JP2003338281A - リチウム二次電池、リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池用正極材料 - Google Patents

リチウム二次電池、リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池用正極材料

Info

Publication number
JP2003338281A
JP2003338281A JP2002143493A JP2002143493A JP2003338281A JP 2003338281 A JP2003338281 A JP 2003338281A JP 2002143493 A JP2002143493 A JP 2002143493A JP 2002143493 A JP2002143493 A JP 2002143493A JP 2003338281 A JP2003338281 A JP 2003338281A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
lithium
composite oxide
measurement
peak
nickel composite
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2002143493A
Other languages
English (en)
Other versions
JP3835343B2 (ja
Inventor
Mitsuharu Kobayashi
光治 小林
Yoshiko Oshima
淑子 大島
Kazuko Otani
和子 大谷
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Chemical Corp
Original Assignee
Mitsubishi Chemical Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Chemical Corp filed Critical Mitsubishi Chemical Corp
Priority to JP2002143493A priority Critical patent/JP3835343B2/ja
Publication of JP2003338281A publication Critical patent/JP2003338281A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3835343B2 publication Critical patent/JP3835343B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Lifetime legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02EREDUCTION OF GREENHOUSE GAS [GHG] EMISSIONS, RELATED TO ENERGY GENERATION, TRANSMISSION OR DISTRIBUTION
    • Y02E60/00Enabling technologies; Technologies with a potential or indirect contribution to GHG emissions mitigation
    • Y02E60/10Energy storage using batteries

