JP2003170546A - 射出成形同時加飾用シート及び加飾成形品 - Google Patents

射出成形同時加飾用シート及び加飾成形品

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 アクリル樹脂の表面シート、ABS樹脂の基
材シートを用いた射出成形同時加飾用シートで樹脂成形
物を加飾して加飾成形品とする際に、層間密着性を良く
する。また、シートの成形性も維持する。 【解決手段】 射出成形同時加飾用シートSは、透明ア
クリル樹脂の表面シート1の裏面側に、バインダー樹脂
がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体であ
る絵柄インキ層2、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビ
ニル共重合体からなる接着剤層3、基材シート4を積層
し、この基材シートにブタジエン成分の比率が20質量
%未満のABS樹脂を用いる。基材シートは、ブタジエ
ン比率が20質量%未満の第1基材シート(接着剤層
側)と、20質量%以上の第2基材シートとの2層とす
ると深絞り成形性も良い。この加飾用シートを樹脂成形
物表面に積層すれば加飾成形品となる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種物品の表面加
飾に使用される射出成形同時加飾用シートと、それを用
いた加飾成形品に関する。
【0002】
【従来の技術】従来から、樹脂成形物の表面を加飾した
加飾成形品が各種用途で使用されている。例えば、特公
昭50−19132号公報、特公昭43−27488号
公報等に開示の射出成形同時加飾方法等では、射出成形
同時加飾用シートを射出成形の雌雄両型間に配置した
後、溶融樹脂をキャビティ内に射出充填し固化させるこ
とで、樹脂成形物の成形と同時にその表面に射出成形同
時加飾用シートを接着積層して一体化した加飾成形品を
得る方法を開示している。
【0003】また、樹脂成形物に使用する樹脂材料とし
ては、一般的には、アクリロニトリル−ブタジエン−ス
チレン共重合体樹脂(ABS樹脂)、アクリル樹脂、ポ
リカーボネート樹脂等が多かった。この為、射出成形同
時加飾用シートも、その裏面側は、これら樹脂との密着
性や成形性等を考慮して、ABS樹脂シート等が多用さ
れてきた。一方、加飾成形品の意匠として塗装感が要求
される場合には、透明性に優れ、また成形性や耐候性、
耐擦傷性等も良好であるアクリル樹脂を用いた透明樹脂
シートが表面シートとして使用されてきた。そして、絵
柄意匠も表現する為には、成形性や密着性が良い点で、
アクリル樹脂や塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体をバイ
ンダー樹脂に用いた絵柄インキ層を印刷形成する事が多
かった。
【0004】例えば、特開2001−232660号公
報では、表面側から順に、アクリル樹脂からなる透明な
表面シート、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体との混合物からなる絵柄イン
キ層、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−
酢酸ビニル共重合体との混合物からなる接着剤層、AB
S樹脂から成る着色隠蔽性の基材シートを積層した構成
の射出成形同時加飾用シートが開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
様に、アクリル樹脂の表面シートとABS樹脂の基材シ
ートを用いた構成の射出成形同時加飾用シートを、樹脂
成形物表面に射出成形同時加飾方法等で積層して加飾成
形品とすると、射出成形同時加飾用シート層内での層間
密着性が必ずしも十分とは言えない場合があった。
【0006】すなわち、本発明の課題は、射出成形同時
加飾方法に適用し得る射出成形同時加飾用シートとし
て、アクリル樹脂の表面シートとABS樹脂の基材シー
ト間に、絵柄インキ層、接着剤層を設けた構成にて、層
間密着性を向上させる事である。また、この様な射出成
形同時加飾用シートが密着性良く積層した如き加飾成形
品を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】そこで、上記課題を解決
すべく、本発明の射出成形同時加飾用シートでは、透明
アクリル樹脂から成る表面シートの裏面に、バインダー
樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体
との混合物から成る絵柄インキ層、アクリル樹脂と塩化
ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤
層、及び、ブタジエン成分の比率が20質量%未満のア
クリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂か
ら成る基材シートを、この順に積層して成る構成とし
た。
【0008】この様に、特定材料の表面シート、特定材
料の絵柄インキ層及び接着剤層を、ブタジエン比率を特
定したABS樹脂による特定材料の基材シートと組合わ
せた構成とすることで、射出成形同時加飾用シート層内
での層間密着性が良好となる。また、射出成形同時加飾
用シートの基本性能として必要な相応の成形性も得られ
る。そして、表面シートは透明アクリル樹脂である為
に、その透明性によって塗装感が得られ、また、基材シ
ートはABS樹脂である為に、ABS樹脂の樹脂成形物
への密着性も得られる。
【0009】また、本発明の射出成形同時加飾用シート
は、透明アクリル樹脂から成る表面シートの裏面に、バ
インダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル
共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、アクリル樹
脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成
る接着剤層、ブタジエン成分の比率が20質量%未満の
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂
から成る第1基材シート、及び、ブタジエン成分の比率
が20質量%以上のアクリロニトリル−ブタジエン−ス
チレン共重合体樹脂から成る第2基材シートとを、この
順に積層して成る構成とした。
【0010】この様に、特定材料の表面シート、特定材
料の絵柄インキ層及び接着剤層を、ブタジエン比率を特
