JP2004161589A - 酸化チタンゾル及び酸化チタン微粒子の製造方法、並びに光電変換素子 - Google Patents

酸化チタンゾル及び酸化チタン微粒子の製造方法、並びに光電変換素子 Download PDF

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Abstract

【課題】光電変換素子に好適な酸化チタンゾルの製造方法、及び光電変換効率の優れた色素増感光電変換素子を提供する。
【解決手段】本発明の酸化チタンゾルの製造方法は、オルトチタン酸エステルの加水分解工程と、前記加水分解工程により生成した加水分解物の酸接触脱水工程を有する酸化チタンゾルの製造方法であって、前記酸接触脱水工程の前に反応液中に含まれるアルコールを除去する工程を有する。
【選択図】 なし

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は酸化チタンゾル及び酸化チタン微粒子の製造方法、並びに光電変換素子に関し、詳しくは色素増感された酸化チタン微粒子を含む光電変換素子に好適な酸化チタンゾル及び酸化チタン微粒子の製造方法、並びにそれにより得られた酸化チタン微粒子を含有する光電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
光電変換素子は各種の光センサー、複写機、光発電装置等に用いられている。光電変換素子には金属を用いたもの、半導体を用いたもの、有機顔料や色素を用いたもの、これらを組み合わせたもの等の様々な方式が実用化されている。
【0003】
例えば、色素によって増感された半導体微粒子を用いた光電変換素子(以下「色素増感光電変換素子」という。)、並びにこれを作製するための材料及び製造技術が開示されている(例えば、特許文献1〜9及び非特許文献1〜3参照。)。色素増感光電変換素子の利点は酸化チタン微粒子を用いることができるため、安価な光電変換素子を提供できる点にある。
【0004】
微粒子酸化チタンの作製には通常ゾル−ゲル法が用いられる。ゾル−ゲル法は当該分野において広く知られた微粒子合成法であり、酸化チタン前駆体の加水分解工程、酸化チタンゾル生成工程(脱水工程)、粒子成長工程、及び後処理工程からなることが知られている(例えば、非特許文献4参照。)。また、ゾル−ゲル法で作製された酸化チタン微粒子を色素増感光電変換素子に応用した例が報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
酸化チタンの結晶型にはアナターゼ、ルチル等があり、色素増感光電変換素子にはアナターゼが好ましいことが知られている。しかしながら酸化チタンゾル生成工程(ペプタイゼーション工程)において脱水触媒である酸の濃度が高いと、次の粒子成長工程でルチルが生成し易く、酸の濃度が低いと脱水に長時間の加熱を要する上、分散性の良好な酸化チタンゾルを得にくい。すなわち、酸の濃度に関して結晶型の制御と製造適性が両立しない関係にある。このため、酸化チタンゾル製造に関する上記の問題点を解消し、変換効率の高い光電変換素子の製造方法が望まれている。
【0006】
【特許文献1】
米国特許第4927721号明細書
【特許文献2】
米国特許第4684537号明細書
【特許文献3】
米国特許第5084365号明細書
【特許文献4】
米国特許第5350644号明細書
【特許文献5】
米国特許第5463057号明細書
【特許文献6】
米国特許第5525440号明細書
【特許文献7】
国際公開第98/50393号パンフレット
【特許文献8】
特開平7-249790号公報
【特許文献9】
特表平10-504521号公報
【非特許文献1】
「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・セラミック・ソサイエティ(Journal of the American Ceramic Society)」, 1997年, 第80巻, p.3157-3171
【非特許文献2】
「アカウンツ・オブ・ケミカル・リサーチ(Accounts of Chemical Research)」, 2000年, 第33巻, p.269-277
【非特許文献3】
「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of the American Chemical Society)」, 1993年, 第115巻, p.6832
【非特許文献4】
バーンサイド(S.D.Burnside)等著, 「ケミストリー・オブ・マテリアルズ(Chemistry of Materials)」, 1998年, 第10巻, 第9号, p.2419-2425
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、分散安定性に優れた酸化チタンゾル及びそれを用いた酸化チタン微粒子の効率のよい製造方法、並びに変換効率に優れた色素増感光電変換素子及び光電池を提供することである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、下記の(1)〜(10)の手段により分散安定性に優れた酸化チタン微粒子、及び変換効率の優れた光電変換素子が効率良く得られることを発見し、本発明に想到した。
(1) オルトチタン酸エステルの加水分解工程と、前記加水分解工程により生成した加水分解物の酸接触脱水工程を有する酸化チタンゾルの製造方法であって、前記酸接触脱水工程の前に反応液中に含まれるアルコールを除去する工程を有することを特徴とする酸化チタンゾルの製造方法。
(2) 前記酸接触脱水工程における加熱温度が70℃以下であることを特徴とする(1)に記載の酸化チタンゾルの製造方法。
(3) 前記酸接触脱水工程の酸触媒として0.005〜0.09モル/リットルの強酸を用いることを特徴とする(1)又は(2)に記載の酸化チタンゾルの製造方法。
(4) 前記脱水触媒の強酸の濃度が0.05モル/リットル以下であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の酸化チタンゾルの製造方法。
(5) 前記酸接触脱水工程時に添加剤として0.1〜1モル/リットルの水溶性カルボン酸を加えることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の酸化チタンゾルの製造方法。
(6) (1)〜(5)のいずれかに記載の方法により作製された酸化チタンゾルを加圧しながら加熱することを特徴とする酸化チタン微粒子の製造方法。
(7) 加圧時の加熱温度が220〜240℃であることを特徴とする(6)に記載の酸化チタン微粒子の製造方法。
(8) 加圧時の加熱時間が15〜30時間であることを特徴とする(6)又は(7)に記載の酸化チタン微粒子の製造方法。
(9) (6)〜(8)のいずれかに記載の方法により作製された酸化チタン微粒子を含有することを特徴とする色素増感光電変換素子。
(10) (9)に記載の色素増感光電変換素子を用いた光電池。
【0009】
【発明の実施の形態】
[1] 酸化チタンゾル及び酸化チタン微粒子の製造法
本発明の酸化チタンゾル及び酸化チタン微粒子の製造方法は、基本的にゾル−ゲル法に従い、オルトチタン酸エステルの加水分解工程、脱水工程、粒子成長工程及び後処理工程を有する。本発明は加水分解工程により生成したアルコールを除去し、しかる後に脱水工程へ移行することを特徴とする。以下酸化チタンゾル及び酸化チタン微粒子の製造方法の各工程を説明する。
【0010】
(A) 加水分解工程
オルトチタン酸エステル(例えばオルトチタン酸メチル、オルトチタン酸エチル、オルトチタン酸イソプロピル、オルトチタン酸ブチル等)の加水分解は、十分に過剰な水中に上記エステルを添加する方法を用いることができる。予め水中に脱水反応の触媒(酸)を添加しておいても良い。添加の方法は一気に混合しても滴下法を用いても良い。添加の後、通常10分〜3時間撹拌する。撹拌の際の温度は特に制限されないが通常10〜40℃である。この工程により水酸化チタンを主成分とする固形分、水及びアルコールを含む懸濁液が得られる。
【0011】
加水分解工程において生成するアルコールはオルトチタン酸エステルに由来する。すなわちオルトチタン酸メチルからメタノールが、オルトチタン酸エチルからエタノールが、オルトチタン酸イソプロピルから2-プロパノールが生成する。またオルトチタン酸ブチルからはブタノールが生成し、2層に分離する。懸濁液からアルコールを除去する方法としては蒸留法、ろ過法、デカンテーション法等を用いることができるが、デカンテーション法が最も簡単である。
【0012】
以下にデカンテーション法の一例を示す。加水分解工程により得られた懸濁液を静置又は遠心分離し、上澄み液をデカンテーションにより除去する。残った沈殿に除去した上澄み液と等質量の水又は上記触媒を溶解した水溶液を加え、良く撹拌した後次工程に移行する。あるいは再び静置又は遠心分離、デカンテーション、及び水(又は触媒含有水溶液)の添加を繰り返した後次工程に移行しても良い。デカンテーション及び水溶液添加を何回繰り返すかはアルコールをどれだけ厳密に除去するかで決まり特に制限はない。
【0013】
(B) 酸接触脱水工程
加水分解工程により得られた懸濁液を酸触媒の存在下で加熱することにより酸化チタンゾルを生成する。酸の種類に限定はないが、弱酸よりも強酸の方が好ましい。ここで強酸とは0.1モル/リットル水溶液中における解離度が50%以上の酸を指す。触媒の具体例としては塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、メタンスルホン酸等が挙げられる。これらのうち硝酸が好ましい。これらの酸触媒はこの工程で添加しても良いし、加水分解工程の際に予め添加しておいても良い。酸触媒は1種又は2種以上の混合でもよいが、酸触媒のうち少なくとも1種は強酸であるのが好ましい。
