JP2003136853A - 平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版用支持体及び平版印刷版原版

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JP2003136853A
JP2003136853A JP2001331333A JP2001331333A JP2003136853A JP 2003136853 A JP2003136853 A JP 2003136853A JP 2001331333 A JP2001331333 A JP 2001331333A JP 2001331333 A JP2001331333 A JP 2001331333A JP 2003136853 A JP2003136853 A JP 2003136853A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 断熱性に優れ、表面形状による現像性の低下
が抑制され、親水性が良好であり、高感度で、高画質の
画像形成が可能な平版印刷版用支持体、及び、それを用
いた高感度で、汚れのない画像を形成することができ、
簡易な印刷機上処理により製版可能な平版印刷版原版を
提供する。 【解決手段】 金属基板上に、(I)空隙率が5〜70
%、平均厚みが0.5〜10μmの陽極酸化皮膜、(I
I)珪酸塩化合物、水系エマルジョン樹脂及び酸化アル
ミニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化ケイ素粒子からな
る群より選択される酸化物粒子を含有する親水性層を、
順次備えることを特徴とする。この平版印刷版用支持体
上に、熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーや熱反応
性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルを
含有する感熱記録層を設けて平版印刷版原版とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は平版印刷版用支持体
及びそれを用いた平版印刷版原版に関し、詳しくは、断
熱性及び親水性に優れた平版印刷版用支持体及びそれを
用いた赤外線レーザにより高感度で記録が可能な平版印
刷版原版に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、コンピューターを始めとするデジ
タル技術の革新によって、印刷版の書き込みに用いられ
る露光方式も、紫外光の全面露光方式から、レーザービ
ームによる、高速走査露光方式が広がってきており、レ
ーザー露光対応のさまざまな平版印刷版が開発されてい
る。これらに用いられる支持体は、従来と同様のアルミ
ニウムに表面処理を施したものか、PETなどの合成樹
脂板がほとんどである。合成樹脂板製の支持体は印刷中
に寸法が変化し、画像がずれたり、キズが付きやすく、
耐刷性が劣る等の問題がある。アルミニウムに表面処理
を施した支持体は、レーザー光を光熱変換材料によって
熱に変え、その発生した熱によって記録層の材料物性を
変化させ、画像部と非画像部を形成するいわゆる感熱記
録層を有する平版印刷版では、発生した熱が支持体に拡
散し、支持体近傍でのは熱エネルギーが画像形成に有効
に働かず、樹脂などの熱伝導率が低い材料に比べて実質
的に感度が低下してしまう問題があった。
【0003】このような感熱記録層では、ポジ型の場合
には、熱が支持体内部に拡散してアルカリ可溶化反応が
不十分となると、本来の非画像部分に残膜が発生してし
まうという問題があり、ネガ型の場合には、支持体との
界面近傍において、記録層の硬化反応が充分に進行せ
ず、画像部の強度が不充分となり、耐刷性の低下を招く
といった問題があった。このようなサーマルポジ或いは
ネガタイプの平版印刷版原版においては、支持体の断熱
性を向上させるため、陽極酸化皮膜の空孔を広げる処理
を行ない、空隙率を上げる試みもなされているが、空孔
径を広げることにより、陽極酸化皮膜表面の開口部も大
きくなり、そこに、大きな分子である赤外線吸収剤が吸
着して除去しにくくなったり、開口部内に浸透した記録
層成分が現像液で充分に除去されず、非画像部の汚れが
発生しやすくなるという問題が生じる懸念がある。空隙
率の大きな陽極酸化皮膜を形成し、表面の空孔のみを封
孔することで、断熱性を維持しながら、表面の開口部に
起因する問題を解決し得るが、従来の封孔方法、例え
ば、熱水封孔、リン酸2水素ナトリウムや珪酸ナトリウ
ム水溶液による封孔方法では、微細な空孔には有効であ
るものの、大きな開口部については、封孔が充分に行な
われなかったり、処理液が空孔内に浸透して開口部を埋
めてしまい断熱性が低下するといった問題があった。
【0004】一方、近年、地球環境への関心が高まるに
つれて、湿式処理に伴って排出される廃液の処分が産業
界全体の大きな関心事となっており、従来の平版印刷版
に於ける製版工程、即ち、露光の後、非画像部をアルカ
リ現像液などにより溶解除去する、付加的な湿式処理工
程を不要化又は簡易化することへの要請は一層強くなっ
ている。
【0005】この要望に応じた簡易な製版方法の一つと
して、印刷版用原版の非画像部の除去を通常の印刷過程
の中で行えるような画像感熱記録層を用い、露光後、印
刷機上で現像し、最終的な印刷版を得る方法が提案され
ている。具体的には、露光後の平版印刷版原版を現像液
で処理することなく印刷機のシリンダーに装着し、シリ
ンダーを回転させながらインキおよび/または湿し水を
供給することによって、平版印刷版原版の非画像部を除
去する、所謂機上現像と呼ばれる方法である。このよう
な機上現像性に優れた感熱記録層に関する有望な技術の
一つとして、親水性バインダーポリマー中に疎水性熱可
塑性ポリマー粒子を分散させた親水層を画像形成感熱層
とする感熱性平版印刷版原版が挙げられる。この平版印
刷版原版は、感熱層に熱を加えると疎水性熱可塑性ポリ
マー粒子が融着し、親水性感熱層表面が親油性画像部に
変換するという原理を利用している。しかしながら、こ
のような熱による微粒子の合体で画像を形成する平版印
刷版原版は、良好な機上現像性を示すものの、アルミニ
ウム支持体への熱拡散により熱エネルギーが画像形成反
応に充分使用されず、感度が低いという問題や、微粒子
の合体が不十分である場合、感熱層の画像部の強度が弱
くなるために、耐刷性が不十分となるという問題があっ
た。この対策としては、例えば、特開2000−239
83号公報には、アルミニウム支持体と感熱層との間に
水不溶性有機ポリマーを設ける方法が提案されている
が、この態様では感度向上の効果はあるものの、支持体
表面の親水性が不充分で、非画像に汚れが生じやすいと
いう問題点があった。また、断熱性を向上させるための
陽極酸化皮膜の表面開口部に画像形成層の材料が入りこ
み、機上現像性を損なうといった懸念もあった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、断熱性に優れ、且つ、表面形状による現像性の低下
が抑制され、親水性が良好であり、感熱性の平版印刷版
に用いた場合でも、高感度で、高画質の画像形成が可能
な平版印刷版用支持体、及び、該支持体を用いた簡易な
印刷機上処理により製版可能であり、且つ、高感度で、
汚れのない画像を形成することができ、耐刷性に優れた
平版印刷版原版を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意検討
の結果、金属基体上に、特定の空隙率を有する皮膜と、
珪酸塩化合物および親水性エマルジョン樹脂を含む親水
性層とを順次備えることで、前記課題を解決し得ること
を見出し、本発明を完成した。即ち、本発明の平版印刷
版用支持体は、金属基板上に、(I)空隙率が5〜70
%、平均厚みが0.5〜10μmの陽極酸化皮膜、(I
I)珪酸塩化合物、水系エマルジョン樹脂及び酸化アル
ミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素からなる群より選択
される酸化物粒子を含有する親水性層を、順次備えるこ
とを特徴とする。この親水性層は、平均厚みが0.05
〜5μmであることが好ましい。また、ここに含まれる
酸化物粒子の平均粒径が、陽極酸化皮膜表面の平均開口
径をd1(nm)としたとき、〔d1±20(nm)〕
の範囲にあることが好ましい。また、本発明の請求項4
に係る平版印刷版原版は、金属基板上に、(I)空隙率
が5〜70%、平均厚みが0.5〜10μmの陽極酸化
皮膜、(II)珪酸塩化合物、水系エマルジョン樹脂及び
酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素からなる群
より選択される酸化物粒子を含有する親水性層を、順次
備える支持体上に、(i)熱反応性官能基を有する微粒
子ポリマー、または、(ii)熱反応性官能基を有する化
合物を内包するマイクロカプセルを含有し、赤外線露光
により記録可能な感熱記録層を設けてなることを特徴と
する。
【0008】本発明の平版印刷版用支持体は、金属基板
上に、(I)空隙率が5〜70%、平均厚みが0.5〜
10μmの陽極酸化皮膜、(II)珪酸塩化合物、水系エ
マルジョン樹脂及び酸化アルミニウム、酸化チタン、酸
化ケイ素からなる群より選択される酸化物粒子を含有す
る親水性層を、順次備えることで、陽極酸化皮膜の空孔
が親水性層により効果的に封孔されるため、優れた断熱
性を維持しながら、空孔内への記録層成分の浸透が抑制
され、高感度化と現像性の低下による残膜の発生が抑制
されるのもと考えられる。このとき、支持体の最上層と
なる親水性層は、主成分として珪酸塩化合物を使用する
ことで、高い親水性を達成し得るとともに、水系エマル
ジョン由来の樹脂微粒子と酸化アルミなどの粒子とを併
用することで、これらの粒子が珪酸塩化合物皮膜中の細
孔の充填による皮膜の強度向上と、陽極酸化皮膜開口部
への進入の抑制による効果的な封孔とを達成する。詳細
には、本発明の構成要件である珪酸塩化合物は親水位が
高く、引っ掻き等に対する強度が高いが、単独で使用し
た場合には、乾燥時にひび割れが発生し、そのひび割れ
部分から水が浸透して、解離した水分子のOHによっ
て、Si−O−SiネットワークのSi−Oが切断さ
れ、結果的に水に溶解しやすくなる傾向がある。また、
親水性が高すぎるので、親水性層上に珪酸塩化合物含有
層を形成すると、感熱記録層との密着性がやや劣る傾向
にある。そこで、本発明においては、特定の水系エマル
ジョン樹脂を併用した。水系エマルジョン樹脂との相互
作用により、乾燥時のひび割れが抑制され、さらに、水
が皮膜内部に浸透し難くなり、大幅に耐水性が向上す
る。また、層中に含まれるエマルジョン樹脂の機能によ
り、感熱記録層との密着性を大幅に向上することができ
た。多孔質の皮膜状に上記親水性層を形成すると、特
に、0.5μm以下の薄層で使用する場合に、粘度が低
いので、多孔質中に吸い込まれてしまい、結果的に、空
隙率が低下してしまう。そこで、親水性の酸化物微粒子
を添加する事で、酸化物微粒子が多孔質表面を物理的に
塞ぐので、多孔質体の空隙率を維持したまま、親水性皮
膜を形成することが可能になった。
【0009】また、本発明の平版印刷版原版では、ポリ
マー中に疎水性熱可塑性ポリマー粒子を分散させてなる
感熱記録層を設けることで、充分な親水性を有する支持
体表面の機能により、未露光部の親水性バインダーは湿
し水などの僅かな水分で容易に除去され、また、支持体
表面の微細な空孔への画像形成材料の浸透も生じないこ
とから、機上現像性に優れるとともに、露出した支持体
表面の優れた撥インク性により、非画像部に汚れのない
良好な画質の画像が形成される。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の平版印刷版に用いられる支持体の構成に
ついて述べる。この支持体は、金属基板上に、特定の空
隙率を有する断熱性の高い皮膜と、珪酸塩化合物および
親水性エマルジョン樹脂、酸化アルミニウム、酸化チタ
ン、酸化ケイ素からなる群より選択される酸化物微粒子
を含有する親水性層を備えてなる。
【0011】[平版印刷版用支持体] <金属基体>本発明の平版印刷版用支持体に用いられる
金属基体は、特に限定されず、例えば、鉄、ステンレ
ス、アルミニウムが挙げられる。中でも、アルミニウム
が好ましい。アルミニウム基体として用いられるアルミ
ニウム板は、寸度的に安定なアルミニウムを主成分とす
る金属であり、アルミニウムまたはアルミニウム合金か
らなる。 純アルミニウム板のほか、アルミニウムを主成
分とし微量の異元素を含む合金板や、アルミニウムまた
はアルミニウム合金がラミネートされまたは蒸着された
プラスチックフィルムまたは紙を用いることもできる。
更に、特公昭48−18327号公報に記載されている
ようなポリエチレンテレフタレートフィルム上にアルミ
ニウムシートが結合された複合体シートを用いることも
できる。
【0012】本発明に用いられるアルミニウム板は、特
に限定されないが、純アルミニウム板を用いるのが好適
である。完全に純粋なアルミニウムは精練技術上、製造
が困難であるので、わずかに異元素を含有するものを用
いてもよい。例えば、アルミニウムハンドブック第4版
(軽金属協会(1990))に記載の公知の素材のも
の、具体的には、JIS1050材、JIS1100
材、JIS3003材、JIS3103材、JIS30
05材等を用いることができる。また、アルミニウム
(Al)の含有率が99.4〜95質量%であって、鉄
(Fe)、ケイ素(Si)、銅(Cu)、マグネシウム
(Mg)、マンガン(Mn)、亜鉛(Zn)、クロム
(Cr)、およびチタン(Ti)のうち少なくとも5種
以上を後述する範囲内で含む、アルミニウム合金、スク
ラップアルミ材または二次地金を使用したアルミニウム
板を使用することもできる。
【0013】また、本発明においては、コスト削減効果
のある、Alの含有率が95〜99.4質量%のアルミ
ニウム板を用いることもできる。Alの含有率が99.
4質量%を超えると、不純物の許容量が少なくなるた
め、コスト削減効果が減少してしまう場合がある。ま
た、Alの含有率が95質量%未満であると不純物を多
く含むこととなり圧延中に割れ等の不具合が発生してし
まう場合がある。より好ましいAlの含有率は95〜9
9質量%であり、特に好ましくは95〜97質量%であ
る。
【0014】Feの含有率は0.3〜1.0質量%であ
るのが好ましい。Feは新地金においても0.1〜0.
