JP4896800B2 - 磁気センサおよびその製造方法 - Google Patents
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一方、GMR素子、TMR素子は、磁界の変化をより感度よく検出することができることで知られている。これらの磁気抵抗効果素子は、磁化の向きが所定の向きにピン(固定)されたピンド層と、磁化の向きが外部磁界に応じて変化するフリー層とを備えており、ピンド層の磁化の向きと、フリー層の磁化の向きの相対関係に応じた抵抗値を出力として示す。
このような素子を、直交する2方向(ここでは、以下「直交する2方向」を「X軸方向、Y軸方向」とする。)の磁界の変化をそれぞれ検出するように、それぞれ1個ずつ直交するように配置する。その際、それぞれを数個ずつの素子群としてブリッジ接続するのが一般的である。そして、それぞれの素子の出力(抵抗値の変化)を得ることにより、外部磁界の向きを検出することができる。
その結果、図11に示すように、一方向への一様な磁界中で、その磁界方向を含む面内で磁気センサを回転させたとき、X軸センサ出力とY軸センサ出力が90°位相のずれた形の正弦波出力となる、いわゆる二次元(二軸)磁気センサとなる。
一方、二次元平面ではなく、空間での方位、すなわち、三次元的に方位が求められる必要のある場合がある。例えば、医療用途において、体内における治療対象部位の位置を特定するために、体内に内視鏡やカテーテルなどを挿入した際に、これら医療機器の先端の位置や、姿勢を検出する必要がある。このような用途では、磁気の方位を三次元的(X方向、Y方向だけでなくZ方向)に精度良く求める必要がある。従来、このような三次元的に方位を求めることが可能な三次元磁気センサを同一基板上に作製することができないため、薄型の三次元磁気センサが得られていなかった。したがって、携帯電話などの小型の機器には、三次元磁気センサを搭載することができなかった。
本発明の磁気センサにおいて、前記磁気抵抗効果素子で検出される磁場の強さの変化を測定することにより、前記ピンド層の磁化の向きを得ることが好ましい。
本発明の磁気センサの製造方法において、前記磁気抵抗効果膜を構成するピンド層の磁化の向きを固定する工程を有することが好ましい。
図1は、本発明の磁気センサの一実施形態を示す概略構成図で、図1(a)は平面図、図1(b)は断面図である。また、図2は、本発明の磁気センサで用いられる磁気抵抗効果素子を示す概略構成図で、図2(a)は平面図、図2(b)は正面図である。
この実施形態の磁気センサは、例えば、SiO2/Si、ガラスまたは石英からなる略正方形状の基板1と、X軸方向の磁界を検出するX軸磁気抵抗効果素子2、Y軸方向の磁界を検出するY軸磁気抵抗効果素子3、Z軸方向の磁界を検出するZ軸磁気抵抗効果素子4と、バイアス磁界用のコイル(図示略)と、複数の電極パッド(図示略)とから概略構成されている。
X軸磁気抵抗効果素子2とY軸磁気抵抗効果素子3は基板1の同一表面1a上に形成されており、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きは、基板1の表面1aと平行な一方向となっており、Y軸磁気抵抗効果素子3のピンド層の磁化の向きは、基板1の表面1aと平行な一方向となっている。さらに、X軸磁気抵抗効果素子2のピンド層の磁化の向きと、Y軸磁気抵抗効果素子3のピンド層の磁化の向きとが直交している。
また、この実施形態の磁気センサには、楔型溝5が、基板1の一辺に平行で、この一辺の近傍、かつこの一辺の中央部近傍に形成されている。
このように、楔型溝5の斜面5a上に、Z軸磁気抵抗効果素子4が配されていることにより、X軸、Y軸、Z軸の3次元方向の地磁気レベルの磁界測定が可能となる。
X軸磁気抵抗効果素子2、Y軸磁気抵抗効果素子3、Z軸磁気抵抗効果素子4は、これらの磁気抵抗効果素子が巨大磁気抵抗素子(GMR素子)の場合、膜厚2.4nmのタンタル(Ta)、膜厚24.0nmの白金−マンガン(Pt−Mn)、膜厚2.2nmのコバルト−鉄(Co−Fe)、膜厚2.4nmの銅(Cu)、膜厚1.2nmのコバルト−鉄(Co−Fe)、膜厚3.3nmのニッケル−鉄(Ni−Fe)、膜厚8.0nmのコバルト−ジルコニウム−ニオブ(Co−Zr−Nb)などの金属薄膜がこの順に積層された積層体で形成されている。
