JP2004006752A - 磁気センサおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】X軸磁気抵抗効果素子、Y軸磁気抵抗効果素子およびZ軸磁気抵抗効果素子と、これらの磁気抵抗効果素子が配される基板とを備え、これら3個の磁気抵抗効果素子が、各ピンド層の磁化の向きが互いに3次元方向に交差するように基板に配されている磁気センサ。基板は斜面を有する溝を備え、溝の内部に少なくとも1個の磁気抵抗効果素子を配置する。複数の帯状部と該複数の帯状部のうち隣接する2つを接続するバイアス磁石とからなる3個以上の磁気抵抗効果素子と、該磁気抵抗効果素子が配設される基板とを備え、3個以上の磁気抵抗効果素子のうち少なくとも1個は複数の帯状部が基板に互いに隣り合って平行に形成された複数の楔型溝の斜面上に配置されたものである磁気センサ。
【選択図】 図1
Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ピンド層とフリー層とを含んでなる磁気抵抗効果素子を用いた磁気センサおよびその製造方法に関し、特に磁気センサの表面に垂直な方向の磁場を測定する高感度の磁気センサおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、磁気センサに使用される素子として、磁気抵抗効果素子が用いられている。これには、異方性磁気抵抗効果素子(AMR素子)、巨大磁気抵抗効果素子(GMR素子)、および磁気トンネル効果素子(TMR素子)がある。AMR素子は、MR膜からなり、外部磁界により、この膜の磁化が回転することにより、MR膜の抵抗値が変化するので、この出力により外部磁界の向きを検出することができる。
一方、GMR素子、TMR素子は、磁界の変化をより感度よく検出することができることで知られている。これらの磁気抵抗効果素子は、磁化の向きが所定の向きにピン(固定)されたピンド層と、磁化の向きが外部磁界に応じて変化するフリー層とを備えており、ピンド層の磁化の向きと、フリー層の磁化の向きの相対関係に応じた抵抗値を出力として示す。
このような素子を、直交する2方向(ここでは、以下「直交する2方向」を「X軸方向、Y軸方向」とする。)の磁界の変化をそれぞれ検出するように、それぞれ1個づつ直交するように配置する。その際、それぞれを数個づつの素子群としてブリッジ接続するのが一般的である。そして、それぞれの素子の出力(抵抗値の変化)を得ることにより、外部磁界の向きを検出することができる。
その結果、図18に示すように、一方向への一様な磁界中で、その磁界方向を含む面内で磁気センサを回転させたとき、X軸センサ出力とY軸センサ出力が90°位相のずれた形の正弦波出力となる、いわゆる二次元(二軸)磁気センサとなる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
通常、二次元での方位を求めるには、X軸方向の出力を検出するXセンサと、Y軸方向の出力を検出するYセンサを一対にして、図18に示すように、2方向の磁界に対して感応する二次元磁気センサを形成して、X軸方向およびY軸方向の出力をそれぞれ測定し、sinθとcosθから方位を検出する。これにより、二次元平面において、どの方位を指しているかを求めることができる。
一方、二次元平面ではなく、空間での方位、すなわち、三次元的に方位が求められる必要のある場合がある。例えば、医療用途において、体内における治療対象部位の位置を特定するために、体内に内視鏡やカテーテルなどを挿入した際に、これら医療機器の先端の位置や、姿勢を検出する必要がある。このような用途では、磁気の方位を三次元的(X方向、Y方向だけでなくZ方向)に精度良く求める必要がある。従来、このような三次元的に方位を求めることが可能な三次元磁気センサを同一基板上に作製することができないため、薄型の三次元磁気センサが得られていなかった。したがって、携帯電話などの小型の機器には、三次元磁気センサを搭載することができなかった。
【0004】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、単一の基板上に三次元方向に交差するように配置された磁気抵抗効果素子を有する磁気センサおよびその製造方法を提供することを課題とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記課題は、同一の3個以上の磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子が配設される単一基板と、前記磁気抵抗効果素子を構成する磁気抵抗効果膜の磁化の向きが、互いに三次元方向に交差するように形成された磁気センサによって解決できる。
上記磁気センサにおいて、前記単一の基板は少なくとも1の斜面を有する溝を備え、当該溝の内部に、前記3個以上の磁気抵抗効果素子のうち、少なくとも1個が配置されていることが好ましい。
前記課題は、複数の帯状部と該複数の帯状部のうち隣接する2つを接続するバイアス磁石とからなる3個以上の磁気抵抗効果素子と、該磁気抵抗効果素子が配設される単一基板とを備えた磁気センサであって、前記3個以上の磁気抵抗効果素子のうち少なくとも1個は、前記複数の帯状部が前記単一基板に互いに隣り合って平行に形成された複数の楔型溝の斜面上に配置されたものである磁気センサによって解決できる。
上記磁気センサにおいて、前記複数の帯状部のうち隣接する2つの帯状部は、前記楔型溝の対向する2つの斜面上にそれぞれ配置されたことが好ましい。
上記磁気センサにおいて、前記磁気抵抗効果素子の抵抗値の出力結果を加減演算することにより、三次元方向の出力結果を得ることが好ましい。
【0006】
また、前記課題は、基板上に複数の楔型溝を形成する工程と、該複数の楔型溝の斜面上に、磁気抵抗効果素子のうち少なくとも1個の素子のピンド層となる磁性層を含む層を所定の形状に形成する工程と、該ピンド層となる磁性層を含む層を磁化して、該ピンド層の磁化の向きを固定する工程とを含む磁気センサの製造方法によって解決できる。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。