2質量%前後含有される元素で、Al中に固溶する量は
少なく、ほとんどが金属間化合物として残存する。Fe
の含有率が1.0質量%を超えると圧延途中に割れが発
生しやすくなり、0.3質量%未満であるとコスト削減
効果が減少するため好ましくない。より好ましいFeの
含有率は0.5〜1.0質量%である。
【0015】Siの含有率は0.15〜1.0質量%で
あるのが好ましい。SiはJIS2000系、4000
系、6000系材料のスクラップに多く含まれる元素で
ある。また、Siは新地金においても0.03〜0.1
質量%前後含有される元素であり、Al中に固溶した状
態で、または、金属間化合物として存在する。アルミニ
ウム板が支持体の製造過程で加熱されると、固溶してい
たSiが単体Siとして析出することがある。単体Si
とFeSi系の金属間化合物は耐苛酷インキ汚れ性に悪
影響を与えることが知られている。ここで、「苛酷イン
キ汚れ」とは、印刷を何度も中断しつつ行った場合に、
平版印刷版の非画像部表面部分にインキが付着しやすく
なった結果、印刷された紙等に表れる点状または円環状
の汚れをいう。Siの含有率が1.0質量%を超える
と、例えば、後述する硫酸による処理(デスマット処
理)でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.15
質量%未満であると、コスト削減効果が減少してしま
う。より好ましいSiの含有率は0.3〜1.0質量%
である。
【0016】Cuの含有率は0.1〜1.0質量%であ
るのが好ましい。CuはJIS2000系、4000系
材料のスクラップに多く含まれる元素である。Cuは比
較的Alに中に固溶しやすい。Cuの含有率が1.0質
量%を超えると、例えば、後述する硫酸による処理でこ
れを除去し切れなくなる場合があり、0.1質量%未満
であると、コスト削減効果が減少してしまう。より好ま
しいCuの含有率は0.3〜1.0質量%である。
【0017】Mgの含有率は0.1〜1.5質量%であ
るのが好ましい。MgはJIS2000系、3000
系、5000系、7000系材料のスクラップに多く含
まれる元素である。特にcan end材に多く含まれ
るため、スクラップ材に含まれる主要な不純物金属の一
つである。Mgは比較的Al中に固溶しやすく、Siと
金属間化合物を形成する。Mgの含有率が1.5質量%
を超えると、例えば、後述する硫酸による処理でこれを
除去し切れなくなる場合があり、0.1質量%未満であ
ると、コスト削減効果が減少してしまう。より好ましい
Mgの含有率は0.5〜1.5質量%であり、更に好ま
しくは1.0〜1.5質量%である。
【0018】Mnの含有率は0.1〜1.5質量%であ
るのが好ましい。MnはJIS3000系材料のスクラ
ップに多く含まれる元素である。Mnは特にcan b
ody材に多く含まれるため、スクラップ材に含まれる
主要な不純物金属の一つである。Mnは比較的Al中に
固溶しやすく、Al、FeおよびSiと金属間化合物を
形成する。Mnの含有率が1.5質量%を超えると、例
えば、後述する硫酸による処理でこれを除去し切れなく
なる場合があり、0.1質量%未満であると、コスト削
減効果が減少してしまう。より好ましいMnの含有率は
0.5〜1.5質量%であり、更に好ましくは1.0〜
1.5質量%である。
【0019】Znの含有率は0.1〜0.5質量%であ
るのが好ましい。Znは特にJIS7000系のスクラ
ップに多く含まれる元素である。Znは比較的Al中に
固溶しやすい。Znの含有率が0.5質量%を超える
と、例えば、後述する硫酸による処理でこれを除去し切
れなくなる場合があり、0.1質量%未満であると、コ
スト削減効果が減少してしまう。より好ましいZnの含
有率は0.3〜0.5質量%である。
【0020】Crの含有率は0.01〜0.1質量%で
あるのが好ましい。CrはJISA5000系、600
0系、7000系のスクラップに少量含まれる不純物金
属である。Crの含有率が0.1質量%を超えると、例
えば、後述する硫酸による処理でこれを除去し切れなく
なる場合があり、0.01質量%未満であると、コスト
削減効果が減少してしまう。より好ましいCrの含有率
は0.05〜0.1質量%である。
【0021】Tiの含有率は0.03〜0.5質量%で
あるのが好ましい。Tiは通常結晶微細化材として0.
01〜0.04質量%添加される元素である。JIS5
000系、6000系、7000系のスクラップには不
純物金属として比較的多めに含まれる。Tiの含有率が
0.5質量%を超えると、例えば、後述する硫酸による
処理でこれを除去し切れなくなる場合があり、0.03
質量%未満であると、コスト削減効果が減少してしま
う。より好ましいTiの含有率は0.05〜0.5質量
%である。
【0022】本発明に用いられるアルミニウム板は、上
記原材料を用いて常法で鋳造したものに、適宜圧延処理
や熱処理を施し、厚さを例えば、0.1〜0.7mmと
し、必要に応じて平面性矯正処理を施して製造される。
この厚さは、印刷機の大きさ、印刷板の大きさおよびユ
ーザーの希望により、適宜変更することができる。な
お、上記アルミニウム板の製造方法としては、例えば、
DC鋳造法、DC鋳造法から均熱処理および/または焼
鈍処理を省略した方法、ならびに、連続鋳造法を用いる
ことができる。
【0023】本発明の平版印刷版用支持体は、上記金属
基体に粗面化処理を施し、更に、特定の熱的特性を有す
る皮膜及び親水性層を形成して得られるが、本発明の平
版印刷版用支持体の製造工程には、粗面化処理および二
層の皮膜の形成以外の各種の工程が含まれていてもよ
い。以下、金属基体としてアルミニウム板を用いる場合
を例に挙げて、本発明の平版印刷版用支持体について説
明する。
【0024】上記アルミニウム板は、付着している圧延
油を除く脱脂工程、アルミニウム板の表面のスマットを
溶解するデスマット処理工程、アルミニウム板の表面を
粗面化する粗面化処理工程、アルミニウム板の表面を酸
化皮膜で覆う陽極酸化処理工程等を経て、支持体とされ
るのが好ましい。本発明の平版印刷版用支持体の製造工
程は、酸性水溶液中で交流電流を用いてアルミニウム板
を電気化学的に粗面化する粗面化処理(電気化学的粗面
化処理)を含むのが好ましい。また、本発明の平版印刷
版用支持体の製造工程は、上記電気化学的粗面化処理の
他に、機械的粗面化処理、酸またはアルカリ水溶液中で
の化学的エッチング処理等を組み合わせたアルミニウム
板の表面処理工程を含んでもよい。本発明の平版印刷版
用支持体の粗面化処理等の製造工程は、連続法でも断続
法でもよいが、工業的には連続法を用いるのが好まし
い。本発明の平版印刷版用支持体においては、金属基体
上に特定の熱伝導率を有する親水性皮膜及び後述する親
水性層が設けられる。更に、必要に応じて、ポアワイド
処理(酸処理またはアルカリ処理)などを経て、支持体
が形成される。更に、必要に応じて支持体形成後に、下
塗層を設けてもよい。
【0025】<粗面化処理(砂目立て処理)>まず、粗
面化処理について説明する。上記アルミニウム板は、よ
り好ましい形状に砂目立て処理される。砂目立て処理方
法は、特開昭56−28893号公報に記載されている
ような機械的砂目立て(機械的粗面化処理)、化学的エ
ッチング、電解グレイン等がある。更に、塩酸電解液中
または硝酸電解液中で電気化学的に砂目立てする電気化
学的砂目立て法(電気化学的粗面化処理、電解粗面化処
理)や、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワ
イヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウ
ム表面を砂目立てするボールグレイン法、ナイロンブラ
シと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法等の
機械的砂目立て法(機械的粗面化処理)を用いることが
できる。これらの砂目立て法は、単独でまたは組み合わ
せて用いることができる。例えば、ナイロンブラシと研
磨剤とによる機械的粗面化処理と、塩酸電解液または硝
酸電解液による電解粗面化処理との組み合わせや、複数
の電解粗面化処理の組み合わせが挙げられる。中でも、
電気化学的粗面化処理が好ましい。また、機械的粗面化
処理と電気化学的粗面化処理とを組み合わせて行うのも
好ましく、特に、機械的粗面化処理の後に電気化学的粗
面化処理を行うのが好ましい。
【0026】機械的粗面化処理は、ブラシ等を使用して
アルミニウム板表面を機械的に粗面化する処理であり、
上述した電気化学的粗面化処理の前に行われるのが好ま
しい。好適な機械的粗面化処理においては、毛径が0.
07〜0.57mmである回転するナイロンブラシロー
ルと、アルミニウム板表面に供給される研磨剤のスラリ
ー液とで処理する。
【0027】ナイロンブラシは吸水率が低いものが好ま
しく、例えば、東レ社製のナイロンブリッスル200T
(6,10−ナイロン、軟化点:180℃、融点:21
2〜214℃、比重:1.08〜1.09、水分率:2
0℃・相対湿度65%において1.4〜1.8、20℃
・相対湿度100%において2.2〜2.8、乾引っ張
り強度:4.5〜6g/d、乾引っ張り伸度:20〜3
5%、沸騰水収縮率:1〜4%、乾引っ張り抵抗度:3
9〜45g/d、ヤング率(乾):380〜440kg
/mm2 )が好ましい。
【0028】研磨剤としては公知のものを用いることが
できるが、特開平6−135175号公報および特公昭
50−40047号公報に記載されているケイ砂、石
英、水酸化アルミニウム、またはこれらの混合物を用い
るのが好ましい。
【0029】スラリー液としては、比重が1.05〜
1.3の範囲内にあるものが好ましい。スラリー液をア
ルミニウム板表面に供給する方法としては、例えば、ス
ラリー液を吹き付ける方法、ワイヤーブラシを用いる方
法、凹凸を付けた圧延ロールの表面形状をアルミニウム
板に転写する方法が挙げられる。また、特開昭55−0
74898号公報、同61−162351号公報、同6
3−104889号公報に記載されている方法を用いて
もよい。更に、特表平9−509108号公報に記載さ
れているように、アルミナおよび石英からなる粒子の混
合物を95:5〜5:95の範囲の質量比で含んでなる
水性スラリー中で、アルミニウム板表面をブラシ研磨す
る方法を用いることもできる。このときの上記混合物の
平均粒子径は、1〜40μm、特に1〜20μmの範囲
内であるのが好ましい。
【0030】電気化学的粗面化処理は、酸性水溶液中
で、アルミニウム板を電極として交流電流を通じ、該ア
ルミニウム板の表面を電気化学的に粗面化する工程であ
り、後述の機械的粗面化処理とは異なる。本発明におい
ては、上記電気化学的粗面化処理において、アルミニウ
ム板が陰極となるときにおける電気量、即ち、陰極時電
気量QC と、陽極となるときにおける電気量、即ち、陽
極時電気量QA との比QC /QA を、例えば、0.95
〜2.5の範囲内とすることで、アルミニウム板の表面
に均一なハニカムピットを生成することができる。QC
/QA が0.95未満であると、不均一なハニカムピッ
トとなりやすく、また、2.5を超えても、不均一なハ
ニカムピットとなりやすい。QC /QA は、1.5〜
2.0の範囲内とするのが好ましい。
【0031】電気化学的粗面化処理に用いられる交流電
流の波形としては、サイン波、矩形波、三角波、台形波
等が挙げられる。中でも、矩形波または台形波が好まし
い。また、交流電流の周波数は、電源装置を製作するコ
ストの観点から、30〜200Hzであるのが好まし
く、40〜120Hzであるのがより好ましい。本発明
に好適に用いられる台形波の一例を図1に示す。図1に
おいて、縦軸は電流値、横軸は時間を示す。また、ta
はアノード反応時間、tcはカソード反応時間、tpお
よびtp´はそれぞれ電流値が0からピークに達するま
での時間、Iaはアノードサイクル側のピーク時の電
流、Icはカソードサイクル側のピーク時の電流を示
す。交流電流の波形として台形波を用いる場合、電流が
0からピークに達するまでの時間tpおよびtp´はそ
れぞれ0.1〜2msecであるのが好ましく、0.3
〜1.5msecであるのがより好ましい。tpおよび
tp´が0.1msec未満であると、電源回路のイン
ピーダンスが影響し、電流波形の立ち上がり時に大きな
電源電圧が必要となり、電源の設備コストが高くなる場
合がある。また、tpおよびtp´が2msecを超え
ると、酸性水溶液中の微量成分の影響が大きくなり、均
一な粗面化処理が行われにくくなる場合がある。
【0032】また、電気化学的粗面化処理に用いられる
交流電流のdutyは、アルミニウム板表面を均一に粗
面化する点から0.25〜0.5の範囲内とするのが好
ましく、0.3〜0.4の範囲内とするのがより好まし
い。本発明でいうdutyとは、交流電流の周期Tにお
いて、アルミニウム板の陽極反応が持続している時間
(アノード反応時間)をtaとしたときのta/Tをい
う。特に、カソード反応時のアルミニウム板表面には、
水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分の生成に
加え、酸化皮膜の溶解や破壊が発生し、次のアルミニウ
ム板のアノード反応時におけるピッティング反応の開始
点となるため、交流電流のdutyの選択は均一な粗面
化に与える効果が大きい。
【0033】交流電流の電流密度は、台形波または矩形
波の場合、アノードサイクル側のピーク時の電流密度I
apおよびカソードサイクル側のピーク時の電流密度I
cpがそれぞれ10〜200A/dm2となるのが好ま
しい。また、Icp/Iapは、0.9〜1.5の範囲
内にあるのが好ましい。電気化学的粗面化処理におい
て、電気化学的粗面化処理が終了した時点でのアルミニ
ウム板のアノード反応に用いた電気量の総和は、50〜
1000C/dm 2であるのが好ましい。電気化学的粗
面化処理の時間は、1秒〜30分であるのが好ましい。
【0034】電気化学的粗面化処理に用いられる酸性水
溶液としては、通常の直流電流または交流電流を用いた
電機化学的粗面化処理に用いるものを用いることがで
き、その中でも硝酸を主体とする酸性水溶液または塩酸
を主体とする酸性水溶液を用いることが好ましい。ここ
で、「主体とする」とは、水溶液中に主体となる成分
が、成分全体に対して、30質量%以上、好ましくは5
0質量%以上含まれていることをいう。以下、他の成分
においても同様である。
【0035】硝酸を主体とする酸性水溶液としては、上
述したように、通常の直流電流または交流電流を用いた
電気化学的粗面化処理に用いるものを用いることができ
る。例えば、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸
アンモニウム等の硝酸化合物のうち一つ以上を、0.0
1g/Lから飽和に達するまでの濃度で、硝酸濃度5〜
15g/Lの硝酸水溶液に添加して使用することができ
る。硝酸を主体とする酸性水溶液中には、鉄、銅、マン
ガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、ケイ素等のア
ルミニウム合金中に含まれる金属等が溶解されていても
よい。
【0036】硝酸を主体とする酸性水溶液としては、中
でも、硝酸と、アルミニウム塩と、硝酸塩とを含有し、
かつ、アルミニウムイオンが1〜15g/L、好ましく
は1〜10g/L、アンモニウムイオンが10〜300
ppmとなるように、硝酸濃度5〜15g/Lの硝酸水
溶液中に硝酸アルミニウムおよび硝酸アンモニウムを添
加して得られたものを用いることが好ましい。なお、上
