本発明の磁気センサは、上記課題に対処するためになされたものであって、単一膜固定層の第1巨大磁気抵抗効果素子と、多重膜積層固定層の第2巨大磁気抵抗効果素子と、を単一の基板上において重なるように形成したセンサである。
前記第1巨大磁気抵抗効果素子は、
単一の強磁性体膜及びピニング層からなり同強磁性体膜の磁化の向きが同ピニング層により第1の向き(例えば、X軸正方向)に固定されて同強磁性体膜がピンド層を構成する固定層と、
外部磁界に応じて磁化の向きが変化するフリー層と、
同ピンド層と同フリー層との間に配置された非磁性導電体からなるスペーサ層と、
を備えた単一膜固定層のスピンバルブ膜からなる。
前記第2巨大磁気抵抗効果素子は、
第1強磁性体膜、同1強磁性体膜に接する交換結合膜、同交換結合膜に接する第2強磁性体膜及び同第2強磁性体膜に接するピニング層からなり同第2強磁性体膜の磁化の向きが同ピニング層により固定され且つ同第1強磁性体膜が同第2強磁性体膜と同交換結合膜を介して交換結合することにより同第1強磁性体膜の磁化の向きが第2の向き(例えば、X軸負方向)に固定されたピンド層を構成する固定層と、
外部磁界に応じて磁化の向きが変化するフリー層と、
同ピンド層と同フリー層との間に配置された非磁性導電体からなるスペーサ層と、
を備えた多重膜積層固定層のスピンバルブ膜からなる。
そして、前記第1巨大磁気抵抗効果素子と前記第2巨大磁気抵抗効果素子とは前記基板上において重なるように(基板の主面上の同一位置に)形成される。更に、前記第1巨大磁気抵抗効果素子のピンド層の固定された磁化の向き(即ち、第1の向き)と、前記第2巨大磁気抵抗効果素子のピンド層の固定された磁化の向き(即ち、第2の向き)とは180度相違している(反平行である。)。
ところで、基板上に前記単一膜固定層の第1巨大磁気抵抗効果素子となる膜と前記多相膜固定層の第2巨大磁気抵抗効果素子となる膜とを形成しておき、これらの膜に対して同一方向の磁界を高温下で与える磁場中熱処理を施すと、第1巨大磁気抵抗効果素子となる膜の固定層のピンド層となる強磁性体膜の磁化及び第2巨大磁気抵抗効果素子となる膜の第2強磁性体膜の磁化は、同一の向きに固定される。更に、第2巨大磁気抵抗効果素子となる膜のピンド層となる第1強磁性体膜は交換結合膜を介して第2強磁性体膜と交換結合するので、第1強磁性体膜の磁化は第2強磁性体膜の磁化の向きと180度相違する向きに固定される。この結果、第1巨大磁気抵抗効果素子のピンド層(強磁性体膜)の磁化の向きと第2巨大磁気抵抗効果素子のピンド層(第1強磁性体膜)の磁化の向きとが180度相違するように固定される。
一方、前記第1巨大磁気抵抗効果素子及び前記第2巨大磁気抵抗効果素子は、何れも、ピンド層の固定された磁化の向きと180度相違する向きに磁気検出方向を有する。換言すると、何れの素子においても、磁気検出方向はピンド層の固定された磁化の向きと反平行の向きとなる。この結果、これらの素子の磁気検出方向は互いに180度相違することになる(図15を参照。)。
以上のことから、本発明による磁気センサにおいては、従来の磁気センサのように「180度相違する向きの磁界を二つの巨大磁気抵抗効果素子に付与することを可能とするために同二つの巨大磁気抵抗効果素子間の距離を大きくしておくこと」が要求されない。即ち、本発明による磁気センサは、前記第1巨大磁気抵抗効果素子となる膜と前記第2巨大磁気抵抗効果素子となる膜とを基板上に上下方向において重なるように形成しておき、これらの素子に同一の向きの磁界を付与する上記磁場中熱処理を施すことにより容易に製造され得る。従って、本発明によれば、磁気検出方向が180度相違する二つの巨大磁気抵抗効果素子の距離(第1巨大磁気抵抗効果素子と第2巨大磁気抵抗効果素子の距離)を小さく設定することができるので、非常に小型の磁気センサが提供される。
更に、この磁気センサにおいては、第1巨大磁気抵抗効果素子と第2巨大磁気抵抗効果素子とが重なるように形成される。従って、基板や基板を覆う樹脂が熱や外部から加わる応力などによって変形したとしても、第1巨大磁気抵抗効果素子と第2巨大磁気抵抗効果素子とには実質的に同じ応力(引張応力又は圧縮応力)が加わる。この結果、両素子に応力が加わった場合にも同両素子の抵抗値は同様に変化するので、これら両素子の抵抗値の差を取る構成(例えば、ブリッジ回路)を採用することにより、応力の影響を受けることがない磁気センサが提供され得る。
本発明の磁気センサは、上記第1巨大磁気抵抗効果素子及び上記第2巨大磁気抵抗効果素子に加え、
前記基板上に形成されるとともに前記第1巨大磁気抵抗効果素子と同一の単一膜固定層のスピンバルブ膜からなり、前記固定層の強磁性体膜の磁化の向きが前記第1の向きと直交する第3の向きに固定された第3巨大磁気抵抗効果素子と、
前記基板上において前記第3巨大磁気抵抗効果素子の上部又は下部に重なるように形成されるとともに前記第2巨大磁気抵抗効果素子と同一の多重膜積層固定層のスピンバルブ膜からなり、前記固定層の第1強磁性体膜の磁化の向きが前記第3の向きと180度相違する第4の向きに固定された第4巨大磁気抵抗効果素子と、
を更に備えている。
これによれば、直交する2軸方向に沿う磁界の成分(磁気)を検出することができる磁気センサ(以下、「直交2軸方向検出型磁気センサ」とも称呼する。)が提供される。また、第3巨大磁気抵抗効果素子及び第4巨大磁気抵抗効果素子は、第1巨大磁気抵抗効果素子及び第2巨大磁気抵抗効果素子と同様に基板上の微小領域内に容易に形成することができるので、小型な直交2軸方向検出型磁気センサが容易に提供される。
前述したように、本発明による磁気センサは、
前記第1巨大磁気抵抗効果素子となる膜及び前記第2巨大磁気抵抗効果素子となる膜を基板上にて重なるように形成する膜形成工程と、
前記形成された各膜に対して同一の向きの磁界を高温下で付与することにより同各膜の前記ピンド層の磁化の向きを固定する磁場中熱処理工程と、
を含む製造方法により、容易に製造することができる。
即ち、この磁場中熱処理により、第1巨大磁気抵抗効果素子の固定層のピンド層と第2巨大磁気抵抗効果素子の固定層のピンド層との磁化を180度相違する向きに容易に固定することができるので、磁気検出方向が互いに180度相違する2つの巨大磁気抵抗効果素子を単一の基板上に容易に製造することができる。
この場合、
前記磁場中熱処理工程は、
略直方体形状であって同直方体の一つの中心軸に直交する断面の形状が略正方形である複数の永久磁石を、同略正方形を有する端面の重心が正方格子の格子点に一致するように配設するとともに、同配設された各永久磁石の磁極の極性が最短距離を隔てて隣接する他の永久磁石の磁極の極性と異なるように配置されたマグネットアレイによって形成される磁界を前記磁場中熱処理工程中の磁界として用いることが好ましい。
更に、前記膜形成工程は、
前記第1巨大磁気抵抗効果素子となる膜及び前記第2巨大磁気抵抗効果素子となる膜のうちの一方の膜を前記基板の上に形成する第1膜形成工程と、
前記形成された一方の膜の不要部分を除去する第1不要部除去工程と、
前記不要部分が除去された前記一方の膜を絶縁膜により覆う絶縁膜形成工程と、
前記第1巨大磁気抵抗効果素子となる膜及び前記第2巨大磁気抵抗効果素子となる膜のうちの他方の膜を前記絶縁膜の上に形成する第2膜形成工程と、
前記形成された他方の膜の不要部分を除去する第2不要部除去工程と、
を含むことが好適である。
これにより、第1巨大磁気抵抗効果素子と第2巨大磁気抵抗効果素子とを単一の基板上に形成した磁気センサが容易に製造され得る。
本発明の他の態様の磁気センサは、基板上に4個の単一膜固定層のスピンバルブ膜からなる巨大磁気抵抗効果素子を形成し、これらをフルブリッジ接続してある方向を磁気検出方向とする回路を備えるとともに、それら4個の単一膜固定層のスピンバルブ膜のそれぞれの上部又は下部に重なるように4個の多層膜積層固定層のスピンバルブ膜からなる巨大磁気抵抗効果素子を形成し、これらをフルブリッジ接続して前記ある方向を磁気検出方向とする回路を備え、これら二つの回路の出力を利用することにより、各素子に加わる応力の影響を極力排除した出力値を得ることができるセンサである。
理解を容易にするために、図25乃至図31と対比しながらより具体的に説明する。この磁気センサは、前記第1巨大磁気抵抗効果素子(51G)と第1巨大磁気抵抗効果素子(51G)の上部又は下部に重なるように形成された前記第2巨大磁気抵抗効果素子(61S)とからなる一つの素子群である第1素子群が前記基板上の第1領域内に形成されている。なお、図25において、実線の各円内にある二つの素子(例えば、第1巨大磁気抵抗効果素子(51G)と第2巨大磁気抵抗効果素子(61S))は、上下方向(基板の主面に直交する方向、図25におけるZ軸方向)において互いに重なって形成されていることを意味するものとする。
更に、この磁気センサは、
前記第1巨大磁気抵抗効果素子と同一の単一膜固定層のスピンバルブ膜からなり前記固定層の強磁性体膜の磁化の向きが前記第1の向きに固定された第3巨大磁気抵抗効果素子(52G)及び前記基板上において同第3巨大磁気抵抗効果素子の上部又は下部に重なるように形成されるとともに前記第2巨大磁気抵抗効果素子と同一の多重膜積層固定層のスピンバルブ膜からなり前記固定層の第1強磁性体膜の磁化の向きが前記第2の向きに固定された第4巨大磁気抵抗効果素子(62S)からなる他の一つの素子群であって前記第1素子群に近接するように前記基板上の前記第1領域内に形成された第2素子群を備えている。
加えて、この磁気センサは、