図3および図4は、この実施形態の磁気センサの製造方法の第1の例を示す断面模式図である。
この磁気センサの製造方法では、まず、図3(a)に示すように、厚さ数mm程度のシリコン基板11を、900〜1100℃で熱酸化し、表面に厚さ500nm程度の二酸化ケイ素(SiO2)層12を形成する。
第1のレジスト膜13として用いられるフォトレジストは、光や紫外線照射により感度よく架橋反応を起こして硬化し、未露光部が溶媒に可溶化(ネガ型)する樹脂であり、高解像度の任意形状を形成することができる樹脂である。また、現像液としては、専用の剥離液、アセトンなどの有機溶剤、アルカリ水溶液などが用いられる。なお、ネガレジストの代わりに、ポジレジストを用いてもよい。
下地膜15としては、チタン(Ti)またはクロム(Cr)300μm/コバルト(Co)−白金(Pt)−Cr1000μmを用いることができる。
次に、図4(b)に示すように、第2のレジスト膜16で保護されていない部分の下地膜15を、イオンミリングにより除去し、下地膜15を任意形状に形成する。
GMR多層膜17は、シリコン基板11上に、順に積層されたフリー層と、膜厚が2.4nmの銅(Cu)からなる導電性のスペーサ層と、ピンド層と、膜厚が2.4nmのタンタル(Ta)からなるキャッピング層とからなっている。
Co−Zr−Nbアモルファス磁性層とNi−Fe磁性層は、軟質強磁性体薄膜層を構成している。Co−Fe層は、MR比を高めるものである。
Co−Fe磁性層は、着磁(磁化)されたPt−Mn反強磁性層に交換結合的に裏打ちされることにより磁化(磁化ベクトル)の向きがピン(固着)されるピンド層を構成している。
次に、第3のレジスト膜で保護されていない部分のGMR多層膜17を、イオンミリングにより除去し、GMR多層膜17を任意形状に形成する。
次に、図4(d)に示すように、第3のレジスト膜を除去する。第3のレジスト膜を除去するには、第1のレジスト膜13を除去するのと同様な方法が用いられる。
得られた積層体を、永久磁石上に載置して熱処理し、ピンド層の磁化の向きを固定し、磁気センサを得る。
この磁気センサの製造方法では、前記第1の例において、図3(b)〜(e)に示した工程を以下のようにする。
図5(a)に示すように、二酸化ケイ素層12の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、テーパ状の溝を形成する部分のみが開口するように、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、テーパ状の開口部を有する第1のレジスト膜13を形成する。第1のレジスト膜13の厚さは、0.8〜1μm程度が好ましい。次いで、イオンミリングにより、第1のレジスト膜13の開口部の端部に斜面を一旦、形成する。次いで、第1のレジスト膜13の開口部のレジストを加熱し、リフローさせて、開口部端部をテーパ状に形成する。
次いで、図5(c)に示すように、第1のレジスト膜13を除去する。
この磁気センサの製造方法では、まず、図6(a)に示すように、厚さ数mm程度のシリコン基板11を、900〜1100℃で熱酸化し、表面に厚さ500nm程度の二酸化ケイ素(SiO2)層12を形成する。
第1のレジスト膜13として用いられるフォトレジストは、光や紫外線照射により感度よく架橋反応を起こして硬化し、未露光部が溶媒に可溶化(ネガ型)する樹脂であり、高解像度の任意形状を形成することができる樹脂である。また、現像液としては、専用の剥離液、アセトンなどの有機溶剤、アルカリ水溶液などが用いられる。なお、ネガレジストの代わりに、ポジレジストを用いてもよい。
下地膜15としては、チタン(Ti)またはクロム(Cr)300μm/コバルト(Co)−白金(Pt)−Cr1000μmを用いることができる。
次に、図7(a)に示すように、第2のレジスト膜で保護されていない部分の下地膜15を、イオンミリングにより除去し、下地膜15を任意形状に形成する。これにより、楔型溝14内の一方の斜面と、二酸化ケイ素層12の表面の一部にのみ、下地膜15が存在するようにする。
次に、第1のGMR多層膜18の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、任意の第1のGMR多層膜18のパターンを有する第3のレジスト膜(図示略)を形成する。
