JP2004010403A - 多重構造酸化チタン微粒子、及びその作製方法、及びそれを含有する光電変換素子並びに光電池 - Google Patents

多重構造酸化チタン微粒子、及びその作製方法、及びそれを含有する光電変換素子並びに光電池 Download PDF

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Abstract

【課題】光電変換素子に好適な酸化チタン微粒子及び酸化チタン微粒子の作製方法を提供し、変換効率の優れる色素増感光電変換素子及びこれを用いた光電池を提供する。
【解決手段】少なくとも中心部であるコアと外殻部であるシェルを有する多重構造酸化チタン微粒子であって、コアとシェルの少なくとも一方はドーパントを含有し、コアとシェルで組成が異なる酸化チタン微粒子。
【選択図】 図1

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は酸化チタン微粒子及びその作製方法に関し、詳しくは色素で増感された半導体微粒子を用いた光電変換素子に好ましく用いられる多重構造酸化チタン微粒子及びその作製方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、光発電装置に用いられている。光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、あるいはこれらを組み合わせたもの等の様々な方式が実用化されている。ここで、酸化チタンはn型半導体として知られており、光等を受けることで電子を放出する特性を利用して光触媒等に広く用いられている。また感光性半導体である特性を利用して光電変換素子の材料としても検討されている。
【0003】
米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号,同5463057号,同5525440号,WO98/50393号の各明細書および特開平7−249790号,特表平10−504521号公報には、色素によって増感された半導体微粒子を用いた光電変換素子(以後、色素増感光電変換素子と略す)、もしくはこれを作製するための材料および製造技術が開示されている。この方式の利点は酸化チタン微粒子を用いることができるため、安価な光電変換素子を提供できる点にある。
【0004】
微粒子酸化チタンの作製には通常ゾル−ゲル法が用いられる。ゾルーゲル法は当該分野においては広く知られた微粒子合成法であり、例えばバーンサイドらのケミストリー・オブ・マテリアルズ,第10巻,第9号,2419〜2425頁等に詳しく記載されている。ゾルーゲル法で作製された酸化チタン微粒子を色素増感光電変換素子に応用した例としては、バルベらの報告したジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサエティー,第80巻,第12号,3157〜3171頁(1997年)が挙げられる。しかしながらこのような光電変換素子は作製したすべての素子について常に変換効率が高いとは限らず、なお一層の変換効率向上が望まれていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、優れた光電変換効率を有する色素増感光電変換素子を作製できる多重構造酸化チタン微粒子とその作製方法、及びこの酸化チタン微粒子を用いることにより変換効率の向上した色素増感光電変換素子並びにこの色素増感光電変換素子を用いた光電池を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は下記の(1)〜(6)の酸化チタン微粒子及び/又は(7)〜(11)の方法により作製された酸化チタン微粒子を用いることにより、変換効率の優れた光電変換素子が得られることを発見し、本発明に想到した。
(1)少なくとも中心部であるコアと外殻部であるシェルとを有する多重構造酸化チタン微粒子であって、コアとシェルの少なくとも一方はドーパントを含有し、コアとシェルで組成が異なることを特徴とする酸化チタン微粒子。
(2)コアとシェルの少なくとも一方はn型にドープされていることを特徴とする(1)に記載の酸化チタン微粒子。
(3)少なくともシェルがn型にドープされていることを特徴とする(2)に記載の酸化チタン微粒子。
(4)ドーパントが、周期表の第5族元素およびハロゲン元素から成る群より選ばれた少なくとも1つの元素であることを特徴とする(2)又は(3)に記載の酸化チタン微粒子。
(5)ドーパントが、ニオブ、タンタル、およびフッ素から成る群より選ばれた少なくとも1つの元素であることを特徴とする(4)に記載の酸化チタン微粒子。
(6)ドーパントがフッ素であることを特徴とする(5)に記載の酸化チタン微粒子。
(7)ゾルーゲル法による多重構造酸化チタン微粒子の作製方法であって、粒子成長工程が少なくともコア成長工程とシェル成長工程とを含むことを特徴とする酸化チタン微粒子の作製方法。
(8)前記シェル成長工程及び前記コア成長工程の温度がともに150℃以上250℃以下であることを特徴とする(7)に記載の酸化チタン微粒子の作製方法。
(9)前記シェル成長工程の温度が前記コア成長工程の温度よりも低いことを特徴とする(7)又は(8)に記載の酸化チタン微粒子の作製方法。
(10)水溶性化合物を用いてドープすることを特徴とする(7)〜(9)のいずれかに記載の酸化チタン微粒子の作製方法。
(11)前記シェル成長工程において酸化チタンゾルと水溶性化合物を加熱することによりドープされたシェルを成長させることを特徴とする(10)に記載の酸化チタン微粒子の作製方法。
(12)(7)〜(11)のいずれかに記載の方法により作製された(1)〜(6)のいずれかに記載の酸化チタン微粒子。
(13)(1)〜(6)、(12)のいずれかに記載の酸化チタン微粒子もしくは(7)〜(11)のいずれかに記載の方法により作製された酸化チタン微粒子を含むことを特徴とする色素増感光電変換素子。
(14)(12)の色素増感光電変換素子を用いた光電池。
【0007】
【発明の実施の形態】
〔1〕多重構造酸化チタン微粒子、及びその作製方法
本発明における酸化チタンは多重構造であり、中心部であるコアと外殻部であるシェルで組成が異なることを特徴とする。コアとシェルで組成が異なるとは詳しくは次のような場合を指す。
▲1▼コアはドーパントを含まず、シェルはドーパントを含む。
▲2▼コアはドーパントを含み、シェルはドーパントを含まない。
▲3▼コア、シェルともにドーパントを含み、その種類及び/又は含有量が異なる。
【0008】
通常コア−シェル構造は二重構造であるが、本発明の酸化チタン微粒子は、目的に応じて三重構造又は四重構造をとっても良い。
【0009】
本発明のコアシェル粒子の作製方法は、基本的にゾルーゲル法に従う。ゾルーゲル法は酸化チタン前駆体の加水分解工程、酸化チタンゾル生成工程、粒子成長工程、及び後処理工程から成る。本発明は上記粒子成長工程が少なくともコア成長工程とシェル成長工程とを含むことを特徴とする。
【0010】
(A)酸化チタン前駆体の加水分解工程
酸化チタン前駆体は加水分解により酸化チタンを生成するものであり、例えばハロゲン化チタン(三塩化チタン、四塩化チタン等)、オルトチタン酸エステル(オルトチタン酸メチル、オルトチタン酸エチル、オルトチタン酸イソプロピル、オルトチタン酸ブチル等)等が挙げられる。このうちオルトチタン酸エステルが好ましい。これらの前駆体は加水分解に先だって各種の配位子(例えばアセチルアセトン、アミノエタノール、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン、その他のアミン、ピリジンカルボン酸、酒石酸、シュウ酸、乳酸、グリコール酸、その他のヒドロキシカルボン酸等)と錯体を形成しても良い。
【0011】
上記前駆体もしくはその錯体は加水分解する。加水分解は、通常、過剰な水中に上記前駆体もしくはその錯体を添加する方法がとられる。また前記配位子を溶解した水溶液中に、前記前駆体を添加する方法も用いられる。添加の方法は一気に混合しても良いし、滴下法を用いても良い。滴下の後、通常10分〜3時間撹拌する。撹拌の際の温度には特に制限はないが、通常10〜40℃である。一般に配位子は加水分解速度を低下させるので、配位子を用いる場合は、反応に高温もしくは長時間を要する。この工程において水酸化チタンを主成分とする沈殿を含む懸濁液が得られる。なお、本工程において後述するドーパントを添加しても良い。
【0012】
(B)酸化チタンゾル生成工程
前記懸濁液を触媒の存在下で加熱することにより酸化チタンゾルが生成する。触媒は酸もしくはアルカリである。酸、アルカリの種類は限定されないが、強酸、強塩基が好ましく、強酸がより好ましい。触媒の具体例としては塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、メタンスルホン酸、アンモニア、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシド(例えば、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド等)、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。これらのうち硝酸、テトラアルキルアンモニウムヒドロキシドがより好ましく、硝酸が特に好ましい。これらの触媒はこの工程で新たに添加されても良いし、前述の加水分解工程において添加されても良い。触媒の濃度は0.01モル/リットル以上が好ましく、0.05モル/リットル以上がより好ましい。触媒が強酸である場合、その濃度は0.01モル/リットル以上1モル/リットル以下が好ましく、0.05モル/リットル以上0.3モル/リットル以下がより好ましい。