【0014】
酸触媒を用いる場合、前述のようにルチルの生成と製造適性の両立が問題となる。強酸触媒の濃度は0.002〜0.1モル/リットルが好ましく、0.005〜0.09モル/リットルがより好ましく、0.01〜0.05モル/リットルが特に好ましい。加熱温度は通常30〜100℃であり、50〜80℃が好ましく、40〜70℃が特に好ましい。加熱時間は特に制限がなく、水酸化チタンを主成分とする懸濁液が酸化チタンを主成分とする半透明のゾルになるまで加熱を続ける。典型的な加熱時間は1〜24時間である。一般には強酸触媒の量が多いときほど加熱温度は低く、加熱時間は短くてよい。前述のように予めアルコールを除去した場合には、さらに加熱温度が低く加熱時間が短い条件でゾル生成を行うことができる。例えば硝酸触媒の濃度が0.09モル/リットルのとき、アルコールを除去しない場合は70℃で5時間の加熱を要するが、アルコールを除去した場合は70℃で2時間の加熱でゾル生成が完了する。またアルコールを除去した場合は70℃で1時間撹拌した後、室温に放置しておくだけでもゾル生成が完了する。この工程により得られるゾル状の酸化チタンは分散安定性に優れ、X線回折法(XRD法)で求められる結晶子サイズは通常4〜5nmの超微粒子である。
【0015】
酸接触脱水工程においては、ブルッカイトの生成が抑制されるような添加剤を加えることが好ましい。添加剤としては、300℃まで分解しないこと、強酸と反応しないこと、及び焼成後膜に残らない化合物であることが求められる。このような添加剤としては、水溶性のカルボン酸類(例えば、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、2-メトキシ酢酸等)が好ましく、水溶性のカルボン酸類の中では酢酸が最も好ましい。水溶性のカルボン酸類の添加量としては、脱水工程における反応液中濃度が0.01〜2モル/リットルが好ましく、0.1〜1モル/リットルがより好ましい。
【0016】
(C) 粒子成長工程
上記工程で得られた酸化チタンゾルを圧力容器に移し、加熱することにより酸化チタン微粒子の結晶子サイズを6〜30 nmに成長させる。圧力容器の例としてはステンレス製オートクレーブ、チタン製オートクレーブ、内のりがチタン又はテフロン(登録商標)のステンレス製オートクレーブ等が挙げられる。オートクレーブは撹拌装置が付属しているものが好ましい。また、本工程において後述する不純物を添加しても良い。
【0017】
本発明の製造方法により得られる酸化チタン微粒子を色素増感光電変換素子に応用する場合、色素担持用の主粒子として用いるのが特に有効である。その場合、酸化チタン微粒子のCu-Kα線における2θ=25.2°(hkl=101)の回折ピークの半値幅をもとに算出される結晶子サイズとしては、8〜16 nmが好ましく、10〜13 nmがより好ましい。このような粒子を得るためには、190〜300℃の温度で5〜200時間加熱するのが好ましく、200〜260℃で5〜50時間加熱するのがより好ましく、220〜240℃で15〜30時間加熱するのが特に好ましい。結晶子サイズは粒子成長工程の加熱温度に依存し、加熱温度が高いほど結晶子サイズが大きくなる。
【0018】
本発明の酸化チタン微粒子の製造方法は以下の利点を有する。(1) アルコールを除去しない従来法で作製した酸化チタンゾルは、粒子成長工程で200℃以上に加熱すると不純物を生成する。これは、反応液中のアルコールが酸触媒によって脱水又は重合したり、触媒自身と反応したりするのが原因である。これに対し本発明の方法により脱水工程前に反応液中に含まれるアルコールを除去するとこのような不純物は生成しない(第1の利点)。(2) 前述の非特許文献1によれば、アルコール類を除去しないで粒子成長させた場合、250℃でルチルが生成することが報告されている。しかし、本発明の方法により脱水工程前に反応液中に含まれるアルコール類を除去すると、後述の実施例に示すように加熱温度が280℃でもルチルが生成せず、結晶子サイズの大きい純アナターゼ酸化チタン粒子を得ることができる(第2の利点)。(3) 260℃以上の高温で作製した純アナターゼ粒子を用いる場合、250℃以下で作製した純アナターゼ粒子を用いる場合に比べて電流電圧特性における形状因子(フィルファクター:FF)が大きく、光電変換効率が高い色素増感光電変換素子を得ることができる(第3の利点)。
【0019】
260℃以上の高温で作製した純アナターゼ粒子は結晶子サイズが大きいため、感光層中の電解質の拡散速度が大きく有利であると推定できる。しかし、酸化チタンの粒子径が大きいと体積あたりの表面積が小さくなり色素吸着量が低下するのが普通である。本発明の方法により260℃以上の高温で作製した酸化チタン微粒子は、粒子径から推算されるほど色素吸着量が低下せず、これが光電変換効率を向上させる原因となっている。
【0020】
(D) 後処理
得られた酸化チタン分散物を後処理により濃縮又は溶媒置換する。使用目的に応じて最終的には乾燥粉末、水分散液、水分散ペースト、有機溶媒分散液、有機溶媒分散ペースト等を調製する。濃縮は、静置又は遠心分離後デカンテーションによる方法、水の減圧留去による方法等を用いることができる。溶媒置換は一般に遠心分離、デカンテーション及び溶媒添加を繰り返す方法を用いる。ペーストを得るための増粘剤としては、好ましくは各種のポリマー(ポリスチレンスルホン酸塩、ポリアクリル酸及びその塩、ポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリアクリルアミド等)、多糖類、ゼラチン、各種の低分子増粘剤(シトロネロール、ネロール、テルピネオール等)等を用いる。
【0021】
水分散液、水分散ペースト、有機溶媒分散液、有機溶媒分散ペースト等における酸化チタンの含量は1〜40質量%であり、10〜30質量%が好ましい。
【0022】
(E) ドーパント添加
本発明では酸化チタン前駆体の加水分解工程、脱水工程及び粒子成長工程のうち少なくとも1つの工程でドーパントを添加しても良い。ドーパント添加は酸化チタンをn型又はp型半導体にする目的で行う。
【0023】
酸化チタンをn型半導体にするためのドーパント元素としては、周期表の第5族元素(バナジウム、ニオブ、タンタル等)及びハロゲン元素(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等)が挙げられる。酸化チタンをp型半導体にするためのドーパントとしては周期表の第3族元素(スカンジウム、イットリウム、ランタン及びランタノイド元素)及び第15族元素(窒素、リン、砒素、アンチモン及びビスマス)が挙げられる。
【0024】
これらの元素をドープするにはそれぞれの元素を含む化合物をドーパントソースとして用いる。ドーパントソースに用いる第5族元素の化合物としては、例えばバナジウム、ニオブ又はタンタルのハロゲン化物(フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物等)、バナジウム、ニオブ又はタンタルのアルコキシド(メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等)等が挙げられる。ハロゲン化合物としてはハロゲン化水素、ハロゲン化物塩(ハロゲン化アンモニウム、ハロゲン化アルキルアンモニウム、ハロゲン化ピリジニウム、アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物等)、ハロゲン含有塩(テトラフルオロホウ酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩等)等が挙げられる。
【0025】
ドーパントソースに用いる第3族元素の化合物としては、例えば硝酸スカンジウム、スカンジウム及びイットリウムのアルコキシド(メトキシド、エトキシド、イソプロポキシド、ブトキシド等)等が挙げられる。ドーパントソースに用いる第15族元素の化合物としては、例えばアンモニア、アンモニウム塩(硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、酢酸アンモニウム等)、ホスフィン及びホスホニウム塩等が挙げられる。ドーパントソースは水溶性でも水不溶性でも良い。
【0026】
ドーパントソースの添加量は反応系内の全チタンに対し0.01〜100モル%であり、好ましくは0.1〜20モル%である。
【0027】
[2]光電変換素子
本発明の光電変換素子は、好ましくは図1に示すように導電層10、感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40をこの順に積層してなり、感光層20を色素22によって増感した半導体微粒子21とこの半導体微粒子21の間の空隙に浸透した電荷輸送材料23とから構成する。感光層20中の電荷輸送材料23は通常、電荷輸送層30に用いる材料と同じものである。導電層10と感光層20の間には下塗り層60を設けてもよい。また、光電変換素子に強度を付与するために、導電層10及び/又は対極導電層40の下地として基板50を設けてもよい。本発明では、導電層10及び任意で設ける基板50からなる層を「導電性支持体」、対極導電層40及び任意で設ける基板50からなる層を「対極」と呼ぶ。なお、図1中の導電層10、対極導電層40、基板50はそれぞれ透明導電層10a、透明対極導電層40a、透明基板50aであってもよい。このような光電変換素子のうち、電気的仕事(発電)をさせるために外部負荷に接続したものが光電池であり、光学的情報のセンシングを目的に作られたものが光センサーである。光電池の中で、電荷輸送材料が主としてイオン輸送材料からなるものを光電気化学電池と呼び、また太陽光による発電を主目的とするものを太陽電池と呼ぶ。
【0028】
