JP2003282230A - 加熱装置 - Google Patents

加熱装置

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JP2003282230A JP2002087772A JP2002087772A JP2003282230A JP 2003282230 A JP2003282230 A JP 2003282230A JP 2002087772 A JP2002087772 A JP 2002087772A JP 2002087772 A JP2002087772 A JP 2002087772A JP 2003282230 A JP2003282230 A JP 2003282230A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】フィルム加熱方式の加熱装置において、被加熱
材の分離性を確保しつつ、フィルム端部からの潤滑剤の
吐き出し防止と駆動トルク低減によるスリップの防止を
図る。 【解決手段】フィルム状の加熱部材10と、加熱部材を
支持する支持部材16・40と、加熱部材を挟んで支持
部材に当接する加圧部材30とを有し、加熱部材10は
支持部材に対して摺動して移動し、加熱部材と加圧部材
との当接によって形成されるニップ部Nにおいて被加熱
材を挟持搬送して加圧および加熱する加熱装置におい
て、支持部材は、加熱部材が摺動する加熱部材摺動部S
近傍に、摺動面よりも加圧部材側に突出している段差部
50a・50bと、突出していない部分Bとを有し、突
出していない部分Bは、被加熱材の幅よりも外側に配設
したことを特徴とする加熱装置。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、被加熱材を加圧・
加熱する加熱装置に関するものであり、特に電子写真式
あるいは静電記録式等の画像形成装置の定着装置として
用いれば好適な加熱装置に関する。
【0002】
【従来の技術】画像形成装置において、電子写真プロセ
ス・静電記録プロセス・磁気記録プロセス等の適宜の画
像形成プロセス手段部で被記録材(転写シート・エレク
トロファックスシート・静電記録紙・OHPシート・印
刷用紙・フォーマット紙など)に転写方式あるいは直接
方式にて形成担持させた画像情報の未定着画像(トナー
画像)を被記録材面に永久固着画像として加熱定着させ
る定着装置としては熱ローラ方式の装置が広く用いられ
ていた。
【0003】近年では、クイックスタートや省エネルギ
ーの観点からフィルム加熱方式が実用化されている。ま
た電磁誘導加熱方式の装置も提案されている。
【0004】a)フィルム加熱方式 フィルム加熱方式の定着装置(定着器)は、例えば特開
昭63−313182号公報・特開平2−157878
公報・特開平4−44075号公報・特開平4−204
980号公報等に提案されている。
【0005】即ち、加熱体としてのセラミックヒータ
と、加圧部材としての加圧ローラとの間に耐熱性フィル
ム(定着フィルム、定着ベルト)を挟ませて定着ニップ
部を形成させ、前記定着ニップ部の定着フィルムと加圧
ローラとの間に未定着トナー画像を形成担持させた被記
録材を導入して定着フィルムと一緒に挟持搬送させるこ
とで、定着ニップ部においてセラミックヒータの熱を定
着フィルムを介して被記録材に与え、さらに定着ニップ
部の加圧力にて未定着トナー画像を被記録材面に定着さ
せるものである。
【0006】このフィルム加熱方式の定着装置は、セラ
ミックヒータ及び定着フィルムとして低熱容量の部材を
用いてオンデマンドタイプの装置を構成することができ
る。すなわち、画像形成装置の画像形成実行時のみ熱源
としてのセラミックヒータに通電して所定の定着温度に
発熱させた状態にすれば良く、画像形成装置の電源オン
から画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く(クイ
ックスタート性)・スタンバイ時の消費電力も大幅に小
さい(省電力)等の利点がある。
【0007】b)電磁誘導を用いたフィルム加熱方式 特開平7−114276号公報には、定着フィルム自身
あるいは定着フィルムに近接させた導電性部材に渦電流
を発生させ、その時のジュール熱によって発熱させる加
熱装置が提案されている。この電磁誘導を用いたフィル
ム加熱方式は、発熱域を被加熱材に近接させることがで
きるため、セラミックヒータを用いたフィルム加熱方式
に比べ、さらなる消費エネルギーの効率向上が達成でき
る。
【0008】フィルム加熱方式あるいは電磁誘導を用い
たフィルム加熱方式の定着装置において、回転体として
の円筒状もしくはエンドレスフィルム状の定着フィルム
の駆動方法として、定着フィルム内周面を案内するフィ
ルムガイド部材(フィルム支持部材)と加圧ローラとで
圧接された定着フィルムを加圧ローラの回転駆動によっ
て従動回転させる方法(加圧ローラ駆動方式)や、逆に
駆動ローラとテンションローラによって張架されたエン
ドレスフィルム状の定着フィルムの駆動によって加圧ロ
ーラを従動回転させるもの等がある。
【0009】定着フィルム内面とフィルムガイド部材に
は、定着フィルムとフィルムガイド部材との摩擦による
回転トルクの影響を軽減するために、耐熱性グリース等
の潤滑剤を介在させる等している。フィルム加熱方式の
装置においては、特開平5−27619号に提案されて
いるように、定着フィルムとフィルムガイド部材との間
に潤滑剤(グリース)を介在させることにより定着フィ
ルムとフィルムガイド部材との間の摺動性を確保してい
た。
【0010】
【発明が解決しようとしている課題】従来のフィルム加
熱方式の定着装置では、被記録材の巻き付きジャムが発
生しやすい問題があった。特に、トナー載り量が比較的
多いフルカラー画像定着時や、比較的コシの弱い薄紙や
吸湿紙の定着時は、定着フィルムへの巻き付きジャムが
発生しやすい。
【0011】被記録材の巻き付きジャムを防止するため
に、定着ニップ通過後における被記録材の定着フィルム
との分離性を高めるために、フィルム支持部材の摺動部
よりも下流側に、摺動部の面よりも加圧ローラ側へ突出
させた段差部を設ける方法がある。この段差部で被記録
材を定着フィルムから離れる方向に矯正させて曲率分離
を行い、被記録材の分離性を確保するものである。
【0012】しかしながら、上述のような段差部は、定
着フィルム内面に付着しているグリースを定着フィルム
から削ぎ落とし、定着フィルム端部から吐き出してしま
うという問題があった。これにより、定着フィルムの摺
動抵抗が大きくなり、定着フィルムと加圧ローラ、もし
くは定着フィルムと被記録材との間でスリップが発生
し、ジャムや画像不良が発生することがあった。また、
定着器の駆動トルクが上昇するため、駆動モータの脱調
が発生することがあった。さらに、定着フィルムと摺動
部材の相性によっては定着フィルムが短い周期で動いた
り止まったりするスティックスリップが発生することが
あった。
【0013】そこで、本発明は、フィルム加熱方式や電
磁誘導を用いたフィルム加熱方式の加熱装置において、
被加熱材のフィルム状加熱部材からの分離性確保と、フ
ィルム状加熱部材端部からのグリースの吐き出しを防止
し、フィルム状加熱部材の摺動抵抗を低減させることで
スリップ防止し、駆動トルクの低減を図り、スティック
スリップの発生しない加熱装置およびこれを具備した画
像形成装置の提供を目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】本発明は下記の構成を特
徴とする加熱装置である。
【0015】(1)可撓性の移動部材と、移動部材と摺
動する摺動面を有し移動部材を支持する支持部材と、移
動部材を間に挟み支持部材とニップを形成する加圧部材
と、を有し、移動部材と加圧部材の間で被加熱材を挟持
搬送しつつ加熱する加熱装置において、前記支持部材の
前記摺動面近傍には、前記摺動面よりも前記加圧部材側
へ突出している段差部が前記支持部材長手方向に沿って
設けられており、少なくとも前記支持部材の長手方向端
部領域には段差部より突出量が小さいまたは前記摺動面
とほぼ同じ高さの切欠き部が設けられていることを特徴
とする加熱装置。
【0016】(2)前記装置は被加熱材に形成された未
定着画像を定着する定着装置として用いられるものであ
り、前記段差部の前記支持部材長手方向の配置領域は前
記定着装置の画像通過領域以上であることを特徴とする
(1)に記載の加熱装置。
【0017】(3)前記移動部材の摺動面の粗さが0.
