JP2003331918A - 常温溶融塩及び常温溶融塩を用いたリチウム二次電池 - Google Patents

常温溶融塩及び常温溶融塩を用いたリチウム二次電池

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弘典 小林
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Abstract

(57)【要約】 【課題】優れた還元安定性を有し、二次電池用の電解質
として優れた特性を有する常温溶融塩、及び該常温溶融
塩を電解液に用いた高い安全性と高性能を有するリチウ
ム二次電池を提供する。 【解決手段】N−メチル−N−エチルピロリジニウム、
N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−メチル
−N−エチルピペリジニウム及びN−メチル−N−プロ
ピルピペリジニウムからなる群から選ばれた少なくとも
一種のカチオンと、N(CF3SO22 -、CF3
3 -、N(C25SO22 -、BF4 -及びPF6 -からな
る群から選ばれた少なくとも一種のアニオンとからなる
常温溶融塩、及び該溶融塩を電解液用溶媒として用いた
リチウム二次電池。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、常温溶融塩及び常
温溶融塩型リチウム二次電池に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、携帯用小型電子機器の電源として
主力となったリチウムイオン電池などの二次電池は、高
いエネルギー密度を特徴とするものであるが、有機溶媒
を用いた電解液を電解質としているために、漏液性、安
全性等の点では十分とはいえない。
【0003】一方、常温溶融塩を電解液に用いることに
より、可燃性液体を含まない二次電池を製造できること
が知られている。この様な常温溶融塩は、二次電池の安
全性の向上に対してきわめて有効であり、例えば、特開
平4−349365号公報、特開平10−92467号
公報などに常温溶融塩を用いた非水電解液二次電池が開
示されている。
【0004】しかしながら、これらの非水電解液二次電
池においては、常温溶融塩の還元安定性が低いために、
負極材料に金属酸化物、硫化物、窒化物等の高電位の材
料を使用せざるを得ず、高い電池電圧を得ることができ
ないという問題点がある。
【0005】特開平11−297355号公報には、特
定の4級アンモニウム塩をカチオン成分とする常温溶融
塩が耐還元性に優れ、リチウム二次電池の電解質として
利用できることが示されている。しかしながら、これら
の常温溶融塩についても、リチウム二次電池用の電解質
として用いた場合に、電池電圧やサイクル特性等の点に
おいて、更に改良が望まれている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した従
来技術に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、
優れた還元安定性を有し、二次電池用の電解質として優
れた特性を有する常温溶融塩、及び該常温溶融塩を電解
液に用いた高い安全性と高性能を有するリチウム二次電
池を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者は、上記した目
的を達成すべく鋭意研究を重ねてきた。その結果、特定
の環状アンモニウムカチオンと特定のアニオンとからな
る塩は、優れた還元安定性を有する常温溶融塩であり、
しかも、高電位の正極活物質を用いる場合に集電体とし
て優れた性能を発揮するアルミニウム集電体に対する腐
食性が低く、更に、Li、Sn等の低電位の負極材料に
対する腐食性も低い物質であり、該常温溶融塩にリチウ
ム塩を溶解した電解液を用いることによって、高い電池
電圧と安全性を両立したリチウム二次電池を得ることが
可能となることを見出し、ここに本発明を完成するに至
った。
【0008】即ち、本発明は、下記の常温溶融塩、及び
常温溶融塩を用いたリチウム二次電池を提供するもので
ある。 1. N−メチル−N−エチルピロリジニウム、N−メ
