JP2005338501A - 加熱装置 - Google Patents

加熱装置 Download PDF

Info

Publication number
JP2005338501A
JP2005338501A JP2004158058A JP2004158058A JP2005338501A JP 2005338501 A JP2005338501 A JP 2005338501A JP 2004158058 A JP2004158058 A JP 2004158058A JP 2004158058 A JP2004158058 A JP 2004158058A JP 2005338501 A JP2005338501 A JP 2005338501A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
fixing
sliding
layer
sliding member
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2004158058A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005338501A5 (ja
Inventor
Masuaki Saito
益朗 斎藤
Satoshi Sugimoto
聡 杉本
Tomonori Shida
仕田  知経
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Canon Inc
Original Assignee
Canon Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Canon Inc filed Critical Canon Inc
Priority to JP2004158058A priority Critical patent/JP2005338501A/ja
Publication of JP2005338501A publication Critical patent/JP2005338501A/ja
Publication of JP2005338501A5 publication Critical patent/JP2005338501A5/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Abstract

【課題】移動部材とこれを支持する支持部材との間の摺動抵抗を安定して小さくし、移動部材と被加熱材間のスリップやスティクスリップの発生を低減して、長期間にわたり移動部材の駆動トルクの低トルク状態を維持する。
【解決手段】可撓性の移動部材10と、前記移動部材と摺動する摺動部を有し前記移動部材を支持する支持部材16と、前記移動部材を間に挟み前記支持部材の摺動部とニップNを形成する加圧部材30とを有し、前記ニップで被加熱材を挟持搬送して該被加熱材を加熱する加熱装置において、前記支持部材は、前記摺動部に、少なくとも前記移動部材と摺動する面をPTFEシート41で覆った摺動部材40を有する。
【選択図】図8