前記第1巨大磁気抵抗効果素子と同一の単一膜固定層のスピンバルブ膜からなり前記固定層の強磁性体膜の磁化の向きが前記第2の向きに固定された第5巨大磁気抵抗効果素子(53G)及び前記基板上において同第5巨大磁気抵抗効果素子の上部又は下部に重なるように形成されるとともに前記第2巨大磁気抵抗効果素子と同一の多重膜積層固定層のスピンバルブ膜からなり前記固定層の第1強磁性体膜の磁化の向きが前記第1の向きに固定された第6巨大磁気抵抗効果素子(63S)からなる他の一つの素子群であって前記第1領域とは離間した前記基板上の第2領域内に形成された第3素子群と、
前記第1巨大磁気抵抗効果素子と同一の単一膜固定層のスピンバルブ膜からなり前記固定層の強磁性体膜の磁化の向きが前記第2の向きに固定された第7巨大磁気抵抗効果素子(54G)及び前記基板上において同第7巨大磁気抵抗効果素子の上部又は下部に重なるように形成されるとともに前記第2巨大磁気抵抗効果素子と同一の多重膜積層固定層のスピンバルブ膜からなり前記固定層の第1強磁性体膜の磁化の向きが前記第1の向きに固定された第8巨大磁気抵抗効果素子(64S)からなる他の一つの素子群であって前記第3素子群に近接するように前記基板上の前記第2領域内に形成された第4素子群と、
を備えている。
更に、この磁気センサは、図27に示したように、
前記第1巨大磁気抵抗効果素子(51G)の一端と前記第5巨大磁気抵抗効果素子(53G)の一端とを接続して第1回路要素を構成し、
前記第3巨大磁気抵抗効果素子(52G)の一端と前記第7巨大磁気抵抗効果素子(54G)の一端とを接続して第2回路要素を構成し、
前記第1巨大磁気抵抗効果素子(51G)の他端及び前記第7巨大磁気抵抗効果素子(54G)の他端に第1電位(+V)を付与するとともに前記第3巨大磁気抵抗効果素子(52G)の他端及び前記第5巨大磁気抵抗効果素子(53G)の他端に同第1電位と異なる第2電位(GND)を付与し、
前記第1巨大磁気抵抗効果素子(51G)の一端と前記第5巨大磁気抵抗効果素子(53G)の一端との接続箇所(Q10)の電位と、前記第3巨大磁気抵抗効果素子(52G)の一端と前記第7巨大磁気抵抗効果素子(54G)の一端との接続箇所(Q20)の電位と、の電位差(VoxConv)を通常GMR素子出力値として取得するようになっている。
同様に、この磁気センサは、図28に示したように、
前記第2巨大磁気抵抗効果素子(61S)の一端と前記第6巨大磁気抵抗効果素子(63S)の一端とを接続して第3回路要素を構成し、
前記第4巨大磁気抵抗効果素子(62S)の一端と前記第8巨大磁気抵抗効果素子(64S)の一端とを接続して第4回路要素を構成し、
前記第2巨大磁気抵抗効果素子(61S)の他端及び前記第8巨大磁気抵抗効果素子(64S)の他端に前記第1電位(+V)を付与するとともに前記第4巨大磁気抵抗効果素子(62S)の他端及び前記第6巨大磁気抵抗効果素子(63S)の他端に前記第2電位(GND)を付与し、
前記第2巨大磁気抵抗効果素子(61S)の一端と前記第6巨大磁気抵抗効果素子(63S)の一端との接続箇所(Q30)の電位と、前記第4巨大磁気抵抗効果素子(62S)の一端と前記第8巨大磁気抵抗効果素子(64S)の一端との接続箇所(Q40)の電位と、の電位差(VoxSAF)をSAF素子出力値として取得するようになっている。
そして、この磁気センサは、図26に示したように、
前記通常GMR素子出力値(VoxConv)と前記SAF素子出力値(VoxSAF)とに基づく値(Vox)を出力するように構成される。この「前記通常GMR素子出力値と前記SAF素子出力値とに基づく値(Vox)」は、前記通常GMR素子出力値と前記SAF素子出力値との差でもよく、これらの比等であってもよい。
ここで、説明の便宜上、検出すべき磁界の向きの正方向を第1の向きと反対の向きとする。更に、接続箇所Q10の電位から接続箇所Q20の電位を減算した値を上記通常GMR素子出力値VoxConvとし、接続箇所Q30の電位から接続箇所Q40の電位を減算した値を上記SAF素子出力値VoxSAFとする。加えて、この磁気センサは、前記SAF素子出力値VoxSAFから前記通常GMR素子出力値VoxConvを減算した値を出力するように構成されていると仮定する。
このとき、図27の(B)に示したように、検出すべき磁界が大きくなるほど、上記通常GMR素子出力値VoxConvは低下し、且つ、図28の(B)に示したように、上記SAF素子出力値VoxSAFは上昇する。その結果、図29に示したように、検出すべき磁界が大きくなるほど磁気センサの出力値Voxは上昇する。
一方、このように構成された磁気センサにおいては、第1領域内に形成された各巨大磁気抵抗効果素子(51G,52G,61S,62S)には、一様な応力(例えば、略同一の引張応力又は略同一の圧縮応力)が加わる。同様に、第2領域内に形成された各巨大磁気抵抗効果素子(53G,54G,63S,64S)には、一様な応力が加わる。
そこで、いま、検出すべき磁界が変化しない状態において、第1領域内に形成された素子に圧縮応力が加わり、第2領域内に形成された素子に引張応力が加わったと仮定する。この場合、第1領域内の各素子(51G,52G,61S,62S)の抵抗値は一様に減少し、第2領域内の各素子(53G,54G,63S,64S)の抵抗値は一様に増大する。従って、接続箇所Q10及び接続箇所Q30の電位は上昇し、接続箇所Q20及び接続箇所Q40の電位は低下する。
この結果、上記SAF素子出力値VoxSAF及び上記通常GMR素子出力値VoxConvは、共に上昇するから、それらの差である磁気センサの出力値は殆ど変化しない。
次に、第1領域内に形成された素子に引張応力が加わり、第2領域内に形成された素子に圧縮応力が加わったと仮定する。この場合、第1領域内の各素子(51G,52G,61S,62S)の抵抗値は一様に増大し、第2領域内の各素子(53G,54G,63S,64S)の抵抗値は一様に減少する。従って、接続箇所Q10及び接続箇所Q30の電位は低下し、接続箇所Q20及び接続箇所Q40の電位は上昇する。
この結果、上記SAF素子出力値VoxSAF及び上記通常GMR素子出力値VoxConvは、共に低下するから、磁気センサの出力値は殆ど変化しない。
更に、総ての素子に引張応力が加わったと仮定する。この場合、第1領域内の各素子及び第2領域内の各素子の抵抗値は一様に増大する。従って、接続箇所Q10〜Q40の電位は殆ど変化しない。この結果、上記SAF素子出力値VoxSAF及び上記通常GMR素子出力値VoxConvは変化しないので、それらの差である磁気センサの出力値は殆ど変化しない。同様に、総ての素子に圧縮応力が加わった場合、接続箇所Q10〜Q40の電位は殆ど変化しないから、磁気センサの出力値は殆ど変化しない。
以上の例示的説明からも明らかなように、上記態様の磁気センサは、素子に加わる応力が変化した場合であっても、外部磁界が変化しない限り一定の出力値を出力することができる。この結果、上記態様の磁気センサは磁界を精度良く検出することができる。
以下、本発明による磁気センサの各実施形態について図面を参照しながら説明する。
<第1実施形態>
(磁気センサの構造)
図1に平面図を示した本発明の第1実施形態に係る磁気センサ10は、単一の基板(モノリシックチップ)10aと、合計で8個の巨大磁気抵抗効果素子11〜14,21〜24と、を含んでいる。磁気センサ10は、便宜上「Nタイプの磁気センサ10」と称呼される。
基板10aは、シリコンからなっている。基板10aは、平面視において互いに直交するX軸及びY軸に沿った辺を有する長方形状(略正方形状)を有し、X軸及びY軸に直交するZ軸方向に小さな厚みを有する薄板体である。
巨大磁気抵抗効果素子11,12,21及び22は、上述した通常GMR素子である。巨大磁気抵抗効果素子13,14,23及び24は、多重膜積層固定層を含むシンセティックスピンバルブ膜からなる素子(以下、便宜上、「SAF素子」と称呼する。)である。後に詳述するように、SAF素子13,14,23及び24は、それぞれ通常GMR素子11,12,21及び22の上部に形成されている。なお、図1において、実線の各円内にある二つの素子(例えば、素子11と素子13)は、基板10aの主面に直交する方向(Z軸方向)において互いに重なって形成されていることを意味するものとする。
本実施形態において、巨大磁気抵抗効果素子11,12,13及び14はそれぞれ第1,第2,第3及び第4X軸磁気検出素子とも称呼され、巨大磁気抵抗効果素子21,22,23及び24はそれぞれ第1,第2,第3及び第4Y軸磁気検出素子とも称呼される。
通常GMR素子11及びSAF素子13は第1素子群G1を構成している。通常GMR素子12及びSAF素子14は第2素子群G2を構成している。通常GMR素子21及びSAF素子23は第3素子群G3を構成している。通常GMR素子22及びSAF素子24は第4素子群G4を構成している。第1素子群G1乃至第4素子群G4は、基板10aにおける配置が異なる点を除き、互いに実質的に同一の構造を備えている。従って、以下、第1素子群G1をこれらの代表例として、その構造について説明する。
通常GMR素子11は、拡大平面図である図2に示したように、複数の(この例では6個の)幅狭帯状部11a1〜11a6と、複数の(この例では7個の)バイアス磁石膜11b1〜11b7と、一対の接続部(端子部)11c1,11c2と、を備えている。
幅狭帯状部11a1〜11a6の各々はY軸方向に長手方向を有している。幅狭帯状部11a1〜11a6は、最もX軸正方向側に位置する11a1から順にX軸負方向に整列している。幅狭帯状部11a1のY軸正方向側の端部は、バイアス磁石膜11b1の上に形成されている。バイアス磁石膜11b1は接続部11c1と接続されている。幅狭帯状部11a1のY軸負方向側の端部は、バイアス磁石膜11b2の上に形成されている。