記アルミニウムイオンおよびアンモニウムイオンは、電
気化学的粗面化処理を行っている間に自然発生的に増加
していくものである。また、この際の液温は10〜95
℃であるのが好ましく、20〜90℃であるのがより好
ましく、40〜80℃であるのが特に好ましい。
【0037】電気化学的粗面化処理においては、縦型、
フラット型、ラジアル型等の公知の電解装置を用いるこ
とができるが、特開平5−195300号公報に記載さ
れているようなラジアル型電解装置が特に好ましい。図
2は、本発明に好適に用いられるラジアル型電解装置の
概略図である。図2において、ラジアル型電解装置は、
アルミニウム板11が主電解槽21中に配置されたラジ
アルドラムローラ12に巻装され、搬送過程で交流電源
20に接続された主極13aおよび13bによって電解
処理される。酸性水溶液14は、溶液供給口15からス
リット16を通じてラジアルドラムローラ12と主極1
3aおよび13bとの間にある溶液通路17に供給され
る。ついで、主電解槽21で処理されたアルミニウム板
11は、補助陽極槽22で電解処理される。この補助陽
極槽22には補助陽極18がアルミニウム板11と対向
配置されており、酸性水溶液14は、補助陽極18とア
ルミニウム板11との間を流れるように供給される。な
お、補助電極に流す電流は、サイリスタ19aおよび1
9bにより制御される。
【0038】主極13aおよび13bは、カーボン、白
金、チタン、ニオブ、ジルコニウム、ステンレス、燃料
電池用陰極に用いる電極等から選定することができる
が、カーボンが特に好ましい。カーボンとしては、一般
に市販されている化学装置用不浸透性黒鉛や、樹脂含芯
黒鉛等を用いることができる。補助陽極18は、フェラ
イト、酸化イリジウム、白金、または、白金をチタン、
ニオブ、ジルコニウム等のバルブ金属にクラッドもしく
はメッキしたもの等公知の酸素発生用電極から選定する
ことができる。
【0039】主電解槽21および補助陽極槽22内を通
過する酸性水溶液の供給方向はアルミニウム板11の進
行とパラレルでもカウンターでもよい。アルミニウム板
に対する酸性水溶液の相対流速は、10〜1000cm
/secであるのが好ましい。一つの電解装置には1個
以上の交流電源を接続することができる。また、2個以
上の電解装置を使用してもよく、各装置における電解条
件は同一であってもよいし異なっていてもよい。また、
電解処理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さ
ないためにニップローラによる液切りとスプレーによる
水洗とを行うのが好ましい。
【0040】上記電解装置を用いる場合においては、電
解装置中のアルミニウム板がアノード反応する酸性水溶
液の通電量に比例して、例えば、(i)酸性水溶液の導
電率と(ii)超音波の伝搬速度と(iii)温度とから求
めた硝酸およびアルミニウムイオン濃度をもとに、硝酸
と水の添加量を調節しながら添加し、硝酸と水の添加容
積と同量の酸性水溶液を逐次電解装置からオーバーフロ
ーさせて排出することで、上記酸性水溶液の濃度を一定
に保つのが好ましい。
【0041】つぎに、酸性水溶液中またはアルカリ水溶
液中での化学的エッチング処理、デスマット処理等の表
面処理について順を追って説明する。上記表面処理は、
それぞれ上記電気化学的粗面化処理の前、または、上記
電気化学的粗面化処理の後であって後述する陽極酸化処
理の前において行われる。ただし、以下の各表面処理の
説明は例示であり、本発明は、以下の各表面処理の内容
に限定されるものではない。また、上記表面処理を初め
とする以下の各処理は任意で施される。
【0042】<アルカリエッチング処理>アルカリエッ
チング処理は、アルカリ水溶液中でアルミニウム板表面
を化学的にエッチングする処理であり、上記電気化学的
粗面化処理の前と後のそれぞれにおいて行うのが好まし
い。また、電気化学的粗面化処理の前に機械的粗面化処
理を行う場合には、機械的粗面化処理の後に行うのが好
ましい。アルカリエッチング処理は、短時間で微細構造
を破壊することができるので、後述する酸性エッチング
処理よりも有利である。アルカリエッチング処理に用い
られるアルカリ水溶液としては、カセイソーダ、炭酸ソ
ーダ、アルミン酸ソーダ、メタケイ酸ソーダ、リン酸ソ
ーダ、水酸化カリウム、水酸化リチウム等の1種または
2種以上を含有する水溶液が挙げられる。特に、水酸化
ナトリウム(カセイソーダ)を主体とする水溶液が好ま
しい。アルカリ水溶液は、アルミニウムはもちろん、ア
ルミニウム板中に含有される合金成分を0.5〜10質
量%を含有していてもよい。アルカリ水溶液の濃度は、
1〜50質量%であるのが好ましく、1〜30質量%で
あるのがより好ましい。
【0043】アルカリエッチング処理は、アルカリ水溶
液の液温を20〜100℃、好ましくは40〜80℃の
間とし、1〜120秒間、好ましくは2〜60秒間処理
することにより行うのが好ましい。アルミニウムの溶解
量は、機械的粗面化処理の後に行う場合は5〜20g/
2であるのが好ましく、電気化学的粗面化処理の後に
行う場合は0.01〜20g/m2であるのが好まし
い。最初にアルカリ水溶液中で化学的なエッチング液を
ミキシングするときには、液体水酸化ナトリウム(カセ
イソーダ)とアルミン酸ナトリウム(アルミン酸ソー
ダ)とを用いて処理液を調製することが好ましい。ま
た、アルカリエッチング処理が終了した後には、処理液
を次工程に持ち出さないために、ニップローラによる液
切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ましい。
【0044】アルカリエッチング処理を電気化学的粗面
化処理の後に行う場合、電気化学的粗面化処理により生
じたスマットを除去することができる。このようなアル
カリエッチング処理としては、例えば、特開昭53−1
2739号公報に記載されているような50〜90℃の
温度の15〜65質量%の硫酸と接触させる方法および
特公昭48−28123号公報に記載されているアルカ
リエッチングする方法が好適に挙げられる。
【0045】<酸性エッチング処理>酸性エッチング処
理は、酸性水溶液中でアルミニウム板を化学的にエッチ
ングする処理であり、上記電気化学的粗面化処理の後に
行うのが好ましい。また、上記電気化学的粗面化処理の
前および/または後に上記アルカリエッチング処理を行
う場合は、アルカリエッチング処理の後に酸性エッチン
グ処理を行うのも好ましい。アルミニウム板に上記アル
カリエッチング処理を施した後に、上記酸性エッチング
処理を施すと、アルミニウム板表面のシリカを含む金属
間化合物または単体Siを除去することができ、その後
の陽極酸化処理において生成する陽極酸化皮膜の欠陥を
なくすことができる。その結果、印刷時にチリ状汚れと
称される非画像部に点状のインクが付着するトラブルを
防止することができる。
【0046】酸性エッチング処理に用いられる酸性水溶
液としては、リン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、ま
たはこれらの2種以上の混酸を含有する水溶液が挙げら
れる。中でも、硫酸水溶液が好ましい。酸性水溶液の濃
度は、50〜500g/Lであるのが好ましい。酸性水
溶液は、アルミニウムはもちろん、アルミニウム板中に
含有される合金成分を含有していてもよい。
【0047】酸性エッチング処理は、液温を60〜90
℃、好ましくは70〜80℃とし、1〜10秒間処理す
ることにより行うのが好ましい。このときのアルミニウ
ム板の溶解量は0.001〜0.2g/m2であるのが
好ましい。また、酸濃度、例えば、硫酸濃度とアルミニ
ウムイオン濃度は、常温で晶出しない範囲から選択する
ことが好ましい。好ましいアルミニウムイオン濃度は
0.1〜50g/Lであり、特に好ましくは5〜15g
/Lである。また、酸性エッチング処理が終了した後に
は、処理液を次工程に持ち出さないために、ニップロー
ラによる液切りとスプレーによる水洗とを行うのが好ま
しい。
【0048】<デスマット処理>上記電気化学的粗面化
処理の前および/または後に上記アルカリエッチング処
理を行う場合は、アルカリエッチング処理により、一般
にアルミニウム板の表面にスマットが生成するので、リ
ン酸、硝酸、硫酸、クロム酸、塩酸、フッ酸、ホウフッ
化水素酸、またはこれらの2種以上の混酸を含有する酸
性溶液中で上記スマットを溶解する、いわゆるデスマッ
ト処理をアルカリエッチング処理の後に行うのが好まし
い。なお、アルカリエッチング処理の後には、酸性エッ
チング処理およびデスマット処理のうち、いずれか一方
を行えば十分である。
【0049】酸性溶液の濃度は、1〜500g/Lであ
るのが好ましい。酸性溶液中にはアルミニウムはもちろ
ん、アルミニウム板中に含有される合金成分が0.00
1〜50g/L溶解していてもよい。酸性溶液の液温
は、20℃〜95℃であるのが好ましく、30〜70℃
であるのがより好ましい。また、処理時間は1〜120
秒であるのが好ましく、2〜60秒であるのがより好ま
しい。また、デスマット処理液(酸性溶液)としては、
上記電気化学的粗面化処理で用いた酸性水溶液の廃液を
用いるのが、廃液量削減の上で好ましい。デスマット処
理が終了した後には、処理液を次工程に持ち出さないた
めにニップローラによる液切りとスプレーによる水洗と
を行うのが好ましい。
【0050】これらの表面処理の組み合わせとして、好
ましい態様を以下に示す。まず、機械的粗面化処理およ
び/またはアルカリエッチング処理を行い、その後、デ
スマット処理を行う。つぎに、電気化学的粗面化処理を
行い、その後、酸性エッチング処理、アルカリエッ
チング処理およびそれに引き続くデスマット処理、ア
ルカリエッチング処理およびそれに引き続く酸性エッチ
ング処理のいずれかを行う。
【0051】<親水性皮膜の形成>以上のようにして粗
面化処理および必要に応じて他の処理を施されたアルミ
ニウム板に、低熱伝導率の親水性皮膜を設けるための処
理を施す。
【0052】親水性皮膜を設ける方法としては、特に限
定されず、陽極酸化法、蒸着法、CVD法、ゾルゲル
法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、拡散
法等を適宜用いることができる。また、親水性樹脂また
はゾルゲル液に中空粒子を混合した溶液を塗布する方法
を用いることもできる。
【0053】中でも、陽極酸化法により酸化物を作成す
る処理、即ち、陽極酸化処理を用いるのが最も好適であ
る。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で
行うことができる。具体的には、硫酸、リン酸、クロム
酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸等
の単独のまたは2種以上を組み合わせた水溶液または非
水溶液の中で、アルミニウム板に直流または交流を流す
と、アルミニウム板の表面に、親水性皮膜である陽極酸
化皮膜を形成することができる。陽極酸化処理の条件
は、使用される電解液によって種々変化するので一概に
決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量
%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/d
2、電圧1〜200V、電解時間1〜1000秒であ
るのが適当である。これらの陽極酸化処理の中でも、英
国特許第1,412,768号明細書に記載されてい
る、硫酸電解液中で高電流密度で陽極酸化処理する方
法、および、米国特許第3,511,661号明細書に
記載されている、リン酸を電解浴として陽極酸化処理す
る方法が好ましい。また、硫酸中で陽極酸化処理し、更
にリン酸中で陽極酸化処理するなどの多段陽極酸化処理
を施すこともできる。
【0054】本発明においては、陽極酸化皮膜は、傷付
きにくさおよび耐刷性の点で、0.1g/m2以上であ
るのが好ましく、0.3g/m2以上であるのがより好
ましく、2g/m2以上であるのが特に好ましく、ま
た、厚い皮膜を設けるためには多大なエネルギーを必要
とすることを鑑みると、100g/m2以下であるのが
好ましく、40g/m2以下であるのがより好ましく、
20g/m2以下であるのが特に好ましい。
【0055】陽極酸化皮膜には、その表面にマイクロポ
アと呼ばれる微細な凹部が一様に分布して形成されてい
る。陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアの密度は、処
理条件を適宜選択することによって調整することができ
る。マイクロポアの密度を調整したり、後述する空孔の
開口径を広げるポアワイド処理を行なうことで、空隙率
を5〜70%とすることにより、好ましい断熱性が達成
できる。空隙率は30%〜65%が好ましく、さらに望
ましくは40%〜65%の範囲である。空隙率が5%未
満であると充分な断熱性が得られず、70%を超えると
皮膜強度が低下する虞があり、いずれも好ましくない。
本発明において陽極酸化皮膜の空隙率は、以下の方法に
より測定したものを採用している。
【0056】空隙率測定方法 空隙率は空気の比重を無視することで、簡便に下記式1
から求められる。多層構造のものは、各層ごとに、単独
皮膜を形成して各層の空隙率を算出した。
【0057】 空隙率(%)=〔(皮膜厚み×皮膜比重)−皮膜重量)〕/ (皮膜厚み×皮膜比重)・・式1
【0058】皮膜比重の選択方法 皮膜比重はデータブック「伝熱ハンドブック(日本機械
学会)」等公知の出版物から近い材料を選択した。例え
ば、アルミの陽極酸化皮膜の組成はセラミックアルミナ
に近いと考えられるため、密度3.97g/cm3を選
択した。同様に、酸化チタンは密度4.17g/c
3、酸化珪素は密度2.66g/cm3、珪酸塩化合物
はソーダガラスに近いと考えられるため密度2.52g
/cm3を採用した。また水の密度は1g/cm3とし
て、上記密度値をそのまま皮膜比重として使用した。
【0059】皮膜重量の測定方法 JIS−H8680−7(皮膜重量法)に詳細が記載さ
れている様にクロム酸水溶液などの劇薬を沸騰させて、
酸化皮膜を除去させ、除去前後の重量変化を精密天秤で
計測して皮膜重量を求める。また、他の方法として85
wt%リン酸溶液に浸漬して皮膜を除去させ、除去前後
の重量変化を精密天秤で計測して皮膜重量を求めても良
い。
【0060】皮膜厚みの測定方法 親水化層の厚みの測定は超高分解能型SEM(日立S−
900)を使用した。12Vという比較的低加速電圧
で、導電性を付与する蒸着処理等を施す事無しに観察を
おこなった。基板を折り曲げて、折り曲げた際に発生し
たひび割れ部分の側面(通称破断面)を超高分解能型S
EM(日立S−900)を使用し、観察した。10箇所
を無作為抽出して平均値を平均膜厚とした。標準偏差誤
差は±10%以下であった。
【0061】このような好ましい空隙率を有する陽極酸
化皮膜は膜厚方向の熱伝導率が0.05〜0.5W/
(m・K)となり、サーマルタイプの画像形成層を有す
る平版印刷版用の支持体として充分な断熱性とすること
ができる。
【0062】本発明においては、熱伝導率をさらに下げ
る目的で、陽極酸化処理の後、マイクロポアのポア径を
拡げるポアワイド処理を行うことが好ましい。このポア
ワイド処理は、陽極酸化皮膜が形成されたアルミニウム
基板を酸水溶液またはアルカリ水溶液に浸せきすること
により、陽極酸化皮膜を溶解し、マイクロポアのポア径
を拡大するものである。ポアワイド処理は、陽極酸化皮
膜の溶解量が、好ましくは0.01〜20g/m2、よ
り好ましくは0.1〜5g/m2、特に好ましくは0.
