヒドリンを除去した後、有機溶剤を加え結晶を析出させることにより得られる結晶性エポキシ樹脂。
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は極めて耐熱性が高い硬化物を与える、溶融粘度の低い結晶性エポキシ樹脂及び該エポキシ樹脂の製法、及びエポキシ樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
エポキシ樹脂は種々の硬化剤で硬化させることにより、一般的に機械的性質、耐水性、耐薬品性、耐熱性、電気的性質などに優れた硬化物となり、接着剤、塗料、積層板、成形材料、注型材料などの幅広い分野に利用されている。従来工業的に最も使用されているエポキシ樹脂としてはビスフェノールAにエピクロルヒドリンを反応させて得られる化合物が知られている。
半導体封止材などの用途においては耐熱性が要求されるためクレゾールノボラック型エポキシ樹脂が広く利用されている。また、表面実装方式が一般的になり、半導体パッケージも半田リフロー時に直接高温に晒されることが多くなるため封止材全体としての吸水率や線膨張率を下げる為に、高フィラー充填が効果的な方法として提案されている。高フィラー充填を可能にするためにはエポキシ樹脂の溶融粘度が低いことが必要条件となる。この様な要求を満たすために最近ではテトラメチルビフェノールのエポキシ化物などが広く用いられている。この樹脂は結晶性であるため溶融状態において極めて低い溶融粘度を示す。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記したようなテトラメチルビフェノールのエポキシ化物の溶融粘度は低く高フィラー充填は可能なものの、樹脂そのものの耐熱性は極めて低い。最近では例えば自動車のエンジン周囲に半導体など電気・電子部品を搭載されることが増えてきている。この様な用途においては180℃前後の高温下に長時間晒される為、使用される樹脂には極めて高い耐熱性が要求される。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこうした実状に鑑み、耐熱性が極めて高い結晶性エポキシ樹脂を求めて鋭意検討した結果、特定の製法によって製造される、特定の分子構造を有するエポキシ樹脂がこれらの特性を満たすものであることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0005】
すなわち本発明は
(1)下記式(a)
【0006】
【化5】
で表される化合物からなるエポキシ樹脂であって、下記式(1)
【化6】
で表される化合物を70モル%以上含有する結晶性エポキシ樹脂、
(2)下記式(3)
【0007】
【化7】
で表される化合物からなるフェノール化合物であって、下記式(2)
【化8】
で表される化合物を95モル%以上含むフェノール化合物をエピクロルヒドリン及びアルコールに溶解し、アルカリ金属化合物を添加してエポキシ化を行った後水洗し、油層から過剰のエピハロヒドリン、アルコールなどを加熱減圧下で除去し、更に有機溶剤を加え冷却し、析出した結晶を濾過することにより得られる上記(1)記載の結晶性エポキシ樹脂の製造方法、
(3)上記(1)または(2)記載のエポキシ樹脂、硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物、
(4)硬化促進剤を含有する上記(3)記載のエポキシ樹脂組成物、
(5)無機充填剤を含有する上記(3)または(4)記載のエポキシ樹脂組成物、
(6)上記(3)、(4)または(5)のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物、
を提供するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明のエポキシ樹脂の原料として使用される化合物としては下記式(3)
【0009】
【化9】
で表される化合物で表される化合物からなるフェノール化合物であって、前記式(2)で表される化合物の割合が95モル%以上含むものが好ましく、97モル%以上含むものがより好ましい。以下、このようなフェノール化合物を単に式(3)の化合物という。式(3)の化合物を得る方法は公知の方法が採用できる。例えば、フェノールを酸触媒の存在下でグリオキザールと縮合反応させる。フェノールの使用量はグリオキザール1モルに対して通常4〜50モル、好ましくは5〜30モルである。またグリオキザールは通常その水溶液が用いられる。
【0010】
縮合に際して用いられる酸触媒の具体例としては、通常、p−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸、シュウ酸等の無機、或いは有機酸、または三弗化ホウ素、無水塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸が挙げられ、特にp−トルエンスルホン酸、塩酸、硫酸が好ましい。これら酸触媒の量は特に限定されるものではないが、フェノールに対して通常0.01〜20重量%の範囲で選ばれる。
【0011】
上記化合物の製造方法においては縮合反応後に式(3)の化合物の精製を目的として、有機溶剤を使用する。用いられる有機溶剤は、反応混合液中に含まれる低分子化合物及び、高次縮合物を溶解し、更に、式(3)で表される化合物に対して貧溶媒的に作用する性質を有するものであり、この様なものとしては例えば、メチルエチルケトン、アセトン、テトラヒドロフランなどが上げられるが、これらの中で式(3)で表される化合物を収率良く分離するができ、かつ濾過操作に支障のないスラリー粘度を与える点から、アセトン、テトラヒドロフラン及びこれらの混合物が好ましく、更に安全性及びコストの面からアセトンが好適である。
【0012】