チル−N−プロピルピロリジニウム、N−メチル−N−
エチルピペリジニウム及びN−メチル−N−プロピルピ
ペリジニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種の
カチオンと、N(CF3SO22 -、CF3SO3 -、N
(C25SO22 -、BF4 -及びPF6 -からなる群から
選ばれた少なくとも一種のアニオンとからなる常温溶融
塩。 2. N−メチル−N−エチルピペリジニウム及びN−
メチル−N−プロピルピペリジニウムからなる群から選
ばれた少なくとも一種のカチオンと、N(CF3SO2
2 -及びN(C25SO22 -からなる群から選ばれた少
なくとも一種のアニオンとからなる常温溶融塩。 3. リチウム二次電池の電解液用溶媒として用いられ
る上記項1又は2に記載の常温溶融塩。 4. 上記項1又は2に記載の常温溶融塩にリチウム塩
を溶解してなる電解液を含む溶融塩型リチウム二次電
池。 5. (1)N−メチル−N−エチルピロリジニウム、N−メ
チル−N−プロピルピロリジニウム、N−メチル−N−
エチルピペリジニウム及びN−メチル−N−プロピルピ
ペリジニウムからなる群から選ばれた少なくとも一種の
カチオンと、N(CF3SO22 -、CF3SO3 -、N
(C25SO22 -、BF4 -及びPF6 -からなる群から
選ばれた少なくとも一種のアニオンとからなる常温溶融
塩にリチウム塩を溶解してなる電解液、(2)アルミニ
ウム集電体上に正極活物質層を形成してなる正極、及び
(3)金属リチウム又は金属スズを負極活物質とする負
極を含む溶融塩型リチウム二次電池。 6. リチウム塩が、LiN(CF3SO22、LiC
3SO3、LiN(C2 5SO22、LiBF4 及びL
iPF6からなる群から選ばれた少なくとも一種である
上記項4又は5に記載のリチウム二次電池。 7. 電解液が、N−メチル−N−エチルピペリジニウ
ム及びN−メチル−N−プロピルピペリジニウムからな
る群から選ばれた少なくとも一種のカチオンと、N(C
3SO22 -及びN(C25SO22 -からなる群から
選ばれた少なくとも一種のアニオンとからなる常温溶融
塩に、LiN(CF3SO22及びLiN(C25
22からなる群から選ばれた少なくとも一種のリチウ
ム塩を溶解したものである上記項4又は5に記載のリチ
ウム二次電池。 8. 正極活物質が、リチウムコバルト酸化物(Lix
CoO2、x=0.4〜1)、リチウムマンガン酸化物
(LixMnO2、x=0〜1)及びリチウムニッケルコ
バルト酸化物(LixNi1-y-zCoyz2、M=Al
又はMn、x=0.3〜1、y=0.1〜0.4、z=
0.01〜0.2)から選ばれた少なくとも一種であ
り、負極活物質が金属リチウムである上記項4〜7のい
ずれかに記載のリチウム二次電池。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の常温溶融塩は、N−メチ
ル−N−エチルピロリジニウム、N−メチル−N−プロ
ピルピロリジニウム、N−メチル−N−エチルピペリジ
ニウム及びN−メチル−N−プロピルピペリジニウムか
らなる群から選ばれた少なくとも一種のカチオンと、N
(CF3SO22 -、CF3SO3 -、N(C25
22 -、BF 4 -及びPF6 -からなる群から選ばれた少
なくとも一種のアニオンとからなるものである。この様
な特定の環状アンモニウムカチオンと特定のアニオンと
を組み合わせてなる常温溶融塩は、従来知られていない
新規な塩であり、還元安定性及び酸化安定性がともに高
く、これをリチウム二次電池の電解液の溶媒として用い
ることにより、高い電池電圧と安全性を有するリチウム
二次電池を得ることができる。
【0010】上記した常温溶融塩は、例えば、ヨウ化
物、臭化物などの上記カチオン成分の水溶性化合物を含
む水溶液と、リチウム塩等の上記アニオン成分の水溶液
化合物を含む水溶液とを混合し、水相から分離した油状
物質について、例えば、分液ロートを用いた相分離や有
機溶媒による抽出等の方法で分離することによって得る
ことができる。
【0011】カチオン成分の水溶性化合物については、
例えば、N−メチルピロリジン、N−メチルピペリジン
等に、塩化メチレンなどの有機溶媒中で臭化エチル、臭