定したABS樹脂による特定材料の基材シートと組合わ
せた構成とすることで、射出成形同時加飾用シート層内
での層間密着性が良好となる。しかも、第1基材シート
のABS樹脂はブタジエン比率が低い為に成形性がその
分低下するが、それによる深絞り成形性の低下を補償す
る為に、ブタジエン比率20質量%以上のABS樹脂か
らなる第2基材シートを更に積層して、第2基材シート
の方で成形性を出す様にしてある為、深絞り成形性も良
い。従って、層間密着性と深絞り成形性が両立する。そ
して、表面シートは透明アクリル樹脂である為に、その
透明性によって塗装感が得られ、また、基材シートはA
BS樹脂である為に、ABS樹脂製の樹脂成形物への密
着性も得られる。
【0011】また、本発明の加飾成形品は、アクリロニ
トリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る樹
脂成形物の表面に、ブタジエン成分の比率が20質量%
未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合
体樹脂から成る基材シート、アクリル樹脂と塩化ビニル
−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤層、バ
インダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル
共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、透明アクリ
ル樹脂から成る表面シートを、この順に積層して成る構
成の成形品とした。なお、本加飾成形品の構成は、請求
項1に該当する前記射出成形同時加飾用シートを、樹脂
成形物に積層することで得られる構成である。
【0012】この様に、ABS樹脂の樹脂成形物上に、
ブタジエン比率を特定したABS樹脂による特定材料の
基材シートを、特定材料の絵柄インキ層及び接着剤層、
特定材料の表面シートと組合わせて積層した構成とする
ことで、樹脂成形物も含めて各層間の層間密着性が良好
となる。しかも、樹脂成形物上の各層を加飾用シートと
して樹脂成形物に積層して形成する際に、加飾用シート
の基本性能としての成形性も得られ、絞り部分も加飾さ
れた加飾成形品が可能である。また、表面シートは透明
アクリル樹脂である為に塗装感も得られる。
【0013】また、本発明の加飾成形品は、アクリロニ
トリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る樹
脂成形物の表面に、基材シートとしてブタジエン成分の
比率が20質量%以上のアクリロニトリル−ブタジエン
−スチレン共重合体樹脂から成る第2基材シート、及び
ブタジエン成分の比率が20質量%未満のアクリロニト
リル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から成る第1
基材シート、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共
重合体との混合物から成る接着剤層、バインダー樹脂が
アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混
合物から成る絵柄インキ層、透明アクリル樹脂から成る
表面シートを、この順に積層して成る構成の成形品とし
た。なお、本加飾成形品の構成は、請求項2に該当する
前記射出成形同時加飾用シートを、樹脂成形物に積層す
ることで得られる構成である。
【0014】この様に、ABS樹脂の樹脂成形物上に、
ブタジエン比率を特定したABS樹脂による特定材料の
しかも2層構成とした基材シートを、特定材料の絵柄イ
ンキ層及び接着剤層、特定材料の表面シートと組合わせ
て積層した構成とすることで、樹脂成形物も含めて各層
間の層間密着性が良好となる。しかも、樹脂成形物上の
各層を加飾用シートとして樹脂成形物に積層して形成す
る際に、加飾用シートの成形性も良く、絞り部分も加飾
された加飾成形品が可能である。更に、基材シートはブ
タジエン比率を異にする第1基材シートと第2基材シー
トとの2層構成としてあるので、成形性が向上し深絞り
成形性も良好なので、深絞り部分が加飾された加飾成形
品も可能である。また、表面シートは透明アクリル樹脂
である為に、その透明性によって塗装感が得られる。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を説明
する。
【0016】概要:先ず、本発明の射出成形同時加飾用
シートの構成を、図1及び図2の断面図で例示する。図
1に示す射出成形同時加飾用シートSは、表側から順
に、透明アクリル樹脂の表面シート1、バインダー樹脂
がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との
混合物から成る絵柄インキ層2、アクリル樹脂と塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接着剤層
3、そして、ブタジエン成分の比率が20質量%未満の
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂
(以下、単にABS樹脂とも呼ぶ。)から成る基材シー
ト4が、積層された構成の積層シートである。
【0017】一方、図2に示す射出成形同時加飾用シー
トSは、表側から順に、透明アクリル樹脂の表面シート
1、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸
ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層2、ア
クリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合
物から成る接着剤層3、そして、2層構成の基材シート
4として該接着剤層3側のブタジエン成分の比率が20
質量%未満のABS樹脂から成る第1基材シート4A
と、ブタジエン成分の比率が20質量%以上のABS樹
脂から成る第2基材シート4Bが、積層された構成の積
層シートである。
【0018】次に、本発明の加飾成形品の構成を、図3
の断面図で例示する。図3で示す加飾成形品Pは、AB
S樹脂から成る樹脂成形物5の表面に、図1或いは図2
の断面図で例示の如き構成の射出成形同時加飾用シート
Sが、その基材シート側が樹脂成形物側となる向きで積
層された如き構成の加飾成形品である。同図では、この
射出成形同時加飾用シートSの部分の層構成の図示は省
略してあるが、その部分は、図1或いは図2の断面図で
例示の射出成形同時加飾用シートSと同様である。
