JP5162904B2 - 光電変換素子及び色素増感型太陽電池 - Google Patents

光電変換素子及び色素増感型太陽電池 Download PDF

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Description

本発明は、機能性材料を吸着させたチタン酸塩金属化合物からなる半導体層を設けた光電変換素子及び色素増感型太陽電池に関する。
光電変換材料とは、電極間の電気化学反応を利用して光エネルギーを電気エネルギーに変換する材料である。光電変換材料に光を照射すると、一方の電極側で電子が発生し、対電極に移動する。対電極に移動した電子は、電解質中をイオンとして移動して一方の電極に戻る。
すなわち、光電変換材料は光エネルギーを電気エネルギーとして連続して取り出せる材料であり、例えば、太陽電池等に利用されている。太陽電池にはいくつかの種類があり、化石燃料に代わるエネルギー源として太陽光を利用する種々の太陽電池が開発されている。これまで最も広く用いられている太陽電池はシリコンを用いたものであり、多数市販されている。住居設置用発電パネル、卓上計算機、時計、携帯用ゲーム機等に実用化されているものの大部分はシリコン系太陽電池である。シリコン系太陽電池は、単結晶または多結晶のシリコンを用いた結晶シリコン太陽電池と、非結晶(アモルファス)シリコン太陽電池に大別される。結晶シリコン太陽電池は、光エネルギーを電気エネルギーに変換する性能を表す光電変換効率がアモルファス太陽電池に比べて高いものの、結晶成長に多くのエネルギーと時間を要するため生産性が低く、コスト面でも不利であった。また、アモルファス太陽電池は基板の選択範囲が広く、大面積化が容易である等の特徴を有するが、光電変換効率は結晶シリコン系太陽電池より低い。さらに、生産性はシリコン系太陽電池に比べて高いが、製造に真空プロセスを要し、エネルギー負担が未だ大きい。
一方、上記のような問題を解決する手段として有機材料を用いた太陽電池が検討されており、最近になって色素増感型太陽電池が注目され、実用化を目指して研究されている。色素増感型太陽電池は古くから研究されており、その基本構造は、具体的には金属酸化物半導体及びそこに吸着した増感色素、電解質溶液及び対向電極を構成として有するものである。
上記のような色素増感型太陽電池においては、光電変換材料は、半導体表面に可視光領域に吸収を持つ分光増感色素を吸着させたものが用いられている。例えば、金属酸化物半導体の表面に、遷移金属錯体等の分光増感色素層を有する太陽電池を記載しているもの(例えば、特許文献1参照)、また、金属イオンでドープした酸化チタン半導体層の表面に、遷移金属錯体等の分光増感色素層を有する太陽電池を記載しているもの(例えば、特許文献2参照)等が挙げられる。
光電変換能力を有する金属酸化物半導体電極としては、多孔質を有する高比表面積半導体電極のさまざまな検討がなされ、例えば、坪村らによって有機色素を吸着した多孔質酸化亜鉛電極が非常に性能が高いことが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
一方、増感色素も改良の試みがなされ、Graetzelらはルテニウム錯体系色素を多孔質酸化チタン電極に吸着させることを提案し(例えば、非特許文献2参照)、現在、シリコン系太陽電池並みの性能を有するまでになっている。
色素増感型湿式太陽電池はシリコン系太陽電池に比べ製造コストが非常に安いため、将来的に現在のシリコン系太陽電池を使っている各種製品、例えば、電卓や太陽発電パネル、時計、ゲーム機等にとって代わる可能性がある。そのとき、これらの製品の使い方に応じた太陽電池の特性が重要になる。太陽電池の特性には各種あり、(1)短絡電流、(2)開放電圧、(3)形状因子、(4)エネルギー変換効率、(5)光吸収スペクトル等が特に重要である。
太陽電池は生活のいたるところで使われるようになってきており、その使用法としては大きく2通りに分けられる。その一つは、多くの太陽電池パネルを屋根や広場に設置し、発生した電力を蓄電池に蓄えたり、使いやすい電流・電圧に変換して利用するエネルギーに使用する方法である。もう一つは、太陽電池電卓のように光が当たっているときだけ発生した電気を利用する使用方法である。前者の場合、電流と電圧どちらも大きくて最終的に取り出せる電力エネルギーが、いかに大きいかが太陽電池に要求される最も重要な性能となる。一方、後者の場合、電流と電圧がある一定のしきい値を越えることが重要になる。電流を大きくしたい場合には電池の面積を大きくしたり、内部抵抗をできる限り小さくすることで変化させることができるものの、電圧は太陽電池の材料、特に半導体のフェルミ準位と電解質の酸化還元準位の差によってほぼ決まる。電圧を大きくするには太陽電池を何枚も直列につなげることも考えられるが、これは後者のような使い方をするときの大きなデメリットともなり得る。
開放電圧を向上させる手段として、酸化ニオブを半導体電極に用いるもの(例えば、特許文献3参照)や、酸化チタンのコアとシュウ酸カルシウムのシェルからなるコアシェル複合体電極を用いるもの(例えば、特許文献4参照)等が挙げられるが、未だ十分なものではなかった。
また、特許文献5には半導体微粒子の50℃以上350℃未満の加熱処理と紫外光照射による光電変換素子が提案され、半導体微粒子としてチタン酸アルカリ金属使用の提案がなされているものの、本発明をなんら示唆する記載はない。
特開平1−220380号公報 特表平5−504023号公報 特開平9−237641号公報 特開2003−298082号公報 特開2001−357896号公報 Nature,261(1976)p402 J.Am.Chem.Soc.,115(1993)p6382
本発明の目的は、高い開放電圧をもつ光電変換素子及びそれを用いた色素増感型太陽電池を提供することにある。
本発明の上記課題は、以下の構成により達成される。
1.機能性材料を吸着させた半導体層を有する基板と、電極層を有する基板とが対向するように配置してなり、前記半導体層と前記電極層との間に電解質を設けてなる光電変換素子において、前記半導体層が下記式1で表されるチタン酸塩金属化合物を含有し、透明導電性基板上に前記半導体層を設け、前記半導体層に酸処理を施した後、前記機能性材料を吸着させてなることを特徴とする光電変換素子。
式1 M2O・nTiO2