図1は、本発明の磁気センサの第1の実施形態を示す概略構成図で、図1(a)は平面図、図1(b)は断面図である。また、図2は、本発明の磁気センサで用いられる磁気抵抗効果素子を示す概略構成図で、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図である。
この実施形態の磁気センサは、例えば、SiO2/Si、ガラスまたは石英からなる略正方形状の基板1と、X軸方向の磁界を検出するX軸磁気抵抗効果素子2、Y軸方向の磁界を検出するY軸磁気抵抗効果素子3、Z軸方向の磁界を検出するZ軸磁気抵抗効果素子4と、バイアス磁界用のコイル(図示略)と、複数の電極パッド(図示略)とから概略構成されている。
X軸磁気抵抗効果素子2とY軸磁気抵抗効果素子3は基板1の同一表面1a上に形成されており、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きは、基板1の表面1aと平行な一方向となっており、Y軸磁気抵抗効果素子3のピンド層の磁化の向きは、基板1の表面1aと平行な一方向となっている。さらに、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きと、Y軸磁気抵抗効果素子3のピンド層の磁化の向きとが直交している。
また、この実施形態の磁気センサには、楔型溝5が、基板1の一辺に平行で、この一辺の近傍、かつこの一辺の中央部近傍に形成されている。
このように、楔型溝5の斜面5a上に、Z軸磁気抵抗効果素子4が配されていることにより、X軸、Y軸、Z軸の3次元方向の地磁気レベルの磁界測定が可能となる。
【0008】
X軸磁気抵抗効果素子2、Y軸磁気抵抗効果素子3、Z軸磁気抵抗効果素子4は、図2に示すように、互いに隣り合って平行に配置された複数の帯状部2a、3a、4aが、バイアス磁石2b、3b、4bを介して接続されている。
X軸磁気抵抗効果素子2、Y軸磁気抵抗効果素子3、Z軸磁気抵抗効果素子4は、これらの磁気抵抗効果素子が巨大磁気抵抗素子(GMR素子)の場合、膜厚2.4nmのタンタル(Ta)、膜厚24.0nmの白金−マンガン(Pt−Mn)、膜厚2.2nmのコバルト−鉄(Co−Fe)、膜厚2.4nmの銅(Cu)、膜厚1.2nmのコバルト−鉄(Co−Fe)、膜厚3.3nmのニッケル−鉄(Ni−Fe)、膜厚8.0nmのコバルト−ジルコニウム−ニオブ(Co−Zr−Nb)などの金属薄膜がこの順に積層された積層体で形成されている。
【0009】
以下、この実施形態の磁気センサの製造方法について説明する。
図3および図4は、この実施形態の磁気センサの製造方法の第1の例を示す断面模式図である。
この磁気センサの製造方法では、まず、図3(a)に示すように、厚さ数mm程度のシリコン基板11を、900〜1100℃で熱酸化し、表面に厚さ500nm程度の二酸化ケイ素(SiO2)層12を形成する。
【0010】
次に、図3(b)に示すように、二酸化ケイ素層12の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、楔型溝を形成する部分のみが開口するように、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、楔型溝を形成するための開口部を有する第1のレジスト膜13を形成する。第1のレジスト膜13の厚さは、0.8〜1μm程度が好ましい。
第1のレジスト膜13として用いられるフォトレジストは、光や紫外線照射により感度よく架橋反応を起こして硬化し、未露光部が溶媒に可溶化(ネガ型)する樹脂であり、高解像度の任意形状を形成することができる樹脂である。また、現像液としては、専用の剥離液、アセトンなどの有機溶剤、アルカリ水溶液などが用いられる。なお、ネガレジストの代わりに、ポジレジストを用いてもよい。
【0011】
次に、シリコン基板11、二酸化ケイ素層12、第1のレジスト膜13からなる積層体を、バッファドフッ酸に浸漬し、図3(c)に示すように、第1のレジスト膜13で保護されていない部分の二酸化ケイ素層12を除去する。
【0012】
次に、図3(d)に示すように、第1のレジスト膜13を除去する。レジスト膜13を除去するには、N−メチル−2−ピロリドンで、第1のレジスト膜13と二酸化ケイ素層12の界面を洗浄する。このとき、シリコン基板11、二酸化ケイ素層12、第1のレジスト膜13からなる積層体を、N−メチル−2−ピロリドン中に浸漬し、85℃で、超音波洗浄すれば、第1のレジスト膜13の除去を効率的に行なうことができる。
【0013】
次に、図3(e)に示すように、シリコン基板11、二酸化ケイ素層12からなる積層体を、水酸化カリウムの50%水溶液に浸漬し、90℃でエッチングする。これにより、シリコン基板11の二酸化ケイ素層12が形成されていない部分が、(111)面が出るようにエッチングされ、楔型溝14が形成される。
【0014】
次に、図4(a)に示すように、二酸化ケイ素層12の表面上および楔型溝14内に、スパッタリング法によって、下地膜15を形成する。
下地膜15としては、チタン(Ti)またはクロム(Cr)300μm/コバルト(Co)−白金(Pt)−Cr1000μmを用いることができる。
【0015】
次に、下地膜15の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、任意の下地膜15のパターンを有する第2のレジスト膜16を形成する。
次に、図4(b)に示すように、第2のレジスト膜16で保護されていない部分の下地膜15を、イオンミリングにより除去し、下地膜15を任意形状に形成する。
【0016】
次に、図4(c)に示すように、第2のレジスト膜16を除去する。第2のレジスト膜16を除去するには、第1のレジスト膜13を除去するのと同様な方法が用いられる。