図1に示す光電変換素子において、色素22により増感した半導体微粒子21を含む感光層20に入射した光は色素22等を励起し、励起された色素22等中の高エネルギーの電子は半導体微粒子21の伝導帯に渡され、更に拡散して導電層10に到達する。このとき色素22は酸化体となっている。光電池においては、導電層10中の電子が外部回路で仕事をしながら対極導電層40及び電荷輸送層30を経て色素22の酸化体に戻り、色素22が再生する。感光層20は負極として働き、対極導電層40は正極として働く。それぞれの層の境界(例えば導電層10と感光層20との境界、感光層20と電荷輸送層30との境界、電荷輸送層30と対極導電層40との境界等)では、各層の構成成分同士が相互に拡散混合していてもよい。以下各層および構成について詳細に説明する。
【0029】
(A)導電性支持体
導電性支持体は(1)導電層の単層又は(2)導電層及び基板の2層からなる。(1)の場合、導電層の材料としては、導電層の強度や密封性を十分に保つことができ、且つ導電性を有するもの(例えば白金、金、銀、銅、亜鉛、チタン、アルミニウム、これらを含む合金のような金属材料等)を用いることができる。(2)の場合、感光層側に導電剤からなる導電層を有する基板を導電性支持体として使用することができる。好ましい導電剤の例としては金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、ロジウム、インジウム等)、炭素及び導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、酸化スズにフッ素をドープしたもの等)が挙げられる。導電層の厚さは好ましくは0.02〜10 μm程度である。
【0030】
導電性支持体の表面抵抗は低い程好ましい。この表面抵抗は好ましくは100Ω/□以下であり、より好ましくは40Ω/□以下である。表面抵抗の下限には特に制限はないが、通常0.1Ω/□程度である。
【0031】
導電性支持体側から光を照射する場合には、導電性支持体は実質的に透明であるのが好ましい。実質的に透明であるとは光の透過率が10%以上であることを意味する。導電性支持体の光透過率は好ましくは50%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0032】
透明導電性支持体としては、ガラス、プラスチック等からなる透明基板の表面に導電性金属酸化物からなる透明導電層を塗布、蒸着等により形成したものが好ましく使用できる。透明導電層をなす好ましい材料の例としてはフッ素をドーピングした二酸化スズ等が挙げられる。透明基板としては、コストと強度の点で有利なソーダ石灰フロートガラスからなるガラス基板、低コストでフレキシブルな光電変換素子を得るために有用な透明ポリマーフィルム等が使用できる。透明ポリマーフィルムをなす材料の例としては、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、シンジオタクチックポリスチレン(SPS)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PAr)、ポリスルフォン(PSF)、ポリエステルスルフォン(PES)、ポリエーテルイミド(PEI)、環状ポリオレフィン、ブロム化フェノキシ樹脂等が挙げられる。十分な透明性を確保するためには、上記導電性金属酸化物の塗布量はガラス又はプラスチックの基板1m2当たり0.01〜100 gとするのが好ましい。
【0033】
透明導電性支持体の抵抗を下げる目的で金属リードを集電体として用いることができる。金属リードは白金、金、ニッケル、チタン、アルミニウム、銅、銀等の金属からなるのが好ましく、アルミニウム又は銀からなるのが特に好ましい。透明基板上に金属リードを蒸着、スパッタリング等で設置し、その上にフッ素をドープした酸化スズ、ITO膜等からなる透明導電層を設けるのが好ましい。また、透明導電層を透明基板に設けた後、透明導電層上に金属リードを設置することも好ましい。金属リード設置による入射光量の低下は、好ましくは10%以内、より好ましくは1〜5%とする。
【0034】
(B)感光層
感光層において半導体微粒子は感光体として作用し、光を吸収して電荷分離を行い電子と正孔を生ずる。色素増感した半導体微粒子では光吸収及びこれによる電子及び正孔の発生は主として色素において起こり、半導体微粒子はこの電子又は正孔を受け取り、伝達する役割を担う。本発明で用いる半導体は、光励起下で伝導体電子がキャリアーとなり、アノード電流を与えるn型半導体であることが好ましい。
【0035】
(1)半導体
本発明の光電変換素子で用いる半導体は、上述の酸化チタン微粒子である。
【0036】
本発明の光電変換素子を構成する酸化チタンは、好ましくは下記▲1▼▲2▼の2種の混合である。
▲1▼ 色素担持を目的とする微粒子酸化チタン
▲2▼ 光の錯乱を目的とする微粒子酸化チタン
▲1▼には本発明の方法による酸化チタン微粒子を用いる。▲2▼には本発明の方法による酸化チタン微粒子を用いてもそれ以外の酸化チタン微粒子を用いてもよく、アナターゼでもルチルでもよい。▲2▼の粒子径は50〜800 nmであり、好ましくは100〜500 nmであり、より好ましくは200〜400 nmである。
【0037】
混合比率(質量比)は小さい粒子(▲1▼)が50〜99%且つ大きい粒子(▲2▼)が1〜50%であるのが好ましく、小さい粒子が70〜95%且つ大きい粒子が5〜30%であるのがより好ましい。
【0038】
本発明の光電変換素子に用いる酸化チタン微粒子の作製法は、上述したとおりである。
【0039】
(2)半導体微粒子層
導電性支持体上に上記半導体微粒子からなる半導体微粒子層を形成する際には、半導体微粒子を含有する分散液又はコロイド溶液を導電性支持体上に塗布する方法を用いるのが一般的である。光電変換素子の量産化、半導体微粒子を含有する分散液又はコロイド溶液の物性、導電性支持体の融通性等を考慮すると、湿式の製膜方法を用いるのが比較的望ましい。湿式の製膜方法としては塗布法及び印刷法が代表的である。
【0040】
半導体微粒子の分散液を作製する方法の例としては、前述のゾル−ゲル法等で調製した分散液又はコロイド溶液をそのまま用いる方法、乳鉢ですり潰す方法、ミルを使って粉砕しながら分散する方法等が挙げられる。
【0041】
半導体微粒子の分散液に用いる分散媒は、水又は各種有機溶媒(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ジクロロメタン、アセトン、アセトニトリル、酢酸エチル等)であってよい。分散する際に必要に応じてポリエチレングリコールのようなポリマー、界面活性剤、酸、キレート剤等を分散助剤として用いてもよい。ポリエチレングリコールの分子量を変えることで、分散液の粘度が調節でき、また剥がれにくい半導体微粒子層を形成することができるので、ポリエチレングリコールを添加することは好ましい。
【0042】
好ましい塗布方法の例としては、アプリケーション系としてローラ法、ディップ法等、メータリング系としてエアーナイフ法、ブレード法等、またアプリケーションとメータリングを同一部分にできるものとして特公昭58-4589号公報に開示されているワイヤーバー法、米国特許第2681294号明細書、同第2761419号明細書、同第2761791号明細書等に記載のスライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法等が挙げられる。また汎用機としてスピン法やスプレー法も好ましい。湿式印刷方法としては凸版、オフセット及びグラビアの三大印刷法をはじめ、凹版、ゴム版、スクリーン印刷等が好ましい。これらの中から液粘度やウェット厚さに応じて製膜方法を選択してよい。
【0043】
半導体微粒子の分散液の粘度は半導体微粒子の種類や分散性、使用溶媒種、界面活性剤、バインダー等の添加剤により大きく左右される。分散液が高粘度(例えば0.01〜500Poise)である場合はエクストルージョン法、キャスト法又はスクリーン印刷法を用いるのが好ましい。また低粘度(例えば0.1 Poise以下)である場合は、均一な膜を形成するためにスライドホッパー法、ワイヤーバー法又はスピン法を用いるのが好ましい。なお、塗布量がある程度多い場合は低粘度であってもエクストルージョン法による塗布が可能である。このように分散液の粘度、塗布量、支持体、塗布速度等に応じて適宜製膜方法を選択すればよい。
【0044】
半導体微粒子層は単層に限定されず、粒径の違った半導体微粒子の分散液を多層塗布したり、種類が異なる半導体微粒子(或いは異なるバインダー、添加剤等)を含有する層を多層塗布したりすることもできる。一度の塗布で膜厚が足りない場合にも多層塗布は有効である。多層塗布にはエクストルージョン法及びスライドホッパー法が適している。多層塗布する場合は同時に多層を塗布してもよいし、数回から十数回、順次重ね塗りしてもよい。順次重ね塗りする際にはスクリーン印刷法も好ましく使用できる。
【0045】
一般に半導体微粒子層の厚さ(感光層の厚さと同じ)が厚くなるほど、単位投影面積当たりの担持色素量が増えるため光の捕獲率が高くなるが、生成した電子の拡散距離が増すため電荷再結合によるロスも大きくなる。従って半導体微粒子層の好ましい厚さは0.1〜100μmである。本発明の光電変換素子を太陽電池に用いる場合、半導体微粒子層の厚さは好ましくは1〜30μm、より好ましくは2〜25μmである。導電性支持体1m2当たりの半導体微粒子の塗布量は、好ましくは0.5〜400g、より好ましくは5〜100gである。
【0046】
