以下、本発明の実施の形態を説明する。なお、同一の構成には同一の参照番号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1を参照して、本実施の形態に係る磁界検出装置1の一例を説明する。本実施の形態の磁界検出装置1は、着磁ロータ2と、磁気センサ3とを備える。
着磁ロータ2は、外周に交互に配置されるN極領域2n及びS極領域2sを含む。着磁ロータ2は、回転軸2rを中心に回転する。着磁ロータ2は、例えば、エンジンのクランクシャフトまたは車輪軸と一体となって回転するように構成されてもよい。磁気センサ3は、着磁ロータ2の外周に対向するように、着磁ロータ2から間隔をあけて配置される。
図2及び図3を参照して、磁気センサ3は、1つ以上の磁気抵抗素子6と、1つ以上の薄膜磁石7とを備える。特定的には、磁気センサ3は、1つ以上の磁気センサ部5を含む。1つ以上の磁気センサ部5の各々は、1つ以上の磁気抵抗素子6と、1つ以上の薄膜磁石7とを含む。さらに特定的には、磁気センサ3は、1つの磁気センサ部5を含んでもよい。1つの磁気センサ部5は、1つの磁気抵抗素子6と、一対の薄膜磁石7とを含んでもよい。1つの磁気抵抗素子6は、一対の薄膜磁石7の間に配置されてもよい。
図3を参照して、1つ以上の磁気抵抗素子6の各々は、交互に積層される複数の第2の磁性膜15と複数の第2の非磁性膜16とを含む。第2の磁性膜15は、例えば、NiFe、CoFeまたはこれらの積層体から構成されてもよい。第2の非磁性膜16は、例えば、銅で構成されてもよい。1つ以上の磁気抵抗素子6の各々は、巨大磁気抵抗素子(GMR)であってもよい。
図4に、バイアス磁場無しの磁気抵抗素子6のMR曲線を示す。MR曲線は、磁気抵抗素子6に印加される磁場と磁気抵抗素子6の磁気抵抗比(MR比)との関係を表す。バイアス磁場が磁気抵抗素子6に印加されないとき、磁気抵抗素子6の磁気抵抗比(MR比)は、磁気抵抗素子6に印加される磁場がゼロのときに最も大きくなり、磁場の大きさの絶対値が増加するにつれて減少する。MR曲線は、磁気抵抗素子6に印加される磁場がゼロである線を中心に、プラス磁場(例えばS極側磁場)側とマイナス磁場(例えばN極側磁場)側とで対称である。そのため、バイアス磁場が印加されない磁気抵抗素子6は、着磁ロータ2のN極領域2nとS極領域2sとを区別して検出することができない。
図2及び図3を参照して、1つ以上の薄膜磁石7は、1つ以上の磁気抵抗素子6にバイアス磁場を印加する。1つ以上の磁気抵抗素子6は、1つ以上の薄膜磁石7の間に配置されてもよい。図5を参照して、バイアス磁場は、MR曲線を、プラス磁場(例えばS極側磁場)側またはマイナス磁場(例えばN極側磁場)側にシフトさせる。バイアス磁場は、磁気センサ3の仕様磁場の範囲内(−Hsp≦H≦Hsp)において、1つ以上の磁気抵抗素子6の各々の磁気抵抗を単調に変化させる。そのため、バイアス磁場が印加される本実施の形態の磁気抵抗素子6は、着磁ロータ2のN極領域2nとS極領域2sとを区別して検出することができる。
図3を参照して、1つ以上の薄膜磁石7の各々は、交互に積層される複数の第1の磁性膜11と複数の第1の非磁性膜12とを含む。複数の第1の磁性膜11は、磁気センサ3の仕様磁場の範囲内(−Hsp≦H≦Hsp)において1つ以上の磁気抵抗素子6の磁気抵抗を単調に変化させる(図5を参照)最小の層数を有してもよい。複数の第1の磁性膜11の各々は、例えば、CoPtからなってもよい。複数の第1の磁性膜11の各々は、100nm以下、好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下の厚さを有してもよい。複数の第1の非磁性膜12は、例えば、クロム(Cr)またはルテニウム(Ru)からなってもよい。複数の第1の非磁性膜12の各々は、100nm以下、好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nm以下の厚さを有してもよい。薄膜磁石7はバルク状の磁石よりも小さなサイズを有するため、本実施の形態の磁気センサ3は小型化され得る。
1つ以上の薄膜磁石7の各々は、複数の第1の磁性膜11と複数の第1の非磁性膜12とが積層される方向に直交する磁化方向を有してもよい。本明細書において、1つ以上の薄膜磁石7の磁化方向が、複数の第1の磁性膜11と複数の第1の非磁性膜12とが積層される方向に直交することは、1つ以上の薄膜磁石7の磁化方向と複数の第1の磁性膜11と複数の第1の非磁性膜12とが積層される方向とのなす角度が85°以上95°以下であることを意味する。言い換えると、1つ以上の薄膜磁石7の各々の磁化の方向は、1つ以上の薄膜磁石7の各々の面内方向であってもよい。
図2を参照して、磁気センサ3は、基板4をさらに備えてもよい。基板4は、例えば、シリコンウエハまたはアルミナ基板であってもよい。1つ以上の磁気抵抗素子6と1つ以上の薄膜磁石7とは、基板4上に配置される。
図2を参照して、磁気センサ3は、磁気抵抗素子6を制御する回路部8をさらに備えてもよい。回路部8は、磁気抵抗素子6における磁気抵抗比(MR比)の変化を算出する第1の回路を有してもよい。回路部8は、例えば、磁気抵抗素子6に印加する電流を制御する第2の回路を有してもよい。回路部8は、基板4上に配置されてもよい。
図2を参照して、磁気センサ3は、1つ以上のパッド9をさらに備えてもよい。1つ以上のパッド9のそれぞれにワイヤ(図示せず)が設けられる。このワイヤを介して、磁気センサ3の外部の装置(図示せず)と磁気センサ3との間で、電気信号が送信及び受信され得る。
図3を参照して、磁気センサ3は、第1の絶縁膜10と第2の絶縁膜13と第3の絶縁膜19とをさらに備えてもよい。第1の絶縁膜10は、基板4(図2を参照)上に配置される。1つ以上の薄膜磁石7は、第1の絶縁膜10上に配置されてもよい。第1の絶縁膜10は、1つ以上の薄膜磁石7を第1の絶縁膜10の下方の基板4から電気的に絶縁する。第1の絶縁膜10は、例えば、二酸化シリコンからなってもよい。
第2の絶縁膜13は、1つ以上の薄膜磁石7及び第1の絶縁膜10を覆うように、1つ以上の薄膜磁石7及び及び第1の絶縁膜10上に設けられてもよい。特定的には、第2の絶縁膜13は、1つ以上の薄膜磁石7の上面及び側面を覆ってもよい。1つ以上の磁気抵抗素子6は、第2の絶縁膜13上に設けられてもよい。第2の絶縁膜13は、1つ以上の磁気抵抗素子6を、1つ以上の薄膜磁石7から電気的に絶縁する。第2の絶縁膜13は、酸化膜または窒化膜であってもよい。第2の絶縁膜13は、例えば、100nm以上1μm以下の厚さを有してもよい。