幅狭帯状部11a2のY軸負方向端部及びY軸正方向端部は、バイアス磁石膜11b2及びバイアス磁石膜11b3の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部11a2のY軸負方向端部は、バイアス磁石膜11b2の上部にて幅狭帯状部11a1のY軸負方向端部と接続されている。幅狭帯状部11a3のY軸正方向端部及びY軸負方向端部は、バイアス磁石膜11b3及びバイアス磁石膜11b4の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部11a3のY軸正方向端部は、バイアス磁石膜11b3の上部にて幅狭帯状部11a2のY軸正方向端部と接続されている。
幅狭帯状部11a4のY軸負方向端部及びY軸正方向端部は、バイアス磁石膜11b4及びバイアス磁石膜11b5の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部11a4のY軸負方向端部は、バイアス磁石膜11b4の上部にて幅狭帯状部11a3のY軸負方向端部と接続されている。幅狭帯状部11a5のY軸正方向端部及びY軸負方向端部は、バイアス磁石膜11b5及びバイアス磁石膜11b6の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部11a5のY軸正方向端部は、バイアス磁石膜11b5の上部にて幅狭帯状部11a4のY軸正方向端部と接続されている。
幅狭帯状部11a6のY軸負方向端部及びY軸正方向端部は、バイアス磁石膜11b6及びバイアス磁石膜11b7の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部11a6のY軸負方向端部は、バイアス磁石膜11b6の上部にて幅狭帯状部11a5のY軸負方向端部と接続されている。バイアス磁石膜11b7は接続部11c2と接続されている。このように、通常GMR素子11は、複数の幅狭帯状部をジグザグ状に配列し、それらを直列接続した素子である。なお、図2において、一点鎖線CL1は各幅狭帯状部のY軸方向中央部を通るセンターラインCL1である。
幅狭帯状部11a1〜11a6の各々は、図3の(A)に膜構成を示した通常のスピンバルブ膜からなっている。このスピンバルブ膜は、基板10aの上に形成されたフリー層F、フリー層Fの上に形成されたスペーサ層S、スペーサ層Sの上に形成された固定層P及び固定層Pの上に形成された保護層(キャッピング層)Cからなっている。なお、実際には、基板10aの上面とフリー層Fとの間に図示を省略したSiO2又はSiNからなる絶縁・配線層が形成されている。
フリー層Fは、外部磁界の向きに応じて磁化の向きが変化する層である。フリー層Fは、基板10aの直上に形成されたCoZrNbアモルファス磁性層と、CoZrNbアモルファス磁性層の上に形成されたNiFe磁性層と、NiFe磁性層の上に形成されたCoFe磁性層とからなっている。これらは、軟質の強磁性体膜を構成している。
フリー層Fは、幅狭帯状部11a1〜11a6のそれぞれが長手方向を有していることから、Y軸方向に沿った長手方向を有した形状となっている。従って、フリー層Fに外部磁界が付与されていない場合の同フリー層Fの磁化の向き(以下、「初期状態における磁化の向き」と称呼する。)は、形状異方性によりフリー層Fの長手方向(通常GMR素子11の場合はY軸正方向)となっている。
スペーサ層Sは、非磁性導電体(本例では、Cu)からなる膜である。
固定層(固着層、磁化固定層)Pは、強磁性体膜であるCoFe磁性層Pdと、Ptを45〜55mol%含むPtMn合金から形成した反強磁性膜Piとを重ね合わせた単一膜固定層である。CoFe磁性層Pdは、ピニング層を構成する反強磁性膜Piに交換結合的に裏打されることにより磁化(磁化ベクトル)の向きがX軸正方向にピン(固着)されるピンド層Pdを構成している。CoFe磁性層Pdの磁化の向きが、各通常GMR素子のピンド層の固定された磁化の向きである。
保護層Cは、チタン(Ti)又はタンタル(Ta)からなっている。
再び、図2を参照すると、バイアス磁石膜11b1〜11b7は、CoCrPt等の硬質強磁性体であって高保磁力及び高角型比を有する材質からなり、着磁されて永久磁石膜(ハードマグネット膜)となっている。バイアス磁石膜11b1〜11b7は、それぞれの直上部に形成されたフリー層Fと磁気的に結合し、フリー層Fに対して同フリー層Fの長手方向(通常GMR素子11の場合、Y軸正方向)にバイアス磁界を与えるようになっている。
以上の構成により、通常GMR素子11の抵抗値は、幅狭帯状部11a1〜11a6の各抵抗値の和として、接続部11c1及び接続部11c2から取得される。この結果、通常GMR素子11は、図3の(B)及び図3の(C)に示したように、−Hc〜+Hcの範囲において固定層PのCoFe磁性層Pdの固定された磁化の向き(この場合、X軸正方向の向き)に沿って変化する外部磁界Hに対して変化する抵抗値(X軸正方向の外部磁界の大きさが大きくなるほど減少する抵抗値)を示すようになっている。換言すると、通常GMR素子11の磁気検出方向は、スペーサ層Sに隣接した固定層PのCoFe磁性層Pdの固定された磁化の向きと反平行の向き(180度相違する向き)である。なお、通常GMR素子11は、Y軸に沿って変化する外部磁界に対しては略一定の抵抗値を示すようになっている。
一方、SAF素子13は、図4に示したように、通常GMR素子11をそのセンターラインCL1で折り返した形状(通常GMR素子11と実質的に同一の形状)を備えている。
より具体的に述べると、SAF素子13は、複数の(この例では6個の)幅狭帯状部13a1〜13a6と、複数の(この例では7個の)バイアス磁石膜13b1〜13b7と、一対の接続部(端子部)13c1,13c2と、を備えている。
幅狭帯状部13a1〜13a6の各々はY軸方向に長手方向を有している。幅狭帯状部13a1〜13a6は、最もX軸正方向側に位置する13a1から順にX軸負方向に整列している。幅狭帯状部13a1のY軸負方向側の端部は、バイアス磁石膜13b1の上に形成されている。バイアス磁石膜13b1は接続部13c1と接続されている。幅狭帯状部13a1のY軸正方向側の端部は、バイアス磁石膜13b2の上に形成されている。
幅狭帯状部13a2のY軸正方向端部及びY軸負方向端部は、バイアス磁石膜13b2及びバイアス磁石膜13b3の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部13a2のY軸正方向端部は、バイアス磁石膜13b2の上部にて幅狭帯状部13a1のY軸正方向端部と接続されている。幅狭帯状部13a3のY軸負方向端部及びY軸正方向端部は、バイアス磁石膜13b3及びバイアス磁石膜13b4の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部13a3のY軸負方向端部は、バイアス磁石膜13b3の上部にて幅狭帯状部13a2のY軸負方向端部と接続されている。
幅狭帯状部13a4のY軸正方向端部及びY軸負方向端部は、バイアス磁石膜13b4及びバイアス磁石膜13b5の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部13a4のY軸正方向端部は、バイアス磁石膜13b4の上部にて幅狭帯状部13a3のY軸正方向端部と接続されている。幅狭帯状部13a5のY軸負方向端部及びY軸正方向端部は、バイアス磁石膜13b5及びバイアス磁石膜13b6の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部13a5のY軸負方向端部は、バイアス磁石膜13b5の上部にて幅狭帯状部13a4のY軸負方向端部と接続されている。
幅狭帯状部13a6のY軸正方向端部及びY軸負方向端部は、バイアス磁石膜13b6及びバイアス磁石膜13b7の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部13a6のY軸正方向端部は、バイアス磁石膜13b6の上部にて幅狭帯状部13a5のY軸正方向端部と接続されている。バイアス磁石膜13b7は接続部13c2と接続されている。このように、SAF素子13は、複数の幅狭帯状部をジグザグ状に配列し、それらを直列接続した素子である。
図4において、一点鎖線CL2は各幅狭帯状部のY軸方向中央部を通るセンターラインCL2である。SAF素子13は、図5及び図5の1−1線に沿った平面にてSAF素子13を切断した断面図である図6に示したように、そのセンターラインCL2が、通常GMR素子11のセンターラインCL1に一致するように、通常GMR素子11の上部において通常GMR素子11に実質的に重なるように形成されている。図6に示したように、通常GMR素子211とSAF素子213との間には絶縁層が形成されている。
SAF素子13は、図7の(A)に示したシンセティックスピンバルブ膜からなっている。このシンセティックスピンバルブ膜は、フリー層F、フリー層Fの上に形成されたスペーサ層S、スペーサ層Sの上に形成された固定層P’及び固定層P’の上に形成された保護層(キャッピング層)Cからなっている。
シンセティックスピンバルブ膜のフリー層F、スペーサ層S及び保護層Cは、図3の(A)に示した通常のスピンバルブ膜と同一の構成を備えている。即ち、シンセティックスピンバルブ膜は、固定層P’のみが通常のスピンバルブ膜の固定層Pと相違している。
固定層P’は、CoFeからなる第1強磁性体膜P1と、第1強磁性体膜P1の上に積層されたRuからなる交換結合膜Exと、交換結合膜Exの上に積層されたCoFeからなる第2強磁性体膜P2と、第2強磁性体膜P2の上に積層されるとともにPtを45〜55mol%含むPtMn合金からなる交換バイアス膜(反強磁性体膜)Ebとを重ね合わせた多重膜積層固定層である。
