JP2005186416A - 平版印刷版用支持体および平版印刷版原版 - Google Patents

平版印刷版用支持体および平版印刷版原版 Download PDF

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Abstract

【課題】平版印刷版原版の裏面に運搬中、取扱い中等のキズ付きを防止でき、多数枚の版を積み重ねて長期間保存した時に裏面と画像記録層が接着して画像記録層が剥がれることを防止でき、さらに、カット・集積時にずれも生じない平版印刷版原版およびそれに用いられる平版印刷版用支持体の提供。
【解決手段】アルミニウム表面を有する基板の画像記録層が設けられる表面の反対側の表面に、水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子およびシリカ粒子からなる群より選択される1種以上の粒子が、アルミニウム原子およびケイ素原子の少なくとも1種の原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる多孔質層を有する平版印刷版用支持体、および、それを用いる平版印刷版原版。
【選択図】なし

Description

本発明は、平版印刷版用支持体およびそれを用いる平版印刷版原版に関し、詳しくは、画像記録層が設けられる表面の反対側に特定の保護層を有する平版印刷版用支持体およびそれを用いる平版印刷版原版に関する。
従来より、光重合系を用いた平版印刷版の研究は多数行われ、特に近年にはアルゴンレーザ等の可視レーザに感応可能な高感度光重合開始系を利用したレーザ刷版の開発が行われている。これらの平版印刷版の多くは、支持体としてのアルミニウム板上に付加重合可能なエチレン性二重結合を含む化合物と光重合開始剤、所望により用いられる有機高分子結合剤、熱重合禁止剤等からなる光重合性組成物層を設け、さらにその上に重合を阻害する酸素遮断のためにポリビニルアルコールおよび(または)ポリビニルアルコール共重合体を主成分とするオーバーコート層を設けた平版印刷版原版から得られるものである。該平版印刷版原版の製造方法は、砂目立て等の必要な表面処理を施したアルミニウム板のウェッブロールを送り出し、有機溶媒系塗布液からなる画像記録層を塗布・乾燥し、中間ウェッブロールとして巻取り、再び中間ウェッブロールからウェッブを繰り出してオーバーコート層を塗布・乾燥する方法が採られている。これは有機溶媒系の画像記録層と水溶性ポリマーであるポリビニルアルコールおよび(または)その共重合体を主成分とする水系溶媒のオーバーコート層は同時重層塗布が困難なためである。これらの必要な層を塗設されたウェッブはロール裁断機で一定のサイズに連続的に裁断され集積される。
このようにして製造した平版印刷版原版を画像露光後、現像処理して作製した平版印刷版を用いて印刷したところ、非画像部に汚れが発生するという問題が生じる。これらの汚れは画像記録層に発生したキズが原因の1つと考えられる。画像記録層へのキズ付きは、(1)上記製造方法において、画像記録層塗布後ウェッブロールを巻取る際に微少なキズを有する平版印刷版原版の裏面との接触、例えば、ゴミ等が付着したローラーに接する平版印刷版原版の裏面がキズ付き、製造ラインの最後にコイル状に巻き取るときに画像記録層に転写される場合、また、(2)平版印刷版を多数枚重ねて運搬するときに、画像記録層とその上に重ねられた別の平版印刷版の裏面との滑り性が不足しているために、これらが擦れて画像記録層に転写される場合等に起こる。
また、多数枚重ねて保存しておくと、荷重により、上に重ねられた平版印刷版の裏面とその下の平版印刷版の画像記録層とが接着して剥がれなくなるという問題もある。
さらに、カット・集積された平版印刷版がずれやすくなったり、搬送する場合にずれる等の問題も生じる。
このような問題点を解決するために、裏面に保護層として種々のバックコート層を有する平版印刷版(平版印刷版原版も含む)が提案されている。例えば、ポリエステル等の樹脂を含むバックコート層を有する平版印刷版(例えば、特許文献1、2参照。)、無機金属化合物等を加水分解および重縮合させて得られるゾル−ゲル反応液を含む塗布液を塗布・乾燥してなるバックコート層を有する平版印刷版(特許文献3参照。)等が挙げられる。
しかし、特許文献1、2に記載のバックコート層は皮膜強度が弱く画像記録層へのキズ付きを効果的に防止できず、特許文献3に記載のバックコート層は、通常0.5μm以下の薄層として設けられるため、耐現像液性は良好ではあるもののキズ付き易さの改善効果が小さい場合がある。
特開平9−265176号公報 特開2000−267292号公報 特開平8−240914号公報
ところで、従来から、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸塩を含有するアルカリ性現像液は、o−キノンジアジド化合物を用いたポジ型平版印刷版の現像液として広く使われてきた。また、このケイ酸塩含有アルカリ性現像液は、ポジ型平版印刷版だけではなく、o−キノンジアジド感光層を用い反転処理するネガ型平版印刷版(例えば、特公昭56−14970号公報)、アルカリ可溶性ジアゾニウム塩を感光層に用いたネガ型感光性平版印刷版およびジメチルマレイミド基を側鎖に有する樹脂を光架橋剤とする感光層を用いたネガ型感光性平版印刷版の現像液としても好ましく用いられている。さらに、ケイ酸塩含有アルカリ性現像液は、可視光レーザ感光性の光重合性ネガ型平版印刷版(例えば、特開平4−221958号公報、特開平6−295061号公報、特開平8−220758号公報等)、赤外線レーザ感光性のネガ型平版印刷版(例えば、特開平7−20629号公報)および赤外線レーザ感光性のポジ型平版印刷版(例えば、特開平7−285275号公報、特開平10−268512号公報、特開平11−44956号公報等)の現像液としても知られている。
しかし、このケイ酸塩含有アルカリ性現像液は、自動現像機を用いて補充液を加えながら長期間使用すると現像液中に不溶物が発生し、これが平版印刷版に付着したり、自動現像機のノズルを詰まらせたり、フィルタの目詰まりを起こしたりする問題があり、これらの問題を解決する技術が要求されている。
したがって、本発明の目的は、平版印刷版原版の裏面に運搬中、取扱い中等のキズ付きを防止でき、多数枚の版を積み重ねて長期間保存した時に裏面と画像記録層が接着して画像記録層が剥がれることを防止でき、さらに、カット・集積時にずれも生じない平版印刷版原版およびそれに用いられる平版印刷版用支持体を提供することにある。
また、本発明の別の目的は、上記特性を備える上、自動現像機の長期運転においても現像液中に不溶物を生成させない平版印刷版原版およびそれに用いられる平版印刷版用支持体を提供することにある。
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意検討を重ねた結果、画像記録層が設けられる表面の反対側の表面(以下、本発明において「裏面」という。)に、キズ付きにくい多孔質層を設けると上記目的が達成されることを知見した。また、該多孔質層の上にさらに封孔層を設けると、基板表面のアルミニウムの溶出をより効果的に抑制できることを知見した。本発明者らは、上記知見に基づき本発明を完成させた。
即ち、本発明は、上記知見に基づいてなされたものであり、以下の(1)〜(9)を提供する。
(1)アルミニウム表面を有する基板の画像記録層が設けられる表面の反対側の表面に、
水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子およびシリカ粒子からなる群より選択される1種以上の粒子が、アルミニウム原子およびケイ素原子の少なくとも1種の原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる多孔質層を有する平版印刷版用支持体(以下、「本発明の平版印刷版用支持体」という。)。
(2)上記多孔質層が、水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子およびシリカ粒子からなる群より選択される1種以上の粒子とリン酸を含む塗布液を塗布した後乾燥させて形成される多孔質層である上記(1)に記載の平版印刷版用支持体。
(3)上記基板が、上記反対側の表面に化成処理が施されている基板である上記(1)または(2)に記載の平版印刷版用支持体。
(4)上記多孔質層の上に、さらに封孔層を設けた上記(1)〜(3)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
(5)上記封孔層が、化成処理により形成される封孔層である上記(4)に記載の平版印刷版用支持体。
(6)上記封孔層が、シリケートおよび/またはシリカを含む溶液を塗布した後乾燥させて形成される封孔層である上記(4)に記載の平版印刷版用支持体。
(7)上記化成処理が、アルカリ金属化合物を含む水溶液中に浸せきさせる処理である上記(3)または(5)に記載の平版印刷版用支持体。
(8)上記基板が、アルミニウム基板、あるいは、アルミニウムで被覆した紙基板、樹脂基板または金属基板である上記(1)〜(7)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
(9)上記(1)〜(8)のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を有する平版印刷版原版。
本発明の平版印刷版用支持体は、その裏面にキズ付きにくい多孔質層が設けられており、画像記録層を設けて平版印刷版原版にしても、平版印刷版用支持体および平版印刷版原版の裏面に運搬中、取扱い中等のキズ付きを防止でき、多数枚の版を積み重ねて長期間保存しても画像記録層が剥がれず、また、カット・集積時にずれを生じることもない。さらには、多孔質層により、平版印刷版原版の裏面のアルミニウムが溶出することを抑制できる。
また、上記多孔質層の上に封孔層が設けられた本発明の平版印刷版用支持体は、画像記録層を設けて平版印刷版原版にしても、上記特性を備える上、平版印刷版原版の裏面のアルミニウムの溶出をより効果的に抑制でき、現像液中に不溶物を生成させない。
以下、本発明の平版印刷版用支持体および平版印刷版原版について詳細に説明する。
[平版印刷版用支持体]
本発明の平版印刷版用支持体は、アルミニウム表面を有する基板の画像記録層が設けられる表面の反対側の表面に、水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子およびシリカ粒子からなる群より選択される1種以上の粒子が、アルミニウム原子およびケイ素原子の少なくとも1種の原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる多孔質層(以下、「本発明の多孔質層」という。)を有する平版印刷版用支持体である。
本発明の多孔質層は、高い耐キズ性を持つ皮膜であり、これにより平版印刷版用支持体および平版印刷版原版の製造中(運搬中)、取扱い中等に起こる平版印刷版用支持体および平版印刷版原版の裏面へのキズ付きを防止でき、平版印刷版原版等の巻き取り時および積層中における画像記録層への該キズの転写を抑制できる。また、該多孔質層は、該多孔質層とそれに接する画像記録層との静止摩擦係数をその表面粗さRにより所望値に容易に調整できるため、平版印刷版原版を積み重ねても画像記録層の剥離を防止でき、カット・集積時のずれも防止できる。さらに、該多孔質層は、アルミニウム原子およびケイ素原子の少なくとも1種の原子とリン原子を含む化合物によって強固に結着しているため、および、後述する封孔層により現像液の浸透を防止できるため、現像液に曝されてもアルミニウムの溶出を抑制できる。
<多孔質層>
以下、本発明の多孔質層について説明する。
本発明の多孔質層は、平版印刷版用支持体の裏面(粗面化処理が施される表面および画像記録層が設けられる表面の反対側の面)に設けられる。
基板上に設けられる本発明の多孔質層は、水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子およびシリカ粒子からなる群より選択される1種以上の粒子(以下、「金属化合物粒子」という場合がある。)の多数が、アルミニウム原子およびケイ素原子の少なくとも1種の原子(以下、「金属原子」という場合がある。)とリン原子を含む化合物を介して結着してなる層であり、これらの金属化合物粒子の表面を部分的に、好ましくは全体的に金属原子とリン原子を含む化合物が覆い、該金属原子とリン原子を含む化合物が固化し、これに覆われた複数の金属化合物粒子が凝集した状態で、該金属原子とリン原子を含む化合物を介して結着してなる層であると考えられる。
該多孔質層は、複数の金属化合物粒子が金属原子とリン原子を含む化合物等を介して結着されているため、皮膜強度が強く耐キズ性に優れ、現像液に曝されてもアルミニウムの溶出を抑制できる。
該多孔質層を形成する結着された金属化合物粒子は、金属化合物粒子の(表面の)一部がリン酸と反応して残存した金属化合物粒子であり、特に、その粒径を大きく減じることなく残存していると考えられる。つまり、本発明の特徴の1つは、金属化合物粒子の表面をリン酸により溶解(リン酸と反応)させる(全体を溶解させない)ことにある。
該表面を溶解させる方法としては、例えば、後述する塗布液(スラリー)の状態では金属化合物粒子とリン酸との反応が起こりにくい条件(温度、pH等)とし、該塗布液の塗布中または乾燥中にpHが低下すると共に高温状態となって反応が起こる条件となるように設定する方法が挙げられる。具体的には、後述する乾燥工程における乾燥温度を特定する方法(好ましくは、さらに乾燥時間を特定する方法)、後述するリン酸と反応する金属化合物粒子量を特定する方法、触媒・反応促進剤・反応促進剤等を添加する方法、および、これらを適宜組み合わせる方法等が挙げられる。
該多孔質層を形成する、リン酸と反応した後の金属化合物粒子の平均粒径等は、特に限定されず、後述する塗布液に用いる粒径により異なる。また、リン酸と反応した後の金属化合物粒子に関しては、リン酸と反応したこと以外は、後述する塗布液で説明するものと基本的に同様である。
本発明の多孔質層を形成する金属原子とリン原子を含む化合物は、リン酸と上記金属化合物粒子との反応生成物または該リン酸と後述する反応促進剤との反応生成物等であり、上記金属化合物粒子同士を結着させる結着剤として機能する。
該化合物は、用いる金属化合物粒子および任意に用いられる反応促進剤により異なるため、一概には決定できないが、他の原子、例えば、酸素原子等を含んでいてもよい。該化合物として、例えば、金属化合物粒子として水酸化アルミニウム粒子または酸化アルミニウム粒子を用いる場合には、Al(HPO、AlPO等が挙げられる。
該金属原子とリン原子を含む化合物は、上記化合物に限定されず、金属化合物粒子同士を結合する「金属原子とリン原子を含む結合基」であってもよく、該結合基は高分子量であってもよい。上記金属原子とリン原子を含む化合物および金属原子とリン原子を含む結合基の組成は特に限定されない。
本発明の多孔質層を形成させるには、後述するように、上記金属化合物粒子の金属原子と異なる金属原子を含む反応促進剤等を用いることができる。そのため、該金属原子とリン原子を含む化合物中の金属原子が、該反応促進剤に由来する金属原子であってもよい。好ましくは、金属原子とリン原子を含む化合物の金属原子は、金属化合物粒子の金属原子と同種の金属原子であり、より好ましくは、該金属化合物粒子に由来する金属原子である。
該多孔質層において、上記金属化合物粒子と金属原子とリン原子を含む化合物との存在比等は、特に限定されず、該金属原子とリン原子を含む化合物量は、少なくとも上記金属化合物粒子を結着できる量以上で、該金属化合物粒子間の空隙を完全に埋めてしまう量未満であり、例えば、後述する塗布液の組成により決定される。
本発明の多孔質層には、上記した金属化合物粒子と金属原子とリン原子を含む化合物以外に、他の化合物を含有してもよい。