Description

本発明は、電子写真方式或いは静電記録方式の画像形成装置に搭載される加熱定着器として用いれば好適な加熱装置に関する。
便宜上、従来の加熱装置を、複写機・プリンタ等の画像形成装置に具備させ、トナー画像を被記録材に加熱定着させる像加熱装置(定着装置)を例にして説明する。
画像形成装置において、電子写真プロセス・静電記録プロセス・磁気記録プロセス等の適宜の画像形成プロセス手段部で被記録材(転写材シート・エレクトロファックスーシート・静電記録紙・OHPシート・印刷用紙・フォーマット紙など)に転写方式あるいは直接方式にて形成担持させた目的の画像情報の未定着画像(トナー画像)を被記録材面に永久固着画像として加熱定着させる定着装置としては熱ローラ方式の装置が広く用いられていた。
近年では、クイックスタートや省エネルギーの観点からフィルム加熱方式の装置が実用化されている。また電磁誘導加熱方式の装置も提案されている。
a)フィルム加熱方式
フィルム加熱方式の定着装置(定着器)は、特許文献1〜4等に提案されている。即ち、加熱体としてのセラミックヒータと、加圧部材としての加圧ローラとの間に可撓性の移動部材としての耐熱性フィルム(定着フィルム、定着ベルト)を挟ませてニップ部(定着ニップ部、加熱ニップ部)を形成させ、前記ニップ部の定着フィルムと加圧ローラとの間に未定着トナー画像を形成担持させた被記録材(被加熱材)を導入して定着フィルムと一緒に挟持搬送させることで、ニップ部においてセラミックヒータの熱を定着フィルムを介して被記録材に与え、さらにニップ部の加圧力にて未定着トナー画像を被記録材面に定着させるものである。
このフィルム加熱方式の定着装置は、セラミックヒータ及び定着フィルムとして低熱容量の部材を用いてオンデマンドタイプの装置を構成することができる。すなわち、画像形成装置の画像形成実行時のみ熱源としてのセラミックヒータに通電して所定の定着温度に発熱させた状態にすれば良く、画像形成装置の電源オンから画像形成実行可能状態までの待ち時間が短く(クイックスタート性)・スタンバイ時の消費電力も大幅に小さい(省電力)等の利点がある。
b)電磁誘導を用いたフィルム加熱方式
特許文献5には、定着フィルム自身の、あるいは定着フィルムに近接させた導電性部材に渦電流を発生させ、その時のジュール熱によって発熱させる加熱装置が提案されている。この電磁誘導式のフィルム加熱方式は、発熱域を被記録材に近接させることができるため、セラミックヒータを用いたフィルム加熱方式に比べ、さらなる消費エネルギーの効率アップが達成できる。
上記のフィルム加熱方式あるいは電磁誘導を用いたフィルム加熱方式の定着装置において、可撓性の移動部材たる円筒状もしくはエンドレスフィルムの駆動方法としては、定着フィルム内周面を案内するフィルムガイド(支持部材)と加圧ローラとで圧接された定着フィルムを加圧ローラの回転駆動によって従動回転させる方法(加圧ローラ駆動方式)や、逆に駆動ローラとテンションローラによって張架されたエンドレスフィルム状の駆動によって加圧ローラを従動回転させる方法(加圧ローラ従動方式)等がある。
定着フィルム内面とフィルムガイドには、定着フィルムとフィルムガイドとの摩擦による回転トルクの影響を軽減するために、耐熱性グリース等の潤滑剤を介在させる、あるいは良潤滑性で高熱伝導率のセラミックスである六方晶窒化ホウ素もしくはグラファイトを摺動部材として用いる、あるいは該摺動部材の表面にガラスをコートする等している。
フィルム加熱方式の定着装置においては、特許文献6に提案されているように、定着フィルムとフィルムガイドとの間に潤滑剤(グリース)を介在させることにより、定着フィルムとフィルムガイドとの間の摺動性を確保していた。
特開昭63−313182号公報 特開平2−157878号公報 特開平4−44075号公報 特開平4−204980号公報 特開平7−114276号公報 特開平5−27619号公報
ところで、カラー画像形成装置において、被加熱材たるOHTフィルムや光沢紙等の特殊紙にプリントを行う場合、トナー像表面の平滑性を向上させるため、プリントスピードを通常プリント時よりも遅くしてゆっくりと定着を行うことによって、定着ニップ内により多くの熱量を与えるようにしている。
このような低速プリント時においては、摺動性を確保するために塗布したグリースの粘性抵抗が高くなって駆動負荷が上昇することや、定着フィルムがゆっくり移動することによって摺動部材と定着フィルムの密着性が増して、グリースが両者の界面に入っていきにくくなる。その場合、光沢紙やOHTフィルム表面と定着フィルム表面の間にスリップが生じて、トナー画像の乱れを誘発し易い。また完全にスリップとならないまでも、定着フィルム表面と光沢紙やOHTフィルム表面間で発生する微小な駆動ムラによって、定着フィルム内面と摺動部材間にビビリを引き起こし、スティックスリップと呼ばれる変音を発生させる事がある。
また、定着装置を使用しつづけていると、定着ニップ形成のための加圧力により、グリースが定着フィルムと摺動部材との間から掃き出されてしまい、定着ニップ部で定着フィルムが摺動するフィルムガイドの摺動部にはほとんど残らなくなり、定着フィルムとフィルムガイドとの摩擦が大きくなって定着フィルムの回転トルクの高トルク化を招くことが予想される。
本発明は、移動部材とこれを支持する支持部材との間の摺動抵抗を安定して小さくでき、移動部材と被加熱材間のスリップやスティクスリップの発生を低減できて、長期間にわたり移動部材の駆動トルクの低トルク状態を維持することのできる加熱装置を提供しようとするものである。
本発明に係る加熱装置は下記の構成を特徴とする。
(1)可撓性の移動部材と、前記移動部材と摺動する摺動部材と、前記移動部材を間に挟み前記摺動部材とニップを形成する加圧部材とを有し、前記ニップで被加熱材を挟持搬送して該被加熱材を加熱する加熱装置において、
前記摺動部材は、少なくとも前記移動部材と摺動する面にPTFEフィルムを有することを特徴とする加熱装置。
(2)前記摺動部材の少なくとも前記移動部材と摺動する面はガラス層を介して前記PTFEフィルムを有することを特徴とする(1)に記載の加熱装置。
(3)前記PTFEフィルムは、PTFE樹脂層と、接着層を有し、前記摺動部材は、金属、セラミック、グラファイトから選ばれた部材であり、前記PTFEシートは前記接着層によって前記摺動部材に取り付けられていることを特徴とする(1)または(2)に記載の加熱装置。
(4)前記PTFEフィルムのPTFE樹脂層の厚みが50μm乃至300μmであることを特徴とする(3)に記載の加熱装置。
(5)前記PTFEフィルムは、前記摺動部材の前記移動部材と摺動する面に加え、少なくとも前記移動部材の移動方向上流側の摺動部材端面から前記移動部材と摺動する面の裏側まで回り込んでいることを特徴とする(1)乃至(4)のいずれかに記載の加熱装置。
(6)前記移動部材の前記摺動部材と摺動する表面がポリイミド樹脂層であることを特徴とする(1)乃至(5)のいずれかに記載の加熱装置。
(7)前記移動部材の前記ポリイミド樹脂層にはチッ化ホウ素、マイカ粒子、フッ素樹脂のうちの少なくとも一つの微小粒子が分散していることを特徴とする(6)に記載の加熱装置。
(8)前記装置はさらに磁場発生手段を有し、前記移動部材は前記磁場発生手段からの発生磁場の作用で発熱する金属層を有することを特徴とする(1)乃至(7)のいずれかに記載の加熱装置。
(9)前記装置は更に、前記摺動部材を長手方向に亘って支持する支持部材を有することを特徴とする(1)乃至(8)のいずれかに記載の加熱装置。
本発明によれば、移動部材を支持する支持部材の摺動部において摺動部材の前記移動部材と摺動する面をPTFEフィルムで覆うことで、移動部材と支持部材との間の摺動抵抗を安定して小さくでき、移動部材と被加熱材間のスリップやスティクスリップの発生を低減できて、長期間にわたり移動部材の駆動トルクの低トルク状態を維持することが可能となる。
以下、本発明の最良の実施形態を添付図面に基づいて詳しく説明する。
(1)画像形成装置例
図1は本発明の加熱装置を像加熱装置(定着装置)として適用した画像形成装置の一例の概略構成図である。本例の画像形成装置は電子写真カラープリンタである。
図において、101は有機感光体やアモルファスシリコン感光体でできた感光体ドラム(像担持体)であり、矢示の反時計方向に所定のプロセススピード(周速度)で回転駆動される。感光体ドラム101はその回転過程で帯電ローラ等の帯電装置102で所定の極性・電位の一様な帯電処理を受ける。
次いでその帯電処理面にレーザ光学箱(レーザスキャナー)110から出力されるレーザ光103による、目的の画像情報の走査露光処理を受ける。
レーザ光学箱110は不図示の画像読み取り装置等の画像信号発生装置からの目的画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調(オン/オフ)したレーザ光103を出力して回転感光体ドラム101面に走査露光した目的画像情報に対応した静電潜像を形成する。