【0017】
次に、GMR素子をなすGMR多層膜17を、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などによって、二酸化ケイ素層12および下地膜15の表面上に形成する。
GMR多層膜17は、シリコン基板11上に、順に積層されたフリー層と、膜厚が2.4nmの銅(Cu)からなる導電性のスペーサ層と、ピンド層と、膜厚が2.4nmのタンタル(Ta)からなるキャッピング層とからなっている。
【0018】
フリー層は、外部磁界の向きに応じて磁化の向きが変化する層であり、シリコン基板11の直上に形成された膜厚が8.0nmのコバルト−ジルコニウム−ニオブ(Co−Zr−Nb)アモルファス磁性層と、この上に形成された膜厚が3.3nmのニッケル−鉄(Ni−Fe)磁性層と、さらに、この上に形成された膜厚が1.2nmのコバルト−鉄(Co−Fe)層とからなっている。
Co−Zr−Nbアモルファス磁性層とNi−Fe磁性層は、軟質強磁性体薄膜層を構成している。Co−Fe層は、MR比を高めるものである。
【0019】
ピンド層は、膜厚が2.2nmのコバルト−鉄(Co−Fe)磁性層と、白金を45〜55mol%含む白金−マンガン(Pt−Mn)合金から形成した膜厚が24.0nmの白金−マンガン(Pt−Mn)反強磁性層とが積層されたものである。
Co−Fe磁性層は、着磁(磁化)されたPt−Mn反強磁性層に交換結合的に裏打ちされることにより磁化(磁化ベクトル)の向きがピン(固着)されるピンド層を構成している。
【0020】
次に、GMR多層膜17の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、任意のGMR多層膜17のパターンを有する第3のレジスト膜(図示略)を形成する。
次に、第3のレジスト膜で保護されていない部分のGMR多層膜17を、イオンミリングにより除去し、GMR多層膜17を任意形状に形成する。
次に、図4(d)に示すように、第3のレジスト膜を除去する。第3のレジスト膜を除去するには、第1のレジスト膜13を除去するのと同様な方法が用いられる。
得られた積層体を、永久磁石上に載置して熱処理し、ピンド層の磁化の向きを固定し、磁気センサを得る。
【0021】
図5は、この実施形態の磁気センサの製造方法の第2の例を示す断面模式図である。
この磁気センサの製造方法では、前記第1の例において、図3(b)〜(e)に示した工程を以下のようにする。
図5(a)に示すように、二酸化ケイ素層12の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、テーパ状の溝を形成する部分のみが開口するように、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、テーパ状の開口部を有する第1のレジスト膜13を形成する。第1のレジスト膜13の厚さは、0.8〜1μm程度が好ましい。次いで、イオンミリングにより、第1のレジスト膜13の開口部の端部に斜面を一旦、形成する。次いで、第1のレジスト膜13の開口部のレジストを加熱し、リフローさせて、開口部端部をテーパ状に形成する。
【0022】
次に、図5(b)に示すように、イオンミリングにより、第1のレジスト膜13で保護されていない部分のシリコン基板11および二酸化ケイ素層12を削る。このとき、第1のレジスト膜13の開口部のテーパ形状をトレースすれば、図5(b)に示すような、向い合う斜面と、この斜面に挟まれた底面とからなる断面台形状の溝14が形成される。
次いで、図5(c)に示すように、第1のレジスト膜13を除去する。
【0023】
図6および図7は、この実施形態の磁気センサの製造方法の第3の例を示す断面模式図である。
この磁気センサの製造方法では、まず、図6(a)に示すように、厚さ数mm程度のシリコン基板11を、900〜1100℃で熱酸化し、表面に厚さ500nm程度の二酸化ケイ素(SiO2)層12を形成する。
【0024】
次に、図6(b)に示すように、二酸化ケイ素層12の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、楔型溝を形成する部分のみが開口するように、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、楔型溝を形成するための開口部を有する第1のレジスト膜13を形成する。第1のレジスト膜13の厚さは、0.8〜1μm程度が好ましい。
第1のレジスト膜13として用いられるフォトレジストは、光や紫外線照射により感度よく架橋反応を起こして硬化し、未露光部が溶媒に可溶化(ネガ型)する樹脂であり、高解像度の任意形状を形成することができる樹脂である。また、現像液としては、専用の剥離液、アセトンなどの有機溶剤、アルカリ水溶液などが用いられる。なお、ネガレジストの代わりに、ポジレジストを用いてもよい。
【0025】
次に、シリコン基板11、二酸化ケイ素層12、第1のレジスト膜13からなる積層体を、バッファドフッ酸に浸漬し、図6(c)に示すように、第1のレジスト膜13で保護されていない部分の二酸化ケイ素層12を除去する。
【0026】
次に、図6(d)に示すように、第1のレジスト膜13を除去する。レジスト膜13を除去するには、N−メチル−2−ピロリドンで、第1のレジスト膜13と二酸化ケイ素層12の界面を洗浄する。このとき、シリコン基板11、二酸化ケイ素層12、第1のレジスト膜13からなる積層体を、N−メチル−2−ピロリドン中に浸漬し、85℃で、超音波洗浄すれば、第1のレジスト膜13の除去を効率的に行なうことができる。
【0027】
次に、図6(e)に示すように、シリコン基板11、二酸化ケイ素層12からなる積層体を、水酸化カリウムの50%水溶液に浸漬し、90℃でエッチングする。これにより、シリコン基板11の二酸化ケイ素層12が形成されていない部分が、(111)面が出るようにエッチングされ、楔型溝14が形成される。