(式中、Mは1価の金属元素を表し、nは6または8を表す。)
2.前記チタン酸塩金属化合物がフラックス法で製造されることを特徴とする前記1に記載の光電変換素子。
3.前記式1で表されるチタン酸塩金属化合物のMがナトリウムであることを特徴とする前記1または2に記載の光電変換素子。
4.前記機能性材料が増感色素であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
5.前記1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えたことを特徴とする色素増感型太陽電池。
本発明により、高い開放電圧をもつ光電変換素子及びそれを用いた色素増感型太陽電池を提供することができた。
本発明者等は上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、前記式1で表されるチタン酸塩金属化合物と機能性材料を用いて増感した半導体層(以下、光電変換材料用半導体、半導体膜ともいう)により、本発明に記載の効果、すなわち、高い開放電圧を有する光電変換素子を得ることに成功した。
このような効果が発現されるのは、チタン酸塩金属化合物は、従来の酸化チタンに比べ、バンドギャップが広いことからフェルミ準位が高く、開放電圧が高くなると推定している。
以下、本発明をさらに詳しく説明する。
《チタン酸塩金属化合物》
本発明は、前記式1で表されるチタン酸塩金属化合物を用いることが特徴である。
式1において、Mは1価の金属元素を表し、カリウム、ナトリウム、セシウム、ルビジウム等を用いることができるが、ナトリウムが本発明の効果をより発現することからより好ましい。nは6または8を表す。
式1で表されるチタン酸塩金属化合物は、水熱法、固溶法、フラックス法等の各種の方法を用いて製造することができるが、単結晶性が極めて高く、電子伝達性が良好であることから、フラックス法で製造した結晶が本発明の効果をより好ましく発現することができる。
フラックス法による製造については、Bull.Chem.Soc.Jpn.,Vol.79,No.11,1725−1728(2006)記載の方法等により製造することができるが、概略以下の通りである。
(a)フラックスであるNaCl、溶質であるNa2CO3、アナターゼ型TiO2をプラチナ製るつぼに加え、乾式混合した後、蓋をする。
(b)上記るつぼを電気炉に入れ、フラックス及び溶質が溶解する温度まで加温し、該溶融温度で一定時間保持した後、一定の冷却速度で室温まで冷却させることで結晶を形成させる。
(c)温水で余剰のフラックスを溶解、除去し、形成された粒子を乾燥させてチタン酸金属化合物を得る。
なお、(b)における温度履歴は、例えば、昇温速度を45℃/hに設定してフラックス及び溶質の溶解温度となる1100℃まで昇温し、該溶解温度で10時間保持した後、5℃/hの冷却速度で室温まで冷却することで結晶を得ることができる。所望のサイズを得るために、上記のフラックスや溶質の配合比、温度履歴は適宜変化させることができる。
式1において、例えばMがナトリウム、nが6の場合には、上記の結晶形成の反応式は次のように表すことができる。
Na2CO3+6TiO2 → Na2Ti613+CO2
上記のようにして得られるチタン酸塩金属化合物は、平均粒子径が約0.5〜1μm、粒子の平均アスペクト比が10〜20の針状粒子である。そして、この六チタン酸ナトリウムの針状粒子については、上記製造工程に則り、さらに細かな製造条件の調整によって平均粒子径をある程度制御することが可能であり、繊維径が0.02〜1.0μm、繊維長が0.5〜20μm、アスペクト比が3〜25の針状結晶を得ることができる。
《光電変換材料用半導体の作製方法》
本発明に用いられる光電変換材料用半導体の作製方法について説明する。本発明に用いられる光電変換材料用半導体の一態様としては、導電性基板上に上記の光電変換材料用半導体を焼成により形成する方法が挙げられる。
本発明に用いられる光電変換材料用半導体を焼成により作製する場合には、上記のチタン酸塩金属化合物や増感色素を用いての該半導体の増感(吸着、多孔質への入り込み等)処理は、チタン酸塩金属化合物の焼成後に実施することが好ましい。焼成後、半導体に水が吸着する前に、素早く化合物の吸着処理を実施することが特に好ましい。
本発明に用いられる光電変換材料用半導体が粒子状の場合には、光電変換材料用半導体の分散物を導電性基板に塗布あるいは吹き付けて、半導体電極を作製するのがよい。また、本発明に用いられる光電変換材料用半導体が膜状であって、導電性基板上に保持されていない場合には、光電変換材料用半導体を導電性支持体上に貼合して半導体電極を作製することが好ましい。以下、本発明に用いられる光電変換材料用半導体の作製工程を具体的に述べる。
(半導体微粉末含有塗布液の調製)
まず、半導体の微粉末を含む塗布液を調製する。半導体微粉末を含む塗布液は、半導体微粉末を溶媒中に分散することによって調製することができる。溶媒中に分散された半導体微粉末は、その1次粒子状で分散するのが好ましい。溶媒としては、半導体微粉末を分散し得るものであればよく、特に制約されない。
前記溶媒としては、水、有機溶媒、水と有機溶媒との混合液が包含される。有機溶媒としては、メタノールやエタノール等のアルコール、メチルエチルケトン、アセトン、アセチルアセトン等のケトン、ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素等が用いられる。塗布液中には、必要に応じ、界面活性剤や粘度調節剤(ポリエチレングリコール等の多価アルコール等)を加えることができる。溶媒中の半導体微粉末濃度は、0.1〜70質量%が好ましく、さらに好ましくは0.1〜30質量%である。
(半導体微粉末含有塗布液の塗布と形成された半導体層の焼成処理)
上記のようにして得られた半導体微粉末含有塗布液を導電性基板上に塗布または吹きつけ、乾燥を行った後、空気中または不活性ガス中で焼成して、導電性基板上に半導体層(半導体膜)が形成される。
導電性基板上に塗布液を塗布、乾燥して得られる皮膜は、半導体微粒子の集合体からなるもので、その微粒子の粒径は使用した半導体微粉末の1次粒子径に対応するものである。
このようにして導電性基板上に形成された半導体微粒子集合体膜は、導電性基板との結合力や、微粒子相互の結合力が弱く、機械的強度の弱いものであることから、前記半導体微粒子集合体膜を焼成処理して機械的強度を高め、基板に強く固着した焼成物膜となるため好ましく行われる。