半導体微粒子を導電性支持体上に塗布した後、半導体微粒子同士を電子的に接触させるとともに塗膜強度や導電性支持体との密着性を向上させるために、加熱処理するのが好ましい。加熱処理における加熱温度は好ましくは40〜700℃であり、より好ましくは100〜600℃である。また加熱時間は10分〜10時間程度である。ポリマーフィルムのように融点や軟化点の低い基板を用いる場合、高温処理は基板の劣化を招くため好ましくない。またコストの観点からもできる限り低温で加熱処理を行うのが好ましい。5nm以下の小さい半導体微粒子や鉱酸等の存在下で加熱処理を行うと、加熱温度の低温化が可能となる。
【0047】
上記加熱処理に代えて加圧処理を行っても良い。加圧処理の方法についてはリンドストロームらによる著書、「ジャーナル・オブ・フォトケミストリー・アンド・フォトバイオロジー(Journal of photochemistry and photobiology)」, 2001年(エルゼビア), 第145巻, p.107〜112に詳しく記載されている。加圧処理を行う場合、半導体微粒子塗布液にはポリマーなどのバインダーを用いない。
【0048】
加熱処理、又は加圧処理の後、例えば米国特許第5084365号明細書に記載されているような四塩化チタン水溶液を用いた化学メッキ処理や三塩化チタン水溶液を用いた電気化学的メッキ処理を行ってもよい。
【0049】
半導体微粒子層は、多くの色素を吸着することができるように大きい表面積を有することが好ましい。半導体微粒子層を導電性支持体上に塗布した状態での表面積は投影面積に対して10倍以上であるのが好ましく、100倍以上であるのがより好ましい。この上限は特に制限はないが、通常1000倍程度である。
【0050】
(3)処理
本発明では、感光層に用いる半導体微粒子を金属化合物の溶液で処理してもよい。金属化合物としては、例えばスカンジウム、イットリウム、ランタノイド、ジルコニウム、ハフニウム、ニオブ、タンタル、ガリウム、インジウム、ゲルマニウム及びスズからなる群から選ばれる金属のアルコキシド又はハロゲン化物等が使用できる。金属化合物の溶液(処理液)は通常、水溶液又はアルコール溶液である。なお、「処理」とは、半導体微粒子に色素を吸着させる前に、該半導体微粒子と上記処理液をある時間接触させる操作を意味する。接触後に半導体微粒子に上記金属化合物が吸着していても吸着していなくてもよい。処理は上記半導体微粒子層を形成した後に行うのが好ましい。
【0051】
処理の具体的方法としては、半導体微粒子を該処理液に浸漬する方法(浸漬法)が好ましい例として挙げられる。また、処理液をスプレー状に一定時間吹き付ける方法(スプレー法)も適用できる。浸漬法を行う際の処理液の温度(浸漬温度)は特に限定されないが、典型的には-10〜70℃であり、好ましくは0℃〜40℃である。処理時間も特に限定されず、典型的には1分〜24時間であり、好ましくは30分〜15時間である。浸漬の後、半導体微粒子を蒸留水等の溶媒で洗浄してもよい。また、浸漬処理によって半導体微粒子に付着した物質の結合を強めるために焼成してもよい。焼成の条件は、上述した加熱処理の条件と同様に設定すればよい。
【0052】
(4)色素
感光層に用いる増感色素は、可視域や近赤外域に吸収特性を有し半導体を増感し得るものであれば特に限定されないが、金属錯体色素、メチン色素、ポルフィリン系色素及びフタロシアニン系色素が好ましく使用でき、中でも金属錯体色素が特に好ましい。フタロシアニン、ナフタロシアニン、金属フタロシアニン、金属ナフタロシアニン、テトラフェニルポルフィリンやテトラアザポルフィリン等のポルフィリン類、金属ポルフィリン、それらの誘導体等も用いることができる。色素レーザー用に用いられる色素類も本発明において使用できる。また、光電変換の波長域をできるだけ広くし、且つ変換効率を上げるために、二種類以上の色素を併用することができる。この場合、目的とする光源の波長域と強度分布に合わせるように併用する色素とその割合を選ぶことができる。
【0053】
色素は半導体微粒子の表面に対して吸着能力の有る適当な結合基(interlocking group)を有するのが好ましい。好ましい結合基の例としては、-COOH基、-OH基、-SO2H基、-P(O)(OH)2基及び-OP(O)(OH)2基のような酸性基、並びにオキシム、ジオキシム、ヒドロキシキノリン、サリチレート及びα-ケトエノレートのようなπ伝導性を有するキレート化基が挙げられる。中でも-COOH基、-P(O)(OH)2基及び-OP(O)(OH)2基が特に好ましい。これらの結合基はアルカリ金属等と塩を形成していてもよく、また分子内塩を形成していてもよい。またポリメチン色素の場合、メチン鎖がスクアリリウム環やクロコニウム環を形成する場合のように酸性基を含有するなら、この部分を結合基としてもよい。以下、感光層に用いる好ましい増感色素を具体的に説明する。
【0054】
(a)金属錯体色素
本発明で用いる金属錯体色素の金属原子はルテニウムRuであるのが好ましい。ルテニウム錯体色素の例としては、米国特許第4927721号明細書、同第4684537号明細書、同第5084365号明細書、同第5350644号明細書、同第5463057号明細書、同第5525440号明細書、特開平7-249790号公報、特表平10-504512号公報、国際公開98/50393号パンフレット、特開2000-26487号公報等に記載のものが挙げられる。また、好ましい金属錯体色素の具体例としては、特開2001-320068号公報の段落番号0051〜0057に記載のものが挙げられる。最も典型的な金属錯体色素としては、下記D-1及びD-2が挙げられる。
【0055】
【化1】
Figure 2004161589
【0056】
(b)メチン色素
好ましいメチン色素は、シアニン色素、メロシアニン色素、スクワリリウム色素等のポリメチン色素である。好ましいポリメチン色素の例としては、特開平11-35836号公報、同11-158395号公報、同11-163378号公報、同11-214730号公報、同11-214731号公報、欧州特許第892411号明細書及び同第911841号明細書に記載の色素が挙げられる。これらのポリメチン色素の合成法については、エフ・エム・ハーマー(F. M. Hamer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−シアニンダイズ・アンド・リレィティド・コンパウンズ(Heterocyclic Compounds - Cyanine Dyes and Related Compounds)」, ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社, ニューヨーク, ロンドン, 1964年、デー・エム・スターマー(D. M. Sturmer)著「ヘテロサイクリック・コンパウンズ−スペシャル・トピックス・イン・ヘテロサイクリック・ケミストリー(Heterocyclic Compounds - Specialtopics in Heterocyclic Chemistry)」, ジョン・ウィリー・アンド・サンズ(John Wiley & Sons)社, ニューヨーク,ロンドン, 1977年, 第18章, 第14節, p.82〜515、「ロッズ・ケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Rodd's Chemistry of Carbon Compounds)」, 第2版, エルセビア・サイエンス・パブリック・カンパニー・インク(Elsevier Science Publishing Company Inc.)社, ニューヨーク, 1977年, 第IV巻, part B, 第15章, p.369-422、英国特許第1,077,611号明細書、「Ukrainskii Khimicheskii Zhurnal」, 第40巻, 第3号, p.253-258、「ダイズ・アンド・ピグメンツ(Dyes and Pigments)」, 第21巻, p.227-234、これらの引用文献等に記載されている。
【0057】
(5)半導体微粒子への色素の吸着
半導体微粒子に色素を吸着させる際には、色素の溶液中によく乾燥した半導体微粒子層を有する導電性支持体を浸漬する方法、又は色素の溶液を半導体微粒子層に塗布する方法を用いることができる。前者の方法の場合、浸漬法、ディップ法、ローラ法、エアーナイフ法等が利用可能である。浸漬法を用いる場合、色素の吸着は室温で行ってもよいし、特開平7-249790号に記載されているように加熱還流して行ってもよい。後者の方法の場合、ワイヤーバー法、スライドホッパー法、エクストルージョン法、カーテン法、スピン法、スプレー法等が利用できる。また、インクジェット法等によって色素を画像状に塗布し、この画像そのものを光電変換素子とすることもできる。
【0058】
色素の溶液(吸着液)に用いる溶媒は、好ましくはアルコール類(メタノール、エタノール、t-ブチルアルコール、ベンジルアルコール等)、ニトリル類(アセトニトリル、プロピオニトリル、3-メトキシプロピオニトリル等)、ニトロメタン、ハロゲン化炭化水素(ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルム、クロロベンゼン等)、エーテル類(ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等)、ジメチルスルホキシド、アミド類(N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセタミド等)、N-メチルピロリドン、1,3-ジメチルイミダゾリジノン、3-メチルオキサゾリジノン、エステル類(酢酸エチル、酢酸ブチル等)、炭酸エステル類(炭酸ジエチル、炭酸エチレン、炭酸プロピレン等)、ケトン類(アセトン、2-ブタノン、シクロヘキサノン等)、炭化水素(へキサン、石油エーテル、ベンゼン、トルエン等)又はこれらの混合溶媒である。
【0059】