07≦Ra≦0.5であることを特徴とする(1)に記
載の加熱装置。
【0018】(4)前記移動部材の摺動面には前記移動
部材移動方向に沿った凹凸が形成されていることを特徴
とする(1)に記載の加熱装置。
【0019】(5)前記切欠き部は、前記ニップの長手
方向における圧力分布のピーク部を含む領域に設けられ
ていることを特徴とする(1)に記載の加熱装置。
【0020】(6)前記支持部材長手方向における前記
移動部材の長さをLf、前記支持部材の長さをLs、前
記加圧部材の長さをLr、前記段差部の長さをLdとす
るとき、 Lf,Ls>Lr>Ld を満足することを特徴とする(2)に記載の加熱装置。
【0021】(7)前記段差部は前記摺動面よりも前記
移動部材移動方向下流側に設けられており、前記段差部
の高さは前記摺動面を基準に0.1mm以上1.0mm
以下であることを特徴とする(1)に記載の加熱装置。
【0022】(8)前記段差部は前記摺動面よりも前記
移動部材移動方向上流側に設けられており、前記段差部
の高さは前記摺動面を基準に0.2mm以下であること
を特徴とする(1)に記載の加熱装置。
【0023】(9)前記支持部材は前記切欠き部よりも
外側に前記摺動面よりも前記加圧部材側に突出している
第2の段差部を有することを特徴とする(1)に記載の
加熱装置。
【0024】(10)前記第2の段差部の高さは、前記
摺動面を基準に0.1mm以上1.0mm以下であるこ
とを特徴とする(9)に記載の加熱装置。
【0025】(11)前記支持部材は、前記ニップを形
成する位置に前記移動部材に対し滑り性の良い摺動部材
を有し、前記移動部材はこの摺動部材と摺動することを
特徴とする(1)に記載の加熱装置。
【0026】(12)前記移動部材と前記支持部材との
間には潤滑剤が塗布されており、前記切欠き部は前記段
差部よりも潤滑剤を掻き取る機能が小さいことを特徴と
する(1)に記載の加熱装置。
【0027】(13)前記移動部材は回転体であること
を特徴とする(1)に記載の加熱装置。
【0028】(14)前記装置は更に磁場発生手段を有
し、且つ前記移動部材は導電層を有し、磁場発生手段に
よって発生する磁場の作用により前記導電層に渦電流が
発生し、この渦電流の作用で発熱する前記移動部材から
の熱により被加熱材が加熱されることを特徴とする
(1)に記載の加熱装置。
【0029】(15)前記装置は更に通電により発熱す
るヒータを有し、被加熱材は前記移動部材を介したヒー
タからの熱により加熱されることを特徴とする(1)に
記載の加熱装置。
【0030】(16)前記加圧部材は、回転駆動される
回転体であり、前記移動部材はこの回転体から駆動を受
けて移動することを特徴とする(1)に記載の加熱装
置。
【0031】(17)前記装置は被加熱材に形成された
未定着画像を定着する定着装置であることを特徴とする
(1)に記載の加熱装置。
【0032】
【発明の実施の形態】<第1の実施形態例> (1)画像形成装置例 図19は、本実施形態にかかる画像形成装置の一例の概
略構成を示す図である。本実施形態の画像形成装置は、
電子写真プロセスを利用したカラーレーザプリンタであ
る。
【0033】かかる画像形成装置にあっては、先ず、有
機感光体やアモルファスシリコン感光体で形成された潜
像担持体たる感光ドラム101は、矢示の反時計方向に
所定の搬送速度(周速度)で回転駆動される。そして、
感光ドラム101はその回転過程で帯電ローラ等の帯電
装置102によって所定の極性及び電位の一様な帯電処
理を受ける。
【0034】次いで、その帯電処理面は、レーザ光学箱
(レーザスキャナー)110から出力されるレーザ光1
03により、目的の画像情報の走査露光処理を受ける。
レーザ光学箱110は不図示の画像読み取り装置等の画
像信号発生装置からの目的画像情報の時系列電気デジタ
ル画素信号に対応してオン又はオフに切り換えられて変
調したレーザ光103を出力し、感光ドラム101面を
走査露光する。これにより、感光ドラム101面に目的
画像情報に対応した静電潜像が形成される。このとき、
レーザ光学箱110からの出力レーザ光はミラー109
によって感光ドラム101の露光位置に偏向される。
【0035】フルカラー画像形成の場合は、目的のフル
カラー画像における第一の色分解成分画像、例えばイエ
ロー成分画像についての走査露光、潜像形成がなされ、
その潜像が4色カラー現像装置104のうちイエロー現
像器104Yの作動でイエロートナー画像として現像さ
れる。そのイエロートナー画像は感光ドラム101と中
間転写ドラム105との接触部(或いは近接部)である
一次転写部T1において中間転写ドラム105面に転写
される。中間転写ドラム105面に対するトナー画像転
写後の感光ドラム101面はクリーナ107により転写
残トナー等の付着残留物の除去を受けて清掃される。
【0036】上記のような帯電、走査露光、現像、一次
転写、清掃のプロセスサイクルが、目的のフルカラー画
像の第二の色分解成分画像(例えばマゼンタ成分画像、
マゼンタ現像器104Mが作動)、第三の色分解成分画
像(例えばシアン成分画像、シアン現像器104Cが作
動)、第四の色分解成分画像(例えば黒成分画像、黒現
像器104Bkが作動)の各色分解成分画像について順
次実行され、中間転写ドラム105面にイエロートナー
画像、マゼンタトナー画像、シアントナー画像、黒トナ
ー画像の4色のトナー画像が順次重ねて転写されて、目
的のフルカラー画像に対応したカラートナー画像が合成
形成される。
【0037】中間転写ドラム105は、金属ドラム上に
中抵抗の弾性層と高抵抗の表層を設けたもので、感光ド
ラム101に接触して或いは近接して感光ドラム101
と同じ周速度で矢示の時計方向に回転駆動され、中間転
写ドラム105の金属ドラムにバイアス電位を与えて感
光ドラム101との電位差で感光ドラム101側のトナ
ー画像を中間転写ドラム105面側に転写させる。
【0038】上記の中間転写ドラム105面に形成され
たカラートナー画像は、中間転写ドラム105と転写ロ
ーラ106との接触ニップ部である二次転写部T2にお
いて、前記二次転写部T2に不図示の給紙部から所定の
タイミングで送り込まれた被記録材Pの面に転写されて
いく。転写ローラ106は被記録材Pの背面からトナー
と逆極性の電荷を供給することで中間転写ドラム105
面側から被記録材P側へ合成カラートナー画像を順次に
一括転写する。
【0039】二次転写部T2を通過した被記録材Pは、
中間転写ドラム105面から分離されて定着手段たる定
着装置(画像加熱装置)100へ導入され、未定着トナ
ー画像が加熱定着処理されて定着トナー画像となり、機
外の不図示の排紙トレーに排出される。