本発明においては、この焼成物膜はどのような構造を有していてもよいが、多孔質構造膜(空隙を有する、ポーラスな層ともいう)であることが好ましい。
ここで、本発明に係る半導体薄膜の空隙率は、0.1〜20体積%であることが好ましく、さらに好ましくは5〜20体積%である。なお、半導体膜の空隙率は、誘電体の厚み方向に貫通性のある空隙率を意味し、水銀ポロシメーター(島津ポアライザー9220型)等の市販の装置を用いて測定することができる。
多孔質構造を有する焼成物膜になった半導体層の膜厚は、少なくとも10nm以上が好ましく、より好ましくは100〜20000nm、さらに好ましくは100〜10000nmである。
焼成処理時、焼成物膜の実表面積を適切に調整し、上記の空隙率を有する焼成物膜を得る観点から、焼成温度は1000℃より低いことが好ましく、さらに好ましくは、200〜800℃の範囲であり、特に好ましくは300〜800℃の範囲である。
また、見かけ表面積に対する実表面積の比は、半導体微粒子の粒径及び比表面積や、焼成温度等によりコントロールすることができる。また、加熱処理後、半導体粒子の表面積を増大させたり、半導体粒子近傍の純度を高め、増感色素から半導体粒子への電子注入効率を高める目的で、例えば化学メッキや電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
(半導体膜の酸処理)
本発明の半導体膜に下記機能性化合物を付与する方法においては、導電性基板上に半導体膜を形成した後、酸処理を施してから機能性化合物を付与することが必要である。
酸処理に用いる酸性の水溶液が、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、炭酸、有機酸の水溶液から選ばれる少なくとも1つであることが望ましい。酸処理溶液の濃度は基板、半導体への損傷を与えない範囲に調整することが好ましく、例えば0.05〜0.1当量/L程度であれば問題なく使用することができる。このような酸処理をすることで、本発明のチタン酸塩金属化合物半導体膜を付与した導電性基板に悪影響を与えることなく、前記半導体電極に機能性化合物、特に増感色素をより好ましく吸着させることができる。
半導体膜の酸処理は、前記半導体を焼成した基板ごと酸性溶液を浸漬する、もしくは半導体膜に酸性溶液を塗布あるいは吹きつけた後に乾燥することによって行われる。その際には半導体層(半導体膜ともいう)を焼成により形成させた基板を、あらかじめ減圧処理したり加熱処理したりして膜中の気泡を除去し、酸性溶液が半導体膜内部深くに進入できるようにしておくことが好ましく、半導体膜が多孔質構造膜である場合には特に好ましい。
《機能性材料》
本発明においては、本発明に係わるチタン酸塩金属化合物からなる半導体層は、機能性材料を吸着していることが特徴であり、機能性材料としては感光性を付与するための増感色素や、増感色素が吸着された半導体層に光が当たることで、励起された電子が増感色素から半導体層、外部経路を通り、対極側から酸化還元能を有する電解質へと電子がスムーズに循環するように、半導体に注入された電子が光により励起されることで酸化状態にある増感色素への再結合を防止するための添加剤等が挙げられる。
機能性材料としては、増感色素が最も重要である。
(増感色素)
本発明に係る増感色素について説明する。
本発明において、前述した半導体(チタン酸塩金属化合物)の表面に吸着させる増感色素としては、種々の可視光領域及び/または赤外光領域に吸収を有し、半導体の伝導帯より高い最低空準位を有する増感色素が好ましく、公知のさまざまな増感色素を使用することができる。例えば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、シアニジン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、フタロシアニン系色素、ナフタロシアニン系色素、ローダミン系色素等が挙げられる。なお、金属錯体色素も好ましく使用され、その場合においては、Cu、Ni、Fe、Co、V、Sn、Si、Ti、Ge、Cr、Zn、Ru、Mg、Al、Pb、Mn、In、Mo、Y、Zr、Nb、Sb、La、W、Pt、Ta、Ir、Pd、Os、Ga、Tb、Eu、Rb、Bi、Se、As、Sc、Ag、Cd、Hf、Re、Au、Ac、Tc、Te、Rh等の種々の金属を用いることができる。
上記の中で、シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素、ローダニン色素等のモノメチン色素、ポリメチン色素は好ましい態様の1つであり、具体的には特開平11−35836号、同平11−67285号、同平11−86916号、同平11−97725号、同平11−158395号、同平11−163378号、同平11−214730号、同平11−214731号、同平11−238905号、特開2003−203684号、同2004−207224号、同2004−319202号、同2005−126586号等の公報、欧州特許第892,411号及び同第911,841号等の各明細書に記載の色素を挙げることができる。さらに金属錯体色素も好ましい態様の1つであり、金属フタロシアニン色素、金属ポルフィリン色素またはルテニウム錯体色素が好ましく、ルテニウム錯体色素が特に好ましい。ルテニウム錯体色素としては、例えば米国特許第4,927,721号、同第4,684,537号、同第5,084,365号、同第5,350,644号、同5,463,057号、同第5,525,440号、特開平7−249790号、特表平10−504512号、国際公開第98/50393号パンフレット、特開2000−26487号、同2001−223037号、同2001−226607号、特許第3430254号等の公報に記載の錯体色素を挙げることができる。
これらの増感色素は、吸光係数が大きくかつ繰り返しの酸化還元に対して安定であることが好ましい。また、上記増感色素は金属酸化物半導体上に化学的に吸着することが好ましく、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、アミド基、アミノ基、カルボニル基、ホスフィン基等の官能基を有することが好ましい。