109はレーザ光学箱110からの出力レーザ光を感光体ドラム101の露光位置に偏向させるミラーである。
フルカラー画像形成の場合は、目的のフルカラー画像の第1の色分解成分面像、例えばイエロー成分画像についての走査露光・潜像形成がなされ、その潜像が4色カラー現像装置104のうちのイエロー現像器104Yの作動でイエロートナー画像として現像される。そのイエロートナー画像は感光体ドラム101と該感光体ドラムと反対方向に回転する中間転写体ドラム105との接触部(或いは近接部)である1次転写部T1において該中間転写体ドラムの表面に転写される。
中間転写体ドラム105面に対するトナー画像転写後の回転感光体ドラム101面はクリーナ107により転写残りトナー等の付着残留物の除去を受けて清掃される。
前記のような帯電・走査露光・現像・一次転写・清掃のプロセスサイクルが、目的のフルカラー画像の第2の色分解成分画像(例えばマゼンタ成分画像、マゼンタ現像器104Mが作動)、第3の色分解成分画像(例えばシアン成分画像、シアン現像器104Cが作動)、第4の色分解成分画像(例えば黒成分画像、黒現像器104BKが作動)の各色分解成分画像について順次実行され、中間転写体ドラム105面にイエロートナー画像・マゼンタトナー画像・シアントナー画像・黒トナー画像の都合4色のトナー画像が順次重ねて転写されて、目的のフルカラー画像に対応したカラートナー画像が合成形成される。
中間転写体ドラム105は、金属ドラム上に中抵抗の弾性層と高抵抗の表層を有するもので、感光体ドラム101に接触して或いは近接して感光体ドラム101と略同じ周速度で矢示の時計方向に回転駆動され、中間転写体ドラム105の金属ドラム105aにバイアス電位を与えて感光体ドラム101との電位差で感光体ドラム101側のトナー画像を前記中間転写体ドラム105面に転写させる。
上記の回転中間転写体ドラム105面に合成形成されたカラートナー画像は、前記回転中間転写体ドラム105と転写ローラ106との接触ニップ部である二次転写部T2において、前記二次転写部T2に不図示の給紙部から所定のタイミングで送り込まれた被加熱材としての被記録材Pの面に転写されていく。
転写ローラ106は被記録材Pの背面からトナーと逆極性の電荷を供給することで中間転写体ドラム105面側から被記録材P側へ合成カラートナー画像を順次に一括転写する。
二次転写部T2を通過した被記録材Pは中間転写体ドラム105の面から分離されて像加熱装置(定着装置)100へ導入され、未定着トナー画像の加熱定着処理を受けてカラー画像形成物として機外の不図示の排紙トレーに排出される。
被記録材Pに対するカラートナー画像転写後の回転中間転写体ドラム105はクリーナ108により転写残りトナー・紙粉等の付着残留物の除去を受けて清掃される。
このクリーナ108は常時は中間転写体ドラム105に非接触状態に保持されており、中間転写体ドラム105から被記録材Pに対するカラートナー画像の二次転写実行過程において中間転写体ドラム105に接触状態に保持される。
また転写ローラ106も常時は中間転写体ドラム105に非接触状態に保持されており、中間転写体ドラム105から被記録材Pに対するカラートナー画像の二次転写実行過程において中間転写体ドラム105に被記録材Pを介して接触状態に保持される。
本実施例の画像形成装置は、白黒画像などモノカラー画像のプリントモードも実行できる。また両面画像プリントモード、或いは多重画像プリントモードも実行できる。
両面画像プリントモードの場合は、定着装置100を出た1面目画像プリント済みの被記録材Pは不図示の再循環搬送機構を介して表裏反転されて再び二次転写部T2へ送り込まれて2面に対するトナー画像転写を受け、再度、定着装置100に導入されて2面に対するトナー画像の定着処理を受けることで、両面画像プリントが出力される。
多重画像プリントモードの場合は、定着装置100を出た1面目画像プリント済みの被記録材Pは不図示の再循環搬送機構を介して表裏反転されずに再び二次転写部T2へ送り込まれて1面目画像プリント済みの面に2回目のトナー画像転写を受け、再度、像加熱装置100に導入されて2回目のトナー画像の定着処理を受けることで、多重画像プリントが出力される。
また、本実施例の画像形成装置では、OHTフィルムや光沢紙等の特殊紙におけるプリントモード(OHTモード、グロスモード)も実行できる。
(2)像加熱装置(定着装置)100
本実施例における像加熱装置としての定着装置100は、加熱部材として電磁誘導発熱性の円筒状の定着フィルム(定着ベルト)を用いた、加圧ローラ駆動方式、電磁誘導加熱方式の装置である。
図2は上記定着装置100の要部の横断模型図、図3はその要部の正面模型図、図4はその要部の縦断模型図である。図5は内部に磁場発生手段を配設支持させた右側のフィルムガイド部材の斜視模型図である。
この装置100は、大きく分けて円筒状の支持部材としてのフィルムガイド部材16と、このフィルムガイド部材16にルーズに外嵌させた、移動部材(加熱部材)としての円筒状の電磁誘導発熱性の定着フィルム10と、フィルムガイド部材16との間に定着フィルム10を挟んでニップ部Nを形成させた、加圧部材としての加圧ローラ30とからなる。
円筒状のフィルムガイド部材(フィルム支持部材)16は、左右一対の横断面略半円弧状樋型半体16aと16bとを互いに開口部を向かい合わせて組み合わせることで円筒体を構成させてある。図2中で右側のフィルムガイド部材半体16aの内側には、磁場発生手段としての磁性コア17a・17b・17cと励磁コイル18を配設して保持させてある。
加圧部材としての加圧ローラ30は、芯金30aと、前記芯金周りに同心一体にローラ状に成形被覆させた、シリコーンゴム・フッ素ゴム・フッ素樹脂などの耐熱性・弾性材層30bとで構成されており、表層に離型層30cを設けてある。例えば、離型層30cはフッ素樹脂、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム、PFA、PTFE、FEP等の離型性かつ耐熱性のよい材料を選択することができる。芯金30aの両端部を装置の不図示のシャーシ側板金間に回転自由に軸受け保持させて配設してある。
定着フィルム10を外嵌させたフィルムガイド部材16は加圧ローラ30の上側に配置され、フィルムガイド部材16内に挿通して配設した加圧用剛性ステイ22の両端部と装置シャーシ側のバネ受け部材29a・29bとの間にそれぞれ加圧バネ25a・25bを縮設することで加圧用剛性ステイ22に押し下げ力を作用させている。これにより、フィルムガイド部材16の下面と加圧ローラ30の上面とが定着フィルム10を挟んで圧接して、所定幅の定着ニップ部Nが形成される。
加圧ローラ30は駆動手段M(図2)により矢示の反時計方向に回転駆動される。この加圧ローラ30の回転駆動により、定着ニップ部Nにおいて加圧ローラ30と定着フィルム10の外面との摩擦力で定着フィルム10に回転力が作用し、定着フィルム10の内周面が定着ニップ部Nにおいてフィルムガイド部材16の下面に密着して摺動しながら矢示の時計方向に加圧ローラ30の周速度にほぼ対応した周速度をもってフィルムガイド部材16の外周を回転する(加圧ローラ駆動方式)。
定着ニップ部Nにおけるフィルムガイド部材16の下面と定着フィルム10の内面との相互摺動摩擦力を低減化させるために、フィルムガイド部材16の下面の定着ニップ部Nに対応する面部分には、耐熱性・低摩擦性の摺動部材40を配設してある。摺動部材40は、この摺動部材の固定部材としてのフィルムガイド部材16よりも定着フィルム10の内面との滑り性が良い部材であり、例えば金属、セラミック、グラファイトなどの材料から適切なものが選ばれる。好ましくはポリイミド樹脂、ガラス、アルミナなどで構成するのがよい。本例では、アルミナ基板を用いている。
この摺動部材40は、少なくとも定着ニップ部Nの長さと幅に対応する長さと幅を有する帯板状あるいはテープ状の部材であり、本例ではフィルムガイド部材16の下面に長手に沿って具備させた嵌め込み用の溝部に位置決め保持させてある。さらには、耐熱性接着剤で固定すると良い。
さらに、摺動部材40と定着フィルム10内周面との間に潤滑剤を介在させ、定着フィルム10の摺動抵抗低減を図っている。本実施例においては、潤滑剤としてフッ素グリースを用いている。
定着ニップ部Nにおける定着フィルム10摺動部近傍のフィルムガイド16部材および摺動部材40の構成については、後記(6)項にて詳述する。
また、図2中右側のフィルムガイド部材半体16aの周面には、図5に示すように、その長手方向に所定の間隔を置いて凸リブ部16eを形成具備させ、フィルムガイド部材半体16aの周面と定着フィルム10の内面との接触摺動抵抗を低減させて定着フィルム10の回転負荷を少なくしている。このような凸リブ部16eは図中左側のフィルムガイド部材半体16bにも同様に形成具備することができる。なお、凸リブ部は定着フィルムの接触摺動抵抗を低減できればよく形状は任意に選択できる。