【0013】
加熱温度は通常40〜100℃である。加熱時間は特に制限されず、水酸化チタンを主成分とする懸濁液が、酸化チタンを主成分とする半透明のゾルになるまで加熱が続けられる。加熱時間は典型的には1〜48時間である。一般に、触媒の量が多いときほど加熱温度は低く、加熱時間は短くてよい。この工程により得られるゾル状の酸化チタンは、XRD法で求められる結晶子サイズとして2〜6nmの超微粒子である。本工程において後述するドーパントを添加しても良い。
【0014】
(C)粒子成長工程
(1)コア成長工程
前記工程で得られた酸化チタンゾルを圧力容器に移し、加熱することにより結晶子サイズを5〜200 nmに成長させる。成長後の酸化チタン微粒子をコアと呼ぶ。本発明のコアシェル酸化チタン微粒子を色素増感光電変換素子に用いる場合、好ましいコアのサイズは5〜200 nmであり、5〜50 nmがより好ましく、5〜15 nmが特に好ましい。加熱温度が高く加熱時間が長いほど、またpHが高いほど大きなコアが得られるので、コアが所望の粒子径に成長する条件が適宜選ばれる。
【0015】
色素増感光電変換素子に用いるコアシェル粒子を作製する場合、コア成長工程ではpHが3以下の酸性条件下で前述の酸化チタンゾルを加熱することが好ましい。好ましい加熱温度は100〜300℃、より好ましくは150〜250℃である。好ましい加熱時間は1〜96時間であり、より好ましくは5〜48時間である。圧力容器の例としてはステンレス製オートクレーブ、チタン製オートクレーブ、内のりがチタンもしくはテフロン(登録商標)のステンレス製オートクレーブ等が挙げられる。オートクレーブは撹拌装置を有しているのが好ましい。本工程において後述するドーパントを添加しても良い。
【0016】
(2)シェル成長工程
シェル成長工程とは、コアの周囲にシェルを形成させる工程である。具体的には、前記酸化チタンゾルと前記コアとを混合し、均一に分散させた後、これを再び圧力容器中で加熱する。この工程では溶解度の高い酸化チタンゾルが水中に溶解した後、加圧下で過熱されることにより、酸化チタンがコアの周囲に析出、成長してシェルを形成する。シェル成長工程が順調に進行した場合、コアとシェルの比率は仕込んだコアの量と酸化チタンゾルの固形分との比率に等しくなる。コアとシェルの比は目的に応じて適宜決定されるので特に限定されないが、典型的にはコア10に対してシェル1からコア1に対してシェル10の範囲にある。
【0017】
本工程においては最初に仕込んだコアを成長核としてシェルが形成されるので、各粒子が同じコア−シェル構造を有するためには、最初に仕込んだコア以外の成長核が生成しない事が必要である。このためには、コアと酸化チタンゾルの仕込み比を適宜調節する必要がある。通常、コアに対して酸化チタンゾルの添加量が多すぎると新たな核が生成するので好ましくない。反応混合物中のこれらの原料の割合が、コア1に対し酸化チタンゾルの固形分が3以下であるのが好ましく、2以下であるのがより好ましい。例えばコア1に対してシェルが4の粒子を作りたい場合、コア1に対し酸化チタンゾル4を一度に加えて加熱するのではなく、コア1に対して酸化チタンゾル2を加えて一定時間加熱し、最初に加えた酸化チタンゾル2がほぼ消費された後、再度酸化チタンゾル2を加えて加熱する等の方法を採るのが好ましい。
【0018】
本工程においては生成したコアシェル粒子が再溶解しない事も重要である。生成したコアシェルは加熱により再溶解が促進されるため、酸化チタンゾルがすべてコアの周囲に析出し終えるタイミングで加熱を終了するのが理想的である。加熱時間は他の条件(例えばコアとシェルの比率及び濃度、温度等)によって異なるが、好ましくは1〜96時間であり、5〜48時間がより好ましい。加熱温度は100〜300℃、より好ましくは150〜250℃である。シェル成長工程の加熱温度のさらに詳細な条件としては、前記コア成長工程における加熱温度以下とするのが好ましい。その温度差は好ましくは0〜100℃、より好ましくは0〜50℃、特に好ましくは5〜25℃である。好ましい圧力容器は前述のコア成長工程に用いるものと同様である。本工程において後述するドーパントを添加しても良い。
【0019】
(D)後処理
前記粒子生成工程により生成した酸化チタン微粒子は、酸化チタン分散物として得られ、この酸化チタン分散物は後処理によって濃縮または溶媒置換される。酸化チタン微粒子は、使用目的に応じて乾燥粉末、水分散液、水分散ペースト、有機溶媒分散液、有機溶媒分散ペーストに調製される。濃縮の方法としては、静置または遠心分離とデカンテーションによる方法、水の減圧留去法等がある。溶媒置換の方法は遠心分離、デカンテーション、溶媒添加を繰り返す方法が一般的である。ペーストを得るための増粘剤としては各種のポリマー(例えばポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸およびその塩、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリルアミド等)、多糖類、ゼラチン、各種の低分子増粘剤(例えばシトロネロール、ネロール、テルピネオール等)が好ましい。
【0020】
水分散液、水分散ペースト、有機溶媒分散液、有機溶媒分散ペーストにおける酸化チタンの含有量は1〜40%が好ましく、10〜30%がより好ましい。
【0021】
(E)ドープ
本発明の酸化チタン微粒子作製方法では、酸化チタン前駆体の加水分解工程、酸化チタンゾル生成工程、コア成長工程及びシェル成長工程のうち少なくとも1つの工程においてドーパントソースが添加される。ドーパントソースとは、反応生成物となる半導体中でドーパントとして働く元素を反応系に供給する化合物を言う。このうち酸化チタン前駆体の加水分解工程及び/又は酸化チタンゾル生成工程においてドーパントソースを添加する場合には、コアとシェルとで組成の違う酸化チタン微粒子を得るために、コア成長工程及び/又はシェル成長工程においてドーパントソースを再添加する必要がある。ドーパントソースの添加は酸化チタンをn型もしくはp型にドープする目的で行われる。
【0022】
酸化チタンをn型半導体とするためのドーパントとしては、周期表の第5族元素(例えばバナジウム、ニオブ、タンタル等)およびハロゲン元素(例えばフッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)が挙げられる。これらのうちニオブ、タンタル、フッ素がより好ましく、フッ素が特に好ましい。酸化チタンをp型半導体とするためのドーパントとしては周期表の第3族元素(スカンジウム、イットリウム、ランタンおよびランタノイド元素)、または周期表の第15族元素(窒素、リン、砒素、アンチモン、ビスマス)が挙げられる。これらのうちスカンジウム、窒素が特に好ましい。
【0023】
これらの元素をドープするにはそれぞれの元素を含む化合物をドーパントソースとして用いる。ドーパントソースは水溶性でも水不溶性でも良い。好ましいドーパントソースの例を以下に挙げる。第5族元素の化合物としては、例えばバナジウム、ニオブ、もしくはタンタルのハロゲン化物(例えばフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等)、バナジウム、ニオブもしくはタンタルのアルコキシド(例えばメトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等)等が挙げられる。ハロゲン化合物としてはハロゲン化水素、ハロゲン化物塩(例えばハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化アルキルアンモニウム、ハロゲン化ピリジニウム、およびアルカリ金属、アルカリ土類金属のハロゲン化物等)の他、ハロゲン含有塩(例えばテトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩等)等が挙げられる。
【0024】
第3族元素の化合物としては、例えば硝酸スカンジウム、スカンジウムおよびイットリウムのアルコキシド(例えばメトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等)等が挙げられる。第15族元素の化合物としては、例えばアンモニア、アンモニウム塩(例えば硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等)、ホスフィンおよびホスホニウム塩等が挙げられる。
【0025】
ドーパントソースの添加量は反応系内の全チタンに対し0.01〜100モル%であり、好ましくは0.1〜20モル%である。
【0026】
ドーパントソースの添加時期は次の通りである。コアのみにドープする場合には、コア成長工程の際にドーパントソースを添加する。シェルのみにドープする場合はシェル成長工程の際にドーパントソースを添加する。コアとシェルの両方にドープする場合、酸化チタン前駆体の加水分解工程及び/又は酸化チタンゾル生成工程においてドーパントソースを添加しても良いが、コアとシェルで組成の異なる酸化チタン微粒子を得るためには、コア成長工程及び/又はシェル成長工程においてドーパントソースを再添加する必要がある。