また、光電変換の波長域をできるだけ広くし、かつ変換効率を上げるため、2種類以上の増感色素を併用または混合することもできる。この場合、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように、併用または混合する増感色素とその割合を選ぶことができる。
本発明において、半導体層に増感色素を吸着させる方法としては、特に限定されず、公知の方法が用いることができる。例えば、増感色素を有機溶剤に溶解して色素溶液を調製し、得られた色素溶液に透明導電膜上の半導体層を浸漬する方法、または得られた色素溶液を半導体層表面に塗布する方法等が挙げられる。前者においてはディップ法、ローラ法、エヤーナイフ法等が適用でき、後者においてはワイヤーバー法、アプリケーション法、スピン法、スプレー法、オフセット印刷法、スクリーン印刷法等が適用できる。なお、増感色素の吸着に先立って、半導体層の表面を予め減圧処理や加熱処理等処理を施し、表面を活性化し膜中の気泡を除去する工程を有してもよい。
半導体層への増感効果を好ましく得る観点から、半導体膜を増感色素の溶液に浸漬する時間は3〜48時間が好ましく、さらに好ましくは4〜24時間である。
また、浸漬にあたり色素溶液は、増感色素が分解しないかぎりにおいて、沸騰しない温度にまで加熱して用いてもよい。好ましい温度範囲は10〜50℃、とくに好ましくは15〜40℃であるが、前記のとおり溶媒が前記温度範囲で沸騰する場合はこの限りでない。
また、半導体膜を浸漬した色素溶液に超音波照射を行うこともできる。超音波照射は市販の装置を用いることができ、また、照射時間としては、好ましくは30分〜4時間であり、さらに好ましくは1〜3時間である。
色素溶液に用いる溶媒は、増感色素を溶解するものであればよく、従来公知の溶媒を用いることができる。また、溶媒は、常法に従って精製された溶媒、また溶媒の使用に先立って、必要に応じて蒸留及び/または乾燥を行い、より純度の高い溶媒であることが好ましく、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、1種またはそれ以上の疎水性溶媒、非プロトン性溶媒、疎水性かつ非プロトン性の溶媒またはそれらの混合物が挙げられる。ここで、疎水性溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、四塩化炭素等のハロゲン化脂肪族炭化水素;ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン化芳香族炭化水素;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸エチル等のエステル類等、並びにそれらの組合せた混合溶媒等が挙げられる。非プロトン性溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシエタン等のエーテル類;アセトニトリル、ジメチルアセトアミド、ヘキサメチルリン酸トリアミド等の窒素化合物類;二硫化炭素、ジメチルスルホキシド等の硫黄化合物類;ヘキサメチルホスホルアミド等のリン化合物類、並びにそれらの組み合せが挙げられる。好ましく用いられる溶媒はメタノール、エタノール、n−プロパノール、ブタノール等のアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、1,1,2−トリクロロエタン等のハロゲン化炭化水素溶媒であり、特に好ましくはメタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、テトラヒドロフラン、塩化メチレンである。
色素溶液中の増感色素の濃度は、使用する増感色素、溶媒の種類、色素吸着工程により適宜調整することができ、例えば、1×10-5モル/リットル以上、好ましくは5×10-5〜1×10-2モル/リットル程度が挙げられる。
なお、色素の吸着量が少ないと増感効果が不十分になり、逆に吸着量が多いと半導体に吸着していない色素が浮遊して、これが増感効果を減じ、光電変換効率の低下をもたらす原因となるので好ましくない。上記のことから、未吸着の増感色素を洗浄により速やかに除去するのが好ましい。洗浄溶剤としては、増感色素の溶解性が比較的低く、かつ比較的乾燥しやすい、アセトン等の溶剤が好ましい。また、洗浄は加熱状態で行うのが好ましい。また、洗浄により余分な増感色素を除去した後、増感色素の吸着状態をより安定にするために、半導体微粒子の表面を有機塩基性化合物で処理して、未反応増感色素の除去を促進させてもよい。有機塩基性化合物としては、ピリジン、キノリン等の誘導体が挙げられる。これら化合物が液体の場合にはそのまま用いてもよいが、固体の場合には溶剤、好ましくは色素溶液と同一の溶剤に溶解して用いてもよい。
増感色素を2種以上用いる場合は、混合する増感色素の比率は特に限定はなく、それぞれの増感色素より最適化し選択されるが、一般的に等モルずつの混合から、1つの増感色素につき10%モル程度以上使用するのが好ましい。増感色素を2種以上併用する場合の具体的方法としては、混合溶解して吸着させても、増感色素を半導体層に順次吸着させてもよい。併用する増感色素を混合し溶解した溶液を用いて酸化物半導体層に増感色素を吸着する場合、溶液中の増感色素合計の濃度は1種類のみ担持する場合と同様でよい。増感色素を混合して使用する場合の溶媒としては、前記したような溶媒が使用可能である。併用する増感色素それぞれについて溶液を調製し、半導体層に吸着させる場合も、溶媒としては前記したような溶媒が使用可能であり、使用する各増感色素用の溶媒は同一でも異なっていてもよい。各増感色素について別々の溶液を調製し、各溶液に順に浸漬して作製する場合は、半導体層に増感色素を吸着させる順序がどのようであっても本発明の効果を得ることができる。また、各増感色素を単独で吸着させた半導体微粒子を混合することで作製してもよい。
半導体微粒子の薄膜に増感色素を担持する際、増感色素同士の会合を防ぐために包摂化合物の共存下、増感色素を担持することが効果的である。ここで包摂化合物としてはコール酸等のステロイド系化合物、クラウンエーテル、シクロデキストリン、カリックスアレン、ポリエチレンオキサイド等が挙げられるが、好ましいものとしてはデオキシコール酸、デヒドロデオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、コール酸メチルエステル、コール酸ナトリウム等のコール酸類、ポリエチレンオキサイド等が挙げられる。また、増感色素を担持させた後、4−t−ブチルピリジン等のアミン化合物で半導体層表面を処理してもよい。処理の方法は例えばアミンのエタノール溶液に増感色素を担持した半導体微粒子薄膜の設けられた基板を浸す方法等が採られる。