化プロピル等を反応させることによって、臭化物として
得ることができる。
【0012】該溶融塩は、還元安定性及び酸化安定性が
ともに高いことに加えて、電位の高い正極活物質を用い
る際に集電体として優れた性能を有するアルミニウムに
対する腐食性が低い点でも有利な溶媒である。この点に
ついて簡単に説明すると、正極側の活物質として高電位
の物質を用いる場合には、集電体として安定に使用で
き、且つ成形性、コストなどの点で優れた特性を有する
材料としては、一般的には、アルミニウムが用いられて
いる。しかしながら、公知の常温溶融塩を用いる場合に
は、アルミニウムの腐食が生じ易く、優れたサイクル特
性を有する長寿命の二次電池を得ることができない。こ
れに対して、本発明の常温溶融塩は、アルミニウムに対
する腐食性が低く、これを電解液の溶媒として用いるこ
とによって、正極集電体としてアルミニウムの使用が可
能となり、高い電池電圧を有し且つ長寿命の二次電池を
得ることができる。
【0013】更に、本発明の常温溶融塩は、負極材料と
して、金属リチウム、金属スズ等を用いる場合に、これ
らの負極材料に対する腐食性が低い点でも優れた特徴を
有するものである。金属リチウムは、負極材料として最
も低電位な材料であり、金属スズは、リチウムと合金化
する負極の中では、比較的電位が低く高容量の材料であ
る。本発明の常温溶融塩は、これらの材料に対する腐食
性が低いので、金属リチウム又は金属スズを負極材料と
して用いることによって、高い電池電圧を有し且つ長寿
命の二次電池を得ることが可能となる。
【0014】本発明の常温溶融塩は、上記した優れた特
性を有するものであり、リチウム二次電池用の電解液の
溶媒として好適に使用できる。該常温溶融塩を用いたリ
チウム二次電池では、正極、負極、セパレーター等の電
池の各構成要素は、従来公知のリチウム二次電池と同様
でよい。
【0015】以下、本発明の常温溶融塩を電解液に用い
たリチウム二次電池の好ましい構成について説明する。
【0016】電解液としては、本発明の常温溶融塩に支
持電解質としてリチウム塩を溶解したものを用いる。リ
チウム塩としては、公知のリチウム二次電池において支
持電解質として用いられる各種リチウム塩を用いること
ができる。特に、LiN(CF3SO22、LiCF3
3、LiN(C25SO22、LiBF4 及びLiP
6からなる群から選ばれた少なくとも一種のリチウム
塩を用いることが好ましい。
【0017】電解液におけるリチウム塩の濃度について
は、特に限定的ではないが、常温溶融塩のカチオンとリ
チウム塩中のリチウムの合計モル数を基準として、リチ
ウムの比率が10〜50モル%程度であることが好まし
く、12〜25モル%程度であることがより好ましい。
【0018】これらの電解液の内で、N−メチル−N−
エチルピペリジニウム及びN−メチル−N−プロピルピ
ペリジニウムから選ばれた少なくとも一種のカチオン
と、N(CF3SO22 -及びN(C25SO22 -から
選ばれた少なくとも一種のアニオンとからなる常温溶融
塩に、LiN(CF3SO22及びLiN(C25
22から選ばれた少なくとも一種のリチウム塩を溶解
した電解液を用いることが好ましく、N−メチル−N−
プロピルピペリジニウムと、N(CF3SO22 -とから
なる常温溶融塩に、LiN(CF3SO22を溶解した
電解液を用いることが特に好ましい。
【0019】正極としては、アルミニウム集電体に正極
活物質を塗布して得られる正極を用いることが好まし
い。正極活物質としては、リチウム二次電池において用
いられる公知の正極活物質を用いることができるが、特
に、リチウム基準で3〜5Vの電位で作動する活物質を
用いることが好ましい。本発明の常温溶融塩は、正極側
の電位が高い場合にも安定して使用できるアルミニウム
集電体に対する腐食性が低いので、この様な高電位の正
極活物質を使用することができる。
【0020】正極活物質の具体例としては、高電圧を得
るためには、リチウムコバルト酸化物(LixCoO2
x=0.4〜1)、リチウムニッケル酸化物(Lix
iO2、x=0.3〜1)、リチウムマンガン酸化物
(LixMnO2、x=0〜1)、遷移金属置換リチウム
マンガン酸化物(LixMn1-yy2、M=Co、A
l、Ni、Cr又はBi、x=0〜1、y=0.01〜