次に、第3のレジスト膜で保護されていない部分の第1のGMR多層膜18を、イオンミリングにより除去し、第1のGMR多層膜18を任意形状に形成する。これにより、図7(b)に示すように、楔型溝14内に形成された下地膜15の表面上にのみ、第1のGMR多層膜18が存在するようにする。
次に、図7(d)に示すように、イオンミリングなどにより、酸化ケイ素層19を貫通して、内層の下地膜15が露出するように、円形状のコンタクトホール20を形成する。
次に、この下地膜15の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、任意の下地膜15のパターンを有する第4のレジスト膜(図示略)を形成する。
次に、図7(e)に示すように、第4のレジスト膜で保護されていない部分の下地膜15を、イオンミリングにより除去し、下地膜15を任意形状に形成する。
次に、第2のGMR多層膜21の表面上に、任意の厚さのフォトレジストを塗布し、このフォトレジストの表面に、任意形状のマスクを配置して、焼き付け、現像処理を行って不必要なフォトレジストを取り除き、任意の第2のGMR多層膜21のパターンを有する第5のレジスト膜(図示略)を形成する。
次に、第5のレジスト膜で保護されていない部分の第2のGMR多層膜21を、イオンミリングにより除去し、第2のGMR多層膜21を任意形状に形成する。
次に、第5のレジスト膜を除去し、図7(f)に示すような磁気センサを得る。
AMR膜を形成する場合、上記下地膜を、膜厚が30nmのクロム(Cr)層と、膜厚が90nmのコバルト−クロム−白金(Co−Cr−Pt)層と、膜厚が20nmのチタン(Ti)層からなるものとする。
また、AMR多層膜を、膜厚が20nmのニッケル−鉄(Ni−Fe)層と、膜厚が10nmのタンタル(Ta)層と、膜厚が30.0nmのコバルト−ジルコニウム−ニオブ(Co−Zr−Nb、モル比が、Co:Zr:Nb=79mol:9mol:12mol)層と、膜厚が1.5nmのチタン(Ti)層とからなるものとする。
上述の磁気センサの製造方法において、磁気抵抗効果素子をGMR素子で形成したが、この磁気センサの製造方法では、TMR素子で形成する。
以下にTMR素子の形成方法を示す。
まず、図8(a)に示すように、シリコンなどからなる基板41の表面上に、下部電極を構成するTiからなる膜を、膜厚30nm程度にスパッタリングにより形成し、次いで固定磁化層の反磁化層の反強磁性膜(ピンド層)を構成するためのPt−Mnからなる膜およびNi−Feからなる膜を、それぞれ膜厚が30nmおよび5nmとなるようにスパッタリングにより形成する。ここでは、これらのTa膜、Pt−Mn膜、Ni−Fe膜からなる磁性層を下磁性層42とする。
次に、フリー層の強磁性膜を構成するNi−Feからなる膜を、例えば、スパッタリングにより膜厚が80nmとなるように形成し、その上にキャッピング層を構成するTiからなる膜を膜厚が30nmとなるように形成する。ここでは、これらのNi−Fe膜、Ti膜からなる磁性層を上磁性層44とする。
次に、図8(c)に示すように、下磁性層42を、イオンミリングなどにより分離する。
次に、図8(e)に示すように、層間絶縁層45に、イオンミリングなどによりコンタクトホール46を形成する。
X軸磁気抵抗効果素子2、Y軸磁気抵抗効果素子3、Z軸磁気抵抗効果素子4それぞれの結果を図9に示す。図9(a)は、XY平面内において測定した測定結果を、図9(b)はYZ平面内において測定した測定結果を、図9(c)はXZ平面内において測定した測定結果をそれぞれ示す。
また、図9(b)の結果から、X軸磁気抵抗効果素子2では、YZ平面内において磁場の変化が測定されない。Y軸磁気抵抗効果素子3では、YZ平面内において磁場の変化が余弦波状に測定される。Z軸磁気抵抗効果素子4では、YZ平面内において正弦波状に測定されるものの、測定強度が低いことが確認された。
また、図9(c)の結果から、X軸磁気抵抗効果素子2では、XZ平面内において磁場の変化が余弦波状に測定される。Y軸磁気抵抗効果素子3では、XZ平面内において磁場の変化が測定されない。Z軸磁気抵抗効果素子4では、XZ平面内において余弦波状に測定されるものの、X軸磁気抵抗効果素子2より55°位相が遅れて測定されることが確認された。
以上より、X軸磁気抵抗効果素子2の感度方向、すなわちピンド層の磁化の向きがX軸と平行になっており、Y軸磁気抵抗効果素子3の感度方向、すなわちピンド層の磁化の向きがY軸と平行になっており、Z軸磁気抵抗効果素子4の感度方向、すなわちピンド層の磁化の向きはX軸と55°の角度で交差していることが分かる。