他の化合物としては、例えば、後述する分散剤、反応促進剤等が挙げられ、また、これらと、上記金属化合物粒子または金属原子とリン原子を含む化合物との反応生成等も挙げられる。
本発明の多孔質層は、その表面の空隙率が、70%以下であるのが好ましく、60%以下であるのがより好ましく、50%以下であるのがさらに好ましい。該空隙率を70%以下とすると、多孔質層の皮膜強度が所望の状態に維持できる上、さらに該多孔質層の空隙を後述する封孔層により効果的に封孔でき、現像液による基板表面のアルミニウムの溶出をより効果的に抑制でき、現像液中に不溶物を生成させない。また、該多孔質層の優れた保水性を維持するため、該表面の空隙率は、5%以上とするのが好ましい。
多孔質層の表面の空隙率の測定方法は、例えば、多孔質層が設けられた平版印刷版用支持体の多孔質層側の表面を、高分解能走査型電子顕微鏡(S−900、日立製作所社製)を用いて、蒸着処理を施さないで加速電圧12kVにて、観察倍率を5000倍と20000倍に設定して撮影する。得られた画像データ(写真)の3cm×3cmの範囲内において、暗部を空隙部分として、この面積割合を空隙率とする。この作業を10箇所で行い、それぞれの倍率における結果が標準偏差ばらつき内になるまで計測する。なお、加速電圧、観察倍率等は、観測する封孔層の層厚等により適宜調整して行う。
本発明の多孔質層は、その表面の空隙率が上記範囲であれば、特に限定されないが、皮膜強度を維持できる点で、該多孔質(全体)の空隙率は70%以下であるのが好ましく、50%以下であるのがより好ましい。また、多孔質層の形成時に該膜の平面性を維持し、短時間で皮膜の内部まで乾燥させられる観点から、該空隙率は10%以上であるのが好ましく、20%以上であるのがより好ましい。
該多孔質層(全体)の空隙率の測定方法は、後述する該多孔質層の層厚と乾燥後の該多孔質層の質量とから求められる。具体的には、まず、該多孔質層の密度を下記式により算出する。これには、該多孔質層の乾燥後の質量を測定し単位面積当たりの多孔質層の質量を求め、後述する方法により該多孔質層の層厚を測定する。
密度(g/cm)=(単位面積当たりの多孔質層の質量/層厚)
次に、該多孔質層の空隙率は、上記で算出された密度を基に以下の式により求められる。
空隙率(%)={1−(多孔質層の密度/D)}×100
ここで、Dは、該多孔質層の形成に用いる金属化合物粒子の化学便覧による密度(g/cm)である。
本発明の多孔質層は、その層厚が、0.5〜100μmであるのが好ましく、2〜80μmであるのがより好ましく、10〜50μmであるのがさらに好ましい。層厚が0.5μm以上であれば、優れた皮膜強度を発揮し耐キズ性に優れる上、塗布ムラを抑えられ表面粗さを容易に調整できる。該層厚の上限は、それ以上の効果が得られないためコスト上の理由で100μmであるのが好ましいが、これに限られず100μm以上としてもよい。
該多孔質層の層厚の測定方法は、まず、該多孔質層を設けた平版印刷版用支持体を折り曲げて作成した破断面を、超高分解能走査型電子顕微鏡(例えば、S−900、日立製作所社製)によって観察して撮影する。なお、観察倍率は、層厚等により適宜調整して行う。具体的には、倍率100〜10000倍であるのが好ましい。次に、得られた画像データ(写真)の該多孔質層部分の厚さを測定し、換算して求めることができる。
本発明の多孔質層(平版印刷版用支持体の裏面)の表面粗さRは、0.20〜1.50μm以下であるのが好ましい。表面粗さRを0.20μm以上とすると、後述する静止摩擦係数を容易に所望の範囲に調整でき、多数枚の版を積み重ねて長期間保存しても画像記録層の剥離を防止でき、また、カット・集積時のずれを抑制できる。一方、表面粗さRを1.5μm以下とすると、多孔質層のひび割れを防止できる。
本発明の平版印刷版用支持体において、表面の平均粗さ(表面粗さ)Rの測定方法は、以下の通りである。
触針式粗さ計(例えば、sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均粗さRを5回測定し、その平均値を平均粗さとする。
2次元粗さ測定の条件を以下に示す。
(測定条件)
カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
平版印刷版用支持体の表面粗さRを上記範囲にするには、例えば、後述する多孔質層塗布液に含有させる金属化合物粒子の種類、その平均粒径等により調整することができる。
多孔質層とそれに接する画像記録層との静止摩擦係数は、多孔質層の表面粗さRに相関する傾向がある。即ち、粗面同士は微細な突起が互いに引っかかるので摩擦が高く、平滑なものは、突起が少ないので摩擦が低く滑り易い。
本発明においては、静止摩擦係数は、平版印刷版原版を積み重ねても画像記録層の剥離を防止でき、カット・集積時のずれも防止できる点で、0.30〜1.20であるのが好ましい。これらの効果により優れる点で、静止摩擦係数は、0.50〜1.10であるのが好ましい。
本発明において、静止摩擦係数は、多孔質層の表面粗さR、その層厚等により所望の値に調整できる。
本発明において、静止摩擦係数の測定方法は、以下の通りである。
平版印刷版用支持体(平版印刷版原版)を2枚用意し、一方の平版印刷版用支持体(平版印刷版原版)を多孔質層が上面になるようにして平面に固定する。この上に、他方の平版印刷版原版を65mm×110mmの長方形に切断して、多孔質層と画像記録層が接触するように重ねる。なお、一方の平版印刷版用支持体のサイズは他方の平版印刷版用支持体のサイズ(65mm×110mmの長方形)よりも大きいことが必要である。他方の平版印刷版用支持体の上に、1000gの荷重を載せ、一方の平版印刷版用支持体を載せた平面を一定の速度(2.7度/秒)で傾斜させていき、他方の平版印刷版用持体が移動(滑り)を開始する傾斜角度(θ)を測定する。摩擦係数をtan(θ)として計算する。測定には、例えば、摩擦係数測定機(東洋精機(株)製)等を用いる。
なお、本発明の多孔質層は、1層としてもよく、または、2層以上を積層(重畳)させた複数層としてもよい。複数層とする場合には、同一の多孔質層を積層させてもよく、また、異なる組成の多孔質層を積層させてもよい。この場合、積層する各層の層厚は特に限定されず、各層の層厚を一定としてもよく、異なる層厚としてもよいが、積層させた複数層全体(本発明の多孔質層)の層厚を上記範囲に調整する。
複数の層を積層して本発明の多孔質層を形成させるには、例えば、後述する塗布液を塗布する塗布工程と該塗布液を乾燥する乾燥工程を繰り返し交互に行えばよい。
本発明の多孔質層は、例えば、後述する基板上に、金属化合物粒子とリン酸とを含む塗布液を塗布した後乾燥させて形成される。より具体的には、例えば、金属化合物粒子およびリン酸を含有する塗布液を基板に塗布する塗布工程と、該基板に塗布された塗布液を120〜500℃で加熱乾燥する乾燥工程とを含む方法により形成できる。
即ち、本発明の平版印刷版用支持体は、金属化合物粒子およびリン酸を含有する塗布液を基板に塗布し、該塗布液を120〜500℃で乾燥して得られる多孔質層を、該基板の画像記録層が設けられる表面の反対側の表面に有する平版印刷版用支持体である。
多孔質層が形成される反応メカニズムは、詳細には分からないが、本発明者らは、以下のように考えている。金属化合物粒子が水酸化アルミニウム粒子である場合について説明する。
水酸化アルミニウム(Al(OH))とリン酸との反応は下記式(1)で表され、該反応により生成する、AlPO・xHO、Al(HPO、AlH10等により水酸化アルミニウム粒子同士が結着されていると考えられる。
Al(OH)+HPO → AlPO・xHO+Al(HPO+AlH10 (1)
即ち、金属化合物粒子およびリン酸を含有する塗布液のpHが後述する好適範囲にあると、該酸性条件下において上記金属化合物粒子の表面がわずかにリン酸と反応する。該塗布液の塗布後、好ましくは乾燥工程において、該塗布液の水が除去されリン酸の濃度が増大すると共に該塗布液および基板の温度が上昇する。そうすると、基板および金属化合物粒子が、リン酸と反応し、次第に水に難溶の金属原子とリン原子を含む化合物を生成させる。上記水に難溶の化合物が金属化合物粒子同士を結着する結着剤として機能し、複数の金属化合物粒子が結着した多孔質層が形成される。
ここで、金属化合物粒子として水酸化アルミニウム粒子を用いると、リン酸と水酸化アルミニウム粒子との反応は比較的低温で起こり、この反応は上記式(1)に示すようにガス成分を副生しないため、形成される多孔質層の表面粗さを粗くすることがなく、高温乾燥に不利であるアルミニウム板を基板として用いてもアルミニウム板の軟化を抑制できる。
このようなメカニズムにおいて、反応促進剤、例えば、塩化アルミニウムを水に溶解させると微細な水酸化アルミニウムが生成し、この微細な水酸化アルミニウムはリン酸との反応性が高いため低温でも急速に反応が進行するものと推定される。
なお、このようなリン酸と金属化合物粒子との反応は、「化学」、日本化学協会、第31巻第11号、p.895〜897に詳細に記載されている。
また、金属化合物粒子が酸化アルミニウム粒子である場合の反応メカニズム等については、上記した特開2003−145959号公報等に記載されている。
上記金属化合物粒子およびリン酸を含有する塗布液を基板に塗布する塗布工程に用いられる塗布液について説明する。
本発明においては、該塗布液には金属化合物粒子として、水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子およびシリカ粒子からなる群より選択される1種以上の粒子を用い、これらの金属化合物粒子は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
金属化合物粒子として、水酸化アルミニウム粒子を用いるのが、多孔質層の表面粗さRを所望の値に調整でき、また、水酸化アルミニウム粒子の結着を低温かつ短時間で行える点で好ましい。さらには、所望の表面粗さRを維持しつつ層厚の厚い多孔質層を容易に形成させることができる点で好ましい。より好ましくは、水酸化アルミニウム粒子を少なくとも1種含む2種以上の金属化合物粒子を用いる。
このとき、用いられる2種以上の金属化合物粒子は、それぞれ平均粒径が異なるものとするのがより好ましい。平均粒径が異なる金属化合物粒子を用いることにより、平均粒径が大きな金属化合物粒子により形成される空隙部分に平均粒径が小さな金属化合物粒子が入り込み、形成される多孔質層の空隙率が低下し、アルミニウムの現像液への溶出を抑制できる。さらに該空隙を後述する封孔層により効果的に封孔でき、現像液による基板表面のアルミニウムの溶出をより効果的に抑制でき、現像液中に不溶物を生成させない。また、表面粗さRを容易に調整できるため、静止摩擦係数を所望値に容易に調整でき、平版印刷版原版を積み重ねても画像記録層の剥離を防止でき、カット・集積時のずれも防止できる。
これらの効果に優れる点で、上記塗布液に含有される平均粒径が異なる2種以上の金属化合物粒子は、平均粒径の大きな金属化合物粒子と平均粒径の小さな金属化合物粒子との大小2種の金属化合物粒子であるのが好ましく、平均粒径の大きな金属化合物粒子と平均粒径の小さな金属化合物粒子と平均粒径のさらに小さな金属化合物粒子との大中小3種の金属化合物粒子であるのが好ましい。
なお、2種以上の金属化合物粒子の組み合わせとしては、特に限定されない。
金属化合物粒子の平均粒径は、特に限定されず、多孔質層の表面粗さR、層厚等に応じて任意に設定できるが、以下に示す平均粒径にするのが好ましい。
平均粒径が大きな金属化合物粒子の平均粒径は、例えば、1.0μm以上であるのが好ましく、1.0〜5.0μmであるのが好ましい。平均粒径が小さな金属化合物粒子の平均粒径は、例えば、0.1μm以上1.0μm未満であるのが好ましく、0.1〜0.3μmであるのが好ましい。平均粒径がさらに小さな金属化合物粒子の平均粒径は、例えば、0.01μm以上0.1μm未満であるのが好ましく、0.01〜0.05μmであるのが好ましい。
上記大小2種の金属化合物粒子の混合比は、特に限定されないが、例えば、平均粒径が大きな金属化合物粒子に対する平均粒径が小さな金属化合物粒子の質量比が、0.1〜2であるのが、皮膜強度と後述する封孔層により該多孔質層が封孔されやすくなる点から好ましく、該質量比が、0.1〜0.4であるのがより好ましい。
上記大中小3種の金属化合物粒子を用いる場合も同様に、混合比は、特に限定されないが、例えば、平均粒径が大きな金属化合物粒子に対する平均粒径が小さな金属化合物粒子の質量比は上記と同様であり、平均粒径が大きな金属化合物粒子に対する平均粒径がさらに小さな金属化合物粒子の質量比は、0.01〜1であるのが、後述する封孔層により該多孔質層が封孔されやすい点で好ましく、該質量比が、0.01〜0.2であるのがより好ましい。
3種以上の金属化合物粒子を用いる場合は、基本的には、上記と同様の比率に調製するのが好ましい。
塗布液に含まれる金属化合物粒子は、一般的に市販されているものであれば、特に制限なく使用することができる。シリカは、後述する基板の粗面化処理の1種である、ブラシと組み合わせて用いられる、パミスと呼ばれる火山灰の一種を水と混合してスラリー状にした研磨剤の廃品研磨剤(平均粒径約5μm前後)を再利用してもよい。
平均粒径が大きな金属化合物粒子は、水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子またはシリカ粒子のいずれでもよいが、表面粗さRを容易に調製できる点で水酸化アルミニウム粒子であるのが好ましい。
平均粒径が大きな金属化合物粒子としては、例えば、C−303(平均粒径2.5μm、住友化学工業(株)製)、C−301(平均粒径1μm、住友化学工業(株)製)、CM−45(平均粒径15μm、住友化学工業(株)製)、UFH−20(平均粒径2.0μm、アルコアケミカルズ(株)製)、F710(平均粒径1μm、アルコアケミカルズ(株)製)、B703(平均粒径2μm、日本軽金属(株)製)、PF013(平均粒径1〜2μm、日本軽金属(株)製)、B53(平均粒径50μm、日本軽金属(株)製)、B153(平均粒径15μm、日本軽金属(株)製)等の水酸化アルミニウム;A31(平均粒径5μm、日本軽金属(株)製)等の酸化アルミニウム;FFF(平均粒径27μm、イタリアPUMEX社製)、ケイ砂SP−80(平均粒径5.5μm、三栄シリカ(株)製)等のシリカが挙げられる。
平均粒径が小さな金属化合物粒子は、水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子またはシリカ粒子のいずれでもよいが、水酸化アルミニウム粒子または酸化アルミニウム粒子であるのが好ましい。
平均粒径が小さな金属化合物粒子としては、例えば、C−3005(平均粒径0.5μm、住友化学工業(株)製)等の水酸化アルミニウム;HIT50(平均粒径0.25μm、住友化学工業(株)製)、HIT100(平均粒径0.1μm、住友化学工業(株)製)、アルミナUE−3083(平均粒径0.3μm、昭和電工(株)製)、アルミナA33F(平均粒径0.3μm、日本軽金属(株)製)等の酸化アルミニウム等が挙げられる。
平均粒径がさらに小さな金属化合物粒子は、水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子またはシリカ粒子のいずれでもよいが、入手が容易である点で、酸化アルミニウム粒子またはシリカ粒子であるのが好ましい。
平均粒径がさらに小さな金属化合物粒子としては、例えば、ナノテック アルミナ(平均粒径0.031μm、シーアイ化成(株)製)、ナノテック シリカ(平均粒径0.025μm、シーアイ化成(株)製)等が挙げられる。
上記した他にも、一般的に市販されているものであれば、特に制限なく使用することができる。