0.25)、リチウムニッケルコバルト酸化物(Lix
Ni1-y-zCoyz2、M=Al又はMn、x=0.3
〜1、y=0.1〜0.4、z=0.01〜0.2)、
オリビン相化合物LiMPO4(M=Fe又はCo)等
を用いることができる。これらの内で、リチウムマンガ
ン酸化物は、スピネル相及び層状構造のいずれでも良
く、オリビン相化合物LiMPO4には、Mn、Ni等
の遷移金属が少量含まれても良い。また、各酸化物は、
異なる組成の酸化物の混合物であっても良い。
【0021】また、高容量を得るためには、マンガン酸
化物MnOx(x=1.5〜2)、バナジウム酸化物L
xy5(x=0〜3、y=1.5〜3.5)、これ
らの複合酸化物などを用いることが好ましい。
【0022】上記した正極活物質は、一種単独又は二種
以上混合して用いることができる。
【0023】正極は、常法に従って作製することができ
る。通常、上記した正極活物質に導電剤、バインダーな
どを加え、この混合物を集電体上に塗布し、圧着するこ
とによって正極を製造することができる。導電剤、バイ
ンダー等は、公知の成分を使用できる。例えば、導電剤
としては、アセチレンブラック、天然黒鉛などを使用で
きる。
【0024】正極活物質、導電剤及びバインダーの混合
割合については、通常の正極を製造する場合と同様でよ
く、例えば、正極活物質、導電剤及びバインダーの合計
量を基準として、正極活物質75〜94重量%程度、導
電剤3〜15重量%程度及びバインダー3〜10重量%
程度とすれば良く、正極活物質84〜90重量%程度、
導電剤4〜7重量%程度及びバインダー4〜10重量%
程度とすることが好ましい。
【0025】負極としては、リチウム二次電池における
公知の負極活物質を用いることができるが、特に、負極
活物質として、金属リチウム又は金属スズを用いること
が好ましい。これらの内で、金属リチウムは、最も低電
位の負極活物質であり、これを用いることによって電池
電圧が高く、エネルギー密度の高い二次電池を得ること
ができる。また、金属スズは、リチウムと合金化する負
極の中では比較的電位が低く高容量の負極活物質であ
る。本発明の常温溶融塩を用いることにより、金属リチ
ウム及び金属スズをほとんど腐食することなく使用する
ことが可能となり、電池電圧が高く、長寿命のリチウム
二次電池とすることができる。
【0026】金属リチウム又は金属スズを負極活物質と
する負極は、公知の負極と同様の構造とすることができ
る。例えば、金属リチウム又は金属スズがシート状の場
合にはそのまま負極として用いることができ、粉末状の
場合には、導電剤、結合剤などを加えて、銅、ニッケル
などの適当な基板上に塗布すればよい。また、リチウム
又はスズの金属箔を基板上に圧着して負極としても良
い。
【0027】本発明では、特に、正極活物質として、リ
チウムコバルト酸化物(LixCoO2、x=0.4〜
1)、リチウムマンガン酸化物(LixMnO2、x=0
〜1)及びリチウムニッケルコバルト酸化物(Lix
1-y-zCoyz2、M=Al又はMn、x=0.3〜
1、y=0.1〜0.4、z=0.01〜0.2)から
選ばれた少なくとも一種を用い、負極活物質として金属
リチウムを用いることが好ましい。この様な正極活物質
と負極活物質を組み合わせて用いることによって、電池
電圧が高く、エネルギー密度の高い二次電池を得ること
ができる。
【0028】上記した正極及び負極は、通常、セパレー
ターによって分離される。セパレーターとしては、例え
ば、ポリプロピレン、ポリエチレン等の多孔質膜を用い
ることができる。
【0029】常温溶融塩を含む電解液は、通常、セパレ
ーター部分と電極の空隙部分に含浸して用いられる。
【0030】上記した各構成要素は、コイン型、円筒
型、ラミネートパッケージなどの公知の各種電池外装に
封入され、密閉されて、リチウム二次電池とすることが
できる。
【0031】電池外装としてラミネートパッケージを用
いた電池の概略図を図1及び図2に示す。図1の電池で
は、正極4と負極5はセパレータ6を介して捲回され、
正極4には正極リード1を、負極5には負極リード2を
それぞれ溶接してラミネートパッケージ3に納められ、
熱溶着により封入されている。セパレータ6には本発明