第3の絶縁膜19は、1つ以上の磁気抵抗素子6及び第2の絶縁膜13を覆うように、1つ以上の磁気抵抗素子6及び第2の絶縁膜13上に設けられてもよい。特定的には、第3の絶縁膜19は、1つ以上の磁気抵抗素子6の上面及び側面を覆ってもよい。第3の絶縁膜19は、第2の絶縁膜13とともに、1つ以上の薄膜磁石7を覆ってもよい。第3の絶縁膜19は、酸化膜または窒化膜であってもよい。第3の絶縁膜19は、例えば、100nm以上1μm以下の厚さを有してもよい。
図6に、磁性体の磁気ヒステリシス曲線を示す。Bsは飽和磁束密度を、Brは残留磁束密度を、Hcは保磁力をそれぞれ表す。飽和磁束密度Bsは、磁性体内のスピンの方向がすべて揃うのに十分に大きな外部磁場を磁性体に印加したときに、磁性体から磁性体の外部に放出される磁束密度である。残留磁束密度Brは、ゼロの外部磁場の下で、磁性体から磁性体の外部に放出される磁束密度である。本明細書では、磁性体の飽和磁束密度Bsに対する磁性体の残留磁束密度Brの比は、磁性体の残留レートRとして定義される。磁性体の残留レートRは、Br/Bsによって与えられる。磁性体の残留レートRは、強い外部磁場の下において磁性体から放出される磁束が、ゼロの外部磁場の下においても磁性体から放出され続ける磁束の割合を示す。保磁力Hcは、磁性体の磁化が反転する磁場である。大きな保磁力Hcを有する磁性体は、磁性体の磁化は反転しにくい。磁性体の保磁力Hcより大きな外部磁場が磁性体に印加されると、磁性体の磁化方向は、外部磁場と同じ方向となる。
図7に、薄膜磁石7に用いられる単層の第1の磁性膜11の厚さと、単層の第1の磁性膜11の飽和磁束密度B1s及び第1の残留磁束密度B1rとの関係を示す。単層の第1の磁性膜11の厚さが増加するにつれて、単層の第1の磁性膜11の飽和磁束密度B1sは次第に増加する。これは、単層の第1の磁性膜11の厚さが増加すると、単層の第1の磁性膜11の体積が増加するためである。単層の第1の磁性膜11の厚さが小さいとき、単層の第1の磁性膜11の厚さが増加するにつれて、単層の第1の磁性膜11の第1の残留磁束密度B1rも次第に増加する。単層の第1の磁性膜11の厚さがさらに増加すると、単層の第1の磁性膜11の第1の残留磁束密度B1rは最大となった後、次第に減少する。
図8に、薄膜磁石7に用いられる単層の第1の磁性膜11の厚さと単層の第1の磁性膜11の残留レートR1との関係を表すグラフを示す。単層の第1の磁性膜11の厚さが減少するにつれて単層の第1の磁性膜11の残留レートR1が次第に増加する第1の領域と、単層の第1の磁性膜11の厚さがさらに減少するにつれて単層の第1の磁性膜11の残留レートR1が飽和する第2の領域とを有する。単層の第1の磁性膜11の飽和残留レートR0は、第2の領域における残留レートR1の複数の測定点を最小二乗法によって近似した直線と、単層の第1の磁性膜11の厚さがゼロである直線との交点における残留レートR1として定義される。
図9に、単層の第1の磁性膜11の厚さと単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cとの関係を示す。単層の第1の磁性膜11の厚さが増加するにつれて、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cは次第に減少する。単層の第1の磁性膜11の表面部は、単層の第1の磁性膜11の内部よりも多くの欠陥を含む。単層の第1の磁性膜11の表面部は、単層の第1の磁性膜11の内部よりも磁壁がピン止めされやすい。単層の第1の磁性膜11の表面部は、単層の第1の磁性膜11の内部よりも、磁化の回転が妨げられやすい。単層の第1の磁性膜11の厚さが増加すると、単層の第1の磁性膜11の内部の割合は増加し、単層の第1の磁性膜11の表面部の割合は減少する。そのため、単層の第1の磁性膜11の厚さが増加するにつれて、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cは次第に減少する。言い換えると、単層の第1の磁性膜11の厚さが減少するにつれて、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cは次第に増加する。
図8及び図9に基づいて、図10に、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cと単層の第1の磁性膜11の残留レートR1との関係を示す。図10を参照して、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1は、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cが増加するにつれて単層の第1の磁性膜11の残留レートR1が急激に増加する第1の領域と、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cが増加するにつれて単層の第1の磁性膜11の残留レートR1が飽和する第2の領域とを有する。単層の第1の磁性膜11の残留レートR1における第2の領域は、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1が、単層の第1の磁性膜11の飽和残留レートR0(図8を参照)の90%以上となる領域として定義される。単層の第1の磁性膜11の残留レートR1における第1の領域は、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1における第2の領域に隣接して、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cが増加するにつれて、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1が急激に増加する領域として定義される。単層の第1の磁性膜11の残留レートR1における第1の領域では、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1は単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cよりも急激に増加する(図8及び図9を参照)。これは、単層の第1の磁性膜11の厚さが減少するにつれて、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1は単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cよりも急激に増加するためである。