【0040】被記録材Pに対するカラートナー画像転写
後の中間転写ドラム105はクリーナ108により転写
残トナーや紙粉等の付着残留物の除去を受けて清掃され
る。このクリーナ108は常時は中間転写ドラム105
に非接触状態に保持されており、中間転写ドラム105
から被記録材Pに対するカラートナー画像の二次転写実
行過程において中間転写ドラム105に接触状態に保持
される。
【0041】また、転写ローラ106も常時中間転写ド
ラム105に非接触状態に保持されており、中間転写ド
ラム105から被記録材Pに対するカラートナー画像の
二次転写実行過程において中間転写ドラム105に被記
録材Pを介して接触状態に保持される。
【0042】本実施形態例の画像形成装置は、白黒画像
などモノカラー画像のプリントモードも実行できる。ま
た両面画像プリントモード、或いは多重画像プリントモ
ードも実行できる。
【0043】両面画像プリントモードの場合は、定着装
置100を出た1面目画像プリント済みの被記録材Pは
不図示の再循環搬送機構を介して表裏反転されて再び二
次転写部T2へ送り込まれて2面に対するトナー画像転
写を受け、再度、定着装置100に導入されて2面に対
するトナー画像の定着処理を受けることで、両面画像プ
リントが出力される。
【0044】多重画像プリントモードの場合は、定着装
置100を出た1回目画像プリント済みの被記録材P
は、不図示の再循環搬送機構を介して表裏反転されずに
再び二次転写部T2へ送り込まれて1回目画像プリント
済みの面に2回目のトナー画像転写を受け、再度、定着
装置100に導入されて2回目のトナー画像の定着処理
を受けることで多重画像プリントが出力される。
【0045】(2)定着装置100の全体的な概略構成 本実施形態例における加熱装置としての定着装置100
は、加熱部材として電磁誘導発熱性の円筒状の定着フィ
ルム(定着ベルト)を用いた、加圧ローラ駆動方式、電
磁誘導加熱方式の装置である。
【0046】図1は本実施形態例における定着装置10
0の要部の横断面側面模型図、図2は要部の正面模型
図、図3は要部の縦断面正面模型図である。
【0047】この装置100は、大きく分けて円筒状の
支持部材としてのフィルムガイド部材16と、このフィ
ルムガイド部材16にルーズに外嵌させた、移動部材
(加熱部材)としての円筒状の電磁誘導発熱性の定着フ
ィルム10と、フィルムガイド部材16との間に定着フ
ィルム10を挟んでニップ部Nを形成させた、加圧部材
としての加圧ローラ30とからなる。
【0048】円筒状のフィルムガイド部材(フィルム支
持部材)16は、左右一対の横断面略半円弧状樋型半体
16aと16bとを互いに開口部を向かい合わせて組み
合わせることで円筒体を構成させてある。図1中で右側
のフィルムガイド部材半体16aの内側には、磁場発生
手段としての磁性コア17a・17b・17cと励磁コ
イル18を配設して保持させてある。
【0049】加圧部材としての加圧ローラ30は、芯金
30aと、前記芯金周りに同心一体にローラ状に成形被
覆させた、シリコーンゴム・フッ素ゴム・フッ素樹脂な
どの耐熱性・弾性材層30bとで構成されており、表層
に離型層30cを設けてある。例えば、離型層30cは
フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴ
ム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、PTFE、
FEP等の離型性かつ耐熱性のよい材料を選択すること
ができる。芯金30aの両端部を装置の不図示のシャー
シ側板金間に回転自由に軸受け保持させて配設してあ
る。
【0050】定着フィルム10を外嵌させたフィルムガ
イド部材16は加圧ローラ30の上側に配置され、フィ
ルムガイド部材16内に挿通して配設した加圧用剛性ス
テイ22の両端部と装置シャーシ側のバネ受け部材29
a・29bとの間にそれぞれ加圧バネ25a・25bを
縮設することで加圧用剛性ステイ22に押し下げ力を作
用させている。これにより、フィルムガイド部材16の
下面と加圧ローラ30の上面とが定着フィルム10を挟
んで圧接して、所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
【0051】加圧ローラ30は駆動手段M(図1)によ
り矢示の反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ
30の回転駆動により、定着ニップ部Nにおいて加圧ロ
ーラ30と定着フィルム10の外面との摩擦力で定着フ
ィルム10に回転力が作用し、定着フィルム10の内周
面が定着ニップ部Nにおいてフィルムガイド部材16の
下面に密着して摺動しながら矢示の時計方向に加圧ロー
ラ30の周速度にほぼ対応した周速度をもってフィルム
ガイド部材16の外周を回転する(加圧ローラ駆動方
式)。
【0052】定着ニップ部Nにおけるフィルムガイド部
材16の下面と定着フィルム10の内面との相互摺動摩
擦力を低減化させるために、フィルムガイド部材16の
下面の定着ニップ部Nに対応する面部分には、耐熱性・
低摩擦性の摺動部材40を配設してある。摺動部材40
は、この摺動部材の固定部材としてのフィルムガイド部
材16よりも定着フィルム10の内面との滑り性が良い
部材であり、例えばポリイミド樹脂、ガラス、アルミ
ナ、アルミナにガラスをコートしたものなどで構成する
のが好ましい。本例では、アルミナ基板にガラスをコー
トしたものを配設している。なお、摺動部材は支持部材
の一部と考えることができ、摺動部材40を省略してフ
ィルムガイド部材16の下面を滑り性の良い面に加工し
てフィルムとの摺動面にしても構わない。
【0053】この摺動部材40は、少なくとも定着ニッ
プ部Nの長さと幅に対応する長さと幅を有する帯板状あ
るいはテープ状の部材であり、本例ではフィルムガイド
部材16の下面に長手に沿って具備させた嵌め込み用の
溝部に位置決め保持させてある。さらには、耐熱性接着
剤で固定すると良い。
【0054】さらに、摺動部材40と定着フィルム10
内周面との間に潤滑剤Gを介在させ、定着フィルム10
の摺動抵抗低減を図っている。本実施形態例において
は、潤滑剤としてフッ素グリースを用いている。
【0055】定着ニップ部Nにおける定着フィルム10
摺動部近傍のフィルムガイド16部材および摺動部材4
0の構成については、後記(5)項にて詳述する。
【0056】また、図1中右側のフィルムガイド部材半
体16aの周面には、図4に示すように、その長手方向
に所定の間隔を置いて凸リブ部16cを形成具備させ、
フィルムガイド部材半体16aの周面と定着フィルム1
0の内面との接触摺動抵抗を低減させて定着フィルム1