これらの金属化合物粒子は、所望により粉砕等により平均粒径を調整して用いてもよい。粉砕方法としては、平均粒径を調整できるものであれば、特に限定されないが、例えば、HD A−5ポットミル(YTZ−0.2、ニッカトー(株)製)等のミルを用いて、100rpm程度の回転数で粉砕時間を1〜100時間に変更して平均粒径を調整する方法、ペイントシェーカを用いてガラスビーズ(平均粒径3mm)の水スラリー中で粉砕する方法等を挙げることができる。金属酸化物は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
また、本発明の多孔質層および上記塗布液には、上記した金属化合物粒子以外に他の金属の水酸化物、酸化物等の粒子を含有していてもよい。この場合、本発明の多孔質層を形成するために用いられる金属化合物粒子の含有率は、特に限定されないが、上記他の金属の水酸化物、酸化物等の粒子を含めた全金属化合物粒子の10〜100質量%であるのが好ましく、40〜100質量%であるのがより好ましい。
本発明においては、上記金属化合物粒子は、通常、不定形のため粒子状とするが、本発明の効果を奏する限り、その形状は、球状、多面体状(例えば、20面体状、12面体状等)、立方体状、4面体状、いわゆるコンペイトウ形状、板状、針状等いずれであってもよく、多面体状、立方体状、4面体状、コンペイトウ形状であるのが、接触面積が大きくなり多孔質層としての強度が高くなるため好ましい。また、これらの形状の混合物であってもよく、これらの形状を持つ中空体であってもよい。
塗布液における金属化合物粒子の含有量は、所望する多孔質層の空隙率、層厚、表面粗さによって適宜調整されるものであるが、一般的には、5〜60質量%であるのが好ましく、20〜50質量%であるのが好ましい。
また、該金属化合物粒子の表面を溶解させるように、後述するリン酸との反応量(即ち、金属原子とリン原子を含む化合物の生成量)を計算して、金属化合物粒子の含有量を調整することもできる。該金属原子とリン原子を含む化合物の生成量の調整は、例えば、用いる金属化合物粒子の表面積を一定にすることにより可能になると考えられる。
即ち、平均粒径が異なる金属化合物粒子を用いて別の基板に多孔質層を形成させる場合、金属原子とリン原子を含む化合物の生成量を一定にするには、以下の方法により金属化合物粒子の表面積を一定にする。
例えば、金属化合物粒子A:平均金属化合物粒子半径r、密度d、質量W
金属化合物粒子B:平均金属化合物粒子半径r、密度d、質量Wのとき、
金属化合物粒子Aの表面積Sは、3W/(r×d)、金属化合物粒子Bの表面積Sは、3W/(r×d)であるから、これらの表面積SおよびSを一定とすると、金属化合物粒子Bの質量(使用量)Wは、下記式で求められる。
=[(r×d)/(r×d)]×W
なお、ここで、金属化合物粒子Aおよび金属化合物粒子Bの各物性は、2種以上の金属酸化物等の合計量としたときのものである。
本発明の多孔質層を形成するために用いられる塗布液に含有されるリン酸の種類、濃度等は特に限定されず、一般的なもの(例えば、市販されている85%リン酸等)を用いることができる。
また、本発明においては、リン酸の代わりに、水溶液にしたときにリン酸成分が溶出するリン酸系化合物、例えば、ホスフィン酸、亜リン酸、二亜リン酸、次リン酸、リン酸(オルトリン酸等)、二リン酸、三リン酸、メタリン酸、ペルオキソリン酸、オルトリン酸、縮合リン酸等のオキソ酸、これらの酸の水素原子の1〜3個をナトリウム、カリウム等の原子で置換した塩等も用いることができる。
塗布液におけるリン酸の含有量としては、特に限定されないが、0.05〜20質量%であるのが好ましく、0.1〜17質量%であるのがより好ましく、0.3〜15質量%であるのがさらに好ましい。リン酸の含有量が、0.05質量%未満であると多孔質層の皮膜強度が弱くなる場合があり、20質量%超であると多孔質層の空隙率が低くなる場合または表面粗さが大きくなりすぎる場合がある。
上記塗布液には、金属化合物粒子を均一に分散させるための分散剤、反応促進剤等を含有させるのが好ましい。
分散剤としては、特に限定されないが、一般的に金属化合物粒子の分散剤として知られている、クエン酸、ヘキサメタリン酸ソーダ等が使用できる。塗布液中の含有量は特に限定されないが、0.1〜1質量%、好ましくは0.2〜0.8質量%、さらに好ましくは0.2〜0.5質量%の範囲である。
反応促進剤としては、特に限定されないが、例えば、塩化アルミニウム等が挙げられる。また、該反応促進剤等の含有量(使用量)も、特に限定されず、反応促進剤等を用いなくてもよい。該反応促進剤等の含有量は、所望する多孔質層の層厚、空隙率、表面粗さ等により適宜変更できるが、塩化アルミニウムの含有量は、少ない方が水との反応により副生する塩酸ガスの発生量を少なくできる点で好ましい。例えば、25質量%以下であるのが好ましく、20質量%以下であるのがより好ましい。
塩化アルミニウムを用いると、形成される多孔質層が剥離することなく、また多孔質層の強度が強くなる。これは、塩化アルミニウムと水が反応して生成する微細な水酸化アルミニウムとリン酸の反応が低温での結着作用に重要な役割をしているためと考えられる。したがって、水酸化アルミニウム粒子を用いると、反応促進剤としての塩化アルミニウムを用いなくても、上記低温での結着作用が急速に進行し、ガスの発生も少なくより平滑な(上記表面粗さを有する)表面が容易に形成される。
該塗布液の溶剤は、水であるのが好ましい。
上記塗布液は、金属化合物粒子、リン酸、必要により分散剤、反応促進剤等を水に分散または溶解させて調製する。例えば、分散剤を含む水溶液に、金属化合物粒子を投入して分散させ、均一に分散した後に該水溶液にリン酸および必要により反応促進剤(または反応促進剤を含む水溶液)を投入(または混合)し撹拌して調製することもできる。なお、水に分散させる順番は特に限定されず任意に選択できるが、調整の簡便さから、金属化合物粒子を最後に添加し分散させるのが好ましい。
このようにして調製した塗布液を、後述する基板に、塗布して塗布工程が完了する。
塗布方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
次に、該基板に塗布された塗布液を、120〜500℃で加熱乾燥する乾燥工程を行う。
該乾燥方法は、特に限定されず、一般的に用いられる方法を選択できる。また乾燥温度は、120〜500℃であるのが好ましい。乾燥温度は、用いる基板に応じて好適な温度に調整する。例えば、基板にアルミニウム基板を用いる場合には、該乾燥温度は、120〜220℃であるのが好ましい。この温度範囲であれば、アルミニウム板の軟化を抑制できる。また、基板にアルミニウム基板以外の金属基板を用いる場合には、該金属基板の軟化という問題がないため、乾燥温度は特に限定されず、120〜500℃であるのが好ましい。例えば、ステンレス鋼板等の鉄系基板の場合には、200〜400℃であるのがより好ましい。さらに、基板として、アルミニウムで被覆した紙基板、樹脂基板等を用いる場合には、120〜220℃であるのが好ましい。
上記乾燥工程を行うことにより、金属化合物粒子の表面をリン酸と反応させることができ、該金属化合物粒子をその平均粒径を大きく減じさせることなく多孔質層中に残存させることができる。
乾燥時間は、塗布液の水を除去できる程度であれば、特に限定されないが、一般的には、10〜300秒であるのが好ましい。本発明者らは、多孔質層の層厚と乾燥時間を任意に組み合わせて選択し、形成される多孔質層の引っ掻き強度(耐キズ性)と、光学顕微鏡によるひび割れ状態を検討し、上記乾燥時間の中でも、多孔質層の層厚(μm)に応じて、以下のように乾燥時間を調整するのがより好ましいことを知見した。これにより、多孔質層の形成が確実になり、形成された多孔質層にひび割れ等の欠陥の発生を防止できる。即ち、多孔質層の層厚が10μm未満の場合は2分、層厚が10μm以上30μm未満の場合は3分、層厚が30μm以上の場合は6分である。
上記工程を行うことにより、本発明の多孔質層を基板の裏面上に形成させることができるが、上記工程以外に他の工程を行ってもよい。
上記したように本発明の多孔質層は、金属化合物粒子が、金属原子とリン原子を含む化合物によって結着してなるため、高い耐キズ性を持ち、平版印刷版用支持体および平版印刷版原版の製造中(運搬中)、取扱い中等に起こる平版印刷版原版等の裏面へのキズ付きを防止でき画像記録層への該キズの転写を抑制できる上、現像液に曝されてもアルミニウムの溶出を抑制できる。また、該多孔質層は、該多孔質層とそれに接する画像記録層との静止摩擦係数をその表面粗さRにより所望値に容易に調整できるため、平版印刷版原版を積み重ねても画像記録層の剥離を防止でき、カット・集積時のずれも防止できる。さらに、本発明の多孔質層は、その層厚を厚くできるため、例えば、金属基板自体の板厚を薄くでき、製造コストの削減が可能となる。
<封孔層>
本発明においては、上記本発明の多孔質層の上に、封孔層を設けるのが好ましい。
本発明の多孔質層は、金属原子とリン原子を含む化合物によって結着していため、現像液に曝されてもアルミニウムの溶出を抑制できる。しかし、特にpHが高い(例えば、アルカリ性が強い)現像液に曝されると、多孔質層が溶解(または分解)し、多孔質層の皮膜強度が低下する場合があり、その対策として、多孔質層の上に封孔層を設けると、耐アルカリ性が向上し、pHが高い現像液に曝されてもアルミニウムの溶出をより効果的に抑制できる。
なお、後述する画像記録層として、現像処理等を行わない無処理タイプの画像記録層を用いる場合には、平版印刷版原版が現像液に曝されることはないので、上記した現像液へのアルミニウムの溶出という問題はないため、封孔層を設けなくてもよい。
封孔層を設ける方法は、特に限定されないが、例えば、アルミニウム表面に薄い化合物皮膜を生成させる化成処理、シリケートおよび/またはシリカを含む溶液での処理等が挙げられる。詳しくは、後述する。
封孔層は、後述する方法により設けられるが封孔層の層厚は特に限定されない。封孔層の形成が不十分であると、現像工程において平版印刷版原版の裏面のアルミニウム表面が溶解し、現像液中のアルミニウムイオン濃度が次第に高くなり、ケイ酸アルミニウム化合物を主体とする現像カスが発生して平版印刷版に付着し現像不良、自動現像機のノズル詰まり、フィルターの目詰まり等の原因となる。
封孔層は、その表面の空隙率が、20%以下であるのが好ましく、15%以下であるのがより好ましい。該空隙率を20%以下とすると、現像液による基板表面のアルミニウムの溶出をより効果的に抑制でき、現像液中に不溶物を生成させない。
封孔層の表面の空隙率の測定は、多孔質層の表面の空隙率の測定と同様にして行うことができる。
封孔層を設けた場合の表面粗さは、上記多孔質層の表面粗さRと同様の範囲に調製するのが同様の理由から好ましい。また、封孔層を設けた場合の封孔層とそれに接する画像記録層との静止摩擦係数は、上記多孔質層の静止摩擦係数と同様の範囲に調製するのが同様の理由から好ましい。
上記した化成処理としては、一般に知られている各種の化成処理が挙げられる。例えば、「アルミニウム技術便覧」、1996年、カロス出版、p.932〜938に記載されている、クロメート処理、リン酸塩処理、ベーマイト処理、ジルコニウム系処理、FPLエッチング処理等が挙げられる。
なお、本発明において、「ベーマイト処理」とは、不純物の少ないイオン交換水、またはこれにトリエタノールアミンやアンモニア水、アルカリ金属塩等を0.001〜10質量%添加した沸騰水中で処理することをいい、ベーマイトを生成させる処理に限られるものではない。
これらの化成処理の中でも、ベーマイト処理が好ましく、アルカリ金属化合物を含む水溶液(好ましくは熱水中)中に浸せきさせる処理が、生成効率が高く効果的に多孔質層を封孔できる点でより好ましい。
一般に、田部著、「金属酸化物と複合酸化物」1980年、講談社サイエンティフィック、p.72〜76に記載されているようにアルミニウム塩水溶液をPH8にするとゲル状アルミナ水和物が得られることが知られている。この原理から、アルカリ中に金属アルミを浸漬すると表面に水和物が生成する。
さらに、各種、化成皮膜生成方法を種々検討した結果、中でも、アルミニウム上のリチウム塩化成皮膜(「軽金属」、1997年、Vol47、No.10、P533〜538)が有効であることがわかった。また、金属アルミニウムでなくても、本発明のように、アルカリ溶液中でアルミイオンを放出するような、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、リン酸アルミニウム等でもその表面に水和物が生成する可能性があると考え、検討した結果、金属アルミニウム同様に水和物(主成分:ベーマイト)が生成することがわかった。
上記アルカリ金属化合物を含む水溶液(好ましくは熱水中)中に浸せきさせる処理について説明する。
水溶液に含まれるアルカリ金属化合物は、特に限定されず、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ルビジウム、水酸化セシウム等のアルカリ金属の水酸化物、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属の炭酸化物等が挙げられる。これらの中でも、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、炭酸リチウムが空隙の封孔により有効である点で好ましく、水酸化リチウムが空隙の封孔に特に有効である点で好ましい。
アルカリ金属化合物の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.001〜10質量%であるのが好ましく、より好ましくは0.005〜10質量%であり、特に好ましくは0.01〜2質量%である。
水溶液の温度は、室温〜約100℃前後までが好ましく、より好ましくは40〜100℃前後であり、特に好ましくは50〜98℃である。浸せき処理時間は、特に限定されないが、例えば、0.5〜20分が好ましく、より好ましくは3〜15分であり、特に好ましくは5〜15分である。
上記したシリケートおよび/またはシリカを含む溶液での処理は、以下のシリケート/エマルジョン処理、コロイダルシリカ処理等が挙げられる。
シリケートおよび/またはシリカを含む溶液での処理により、多孔質層の上に親水性層が形成される。
まず、この親水性層について説明する。親水性層は、ケイ酸塩化合物および水系エマルジョン樹脂を主成分として含有する。
上記処理において、好ましく使用されるケイ酸塩化合物としては、ケイ酸ナトリウムやケイ酸カリウム、リチウムシリケート等のケイ酸アルカリ系水ガラスである。これらのアルカリ系水ガラスを用いる場合、キャスやPC−500等の(共に日産化学工業(株)製)ケイ酸アルカリ用硬化剤を添加剤を適量加えてもよい。水ガラスは特に親水性が高いので、親水化剤としての役割を主とする。しかし、水ガラスだけでは、乾燥過程で、脱水収縮のため、微細なひび割れが発生する上、皮膜が不均一になってしまう等皮膜形成性が悪いので、単独で使用すると耐刷性能が悪化する。また1〜100nm程度の微細な細孔が有るので、毛管現象によって水が浸透し、以下に示す様な2段階の反応によってSi−O−Siのネットワークが切断し、水に溶解すると言われている。
Figure 2005186416
そこで、該親水性層では、ケイ酸アルカリ系水ガラスに、以下に説明する水系エマルジョン由来の親水性樹脂粒子を併用することで、この皮膜中に存在する1〜100nm程度の微細な孔を充填させ、親水性を低下させずに耐水性を向上させるものである。併用する親水性樹脂の柔軟性により、ケイ酸塩化合物の乾燥過程で発生する内部応力を緩和し、皮膜形成時のひび割れの発生を抑制すると共に、これらの粒子による断熱性の向上も達成できる。