【0019】以上の様な構成とすることで、射出成形同
時加飾用シート層内、或いは更に樹脂成形物も含めて、
層間密着性が得られる。しかも、基材シートを特定の2
層構成とする形態では、ブタジエン比率低下による成形
性低下を補い、深絞り成形性も良好となり、層間密着性
と深絞り成形性とが両立するのである。以下更に、射出
成形同時加飾用シート、加飾成形品について詳述する。
【0020】射出成形同時加飾用シート:先ず、射出成
形同時加飾用シートから説明する。
【0021】〔表面シート〕表面シート1は、透明なア
クリル樹脂からなる樹脂シートを用いることができる。
透明なアクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メ
タ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、
ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アク
リレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、エチ
ル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート
共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重
合体等のアクリル樹脂〔但し、(メタ)アクリレートと
は、アクリレート又はメタクリレートの意味〕を単体又
は2種以上の混合物として用いることができる。
【0022】表面シートに透明アクリル樹脂を使用する
ことで、アクリル樹脂が備えた優れた透明性によって、
塗装感、或いは表面艶等の高級感溢れる意匠性を付与出
来る。また、表面シートにポリオレフィン系樹脂シート
等を使用する場合に比べて、耐候性及び耐擦傷性等の表
面物性も良好にできる利点もある。
【0023】なお、表面シートの透明性は、通常は無着
色透明とするが、必要に応じ適宜、着色剤をアクリル樹
脂中に添加して、着色透明としても良い。また、半透明
としても良い。なお、着色剤としては、後述絵柄インキ
層で列記する如き公知のものが使用できる。また、表面
シートの厚みは特に制限は無いが、通常50〜250μ
m程度とする。
【0024】また、表面シートの樹脂中には、必要に応
じて、適宜、ポリエチレンワックス、パラフィンワック
ス等の滑剤、シリカ、球状α−アルミナ、鱗片状α−ア
ルミナ等の粒子からなる減摩剤、炭酸カルシウム、硫酸
バリウム、酸化アルミニウム等の粒子からなる充填剤、
ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、微粒子酸化
セリウム系等の紫外線吸収剤やヒンダードアミン系ラジ
カル捕捉剤等の光安定剤等の各種添加剤を、物性調整の
為に添加しても良い。但し、表面シートが不透明となら
ない範囲内で添加する。
【0025】〔絵柄インキ層〕絵柄インキ層2は、絵柄
等を表現する為に印刷等によって形成した層であり、絵
柄インキ層2は、バインダーの樹脂に特定の樹脂を使用
する。すなわち、バインダーの樹脂に、アクリル樹脂と
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物を使用す
る。この様な特定樹脂を使用する事で、絵柄インキ層が
接する特定樹脂からなる表面シート及び接着剤層、ひい
ては、該接着剤層が接する特定樹脂からなる基材シート
と本絵柄インキ層との密着性が良好となる。この結果、
射出成形同時加飾用シート層内での層間密着性が良好と
なる。なお、絵柄インキ層のバインダーの樹脂中の、ア
クリル樹脂は透明アクリル樹脂からなる表面シートとの
密着性向上に寄与し、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体
は印刷適性や成形適性向上に寄与する。
【0026】上記アクリル樹脂としては、例えば、ポリ
メチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アク
リレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メ
タ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレー
ト−スチレン共重合体等のアクリル樹脂、或いは、メチ
ル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレー
ト、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)ア
クリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等
と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−
ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレ
ート等の分子中にヒドロキシル基を有する(メタ)アク
リル酸エステルとを共重合させて得られるアクリルポリ
オール等のアクリル樹脂を、単体又は2種以上混合して
使用する。アクリルポリオールを用いた場合には、必要
に応じて、2,4−トリレンジイソシアネート、1,6
−ヘキサメチレンジイソシアネート等のイソシアネート
を添加して架橋しても良い。なお、(メタ)アクリレー
トとはアクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0027】また、上記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合
体としては、通常、酢酸ビニル含有量が5〜20質量%
程度、平均重合度350〜900程度のものが用いられ
る。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、必要に
応じ、更にマレイン酸、フマル酸、(メタ)アクリル酸
等のカルボン酸を共重合させたものでも良い。
【0028】なお、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビ
ニル共重合体との混合割合は、アクリル樹脂/塩化ビニ
ル−酢酸ビニル共重合体=1/9〜9/1(質量比)程
度で使用する。但し、特にこの絵柄インキ層及び後述接
着剤層は、アクリル樹脂の表面シート、或いはABS樹
脂の基材シートと接する為に、密着性の観点からは、ア
クリル樹脂の比率の方を多めとする方が好ましい。但
し、成形性の観点からは、柔軟な塩化ビニル−酢酸ビニ