【0027】
本発明の多重構造酸化チタン微粒子の基本的な分類としては下記の8通りがある。ここでpドープとはp型ドープ酸化チタン半導体、nドープとはn型ドープ酸化チタン半導体、ノンドープとはドープされていない酸化チタンを意味する。なお、酸化チタン微粒子がコアとシェル以外の層を有しても良い。
▲1▼コア:ノンドープ/シェル:pドープ
▲2▼コア:ノンドープ/シェル:nドープ
▲3▼コア:pドープ/シェル:ノンドープ
▲4▼コア:pドープ/シェル:pドープ
▲5▼コア:pドープ/シェル:nドープ
▲6▼コア:nドープ/シェル:ノンドープ
▲7▼コア:nドープ/シェル:pドープ
▲8▼コア:nドープ/シェル:nドープ
【0028】
コアもシェルもpドープの場合、ドーパントの種類もしくは含有量が異なる。コアもシェルもnドープの場合、ドーパントの種類もしくは含有量が異なる。本発明のコアシェル粒子を色素増感光電変換素子に応用する場合、シェルがn型半導体であると短絡電流が増大するので好ましい(上記▲2▼、▲5▼、▲8▼)。
【0029】
[2]光電変換素子
本発明の光電変換素子は上記本発明の作製方法で作製され、好ましくは図1に示すように導電層10、感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40をこの順に積層してなり、感光層20を色素22によって増感した半導体微粒子21とこの半導体微粒子21の間の空隙に浸透した電荷輸送材料23とから構成する。感光層20中の電荷輸送材料23は通常、電荷輸送層30に用いる材料と同じものである。導電層10と感光層20の間には下塗り層60を設けてもよい。また、光電変換素子に強度を付与するために、導電層10及び/又は対極導電層40の下地として基板50を設けてもよい。本発明では、導電層10及び任意で設ける基板50からなる層を「導電性支持体」、対極導電層40及び任意で設ける基板50からなる層を「対極」と呼ぶ。なお、図1中の導電層10、対極導電層40、基板50はそれぞれ透明導電層10a、透明対極導電層40a、透明基板50aであってもよい。このような光電変換素子のうち、電気的仕事(発電)をさせるために外部負荷に接続したものが光電池であり、光学的情報のセンシングを目的に作られたものが光センサーである。光電池の中で、電荷輸送材料が主としてイオン輸送材料からなるものを光電気化学電池と呼び、また太陽光による発電を主目的とするものを太陽電池と呼ぶ。
【0030】
図1に示す光電変換素子において、色素22により増感した半導体微粒子21を含む感光層20に入射した光は色素22等を励起し、励起された色素22等中の高エネルギーの電子は半導体微粒子21の伝導帯に渡され、更に拡散して導電層10に到達する。このとき色素22は酸化体となっている。光電池においては、導電層10中の電子が外部回路で仕事をしながら対極導電層40及び電荷輸送層30を経て色素22の酸化体に戻り、色素22が再生する。感光層20は負極として働き、対極導電層40は正極として働く。それぞれの層の境界(例えば導電層10と感光層20との境界、感光層20と電荷輸送層30との境界、電荷輸送層30と対極導電層40との境界等)では、各層の構成成分同士が相互に拡散混合していてもよい。以下各層および構成について詳細に説明する。
【0031】
(A)導電性支持体
導電性支持体は(1)導電層の単層又は(2)導電層及び基板の2層からなる。(1)の場合、導電層の材料としては、導電層の強度や密封性を十分に保つことができ、且つ導電性を有するもの(例えば白金、金、銀、銅、亜鉛、チタン、アルミニウム、これらを含む合金のような金属材料等)を用いることができる。(2)の場合、感光層側に導電剤からなる導電層を有する基板を導電性支持体として使用することができる。好ましい導電剤の例としては金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素及び導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。導電層の厚さは好ましくは0.02〜10μm程度である。
【0032】
導電性支持体の表面抵抗は低い程好ましい。この表面抵抗は好ましくは100Ω/□以下であり、より好ましくは40Ω/□以下である。表面抵抗の下限には特に制限はないが、通常0.1Ω/□程度である。
【0033】
導電性支持体側から光を照射する場合には、導電性支持体は実質的に透明であるのが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味する。導電性支持体の光透過率は好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0034】
透明導電性支持体としては、ガラス、プラスチック等からなる透明基板の表面に導電性金属酸化物からなる透明導電層を塗布、蒸着等により形成したものが好ましく使用できる。透明導電層をなす好ましい材料の例としてはフッ素をドーピングした二酸化スズ等が挙げられる。透明基板としては、コストと強度の点で有利なソーダ石灰フロートガラスからなるガラス基板、低コストでフレキシブルな光電変換素子を得るために有用な透明ポリマーフィルム等が使用できる。透明ポリマーフィルムをなす材料の例としては、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ樹脂等が挙げられる。十分な透明性を確保するためには、上記導電性金属酸化物の塗布量はガラス又はプラスチックの基板1m当たり0.01〜100 gとするのが好ましい。
【0035】
透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で、金属リードを集電体として用いることができる。金属リードは白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀等の金属からなるのが好ましく、アルミニウム又は銀からなるのが特に好ましい。透明基板上に金属リードを蒸着、スパッタリング等で設置し、その上にフッ素をドープした酸化スズ、ITO膜等からなる透明導電層を設けるのが好ましい。また、透明導電層を透明基板に設けた後、透明導電層上に金属リードを設置することも好ましい。金属リード設置による入射光量の低下は、好ましくは10%以内、より好ましくは1〜5%とする。
【0036】
(B)感光層
感光層において半導体微粒子は感光体として作用し、光を吸収して電荷分離を行い電子と正孔を生ずる。色素増感した半導体微粒子では光吸収及びこれによる電子及び正孔の発生は主として色素において起こり、半導体微粒子はこの電子又は正孔を受け取り、伝達する役割を担う。本発明で用いる半導体は、光励起下で伝導体電子がキャリアーとなり、アノード電流を与えるn型半導体であることが好ましい。
【0037】
(1)半導体
本発明の光電変換素子で用いる半導体は、上述の酸化チタン微粒子である。
【0038】
本発明の光電変換素子を構成する酸化チタンは、好ましくは下記▲1▼▲2▼の2種の混合である。
▲1▼色素担持を目的とする微粒子酸化チタン
▲2▼光の錯乱を目的とする微粒子酸化チタン
▲1▼には本発明の酸化チタン微粒子を用いる。▲2▼には本発明の酸化チタン微粒子を用いてもそれ以外の酸化チタン微粒子を用いてもよく、アナターゼでもルチルでもよい。▲2▼の粒子径は50〜800 nmであり、好ましくは100〜500 nmであり、より好ましくは200〜400 nmである。
【0039】
混合比率(質量比)は小さい粒子(▲1▼)が50〜99%且つ大きい粒子(▲2▼)が1〜50%であるのが好ましく、小さい粒子が70〜95%且つ大きい粒子が5〜30%であるのがより好ましい。
【0040】
本発明の光電変換素子に用いる酸化チタン微粒子の作製法は、上述したとおりである。
【0041】
(2)半導体微粒子層
導電性支持体上に上記半導体微粒子からなる半導体微粒子層を形成する際には、半導体微粒子を含有する分散液又はコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法を用いるのが一般的である。光電変換素子の量産化、半導体微粒子を含有する分散液又はコロイド溶液の物性、導電性支持体の融通性等を考慮すると、湿式の製膜方法を用いるのが比較的望ましい。湿式の製膜方法としては塗布法及び印刷法が代表的である。
【0042】
半導体微粒子の分散液を作製する方法の例としては、前述のゾル−ゲル法等で調製した分散液又はコロイド溶液をそのまま用いる方法、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法等が挙げられる。
【0043】
半導体微粒子の分散液に用いる分散媒は、水又は各種有機溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)であってよい。分散する際に必要に応じてポリエチレングリコールのようなポリマー、界面活性剤、酸、キレート剤等を分散助剤として用いてもよい。ポリエチレングリコールの分子量を変えることで、分散液の粘度が調節でき、また剥がれにくい半導体微粒子層を形成することができるので、ポリエチレングリコールを添加することは好ましい。