【0028】
次に、図6(f)に示すように、二酸化ケイ素層12の表面上および楔型溝14内に、スパッタリング法によって、下地膜15を形成する。
下地膜15としては、チタン(Ti)またはクロム(Cr)300μm/コバルト(Co)−白金(Pt)−Cr1000μmを用いることができる。
【0029】
次に、下地膜15の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、任意の下地膜15のパターンを有する第2のレジスト膜(図示略)を形成する。
次に、図7(a)に示すように、第2のレジスト膜で保護されていない部分の下地膜15を、イオンミリングにより除去し、下地膜15を任意形状に形成する。これにより、楔型溝14内の一方の斜面と、二酸化ケイ素層12の表面の一部にのみ、下地膜15が存在するようにする。
【0030】
次に、GMR素子をなす第1のGMR多層膜18を、斜めスパッタリング法などによって、二酸化ケイ素層12および下地膜15の表面全面に形成する。
次に、第1のGMR多層膜18の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、任意の第1のGMR多層膜18のパターンを有する第3のレジスト膜(図示略)を形成する。
次に、第3のレジスト膜で保護されていない部分の第1のGMR多層膜18を、イオンミリングにより除去し、第1のGMR多層膜18を任意形状に形成する。これにより、図7(b)に示すように、楔型溝14内に形成された下地膜15の表面上にのみ、第1のGMR多層膜18が存在するようにする。
【0031】
次に、図7(c)に示すように、二酸化ケイ素層12、下地膜15および第1のGMR多層膜18の表面全面に、スパッタリング法により、厚さ300nm程度の酸化ケイ素(SiO)層19を形成する。
次に、図7(d)に示すように、イオンミリングなどにより、酸化ケイ素層19を貫通して、内層の下地膜15が露出するように、円形状のコンタクトホール20を形成する。
【0032】
次に、再び、酸化ケイ素層19の表面全面にスパッタリング法によって、下地膜15を形成する。このとき、コンタクトホール20内にも、下地膜15を形成し、酸化ケイ素層19の下層の下地膜15と接合するようにする。
次に、この下地膜15の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、任意の下地膜15のパターンを有する第4のレジスト膜(図示略)を形成する。
次に、図7(e)に示すように、第4のレジスト膜で保護されていない部分の下地膜15を、イオンミリングにより除去し、下地膜15を任意形状に形成する。
【0033】
次に、第2のGMR多層膜21を、スパッタリング法などによって、下地膜15および酸化ケイ素層19の表面全面に形成する。
次に、第2のGMR多層膜21の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、任意の第2のGMR多層膜21のパターンを有する第5のレジスト膜(図示略)を形成する。
次に、第5のレジスト膜で保護されていない部分の第2のGMR多層膜21を、イオンミリングにより除去し、第2のGMR多層膜21を任意形状に形成する。
次に、第5のレジスト膜を除去し、図7(f)に示すような磁気センサを得る。
【0034】
図8は、本発明の磁気センサの第2の実施形態を示す概略構成図で、図8(a)は平面図、図8(b)は図8(a)のA―Aで切断した断面図である。なお、図8中、図1と同じ構成要素には同一符号を付し、説明を省略する。
図11は、本発明の磁気センサで用いられる斜面型の磁気抵抗効果素子の一例を示す概略構成図で、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)のB―Bで切断した断面図、図11(c)は図11(a)のC―Cで切断した断面図である。
【0035】
この実施形態の磁気センサは、基板1と、X軸磁気抵抗効果素子2と、Y軸磁気抵抗効果素子3と、Z軸方向の磁界を検出するZ軸磁気抵抗効果素子24と、バイアス磁界用のコイル(図示略)と、複数の電極パッド(図示略)とから概略構成されている。
X軸磁気抵抗効果素子2とY軸磁気抵抗効果素子3は基板1の同一表面1a上に形成されており、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きd1は、基板1の表面1aと平行な一方向となっており、Y軸磁気抵抗効果素子3のピンド層の磁化の向きd2は、基板1の表面1aと平行な一方向となっている。さらに、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きd1と、Y軸磁気抵抗効果素子3のピンド層の磁化の向きd2とが直交している。
また、この例の磁気センサには、互いに隣り合って平行に形成された複数の楔型溝25aからなる溝25が、基板1の一辺に平行で、この一辺の近傍、かつこの一辺の中央部近傍に形成されている。そして、楔型溝25aの斜面25b、25b、・・・上には、Z軸磁気抵抗効果素子24が配置されている。Z軸磁気抵抗効果素子24のピンド層の磁化の向きd2は、基板1の表面1aに垂直な方向となっており、Z軸磁気抵抗効果素子24のピンド層の磁化の向きと、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きおよびY軸磁気抵抗効果素子3のピンド層の磁化の向きとが直交している。
このように、楔型溝25aの斜面25b上に、Z軸磁気抵抗効果素子24が配置されていることにより、X軸、Y軸、Z軸の3次元方向の地磁気レベルの磁界測定が可能となる。
【0036】
Z軸磁気抵抗効果素子24は、図11に示すように、基板1に互いに隣り合って平行に形成された複数の楔型溝25aの斜面25b上に形成され、互いに隣り合って平行に配置された複数の帯状部(磁気抵抗効果膜)24aの端部が、楔型溝25aの斜面25b上に形成されたバイアス磁石24bを介して接続されている。また、この例では、複数の帯状部24aのうち隣接する2つの帯状部24aが、楔型溝25aの対向する2つの斜面25b上にそれぞれ配置されている。