ル共重合体の方を多めとする方が好ましい。
【0029】なお、絵柄インキ層のバインダーの樹脂と
しては、副成分の樹脂として、必要に応じて、適宜、上
記以外のその他の樹脂、例えば、熱可塑性ポリエステル
樹脂、熱可塑性や2液硬化型等のウレタン樹脂等の樹脂
を併用しても良い。
【0030】絵柄インキ層2は、バインダーの樹脂を上
記特定樹脂から構成する他は、基本的には特に制限は無
い。絵柄インキ層2は、通常は印刷インキ又は塗料で、
公知の印刷又は塗工法(塗工法は全ベタ柄のとき)等の
形成方法により、表面シート1の基材シート4側の面に
対して形成する。なお、印刷法を例示すれば、グラビア
印刷、活版印刷、オフセット印刷、シルクスクリーン印
刷、転写シートからの転写印刷、インキジェット印刷等
である。
【0031】また、上記印刷インキ(或いは塗料)に用
いる着色剤は公知の染料や顔料で良く、例えばチタン
白、カーボンブラック、鉄黒、弁柄、黄鉛、コバルトブ
ルー等の無機顔料、アニリンブラック、フタロシアニン
ブルー、イソインドリノンイエロー、キナクリドンレッ
ド等の有機顔料、アルミニウム箔粉等の金属顔料、二酸
化チタン被覆雲母箔粉等の真珠光沢(パール)顔料、そ
の他染料等を用いる。絵柄インキ層の絵柄は、木目、石
目、布目、砂目、皮絞模様、幾何学模様、文字、記号、
全面ベタ等と任意である。
【0032】なお、絵柄インキ層としては、木目柄等の
絵柄による装飾目的の層の他に、導電体層、磁性体層等
の機能性層でも良い。例えば、導電体層では、上記特定
樹脂のバインダー中に含有させる材料として、着色剤の
代わりに銀粉等の導電性粉末を分散させる。また、磁性
体層の場合には、着色剤の代わりに、酸化鉄(γ−Fe
23)等から成る磁性体粉末を分散させる。すなわち、
本発明に於ける加飾とは、絵柄インキ層によって、機能
性層、或いは目視不可能な模様等を付与することも包含
する。なお、目視不可能な模様の例としては、可視光に
対しては透明で紫外線照射で蛍光を発する蛍光インキで
印刷した絵柄、赤外線吸収性インキで印刷したバーコー
ド等である。
【0033】〔接着剤層〕接着剤層3は、アクリル樹脂
と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物からなる
構成とする。これら樹脂は、絵柄インキ層のバインダー
の樹脂と同じ樹脂である。従って、これにら樹脂につい
ては、前記絵柄インキ層のバインダーの樹脂として説明
したので、説明は省略する。但し、両樹脂の内容、及び
両樹脂の混合比率は絵柄インキ層と完全同一にする必要
は無い。接着性、印刷・塗工適性等に応じた適宜内容と
すれば良い。接着剤層は、絵柄インキ層が形成された表
面シートを基材シートに熱融着で接着積層し易い様にす
る為に設ける。接着剤層は、絵柄インキ層2形成済みの
表面シート1の絵柄インキ層の面、或いは、基材シート
4の表面シート1側とする面に形成すれば良い。なお、
わざわざ絵柄インキ層と同じ樹脂系の接着剤層を設ける
のは、部分的に設けられるために、或いは着色剤等をバ
インダーの樹脂中に含有する為に低下気味となる絵柄イ
ンキ層の接着性を、この接着剤層で補う為である。な
お、接着剤層は、上記特定樹脂を含むインキ(或いは塗
液)を用いて、公知の印刷法(或いは塗工法)で形成す
れば良い。接着剤層の厚みは特に制限はないが、例えば
5〜20μm程度である。
【0034】〔基材シート〕基材シート4としては、ブ
タジエン成分の比率が20質量%未満のアクリロニトリ
ル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂(ABS樹脂)
から成る樹脂シートを用いる。基材シートにABS樹脂
を使用する事で、ABS樹脂からなる樹脂成形物に対す
る射出成形同時加飾用シートの密着性が得られ、且つ、
基材シートのABS樹脂を特定ブタジエン比率の樹脂と
することで、射出成形同時加飾用シート層内の層間密着
性も向上する。
【0035】すなわち、本発明に於いては、絵柄インキ
層及び接着剤層の樹脂成分であるアクリル樹脂と塩化ビ
ニル−酢酸ビニル共重合体との混合樹脂に対して、AB
S樹脂からなる基材シートの密着性(接着性)を向上さ
せる為、基材シートに用いるABS樹脂のブタジエン比
率を低めに抑える。実験の結果、具体的には、該ブタジ
エン比率を20質量%未満とすると良好な密着性が得ら
れる。但し、該ブタジエン比率が低すぎると、基材シー
トの成形性が低下すると共に、基材シートの耐衝撃性も
低下する。この点を考慮して、該ブタジエン比率は10
質量%以上確保した方が好ましい。
【0036】なお、射出成形同時加飾用シートで加飾す
るABS樹脂からなる樹脂成形物の被加飾面が、平面乃
至は低絞り比の場合は、該ブタジエン比率は20質量%
未満でも問題は無い。しかし、該被加飾面が深絞りとな
ると、被加飾面への形状追従性の低下が目立つ様にな
る。
【0037】なお、ここで、深絞りとは、絞り比が面積
比(成形後のシート面積/成形前のシート面積)で2程
度以上、或いは寸法比(成形後のシート上の2点間の距
離/成形前のシート上の2点間の距離)で1.4程度以
上の場合を言う。
【0038】ところで、ABS樹脂のシートを、成形品
の被加飾面が深絞りの場合に於いても十分な成形性、つ
まり深絞り成形性を得る為には、実験の結果、ABS樹
脂のブタジエン比率は20質量%以上とると良いことが
判明した。しかし、これは前記の如き基材シートと接着
剤層(ひいては絵柄インキ層)との密着性向上(これ
は、本発明が解決すべき課題である)の為の条件と矛盾
する。そこで、本発明の射出成形同時加飾用シートを、
成形品の深絞り形状の被加飾面に対して積層する場合に
於いても、接着剤層(ひいては絵柄インキ層)と基材シ
ートとの密着性、及び成形性(形状追従性)が両立する
好ましい態様を模索した結果、以下の構成を見出した。
【0039】すなわち、ABS樹脂から成る基材シート
4を、接着剤層と接する側に位置する第1基材シート4
A、及び樹脂成形物側に接する側に位置する第2基材シ
ート4Bとの2層積層体とした(図2参照)。そして、
第1基材シートについては、ABS樹脂のブタジエン比
率を20質量%未満とする。それによって、(第1)基
材シートと接着剤層(ひいては絵柄インキ層)との密着
を十分確保する。もちろん、第1基材シートと第2基材
シートとの密着性は、同じ樹脂同士の為、十分確保され
る。一方、第2基材シートのブタジエン比率は20質量
%以上とする。それによって、深絞り形状となる被加飾
面に対する(深絞り)成形性を確保する。もちろん、第
2基材シート自体そのものは、本発明特定組成の接着剤
層(ひいては絵柄インキ層)との密着性は低下するが、
第2基材シートは接着剤層と接することは無い為、これ