Landscapes

  • Sealing Battery Cases Or Jackets (AREA)
  • Secondary Cells (AREA)
  • Battery Electrode And Active Subsutance (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 リチウムニッケル複合酸化物の熱安定性
を改良する。 【解決手段】 リチウムニッケル複合酸化物を含有する
正極、負極、及び電解質を有する電池要素と、前記電池
要素を収納する形状可変性ケースとを有するリチウム二
次電池において、所定の測定条件によるX線光電子分光
測定(X−rayphotoelectron spe
ctroscopy)における前記リチウムニッケル複
合酸化物のNi2p3/2ピークの結合エネルギー値を
855.5eV以上とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、リチウム二次電池
に関し、詳しくは、形状可変性を有するケースを用いた
リチウム二次電池に関する。さらに本発明は、上記リチ
ウム二次電池に用いる正極活物質及び、前記正極活物質
を用いたリチウム二次電池用正極材料に関する。
【0002】
【従来の技術】正極、負極、及び電解質を有する電池要
素をケース内に密封してなるリチウム二次電池(本明細
書においては、単に電池という場合がある。)に用いる
正極活物質として、リチウム遷移金属複合酸化物が有望
視されている。これらリチウム遷移金属複合酸化物の中
でも、遷移金属としてコバルトやマンガンを用いるリチ
ウム遷移金属複合酸化物と比較して、遷移金属としてニ
ッケルを用いるリチウムニッケル複合酸化物は、単位重
量あたりの電池容量が大きいため、有用な正極活物質と
して注目されている。
【0003】ここで、リチウムニッケル複合酸化物を用
いたリチウム二次電池の具体的な用途としては、携帯電
話や携帯型パーソナルコンピュータ等の小型の電気機器
に用いる電源を挙げることができる。なぜなら、これら
電気機器に用いられるリチウム二次電池は電気機器のサ
イズに合わせて小型にすることが望まれるのであるが、
高容量のリチウムニッケル複合酸化物を用いば、リチウ
ム二次電池を小型化することに伴う電池容量の減少を緩
和することができるからである。
【0004】ところで、前記小型の電気機器用の電源
は、重量が軽いこと(軽量化すること)も望まれる。な
ぜなら、携帯電話や携帯用パーソナルコンピュータを使
用するユーザーにとっては、電気機器自体が軽量である
ことが非常に重要だからである。このようなリチウム二
次電池の軽量化の要請に答えるべく、電池要素を収納す
るケースを軽量化する手法がすでに検討されている。す
なわち、通常は、前記ケースとして、SUS(ステンレ
ス)等の金属製のものが用いられてきたが、これに代え
て、ガスバリア層と樹脂層とが設けられてなるラミネー
トフィルムのような、形状可変性を有する軽量な外装材
をケースに使用したリチウム二次電池が実用化されつつ
ある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、リチウ
ムニッケル複合酸化物は、他のリチウム遷移金属複合酸
化物と比較して単位重量当たりの電池容量を大きくする
ことができる利点があるものの、その実用化を妨げる要
因として、熱安定性が劣るという問題がある。すなわ
ち、本発明者等の検討によれば、リチウムニッケル複合
酸化物を用いるリチウム二次電池を充電状態で高温中で
保存すると、リチウムニッケル複合酸化物と電解液とが
反応することに起因するガス発生が起こることがわかっ
た。このガスは電池要素を収納するケース内部の内圧を
上昇させることとなる。
【0006】本発明者等は、このガス発生について更に
詳細に検討した。その結果、リチウムニッケル複合酸化
物を正極活物質に用いた場合に特異的に発生する上記ガ
スの量自体はそれほど多くないことがわかった。従っ
て、従来から用いられている金属缶をリチウム二次電池
のケースとして用いた場合は、上記ガスの発生によるケ
ース内部圧力の上昇が起こったとしても、リチウム二次
電池の電池性能の劣化や電池が膨れるというような電池
の外観形状の変形は発生しない。これは、ケース内部の
圧力上昇に対して、ケースの剛性が高くケースが電池要
素を外部から押さえつける力が十分強いからである。
【0007】これに対し、剛性が弱いラミネートフィル
ムのような形状可変性を有する外装材をリチウム二次電
池のケースとして用いた場合は、前記ガス発生によるケ
ース内部の圧力上昇により、リチウム二次電池が膨れる
という問題が発生する。そして、このリチウム二次電池
の膨らみは、第一に、ケースに収納される電池要素にお
ける電極間の密着性を下げるため、放電容量の低下をも
たらしたり、サイクル特性を悪化させることとなる。さ
らに、ケースであるラミネートフィルムの膨らみによ
り、フィルムの接合部が一部リークすることがあり、こ
のリーク部分から空気中の水分が侵入して電池特性の劣
化が起こる場合もある。第二に、リチウム二次電池が収
納される電子機器は、小型化のために電池の収納スペー
スをできる限り小さくしたいという要請があるが、リチ
ウム二次電池が膨らむ場合、その膨らみの分を考慮して
電池の収納スペースを設計する必要がある。従って、前
記リチウム二次電池の膨らみは、電子機器の小型化の障
害にもなる。
【0008】実際に、リチウム二次電池が電源として用
いられる携帯電話等は、猛暑の車中に放置されるような
場合がある。この場合、リチウム二次電池は、60〜8
5℃の高温環境下にさらされることとなる。また、パー
ソナルコンピュータの電源としてリチウム二次電池を用
いた場合、パーソナルコンピュータ中の電子回路が発生
する熱による温度上昇により、電源のリチウム二次電池
は50〜60℃の環境下にさらされることになる。これ
らの事情からも、リチウムニッケル複合酸化物を用いる
リチウム二次電池において特に問題となる、上記高温下
に保存された場合のガス発生を抑制することは、形状可
変性ケースを有するリチウム二次電池にとってとりわけ
解決しなければならない技術的課題なのである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上記実情
に鑑みて、高温環境下において特異的に発生するリチウ
ムニッケル複合酸化物と電解液との反応を抑制し、形状
可変性ケースを用いたリチウム二次電池の膨れを抑制す
ることを鋭意検討した。ここで、本発明者等が特に着目
したのは、正極内において粒子状で存在するリチウムニ
ッケル複合酸化物の表面状態を制御することである。す
なわち、高温環境下でリチウムニッケル複合酸化物と電
解液とが反応する原因は、電解液と接するリチウムニッ
ケル複合酸化物の粒子表面が化学的に活性になっている
からではないかと考えたのである。そして、リチウムニ
ッケル複合酸化物の表面状態を上手く制御できれば、上
記電解液との反応を抑制することができると考えたので
ある。本発明者等は、このような考察の下鋭意検討した
結果、本発明を見出した。
【0010】すなわち、本発明の第一の要旨は、リチウ
ムニッケル複合酸化物を含有する正極、負極、及び電解
質を有する電池要素と、前記電池要素を収納する形状可
変性ケースとを有するリチウム二次電池において、下記
測定条件によるX線光電子分光測定(X−ray ph
otoelectron spectroscopy)
における前記リチウムニッケル複合酸化物のNi2p3
/2ピークの結合エネルギー値が855.5eV以上で
あることを特徴とするリチウム二次電池に存する。 (X線光電子分光測定の測定条件) (1)Ni2p3/2ピークの評価に用いるX線光電子
分光装置の調整 X線光電子分光装置内にてArイオンを照射して清浄化
した銀板表面に、単色化Al−Kα線(14kV、45
0W)を照射し、PassEnergy=23.50e
V、(測定面積0.8mm径、)取出角75度の条件で
測定した場合に、Ag3d5/2の半値幅が0.71e
Vとなるように、X線光電子分光装置を調整する。 (2)リチウムニッケル複合酸化物の測定及びNi2p
3/2ピークの結合エネルギー値の特定手順 金属板上に粉末状態のリチウムニッケル複合酸化物をふ
りかけ、リチウムニッケル複合酸化物粉末の表面を平滑
になるようにした後、前記金属板ごと測定用ホルダーに
固定し、測定に供する。
【0011】測定のための光源には単色化Al−Kα線
(14kV、150W)を用い、PassEnergy
=29.35eV、(データ取込間隔0.125eV/
step、測定面積0.8mm径、)取出角45度に設
定して、測定を行う。ここで、帯電補正のために電子中
和銃を用いる。C1sスペクトル上の炭酸由来ピークト
ップ289.6eVを基準にして、結合エネルギー軸を
補正する。
【0012】Ni2p3/2ピークの低結合エネルギー
側の裾に合わせてGauss−Lorents混合ピー
ク(Gauss90−100%、半値幅2.6−2.7
eV)を合成し、その合成ピークのトップをNi2p3
/2ピークの結合エネルギー値とする。また、本発明の
第二の要旨は、リチウム二次電池の正極活物質として用
いるリチウムニッケル複合酸化物であって、上記測定条
件によるX線光電子分光測定(X−ray photo
electron spectroscopy)におけ
るNi2p3/2ピークの結合エネルギー値が855.
5eV以上であることを特徴とするリチウムニッケル複
合酸化物に存する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明のリチウム二次電池は、リ
チウムニッケル複合酸化物を含有する正極、負極、及び
電解質を有する電池要素と、前記電池要素を収納する形
状可変性ケースとを有し、下記測定条件によるX線光電
子分光測定(X−ray photoelectron
spectroscopy、本明細書においては単に
XPS測定という場合がある。)における前記リチウム
ニッケル複合酸化物のNi2p3/2ピークの結合エネ
ルギー値が855.5eV以上である。 (X線光電子分光測定の測定条件)(1)Ni2p3/
2ピークの評価に用いるX線光電子分光装置の調整 X線光電子分光装置内にてArイオンを照射して清浄化
した銀板表面に、単色化Al−Kα線(14kV、45
0W)を照射し、PassEnergy=23.50e
V、測定面積0.8mm径、取出角75度の条件で測定
した場合に、Ag3d5/2の半値幅が0.71eVと
なるように、X線光電子分光装置を調整する。 (2)リチウムニッケル複合酸化物の測定及びNi2p
3/2ピークの結合エネルギー値の特定手順 金属板上に粉末状態のリチウムニッケル複合酸化物をふ
りかけ、リチウムニッケル複合酸化物粉末の表面を平滑
になるようにした後、前記金属板ごと測定用ホルダーに
固定し、測定に供する。
【0014】測定のための光源には単色化Al−Kα線
(14kV、150W)を用い、PassEnergy
=29.35eV、(データ取込間隔0.125eV/
step、測定面積0.8mm径、)取出角45度に設
定して、測定を行う。ここで、帯電補正のために電子中
和銃を用いる。C1sスペクトル上の炭酸由来ピークト
ップ289.6eVを基準にして、結合エネルギー軸を
補正する。
【0015】Ni2p3/2ピークの低結合エネルギー
側の裾に合わせてGauss−Lorents混合ピー
ク(Gauss90−100%、半値幅2.6−2.7
eV)を合成し、その合成ピークのトップをNi2p3
/2ピークの結合エネルギー値とする。リチウムニッケ
ル複合酸化物を正極活物質として用いた場合に発生す
る、高温環境下でのガス発生の問題は、リチウム二次電
池の電圧が高い場合の方がより問題になりやすい。この
ため、高温保存試験におけるガス発生の有無の評価は
4.2Vの満充電状態で行うことが、最も厳しい試験条
件となる。また高温保存試験における温度としては、炎
天下の車のダッシュボード上が85℃といわれているこ
とより、90℃の保存試験は通常使用条件としては最も
厳しい試験条件となる。すなわち、4.2Vの満充電状
態において90℃で保存試験を行うことが、高温環境下
でのガス発生の程度を評価する最も厳しい試験条件とな
る。この厳しい試験条件にもかかわらず、本発明者等
は、リチウムニッケル複合酸化物を正極活物質として用
いたリチウム二次電池で特に問題となる、4.2V満充
電状態における高温保存試験において、ガス発生が認め
られなくなるリチウム二次電池を提供することを可能と
した。
【0016】すなわち、上記測定条件においてXPS測
定した場合における、リチウムニッケル複合酸化物のN
i2p3/2ピークの結合エネルギー値を855.5e
V以上とすることにより、4.2V満充電、90℃保存
試験においてガス発生が認められなくなるのである。そ
の理由については、本発明者等は以下のように推測して
いる。
【0017】満充電時の保存試験においてガス発生が起
こる原因は、リチウムニッケル複合酸化物の表面に存在
する酸化分解反応活性点又は酸塩基分解反応点が、電解
液と反応するためであると推察される。ここで、固体表
面における化学反応は、固体表面の微妙な結晶構造や金
属の価数の違いにより形成された反応活性点において起
こると考えられる。そして、リチウムニッケル複合酸化
物の一般的な化学式はLiNiO2であるため、粒子状
のリチウムニッケル複合酸化物を製造する際に、原料と
して用いるNi材(例えば水酸化ニッケルNi(OH)
2)が完全に反応していれば、リチウムニッケル複合酸
化物粒子の全ての領域において、Niの価数は3価とな
っているはずである。ところが、本発明者等の検討によ
れば、実際にはNi材が完全に反応しきれておらず、3
価のニッケルよりもより化学的な活性の高い2価のニッ
ケルがリチウムニッケル複合酸化物粒子内及び粒子表面
に存在していることが判明した。このため本発明者等
は、リチウムニッケル複合酸化物粒子の最表面に存在す
る2価のNiが、電解液と反応を起こす前記酸化分解反
応活性点又は酸塩基分解反応点を形成しているとなって
いるのではないかと考えたのである。
【0018】そして、リチウムニッケル複合酸化物粒子
の最表面に存在する2価のニッケルの量を減少させるこ
と、具体的には2価のニッケルを3価のニッケルとする
ことにより、前記酸化分解反応活性点又は酸塩基分解反
応点を低減することができると考えたのである。このよ
うな推測の下、本発明者等は、物質表面の分析に適した
XPSを用いてリチウムニッケル複合酸化物の最外表面
に存在するNiの電子状態のキャラクタリゼーションを
試み、リチウムニッケル複合酸化物のNi2p3/2ピ
ークの結合エネルギー値の高低を求めることにより、前
記最外表面に存在するNiの価数の検討を行った。ここ
で、XPSが表面分析に最適である理由は、XPSが一
般に固体の表面から5nm程度の深さまでに存在する原
子の価数を測定することができるからである。また、前
記最外表面に存在するNiのNi2p3/2ピークの結
合エネルギー値をNi価数評価の基準としたのは、前記
結合エネルギーが高エネルギー側にあるほどNi原子の
価数が高く、低エネルギー側に存在するほどNi原子の
価数が低いということができるからである。
【0019】そしてXPS測定の結果により、Ni2p
3/2ピークの結合エネルギー値が855.5eV以上
となる、すなわち最外表面に存在する2価のニッケルの
存在量が少ないリチウムニッケル複合酸化物が、高温保
存試験においてもガス発生が認められないことを見出し
たのである。本発明で用いるリチウムニッケル複合酸化
物は、少なくともリチウム及びニッケルを含有する酸化
物である。リチウムニッケル複合酸化物としては、例え
ば、α−NaFeO2構造等の層状構造を有する、Li
NiO2のようなリチウムニッケル複合酸化物が好まし
い。具体的な組成としては、例えば、LiNiO2、L
iNi24等を挙げることができる。この場合、リチウ
ムニッケル複合酸化物は、Niが占めるサイトの一部を
Ni以外の元素で置換したものであってもよい。Niサ
イトの一部を他の元素で置換することによって、結晶構
造の安定性を向上させることができ、繰り返し充放電す
る際のNi元素の一部がLiサイトに移動して発生する
容量低下が抑制されるため、サイクル特性も向上する。
さらに、Niサイトの一部をNi以外の元素で置換する
ことによって、DSC(Differential S
canning Calorimetry:示差走査熱
量測定)の発熱開始温度が高温側にシフトするため、電
池の温度が上昇した場合のリチウムニッケル複合酸化物
の熱暴走反応も抑制され、結果として高温保存時の安全
性の向上につながる。
【0020】Niが占めるサイトの一部をNi以外の元
素で置換する際の、該元素(以下、置換元素と表記す
る)としては、例えば、Al、Ti、V、Cr、Mn、
Fe、Co、Li、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr等が
挙げられる。無論、Niサイトは2種以上の他元素で置
換されていてもよい。好ましくはAl、Cr、Fe、C
o、Li、Mg、Ga、Mnが挙げられ、更に好ましく
はAl、Coが挙げられる。Ni元素の一部をCo、A
lで置換することにより、サイクル特性、安全性の改善
効果が大きくなる。
【0021】置換元素によりNiサイトを置換する場
合、その割合は通常Ni元素の2.5モル%以上、好ま
しくは5モル%以上であり、通常Ni元素の50モル%
以下、好ましくは30モル%以下である。置換割合が少
なすぎるとサイクル特性等の改善効果が充分ではない場
合があり、多すぎると電池にした場合の容量が低下して
しまう場合がある。
【0022】尚、上記の組成において、少量の酸素欠
損、不定比性を持っていてもよい。また、酸素サイトの
一部が硫黄やハロゲン元素で置換されていてもよい。本
発明においては、リチウムニッケル複合酸化物は、下記
一般式(1)で表される、無置換又はNiサイトがCo
及びAlで置換される化合物であることが好ましい。
【0023】
【化1】 LiαNiXCoYAlZ2 (1) 一般式(1)中、αは電池内での充放電の状況により変
化する数であり、通常、0≦α≦1.1、好ましくは、
0.3≦α≦1.1の範囲の数である。また、Xは、通
常、0.5≦X≦1、好ましくは、0.7≦X≦0.9
の範囲の数である。Yは、通常、0≦Y≦0.5、好ま
しくは、0.1≦Y≦0.3の範囲の数である。Yをこ
の範囲以上とすると容量が低下する一方、この範囲以下
とすると効果が不十分となる。Zは、通常、0≦Z≦
0.1、好ましくは、0≦Z≦0.05の範囲の数であ
る。この範囲以上とすると容量が低下する場合がある。
尚、上記のX、Y、Zは、0.9≦X+Y+Z≦1.1
の関係を満たすが、通常1.0である。前記一般式
(1)で表される組成は、Niサイトの一部をCoで置
換することにより、前記した通り、サイクル特性、及び
安全性の改善効果が大きくなるが、さらにNiサイトの
一部をAlで置換することにより更なるサイクル特性、
及び安全性の向上が達成される。
【0024】リチウムニッケル複合酸化物の比表面積
は、通常0.01m2/g以上、好ましくは0.1m2