交換結合膜Exは、第1強磁性体膜P1と第2強磁性体膜P2とにサンドイッチ状に挟まれている。第1強磁性体膜P1は、交換結合膜Ex及び第2強磁性体膜P2と協働して磁化の向きが外部磁界の変化に対して変化しないように固定されるピンド層を構成している。交換バイアス膜Ebは、第2強磁性体膜P2及び交換結合膜Exを介してピンド層である第1強磁性体膜P1の磁化の向きを固定するピニング層を構成している。なお、第1強磁性体膜P1、交換結合膜Ex及び第2強磁性体膜P2をピンド層と呼ぶこともできる。
交換バイアス膜Ebは第2強磁性体膜P2と交換結合し、第2強磁性体膜P2の磁化(磁化ベクトル)の向きをX軸正方向に固定している。また、第1強磁性体膜P1と第2強磁性体膜P2は、交換結合膜Exを介して互いに交換結合している。このとき、図7の(B)に矢印にて示したように、第1強磁性体膜P1の磁化の向きと第2強磁性体膜P2の磁化の向きは反平行となる。この結果、第1強磁性体膜P1の磁化の向きは、X軸負方向に固定される。
このように構成されたSAF素子13は、図7の(C)に示したように、−Hc〜+Hcの範囲において固定層P’における第1強磁性体膜P1(ピンド層)の固定された磁化の向きに沿って変化する外部磁界Hに対して変化する抵抗値(X軸正方向の外部磁界Hの大きさが大きくなるほど増大する抵抗値)を示すようになっている。換言すると、SAF素子13の磁気検出方向は、スペーサ層Sに隣接した固定層P’の第1磁性層P1の固定された磁化の向きと反平行の向きである。なお、SAF素子13は、Y軸に沿って変化する外部磁界に対しては略一定の抵抗値を示すようになっている。
再び図1を参照すると、通常GMR素子11及びSAF素子13からなる第1素子群G1は、基板10aのY軸方向略中央部上方でX軸正方向端部近傍に形成されている。通常GMR素子11の磁気検出方向はX軸負方向となっている。SAF素子13の磁気検出方向はX軸正方向となっている。通常GMR素子12及びSAF素子14からなる第2素子群G2は、基板10aのY軸方向略中央部下方でX軸正方向端部近傍に形成されている。通常GMR素子12の磁気検出方向はX軸負方向となっている。SAF素子14の磁気検出方向はX軸正方向となっている。このように、第1素子群G1及び第2素子群G2は、基板10a上のX軸正方向端部近傍において互いに近接した位置(第1微小領域内)に形成されている。
通常GMR素子21及びSAF素子23からなる第3素子群G3は、基板10aのX軸方向略中央部左方でY軸正方向端部近傍に形成されている。通常GMR素子21の磁気検出方向はY軸負方向となっている。SAF素子23の磁気検出方向はY軸正方向となっている。通常GMR素子22及びSAF素子24からなる第4素子群G4は、基板10aのX軸方向略中央部右方でY軸正方向端部近傍に形成されている。通常GMR素子22の磁気検出方向はY軸負方向となっている。SAF素子24の磁気検出方向はY軸正方向となっている。このように、第3素子群G3及び第4素子群G4は、基板10a上のY軸正方向端部近傍において互いに近接した位置(第1微小領域から所定距離だけ離間した第2微小領域内)に形成されている。
磁気センサ10は、素子11〜14からなるX軸磁気センサ(X軸方向を磁界検出方向とする磁気センサ)及び素子21〜24からなるY軸磁気センサ(Y軸方向を磁界検出方向とする磁気センサ)を備えている。
X軸磁気センサは、図8の(A)に等価回路を示したように、素子11〜14が図1において図示を省略した導線を介してフルブリッジ接続されることにより構成されている。なお、図8の(A)において、素子11〜14の各々に隣接した位置に示されたグラフは、各グラフに隣接した素子の特性(X軸に沿って大きさが変化する外部磁界(外部磁界HのX軸正方向成分)Hxに対する抵抗値Rの変化)を示している。また、通常GMR素子に対しては各符合の後に「Conv」の記号が付され、SAF素子に対しては各符合の「SAF」の記号が付されている。
X軸磁気センサについて具体的に述べると、通常GMR素子11の一端とSAF素子13の一端とが接続されて第1回路要素が構成されている。通常GMR素子11の他端には第1電位(図示しない定電圧源により与えられる一定電圧)+Vが付与されている。SAF素子13の他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、SAF素子13の他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
更に、通常GMR素子12の一端とSAF素子14の一端とが接続されて第2回路要素が構成されている。SAF素子14の他端には第1電位+Vが付与されている。通常GMR素子12の他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、通常GMR素子12の他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
そして、通常GMR素子11の一端とSAF素子13の一端との接続箇所Q1の電位VQ1と、通常GMR素子12の一端とSAF素子14の一端との接続箇所Q2の電位VQ2と、の電位差Vox(=VQ2−VQ1)がセンサの出力値(第1出力値)として取り出される。この結果、X軸磁気センサは、図7の(B)に示したように、外部磁界Hxに略比例するとともに、外部磁界Hxが大きいほど小さくなる電圧Voxを出力するようになっている。
Y軸磁気センサは、図9の(A)に等価回路を示したように、素子21〜24が図1において図示を省略した導線を介してフルブリッジ接続されることにより構成されている。なお、図9の(A)において、素子21〜24の各々に隣接した位置に示されたグラフは、各グラフに隣接した素子の特性(Y軸に沿って大きさが変化する外部磁界H(外部磁界のY軸正方向成分)Hyに対する抵抗値Rの変化)を示している。
Y軸磁気センサについてより具体的に述べると、通常GMR素子21の一端とSAF素子23の一端とが接続されて第3回路要素が構成されている。通常GMR素子21の他端には第1電位+Vが付与されている。SAF素子23の他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、SAF素子23の他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
更に、通常GMR素子22の一端とSAF素子24の一端とが接続されて第4回路要素が構成されている。SAF素子24の他端には第1電位+Vが付与されている。通常GMR素子22の他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、通常GMR素子22の他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
そして、通常GMR素子21の一端とSAF素子23の一端との接続箇所Q3の電位VQ3と、通常GMR素子22の一端とSAF素子24の一端との接続箇所Q4の電位VQ4と、の電位差Voy(=VQ3−VQ4)がセンサの出力値(第2出力値)として取り出される。この結果、Y軸磁気センサは、図9の(B)に示したように、Y軸に沿って変化する外部磁界Hyに略比例するとともに、外部磁界Hyが大きいほど大きくなる電圧Voyを出力するようになっている。
(磁気センサ10の製造方法−ピンド層の磁化固定方法−)
次に、上記素子11〜14及び21〜24の製造方法(各ピンド層の磁化の固定方法)を説明する。先ず、平面図である図10に示したように、後に基板10aとなる基板10a−1の上に、上記素子11〜14及び21〜24を構成する膜Mを島状に複数形成する。これらの膜Mは、基板10a−1が後の切断工程により図10の鎖線にて示した切断線CLに沿って切断されて図1に示した個々の磁気センサ10に分割されたとき、素子11〜14及び21〜24が図1に示した基板10a上の各位置に配置されるように形成される。なお、膜Mの形成方法については後に詳述する。
次に、図11及び図12に示したマグネットアレイ30を準備する。図11は、マグネットアレイ30の平面図である。図12は、図11の2−2線に沿った平面にてマグネットアレイ30を切断したマグネットアレイ30の断面図である。このマグネットアレイ30は、それぞれが直方体形状の複数の永久磁石(永久棒磁石)31…31と透明な石英ガラスからなるプレート32と、を備えている。永久磁石31…31は正方格子状に配列され、各上面がプレート32の下面に固定されている。永久磁石31…31は、永久磁石31…31の各端面を含む平面において、最短距離で隣接する磁極の極性が異なるように配列されている。
即ち、マグネットアレイ30は、略直方体形状であって同直方体の一つの中心軸に直交する断面の形状が略正方形である複数の永久磁石31を、同略正方形を有する端面の重心が正方格子の格子点に一致するように配設するとともに、同配設された各永久磁石31の磁極の極性が最短距離を隔てて隣接する他の永久磁石31の磁極の極性と異なるように配置・構成されたマグネットアレイである。
図13は、上記永久磁石31…31を5個だけ取り出した状態を示す同永久磁石の斜視図である。この図から明らかなように、永久磁石31…31の端面(前記磁極が形成された端面)では、一つのN極から同N極に最短距離で隣接するS極に向かう90°ずつ方向が異なる磁界が形成される。本実施形態においては、この磁界を素子11〜14及び21〜24のピンド層の磁化の向きを固定する際の磁界として使用する。