は全く問題無い。よって、この様な基材シートの構成に
よって、本来矛盾する前記密着性と前記成形性とが両立
するのである。
【0040】なお、第1基材シートと第2基材シートと
の厚み比は、成膜適性等の観点から、〔第1基材シート
/第2基材シート〕=1/9〜9/1の範囲であり、通
常1対1程度を基準とする。しかし、前記密着性の方を
重視する場合は、第1基材シートの方を厚くする。ま
た、特に前記成形性の方を重視する場合は、第2基材シ
ートの方を厚くする。第1基材シート及び第2基材シー
トとの総厚は、基材シートを1層のみとする形態の場合
と同様であり、成形性、コスト等の観点から、通常50
〜500μm程度である。
【0041】なお、1層或いは上記の如き第1及び第2
の2層構成とする基材シートは、無着色でも良いが、通
常は着色剤を添加して着色隠蔽性とする。それは、射出
成形同時加飾用シートの被着体である樹脂成形物の色を
隠蔽したり、絵柄インキ層による意匠表現の基調色を担
わせたりする為である。
【0042】上記着色剤としては、例えば、白色顔料を
使用すれば良い。該白色顔料としては、例えば、チタン
白、亜鉛華、三酸化二アンチモン等を用いる。なかで
も、チタン白が隠蔽性、耐候性、耐熱性、その他物性の
点で好ましい。また、必要に応じて更に、絵柄インキ層
の絵柄の基調色となる着色剤を添加しても良い。この着
色剤としては、前記絵柄インキ層で述べた公知の各種顔
料や染料等を使用すれば良い。また、着色隠蔽性とする
為には、黒色顔料(例えばカーボンブラック、鉄黒等)
も、絵柄インキ層の発色を阻害しない範囲で加えること
ができる。
【0043】なお、基材シートが第1基材シートと第2
基材シートとの2層構成の場合は、これら両基材シート
の色や隠蔽性は同一としてもよいが、異にしても良い。
例えば、絵柄インキ層側の第1基材シートは白色顔料及
び更にその他有彩色の着色剤を添加した着色隠蔽性とし
て、裏面側の第2基材シートは黒色顔料を添加した黒色
隠蔽性とする等である。基材シートを黒色とする事で、
加飾成形品に於いて、射出成形同時加飾用シート切断端
面の基材シート部分を目立ち難くすることが出来る。
【0044】なお、基材シート中に、着色剤の他、必要
に応じ適宜、充填剤、難燃剤、酸化防止剤、安定剤等の
公知の各種添加剤を添加しても良い。また、基材シート
の表面や裏面等の他層と接する面には、必要に応じ適
宜、他層との密着性を向上させるために、コロナ放電処
理、プラズマ処理、プライマー塗工等の易接着処理を施
しても良い。
【0045】〔各層の積層法〕なお、射出成形同時加飾
用シートの各層を積層して積層シートとするには、例え
ば、図1(A)の如き層構成の場合は、例えば、次の様
にすれば良い。透明アクリル樹脂の表面シート1の裏面
に絵柄インキ層2を印刷し、更に続いて接着剤層3を塗
工又は印刷して形成した印刷シートを用意する。そし
て、この印刷シートと本発明特定のABS樹脂からなる
基材シート4とを、前記印刷シートの接着剤層の熱融着
によって積層すれば良い。また、基材シートが2層構成
の場合は、第1基材シート4Aと第2基材シート4Bと
をそれぞれ用意し、これら両基材シート4A及び4B同
士を、熱融着法で、或いは間にウレタン樹脂系接着剤等
を用いたドライラミネーション法によって、貼り合わせ
て積層シートとなった基材シート4とする。或いは、両
基材シート4A及び4Bを、2層共押出法によってシー
ト成膜と同時に積層して積層シートとする。そして、後
は、前記同様に印刷シートとこの積層シートとを印刷シ
ート上の接着剤層の熱融着によって、積層すれば良い。
【0046】〔射出成形同時加飾用シートの被着体と積
層法〕本発明の射出成形同時加飾用シートは、射出成形
同時加飾方法に適用して、樹脂成形物からなる被着体に
積層し加飾する用途に用いる。被着体の樹脂成形物はと
しては、好適には、本射出成形同時加飾用シートとの密
着性が得られる点で、ABS樹脂からなる樹脂成形物で
ある。
【0047】しかし、変則的な使用法とはなるが、その
他の加飾方法への適用を制限するものでは無い。例え
ば、真空成形積層方法〔特公昭56−45768号公報
(オーバーレイ法)、特公昭60−58014号公報
(真空プレス法)等参照〕、ラッピング加工方法(特公
昭61−5895号公報、特公昭56−23771号公
報等参照)等である。但し、これらの他の加飾方法で
は、既に有形物の被着体に積層する関係上、射出成形同
時加飾用シートを被着体に接着させる為の接着剤を、被
着体或いは加飾用シートに施す必要がある。これに対し
て、射出成形同時加飾方法の場合では、この様な接着剤
無しに被着体に加飾用シートを積層できる上、被着体の
形状発現(成形)と同時に加飾でき生産性に優れる等の
利点がある。
【0048】なお、被着体の形状は、少なくともその加
飾面は射出成形同時加飾用シートの成形性を活かせる様
な形状が好適であるが、被着体の全体形状としては、射
出成形同時加飾用シートをその加飾面に積層できる形状
であればよく、板状(平板、曲面板)、柱状、三次元立
体物等と任意である。
【0049】加飾成形品:次に、本発明の加飾成形品
は、図3の断面図でその一形態を例示する如く、上述し
た如き構成の射出成形同時加飾用シートSが樹脂成形物
5の表面に積層された如き層構成の成形品である。な
お、同図では、射出成形同時加飾用シートSのシート内
層構成の図示は省略してあるが、この部分は図1や図2
の断面図で例示如き構成であり、その表面シート1に対
して基材シート4側を樹脂成形物5側を向く様にして樹
脂成形物5上に積層された構成である。なお、樹脂成形
物5上への射出成形同時加飾用シートSの積層は、好適
には射出成形同時加飾方法によって行える。
【0050】〔樹脂成形物〕本発明の加飾成形品に於け
る樹脂成形物5の樹脂としては、ABS樹脂(アクリロ
ニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂)であ
る。但し、前述射出成形同時加飾用シートの場合と異な
り、シート成形性は考慮する必要が無いので、そのブタ
ジエン比率は特に問わない。従って、樹脂成形物に用い
るABS樹脂としては、耐熱性、射出成形同時加飾用シ
ートとの密着性、射出成形適性、コスト等の加飾成形品
の要求性能に応じて、公知の各種グレードのABS樹脂
を使用すれば良い。また、樹脂成形物の樹脂中には、用
途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用
しても良い。着色剤には、前述絵柄インキ層で述べた如
き公知の着色剤を使用すれば良い。また、樹脂中には、
必要に応じ適宜、シリカ、アルミナ、タルク、炭酸カル