【0044】
好ましい塗布方法の例としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法等、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分にできるものとして特公昭58−4589号に開示されているワイヤーバー法、米国特許2681294号、同2761419号、同2761791号等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が挙げられる。また汎用機としてスピン法やスプレー法も好ましい。湿式印刷方法としては凸版、オフセット及びグラビアの三大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から液粘度やウェット厚さに応じて製膜方法を選択してよい。
【0045】
半導体微粒子の分散液の粘度は半導体微粒子の種類や分散性、使用溶媒種、界面活性剤やバインダー等の添加剤により大きく左右される。分散液が高粘度(例えば0.01〜500 Poise)である場合はエクストルージョン法、キャスト法又はスクリーン印刷法を用いるのが好ましい。また低粘度(例えば0.1 Poise以下)である場合は、均一な膜を形成するためにはスライドホッパー法、ワイヤーバー法又はスピン法を用いるのが好ましい。なお、塗布量がある程度多い場合は低粘度であってもエクストルージョン法による塗布が可能である。このように分散液の粘度、塗布量、支持体、塗布速度等に応じて適宜製膜方法を選択すればよい。
【0046】
半導体微粒子層は単層に限定されず、粒径の違った半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類が異なる半導体微粒子(或いは異なるバインダー、添加剤等)を含有する層を多層塗布したりすることもできる。一度の塗布で膜厚が足りない場合にも多層塗布は有効である。多層塗布にはエクストルージョン法及びスライドホッパー法が適している。多層塗布する場合は同時に多層を塗布してもよいし、数回から十数回、順次重ね塗りしてもよい。順次重ね塗りする際にはスクリーン印刷法も好ましく使用できる。
【0047】
一般に半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚さと同じ)が厚くなるほど、単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。従って半導体微粒子層の好ましい厚さは0.1〜100μmである。本発明の光電変換素子を太陽電池に用いる場合、半導体微粒子層の厚さは好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜25μmである。導電性支持体1m当たりの半導体微粒子の塗布量は、好ましくは0.5〜400 g、より好ましくは5〜100 gである。
【0048】
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布した後、半導体微粒子同士を電子的に接触させるとともに塗膜強度や導電性支持体との密着性を向上させるために、加熱処理するのが好ましい。加熱処理における加熱温度は好ましくは40〜700℃であり、より好ましくは100〜600℃である。また加熱時間は10分〜10時間程度である。ポリマーフィルムのように融点や軟化点の低い基板を用いる場合、高温処理は基板の劣化を招くため好ましくない。またコストの観点からもできる限り低温で加熱処理を行うのが好ましい。5nm以下の小さい半導体微粒子や鉱酸等の存在下で加熱処理を行うと、加熱温度の低温化が可能となる。
【0049】
上記加熱処理に代えて加圧処理を行っても良い。加圧処理の方法についてはリンドストロームらによる著書、ジャーナル・オブ・フォトケミストリー・アンド・フォトバイオロジー、第145巻、107〜112頁(2001年、エルゼビア)に詳しく記載されている。加圧処理を行う場合、半導体微粒子塗布液にはポリマーなどのバインダーを用いない。
【0050】
加熱処理、または加圧処理の後、例えばUS 5084365号に記載されているような四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理や三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
【0051】
半導体微粒子層は、多くの色素を吸着することができるように大きい表面積を有することが好ましい。半導体微粒子層を導電性支持体上に塗布した状態での表面積は投影面積に対して10倍以上であるのが好ましく、100倍以上であるのがより好ましい。この上限は特に制限はないが、通常1000倍程度である。
【0052】
(3)処理
本発明では、感光層に用いる半導体微粒子を金属化合物の溶液で処理してもよい。金属化合物としては、例えばスカンジウム、イットリウム、ランタノイド、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム及びスズからなる群から選ばれる金属のアルコキシド又はハロゲン化物等が使用できる。金属化合物の溶液(処理液)は通常、水溶液又はアルコール溶液である。なお、「処理」とは、半導体微粒子に色素を吸着させる前に、該半導体微粒子と上記処理液をある時間接触させる操作を意味する。接触後に半導体微粒子に上記金属化合物が吸着していても吸着していなくてもよい。処理は上記半導体微粒子層を形成した後に行うのが好ましい。
【0053】
処理の具体的方法としては、半導体微粒子を該処理液に浸漬する方法(浸漬法)が好ましい例として挙げられる。また、処理液をスプレー状に一定時間吹き付ける方法(スプレー法)も適用できる。浸漬法を行う際の処理液の温度(浸漬温度)は特に限定されないが、典型的には−10〜70℃であり、好ましくは0℃〜40℃である。処理時間も特に限定されず、典型的には1分〜24時間であり、好ましくは30分〜15時間である。浸漬の後、半導体微粒子を蒸留水等の溶媒で洗浄してもよい。また、浸漬処理によって半導体微粒子に付着した物質の結合を強めるために焼成してもよい。焼成の条件は、上述した加熱処理の条件と同様に設定すればよい。
【0054】
(4)色素
感光層に用いる増感色素は、可視域や近赤外域に吸収特性を有し半導体を増感し得るものであれば特に限定されないが、金属錯体色素、メチン色素、ポルフィリン系色素及びフタロシアニン系色素が好ましく使用でき、中でも金属錯体色素が特に好ましい。フタロシアニン、ナフタロシアニン、金属フタロシアニン、金属ナフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリンやテトラアザポルフィリン等のポルフィリン類、金属ポルフィリン、それらの誘導体等も用いることができる。色素レーザー用に用いられる色素類も本発明において使用できる。また、光電変換の波長域をできるだけ広くし、且つ変換効率を上げるために、二種類以上の色素を併用することができる。この場合、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように併用する色素とその割合を選ぶことができる。
【0055】
色素は半導体微粒子の表面に対して吸着能力の有る適当な結合基(interlocking group)を有するのが好ましい。好ましい結合基の例としては、−COOH基、−OH基、−SOH基、−P(O)(OH)基及び−OP(O)(OH)基のような酸性基、並びにオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート及びα−ケトエノレートのようなπ伝導性を有するキレート化基が挙げられる。中でも−COOH基、−P(O)(OH)基及び−OP(O)(OH)基が特に好ましい。これらの結合基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、また分子内塩を形成していてもよい。またポリメチン色素の場合、メチン鎖がスクアリリウム環やクロコニウム環を形成する場合のように酸性基を含有するなら、この部分を結合基としてもよい。以下、感光層に用いる好ましい増感色素を具体的に説明する。
【0056】
(a)金属錯体色素
本発明で用いる金属錯体色素の金属原子はルテニウムRuであるのが好ましい。ルテニウム錯体色素の例としては、米国特許4927721号、同4684537号、同5084365号、同5350644号、同5463057号、同5525440号、特開平7−249790号、特表平10−504512号、WO98/50393号、特開2000−26487号等に記載のものが挙げられる。また、好ましい金属錯体色素の具体例としては、特開2001−320068号の段落番号0051〜0057に記載のものが挙げられる。最も典型的な金属錯体色素としては、下記D−1及びD−2が挙げられる。
【0057】
【化1】
Figure 2004010403
【0058】
(b)メチン色素