上記処理において、好ましく使用される水系エマルジョン樹脂としては、乳化分散される樹脂が、アクリル酸等の親水性樹脂やカルボキシル基等の親水性の官能基を構造内に有する樹脂であることが好ましい。好ましい樹脂の具体的な態様としては、オレフィン系重合体(A)とアクリル系重合体(B)を同一粒子内に含有する樹脂粒子が水に分散したエマルジョン組成物等の、アクリル系重合体(B)を含むものであって、かつ、併用されるオレフィン系重合体(A)が、カルボキシル基を有するか、または、オレフィン系重合体(A)が、オレフィン系単量体(a−1)と、カルボキシル基を有する単量体(a−2)を重合して得られたエマルジョン組成物が挙げられる。このようなエマルジョン樹脂は、乳化分散物として存在するため、樹脂粒子の粒径は1〜200nmと小さく、しかもアクリル酸やカルボキシル基を含む親水性が高い樹脂でありながら、ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂に比較すれば水溶性が低く、ケイ酸塩化合物と併用しても、水溶性樹脂の如く親水性層皮膜の耐水性を低下させることはない。
上記水系エマルジョン樹脂として、オレフィン系単量体(a−1)と、カルボキシル基を有する単量体(a−2)を重合してなるオレフィン系重合体(A)を用いる場合、オレフィン系重合体(A)を構成するオレフィン系単量体(a−1)は、特に限定されるものではなく、公知のものを使用できる。オレフィン系単量体(a−1)の具体例を挙げれば、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、1−ヘプテン、1−ヘキセン、1−デセン、1−ドデセン等のα−オレフィン;ブタジエン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,5−ヘキサジエン等の共役ジエン、非共役ジエンが挙げられ、これらの単量体は、単独で、または、2種以上組み合わせて選択することができる。
また、オレフィン系重合体(A)を構成するカルボキシル基含有単量体(a−2)としては、オレフィン系単量体(a−1)と共重合可能な単量体であれば、任意に選択して使用することができ、例えば、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、クロトン酸、フマル酸等の不飽和カルボン酸を挙げることができ、これらの少なくとも1種または2種以上を選択することができる。オレフィン系重合体(A)を構成するオレフィン系単量体(a−1)とカルボキシル基を有する単量体の構成比率としては、これらの合計質量を100質量%として、オレフィン系単量体(a−1)99〜60質量%、カルボキシル基を有する単量体(a−2)1〜40質量%であることが好ましく、さらにはオレフィン系単量体(a−1)95〜70質量%、カルボン酸含有単量体(a−2)5〜30質量%の構成比率であることがより好ましい。オレフィン系単量体(a−1)が60質量%未満であると、樹脂の耐水性が低下し、水溶性樹脂のように溶解するという問題があり、オレフィン系単量体(a−1)が99質量%を超えると、エマルジョン組成物の粒子径が大きくなり、ケイ酸塩化合物皮膜の耐水性向上効果が低下する問題がある。オレフィン系重合体(A)としては、アイオノマーと呼ばれるエチレン/不飽和カルボン酸共重合体、例えば、エチレン/(メタ)アクリル酸、および、そのカルボキシル基がアンモニア、アミン類等の塩基性有機物、およびナトリウム、カリウム、亜鉛等の金属塩で中和されている共重合体等も好適に用いることができる。樹脂の耐水性を向上させるという意味から、中和剤としては塩基性有機物が好ましい。
水系エマルジョン樹脂に用いられるアクリル系重合体(B)としては、グリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)を用いて得られたものが好ましい。グリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)を用いることで、オレフィン系重合体(A)に対するアクリル系重合体(B)の割合が多い領域においても、非常に微細な粒子径のエマルジョン組成物が得られる。その理由については、必ずしも、明確ではないが、例えば、次のような考察がされる。即ち、本来、相容性に乏しい(A)、(B)の両重合体が、オレフィン系重合体(A)中のカルボキシル基と、アクリル系重合体(B)中のグリシジル基が一部グラフト反応することで、相容性が向上し、そのために、微粒子のエマルジョンが安定に製造できる。
ここで用いられるグリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)は、特に限定されるものではない。グリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)の具体例としては、例えば、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート等が挙げられる。なお、以下、「アクリレート、メタクリレート」、「アクリル酸、メタクリル酸」の双方を指す場合、それぞれ「(メタ)アクリレート」、「(メタ)アクリル酸」と表記することがある。
アクリル系重合体(B)を構成するグリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)とグリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)との混合比についていえば、両者の合計質量を100質量%とした場合、グリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)0.5〜40質量%、グリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)60〜99.5質量%であることが好ましく、さらには、グリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)2〜30質量%、グリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)70〜98質量%がより好ましく、特に好ましくは、グリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)5〜20質量%、グリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)80〜95質量%である。グリシジル基を有する単量体(b−1)が0.5質量%以下では、通常、エマルジョン組成物の粒子径が大きくなり、ケイ酸塩化合物皮膜の耐水性向上効果が低下する場合がある。また、40質量%を超えると、エマルジョン組成物の製造中に粒子同士が凝集し、安定に製造することが困難となる場合がある。
グリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)は、特に限定されるものではない。グリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)の具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸エステル類、特に炭素原子数1〜12のアルキルエステルが好ましいが、より具体的には、脂肪族系単量体として、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル、アクリル酸2−エチルへキシル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸i−ブチル、メタクリル酸2−エチルへキシル、メタクリル酸ラウリル等;芳香族系単量体として、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等、極性基含有単量体として、水酸基を有するヒドロキエチルアクリレート、ヒドロキプロピルアクリレート、ヒドロキエチルメタクリレート、ヒドロキプロピルメタクリレート等のヒドロキシアルキルアクリレート類;カルボキシル基を有するアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸等;その他の極性基を有する単量体としてアクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられ、これらの1種、または、2種以上を選択することができる。
グリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)の少なくとも1種以上は、水溶解性が0.5%以下であることが好ましい。グリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)の全てに水溶解性が0.5%を超える単量体を使用すると、オレフィン系重合体(A)の粒子内にアクリル系重合体(B)を生成させることが困難となるためである。水溶解性が0.5%以下であるアクリル系単量体の具体例としては、例えば、スチレン、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ブチル等が挙げられる。また、グリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)としてカルボキシル基を有する単量体を使用する場合、その使用量は、グリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)と、グリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)の全量を100質量%とした場合に、5質量%以下が好ましく、3質量%未満がさらに好ましく、全く使用しないことが特に好ましい。カルボキシル基を有する単量体の量が5質量%を超えると、オレフィン系重合体(A)の粒子内にアクリル系重合体(B)を生成させることが困難となる。アクリル系重合体(B)の理論的ガラス転移温度に特段の制限はない。
水系エマルジョン樹脂組成物は、オレフィン系単量体(a−1)とカルボキシル基を有する(a−2)を重合してなるオレフィン系重合体(A)の粒子が、水に分散したオレフィン系エマルジョンの存在下で、グリシジル基を有するアクリル系単量体(b−1)およびグリシジル基を有さないアクリル系単量体(b−2)を重合することによって製造される。この際に使用されるオレフィン系エマルジョン(オレフィン系重合体(A)の粒子が水に分散したオレフィン系エマルジョン)は、乳化剤や分散剤を使用して水中にオレフィン系重合体(A)を分散させたもので、その製造方法は、例えば、特公平7−008933号公報、特公平5−039975号公報、特公平4−030970号公報、特公昭42−000275号公報、特公昭42−023085号公報、特公昭45−029909号公報、特開昭51−062890号公報等に記載されている。市販されているオレフィン系エマルジョンの具体例としては、例えば、三井化学(株)製のケミパールS100、S650、S75N等、東邦化学工業(株)製のハイテックS3121、S8512等を挙げることができる。
アクリル系重合体(B)の重合時に使用される開始剤は、特に限定されるものではない。アクリル系重合体(B)の重合時に使用される開始剤の具体例としては、例えば、一般に乳化重合に使用されるものであれば全て使用することができる。代表的なものを挙げると、例えば、過酸化水素;過硫酸アンモニウムや過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩;クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物;あるいはこれらと鉄イオン等の金属イオンおよびナトリウムスルホキシレート、ホルムアルデヒド、ピロ亜硫酸ソーダ、亜硫酸水素ナトリウム、L−アスコルビン酸、ロンガリット等の還元剤との組み合わせによるレドックス開始剤等が挙げられる。アクリル系重合体(B)の重合時に使用される開始剤の使用量は、一般的には、単量体の総質量を基準として、0.1〜5質量%である。また、必要に応じてt−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のメルカプタン類、アリルスルフォン酸、メタアリルスルフォン酸およびこれ等のソーダ塩等のアリル化合物等を分子量調節剤として使用することも可能である。
さらに、オレフィン系エマルジョン存在下でアクリル系単量体(b−1)、(b−2)を重合する際に、粒子の安定性を向上させるため、通常の乳化重合に使用される界面活性剤を用いることも可能である。かかる界面活性剤としてはアニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、その他反応性界面活性剤等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を併用することができる。非イオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、オキシエチレン/オキシプロピレンブロックコポリマー、tert−オクチルフェノキシエチルポリエトキシエタノール、ノニルフェノキシエチルポリエトキシエタノール等が挙げられる。
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸カリウム、ナトリウムジオクチルスルホサクシネート、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル硫酸ナトリウムジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、tert−オクチルフェノキシエトキシポリエトキシエチル硫酸ナトリウム塩等が挙げられる。カチオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
界面活性剤量が多くなると、親水性層上に形成される感熱層との密着性が低下する。またアクリル系重合体(B)のみからなる粒子が生成しやすくなるため、オレフィン系重合体(A)の粒子内にアクリル系重合体(B)を生成させることが困難となる場合がある。したがって、エマルジョン組成物中の界面活性剤量は、オレフィン系重合体(A)とアクリル系重合体(B)の全質量を100質量%とした場合に、5質量%以下が好ましく、より好ましくは2質量%以下、さらに好ましくは1質量%以下、最も好ましくは0.5質量%以下である。上記した各種の単量体はこれを一括して、もしくは分割して、あるいは連続的に滴下して加え、上記した開始剤存在下に0〜100℃、実用的には30〜90℃の温度で重合される。
水系エマルジョン樹脂における樹脂粒子の質量平均粒子径は、150nm以下が好ましく、より好ましくは10〜100nmの範囲、さらに好ましくは30〜80nmの範囲である。粒子径が150nmを超えると、ケイ酸塩化合物皮膜の耐水性向上効果が減少する。粒子径は小さいほど良いが、あまり小さくなりすぎると、エマルジョン樹脂表面にある、界面活性剤の吸着が不十分となり、凝集、沈殿等の現象が発生し易く、不安定な状態となり、粒子の均一分散性が低下する等の懸念がある。水系エマルジョン樹脂組成物には、例えば、各種添加剤、例えば硬化剤、架橋剤、造膜助剤、消泡剤、防腐剤、増粘剤、減水剤、凍結防止剤、収縮低減剤等を添加することも可能である。なお、市販の水系エマルジョン樹脂を用いることもできる。このような市販品としては、アルマテックスEタイプ、Kタイプ(三井化学(株)製)、NIPOL LXタイプ(日本ゼオン(株)製)等が挙げられる。
次に、上記親水性層の形成方法について説明する。
多孔質層上に親水性層を形成する方法としては、ケイ酸塩化合物および水系エマルジョン樹脂等の必須成分や所望により併用される添加剤を配合してなる親水性組成物を、スプレー法、バー塗布法等によって多孔質層上に塗布して液膜を形成し、100℃〜180℃の熱風によって乾燥させ、固化させる方法が挙げられる。親水性層の被覆量としては、乾燥後の層厚は特に限定されないが、例えば、0.05μm〜1μmの範囲であるのが好ましく、0.1〜0.8μmの範囲であるのがより好ましく、0.2〜0.5μmの範囲であるのが好ましい。上記した多孔質層は、封孔層により封孔されやすく設けられるため(例えば、平均粒径の異なる金属化合物粒子を用いて多孔質層を形成させる等)、親水性層の層厚が上記範囲であれば十分に多孔質層を封孔することができる。