23a・23bは図2に示すとおり円筒状のフィルムガイド部材16の手前側と奥側の端部に嵌着して配設したフランジ部材であり、定着フィルム10の回転時に定着フィルムの端部を受けて、定着フィルム10のフィルムガイド部材16の長手に沿う寄り移動を規制する役目をする。フランジ部材23a・23bは定着フィルム10の回転に従動で回転する構成にしてもよい。
而して、加圧ローラ30が回転駆動され、それに伴って定着フィルム10が回転し、励磁回路27(図5)から励磁コイル18への給電により発生する磁場の作用で加熱部材としての定着フィルム10が電磁誘導発熱して定着ニップ部Nが所定の温度に立ち上がって温調される。この状態において、不図示の画像形成手段部から搬送された未定着トナー画像tが形成された被記録材Pが定着ニップ部Nの定着フィルム10と加圧ローラ30との間に導入され、定着ニップ部Nにおいて画像面が定着フィルムの外面に密着して定着フィルム10と一緒に挟持搬送されていく。
被記録材Pは定着ニップ部Nを通過すると、定着フィルム10の外面から分離して排出搬送されていく。被記録材P上の加熱定着トナー画像tは定着ニップNを通過後、冷却して永久固着画像となる。
本実施例における画像加熱定着装置100では、トナーtに低軟化物質を含有させたトナーを使用したため、定着装置にオフセット防止のためのオイル塗布機構を設けていないが、低軟化物質を含有させていないトナーを使用した場合には、オイル塗布機構を設けても良い。また、低軟化物質を含有させたトナーを使用した場合にもオイル塗布や冷却分離を行っても良い。
(3)磁場発生手段
磁性コア17a・17b・17cは高透磁率の部材であり、フェライトやパーマロイ等といったトランスのコアに用いられる材料が良く、より好ましくは100kHz以上でも損失の少ないフェライトを用いるのが良い。
磁場発生手段を構成する励磁コイル18は、コイル(線輪)を構成させる導線(電線)として、一本ずつがそれぞれ絶縁被覆された銅製の細線を複数本束ねたもの(束線)を用い、これを複数回巻いて励磁コイルを形成している。本例では10ターン巻いて励磁コイル18を形成している。
絶縁被覆を行う被覆部材は、定着フィルム10の発熱による熱伝導を考慮して耐熱性を有する被覆を用いることが好ましい。例えば、アミドイミドやポリイミド等の被覆を用いるとよい。本実施例においては、ポリイミドによる被覆を用いており耐熱温度は220℃である。
励磁コイル18は外部から圧力を加えて密集度を向上させてもよい。
磁場発生手段17a・17b・17c・18と加圧用剛性ステイ22の間には、絶縁部材19を配設してある。絶縁部材19の材質としては、絶縁性に優れ、耐熱性がよいものが好ましい。例えば、フェノール樹脂、フッ素樹脂(PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂)、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂(ポリエーテルケトン樹脂)、PES樹脂(ポリエーテルスルフォン樹脂)、PPS樹脂(ポリフェニレンサルファイド樹脂)、LCP樹脂等を選択するとよい。
図6は磁場発生手段によって発生される交番磁束の発生の様子を模式的に表した図であり、(a)は定着フィルム10の後述する電磁誘導発熱層1及び磁性コア17a・17b・17cに導かれた交番磁束Cの状態図、(b)はその交番磁束の分布を表すグラフ図である。
磁性コア17a・17b・17cに導かれた交番磁束Cは定着フィルム10の電磁誘導発熱層1に渦電流を発生させる。この渦電流は電磁誘導発熱層1の固有抵抗によって電磁誘導発熱層1にジュール熱(渦電流損)を発生させる。
ここでの発熱量Qは電磁誘導発熱層1を通る磁束の密度によって決まり、図6(b)のグラフような分布を示す。縦軸は定着フィルム10の電磁誘導発熱層1での発熱量Qを表す。ここで、発熱域Hは最大発熱量をQとした場合、発熱量がQ/e以上の領域と定義する。これは、定着に必要な発熱量が得られる領域である。
定着ニップ部Nの温度は、不図示の温度検知手段を含む温調系により励磁コイル18に対する電流供給が制御されることで、所定の温度が維持されるように温調される。本例では、温度検知手段としてサーミスタなどの温度センサで測定した定着フィルム10の温度情報をもとに定着ニップ部Nの温度を制御するようにしている。
(4)定着フィルム10
図7は、本実施例における定着フィルム10の層構成模型図である。
本実施例の定着フィルム10は、基層となる電磁誘導発熱性の金属フィルム等でできた発熱層1と、その外面に積層した弾性層2と、その外面に積層した離型層3の複合構造のものである。
発熱層1と弾性層2との間の接着、弾性層2と離型層3との間の接着のために、各層間にプライマー層(図示せず)を設けてもよい。
略円筒形状である定着フィルム10において、発熱層1が摺動部材40と接触する内面側にあり、離型層3が加圧ローラ若しくは被記録材(被加熱材)Pと接触する外面側にある。
上述したように、発熱層1に交番磁束が作用することにより、発熱層1に渦電流が発生して発熱層1が発熱する。この熱が弾性層2、離型層3に伝達されて、定着フィルム10全体が加熱され、定着ニップ部Nに通紙される被記録材Pを加熱してトナー画像の加熱定着がなされる。
a.発熱層1
発熱層1としては、磁性及び非磁性の金属を用いることができるが、磁性金属が好ましく用いられる。このような磁性金属としては、ニッケル、鉄、強磁性ステンレス、ニッケル−コバルト合金、パーマロイといった強磁性体の金属が好ましく用いられる。又、定着フィルム10回転時に受ける繰り返しの屈曲応力による金属疲労を防ぐために、ニッケル中にマンガンを添加した部材を用いるのも良い。
発熱層1の厚さは、次の式で表される表皮深さσ[m]より厚く、且つ200μm以下にすることが好ましい。発熱層1の厚さをこの範囲とすれば、発熱層1が電磁波を効率よく吸収することができるため、効率良く発熱させることができる。
σ=503×(ρ/fμ)1/2
ここで、fは励磁回路の周波数[Hz]、μは発熱層1の透磁率、ρは発熱層1の固有抵抗[Ωm]である。
この表皮深さσは、電磁誘導で使われる電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になっている。逆にいうと殆どのエネルギーはこの深さまでで吸収されている。
発熱層1の厚さは、より好ましくは1〜100μmがよい。発熱層1の厚みが上記範囲よりも薄い場合には、ほとんどの電磁エネルギーが吸収しきれないため効率が悪くなる。又、発熱層1が上記範囲よりも厚い場合には、発熱層1の剛性が高くなりすぎ、又、屈曲性が悪くなり加熱回転体として使用するには現実的でなくなる。
b.弾性層2
弾性層2は、シリコーンゴム、フッ素ゴム、フルオロシリコーンゴム等の、耐熱性、熱伝導率が良い材質が好ましく用いられる。
弾性層2の厚さは、定着画像品質を保証するために10〜500μmであることが好ましい。カラー画像を印刷する場合、特に写真画像等では、被記録材P上で大きな面積に渡ってベタ画像が形成される。この場合、被記録材Pの凹凸或いはトナー層tの凹凸に加熱面(離型層3)が追従できないと加熱ムラが発生し、伝熱量が多い部分と少ない部分で画像に光沢ムラが発生する。即ち、伝熱量が多い部分は光沢度が高く、伝熱量が少ない部分では光沢度が低くなる。弾性層2の厚さが上記範囲よりも小さい場合には、上記離型層3が被記録材P或いはトナー層tの凹凸に追従しきれず、画像光沢ムラが発生してしまう。また、弾性層2が上記範囲よりも大きすぎる場合には、弾性層2の熱抵抗が大きくなりすぎ、クイックスタートを実現するのが難しくなる。この弾性層2の厚さは、より好ましくは50〜500μmが良い。
弾性層2は、硬度が高すぎると被記録材P或いはトナー層tの凹凸に追従しきれず画像光沢ムラが発生してしまう。そこで、弾性層2の硬度としては60゜(JIS−A)以下、より好ましくは45゜(JIS−A)以下がよい。
弾性層2の熱伝導率λは、0.25×〜0.84[W/m・℃]であることが好ましい。熱伝導率λが上記範囲よりも小さい場合には、熱抵抗が大きすぎて、定着フィルム10の表層(離型層3)における温度上昇が遅くなる。熱伝導率λが上記範囲よりも大きい場合には、弾性層2の硬度が高くなりすぎたり、圧縮永久歪みが発生しやすくなる。より好ましくは0.33〜0.63[W/m・℃]が良い。
c.離型層3
離型層3は、フッ素樹脂(PFA、PTFE、FEP)、シリコーン樹脂、フルオロシリコーンゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等の離型性かつ耐熱性のよい材料を用いることが好ましい。
離型層3の厚さは1〜100μmが好ましい。離型層3の厚さが上記範囲よりも薄い場合には、塗膜の塗ムラが生じ、離型性の悪い部分が発生したり、耐久性が不足するといった問題が発生する。また、離型層3の厚さが上記範囲よりも厚い場合には、熱伝導が悪化する。特に、離型層3に樹脂系の材質を用いた場合は、離型層3の硬度が高くなりすぎて、弾性層2の効果がなくなってしまう。