0の回転負荷を少なくしている。このような凸リブ部1
6cは図中左側のフィルムガイド部材半体16bにも同
様に形成具備することができる。なお、凸リブ部は定着
フィルムの接触摺動抵抗を低減できればよく形状は任意
に選択できる。
【0057】23a・23bは図2に示すとおり円筒状
のフィルムガイド部材16の手前側と奥側の端部に嵌着
して配設したフランジ部材であり、定着フィルム10の
回転時に定着フィルムの端部を受けて、定着フィルム1
0のフィルムガイド部材16の長手に沿う寄り移動を規
制する役目をする。フランジ部材23a・23bは定着
フィルム10の回転に従動で回転する構成にしてもよ
い。
【0058】而して、加圧ローラ30が回転駆動され、
それに伴って定着フィルム10が回転し、励磁回路27
(図4)から励磁コイル18への給電により発生する磁
場の作用で加熱部材としての定着フィルム10が電磁誘
導発熱して定着ニップ部Nが所定の温度に立ち上がって
温調される。この状態において、不図示の画像形成手段
部から搬送された未定着トナー画像tが形成された被記
録材Pが定着ニップ部Nの定着フィルム10と加圧ロー
ラ30との間に導入され、定着ニップ部Nにおいて画像
面が定着フィルムの外面に密着して定着フィルム10と
一緒に挟持搬送されていく。
【0059】被記録材Pは定着ニップ部Nを通過する
と、定着フィルム10の外面から分離して排出搬送され
ていく。被記録材P上の加熱定着トナー画像tは定着ニ
ップNを通過後、冷却して永久固着画像となる。
【0060】本実施形態例における画像加熱定着装置1
00では、トナーtに低軟化物質を含有させたトナーを
使用したため、定着装置にオフセット防止のためのオイ
ル塗布機構を設けていないが、低軟化物質を含有させて
いないトナーを使用した場合には、オイル塗布機構を設
けても良い。また、低軟化物質を含有させたトナーを使
用した場合にもオイル塗布や冷却分離を行っても良い。
【0061】(3)磁場発生手段 磁性コア17a・17b・17cは高透磁率の部材であ
り、フェライトやパーマロイ等といったトランスのコア
に用いられる材料が良く、より好ましくは100kHz
以上でも損失の少ないフェライトを用いるのが良い。
【0062】磁場発生手段を構成する励磁コイル18
は、コイル(線輪)を構成させる導線(電線)として、
一本ずつがそれぞれ絶縁被覆された銅製の細線を複数本
束ねたもの(束線)を用い、これを複数回巻いて励磁コ
イルを形成している。本例では12回巻きで励磁コイル
を形成している。
【0063】絶縁被覆を行う被覆部材は、定着フィルム
10の発熱による熱伝導を考慮して耐熱性を有する被覆
を用いることが好ましい。例えば、アミドイミドやポリ
イミド等の被覆を用いるとよい。本実施形態例において
は、ポリイミドによる被覆を用いており耐熱温度は22
0℃である。
【0064】励磁コイル18は外部から圧力を加えて密
集度を向上させてもよい。
【0065】磁場発生手段17a・17b・17c・1
8と加圧用剛性ステイ22の間には、絶縁部材19を配
設してある。絶縁部材19の材質としては、絶縁性に優
れ、耐熱性がよいものが好ましい。例えば、フェノール
樹脂、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、
ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、ポリ
エーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンサルファイド
樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂、LCP
樹脂等を選択するとよい。
【0066】図5は、磁場発生手段によって発生される
交番磁束の発生の様子を模式的に表したものである。磁
束Cは発生した交番磁束の一部を表す。磁性コア17
a,17b,17cに導かれた交番磁束Cは、磁性コア
17aと磁性コア17bとの間、そして磁性コア17a
と磁性コア17cとの間において定着フィルム10の発
熱層1に渦電流を発生させる。この渦電流は、発熱層1
の固有抵抗によって、発熱層1にジュール熱(渦電流
損)を発生させる。
【0067】発熱量Qは発熱層1を通る磁束Cの密度に
よって決まり、図5のグラフような分布を示す。図5に
示すグラフは、縦軸が磁性コア17aの中心を0とした
角度θで表した定着フィルム10における円周方向の位
置を示し、横軸が定着フィルム10の発熱層1での発熱
量Qを示す。ここで、発熱域Hは最大発熱量をQとし、
発熱量がQ/e以上の領域と定義する(eは自然対数の
底)。これは、定着プロセスに必要な発熱量が得られる
領域である。
【0068】この定着ニップ部Nの温度は、温度検知手
段26(図1)を含む不図示の温調系により励磁コイル
18に対する電流供給が制御されることで所定の温度が
維持されるように温調される。温度検知手段26は定着
フィルム10の温度を検知するサーミスタなどの温度セ
ンサであり、本例においてはサーミスタで測定した定着
フィルム10の温度情報を基に定着ニップ部Nの温度を
制御するようにしている。
【0069】(4)定着フィルム10 図6は、本実施形態例における定着フィルム10の層構
成模型図である。
【0070】本実施形態例の定着フィルム10は、基層
となる電磁誘導発熱性の金属フィルム等でできた発熱層
1と、その外面に積層した弾性層2と、その外面に積層
した離型層3の複合構造のものである。
【0071】発熱層1と弾性層2との間の接着、弾性層
2と離型層3との間の接着のために、各層間にプライマ
ー層(図示せず)を設けてもよい。
【0072】略円筒形状である定着フィルム10におい
て、発熱層1が摺動部材40と接触する内面側であり、
離型層3が加圧ローラ若しくは記録材(被加熱材)と接
触する外面側である。
【0073】上述したように、発熱層1に交番磁束が作
用することにより、発熱層1に渦電流が発生して発熱層
1が発熱する。この熱が弾性層2、離型層3に伝達され
て、定着フィルム10全体が加熱され、定着ニップ部N
に通紙される被記録材Pを加熱してトナーt画像の加熱
定着がなされる。
【0074】a.発熱層1 発熱層1としては、磁性及び非磁性の金属を用いること
ができるが、磁性金属が好ましく用いられる。このよう
な磁性金属としては、ニッケル、鉄、強磁性ステンレ
ス、ニッケル−コバルト合金、パーマロイといった強磁
性体の金属が好ましく用いられる。又、定着フィルム1
0回転時に受ける繰り返しの屈曲応力による金属疲労を
防ぐために、ニッケル中にマンガンを添加した部材を用
いるのも良い。
【0075】発熱層1の厚さは、次の式で表される表皮