また、本発明の封孔層は、コロイダルシリカ処理により多孔質層の上に形成される。
コロイダルシリカ処理により形成される封孔層について説明する。該封孔層は、シリカゾルまたはアルミナゾルと親水性樹脂を含有する。シリカゾルは、四塩化ケイ素、ジ、トリおよび/またはテトラアルコキシケイ素の加水分解あるいは水酸化ケイ素の縮合等で作ることができる。アルミニウムゾルも同様に塩化アルミニウムやテトラアルコキシアルミニウムの加水分解あるいは水酸化アルミニウムの縮合等で作ることができる。
シリカゾルまたはアルミナゾルは、シリカまたはアルミナ粒子の粒径が5〜100nmのものが好適である。粒径がこの範囲より小さすぎる場合はゾルゲル液の経時安定性が劣り、調製後の使用可能期間が制約されることがある。また、大きすぎる場合はアルミニウム基板との密着性および封孔層の被膜性が悪くなり、アルミニウムの溶出防止効果が不十分となる。上記好適な粒径が5〜100nmのコロイドの分散液は、日産化学工業(株)等の市販品を購入することもできる。
本発明の封孔層に用いる親水性樹脂としては、例えば、ヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するものが好ましい。具体的な親水性樹脂として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそれらのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸およびそれらの塩、ポリメタクリル酸およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体または共重合体、ヒドロキシエチルアクリレートの単独重合体または共重合体、ヒドロキシプロピルメタクリレートの単独重合体または共重合体、ヒドロキシプロピルアクリレートの単独重合体または共重合体、ヒドロキシブチルメタクリレートの単独重合体または共重合体、ヒドロキシブチルアクリレートの単独重合体または共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリビニルアルコール、加水分解度が少なくとも60重量%、好ましくは少なくとも80重量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー等を挙げることができる。
特に好ましい親水性樹脂はヒドロキシ基またはカルボキシ基含有ポリマーで、中でもヒドロキシ基含有ポリマーが好ましい。具体的には、例えば、ヒドロキシエチルアクリレートまたはヒドロキシエチルメタクリレートの単独重合体または共重合体である。
これらの親水性樹脂の添加割合は封孔層全固形分の1〜30質量%が好ましく、5〜20質量%が特に好ましい。この範囲より少なすぎる場合は被膜性が十分でないことがあり、この範囲より多すぎる場合はインキ等の有機物による汚染を受けやすくなることがある。
封孔層には、上記のシリカゾルまたはアルミナゾルのコロイドおよび親水性樹脂の他に、封孔層の被膜強度を高めるため、コロイド粒子の架橋を促進する架橋剤および/または親水性樹脂の架橋剤を添加してもよい。
コロイド粒子の架橋剤としては、テトラアルコキシシランの初期加水分解縮合物、トリアルコキシシリルプロピル−N,N,N−トリアルキルアンモニウムハライドまたはアミノプロピルトリアルコキシシランが好ましい。その添加割合は封孔層全固形分の5質量%以下であることが好ましい。
親水性樹脂の架橋剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、グリオキザール、ポリイソシアネート、テトラアルコキシシランの初期加水分解縮合物、ジメチロール尿素およびヘキサメチロールメラミン等を挙げることができる。
さらに、封孔層には、界面活性剤を添加することができる。用いうる界面活性剤としては、例えば、特開平6−35174号公報に記載の界面活性剤を挙げることができる。特に好ましいものとして、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル類、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル類等のポリオキシエチレン系界面活性剤、パーフルオロアルキルエチレンオキシド付加物、パーフルオロアルキル基および親水性基含有オリゴマー、パーフルオロアルキル基、親水性基および親油性基含有オリゴマー等のフッ素系界面活性剤を挙げることができる。
上記の界面活性剤は、単独もしくは2種以上を組み合わせて使用することができ、封孔層中に0.001〜10質量%、より好ましくは0.01〜5質量%の範囲で添加される。
封孔層にはさらに、着色により版種を判別するための染料や顔料を加えることができる。好ましい染料の例としては、例えば、ローダミン6G塩化物、ローダミンB塩化物、クリスタルバイオレット、マラカイトグリーンシュウ酸塩、オキサジン4パークロレート、キニザリン、2−(α−ナフチル)−5−フェニルオキサゾール、クマリン−4等が挙げられる。他の染料として具体的には、例えば、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上、オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、メチレンブルー(CI52015)、パテントピュアブルー(住友三国化学(株)製)、ブリリアントブルー、メチルグリーン、エリスリシンB、ベーシックフクシン、m−クレゾールパープル、オーラミン、4−p−ジエチルアミノフェニルイミナフトキノン、シアノ−p−ジエチルアミノフェニルアセトアニリド等に代表されるトリフェニルメタン系、ジフェニルメタン系、オキサジン系、キサンテン系、イミノナフトキノン系、アゾメチン系またはアントラキノン系の染料が挙げられる。上記色素は、封孔層中に通常約0.05〜10質量%、より好ましくは約0.5〜5質量%含有される。
封孔層には、さらに滑り剤として、例えば、ベヘン酸、ベヘン酸アミド、ステアリン酸、ステアリン酸アミド、アルケニルコハク酸無水物等の高級脂肪酸や高級脂肪酸アミド、ワックス、ジメチルシロキサン類、ポリエチレン粉末等を加えてもよい。
封孔層は塗布液を塗布乾燥して設けられるが、その塗布方法としては、従来公知の方法、例えば、回転塗布、ワイヤーバー塗布、エアーナイフ塗布、ロール塗布、ブレード塗布、およびカーテン塗布等を用いることができる。
封孔層の層厚は基本的には現像時アルミニウムの溶出を抑えられる厚さであればよく、例えば、0.05〜1μmの範囲が好ましく、より好ましくは0.1〜0.8μmが好ましく、0.2〜0.5μmが特に好ましい。
以上説明したように、多孔質層の上に、封孔層を設けると、平版印刷版原版の裏面のアルミニウムの溶出をより効果的に抑制でき、現像液中に不溶物を生成させない。
<基板>
本発明の平版印刷版用支持体に用いられる基板としては、特に限定されず、例えば、純アルミニウム板、アルミニウムを主成分として微量の異元素を含むアルミニウム合金板(本発明においてこれらを「アルミニウム基板」という。)、アルミニウム以外の金属元素を主成分とする各種金属基板、アルミニウムで被覆(ラミネートまたは蒸着)した紙基板、樹脂基板または金属基板等が挙げられる。
アルミニウムを主成分として微量の異元素を含むアルミニウム合金板としては、後述するアルミニウム合金板が好ましく挙げられ、アルミニウム以外の金属元素を主成分とする各種金属基板としては、可撓性を有し高強度で安価であるステンレス鋼板、ニッケル板、銅板、マグネシウム合金板等が好ましく挙げられる。
アルミニウムで被覆した金属基板としては、上記合金板および各種金属板をアルミニウム原子またはアルミニウム酸化物等をスパッタリング、ラミネート等の方法により薄層にして被覆したものが好ましく挙げられる。
アルミニウムで被覆した紙基板としては、特に限定されない。
アルミニウムで被覆した樹脂基板としては、特に限定されず、該基板に用いられる樹脂としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリイミド樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、本発明に用いる基板として、加熱による軟化の問題がない上記各種金属基板等を、アルミニウム酸化物をスパッタリング、ラミネート等の方法により薄層にして被覆したもの、例えば、アルミニウムで被覆した紙基板、樹脂基板または金属基板が好ましく、また、防錆性に優れ、リサイクル性が高く、比重が小さいく取扱性に優れ、安価なアルミニウム基板も好ましい。
上記各種金属板を被覆した基板は、上記したステンレス鋼板、ニッケル板等を、通常行われる条件で、スパッタリング処理して被覆すればよく、また、ラミネート処理等して被覆すればよい。
該被覆の膜厚は、特に制限されないが、一般的には、約10nm以上であればよい。好ましくは10〜100nmであり、より好ましくは25〜50nmである。ラミネート処理等して被覆する場合の被覆の膜厚は、特に制限されないが、一般的には、約1μm以上であればよい。好ましくは1〜100μmであり、より好ましくは5〜50μmである。
一般的に、被覆の膜厚が薄いと該各種金属板を十分に被覆できず本発明の多孔質層との密着性に劣る場合があり、一方、膜厚が厚いと高価になる。したがって、本発明においては、これらの観点から、適宜膜厚を選択する。
本発明に用いる各種金属板、これらを被覆した基板等は、市販品を用いてもよい。
次に、本発明に用いる基板として好ましいアルミニウム基板(アルミニウム板)について説明する。
本発明に用いられるアルミニウム板は、その組成が特定されるものではなく、例えば、アルミニウムハンドブック第4版(1990年、軽金属協会発行)に記載されている従来公知の素材、例えば、JIS A1050、JIS A1100、JIS A1070、Mnを含むJIS A3004、国際登録合金 3103A等のAl−Mn系アルミニウム板を適宜利用することができる。また、引張強度を増す目的で、これらのアルミニウム合金に0.1質量%以上のマグネシウムを添加したAl−Mg系合金、Al−Mn−Mg系合金(JIS A3005)を用いることもできる。更に、ZrやSiを含むAl−Zr系合金やAl−Si系合金を用いることもできる。更に、Al−Mg−Si系合金を用いることもできる。
JIS1050材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭59−153861号、特開昭61−51395号、特開昭62−146694号、特開昭60−215725号、特開昭60−215726号、特開昭60−215727号、特開昭60−216728号、特開昭61−272367号、特開昭58−11759号、特開昭58−42493号、特開昭58−221254号、特開昭62−148295号、特開平4−254545号、特開平4−165041号、特公平3−68939号、特開平3−234594号、特公平1−47545号および特開昭62−140894号の各公報に記載されている。また、特公平1−35910号公報、特公昭55−28874号公報等に記載された技術も知られている。
JIS1070材に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−81264号、特開平7−305133号、特開平8−49034号、特開平8−73974号、特開平8−108659号および特開平8−92679号の各公報に記載されている。
Al−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭62−5080号、特公昭63−60823号、特公平3−61753号、特開昭60−203496号、特開昭60−203497号、特公平3−11635号、特開昭61−274993号、特開昭62−23794号、特開昭63−47347号、特開昭63−47348号、特開昭63−47349号、特開昭64−1293号、特開昭63−135294号、特開昭63−87288号、特公平4−73392号、特公平7−100844号、特開昭62−149856号、特公平4−73394号、特開昭62−181191号、特公平5−76530号、特開昭63−30294号および特公平6−37116号の各公報に記載されている。また、特開平2−215599号公報、特開昭61−201747号公報等にも記載されている。
Al−Mn系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭60−230951号、特開平1−306288号および特開平2−293189号の各公報に記載されている。また、特公昭54−42284号、特公平4−19290号、特公平4−19291号、特公平4−19292号、特開昭61−35995号、特開昭64−51992号、特開平4−226394号の各公報、米国特許第5,009,722号明細書、同第5,028,276号明細書等にも記載されている。
Al−Mn−Mg系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開昭62−86143号公報および特開平3−222796号公報に記載されている。また、特公昭63−60824号、特開昭60−63346号、特開昭60−63347号、特開平1−293350号の各公報、欧州特許第223,737号、米国特許第4,818,300号、英国特許第1,222,777号の各明細書等にも記載されている。
Al−Zr系合金に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特公昭63−15978号公報および特開昭61−51395号公報に記載されている。また、特開昭63−143234号、特開昭63−143235号の各公報等にも記載されている。
Al−Mg−Si系合金に関しては、英国特許第1,421,710号明細書等に記載されている。
アルミニウム合金を板材とするには、例えば、下記の方法を採用することができる。まず、所定の合金成分含有量に調整したアルミニウム合金溶湯に、常法に従い、清浄化処理を行い、鋳造する。清浄化処理には、溶湯中の水素等の不要ガスを除去するために、フラックス処理、アルゴンガス、塩素ガス等を用いる脱ガス処理、セラミックチューブフィルタ、セラミックフォームフィルタ等のいわゆるリジッドメディアフィルタや、アルミナフレーク、アルミナボール等をろ材とするフィルタや、グラスクロスフィルタ等を用いるフィルタリング処理、あるいは、脱ガス処理とフィルタリング処理を組み合わせた処理が行われる。
これらの清浄化処理は、溶湯中の非金属介在物、酸化物等の異物による欠陥や、溶湯に溶け込んだガスによる欠陥を防ぐために実施されることが好ましい。溶湯のフィルタリングに関しては、特開平6−57432号、特開平3−162530号、特開平5−140659号、特開平4−231425号、特開平4−276031号、特開平5−311261号、特開平6−136466号の各公報等に記載されている。また、溶湯の脱ガスに関しては、特開平5−51659号公報、実開平5−49148号公報等に記載されている。本願出願人も、特開平7−40017号公報において、溶湯の脱ガスに関する技術を提案している。
ついで、上述したように清浄化処理を施された溶湯を用いて鋳造を行う。鋳造方法に関しては、DC鋳造法に代表される固体鋳型を用いる方法と、連続鋳造法に代表される駆動鋳型を用いる方法がある。
DC鋳造においては、冷却速度が0.5〜30℃/秒の範囲で凝固する。1℃未満であると粗大な金属間化合物が多数形成されることがある。DC鋳造を行った場合、板厚300〜800mmの鋳塊を製造することができる。その鋳塊を、常法に従い、必要に応じて面削を行い、通常、表層の1〜30mm、好ましくは1〜10mmを切削する。その前後において、必要に応じて、均熱化処理を行う。均熱化処理を行う場合、金属間化合物が粗大化しないように、450〜620℃で1〜48時間の熱処理を行う。熱処理が1時間より短い場合には、均熱化処理の効果が不十分となることがある。