また、Z軸磁気抵抗効果素子24において、図11(b)に示すように、楔型溝25aの対向する2つの斜面25b上に配置された2つの帯状部24a同士の接続では、帯状部24aの一方の端部がバイアス磁石24bによって楔型溝25aの谷側で接続されており、楔型溝25aの対向していない2つの斜面25b上に配置された2つの帯状部24a同士の接続では、帯状部24aの他方の端部がバイアス磁石24bによって楔型溝25aの山側で接続されている。
なお、この例では、1つの楔型溝25aの2つの斜面25b上に、帯状部24aがそれぞれ形成されたZ軸磁気抵抗効果素子24の例を示したが、本発明はこれに限定されるものではない。本発明の磁気センサにあっては、Z軸磁気抵抗効果素子4が、対向する2つの斜面25bのどちらか一方の斜面にのみ帯状部24aが形成され、各帯状部が他方の斜面および楔型溝25aの山側もしくは谷側とでバイアス磁石によって接続されたものであってもよい。
【0037】
Z軸磁気抵抗効果素子24において、これが形成される楔型溝25aの深さhは5μm〜10μm程度であることが好ましい。
さらに、Z軸磁気抵抗効果素子24において、これが形成される楔型溝25a斜面25bと基板1の表面1aまたは底面とのなす角度は60°〜80°程度であることが好ましく、70°程度がより好ましい。
【0038】
Z軸磁気抵抗効果素子24は、これらの磁気抵抗効果素子が巨大磁気抵抗素子(GMR素子)の場合、膜厚2.4nmのタンタル(Ta)、膜厚24.0nmの白金−マンガン(Pt−Mn)、膜厚2.2nmのコバルト−鉄(Co−Fe)、膜厚2.4nmの銅(Cu)、膜厚1.2nmのコバルト−鉄(Co−Fe)、膜厚3.3nmのニッケル−鉄(Ni−Fe)、膜厚8.0nmのコバルト−ジルコニウム−ニオブ(Co−Zr−Nb)などの金属薄膜がこの順に積層された積層体で形成されている。
【0039】
この実施形態の磁気センサのように、Z軸磁気抵抗効果素子24のみを斜面型の磁気抵抗効果素子とした磁気センサ(以下、便宜的に「第1センサ」とする。)では、各磁気抵抗効果素子に対する配線が容易であるという利点がある。
なお、本発明の磁気センサは、この例の磁気センサに限定されるものではなく、Y軸磁気抵抗効果素子およびZ軸磁気抵抗効果素子が斜面型の磁気抵抗効果素子からなる磁気センサ(以下、便宜的に「第2センサ」とする。)であってもよく、X軸磁気抵抗効果素子、Y軸磁気抵抗効果素子およびZ軸磁気抵抗効果素子の全てが斜面型の磁気抵抗効果素子からなる磁気センサ(以下、便宜的に「第3センサ」とする。)であってもよい。
第2センサは第1センサと比較すると小面積で済むため、小型化が可能となり、第3センサは全ての磁気抵抗効果素子を同一の製造条件、すなわち斜面に形成することができるので、プロセス条件を制御する必要がなく、製造が容易となる。
【0040】
ここで、図11(b)に示すように、楔型溝25aの斜面25b上に、対向するように形成された2つの帯状部24aのそれぞれを、磁気抵抗効果膜D、Eとする。
図8に示したような磁気センサに対し、1Oe(エルステッド)の磁場を磁気センサのX軸の回りに回転させ、Z軸磁気抵抗効果素子24で検出される磁場の強さの変化を測定した結果を図12に示す。ここで用いた磁気センサに備えられたZ軸磁気抵抗効果素子24はGMR素子である。なお、この図中、回転角度0°がZ軸、すなわち基板1の表面1aに垂直な方向を示している。
図12の結果から、磁気抵抗効果膜Dと磁気抵抗効果膜Eは、Z軸に対して互いに対称に磁場の強さが変化するので、磁気抵抗効果膜Dと磁気抵抗効果膜Eを直列接続させた特性(図12中のTotal)は、Z軸方向の磁気センサとして機能する。すなわち、各出力結果の和が三次元方向の出力結果となっている。したがって、このような斜面型のZ軸磁気抵抗効果素子と、従来の平面型のX軸磁気抵抗効果素子およびY軸磁気抵抗効果素子とが同一基板上に設けられた磁気センサは、三次元磁気センサとして機能する。さらに、このような三次元磁気センサは、より薄型かつ小型とすることができるから、携帯電話などの小型の機器にも適用可能なものとなる。
【0041】
以下、この実施形態の磁気センサの製造方法について説明する。
図13および図14は、この実施形態の磁気センサの製造方法を示す断面模式図である。
この磁気センサの製造方法では、まず、図13(a)に示すように、厚さ数mm程度のシリコン基板31の表面上に、プラズマCVD法により、厚さ500nm程度の二酸化ケイ素(SiO)層32を形成する。
【0042】
次に、二酸化ケイ素層32の表面上に、所定量のフォトレジストを塗布し、焼き付け、厚さ2000nm程度のレジスト膜を形成し、このレジスト膜を所定の形状に切削して、図13(b)に示すように、シリコン基板31に楔型溝を形成するための複数の開口部を有するレジスト膜33とした。
レジスト膜33として用いられるフォトレジストは、光や紫外線照射により感度よく架橋反応を起こして硬化し、未露光部が溶媒に可溶化(ネガ型)する樹脂であり、高解像度の任意形状を形成することができる樹脂である。
【0043】
次に、図13(c)に示すように、レジスト膜33で保護されてない部分の一酸化ケイ素層32を、CHF3およびテトラフルオロメタン(CF4)の混合ガスを用いたドライエッチング法により除去した後、レジスト膜33を除去する。
レジスト膜33を除去するには、N−メチル−2−ピロリドンで、レジスト膜33と二酸化ケイ素層32の界面を洗浄する。このとき、シリコン基板31、二酸化ケイ素層32、レジスト膜33からなる積層体を、N−メチル−2−ピロリドン中に浸漬し、85℃で、超音波洗浄すれば、レジスト膜33の除去を効率的に行なうことができる。
【0044】