次に、上記膜Mが形成された基板10a−1をマグネットアレイ30の上に配置する。このとき、図14の平面図に示したように、基板10a−1を切断線CLにて切断したときに形成される正方形の「膜Mが隣接して形成されていない2辺」及びその2辺の交点を、永久磁石31のX軸負方向側においてY軸に沿う辺とY軸負方向側においてX軸に沿う辺及びその2辺の交点とそれぞれ一致させるように、基板10a−1とマグネットアレイ30とを相対的に配置する。この結果、図13及び図14に矢印にて示したように、各膜Mに同各膜Mの幅狭帯状部の長手方向と直交する向きの磁界が加わる。
そして、この状態にある基板10a−1及びマグネットアレイ30を真空中で250℃〜280℃に加熱し、その後、4時間ほど放置する磁場中熱処理を実施する。これにより、固定層P(ピンド層Pd)の磁化の向き及び固定層P’(ピンド層P1)磁化の向きが固定される。
ところで、図37に示したように、互いに近接した位置に互いに磁気検出方向が反平行(180度相違する)の通常GMR素子を形成しようとすると、通常GMR素子となる一つの膜M1に対して磁場中熱処理中に付与する磁界の向きと、通常GMR素子となる他の一つの膜M2に対して磁場中熱処理中に付与する磁界の向きとは互いに反平行でなければならない。しかしながら、このように小さい領域に各大きさが大きい反平行の磁界を発生することは一般に困難である。このため、従来においては、二つの通常GMR素子の距離を大きくし、マグネットアレイ30の一つのN極から同N極に隣接する二つのS極に向う180度向きが相違する磁界(或いは、マグネットアレイ30の一つのS極から同S極に隣接する二つのN極から同S極に向う180度向きが相違する磁界)を付与していた。
一方、図15に示したように、通常GMR素子となる膜M3及びSAF素子となる膜M4を上下方向に重ねて(近接して)形成しておき、これらに対し磁場中熱処理において同一方向の磁界を与えると、磁気検出方向が互いに反平行である巨大磁気抵抗効果素子が得られる。これは、通常GMR素子となる膜の固定層Pのピンド層Pd(CoFe磁性層)及びSAF素子となる膜の固定層P’の第2強磁性体膜P2の磁化の向きは一致し、固定層P’の第1強磁性体膜P1の磁化の向きは第2強磁性体膜P2の磁化の向きと反平行となるからである。
従って、この方法によれば、極めて狭い領域内に磁気検出方向が互いに180度異なる二つ以上の巨大磁気抵抗効果素子を形成することができる。
なお、実際には、このように磁場中熱処理を実施した後、バイアス磁石膜等の着磁などの必要な処理を行い、図14に示した切断線CLに沿って基板10a−1を切断する。これにより、図1に示した磁気センサ10と図16に示した磁気センサ40とが同時に多数個製造される。
この磁気センサ40は、便宜上「Sタイプの磁気センサ40」と称呼される。ここで磁気センサ40について説明すると、磁気センサ40は、巨大磁気抵抗効果素子41〜44,51〜54を備えている。素子41,42,51及び52は、通常GMR素子であり、素子43,44,53及び54はSAF素子である。SAF素子43,44,53及び54は、それぞれ通常GMR素子41,42,51及び52の上部に重なるように形成されている。これらの素子のフリー層の初期状態における磁化の向き及びピンド層(スペーサ層に接する強磁性体膜)の固定された磁化の向き(従って、磁気検出方向と反平行の向き)は、図16に示した通りである。なお、図16において、実線の各円内にある二つの素子(例えば、素子41と素子43)は、基板10aの主面に直交する方向(Z軸方向)において互いに重なって形成されていることを意味するものとする。
また、素子41,42,43及び44はそれぞれ第1,第2,第3及び第4X軸磁気検出素子と称呼され、磁気センサ10の素子11,12,13及び14と同様にフルブリッジ接続されてX軸磁気センサを構成する。同様に、素子51,52,53及び54はそれぞれ第1,第2,第3及び第4Y軸磁気検出素子と称呼され、磁気センサ10の素子21,22,23及び24と同様にフルブリッジ接続されてY軸磁気センサを構成する。
(膜Mの製造方法)
次に、上述した膜M(通常GMR素子となる膜及びSAF素子となる膜)の製造方法(膜形成工程)について説明する。
ステップ1;先ず、図17の(A)に示したように、基板10aを準備する。基板10aには上述したブリッジ接続のための配線10a1と、配線10a1を覆う絶縁層10a2とからなる絶縁・配線層が形成されている。絶縁層10a2には、VIAホールと呼ばれる接続孔が形成されている。VIAホールにより配線10a1の一部が外部に露呈される。
ステップ2;図17の(B)に示したように、バイアス磁石膜となる膜11b(バイアス磁石膜11b1〜11b7となるCoCrPtからなる膜)を基板10aの上面にスパッタリングによって成膜する。
ステップ3;図17の(C)に示したように、バイアス磁石膜となる膜11bの上面にレジストR1を形成し、そのレジストR1をバイアス磁石膜となる膜11bの必要部分のみを覆うパターンにカットする。即ち、レジストR1によるレジストマスクを形成する。
ステップ4;図18の(A)に示したように、イオンミリングによりバイアス磁石膜となる膜11bの不要部分を除去する。
ステップ5;図18の(B)に示したように、レジストR1を除去する。
ステップ6;図18の(C)に示したように、図3(A)に示した通常GMR素子となる膜11a(幅狭帯状部11a1〜11a6となる膜)を上面に形成する。
ステップ7;図19の(A)に示したように、上面にレジストR2を形成し、そのレジストR2を通常GMR素子(11,12,21,22)となる膜11aの必要部分のみを覆うパターンにカットする。即ち、レジストR2によるレジストマスクを形成する。
ステップ8;図19の(B)に示したように、イオンミリングにより通常GMR素子となる膜11aの不要部分を除去する。
ステップ9;図19の(C)に示したように、レジストR2を除去する。
ステップ10;図20の(A)に示したように、上面にSiNからなる層間絶縁膜INをCVD法により成膜する。層間絶縁膜INはSiO2であってもよい。
ステップ11;図20の(B)に示したように、上面であってVIAホールを形成する部分以外を除く位置にレジストR3を形成する。即ち、レジストR3によるレジストマスクを形成する。
ステップ12;図20の(C)に示したように、イオンミリングにより層間絶縁膜INの不要部分を除去する。これにより、VIAホールが形成される。
ステップ13;図21の(A)に示したように、レジストR3を除去する。
ステップ14;図21の(B)に示したように、上面にバイアス磁石膜となる膜13b(バイアス磁石膜13b1〜13b7となるCoCrPtからなる膜)をスパッタリングによって成膜する。
ステップ15;図21の(C)に示したように、バイアス磁石膜となる膜13bの上面にレジストR4を形成し、そのレジストR4をバイアス磁石膜となる膜13bの必要部分のみを覆うパターンにカットする。即ち、レジストR4によるレジストマスクを形成する。
ステップ16;図22の(A)に示したように、イオンミリングによりバイアス磁石膜となる膜13bの不要部分を除去する。
ステップ17;図22の(B)に示したように、レジストR4を除去する。
ステップ18;図22の(C)に示したように、図7(A)に示したSAF素子となる膜13a(幅狭帯状部13a1〜13a6となる膜)を上面に形成する。
ステップ19;図23の(A)に示したように、上面にレジストR5を形成し、そのレジストR5をSAF素子となる膜13aの必要部分のみを覆うパターンにカットする。即ち、レジストR5によるレジストマスクを形成する。
ステップ20;図23の(B)に示したように、イオンミリングによりSAF素子となる膜13aの不要部分を除去する。
ステップ21;図23の(C)に示したように、レジストR5を除去する。
以上により、GMR素子となる膜11aとSAF素子となる膜13aとが重なるように形成される。この後、上述した磁場中熱処理を行う。
なお、上記方法においては、通常GMR素子となる膜を先に形成し、その後、SAF素子となる膜を形成していたが、SAF素子となる膜を先に形成し、その後、通常GMR素子となる膜を形成してもよい。
このように、上記製造方法は、第1巨大磁気抵抗効果素子である通常GMR素子となる膜11a及び第2巨大磁気抵抗効果素子であるSAF素子となる膜13aを基板10a(実際には、基板10aとなる基板10a−1)上に形成する膜形成工程(ステップ1〜ステップ21)と、その形成された各膜に対して同一の向きの磁界を高温下で付与することにより同各膜の前記ピンド層の磁化の向きを固定する磁場中熱処理工程と、を含む。
この磁場中熱処理工程により、通常GMR素子(例えば、通常GMR素子11)の固定層のピンド層とSAF素子(例えば、SAF素子13)の固定層のピンド層との磁化を180度相違する向きに容易に固定することができるので、磁気検出方向が互いに180度相違する2つの巨大磁気抵抗効果素子を単一の基板上に容易に製造することができる。
また、前記磁場中熱処理工程は、マグネットアレイ(30)によって形成される磁界を同磁場中熱処理工程中の磁界として用いる。従って、大量の磁気センサを一時に効率よく製造することができる。また、X軸方向及びY軸方向の直交する二軸のそれぞれに磁気検出方向を有する巨大磁気抵抗効果素子及び磁気センサを容易に製造することができる。
更に、前記膜形成工程は、
基板の上にバイアス磁石膜となる膜(第1のバイアス磁石膜)11bを形成する工程(ステップ2)と、
前記第1のバイアス磁石膜11bの不要部分を除去する工程(ステップ3〜ステップ5)と、