その後、熱間圧延、冷間圧延を行ってアルミニウム板の圧延板とする。熱間圧延の開始温度は350〜500℃が適当である。熱間圧延の前もしくは後、またはその途中において、中間焼鈍処理を行ってもよい。中間焼鈍処理の条件は、バッチ式焼鈍炉を用いて280〜600℃で2〜20時間、好ましくは350〜500℃で2〜10時間加熱するか、連続焼鈍炉を用いて400〜600℃で6分以下、好ましくは450〜550℃で2分以下加熱するかである。連続焼鈍炉を用いて10〜200℃/秒の昇温速度で加熱して、結晶組織を細かくすることもできる。
以上の工程によって、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.6mmに仕上げられたアルミニウム板は、更にローラレベラ、テンションレベラ等の矯正装置によって平面性を改善してもよい。平面性の改善は、アルミニウム板をシート状にカットした後に行ってもよいが、生産性を向上させるためには、連続したコイルの状態で行うことが好ましい。また、所定の板幅に加工するため、スリッタラインを通してもよい。また、アルミニウム板同士の摩擦による傷の発生を防止するために、アルミニウム板の表面に薄い油膜を設けてもよい。油膜には、必要に応じて、揮発性のものや、不揮発性のものが適宜用いられる。
一方、連続鋳造法としては、双ロール法(ハンター法)、3C法に代表される冷却ロールを用いる方法、双ベルト法(ハズレー法)、アルスイスキャスターII型に代表される冷却ベルトや冷却ブロックを用いる方法が、工業的に行われている。連続鋳造法を用いる場合には、冷却速度が100〜1000℃/秒の範囲で凝固する。連続鋳造法は、一般的には、DC鋳造法に比べて冷却速度が速いため、アルミマトリックスに対する合金成分固溶度を高くすることができるという特徴を有する。連続鋳造法に関しては、本願出願人によって提案された技術が、特開平3−79798号、特開平5−201166号、特開平5−156414号、特開平6−262203号、特開平6−122949号、特開平6−210406号、特開平6−26308号の各公報等に記載されている。
連続鋳造を行った場合において、例えば、ハンター法等の冷却ロールを用いる方法を用いると、板厚1〜10mmの鋳造板を直接、連続鋳造することができ、熱間圧延の工程を省略することができるというメリットが得られる。また、ハズレー法等の冷却ベルトを用いる方法を用いると、板厚10〜50mmの鋳造板を鋳造することができ、一般的に、鋳造直後に熱間圧延ロールを配置し連続的に圧延することで、板厚1〜10mmの連続鋳造圧延板が得られる。
これらの連続鋳造圧延板は、DC鋳造について説明したのと同様に、冷間圧延、中間焼鈍、平面性の改善、スリット等の工程を経て、所定の厚さ、例えば、0.1〜0.6mmの板厚に仕上げられる。連続鋳造法を用いた場合の中間焼鈍条件および冷間圧延条件については、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−220593号、特開平6−210308号、特開平7−54111号、特開平8−92709号の各公報等に記載されている。
このようにして製造されるアルミニウム板には、以下に述べる種々の特性が望まれる。
アルミニウム板の強度は、平版印刷版用支持体として必要な腰の強さを得るため、0.2%耐力が140MPa以上であるのが好ましい。また、バーニング処理を行った場合にもある程度の腰の強さを得るためには、270℃で3〜10分間加熱処理した後の0.2%耐力が80MPa以上であるのが好ましく、100MPa以上であるのがより好ましい。特に、アルミニウム板に腰の強さを求める場合は、MgやMnを添加したアルミニウム材料を採用することができるが、腰を強くすると印刷機の版胴へのフィットしやすさが劣ってくるため、用途に応じて、材質および微量成分の添加量が適宜選択される。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−126820号公報、特開昭62−140894号公報等に記載されている。
アルミニウム板の結晶組織は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の結晶組織が面質不良の発生の原因となることがあるので、表面においてあまり粗大でないことが好ましい。アルミニウム板の表面の結晶組織は、幅が200μm以下であるのが好ましく、100μm以下であるのがより好ましく、50μm以下であるのが更に好ましく、また、結晶組織の長さが5000μm以下であるのが好ましく、1000μm以下であるのがより好ましく、500μm以下であるのが更に好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−218495号、特開平7−39906号、特開平7−124609号の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の合金成分分布は、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理を行った場合、アルミニウム板の表面の合金成分の不均一な分布に起因して面質不良が発生することがあるので、表面においてあまり不均一でないことが好ましい。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平6−48058号、特開平5−301478号、特開平7−132689号の各公報等に記載されている。
アルミニウム板の金属間化合物は、その金属間化合物のサイズや密度が、化学的粗面化処理や電気化学的粗面化処理に影響を与える場合がある。これらに関して、本願出願人によって提案された技術が、特開平7−138687号、特開平4−254545号の各公報等に記載されている。
本発明においては、上記に示されるようなアルミニウム板をその最終圧延工程において、積層圧延、転写等により凹凸を付けて用いることもできる。
本発明に用いられるアルミニウム板は、連続した帯状のシート材または板材である。即ち、アルミニウムウェブであってもよく、製品として出荷される平版印刷版原版に対応する大きさ等に裁断された枚葉状シートであってもよい。
アルミニウム板の表面のキズは平版印刷版用支持体に加工した場合に欠陥となる可能性があるため、平版印刷版用支持体とする表面処理工程の前の段階でのキズの発生は可能な限り抑制する必要がある。そのためには安定した形態で運搬時に傷付きにくい荷姿であることが好ましい。
アルミニウムウェブの場合、アルミニウムの荷姿としては、例えば、鉄製パレットにハードボードとフェルトとを敷き、製品両端に段ボールドーナツ板を当て、ポリチュ−ブで全体を包み、コイル内径部に木製ドーナツを挿入し、コイル外周部にフェルトを当て、帯鉄で絞め、その外周部に表示を行う。また、包装材としては、ポリエチレンフィルム、緩衝材としては、ニードルフェルト、ハードボードを用いることができる。この他にもいろいろな形態があるが、安定して、キズも付かず運送等が可能であればこの方法に限るものではない。
本発明に用いる基板の板厚は、特に限定されないが、約0.1〜0.6mmであるのが好ましく、0.15〜0.4mmであるのがより好ましく、0.2〜0.3mmであるのがさらに好ましい。
本発明においては、上記基板の裏面を化成処理した後、上記多孔質層を設けるのが、基板と多孔質層の密着性を向上させられる点で好ましい。これにより、得られる平版印刷版を印刷機の版胴に取り付ける際に、平版印刷版を折り曲げても多孔質層が剥離せず、印刷機等の汚れを防止できる。
即ち、上記基板は、まず、適当な酸やアルカリに浸せきさせて自然酸化皮膜を除去し、いわゆる表面を活性化させ、化成処理により反応し易い状態にし、活性化されたアルミニウム表面を化成処理するのが好ましい。
化成処理は、特に限定されないが、上記封孔層で説明した化成処理を好適に挙げられる。その中でも、ベーマイト処理が好ましく、アルカリ金属化合物を含む水溶液(好ましくは熱水中)中に浸せきさせる処理が、生成効率が高く多孔質層と基板との密着性が高くなる点でより好ましい。
<表面処理>
本発明の平版印刷版用支持体は、上記多孔質層を設けた裏面の反対側の表面に、表面処理を施して、砂目形状を形成させて得られる。表面処理は、アルミニウム板に粗面化処理、陽極酸化処理等を施して得られるが、この支持体の製造工程は、特に限定されず、粗面化処理、陽極酸化処理以外の各種の工程を含んでいてもよい。
以下に、上述した表面の砂目形状を形成させるための代表的方法として、
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、
アルミニウム板に機械的粗面化処理、アルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法、
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および電解液を用いた電気化学的粗面化処理を順次施す方法、
アルミニウム板にアルカリエッチング処理、酸によるデスマット処理および異なる電解液を用いた電気化学的粗面化処理を複数回施す方法が挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。これらの方法において、上記電気化学的粗面化処理の後、さらに、アルカリエッチング処理および酸によるデスマット処理を施してもよい。
これらの方法により得られた本発明の平版印刷版用支持体は、2種以上の異なる周期の凹凸を重畳した構造が表面に形成されており、平版印刷版としたときの耐汚れ性および耐刷性のいずれにも優れる。
以下、表面処理の各工程について、詳細に説明する。
<機械的粗面化処理>
機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理と比較してより安価に、平均波長5〜100μmの凹凸のある表面を形成することができるため、粗面化処理の手段として有効である。
機械的粗面化処理方法としては、例えば、アルミニウム表面を金属ワイヤーでひっかくワイヤーブラシグレイン法、研磨球と研磨剤でアルミニウム表面を砂目立てするボールグレイン法、特開平6−135175号公報および特公昭50−40047号公報に記載されているナイロンブラシと研磨剤で表面を砂目立てするブラシグレイン法を用いることができる。
また、凹凸面をアルミニウム板に圧接する転写方法を用いることもできる。即ち、特開昭55−74898号、特開昭60−36195号、特開昭60−203496号の各公報に記載されている方法のほか、転写を数回行うことを特徴とする特開平6−55871号公報、表面が弾性であることを特徴とした特開平6−024168号公報に記載されている方法も適用可能である。
また、放電加工、ショットブラスト、レーザ、プラズマエッチング等を用いて、微細な凹凸を食刻した転写ロールを用いて繰り返し転写を行う方法や、微細粒子を塗布した凹凸のある面を、アルミニウム板に接面させ、その上より複数回繰り返し圧力を加え、アルミニウム板に微細粒子の平均直径に相当する凹凸パターンを複数回繰り返し転写させる方法を用いることもできる。転写ロールへ微細な凹凸を付与する方法としては、特開平3−8635号、特開平3−66404号、特開昭63−65017号の各公報等に記載されている公知の方法を用いることができる。また、ロール表面にダイス、バイト、レーザ等を使って2方向から微細な溝を切り、表面に角形の凹凸をつけてもよい。このロール表面には、公知のエッチング処理等を行って、形成させた角形の凹凸が丸みを帯びるような処理を行ってもよい。
また、表面の硬度を上げるために、焼き入れ、ハードクロムメッキ等を行ってもよい。
そのほかにも、機械的粗面化処理としては、特開昭61−162351号公報、特開昭63−104889号公報等に記載されている方法を用いることもできる。
本発明においては、生産性等を考慮して上述したそれぞれの方法を併用することもできる。これらの機械的粗面化処理は、電気化学的粗面化処理の前に行うのが好ましい。
以下、機械的粗面化処理として好適に用いられるブラシグレイン法について説明する。
ブラシグレイン法は、一般に、円柱状の胴の表面に、ナイロン(商標名)、プロピレン、塩化ビニル樹脂等の合成樹脂からなる合成樹脂毛等のブラシ毛を多数植設したローラ状ブラシを用い、回転するローラ状ブラシに研磨剤を含有するスラリー液を噴きかけながら、上記アルミニウム板の表面の一方または両方を擦ることにより行う。上記ローラ状ブラシおよびスラリー液の代わりに、表面に研磨層を設けたローラである研磨ローラを用いることもできる。
ローラ状ブラシを用いる場合、曲げ弾性率が好ましくは10,000〜40,000kg/cm、より好ましくは15,000〜35,000kg/cmであり、かつ、毛腰の強さが好ましくは500g以下、より好ましくは400g以下であるブラシ毛を用いる。ブラシ毛の直径は、一般的には、0.2〜0.9mmである。ブラシ毛の長さは、ローラ状ブラシの外径および胴の直径に応じて適宜決定することができるが、一般的には、10〜100mmである。
研磨剤は公知の物を用いることができる。例えば、パミストン、ケイ砂、水酸化アルミニウム、アルミナ粉、炭化ケイ素、窒化ケイ素、火山灰、カーボランダム、金剛砂等の研磨剤;これらの混合物を用いることができる。中でも、パミストン、ケイ砂が好ましい。特に、ケイ砂は、パミストンに比べて硬く、壊れにくいので粗面化効率に優れる点で好ましい。
研磨剤の平均粒径は、粗面化効率に優れ、かつ、砂目立てピッチを狭くすることができる点で、3〜50μmであるのが好ましく、6〜45μmであるのがより好ましい。
研磨剤は、例えば、水中に懸濁させて、スラリー液として用いる。スラリー液には、研磨剤のほかに、増粘剤、分散剤(例えば、界面活性剤)、防腐剤等を含有させることができる。スラリー液の比重は0.5〜2であるのが好ましい。
機械的粗面化処理に適した装置としては、例えば、特公昭50−40047号公報に記載された装置を挙げることができる。
<電気化学的粗面化処理>
電気化学的粗面化処理には、通常の交流を用いた電気化学的粗面化処理に用いられる電解液を用いることができる。中でも、塩酸または硝酸を主体とする電解液を用いることで、特徴的な凹凸構造を表面に形成させることができる。
本発明における電解粗面化処理としては、陰極電解処理の前後に酸性溶液中での交番波形電流による第1および第2の電解処理を行うことが好ましい。陰極電解処理により、アルミニウム板の表面で水素ガスが発生してスマットが生成することにより表面状態が均一化され、その後の交番波形電流による電解処理の際に均一な電解粗面化が可能となる。
この電解粗面化処理は、例えば、特公昭48−28123号公報および英国特許第896,563号明細書に記載されている電気化学的グレイン法(電解グレイン法)に従うことができる。この電解グレイン法は、正弦波形の交流電流を用いるものであるが、特開昭52−58602号公報に記載されているような特殊な波形を用いて行ってもよい。また、特開平3−79799号公報に記載されている波形を用いることもできる。また、特開昭55−158298号、特開昭56−28898号、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭54−85802号、特開昭60−190392号、特開昭58−120531号、特開昭63−176187号、特開平1−5889号、特開平1−280590号、特開平1−118489号、特開平1−148592号、特開平1−178496号、特開平1−188315号、特開平1−154797号、特開平2−235794号、特開平3−260100号、特開平3−253600号、特開平4−72079号、特開平4−72098号、特開平3−267400号、特開平1−141094の各公報に記載されている方法も適用できる。また、前述のほかに、電解コンデンサーの製造方法として提案されている特殊な周波数の交番電流を用いて電解することも可能である。例えば、米国特許第4,276,129号明細書および同第4,676,879号明細書に記載されている。