好ましいメチン色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等のポリメチン色素である。好ましいポリメチン色素の例としては、特開平11−35836号、同11−158395号、同11−163378号、同11−214730号、同11−214731号、欧州特許892411号及び同911841号に記載の色素が挙げられる。これらのポリメチン色素の合成法については、エフ・エム・ハーマー(F. M. Hamer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds − Cyanine Dyes and Related Compounds)」、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、ロンドン(1964年刊)、デー・エム・スターマー(D. M. Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds − Specialtopics in Heterocyclic Chemistry)」、第18章、第14節、第482から515頁、ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社、ニューヨーク、ロンドン(1977年刊)、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd’s Chemistry of Carbon Compounds)」、2nd. Ed.、vol. IV、part B、第15章、第369から422頁、エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社、ニューヨーク(1977刊)、英国特許第1,077,611号、Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal,第40巻,第3号, 253〜258頁、Dyes and Pigments,第21巻, 227〜234頁、これらの引用文献等に記載されている。
【0059】
(5)半導体微粒子への色素の吸着
半導体微粒子に色素を吸着させる際には、色素の溶液中によく乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を浸漬する方法、又は色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。前者の方法の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等が利用可能である。浸漬法を用いる場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7−249790号に記載されているように加熱還流して行ってもよい。後者の方法の場合、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等が利用できる。また、インクジェット法等によって色素を画像状に塗布し、この画像そのものを光電変換素子とすることもできる。
【0060】
色素の溶液(吸着液)に用いる溶媒は、好ましくはアルコール類(メタノール、エタノール、t−ブチルアルコール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3−メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセタミド等)、N−メチルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリジノン、3−メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2−ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)又はこれらの混合溶媒である。
【0061】
色素の吸着量は、半導体微粒子層の単位面積(1m)当たり0.01〜100 mmolとするのが好ましい。また色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g当たり0.01〜1mmolであるのが好ましい。このような色素の吸着量とすることにより半導体微粒子の増感効果が十分に得られる。色素の吸着量が少なすぎると増感効果が不十分となり、色素の吸着量が多すぎると半導体に付着していない色素が浮遊し、増感効果が低減する。色素の吸着量を増やすためには、吸着前に半導体微粒子を加熱処理するのが好ましい。半導体微粒子表面に水が吸着するのを避けるために、加熱処理後には常温に戻さずに半導体微粒子層の温度が60〜150℃の間で素早く色素の吸着を行うのが好ましい。
【0062】
色素間の凝集等の相互作用を低減するために、界面活性剤としての性質を持つ無色の化合物を色素吸着液に添加し、半導体微粒子に共吸着させてよい。このような無色の化合物の例としては、カルボキシル基やスルホ基を有するステロイド化合物(コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸等)や、下記のようなスルホン酸塩類等が挙げられる。
【0063】
【化2】
Figure 2004010403
【0064】
未吸着の色素は、吸着工程後、速やかに洗浄により除去するのが好ましい。洗浄は湿式洗浄槽中でアセトニトリル、アルコール系溶剤のような有機溶媒等を用いて行うのが好ましい。
【0065】
色素を吸着した後、アミン類、4級アンモニウム塩、少なくとも1つのウレイド基を有するウレイド化合物、少なくとも1つのシリル基を有するシリル化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類の例としてはピリジン、4−t−ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。好ましい4級アンモニウム塩の例としてはテトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド等が挙げられる。これらは有機溶媒に溶解して用いてもよく、液体の場合はそのまま用いてもよい。
【0066】
(C)電荷輸送層
電荷輸送層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電荷輸送材料を含有する。本発明で用いる電荷輸送材料は、(i)イオンが関わる電荷輸送材料であっても、(ii)固体中のキャリアー移動が関わる電荷輸送材料であってもよい。(i)イオンが関わる電荷輸送材料としては、酸化還元対イオンを含有する溶融塩電解質組成物、酸化還元対のイオンが溶解した溶液(電解液)、酸化還元対の溶液をポリマーマトリクスのゲルに含浸したいわゆるゲル電解質組成物、固体電解質組成物等が挙げられ、(ii)固体中のキャリアー移動が関わる電荷輸送材料としては、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は複数併用してもよい。本発明では、電荷輸送層に溶融塩電解質組成物又はゲル電解質組成物を用いるのが好ましい。
【0067】
(1)溶融塩電解質組成物
溶融塩電解質組成物は溶融塩を含む。溶融塩電解質組成物は常温で液体であるのが好ましい。主成分である溶融塩は室温において液状であるか、又は低融点の電解質であり、その一般的な例としてはWO95/18456号、特開平8−259543号、電気化学,第65巻, 11号, 923頁 (1997年)等に記載のピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等が挙げられる。溶融塩の融点は50℃以下であるのが好ましく、25℃以下であるのが特に好ましい。溶融塩の具体例は特開2001−320068号の段落番号0066〜0082に詳しく記載されている。
【0068】
溶融塩は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、LiI、NaI、KI、LiBF、CFCOOLi、CFCOONa、LiSCN、NaSCN等のアルカリ金属塩を併用することもできる。アルカリ金属塩の添加量は、組成物全体に対して2質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。また、溶融塩電解質組成物に含まれるアニオンの50モル%以上がヨウ化物イオンであることが好ましい。
【0069】
通常、溶融塩電解質組成物はヨウ素を含有する。ヨウ素の含有量は、溶融塩電解質組成物全体に対して0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0070】
溶融塩電解質組成物の揮発性は低いことが好ましく、溶媒を含まないことが好ましい。溶媒を添加する場合でも、溶媒の添加量は溶融塩電解質組成物全体に対して30質量%以下に留めることが好ましい。溶融塩電解質組成物は後述のようにゲル化して使用してもよい。
【0071】
(2)電解液