深さσ[m]より厚く、且つ200μm以下にすること
が好ましい。発熱層1の厚さをこの範囲とすれば、発熱
層1が電磁波を効率よく吸収することができるため、効
率良く発熱させることができる。
【0076】 σ=503×(ρ/fμ)1/2 …(1) ここで、fは励磁回路の周波数[Hz]、μは発熱層1
の透磁率、ρは発熱層1の固有抵抗[Ωm]である。
【0077】この表皮深さσは、電磁誘導で使われる電
磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところで
は電磁波の強度は1/e以下になっている。逆にいうと
殆どのエネルギーはこの深さまでで吸収されている(図
8に示した発熱層深さと電磁波強度の関係を参照)。
【0078】発熱層1の厚さは、より好ましくは1〜1
00μmがよい。発熱層1の厚みが上記範囲よりも薄い
場合には、ほとんどの電磁エネルギーが吸収しきれない
ため効率が悪くなる。又、発熱層1が上記範囲よりも厚
い場合には、発熱層1の剛性が高くなりすぎ、又、屈曲
性が悪くなり回転体として使用するには現実的でなくな
る。
【0079】b.弾性層2 弾性層2は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシ
リコーンゴム等の、耐熱性、熱伝導率が良い材質が好ま
しく用いられる。
【0080】弾性層2の厚さは、定着画像品質を保証す
るために10〜500μmであることが好ましい。カラ
ー画像を印刷する場合、特に写真画像等では、被記録材
P上で大きな面積に渡ってベタ画像が形成される。この
場合、被記録材Pの凹凸或いはトナー層tの凹凸に加熱
面(離型層3)が追従できないと加熱ムラが発生し、伝
熱量が多い部分と少ない部分で画像に光沢ムラが発生す
る。即ち、伝熱量が多い部分は光沢度が高く、伝熱量が
少ない部分では光沢度が低くなる。弾性層2の厚さが上
記範囲よりも小さい場合には、上記離型層3が被記録材
P或いはトナー層tの凹凸に追従しきれず、画像光沢ム
ラが発生してしまう。又、弾性層2が上記範囲よりも大
きすぎる場合には、弾性層2の熱抵抗が大きくなりす
ぎ、クイックスタートを実現するのが難しくなる。この
弾性層2の厚さは、より好ましくは50〜500μmが
良い。
【0081】弾性層2は、硬度が高すぎると被記録材P
或いはトナー層tの凹凸に追従しきれず画像光沢ムラが
発生してしまう。そこで、弾性層2の硬度としては60
゜(JIS−A)以下、より好ましくは45゜(JIS
−A)以下がよい。
【0082】弾性層2の熱伝導率λは、2.5×10-1
〜8.4×10-1W/m・℃であることが好ましい。熱
伝導率λが上記範囲よりも小さい場合には、熱抵抗が大
きすぎて、定着フィルム10の表層(離型層3)におけ
る温度上昇が遅くなる。熱伝導率λが上記範囲よりも大
きい場合には、弾性層2の硬度が高くなりすぎたり、圧
縮永久歪みが発生しやすくなる。より好ましくは3.3
×10-1〜6.3×10-1W/m・℃が良い。
【0083】c.離型層3 離型層3は、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシ
リコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、
PTFE、FEP等の離型性且つ耐熱性のよい材料を用
いることが好ましい。
【0084】離型層3の厚さは1〜100μmが好まし
い。離型層3の厚さが上記範囲よりも薄い場合には、塗
膜の塗ムラが生じ、離型性の悪い部分が発生したり、耐
久性が不足するといった問題が発生する。又、離型層3
の厚さが上記範囲よりも厚い場合には、熱伝導が悪化す
る。特に、離型層3に樹脂系の材質を用いた場合は、離
型層3の硬度が高くなりすぎて、弾性層2の効果がなく
なってしまう。
【0085】d.断熱層4 図7に示すように、定着フィルム10の構成において、
発熱層1の摺動部材40との接触面側に断熱層4を設け
てもよい。断熱層4としては、フッ素樹脂、ポリイミド
樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEE
K樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTF
E樹脂、FEP樹脂等の耐熱樹脂がよい。
【0086】断熱層4の厚さとしては10〜1000μ
mが好ましい。断熱層4の厚さが10μmよりも薄い場
合には断熱効果が得られず、又、耐久性も不足する。一
方、1000μmを超えると磁性コア17a,17b,
17c及び励磁コイル18から発熱層1までの距離が大
きくなり、磁束が十分に発熱層1に吸収されなくなる。
【0087】断熱層4は、発熱層1に発生した熱が定着
フィルム10の内側に向かわないように断熱できるの
で、断熱層1がない場合と比較して被記録材Pへの熱供
給効率が良くなる。よって、消費電力を抑えることがで
きる。
【0088】又、断熱層4を滑り性の良い材料で構成す
れば、摺動部材40と定着フィルム10との摺動抵抗を
軽減することができる。
【0089】(5)定着フィルム摺動部の構成 図9は、定着ニップ部Nにおける定着フィルム10の摺
動部近傍の横断面側面模型図である。定着フィルム10
からの紙分離性を向上させるために、フィルムガイド部
材16の摺動面側に対し、摺動部材40を凹状に配置す
ることにより、段差状の段差部50a・50bを形成さ
せている。段差状の段差部50aは、フィルムガイド部
材16に設けられた摺動部材40と定着フィルム10と
の摺動部Sよりも定着フィルム10移動方向上流側に位
置する段差部である。段差状の段差部50bは、摺動部
Sよりも定着フィルム10移動方向下流側に位置する段
差部である。
【0090】摺動部Sよりも定着フィルム10移動方向
下流側に位置する段差部50bは、紙分離性に寄与して
いる。この段差部50bの突出量hは、摺動部材40の
摺動面を基準に0.1mm以上1.0mm以下であれば
良い。この突出量hが0.1mm未満であると、紙分離
性が不十分となり、定着器における巻き付きジャムが発
生してしまう問題がある。逆に、この突出量hが1.0
mmより大きいと、定着された紙のカール量が非常に大
きくなってしまう問題がある。さらに、本実施形態例の
ように、定着フィルム10が発熱層1として金属部材を
用いている場合、突出量hが大きいほど定着フィルム1
0への屈曲応力が増大するため、金属部材の疲労破壊が
発生しやすくなる。よって、より好ましくは、突出量h
は0.5mm以下とするのが良い。本実施形態例におい
て、突出量hは0.3mmとしている。
【0091】段差部50a・50bのエッジによる定着