電解槽および電源については、種々提案されているが、米国特許第4203637号明細書、特開昭56−123400号、特開昭57−59770号、特開昭53−12738号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32823号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特開昭62−127500号、特開平1−52100号、特開平1−52098号、特開昭60−67700号、特開平1−230800号、特開平3−257199号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
また、特開昭52−58602号、特開昭52−152302号、特開昭53−12738号、特開昭53−12739号、特開昭53−32821号、特開昭53−32822号、特開昭53−32833号、特開昭53−32824号、特開昭53−32825号、特開昭54−85802号、特開昭55−122896号、特開昭55−132884号、特公昭48−28123号、特公昭51−7081号、特開昭52−133838号、特開昭52−133840号号、特開昭52−133844号、特開昭52−133845号、特開昭53−149135号、特開昭54−146234号の各公報等に記載されているもの等も用いることができる。
電解液である酸性溶液としては、硝酸、塩酸のほかに、米国特許第4,671,859号、同第4,661,219号、同第4,618,405号、同第4,600,482号、同第4,566,960号、同第4,566,958号、同第4,566,959号、同第4,416,972号、同第4,374,710号、同第4,336,113号、同第4,184,932号の各明細書等に記載されている電解液を用いることもできる。
酸性溶液の濃度は0.5〜2.5質量%であるのが好ましいが、上記のスマット除去処理での使用を考慮すると、0.7〜2.0質量%であるのが特に好ましい。また、液温は20〜80℃であるのが好ましく、30〜60℃であるのがより好ましい。
塩酸または硝酸を主体とする水溶液は、濃度1〜100g/Lの塩酸または硝酸の水溶液に、硝酸アルミニウム、硝酸ナトリウム、硝酸アンモニウム等の硝酸イオンを有する硝酸化合物または塩化アルミニウム、塩化ナトリウム、塩化アンモニウム等の塩酸イオンを有する塩酸化合物の少なくとも一つを1g/Lから飽和するまでの範囲で添加して使用することができる。また、塩酸または硝酸を主体とする水溶液には、鉄、銅、マンガン、ニッケル、チタン、マグネシウム、シリカ等のアルミニウム合金中に含まれる金属が溶解していてもよい。好ましくは、塩酸または硝酸の濃度0.5〜2質量%の水溶液にアルミニウムイオンが3〜50g/Lとなるように、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム等を添加した液を用いることが好ましい。
さらに、Cuと錯体を形成しうる化合物を添加して使用することによりCuを多く含有するアルミニウム板に対しても均一な砂目立てが可能になる。Cuと錯体を形成しうる化合物としては、例えば、アンモニア;メチルアミン、エチルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、トリメチルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、EDTA(エチレンジアミン四酢酸)等のアンモニアの水素原子を炭化水素基(脂肪族、芳香族等)等で置換して得られるアミン類;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等の金属炭酸塩類が挙げられる。また、硝酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、炭酸アンモニウム等のアンモニウム塩も挙げられる。
温度は10〜60℃が好ましく、20〜50℃がより好ましい。
電気化学的粗面化処理に用いられる交流電源波は、特に限定されず、サイン波、矩形波、台形波、三角波等が用いられるが、矩形波または台形波が好ましく、台形波が特に好ましい。台形波とは、図2に示したものをいう。この台形波において電流がゼロからピークに達するまでの時間(TP)は0.5〜3msecであるのが好ましい。0.5msec未満であると、アルミニウム板の進行方向と垂直に発生するチャタマークという処理ムラが発生しやすい。TPが3msecを超えると、特に硝酸電解液を用いる場合、電解処理で自然発生的に増加するアンモニウムイオン等に代表される電解液中の微量成分の影響を受けやすくなり、均一な砂目立てが行われにくくなる。その結果、平版印刷版としたときの耐汚れ性が低下する傾向にある。
台形波交流のduty比は1:2〜2:1のものが使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているように、アルミニウムにコンダクタロールを用いない間接給電方式においてはduty比が1:1のものが好ましい。
台形波交流の周波数は0.1〜120Hzのものを用いることが可能であるが、50〜70Hzが設備上好ましい。50Hzよりも低いと、主極のカーボン電極が溶解しやすくなり、また、70Hzよりも高いと、電源回路上のインダクタンス成分の影響を受けやすくなり、電源コストが高くなる。
電解槽には1個以上の交流電源を接続することができる。主極に対向するアルミニウム板に加わる交流の陽極と陰極との電流比をコントロールし、均一な砂目立てを行うことと、主極のカーボンを溶解することとを目的として、図3に示したように、補助陽極を設置し、交流電流の一部を分流させることが好ましい。図3において、11はアルミニウム板であり、12はラジアルドラムローラであり、13aおよび13bは主極であり、14は電解処理液であり、15は電解液供給口であり、16はスリットであり、17は電解液通路であり、18は補助陽極であり、19aおよび19bはサイリスタであり、20は交流電源であり、40は主電解槽であり、50は補助陽極槽である。整流素子またはスイッチング素子を介して電流値の一部を二つの主電極とは別の槽に設けた補助陽極に直流電流として分流させることにより、主極に対向するアルミニウム板上で作用するアノード反応にあずかる電流値と、カソード反応にあずかる電流値との比を制御することができる。主極に対向するアルミニウム板上で、陽極反応と陰極反応とにあずかる電気量の比(陰極時電気量/陽極時電気量)は、0.3〜0.95であるのが好ましい。
電解槽は、縦型、フラット型、ラジアル型等の公知の表面処理に用いる電解槽が使用可能であるが、特開平5−195300号公報に記載されているようなラジアル型電解槽が特に好ましい。電解槽内を通過する電解液は、アルミニウムウェブの進行方向に対してパラレルであってもカウンターであってもよい。
(硝酸電解)
硝酸を主体とする電解液を用いた電気化学的粗面化処理により、平均開口径0.5〜5μmのピットを形成することができる。ただし、電気量を比較的多くしたときは、電解反応が集中し、5μmを超えるハニカムピットも生成する。
このような砂目を得るためには、電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜1000C/dmであるのが好ましく、50〜300C/dmであるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜100A/dmであるのが好ましい。
また、高濃度または高温の硝酸電解液を用いると、平均開口径0.2μm以下の小波構造を形成させることもできる。
(塩酸電解)
塩酸はそれ自身のアルミニウム溶解力が強いため、わずかな電解を加えるだけで表面に微細な凹凸を形成させることが可能である。この微細な凹凸は、平均開口径が0.01〜0.2μmであり、アルミニウム板の表面の全面に均一に生成する。このような砂目を得るためには電解反応が終了した時点でのアルミニウム板のアノード反応にあずかる電気量の総和が、1〜100C/dmであるのが好ましく、20〜70C/dmであるのがより好ましい。この際の電流密度は20〜50A/dmであるのが好ましい。
このような塩酸を主体とする電解液での電気化学的粗面化処理では、アノード反応にあずかる電気量の総和を400〜1000C/dmと大きくすることでクレーター状の大きなうねりを同時に形成することも可能であるが、この場合は平均開口径10〜30μmのクレーター状のうねりに重畳して平均開口径0.01〜0.4μmの微細な凹凸が全面に生成する。
本発明においては、第1の電解粗面化処理として、上述した硝酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(硝酸電解)を行い、第2の電解粗面化処理として、上述した塩酸を主体とする電解液を用いた電解粗面化処理(塩酸電解)を行うのが好ましい。即ち、本発明は、粗面化処理として少なくともアルミニウム板に硝酸電解および塩酸電解を順次施し、好ましくは陽極酸化処理を施して平版印刷版用支持体を得る。
上記の硝酸、塩酸等の電解液中で行われる第1および第2の電解粗面化処理の間に、アルミニウム板は陰極電解処理を行うことが好ましい。この陰極電解処理により、アルミニウム板表面にスマットが生成するとともに、水素ガスが発生してより均一な電解粗面化処理が可能となる。この陰極電解処理は、酸性溶液中で陰極電気量が好ましくは3〜80C/dm、より好ましくは5〜30C/dmで行われる。陰極電気量が3C/dm未満であると、スマット付着量が不足する場合があり、また、80C/dmを超えると、スマット付着量が過剰となる場合があり、いずれも好ましくない。また、電解液は上記第1および第2の電解粗面化処理で使用する溶液と同一であっても異なっていてもよい。
<アルカリエッチング処理>
アルカリエッチング処理は、上記アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させることにより、表層を溶解する処理である。
電解粗面化処理より前に行われるアルカリエッチング処理は、機械的粗面化処理を行っていない場合には、上記アルミニウム板(圧延アルミ)の表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等を除去することを目的として、また、既に機械的粗面化処理を行っている場合には、機械的粗面化処理によって生成した凹凸のエッジ部分を溶解させ、急峻な凹凸を滑らかなうねりを持つ表面に変えることを目的として行われる。
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行わない場合、エッチング量は、0.1〜10g/mであるのが好ましく、1〜5g/mであるのがより好ましい。エッチング量が0.1g/m未満であると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等が残存する場合があるため、後段の電解粗面化処理において均一なピット生成ができずムラが発生してしまう場合がある。一方、エッチング量が1〜10g/mであると、表面の圧延油、汚れ、自然酸化皮膜等の除去が十分に行われる。上記範囲を超えるエッチング量とするのは、経済的に不利となる。
アルカリエッチング処理の前に機械的粗面化処理を行う場合、エッチング量は、3〜20g/mであるのが好ましく、5〜15g/mであるのがより好ましい。エッチング量が3g/m未満であると、機械的粗面化処理等によって形成された凹凸を平滑化できない場合があり、後段の電解処理において均一なピット形成ができない場合がある。また、印刷時に汚れが劣化する場合がある。一方、エッチング量が20g/mを超えると、凹凸構造が消滅してしまう場合がある。
電解粗面化処理の直後に行うアルカリエッチング処理は、酸性電解液中で生成したスマットを溶解させることと、電解粗面化処理により形成されたピットのエッジ部分を溶解させることを目的として行われる。
電解粗面化処理で形成されるピットは電解液の種類によって異なるためにその最適なエッチング量も異なるが、電解粗面化処理後に行うアルカリエッチング処理のエッチング量は、0.1〜5g/mであるのが好ましい。硝酸電解液を用いた場合、塩酸電解液を用いた場合よりもエッチング量は多めに設定する必要がある。
電解粗面化処理が複数回行われる場合には、それぞれの処理後に、必要に応じてアルカリエッチング処理を行うことができる。
アルカリ溶液に用いられるアルカリとしては、例えば、カセイアルカリ、アルカリ金属塩が挙げられる。具体的には、カセイアルカリとしては、例えば、カセイソーダ、カセイカリが挙げられる。また、アルカリ金属塩としては、例えば、タケイ酸ソーダ、ケイ酸ソーダ、メタケイ酸カリ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩;炭酸ソーダ、炭酸カリ等のアルカリ金属炭酸塩;アルミン酸ソーダ、アルミン酸カリ等のアルカリ金属アルミン酸塩;グルコン酸ソーダ、グルコン酸カリ等のアルカリ金属アルドン酸塩;第二リン酸ソーダ、第二リン酸カリ、第三リン酸ソーダ、第三リン酸カリ等のアルカリ金属リン酸水素塩が挙げられる。中でも、エッチング速度が速い点および安価である点から、カセイアルカリの溶液、および、カセイアルカリとアルカリ金属アルミン酸塩との両者を含有する溶液が好ましい。特に、カセイソーダの水溶液が好ましい。
アルカリ溶液の濃度は、エッチング量に応じて決定することができるが、1〜50質量%であるのが好ましく、10〜35質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液中にアルミニウムイオンが溶解している場合には、アルミニウムイオンの濃度は、0.01〜10質量%であるのが好ましく、3〜8質量%であるのがより好ましい。アルカリ溶液の温度は20〜90℃であるのが好ましい。処理時間は1〜120秒であるのが好ましい。
アルミニウム板をアルカリ溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板をアルカリ溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、アルカリ溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
<デスマット処理>
電解粗面化処理またはアルカリエッチング処理を行った後、表面に残留する汚れ(スマット)を除去するために酸洗い(デスマット処理)が行われる。用いられる酸としては、例えば、硝酸、硫酸、リン酸、クロム酸、フッ化水素酸、ホウフッ化水素酸が挙げられる。
上記デスマット処理は、例えば、上記アルミニウム板を塩酸、硝酸、硫酸等の濃度0.5〜30質量%の酸性溶液(アルミニウムイオン0.01〜5質量%を含有する。)に接触させることにより行う。アルミニウム板を酸性溶液に接触させる方法としては、例えば、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中を通過させる方法、アルミニウム板を酸性溶液を入れた槽の中に浸せきさせる方法、酸性溶液をアルミニウム板の表面に噴きかける方法が挙げられる。
デスマット処理においては、酸性溶液として、上述した電解粗面化処理において排出される硝酸を主体とする水溶液もしくは塩酸を主体とする水溶液の廃液、または、後述する陽極酸化処理において排出される硫酸を主体とする水溶液の廃液を用いることができる。
デスマット処理の液温は、25〜90℃であるのが好ましい。また、処理時間は、1〜180秒であるのが好ましい。デスマット処理に用いられる酸性溶液には、アルミニウムおよびアルミニウム合金成分が溶け込んでいてもよい。
<陽極酸化処理>