次に、図13(d)に示すように、二酸化ケイ素層32で保護されていない部分のシリコン基板31を、臭化水素(HBr)および四フッ化ケイ素(SiF4)の混合ガスを用いたドライエッチング法によりエッチングし、複数の楔型溝34を形成する。
次に、シリコン基板31および二酸化ケイ素層32からなる積層体を、ヨウ素、硝酸およびフッ化アンモニウムからなる溶液(混酸)に浸漬し、23℃でエッチングし、楔型溝34の表面30nm(露出した溝表面に対し、垂直方向に30nm)に表面仕上げを施す。
【0045】
次に、図14(a)に示すように、63バッファドフッ酸(フッ化水素酸6%、フッ化アンモニウム30%、純水64%)により、一酸化ケイ素層32を除去する。
【0046】
次に、図14(b)に示すように、プラズマCVD法により、下地膜35を形成する。下地膜35としては、窒化ケイ素(SiN)500nm/二酸化ケイ素(SiO)150nmを用いることができる。
【0047】
次に、下地膜35の表面上に、磁気抵抗効果素子のバイアス磁石となる磁性膜36を形成する。
次に、磁性膜36の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、所定のバイアス磁石のパターンを有するレジスト膜を形成する。
次に、このレジスト膜で保護されていない部分の磁性膜36を、イオンミリングにより除去し、磁性膜36を所定形状に形成する。
次に、レジスト膜を除去し、図14(c)に示すように、所定のバイアス磁石のパターンを有する磁性膜36を得る。このレジスト膜を除去するには、レジスト膜33を除去するのと同様な方法が用いられる。
【0048】
次に、下地膜35および磁性膜36の表面上に、スパッタリング法、真空蒸着法、イオンプレーティング法などによって、GMR素子(磁気抵抗効果素子の帯状部)をなすGMR多層膜37を形成する。
次に、GMR多層膜37の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、所定のGMR素子のパターンを有するレジスト膜を形成する。
次に、このレジスト膜で保護されていない部分のGMR多層膜37を、イオンミリングにより除去し、GMR多層膜37を所定形状に形成する。
次に、レジスト膜を除去し、図14(d)に示すように、所定のGMR素子のパターンを有するGMR多層膜37を得る。このレジスト膜を除去するには、レジスト膜33を除去するのと同様な方法が用いられる。
得られた積層体を、永久磁石上に載置して熱処理し、ピンド層の磁化の向きを固定し、磁気センサを得る。
【0049】
ここで、GMR多層膜37は、下地膜35および磁性膜36上に、順に積層されたフリー層と、膜厚が2.4nmの銅(Cu)からなる導電性のスペーサ層と、ピンド層と、膜厚が2.4nmのタンタル(Ta)からなるキャッピング層とからなっている。
フリー層は、外部磁界の向きに応じて磁化の向きが変化する層であり、シリコン基板11の直上に形成された膜厚が8.0nmのコバルト−ジルコニウム−ニオブ(Co−Zr−Nb)アモルファス磁性層と、この上に形成された膜厚が3.3nmのニッケル−鉄(Ni−Fe)磁性層と、さらに、この上に形成された膜厚が1.2nmのコバルト−鉄(Co−Fe)層とからなっている。
Co−Zr−Nbアモルファス磁性層とNi−Fe磁性層は、軟質強磁性体薄膜層を構成している。Co−Fe層は、MR比を高めるものである。
【0050】
ピンド層は、膜厚が2.2nmのコバルト−鉄(Co−Fe)磁性層と、白金を45〜55mol%含む白金−マンガン(Pt−Mn)合金から形成した膜厚が24.0nmの白金−マンガン(Pt−Mn)反強磁性層とが積層されたものである。
Co−Fe磁性層は、着磁(磁化)されたPt−Mn反強磁性層に交換結合的に裏打ちされることにより磁化(磁化ベクトル)の向きがピン(固着)されるピンド層を構成している。
【0051】
なお、上記第1の実施形態および第2の実施形態の磁気センサの製造方法では、磁気抵抗効果素子を形成する金属積層体をGMR多層膜としたが、本発明の磁気センサの製造方法にあっては、AMR膜であってもよい。
AMR膜を形成する場合、上記下地膜を、膜厚が30nmのクロム(Cr)層と、膜厚が90nmのコバルト−クロム−白金(Co−Cr−Pt)層と、膜厚が20nmのチタン(Ti)層からなるものとする。
また、AMR多層膜を、膜厚が20nmのニッケル−鉄(Ni−Fe)層と、膜厚が10nmのタンタル(Ta)層と、膜厚が30.0nmのコバルト−ジルコニウム−ニオブ(Co−Zr−Nb、モル比が、Co:Zr:Nb=79mol:9mol:12mol)層と、膜厚が1.5nmのチタン(Ti)層とからなるものとする。
【0052】
図15は、本発明の磁気センサの製造方法のさらにもう1つの例を示す断面模式図である。
上述の磁気センサの製造方法において、磁気抵抗効果素子をGMR素子で形成したが、この磁気センサの製造方法では、TMR素子で形成する。
以下にTMR素子の形成方法を示す。
まず、図15(a)に示すように、シリコンなどからなる基板41の表面上に、下部電極を構成するTiからなる膜を、膜厚30nm程度にスパッタリングにより形成し、次いで固定磁化層の反磁化層の反強磁性膜(ピンド層)を構成するためのPt−Mnからなる膜およびNi−Feからなる膜を、それぞれ膜厚が30nmおよび5nmとなるようにスパッタリングにより形成する。ここでは、これらのTa膜、Pt−Mn膜、Ni−Fe膜からなる磁性層を下磁性層42とする。
【0053】
次に、下磁性層42の表面上に、アルミニウムを1nm積層し、プラズマ酸化させて、絶縁層43となるAl2O3からなる膜を形成する。
次に、フリー層の強磁性膜を構成するNi−Feからなる膜を、例えば、スパッタリングにより膜厚が80nmとなるように形成し、その上にキャッピング層を構成するTiからなる膜を膜厚が30nmとなるように形成する。ここでは、これらのNi−Fe膜、Ti膜からなる磁性層を上磁性層44とする。
【0054】
次に、図15(b)に示すように、上磁性層44を、イオンミリングなどにより分離する。