本明細書において、単層の第1の磁性膜11の飽和残留レートR1sは、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cが増加するにつれて単層の第1の磁性膜11の残留レートR1が急激に増加する第1の領域の複数の測定点を最小二乗法によって近似した第1の直線と、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cが増加するにつれて単層の第1の磁性膜11の残留レートR1が飽和する第2の領域の複数の測定点を最小二乗法によって近似した第2の直線との交点における、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1として定義される。R1lは、単層の第1の磁性膜11の飽和残留レートR1sの0.9倍によって与えられる。
図11に、薄膜磁石7に含まれる複数の第1の磁性膜11一層当たりの厚さが一定である場合における、第1の磁性膜11の層数と薄膜磁石7の飽和磁束密度Bms及び第2の残留磁束密度Bmrとの関係を示す。薄膜磁石7に含まれる第1の磁性膜11の層数が増加するにつれて、薄膜磁石7の飽和磁束密度Bmsは単調に増加する。特定的には、薄膜磁石7に含まれる第1の磁性膜11の層数が増加するにつれて、薄膜磁石7の飽和磁束密度Bmsは、実質的に線形的に増加する。
図11を参照して、薄膜磁石7に含まれる第1の磁性膜11の層数が増加するにつれて、薄膜磁石7の第2の残留磁束密度Bmrは単調に増加する。特定的には、薄膜磁石7に含まれる第1の磁性膜11の層数が増加するにつれて、薄膜磁石7の第2の残留磁束密度Bmrは、実質的に線形的に増加する。薄膜磁石7の第2の残留磁束密度Bmrは、ゼロの外部磁場の下で、薄膜磁石7から薄膜磁石7の外部に放出される磁束密度である。そのため、薄膜磁石7の第2の残留磁束密度Bmrが増加するにつれて、薄膜磁石7が磁気抵抗素子6に印加するバイアス磁場は増加する。
図12に、薄膜磁石7に含まれる複数の第1の磁性膜11一層当たりの厚さが一定である場合における、第1の磁性膜11の層数と薄膜磁石7の残留レートRmとの関係を示す。薄膜磁石7に含まれる第1の磁性膜11の層数が変化しても、薄膜磁石7の残留レートRmは実質的に一定である。薄膜磁石7の残留レートRmは、実質的に、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1に等しい。
図13に、薄膜磁石7に含まれる複数の第1の磁性膜11一層当たりの厚さが一定である場合における、第1の磁性膜11の層数と薄膜磁石7の保磁力Hmcとの関係を示す。薄膜磁石7に含まれる第1の磁性膜11の層数が変化しても、薄膜磁石7の保磁力Hmcは実質的に一定である。薄膜磁石7の保磁力Hmcは、実質的に、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cに等しい。
図14に、複数の第1の磁性膜11の総厚さが一定である場合における、複数の第1の磁性膜11の一層あたりの厚さと、薄膜磁石7の製造時間Tmとの関係を示す。複数の第1の磁性膜11の一層あたりの厚さが小さくなると、薄膜磁石7の製造時間Tmは急激に増加する。複数の第1の磁性膜11の総厚さが一定である場合において、複数の第1の磁性膜11の一層あたりの厚さが小さくなることは、薄膜磁石7に含まれる複数の第1の磁性膜11の層数が増加することを意味する。薄膜磁石7に含まれる複数の第1の磁性膜11の層数が増加すると、薄膜磁石7の製造時間Tmは急激に増加する。
薄膜磁石7は、複数の第1の磁性膜11と複数の第1の非磁性膜12とを交互に積層することによって形成される。複数の第1の磁性膜11と複数の第1の非磁性膜12とを交互に積層する時間は、複数の第1の磁性膜11を堆積する時間と、複数の第1の非磁性膜12を堆積する時間とに加えて、第1の磁性膜11の堆積前における、第1の磁性膜11を堆積するための第1の準備(例えば、真空引き)の時間と、第1の非磁性膜12の堆積前における、第1の非磁性膜12を堆積するための第2の準備(例えば、真空引き)の時間とが含まれる。第1の準備の時間は、複数の第1の磁性膜11一層当たりの厚さにかかわらず、ある一定の時間が必要である。第2の準備の時間は、複数の第1の非磁性膜12一層当たりの厚さにかかわらず、ある一定の時間が必要である。そのため、薄膜磁石7に含まれる複数の第1の磁性膜11の層数が増加すると、薄膜磁石7の製造時間Tmは急激に増加する。言い換えると、複数の第1の磁性膜11の一層あたりの厚さが小さくなると、薄膜磁石7の製造時間Tmは急激に増加する。
図8から図10、図12及び図13に基づいて、図15に、複数の第1の磁性膜11の総厚さが一定の場合における、薄膜磁石7の保磁力Hmcと薄膜磁石7の残留レートRmとの関係を示す。図15を参照して、薄膜磁石7の残留レートRmは、薄膜磁石7の保磁力Hmcが増加するにつれて薄膜磁石7の残留レートRmが急激に増加する第1の領域と、薄膜磁石7の保磁力Hmcが増加するにつれて薄膜磁石7の残留レートRmが飽和する第2の領域とを有する。図12及び図13を参照して、薄膜磁石7の残留レートRm及び保磁力Hmcは、第1の磁性膜11の層数によらず実質的に一定である。そのため、図15に示される、複数の第1の磁性膜11の総厚さが一定の場合における、薄膜磁石7の保磁力Hmcと薄膜磁石7の残留レートRmとの関係は、図10に示される、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cと単層の第1の磁性膜11の残留レートR1との関係と実質的に同じである。
薄膜磁石7の残留レートRmにおける第2の領域は、薄膜磁石7の残留レートRmが、薄膜磁石7の飽和残留レートの90%以上となる領域として定義される。言い換えると、薄膜磁石7の残留レートRmにおける第2の領域は、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1が、単層の第1の磁性膜11の飽和残留レートR0(図8を参照)の90%以上となる領域として定義される。薄膜磁石7の残留レートRmにおける第1の領域は、薄膜磁石7の残留レートRmにおける第2の領域に隣接して、薄膜磁石7の保磁力Hmcが増加するにつれて、薄膜磁石7の残留レートRmが急激に増加する領域として定義される。言い換えると、薄膜磁石7の残留レートRmにおける第1の領域は、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1における第2の領域に隣接して、単層の第1の磁性膜11の保磁力H1cが増加するにつれて、単層の第1の磁性膜11の残留レートR1が急激に増加する領域として定義される。