《導電性基板》
本発明に用いられる導電性基板としては、当該導電性基板側を受光面とする場合には、導電性基板は実質的に透明であることが好ましい。実質的に透明であるとは、光の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上であることが好ましく、80%以上であることが特に好ましい。
導電性基板としてはそれ自体が導電性を有する基材、またはその表面に導電層を有する基材を利用することができる。後者の場合、基材としてはガラス板や、酸化チタンやアルミナ等のセラミックの研磨板、さらに公知の種々のプラスチックシートを使用することが可能であるが、コスト面や可撓性を考慮するとプラスチックシートを使用することが好ましい。プラスチックシートとしては具体的にはトリアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、シンジオタクチックポリステレン(SPS)、ポリカーボネート(PC),ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、環状ポリオレフィン、フェノキシ樹脂、ブロム化フェノキシ等を挙げることができる。
これらの基材上に設ける導電層に使用する導電性材料としては、公知の種々の金属や金属酸化物等からなる無機系導電性材料、ポリマー系導電性材料、無機有機複合型の導電性材料、またはこれらを任意に混合した導電性材料等、あらゆるものを使用することができる。
無機系導電性材料として具体的には、白金、金、銀、銅、亜鉛、チタン、アルミニウム、ロジウム、インジウム等の金属、導電性カーボン、さらにスズドープ酸化インジウム(ITO)、酸化スズ(SnO2)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、酸化亜鉛(ZnO2)等の金属酸化物を挙げることができる。ポリマー系導電性材料として具体的には、各種置換されていてもされていなくてもよく、チオフェン、ピロール、フラン、アニリン等を重合させてなる導電性ポリマーやポリアセチレン等を挙げることができるが、導電性が高い観点からポリチオフェンが好ましく、特にポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)が好ましい。
基材上に導電層を形成する方法としては、導電性材料に応じた公知の適切な方法を用いることが可能で、例えば、ITO等の金属酸化物からなる導電層を形成する場合、スパッタ法、CVD法、SPD法(スプレー熱分解堆積法)、蒸着法等の薄膜形成法が挙げられる。また、ポリマー系導電性材料からなる導電層を形成する場合は、公知のさまざまな塗布法により形成することが好ましい。
導電層の膜厚は0.01〜10μm程度が好ましく、0.05〜5μm程度がさらに好ましい。
導電性基板としては表面抵抗が低いほどよく、具体的には50Ω/cm2以下であることが好ましく、10Ω/cm2以下であることがさらに好ましい。
また、導電性基板の集電効率を向上しさらに導電性を上げるために、光透過率を著しく損なわない範囲の面積率で、金、銀、銅、白金、アルミニウム、ニッケル、インジウム、チタン、タングステン等からなる金属配線層を前記導電層と併用してもよい。金属配線層を用いる場合、格子状、縞状、櫛状等のパターンとして、光が導電性基板を均一に透過するように配設するとよい。金属配線層を併用する場合、基材に蒸着、スパッタリング等で設置し、その上に前記導電層を設けるのが好ましい。
《電荷移動層》
電荷移動層は、増感色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電荷輸送材料を含有する層である。本発明で用いることのできる代表的な電荷輸送材料の例としては、酸化還元対イオンが溶解した溶剤や酸化還元対イオンを含有する常温溶融塩等の電解液、酸化還元対イオンの溶液をポリマーマトリックスや低分子ゲル化剤等に含浸したゲル状の擬固体化電解質、さらには高分子固体電解質等が挙げられる。また、イオンが関わる電荷輸送材料の他に、固体中のキャリア移動が電気伝導に関わる材料として、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料を挙げることもでき、これらは併用してすることも可能である。
電荷移動層に電解液を使用する場合、含有する酸化還元対イオンとしては、一般に公知の太陽電池等において使用することができるものであれば特に限定されない。
具体的には、I-/I3 -系や、Br-/Br3 -系等の酸化還元対イオンを含有させたもの、フェロシアン酸塩/フェリシアン酸塩やフェロセン/フェリシニウムイオン、コバルト錯体等の金属錯体等の金属酸化還元系、アルキルチオール−アルキルジスルフィド、ビオロゲン色素、ハイドロキノン/キノン等の有機酸化還元系、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール/アルキルジスルフィド等のイオウ化合物等を挙げることができる。ヨウ素系としてさらに具体的には、ヨウ素とLiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物との組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物や4級イミダゾリウム化合物のヨウ素塩等との組み合わせ等が挙げられる。臭素系としてさらに具体的には、臭素とLiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物との組み合わせ、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等4級アンモニウム化合物の臭素塩等との組み合わせ等が挙げられる。