シウム、水酸化アルミニウム等の無機物粉末、ガラス繊
維等の充填剤、安定剤、滑剤、エラストマー等の公知の
各種添加剤を含有させる。
【0051】〔成形品形状〕なお、加飾成形品は、通
常、射出成形同時加飾用シートの積層面が凹凸面等と非
平面の立体物である。しかし、本発明の加飾成形品とし
ては、射出成形同時加飾用シートの積層面は平面だが他
の面が非平面の立体物、積層面が平面となる板状物を排
除するものではない。また、加飾成形品の全体形状は、
板状(平板、曲面板)、柱状、三次元立体物等と任意で
ある。
【0052】射出成形同時加飾方法:ここで、前述射出
成形同時加飾用シートの用途、或いは上述加飾成形品の
製造方法として好適な加飾方法である、射出成形同時加
飾方法について、更に詳述しておく。
【0053】射出成形同時加飾方法は、積層形態と転写
形態の2方式に大別されるが、本発明で関係するのは、
このうち積層形態の加飾方法である。積層形態の射出成
形同時加飾方法は、特公昭50−19132号公報、特
公昭43−27488号公報等に記載されるように、射
出成形同時加飾用シートを射出成形の雌雄両型間に配置
した後、流動状態の樹脂を型内に射出充填し、樹脂成形
物の成形と同時にその表面に射出成形同時加飾用シート
を積層して加飾して加飾成形品を得る方法である。
【0054】射出成形同時加飾方法では、射出成形同時
加飾用シートの予熱無しの場合でも、射出樹脂による熱
圧を射出成形同時加飾用シートが受ける。従って、射出
成形同時加飾用シートが備えた成形性を享受する為に
は、射出成形同時加飾用シートの予備成形は行う形態で
も行わない形態でも、いずれでも良い。また、射出成形
同時加飾用シートの予熱は、行っても良く、行わなくて
も良い。なお、通常は、射出成形同時加飾用シートの成
形性を最大限享受する為に、予備成形時には射出成形同
時加飾用シートは予熱する。
【0055】なお、もちろんの事だが、射出成形同時加
飾用シートの絞りが大きい場合は、予備成形を行うのが
好ましい。一方、射出成形同時加飾用シートの絞りが少
ない場合は、射出される流動状態の樹脂の樹脂圧と樹脂
熱で射出成形同時加飾用シートを成形しても良い。この
際、絞りが浅ければ、予備成形無しで樹脂射出と同時に
型内に充填される流動状態の樹脂の樹脂圧と樹脂熱のみ
で射出成形同時加飾用シートを成形しても良い。また、
樹脂圧と樹脂熱で射出成形同時加飾用シートを成形する
場合でも、射出成形同時加飾用シートの加熱は射出樹脂
の樹脂熱のみを利用し予熱はしない事もある。また、射
出成形同時加飾用シートの予備成形は、通常は、射出成
形型を真空成形型と兼用して行うが(インライン予備成
形)、型間に射出成形同時加飾用シートを供給する前
に、射出成形型外部で別の真空成形型で射出成形同時加
飾用シートを真空成形する様な予備成形(オフライン予
備成形)でも良い。但し、予備成形は、射出成形型と真
空成形型とを兼用して行う形態が効率的且つ精度良く射
出成形同時加飾用シートを積層できる点で好ましい。し
かし、予備成形済みの射出成形同時加飾用シートを予め
別の場所で纏めて製造しておく場合等では、予備成形は
オフライン予備成形の形態が好ましい。なお、本発明の
説明に於いて真空成形とは真空圧空成形も包含する。
【0056】図4の概念図によって、射出成形同時加飾
方法を、その或る一形態で説明する。同図に示す形態で
は、射出成形型とは別の型である真空成形型で、射出成
形同時加飾用シートを加熱し軟化させて予備成形した後
に、成形された射出成形同時加飾用シートを射出成形型
に挿入後、型締めして樹脂を射出する、オフライン予備
成形による形態である。次に、この図4を用いて、この
形態での射出成形同時加飾方法を更に説明する。また、
この形態は、上記した射出成形同時加飾用シートの予備
成形、予熱の各種組合わせ形態の中で、射出成形同時加
飾用シートの絞りが深い場合に、より好ましい形態であ
る。
【0057】先ず、図4(A)の如く、型面に吸引孔3
1等の吸引手段を有する真空成形型Mvを用いて、ヒー
タ32で加熱軟化させた射出成形同時加飾用シートを真
空成形により予備成形する。なお、真空成形型Mvは、
鉄やアルミニウム等の金属、或いはセラミックス等から
なる。また、射出成形同時加飾用シートSは適宜枠状の
シートクランプ33で固定する。この際、射出成形同時
加飾用シートの基材シート側は、射出樹脂側(図面上
方)となる向きとする。また、ヒータ32による加熱軟
化は、例えば非接触の輻射加熱とするが、接触による伝
導加熱でも良い。そして、予備成形は、吸引孔から吸引
して真空成形して、射出成形同時加飾用シートを真空成
形型Mvの型面に沿わせ真空成形する。なお、真空成形
は圧空も併用する真空圧空成形でも良く、これも包含す
る。
【0058】次いで、予備成形された射出成形同時加飾
用シートSを、図4(B)の如く、一対の射出成形型M
aとMbとの間に供給する。ここでは射出成形型Maの
方は射出ノズルと連通する湯道(ランナー)及び湯口
(ゲート)を有し、射出成形型Mbはそのキャビティ面
が前記予備成形型Mvの型面と同一又は略同一形状を成
し、予備成形済の射出成形同時加飾用シートを固定する
型となる。これらの型は鉄等の金属、或いはセラミック
スからなる。型開き状態に於いて両型Ma、Mb間に射
出成形同時加飾用シートSを供給し、型Mbに射出成形
同時加飾用シートSを枠状のシートクランプ34で押圧
する等して固定する。この際、射出成形同時加飾用シー
トの基材シート側は、図面右側の射出樹脂側となる様に
する事はもちろんである。次いで、図4(C)の如く両
型を型締めし、両型で形成されるキャビティに加熱熔融
状態等の流動状態の樹脂を充填する。そして、樹脂が冷
却等によって固化した後、型開きして成形物を取り出
す。また、射出成形同時加飾用シートの不要部分がある
場合は、それを適宜トリミングすれば、図3の断面図で
示した如き、樹脂成形物5の表面に射出成形同時加飾用
シートSが積層した構成の加飾成形品Pが得られるとい
う、加飾方法である。
【0059】射出成形同時加飾用シート及び加飾成形品
の用途:なお、上述した射出成形同時加飾用シートで表
面加飾した加飾成形品等の加飾物品の用途は、任意であ
るが、例えば、自動車等の車両の内装材又は外装材、幅
木、回縁等の造作部材、窓枠、扉枠等の建具、壁、床、
天井等の建築物の内装材、テレビ受像機、空調機等の家
電製品の筐体、容器等である。
【0060】
【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明を更に
詳述する。
【0061】〔実施例1〕図1の断面図で示す如き射出
成形同時加飾用シートSを次の様にして作製した。先
ず、ポリメチルメタクリレート(PMMA)を主成分と