次に、図15(c)に示すように、下磁性層42を、イオンミリングなどにより分離する。
【0055】
次に、図15(d)に示すように、層間絶縁層45を構成するSiO2からなる膜を膜厚が基板41上で300nmとなるようにスパッタリングによって形成する。
次に、図15(e)に示すように、層間絶縁層45に、イオンミリングなどによりコンタクトホール46を形成する。
【0056】
次に、図15(f)に示すように、層間絶縁層45の表面全面およびコンタクトホール46内にアルミニウム膜を、その膜厚が300nmとなるようにスパッタリングにより形成し、これを配線形状に加工して、上部電極47を形成し、TMR素子を備えた磁気センサを得る。
【0057】
このように、本発明の磁気センサの製造方法によれば、ピンド層の磁化の向きが互いに3次元方向に交差するように、複数の磁気抵抗効果素子が微小な単一基板に配された磁気センサを高精度に、容易に製造することができる。また、この製造方法によれば、このような同一の磁気センサを一度に大量に製造することができるので、製造コストを低減することができる。
【0058】
図3および図4に示した製造方法の第1の例によって製造された、図1に示したような第1の実施形態の磁気センサに対し、磁化の向きを確認するために、1Oe(エルステッド)の磁場を磁気センサの回りに回転させ、X軸磁気抵抗効果素子2、Y軸磁気抵抗効果素子3、Z軸磁気抵抗効果素子4で検出される磁場の強さの変化を測定した。ここで用いた磁気センサに備えられたX軸磁気抵抗効果素子2、Y軸磁気抵抗効果素子3、Z軸磁気抵抗効果素子4はGMR素子である。
結果を図16に示す。図16(a)はX軸磁気抵抗効果素子2における測定結果を、図16(b)はY軸磁気抵抗効果素子3における測定結果を、図16(c)はZ軸磁気抵抗効果素子4における測定結果をそれぞれ示す。
【0059】
図16(a)の結果から、X軸磁気抵抗効果素子2では、X軸方向の磁場の変化が余弦波状に測定され、Y軸方向の磁場の変化が正弦波状に測定され、Z軸方向の磁場の変化が余弦波状に測定されるものの、測定強度が低いことが確認された。これにより、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きがX軸方向と平行になっていることが確認された。
また、図16(b)の結果から、Y軸磁気抵抗効果素子3では、Y軸方向の磁場の変化が余弦波状に測定され、Z軸方向の磁場の変化は正弦波状に測定されるものの、測定強度が低く、X軸方向の磁場の変化が測定されないことが確認された。これにより、Y軸磁気抵抗効果素子3のピンド層の磁化の向きがY軸方向と平行になっていることが確認された。
また、図16(c)の結果から、Z軸磁気抵抗効果素子4では、X軸方向の磁場の変化が余弦波状に測定され、Z軸方向の磁場の変化が、X軸方向の磁場の変化より約55°位相が遅れて測定され、Y軸方向の磁場の変化が測定されないことが確認された。これにより、Z軸磁気抵抗効果素子4のピンド層の磁化の向きが、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きと約55°の角度で交差していることが確認された。
【0060】
また、図5に示した製造方法の第2の例によって製造された、図1に示したような第1の実施形態の磁気センサに対し、磁化の向きを確認するために、1Oe(エルステッド)の磁場を磁気センサの回りに回転させ、X軸磁気抵抗効果素子2、Y軸磁気抵抗効果素子3、Z軸磁気抵抗効果素子4で検出される磁場の強さの変化を測定した。結果を図17に示す。図17(a)はX軸磁気抵抗効果素子2における測定結果を、図17(b)はY軸磁気抵抗効果素子3における測定結果を、図15(c)はZ軸磁気抵抗効果素子4における測定結果をそれぞれ示す。
【0061】
図17(a)の結果から、X軸磁気抵抗効果素子2では、X軸方向の磁場の変化が余弦波状に測定され、Y軸方向の磁場の変化が正弦波状に測定され、Z軸方向のの磁場の変化が正弦波状に測定されることが確認された。これにより、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きがX軸方向と平行になっていることが確認された。
また、図17(b)の結果から、Y軸磁気抵抗効果素子3では、Y軸方向の磁場の変化が余弦波状に測定され、Z軸方向の磁場の変化は正弦波状に測定されるものの、測定強度が低く、X軸方向の磁場の変化が測定されないことが確認された。これにより、Y軸磁気抵抗効果素子3のピンド層の磁化の向きがY軸方向と平行になっていることが確認された。
また、図17(c)の結果から、Z軸磁気抵抗効果素子4では、X軸方向の磁場の変化が余弦波状に測定され、Z軸方向の磁場の変化が、X軸方向の磁場の変化より約15°位相が遅れて測定され、Y軸方向の磁場の変化が測定されないことが確認された。これにより、Z軸磁気抵抗効果素子4のピンド層の磁化の向きが、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きと約15°の角度で交差していることが確認された。
【0062】
このように、本発明の磁気センサによれば、X軸磁気抵抗効果素子、Y軸磁気抵抗効果素子、Z軸磁気抵抗効果素子のそれぞれにおいて、磁場の変化を測定する感度が異なるから、X軸、Y軸、Z軸の3次元方向の地磁気レベルの磁界測定が可能となる。
【0063】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の磁気センサは同一の3個以上の磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子が配設される単一基板と、前記磁気抵抗効果素子を構成する磁気抵抗効果膜の磁化の向きとが、互いに三次元方向に交差するように形成されたものであるから、別個のセンサが単一基板ではなく別に組み付けられた磁気センサの場合に生じる角度ずれや、センサの大型化を防止することができる。また、X軸、Y軸、Z軸の3次元方向、すなわち3個の各素子の感度が持つ方向の地磁気レベルの正確な磁界測定をすることができる。