の常温溶融塩を用いた電解液が含浸されている。図2の
電池は、内部の電極が捲回式ではなく積層式となってい
る以外は、図1の電池と同様の構造である。
【0032】
【発明の効果】本発明の常温溶融塩は、従来のリチウム
イオン電池に用いられている有機溶媒と比較して安全性
が非常に高く、しかも優れた還元安定性と酸化安定性を
有し、正極用集電体材料であるアルミニウムや負極活物
質である金属リチウム、金属スズ等に対する腐食性が低
い物質である。
【0033】従って、該常温溶融塩にリチウム塩を溶解
した電解液を用いることによって、高い電池電圧と安全
性を両立でき、長寿命且つ高性能リチウム二次電池を得
ることができる。
【0034】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説
明する。
【0035】実施例1 N−メチルピペリジンを塩化メチレンに溶解させ、続い
て窒素気流下で1−ブロモプロパンを滴下により徐々に
加えた後還流し、一昼夜攪拌した。その後窒素気流下で
結晶を濾取し、洗浄後再結晶、乾燥して、N−メチル−
N−プロピルピペリジニウムブロマイドを得た。
【0036】得られたN−メチル−N−プロピルピペリ
ジニウムブロマイドを含む水溶液と、LiN(CF3
22を含む水溶液とを、両化合物が等モル量となるよ
うに混合し、水相から分離した油状物質を塩化メチレン
で抽出した後、純水で洗浄し、真空乾燥することによっ
て、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムとN(C
3SO22 -とからなる常温溶融塩を得た。得られた溶
融塩の融点は8.7℃であり、σ(導電率)=1.51
mScm-1(25℃)、η(粘度)=117mPa・s
(25℃)であった。得られたN−メチル−N−プロピ
ルピペリジニウム(PP13)とN(CF3SO2
2 -(TFSI)とからなる常温溶融塩に、支持電解質と
してのLi(CF3SO22を、Li/(PP13+L
i)(モル比)=0.1となるように溶解させたものを
電解液として用いて、以下の方法でリチウム二次電池を
作製した。
【0037】正極活物質としてはコバルト酸リチウム
(LiCoO2)を用い、これに導電剤としてカーボン
ブラック、バインダーとしてポリフッ化ビニリデンを、
コバルト酸リチウム:カーボンブラック:ポリフッ化ビ
ニリデン(重量比)=85:7:8となるように配合
し、1−メチル−2−ピロリドンを用いてスラリー化し
たものをアルミニウム製集電体上に一定膜厚で塗布し、
乾燥させて正極を得た。
【0038】負極活物質としてはリチウム金属箔を用
い、銅製集電体に圧着して負極を得た。
【0039】セパレーターとしてはグラスフィルターを
用いた。
【0040】以上の各構成要素を用いて、図2に示した
構造のラミネートパッケージを用いたリチウム二次電池
を作製した。
【0041】実施例2 スズ薄膜を負極活物質として用い、これを銅製集電体上
に電気化学的に析出させて作製した負極を用いる以外
は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し
た。
【0042】実施例3 正極活物質としてLiNi0.5Mn1.54を用いる以外
は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製し
た。
【0043】実施例4 実施例1で用いたN−メチルピペリジンに代えて、N−
メチルピロリジンを用いて、N−メチル−N−プロピル
ピロリジニウムブロマイドを製造した。実施例1で用い
たN−メチル−N−プロピルピペリジニウムブロマイド
に代えて、N−メチル−N−プロピルピロリジニウムブ
ロマイドを用いる以外は、実施例1と同様にして、N−
メチル−N−プロピルピロリジニウム(P13)とN
(CF3SO22 -(TFSI)とからなる常温溶融塩を
作製した。得られた常温溶融塩の融点は12℃であり、
σ(導電率)=1.4mScm-1(25℃)、η(粘
度)=63mPa・s(25℃)であった。
【0044】この様にして得られたN−メチル−N−プ
ロピルピロリジニウム(P13)とN(CF3SO22 -
(TFSI)とからなる常温溶融塩を用いる以外は、実