d.断熱層4
図7に示すように、定着フィルム10の構成において、発熱層1の摺動部材40との接触面側に断熱層4を設けてもよい。断熱層4としては、フッ素樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、PEEK樹脂、PES樹脂、PPS樹脂、PFA樹脂、PTFE樹脂、FEP樹脂等の耐熱樹脂がよい。
断熱層4の厚さとしては10〜1000μmが好ましい。断熱層4の厚さが10μmよりも薄い場合には断熱効果が得られず、また耐久性も不足する。一方、1000μmを超えると磁性コア17a・17b・17c及び励磁コイル18から発熱層1までの距離が大きくなり、磁束が十分に発熱層1に吸収されなくなる。
断熱層4は、発熱層1に発生した熱が定着フィルム10の内側に向かわないように断熱できるので、断熱層1がない場合と比較して被記録材Pへの熱供給効率が良くなる。よって、消費電力を抑えることができる。
また、断熱層4を滑り性の良い材料で構成すれば、摺動部材40と定着フィルム10との摺動抵抗を軽減することができる。
また、断熱層4を設けることで、発熱層1及びフィルムガイド部材16の削れを防止でき、長期間の耐久に伴う定着フィルム10の回転トルクの上昇を抑えることが可能となる。
本実施例では、断熱層4の材質として、滑り性がよく耐久性に優れたポリイミド樹脂を用いる。また、ポリイミド樹脂に耐熱性の高い粗し粒子としてマイカ粒子、チッ化ホウ素粒子、フッ素樹脂、シリカ等を入れることにより、定着フィルム内面に塗ったグリースを摺動部材40の摺動面に導くための凹凸を当該定着フィルム内面に形成させることが可能となる。本実施例では、耐熱性の高い粗し粒子としてマイカ粒子を用いた。粗し粒子は平滑性の高いフィルム内面を粗れた表面に変えるための粒子である。
(5)OHTフィルムや光沢紙等へのトナー像定着態様
光沢が高いカラー画像は一般的に高品位と位置付けられることが多いため、光沢紙を用いたプリントでは、トナー像の表面を通常プリント時よりも更に平滑に定着することが望ましい。このために、定着スピードを遅くしてゆっくりと定着を行うことによって、定着ニップ内により多くの熱量を与えることが効果的である。このような定着を行うプリントモードはグロスモード等と称され、プリントスピード、定着温度等を最適化することによって光沢画像を得ている。また、OHTフィルムの定着においては、グロスモード同様にトナー画像表面の平滑性が必要とされ、十分な定着性が得られないとOHT透過性が低下し、にごったり、くすんだりする投影画像となってしまう。OHTモードにおいてもグロスモード同様に定着スピードを遅くして定着温度を最適化することによって、OHTの透過性を向上させている。
前述したように、低速プリント時においては、グリースが両者の界面に入っていきにくくなることから、光沢紙やOHTフィルム表面と定着フィルム表面の間にスリップが生じて、トナー画像を乱してしまうという現象が発生する。この現象は、定着フィルム内面と摺動部材との摺動抵抗が大きく、かつOHTフィルム上にトナー画像が多く載った状態が最も厳しい。
また、完全にスリップとならないまでも、定着フィルム内面と摺動部材間のビビリを引き起こすことから、スティックスリップと呼ばれる変音を発生させる事がある。このようなスティックスリップ現象は、低速で、加圧力が大きい場合に顕著に発生し、カラー画像向上のためのグロス向上の手段とは全く相容れない現象である。
このように、特にトナー載り量の多いフルカラー画像を定着するカラー画像形成装置の定着装置では、光沢モードやOHT画像の透過性を向上させるために、従来のモノカラー画像用の定着装置よりも大きな加圧力をニップ部に印加する必要があるため、定着ニップ部における定着フィルムとその支持部材との面圧がより大きくなり、特に摩擦抵抗が大きい。このため上記のようなスリップやスティックスリップはカラー画像形成装置において非常に大きな問題となる。
また、定着装置を使用しつづけていると、定着ニップ形成のための加圧力により、グリースが定着ニップ部に対応する摺動部材において定着フィルム内面が摺動する面にほとんど残らないという現象が生ずることから、定着フィルム内面及び摺動部材が摩耗し、そのダストがグリースに混じると、グリースが潤滑剤として機能しなくなり、その結果、耐久により定着フィルムの回転駆動トルクが上昇することとなって、駆動モータの脱調や、定着フィルムスリップによるジャム等の不具合が発生することがある。
更には、グリースの効果が無くなった状態で定着フィルムが回転を続けると、定着フィルム内面の樹脂層(断熱層)がダメージを受ける事にもなる。
上述のような様々な不具合の発生を回避するべく、本実施例では、定着装置100において、摺動部材40の少なくとも定着フィルム10と摺動する面(摺動部(以下、摺動面と記す))をフッ素樹脂製のPTFEフィルムで覆う構成とした。その構成を次の(6)項で詳細に説明する。
(6)定着フィルム摺動部の構成
図8は、定着ニップ部Nにおける定着フィルム10の摺動部近傍の横断面側面模型図である。定着ニップ部Nにおいて、定着フィルム10は加圧ローラ30によってアルミナ製の摺動部材40の方向に加圧されている。この摺動部材40において定着フィルム内面と摺動する面を摺動保護層としてフッ素樹脂製のフィルム41を両面接着剤によって貼り付けた。フッ素樹脂フィルムとしては前記したように様々な素材があるけれども、本発明者による検討の結果、PTFE(4弗化エチレン樹脂(ポリテトラフルオロエチレン))フィルムが最もスティックスリップに対する効果が高いことが判明した。表1に実験結果を示す。
Figure 2005338501
[評価]
表1において、実施例1では、PTFEフィルム41として、日東電工製のニトフロン(登録商標)フィルム(樹脂層(厚み:130μm)だけからなるもの)を両面テープでアルミナ製摺動部材41の上記摺動面に貼り付けた。この構成でOHTを出力したところ、スティックスリップは発生せず、また、画像形成装置による通紙耐久試験でも、目標とする200K枚までスティックスリップに寄る音の発生も、定着フィルムスリップによる画像不良も発生しなかった。また、耐久後の摺動面を観察しても、削れて両面テープが露出している部分も無く、綺麗な状態だった。
実施例2では、PTFEフィルム41として、ニトフロンテープ(樹脂層と接着層とからなるもの(厚み:130μm))をアルミナ製摺動部材41の摺動面に貼り付けた。この構成においてもスティックスリップ、定着フィルムスリップ、通紙耐久について実施例1と同様な結果が得られた。
一方、実施例3のニトフロンフィルム(厚み:230μm)を用いた構成では、スティックスリップや定着フィルムスリップはOKだったものの、耐久後の摺動面を観察すると、図8の定着ニップNに当たる部分が若干窪んでおり、これ以上厚いPTFEフィルムを用いた場合は耐久中にニップ形状が変わる恐れがあることが分かった。例えば、摺動部材40の幅Wを10mm、定着ニップ部Nの幅を5mmとすると、定着ニップ幅5mm分、PTFEフィルム41が窪んでしまう。
また、比較例1のPTFE樹脂をアルミナ製の摺動部材40に直接コーティングした構成では、スティックスリップと思われる微振動が発生した。このスティックスリップの悪化について明確な理論は無いものの、本発明者の推測では、コーティングの場合、摺動面の硬度がニトフロンを用いた系に比べると高くなってしまうため、微小な振動が発生しやすいのではないかと考えられる。また、コーティングの場合、厚いPTFE樹脂の層を作るのが困難であり、薄い膜状になってしまうため、10K通紙耐久した時点でコーティングが剥がれてしまい、スティックスリップが発生した。
このように、PTFE樹脂層の厚みは薄すぎると耐久によって削れてしまうため、少なくとも50μm程度あることが望ましく、また、PTFE樹脂が厚すぎる場合は長時間の加圧による塑性変形が発生するため、300μm程度の厚さ以下にする必要がある。したがってPTFE樹脂層の厚みは50〜300μmが好ましい。
上記表1の実施例1および実施例2から明らかな通り、ニトフロンフィルムあるいはニトフロンテープを用いても同様な結果が得られることから、PTFEフィルム41としてニトフロンフィルム、或いはニトフロンテープを用いることができる。
以上述べたように、本実施例の形態では、PTFE樹脂における元々の特性として、定着フィルム10内面の断熱層4を構成するポリイミドとの相性が良く、スティックスリップが発生しにくいPTFEフィルム41を摺動部材40の摺動面に貼ることで、スティックスリップの発生が無く、また、PTFEフィルム(樹脂層)の厚みをコントロールすることで、定着装置の寿命までPTFEフィルムの効果が減衰する事が無く、また、ニップ形状も安定した定着装置を達成することが可能になった。