g以上、より好ましくは0.3m2/g以上であり、ま
た通常10m2/g以下、好ましくは1m2/g以下、よ
り好ましくは0.7m2/g以下である。比表面積がこ
の範囲とすれば、高温保存時のガス発生を有効に抑制し
つつ、リチウムイオンがインターカレーション、デイン
ターカレーションするサイトが少なくなることによる、
大電流での充放電特性が悪化することもなくなる。比表
面積の測定はBET法に従う。
【0025】リチウムニッケル複合酸化物の平均2次粒
径は、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以
上、さらに好ましくは0.3μm以上、最も好ましくは
0.5μm以上であり、通常300μm以下、好ましく
は100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、最
も好ましくは20μm以下である。平均2次粒径が小さ
すぎると電池のサイクル劣化が大きくなったり、安全性
に問題が生じたりする場合があり、大きすぎると電池の
内部抵抗が大きくなり、出力が出にくくなる場合があ
る。
【0026】本発明においては、上記リチウムニッケル
複合酸化物のNi2p3/2ピークの結合エネルギー値
が855.5eV以上である必要がある。このようなリ
チウムニッケル複合酸化物を得る手段としては以下のも
のを挙げることができる。第一に、リチウムニッケル複
合酸化物を合成する際の原料となる、Ni原料(例え
ば、水酸化ニッケル)及びLi原料(例えば、水酸化リ
チウム)を混合後焼成してリチウムニッケル複合酸化物
を合成する際に、焼成雰囲気中の炭酸ガスを低減した状
態で前記焼成を行う方法を挙げることができる。これ
は、炭酸ガスの存在下で前記焼成を行うと、炭酸ガスと
原料であるLi原料とが反応して炭酸リチウムとなり、
Li原料とNi原料との反応が十分に進まなくなり、2
価のニッケルの化合物である酸化ニッケルが未反応成分
として、リチウムニッケル複合酸化物の表面に残留する
可能性が高くなるからである。より具体的には、焼成雰
囲気中の炭酸ガスを除いた状態にして、酸素雰囲気下で
焼成する方法を挙げることができる。
【0027】第二に、焼成雰囲気中のH2O成分(水
分)を低減した状態で前記焼成を行っても、Ni2p3
/2ピークの結合エネルギー値が855.5eV以上の
リチウムニッケル複合酸化物を得ることができる。焼成
雰囲気中にH2Oが存在すると、焼成雰囲気中の炭酸ガ
スと前記Li原料(例えば、水酸化リチウム)との反応
が促進され、炭酸リチウムの生成が促進されることとな
るため、2価のニッケルの化合物である酸化ニッケルが
未反応成分として、リチウムニッケル複合酸化物の表面
に残留する可能性が高くなる。さらに、焼成雰囲気中に
存在するH2Oは、合成されたリチウムニッケル複合酸
化物自体の分解を助長する。このような理由から、焼成
雰囲気中のH2Oを低減することは有効である。ここ
で、焼成雰囲気中のH2O成分を低減する方法として有
効なのは、Ni原料、Li原料等の原料を混合して得
た、焼成前の原料混合物の乾燥を十分に行い、前記混合
物中の水分をあらかじめ低減しておくことである。この
ようにすれば、焼成時の反応で発生するH2O成分の量
を低減することができるようになるので好ましい。
【0028】第三に、焼成雰囲気中の炭酸ガス及びH2
O成分(水分)を低減した状態で前記焼成を行えば、N
i2p3/2ピークの結合エネルギー値が855.5e
V以上のリチウムニッケル複合酸化物を容易に得ること
ができるようになる。理由は前述した通りである。焼成
雰囲気中の炭酸ガスやH2O成分を低減するのに有効な
のは、焼成時に焼成炉内の焼成雰囲気を換気して、炭酸
ガス及びH2O成分を低減した雰囲気を常に前記炉内に
送りこむことである。
【0029】第四に、上記焼成雰囲気の制御とともに焼
成条件(焼成方式、焼成時間、焼成温度)を適切に制御
すれば、Ni2p3/2ピークの結合エネルギー値が8
55.5eV以上のリチウムニッケル複合酸化物をより
容易に得ることができる。具体的には、焼成初期の昇温
速度の制御(例えば、原料混合物内部に含まれる水分を
除去するためにゆっくりと昇温を行う方法)、複数の焼
成温度での焼成(例えば、最初に比較的低温で焼成を行
った後に高温焼成を行う方法や、最初に高温での焼成を
行った後に比較的低温で焼成を行う方法)を行えばよ
い。本発明においては、リチウムニッケル複合酸化物の
X線光電子分光測定を所定の測定条件で行う。次に、こ
のX線光電子分光測定の測定原理及び測定方法について
説明する。
【0030】X線光電子分光法は、1次光源として試料
表面に特性X線(Al Kα, Mg Kα,等)を照射し、励起され
た試料表面から放出される光電子をエネルギー分光器に
て検出する手法である。光電子の脱出深さはおよそ5n
m程度であり、測定試料の最表面の情報を検出する有効
な手段である。入射X線のエネルギーと励起された試料
表面から放出される光電子が有する運動エネルギーとの
差は、光電子の結合エネルギーを表し、この結合エネル
ギーは元素の種類に固有のものである。また、この結合
エネルギーは、隣り合う元素の種類や化学結合の種類に
よっても微妙にその値がシフトする。X線光電子分光法
を用いれば、上記現象を利用して元素定性並びに化学状
態に関する情報を得ることができる。また、各構成元素
由来のピーク面積を比較することによって、相対的な元
素組成を知ることが出来る。
【0031】本発明におけるX線光電子分光測定におい
ては、分光装置の調整を最初に行う。具体的には、X線
光電子分光装置内にてArイオンを照射して清浄化した
銀板表面に、単色化Al−Kα線(14kV、450W)
を照射し、PassEnergy=23.50eV、測
定面積0.8mm径、取出角75度の条件で測定した場
合に、Ag3d5/2の半値幅が0.71eVとなるよ
うに、X線光電子分光装置を調整する。このような装置
の調整を行うのは、エネルギー分解能が極端に異なる場
合、エネルギー軸の校正やピークトップ値の特定に際
し、誤差が大きくなる恐れがあるからである。本発明に
おいては、0.2eV程度の差を特定する必要があるた
め、測定誤差を小さくするために装置の調整を行う。
【0032】次に、実際に測定するリチウムニッケル複
合酸化物のXPS測定を行う。具体的には、金属板上に
粉末状態のリチウムニッケル複合酸化物をふりかけ、リ
チウムニッケル複合酸化物粉末の表面を平滑になるよう
にした後、前記金属板ごと測定用ホルダーに固定し、測
定に供する。測定のための光源には単色化Al−Kα線
(14kV、150W)を用い、PassEnergy
=29.35eV、データ取込間隔0.125eV/s
tep、測定面積0.8mm径、取出角45度に設定し
て、測定を行う。ここで、帯電補正のために電子中和銃
を用いる。そして、XPS測定によって得られたデータ
は、C1sスペクトル上の炭酸由来ピークトップ28
9.6eVを基準にして、結合エネルギー軸を補正す
る。
【0033】ここで、測定に際し中和銃による帯電補正
が必要となる理由は、リチウムニッケル複合酸化物が完
全な導電性試料ではなく帯電するからである。また、結
合エネルギー軸の補正が必要となる理由は、中和銃の条
件や試料表面の帯電状態を反映して、XPS測定によっ
て得られる生データのエネルギー軸のずれが微妙に生じ
る場合があるからである。そのため、これらリチウムニ
ッケル複合酸化物試料間のデータの相互比較を行うため
には、分析試料中に含まれる元素でエネルギー基準とな
るピークを選び、このピークの値に基づいてエネルギー
軸を補正する必要がある。本発明においては、上記エネ
ルギー基準として、いずれのリチウムニッケル複合酸化
物の試料表面にも多く存在し、炭酸リチウム由来と特定
できる、C1sスペクトル上の炭酸由来ピークトップを
基準とした。
【0034】最後に、結合エネルギー軸を補正したデー
タからNi2p3/2ピークの結合エネルギー値を特定
する。具体的には、Ni2p3/2ピークの低結合エネ
ルギー側の裾に合わせてGauss−Lorents混
合ピーク(Gauss90−100%、半値幅2.6−
2.7eV)を合成し、その合成ピークのトップをNi
2p3/2ピークの結合エネルギー値とする。
【0035】ここで、単純に生データのスペクトルのピ
ークトップを読みとらず、ピーク合成を行う理由は、N
i2p3/2ピークが非対称な形状であり、単純に生ス
ペクトルのピークトップを読みとったのではエネルギー
シフトを正確に表すことは難しいからである。このた
め、上記条件にてピーク合成を行い、解析誤差を最小限
に抑えてエネルギー値を読み取るのである。
【0036】本発明のリチウム二次電池は、リチウムニ
ッケル複合酸化物を含有する正極、負極、及び電解質を
有する電池要素と、前記電池要素を収納する形状可変性
ケースとを有する。正極は、通常、集電体の上に正極材
料層を形成してなり、前記正極材料層は正極材料から構
成される。この正極材料には、Liを吸蔵・放出し得る
正極活物質及び後述のバインダーや導電材等が含有され
る。本発明においては、正極活物質としてリチウムニッ
ケル複合酸化物を用いる。リチウムニッケル複合酸化物
は、単位重量あたりの電流容量が大きくなる利点がある
一方で、熱安定性が悪く、高温保存中に電解液と反応し
てガスを発生させ、形状可変性ケースの内部圧力を上昇
させるため、本発明においては、Ni2p3/2ピーク
の結合エネルギー値が所定の値となるようにリチウムニ
ッケル複合酸化物の表面を制御することが非常に有効と
なる。
【0037】正極活物質としては、リチウムニッケル複
合酸化物を単独で用いても良いが、他のリチウム遷移金
属複合酸化物と併用しても良い。このようなリチウム遷
移金属複合酸化物として、リチウムコバルト複合酸化物
を挙げることができる。リチウムコバルト複合酸化物
は、少なくともリチウム及びコバルトを含有する酸化物
である。リチウムコバルト複合酸化物は、放電曲線が平
坦であるためレート特性に優れる有用な正極材料であ
る。リチウムコバルト複合酸化物としては、例えば、層
状構造を有するLiCoO2等を挙げることができる。
また、リチウムコバルト複合酸化物は、Coが占めるサ
イトの一部をCo以外の元素で置換したものであっても
よい。Coサイトを他元素で置換することにより、電池
のサイクル特性・レート特性が向上する場合がある。C
oが占めるサイトの一部をCo以外の元素で置換する際
の、置換元素としては、Al、Ti、V、Cr、Mn、
Fe、Li、Ni、Cu、Zn、Mg、Ga、Zr、S
n、Sb、Ge等が挙げられ、好ましくはAl、Cr、
Fe、Li、Ni、Mg、Ga、Zr、Sn、Sb、G
e更に好ましくはAl、Mg、Zr、Snである。な
お、Coサイトは2種以上の他元素で置換されていても
よい。
【0038】置換元素によりCoサイトを置換する場
合、その割合は通常Co元素の0.03モル%以上、好
ましくは0.05モル%以上であり、通常Co元素の3
0モル%以下、好ましくは20モル%以下である。置換
割合が少なすぎると結晶構造の安定性向上が充分ではな
い場合があり、多すぎると電池にした場合の容量が低下
してしまう場合がある。
【0039】リチウムコバルト複合酸化物は、通常、充
電前の基本的な組成としてLiCoO2で表されるが、
前記したようにCoサイトの一部を他の元素で置換して
もよい。また、上記組成式において、少量の酸素欠損、
不定性があっても良く、酸素サイトの一部が硫黄やハロ
ゲン元素で置換されていてもよい。さらには、上記組成
式において、リチウム量を過剰又は不足にしたりするこ
とができる。
【0040】リチウムコバルト複合酸化物の比表面積
は、通常0.01m2/g以上、好ましくは0.1m2
g以上、より好ましくは0.4m2/g以上であり、ま
た通常10m2/g以下、好ましくは5.0m2/g以
下、より好ましくは2.0m2/g以下である。比表面
積が小さすぎるとレート特性の低下、容量の低下を招
き、大きすぎると電解液等と好ましくない反応を引き起
こし、サイクル特性を低下させることがある。比表面積
の測定はBET法に従う。
【0041】リチウムコバルト複合酸化物の平均二次粒
径は、通常0.1μm以上、好ましくは0.2μm以
上、さらに好ましくは0.3μm以上、最も好ましくは
0.5μm以上であり、通常300μm以下、好ましく
は100μm以下、さらに好ましくは50μm以下、最
も好ましくは20μm以下である。平均二次粒径が小さ
すぎると電池のサイクル劣化が大きくなったり、安全性
に問題が生じたりする場合があり、大きすぎると電池の
内部抵抗が大きくなり、出力が出にくくなる場合があ
る。
【0042】リチウムコバルト複合酸化物以外にリチウ
ムニッケル複合酸化物と併用できる正極活物質として
は、遷移金属酸化物、上記リチウムコバルト複合酸化物
以外の各種のリチウム遷移金属複合酸化物、遷移金属硫
化物等各種の無機化合物が挙げることができる。ここで
遷移金属としてはFe、Mn等が用いられる。具体的に
は、MnO、V25 、V613、TiO2 等の遷移金
属酸化物粉末、リチウムマンガン複合酸化物などのリチ
ウムと遷移金属との複合酸化物粉末、TiS2 、Fe
S、MoS2 などの遷移金属硫化物粉末等が挙げられ
る。これらの化合物はその特性を向上させるために部分
的に元素置換したものであっても良い。また、ポリアニ
リン、ポリピロール、ポリアセン、ジスルフィド系化合
物、ポリスルフィド系化合物、N−フルオロピリジニウ
ム塩等の有機化合物も併用することができる。当然これ
らの無機化合物、有機化合物を混合して併用しても良
い。これら正極の活物質の粒径は、通常1〜30μm、
好ましくは1〜10μmとする。粒径が大きすぎても小
さすぎても、レート特性、サイクル特性等の電池特性が
低下する傾向にある。
【0043】本発明のリチウム二次電池に使用される負
極は、通常、集電体の上に負極材料層を形成してなり、
前記負極材料層中に、Liを吸蔵・放出し得る負極活物
質を通常含有する。負極活物質としては、炭素系活物質
を挙げることができる。炭素系活物質としては、例え
ば、黒鉛及び、石炭系コークス、石油系コークス、石炭
系ピッチの炭化物、石油系ピッチの炭化物、あるいはこ
れらピッチを酸化処理したものの炭化物、ニードルコー
クス、ピッチコークス、フェノール樹脂、及び結晶セル
ロース等の炭化物等並びにこれらを一部黒鉛化した炭素
材、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ピッチ
系炭素繊維等を用いることができる。また、これら炭素
系活物質は、金属やその塩、酸化物との混合体、被覆体
の形であっても利用できる。上記炭素系活物質の他、負
極活物質としては、けい素、錫、亜鉛、マンガン、鉄、
ニッケルなどの酸化物、あるいは硫酸塩さらには金属リ
チウムやLi−Al、Li−Bi−Cd、Li−Sn−
Cdなどのリチウム合金、リチウム遷移金属窒化物、け
い素、錫などの金属なども使用できる。これら負極活物
質の粒径は、通常1〜50μm、好ましくは5〜30μ
mである。あまりに大きすぎても小さすぎても初期効
率、レート特性、サイクル特性等の電池特性が低下する
傾向にある。無論、上記した中から選ばれる2種以上の
負極活物質を併用してもよい。
【0044】正極材料層及び負極材料層には、上記の正
極活物質、負極活物質の他にバインダーを含有しても良
い。活物質100重量部に対するバインダーの場合は、
通常0.01重量部以上、好ましくは0.1重量部以
上、更に好ましくは1重量部以上、通常50重量部以
下、好ましくは30重量部以下、更に好ましくは15重
量部以下である。バインダーの量が少なすぎると強固な
正極が形成させにくい。バインダーの量が多すぎると、
エネルギー密度やサイクル特性が低下する場合がある。
【0045】バインダーとしては、例えば、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン、ポリ−1,1−ジメチルエチレン
などのアルカン系ポリマー;ポリブタジエン、ポリイソ
プレンなどの不飽和系ポリマー;ポリスチレン、ポリメ
チルスチレン、ポリビニルピリジン、ポリ−N−ビニル
ピロリドンなどの環を有するポリマー;ポリメタクリル
酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸
ブチル、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチ
ル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリアクリル
アミドなどのアクリル誘導体系ポリマー;ポリフッ化ビ
ニル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチ
レン等のフッ素系樹脂;ポリアクリロニトリル、ポリビ
ニリデンシアニドなどのCN基含有ポリマー;ポリ酢酸
ビニル、ポリビニルアルコールなどのポリビニルアルコ
ール系ポリマー;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン
などのハロゲン含有ポリマー;ポリアニリンなどの導電
性ポリマーなど各種の樹脂が使用できる。また、上記の
ポリマーなどの混合物、変成体、誘導体、ランダム共重
合体、交互共重合体、グラフト共重合体、ブロック共重
合体などであっても使用できる。また、シリケートやガ
ラスのような無機化合物を使用することもできる。本発
明においては、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデ
ン、ポリテトラフルオロエチレン等のフッ素系樹脂を使
用することが好ましい。
【0046】バインダーの重量平均分子量は、通常10
00以上、好ましくは10000以上、さらに好ましく
は20000以上であり、通常5000000以下、好
ましくは1000000以下、さらに好ましくは300
000以下である。低すぎると塗膜の強度が低下し好ま
しくない。高すぎると粘度が高くなり活物質層の形成が
困難になる。
【0047】また正極材料層及び負極材料層には、必要
に応じて導電材料、補強材など各種の機能を発現する添
加剤、粉体、充填材などを含有しても良い。導電材料と
しては、上記活物質に適量混合して導電性を付与できる
ものであれば特に制限は無いが、通常、アセチレンブラ
ック、カーボンブラック、黒鉛などの炭素粉末や、各種
の金属ファイバー、箔などが挙げられる。補強材として
は各種の無機、有機の球状、繊維状フィラーなどが使用
できる。
【0048】本発明においては、正極材料層中に有機酸
又は有機酸のリチウム塩を含有させることが好ましい。
正極材料層中に有機酸又は有機酸のリチウム塩を含有さ
せることにより、リチウムニッケル複合酸化物の熱安定
性が向上し、高温環境下におけるガス発生が抑制される
効果がさらに顕著に発揮される。前記有機酸は、特に限
定されるものではなく、例えば、酢酸、プロピオン酸、
ステアリン酸、グリオキシル酸、ピルビン酸、アセト酢
酸、レブリン酸、フェニル酢酸、ベンゾイルプロピオン
酸、安息香酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタ
ル酸、アジピン酸、マレイン酸、フタル酸、トリメリト
酸、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、トリカルバリ
ル酸、ベンゼントリカルボン酸等を挙げることができ
る。また、有機酸のリチウム塩も特に限定されるもので
はなく、例えば上記有機酸のリチウム塩を挙げることが
できる。
【0049】前記有機酸は、2価以上の有機酸であるこ
とが特に好ましい。2価以上とすることによって、高温
保存時のガス発生が有効に抑制されるようになる。2価
以上の有機酸としては、例えば、2価の有機酸や3価の
有機酸を挙げることができる。2価の有機酸としては、
例えば、脂肪族飽和ジカルボン酸、脂肪族不飽和ジカル
ボン酸、芳香族ジカルボン酸等を挙げることができる。
脂肪族飽和ジカルボン酸の具体的な化合物としては、例
えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸等を
挙げることができる。脂肪族不飽和ジカルボン酸の具体
的な化合物としては、例えば、マレイン酸等を挙げるこ
とができる。芳香族ジカルボン酸の具体的な化合物とし
ては、例えば、フタル酸等を挙げることができる。3価
の有機酸としては、例えば、トリカルバリル酸、ベンゼ
ントリカルボン酸等を挙げることができる。
【0050】また、有機酸のリチウム塩も2価以上の有
機酸のリチウム塩であることが好ましく、例えば、上記
2価、3価の有機酸のリチウム塩を挙げることができ
る。前記有機酸としては、シュウ酸、コハク酸を用いる
のが特に好ましく、シュウ酸を用いるのが最も好まし
い。これら有機酸は、分子サイズの小さく高温保存時の
ガス発生を抑制する効果が大きい。有機酸のリチウム塩
も、上記有機酸と同様の理由から、シュウ酸、コハク酸
のリチウム塩を用いるのが好ましく、シュウ酸のリチウ
ム塩を用いることがより好ましい。これら有機酸及び/
又は有機酸のリチウム塩を用いて、さらにリチウムニッ
ケル複合酸化物の表面状態を制御することにより、本発
明のリチウム二次電池を高温環境下に保存した場合のガ
ス発生抑制が顕著になる。
【0051】前記有機酸及び/又は有機酸のリチウム塩
は、正極材料層100重量部に対して、通常0.1重量
部以上、好ましくは0.2重量部以上、より好ましくは
0.3重量部以上であり、一方、通常1.0重量部以
下、好ましくは0.8重量部以下、より好ましくは0.
6重量部以下である。添加量をこの範囲とすることによ
り、リチウム二次電池を高温環境下で保存した場合のガ
ス発生を有効に抑制しつつ、電池の充放電特性を良好に
保つことができるようになる。
【0052】正極及び負極に使用される集電体の材料と
しては、通常、アルミニウム、銅、ニッケル、錫、ステ
ンレス鋼等の金属、これら金属の合金等を用いることが
できる。この場合、正極の集電体としては、通常アルミ
ニウムが用いられ、負極の集電体としては、通常銅が用
いられる。集電体の形状は特に制限されず、例えば、板
状やメッシュ状の形状を挙げることができる。集電体の
厚みは通常1〜50μm、好ましくは1〜30μmであ
る。薄すぎると機械的強度が弱くなるが、厚すぎると電
池が大きくなり、電池の中で占めるスペースが大きくな
ってしまい、電池のエネルギー密度が小さくなる。
【0053】正極及び負極の厚さは、それぞれ通常1μ
m以上、好ましくは10μm以上であり、通常は500
μm以下、好ましくは200μm以下である。あまりに
厚くても薄くても容量やレート特性等の電池性能が低下
する傾向にある。正極及び負極の製造方法には、特に制
限はなく、例えば、活物質及び必要に応じて用いられる
バインダーや導電材等からなるリチウム二次電池用正極
材料を溶媒に含有させたスラリーを集電体に塗布し、乾
燥することにより製造することができる。また、例え
ば、溶媒を用いずに、活物質及び必要に応じて用いられ
るバインダーや導電材等を混練後、集電体に圧着するこ
とにより製造することもできる。
【0054】本発明のリチウム二次電池に用いられる電
解質は、通常、溶質、非水系溶媒を含有する(本明細書
においては、溶質及び非水系溶媒を合わせて電解液、又
は非水電解液と呼ぶ場合がある。)が、好ましいのは、
電解質が、溶質、非水系溶媒及びポリマーを含有するこ
とである。ポリマーを含有させることで、電解質が非流
動化して保液性が向上し液漏れを防止することができる
ようになるため、高温保存時の安全性が一層改善され
る。さらに、電解質にポリマーを含有させると電解質と
電極との接着性が向上するが、本発明においては、前記
電解質と電極との接着性を阻害する要因となる、高温保
存時のリチウムニッケル複合酸化物と電解液との反応に
よるガス発生が認められなくなる。このため、本発明に
おいては、ポリマーを電解質に含有させる効果が顕著に
発揮されるようになる。
【0055】溶質としては、従来公知のリチウム塩のい
ずれもが使用できる。例えば、LiClO4、LiAs
6、LiPF6、LiBF4、LiB(C654 、C
3SO3Li、CF3SO3Li、LiN(SO2CF3
2、LiN(SO2252、LiC(SO2CF33
LiSbF6 、LiSCN等が挙げられ、これらのうち
少なくとも1種以上のものを用いることができる。これ
らのうちでは、本発明の効果が顕著となる点から、Li
ClO4、LiPF6 が特に好ましい。これら溶質の非水
電解液に対する含有量は、通常0.5〜2.5mol/
lである。
【0056】非水系溶媒としては、例えば、エチレンカ
ーボネート、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボ
ネート等の環状カーボネート類、ジメチルカーボネー
ト、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート
などの非環状カーボネート類、テトラヒドロフラン、2
−メチルテトラヒドロフラン等のフラン類、ジメトキシ
エタン等のエーテル類、γ−ブチルラクトン等のラクト
ン類、アセトニトリル等のニトリル類等の1種又は2種
以上の混合物を挙げることができる。これらのうちで
は、環状カーボネート類、非環状カーボネート類及びラ
クトン類から選ばれた1種又は2種以上の混合溶液が好
ましい。
【0057】高温保存時のガス発生を抑制する点から、
本発明においては、非水系溶媒に20℃/1気圧での沸
点が150℃以上の高沸点溶媒を含有させることがより
好ましい。上記高沸点溶媒とは、通常、沸点が150℃
〜300℃の範囲にある溶媒をいうが、好ましくは、沸
点が180℃〜270℃、より好ましくは、沸点が20
0℃〜250℃の範囲にある溶媒である。上記範囲の沸
点を有する溶媒を使用することで、電池の高温保存時の
ガス発生をより確実に抑制することができる。このよう
な溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(沸点
243℃)、プロピレンカーボネート(沸点240℃)
及びγ−ブチロラクトン(沸点204℃)等を挙げるこ
とができる。これら高沸点溶媒を単独で使用してもよ
く、複数を併用してもよいし、さらには、低沸点溶媒
(本発明においては、沸点が150℃以下のものをい
う。)と併用して用いても良い。尚、「20℃/1気圧
での沸点がX℃以上」とは、圧力1気圧の下で20℃か
らX℃まで加熱しても蒸気圧が1気圧を越えないことを
意味する。
【0058】尚、非水電解液は、上記溶質、非水系溶媒
の他に、安全性や電池特性(例えばサイクル特性)を確
保するための添加剤をさらに含有してもよい。電解質に
含有されるポリマーとしては、電解質の保液性をある程
度確保できるもので有れば特に制限はなく、例えば、ポ
リメタクリル酸メチルのようなアクリル系高分子や、ア
ルキレンオキシドユニットを有するアルキレンオキシド
系高分子、ポリフッ化ビニリデンやフッ化ビニリデン−
へキサフルオロプロピレン共重合体のようなフッ素系高
分子等を挙げることができる。これらポリマーのうち電
解質の保液性を十分に確保する観点から、鎖状に結合し
た原子からなる分子のうちの任意の2原子間に橋をかけ
るように形成された結合(架橋結合)を有する高分子を
用いることが好ましい(本明細書においては、これを
「架橋性ポリマー」という)。
【0059】架橋性ポリマーの基本骨格となる材料とし
ては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボ
ネート、ポリイミドなどの重縮合によって生成させるも
の、ポリウレタン、ポリウレアなどのように重付加によ
って生成されるもの、ポリメタクリル酸メチルなどのア
クリル系高分子やポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニルなど
のポリビニル系高分子などの付加重合で生成されるもの
等を挙げることができる。
【0060】本発明においては、スペーサ(詳細は後
述)に含浸させてから重合させるのが好ましいことか
ら、重合の制御が容易で重合時に副生成物が発生しない
付加重合により生成される高分子を使用することが望ま
しい。このようなポリマーとしては、アクリル系高分子
を挙げることができる。アクリル系高分子は、電池容量
やレート特性、機械的強度等の電池特性上からも好まし
い材料である。
【0061】アクリル系高分子しては、アクリロイル基
を有するモノマーを重合することにより得られる高分子
が特に好ましい。アクリロイル基を有するモノマーとし
ては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、
アクリル酸ブチル、アクリルアミド、2−エトキシエチ
ルアクリレート、ジエチレングリコールエチルエーテル
アクリレート、ポリエチレングリコールアルキルエーテ
ルアクリレート、ポリプロピレングリコールアルキルエ
ーテルアクリレート、2―シアノエチルアクリレートな
どモノアクリレート類;1、2―ブタンジオールジアク
リレート、1、3―ブタンジオールジアクリレート、
1、4―ブタンジオールジアクリレート、ネオペンタン
ジオールジアクリレート、1、6―ヘキサンジオールジ
アクリレートなどのアルカンジオールジアクリレート
類;エチレングリコールジアクリレート、ジエチレング
リコールジアクリレート、トリエチレングリコールジア
クリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート
などのポリエチレングリコールジアクリレート類;プロ
ピレングリコールジアクリレート、ジプロピレングリコ
ールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアク
リレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート
などのポリプロピレングリコールジアクリレート類;ビ
スフェノールFエトキシレートジアクリレート、ビスフ
ェノールFエトキシレートジメタアクリレート、ビスフ
ェノールAエトキシレートジアクリレート、トリメチロ
ールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパ
ンエトキシレートトリアクリレート、トリメチロールプ
ロパンプロポキシレートトリアクリレート、イソシアヌ
ル酸エトキシレートトリアクリレート、グリセロールエ
トキシレートトリアクリレート、グリセロールプロポキ
シレートトリアクリレート、ペンタエリスリトールエト
キシレートテトラアクリレート、ジトリメチロールプロ
パンエトキリレートテトラアクリレート、ジペンタエリ
スリトールエトキシレートヘキサアクリレート等を挙げ
ることができる。
【0062】これらの中でも、リチウムイオンの導電性
の観点からエチレングリコールユニットを有するポリア
クリレート系高分子が特に好ましい。本発明において
は、アクリル系高分子として上記のモノマー成分と他の
モノマー成分との共重合体を用いることができる。即
ち、モノマー成分として上記のモノマーの他に別の構造
を有するモノマーを共存させて重合させてもよい。特
に、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基等の不飽和
二重結合を有する基を有するモノマーを共存させると電
解質の強度及び保液性が向上する場合がある。このよう
なモノマーとしては、メタクリル酸メチル、メタクリル
アミド、ブタジエン、アクリロニトリル、スチレン、酢
酸ビニル、塩化ビニルなどの化合物が使用できる。
【0063】アクリル系高分子を使用する場合の、アク
リロイル基を有するモノマーの全モノマーに対する存在
率は特に限定されないが、通常50重量%以上、好まし
くは70重量%以上、特に好ましくは80重量%以上で
ある。上記存在率が高い方が、重合速度が早く、電解質
の生産性を高めることができる点で有利である。架橋性
ポリマーは、架橋結合を有する。架橋結合は、高分子間
を架橋剤によって架橋反応させることによって製造する
ことができる。また、高分子の原料として、反応点を複
数有するモノマー(以下、「多官能モノマー」というこ
とがある)を使用することによって製造することができ
る。好ましくは後者の方法である。
【0064】後者の方法で架橋性ポリマーを製造する場
合、原料として、多官能モノマーの外に、反応点を1つ
有するモノマー(以下「単官能モノマー」ということが
ある)を併用することができる。多官能モノマーと単官
能モノマーを併用する場合、多官能モノマーの官能基の
当量比は、通常10%以上であり、好ましくは15%以
上、更に好ましくは20%以上である。
【0065】最も好ましい架橋性ポリマーの製造方法と
しては、アクリロイル基を複数有する多官能モノマー
を、必要に応じて、アクリロイル基を1つ有する単官能
モノマーと共に重合する方法である。電解質に含有させ
るポリマーの含量は、電解質の全重量に対して通常80
重量%以下、好ましくは50重量%以下、さらに好まし
くは20重量%以下である。ポリマー含量が多すぎると
非水電解液の濃度低下によりイオン伝導度が低下してレ
ート特性などの電池特性が低下する傾向がある。一方、
ポリマーの割合が少な過ぎる場合は、ゲルの形成が困難
となり非水系溶媒の保持性が低下して流動及び液漏れが
生じることがあるのみならず、電池の安全性を確保でき
ない可能性もあるので、ポリマーの電解質に対する含有
量は、通常0.1重量%以上、好ましくは1重量%以
上、更に好ましくは2重量%以上、最も好ましくは5重
量%以上である。
【0066】非水系溶媒に対するポリマーの割合は、ポ
リマーの分子量に応じて適宜選択されるが、通常0.1
重量%以上、好ましくは1重量%以上、通常50重量%
以下、好ましくは30重量%以下である。ポリマーの割
合が少な過ぎる場合は、ゲルの形成が困難となり非水電
解液の保持性が低下して流動及び液漏れの問題が生じる
傾向がある。ポリマーの割合が多過ぎる場合は、粘度が
高くなり過ぎて取り扱いが困難となり、また、非水電解
液の濃度低下によりイオン伝導度が低下してレート特性
等の電池特性が低下する傾向にある。
【0067】本発明では、電解質にポリマーの原料とな
るモノマーを含有させた状態で、スペーサ(詳細は後
述)の空隙に充填させ、その後前記モノマーを重合させ
ることによって、ポリマーを形成させる方法を用いるの
が好ましい。これらのモノマーを重合する方法として
は、例えば、熱、紫外線、電子線などによる手法を挙げ
ることができるが、本発明においては、製造上の容易性
から加熱又は紫外線照射によってモノマーを重合させる
ことが好ましい。熱による重合の場合、反応を効果的に
進行させるため、含浸させる電解質に熱に反応する重合
開始剤をいれておくこともできる。利用できる熱重合開
始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′
−アゾビスイン酪酸ジメチル等のアゾ系化合物、過酸化
ベンゾイル、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチ
ルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等の過酸化物
などが使用でき、反応性、極性、安全性などから好まし
いものを単独、または組み合わせて用いれば良い。尚、
ポリマーを得るためには、モノマーの全官能基のうち、
通常30%以上を反応させるが、40%以上を反応させ
ることが好ましく、50%以上を反応させるのがより好
ましい。
【0068】上記電解質は、リチウムイオンによるイオ
ン伝導度の向上のために、正極、負極、及び正極・負極
間に配置されることがあるスペーサに含浸させることが
好ましい。スペーサは、通常、正極・負極間の短絡を防
止するために用いられる。スペーサは、通常多孔性膜か
らなる。スペーサとして使用する材料としては、例え
ば、ポリエチレンやポリプロピレンなどのポリオレフィ
ン類や、これらの水素原子の一部又は全部がフッ素原子
で置換されたポリオレフィン類、ポリアクリロニトリ
ル、ポリアラミド等の樹脂の多孔性膜が挙げられる。電
解質に対する化学的安定性の点、印加される電圧に対す
る安定性の点から、好ましくは、ポリオレフィン又は、
フッ素置換されたポリオレフィンであり、具体的には、
ポリエチレンやポリプロピレン、これらの水素原子の一
部又は全部がフッ素原子で置換されたものを挙げること
ができる。これらの中でも特に好ましくは、ポリエチレ
ン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリテトラフ
ルオロエチレン(PTFE)及びポリフッ化ビニリデン
であり、最も好ましくは、ポリエチレン、ポリプロピレ
ン等のポリオレフィンである。無論これらの共重合体や
混合物を使用することもできる。
【0069】スペーサの原料として用いられる樹脂の数
平均分子量は、通常1万以上、好ましくは10万以上で
あり、また通常1000万以下、好ましくは300万以
下である。分子量が小さすぎると、その機械的強度が不
十分となり、電極の短絡が生じやすい傾向にある。ま
た、分子量が大きすぎると、多孔性膜の空隙内への電解
質の含浸が困難になりがちであり、電池の生産効率を低
下させ、またレート特性等の電池性能も低下させる傾向
にある。さらに、分子量が大きすぎると、後述する可塑
剤を混合した後延伸する方法等において製膜が困難にな
ることもある。
【0070】前述したように、通常、スペーサは多孔性
膜である。多孔性膜としては、例えば、多孔性延伸膜、
不織布などが挙げられるが、本発明においては延伸によ
って製造される延伸膜であることがより好ましい。多孔
性延伸膜は、不織布よりもさらに膜内の抵抗がより均一
になるため、局所的なリチウムの析出、すなわち電極間
短絡の原因となるデンドライトの析出を抑制することが
できる。
【0071】多孔性延伸膜の延伸は、一軸又は二軸延伸
のいずれであってもよいが、二軸延伸のものを使用する
のが好ましい。二軸延伸とすれば、膜の縦・横の機械的
強度バランスがよいため、電池製造上の取り扱いが容易
となる。スペーサの空孔率は通常30%以上、好ましく
は35%以上、通常80%以下、好ましくは75%以
下、さらに好ましくは72%以下である。空孔率が小さ