第1巨大磁気抵抗効果素子(通常GMR素子)となる膜及び第2巨大磁気抵抗効果素子(SAF素子)となる膜のうちの一方の膜を基板の上に形成する第1膜形成工程(ステップ6)と、
前記形成された一方の膜の不要部分を除去する第1不要部除去工程(ステップ7〜ステップ9)と、
前記不要部分が除去された前記一方の膜を絶縁膜(IN)により覆う絶縁膜形成工程(ステップ10)と、
絶縁膜(IN)の一部を除去してVIAホールを形成する工程(ステップ11〜ステップ13)と、
絶縁膜(IN)の上にバイアス磁石膜となる膜(第2のバイアス磁石膜)13bを形成する工程(ステップ14)と、
前記第2のバイアス磁石膜13bの不要部分を除去する工程(ステップ15〜ステップ17)と、
第1巨大磁気抵抗効果素子(通常GMR素子)となる膜及び第2巨大磁気抵抗効果素子(SAF素子)となる膜のうちの他方の膜を絶縁膜(IN)及び前記VIAホールの上に形成する第2膜形成工程(ステップ18)と、
前記形成された他方の膜の不要部分を除去する第2不要部除去工程(ステップ19〜ステップ21)、
を含んでいる。
これにより、単一の基板上に通常GMR素子となる膜及びSAF素子となる膜が連続的に形成される。
以上、説明したように、磁気センサ10は、単一の基板10a上に通常GMR素子及びSAF素子を上下方向(基板の主面に直交する方向)に積層した構造を有するので、これらの素子となる膜に単一の方向の磁界を加えることにより、磁気検出方向が180度相違する素子を微小領域内に備えることができる。従って、磁気センサ10は非常に小型の磁気センサとなる。
一方、磁気センサ10において、巨大磁気抵抗効果素子11〜14,21〜24は、基板10a上に形成されるとともに樹脂などにより被覆される。従って、基板10aや樹脂等が熱や外部から加わる応力などによって変形すると、巨大磁気抵抗効果素子11〜14,21〜24も熱や応力により変形し、その抵抗値が変化してしまう。この結果、磁気センサ10のように、巨大磁気抵抗効果素子をブリッジ接続している磁気センサにおいては、ブリッジ回路のランスが崩れ、出力値が応力により変化してしまう。従って、かかる磁気センサは、外部磁界の大きさを精度良く検出できないという問題がある。
しかしながら、上記磁気センサ10は、一つのフルブリッジ回路を形成する巨大磁気抵抗効果素子11〜14(又は、巨大磁気抵抗効果素子21〜24)は、基板10a上の微小領域内に形成されているから、それらの素子には一様な応力(例えば、略同一の引張応力又は略同一の圧縮応力)が加わる。従って、各巨大磁気抵抗効果素子の抵抗値は互いに同様に増大又は減少するので、ブリッジ回路のバランスが崩れてしまう可能性が低減する。この結果、磁気センサ10は磁界を精度良く検出することができる。
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る磁気センサについて説明する。第2実施形態に係る磁気センサは、拡大平面図である図24に示したように、通常GMR素子の幅狭帯状部とSAF素子の幅狭帯状部とが平面視で交差するように、通常GMR素子とSAF素子とが重ねられた磁気センサである。
より具体的に説明すると、第2実施形態に係る磁気センサは、第1実施形態に係る磁気センサ10の第1素子群G1乃至第4素子群G4にそれぞれ代わる第1素子群G1’乃至第4素子群G4’を備えている。第1素子群G1’乃至第4素子群G4’は、基板10aにおける配置が異なる点を除き、互いに実質的に同一の構造を備えている。従って、以下、第1素子群G1’をこれらの代表例として、その構造について説明する。
第1素子群G1’の通常GMR素子11’は、図24に示したように、複数の(この例では4個の)幅狭帯状部11a1’〜11a4’と、複数の(この例では5個の)バイアス磁石膜11b1’〜11b5’と、一対の接続部(端子部)11c1’,11c2’と、を備えている。
幅狭帯状部11a1’は、幅狭帯状部11a1’〜11a4’の中で最もX軸正方向側に位置している。幅狭帯状部11a1’の長手方向は、Y軸正方向から鋭角の角度θだけ時計方向に回転した角度に沿っている。幅狭帯状部11a1’のY軸正方向側の端部は、バイアス磁石膜11b1’の上に形成されている。バイアス磁石膜11b1’は接続部11c1’と接続されている。幅狭帯状部11a1’のY軸負方向側の端部は、バイアス磁石膜11b2’の上に形成されている。
幅狭帯状部11a2’は、幅狭帯状部11a1’に隣接している。幅狭帯状部11a2’の長手方向は、Y軸正方向から鋭角の角度θだけ反時計方向に回転した角度に沿っている。幅狭帯状部11a2’のY軸負方向端部及びY軸正方向端部は、バイアス磁石膜11b2’及びバイアス磁石膜11b3’の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部11a2’のY軸負方向端部は、バイアス磁石膜11b2’の上部にて幅狭帯状部11a1’のY軸負方向端部と接続されている。
幅狭帯状部11a3’は、幅狭帯状部11a2’に隣接している。幅狭帯状部11a3’の長手方向は、Y軸正方向から鋭角の角度θだけ時計方向に回転した角度に沿っている。幅狭帯状部11a3’のY軸正方向端部及びY軸負方向端部は、バイアス磁石膜11b3’及びバイアス磁石膜11b4’の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部11a3’のY軸正方向端部は、バイアス磁石膜11b3’の上部にて幅狭帯状部11a2’のY軸正方向端部と接続されている。
幅狭帯状部11a4’は、幅狭帯状部11a3’に隣接している。幅狭帯状部11a4’の長手方向は、Y軸正方向から鋭角の角度θだけ反時計方向に回転した角度に沿っている。幅狭帯状部11a4’のY軸負方向端部及びY軸正方向端部は、バイアス磁石膜11b4’及びバイアス磁石膜11b5’の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部11a4’のY軸負方向端部は、バイアス磁石膜11b4’の上部にて幅狭帯状部11a3’のY軸負方向端部と接続されている。バイアス磁石膜11b5’は接続部11c2’と接続されている。このように、通常GMR素子11’は、複数の幅狭帯状部をジグザグ状に配列し、それらを直列接続した素子である。
第1素子群G1’のSAF素子13’は、複数の(この例では4個の)幅狭帯状部13a1’〜13a4’と、複数の(この例では5個の)バイアス磁石膜13b1’〜13b5’と、一対の接続部(端子部)13c1’,13c2’と、を備えている。
幅狭帯状部13a1’は、幅狭帯状部13a1’〜13a4’の中で最もX軸正方向側に位置している。幅狭帯状部13a1’の長手方向は、Y軸正方向から鋭角の角度θだけ反時計方向に回転した角度に沿っている。幅狭帯状部13a1’のY軸負方向側の端部は、バイアス磁石膜13b1’の上に形成されている。バイアス磁石膜13b1’は接続部13c1’と接続されている。幅狭帯状部13a1’のY軸正方向側の端部は、バイアス磁石膜13b2’の上に形成されている。
幅狭帯状部13a2’は、幅狭帯状部13a1’に隣接している。幅狭帯状部13a2’の長手方向は、Y軸正方向から鋭角の角度θだけ時計方向に回転した角度に沿っている。幅狭帯状部13a2’のY軸正方向端部及びY軸負方向端部は、バイアス磁石膜13b2’及びバイアス磁石膜13b3’の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部13a2’のY軸正方向端部は、バイアス磁石膜13b2’の上部にて幅狭帯状部13a1’のY軸正方向端部と接続されている。
幅狭帯状部13a3’は、幅狭帯状部13a2’に隣接している。幅狭帯状部13a3’の長手方向は、Y軸正方向から鋭角の角度θだけ反時計方向に回転した角度に沿っている。幅狭帯状部13a3’のY軸負方向端部及びY軸正方向端部は、バイアス磁石膜13b3’及びバイアス磁石膜13b4’の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部13a3’のY軸負方向端部は、バイアス磁石膜13b3’の上部にて幅狭帯状部13a2’のY軸負方向端部と接続されている。
幅狭帯状部13a4’は、幅狭帯状部13a3’に隣接している。幅狭帯状部13a4’の長手方向は、Y軸正方向から鋭角の角度θだけ時計方向に回転した角度に沿っている。幅狭帯状部13a4’のY軸正方向端部及びY軸負方向端部は、バイアス磁石膜13b4’及びバイアス磁石膜13b5’の上にそれぞれ形成されている。幅狭帯状部13a4’のY軸正方向端部は、バイアス磁石膜13b4’の上部にて幅狭帯状部13a3’のY軸正方向端部と接続されている。バイアス磁石膜13b5’は接続部13c2’と接続されている。このように、SAF素子13’は、複数の幅狭帯状部をジグザグ状に配列し、それらを直列接続した素子である。また、SAF素子13’の各幅狭帯状部は、通常GMR素子11’の各幅狭帯状部の上方において平面視で同各幅狭帯状部と交差するように形成されている。なお、SAF素子13’の各幅狭帯状部と、通常GMR素子11’の各幅狭帯状部とが平面視で交差する部分には、少なくとも図示しない絶縁膜が形成されている。
この第2実施形態に係る磁気センサも、磁気センサ10と同様、単一の基板10a上に通常GMR素子及びSAF素子を上下方向(基板の主面に直交する方向)に積層した構造を有するので、これらの素子となる膜に単一の方向の磁界を加えることにより、磁気検出方向が180度相違する素子を微小領域内に備えることができる。従って、第2実施形態に係る磁気センサも非常に小型の磁気センサとなる。なお、第6実施形態においては、通常GMR素子11’の上部に絶縁膜を介してSAF素子13’が形成されていたが、SAF素子13’の上部に通常GMR素子11’が形成されてもよい。