溶剤としては電気化学的に不活性で、粘度が低くイオン易動度を向上したり、もしくは誘電率が高く有効キャリア濃度を向上したりして、優れたイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。具体的にはジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、3−メチル−2−オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、プロピオニトリル、メトキシプロピオニトリル、メトキシアセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、さらにテトラヒドロフラン、ジメチルスルフォキシド、スルフォラン等非プロトン極性物質を用いることができる。
好ましい電解質濃度は0.1〜15Mであり、さらに好ましくは0.2〜10Mである。また、ヨウ素系を使用する場合の好ましいヨウ素の添加濃度は0.01〜0.5Mである。
溶融塩電解質は、光電変換効率と耐久性の両立という観点から好ましい。溶融塩電解質としては、例えば国際公開第95/18456号、特開平8−259543号、特開2001−357896号、電気化学,第65巻,11号,923頁(1997年)等に記載されているピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等の既知のヨウ素塩を含む電解質を挙げることができる。これらの溶融塩電解質は常温で溶融状態であるものが好ましく、溶媒を用いない方が好ましい。
オリゴマー及びポリマー等のマトリックスに電解質あるいは電解質溶液を含有させたものや、ポリマー添加、低分子ゲル化剤やオイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法によりゲル化(擬固体化)させて使用することもできる。ポリマー添加によりゲル化させる場合は、特にポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデンを好ましく使用することができる。オイルゲル化剤添加によりゲル化させる場合は、好ましい化合物は分子構造中にアミド構造を有する化合物である。また、ポリマーの架橋反応により電解質をゲル化させる場合、架橋可能な反応性基を含有するポリマー及び架橋剤を併用することが望ましい。この場合、好ましい架橋可能な反応性基は、含窒素複素環(例えば、ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等)であり、好ましい架橋剤は、窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬(例えば、ハロゲン化アルキル、ハロゲン化アラルキル、スルホン酸エステル、酸無水物、酸クロライド、イソシアネート等)である。電解質の濃度は通常0.01〜99質量%で好ましくは0.1〜90質量%程度である。
また、ゲル状電解質としては、電解質と、金属酸化物粒子及び/または導電性粒子とを含む電解質組成物を用いることもできる。金属酸化物粒子としては、TiO2、SnO2、WO3、ZnO、ITO、BaTiO3、Nb25、In23、ZrO2、Ta25、La23、SrTiO3、Y23、Ho23、Bi23、CeO2、Al23からなる群から選択される1種または2種以上の混合物が挙げられる。これらは不純物がドープされたものや複合酸化物等であってもよい。導電性粒子としては、カーボンを主体とする物質からなるものが挙げられる。
次に、高分子電解質としては、酸化還元種を溶解あるいは酸化還元種を構成する少なくとも1つの物質と結合することができる固体状の物質であり、例えば、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリエチレンサクシネート、ポリ−β−プロピオラクトン、ポリエチレンイミン、ポリアルキレンスルフィド等の高分子化合物またはそれらの架橋体、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアルキレンオキサイド等の高分子官能基に、ポリエーテルセグメントまたはオリゴアルキレンオキサイド構造を側鎖として付加したものまたはそれらの共重合体等が挙げられ、その中でも特にオリゴアルキレンオキサイド構造を側鎖として有するものやポリエーテルセグメントを側鎖として有するものが好ましい。
前記の固体中に酸化還元種を含有させるには、例えば、高分子化合物となるモノマーと酸化還元種との共存下で重合する方法、高分子化合物等の固体を必要に応じて溶媒に溶解し、次いで、前記の酸化還元種を加える方法等を用いることができる。酸化還元種の含有量は、必要とするイオン伝導性能に応じて、適宜選定することができる。
本発明では、溶融塩等のイオン伝導性電解質の代わりに、有機または無機あるいはこの両者を組み合わせた固体の正孔輸送材料を使用することができる。有機正孔輸送材料としては、芳香族アミン類やトリフェニレン誘導体類、さらにポリアセチレン及びその誘導体、ポリ(p−フェニレン)及びその誘導体、ポリ(p−フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリトルイジン及びその誘導体等の導電性高分子を好ましく用いることができる。正孔(ホール)輸送材料にはドーパントレベルをコントロールするためにトリス(4−ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカルを含有する化合物を添加したり、酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)を行うためにLi[(CF3SO22N]のような塩を添加しても構わない。無機正孔輸送材料としては、p型無機化合物半導体を用いることができる。この目的のp型無機化合物半導体は、バンドギャップが2eV以上であることが好ましく、さらに2.5eV以上であることが好ましい。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは増感色素の正孔を還元できる条件から、増感色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する増感色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なってくるが、一般に4.5〜5.5eVであることが好ましく、さらに4.7〜5.3eVであることが好ましい。好ましいp型無機化合物半導体は一価の銅を含む化合物半導体であり、CuI及びCuSCNが好ましく、CuIが最も好ましい。p型無機化合物半導体を含有する電荷移動層の好ましいホール移動度は10-4〜104cm2/V・secであり、さらに好ましくは10-3〜103cm2/V・secである。また、電荷輸送層の好ましい導電率は10-8〜102S/cmであり、さらに好ましくは10-6〜10S/cmである。