すぎると膜抵抗が大きくなりレート特性が悪化する。特
に、高レートで使用した際の容量が低下する。一方、空
孔率が大きすぎると、膜の機械的強度が低下する結果、
電池要素の形状が変化する際に短絡が生じやすくなる。
本発明においては、空孔率が大きいほど架橋性ポリマー
使用による電解質の保液性の効果が大きくなるため、高
温保存での安全性が高くなる。
【0072】スペーサに存在する空孔の平均孔径は、通
常1.0μm以下、好ましくは0.2μm以下、より好
ましくは0.18μm以下、最も好ましくは0.15μ
m以下であり、通常は0.01μm以上、好ましくは
0.07μm以上である。孔径があまりに大きいと短絡
が生じやすいくなる一方、孔径があまりに小さいと膜抵
抗が大きくなり、レート特性等の電池性能が低下する傾
向にある。本発明においては、平均孔径が大きいほど架
橋性ポリマー使用による電解質の保液性の効果が大きく
なるため、高温保存での安全性が高くなる。
【0073】スペーサの膜厚は通常5μm以上、好まし
くは7μm以上であり、通常50μm以下、好ましくは
28μm以下、さらに好ましくは25μm以下であり、
最も好ましくは20μm以下である。あまりに膜厚が小
さいと、マイルドショート現象による自己放電が生じや
すく、あまりに膜厚が大きいとレート特性等の電池特性
が不十分になるばかりでなく、体積エネルギー密度が低
下する傾向にある。本発明においては、スペーサの膜厚
が小さい場合に架橋性ポリマーを使用すると、自己放電
が有効に防止される。
【0074】スペーサは、例えば以下のようにして製造
することができる。数平均分子量1万〜1000万程
度、好ましくは10万〜300万の樹脂に不均一分散媒
としての可塑剤を混合し、混練した後にシート状に成膜
する。さらにこれから溶媒で可塑剤を抽出する工程と所
定の倍率で縦横方向いずれかまたは両方に延伸する工程
を経ることにより、所望のスペーサを得ることが出来
る。本発明のリチウム二次電池は、電池要素をケースに
収納してなる。電池要素は、通常、活物質を主成分とす
る正極及び負極と、電解質とから構成される単位電池要
素を基本として形成され、該単位電池要素を長尺に形成
してこれを捲き回したり、平板状に形成した該単位電池
要素を複数積層したりすることにより形成される。つま
り、電池要素の形態としては、例えば、平板状の単位電
池要素を複数枚積層した平板積層型、長尺に形成した単
位電池要素を平板状となるように捲回した平板状捲回
型、さらには、長尺に形成した単位電池要素を円筒状に
捲回した円筒捲回型を挙げることができる。本発明にお
いては、生産性及び小型化が可能である点から、電池要
素の形態は、平板状捲回型又は平板積層型であることが
好ましい。平板状捲回型や平板積層型の電池要素の場
合、これを収納するケースも平板状となるが、このよう
な平板状ケースは、高温保存時のガス発生によりその厚
さ方向に特に膨れやすいので、リチウムニッケル複合酸
化物の表面状態を制御する効果が特に大きく発揮される
ことになる。
【0075】本発明のリチウム二次電池において、電池
要素を収納するケースは、形状可変性を有する。形状可
変性ケースは、種々の形状の電池を作成しやすい上、ケ
ース自体が薄型且つ軽量ゆえ電池の体積エネルギー密度
及び重量エネルギー密度が向上するという利点を有する
一方で、金属缶に比べて剛性が不足するため、高温保存
時のケースの膨れが発生しやすくなる。従って、形状可
変性ケースを用いた場合に、リチウムニッケル複合酸化
物の表面を制御する効果が顕著に発揮される。
【0076】形状可変性ケースの材料としては、アルミ
ニウム、ニッケルメッキした鉄、銅等の金属、合成樹脂
等を用いることができる。好ましくは、ガスバリア層と
樹脂層とを設けてなるラミネートフィルム、特に、ガス
バリア層の両面に樹脂層が設けられたラミネートフィル
ムである。このようなラミネートフィルムは、高いガス
バリア性を有すると共に、高い形状可変性と、薄さを有
する。その結果、外装材の薄膜化・軽量化が可能とな
り、電池全体としての容量を向上させることができる。
【0077】ラミネートフィルムに使用するガスバリア
層の材料としては、アルミニウム、鉄、銅、ニッケル、
チタン、モリブデン、金等の金属やステンレスやハステ
ロイ等の合金、酸化ケイ素や酸化アルミニウム等の金属
酸化物を使用することができる。好ましくは、軽量で加
工性に優れるアルミニウムである。樹脂層に使用する樹
脂としては、熱可塑性プラスチック、熱可塑性エラスト
マー類、熱硬化性樹脂、プラスチックアロイ等各種の合
成樹脂を使うことができる。これらの樹脂にはフィラー
等の充填材が混合されているものも含んでいる。
【0078】具体的なラミネートフィルムの構成として
は、図12(A)に示すように、ガスバリア層40と樹
脂層41が積層されたものを使用することができる。ま
た、さらに好ましいラミネートフィルムは、図12
(B)に示すようにガスバリア層40の外側面に外側保
護層として機能するための合成樹脂層41を設けると共
に、内側面に電解質による腐蝕やガスバリア層と電池要
素との接触を防止したりガスバリア層を保護するための
内側保護層として機能する合成樹脂層42を積層した三
層構造体としたものである。
【0079】この場合、外側保護層に使用する樹脂は、
好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリオ
レフィン、アイオノマー、非晶性ポリオレフィン、ポリ
エチレンテレフタレート、ポリアミド等耐薬品性や機械
的強度に優れた樹脂が望ましい。内側保護層としては、
耐薬品性の合成樹脂が用いられ、例えばポリエチレン、
ポリプロピレン、変性ポリオレフィン、アイオノマー、
エチレン−酢酸ビニル共重合体等を用いることができ
る。
【0080】また、ラミネートフィルムは、図13に示
すようにガスバリア層40と保護層形成用合成樹脂層4
1、耐蝕層形成用合成樹脂層42間にそれぞれ接着材層
43を設けることもでき、また好ましい。さらにまた、
外装材同士を接着するために、複合材の最内面に溶着可
能なポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂からなる接
着層を設けることもできる。これらの金属、合成樹脂あ
るいは複合材を用いてケースが形成される。ケースの成
形はフィルム状体の周囲を融着して形成してもよく、シ
ート状体を真空成形、圧空成形、プレス成形等によって
絞り成形してもよい。また、合成樹脂を射出成形するこ
とによって成形することもできる。射出成形によるとき
は、ガスバリア層はスパッタリング等によって形成され
るのが通常である。
【0081】形状可変性ケースに用いる外装材に凹部よ
りなる収容部を設けるには絞り加工等によって行うこと
ができる。また、外装材は、加工が容易である点でフィ
ルム状のものを使用するのが好ましい。形状可変性ケー
スの厚さは、通常0.01μm以上、好ましくは0.0
2μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上であ
り、通常1mm以下、好ましくは0.5mm以下、さら
に好ましくは0.3mm以下、さらに好ましくは0.2
mm以下、最も好ましくは0.15mm以下とする。薄
いほど電池がより小型・軽量化できるが、あまりに薄い
と、高温保存時のガス発生によりケースが破裂する危険
性が大きくなるだけでなく、十分な剛性の付与ができな
くなったり密閉性が低下する可能性もある。
【0082】電池要素がケースに収納されてなるリチウ
ム二次電池全体の厚さは、通常5mm以下、好ましくは
4.5mm以下、さらに好ましくは4mm以下である。
このような薄型のリチウム二次電池に対して本発明の効
果は特に大きい。ただし、あまりに薄い電池は、容量が
小さすぎたり、製造が困難だったりするので、通常0.
5mm以上、好ましくは1mm以上、さらに好ましくは
2mm以上である。
【0083】尚、電池の機器への装着等の利便を図るた
め、形状可変性ケースに電池要素を封入し好ましい形状
に成形後、必要に応じてこれら複数のリチウム二次電池
をさらに剛性を持つ外装ケースに収納することも可能で
ある。本発明のリチウム二次電池が電源として使用され
る電気機器としては、例えば、携帯用パーソナルコンピ
ュータ(本明細書においては、パーソナルコンピュータ
を単にパソコンという場合がある。)、ペン入力パソコ
ン、モバイルパソコン、電子ブックプレーヤー、携帯電
話、コードレスフォン子機、ページャー、ハンディータ
ーミナル、携帯ファックス、携帯コピー、携帯プリンタ
ー、ヘッドフォンステレオ、ビデオムービー、液晶テレ
ビ、ハンディークリーナー、ポータブルCD、ミニディ
スク、電気シェーバー、トランシーバー、電子手帳、電
卓、メモリーカード、携帯テープレコーダー、ラジオ、
バックアップ電源、モーター、照明器具、玩具、ゲーム
機器、ロードコンディショナー、時計、ストロボ、カメ
ラ、医療機器(ペースメーカー、補聴器、肩もみ機な
ど)等を挙げることができる。
【0084】以下、平板積層型の電池要素を形状可変性
ケースによって密閉収納されたリチウム二次電池を例と
して、本発明のリチウム二次電池の具体的形状について
説明する。ただし、これらはあくまでも1つの例であ
り、これらの態様に限定されるものでないことは言うま
でもない。図1は実施の形態に係る電池の分解斜視図、
図2はこの電池の要部の断面図、図3は電池要素の概略
的な斜視図、図4は電池の斜視図である。
【0085】この電池は、電池要素1を外装材3の凹部
に収容した後、電池要素1の端子部(タブ4a,4b)
付近にエポキシ樹脂やアクリル樹脂等の絶縁材料5を注
入し、その後外装材2を外装材3に被せ、真空封止によ
り外装材2、3の周縁部2a、3aを接合したものであ
る。図1の通り、外装材2は平板状である。外装材3は
方形箱状の凹部よりなる収容部3bと、この収容部3b
の4周縁からフランジ状に外方に張り出す周縁部3aと
を有した浅い無蓋箱状のものである。
【0086】図3の通り、電池要素1は、複数の単位電
池要素を厚さ方向に積層したものである。この単位電池
要素からは、タブ4a又は4bが引き出されている。正
極からの各タブ4a同士は束ねられて(即ち、相互に重
ね合わされ)、正極リード21が接合されて正極端子部
が形成されている。負極からのタブ4b同士も束ねら
れ、負極リード21が接合されて負極端子部が形成され
ている。
【0087】外装材3の収容部3b内に電池要素1が収
容され、絶縁材料5がタブ4a、4b近傍に注入され、
正極端子部及び負極端子部近傍の電池要素側面が絶縁材
料で被覆された後、外装材2が被せられる。電池要素1
から延出した1対のリード21は、それぞれ外装材2、
3の1辺部の周縁部2a、3a同士の合わせ面を通って
外部に引き出される。その後、減圧(好ましくは真空)
雰囲気下で外装材2、3の4周縁の周縁部2a、3a同
士が熱圧着、超音波溶着などの手法によって気密に接合
され、電池要素1が外装材2、3内に封入される。その
後、絶縁材料5は加熱等によって硬化処理に供され、絶
縁材料5が端子部近傍で完全に固着する。完全に固着す
る前に外装材は封止されているので、固着時に電池の形
状が変化することはほとんどない。端子部(タブ4a、
4b)近傍に絶縁材料5が充填されると、高温保存時に
ガス発生が起こっても、外装材(ケース)の内部圧力の
上昇による電池要素の剥がれを有効に防止でき、さらに
は電極間の短絡も有効に防止される。
【0088】周縁部2a、3a同士が接合されることに
より、接合片部4A、4F、4Gが形成される。この接
合片部4A、4F、4Gは、電池要素1を被包している
被包部4Bから外方に張り出している。そこで、この接
合片部4A、4F、4Gを被包部4Bに沿うように折曲
する。さらに、これらの接合片部を接着材や接着テープ
(図示略)等によって被包部4Bの側面に留め付ける
(固定される)方法も好適に用いられる。このように構
成された電池にあっては、電池の側面の強度、剛性が高
いので、側面に衝撃を受けた場合でも、活物質に剥れが
生じることが防止される。
【0089】上記の絶縁材料5としては、合成樹脂が好
適であり、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹
脂などが例示されるが、中でもエポキシ樹脂又はアクリ
ル樹脂が硬化時間が短いので好適である。特に、アクリ
ル樹脂は、電池性能に悪影響を及ぼす可能性が低いので
最も好ましい。絶縁材料は、未硬化の流動性のある状態
で端子部近傍に供給され、硬化によって完全に端子部近
傍で固着する。
【0090】図1においては、絶縁材料は、正極端子部
と負極端子部とのそれぞれ別個に供給されているが、高
温保存時の安全性を高めるため、正極端子部から負極端
子部に亘る電池要素の側面全体を被覆することができ
る。図1では、外装材2、3が別体となっているが、本
発明では、図5のように外装材2、3が一連一体となっ
ていても良い。図5では、外装材3の一辺と外装材2の
一辺とが連なり、外装材2が外装材3に対し屈曲可能に
連なる蓋状となっている。この外装材2、3が連なる一
辺から、収容部3bの凹部が形成されており、この一辺
においては接合片部が形成されていない以外は図1の外
装材と同一の構成のものとなる。
【0091】この図5の場合でも、電池要素1を収容部
3bに収容した後、電池要素1のタブ4a、4b付近に
絶縁材料を注入する。図1、5では、収容部3bを有し
た外装材3と平板状の外装材2とが示されているが、本
発明では図6のように、それぞれ浅箱状の収容部6b、
7bと、該収容部6b、7bの4周縁から張り出す周縁
部6a、7aとを有した外装材6、7によって電池要素
1を被包してもよい。図6では、外装材6、7が一連体
となっているが、前記図1と同様にこれらは別体となっ
ていてもよい。
【0092】図1、5、6の構成においては、電池要素
の収容部が予め形成されているため、電池要素をよりコ
ンパクトに収容でき、また収容自体も容易である。上記
の説明においては、電池要素を収容部に収容した後、端
子部近傍に絶縁材料が注入されているが、この場合、周
縁部の合わせ面や電池要素と外装材との間に絶縁材料が
付着・流入して周縁部の接合を阻害したり、設計通りの
電池形状にならなかったりすることがある。そこで、電
池要素の端子部近傍に絶縁材料を供給した後に電池要素
を収容部に収容することによって、上記の問題点を回避
することができる。特に、図6の場合は、電池要素を収
容後に絶縁材料を供給しても電池要素の略上半分には絶
縁材料は供給できないので、この製造方法は好ましい。
一方、この方法においては、絶縁材料が供給された状態
のハンドリングが容易でない電池要素を運搬し、外装材
に配置する必要があるので製造時の取り扱いに注意を要
する。この点においては前者の方法が好ましいと言え
る。
【0093】本発明では、図7のように1枚の平たいシ
ート状の外装材8を中央辺8aに沿って2ツ折り状に折
り返して第1片8Aと第2片8Bとの2片を形成し、こ
れら第1片8Aと第2片8Bとの間に電池要素1を介在
させ、図8の如く、第1片8Aと第2片8Bの周縁部8
b同士を接合して電池要素1を封入してもよい。また、
フィルム状の外装材の両端を貼り合わせて筒状とし、内
部に電池要素を収納した後、筒の上下をさらに貼り合わ
せる方法を例示することもできる。
【0094】これら場合も、電池要素1のタブ4a、4
b付近に絶縁材料を付着させる前又は後に、外装材8の
第1片8Aと第2片8Bとを重ね合わせて電池要素1を
封入する。また、接合片部は被包部に沿って折曲され留
め付けられるのが好ましい。端子部近傍の電池要素側面
の被覆においては、特に、正極と負極との間にこれらよ
りも大きいスペーサを設け、このスペーサのはみ出し部
同士を相互に固着するのが好ましい。
【0095】即ち、電池要素にあっては、例えば図18
に示されるように、スペーサ13が正極11及び負極1
2から若干はみ出させてはみ出し部13aを形成し、正
極11と負極12との短絡を防止している。このはみ出
し部13a同士を絶縁材料で固着することにより、電池
要素が積層方向に拘束されるため、電池要素における電
極間の密着性が良好となる。さらに本発明においては、
電極間の密着性を低下させる要因となる、高温保存時の
ガス発生が無くなるので、電極間の密着性をさらに良好
に保つことができるようになる。従って、本発明におい
ては、前記はみ出し部13a同士を絶縁材料で固着する
効果がより顕著に発揮される。無論、絶縁材料は、電池
要素の側面全体に亘って供給することができ、また好ま
しい。
【0096】絶縁材料を注入するには、図17のように
外装材3内に絶縁材料注入装置50のノズル51を挿入
し、電池要素1の側端面に絶縁材料を注入するのが好ま
しい。この場合、図14、15、16に示すように、タ
ブ4a又は4bを備えた側端面の両隅角部R1、R6と、
各タブ4a、4bの付け根の両側R2、R3、R4、R5
ように複数箇所に絶縁材料を注入するのが好ましい。注
入された絶縁材料は、電池要素側面を毛細管現象等の作
用によって正極端子部と負極端子部とを含む一辺全体に
浸透する。この注入装置50は、複数(6本)のノズル
を備え、絶縁材料を一度に複数注入することができる。
【0097】また、図16の通り、タブ4a、4bの両
サイドの付け根部分に絶縁材料を注入する場合、注入点
(注入ノズル51の中心)はタブ4a又は4bから2m
m以内とされるのが好ましい。このようにタブ4a、4
bの両サイドの付け根に絶縁材料を注入した場合、この
絶縁材料ははみ出し部13a同士を固着するだけでな
く、前記図5の場合と同様に正極端子部及び負極端子部
の少なくとも一部が絶縁材料5で覆われた構成も併せて
得られる。
【0098】以上の構成にあっては、フィルム状の外装
材の貼り合わせによって形成された接合片部を電池要素
を被包した被包部に沿って折曲したが、より好ましくは
被包部の付け根から折曲する。この場合、接合片部は被
包部の付け根で1回だけ折曲してもよく、また複数回折
曲してもよい。複数回折曲する場合にあたっては、接合
片部の先端縁が、該接合片部と被包部との間に介在させ
るように折曲するのが好ましい。これにより、接合片部
の先端縁が外気から隔絶され、先端縁から水分や空気等
の侵入を防止できる。
【0099】接合片部を被包部に留め付ける場合に使用
することができる接着剤としては、エポキシ系接着剤、
アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、ホットメルト系
接着剤または合成ゴム系接着剤等が挙げられるが、硬化
時間が短く、且つ、リチウム二次電池の製造の際に用い
られる露点の低い環境下においても容易に硬化するホッ
トメルト系接着剤が好ましい。
【0100】以下に単位電池要素の好適な構成について
説明する。図9は、このリチウム二次電池要素の単位電
池要素の好適な一例を示すものである。この単位電池要
素は、正極集電体22及び正極材料層23からなる正
極、電解質を含浸したスペーサ24、並びに、負極材料
層25及び負極集電体26からなる負極を積層したもの
である。リチウムデンドライトの析出を抑制するため、
負極は正極よりも大きくされる。また、短絡を防止する
ため、スペーサ24は正極及び負極よりも大きくされ