本明細書において、薄膜磁石7の飽和残留レートRmsは、薄膜磁石7の保磁力Hmcが増加するにつれて薄膜磁石7の残留レートRmが急激に増加する第1の領域の複数の測定点を最小二乗法によって近似した第1の直線と、薄膜磁石7の保磁力Hmcが増加するにつれて薄膜磁石7の残留レートRmが飽和する第2の領域の複数の測定点を最小二乗法によって近似した第2の直線との交点における、薄膜磁石7の残留レートRmとして定義される。1つ以上の薄膜磁石7の各々は、1つ以上の薄膜磁石7の各々の飽和残留レートRmsの0.9倍以上の残留レートRmを有する。図15において、Rmlは、1つ以上の薄膜磁石7の各々の飽和残留レートRmsの0.9倍によって与えられる。薄膜磁石7の残留レートRm及び保磁力Hmcは、第1の磁性膜11の層数によらず実質的に一定であるため(図12及び図13を参照)、薄膜磁石7のRms及びRmlは、それぞれ、単層の第1の磁性膜11のR1s及びR1lに実質的に等しい。
図16を参照して、薄膜磁石7に含まれる複数の第1の磁性膜11の各々の結晶配向分散Δχが増加するにつれて、薄膜磁石7の残留レートRmが単調に増加する。特定的には、薄膜磁石7に含まれる複数の第1の磁性膜11の各々の結晶配向分散Δχが増加するにつれて、薄膜磁石7の残留レートRmは実質的に線形的に増加する。例えば、CoPtからなる第1の磁性膜11が12.6°以上の結晶配向分散Δχを有するとき、1つ以上の薄膜磁石7の各々は、1つ以上の薄膜磁石7の各々の飽和残留レートRmsの0.9倍であるRml以上の残留レートRmを有する。CoPtからなる第1の磁性膜11が12.6°以上の結晶配向分散Δχを有するとき、複数の第1の磁性膜11の各々は、複数の第1の磁性膜11の各々の飽和残留レートR1sの0.9倍であるR1l以上の残留レートR1を有する。このような第1の磁性膜11は、増加された残留レートR1を有するため、薄膜磁石7の磁束密度が飽和する領域における薄膜磁石7の磁気ヒステリシス曲線の傾きを減少させることができる。そのため、被測定磁場の大きさが変化しても、薄膜磁石7が磁気抵抗素子6に印加するバイアス磁場の大きさは維持され、磁気センサ3の磁界検出精度が向上され得る。このように増加された結晶配向分散Δχを有する第1の磁性膜11は、結晶の配向が揃っていない多結晶である。
本明細書において、第1の磁性膜11の結晶配向分散Δχは、第1の磁性膜11のX線ロッキングカーブの半値幅(図19を参照)として定義される。具体的には、図17から図19を参照して、第1の磁性膜11の結晶配向分散Δχは、以下のように測定される。第1の磁性膜11の主面は、x方向及びx方向に直交するy方向に延在する。第1の磁性膜11の法線方向は、z方向である。X線30は、−y方向から+y方向に向けて、第1の磁性膜11の主面に対して角度θで、第1の磁性膜11に入射する。
X線30は、第1の磁性膜11において回折される。第1の磁性膜11のうち整列された結晶配向を有する第1の部分31において回折されたX線30は、第1の回折X線34となる。第1の磁性膜11のうちχ/2の角度だけ傾いた結晶配向を有する第2の部分32において回折されたX線30は、第1の回折X線34に対して角度χだけ傾いた第2の回折X線35となる。第1の磁性膜11のうち−χ/2の角度だけ傾いた結晶配向を有する第3の部分33において回折されたX線30は、第1の回折X線34に対して角度−χだけ傾いた第3の回折X線36となる。第1の回折X線34、第2の回折X線35及び第3の回折X線36は、二次元X線検出器38で検出される。二次元X線検出器38で検出される回折X線の強度分布から、第1の磁性膜11の面内方向(xy方向)における結晶の配向の分布を示す、X線ロッキングカーブ(図19を参照)が得られる。第1の磁性膜11のX線ロッキングカーブの半値幅を求めることによって、第1の磁性膜11の結晶配向分散Δχが得られる。
図15を参照して、以上のように、薄膜磁石7が、薄膜磁石7の飽和残留レートRmsの0.9倍であるRml以上の残留レートRmを有するとき、薄膜磁石7は、増加された保磁力Hmcを有する。薄膜磁石7が増加された保磁力Hmcを有するため、被測定磁場の大きさが変化しても、薄膜磁石7の磁化方向は安定的に維持され、磁気センサ3の磁界検出精度は向上され得る。
図9、図13及び図14に基づいて、図15に、薄膜磁石7の保磁力Hmcと薄膜磁石7の製造時間Tmとの関係を示す。図15を参照して、薄膜磁石7の保磁力Hmcが増加するにつれて、薄膜磁石7の製造時間Tmは急激に増加する。これは、複数の第1の磁性膜11の一層当たりの厚さが減少するにつれて、薄膜磁石7の製造時間Tmは、薄膜磁石7の保磁力Hmcよりも急激に増加するためである。薄膜磁石7の製造時間Tmが急激に増加しはじめる薄膜磁石7の保磁力Hmcは、薄膜磁石7の残留レートRmが急激に増加しはじめる薄膜磁石7の保磁力Hmcよりも大きい。そのため、薄膜磁石7の保磁力Hmcは、薄膜磁石7の飽和残留レートRmsの0.9倍となる保磁力Hmc以上であり、かつ、薄膜磁石7の製造時間Tmが急激に増加しはじめる薄膜磁石7の保磁力Hmc未満であることが好ましい。このような保磁力Hmcを有する薄膜磁石7によれば、磁気センサ3の磁界検出精度は向上され得るとともに、薄膜磁石7の製造時間が減少され得る。
図20を参照して、本実施の形態の磁界検出装置1の製造方法の一例を説明する。本実施の形態の磁界検出装置1の製造方法は、磁気センサ3を製造することと、外周に交互に配置されるN極領域2n及びS極領域2sを含む着磁ロータ2の外周に対向するように、磁気センサ3を配置することとを備える。
図21及び図22を参照して、本実施の形態の磁気センサ3の製造方法を説明する。
図21を参照して、本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、磁気抵抗素子6を形成すること(S10)と、磁気抵抗素子6にバイアス磁場を印加する薄膜磁石7を形成すること(S30)とを備える。