2〜4g/m2となる範囲で行われる。
【0063】ポアワイド処理に酸水溶液を用いる場合
は、硫酸、リン酸、硝酸、塩酸等の無機酸またはこれら
の混合物の水溶液を用いることが好ましい。酸水溶液の
濃度は10〜1000g/Lであるのが好ましく、20
〜500g/Lであるのがより好ましい。酸水溶液の温
度は、10〜90℃であるのが好ましく、30〜70℃
であるのがより好ましい。酸水溶液への浸せき時間は、
1〜300秒であるのが好ましく、2〜100秒である
のがより好ましい。一方、ポアワイド処理にアルカリ水
溶液を用いる場合は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ムおよび水酸化リチウムからなる群から選ばれる少なく
とも一つのアルカリの水溶液を用いることが好ましい。
アルカリ水溶液のpHは、10〜13であるのが好まし
く、11.5〜13.0であるのがより好ましい。アル
カリ水溶液の温度は、10〜90℃であるのが好まし
く、30〜50℃であるのがより好ましい。アルカリ水
溶液への浸せき時間は、1〜500秒であるのが好まし
く、2〜100秒であるのがより好ましい。このような
ポアワイド処理を行なって、空孔の開口径を20nm以
上とすることで、優れた断熱性を達成し得る。本発明に
おいては、空孔の開口径は20nm以上であることが好
ましく、さらに好ましくは、30nm〜200nmの範
囲である。
【0064】また、空隙率の大きい陽極酸化皮膜を形成
する他の方法として、本発明者が先に提案した特願20
00−387210号明細書に記載の表面開口径が小さ
く、深部の空孔径の大きな空隙を有する陽極酸化皮膜の
形成方法なども好ましく挙げられる。電解液の種類が同
じであれば、電解によって生成するポアのポア径は電解
電圧に比例する事が知られている。その性質を利用して
陽極酸化皮膜を形成する際に印加する電解電圧を徐々に
上昇させていく事で、開口径が小さく、底部分の拡がっ
たポアが生成する。また、電解液の種類を変えると大き
くポア径が変化する事が知られていて、たとえば、電解
液については、大まかに言えば、硫酸電解液でのポア径
<シュウ酸電解液でのポア径<リン酸電解液でのポア径
である。従って、電解液を交換して、2回処理したり、
また、処理装置を2連、3連に繋げて、2、3段に連続
して処理を行って、陽極酸化皮膜を形成すると、順次形
成されるポアの開口径を制御して所望の構造の空隙率を
得ることが可能である。具体的には、たとえば、リン酸
電解液を使用して、電解電圧を徐々に上げていく方法、
2段階で陽極酸化処理を連続して行ない、1段目の電解
液を硫酸、2段目の電解液をリン酸にする方法などが挙
げられ、これらの手段によって、陽極酸化皮膜の表面口
部のポア径を維持したまま、底部のポアが大きい皮膜を
得ることもできる。
【0065】陽極酸化皮膜の膜厚は、傷付きにくさおよ
び耐刷性の点で、0.5μm以上であるのことを要し、
0.7μm以上であるのがより好ましく、1.0μm以
上であるのが特に好ましく、また、製造コストの観点か
ら、厚い皮膜を設けるためには多大なエネルギーを必要
とすることを鑑みると、10μm以下であるのが好まし
く、5μm以下であるのがより好ましく、2μm以下で
あるのが特に好ましい。
【0066】このようにして形成された所定の空隙率を
有する陽極酸化皮膜は、膜厚方向の熱伝導率が0.05
W/(m・K)以上であることが好ましく、さらに好ま
しくは0.08W/(m・K)以上であり、また、0.
5W/(m・K)以下であることが好ましく、さらに好
ましくは0.3W/(m・K)以下であり、より好まし
くは0.2W/(m・K)以下である。膜厚方向の熱伝
導率を0.05〜0.5W/(m・K)とすると、レー
ザー光の露光により記録層に発生する熱が支持体に拡散
することを抑制することができる。その結果、本発明の
平版印刷版原版を機上現像タイプとして用いる場合に
は、感度が高くなり、従来のサーマルポジタイプとして
用いる場合には、感度が高く、残膜の発生がなくなり、
従来のサーマルネガタイプとして用いる場合には、画像
が十分に形成できないなどの問題がない。
【0067】以下に、本発明の陽極酸化皮膜の好ましい
膜厚方向の熱伝導率について説明する。薄膜の熱伝導率
測定方法としては種々の方法がこれまでに報告されてい
る。1986年にはONOらがサーモグラフを用いて薄
膜の平面方向の熱伝導率を報告している。また、薄膜の
熱物性の測定に交流加熱方法を応用する試みも報告され
ている。交流加熱法はその起源を1863年の報告にま
でさかのぼることができるが、近年においては、レーザ
ーによる加熱方法の開発やフーリエ変換との組み合わせ
により様々な測定法が提案されている。レーザーオング
ストローム法を用いた装置は実際に市販もされている。
これらの方法はいずれも薄膜の平面方向(面内方向)の
熱伝導率を求めるものである。
【0068】しかし、薄膜の熱伝導を考える際にはむし
ろ深さ方向への熱拡散が重要な因子である。種々報告さ
れているように薄膜の熱伝導率は等方的でないといわれ
ており、特に本発明のような場合には直接、膜厚方向の
熱伝導率を計測することが極めて重要である。このよう
な観点から薄膜の膜厚方向の熱物性を測定する試みとし
てサーモコンパレータを用いた方法がLambropo
ulosらの論文(J.Appl.Phys.,66
(9)(1 November 1989))およびH
enagerらの論文(APPLIED OPTIC
S,Vol.32,No.1(1 January 1
993))で報告されている。更に、近年、ポリマー薄
膜の熱拡散率をフーリエ解析を適用した温度波熱分析に
より測定する方法が橋本らによって報告されている(N
etsu Sokutei,27(3)(200
0))。本発明で規定する親水性皮膜の膜厚方向の熱伝
導率は、上記サーモコンパレータを用いる方法で測定さ
れる。上記方法の基本的な原理については、上述したL
ambropoulosらの論文およびHenager
らの論文に詳細に記載されている。
【0069】本発明者らは、上記の測定方法を用いてア
ルミニウム基板状に設けた陽極酸化皮膜(Al23)の
熱伝導率を求めた。膜厚を変えて温度を測定し、その結
果のグラフの傾きから求められたAl23の熱伝導率
は、0. 69W/(m・K)であった。これは、上述し
たLambropoulosらの論文の結果とよい一致
を示している。そして、この結果は、薄膜の熱物性値が
バルクの熱物性値(バルクのAl23の熱伝導率は、2
8W/(m・K))とは異なることも示している。熱伝
導率の値は、試料上の異なる複数の点、例えば、5点で
測定し、その平均値として求めるのが好ましい。
【0070】[親水性層]本発明においては、上述した
手段により、特定の空隙率を有する陽極酸化皮膜を設け
た後、該皮膜表面に、親水性層を形成して、平版印刷版
用支持体とする。この親水性層は、前記皮膜上に、さら
に後述する親水性組成物からなる親水性皮膜を形成する
ことで作成できる。親水性層の厚みは、所望の親水性や
強度などの特性により適宜決定できるが、一般的には
0.05μm〜0.5μmの範囲にあることが好まし
く、この範囲内で、珪酸塩化合物中にエマルジョン樹脂
が、ほぼ均一に分散した優れた特性の親水性皮膜が形成
可能となる。皮膜厚みが0.05μm未満ではエマルジ
ョン樹脂成分が表面に露出して、親水性が低くなってし
まう傾向があり、厚みが0.5μmを超えると、印刷等
の際の少しの湾曲で、親水性皮膜が剥離したり、割れや
すくなり、また、機械的粗面化処理や電気化学的粗面化
処理で形成した砂目形状における凹凸の影響が表面形状
に反映され難くなるので、好ましくない。特に、本発明
の支持体を、光熱変換を用いる感熱記録層を設けた平版
印刷版原版に用いる場合には、前記陽極酸化皮膜と親水
性層とを併せた厚みを1μm以上とすることが好まし
い。なお、親水性層の厚みを5μmを超えて厚くしても
支持体に必要な断熱性はそれ以上改良されず、製造コス
トのみ高価となってしまう。この親水性層中に用いられ
る酸化アルミニウム粒子などの酸化物粒子の役割は主
に、陽極酸化皮膜表面の開口部を塞ぎ、且つ、内部の空
隙を確保することにあるため、粒径は酸化皮膜平均開口
径と同一かやや大きめの粒子を選択することが望まし
い。
【0071】親水性層の最適な被覆量は、金属基板上に
形成された陽極酸化皮膜の厚み、封孔を要する空隙の開
口径、ポア密度、感熱記録層中に含まれる光熱変換剤の
量や分布、感熱記録層の厚み、使用する露光装置のレー
ザー走査速度、レーザー出力、露光ビーム形状等によっ
て異なるが、0.05μm〜0.5μmの範囲で、最適
被覆量を実験的に決めることが可能である。親水性層の
皮膜量や、皮膜が均一に封孔されているかどうかは、高
倍率の電子顕微鏡により観察することができる。
【0072】本発明の親水性層に好ましく使用される珪
酸塩化合物としては、珪酸ナトリウムや珪酸カリウム、
リチウムシリケート等の珪酸アルカリ系水ガラスが好適
である。珪酸塩化合物の含有量は、共に使用される親水
性樹脂の種類にもよるが、一般的には、親水性層を構成
する全固形分中、SiO2として30〜45質量%、N
2Oとして30〜45質量%の範囲であることが好ま
しい。これらのアルカリ系水ガラスを用いる場合、キャ
スやPC−500等の(共に日産化学工業(株)製)珪酸
アルカリ用硬化剤を添加剤を適量加えても良い。水ガラ
スは特に親水性が高いので、親水化剤としての役割を主
とする。しかし、水ガラスだけでは、乾燥過程で、脱水
収縮の為、微細なひび割れが発生する上、皮膜が不均一
になってしまう等皮膜形成性が悪いので、単独で使用す
ると耐刷性能が悪化する。また1〜100nm程度の微細
な細孔が有るので、毛管現象によって水が浸透し、以下
に示す様な2段階の反応によってSi−O−Siのネッ
トワークが切断し、水に溶解すると言われている。
【0073】
【化1】
【0074】そこで、本発明に係る親水性層では、珪酸
アルカリ系水ガラスに以下に説明する水系エマルジョン
由来の親水性樹脂粒子や特定酸化物粒子を併用すること
で、この皮膜中に存在する1〜100nm程度の微細な
孔を充填させ、親水性を低下させずに耐水性を向上させ
るものである。併用する親水性樹脂の柔軟性により、珪
酸塩化合物の乾燥過程で発生する内部応力を緩和し、皮
膜形成時のひび割れの発生を抑制すると共に、これらの
粒子による断熱性の向上も達成できる。
【0075】(水系エマルジョン樹脂)本発明におい
て、好ましく使用される水系エマルジョン樹脂として
は、乳化分散される樹脂が、アクリル酸などの親水性樹
脂やカルボキシル基などの親水性の官能基を構造内に有
する樹脂であることが好ましい。好ましい樹脂の具体的
な態様としては、オレフィン系重合体(A)とアクリル
系重合体(B)を同一粒子内に含有する樹脂粒子が水に
分散したエマルジョン組成物等の、アクリル系重合体
(B)を含むものであって、且つ、併用されるオレフィ
ン系重合体(A)が、カルボキシル基を有するか、又
は、オレフィン系重合体(A)が、オレフィン系単量体
(a−1)と、カルボキシル基を有する単量体(a−
2)を重合してなる得られたエマルジョン組成物が挙げ
られる。このようなエマルジョン樹脂は、乳化分散物と
して存在するため、樹脂粒子の粒径は1〜200nmと
小さく、しかもアクリル酸やカルボキシル基を含む親水
性が高い樹脂でありながら、ポリビニルアルコール等の
水溶性樹脂に比較すれば水溶性が低く、珪酸塩化合物と
併用しても、水溶性樹脂の如く親水性層皮膜の耐水性を
低下させることはない。
【0076】本発明の水系エマルジョン樹脂として、前
記オレフィン系単量体(a−1)と、カルボキシル基を
有する単量体(a−2)を重合してなるオレフィン系重
合体(A)を用いる場合、オレフィン系重合体(A)を
構成するオレフィン系単量体(a−1)は、特に限定さ
れるものではなく、公知のものを使用できる。本発明に
おいて用いられるオレフィン系単量体(a−1)の具体
例を挙げれば、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブ
テン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテ
ン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセ
ン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィン;ブタ
ジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエ
ン、1,5−ヘキサジエン等の共役ジエン、非共役ジエ
ンが挙げられ、これらの単量体は、単独で、又は、2種
以上組み合わせて選択することができる。
【0077】また、オレフィン系重合体(A)を構成す
るカルボキシル基含有単量体(a−2)としては、オレ
フィン系単量体(a−1)と共重合可能な単量体であれ
ば、任意に選択して使用することができ、例えば、(メ
タ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン
酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸を挙げることがで
き、これらの少なくとも1種又は2種以上を選択するこ
とができる。本発明においては、オレフィン系重合体
(A)を構成するオレフィン系単量体(a−1)とカル
ボキシル基を有する単量体の構成比率としては、これら
の合計重量を100質量%として、オレフィン系単量体
(a−1)99〜60質量%、カルボキシル基を有する
単量体(a−2)1〜40質量%であることが好まし
く、。さらにはオレフィン系単量体(a−1)95〜7
0質量%、カルボン酸含有単量体(a−2)5〜30質
量%の構成比率であることがより好ましい。オレフィン
系単量体(a−1)が60質量%未満であると、樹脂の
耐水性が低下し、水溶性樹脂のように溶解するという問
題があり、オレフィン系単量体(a−1)が99質量%
を超えると、エマルジョン組成物の粒子径が大きくな
り、珪酸塩化合物皮膜の耐水性向上効果が低下する問題
がある。本発明において、オレフィン系重合体(A)と
しては、アイオノマーと呼ばれるエチレン・不飽和カル
ボン酸共重合体、例えば、エチレン・(メタ)アクリル
酸、及び、そのカルボキシル基がアンモニア、アミン類
等の塩基性有機物、およびナトリウム、カリウム、亜鉛
等の金属塩で中和されている共重合体等も公的に用いる
ことができる。樹脂の耐水性を向上させるという意味か
ら、中和剤としては塩基性有機物が好ましい。
【0078】本発明に係る水系エマルジョン樹脂に用い
られるアクリル系重合体(B)としては、グリシジル基
を有するアクリル系単量体(b−1)を用いて得られた
ものが好ましい。グリシジル基を有するアクリル系単量
体(b−1)を用いることで、オレフィン系重合体
(A)に対するアクリル系重合体(B)の割合が多い領
域においても、非常に微細な粒子径のエマルジョン組成
物が得られる。その理由については、必ずしも、明確で
はないが、例えば、次のような考察がされる。すなわ
ち、本来、相容性に乏しい(A)(B)の両重合体が、
オレフィン系重合体(A)中のカルボキシル基と、アク
リル系重合体(B)中のグリシジル基が一部グラフト反
応することで、相容性が向上し、そのために、微粒子の
エマルジョンが安定に製造できると考察される。
【0079】ここで用いられるグリシジル基を有するア
クリル系単量体(b−1)は、特に限定されるものでは
ない。本発明において、グリシジル基を有するアクリル
系単量体(b−1)の具体例としては、例えば、グリシ
ジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げ
られる。なお、以下、本発明では、「アクリレート、メ
タクリレート」、「アクリル酸、メタクリル酸」の双方
を指す場合、それぞれ「(メタ)アクリレート」、
「(メタ)アクリル酸」と表記することがある。
【0080】アクリル系重合体(B)を構成するグリシ
ジル基を有するアクリル系単量体(b−1)とグリシジ
ル基を有さないアクリル系単量体(b−2)との混合比
についていえば、両者の合計重量を100質量%とした
場合、グリシジル基を有するアクリル系単量体(b−
1)0.5〜40質量%、グリシジル基を有さないアク
リル系単量体(b−2)60〜99.5質量%であるこ
とが好ましく、さらには、グリシジル基を有するアクリ
ル系単量体(b−1)2〜30質量%、グリシジル基を
有さないアクリル系単量体(b−2)70〜98質量%
がより好ましく、最も好ましくは、グリシジル基を有す
るアクリル系単量体(b−1)5〜20質量%、グリシ
ジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)80〜9
5質量%である。グリシジル基を有する単量体(b−
1)が0.5質量%以下では、通常、エマルジョン組成
物の粒子径が大きくなり、珪酸塩化合物皮膜の耐水性向
上効果が低下する問題がある。また、40質量%を超え
ると、エマルジョン組成物の製造中に粒子同士が凝集
し、安定に製造することが不可能となる。
【0081】本発明において用いられるグリシジル基を
有さないアクリル系単量体(b−2)は、特に制限され
るものではない。本発明においては、グリシジル基を有
さないアクリル系単量体(b−2)の具体例としては、
例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、特に炭素原子
数1〜12のアルキルエステルが好ましいが、例えば、
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−
ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸2−エチル
へキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタク
リル酸i−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、
メタクリル酸ラウリル等;芳香族系単量体として、例え
ば、スチレン、α−メチルスチレン等、極性基含有単量
体として、水酸基を有するヒドロキエチルアクリレー
ト、ヒドロキプロピルアクリレート、ヒドロキエチルメ
タクリレート、ヒドロキプロピルメタクリレート等のヒ
ドロキシアルキルアクリレート類;カルボキシル基を有
するアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン
酸、フマル酸、マレイン酸等;その他の極性基を有する
単量体としてアクリロニトリル、メタクリロニトリル、
アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられ、これ
らの1種、又は、2種以上を選択することができる。
【0082】グリシジル基を有さないアクリル系単量体
(b−2)の少なくとも1種以上は、水溶解性が0.5
%以下であることが好ましい。グリシジル基を有さない
アクリル系単量体(b−2)の全てに水溶解性が0.5
%を超える単量体を使用すると、オレフィン系重合体
(A)の粒子内にアクリル系重合体(B)を生成させる
ことが困難となるためである。水溶解性が0.5%以下
であるアクリル系単量体の具体例としては、例えば、ス
チレン、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メ
タ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。また、グリシジ
ル基を有さないアクリル系単量体(b−2)としてカル
ボキシル基を有する単量体を使用する場合、その使用量
は、グリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)
と、グリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−
2)の全量を100質量%とした場合に、5質量%以下
が好ましく、3質量%未満がさらに好ましく、全く使用
しないことが最も好ましい。カルボキシル基を有する単
量体の量が5質量%を超えると、オレフィン系重合体
(A)の粒子内にアクリル系重合体(B)を生成させる
ことが困難となる。アクリル系重合体(B)の理論的ガ
ラス転移温度に特段の制限はない
【0083】本発明に係る水系エマルジョン樹脂組成物
は、オレフィン系単量体(a−1)とカルボキシル基を
有する(a−2)を重合してなるオレフィン系重合体
(A)の粒子が、水に分散したオレフィン系エマルジョ
ンの存在下で、グリシジル基を有するアクリル系単量体
(b−1)及びグリシジル基を有さないアクリル系単量
体(b−2)を重合することによって製造される。この
際に使用されるオレフィン系エマルジョン(オレフィン
系重合体(A)の粒子が水に分散したオレフィン系エマ
ルジョン)は、乳化剤や分散剤を使用して水中にオレフ
ィン系重合体(A)を分散させたもので、その製造方法
は、例えば、特公平7−008933号、特公平5−0
39975号、特公平4−030970号、特公昭42
−000275号、特公昭42−023085号、特公
昭45−029909号、特開昭51−062890号
等に開示されている。市販されているオレフィン系エマ
ルジョンの具体例としては、三井化学株式会社製のケミ
パールS100、S650、S75N等、東邦化学工業
株式会社製のハイテックS3121、S8512等を挙
げることができる。
【0084】アクリル系重合体(B)の重合時に使用さ
れる開始剤は、特に制限されるものではない。アクリル
系重合体(B)の重合時に使用される開始剤の具体例と
しては、例えば、一般に乳化重合に使用されるものであ
れば全て使用することができる。代表的なものを挙げる
と、過酸化水素;過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウ
ム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;クメンハイドロパ
ーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベ
ンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−
エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエ
ート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等
のアゾ化合物;あるいはこれらと鉄イオン等の金属イオ
ン及びナトリウムスルホキシレート、ホルムアルデヒ
ド、ピロ亜硫酸ソーダ、亜硫酸水素ナトリウム、L−ア
スコルビン酸、ロンガリット等の還元剤との組み合わせ
によるレドックス開始剤等が挙げられる。アクリル系重
合体(B)の重合時に使用される開始剤の使用量は、一
般的には、単量体の総重量を基準として、0.1〜5質
量%である。また、必要に応じてt−ドデシルメルカプ
タン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、
アリルスルフォン酸、メタアリルスルフォン酸及びこれ
等のソーダ塩等のアリル化合物などを分子量調節剤とし
て使用することも可能である。
【0085】さらに、オレフィン系エマルジョン存在下
でアクリル系単量体(b−1)、(b−2)を重合する
際に、粒子の安定性を向上させるため、通常の乳化重合