フッ素樹脂シートとして特にPTFEシートを用いた場合の利点としては、PTFE独自の特性を元に以下のようなことが考えられる。PTFEは他のフッ素樹脂に比べて特に柔らかく、摺動によって表面が削れ安い性質を持っている。また、その削れた樹脂が潤滑材として機能するという特性を持っている。そのため、硬い表面との組み合わせでもスティックスリップが発生しにくく、グリスの効果が薄れてきたときにもPTFEシートの自己潤滑性によって、良好な摺動性が得られると考えられる。
図9は、第2の実施例の定着装置の要部を示す図であり、定着ニップ部Nにおける定着フィルム10の摺動部近傍の横断面側面模型図である。
本実施例に示す定着装置100は、実施例1において摺動部材40の摺動面のみを覆っていたPTFEフィルム41を、定着フィルム10の回転方向上流側の摺動部材長手端面から裏側にかけて折り返した構成にした点に特徴がある。その他の構成は実施例1と同様の構成であり、同一部分には同一の符号を付して再度の説明を省略する。
実施例1に述べたような定着装置100では、一般的に定着フィルム10の内面や、摺動部材40におけるPTFEフィルム41の定着フィルム側の表面にグリースを塗布して定着フィルム10の摺動性を向上させるような手段が用いられる。この場合、グリースが摺動部材表面とPTFEフィルム41の接着層との間に侵入し、接着強度が下がる恐れがある。一般に接着材の接着強度は経過時間と熱によって上昇するため、定着装置100を未使用状態で長期間放置すると、接着強度が上がっていないため、特に簡単にPTFEフィルム41が剥がれてしまう恐れがある。特に定着ニップ部Nにおける定着フィルム10の回転方向上流側は、定着フィルム10がPTFEフィルム41を剥がす方向に回転するため、該PTFEフィルムが上流側から剥がれる可能性が高い。
そこで、本実施例では、表1に示すように予めPTFE樹脂と接着層が一体となったニトフロンテープをPTFEフィルム41として用い、摺動部材40の定着フィルム回転方向上流側にPTFEフィルムを巻き込む構成とした。具体的には、PTFEフィルム41は、摺動部材40の上記摺動面を覆う摺動面被覆部41aに加え、少なくとも定着フィルム10の回転方向上流側の摺動部材長手端面40aから摺動部材裏面(上記摺動面とは裏側の面)40bまでを覆う折り返し部41bを有する構成とされている。
PTFE樹脂と接着層が一体となったPTFEフィルム41ではなく、実施例1のようにニトフロンフィルムと両面接着テープからなるPTFEフィルム41によって摺動部材の定着フィルム回転方向上流側を巻き込む構成を実施する事も可能であるが、ニトフロンフィルムを折り曲げて貼るときにズレが生じる可能性もある。このため本実施例では、組み立て時の作業性を向上させるために、テープ形状のフッ素樹脂を用いた。
このように、摺動部材40の定着フィルム回転方向上流側にPTFEフィルム41を巻き込むことで、グリースが摺動部材表面とPTFEフィルム41の接着層間に侵入する事が無くなり、また、定着フィルム10の回転による力がかかっても、PTFEフィルムが捲くれ上がるように剥がれる心配がない。さらに、図9では、PTFEフィルム41の折り返し部41bの表面とフィルムガイド部材16の摺動部材保持溝16aの内壁面の間に間隙(クリアランス)Sを設けているが、クリアランスを無くしてPTFEフィルム41を摺動部材40の摺動部材長手端面40aと摺動部材保持溝16aの内壁面とで挟み込むような構成にすることで、よりいっそうPTFEフィルム41の固定力を向上させることも可能である。
図10は、第3の実施例の定着装置の要部を示す図であり、定着ニップ部Nにおける定着フィルム10の摺動部近傍の横断面側面模型図である。
実施例1乃至2に示す定着装置100においては摺動部材40としてアルミナ基板を用いていたが、本実施例に示す定着装置100は摺動部材40の摺動面側にガラス42を盛り付け、さらにその外側をPTFEフィルム41で覆う構成とした点に特徴がある。その他の構成は実施例1乃至2と同様の構成であるため、同一部分には同一の符号を付して再度の説明を省略する。
実施例1で述べたように、通常の使用状態では、50μm以上の厚さのPTFEフィルムを用いれば通紙によってPTFE層が削れてアルミナの基板が露出することは無いが、例えば、定着フィルム10内に異物が混入した際には、PTFEフィルム41は比較的簡単に削れてしまう。このようなケースは非常に稀であり、本来組み立て時の異物混入に注意する等、対策は別に取ることが必要であるが、万が一の保険として、PTFEフィルムが無くなっても摺動性が極端に変わらないようにしておく方が良い。
アルミナの基板は表面が荒れており、そのまま何もコーティングしていない状態では、定着フィルム10の駆動トルクが非常に大きいため、スリップして定着装置として成り立たない。そこで、従来では、アルミナの表面にガラスを盛り付ける事で表面性を上げていた。また、ガラスを盛り付ける時にガラスの表面張力でガラス層の周囲にRが付くため、摺動部材40の角に定着フィルム10の内面が当たるような事があっても、定着フィルムの内面に傷を付けないという利点もあった。
そこで、本実施例では、実施例1〜2のようにアルミナ基板からなる摺動部材40の摺動面上に直接PTFEフィルム41を貼らずにガラス42をコーティングすることで、万が一PTFEフィルムが部分的に削れてしまう事があっても摺動性が極端に変わらず、また、アルミナ基板の角が露出して定着フィルム10の内面に傷を付けてしまう事が無い。
以上説明したように、各実施例の定着装置100によれば、定着フィルム10内面の断熱層(ポリイミド樹脂層)4に当接する摺動部材40の摺動面にPTFEフィルム41を設ける事で、定着フィルム10と該摺動面との間の摺動抵抗を安定して小さくすることが可能になり、スリップ、スティックスリップの低減、耐久後のトルクの低減を図ることができる。
また、変形しやすいPTFEフィルム41を薄くして、変形しにくいアルミナ基板からなる摺動部材40の摺動面に貼り付ける事で、定着ニップ部Nで圧力を受けても該摺動面の形状が変わらず、安定したニップ形状が維持できる。
また、PTFEフィルム41をアルミナ基板からなる摺動部材40の定着ローラ回転方向上流側に巻き込んで貼り付ける事で、万が一接着が十分でない場合にグリースが浸透するような事態になっても、該PTFEフィルムが摺動面から剥がれる事が防止できる。
また、PTFEフィルム41と摺動する定着フィルム10内面の断熱層(ポリイミド層)4にチッ化ホウ素、マイカ粒子、フッ素樹脂から選ばれた微小粒子を分散させる事で、グリースが摺動部材40の摺動面に安定して搬送され、また、PTFEフィルム40と断熱層4がグリースを介して密着する事がなくなるため、定着フィルム10の駆動トルクを低下させることが可能になる。
また、摺動部材40の摺動面のPTFEフィルム41の下に摺動性の良いガラス層42を設ける事で、万が一PTFEフィルムが傷付き摺動部材表面が露出することがあっても、急激に摺動抵抗が変わってスリップやスティックスリップが発生する事態を防止できる。
[その他]
1)電磁誘導発熱性の定着フィルム10は、モノクロあるいは1パスマルチカラー画像などの加熱定着用の場合は、弾性層2を省略した形態のものとすることもできる。発熱層1は樹脂に金属フィラーを混入して構成したものとすることもできる。発熱層単層の部材とすることもできる。
2)定着フィルム10はエンドレスの回転部材ではなく、例えば、ロール巻きにした長尺の有端のウエブ部材にし、これを繰り出して走行移動させる形態の装置構成にすることもできる。
3)加圧部材30はローラ体に限らず、回動ベルト型など他の形態の部材にすることもできる。また、加圧部材30側からも被記録材に熱エネルギーを供給するために、加圧部材30側にも電磁誘導加熱などの発熱手段を設けて所定の温度に加熱温調する装置構成にすることもできる。
4)本発明の加熱装置は、実施形態例の画像加熱定着装置としてに限らず、画像を担持した被記録材を加熱して、つや等の表面性を改質する像加熱装置、仮定着する像加熱装置、その他、被加熱部材の加熱乾燥装置、加熱ラミネート装置、加熱加圧しわ取り装置など、広く被加熱材を加熱処理する手段・装置として利用できる。
画像形成装置の概略構成図 第1の実施例に係る定着装置の要部の横断模型図 同じく要部の正面模型図 同じく要部の縦断模型図 内部に磁場発生手段を配設支持させた右側のフィルムガイド部材の斜視模型図 磁場発生手段と発熱量Qの関係を示した図 電磁誘導発熱性の定着フィルムの層構成模型図 定着フィルム摺動部近傍の横断面側面模型図 第2の実施例に係る定着装置の定着フィルム摺動部近傍の横断面側面模型図 第3の実施例に係る定着装置の定着フィルム摺動部近傍の横断面側面模型図
符号の説明
1‥‥発熱層
2‥‥弾性層
3‥‥離型層
4‥‥断熱層
10‥‥定着フィルム
16・・・・フィルムガイド部材
17a,17b,17c・・・・磁性コア
18・・・・励磁コイル
23a・23b・・・・定着フィルム端部の規制・保持用フランジ部材
30・・・・加圧ローラ
40・・・・摺動部材
41・・・・PTFEフィルム
42・・・・ガラス層