色素の吸着量は、半導体微粒子層の単位面積(1m2)当たり0.01〜100 mmolとするのが好ましい。また色素の半導体微粒子に対する吸着量は、半導体微粒子1g当たり0.01〜1mmolであるのが好ましい。このような色素の吸着量とすることにより半導体微粒子の増感効果が十分に得られる。色素の吸着量が少なすぎると増感効果が不十分となり、色素の吸着量が多すぎると半導体に付着していない色素が浮遊し、増感効果が低減する。色素の吸着量を増やすためには、吸着前に半導体微粒子を加熱処理するのが好ましい。半導体微粒子表面に水が吸着するのを避けるために、加熱処理後には常温に戻さずに半導体微粒子層の温度が60〜150℃の間で素早く色素の吸着を行うのが好ましい。
【0060】
色素間の凝集等の相互作用を低減するために、界面活性剤としての性質を持つ無色の化合物を色素吸着液に添加し、半導体微粒子に共吸着させてよい。このような無色の化合物の例としては、カルボキシル基やスルホ基を有するステロイド化合物(コール酸、デオキシコール酸、ケノデオキシコール酸、タウロデオキシコール酸等)や、下記のようなスルホン酸塩類等が挙げられる。
【0061】
【化2】
Figure 2004161589
【0062】
未吸着の色素は、吸着工程後、速やかに洗浄により除去するのが好ましい。洗浄は湿式洗浄槽中でアセトニトリル、アルコール系溶剤のような有機溶媒等を用いて行うのが好ましい。
【0063】
色素を吸着した後、アミン類、4級アンモニウム塩、少なくとも1つのウレイド基を有するウレイド化合物、少なくとも1つのシリル基を有するシリル化合物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩等を用いて半導体微粒子の表面を処理してもよい。好ましいアミン類の例としてはピリジン、4-t-ブチルピリジン、ポリビニルピリジン等が挙げられる。好ましい4級アンモニウム塩の例としてはテトラブチルアンモニウムヨージド、テトラヘキシルアンモニウムヨージド等が挙げられる。これらは有機溶媒に溶解して用いてもよく、液体の場合はそのまま用いてもよい。
【0064】
(C)電荷輸送層
電荷輸送層は、色素の酸化体に電子を補充する機能を有する電荷輸送材料を含有する。本発明で用いる電荷輸送材料は、(i)イオンが関わる電荷輸送材料であっても、(ii)固体中のキャリアー移動が関わる電荷輸送材料であってもよい。(i)イオンが関わる電荷輸送材料としては、酸化還元対イオンを含有する溶融塩電解質組成物、酸化還元対のイオンが溶解した溶液(電解液)、酸化還元対の溶液をポリマーマトリクスのゲルに含浸したいわゆるゲル電解質組成物、固体電解質組成物等が挙げられ、(ii)固体中のキャリアー移動が関わる電荷輸送材料としては、電子輸送材料や正孔(ホール)輸送材料等が挙げられる。これらの電荷輸送材料は複数併用してもよい。本発明では、電荷輸送層に溶融塩電解質組成物又はゲル電解質組成物を用いるのが好ましい。
【0065】
(1)溶融塩電解質組成物
溶融塩電解質組成物は溶融塩を含む。溶融塩電解質組成物は常温で液体であるのが好ましい。主成分である溶融塩は室温において液状であるか、又は低融点の電解質であり、その一般的な例としては国際公開第95/18456号パンフレット、特開平8-259543号公報、「電気化学」, 1997年, 第65巻, 第11号, p.923等に記載のピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、トリアゾリウム塩等が挙げられる。溶融塩の融点は50℃以下であるのが好ましく、25℃以下であるのが特に好ましい。溶融塩の具体例は特開2001-320068号公報の段落番号0066〜0082に詳しく記載されている。
【0066】
溶融塩は単独で使用しても2種以上混合して使用してもよい。また、LiI、NaI、KI、LiBF4、CF3COOLi、CF3COONa、LiSCN、NaSCN等のアルカリ金属塩を併用することもできる。アルカリ金属塩の添加量は、組成物全体に対して2質量%以下であるのが好ましく、1質量%以下がさらに好ましい。また、溶融塩電解質組成物に含まれるアニオンの50モル%以上がヨウ化物イオンであることが好ましい。
【0067】
通常、溶融塩電解質組成物はヨウ素を含有する。ヨウ素の含有量は、溶融塩電解質組成物全体に対して0.1〜20質量%であるのが好ましく、0.5〜5質量%であるのがより好ましい。
【0068】
溶融塩電解質組成物の揮発性は低いことが好ましく、溶媒を含まないことが好ましい。溶媒を添加する場合でも、溶媒の添加量は溶融塩電解質組成物全体に対して30質量%以下に留めることが好ましい。溶融塩電解質組成物は後述のようにゲル化して使用してもよい。
【0069】
(2)電解液
電解液は電解質、溶媒及び添加物から構成されることが好ましい。電解液に用いる電解質の例としては、I2とヨウ化物(LiI、NaI、KI、CsI、CaI2等の金属ヨウ化物、テトラアルキルアンモニウムヨーダイド、ピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩等)の組み合わせ、Br2と臭化物(LiBr、NaBr、KBr、CsBr、CaBr2等の金属臭化物、テトラアルキルアンモニウムブロマイド、ピリジニウムブロマイド等の4級アンモニウム化合物臭素塩等)の組み合わせ、フェロシアン酸塩−フェリシアン酸塩やフェロセン−フェリシニウムイオン等の金属錯体、ポリ硫化ナトリウム、アルキルチオール−アルキルジスルフィド等のイオウ化合物、ビオロゲン色素、ヒドロキノン−キノン等が挙げられる。中でも、I2とLiI又はピリジニウムヨーダイド、イミダゾリウムヨーダイド等の4級アンモニウム化合物ヨウ素塩を組み合わせた電解質が好ましい。電解質は混合して用いてもよい。
【0070】
電解液中の電解質濃度は好ましくは0.1〜10 Mであり、より好ましくは0.2〜4Mである。また、電解液にヨウ素を添加する場合の好ましいヨウ素の添加濃度は0.01〜0.5 Mである。
【0071】
電解液に使用する溶媒は、粘度が低くイオン移動度を向上したり、若しくは誘電率が高く有効キャリアー濃度を向上したりして、優れたイオン伝導性を発現できる化合物であることが望ましい。このような溶媒の例としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート化合物、3-メチル-2-オキサゾリジノン等の複素環化合物、ジオキサン、ジエチルエーテル等のエーテル化合物、エチレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールジアルキルエーテル、ポリエチレングリコールジアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールジアルキルエーテル等の鎖状エーテル類、メタノール、エタノール、エチレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、ポリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアルキルエーテル等のアルコール類、エチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、グリセリン等の多価アルコール類、アセトニトリル、グルタロジニトリル、メトキシアセトニトリル、プロピオニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル化合物、ジメチルスルホキシド、スルフォラン等の非プロトン極性物質、水等が挙げられる。これらの溶媒は混合して用いることもできる。
【0072】
また、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・セラミック・ソサイエティ(Journal of the American Ceramic Society)」,1997年,第80巻,第12号,p.3157-3171に記載されているようなtert-ブチルピリジンや、2-ピコリン、2,6-ルチジン等の塩基性化合物を前述の溶融塩電解質組成物や電解液に添加することが好ましい。塩基性化合物を電解液に添加する場合の好ましい濃度範囲は0.05〜2Mである。溶融塩電解質組成物に添加する場合、塩基性化合物はイオン性基を有することが好ましい。溶融塩電解質組成物全体に対する塩基性化合物の質量比は好ましくは1〜40質量%であり、より好ましくは5〜30質量%である。
【0073】
(3)ゲル電解質組成物
本発明では、ポリマー添加、オイルゲル化剤添加、多官能モノマー類を含む重合、ポリマーの架橋反応等の手法により、前述の溶融塩電解質組成物や電解液をゲル化(固体化)させて使用することもできる。ポリマー添加によりゲル化する場合は、「ポリマー・エレクトロライト・レビューズ(Polymer Electrolyte Reviews)-1及び2」(J. R. MacCallumとC. A. Vincentの共編、ELSEVIER APPLIED SCIENCE)に記載された化合物を使用することができるが、特にポリアクリロニトリル及びポリフッ化ビニリデンが好ましく使用できる。オイルゲル化剤添加によりゲル化する場合は「工業科学雑誌(Journal of the Chemical Society ofJapan, Industrial Chemistry Sections)」, 1943年, 第46巻, p.779、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of the American Chemical Society)」, 1989年, 第111巻, p.5542、「ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ, ケミカル・コミュニケーションズ(Journal of the Chemical Society, Chemical Communications)」, 1993年, p.390、「Angewandte Chemie International Edition in English」, 1996年, 第35巻, p.1949、「ケミストリー・レターズ(Chemistry Letters)」, 1996年, p.885、及び「ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサイエティ, ケミカル・コミュニケーションズ(Journal of the Chemical Society, Chemical Communications)」, 1997年, p.545に記載されている化合物を使用することができるが、アミド構造を有する化合物を使用するのが好ましい。電解液をゲル化した例は特開平11-185863号公報に、溶融塩電解質をゲル化した例は特開2000-58140号公報にも記載されており、これらも本発明に適用できる。