本発明において、電荷移動層を半導体電極と対向電極との間に形成する方法としては、特に限定されるものではないが、例えば、半導体電極と対向電極とを対向配置してから両電極間に前述した電解液や各種電解質を充填して電荷移動層とする方法、半導体電極または対向電極の上に電解質や各種電解質を滴下あるいは塗布等することにより電荷移動層を形成したのち電荷移動層の上に他方の電極を重ね合わせる方法等を用いることができる。また、半導体電極と対向電極との間から電解質が漏れ出さないようにするため、必要に応じて半導体電極と対向電極との隙間にフィルムを用いて封止したり、半導体電極と電荷移動層と対向電極を適当なケースに収納したりすることも好ましい。
前者の形成方法の場合、電荷移動層の充填方法として、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセス、または常圧より低い圧力にして間隙の気相を液相に置換する真空プロセスを利用できる。
後者の形成方法の場合、塗布方法としてはマイクログラビアコーティング、ディップコーティング、スクリーンコーティング、スピンコーティング等を用いることができる。湿式の電荷移動層においては未乾燥のまま対極を付与し、エッジ部の液漏洩防止措置を施すことになる。またゲル電解質の場合には湿式で塗布して重合等の方法により固体化する方法があり、その場合には乾燥、固定化した後に対極を付与することもできる。
固体電解質や固体の正孔(ホール)輸送材料の場合には真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理で電荷移動層を形成し、その後対向電極を付与することもできる。具体的には、真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等の手法により電極内部に導入することができ、必要に応じて基材を任意の温度に加熱して溶媒を蒸発させる等により形成する。
電荷移動層の厚さは10μm以下、より好ましくは5μm以下、さらに1μm以下であることが好ましい。また電荷移動層の導電率は1×10-10S/cm以上であることが好ましく、1×10-5S/cm以上であることがさらに好ましい。
《対向電極》
本発明で使用できる対向電極は、前述した導電性基板と同様に、それ自体が導電性を有する基材の単層構造、またはその表面に対極導電層を有する基材を利用することができる。後者の場合、対極導電層に用いる導電性材料、基材、さらにその製造方法としては、前述した導電性基板の場合と同様で、公知の種々の材料及び方法を適用することができる。その中でも、I3 -イオン等の酸化や他のレドックスイオンの還元反応を充分な速さで行わせる触媒能を持ったものを使用することが好ましく、具体的には白金電極、導電材料表面に白金メッキや白金蒸着を施したもの、ロジウム金属、ルテニウム金属、酸化ルテニウム、カーボン等が挙げられる。また、前述と同様にコスト面や可撓性を考慮すると、プラスチックシートを基材として使用し、導電性材料としてポリマー系材料を塗布して使用することも好ましい態様の1つである。
対極導電層の厚さは特に制限されないが、3nm〜10μmが好ましい。対極導電層が金属である場合は、その厚さは好ましくは5μm以下であり、さらに好ましくは10nm〜3μmの範囲である。対向電極の表面抵抗は低い程よく、具体的には表面抵抗の範囲としては50Ω/□以下であることが好ましく、20Ω/□以下であることがより好ましく、10Ω/□以下であることがさらに好ましい。
前述した導電性基板と対向電極のいずれか一方または両方から光を受光してよいので、導電性基板と対向電極の少なくとも一方が実質的に透明であればよい。発電効率の向上の観点からは、導電性基板を透明にして、光を導電性基板側から入射させるのが好ましい。この場合対向電極は光を反射する性質を有するのが好ましい。このような対向電極としては、金属または導電性の酸化物を蒸着したガラスまたはプラスチック、あるいは金属薄膜を使用できる。
対向電極は、前述した電荷移動層上に直接導電性材料を塗布、メッキまたは蒸着(PVD、CVD)するか、対極導電層を有する基材の導電層側または導電性基板単層を貼り付ければよい。また、導電性基板の場合と同様に、特に対向電極が透明の場合には、金属配線層を併用することも好ましい態様の1つである。
対極としては導電性を持っており、レドックス電解質の還元反応を触媒的に作用するものが好ましい。例えばガラス、もしくは高分子フィルムに白金、カーボン、ロジウム、ルテニウム等を蒸着したり、導電性微粒子を塗り付けたものが用いうる。
《色素増感型太陽電池》
本発明の色素増感型太陽電池について説明する。本発明の色素増感型太陽電池(以下、単に太陽電池ともいう)は、図1に示すような、本発明の光電変換素子の一態様として、太陽光に最適の設計並びに回路設計が行われ、太陽光を光源として用いたときに最適な光電変換が行われるような構造を有する。即ち、光電変換材料用半導体に太陽光が照射されうる構造となっている。本発明の太陽電池を構成する際には、前記半導体電極、電荷移動層及び対向電極をケース内に収納して封止するか、あるいはそれら全体を樹脂封止することが好ましい。
本発明の太陽電池に太陽光または太陽光と同等の電磁波を照射すると、金属酸化物半導体2に吸着された本発明に係る化合物(増感色素3)は、照射された光もしくは電磁波を吸収して励起する。励起によって発生した電子は金属酸化物半導体2に移動し、次いで導電性基板1を経由して対向電極5に移動して、電荷移動層4のレドックス電解質を還元する。一方、金属酸化物半導体2に電子を移動させた本発明に係る化合物(増感色素3)は酸化体となっているが、対向電極5から電荷移動層4のレドックス電解質を経由して電子が供給されることにより、還元されて元の状態に戻り、同時に電荷移動層4のレドックス電解質は酸化されて、再び対向電極5から供給される電子により還元されうる状態に戻る。このようにして電子が流れ、本発明の光電変換素子を用いた太陽電池を構成することができる。