前記溶剤は1種用いても良いし、2種以上を組み合わせて用いても良く、またその使用量は溶剤の分離能及び要求純度により左右され、一概に定めることはできないが、一般的には後述する粗砕反応混合物に対して50〜300重量%の範囲で選ばれる。
【0013】
式(3)で表される化合物の製造方法においては、まずフェノールとグリオキザールとを酸性触媒の存在下に加熱して縮合させた後、冷却し、好ましくは更に中和処理を施して式(3)で表される化合物を含む液状反応混合物を得る。縮合反応の温度は、通常40〜140℃、好ましくは80〜120℃の範囲で選ばれる。反応時間は1〜24時間の範囲で選ばれる。
【0014】
また、反応液の中和処理には通常水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、水酸化カルシウムなどのアルカリ性物質が固形状または水溶液の状態で、使用した酸性触媒と当量(化学当量)用いられる。この際、精製した中和塩は必要に応じ適当な手段を施して除去することができる。
【0015】
次に、縮合反応により得られた前記液状反応混合物を常圧或いは減圧により濃縮して未反応フェノールや水などの揮発性成分を除去した後、冷却して固体樹脂状反応混合物を得る。
【0016】
次いで、この様にして得られた固体樹脂状反応混合物を粗砕し粗砕反応混合物を得る。これに前記有機溶剤を加え、常温もしくは加温下にかき混ぜ混合して内容物をスラリー状態にした後、濾過や遠心分離などの手段により固液分離して式(3)で表される化合物を得、必要ならば、更に同様な操作を繰り返してより高純度の化合物を得ることができる。
【0017】
こうして得られた式(3)の化合物とエピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、エピヨードヒドリン等のエピハロヒドリンとを水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物の存在下反応させ本発明のエポキシ樹脂を得ることができる。
本発明のエポキシ樹脂を得る反応において、アルカリ金属水酸化物はその水溶液を使用してもよく、その場合は該アルカリ金属水酸化物の水溶液を連続的に反応系内に添加すると共に減圧下、または常圧下連続的に水及びエピハロヒドリンを流出させ、更に分液し水は除去しエピハロヒドリンは反応系内に連続的に戻す方法でもよい。
【0018】
使用されるエピハロヒドリンの量は式(3)で表される化合物を95%以上含む化合物の水酸基1当量に対し通常0.8〜12モル、好ましくは0.9〜11モルである。この際、化合物の溶解性を高め反応を円滑に進行させるためにメタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類を添加する。
【0019】
アルコール類を使用する場合、その使用量はエピハロヒドリンの量に対し通常2〜50重量%、好ましくは4〜40重量%である。
【0020】
エポキシ化反応終了後、反応物を水洗し、加熱減圧下でエピハロヒドリンや溶媒等を除去する。次いで、溶融状態の反応物中に有機溶剤を加え、常温に戻して、本発明の結晶性エポキシ樹脂を析出させる。用い得る有機溶剤としては、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン、アセトン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。これらの有機溶剤の使用量としては通常反応物の重量に対して100〜400重量%であり、好ましくは150〜300重量%である。
【0021】
十分結晶が析出した後、常圧或いは減圧濾過器を用いて結晶を濾過する。より純度の高い結晶とするために、上記の有機溶剤、或いはメタノール、エタノールなどのアルコール類で更に洗浄を行うことは好ましい。
こうして得られた本発明のエポキシ樹脂は前記式(a)で表される化合物からなり、前記式(1)で表される化合物を70モル%以上含有する。
【0022】
以下、本発明のエポキシ樹脂組成物について説明する。本発明のエポキシ樹脂は単独でまたは他のエポキシ樹脂と併用して使用することが出来る。併用する場合、本発明のエポキシ樹脂の全エポキシ樹脂中に占める割合は30重量%以上が好ましく、特に40重量%以上が好ましい。
【0023】
本発明のエポキシ樹脂と併用し得る他のエポキシ樹脂の具体例としては、ノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂などが挙げられるがこれらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0024】
本発明のエポキシ樹脂組成物が含有する硬化剤としては、例えばアミン系化合物、酸無水物系化合物、アミド系化合物、フェノ−ル系化合物などが挙げられる。用い得る硬化剤の具体例としては、ジアミノジフェニルメタン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ジシアンジアミド、リノレン酸の2量体とエチレンジアミンとより合成されるポリアミド樹脂、無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸、無水マレイン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロ無水フタル酸、無水メチルナジック酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、メチルヘキサヒドロ無水フタル酸、フェノ−ルノボラック、及びこれらの変性物、イミダゾ−ル、BF3−アミン錯体、グアニジン誘導体などが挙げられるがこれらに限定されるものではない。これらは単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。
【0025】