【0074】
また、ポリマーの架橋反応によりゲル化させる場合、架橋可能な反応性基を含有するポリマー及び架橋剤を併用することが望ましい。この場合、好ましい架橋可能な反応性基は、アミノ基、含窒素複素環(ピリジン環、イミダゾール環、チアゾール環、オキサゾール環、トリアゾール環、モルホリン環、ピペリジン環、ピペラジン環等)であり、好ましい架橋剤は、窒素原子に対して求電子反応可能な2官能以上の試薬(ハロゲン化アルキル類、ハロゲン化アラルキル類、スルホン酸エステル類、酸無水物、酸クロライド類、イソシアネート化合物、α,β-不飽和スルホニル化合物、α,β-不飽和カルボニル化合物、α,β-不飽和ニトリル化合物等)である。特開2000-17076号公報及び同2000-86724号公報に記載されている架橋技術も適用できる。
【0075】
(4)正孔輸送材料
本発明では、溶融塩等のイオン伝導性電解質のかわりに、有機固体正孔輸送材料、無機固体正孔輸送材料、或いはこの両者を組み合わせた材料を使用することができる。
【0076】
(a)有機正孔輸送材料
本発明において好ましく使用できる有機正孔輸送材料の例としては、ジェイ・ハーゲン(J. Hagen)等著, 「シンセティック・メタル(Synthetic Metal)」,1997年, 第89巻, p.215-220、「ネイチャー(Nature)」, 1998年, 第395巻, 第8号Oct., p583-585、国際公開第97/10617号パンフレット、特開昭59-194393号公報、特開平5-234681号公報、米国特許第4,923,774号明細書、特開平4-308688号公報、米国特許第4,764,625号明細書、特開平3-269084号公報、同4-129271号公報、同4-175395号公報、同4-264189号公報、同4-290851号公報、同4-364153号公報、同5-25473号公報、同5-239455号公報、同5-320634号公報、同6-1972号公報、同7-138562号公報、同7-252474号公報、同11-144773号公報等に記載の芳香族アミン類、特開平11-149821号公報、同11-148067号公報、同11-176489号公報等に記載のトリフェニレン誘導体類等が挙げられる。また、「アドバンスド・マテリアルズ(Advanced Materials)」, 1997年, 第9巻, 第7号, p.557、「Angewandte Chemie International Edition in English」, 1995年, 第34巻, 第3号, p.303-307、「ジャーナル・オブ・ジ・アメリカン・ケミカル・ソサイエティ(Journal of the American Chemical Society)」, 1998年, 第120巻, 第4号,p.664-672等に記載のオリゴチオフェン化合物、K. Murakoshi, et al., 「ケミストリー・レターズ(Chemistry Letters)」, 1997年, p.471に記載のポリピロール、NALWA著「ハンドブック・オブ・オーガニック・コンダクティブ・モレキュールズ・アンド・ポリマーズ(Handbook of Organic Conductive Molecules and Polymers)」, 第1,2,3,4巻, WILEY出版に記載のポリアセチレン及びその誘導体、ポリ(p-フェニレン)及びその誘導体、ポリ(p-フェニレンビニレン)及びその誘導体、ポリチエニレンビニレン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体、ポリアニリン及びその誘導体、ポリトルイジン及びその誘導体等の導電性高分子も好ましく使用することができる。
【0077】
「ネイチャー(Nature)」, 1998年, 第395巻, 第8号Oct., p.583-585に記載されているように、ドーパントレベルをコントロールするためにトリス(4-ブロモフェニル)アミニウムヘキサクロロアンチモネートのようなカチオンラジカルを含有する化合物を正孔輸送材料に添加してもよい。また、酸化物半導体表面のポテンシャル制御(空間電荷層の補償)を行うためにLi[(CF3SO2)2N]のような塩を添加してもよい。
【0078】
(b)無機正孔輸送材料
無機正孔輸送材料としてはp型無機化合物半導体を用いることができ、そのバンドギャップは好ましくは2eV以上、より好ましくは2.5eV以上である。また、p型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルは、色素の正孔を還元するためには色素吸着電極のイオン化ポテンシャルより小さいことが必要である。使用する色素によってp型無機化合物半導体のイオン化ポテンシャルの好ましい範囲は異なるが、一般に好ましくは4.5〜5.5 eV、より好ましくは4.7〜5.3 eVである。好ましいp型無機化合物半導体は1価の銅を含む化合物半導体であり、その例としてはCuI、CuSCN、CuInSe2、Cu(In,Ga)Se2、CuGaSe2、Cu2O、CuS、CuGaS2、CuInS2、CuAlSe2等が挙げられる。中でも、CuI及びCuSCNが好ましく、CuIが最も好ましい。他のp型無機化合物半導体の例としては、GaP、NiO、CoO、FeO、Bi2O3、MoO2、Cr2O3等が挙げられる。
【0079】
(5)電荷輸送層の形成
電荷輸送層は2通りの方法のいずれかにより形成できる。1つは感光層の上に先に対極を貼り合わせておき、その間隙に液状の電荷輸送層を挟み込む方法である。もう1つは感光層上に直接電荷輸送層を付与する方法で、対極はその後付与することになる。
【0080】
前者の方法の場合、電荷輸送層を挟み込む際には、浸漬等による毛管現象を利用する常圧プロセス又は常圧より低い圧力にして間隙の気相を液相に置換する真空プロセスを利用できる。
【0081】
後者の方法において、湿式の電荷輸送層を用いる場合は、通常未乾燥のまま対極を付与しエッジ部の液漏洩防止措置を施す。またゲル電解質組成物を用いる場合には、これを湿式で塗布した後で重合等の方法により固体化してよい。固体化は対極を付与する前に行っても後に行ってもよい。電解液、湿式有機正孔輸送材料、ゲル電解質組成物等からなる電荷輸送層を形成する場合は、前述の半導体微粒子層の形成方法と同様の方法を利用できる。
【0082】
固体電解質組成物や固体正孔輸送材料を用いる場合には、真空蒸着法やCVD法等のドライ成膜処理で電荷輸送層を形成し、その後対極を付与することもできる。有機正孔輸送材料は真空蒸着法、キャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解重合法、光電解重合法等により電極内部に導入することができる。無機固体化合物はキャスト法、塗布法、スピンコート法、浸漬法、電解析出法、無電解メッキ法等により電極内部に導入することができる。
【0083】
(D)対極
対極は前述の導電性支持体と同様に、導電性材料からなる対極導電層の単層構造でもよいし、対極導電層と支持基板から構成されていてもよい。対極導電層に用いる導電剤の例としては、金属(白金、金、銀、銅、アルミニウム、マグネシウム、インジウム等)、炭素、導電性金属酸化物(インジウム−スズ複合酸化物、フッ素ドープ酸化スズ等)等が挙げられる。この中でも白金、金、銀、銅、アルミニウム及びマグネシウムが好ましい。対極に用いる基板は、好ましくはガラス基板又はプラスチック基板であり、これに上記の導電剤を塗布又は蒸着して用いることができる。対極導電層の厚さは特に制限されないが、好ましくは3nm〜10μmである。対極導電層の表面抵抗は低い程よく、好ましくは50Ω/□以下、より好ましくは20Ω/□以下である。
【0084】
導電性支持体と対極のいずれか一方又は両方から光を照射してよいので、感光層に光が到達するためには、導電性支持体と対極の少なくとも一方が実質的に透明であればよい。発電効率の向上の観点からは導電性支持体を透明にして光を導電性支持体側から入射させるのが好ましい。この場合、対極は光を反射する性質を有するのが好ましい。このような性質を得るためには、対極として金属又は導電性酸化物を蒸着したガラス又はプラスチック、或いは金属薄膜を使用してよい。
【0085】
対極は電荷輸送層上に直接導電剤を塗布、メッキ又は蒸着(PVD、CVD)するか、導電層を有する基板の導電層側を貼り付けて設置すればよい。導電性支持体の場合と同様に、特に対極が透明の場合には、対極の抵抗を下げる目的で金属リードを用いるのが好ましい。金属リードの好ましい態様は導電性支持体の場合と同じである。
【0086】
(E)その他の層