<第3実施形態>
次に、本発明の第3実施形態に係る磁気センサについて説明する。図25に示したように、この磁気センサ50は、単一の基板50a、通常GMR素子51G〜54G、SAF素子61S〜64S、通常GMR素子71G〜74G及びSAF素子81S〜84Sを備えている。なお、図25において、実線の各円内にある二つの素子(例えば、素子51Gと素子61S)は、基板10aの主面に直交する方向(Z軸方向)において絶縁体を介して互いに重なって形成されていることを意味するものとする。
基板50aは、基板10aと同様の形状を有するシリコンからなる薄板体である。
通常GMR素子51G〜54G及び通常GMR素子71G〜74Gのそれぞれは、上述した通常GMR素子11と同一の膜構造を備えている。SAF素子61S〜64S及びSAF素子81S〜84Sのそれぞれは、上述したSAF素子13と同一の膜構造を備えている。また、これらの素子は、それぞれの磁気検出方向に同一の大きさの磁界が付与されたときに同一の抵抗値を示すとともに、同一の向き且つ大きさの応力を受けたとき、各抵抗値が同量だけ変化するように、スピンバルブ膜を構成する膜厚等が調整されている。
通常GMR素子51G〜54G,71G〜74G及びSAF素子61S〜64S,81S〜84Sは、以下の表1及び表2に示した第1乃至第8素子群を構成している。表1及び表2は、これらの素子群の形成位置、通常GMR素子51G〜54G,71G〜74Gの固定層Pのピンド層Pdの固定された磁化の向き、SAF素子61S〜64S,81S〜84Sの固定層P’のピンド層である第1強磁性体膜P1の固定された磁化の向き及び各素子の磁気検出方向等を示している。なお、図25及び表1に示した第1領域〜第4領域の各領域内に形成された素子は、基板50a等の変形により実質的に同一の応力を受ける。
なお、本実施形態において、各通常GMR素子及び各SAF素子は、表3に示したようにも称呼される。
磁気センサ50は、図26に示したように、第1X軸磁気センサ50X1と、第2X軸磁気センサ50X2と、差分回路50XdifとからなるX軸磁気センサ50Xを備えている。
第1X軸磁気センサ50X1は、図27の(A)に等価回路を示したように、4つの通常GMR素子51G〜54Gが図25において図示を省略した導線を介してフルブリッジ接続されることにより構成されている。
より具体的に第1X軸磁気センサ50X1について述べると、通常GMR素子51Gの一端と通常GMR素子53Gの一端とが接続されて第1回路要素が構成されている。通常GMR素子51Gの他端には第1電位(図示しない定電圧源により与えられる一定電圧)+Vが付与されている。通常GMR素子53Gの他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、通常GMR素子53Gの他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
更に、通常GMR素子54Gの一端と通常GMR素子52Gの一端とが接続されて第2回路要素が構成されている。通常GMR素子54Gの他端には第1電位+Vが付与されている。通常GMR素子52Gの他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、通常GMR素子52Gの他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
そして、通常GMR素子51Gの一端と通常GMR素子53Gの一端との接続箇所Q10の電位VQ10と、通常GMR素子54Gの一端と通常GMR素子52Gの一端との接続箇所Q20の電位VQ20と、の電位差VoxConv(=VQ10−VQ20)がセンサの出力値(通常GMR素子出力値,通常GMR素子X軸出力値)として取り出される。
なお、図27の(A)において、通常GMR素子51G〜54Gの各々に隣接した位置に示されたグラフは、各グラフに隣接した素子の特性を示している。これらのグラフにおいて、実線、破線及び二点鎖線は、各通常GMR素子が応力を受けていない場合、各通常GMR素子が引張応力を受けた場合及び各通常GMR素子が圧縮応力を受けた場合における外部磁界Hxに対する抵抗値Rの変化をそれぞれ示している。
従って、第1X軸磁気センサ50X1の出力VoxConvは、通常GMR素子51G〜54Gに応力が加わっていないとき、図27の(B)の実線により示したように、外部磁界Hxに略比例するとともに、外部磁界Hxが大きいほど小さくなる。
第2X軸磁気センサ50X2は、図28の(A)に等価回路を示したように、4つのSAF素子61S〜64Sが図25において図示を省略した導線を介してフルブリッジ接続されることにより構成されている。
より具体的に第2X軸磁気センサ50X2について述べると、SAF素子61Sの一端とSAF素子63Sの一端とが接続されて第3回路要素が構成されている。SAF素子61Sの他端には第1電位+Vが付与されている。SAF素子63Sの他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、SAF素子63Sの他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
更に、SAF素子64Sの一端とSAF素子62Sの一端とが接続されて第4回路要素が構成されている。SAF素子64Sの他端には第1電位+Vが付与されている。SAF素子62Sの他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、SAF素子62Sの他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
そして、SAF素子61Sの一端とSAF素子63Sの一端との接続箇所Q30の電位VQ30と、SAF素子64Sの一端とSAF素子62Sの一端との接続箇所Q40の電位VQ40と、の電位差VoxSAF(=VQ30−VQ40)がセンサの出力値(SAF素子出力値,SAF素子X軸出力値)として取り出される。
なお、図28の(A)において、SAF素子61S〜64Sの各々に隣接した位置に示されたグラフは、各グラフに隣接した素子の特性を示している。これらのグラフにおいて、実線、破線及び二点鎖線は、各SAF素子が応力を受けていない場合、各SAF素子が引張応力を受けた場合及び各SAF素子が圧縮応力を受けた場合における外部磁界Hxに対する抵抗値Rの変化をそれぞれ示している。
従って、第2X軸磁気センサ50X2の出力VoxSAFは、SAF素子61S〜64Sに応力が加わっていないとき、図28の(B)の実線により示したように、外部磁界Hxに略比例するとともに、外部磁界Hxが大きいほど大きくなる。
差分回路50Xdifは、図26に示したように、第2X軸磁気センサ50X2の出力VoxSAFから第1X軸磁気センサ50X1の出力VoxConvを減算して、その減算結果をX軸磁気センサ50Xの出力値Voxとして出力する回路である。これにより、磁気センサ50の出力Voxは、図29に示したように、外部磁界Hxに略比例するとともに、外部磁界Hxが大きいほど大きくなる。
更に、磁気センサ50は、図30に示したように、Y軸磁気センサ50Yを備えている。Y軸磁気センサ50Yは、第1Y軸磁気センサ50Y1と、第2Y軸磁気センサ50Y2と、差分回路50Ydifとからなっている。
第1Y軸磁気センサ50Y1は、図31の(A)に等価回路を示したように、4つの通常GMR素子71G〜74Gが図25において図示を省略した導線を介してフルブリッジ接続されることにより構成されている。
より具体的に第1Y軸磁気センサ50Y1について述べると、通常GMR素子71Gの一端と通常GMR素子73Gの一端とが接続されて第11回路要素が構成されている。通常GMR素子71Gの他端には第1電位+Vが付与されている。通常GMR素子73Gの他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、通常GMR素子73Gの他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
更に、通常GMR素子74Gの一端と通常GMR素子72Gの一端とが接続されて第12回路要素が構成されている。通常GMR素子74Gの他端には第1電位+Vが付与されている。通常GMR素子72Gの他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、通常GMR素子72Gの他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
そして、通常GMR素子71Gの一端と通常GMR素子73Gの一端との接続箇所Q50の電位VQ50と、通常GMR素子74Gの一端と通常GMR素子72Gの一端との接続箇所Q60の電位VQ60と、の電位差VoyConv(=VQ50−VQ60)がセンサの出力値(通常GMR素子出力値,通常GMR素子Y軸出力値)として取り出される。
なお、図31の(A)において、通常GMR素子71G〜74Gの各々に隣接した位置に示されたグラフは、各グラフに隣接した素子の特性を示している。これらのグラフにおいて、実線、破線及び二点鎖線は、各通常GMR素子が応力を受けていない場合、各通常GMR素子が引張応力を受けた場合及び各通常GMR素子が圧縮応力を受けた場合における外部磁界Hyに対する抵抗値Rの変化をそれぞれ示している。