る。スペーサを正負極よりも大きくすることによって、
前述のように、単位電池要素のスペーサーのはみ出し部
相互を固着することができる。
【0101】この単位電池要素を複数個積層して電池要
素とするのであるが、この積層に際しては、正極を上側
とし負極を下側とした順姿勢(図9)の単位電池要素
と、これとは逆に正極を下側とし負極を上側とした逆姿
勢(図示略)の単位電池要素とを交互に積層する。即
ち、積層方向に隣り合う単位電池要素は同極同士を(即
ち、正極同士及び負極同士)が対面するように積層され
る。
【0102】この単位電池要素の正極集電体22からは
正極タブ4aが延設され、負極集電体26からは負極タ
ブ4bが延設されている。図9のように正極集電体と負
極集電体との間に正極材料層、スペーサ及び負極材料層
を積層した単位電池要素の代わりに、図10に示すよう
に、正極集電体15a又は負極集電体15bを芯材とし
てその両面に正極材料層11a又は負極材料層12aを
積層してなる正極11、負極12を準備し、この正極1
1と負極12とを図11の如く電解質を含浸したスペー
サ13を介して交互に積層して単位電池要素としてもよ
い。この場合は、1対の正極11と負極12との組み合
わせ(厳密には正極11の集電体15aの厚み方向の中
心から負極12の集電体15bの厚み方向の中心まで)
が単位電池要素に相当する。
【0103】電極の平面形状は任意であり、四角形、円
形、多角形等にすることができる。図9、10の通り、
集電体22、26又は15a、15bには、通常、リー
ド結合用のタブ4a、4bが連設される。電極が四角形
であるときは、通常図3に示すように電極の一辺のサイ
ド近傍に正極集電体より突出するタブ4aを形成し、ま
た、負極集電体のタブ4bは他サイド近傍に形成する。
【0104】複数の単位電池要素を積層するのは、電池
の高容量化を図る上で有効であるが、この際、単位電池
要素それぞれからのタブ4aとタブ4bの夫々は、通
常、厚さ方向に結合されて正極と負極の端子部が形成さ
れる。その結果、大容量の電池要素1を得ることが可能
となる。タブ4a、4bには、図2に示すように、薄片
状の金属からなるリード21が結合される。その結果、
リード21と電池要素の正極及び負極とが電気的に結合
される。タブ4a同士、4b同士の結合及びタブ4a、
4bとリード21との結合はスポット溶接等の抵抗溶
接、超音波溶着あるいはレーザ溶接によって行うことが
できる。
【0105】上記正極リードと負極リードの少なくとも
一方のリード21好ましくは両方のリードとして、焼鈍
金属を使用するのが好ましい。その結果、強度のみなら
ず折れ曲げ耐久性に優れた電池とすることができる。リ
ードに使用する金属の種類としては、一般的にアルミや
銅、ニッケルやSUSなどを用いることができる。正極
のリードとして好ましい材料はアルミニウムである。ま
た、負極のリードとして好ましい材質は銅である。
【0106】リード21の厚さは、通常1μm以上、好
ましくは10μm以上、更に好ましくは20μm以上、
最も好ましくは40μm以上である。薄すぎると引張強
度等リードの機械的強度が不十分になる傾向にある。ま
た、リードの厚さは、通常1000μm以下、好ましく
は500μm以下、さらに好ましくは100μm以下で
ある。厚すぎると折り曲げ耐久性が悪化する傾向にあ
り、また、ケースによる電池要素の封止が困難になる傾
向にある。リードに後述する焼鈍金属を使用することに
よる利点は、リードの厚さが厚いほど顕著である。
【0107】リードの幅は通常1mm以上20mm以
下、特に1mm以上10mm以下程度であり、リードの
外部への露出長さは通常1mm以上50mm以下程度で
ある。
【0108】
【実施例】以下、本発明を実施例に基づいてさらに詳細
に説明するが、本発明は下記実施例により何ら限定され
るものではなく、その要旨を変更しない範囲において適
宜変更し実施することができる。なお組成中の部は、重
量部を示す。 [実施例1] (イ)正極剤の調製 正極活物質の原料となる置換元素であるCo、Alを置
換した水酸化ニッケルは以下の方法で調製した。すなわ
ち、攪拌槽内にNi/Co/Alの比が82/15/3
となるよう硫酸ニッケル、硫酸コバルト、硝酸アルミニ
ウムを溶解し、2モル/Lの水溶液とした。この液に攪
拌翼を回転させながら室温にて1N水酸化ナトリウム水
溶液を滴下しpHを9付近に保ち、さらに攪拌をおこな
った。沈殿物を濾過、水洗、乾燥後20μmに分級し
た。
【0109】上記のようにして得られた置換水酸化ニッ
ケルと水酸化リチウムを元素比が1:1.05となるよ
う混合し、酸素気流中で710℃、20時間の熱処理を
施した。こうして得られたリチウムニッケル複合酸化物
を2次粒子が50μ以下になるよう分級した。比表面積
は0.6m2/gであった。ここで、リチウムニッケル
複合酸化物の化学式は、LiNi0.82Co0.15Al0.03
2であった。このようにして得られたリチウムニッケ
ル複合酸化物をリチウムニッケル複合酸化物Aとする。 (ロ)正極材(リチウムニッケル複合酸化物)のXPS
測定 Ni2p3/2ピークの評価には、装置内にてArイオン
を照射して清浄化した銀板表面に、単色化Al-Kα線(14k
V,450W)を照射し、PassEnergy=23.50eV、測定面積0.8mm
径、取出角75度の条件で測定した場合に、Ag3d5/2の半
値幅が0.71eVであることを確認したX線光電子分光装置
(Physical Electronics社製:ESCA−5500M
C)を用いた。
【0110】次に、金属板上に正極材粉末をふりかけ、
この粉末に薬包紙を被せ、薬包紙の上から金属製のヘラ
で粉末を軽く押さえつけて、粉末表面が平滑になるよう
にした。そして、粉末表面を平滑にした測定試料を前記
金属板ごとサンプルホルダーに固定し、測定に供した。
リチウムニッケル複合酸化物試料のXPS測定において
は、光源には単色化Al-Kα線(14kV,150W)を用い、PassE
nergy=29.35eV、データ取込間隔0.125eV/step、測定面
積0.8mm径、取出角45度に設定して、XPS測定を行っ
た。帯電補正のために電子中和銃を用いた。
【0111】そして、C1sスペクトル上の炭酸由来ピ
ークトップ289.6eVを基準に、得られた生データの結合
エネルギー軸を補正した。エネルギー軸補正後、Ni2
p3/2ピークの低結合エネルギー側の裾に合わせてGa
uss-Lorents混合ピーク(Gauss 90-100%、半値幅2.6-2.7e
V)を合成し、その合成ピークのトップをNi2p3/2の結合
エネルギー値とした。
【0112】分析の結果、リチウムニッケル複合酸化物
表面におけるNi2p3/2ピークの結合エネルギー値
は、855.6eVであった。次に、下記のようにし
て、正極、負極、及び電解質形成用の塗料を製造した。 (ハ)正極の製造 以下の組成で、正極塗料を調製した。
【0113】 正極塗料の組成 ・リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2) 27部 ・リチウムニッケル複合酸化物 A 63部 ・アセチレンブラック 5部 ・ポリフッ化ビニリデン 5部 ・N−メチル−2−ピロリドン 80部 ・シュウ酸 0.25部 上記の原料をプラネタリーミキサータイプの混練機によ
り2時間混練し正極塗料とした。次に上記の正極塗料を
15μm厚のアルミニウム集電体基材上に、エクストル
ージョン型のダイコーティングによって塗布、乾燥し、
活物質がバインダーによって集電体上に結着された多孔
質膜を作成した。ついで、ロールプレス(カレンダー)
をもちいて圧密することによって電極シートを作製し
た。この後、電極シートから電極を切り出し、正極1と
した。正極活物質の重量(アセチレンブラック、ポリフ
ッ化ビニリデンは除く)は12mg/cm2であった。 (ニ)負極の製造 以下の組成で、負極塗料を調製した。 負極塗料の組成 ・グラファイト(粒径15μm) 90部 ・ポリフッ化ビニリデン 10部 ・N−メチル−2−ピロリドン 100部 上記の原料を、プラネタリーミキサータイプの混練機に
より2時間混練し負極塗料とした。次に上記の負極塗料
を20μm厚の銅集電体基材上にエクストルージョン型
のダイコーティングによって塗布、乾燥し、活物質がバ
インダーによって集電体上に結着された多孔質膜を作成
した。ついで、ロールプレス(カレンダー)を用い圧密
することによって電極シートを作製した。この後、電極
シートから電極を切り出し、負極とした。 (ホ)正極・負極材料層の比 上記の正極1・負極の製造例においては、(正極の充電
容量)/(負極の充電容量)=0.93となるように、
正極材料層及び負極材料層の膜厚を調整した。ここで、
負極の充電容量は、対極Liを用い1.5V〜3mVま
で充電したときの負極単位重量あたりの容量(mAh/
g)を基準とした。 (ヘ)電解質形成用の塗料の製造 下記組成を混合・攪拌して、溶解し、電解質層形成用の
塗料を製造した。尚、界面活性剤は、フッ素系界面活性
剤(パーフルオロアルキルスルホン酸イミドエチレンオ
キサイド付加物、大日本インキ化学工業株式会社製、商
品名:メガファックF142P)を用いた。 電解質形成用塗料の組成 ・電解液 925部 1M濃度のLiPF6を含有するエチレンカーボネート、プロピレ ンカーボネートの混合液(体積比率;エチレンカーボネート:プ ロピレンカーボネート=1:1) ・テトラエチレングルコールジアクリレート 44部 ・ポリエチレンオキシドトリアクリレート 22部 ・重合開始剤 2部 ・添加剤(無水コハク酸) 9部 ・界面活性剤 5部 (ト)電池の製造 上記のようにして準備した正極、負極に電解質形成用の
塗料を塗布し、別途電解質層形成用の塗料に浸した高分
子多孔質フィルム(スペーサ)を用意し、このフィルム
を正極と負極との間に挟んだ後、90℃で10分加熱す
ることにより、電解質形成用の塗料中のテトラエチレン
グルコールジアクリレート及びポリエチレンオキシドト
リアクリレートを重合させた。これによって、活物質と
バインダーを含み集電体上に形成された正極、負極を有
し、該正極と負極との内部、及び正極と負極との間に非
流動化された電解質を有する平板状の単位電池要素を製
造した。
【0114】上記の単位電池要素の正極集電体、負極集
電体の端子部に電流を取り出すリード線を接続した。そ
の後、前記電池要素をアルミニウム膜の両面を樹脂層で
被覆したラミネートフィルムを対向成形した袋状ケース
に収容して、ラミネートフィルムを真空シールで封入し
て、平板状のリチウム二次電池Aを作製した。 [比較例1]実施例1の[正極剤の調製]において、71
0℃、20時間の熱処理を、炭酸ガスを含有する空気気
流下でおこなった以外は、実施例1と同様の方法でリチ
ウムニッケル複合酸化物Bを得て、これを用いて実施例
1と同様の方法でリチウム二次電池を作製した。得られ
たリチウムニッケル複合酸化物Bの比表面積は0.56
2/gであり、化学式は、LiNi0.82Co0.15Al
0.032であった。また、XPS分析を行った結果、N
i2p3/2ピークの結合エネルギー値は、855.4
eVであった。このリチウムニッケル複合酸化物Bを用
いて実施例1と同様にして作製したリチウム二次電池を
平板電池Bという。
【0115】[参考例1]実施例1において、リチウムニ
ッケル複合酸化物(LiNi0.82Co0.15Al
0.032)を使用せず、正極活物質としてリチウムコバ
ルト複合酸化物(LiCoO2)を単独で使用した(つ
まり、正極塗料の組成において、リチウムコバルト複合
酸化物(LiCoO2)を90部とした。)こと以外は
実施例1と同様にして、リチウム二次電池Cを作製し
た。 [実施例、比較例、参考例のリチウム二次電池の電池特
性評価]このようにして得た、平板電池A〜Cについ
て、下記の電池特性評価試験を行った。尚、電池特性評
価を行う際には、LiNi0.82Co0.15Al0.032
LiCoO2(7/3)ブレンドした正極剤を用いた平
板電池A、Bにおいては、1Cを170mAh/gと
し、LiCoO2を正極剤とした平板電池Cでは、1C
を140mAh/gとした。 (イ)初期容量 上記のようにして作成した平板電池A、Bを、25℃の
もと、0.6Cの定電流にて4.2Vまで充電し、その
後4.2Vにて電流値が1/15Cに減衰するまで定電
圧充電をおこなった。その0.2Cで3.0Vまで定電
流放電をおこない、初期容量とした。初期充放電後のセ
ルにはガス発生に伴うラミネートフィルムからなる形状
可変性ケースの緩みや膨れは認められなかった。測定結
果を表−1に示す。 (ロ)サイクル容量維持試験 平板電池A、Bを、25℃のもと、0.6Cの定電流に
て4.2Vまで充電し、その後4.2Vにて電流値が1
/15Cに減衰するまで定電圧充電を行った。放電は、
1Cで3.0Vまで定電流放電を行った。これを1サイ
クルとして400サイクルの容量維持試験を行った。各
平板電池における、400サイクル後の1C放電容量
の、1サイクル目の1C放電容量に対する割合(容量維
持率)の測定結果を表−1に示す。 (ハ)高温保存におけるリチウム二次電池の膨れ試験 平板電池A〜Cを、25℃のもと、0.6Cの定電流に
て4.2Vまで充電し、その後4.2Vにて電流値が1
/15Cに減衰するまで定電圧充電をおこなった。この
時点でラミネートフィルムからなる形状可変性ケースに
膨れや緩みは認められなかった。これらの平板電池を9
0℃のオーブン中で6時間保持した。オーブンから取り
出した直後に、ラミネートフィルムのふくれ具合を目視
にて評価し、90℃保存時のガス発生の有無を判断し
た。評価結果を表―1に示す。
【0116】
【表1】
【0117】参考例1の結果より、正極活物質をリチウ
ムコバルト複合酸化物(LiCoO 2)単独にすると、
高温保存時の膨れが発生しないことがわかる。つまり、
電池容量を大きくする目的で正極活物質にリチウムニッ
ケル複合酸化物を含有させるときに限って、高温保存時
におけるリチウムニッケル複合酸化物と電解液とが反応
することによるガス発生(形状可変性ケースにおけるケ
ースの膨れ)が問題になるといえる。
【0118】そして、実施例1及び比較例1の結果か
ら、リチウムニッケル複合酸化物の表面状態を制御す
る、具体的には、Ni2p3/2ピークの結合エネルギ
ー値を855.5eV以上とすることで90℃保存時の
ガス発生が抑制されることがわかる。尚、実施例1で用
いたリチウムニッケル複合酸化物Aと比較例1で用いた
リチウムニッケル複合酸化物Bとでは、Ni2p3/2
ピークの結合エネルギーが異なる他、比表面積も異なっ
ている(リチウムニッケル複合酸化物Aが0.6m2
g、リチウムニッケル複合酸化物Bが0.56m2
g)。従って、高温保存時におけるガス発生の有無は、
この比表面積の違いに由来するのではないかとの考えも
あるが、この考えは妥当ではない。なぜなら、第一に、
表−1中の実施例1と比較例1との初期容量や容量維持
率の測定値がほぼ同等の値となっていることから分かる
ように、0.04m2/g程度の比表面積の差は電池特
性にほとんど影響を及ぼさないからであある。第二に、
もし比表面積の差が高温保存時のガス発生に影響を及ぼ
すものと仮定すると、比表面積が大きい分電解液との反
応性が高くなるリチウムニッケル複合酸化物Aを用いる
方が、高温保存時におけるガス発生が観測されやすくな
るはずであるのに、実際に得られている結果は逆になっ
ている(リチウムニッケル複合酸化物Aを用いるとガス
発生が観測されず、リチウムニッケル複合酸化物Bを用
いるとガス発生が観測される。)からである。
【0119】
【発明の効果】本発明によれば、リチウムニッケル複合
酸化物の表面に存在する2価のNi量を制御することに
より、リチウムニッケル複合酸化物の利点である高い容
量を維持しつつ、その熱安定性を向上させることができ
るようになる。この結果、リチウムニッケル複合酸化物
を含有する正極、負極、及び電解質を有する電池要素
と、前記電池要素を収納する形状可変性ケースとを有す
るリチウム二次電池において、初期の電池容量、繰り返
し充放電した際の容量維持率、レート特性、及び低温特
性等の基本的な電池特性を損なうことなく、前記形状可
変性ケースを用いた場合に特に問題となる、高温保存時
におけるガス発生を有効に抑制できる。そして、本発明
によれば、各種性能が非常に高いレベルでバランスがと
れた良好なリチウムニッケル複合酸化物、及び前記リチ
ウムニッケル複合酸化物を用いたリチウム二次電池を得
ることができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施の形態に係る電池の分解斜視図である。
【図2】実施の形態に係る電池の要部の断面図である。
【図3】実施の形態に係る電池の電池要素を示す斜視図
である。
【図4】実施の形態に係る電池の斜視図である。
【図5】別の実施の形態に係る電池の製造途中の斜視図
である。
【図6】さらに別の実施の形態に係る電池の製造途中の
斜視図である。
【図7】さらに異なる実施の形態に係る電池の製造途中
の斜視図である。
【図8】図7の実施の製作途中の平面図である。
【図9】単位電池要素の模式的な斜視図である。
【図10】正極又は負極の模式的な断面図である。
【図11】電池要素の模式的な断面図である。
【図12】(A),(B)図はそれぞれ外装材を構成す
る複合材の一例を示す縦断面図である。
【図13】外装材を構成する複合材の他の例を示す縦断
面図である
【図14】別の実施の形態に係る電池の製造途中の斜視
図である。
【図15】図14の状態を模式的に示す平面図である。
【図16】図15の要部の拡大図である。
【図17】絶縁材料の注入状態を示す断面図である。
【図18】電池要素のタブ部分の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 電池要素 2、3、6、7、8 外装材 4a、4b タブ 4A、4F、4G 接合片部 4B 被包部 5 絶縁材料 11 正極 11a 正極材料層 12 負極 12b 負極材料層 13 非流動性電解質層 15a 正極集電体 15b 負極集電体 21 リード 22 正極集電体 23 正極材料層 24 スペーサ(電解質層) 25 負極材料層 26 負極集電体 40 金属層 41、42 合成樹脂層 43 接着剤層 50 注入装置 51 ノズル
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大谷 和子 神奈川県横浜市青葉区鴨志田町1000番地 シーエーシーズ株式会社横浜分析センター 内 Fターム(参考) 5H011 AA13 AA17 CC02 CC06 CC10 DD03 DD13 DD14 5H029 AJ12 AJ15 AK02 AK03 AK05 AK16 AK18 AL02 AL06 AL07 AL12 AM02 AM03 AM04 AM05 AM07 DJ02 DJ09 EJ12 HJ00 HJ14 5H050 AA10 AA15 AA20 BA17 CA02 CA08 CA09 CA11 CA20 CA29 CB02 CB07 CB08 CB12 CB29 DA13 DA14 DA18 EA10 EA23 EA24 HA00 HA14