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらに限定されない。
実施例
《太陽電池SC101の作製》
下記に記載のようにして、図1に示すような太陽電池SC101を作製した。
(チタン酸塩金属化合物の作製)
フラックスとなるNaCl 11.4g、溶質となるNa2CO3 47.25g、アナターゼ型TiO2 31.35gを100ml容量のプラチナ製るつぼに秤量し、乾式混合して蓋をした。
上記るつぼを電気炉に入れ、昇温速度45℃/hで1100℃になるまで加温した後、1100℃で10時間保持した。次いで、冷却速度5℃/hで室温になるまで冷却した。
室温まで冷却した後、温水で余剰のフラックスを溶解し、除去し、得られた粒子を乾燥してチタン酸金属化合物であるNa2Ti613を得た。上記と同様な作製方法でチタン酸金属化合物を3バッチ作製し、得られた結晶を混合した。
得られた結晶のX線回折結果では、Na2Ti613の(010)、(100)、(001)、(201)に相当すると考えられるピークが認められた。
得られたチタン酸ナトリウムは、平均繊維径が0.05μm、平均繊維長が7μm、アスペクト比が14の針状結晶が得られた。
(チタン酸塩金属化合物のペーストの調製)
純水125ml、メノウ乳鉢でよくすりつぶした上記チタン酸ナトリウム粉末140g、20質量%PEG水溶液435mlを混合後、ミル分散機で分散し、チタン酸ナトリウムのペーストを作製した。
(太陽電池SC101の作製)
フッ素をドープした酸化スズをコートした透明導電性ガラス板(導電性基板1)上に、作製した酸化チタン懸濁液を塗布し、自然乾燥の後、500℃で60分間焼成して、基板上に膜状の酸化チタンを形成した。
ついで、メタノール溶液200ml中に、下記増感色素1を5g溶解した溶液を調製し、上記膜状酸化チタン(光電変換材料用半導体層)を基板ごと浸し、さらにトリフルオロ酢酸1gを加えて2時間超音波照射した。反応後膜状酸化チタン(光電変換材料用半導体層)をクロロホルムで洗浄し真空乾燥して、感光層(金属酸化物半導体2)を作製した。
対向電極5として、フッ素をドープした酸化スズをコートし、さらにその上に白金を担持した透明導電性ガラス板を用い、前記導電性基板1と前記対向電極5との間に体積比が1:4であるアセトニトリル/炭酸エチレンの混合溶媒に、テトラプロピルアンモニウムアイオダイドと沃素とを、それぞれの濃度が0.46モル/リットル、0.06モル/リットルとなるように溶解したレドックス電解質を入れた電荷移動層4を作製して、光電変換素子を作製した。
光電変換素子の側面をそれぞれ樹脂で封入した後、リード線を取り付けて、本発明の太陽電池SC101を作製した。
《太陽電池SC102の作製》
上記太陽電池SC101の作製と同様にして、フッ素をドープした酸化スズをコートした透明導電性ガラス板上に該チタン酸ナトリウム懸濁液を塗布し、自然乾燥の後、500℃で60分間焼成して、基板上に半導体膜を形成した。
次に、0.1mol/Lの塩酸水溶液に半導体膜を基板ごと40℃で3時間浸漬した後、該基板を乾燥して酸処理を行った。
ついで、メタノール溶液200ml中に、増感色素1を5g溶解した溶液を調製し、上記膜状酸化チタン(光電変換材料用半導体層)を基板ごと浸し、さらにトリフルオロ酢酸1gを加えて2時間超音波照射した。反応後膜状酸化チタン(光電変換材料用半導体層)をクロロホルムで洗浄し真空乾燥して、感光層(金属酸化物半導体)を作製した。
上記の増感色素を吸着させた光電変換素子を用いて、太陽電池SC101と同様にして太陽電池SC102を作製した。
《太陽電池SC103、SC104の作製》
太陽電池SC101の作製において、表1に示すように半導体膜の種類、厚さ、増感色素を変更した以外は同様にして、太陽電池SC103、SC104を作製した。
《太陽電池SC105、SC106の作製》
太陽電池SC102の作製において、表1に示すように半導体膜の種類、厚さ、増感色素を変更した以外は同様にして、太陽電池SC105、SC106を作製した。
Figure 0005162904
《太陽電池の評価》
作製した太陽電池SC101〜SC106にソーラーシミュレーター(JASCO(日本分光)製、低エネルギー分光感度測定装置CEP−25)により100mW/cm2の強度の光を照射した時の短絡電流密度Jsc(mA/cm2)、開放電圧Voc(V)及び形状因子(F.F.)を求め、これらから光電変換効率η(%)を求めた。
変換効率η(%)は下記式に基づいて算出した。
η=100×(Voc×Jsc×F.F.)/P
ここで、Pは入射光強度(mW/cm2)、Vocは開放電圧(V)、Jscは短絡電流密度(mA/cm2)、F.F.は形状因子を表す。
評価の結果を表1に示す。なお、表1に示した値は、同じ構成及び作製方法の太陽電池を3個作製して評価した結果の平均値である。
Figure 0005162904
表1から明らかなように、本発明の酸処理を施したチタン酸塩金属化合物に機能性化合物である増感色素を吸着させた光電変換素子を用いた場合、開放電圧が高く、高い変換効率が得られることが分かる。
本発明の色素増感型太陽電池の基本構造を示す概略断面図である。
符号の説明
1 導電性基板
2 金属酸化物半導体
3 増感色素
4 電荷移動層
5 対向電極

Claims (4)

  1. 増感色素を吸着させた半導体層を有する基板と、電極層を有する基板とが対向するように配置してなり、前記半導体層と前記電極層との間に電解質を設けてなる光電変換素子において、前記半導体層が下記式1で表されるチタン酸塩金属化合物を含有し、透明導電性基板上に前記半導体層を設け、前記半導体層に酸処理を施した後、前記増感色素を吸着させてなることを特徴とする光電変換素子。
    式1 MO・nTiO
    (式中、Mはカリウム、ナトリウム、セシウム、またはルビジウムを表し、nは6または8を表す。)
  2. 前記チタン酸塩金属化合物がフラックス法で製造されることを特徴とする請求項1に記載の光電変換素子。
  3. 前記式1で表されるチタン酸塩金属化合物のMがナトリウムであることを特徴とする請求項1または2に記載の光電変換素子。
  4. 請求項1〜のいずれか1項に記載の光電変換素子を備えたことを特徴とする色素増感型太陽電池。
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