【0064】
また、本発明の磁気センサの製造方法は、前記基板上に少なくとも1の斜面を有する溝を形成する工程と、前記斜面に、前記磁気抵抗効果素子のうち少なくとも1個の素子の前記ピンド層となる磁性層を含む層を所定の形状に形成する工程と、前記ピンド層となる磁性層を含む層を磁化して、前記ピンド層の磁化の向きを固定する工程とを含むから、ピンド層の磁化の向きが互いに3次元方向に交差するように、複数の磁気抵抗効果素子が微小な単一基板に配された磁気センサを高精度に、容易に製造することができる。また、同一の磁気センサを一度に大量に製造することができるので、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の磁気センサの第1の実施形態を示す概略構成図で、図1(a)は平面図、図1(b)は断面図である。
【図2】本発明の磁気センサで用いられる磁気抵抗効果素子を示す概略構成図で、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図である。
【図3】第1の実施形態の磁気センサの製造方法の第1の例を示す断面模式図である。
【図4】第1の実施形態の磁気センサの製造方法の第1の例を示す断面模式図である。
【図5】第1の実施形態の磁気センサの製造方法の第2の例を示す断面模式図である。
【図6】第1の実施形態の磁気センサの製造方法の第3の例を示す断面模式図である。
【図7】第1の実施形態の磁気センサの製造方法の第3の例を示す断面模式図である。
【図8】本発明の磁気センサの第2の実施形態を示す概略構成図で、図8(a)は平面図、図8(b)は図8(a)のA―Aで切断した断面図である。
【図9】本発明の磁気センサの第3の実施形態を示す概略構成図で、図9(a)は平面図、図9(b)は図9(a)の断面図である。
【図10】本発明の磁気センサの第4の実施形態を示す概略構成図で、図10(a)は平面図、図10(b)は図10(a)の断面図である。
【図11】本発明の磁気センサで用いられる斜面型の磁気抵抗効果素子の一例を示す概略構成図で、図11(a)は平面図、図11(b)は図11(a)のB―Bで切断した断面図、図11(c)は図11(a)のC―Cで切断した断面図である。
【図12】図11に示した斜面型の磁気抵抗効果素子が設けられた磁気センサに対し、磁場を磁気センサのX軸の回りに回転させ、斜面型の磁気抵抗効果素子で検出される磁場の強さの変化を測定した結果を示すグラフである。
【図13】第2の実施形態の磁気センサの製造方法を示す断面模式図である。
【図14】第2の実施形態の磁気センサの製造方法を示す断面模式図である。
【図15】本発明の磁気センサの製造方法の一例を示す断面模式図である。
【図16】本発明の磁気センサの製造方法の第1の例で製造された磁気センサの回りに所定強度の磁場を回転させ、X軸磁気抵抗効果素子、Y軸磁気抵抗効果素子、Z軸磁気抵抗効果素子で検出された磁場の強さの変化を測定した結果を示すグラフであり、図16(a)はX軸磁気抵抗効果素子における測定結果を、図16(b)はY軸磁気抵抗効果素子における測定結果を、図16(c)はZ軸磁気抵抗効果素子における測定結果を示す。
【図17】本発明の磁気センサの製造方法の第2の例で製造された磁気センサの回りに所定強度の磁場を回転させ、X軸磁気抵抗効果素子、Y軸磁気抵抗効果素子、Z軸磁気抵抗効果素子で検出された磁場の強さの変化を測定した結果を示すグラフであり、図17(a)はX軸磁気抵抗効果素子における測定結果を、図17(b)はY軸磁気抵抗効果素子における測定結果を、図17(c)はZ軸磁気抵抗効果素子における測定結果を示す。
【図18】従来の二次元磁気センサの磁場の変化を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・基板、2・・・X軸磁気抵抗効果素子、3・・・Y軸磁気抵抗効果素子、4,24・・・Z軸磁気抵抗効果素子、5,25a・・・楔型溝、5a,25b・・・斜面、24a・・・帯状部、24b・・・バイアス磁石。
Claims (6)
- 同一の3個以上の磁気抵抗効果素子と、前記磁気抵抗効果素子が配設される単一基板と、前記磁気抵抗効果素子を構成する磁気抵抗効果膜の磁化の向きが、互いに三次元方向に交差するように形成されたことを特徴とする磁気センサ。
- 請求項1記載の磁気センサにおいて、
前記単一の基板は少なくとも1の斜面を有する溝を備え、当該溝の内部に、前記3個以上の磁気抵抗効果素子のうち、少なくとも1個が配置されていることを特徴とする磁気センサ。 - 複数の帯状部と該複数の帯状部のうち隣接する2つを接続するバイアス磁石とからなる3個以上の磁気抵抗効果素子と、該磁気抵抗効果素子が配設される単一基板とを備えた磁気センサであって、
前記3個以上の磁気抵抗効果素子のうち少なくとも1個は、前記複数の帯状部が前記単一基板に互いに隣り合って平行に形成された複数の楔型溝の斜面上に配置されたものであることを特徴とする磁気センサ。 - 請求項3記載の磁気センサにおいて、
前記複数の帯状部のうち隣接する2つの帯状部は、前記楔型溝の対向する2つの斜面上にそれぞれ配置されたことを特徴とする磁気抵抗効果素子。 - 請求項3記載の磁気センサにおいて、
前記磁気抵抗効果素子の抵抗値の出力結果を加減演算することにより、三次元方向の出力結果を得ることを特徴とする磁気センサ。 - 基板上に複数の楔型溝を形成する工程と、該複数の楔型溝の斜面上に、磁気抵抗効果素子のうち少なくとも1個の素子のピンド層となる磁性層を含む層を所定の形状に形成する工程と、該ピンド層となる磁性層を含む層を磁化して、該ピンド層の磁化の向きを固定する工程とを含むことを特徴とする磁気センサの製造方法。
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