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リチウムニッケル複合酸化物を含有する
    正極、負極、及び電解質を有する電池要素と、前記電池
    要素を収納する形状可変性ケースとを有するリチウム二
    次電池において、下記測定条件によるX線光電子分光測
    定(X−rayphotoelectron spec
    troscopy)における前記リチウムニッケル複合
    酸化物のNi2p3/2ピークの結合エネルギー値が8
    55.5eV以上であることを特徴とするリチウム二次
    電池。 (X線光電子分光測定の測定条件) (1)Ni2p3/2ピークの評価に用いるX線光電子
    分光装置の調整 X線光電子分光装置内にてArイオンを照射して清浄化
    した銀板表面に、単色化Al−Kα線(14kV、45
    0W)を照射し、PassEnergy=23.50e
    V、(測定面積0.8mm径、)取出角75度の条件で
    測定した場合に、Ag3d5/2の半値幅が0.71e
    Vとなるように、X線光電子分光装置を調整する。 (2)リチウムニッケル複合酸化物の測定及びNi2p
    3/2ピークの結合エネルギー値の特定手順 金属板上に粉末状態のリチウムニッケル複合酸化物をふ
    りかけ、リチウムニッケル複合酸化物粉末の表面を平滑
    になるようにした後、前記金属板ごと測定用ホルダーに
    固定し、測定に供する。測定のための光源には単色化A
    l−Kα線(14kV、150W)を用い、PassE
    nergy=29.35eV、(データ取込間隔0.1
    25eV/step、測定面積0.8mm径、)取出角
    45度に設定して、測定を行う。ここで、帯電補正のた
    めに電子中和銃を用いる。C1sスペクトル上の炭酸由
    来ピークトップ289.6eVを基準にして、結合エネ
    ルギー軸を補正する。Ni2p3/2ピークの低結合エ
    ネルギー側の裾に合わせてGauss−Lorents
    混合ピーク(Gauss90−100%、半値幅2.6
    −2.7eV)を合成し、その合成ピークのトップをN
    i2p3/2ピークの結合エネルギー値とする。
  2. 【請求項2】 前記形状可変性ケースが、ガスバリア層
    と樹脂層とを設けてなるラミネートフィルムよりなる請
    求項1に記載のリチウム二次電池。
  3. 【請求項3】 前記電解質が、溶質、非水系溶媒及びポ
    リマーを少なくとも含有する請求項1又は2に記載のリ
    チウム二次電池。
  4. 【請求項4】 前記ポリマーが架橋性ポリマーである請
    求項3に記載のリチウム二次電池。
  5. 【請求項5】 前記架橋性ポリマーがアクリル系高分子
    よりなる請求項4に記載のリチウム二次電池。
  6. 【請求項6】 前記非水系溶媒が、20℃/1気圧での
    沸点が150℃以上の高沸点溶媒である請求項3乃至5
    のいずれかに記載のリチウム二次電池。
  7. 【請求項7】 リチウム二次電池の正極活物質として用
    いるリチウムニッケル複合酸化物であって、下記測定条
    件によるX線光電子分光測定(X−ray photo
    electron spectroscopy)におけ
    るNi2p3/2ピークの結合エネルギー値が855.
    5eV以上であることを特徴とするリチウムニッケル複
    合酸化物。 (X線光電子分光測定の測定条件) (1)Ni2p3/2ピークの評価に用いるX線光電子
    分光装置の調整 X線光電子分光装置内にてArイオンを照射して清浄化
    した銀板表面に、単色化Al−Kα線(14kV、45
    0W)を照射し、PassEnergy=23.50e
    V、(測定面積0.8mm径、)取出角75度の条件で
    測定した場合に、Ag3d5/2の半値幅が0.71e
    Vとなるように、X線光電子分光装置を調整する。 (2)リチウムニッケル複合酸化物の測定及びNi2p
    3/2ピークの結合エネルギー値の特定手順 金属板上に粉末状態のリチウムニッケル複合酸化物をふ
    りかけ、リチウムニッケル複合酸化物粉末の表面を平滑
    になるようにした後、前記金属板ごと測定用ホルダーに
    固定し、測定に供する。測定のための光源には単色化A
    l−Kα線(14kV、150W)を用い、PassE
    nergy=29.35eV、(データ取込間隔0.1
    25eV/step、測定面積0.8mm径、)取出角
    45度に設定して、測定を行う。ここで、帯電補正のた
    めに電子中和銃を用いる。C1sスペクトル上の炭酸由
    来ピークトップ289.6eVを基準にして、結合エネ
    ルギー軸を補正する。Ni2p3/2ピークの低結合エ
    ネルギー側の裾に合わせてGauss−Lorents
    混合ピーク(Gauss90−100%、半値幅2.6
    −2.7eV)を合成し、その合成ピークのトップをN
    i2p3/2ピークの結合エネルギー値とする。
  8. 【請求項8】 請求項7に記載のリチウムニッケル複合
    酸化物を含有することを特徴とするリチウム二次電池用
    正極材料。
JP2002143493A 2002-05-17 2002-05-17 リチウム二次電池、リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池用正極材料 Expired - Lifetime JP3835343B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002143493A JP3835343B2 (ja) 2002-05-17 2002-05-17 リチウム二次電池、リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池用正極材料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002143493A JP3835343B2 (ja) 2002-05-17 2002-05-17 リチウム二次電池、リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池用正極材料