する厚さ125μmで無色の透明アクリル樹脂シートを
表面シート1として用意した。そして、この表面シート
の裏側とする面に、バインダーの樹脂にアクリル樹脂と
塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との6対4質量比の混
合物を用い、着色剤にキナクリドンレッド、イソインド
リノン、フタロシアニンブルー、及びカーボンブラック
を用いた着色インキで、木目柄の絵柄インキ層2をグラ
ビア印刷法で形成し、更にその上に、アクリル樹脂と塩
化ビニル−酢酸ビニル共重合体との6対4質量比の混合
樹脂を用いた塗液をグラビアロールコート法で全面に厚
さ5μmの接着剤層3を形成して、印刷シートを作製し
た。
【0062】次に、基材シート4として、カーボンブラ
ック添加による着色で黒色隠蔽性とした厚さ200μm
のABS樹脂シート(ブタジエン比率は12質量%)
を、印刷シートの接着剤層3側と重ねて、輪転式熱プレ
ス機にて、これら両シートを熱融着により積層して、図
1の如き構成の射出成形同時加飾用シートSを作製し
た。
【0063】そして、上記射出成形同時加飾用シートS
を、図4の概念的な説明図で示した如きオフライン予備
成形の態様を採用した射出成形同時加飾方法によって、
射出樹脂としてはABS樹脂を使用して、樹脂成形物の
表面にその成形と同時に積層一体化して、図3の断面図
の如き、射出成形同時加飾用シートSが樹脂成形物5に
積層された加飾成形品Pを得た。なお、射出成形同時加
飾用シートの内容及び評価結果は、表1及び表2に纏め
て示す。
【0064】なお、射出成形同時加飾用シートの真空成
形は、図4(A)の様に、射出成形の雌型Mbと同じキ
ャビティ面を有するが、該雌型Mbとは別体の真空成形
型Mv上に、赤外線輻射式熱盤からなるヒータ32に
て、非接触状態で射出成形同時加飾用シートSを120
℃に加熱軟化させ、真空成形型Mvに穿設した吸引孔3
1から真空吸引して、真空成形型Mvのキャビティ面上
に予備成形し、冷却させて、予備成形済みの射出成形同
時加飾用シートを脱型した。そして、図4(B)の様
に、この予備成形済みの射出成形同時加飾用シートS
を、その基材シート側が射出成形用の雄型Ma側を向く
様にして、シートクランプ34で射出成形用の雌型Mb
に装着した後、図4(C)の様に、雌雄両型を型締め
し、雌雄両型で形成されるキャビティ内に、ノズル温度
220℃で加熱熔融したABS樹脂を射出充填し冷却固
化させると共に、該射出成形同時加飾用シートと一体化
させた加飾成形品とした後、雌雄両型を型開きし、該加
飾成形品を取り出した。
【0065】また、射出成形型の型温度は、30℃と5
0℃の2種類で行った。また、真空成形型(射出成形型
も同様)の絞り比は、面積絞り比で1.1と3.2の2
種類とした。
【0066】〔実施例2〕実施例1において、基材シー
トに用いたABS樹脂のブタジエン比率を、15質量%
に変更した他は、実施例1と同様にして射出成形同時加
飾用シートを作製した。そして、実施例1同様に加飾成
形品を作製した。
【0067】〔実施例3〕実施例1において、基材シー
トに用いたABS樹脂のブタジエン比率を、18質量%
に変更した他は、実施例1と同様にして射出成形同時加
飾用シートを作製した。そして、実施例1同様に加飾成
形品を作製した。
【0068】〔比較例1〕実施例1において、基材シー
トに用いたABS樹脂のブタジエン比率を、20質量%
に変更した他は、実施例1と同様にして射出成形同時加
飾用シートを作製した。そして、実施例1同様に加飾成
形品を作製した。
【0069】〔比較例2〕実施例1において、基材シー
トに用いたABS樹脂のブタジエン比率を、25質量%
に変更した他は、実施例1と同様にして射出成形同時加
飾用シートを作製した。そして、実施例1同様に加飾成
形品を作製した。
【0070】〔実施例4〕図2の断面図で示す如き、2
層構成の基材シートを用いた射出成形同時加飾用シート
Sを作製した。具体的には、2層構成の基材シート4と
して、先ず、ブタジエン比率15質量%のABS樹脂に
弁柄を添加して茶褐色に着色した隠蔽性の厚さ100μ
mの第1基材シート4Aと、ブタジエン比率25質量%
のABS樹脂にカーボンブラックを添加して黒色に着色
した隠蔽性の厚さ100μmの第2基材シート4Bとを
先ず用意した(表2参照)。そして、実施例1と同様に
して、表面シートに絵柄インキ層及び接着剤層を形成し
て作製した印刷シートに対して、その接着剤層側に、上
記第1基材シート及び第2基材シートをこの順に重ね、
輪転式熱プレス機にてこれらを熱融着させて積層し、図
2の如き射出成形同時加飾用シートSを得た。そして、
この射出成形同時加飾用シートを用いて、実施例1同様
に加飾成形品を作製した。
【0071】〔性能評価〕実施例及び比較例で得られた
射出成形同時加飾用シート及び加飾成形品にて、成形
性、及び密着性を評価したところ、表1及び表2に示す
如き結果となった。なお、成形性、密着性は、次の様に
して評価した。
【0072】(1)成形性:射出成形同時加飾用シート
の予備成形時の真空成形型への形状追従性不全、及びそ
れに起因する加飾成形品表面の皺、歪み、破れの発生が
目視で認められれば、不良(×)、認められなければ良
好(○)と評価した。なお、この加飾成形品上での成形
性評価については、射出成形型の型温度は30℃の場合
で行った。また、成形性は、面積比による絞り比が、
1.1と3.2となるそれぞれの部分で評価した。
【0073】(2)密着性:碁盤目テープ法によって層
間密着性を評価した。具体的には、加飾成形品の状態
で、射出成形同時加飾用シートの表面から基材シートの
表面にまで達する傷をカッタナイフで縦横に2mm間隔
で碁盤目状に11本×11本直交させて刻み込み、縦横
合計100個の碁盤目状の桝目を形成する。次いで、傷
の表面から、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社
製、「セロテープ」(登録商標)25mm幅、産業用)
を貼着した後、テープを剥離する。そして、表面シート
部分の枡目が剥がれずに残留した個数N(0≦N≦10
0)の、全桝目数100個に対する割合、N/100と
して評価する。N数が多いほど密着性が良い。なお、こ
の密着性は、射出成形型の型温度が30℃の場合と50
℃の場合の両方で評価した。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】表1の如く、実施例1〜実施例3は、それ
ぞれ密着性は100/100と良好で、また成形性は、
それぞれ面積絞り比が3.2の部分は不良となったが、
面積絞り比1.1の場合では良好となり、深絞り成形性