特定的には、本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、基板4上に第1の絶縁膜10を形成することを備えてもよい。基板4上に第1の絶縁膜10を形成することは、例えば、シリコンからなる基板4の表面を酸化することによって、二酸化シリコンからなる第1の絶縁膜10を形成することであってもよい。それから、本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、1つ以上の薄膜磁石7を第1の絶縁膜10上に形成することを備えてもよい。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、1つ以上の薄膜磁石7及び第1の絶縁膜10を覆うように、1つ以上の薄膜磁石7及び及び第1の絶縁膜10上に第2の絶縁膜13を形成することを備えてもよい。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、第2の絶縁膜13上に1つ以上の磁気抵抗素子6を形成することを備えてもよい。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、1つ以上の磁気抵抗素子6及び第2の絶縁膜13を覆うように、1つ以上の磁気抵抗素子6及び第2の絶縁膜13上に第3の絶縁膜19を形成することを備えてもよい。
磁気抵抗素子6を形成すること(S10)は、複数の第2の磁性膜15と複数の第2の非磁性膜16とを交互に堆積することを含んでもよい。例えば、スパッタ法により、基板4上に、複数の第2の磁性膜15と複数の第2の非磁性膜16とが交互に堆積されてもよい。
薄膜磁石7を形成すること(S30)は、複数の第1の磁性膜11と複数の第1の非磁性膜12とを交互に堆積することを含む。複数の第1の磁性膜11を堆積することは、CoPtからなる複数の第1の磁性膜11の各々が、多結晶であり、かつ、12.6°以上の結晶配向分散を有するように、複数の第1の磁性膜11を堆積することを含んでもよい。複数の第1の磁性膜11を堆積することは、複数の第1の磁性膜11の各々が、多結晶であり、かつ、複数の第1の磁性膜11の各々の飽和残留レートR1sの0.9倍であるR1l以上の残留レートR1を有するように(図10を参照)、複数の第1の磁性膜11を堆積することを含んでもよい。図12を参照して、薄膜磁石7の残留レートRmは、複数の第1の磁性膜11の各々の残留レートR1に実質的に等しい。図13を参照して、薄膜磁石7の保磁力Hmcは、複数の第1の磁性膜11の各々の保磁力Hc1に実質的に等しい。そのため、複数の第1の磁性膜11を堆積することは、1つ以上の薄膜磁石7の各々が、1つ以上の薄膜磁石7の各々の飽和残留レートRmの0.9倍であるRml以上の残留レートRmを有するように(図15を参照)、複数の第1の磁性膜11を堆積することを含んでもよい。
複数の第1の磁性膜11の各々の厚さが増加すると、結晶性が向上するため、複数の第1の磁性膜11の各々の結晶配向分散Δχ及び残留レートR1は減少する。複数の第1の磁性膜11の各々の結晶配向分散Δχ及び残留レートR1を増加するように、複数の第1の磁性膜11の各々は、100nm以下、好ましくは80nm以下、さらに好ましくは60nmの厚さを有することが好ましい。複数の第1の非磁性膜12は、CrまたはRuからなってもよい。クロム(Cr)またはルテニウム(Ru)からなる第1の非磁性膜12上に形成された第1の磁性膜11は、増大された結晶配向分散及び残留レートを有する。クロム(Cr)またはルテニウム(Ru)からなる第1の非磁性膜12上に、100nm以下の厚さを有するCoPtからなる第1の磁性膜11をスパッタ法により堆積することによって、多結晶であり、かつ、12.6°以上の結晶配向分散を有する第1の磁性膜11が形成され得る。クロム(Cr)またはルテニウム(Ru)からなる第1の非磁性膜12上に、100nm以下の厚さを有するCoPtからなる第1の磁性膜11をスパッタ法により堆積することによって、多結晶であり、かつ、第1の磁性膜11の飽和残留レートの0.9倍以上の残留レートを有するように、第1の磁性膜11が形成され得る。
図21を参照して、本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、薄膜磁石7を形成すること(S30)の前に、以下の工程を備えてもよい。単層の第1の磁性膜11の厚さと第1の残留磁束密度B1rとの関係(図7を参照)に基づいて、複数の第1の磁性膜11の各々の第1の残留磁束密度B1rが最大となるように、複数の第1の磁性膜11の各々の厚さを決定する(S21)。CoPtからなりかつ12.6°以上の結晶配向分散を有する複数の第1の磁性膜11の各々において、複数の第1の磁性膜11の各々の第1の残留磁束密度B1rが最大となるように、複数の第1の磁性膜11の各々の厚さが決定される。あるいは、複数の第1の磁性膜11の各々の飽和残留レートR1sの0.9倍であるR1l以上の残留レートR1を有する複数の第1の磁性膜11の各々において、複数の第1の磁性膜11の各々の第1の残留磁束密度B1rが最大となるように、複数の第1の磁性膜11の各々の厚さが決定される。
薄膜磁石7の第2の残留磁束密度Bmrは、ゼロの外部磁場の下で、薄膜磁石7から薄膜磁石7の外部に放出される磁束密度である。そのため、薄膜磁石7の第2の残留磁束密度Bmrが増加するにつれて、磁気抵抗素子6に印加されるバイアス磁場が増加する。図11を参照して、複数の第1の磁性膜11の各々の第1の残留磁束密度B1rが増加するにつれて、複数の第1の磁性膜11を含む薄膜磁石7の第2の残留磁束密度Bmrは、単調に増加する。複数の第1の磁性膜11の各々の第1の残留磁束密度B1rが最大となるように、複数の第1の磁性膜11の各々の厚さを定めることによって、複数の第1の磁性膜11を備える薄膜磁石7は、増加されたバイアス磁場を磁気抵抗素子6に印加することができる。そのため、磁気センサ3の磁界検出精度が向上され得るとともに、磁気センサ3が小型化され得る。
図22を参照して、複数の第1の磁性膜11の各々の厚さを決定することは、以下の工程を含んでもよい。図9に示される、単層の第1の磁性膜11の厚さと保磁力H1cとの関係に基づいて、複数の第1の磁性膜11の各々が薄膜磁石7の仕様保磁力以上を有するように、複数の第1の磁性膜11の各々の厚さの第1の範囲を定める(S22)。複数の第1の磁性膜11の各々の厚さの第1の範囲は、複数の第1の磁性膜11の各々の飽和残留レートR1sの0.9倍以上の残留レートR1を有するような複数の第1の磁性膜11の各々の厚さの範囲(図9、図13及び図15を参照)と、複数の第1の磁性膜11の各々が薄膜磁石7の仕様保磁力以上を有するような複数の第1の磁性膜11の各々の厚さの範囲とが重なる範囲である。CoPtからなる複数の第1の磁性膜11の各々の厚さの第1の範囲は、CoPtからなる複数の第1の磁性膜11の各々が12.6°以上の結晶配向分散を有するような複数の第1の磁性膜11の各々の厚さの範囲(図9、図13、図15及び図16を参照)と、複数の第1の磁性膜11の各々が薄膜磁石7の仕様保磁力以上を有するような複数の第1の磁性膜11の各々の厚さの範囲とが重なる範囲である。