フィルム10の内周面への機械的ダメージを低減するた
めに、図10に示すように、段差部50a・50bのエ
ッジをR状に面取りしても良い。
【0092】図11は、摺動部Sよりも下流側に位置す
る段差部50bを、定着フィルム10移動方向下流側か
らみた縦断正面模型図である。摺動部Sよりも下流側の
段差部50bの長手幅は被記録材上のトナー画像部分を
分離するために必要な最小幅を最大画像幅とし領域Aと
して示した。領域Aよりも外側で段差がない部分(摺動
面とほぼ同じ高さの部分)を領域B(切欠き部)とし
た。領域Aと領域Bの段差の接続は定着フィルムの耐久
性を考慮して、急な段差ではなく、斜度を持たせて接続
することが可能である。また、エッジになる部分はR形
状とすることができる。領域Bでは、定着フィルム10
内周面のグリースは削ぎ落とされずに付着しているた
め、グリースは定着フィルム10の回転移動と共に摺動
部S(図9)上流側へ循環される。循環されたグリース
は再び摺動部Sへ入り込むことができる。また、領域A
から吐き出されてきたグリースも領域Bで循環するた
め、定着フィルム端部から吐き出されることなく定着フ
ィルム内に留まり、グリースとして機能させることが可
能となる。よって、定着フィルム10の摺動抵抗低減も
図ることが可能となる。
【0093】また、本実施形態例においては、領域Bは
摺動部Sよりも下流側の段差部50b(図9)に設けて
いるが、上流側の段差部50a(図9)にも設けて良
い。この場合は、定着フィルム10内周面に付着してい
るグリースは上流側の段差で削ぎ落とされる量が減少す
るため、より効率よく摺動部Sへグリースを送り込むこ
とができる。なお、領域Bは領域Aよりもグリースの掻
き取り機能が小さい構造であれば良いので、必ずしも摺
動面と同じ高さである必要はなく、領域Aよりも突出量
の小さい段差であっても良い。
【0094】さらに、図12に示すように、摺動部Sよ
りも上流側には段差部を設けずに、紙分離性に影響のあ
る下流側にだけ段差部50bを設けることも可能であ
る。この場合、摺動部Sよりも上流側において、定着フ
ィルム10内面に付着したグリースが段差部によって削
ぎ落とされることがないため、さらに定着フィルム10
の摺動抵抗を低減させることができる。
【0095】さらに、定着フィルムの内面の粗さを増す
ことで定着フィルム内面のグリースの保持力が増すた
め、摺動抵抗の低減効果を増加させることができる。定
着フィルム内面の粗さとしては、0.07≦Ra≦0.
5[μm]が好ましい。また、定着フィルムの内面のフ
ィルム移動方向に沿う凹凸(溝)を設けるとグリースは
フィルム移動方向に対して直交する方向、すなわちフィ
ルムの長手方向への移動が減少し、より定着フィルム端
部からの吐き出しに対してより効果的に作用する。
【0096】尚、本例では少なくとも画像が通過する領
域は全て摺動面よりほぼ一定の高さ突出した段差部とし
てあり、グリースの殆どはこの段差部の両端に設けた非
段差部を通り抜ける構成になっている。しかしながら、
段差部の両端に設けた非段差部だけでなく画像通過域の
段差部にスリットを設けてこのスリットの部分でもグリ
ースが容易に通過するように構成しても構わない。ただ
し、段差部に後加工でスリットを形成する場合は後加工
のコストを必要とする。また、成型時にスリットを設け
る場合には段差管理の精度が要求されコストが高くなる
ことがある。しかしながらコスト面の課題をクリアでき
るのであれば上述のようにスリットを形成しても構わな
い。
【0097】<第2の実施形態例>図13は本実施形態
例の構成説明図である。本例では、第1の実施形態例に
おいて、段差部50bの領域Bはニップ内の長手方向の
圧分布において、圧力のピーク部分を含む位置に配設し
てある。具体的にはニップ形状は中央部が6mmに対し
て端部に向かって徐々に広くなる形状で端部で7mmと
なる。そして、ニップ幅に応じて加圧ローラ端部でもっ
とも圧力が高くなるようになっている。定着フィルム内
面と摺動部材の相性によっては定着フィルムが短い周期
で動いたり止まったりするスティックスリップが発生す
る場合がある。この現象は、静摩擦力と動摩擦力の差が
大きくなりすぎることによって発生しやすくなる。ま
た、加圧力の高い部分で発生しやすくなる。本例のよう
にニップ端部の圧力の高い部分でグリースの循環を良く
することで定着フィルムと摺動部材との間に常にグリー
スが介在する状態を作り出すことが可能となる。さら
に、グリースは圧力の高い方から低い方へ流れやすいの
で、端部から中央に向かってグリースを送り込む作用が
ある。よって、静摩擦力の上昇を抑制することができ、
スティックスリップの発生を抑制することができる。
【0098】さらに、図14に示すように加圧ローラ3
0の形状を逆クラウン形状とするとグリースを端部から
中央に向かって送り込む効果をさらに増すことが可能と
なると同時に、被記録材Pを両端に引っ張る作用がある
ため紙しわにも有利となる。
【0099】さらに、図15に示すように加圧ローラ3
0の領域Bにかかる部分に1段外径の大きい部分30d
を設けることで領域Aから外側に押し出されるグリース
をせき止めることが可能となる。こちらは、1段外径の
大きい部分30dをその他の部分よりも表面の摩擦抵抗
を高くすることで定着フィルム10の搬送力を増し、ス
リップ防止の効果を増大させることが可能となる。具体
的には加圧ローラ30の離型層30cを上記の1段外径
の大きい部分30dには設けないことで離型層30cよ
りも摩擦抵抗の大きい弾性層30bを直接定着フィルム
10と接触させることが可能である。
【0100】<第3の実施形態例>本例では第1または
第2の実施形態例において、各構成部品の長手の関係
(図13ないし図15)を説明する。定着フィルム10
の長さをLf、フィルムガイド部材の長さをLs、加圧
ローラ30の長さをLr、ニップ下流の段差部50bの
領域Aの長さをLdとするとき、 Lf,Ls>Lr>Ld を満足すると、グリースの循環が良好で、定着フィルム
端部からグリースの吐き出しが発生せず良好な結果が得
られた。
【0101】Lr>Ldの関係については前述のとおり
である。
【0102】Ls>Lrは加圧ローラ端部までのニップ
部でグリースを循環させ、その外側の加圧ニップ外側に
もグリースを循環させる部分を設けることで加圧ローラ
端部より外側に吐き出されたグリースも循環することが
可能となり、フィルム端部からのグリースの吐き出しの
抑制に効果があった。
【0103】LfとLsの関係においては本発明ではど
ちらが長くても同等の効果を得ることができるが、より
好ましくはLf>Lsがよい。これは、定着フィルムが
摺動部材よりも長いことで、仮に摺動部材の端部から外