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2003338281A true JP2003338281A (ja) 2003-11-28
JP3835343B2 JP3835343B2 (ja) 2006-10-18

Family

ID=29703489

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002143493A Expired - Lifetime JP3835343B2 (ja) 2002-05-17 2002-05-17 リチウム二次電池、リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池用正極材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3835343B2 (ja)

Cited By (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005197218A (ja) * 2003-12-26 2005-07-21 Samsung Sdi Co Ltd パウチ型リチウム二次電池
JP2005285487A (ja) * 2004-03-29 2005-10-13 Nichia Chem Ind Ltd 非水電解質二次電池、非水電解質二次電池用正極活物質および非水電解質二次電池用正極合剤
JP2008077993A (ja) * 2006-09-21 2008-04-03 Mitsubishi Chemicals Corp 電極及び非水電解質二次電池
JP4720505B2 (ja) * 2003-10-07 2011-07-13 株式会社Gsユアサ 非水電解質二次電池
KR101128666B1 (ko) * 2006-12-30 2012-03-23 주식회사 엘지화학 전기전도도가 향상된 이차전지용 양극 합제 및 이를포함하고 있는 리튬 이차전지
KR101159104B1 (ko) * 2007-02-08 2012-06-22 주식회사 엘지화학 분산성이 우수한 전도성 고분자를 바인더로서 포함하고있는 전극 합제 및 이를 포함하고 있는 리튬 이차전지
US8986879B2 (en) 2004-10-01 2015-03-24 Samsung Sdi Co., Ltd. Pouch type rechargeable battery
WO2019031117A1 (ja) * 2017-08-09 2019-02-14 マクセルホールディングス株式会社 非水電解液電池
CN111095650A (zh) * 2018-07-18 2020-05-01 旭化成株式会社 锂离子二次电池
CN112186169A (zh) * 2019-07-05 2021-01-05 西北工业大学 锂离子电池用镍酸锂类正极材料前驱体的光氧化方法及应用
WO2023087168A1 (zh) * 2021-11-17 2023-05-25 宁德时代新能源科技股份有限公司 电解液、二次电池、电池模块、电池包以及用电装置

Cited By (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4720505B2 (ja) * 2003-10-07 2011-07-13 株式会社Gsユアサ 非水電解質二次電池
US9190633B2 (en) 2003-12-26 2015-11-17 Samsung Sdi Co., Ltd. Pouch type lithium secondary battery
JP2005197218A (ja) * 2003-12-26 2005-07-21 Samsung Sdi Co Ltd パウチ型リチウム二次電池
JP2005285487A (ja) * 2004-03-29 2005-10-13 Nichia Chem Ind Ltd 非水電解質二次電池、非水電解質二次電池用正極活物質および非水電解質二次電池用正極合剤
JP4539139B2 (ja) * 2004-03-29 2010-09-08 日亜化学工業株式会社 非水電解質二次電池、非水電解質二次電池用正極活物質および非水電解質二次電池用正極合剤
US8986879B2 (en) 2004-10-01 2015-03-24 Samsung Sdi Co., Ltd. Pouch type rechargeable battery
JP2008077993A (ja) * 2006-09-21 2008-04-03 Mitsubishi Chemicals Corp 電極及び非水電解質二次電池
KR101128666B1 (ko) * 2006-12-30 2012-03-23 주식회사 엘지화학 전기전도도가 향상된 이차전지용 양극 합제 및 이를포함하고 있는 리튬 이차전지
KR101159104B1 (ko) * 2007-02-08 2012-06-22 주식회사 엘지화학 분산성이 우수한 전도성 고분자를 바인더로서 포함하고있는 전극 합제 및 이를 포함하고 있는 리튬 이차전지
WO2019031117A1 (ja) * 2017-08-09 2019-02-14 マクセルホールディングス株式会社 非水電解液電池
CN111095650A (zh) * 2018-07-18 2020-05-01 旭化成株式会社 锂离子二次电池
CN111095650B (zh) * 2018-07-18 2023-04-04 旭化成株式会社 锂离子二次电池
US11923541B2 (en) 2018-07-18 2024-03-05 Asahi Kasei Kabushiki Kaisha Lithium ion secondary battery
CN112186169A (zh) * 2019-07-05 2021-01-05 西北工业大学 锂离子电池用镍酸锂类正极材料前驱体的光氧化方法及应用
WO2023087168A1 (zh) * 2021-11-17 2023-05-25 宁德时代新能源科技股份有限公司 电解液、二次电池、电池模块、电池包以及用电装置

Also Published As

Publication number Publication date
JP3835343B2 (ja) 2006-10-18

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US6689511B2 (en) Secondary battery and electronic instrument using it
WO2002054526A1 (fr) Element secondaire au lithium
EP1406338A1 (en) Lithium secondary cell
JP2003086249A (ja) リチウム二次電池
JP5192658B2 (ja) リチウムイオンポリマー電池
CN1466798A (zh) 锂二次电池
JP4014816B2 (ja) リチウムポリマー二次電池
JP3876989B2 (ja) 表面修飾リチウムニッケル複合酸化物の製造方法並びに表面修飾リチウムニッケル複合酸化物を用いた正極活物質、正極材料、及びリチウム二次電池
JP2008060033A (ja) 正極活物質、これを用いた正極および非水電解質二次電池、並びに正極活物質の製造方法
JP2003272609A (ja) リチウム二次電池
JP3835343B2 (ja) リチウム二次電池、リチウム二次電池用正極活物質及びリチウム二次電池用正極材料
JP4751502B2 (ja) ポリマー電池
WO2002043167A1 (fr) Accumulateur mince
JP2003007345A (ja) リチウム二次電池
JP2008282735A (ja) 非水電解質二次電池及びその製造方法
JP2002260736A (ja) リチウム二次電池
JP4453242B2 (ja) リチウム二次電池及び正極
JP2002237279A (ja) 二次電池
JP2000156242A (ja) リチウム二次電池
JP2002260602A (ja) 薄型電池
JP2002117904A (ja) リチウム二次電池
JP2002025559A (ja) 電 池
JP2002245994A (ja) リチウム二次電池用収容部材及びそれを用いた二次電池パック
JP2003086251A (ja) 二次電池の製造方法
JP2002184466A (ja) 携帯機器用電池

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20040401

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20060127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20060314

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20060510

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20060704

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20060717

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 3835343

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100804

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20100804

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110804

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120804

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130804

Year of fee payment: 7

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

EXPY Cancellation because of completion of term