それから、図7に示される、単層の第1の磁性膜11の厚さと第1の残留磁束密度B1rとの関係に基づいて、第1の範囲内において複数の第1の磁性膜11の各々の第1の残留磁束密度B1rが最大となる複数の第1の磁性膜11の各々の厚さを決定する(S23)。
図21を参照して、本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、薄膜磁石7の第2の残留磁束密度Bmrが薄膜磁石7の仕様残留磁束密度以上であり、かつ、複数の第1の磁性膜11の層数が最小となるように、複数の第1の磁性膜11の層数を決定することを(S25)備える。1つ以上の薄膜磁石7からのバイアス磁界が印加される1つ以上の磁気抵抗素子6の各々の磁気抵抗が、磁気センサ3の仕様磁場の範囲内において単調に変化するように(図5を参照)、1つ以上の薄膜磁石7の仕様残留磁束密度は定められる。
本実施の形態の磁気センサ3及び磁界検出装置1並びにそれらの製造方法の効果を説明する。
本実施の形態の磁気センサ3は、1つ以上の磁気抵抗素子6と、1つ以上の磁気抵抗素子6にバイアス磁場を印加する1つ以上の薄膜磁石7とを備える。1つ以上の薄膜磁石7の各々は、交互に積層される複数の第1の磁性膜11と複数の第1の非磁性膜12とを含む。複数の第1の磁性膜11の各々は、多結晶であり、12.6°以上の結晶配向分散を有し、かつ、CoPtからなる。そのため、CoPtからなる複数の第1の磁性膜11を含む薄膜磁石7は、大きな残留レートRmを有する。薄膜磁石7の磁束密度が飽和する領域における薄膜磁石7の磁気ヒステリシス曲線(図6を参照)の傾きが減少する。被測定磁場の大きさが変化したときに薄膜磁石7から磁気抵抗素子6に印加されるバイアス磁場が変化することが抑制され得る。本実施の形態の磁気センサ3は、向上された磁界検出精度を有する。
本実施の形態の磁気センサ3は、1つ以上の磁気抵抗素子6と、1つ以上の磁気抵抗素子6にバイアス磁場を印加する1つ以上の薄膜磁石7とを備える。1つ以上の薄膜磁石7の各々は、交互に積層される複数の第1の磁性膜11と複数の第1の非磁性膜12とを含む。複数の第1の磁性膜11の各々は、多結晶である。1つ以上の薄膜磁石7の各々は、1つ以上の薄膜磁石7の各々の飽和残留レートRmsの0.9倍以上の残留レートRmを有する。そのため、薄膜磁石7の磁束密度が飽和する領域における薄膜磁石7の磁気ヒステリシス曲線(図6を参照)の傾きが減少する。被測定磁場の大きさが変化したときに薄膜磁石7から磁気抵抗素子6に印加されるバイアス磁場が変化することが抑制され得る。本実施の形態の磁気センサ3は、向上された磁界検出精度を有する。
本実施の形態の磁気センサ3において、1つ以上の薄膜磁石7の各々は、複数の第1の磁性膜11と複数の第1の非磁性膜12とが積層される方向に直交する磁化方向を有する。このような磁化方向を有する1つ以上の薄膜磁石7の各々は、反磁場によって、1つ以上の薄膜磁石7の各々が減磁されることを抑制することができる。このような磁化方向を有する1つ以上の薄膜磁石7の各々は、1つ以上の磁気抵抗素子6に大きなバイアス磁場を印加することができる。
本実施の形態の磁気センサ3では、複数の第1の非磁性膜12は、クロム(Cr)またはルテニウム(Ru)からなってもよい。クロム(Cr)またはルテニウム(Ru)からなる第1の非磁性膜12は、第1の非磁性膜12上の第1の磁性膜11の結晶配向分散Δχ及び残留レートR1を増加させることができる。そのため、本実施の形態の磁気センサ3は、向上された磁界検出精度を有する。
本実施の形態の磁気センサ3は、絶縁膜(第2の絶縁膜13)をさらに備える。絶縁膜(第2の絶縁膜13)は、1つ以上の薄膜磁石7を覆うように1つ以上の薄膜磁石7上に設けられる。1つ以上の磁気抵抗素子6は、絶縁膜(第2の絶縁膜13)上に設けられる。絶縁膜(第2の絶縁膜13)は、1つ以上の薄膜磁石7を、物理的及び化学的に保護することができる。
本実施の形態の磁気センサ3は、1つ以上の磁気抵抗素子6と1つ以上の薄膜磁石7とが配置される基板4をさらに備える。1つ以上の磁気抵抗素子6と1つ以上の薄膜磁石7の両者が基板4上に配置される。そのため、本実施の形態の磁気センサ3は小型化され得る。本実施の形態の磁気センサ3の製造コストは低減され得る。
本実施の形態の磁気センサ3は、磁気抵抗素子6を制御する回路部8をさらに備える。回路部8は、基板4上に配置される。1つ以上の磁気抵抗素子6と1つ以上の薄膜磁石7とに加えて、磁気抵抗素子6を制御する回路部8も基板4上に配置される。そのため、本実施の形態の磁気センサ3は小型化され得る。本実施の形態の磁気センサ3の製造コストは低減され得る。
本実施の形態の磁気センサ3では、1つ以上の磁気抵抗素子6の各々は、交互に積層される複数の第2の磁性膜15と複数の第2の非磁性膜16とを含む。磁気センサ3の仕様磁場の範囲内において1つ以上の磁気抵抗素子6の磁気抵抗を単調に変化させるバイアス磁場が、1つ以上の磁気抵抗素子6に印加される。本実施の形態の磁気センサ3は、着磁ロータ2などに含まれるN極領域2nとS極領域2sとを区別して検出することができる。
本実施の形態の磁気センサ3では、複数の第1の磁性膜11は、磁気センサ3の仕様磁場の範囲内において1つ以上の磁気抵抗素子6の磁気抵抗を単調に変化させる最小の層数を有する。本実施の形態の磁気センサ3では、複数の第1の磁性膜11の層数が減少され得る。本実施の形態の磁気センサ3は、簡素な構造を有し、小型化され得る。本実施の形態の磁気センサ3は、磁気センサ3の製造時間が減少され得る構造を有する。
本実施の形態の磁界検出装置1は、外周に交互に配置されるN極領域2n及びS極領域2sを含む着磁ロータ2と、着磁ロータ2の外周に対向するように配置される磁気センサ3とを備える。磁気センサ3は、向上された磁界検出精度を有する。磁気センサ3を備える本実施の形態の磁界検出装置1もまた、向上された磁界検出精度を有する。