側にグリースが押し出されてもその外側では定着フィル
ムと摺動部材が接触しないためにグリースがフィルム端
部から吐き出されることがないためである。
【0104】なお、被記録材Pの幅をLp、最大トナー
画像幅をLtとした場合に、 Lp>Ld≧Lt とすることで、被記録材Pの非画像域に当たる部分の定
着フィルムの形状と最大トナー画像幅Ltの部分で、定
着フィルムから被記録材Pを分離する曲率が異なるため
に、非画像域の分離が容易に行われ、被記録材Pの分離
性能を向上させることが可能となる。
【0105】<第4の実施形態例>本実施形態例は、上
記の第1の実施形態例において、摺動部材40を用いず
に、フィルムガイド部材16を構成している。
【0106】図16は、本実施形態例における定着ニッ
プ部Nにおける定着フィルム10摺動部近傍の断面模型
図である。フィルムガイド部材16の下面が、摺動部S
にて、直接定着フィルム10の内面と摺動する構成とな
っている。
【0107】本実施形態例におけるフィルムガイド部材
16の材質としては、耐熱性に優れるものが好ましい。
例えば、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド
樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリエーテルケトン樹
脂、ポリエーテルスルフォン樹脂、ポリフェニレンサル
ファイド樹脂、LCP樹脂等といった耐熱性樹脂を選択
するとよい。さらに好ましくは、滑り性に優れるものが
良く、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂といった
フッ素樹脂や、フッ素樹脂等滑り性の良い材料を混入さ
せた耐熱性樹脂で構成すると良い。
【0108】本実施形態例においては、摺動部材40を
用いないため、低コスト化を図ることが可能である。
【0109】また、フィルムガイド部材16自体の形状
で段差部50bを形成できるので、摺動部材40とフィ
ルムガイド部材16との組み合わせによって段差部50
bを形成する第1の実施形態例の構成に比べ、段差部5
0bの突出量hの製造バラツキなどを大幅に抑えること
ができる。
【0110】当然ながら、下流側の段差部50bの構成
は定着フィルム端部からのグリースの吐き出し防止と、
定着フィルム10の摺動抵抗低減のために、第1の実施
形態例と同様の構成となっている。
【0111】その他の装置構成等は、第1の実施形態例
の定着装置100と同様であるので、再度の説明は省略
する。
【0112】<第5の実施形態例>本実施形態例におい
ては、図17に示すように定着フィルム端部からのグリ
ースの吐き出しをより効果的に防止するために、摺動部
の長手端部にグリースをせき止めるための段差50cを
設けている。この段差により確実に定着フィルム端部か
らのグリースの吐き出しを防止することが可能となる。
なお、この段差50cはエッジによる定着フィルム10
の内周面への機械的ダメージを低減するために、50
a、50bと同様にエッジ部をR形状にすることが可能
である。また、段差の高さは摺動部材40の摺動面を基
準に0.1mm以上1.0mm以下であれば良い。ま
た、ニップ下流側の段差50bよりも高ければ定着フィ
ルム端部からのグリースの吐き出し防止により効果があ
る。
【0113】<第6の実施形態例>図18は本実施形態
例の構成説明図である。本例の定着装置は、定着フィル
ム10′として電磁誘導発熱性部材を具備させていない
耐熱性フィルムを用い、フィルムガイド部材16の下面
の定着ニップ部Nに対応する面部分にはセラミックヒー
タや電磁誘導発熱部材等の加熱体41を配設してある。
定着ニップ部Nの定着フィルム10′と加圧ローラ30
との間に未定着トナー画像を形成担持させた被記録材を
導入して定着フィルム10′と一緒に挟持搬送させるこ
とで、定着ニップ部Nにおいて加熱体41の熱を定着フ
ィルム10′を介して被記録材に与え、さらに定着ニッ
プ部Nの加圧力にて未定着トナー画像を被記録材面に定
着させるものである。
【0114】その他の装置構成等は、第1〜第5の実施
形態例の定着装置100と同様であるので、再度の説明
は省略する。
【0115】<その他の実施形態例> 1)電磁誘導発熱性の定着フィルム10は、モノクロあ
るいは1パスマルチカラー画像などの加熱定着用の場合
は、弾性層2を省略した形態のものとすることもでき
る。発熱層1は樹脂に金属フィラーを混入して構成した
ものとすることもできる。発熱層単層の部材とすること
もできる。
【0116】2)定着フィルム10はエンドレスの回転
部材ではなく、例えば、ロール巻きにした長尺の有端の
ウエブ部材にし、これを繰り出して走行移動させる形態
の装置構成にすることもできる。
【0117】3)加圧部材30はローラ体に限らず、回
動ベルト型など他の形態の部材にすることもできる。ま
た、加圧部材30側からも被記録材に熱エネルギーを供
給するために、加圧部材30側にも電磁誘導加熱などの
発熱手段を設けて所定の温度に加熱温調する装置構成に
することもできる。
【0118】4)本発明の加熱装置は、実施形態例の画
像加熱定着装置としてに限らず、画像を担持した被記録
材を加熱して、つや等の表面性を改質する像加熱装置、
仮定着する像加熱装置、その他、被加熱部材の加熱乾燥
装置、加熱ラミネート装置、加熱加圧しわ取り装置な
ど、広く被加熱材を加熱処理する手段・装置として利用
できる。
【0119】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、フ
ィルム状の加熱部材と、加熱部材を支持する支持部材
と、加熱部材を挟んで前記支持部材に当接する加圧部材
とを有し、加熱部材は支持部材に対して摺動して移動
し、加熱部材と加圧部材との当接によって形成されるニ
ップ部において被加熱材を挟持搬送して加圧および加熱
する加熱装置において、被加熱材の加熱部材からの分離
性向上を図りつつ、フィルム端部からのグリースの吐き
出しを防止し、フィルムの摺動抵抗を低減することで駆
動トルクを低減し、駆動トルクの低減し、スリップおよ
びスティックスリップの防止を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 第1の実施形態例の定着装置の要部の横断面
側面模型図
【図2】 同じく要部の正面模型図
【図3】 同じく要部の縦断正面模型図
【図4】 内部に磁場発生手段を配設支持させた右側の
フィルムガイド部材半体の斜視模型図
【図5】 磁場発生手段と発熱量Qの関係を示した図
【図6】 電磁誘導発熱性の定着フィルムの層構成模型
図(その1)
【図7】 電磁誘導発熱性の定着フィルムの層構成模型