電解液は電解質、溶媒及び添加物から構成されることが好ましい。電解液に用いる電解質の例としては、Iとヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI等の金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩等)の組み合わせ、Brと臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr等の金属臭化物、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物臭素塩等)の組み合わせ、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等が挙げられる。中でも、IとLiI又はピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩を組み合わせた電解質が好ましい。電解質は混合して用いてもよい。
【0072】
電解液中の電解質濃度は好ましくは0.1〜10 Mであり、より好ましくは0.2〜4Mである。また、電解液にヨウ素を添加する場合の好ましいヨウ素の添加濃度は0.01〜0.5 Mである。
【0073】
電解液に使用する溶媒は、粘度が低くイオン移動度を向上したり、若しくは誘電率が高く有効キャリアー濃度を向上したりして、優れたイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。このような溶媒の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、ジメチルスルホキシド、スルフォラン等の非プロトン極性物質、水等が挙げられる。これらの溶媒は混合して用いることもできる。
【0074】
また、J. Am. Ceram. Soc., 80 (12) 3157−3171 (1997)に記載されているようなtert−ブチルピリジンや、2−ピコリン、2,6−ルチジン等の塩基性化合物を前述の溶融塩電解質組成物や電解液に添加することが好ましい。塩基性化合物を電解液に添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05〜2Mである。溶融塩電解質組成物に添加する場合、塩基性化合物はイオン性基を有することが好ましい。溶融塩電解質組成物全体に対する塩基性化合物の質量比は好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは5〜30質量%である。
【0075】
(3)ゲル電解質組成物
本発明では、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法により、前述の溶融塩電解質組成物や電解液をゲル化(固体化)させて使用することもできる。ポリマー添加によりゲル化する場合は、“Polymer Electrolyte Reviews−1及び2”(J. R. MacCallumとC. A.Vincentの共編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)に記載された化合物を使用することができるが、特にポリアクリロニトリル及びポリフッ化ビニリデンが好ましく使用できる。オイルゲル化剤添加によりゲル化する場合は工業科学雑誌(J. Chem. Soc. Japan, Ind. Chem. Sec.), 46, 779 (1943)、J. Am. Chem. Soc., 111, 5542 (1989)、J. Chem. Soc., Chem. Commun., 1993, 390、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 35, 1949 (1996)、Chem. Lett., 1996, 885、及びJ. Chem. Soc.,Chem. Commun., 1997, 545に記載されている化合物を使用することができるが、アミド構造を有する化合物を使用するのが好ましい。電解液をゲル化した例は特開平11−185863号に、溶融塩電解質をゲル化した例は特開2000−58140号にも記載されており、これらも本発明に適用できる。
【0076】
また、ポリマーの架橋反応によりゲル化させる場合、架橋可能な反応性基を含有するポリマー及び架橋剤を併用することが望ましい。この場合、好ましい架橋可能な反応性基は、アミノ基、含窒素複素環(ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等)であり、好ましい架橋剤は、窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬(ハロゲン化アルキル類、ハロゲン化アラルキル類、スルホン酸エステル類、酸無水物、酸クロライド類、イソシアネート化合物、α,β−不飽和スルホニル化合物、α,β−不飽和カルボニル化合物、α,β−不飽和ニトリル化合物等)である。特開2000−17076号及び同2000−86724号に記載されている架橋技術も適用できる。
【0077】
(4)正孔輸送材料
本発明では、溶融塩等のイオン伝導性電解質のかわりに、有機固体正孔輸送材料、無機固体正孔輸送材料、或いはこの両者を組み合わせた材料を使用することができる。
【0078】
(a)有機正孔輸送材料
本発明において好ましく使用できる有機正孔輸送材料の例としては、J. Hagen, et al., Synthetic Metal, 89, 215−220 (1997)、Nature, Vol.395, 8 Oct., p583−585 (1998)、WO97/10617、特開昭59−194393号、特開平5−234681号、米国特許第4,923,774号、特開平4−308688号、米国特許第4,764,625号、特開平3−269084号、同4−129271号、同4−175395号、同4−264189号、同4−290851号、同4−364153号、同5−25473号、同5−239455号、同5−320634号、同6−1972号、同7−138562号、同7−252474号、同11−144773号等に記載の芳香族アミン類、特開平11−149821号、同11−148067号、同11−176489号等に記載のトリフェニレン誘導体類等が挙げられる。また、Adv. Mater., 9, No.7, p557 (1997)、Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 34, No.3, p303−307 (1995)、JACS, Vol.120, No.4, p664−672 (1998)等に記載のオリゴチオフェン化合物、K. Murakoshi, et al., Chem. Lett. p471 (1997)に記載のポリピロール、“Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers, Vol. 1,2,3,4”(NALWA著、WILEY出版)に記載のポリアセチレン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレン)及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリトルイジン及びその誘導体等の導電性高分子も好ましく使用することができる。
【0079】
Nature, Vol.395, 8 Oct., p583−585 (1998)に記載されているように、ドーパントレベルをコントロールするためにトリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカルを含有する化合物を正孔輸送材料に添加してもよい。また、酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)を行うためにLi[(CFSON]のような塩を添加してもよい。
【0080】
(b)無機正孔輸送材料
無機正孔輸送材料としてはp型無機化合物半導体を用いることができ、そのバンドギャップは好ましくは2eV以上、より好ましくは2.5eV以上である。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは、色素の正孔を還元するためには色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なるが、一般に好ましくは4.5〜5.5 eV、より好ましくは4.7〜5.3 eVである。好ましいp型無機化合物半導体は1価の銅を含む化合物半導体であり、その例としてはCuI、CuSCN、CuInSe、Cu(In,Ga)Se、CuGaSe、CuO、CuS、CuGaS、CuInS、CuAlSe等が挙げられる。中でも、CuI及びCuSCNが好ましく、CuIが最も好ましい。他のp型無機化合物半導体の例としては、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi、MoO、Cr等が挙げられる。
【0081】
(5)電荷輸送層の形成
電荷輸送層は2通りの方法のいずれかにより形成できる。1つは感光層の上に先に対極を貼り合わせておき、その間隙に液状の電荷輸送層を挟み込む方法である。もう1つは感光層上に直接電荷輸送層を付与する方法で、対極はその後付与することになる。
【0082】
前者の方法の場合、電荷輸送層を挟み込む際には、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセス又は常圧より低い圧力にして間隙の気相を液相に置換する真空プロセスを利用できる。
【0083】