本発明のエポキシ樹脂組成物において硬化剤の使用量は、エポキシ樹脂のエポキシ基1当量に対して0.7〜1.2当量が好ましい。エポキシ基1当量に対して、0.7当量に満たない場合、あるいは1.2当量を超える場合、いずれも硬化が不完全となり良好な硬化物性が得られない恐れがある。
【0026】
また本発明のエポキシ樹脂組成物においては硬化促進剤を使用しても差し支えない。用い得る硬化促進剤の具体例としては2−メチルイミダゾール、2−エチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾ−ル類、2−(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7等の第3級アミン類、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、オクチル酸スズ等の金属化合物等が挙げられる。硬化促進剤はエポキシ樹脂100重量部に対して0.1〜5.0重量部が必要に応じ用いられる。
【0027】
本発明のエポキシ樹脂組成物は必要により無機充填材を含有しうる。用いうる無機充填材の具体例としてはシリカ、アルミナ、タルク等が挙げられる。無機充填材は本発明のエポキシ樹脂組成物中において0〜90重量%を占める量が用いられる。更に本発明のエポキシ樹脂組成物には、シランカップリング剤、ステアリン酸、パルミチン酸、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム等の離型剤、顔料等の種々の配合剤を添加することができる。
【0028】
本発明のエポキシ樹脂組成物は、各成分を均一に混合することにより得られる。本発明のエポキシ樹脂組成物は従来知られている方法と同様の方法で容易にその硬化物とすることができる。例えばエポキシ樹脂と本発明の硬化剤並びに必要により硬化促進剤、無機充填材及び配合剤とを必要に応じて押出機、ニ−ダ、ロ−ル等を用いて均一になるまで充分に混合してエポキシ樹脂組成物を得、そのエポキシ樹脂組成物を溶融後注型あるいはトランスファ−成型機などを用いて成型し、さらに80〜200℃で2〜10時間加熱することにより硬化物を得ることができる。
【0029】
また本発明のエポキシ樹脂組成物をトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等の溶剤に溶解させ、ガラス繊維、カ−ボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させ加熱半乾燥して得たプリプレグを熱プレス成型して硬化物を得ることもできる。この際の溶剤は、本発明のエポキシ樹脂組成物と該溶剤の混合物中で通常10〜70重量%、好ましくは15〜70重量%を占める量を用いる。
【0030】
【実施例】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明するが、以下において部は特に断わりのない限り重量部である。
【0031】
実施例1
温度計、滴下ロート、冷却管、撹拌器を取り付けたフラスコに窒素ガスパージを施しながら前記式(2)で表される構造を98モル%含む前記式(3)で表される化合物99.5部、エピクロルヒドリン370部、メタノール92.5部を仕込み撹拌下で還流温度まで昇温し、溶解させた。次いでフレーク状水酸化ナトリウム40部を100分かけて分割添加し、その後、更に還流温度で1時間反応させた。反応終了後、水250部を加えて水洗を行い生成した塩などを除去した後、ロータリーエバポレーターを使用して加熱減圧下、過剰のエピクロルヒドリン等を留去し、残留物に撹拌下で467部のメチルイソブチルケトンを加え、常温まで冷却した。析出した結晶を、減圧濾過器を用いて分離し、更に300部のメチルイソブチルケトン及び300部のメタノールを用いて洗浄し、乾燥させることにより、白色の結晶粉末98部を得た。この結晶性エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は170g/eq、融点は182℃、200℃における溶融粘度は0.04Pa・s、前記式(1)で表される化合物が含まれる割合は75モル%であった。
【0032】
実施例2
実施例1で得られた結晶性エポキシ樹脂(A)に対し硬化剤としてフェノールノボラック(軟化点83℃)、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)及びジメチルホルムアミド(DMF)を表1に示される組成で配合してワニスを調製した。次いでこのワニスをガラスクロスに含浸し、130℃で7分間乾燥して、樹脂分約45重量%のプリプレグを得た。このプリプレグを8枚と両面に厚さ5ミクロンの銅箔を重ね、170℃、圧力40Kg/m2で1時間プレス成形して、厚さ1.6mmの銅張りガラス積層板を作成した。この積層板のガラス転移点を試験した結果を表1に示した。
【0033】
ガラス転移点
熱機械測定装置(TMA):真空理工(株)製 TM−7000
昇温速度:2℃/min.
【0034】
【0035】
このように本発明の結晶性エポキシ樹脂を用いたエポキシ樹脂組成物の硬化物は極めて優れた耐熱性(ガラス転移温度が高いことから判断される)を示した。
【0036】
【発明の効果】
本発明の結晶性エポキシ樹脂を用いた組成物の硬化物は従来一般的に使用されてきたエポキシ樹脂と比較して極めて耐熱性に優れた硬化物を与える。
従って、本発明のエポキシ樹脂組成物は電気・電子材料、成型材料、注型材料、積層材料、塗料、接着剤、レジスト、光学材料などの広範囲の用途にきわめて有用である。
Claims (6)
- 請求項1記載のエポキシ樹脂、硬化剤を含有するエポキシ樹脂組成物。
- 硬化促進剤を含有する請求項3記載のエポキシ樹脂組成物。
- 無機充填剤を含有する請求項3または4記載のエポキシ樹脂組成物。
- 請求項3、4または5のいずれか1項に記載のエポキシ樹脂組成物を硬化してなる硬化物。
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