X軸磁気抵抗効果素子2、Y軸磁気抵抗効果素子3、Z軸磁気抵抗効果素子4それぞれの結果を図10に示す。図10(a)はXY平面内において測定した測定結果を、図10(b)はYZ平面内において測定した測定結果を、図10(c)はXZ平面内において測定した測定結果をそれぞれ示す。
また、図10(b)の結果から、X軸磁気抵抗効果素子2では、YZ平面内において磁場の変化が測定されない。Y軸磁気抵抗効果素子3では、YZ平面内において磁場の変化が余弦波状に測定される。Z軸磁気抵抗効果素子4では、YZ平面内において正弦波状に測定されるものの、測定強度が低いことが確認された。
また、図10(c)の結果から、X軸磁気抵抗効果素子2では、XZ平面内において磁場の変化が余弦波状に測定される。Y軸磁気抵抗効果素子3では、XZ平面内において磁場の変化が測定されない。Z軸磁気抵抗効果素子4では、XZ平面内において余弦波状に測定されるものの、X軸磁気抵抗効果素子2より15°位相が遅れて測定されることが確認された。
以上より、X軸磁気抵抗効果素子2の感度方向、すなわちピンド層の磁化の向きがX軸と平行になっており、Y軸磁気抵抗効果素子3の感度方向、すなわちピンド層の磁化の向きがY軸と平行になっており、Z軸磁気抵抗効果素子4の感度方向、すなわちピンド層の磁化の向きはX軸と15°の角度で交差していることが分かる。
Claims (6)
- ピンド層とフリー層を含んでなり、一軸の方向に感度方向をもつ同一構造の3個以上の磁気抵抗効果素子と、
前記磁気抵抗効果素子が配設される略正方形の単一基板とを有し、
前記磁気抵抗効果素子のうち第1の磁気抵抗効果素子が、前記単一基板の第1の辺に平行で、この辺の近傍、かつ、この辺の中央部近傍に形成され、
前記磁気抵抗効果素子のうち第2の磁気抵抗効果素子が、前記単一基板の第2の辺に平行で、この辺の近傍、かつ、この辺の中央部近傍に形成され、
前記単一基板は少なくとも1つの楔型溝の斜面を有し、
前記楔型溝が前記単一基板の第3の辺に平行で、この辺の近傍、かつ、この辺の中央部近傍に形成され、
前記第3の辺は、前記第1の辺と対向し、かつ、前記第1の辺と平行であり、
前記磁気抵抗効果素子のうち第3の磁気抵抗効果素子が、前記斜面上に配置され、
前記第1の磁気抵抗効果素子の感度方向は、前記第2の辺と平行な方向であり、前記第2の磁気抵抗効果素子の感度方向は、前記第1の辺と平行な方向であり、かつ、前記第3の磁気抵抗効果素子の感度方向は前記第1の磁気抵抗効果素子の感度方向および前記単一基板の表面と15°もしくは55°の角度をなす方向であり、
前記磁気抵抗効果素子を構成する磁気抵抗効果膜の磁化の向きが、互いに三次元方向に交差するように形成されたことを特徴とする磁気センサ。 - 前記ピンド層の磁化の向きが互いに三次元方向に交差するように形成されたことを特徴とする請求項1に記載の磁気センサ。
- 前記楔型溝は、互いに隣り合って平行に形成された複数の斜面を有する溝からなり、前記第3の磁気抵抗効果素子は、前記複数の斜面に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の磁気センサ。
- 前記磁気抵抗効果素子で検出される磁場の強さの変化を測定することにより、前記ピンド層の磁化の向きを得ることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の磁気センサ。
- 請求項1ないし4のいずれか1項に記載の磁気センサの製造方法であって、
基板上に開口部を有するレジスト膜を形成する工程と、
イオンミリングにより、前記開口部の端部に斜面を形成した後、前記レジスト膜を加熱し、リフローさせて、前記開口部の端部をテーパ形状にする工程と、
イオンミリングにより、前記開口部のテーパ形状をトレースすることにより、前記基板に互いに隣り合って平行に形成された複数の斜面を有する楔型溝を形成する工程と、
前記基板の表面上および前記楔型溝の斜面に磁気抵抗効果膜を形成する工程と、を有することを特徴とする磁気センサの製造方法。 - 前記磁気抵抗効果膜を構成するピンド層の磁化の向きを固定する工程を有することを特徴とする請求項5に記載の磁気センサの製造方法。
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