後者の方法において、湿式の電荷輸送層を用いる場合は、通常未乾燥のまま対極を付与しエッジ部の液漏洩防止措置を施す。またゲル電解質組成物を用いる場合には、これを湿式で塗布した後で重合等の方法により固体化してよい。固体化は対極を付与する前に行っても後に行ってもよい。電解液、湿式有機正孔輸送材料、ゲル電解質組成物等からなる電荷輸送層を形成する場合は、前述の半導体微粒子層の形成方法と同様の方法を利用できる。
【0084】
固体電解質組成物や固体正孔輸送材料を用いる場合には、真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理で電荷輸送層を形成し、その後対極を付与することもできる。有機正孔輸送材料は真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等により電極内部に導入することができる。無機固体化合物はキャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解析出法、無電解メッキ法等により電極内部に導入することができる。
【0085】
(D)対極
対極は前述の導電性支持体と同様に、導電性材料からなる対極導電層の単層構造でもよいし、対極導電層と支持基板から構成されていてもよい。対極導電層に用いる導電剤の例としては、金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素、導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、フッ素ドープ酸化スズ等)等が挙げられる。この中でも白金、金、銀、銅、アルミニウム及びマグネシウムが好ましい。対極に用いる基板は、好ましくはガラス基板又はプラスチック基板であり、これに上記の導電剤を塗布又は蒸着して用いることができる。対極導電層の厚さは特に制限されないが、好ましくは3nm〜10μmである。対極導電層の表面抵抗は低い程よく、好ましくは50Ω/□以下、より好ましくは20Ω/□以下である。
【0086】
導電性支持体と対極のいずれか一方又は両方から光を照射してよいので、感光層に光が到達するためには、導電性支持体と対極の少なくとも一方が実質的に透明であればよい。発電効率の向上の観点からは導電性支持体を透明にして光を導電性支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対極は光を反射する性質を有するのが好ましい。このような性質を得るためには、対極として金属又は導電性酸化物を蒸着したガラス又はプラスチック、或いは金属薄膜を使用してよい。
【0087】
対極は電荷輸送層上に直接導電剤を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)するか、導電層を有する基板の導電層側を貼り付けて設置すればよい。導電性支持体の場合と同様に、特に対極が透明の場合には、対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。金属リードの好ましい態様は導電性支持体の場合と同じである。
【0088】
(E)その他の層
対極と導電性支持体の短絡を防止するため、導電性支持体と感光層の間には緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として予め塗設しておくことが好ましい。この下塗り層により短絡を防止する方法は、電荷輸送層に電子輸送材料や正孔輸送材料を用いる場合は特に有効である。下塗り層は好ましくはTiO、SnO、Fe、WO、ZnO又はNbからなり、さらに好ましくはTiOからなる。下塗り層は、例えばElectrochim. Acta, 40, 643−652 (1995)に記載のスプレーパイロリシス法や、スパッタ法等により塗設することができる。下塗り層の膜厚は好ましくは5〜1000 nmであり、より好ましくは10〜500 nmである。
【0089】
また、導電性支持体と対極の一方又は両方の外側表面、導電層と基板の間又は基板の中間に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。これらの機能性層の形成方法は、その材質に応じて塗布法、蒸着法、貼り付け法等から適宜選択できる。
【0090】
(F)光電変換素子の内部構造の具体例
上述のように、光電変換素子の内部構造は目的に合わせ様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面から光の入射が可能な構造と、片面からのみ可能な構造が可能である。本発明の光電変換素子の好ましい内部構造の例を、前述の図1及び図2〜図9に示す。
【0091】
図2に示す構造は、透明導電層10aと透明対極導電層40aとの間に、感光層20と電荷輸送層30とを介在させたものであり、両面から光が入射する構造となっている。図3に示す構造は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、その上に透明導電層10aを設け、下塗り層60、感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40をこの順で設け、更に支持基板50を配置したものであり、導電層側から光が入射する構造となっている。図4に示す構造は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に電荷輸送層30と透明対極導電層40aとを設け、一部に金属リード11を設けた透明基板50aを金属リード11側を内側にして配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。図5に示す構造は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、更に透明導電層10a(又は40a)を設けたもの1組の間に下塗り層60、感光層20及び電荷輸送層30を介在させたものであり、両面から光が入射する構造である。図6に示す構造は、透明基板50a上に透明導電層10a、下塗り層60、感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40を設け、この上に支持基板50を配置したものであり、導電層側から光が入射する構造である。図7に示す構造は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に電荷輸送層30及び透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。図8に示す構造は、透明基板50a上に透明導電層10aを有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に電荷輸送層30及び透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、両面から光が入射する構造となっている。図9に示す構造は、支持基板50上に導電層10を設け、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に固体の電荷輸送層30を設け、この上に一部対極導電層40又は金属リード11を有するものであり、対極側から光が入射する構造となっている。
【0092】
[3]光電池
本発明の光電池は、上記本発明の光電変換素子に外部負荷で仕事をさせるようにしたものである。光電池のうち、電荷輸送材料が主としてイオン輸送材料からなる場合を特に光電気化学電池と呼び、また、太陽光による発電を主目的とする場合を太陽電池と呼ぶ。
【0093】
光電池の側面は、構成物の劣化や内容物の揮散を防止するためにポリマーや接着剤等で密封するのが好ましい。導電性支持体及び対極にリードを介して接続する外部回路自体は公知のものでよい。
【0094】
本発明の光電変換素子を太陽電池に適用する場合も、そのセル内部の構造は基本的に上述した光電変換素子の構造と同じである。また、本発明の光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池等で用いられる基板一体型モジュール構造等が知られており、本発明の光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池も使用目的や使用場所及び環境により、適宜モジュール構造を選択できる。具体的には、特願平11−8457号、特開2000−268892号等に記載の構造や態様とすることが好ましい。
【0095】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0096】
実施例1
(A)酸化チタン微粒子の作製
(1)酸化チタンゾルの調製
水440 g、濃硝酸6mlを混合した液に25℃にてオルトチタン酸テトライソプロピル(和光純薬製)79 mlを一気に添加し1時間撹拌した後、70℃で4時間撹拌した。得られた酸化チタンゾル(S−1)は固形分含有率5.6%であった。
【0097】
(2)酸化チタン微粒子の調整
(a)ノンドープ酸化チタン微粒子
酸化チタンゾル(S−1)のうち50 mlを内のりがテフロン(登録商標)でできたステンレス製オートクレーブに移し替え、250℃で8時間加熱した。得られた酸化チタン分散物を10000回転で10分間遠心分離した。上澄み液をデカンテーションで除いて酸化チタンのウェットケーキ(W−1)12 gを得た。W−1は酸化チタン含有量23%、X線回折法により求めた結晶子サイズは11.7 nmであった。