施例1と同様にしてリチウム二次電池を作製した。
【0045】比較例1 エチレンカーボネートとジエチルカーボネートの等体積
の混合溶媒(EC−DEC)に1.0mol/dm3
6フッ化リン酸リチウム(LiPF6)を溶解させた電
解液を用いる以外は、実施例1と同様にしてリチウム二
次電池を作製した。
【0046】比較例2 1−エチル−3−メチルイミダゾリウム(EMI)とN
(CF3SO22 -(TFSI)とからなる常温溶融塩を
用いる以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池
を作製した。
【0047】比較例3 トリメチルプロピルアンモニウム(TMPA)とN(C
3SO22 -(TFSI)とからなる常温溶融塩を用い
る以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作
製した。
【0048】比較例4 トリエチルヘキシルアンモニウム(TEHA)とN(C
3SO22 -(TFSI)とからなる常温溶融塩を用い
る以外は、実施例1と同様にしてリチウム二次電池を作
製した。 実施例1〜4及び比較例1〜4で作製した各リチウム二
次電池について、0.1C(Cは放電率を表す)mAの
定電流密度で表1に示した電圧の範囲において充放電サ
イクル試験を行った。試験はすべて充電から開始した。
サイクル寿命は放電容量が初期容量の60%以下となる
か、或いは充放電不能となった時点のサイクル数とす
る。各実施例及び比較例の電池の初期充放電特性を示す
グラフを図3〜10に示し、初期容量とサイクル寿命を
表1に示す。
【0049】また各電池について、1サイクル経過後、
室温で1週間放置した後の容量維持率と50サイクル経
過の電池或いはそれよりも寿命の短い電池については寿
命の尽きた時点の電池について、充電状態で大気中で開
封し、着火試験を行った。これらの結果も表1に併記す
る。
【0050】尚、着火試験結果についての評価基準は、
以下の通りである。
【0051】A:着火しないかまたは着火に1分以上要
する B:5秒以上1分以内に着火 C:5秒未満で着火
【0052】
【表1】
【0053】図3、4、6及び7に示した各グラフより
明らかなように、実施例1、2及び4における各常温溶
融塩を用いた電池は、比較例1における液体電解質を用
いた電池と同等の性能を示すものであった。また、図8
から明らかなように、実施例1、2及び4の各電池は、
本発明の常温溶融塩とは異なる複素環カチオンを含む常
温溶融塩を用いた比較例2の電池と比較してより安定に
動作する電池であった。
【0054】また、図9及び10から明らかな様に、鎖
状の非対称4級アンモニウム塩を含む常温溶融塩を用い
た電池(比較例3及び4)は、サイクル特性が悪く短寿
命であった。
【0055】また、実施例3では、5V級正極材料であ
るLiNi0.5Mn1.54を用いて電池を作製したが、
本発明の常温溶融塩は、この様な正極材料の使用にも耐
え得るものであり、図5から明らかな様に高い電圧の電
池を作製できた。
【0056】更に、表1に示した着火試験結果から明ら
かなように、実施例1〜4の各電池は、充電後に大気中
で開封しても着火し難く、安全性が高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のリチウム二次電池の一例を示す概略
図。
【図2】本発明のリチウム二次電池のその他の例を示す
概略図。
【図3】実施例1で作製した電池の初期充放電曲線を示
すグラフ。
【図4】実施例2で作製した電池の初期充放電曲線を示
すグラフ。
【図5】実施例3で作製した電池の初期充放電曲線を示
すグラフ。
【図6】実施例4で作製した電池の初期充放電曲線を示
すグラフ。
【図7】比較例1で作製した電池の初期充放電曲線を示
すグラフ。
【図8】比較例2で作製した電池の初期充放電曲線を示
すグラフ。
【図9】比較例3で作製した電池の初期充放電曲線を示
すグラフ。
【図10】比較例4で作製した電池の初期充放電曲線を
示すグラフ。
【符号の説明】
1 正極リード、 2 負極リード、 3 ラミネート
パッケージ、4 正極、 5 負極、 6 セパレータ