対極と導電性支持体の短絡を防止するため、導電性支持体と感光層の間には緻密な半導体の薄膜層を下塗り層として予め塗設しておくことが好ましい。この下塗り層により短絡を防止する方法は、電荷輸送層に電子輸送材料や正孔輸送材料を用いる場合は特に有効である。下塗り層は好ましくはTiO2、SnO2、Fe2O3、WO3、ZnO又はNb2O5からなり、さらに好ましくはTiO2からなる。下塗り層は、例えばElectrochim. Acta, 40, 643-652 (1995)に記載のスプレーパイロリシス法や、スパッタ法等により塗設することができる。下塗り層の膜厚は好ましくは5〜1000 nmであり、より好ましくは10〜500 nmである。
【0087】
また、導電性支持体と対極の一方又は両方の外側表面、導電層と基板の間又は基板の中間に、保護層、反射防止層等の機能性層を設けてもよい。これらの機能性層の形成方法は、その材質に応じて塗布法、蒸着法、貼り付け法等から適宜選択できる。
【0088】
(F)光電変換素子の内部構造の具体例
上述のように、光電変換素子の内部構造は目的に合わせ様々な形態が可能である。大きく2つに分ければ、両面から光の入射が可能な構造と、片面からのみ可能な構造が可能である。本発明の光電変換素子の好ましい内部構造の例を、前述の図1及び図2〜図9に示す。
【0089】
図2に示す構造は、透明導電層10aと透明対極導電層40aとの間に、感光層20と電荷輸送層30とを介在させたものであり、両面から光が入射する構造となっている。図3に示す構造は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、その上に透明導電層10aを設け、下塗り層60、感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40をこの順で設け、更に支持基板50を配置したものであり、導電層側から光が入射する構造となっている。図4に示す構造は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に電荷輸送層30と透明対極導電層40aとを設け、一部に金属リード11を設けた透明基板50aを金属リード11側を内側にして配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。図5に示す構造は、透明基板50a上に一部金属リード11を設け、更に透明導電層10a(又は40a)を設けたもの1組の間に下塗り層60、感光層20及び電荷輸送層30を介在させたものであり、両面から光が入射する構造である。図6に示す構造は、透明基板50a上に透明導電層10a、下塗り層60、感光層20、電荷輸送層30及び対極導電層40を設け、この上に支持基板50を配置したものであり、導電層側から光が入射する構造である。図7に示す構造は、支持基板50上に導電層10を有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に電荷輸送層30及び透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、対極側から光が入射する構造である。図8に示す構造は、透明基板50a上に透明導電層10aを有し、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に電荷輸送層30及び透明対極導電層40aを設け、この上に透明基板50aを配置したものであり、両面から光が入射する構造となっている。図9に示す構造は、支持基板50上に導電層10を設け、下塗り層60を介して感光層20を設け、更に固体の電荷輸送層30を設け、この上に一部対極導電層40又は金属リード11を有するものであり、対極側から光が入射する構造となっている。
【0090】
[3]光電池
本発明の光電池は、上記本発明の光電変換素子に外部負荷で仕事をさせるようにしたものである。光電池のうち、電荷輸送材料が主としてイオン輸送材料からなる場合を特に光電気化学電池と呼び、また、太陽光による発電を主目的とする場合を太陽電池と呼ぶ。
【0091】
光電池の側面は、構成物の劣化や内容物の揮散を防止するためにポリマーや接着剤等で密封するのが好ましい。導電性支持体及び対極にリードを介して接続する外部回路自体は公知のものでよい。
【0092】
本発明の光電変換素子を太陽電池に適用する場合も、そのセル内部の構造は基本的に上述した光電変換素子の構造と同じである。また、本発明の光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池は、従来の太陽電池モジュールと基本的には同様のモジュール構造をとりうる。太陽電池モジュールは、一般的には金属、セラミック等の支持基板の上にセルが構成され、その上を充填樹脂や保護ガラス等で覆い、支持基板の反対側から光を取り込む構造をとるが、支持基板に強化ガラス等の透明材料を用い、その上にセルを構成してその透明の支持基板側から光を取り込む構造とすることも可能である。具体的には、スーパーストレートタイプ、サブストレートタイプ、ポッティングタイプと呼ばれるモジュール構造、アモルファスシリコン太陽電池等で用いられる基板一体型モジュール構造等が知られており、本発明の光電変換素子を用いた色素増感型太陽電池も使用目的や使用場所及び環境により、適宜モジュール構造を選択できる。具体的には、特願平11-8457号、特開2000-268892号等に記載の構造や態様とすることが好ましい。
【0093】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0094】
実施例1
[A] 酸化チタンゾルの調製
(1) 比較用酸化チタンゾルの調製
0.09モル/リットルの希硝酸水溶液440 mlにオルトチタン酸テトライソプロピル(和光純薬工業(株)製)79 mlを25℃で一気に添加し10分間撹拌した後、70℃で約4時間加熱撹拌し、半透明のゾル状液を得た。さらに1時間加熱した後濾過し、固形分含有率5.1質量%の酸化チタンゾル(S-1)を得た。X線回折法により、酸化チタンゾル(S-1)は結晶子サイズが5nmのアナターゼであることを確認した。なお、結晶子サイズはCu-Kα線における2θ=25.2°(hkl=101)の回折ピークの半値幅をもとに算出した。
【0095】
次に希硝酸の濃度を0.03モル/リットルとした以外は上記と同様にして酸化チタンゾルの合成を試みた。しかしながら、加熱時間10時間の後も乳白色の懸濁液のままで、半透明のゾルとはならなかった。このことから、アルコールを除去しない従来法では酸触媒の量を少なくできないことがわかる。
【0096】
(2) 本発明の方法による酸化チタンゾルの調製
0.09モル/リットルの希硝酸水溶液440 mlにオルトチタン酸テトライソプロピル(和光純薬工業(株)製)79 mlを25℃で一気に添加し10分間撹拌した後静置した。デカンテーションで上澄み液を除去し、沈殿を0.09モル/リットルの希硝酸を用いて洗浄した後、デカンテーションを3回繰り返し、再び0.09モル/リットルの希硝酸水溶液を加えて全量を500 gとした。この懸濁液を70℃で1時間加熱撹拌し、ゾル状液を得た。さらに1時間加熱した後濾過し、酸化チタンゾル(S-1)に比べて透明度が高く、固形分含有率5.1質量%の酸化チタンゾル(S-2)を得た。X線回折法により、酸化チタンゾル(S-2)は結晶子サイズが5nmのアナターゼであることを確認した。従来法に比べ本発明の方法は短時間の加熱で酸化チタンゾルを調製できることがわかる。
【0097】
次に希硝酸の濃度を0.03モル/リットルとした以外は上記と同様にして酸化チタンゾル(S-2')を調製した。加熱時間は4時間を要した。このゾルは透明度こそ(S-1)に劣るものの、X線回折法の結果から、結晶子サイズが5nmのアナターゼであることがわかった。このことから、本発明の方法によれば酸触媒の量も少なくできることがわかる。
【0098】
(3) 分散安定性の評価
酸化チタンゾル(S-1,S-2)各20 mlに0.1モル/リットルのフッ化アンモニウム水溶液を滴下し、凝集が起きた時の添加量を比較した。S-1は8mlで凝集したのに対し、S-2は14 mlまで凝集しなかった。このことから、本発明の方法によって合成した酸化チタンゾルの方が分散安定性に優れることがわかる。これにより、例えばドープ等の目的で無機塩を添加する際に均一に添加することができる。
【0099】
[B] 酸化チタン微粒子の調製
(1) 比較用酸化チタン微粒子の調製
酸化チタンゾル(S-1)50 mlを内のりがテフロン(登録商標)でできたステンレス製オートクレーブ中、225℃で24時間加熱した。得られた酸化チタン分散物を10000回転で10分間遠心分離した。このとき上澄み液は不純物を含むため黄色となっていた。上澄み液をデカンテーションで除いて酸化チタンのウェットケーキ(W-1)10 gを得た。W-1は酸化チタン含有量23質量%、X線回折法により求めた結晶子サイズは11.3 nm(アナターゼ)であった。
【0100】
(2) 本発明の方法による酸化チタン微粒子の調製
酸化チタンゾル(S-2)50 mlを内のりがテフロン(登録商標)でできたステンレス製オートクレーブ中、225℃で24時間加熱した。得られた酸化チタン分散物を10000回転で10分間遠心分離した。このとき上澄み液は無色であった。上澄み液をデカンテーションで除いて酸化チタンのウェットケーキ(W-2)9.5 gを得た。W-2は酸化チタン含有量24質量%、X線回折の結果、この結晶は主としてアナターゼであり、少量のブルッカイトの副生が認められた。主成分であるアナターゼの結晶子サイズは11.5 nmであった。
【0101】
[C] 光電変換素子の作製及び評価
(1) 酸化チタン塗布液の調製
酸化チタンウェットケーキ(W-1,W-2)各10 g、ポリエチレングリコール(分子量20000、和光純薬工業(株)製)0.7 g、及び水5gを加えてよく撹拌し、ポリエチレングリコールを溶解した。次にエタノール1g、濃硝酸0.4 mlを加えて粘度を調節し、酸化チタン塗布液(C-1,C-2)を作製した。
【0102】
(2) 色素増感酸化チタン電極の作製