を要求しなければ、成形性は十分な性能であった。そし
て、基材シートを2層構成とした実施例4では、表2の
如く、面積絞り比が3.2となる深絞り成形性も含めて
全て良好となった。一方、比較例1及び比較例2は、表
1の如く、成形性が面積絞り比3.2でも良好となるも
のの、密着性が実施例より低下した。
【0077】
【発明の効果】(1)本発明の射出成形同時加飾用シー
トによれば、射出成形同時加飾用シート層内での層間密
着性が良好で、なお且つ成形性も得られる。また、AB
S樹脂の樹脂成形物に対する密着性も得られる。また、
塗装感も得られる。 (2)更に、基材シートをブタジエン比率を特定した2
層構成とすれば、成形性は向上して深絞り成形にも対応
可能となり、層間密着性と深絞り成形性が両立する。 (3)本発明の加飾成形品によれば、基材シートが単層
構成に場合では、樹脂成形物も含めて各層間の層間密着
性が良好となる。しかも、樹脂成形物上の各層を加飾用
シートとして樹脂成形物に積層して形成する際に、加飾
用シートの成形性も得られ、絞り部分も加飾された加飾
成形品が可能となる。また、塗装感も得られる。 (4)また、基材シートが2層構成の加飾成形品の場合
では、上記効果に加えて、樹脂成形物上の各層を加飾用
シートとして樹脂成形物に積層して形成する際に、加飾
用シートの成形性が向上して深絞り成形性も良好となる
ので、深絞り部分が加飾された加飾成形品も可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出成形同時加飾用シートの一形態を
例示する断面図。
【図2】本発明の射出成形同時加飾用シートの別の一形
態を示する断面図。
【図3】本発明の加飾成形品の一形態を例示する断面
図。
【図4】本発明の射出成形同時加飾用シートの一適用例
として、射出成形同時加飾方法をその一態様で説明する
概念図。
【符号の説明】
1 表面シート 2 絵柄インキ層 3 接着剤層 4 基材シート 4A 第1基材シート 4B 第2基材シート 5 樹脂成形物 31 吸引孔 32 ヒータ 33 シートクランプ 34 シートクランプ Ma 射出成形型(雄型) Mb 射出成形型(雌型) Mv 真空成形型 D 加飾成形品 S 射出成形同時加飾用シート
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4F100 AK15G AK15J AK22G AK22J AK25A AK25G AK74B AK74C AK74D AT00D BA02 BA03 BA04 BA07 BA10A BA10C CB00 EH36 GB08 GB33 GB81 HB00 HB31 JL01 JL11 JN01A 4F206 AA13 AD05 AD09 AD20 AH17 JA07 JB19 JF05 JL02

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 透明アクリル樹脂から成る表面シートの
    裏面に、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−
    酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、
    アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混
    合物から成る接着剤層、及び、ブタジエン成分の比率が
    20質量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチ
    レン共重合体樹脂から成る基材シートを、この順に積層
    して成る、射出成形同時加飾用シート。
  2. 【請求項2】 透明アクリル樹脂から成る表面シートの
    裏面に、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−
    酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、
    アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混
    合物から成る接着剤層、ブタジエン成分の比率が20質
    量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共
    重合体樹脂から成る第1基材シート、及び、ブタジエン
    成分の比率が20質量%以上のアクリロニトリル−ブタ
    ジエン−スチレン共重合体樹脂から成る第2基材シート
    とを、この順に積層して成る、射出成形同時加飾用シー
    ト。
  3. 【請求項3】 アクリロニトリル−ブタジエン−スチレ
    ン共重合体樹脂から成る樹脂成形物の表面に、ブタジエ
    ン成分の比率が20質量%未満のアクリロニトリル−ブ
    タジエン−スチレン共重合体樹脂から成る基材シート、
    アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混
    合物から成る接着剤層、バインダー樹脂がアクリル樹脂
    と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る
    絵柄インキ層、透明アクリル樹脂から成る表面シート
    を、この順に積層して成る加飾成形品。
  4. 【請求項4】 アクリロニトリル−ブタジエン−スチレ
    ン共重合体樹脂から成る樹脂成形物の表面に、基材シー
    トとしてブタジエン成分の比率が20質量%以上のアク
    リロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体樹脂から
    成る第2基材シート、及びブタジエン成分の比率が20
    質量%未満のアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン
    共重合体樹脂から成る第1基材シート、アクリル樹脂と
    塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物から成る接
    着剤層、バインダー樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−
    酢酸ビニル共重合体との混合物から成る絵柄インキ層、
    透明アクリル樹脂から成る表面シートを、この順に積層
    して成る加飾成形品。
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