本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、磁気抵抗素子6を形成することと、磁気抵抗素子6にバイアス磁場を印加する薄膜磁石7を形成することとを備える。薄膜磁石7を形成することは、CoPtからなる複数の第1の磁性膜11と、複数の第1の非磁性膜12とを、交互に堆積することを含む。複数の第1の磁性膜11を堆積することは、複数の第1の磁性膜11の各々が多結晶であり、かつ、12.6°以上の結晶配向分散を有するように、複数の第1の磁性膜11を堆積することを含む。そのため、CoPtからなる複数の第1の磁性膜11を含む薄膜磁石7は、大きな残留レートRmを有する。薄膜磁石7の磁束密度が飽和する領域における薄膜磁石7の磁気ヒステリシス曲線(図6を参照)の傾きが減少する。被測定磁場の大きさが変化したときに薄膜磁石7から磁気抵抗素子6に印加されるバイアス磁場が変化することが抑制され得る。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法によれば、向上された磁界検出精度を有する磁気センサ3が製造され得る。
本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、磁気抵抗素子6を形成することと、磁気抵抗素子6にバイアス磁場を印加する薄膜磁石7を形成することとを備える。薄膜磁石7を形成することは、複数の第1の磁性膜11と、複数の第1の非磁性膜12とを、交互に堆積することを含む。複数の第1の磁性膜11を堆積することは、複数の第1の磁性膜11の各々が多結晶であり、かつ、複数の第1の磁性膜11の各々の飽和残留レートR1sの0.9倍以上の残留レートR1を有するように、複数の第1の磁性膜11を堆積することを含む。そのため、薄膜磁石7の磁束密度が飽和する領域における薄膜磁石7の磁気ヒステリシス曲線(図6を参照)の傾きが減少する。被測定磁場の大きさが変化したときに薄膜磁石7から磁気抵抗素子6に印加されるバイアス磁場が変化することが抑制され得る。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法によれば、向上された磁界検出精度を有する磁気センサ3が製造され得る。
本実施の形態の磁気センサ3の製造方法は、以下の工程をさらに備えてもよい。複数の第1の磁性膜11の各々の第1の残留磁束密度B1rが最大となるように、複数の第1の磁性膜11の各々の厚さを決定する。それから、薄膜磁石7の第2の残留磁束密度Bmrが薄膜磁石7の仕様残留磁束密度以上であり、かつ、複数の第1の磁性膜11の層数が最小となるように、複数の第1の磁性膜11の層数を決定する。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法では、複数の第1の磁性膜11の各々の第1の残留磁束密度B1rが最大となるように、複数の第1の磁性膜11の各々の厚さが定められる。そのため、複数の第1の磁性膜11を備える薄膜磁石7は、増加されたバイアス磁場を磁気抵抗素子6に印加することができる。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法によれば、磁気センサ3の磁界検出精度が向上され得る。また、本実施の形態の磁気センサ3の製造方法では、薄膜磁石7の第2の残留磁束密度Bmrが薄膜磁石7の仕様残留磁束密度以上であり、かつ、複数の第1の磁性膜11の層数が最小となるように、複数の第1の磁性膜11の層数が決定される。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法によれば、簡素な構造を有し、小型化され得る磁気センサ3が製造され得る。磁気センサ3の製造時間が減少され得る。
本実施の形態の磁気センサ3の製造方法において複数の第1の磁性膜11の各々の厚さを決定することは、以下の工程を含んでもよい。複数の第1の磁性膜11の各々が薄膜磁石7の仕様保磁力以上を有するように、複数の第1の磁性膜11の各々の厚さの第1の範囲を定める。第1の範囲内において複数の第1の磁性膜11の各々の第1の残留磁束密度B1rが最大となる複数の第1の磁性膜11の各々の厚さを決定する。複数の第1の磁性膜11の各々は薄膜磁石7の仕様保磁力以上を有するため、被測定磁場の大きさが変化しても、薄膜磁石7の磁化方向は安定的に維持される。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法によれば、磁場を安定的に測定し得る磁気センサ3が製造され得る。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法では、第1の範囲内において複数の第1の磁性膜11の各々の第1の残留磁束密度B1rが最大となる複数の第1の磁性膜11の各々の厚さが定められる。そのため、複数の第1の磁性膜11を備える薄膜磁石7は、増加されたバイアス磁場を磁気抵抗素子6に印加することができる。本実施の形態の磁気センサ3の製造方法によれば、磁気センサ3の磁界検出精度が向上され得る。
本実施の形態の磁界検出装置1の製造方法は、以上の製造方法によって磁気センサ3を製造することと、外周に交互に配置されるN極領域2n及びS極領域2sを含む着磁ロータ2の外周に対向するように、磁気センサ3を配置することとを備える。本実施の形態の磁界検出装置1の製造方法によれば、向上された磁界検出精度を有する磁界検出装置1が製造され得る。
(実施の形態2)
図23を参照して、実施の形態2に係る磁気センサ3aを説明する。本実施の形態の磁気センサ3aは、実施の形態1の磁気センサ3と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
本実施の形態の磁気センサ3aでは、1つ以上の磁気抵抗素子6は、複数の磁気抵抗素子6である。特定的には、磁気センサ3aは、1つ以上の磁気センサ部5aを含む。1つ以上の磁気センサ部5aの各々は、複数の磁気抵抗素子6と、1つ以上の薄膜磁石7とを含む。さらに特定的には、磁気センサ3aは、1つの磁気センサ部5aを含んでもよい。1つの磁気センサ部5aは、2つの磁気抵抗素子6と、一対の薄膜磁石7とを含んでもよい。2つの磁気抵抗素子6は、一対の薄膜磁石7の間に配置されてもよい。
本実施の形態の磁気センサ3aは、実施の形態1の磁気センサ3の効果に加えて、以下の効果を奏する。本実施の形態の磁気センサ3aでは、より多くの磁気抵抗素子6によって、被測定磁場が検出され得る。本実施の形態の磁気センサ3aは、被測定磁場の検出感度を向上させることができる。
(実施の形態3)