【0098】
(b)フッ素ドープ酸化チタン微粒子
酸化チタンゾル(S−1)60 g、0.1 Mフッ化アンモニウム水溶液21 mlを混合し、前記ステンレス製オートクレーブ中、200℃で16時間加熱した。得られた酸化チタン分散物を10000回転で10分間遠心分離し、デカンテーションによりウェットケーキ(W−2)14.5 gを得た。W−2はわずかに青みを帯びていて、酸化チタン含有量23.2%、X線回折法により求めた結晶子サイズは11.8 nmであった。
【0099】
分析のためウェットケーキ(W−2)5gをとり、0.1 M水酸化ナトリウム水溶液50 mlと良く混合した後に遠心分離する方法を3回繰り返して十分に洗浄した。最後に純水を加えて遠心分離し、80℃にて24時間乾燥して酸化チタン結晶を得た。得られた結晶をESCAにて表面分析したところ、フッ素が検出された。次にウェットケーキ(W−1)2.5 g、0.1 Mフッ化アンモニウム水溶液3.5 ml、純水4mlを混合し、室温にて3時間撹拌した。この混合液を遠心分離してウェットケーキとした後、0.1 M水酸化ナトリウム水溶液による洗浄を前記と同様に行った。前記と同様に水洗、乾燥の後、ESCAにて表面分析したところ、フッ素は検出されなかった。この事からウェットケーキ(W−2)に含まれる酸化チタンはフッ素ドープされているものと考えられる。
【0100】
(c)多重構造酸化チタン微粒子の調製
▲1▼コア成長工程
酸化チタンゾル(S−1)50 mlを内のりがテフロン(登録商標)でできたステンレス製オートクレーブに移し替え、210℃で8時間加熱した。得られた酸化チタン分散物を10000回転で10分間遠心分離し、デカンテーションによりウェットケーキ(W−3)12.5 gを得た。W−3は酸化チタン含有量22%、X線回折法により求めた結晶子サイズは9.2 nmであった。
【0101】
▲2▼シェル成長工程
ウェットケーキ(W−3)10 g、酸化チタンゾル(S−1)39.3 g、純水15.5 ml、0.1 Mフッ化アンモニウム水溶液13.8 mlを混合し、良く撹拌した。この混合液を前記ステンレス製オートクレーブに移し替え、200℃で30時間加熱した。得られた酸化チタン分散物を10000回転で10分間遠心分離し、デカンテーションによりウェットケーキ(W−4)12 gを得た。W−4はわずかに青みを帯びていて、酸化チタン含有量24%、X線回折法により求めた結晶子サイズは11.6 nmであった。また、前述の方法で洗浄、乾燥し、ESCAによる表面測定を行ったところ、フッ素が検出された。この粒子はコアがノンドープ酸化チタン、シェルがフッ素ドープ酸化チタンとなっているものと推定される。
【0102】
実施例2
(B) 光電変換素子の作製と評価
(1)酸化チタン塗布液の調製
酸化チタンウェットケーキ(W−1、W−2、W−4)10 g、ポリエチレングリコール(分子量20000、和光純薬工業(株)製)0.66 g、水5gを加えてよく撹拌し、ポリエチレングリコールを溶解した。次にエタノール1g、濃硝酸0.4 mlを加えて粘度を調節し、酸化チタン塗布液(C−1〜C−3)を作製した。
【0103】
(2)色素増感酸化チタン電極の作製
フッ素をドープした酸化スズをコーティングした透明導電性ガラス(日本板硝子(株)製、表面抵抗約10Ω/cm)を11枚用意し、その導電面側に上記で得た塗布液(C−1〜C−3)を、それぞれドクターブレードを用いて塗布した。25℃で30分間乾燥した後、電気炉(ヤマト科学(株)製マッフル炉FP−32型)で450℃にて30分間焼成した。塗布、焼成前後の重量変化より単位面積あたりの塗布量を計算で求めた。
【0104】
焼成後、下記のルテニウム錯体色素(D−1)0.3ミリモル/リットルを含む吸着液に16時間浸漬した。吸着温度は25℃、吸着液の溶媒はエタノール、t−ブチルアルコール、アセトニトリルの1:1:2(体積比)混合物である。色素の染着した酸化チタン電極をエタノール、アセトニトリルで順次洗浄した。これにより色素増感酸化チタン電極(E−1〜E−3)が作製された。
【0105】
【化3】
Figure 2004010403
【0106】
(3)光電変換素子の作製
上述のようにして作製した色素増感酸化チタン電極基板(2cm×2cm)をこれと同じ大きさの白金蒸着ガラスと重ね合わせた(図10参照)。次に、両ガラスの隙間に毛細管現象を利用して電解液(ヨウ化1,3−ジメチルイミダゾリウム0.65モル/リットル,ヨウ素0.05モル/リットル、t−ブチルピリジン0.1モル/リットルのアセトニトリル溶液)をしみこませて酸化チタン電極中に導入することにより、表1に示す光電変換素子SC−1〜SC−3を得た。この光電変換素子は図10に示すような、導電性ガラス1(ガラス2上に導電層3が設層されたもの)、色素吸着酸化チタン層4、色素層4、電荷輸送層5、白金層6およびガラス7が順に積層された構造を有する。
【0107】
【表1】
Figure 2004010403
【0108】
(4)光電変換効率の測定
500 Wのキセノンランプ(ウシオ電機(株)製)の光を分光フィルター(Oriel社製AM 1.5)を通すことにより模擬太陽光を発生させた。光の強度は垂直面において102 mW/cmであった。光電気化学電池の導電性ガラスの端部に銀ペーストを塗布して負極とし、この負極と白金蒸着ガラス(正極)を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)に接続した。模擬太陽光を垂直に照射しながら、電流電圧特性を測定し、変換効率を求めた。表2に実施例で作製された光電変換素子の光電変換特性を示す。
【0109】
【表2】
Figure 2004010403
【0110】
SC−1はコアシェル型でないノンドープ酸化チタン微粒子から成り、SC−2はコアシェル型でないフッ素ドープ酸化チタン微粒子から成り、SC−3は本発明のコアシェル型酸化チタン微粒子(コア:ノンドープ、シェル:フッ素ドープ)から成る。それぞれ用いられた酸化チタンの粒子径は11.6〜11.8 nmの範囲でほぼ等しい。
【0111】
単純にフッ素をドープした酸化チタン微粒子(単層構造)を用いたセル(SC−2)は(SC−1)に比べて短絡電流密度は高いものの、開放電圧が低い。これに対し、本発明のコアシェル粒子を用いたセル(SC−3)は比較例のセル(SC−1)に比べて短絡電流密度が高く、開放電圧の低下はわずかであるので、結果的に光電変換効率が高い。
【0112】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の多重構造酸化チタン微粒子を用いることにより、変換効率に優れた色素増感光電変換素子が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図2】本発明の好ましい別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図3】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図4】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図5】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図6】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図7】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図8】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図9】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図10】実施例2で作製した光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
10・・・導電層
10a・・・透明導電層
11・・・金属リード
20・・・感光層
21・・・半導体微粒子
22・・・色素
23・・・電荷輸送材料
30・・・電荷輸送層
40・・・対極導電層
40a・・・透明対極導電層
50・・・基板
50a・・・透明基板
60・・・下塗り層
1・・・導電性ガラス
2・・・ガラス
3・・・導電層
4・・・色素吸着二酸化チタン層
5・・・電荷輸送層
6・・・白金層
7・・・ガラス

Claims (4)

  1. 少なくとも中心部であるコアと外殻部であるシェルとを有する多重構造酸化チタン微粒子であって、前記コアと前記シェルの少なくとも一方はドーパントを含有し、もって前記コアと前記シェルは異なる組成を有することを特徴とする多重構造酸化チタン微粒子。
  2. ゾルーゲル法による多重構造酸化チタン微粒子の作製方法であって、ゾルから酸化チタン微粒子となる過程で最初に前記コアを成長させ、次いで前記シェルを成長させることを特徴とする酸化チタン微粒子の作製方法。
  3. 請求項1に記載の酸化チタン微粒子を含むことを特徴とする色素増感光電変換素子。
  4. 請求項3に記載の色素増感光電変換素子を用いることを特徴とする光電池。
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