従って、第1Y軸磁気センサ50Y1の出力VoyConvは、通常GMR素子71G〜74Gに応力が加わっていないとき、図31の(B)の実線により示したように、外部磁界Hyに略比例するとともに、外部磁界Hyが大きいほど大きくなる。
第2Y軸磁気センサ50Y2は、図32の(A)に等価回路を示したように、4つのSAF素子81S〜84Sが図25において図示を省略した導線を介してフルブリッジ接続されることにより構成されている。
より具体的に第2Y軸磁気センサ50Y2について述べると、SAF素子81Sの一端とSAF素子83Sの一端とが接続されて第13回路要素が構成されている。SAF素子81Sの他端には第1電位+Vが付与されている。SAF素子83Sの他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、SAF素子83Sの他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
更に、SAF素子84Sの一端とSAF素子82Sの一端とが接続されて第14回路要素が構成されている。SAF素子84Sの他端には第1電位+Vが付与されている。SAF素子82Sの他端は、接地されている(GNDに接続されている。)。即ち、SAF素子82Sの他端には、第1電位と異なる第2電位が付与されている。
そして、SAF素子81Sの一端とSAF素子83Sの一端との接続箇所Q70の電位VQ70と、SAF素子84Sの一端とSAF素子82Sの一端との接続箇所Q80の電位VQ80と、の電位差VoySAF(=VQ70−VQ80)がセンサの出力値(SAF素子出力値,SAF素子Y軸出力値)として取り出される。
なお、図32の(A)において、SAF素子81S〜84Sの各々に隣接した位置に示されたグラフは、各グラフに隣接した素子の特性を示している。これらのグラフにおいて、実線、破線及び二点鎖線は、各SAF素子が応力を受けていない場合、各SAF素子が引張応力を受けた場合及び各SAF素子が圧縮応力を受けた場合における外部磁界Hyに対する抵抗値Rの変化をそれぞれ示している。
従って、第2Y軸磁気センサ50Y2の出力VoySAFは、SAF素子81S〜84Sに応力が加わっていないとき、図32の(B)の実線により示したように、外部磁界Hyに略比例するとともに、外部磁界Hyが大きいほど小さくなる。
差分回路50Ydifは、図30に示したように、第1Y軸磁気センサ50Y1の出力VoyConvから第2Y軸磁気センサ50Y2の出力VoySAFを減算して、その減算結果をY軸磁気センサ50Yの出力値Voyとして出力する回路である。これにより、磁気センサ50の出力Voyは、図33に示したように、外部磁界Hyに略比例するとともに、外部磁界Hyが大きいほど大きくなる。
次に、このように構成された磁気センサ50の作動について場合を分けて説明する。なお、X軸磁気センサ50XとY軸磁気センサ50Yは、磁界検出方向が90度相違する点を除いて同様に作動する。従って、以下においては、X軸磁気センサ50Xの作動について述べる。
(1)通常GMR素子51G〜54G及びSAF素子61S〜64Sに応力が加わっていない場合。
このとき、X軸磁気センサ50Xは、前述したように外部磁界Hxが大きいほど大きくなる電圧Voxを出力する。
(2)第1領域内の素子群(通常GMR素子51G、SAF素子61S、通常GMR素子52G及びSAF素子62S)に引張応力が加わり、第2領域内の素子群(通常GMR素子53G、SAF素子63S、通常GMR素子54G及びSAF素子64S)に圧縮応力が加わった場合。
この場合、通常GMR素子51G及び通常GMR素子52Gの抵抗値は、外部磁界Hxの大きさに拘わらず共に略一定値だけ増大する(図27の素子51G,52Gに対応するグラフにおける破線を参照。)。また、通常GMR素子53G及び通常GMR素子54Gの抵抗値は、外部磁界Hxの大きさに拘わらず共に同略一定値だけ減少する(図27の素子53G,54Gに対応するグラフにおける二点鎖線を参照。)。この結果、第1X軸磁気センサ50X1の出力VoxConvは、図27の(B)に一点鎖線により示したように、外部磁界Hxの大きさに拘わらず一定値だけ減少する。
一方、SAF素子61S及びSAF素子62Sの抵抗値は、外部磁界Hxの大きさに拘わらず共に一定値だけ増大する(図28の素子61S,62Sに対応するグラフにおける破線を参照。)。また、SAF素子63S及びSAF素子64Sの抵抗値は、外部磁界Hxの大きさに拘わらず共に一定値だけ減少する(図28の素子63S,64Sに対応するグラフにおける二点鎖線を参照。)。この結果、第2X軸磁気センサ50X2の出力VoxSAFは、図28の(B)に一点鎖線により示したように、外部磁界Hxの大きさに拘わらず一定値だけ減少する。従って、この場合、出力VoxConv及び出力VoxSAFは共に一定値だけ減少するから、その差であるX軸磁気センサ50Xの出力Voxは変化しない。
(3)第1領域内の素子群(通常GMR素子51G、SAF素子61S、通常GMR素子52G及びSAF素子62S)に圧縮応力が加わり、第2領域内の素子(通常GMR素子53G、SAF素子63S、通常GMR素子54G及びSAF素子64S)に引張応力が加わった場合。
この場合、通常GMR素子51G及び通常GMR素子52Gの抵抗値は、外部磁界Hxの大きさに拘わらず共に略一定値だけ減少する(図27の素子51G,52Gに対応するグラフにおける二点鎖線を参照。)。また、通常GMR素子53G及び通常GMR素子54Gの抵抗値は、外部磁界Hxの大きさに拘わらず共に同略一定値だけ増大する(図27の素子53G,54Gに対応するグラフにおける破線を参照。)。この結果、第1X軸磁気センサ50X1の出力VoxConvは、図27の(B)に破線により示したように、外部磁界Hxの大きさに拘わらず一定値だけ増大する。
一方、SAF素子61S及びSAF素子62Sの抵抗値は、外部磁界Hxの大きさに拘わらず共に一定値だけ減少する(図28の素子61S,62Sに対応するグラフにおける二点鎖線参照。)。また、SAF素子63S及びSAF素子64Sの抵抗値は、外部磁界Hxの大きさに拘わらず共に一定値だけ増大する(図28の素子63S,64Sに対応するグラフにおける破線を参照。)。この結果、第2X軸磁気センサ50X2の出力VoxSAFは、図28の(B)に破線により示したように、外部磁界Hxの大きさに拘わらず一定値だけ増大する。従って、この場合、出力VoxConv及び出力VoxSAFは共に一定値だけ増大するから、その差であるX軸磁気センサ50Xの出力Voxは変化しない。
(4)第1領域内の素子及び第2領域内の素子の総てに圧縮応力が加わった場合。
この場合、総ての素子の抵抗値は一定量だけ小さくなる。従って、出力VoxConv及び出力VoxSAFは変化しない。この結果、X軸磁気センサ50Xの出力Voxは変化しない。
(5)第1領域内の素子及び第2領域内の素子の総てに引張応力が加わった場合。
この場合、総ての素子の抵抗値は一定量だけ大きくなる。従って、出力VoxConv及び出力VoxSAFは変化しない。この結果、X軸磁気センサ50Xの出力Voxは変化しない。
以上、説明したように、第3実施形態に係る磁気センサ50は、各素子に加わる応力が変化した場合であっても、外部磁界が変化しない限り一定の出力値を出力することができる。この結果、磁気センサ50は磁界を精度良く検出することができる。
以上、説明したように、本発明の各実施形態に係る磁気センサは、小型であって、素子が受ける応力の出力値への影響を極力小さくした磁気センサとなっている。なお、本発明は上記各実施形態に限定されることはなく、本発明の範囲内において種々の変形例を採用することができる。
例えば、図34の(A)に示したように、磁気センサ10の第1素子群G1(通常GMR素子11及びSAF素子13)のみを基板Sub上に形成しておき、図34(B)に示したように、SAF素子13と通常GMR素子11とをハーフブリッジ接続し、それらの素子の接続箇所T1の電位をX軸磁気センサの出力値Voxとしてもよい。即ち、上記各実施形態は、直交2軸方向検出型磁気センサであったが、本発明に従ってX軸磁気センサのみを備えた1軸方向検出型磁気センサを構成してもよい。また、図35に示したように、固定抵抗Rfix1,Rfix2を含んでフルブリッジ回路を構成し、接続箇所T2の電位と接続箇所T3の電位との電位差をX軸磁気センサの出力値Voxとしてもよい。
更に、例えば、図8(A)に示した回路において、SAF素子13と接続箇所Q1との間に固定抵抗を直列接続するとともに、SAF素子14と接続箇所Q2との間に他の固定抵抗を直列接続してもよい。また、各SAF素子は、その幅狭帯状部のセンターラインCL2が、通常GMR素子の幅狭帯状部のセンターラインCL1に一致するように、基板10a上であって、通常GMR素子の下部において通常GMR素子に実質的に重なるように形成されてもよい。
10…磁気センサ(Nタイプ)、11,12,21,22…通常GMR素子、13,14,23,24…SAF素子、11a…通常GMR素子となる膜、11b…バイアス磁石膜となる膜、13a…SAF素子となる膜、13b…バイアス磁石膜となる膜、11a1〜11a6,13a1〜13a6…幅狭帯状部、11b1〜11b7,13b1〜13b7…バイアス磁石膜、30…マグネットアレイ、31…永久磁石、40…磁気センサ(Sタイプ)、41,42,51,52…通常GMR素子、43,44,53,54…SAF素子、50…磁気センサ、51G〜54G,71G〜74G…通常GMR素子、61S〜64S,81S〜84S…SAF素子、Eb…交換バイアス膜、Ex…交換結合膜、F…フリー層、P,P’…固定層、P1…ピンド層(第1強磁性体膜)、P2…第2強磁性体膜、Pd…ピンド層、S…スペーサ層。