に使用される界面活性剤を用いることも可能である。か
かる界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、非イオ
ン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、その他反応性
界面活性剤などが挙げられ、これらの1種もしくは2種
以上を併用することができる。非イオン系界面活性剤の
具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリル
エーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテ
ル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポ
リオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチ
レン・オキシプロピレンブロックコポリマー、tert
−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、
ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙
げられる。
【0086】アニオン系界面活性剤の具体例としては、
例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウ
リル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジス
ルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナ
トリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステ
アリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウム
ジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンア
ルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンア
ルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンア
ルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムジアルキルスル
ホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレ
イン酸ナトリウム、tert−オクチルフェノキシエト
キシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられ
る。カチオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、
ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリ
ルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0087】界面活性剤量が多くなると、親水性層上に
形成される感熱層との密着性が低下する。またアクリル
系重合体(B)のみからなる粒子が生成しやすくなるた
め、オレフィン系重合体(A)の粒子内にアクリル系重
合体(B)を生成させることが困難となる場合がある。
したがって、本発明に係るエマルジョン組成物中の界面
活性剤量は、オレフィン系重合体(A)とアクリル系重
合体(B)の全重量を100質量%とした場合に、5質
量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下、さ
らに好ましくは1重量%以下、最も好ましくは0.5質
量%以下である。前記した各種の単量体はこれを一括し
て、もしくは分割して、あるいは連続的に滴下して加
え、前記した開始剤存在下に0〜100℃、実用的には
30〜90℃の温度で重合される。
【0088】本発明に用いる水系エマルジョン樹脂にお
ける樹脂粒子の重量平均粒子径は、150nm以下が好
ましく、より好ましくは10〜100nmの範囲、さら
に好ましくは30〜80nmの範囲である。粒子径が1
50nmを超えると、珪酸塩化合物皮膜の耐水性向上効
果が減少する。粒子径は小さいほど良いが、あまり小さ
くなりすぎると、エマルジョン樹脂表面にある、界面活
性剤の吸着が不十分となり、凝集、沈殿などの現象が発
生し易く、不安定な状態となり、粒子の均一分散性が低
下するなどの懸念がある。本発明で用いる水系エマルジ
ョン樹脂組成物には、例えば、各種添加剤、例えば硬化
剤、架橋剤、造膜助剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、減水
剤、凍結防止剤、収縮低減剤などを添加することも可能
である。本発明においては、市販の水系エマルジョン樹
脂を用いることもできる。このような市販品としては、
アルマテックスEタイプ、Kタイプ(三井化学(株)
製)、NIPOL LXタイプ(日本ゼオン(株)製)
等が挙げられる。
【0089】(酸化アルミニウム粒子、酸化チタン粒
子、酸化ケイ素粒子からなる群より選択される酸化物粒
子)本発明に係る親水性層中には、酸化アルミニウム粒
子、酸化チタン粒子、酸化ケイ素粒子からなる群より選
択される酸化物粒子(以下、適宜、酸化物粒子と称す
る)を混合することにより、親水性層の硬度の向上、断
熱性の向上、封孔効果の向上、白色度、光沢度等の光学
特性の改善、表面積が増えることによる基板や感熱記録
層との密着力向上効果が得られる。
【0090】使用し得る酸化物粒子としては、酸化アル
ミニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化ケイ素粒子のいず
れでもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0091】酸化物粒子の形状としては、球形、円柱
形、フレーク状粉体、中空粒子、多孔質粒子、不定形微
粒子のいずれでもよいが、親水性、感度向上効果などの
観点から、フレーク状粉体、中空粒子、多孔質粒子が最
も好適である。微粒子の大きさは、親水性層の所望され
る特性や封孔する陽極酸化皮膜の開口径により適宜決定
されるが、陽極酸化皮膜の表面における平均開口径をd
1(nm)としたとき、〔d1±20(nm)〕の範囲
にあることが好ましい。粒径が大きすぎると均一な皮膜
が得難く、また、親水性層から微粒子が脱落しやすくな
り、小さすぎると陽極酸化皮膜の空孔の封孔効果が低下
し、断熱性向上効果が得難くなる。なお、本発明におけ
る好ましい開口径(d1)は、前述のとおり30nm〜
200nmの範囲であるが、開口径が50nmよりも小
さい場合には、この酸化物粒子の粒径が小さすぎると空
孔内に進入して断熱性を低下させる可能性がでてくるた
め、d1<50nmの場合、粒径d2はd1≦d2<d
1+20(nm)の範囲であることが好ましい。
【0092】酸化物粒子の含有量は、配合する目的によ
り適宜選択されるが、一般的には、以下のように決定さ
れる。即ち、陽極酸化皮膜の表面開口面積率をS1
[%]とすると、珪酸塩化合物の密度Ds[g/c
3]、酸化物の密度Do[g/cm3]、酸化物粒子の
混合率X1の間には、下記式2で示されるような関係が
成り立つ。 S1/100=(X1/Do)/〔(100−X1)/Ds〕・・・・式2 また、前記式2から、X1即ち、酸化物粒子の混合率
〔%〕を表す式3を得る。 X1=100/{〔S1*Do/(100*Ds)〕+1}・・・・・・式3 陽極酸化皮膜の開口率は、前述の開口径が小さく、底部
分の拡がった特殊な形状のポアにおける以外の通常の陽
極酸化皮膜においては、ほぼ空隙率と同じであるので、
その場合には式2の表面開口面積率S1[%]に空隙率
を代入して酸化物の混合率X1[wt%]を算出しても
よい。このようにして得られる、酸化物粒子の含有量は
概ね、10%〜60%の範囲となり、好ましい範囲も同
様である。配合量が多すぎると皮膜強度が低下する傾向
にあり、少なすぎると添加したときに得られる効果が不
充分となる。これらの酸化物粒子は単独のみならず、複
数種類混合して使用することもできる。複数の異なる種
類の無機成分からなる粉体を混合して使用してもよく、
また、先に述べたように大きさ(粒径)の異なる複数の
粒子を組合せて用いることもできる。
【0093】親水性層を構成する親水性組成物には、ハ
ンドリング性や皮膜特性を向上させる目的で、本発明の
効果を損なわない範囲で、可塑剤、界面活性剤、溶剤な
どの添加剤を併用することができる。特に、親水性樹脂
として汎用のポリビニルアルコール(PVA)などを用
いる場合には、その耐水性を向上する目的で、エテスト
ロンBN−69(第一工業製薬(株)製)等の熱反応型
架橋剤を適量添加することが望ましい。陽極酸化皮膜表
面に親水性層を形成する方法としては、前記成分や所望
により併用される添加剤を配合してなる親水性組成物
を、スプレー法、バー塗布法などによって基材表面に塗
布して液膜を形成し、100℃〜180℃の熱風によっ
て乾燥させ、固化させる方法をとればよい。
【0094】基材上に上記のように空隙率の高い陽極酸
化皮膜及び親水性層を形成することで本発明の平版印刷
版用支持体が得られる。この支持体は、親水性層の特性
による優れた表面親水性と、二つの層の組合せによる高
い断熱性とを発現し、さらに皮膜特性が良好で感熱記録
層や基材との密着性に優れている。このため、この支持
体を用いて平版印刷版を作成すると、赤外線レーザ中で
発生した熱が効率よく画像形成に使用され、表面親水性
に優れた非画像部は撥インク性に優れ、また、残膜の発
生も抑制されて、汚れの発生もなく、耐刷性も良好な平
版印刷版を形成しうる。
【0095】陽極酸化皮膜を有するアルミ基板などの金
属基板を感熱記録層を有する平版印刷版の支持体として
使用する場合には、感度は支持体の断熱性によって大き
く影響を受けるが、支持体の断熱性は陽極酸化皮膜の空
隙率と厚みでほぼ決定する。従って、空隙率が高く、厚
い陽極酸化皮膜にすることが断熱性向上のためには有効
であるが、陽極酸化皮膜形成後にアルカリに浸漬して空
隙率を上げたり、時間をかけて陽極酸化し、厚い皮膜を
形成するような手段をとると、陽極酸化皮膜が溶解して
陽極酸化表面の空隙の開口径が拡大する傾向にある。こ
の陽極酸化表面の空隙の開口径が概ね14nm以上にな
ると、感熱記録層の成分が陽極酸化皮膜の空隙内部に浸
透して、機上現像性、汚れ性が悪化する可能性がでてく
る。本発明においては、このような高空隙型の陽極酸化
層に親水性層を設けることで適当な封孔処理を行うこと
で、高い断熱性を保持しながら、空隙への画像記録層材
料の浸入を抑制し、高感度化と共に、高い機上現像性、
優れた汚れ性を実現しようとするものである。
【0096】上記陽極酸化皮膜と親水性層とを有する支
持体上に、感熱記録層を設けることで、本発明の平版印
刷版原版を得ることができる。本発明の構成によれば、
書込みに使用されるレーザ光が効率よく画像形成必要な
熱エネルギーとして利用される、高感度、高解像度の画
像形成が可能で、印刷適性に優れる平版印刷版原版を得
る。 [感熱記録層]本発明の平版印刷版原版に用いられる感
熱記録層は、(i)熱反応性官能基を有する微粒子ポリ
マー、または、(ii)熱反応性官能基を有する化合物を
内包するマイクロカプセルを含有する感熱層であること
を特徴とする。この感熱記録層を用いることで、優れた
機上現像性を有する赤外線領域の放射線で記録可能な平
版印刷版原版を得ることができる。
【0097】上記(i)および(ii)に共通の熱反応性
官能基としては、例えば、重合反応を行うエチレン性不
飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、
ビニル基、アリル基)、付加反応を行うイソシアネート
基またはそのブロック体、その反応相手である活性水素
原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシル
基、カルボキシル基)、同じく付加反応を行うエポキシ
基、その反応相手であるアミノ基、カルボキシル基また
はヒドロキシル基、縮合反応を行うカルボキシル基とヒ
ドロキシル基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無
水物とアミノ基またはヒドロキシル基が挙げられる。本
発明に用いられる熱反応性官能基は、これらに限定され
ず、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行
う官能基でもよい。
【0098】まず、(i)熱反応性官能基を有する微粒
子ポリマーについて説明する。 (i)微粒子ポリマーに好適な熱反応性官能基として
は、例えば、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビ
ニル基、アリル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ
ル基、カルボキシル基、イソシアネート基、酸無水物基
およびそれらを保護した基が挙げられる。熱反応性官能
基のポリマー微粒子への導入は、ポリマーの重合時に行
ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行っても
よい。
【0099】熱反応性官能基をポリマーの重合時に導入
する場合は、熱反応性官能基を有するモノマーを用いて
乳化重合または懸濁重合を行うのが好ましい。熱反応性
官能基を有するモノマーの具体例としては、アリルメタ
クリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレー
ト、ビニルアクリレート、グリシジルメタクリレート、
グリシジルアクリレート、2−イソシアネートエチルメ
タクリレート、そのアルコールなどによるブロックイソ
シアネート、2−イソシアネートエチルアクリレート、
そのアルコールなどによるブロックイソシアネート、2
−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアク
リレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−
ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリ
ル酸、無水マレイン酸、二官能アクリレート、二官能メ
タクリレートが挙げられる。本発明に用いられる熱反応
性官能基を有するモノマーは、これらに限定されない。
これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性官能基を有
しないモノマーとしては、例えば、スチレン、アルキル
アクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニト
リル、酢酸ビニルが挙げられる。本発明に用いられる熱
反応性官能基を有しないモノマーは、これらに限定され
ない。
【0100】熱反応性官能基をポリマーの重合後に導入
する場合に用いられる高分子反応としては、例えば、国
際公開第96/34316号パンフレットに記載されて
いる高分子反応が挙げられる。
【0101】上記(i)熱反応性官能基を有する微粒子
ポリマーの中でも、画像形成性の観点からは、微粒子ポ
リマー同志が熱により容易に融着、合体するものが好ま
しく、また、機上現像性の観点から、その表面が親水性
で、水に分散するものが、特に好ましい。また、微粒子
ポリマーのみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥
して作製したときの皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固
温度よりも高い温度で乾燥して作製したときの皮膜の接
触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。微粒
子ポリマー表面の親水性をこのような好ましい状態にす
るには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコー
ルなどの親水性ポリマーあるいはオリゴマー、または親
水性低分子化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させてや
ればよいが、微粒子の表面親水化方法はこれらに限定さ
れるものではなく、公知の種々の表面親水化方法を適用
することができる。
【0102】(i)熱反応性官能基を有する微粒子ポリ
マーの熱融着温度は、70℃以上であることが好ましい
が、経時安定性を考えると80℃以上がさらに好まし
い。ただし、あまり熱融着温度が高いと感度の観点から
は好ましくないので、80〜250℃の範囲が好まし
く、100〜150℃の範囲であることがさらに好まし
い。 (i)微粒子ポリマーの平均粒径は、0.01〜20μ
mであるのが好ましいが、その中でも0.05〜2.0
μmであるのがより好ましく、0.1〜1.0μmであ
るのが好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定
性が得られる。 (i)微粒子ポリマーの添加量は、感熱記録層固形分の
50〜98質量%が好ましく、60〜95質量%がさら
に好ましい。
【0103】次に、(ii)熱反応性官能基を有する化合
物を内包するマイクロカプセルについて説明する。 (ii)マイクロカプセルに好適な熱反応性官能基として
は、先に(i)、(ii)に共通のものとして挙げた官能
基の他、例えば、重合性不飽和基、ヒドロキシル基、カ
ルボキシル基、カルボキシレート基、酸無水物基、アミ
ノ基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアネート
ブロック体などが挙げられる。
【0104】重合性不飽和基を有する化合物としては、
エチレン性不飽和結合、例えば、アクリロイル基、メタ
クリロイル基、ビニル基、アリル基を少なくとも1個、
好ましくは2個以上有する化合物であるのが好ましい。
そのような化合物群は当該産業分野において広く知られ
るものであり、本発明においては、これらを特に限定さ
れずに用いることができる。これらは、化学的形態とし
ては、モノマー、プレポリマー、即ち、二量体、三量体
およびオリゴマー、またはそれらの混合物、およびそれ
らの共重合体である。
【0105】具体的には、例えば、不飽和カルボン酸
(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、ク
ロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)、そのエステ
ル、不飽和カルボン酸アミドが挙げられる。中でも、不
飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルお
よび不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミンとのアミドが
好ましい。また、ヒドロキシル基、アミノ基、メルカプ
ト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステ
ルまたは不飽和カルボン酸アミドと単官能もしくは多官
能のイソシアネートまたはエポキシドとの付加反応物、
および、単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮
合反応物等も好適に用いられる。また、イソシアネート
基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カル
ボン酸エステルまたはアミドと、単官能もしくは多官能
のアルコール、アミンまたはチオールとの付加反応物、
および、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基
を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単
官能もしくは多官能アルコール、アミンまたはチオール
との置換反応物も好適である。また、別の好適な例とし
て、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸また
はクロロメチルスチレンに置き換えた化合物が挙げられ
る。
【0106】不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコール
とのエステルである重合性化合物のうち、アクリル酸エ
ステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリ
レート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,
3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレング
リコールジアクリレート、プロピレングリコールジアク
リレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ト
リメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロール
プロパントリアクリレート、トリメチロールプロパント
リス(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメ
チロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジ
アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアク
リレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、
ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリ
トールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラ
アクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレー
ト、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペ
ンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトール
トリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、
ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサ
アクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イ
ソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマー
が挙げられる。
【0107】メタクリル酸エステルとしては、例えば、
テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチ
レングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコ
ールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメ
タクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレー
ト、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブ
タンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメ
タクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレー
ト、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタ
エリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリス
リトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘ
キサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレー
ト、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス〔p−
(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキ
シ)フェニル〕ジメチルメタン、ビス−〔p−(メタク
リロイルオキシエトキシ)フェニル〕ジメチルメタンが
挙げられる。
【0108】イタコン酸エステルとしては、例えば、エ
チレングリコールジイタコネート、プロピレングリコー
ルジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネ
ート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラ
メチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリト
ールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネート
が挙げられる。
【0109】クロトン酸エステルとしては、例えば、エ
チレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリ
コールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロト
ネート、ソルビトールテトラジクロトネートが挙げられ
る。イソクロトン酸エステルとしては、例えば、エチレ
ングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトー
ルジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロト
ネートが挙げられる。マレイン酸エステルとしては、例
えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレング
リコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレー
ト、ソルビトールテトラマレートが挙げられる。
【0110】その他のエステルとしては、例えば、特公
昭46−27926号公報、同51−47334号公
報、同57−196231号公報に記載されている脂肪
族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号
公報、同59−5241号公報、特開平2−22614
9号公報に記載されている芳香族系骨格を有するもの、
特開平1−165613号公報に記載されているアミノ
基を含有するものが挙げられる。
【0111】また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カ
ルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチ
レンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリル
アミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミ
ド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、
ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレ
ンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミ
ドが挙げられる。その他の好ましいアミド系モノマーと
しては、例えば、特公昭54−21726号公報に記載
されているシクロへキシレン構造を有するものが挙げら
れる。
【0112】また、イソシアネートとヒドロキシル基の
付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合
物も好適であり、具体的には、例えば、特公昭48−4
1708号公報中に記載されている1分子に2個以上の
イソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物
に、下記式(II)で示されるヒドロキシル基を有する
不飽和モノマーを付加させて得られる、1分子中に2個
以上の重合性不飽和基を含有するウレタン化合物が挙げ
られる。
【0113】 CH2=C(R1)COOCH2CH(R2)OH (II) (ただし、R1およびR2は、それぞれHまたはCH3
表す。)
【0114】また、特開昭51−37193号公報、特
公平2−32293号公報、同2−16765号公報に
記載されているようなウレタンアクリレートや、特公昭
58−49860号公報、同56−17654号公報、
同62−39417号公報、同62−39418号公報
に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウ
レタン化合物も好適なものとして挙げられる。
【0115】更に、特開昭63−277653号公報、
同63−260909号公報、特開平1−105238
号公報に記載されている、分子内にアミノ構造やスルフ
ィド構造を有するラジカル重合性化合物も好適なものと
して挙げられる。
【0116】その他の好適なものの例としては、特開昭
48−64183号公報、特公昭49−43191号公
報、同52−30490号公報に記載されているような
ポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)
アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多
官能のアクリレートやメタクリレートが挙げられる。ま
た、特公昭46−43946号公報、特公平1−403
37号公報、同1−40336号公報に記載されている
特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に
記載されているビニルホスホン酸系化合物等も好適なも
のとして挙げられる。また、ある場合には、特開昭61
−22048号公報に記載されているペルフルオロアル
キル基を含有する化合物も好適に挙げられる。更に、日
本接着協会誌、20巻7号、p.300〜308(19
84年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹
介されているものも好適に例示される。
【0117】好適なエポキシ化合物としては、例えば、
グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリ
コールジグリシジルエーテル、ポリプロピレンジグリシ
ジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジル
エーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビス
フェノール類もしくはポリフェノール類またはそれらの
水素添加物のポリグリシジルエーテルが挙げられる。
【0118】好適なイソシアネート化合物としては、例
えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジ
イソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシ
アネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジ
イソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシア
ネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレン
ジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、
または、それらをアルコールもしくはアミンでブロック
した化合物が挙げられる。
【0119】好適なアミン化合物としては、例えば、エ
チレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレン
テトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジア
ミン、ポリエチレンイミンが挙げられる。
【0120】好適なヒドロキシル基を有する化合物とし
ては、例えば、末端メチロール基を有する化合物、ペン
タエリスリトール等の多価アルコール、ビスフェノール
・ポリフェノール類が挙げられる。好適なカルボキシル
基を有する化合物としては、例えば、ピロメリット酸、
トリメリット酸、フタル酸等の芳香族多価カルボン酸、
アジピン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。好
適な酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水
物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物が挙げられ
る。
【0121】エチレン状不飽和化合物の共重合体の好適
なものとしては、例えば、アリルメタクリレートの共重
合体が挙げられる。具体的には、例えば、アリルメタク
リレート/メタクリル酸共重合体、アリルメタクリレー
ト/エチルメタクリレート共重合体、アリルメタクリレ
ート/ブチルメタクリレート共重合体が挙げられる。
【0122】マイクロカプセル化する方法としては、公
知の方法が適用できる。例えば、マイクロカプセルの製
造方法としては、米国特許第2,800,457号明細
書、同第2,800,458号明細書に記載されている
コアセルベーションを利用した方法、英国特許第99,
0443号明細書、米国特許第3,287,154号明
細書、特公昭38−19574号公報、同42−446
号公報、同42−711号公報に記載されている界面重
合法による方法、米国特許第3,418,250号明細
書、同第3,660,304号明細書に記載されている
ポリマーの析出による方法、米国特許第3,796,6
69号明細書に記載されているイソシアネートポリオー
ル壁材料を用いる方法、米国特許第3,914,511
号明細書に記載されているイソシアネート壁材料を用い
る方法、米国特許第4,001,140号明細書、同第
4,087,376号明細書、同第4,089,802
号明細書に記載されている尿素−ホルムアルデヒド系ま
たは尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材
料を用いる方法、米国特許第4,025,445号明細
書に記載されているメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、
ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭3
6−9163号公報、同51−9079号公報に記載さ
れているモノマー重合によるin situ法、英国特
許第930,422号明細書、米国特許第3,111,
407号明細書に記載されているスプレードライング
法、英国特許第952,807号明細書、同第967,
074号明細書に記載されている電解分散冷却法が挙げ
られるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0123】(ii)マイクロカプセルに好適に用いられ
るマイクロカプセル壁は、三次元架橋を有し、溶剤によ
って膨潤する性質を有するものである。このような観点
から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウ
レタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミ
ド、またはこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレ
アおよびポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプ
セル壁に熱反応性官能基を有する化合物を導入してもよ
い。
【0124】(ii)マイクロカプセルの平均粒径は、
0.01〜20μmであるのが好ましく、0.05〜
2.0μmであるのがより好ましく、0.10〜1.0
μmであるのが特に好ましい。上記範囲内であると、良
好な解像度と経時安定性が得られる。
【0125】(ii)熱反応性官能基を有するマイクロカ
プセルを用いた画像形成機構では、マイクロカプセル材
料、そこに内包物された化合物、さらには、マイクロカ
プセルが分散された感熱層中に存在する他の任意成分な
どが、反応し、画像部領域即ち疎水性領域(親インク領
域)を形成するものであればよく、例えば、前記したよ
うなマイクロカプセル同士が熱により融着するタイプ、
マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にカプセル表面
あるいはマイクロカプセル外に滲み出した化合物、ある
いは、マイクロカプセル壁に外部から浸入した化合物
が、熱により化学反応を起こすタイプ、あるいは、それ
らのマイクロカプセル材料や内包された化合物が添加さ
れた親水性樹脂、あるいは、添加された低分子化合物と
反応するタイプ、2種類以上のマイクロカプセル壁材あ
るいはその内包物に、それぞれ異なる官能基で互いに熱
反応するような官能基をもたせるものを用いることによ
って、マイクロカプセル同士を反応させるタイプなどが
挙げられる。従って、熱によってマイクロカプセル同志
が、溶融合体することは画像形成上好ましいことである
が、必須ではない。
【0126】(ii)マイクロカプセルの感熱層への添加
量は、固形分換算で、10〜60質量%であるのが好ま
しく、15〜40質量%であるのがより好ましい。上記
範囲であると、良好な機上現像性と同時に、良好な感度
および耐刷性が得られる。
【0127】(ii)マイクロカプセルを感熱層に添加す
る場合、内包物が溶解し、かつ、壁材が膨潤する溶剤を
マイクロカプセル分散媒中に添加することができる。こ
のような溶剤によって、内包された熱反応性官能基を有
する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進され
る。このような溶剤は、マイクロカプセル分散媒、マイ
クロカプセル壁の材質、壁厚および内包物に依存する
が、多くの市販されている溶剤から容易に選択すること
ができる。例えば、架橋ポリウレア、ポリウレタン壁か
らなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール
類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン
類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類
等が好ましい。
【0128】具体的には、例えば、メタノール、エタノ
ール、第三ブタノール、n−プロパノール、テトラヒド
ロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケト
ン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレ
ングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモ
ノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメ
チルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが挙
げられるが、本発明はこれらに限定されない。また、こ
れらの溶剤を2種以上併用してもよい。
【0129】マイクロカプセル分散液には溶解しない
が、前記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることが
できる。添加量は、素材の組み合わせにより決まるもの
であるが、適性値より少ない場合は、画像形成が不十分
となり、多い場合は分散液の安定性が劣化する。通常、
塗布液の5〜95質量%であるのが好ましく、10〜9
0質量%であるのがより好ましく、15〜85質量%で
あるのが特に好ましい。
【0130】〔その他の成分〕本発明に係る感熱層に
は、前記画像形成性を有する(i)熱反応性官能基を有
する微粒子ポリマー、または、(ii)熱反応性官能基を
有する化合物を内包するマイクロカプセルのほか、目的
に応じて種々の添加剤を併用することができる。 (反応開始剤、反応促進剤)本発明係る感熱層において
は、必要に応じてこれらの反応を開始しまたは促進する
化合物を添加してもよい。反応を開始しまたは促進する
化合物としては、例えば、熱によりラジカルまたはカチ
オンを発生するような化合物が挙げられる。具体的に
は、例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合
物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾニウム塩またはジフ
ェニルヨードニウム塩などを含んだオニウム塩、アシル
ホスフィン、イミドスルホナートが挙げられる。これら
の化合物は、感熱層固形分の1〜20質量%の範囲で添
加するのが好ましく、3〜10質量%の範囲であるのが
より好ましい。上記範囲内であると、機上現像性を損な
わず、良好な反応開始効果または反応促進効果が得られ
る。
【0131】(親水性樹脂)本発明の感熱層には親水性
樹脂を添加しても良い。親水性樹脂を添加することによ
り機上現像性が良好となるばかりか、感熱層自体の皮膜
強度も向上する。親水性樹脂としては、例えばヒドロキ
シル、カルボキシル、ヒドロキシエチル、ヒドロキシプ
ロピル、アミノ、アミノエチル、アミノプロピル、カル
ボキシメチルなどの親水基を有するものが好ましい。
【0132】親水性樹脂の具体的として、アラビアゴ
ム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチ
ルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセ
テート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン
酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、
ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸
類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレート
のホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルア
クリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキ
シプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリ
マー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマー
およびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートの
ホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアク
リレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレ
ングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポ
リビニルアルコール類、ならびに加水分解度が少なくと
も60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水
分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポ
リビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリル
アミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルア
ミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールア
クリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー等を挙げ
ることができる。親水性樹脂の感熱層への添加量は、感
光層固形分の5〜40質量%が好ましく、10〜30質
量%がさらに好ましい。この範囲内で、良好な機上現像
性と皮膜強度が得られる。
【0133】(光熱変換剤)本発明の平版印刷版用原版
を、レーザー光の走査露光等により画像形成する場合に
は、平版印刷版用原版に光エネルギーを熱エネルギーに
変換するための光熱変換剤を含有させておくことが好ま
しい。本発明の平版印刷版用原版において、含有させて
もよい光熱変換剤としては、紫外線、可視光線、赤外
線、白色光線等の光を吸収して熱に変換し得る物質なら
ば全て使用でき、例えば、カーボンブラック、カーボン
グラファイト、顔料、フタロシアニン系顔料、金属粉、
金属化合物粉等が挙げられる。特に、好ましいのは、波
長760nmから1200nmの赤外線を有効に吸収す
る染料、顔料、または金属粉、金属化合物粉である。
【0134】本発明において光熱変換剤として使用しう
る顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス
(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協
会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC
出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出
版、1984年刊)に記載されている顔料が利用でき
る。顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレン
ジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、
緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結
合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、ア
ゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタ
ロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及
びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン
系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔
料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔
料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、
無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。
【0135】顔料は表面処理を施さずに用いてもよく、
表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法として
は、例えば、親水性樹脂や親油性樹脂を表面コートする
方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例え
ば、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤
やエポキシ化合物、イソシアネート化合物)を顔料表面
に結合させる方法が挙げられる。上記表面処理方法は、
「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技
術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応
用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されてい
る。これらの顔料中、赤外線を吸収するものが、赤外線
を発光するレーザでの利用に適する点で好ましい。かか
る赤外線を吸収する顔料としてはカーボンブラックが好
ましい。顔料の粒径は0. 01〜1μmの範囲にあるの
が好ましく、0.01〜0.5μmの範囲にあるのがよ
り好ましい。
【0136】染料としては、市販の染料および、文献
(例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和
45年刊)、「化学工業」1986年5月号P.45〜
51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開
発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシ
ー)または特許に記載されている公知の染料が利用でき
る。具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾ
ロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染
料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、ポリメチン
染料、シアニン染料等の赤外線吸収染料が好ましい。
【0137】更に、例えば、特開昭58−125246
号公報、同59−84356号公報、同60−7878
7号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−1
73696号公報、同58−181690号公報、同5
8−194595号等に記載されているメチン染料、特
開昭58−112793号公報、同58−224793
号公報、同59−48187号公報、同59−7399
6号公報、同60−52940号公報、同60−637
44号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭5
8−112792号等に記載されているスクワリリウム
染料、英国特許第434,875号明細書に記載されて
いるシアニン染料、米国特許第4,756,993号明
細書に記載されている染料、米国特許第4,973,5
72号明細書に記載されているシアニン染料、特開平1
0−268512号公報に記載されている染料、同11
−235883号公報に記載されているフタロシアニン
化合物が挙げられる。
【0138】また、染料として米国特許第5,156,
938号明細書に記載されている近赤外吸収増感剤も好
適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号
明細書に記載されている置換されたアリールベンゾ(チ
オ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号に記載
されているトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−
181051号公報、同58−220143号公報、同
59−41363号公報、同59−84248号公報、
同59−84249号公報、同59−146063号公
報、同59−146061号公報に記載されているピリ
リウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記
載されているシアニン染料、米国特許第4,283,4
75号明細書に記載されているペンタメチンチオピリリ
ウム塩等や特公平5−13514号公報、同5−197
02号公報に記載されているピリリウム化合物、エポリ
ン社製のエポライトIII−178、エポライトIII
−130、エポライトIII−125等も好適に用いら
れる。以下にいくつかの具体例を示す。
【0139】
【化2】
【0140】
【化3】
【0141】光熱変換剤の感熱層への添加量は、顔料、
又は染料の場合、感熱層全固形分の30質量%まで添加
することができる。好ましくは1〜25質量%であり、
特に好ましくは7〜20質量%である。
【0142】本発明に係る感熱層には、光熱変換剤とし
て金属微粒子を用いることもできる。金属微粒子の多く
は光熱変換性であって、かつ自己発熱性である。好まし
い金属微粒子として、例えば、Si、Al、Ti、V、
Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Z
r、Mo、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、In、S
n、W、Te、Pb、Ge、Re、Sbの単体もしくは
合金、または、それらの酸化物もしくは硫化物の微粒子
が挙げられる。これらの金属微粒子を構成する金属の中
でも好ましい金属は、光照射時に熱による合体をしやす
い、融点が約1000℃以下で赤外、可視または紫外線
領域に吸収をもつ金属、例えば、Re、Sb、Te、A
u、Ag、Cu、Ge、Pb、Snである。また、特に
好ましいのは、融点も比較的低く、赤外線に対する吸光
度も比較的高い金属の微粒子、例えば、Ag、Au、C
u、Sb、Ge、Pbで、最も好ましい元素としては、
Ag、Au、Cuが挙げられる。
【0143】また、例えば、Re、Sb、Te、Au、
Ag、Cu、Ge、Pb、Sn等の低融点金属の微粒子
と、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、W、Ge等の自己
発熱性金属の微粒子とを混合使用するなど、2種以上の
光熱変換物質で構成されていてもよい。また、Ag、P
t、Pd等の、微小片としたときに光吸収が特に大きい
金属種の微小片と他の金属微小片とを組み合わせて用い
ることも好ましい。
【0144】本発明に用いうる金属微粒子の平均経は、
好ましくは1〜500nm、より好ましくは1〜100
nm、特に好ましくは1〜50nmである。その分散度
は多分散でよいが、変動係数が30%以下の単分散の方
が好ましい。
【0145】これらの粒子の粒径は、10μm以下であ
るのが好ましく、0.003〜5μmであるのがより好
ましく、0.01〜3μmであるのが特に好ましい。上
記範囲内であると、良好な感度と解像力が得られる。
【0146】本発明において、これらの金属微粒子を光
熱変換剤として用いる場合、その添加量は、感熱層固形
分の10〜50質量%であるのが好ましく、20〜45
質量%であるのがより好ましく、30〜40質量%の範
囲であるのが特に好ましい。上記範囲内であると、高い
感度が得られる。
【0147】光熱変換剤は、必ずしも感熱層に含まれな
くても、例えば、感熱記録層の隣接層である下塗層や、
後述する水溶性オーバーコート層が含有してもよい。感
熱層、下塗層およびオーバーコート層のうち少なくとも
一つの層が光熱変換剤を含有することにより、赤外線吸
収効率が高まり、感度を向上させることができる。
【0148】(その他の添加剤)本発明の感熱層には、
さらに必要に応じて上記以外に種々の化合物を添加して
もよい。例えば、耐刷力を一層向上させるために多官能
モノマーを感熱層マトリックス中に添加することができ
る。この多官能モノマーとしては、マイクロカプセル中
に内包することができるモノマーとして例示したものを
用いることができる。特に好ましいモノマーとしては、
トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられ
る。
【0149】また、本発明の感熱層には、画像形成後、
画像部と非画像部の区別をつきやすくするため、可視光
域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用す
ることができる。具体的には、オイルイエロー#10
1、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、
オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブル
ー#603、オイルブラックBY、オイルブラックB
S、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工
業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバ
イオレット(CI42555)、メチルバイオレット
(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミン
B(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI
42000)、メチレンブルー(CI52015)等、
および特開昭62−293247号に記載されている染
料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔
料、アゾ系顔料、酸化チタンなどの顔料も好適に用いる
ことができる。添加量は、感熱層塗布液全固形分に対
し、0.01〜10質量%の割合である。
【0150】また、本発明においては、感熱層塗布液の
調製中または保存中においてエチレン性不飽和化合物の
不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を
添加するのが好ましい。適当な熱重合防止剤としては、
例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ
−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブ
チルカテコール、ベンゾキノン、4,4´−チオビス
(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´
−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノー
ル)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミン
アルミニウム塩が挙げられる。熱重合防止剤の添加量
は、全組成物の質量に対して約0.01〜5質量%であ
るのが好ましい。
【0151】また必要に応じて、酸素による重合阻害を
防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級
脂肪酸やその誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程
で感熱層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸やその
誘導体の添加量は、感熱層固形分の約0.1〜約10質
量%であるのが好ましい。
【0152】更に、感熱層には、必要に応じ、塗膜の柔
軟性等を付与するために可塑剤を加えることができる。
可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ク
エン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチ
ル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸
トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチ
ル、オレイン酸テトラヒドロフルフリルが挙げられる。
【0153】(感熱層の形成)本発明の感熱層は、必要
な上記各成分を溶剤に溶解、もしくは分散し、塗布液を
調製し、前記支持体の親水性表面上に塗布される。ここ
で使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シク
ロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタ
ノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチル
エーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メト
キシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルア
セテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチ
ル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチル
ホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリ
ドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロ
ラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、こ
れに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独ま
たは混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ま
しくは1〜50質量%である。
【0154】また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感
熱層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般
的に0.5〜5.0g/m2が好ましい。この範囲より
塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画
像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性は低下する。塗
布する方法としては、種々の方法を用いることができ
る。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗
布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、
ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
【0155】感熱層塗布液には、塗布性を向上させるた
めの界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号
公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加
することができる。添加量は、感熱層全固形分の0.0
1〜1質量%であるのが好ましく、0.05〜0.5質
量%であるのがより好ましい。
【0156】〔その他の構成要素〕 [オーバーコート層]本発明の平版印刷版原版において
は、親油性物質による感熱層表面の汚染防止のため、感
熱層上に、水溶性オーバーコート層を設けることができ
る。本発明に使用される水溶性オーバーコート層は印刷
時容易に除去できるものが好ましく、水溶性の有機高分
子化合物から選ばれた樹脂を含有する。ここで用いる水
溶性の有機高分子化合物としては、塗布乾燥によってで
きた皮膜がフィルム形成能を有するもので、具体的に
は、ポリ酢酸ビニル(但し、加水分解率65%以上のも
の)、ポリアクリル酸およびそのアルカリ金属塩あるい
はアミン塩、ポリアクリル酸共重合体およびそのアルカ
リ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸およびその
アルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸共重
合体およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリア
クリルアミドおよびその共重合体、ポリヒドロキシエチ
ルアクリレート、ポリビニルピロリドンおよびその共重
合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルエ
ーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリル
アミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸及びその
アルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルア
ミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体お
よびそのアルカリ金属塩あるいはアミン塩、アラビアガ
ム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルロー
ズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ
等)およびその変性体 、ホワイトデキストリン、プル
ラン、酵素分解エーテル化デキストリン等を挙げること
ができる。また、目的に応じて、これらの樹脂を二種以
上混合して用いることもできる。
【0157】また、オーバーコート層には、前記光熱変
換剤のうち水溶性のものを添加しても良い。さらに、オ
ーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水
溶液塗布の場合には、ポリオキシエチレンノニルフェニ
ルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテルなど
の非イオン系界面活性剤を添加することができる。オー
バーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜2.0g/m2
が好ましい。この範囲内で、機上現像性を損なわず、指
紋付着汚れなどの親油性物質による感熱層表面の良好な
汚染防止ができる。
【0158】[製版および印刷]上記のようにして作製
された本発明の平版印刷版原版は熱により画像形成され
る。具体的には、熱記録ヘッド等による直接画像様記
録、赤外線レーザによる走査露光、キセノン放電灯など
の高照度フラッシュ露光や赤外線ランプ露光などを用い
ることができるが、波長700〜1200nmの赤外線
を放射する固体レーザー、半導体レーザ、YAGレーザ
等の固体高出力赤外線レーザによる露光が好適である。
画像露光された本発明の平版印刷版原版は、特段の現像
処理を行なうことなしに、印刷機に装着し、インキと湿
し水を用いて通常の手順で印刷することができる。即
ち、露光後の平版印刷版原版の未露光部は、印刷工程の
初期の段階で、湿し水等に含まれる水性成分により容易
に除去されて非画像部が形成される。
【0159】また、これらの平版印刷版原版は、日本特
許2938398号に記載されているように、印刷機シ
リンダー上に取りつけた後に、印刷機に搭載されたレー
ザーにより露光し、その後に湿し水および/またはイン
クをつけて機上現像することも可能である。また、これ
らの平版印刷版原版は、水または適当な水溶液を現像液
とする現像処理を行なった後、印刷に用いることもでき
る。
【0160】また、本発明の平版印刷版原版は、充分な
断熱性を有し、表面に、親水性及び基板との密着性に優
れる親水性層を有する支持体上に感熱記録層を設けてい
るため、高感度で記録可能であり、支持体近傍における
も画像形成性に優れることから、露光後、特段の現像処
理を経ることなく印刷機にそのまま装着して印刷を行な
い、印刷に用いられる湿し水などの親水性成分により非
画像部が除去される、いわゆる機上現像に適するもので
ある。
【0161】
【実施例】以下、本発明を、実施例に従って説明する
が、本発明の範囲はこれらの実施例に限定されない。
【0162】〔1.陽極酸化皮膜の形成〕金属基板とし
て0.24mmの厚みのアルカリ脱脂処理済みのAl板
を使用し以下の処理を順に処理して陽極酸化皮膜を形成
した。 1−1.機械的粗面化処理方法 回転数150rpmの0.9号ナイロンブラシにてスラ
リー状の研磨剤(平均粒径15μm程度のパミス、シラ
スまたは珪砂)を供給しながら、研磨をおこなった。
【0163】1−2.化学的溶解処理方法(i) 苛性ソーダの濃度20wt%一定とし、温度40℃で処
理時間はRaが0.3μmになるように調整した。その
後、10秒流水にて水洗後、硫酸濃度120g/リット
ル、液温50℃、10秒間浸漬し、デスマット処理をお
こなった。Raの計測値は、0.3±0.05μm(標
準偏差)であった。 1−3.電気化学的粗面化処理方法 特開平3−79799号の電源波形を使い、硝酸濃度1
2g/リットル、Al濃度を6g/リットルの濃度に設
定し、液温60℃として陽極側の電流密度をピット個数
が2.4〜180個/mm2の範囲になるように設定し
た。その後水洗した。ピット個数はSEM観察の結果1
40±20個/mm2であった。
【0164】1−4.化学的溶解処理方法(ii) 苛性ソーダの濃度20wt%一定とし、温度40℃で処
理時間は1.3g/m 2になるように調整した。その
後、10秒流水にて水洗後、硫酸濃度120g/リット
ル、液温50℃、15秒間浸漬し、デスマット処理をお
こなった。(基板[A])
【0165】1−5.陽極酸化処理方法 リン酸濃度49g/リットル、液温25℃にて、特開平
8−264118号の図4記載の装置で、電流密度0.