フッ素をドープした酸化スズをコーティングした透明導電性ガラス(日本板硝子製、表面抵抗は約10Ω/cm2)を11枚用意し、その導電面側に塗布液(C-1,C-2)を、それぞれドクターブレードを用いて塗布した。25℃で30分間乾燥した後、電気炉(ヤマト科学(株)製マッフル炉FP-32型)により450℃で30分間焼成した。塗布、焼成前後の質量変化より単位面積あたりの塗布量を計算で求めた。
【0103】
焼成後、下記構造の色素(A)0.3ミリモル/リットルを含む吸着液に8時間浸漬した。浸漬は吸着温度40℃で、吸着液の溶媒としてエタノール:t-ブチルアルコール:アセトニトリル=1:1:2(体積比)の混合溶媒を用いて行った。色素が染着した酸化チタン電極をエタノール、アセトニトリルで順次洗浄し、色素増感酸化チタン電極(E-1,E-2)を作製した。
【0104】
【化3】
Figure 2004161589
【0105】
(3) 光電変換素子の作製
作製した色素増感酸化チタン電極基板(2cm×2cm)をこれと同じ大きさの白金蒸着ガラスと重ね合わせた(図10参照)。次に、両ガラスの隙間に毛細管現象を利用して電解液(ヨウ化1,3-ジメチルイミダゾリウム0.65モル/リットル、ヨウ素0.05モル/リットル、及びt-ブチルピリジン0.1モル/リットルを含有するアセトニトリル溶液)をしみ込ませて酸化チタン電極中に導入することにより、表1に示す光電変換素子SC-1及びSC-2を得た。これらの光電変換素子は図10に示すように導電性ガラス1(ガラス2上に導電層3が設層されたもの)、色素吸着酸化チタン層4、電荷輸送層5、白金層6及び ガラス7が順次積層された構造を有する。
【0106】
【表1】
Figure 2004161589
【0107】
(4) 光電変換効率の測定
500 Wのキセノンランプ(ウシオ(株)製)の光を分光フィルター(Oriel社製、AM1.5)を通すことにより模擬太陽光を発生させた。光の強度は垂直面において102 mW/cm2であった。光電気化学電池の導電性ガラスの端部に銀ペーストを塗布して負極とし、この負極と白金蒸着ガラス(正極)を電流電圧測定装置(ケースレーSMU238型)に接続した。模擬太陽光を垂直に照射しながら電流電圧特性を測定し、変換効率を求めた。作製した光電変換素子の光電変換特性を表2に示す。
【0108】
【表2】
Figure 2004161589
【0109】
SC-1は従来法で作製した酸化チタン微粒子からなり、SC-2は加水分解によって生成した2-プロパノールをデカンテーションにより除去する本発明の方法で作製した酸化チタン微粒子からなる。SC-1及びSC-2に用いた酸化チタン微粒子の粒子径はそれぞれ11.3 nm及び11.5 nmでありほぼ等しい。SC-2(本発明)はSC-1(比較例)に比べて短絡電流密度及び形状因子(FF)が高いので、結果として光電変換効率が高いことわかる。
【0110】
実施例2
希硝酸の濃度を0.12モル/リットルとした以外は実施例1[A](2)と同様の方法で酸化チタンゾル(S-3)を合成した。S-3は透明度及び分散性ともにきわめて良好であった。
【0111】
次にS-3を用いた以外は実施例1[B](2)と同様の方法で酸化チタン微粒子を合成した。得られたウェットケーキ(W-3)のX線回折法により求めた結晶型はアナターゼとルチルの混合物であり、少量のブルッカイトの副生も認められた。アナターゼの結晶子サイズは11.0 nm、ルチルの結晶子サイズは30 nm以上であった。
【0112】
硝酸の濃度を0.03モル/リットル、酢酸の濃度を0.3モル/リットルとした以外は実施例1[A](2)と同様の方法で酸化チタンゾル(S-4)を合成した。S-4は透明度及び分散性ともに良好なゾルであった。次にS-4を用いた以外は実施例1[B](2)と同様の方法で酸化チタン微粒子を合成した。得られたウェットケーキ(W-4)のX線回折法により求めた結晶型は純アナターゼであり、ブルッカイトの副生は認められなかった。アナターゼの結晶子サイズは10.9 nmであった。
【0113】
得られた酸化チタン微粒子(W-3,W-4)を用い、実施例1と同様の方法でそれぞれTiO2塗布重量16.2 g/m2の光電変換素子(SC-3,SC-4)を作製し、光電変換効率を測定した。
【0114】
【表3】
Figure 2004161589
【0115】
以上の結果から、ルチルを含有する酸化チタン粒子を用いた場合、色素増感光電変換素子の変換効率が低下することがわかる。一方、ルチルもブルッカイトも含まない純アナターゼの酸化チタン粒子を用いると色素増感光電変換素子の変換効率が向上することがわかる。
【0116】
実施例3
(1) 酸化チタン微粒子の調製
酸化チタンゾル(S-4)50 mlを内のりがテフロン(登録商標/200〜240℃の加熱用)またはチタン(260〜280℃の加熱用)でできたステンレス製オートクレーブ中で表4に示す温度及び時間で加熱した。得られた酸化チタン分散物を10000回転で10分間遠心分離した。上澄み液をデカンテーションで除いて酸化チタンのウェットケーキ(W-5〜12)を得た。表4にX線回折法により求めた酸化チタン微粒子の結晶系及び結晶子サイズを示す。
【0117】
【表4】
Figure 2004161589
【0118】
W-5〜9は異なる加熱温度で作製した酸化チタン微粒子である。加熱温度が高いほど生成する粒子の結晶子サイズが大きくなることがわかる。また、加熱温度が280℃であっても結晶系はアナターゼでありルチルは生成しないことがわかる。W-6、W-10及びW-11は同じ加熱温度(225℃)で、異なる加熱時間により作製した酸化チタン微粒子である。加熱時間が長いほど結晶子サイズが大きくなることがわかる。また、W-12から加熱時間が80時間であっても結晶系はアナターゼでありルチルは生成しないことがわかる。
【0119】
(2) 光電変換素子の作製及び評価
酸化チタンウェットケーキW-5〜11を使用した以外実施例1[C]と同様の方法でそれぞれ色素増感酸化チタン電極(E-5〜11)及び光電変換素子(SC-5〜11)を作製し、評価を行った。SC-5〜11の結果を表5に示す。
【0120】
【表5】
Figure 2004161589
【0121】
SC-5〜9の比較から、加熱温度は光電変換効率が高いので200〜260℃が好ましく、225〜240℃がより好ましいことがわかる。SC-6,SC-10,及びSC-11の比較から、加熱温度が225℃のもののうち、加熱時間が20時間の酸化チタン粒子を用いた光電変換素子が最も変換効率が高いことがわかる。
【0122】
【発明の効果】
上記の通り、本発明の方法は短時間で分散安定性の良い酸化チタンゾルを得ることができる。この酸化チタンゾルを圧力容器中で加熱して得られる酸化チタン微粒子を用いることにより光電変換効率に優れた色素増感光電変換素子を得ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図2】本発明の好ましい別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図3】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図4】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図5】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図6】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図7】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図8】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図9】本発明の好ましいさらに別の実施例による光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【図10】実施例1で作製した光電変換素子の構造を示す部分断面図である。
【符号の説明】
10・・・導電層
10a・・・透明導電層
11・・・金属リード
20・・・感光層
21・・・半導体微粒子
22・・・色素
23・・・電荷輸送材料
30・・・電荷輸送層
40・・・対極導電層
40a・・・透明対極導電層
50・・・基板
50a・・・透明基板
60・・・下塗り層

Claims (6)

  1. オルトチタン酸エステルの加水分解工程と、前記加水分解工程により生成した加水分解物の酸接触脱水工程を有する酸化チタンゾルの製造方法であって、前記酸接触脱水工程の前に反応液中に含まれるアルコールを除去する工程を有することを特徴とする酸化チタンゾルの製造方法。
  2. 請求項1に記載の酸化チタンゾルの製造方法において、前記酸接触脱水工程の酸触媒として0.005〜0.09モル/リットルの強酸を用いることを特徴とする酸化チタンゾルの製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載の酸化チタンゾルの製造方法において、前記酸接触脱水工程時に添加剤として0.1〜1モル/リットルの水溶性カルボン酸を加えることを特徴とする酸化チタンゾルの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の方法により作製された酸化チタンゾルを加圧しながら加熱することを特徴とする酸化チタン微粒子の製造方法。
  5. 請求項4に記載の方法により作製された酸化チタン微粒子を含有することを特徴とする色素増感光電変換素子。
  6. 請求項5に記載の色素増感光電変換素子を用いたことを特徴とする光電池。
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