Claims (9)

  1. 可撓性の移動部材と、前記移動部材と摺動する摺動部材と、前記移動部材を間に挟み前記摺動部材とニップを形成する加圧部材とを有し、前記ニップで被加熱材を挟持搬送して該被加熱材を加熱する加熱装置において、
    前記摺動部材は、少なくとも前記移動部材と摺動する面にPTFEフィルムを有することを特徴とする加熱装置。
  2. 前記摺動部材の少なくとも前記移動部材と摺動する面はガラス層を介して前記PTFEフィルムを有することを特徴とする請求項1に記載の加熱装置。
  3. 前記PTFEフィルムは、PTFE樹脂層と、接着層を有し、前記摺動部材は、金属、セラミック、グラファイトから選ばれた部材であり、前記PTFEシートは前記接着層によって前記摺動部材に取り付けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の加熱装置。
  4. 前記PTFEフィルムのPTFE樹脂層の厚みが50μm乃至300μmであることを特徴とする請求項3に記載の加熱装置。
  5. 前記PTFEフィルムは、前記摺動部材の前記移動部材と摺動する面に加え、少なくとも前記移動部材の移動方向上流側の摺動部材端面から前記移動部材と摺動する面の裏側まで回り込んでいることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の加熱装置。
  6. 前記移動部材の前記摺動部材と摺動する表面がポリイミド樹脂層であることを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の加熱装置。
  7. 前記移動部材の前記ポリイミド樹脂層にはチッ化ホウ素、マイカ粒子、フッ素樹脂のうちの少なくとも一つの微小粒子が分散していることを特徴とする請求項6に記載の加熱装置。
  8. 前記装置はさらに磁場発生手段を有し、前記移動部材は前記磁場発生手段からの発生磁場の作用で発熱する金属層を有することを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれかに記載の加熱装置。
  9. 前記装置は更に、前記摺動部材を長手方向に亘って支持する支持部材を有することを特徴とする請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の加熱装置。
JP2004158058A 2004-05-27 2004-05-27 加熱装置 Pending JP2005338501A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004158058A JP2005338501A (ja) 2004-05-27 2004-05-27 加熱装置