3A/dm2となるように定電流の直流電源を用いて電
気を供給し、900秒間かけて皮膜を生成させ、水洗し
た。形成された空孔の開口径は28nm、最大径は28
0nmであった。 1−6.陽極酸化皮膜量の決定方法 超高分解能型SEM(日立S−900)によって破断面
を観察したところ、膜厚は1μmであった。(基板
[1])
【0166】前記(1−5.陽極酸化処理方法)におけ
る処理条件を下記表1に示すように変え、所望により以
下の条件でポアワイド処理を行なった他は前記と同様に
して金属基板上に陽極酸化皮膜を形成してなる基板
[2]〜基板[14]を作製した。 1−7.ポアワイド処理 陽極酸化処理後のアルミニウム板をpH13のNaOH
水溶液に30℃又は50℃で50〜450秒(条件は下
記表1に記載の通り)浸せきして、ポアワイド処理を行
った。得られた陽極酸化皮膜の膜厚、形成された空孔の
開口径、開口率、空隙率も表1に記載する。
【0167】
【表1】
【0168】〔2.親水性層の形成〕前記基板[3]に
以下のようにして親水性層を形成し、平版印刷版用支持
体基板1を得た。3号珪酸ソーダ(Na2O:SiO2
1:3)(珪酸ソーダ3号:商品名、日本化学工業
(株)製)19.8g,エマルジョン樹脂としてアルマ
テックスE269(三井化学(株)製)0.2g、酸化
物粒子としてコロイダルシリカ(SK、日産化学工業
(株)製、平均粒径12nm) 0.2g、純水100
0.0gの理量で混合し、親水性層形成溶塗布液Aを得
た。この塗布液を乾燥後の膜厚が0.05μmとなるよ
うに基板[3]に塗布し、120℃3分間乾燥させ、親
水性層を形成した。 (親水化層の厚みの測定方法)親水化層の厚みの測定は
超高分解能型SEM(日立S−900)を使用した。電
圧は12V(比較的低加速電圧である)で、導電性を付
与する蒸着処理等を施すことなく、観察、測定を行っ
た。基板を折り曲げて、折り曲げた際に発生したひび割
れ部分の側面(通称破断面)を超高分解能型SEM(日
立S−900)を使用し、膜厚を測定した。10箇所を
無作為抽出して測定し、その平均値を平均膜厚とした。
標準偏差誤差は±10%以下であった。
【0169】(実施例1) 〔平版印刷版の作製〕 (3.感熱記録層の形成) (3−a.微粒子ポリマーの合成およびマイクロカプセ
ルの調製) (3−a−1)微粒子ポリマーの合成 アリルメタクリレート7.5g、ブチルメタクリレート
7.5g、ポリオキシエチレンノニルフェノール水溶液
(濃度9.84×10-3mol/L)200mlを加
え、250rpmでかくはんしながら、系内を窒素ガス
で置換した。この液を25℃にした後、セリウム(I
V)アンモニウム塩水溶液(濃度0.984×10-3
ol/L)10mlを添加した。この際、硝酸アンモニ
ウム水溶液(濃度58.8×10-3mol/L)を加
え、pHを1.3〜1.4に調整した。その後、8時間
かくはんして、微粒子ポリマーを含有する液を得た。得
られた液の固形分濃度は9.5%であり、微粒子ポリマ
ーの平均粒径は0.2μmであった。
【0170】(3−a−2)マイクロカプセルの調製 キシレンジイソシアネート40g、トリメチロールプロ
パンジアクリレート10g、アリルメタクリレートとブ
チルメタクリレートの共重合体(モル比7/3)10g
および界面活性剤(パイオニンA41C、竹本油脂社
製)0.1gを酢酸エチル60gに溶解させて、油相成
分とした。一方、ポリビニルアルコール(PVA20
5、クラレ社製)の4%水溶液を120g調製し、水相
成分とした。油相成分および水相成分をホモジナイザー
に投入し、10000rpmで用いて乳化させた。その
後、水を40g添加し、室温で30分かくはんし、更に
40℃で3時間かくはんし、マイクロカプセル液を得
た。得られたマイクロカプセル液の固形分濃度は20質
量%であり、マイクロカプセルの平均粒径は0.2μm
であった。
【0171】(3−b)感熱層の塗布 上記で得られた平版印刷版用支持体1に、下記組成の感
熱層(1)塗布液を塗布し、オーブンにて60℃で15
0秒間乾燥して、実施例1の平版印刷版原版を得た。感
熱層(1)の乾燥塗布量は0.5g/m2であった。
【0172】 <感熱層(1)塗布液組成> ・上記で合成した微粒子ポリマーを含有する液 (ポリマー固形分換算で) 5g ・ポリヒドロキシエチルアクリレート (重量平均分子量2.5万) 0.5g ・光熱変換剤(本明細書記載のIR−11) 0.3g ・水 100g
【0173】(実施例2〜28、比較例1〜3)実施例
1の支持体の親水性層において、用いる基板(基板
[1]〜[14])、親水性層形成溶塗布液Aにおい
て、酸化物粒子の種類、及び、酸化物粒子と水との添加
量をそれぞれ下記表2に記載したものに代えた他は、同
様にして陽極酸化皮膜上に親水性層を形成し、感熱層を
形成して実施例2〜28の平版印刷版原版を得た。ま
た、陽極酸化皮膜上に親水性層を設けず、直接感熱層
(1)を設けたものを比較例1、陽極酸化皮膜の厚みを
0.03μm、0.70μmとした他は実施例1と同様
にしたものをそれぞれ比較例2、比較例3の平版印刷版
原版とした。詳細を表3に示す。
【0174】なお、表2に記載の酸化物粒子の詳細は以
下の通りである。 コロイダルシリカ:(SK、平均粒子径12nm、日産
化学工業(株)製、実施例1で用いたもの) シリカゾル:(AEROSIL50、平均粒子径30n
m、日本アエロジル社製) 二酸化チタン:(MT600B、平均粒子径60nm、
テイカ(株)製) アルミナゾル:(AZ200、羽毛状、日産化学工業
(株)製) アルミナ:(AKP−G015、平均粒子径100n
m、住友化学工業(株)製) アルミナ:(AKP−50、平均粒子径200nm、住
友化学工業(株)製) アルミナ:(AKP−30、平均粒子径300nm、住
友化学工業(株)製) アルミナゾル:(AZ520、平均粒子径10〜20n
m、日産化学工業(株)製) コロイダルシリカ:(XS、平均粒子径4〜6nm、日
産化学工業(株)製) コロイダルシリカ:(コロイダルシリカ(スノーテック
スST−N、日産化学工業社製、平均粒子径10〜20
nm) コロイダルシリカ:(ST−20、平均粒子径10〜2
0nm、日産化学工業社製) コロイダルシリカ:(CL、平均粒子径12nm、グレ
ースジャパン(株)デビソン事業部製) コロイダルシリカ:(CL−P、平均粒子径22nm、
グレースジャパン(株)デビソン事業部製)
【0175】
【表2】
【0176】
【表3】
【0177】〔3.画像形成〕 (感度の測定)実施例1〜28、比較例1〜3の平版印
刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載
したクレオ社製トレンドセッター3244VFSを用い
て、解像度2400dpiの条件で出力して露光した。
この際、外面ドラム回転数を変化させることにより版面
エネルギを変化させて、画像形成できる最低露光量によ
り感度を評価した。結果を表2に示した。
【0178】(印刷適性評価)前記のようにレーザー照
射により画像形成した平版印刷版を、現像などの後処理
せずに印刷機のシリンダーに取り付け、湿し水を供給し
た後、インキを供給し、更に紙を供給して印刷をおこな
った。印刷機としては、ハイデルベルグ社製印刷機SO
R−Mを用いた。各平版印刷版原版のすべてにおいて、
問題なく機上現像をすることができ、そのまま印刷する
ことが可能であった。
【0179】(印刷試験) (1)汚れ性 印刷機を一時停止させて、印刷機のブランケット部分の
インキを日東電工製PETテープにて写し取り、非画像
部のインキによる汚れて具合を目視にて、以下の基準に
より評価した。 汚れ性 ◎:汚れの発生が目視でまったく観察されない。 ○:汚れの発生が目視でほとんど観察されない。 △:汚れの発生が目視で観察される。 ×:汚れの発生が著しい。 ××:汚れの発生が非画像部の全面にわたっている。
【0180】(2)耐刷性 同様の条件で、残色、残膜、汚れのない印刷物が何枚得
られるかを計測した。即ち、残色、残膜、汚れのいずれ
かの評価が△以下となった時点で、刷了とし、その時点
の枚数を印刷枚数を刷了枚数とした。
【0181】表2から、本発明の平版印刷版平版印刷版
原版(実施例1〜28)は、いずれも機上現像可能であ
り、感度、汚れ性に優れ、且つ、耐刷力に優れることが
分かる。空隙率とこれらの効果との関連で言えば、実施
例中でも、陽極酸化皮膜の空隙率が高い基板[3]を用
いた実施例1〜4などは、断熱性が高いので、特に感度
が高いが、実施例のなかでも比較的空隙率が低い基板
[4]を用いた実施例5〜8などは比較例1より高感度
化されているものの、その改良効果は著しいとはいえな
いが、表面開口部の未封孔部分の残存が残り難いため、
特に汚れ性に優れているという傾向がある。一方、親水
性層を形成しない支持体を用いた比較例1は、陽極酸化
層が形成されていても、同様の画像形成層を有する各実
施例に比較して感度に劣っていた。また、親水性層が薄
すぎる比較例2は感度は良好であるが、印刷時の汚れ性
に劣り、親水性層が厚すぎる比較例3は、耐刷性に問題
があることがわかった。
【0182】(実施例29〜57)上記実施例1〜28
で用いたのと同じ本発明の平版印刷版用支持体に、下記
組成の感熱層(2)塗布液を塗布し、オーブンにて60
℃で150秒間乾燥して、実施例29〜57の平版印刷
版原版を得た。感熱層(2)の乾燥塗布量は0.7g/
2であった。
【0183】 <感熱層(2)塗布液組成> ・上記で合成したマイクロカプセル液 (ポリマー固形分換算で) 5g ・トリメチロールプロパントリアクリレート 3g ・光熱変換剤(本明細書記載のIR−11) 0.3g ・水 60g ・1−メトキシ−2−プロパノール 40g
【0184】実施例29〜56の平版印刷版原版を、前
記実施例1〜28と同様に評価した。結果を表4に示し
た。
【0185】
【表4】
【0186】表4から、本発明の平版印刷版原版(実施
例29〜56)は、いずれも機上現像可能であり、感
度、汚れ性に優れ、且つ、耐刷力に優れることが分か
り、感熱層にマイクロカプセルを用いた場合でも、感熱
層に微粒子ポリマーを用いた場合と同様の傾向が見られ
た。
【0187】
【発明の効果】本発明の平版印刷版用支持体は、断熱性
及び表面親水性に優れ、感熱性の平版印刷版としても好
適に使用し得る。また、本発明の平版印刷版原版は、簡
易な印刷機上処理により製版可能であり、書込みに使用
されるレーザ光を効率よく画像形成必要な熱エネルギー
として利用することができ、高感度で、汚れのない画像
を形成することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 電気化学的粗面化処理に用いられる好ましい
交流電流の台形波の一例を示すグラフである。
【図2】 本発明に好適に用いられるラジアル型電解装
置の概略図である。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) G03F 7/004 521 G03F 7/004 521 7/11 503 7/11 503 Fターム(参考) 2H025 AA01 AA12 AB03 AC08 BH03 BJ03 BJ10 CC11 DA18 DA20 DA36 2H096 AA06 BA01 BA09 CA03 CA05 EA04 EA23 2H114 AA04 AA10 AA14 AA22 AA23 AA24 AA27 BA02 BA10 DA04 DA08 DA14 DA41 DA74 DA75 EA01 EA05 EA06 EA08 FA01 FA06 GA01 GA09

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 金属基板上に、(I)空隙率が5〜70
    %、平均厚みが0.5〜10μmの陽極酸化皮膜、(I
    I)珪酸塩化合物、水系エマルジョン樹脂及び酸化アル
    ミニウム粒子、酸化チタン粒子、酸化ケイ素粒子からな
    る群より選択される酸化物粒子を含有する親水性層を、
    順次備える平版印刷版用支持体。
  2. 【請求項2】 前記親水性層の平均厚みが0.05〜5
    μmであることを特徴とする請求項1に記載の平版印刷
    版用支持体。
  3. 【請求項3】 前記酸化物粒子の平均粒径が、前記陽極
    酸化皮膜表面の平均開口径をd1(nm)としたとき、
    〔d1±20(nm)〕の範囲にあることを特徴とする
    請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
  4. 【請求項4】 金属基板上に、(I)空隙率が5〜70
    %、平均厚みが0.5〜10μmの陽極酸化皮膜、(I
    I)珪酸塩化合物、水系エマルジョン樹脂及び酸化アル
    ミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素からなる群より選択
    される酸化物粒子を含有する親水性層を、順次備える支
    持体上に、 (i)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、また
    は、(ii)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマ
    イクロカプセルを含有し、赤外線露光により記録可能な
    感熱記録層を設けてなる平版印刷版原版。
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