図24を参照して、実施の形態3に係る磁気センサ3bを説明する。本実施の形態の磁気センサ3bは、実施の形態1の磁気センサ3と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
本実施の形態の磁気センサ3bでは、1つ以上の磁気抵抗素子6bは、ミアンダ形状を有する。特定的には、複数の第2の磁性膜15と複数の第2の非磁性膜16との積層方向からの平面視において、1つ以上の磁気抵抗素子6bは、ミアンダ形状を有してもよい。1つ以上の磁気抵抗素子6bは、1つ以上の磁気抵抗素子6bの主面の法線方向からの平面視において、折り返された形状を有してもよい。さらに特定的には、磁気センサ3bは、1つの磁気センサ部5bを含む。1つの磁気センサ部5bは、複数の第2の磁性膜15と複数の第2の非磁性膜16との積層方向からの平面視においてミアンダ形状を有する1つの磁気抵抗素子6bと、一対の薄膜磁石7とを含んでもよい。ミアンダ形状を有する1つの磁気抵抗素子6bは、一対の薄膜磁石7の間に配置されてもよい。
本実施の形態の磁気センサ3bは、実施の形態1の磁気センサ3の効果に加えて、以下の効果を奏する。本実施の形態の磁気センサ3bでは、1つ以上の磁気抵抗素子6bはミアンダ形状を有するため、被測定磁場が横切る1つ以上の磁気抵抗素子6bの長さが増加する。本実施の形態の磁気センサ3bは、被測定磁場の検出感度を向上させることができる。
(実施の形態4)
図25を参照して、実施の形態4に係る磁気センサ3cを説明する。本実施の形態の磁気センサ3cは、実施の形態1の磁気センサ3と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
1つ以上の磁気抵抗素子6は、第1の絶縁膜10上に配置されてもよい。第1の絶縁膜10は、1つ以上の磁気抵抗素子6を第1の絶縁膜10の下方の基板4(図示せず)から電気的に絶縁する。
第2の絶縁膜13cは、1つ以上の磁気抵抗素子6及び第1の絶縁膜10を覆うように、1つ以上の薄膜磁石7及び及び第1の絶縁膜10上に設けられてもよい。特定的には、第2の絶縁膜13cは、1つ以上の磁気抵抗素子6の上面及び側面を覆ってもよい。1つ以上の薄膜磁石7は、第2の絶縁膜13c上に設けられてもよい。第2の絶縁膜13cは、1つ以上の薄膜磁石7を、1つ以上の磁気抵抗素子6から電気的に絶縁する。
第3の絶縁膜19cは、1つ以上の薄膜磁石7及び第2の絶縁膜13cを覆うように、1つ以上の薄膜磁石7及び第2の絶縁膜13c上に設けられてもよい。特定的には、第3の絶縁膜19cは、1つ以上の薄膜磁石7の上面及び側面を覆ってもよい。第3の絶縁膜19cは、第2の絶縁膜13cとともに、1つ以上の磁気抵抗素子6を覆ってもよい。
本実施の形態の磁気センサ3cの製造方法を説明する。本実施の形態の磁気センサ3cの製造方法は、実施の形態1の磁気センサ3の製造方法と同様の工程を備えるが、主に以下の点で異なる。本実施の形態の磁気センサ3cの製造方法は、1つ以上の磁気抵抗素子6を第1の絶縁膜10上に形成することを備える。本実施の形態の磁気センサ3cの製造方法は、1つ以上の磁気抵抗素子6及び第1の絶縁膜10を覆うように、1つ以上の薄膜磁石7及び及び第1の絶縁膜10上に第2の絶縁膜13cを形成することを備える。本実施の形態の磁気センサ3cの製造方法は、第2の絶縁膜13c上に1つ以上の薄膜磁石7を形成することを備える。本実施の形態の磁気センサ3cの製造方法は、1つ以上の薄膜磁石7及び第2の絶縁膜13cを覆うように、1つ以上の薄膜磁石7及び第2の絶縁膜13c上に第3の絶縁膜19cを形成することを備える。このように、本実施の形態の磁気センサ3cの製造方法では、1つ以上の磁気抵抗素子6の形成後に、1つ以上の薄膜磁石7は形成される。
本実施の形態の磁気センサ3c及びその製造方法の効果を説明する。本実施の形態の磁気センサ3c及びその製造方法は、実施の形態1の磁気センサ3及びその製造方法と同様の効果を奏するが、主に以下の点で異なる。
本実施の形態の磁気センサ3cは、絶縁膜(第2の絶縁膜13c)をさらに備える。絶縁膜(第2の絶縁膜13c)は、1つ以上の磁気抵抗素子6を覆うように1つ以上の磁気抵抗素子6上に設けられる。1つ以上の薄膜磁石7は、絶縁膜(第2の絶縁膜13c)上に設けられる。本実施の形態の磁気センサ3cは、1つ以上の磁気抵抗素子6の形成後に1つ以上の薄膜磁石7が形成される構造を有している。1つ以上の磁気抵抗素子6を形成する際の熱によって、1つ以上の薄膜磁石7の磁気特性が劣化することが防がれ得る。本実施の形態の磁気センサ3cは、さらに向上された磁界検出精度を有する。
本実施の形態の磁気センサ3cの製造方法では、1つ以上の磁気抵抗素子6の形成後に、1つ以上の薄膜磁石7は形成される。1つ以上の磁気抵抗素子6を形成する際の熱によって、1つ以上の薄膜磁石7の磁気特性が劣化することが防がれ得る。本実施の形態の磁気センサ3cの製造方法によれば、さらに向上された磁界検出精度を有する磁気センサ3cが安定的に製造され得る。
(実施の形態5)
図26を参照して、実施の形態5に係る磁気センサ3dを説明する。本実施の形態の磁気センサ3dは、実施の形態1の磁気センサ3と同様の構成を備えるが、主に以下の点で異なる。
本実施の形態の磁気センサ3dは、複数の薄膜磁石7と、複数の薄膜磁石7の間に配置された複数の磁気抵抗素子6とを含む。特定的には、磁気センサ3dは、複数の磁気センサ部5を含む。複数の磁気センサ部5の各々は、1つ以上の薄膜磁石7と1つ以上の薄膜磁石7の間に配置された1つ以上の磁気抵抗素子6とを含んでもよい。さらに特定的には、複数の磁気センサ部5の各々は、一対の薄膜磁石7と、一対の薄膜磁石7の間に配置された1つの磁気抵抗素子6とを含んでもよい。
本実施の形態の磁気センサ3dは、実施の形態1の磁気センサ3の効果に加えて、以下の効果を奏する。本実施の形態の磁気センサ3dでは、1つ以上の磁気抵抗素子6は、複数の磁気抵抗素子6であり、1つ以上の薄膜磁石7は、複数対の薄膜磁石7である。本実施の形態の磁気センサ3dでは、より多くの磁気抵抗素子6によって、被測定磁場が検出され得る。本実施の形態の磁気センサ3dは、被測定磁場の検出感度を向上させることができる。
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。矛盾のない限り、今回開示された実施の形態1から実施の形態5の少なくとも2つを組み合わせてもよい。本発明の範囲は、上記した説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることを意図される。