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2004158058A JP2005338501A (ja) 2004-05-27 2004-05-27 加熱装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005338501A true JP2005338501A (ja) 2005-12-08
JP2005338501A5 JP2005338501A5 (ja) 2007-07-12

Family

ID=35492151

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2004158058A Pending JP2005338501A (ja) 2004-05-27 2004-05-27 加熱装置

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2005338501A (ja)

Cited By (6)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007240845A (ja) * 2006-03-08 2007-09-20 Synztec Co Ltd 定着ベルト
JP2011107518A (ja) * 2009-11-19 2011-06-02 Nitto Denko Corp 電磁誘導加熱用管状体
JP2013160907A (ja) * 2012-02-03 2013-08-19 Canon Inc 無端ベルト及び像加熱装置
JP2013210608A (ja) * 2012-02-27 2013-10-10 Canon Inc 画像加熱装置
JP2015219510A (ja) * 2014-05-21 2015-12-07 キヤノン株式会社 定着装置
JP2020148887A (ja) * 2019-03-13 2020-09-17 株式会社リコー 加熱装置、定着装置及び画像形成装置

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2007240845A (ja) * 2006-03-08 2007-09-20 Synztec Co Ltd 定着ベルト
JP2011107518A (ja) * 2009-11-19 2011-06-02 Nitto Denko Corp 電磁誘導加熱用管状体
JP2013160907A (ja) * 2012-02-03 2013-08-19 Canon Inc 無端ベルト及び像加熱装置
JP2013210608A (ja) * 2012-02-27 2013-10-10 Canon Inc 画像加熱装置
JP2015219510A (ja) * 2014-05-21 2015-12-07 キヤノン株式会社 定着装置
JP2020148887A (ja) * 2019-03-13 2020-09-17 株式会社リコー 加熱装置、定着装置及び画像形成装置
JP7269529B2 (ja) 2019-03-13 2023-05-09 株式会社リコー 加熱装置、定着装置及び画像形成装置

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3634679B2 (ja) 加熱装置
JP3817482B2 (ja) 加熱装置および画像形成装置
EP1923752B1 (en) Fixing Device and Image Forming Apparatus Using the Same
JP4474056B2 (ja) 加熱装置
JP3913069B2 (ja) 加熱装置
KR101260664B1 (ko) 정착 장치 및 화상 형성 장치
JP2010085910A (ja) 像加熱装置
JP4717292B2 (ja) 画像形成装置
JP4115147B2 (ja) 加熱装置
JP2001083822A (ja) 加熱装置、像加熱装置および画像形成装置
JP2009109673A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2006301106A (ja) 加熱装置
JP2002056960A (ja) 加熱装置及び画像形成装置
JP4600100B2 (ja) ベルト部材を駆動するロール部材を備えた装置、定着装置および画像形成装置
JP3376228B2 (ja) 画像加熱定着装置
US6792240B2 (en) Image heating apparatus and elastic roller therefor
JP2002025759A (ja) 加熱装置および画像形成装置
JP2005077872A (ja) 定着装置および画像形成装置
JP2001203072A (ja) 加熱装置、像加熱装置および画像形成装置
JP4261727B2 (ja) 像加熱装置
JP2005338501A (ja) 加熱装置
JP2003270998A (ja) 像加熱装置
JPH11135246A (ja) 加熱装置及び画像形成装置
JP4115137B2 (ja) 定着装置
JP2002023534A (ja) 加熱装置および画像形成装置

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Written amendment

Effective date: 20070525

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

A621 Written request for application examination

Effective date: 20070525

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20091005

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091013

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20100223