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) H01M 4/58 H01M 4/58 4/66 4/66 A (72)発明者 宮崎 義憲 大阪府池田市緑丘1丁目8番31号 独立行 政法人産業技術総合研究所関西センター内 Fターム(参考) 5H017 AA06 AS02 AS10 BB08 CC01 EE05 5H029 AJ01 AJ12 AK02 AK03 AL11 AL12 AM09 BJ04 DJ07 DJ09 EJ01 5H050 AA01 AA15 BA16 BA17 CA02 CA07 CA08 CA09 CB11 CB12 DA08 HA02

Claims (8)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】N−メチル−N−エチルピロリジニウム、
    N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−メチル
    −N−エチルピペリジニウム及びN−メチル−N−プロ
    ピルピペリジニウムからなる群から選ばれた少なくとも
    一種のカチオンと、N(CF3SO22 -、CF3
    3 -、N(C25SO22 -、BF4 -及びPF 6 -からな
    る群から選ばれた少なくとも一種のアニオンとからなる
    常温溶融塩。
  2. 【請求項2】N−メチル−N−エチルピペリジニウム及
    びN−メチル−N−プロピルピペリジニウムからなる群
    から選ばれた少なくとも一種のカチオンと、N(CF3
    SO22 -及びN(C25SO22 -からなる群から選ば
    れた少なくとも一種のアニオンとからなる常温溶融塩。
  3. 【請求項3】リチウム二次電池の電解液用溶媒として用
    いられる請求項1又は2に記載の常温溶融塩。
  4. 【請求項4】請求項1又は2に記載の常温溶融塩にリチ
    ウム塩を溶解してなる電解液を含む溶融塩型リチウム二
    次電池。
  5. 【請求項5】(1)N−メチル−N−エチルピロリジニ
    ウム、N−メチル−N−プロピルピロリジニウム、N−
    メチル−N−エチルピペリジニウム及びN−メチル−N
    −プロピルピペリジニウムからなる群から選ばれた少な
    くとも一種のカチオンと、N(CF3SO22 -、CF3
    SO3 -、N(C25SO22 -、BF4 -及びPF6 -から
    なる群から選ばれた少なくとも一種のアニオンとからな
    る常温溶融塩にリチウム塩を溶解してなる電解液、
    (2)アルミニウム集電体上に正極活物質層を形成して
    なる正極、及び(3)金属リチウム又は金属スズを負極
    活物質とする負極を含む溶融塩型リチウム二次電池。
  6. 【請求項6】リチウム塩が、LiN(CF3SO22
    LiCF3SO3、LiN(C25SO22、LiBF4
    及びLiPF6からなる群から選ばれた少なくとも一種
    である請求項4又は5に記載のリチウム二次電池。
  7. 【請求項7】電解液が、N−メチル−N−エチルピペリ
    ジニウム及びN−メチル−N−プロピルピペリジニウム
    からなる群から選ばれた少なくとも一種のカチオンと、
    N(CF3SO22 -及びN(C25SO22 -からなる
    群から選ばれた少なくとも一種のアニオンとからなる常
    温溶融塩に、LiN(CF3SO22及びLiN(C2
    5SO22からなる群から選ばれた少なくとも一種のリ
    チウム塩を溶解したものである請求項4又は5に記載の
    リチウム二次電池。
  8. 【請求項8】正極活物質が、リチウムコバルト酸化物
    (LixCoO2、x=0.4〜1)、リチウムマンガン
    酸化物(LixMnO2、x=0〜1)及びリチウムニッ
    ケルコバルト酸化物(LixNi1-y-zCoyz2、M
    =Al又はMn、x=0.3〜1、y=0.1〜0.
    4、z=0.01〜0.2)から選ばれた少なくとも一
    種であり、負極活物質が金属リチウムである請求項4〜
    7のいずれかに記載のリチウム二次電池。
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