図(その2)
【図8】 発熱層深さと電磁波強度の関係を示したグラ
【図9】 定着フィルム摺動部近傍の横断面側面模型図
【図10】 段差部の形状説明図(その1)
【図11】 定着フィルム移動方向下流側からみた段差
部の縦断正面模型図
【図12】 段差部の形状説明図(その2)
【図13】 長手寸法の関係および加圧ローラ形状の説
明図(その1)
【図14】 長手寸法の関係および加圧ローラ形状の説
明図(その2)
【図15】 長手寸法の関係および加圧ローラ形状の説
明図(その3)
【図16】 第4の実施形態例の定着装置の段差部の形
状説明図
【図17】 第5の実施形態例の定着装置の段差部の形
状説明図
【図18】 第6の実施形態例の定着装置の段差部の形
状説明図
【図19】 第1の実施形態例の画像形成装置の概略構
成模型図
【符号の説明】
1 発熱層 2 弾性層 3 離型層 4 断熱層 10 定着フィルム(加熱部材,円筒状フィルム) 16 フィルムガイド部材(支持部材) 17,18,27 磁性コア,励磁コイル,励磁回路
(磁場発生手段) 26 温度検知素子 30 加圧ローラ(加圧部材) 40 摺動部材 50 段差部 100 定着装置(加熱装置) N 定着ニップ部(ニップ領域) P 被記録材 S 摺動部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 鶴谷 貴明 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キヤ ノン株式会社内 Fターム(参考) 2H033 AA16 AA47 BA08 BA11 BA20 BA21 BA25 BE03 BE06 3K059 AB19 AD39 CD52 CD72

Claims (17)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 可撓性の移動部材と、移動部材と摺動す
    る摺動面を有し移動部材を支持する支持部材と、移動部
    材を間に挟み支持部材とニップを形成する加圧部材と、
    を有し、移動部材と加圧部材の間で被加熱材を挟持搬送
    しつつ加熱する加熱装置において、 前記支持部材の前記摺動面近傍には、前記摺動面よりも
    前記加圧部材側へ突出している段差部が前記支持部材長
    手方向に沿って設けられており、少なくとも前記支持部
    材の長手方向端部領域には段差部より突出量が小さいま
    たは前記摺動面とほぼ同じ高さの切欠き部が設けられて
    いることを特徴とする加熱装置。
  2. 【請求項2】 前記装置は被加熱材に形成された未定着
    画像を定着する定着装置として用いられるものであり、
    前記段差部の前記支持部材長手方向の配置領域は前記定
    着装置の画像通過領域以上であることを特徴とする請求
    項1に記載の加熱装置。
  3. 【請求項3】 前記移動部材の摺動面の粗さが0.07
    ≦Ra≦0.5であることを特徴とする請求項1に記載
    の加熱装置。
  4. 【請求項4】 前記移動部材の摺動面には前記移動部材
    移動方向に沿った凹凸が形成されていることを特徴とす
    る請求項1に記載の加熱装置。
  5. 【請求項5】 前記切欠き部は、前記ニップの長手方向
    における圧力分布のピーク部を含む領域に設けられてい
    ることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
  6. 【請求項6】 前記支持部材長手方向における前記移動
    部材の長さをLf、前記支持部材の長さをLs、前記加
    圧部材の長さをLr、前記段差部の長さをLdとすると
    き、 Lf,Ls>Lr>Ld を満足することを特徴とする請求項2に記載の加熱装
    置。
  7. 【請求項7】 前記段差部は前記摺動面よりも前記移動
    部材移動方向下流側に設けられており、前記段差部の高
    さは前記摺動面を基準に0.1mm以上1.0mm以下
    であることを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
  8. 【請求項8】 前記段差部は前記摺動面よりも前記移動
    部材移動方向上流側に設けられており、前記段差部の高
    さは前記摺動面を基準に0.2mm以下であることを特
    徴とする請求項1に記載の加熱装置。
  9. 【請求項9】 前記支持部材は前記切欠き部よりも外側
    に前記摺動面よりも前記加圧部材側に突出している第2
    の段差部を有することを特徴とする請求項1に記載の加
    熱装置。
  10. 【請求項10】 前記第2の段差部の高さは、前記摺動
    面を基準に0.1mm以上1.0mm以下であることを
    特徴とする請求項9に記載の加熱装置。
  11. 【請求項11】 前記支持部材は、前記ニップを形成す
    る位置に前記移動部材に対し滑り性の良い摺動部材を有
    し、前記移動部材はこの摺動部材と摺動することを特徴
    とする請求項1に記載の加熱装置。
  12. 【請求項12】 前記移動部材と前記支持部材との間に
    は潤滑剤が塗布されており、前記切欠き部は前記段差部
    よりも潤滑剤を掻き取る機能が小さいことを特徴とする
    請求項1に記載の加熱装置。
  13. 【請求項13】 前記移動部材は回転体であることを特
    徴とする請求項1に記載の加熱装置。
  14. 【請求項14】 前記装置は更に磁場発生手段を有し、
    且つ前記移動部材は導電層を有し、磁場発生手段によっ
    て発生する磁場の作用により前記導電層に渦電流が発生
    し、この渦電流の作用で発熱する前記移動部材からの熱
    により被加熱材が加熱されることを特徴とする請求項1
    に記載の加熱装置。
  15. 【請求項15】 前記装置は更に通電により発熱するヒ
    ータを有し、被加熱材は前記移動部材を介したヒータか
    らの熱により加熱されることを特徴とする請求項1に記
    載の加熱装置。
  16. 【請求項16】 前記加圧部材は、回転駆動される回転
    体であり、前記移動部材はこの回転体から駆動を受けて
    移動することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
  17. 【請求項17】 前記装置は被加熱材に形成された未定
    着画像を定着する定着装置であることを特徴とする請求
    項1に記載の加熱装置。
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