以上のように処理されたアルミニウム板には、さらに、陽極酸化処理が施されるのが好ましい。陽極酸化処理はこの分野で従来行われている方法で行うことができる。この場合、例えば、硫酸濃度50〜300g/Lで、アルミニウム濃度5質量%以下の溶液中で、アルミニウム板を陽極として通電して陽極酸化皮膜を形成させることができる。陽極酸化処理に用いられる溶液としては、硫酸、リン酸、クロム酸、シュウ酸、スルファミン酸、ベンゼンスルホン酸、アミドスルホン酸等を単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
この際、少なくともアルミニウム板、電極、水道水、地下水等に通常含まれる成分が電解液中に含まれていても構わない。さらには、第2、第3の成分が添加されていても構わない。ここでいう第2、第3の成分としては、例えば、Na、K、Mg、Li、Ca、Ti、Al、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn等の金属のイオン;アンモニウムイオン等の陽イオン;硝酸イオン、炭酸イオン、塩化物イオン、リン酸イオン、フッ化物イオン、亜硫酸イオン、チタン酸イオン、ケイ酸イオン、ホウ酸イオン等の陰イオンが挙げられ、0〜10000ppm程度の濃度で含まれていてもよい。
陽極酸化処理の条件は、使用される電解液によって種々変化するので一概に決定され得ないが、一般的には電解液濃度1〜80質量%、液温5〜70℃、電流密度0.5〜60A/dm、電圧1〜100V、電解時間15秒〜50分であるのが適当であり、所望の陽極酸化皮膜量となるように調整される。
また、特開昭54−81133号、特開昭57−47894号、特開昭57−51289号、特開昭57−51290号、特開昭57−54300号、特開昭57−136596号、特開昭58−107498号、特開昭60−200256号、特開昭62−136596号、特開昭63−176494号、特開平4−176897号、特開平4−280997号、特開平6−207299号、特開平5−24377号、特開平5−32083号、特開平5−125597号、特開平5−195291号の各公報等に記載されている方法を使用することもできる。
中でも、特開昭54−12853号公報および特開昭48−45303号公報に記載されているように、電解液として硫酸溶液を用いるのが好ましい。電解液中の硫酸濃度は、10〜300g/L(1〜30質量%)であるのが好ましく、また、アルミニウムイオン濃度は、1〜25g/L(0.1〜2.5質量%)であるのが好ましく、2〜10g/L(0.2〜1質量%)であるのがより好ましい。このような電解液は、例えば、硫酸濃度が50〜200g/Lである希硫酸に硫酸アルミニウム等を添加することにより調製することができる。
硫酸を含有する電解液中で陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板と対極との間に直流を印加してもよく、交流を印加してもよい。
アルミニウム板に直流を印加する場合においては、電流密度は、1〜60A/dmであるのが好ましく、5〜40A/dmであるのがより好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板の一部に電流が集中していわゆる「焼け」が生じないように、陽極酸化処理の開始当初は、5〜10A/mの低電流密度で電流を流し、陽極酸化処理が進行するにつれ、30〜50A/dmまたはそれ以上に電流密度を増加させるのが好ましい。
連続的に陽極酸化処理を行う場合には、アルミニウム板に、電解液を介して給電する液給電方式により行うのが好ましい。
このような条件で陽極酸化処理を行うことによりポア(マイクロポア)と呼ばれる孔を多数有する多孔質皮膜が得られるが、通常、その平均ポア径は5〜50nm程度であり、平均ポア密度は300〜800個/μm程度である。
陽極酸化皮膜の量は1〜5g/mであるのが好ましい。1g/m未満であると版に傷が入りやすくなり、一方、5g/mを超えると製造に多大な電力が必要となり、経済的に不利となる。陽極酸化皮膜の量は、1.5〜4g/mであるのがより好ましい。また、アルミニウム板の中央部と縁部近傍との間の陽極酸化皮膜量の差が1g/m以下になるように行うのが好ましい。
陽極酸化処理に用いられる電解装置としては、特開昭48−26638号、特開昭47−18739号、特公昭58−24517号の各公報等に記載されているものを用いることができる。
中でも、図4に示す装置が好適に用いられる。図4は、アルミニウム板の表面を陽極酸化処理する装置の一例を示す概略図である。陽極酸化処理装置410において、アルミニウム板416は、図4中矢印で示すように搬送される。電解液418が貯溜された給電槽412にてアルミニウム板416は給電電極420によって(+)に荷電される。そして、アルミニウム板416は、給電槽412においてローラ422によって上方に搬送され、ニップローラ424によって下方に方向変換された後、電解液426が貯溜された電解処理槽414に向けて搬送され、ローラ428によって水平方向に方向転換される。ついで、アルミニウム板416は、電解電極430によって(−)に荷電されることにより、その表面に陽極酸化皮膜が形成され、電解処理槽414を出たアルミニウム板416は後工程に搬送される。上記陽極酸化処理装置410において、ローラ422、ニップローラ424およびローラ428によって方向転換手段が構成され、アルミニウム板416は、給電槽412と電解処理槽414との槽間部において、上記ローラ422、424および428により、山型および逆U字型に搬送される。給電電極420と電解電極430とは、直流電源434に接続されている。
図4の陽極酸化処理装置410の特徴は、給電槽412と電解処理槽414とを1枚の槽壁432で仕切り、アルミニウム板416を槽間部において山型および逆U字型に搬送したことにある。これによって、槽間部におけるアルミニウム板416の長さを最短にすることができる。よって、陽極酸化処理装置410の全体長を短くできるので、設備費を低減することができる。また、アルミニウム板416を山型および逆U字型に搬送することによって、各槽412および414の槽壁にアルミニウム板416を通過させるための開口部を形成する必要がなくなる。よって、各槽412および414内の液面高さを必要レベルに維持するのに要する送液量を抑えることができるので、稼働費を低減することができる。
<封孔処理2>
本発明においては、必要に応じて陽極酸化皮膜に存在するマイクロポアを封じる封孔処理(上記した多孔質層の封孔処理とは異なる。したがって、便宜上、「封孔処理2」と表記する。)を行ってもよい。封孔処理2は、沸騰水処理、熱水処理、蒸気処理、ケイ酸ソーダ処理、亜硝酸塩処理、酢酸アンモニウム処理等の公知の方法に従って行うことができる。例えば、特公昭56−12518号公報、特開平4−4194号公報、特願平4−33952号明細書(特開平5−202496号公報)、特願平4−33951号明細書(特開平5−179482号公報)等に記載されている装置および方法で封孔処理2を行ってもよい。
<親水化処理>
陽極酸化処理後または封孔処理後、親水化処理を行ってもよい。親水化処理としては、例えば、米国特許第2,946,638号明細書に記載されているフッ化ジルコニウム酸カリウム処理、米国特許第3,201,247号明細書に記載されているホスホモリブデート処理、英国特許第1,108,559号に記載されているアルキルチタネート処理、独国特許第1,091,433号明細書に記載されているポリアクリル酸処理、独国特許第1,134,093号明細書および英国特許第1,230,447号明細書に記載されているポリビニルホスホン酸処理、特公昭44−6409号公報に記載されているホスホン酸処理、米国特許第3,307,951号明細書に記載されているフィチン酸処理、特開昭58−16893号公報および特開昭58−18291号公報に記載されている親油性有機高分子化合物と2価の金属との塩による処理、米国特許第3,860,426号明細書に記載されているように、水溶性金属塩(例えば、酢酸亜鉛)を含む親水性セルロース(例えば、カルボキシメチルセルロース)の下塗層を設ける処理、特開昭59−101651号公報に記載されているスルホ基を有する水溶性重合体を下塗りする処理が挙げられる。
また、特開昭62−019494号公報に記載されているリン酸塩、特開昭62−033692号公報に記載されている水溶性エポキシ化合物、特開昭62−097892号公報に記載されているリン酸変性デンプン、特開昭63−056498号公報に記載されているジアミン化合物、特開昭63−130391号公報に記載されているアミノ酸の無機または有機酸、特開昭63−145092号公報に記載されているカルボキシ基またはヒドロキシ基を含む有機ホスホン酸、特開昭63−165183号公報に記載されているアミノ基とホスホン酸基を有する化合物、特開平2−316290号公報に記載されている特定のカルボン酸誘導体、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平3−261592号公報に記載されている1個のアミノ基とリンの酸素酸基1個を持つ化合物、特開平3−215095号公報に記載されているリン酸エステル、特開平5−246171号公報に記載されているフェニルホスホン酸等の脂肪族または芳香族ホスホン酸、特開平1−307745号公報に記載されているチオサリチル酸のようなS原子を含む化合物、特開平4−282637号公報に記載されているリンの酸素酸のグループを持つ化合物等を用いた下塗りによる処理も挙げられる。
さらに、特開昭60−64352号公報に記載されている酸性染料による着色を行うこともできる。
また、ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液に浸せきさせる方法、親水性ビニルポリマーまたは親水性化合物を塗布して親水性の下塗層を形成させる方法等により、親水化処理を行うのが好ましい。
ケイ酸ソーダ、ケイ酸カリ等のアルカリ金属ケイ酸塩の水溶液による親水化処理は、米国特許第2,714,066号明細書および米国特許第3,181,461号明細書に記載されている方法および手順に従って行うことができる。
アルカリ金属ケイ酸塩としては、例えば、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、ケイ酸リチウムが挙げられる。アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等を適当量含有してもよい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩の水溶液は、アルカリ土類金属塩または4族(第IVA族)金属塩を含有してもよい。アルカリ土類金属塩としては、例えば、硝酸カルシウム、硝酸ストロンチウム、硝酸マグネシウム、硝酸バリウム等の硝酸塩;硫酸塩;塩酸塩;リン酸塩;酢酸塩;シュウ酸塩;ホウ酸塩が挙げられる。4族(第IVA族)金属塩としては、例えば、四塩化チタン、三塩化チタン、フッ化チタンカリウム、シュウ酸チタンカリウム、硫酸チタン、四ヨウ化チタン、塩化酸化ジルコニウム、二酸化ジルコニウム、オキシ塩化ジルコニウム、四塩化ジルコニウムが挙げられる。これらのアルカリ土類金属塩および4族(第IVA族)金属塩は、単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
アルカリ金属ケイ酸塩処理によって吸着するSi量は蛍光X線分析装置により測定することができ、その吸着量は約1.0〜15.0mg/mであるのが好ましい。
このアルカリ金属ケイ酸塩処理により、平版印刷版用支持体の表面のアルカリ現像液に対する耐溶解性向上の効果が得られ、アルミニウム成分の現像液中への溶出が抑制されて、現像液の疲労に起因する現像カスの発生を低減することができる。
また、親水性の下塗層の形成による親水化処理は、特開昭59−101651号公報および特開昭60−149491号公報に記載されている条件および手順に従って行うこともできる。
この方法に用いられる親水性ビニルポリマーとしては、例えば、ポリビニルスルホン酸、スルホ基を有するp−スチレンスルホン酸等のスルホ基含有ビニル重合性化合物と(メタ)アクリル酸アルキルエステル等の通常のビニル重合性化合物との共重合体が挙げられる。また、この方法に用いられる親水性化合物としては、例えば、−NH基、−COOH基およびスルホ基からなる群から選ばれる少なくとも一つを有する化合物が挙げられる。
<水洗処理>
上述した各処理の工程終了後には水洗を行うのが好ましい。水洗には、純水、井水、水道水等を用いることができる。処理液の次工程への持ち込みを防ぐためにニップ装置を用いてもよい。
[平版印刷版原版]
上記した本発明の平版印刷版用支持体には、基板の表面に以下に例示する感光層、感熱層等の画像記録層を設けて本発明の平版印刷版原版とすることができる。即ち、上記多孔質層等、好ましくはさらに封孔層を基板の裏面に有する平版印刷版用支持体上に、感熱型の画像記録層を設けることで、平版印刷版原版を得ることができる。
本発明においては、平版印刷版用支持体に設けられる画像記録層の種類等は特に限定されず、いかなるタイプの画像記録層であってもよい。
<画像記録層>
画像記録層には、以下に説明する感光性組成物が用いられる。
本発明に用いられる感光性組成物は、ケイ酸塩含有アルカリ性現像液で現像する平版印刷版に使用される感光性組成物なら全て好適である。具体例として、o−キノンジアジド化合物を主成分とするポジ型感光性組成物、o−キノンジアジド化合物を用い反転処理するネガ型平版印刷版用組成物、およびジアゾニウム塩、アルカリ可溶性ジアゾニウム塩、不飽和二重結合含有モノマーを主成分とする光重合性化合物あるいはケイ皮酸やジメチルマレイミド基を含む光架橋性化合物を感光物として含有するネガ型感光性組成物を挙げることができる。さらに、ネガ型あるいはポジ型の赤外線レーザ感光性組成物も好適な例として挙げられる。
かかるポジ型の感光性組成物に用いられるo−ナフトキノンジアジド化合物については、J.コーサー著「ライトセンシティブシステムズ」(John Wiley & Sons,Inc.)あるいは「感光性樹脂データ集」(綜合化学研究所編)等に詳細に記載されている。好ましいものの具体例として、例えば、特公昭43−28403号公報に記載されている1,2−ジアゾナフトキノンスルホン酸とピロガロール・アセトン樹脂とのエステル、米国特許3,046,120号明細書および同3,188,210号明細書に記載されている1,2−ジアゾナフトキノン−5−スルホン酸とフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル、特開平2−96163号公報、特開平2−96165号公報および特開平2−96761号公報に記載されている1,2−ジアゾナフトキノン−4−スルホン酸とフェノール−ホルムアルデヒド樹脂とのエステル等を挙げることができる。
本発明に用いるポジ型感光性組成物は、o−キノンジアジド化合物単独でも感光層を構成することができるが、アルカリ水に可溶な樹脂を結合剤(バインダー)として併用することが好ましい。このようなアルカリ水に可溶な樹脂としては、ノボラック型の樹脂、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、o−、m−およびp−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(o−、m−、p−、m/p−およびo/m−混合のいずれでもよい)混合ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。また、フェノール変性キシレン樹脂、ポリヒドロキシスチレン、ポリハロゲン化ヒドロキシスチレン、特開昭51−34711号公報に記載されているようなフェノール性水酸基を含有するアクリル系樹脂も用いることができる。
本発明に用いるポジ型感光性組成物には、上記成分の他に、感度を高めるために環状酸無水物類、フェノール類あるいは有機酸類、現像条件に対する処理の安定性(いわゆる現像ラチチュード)を広げるため、非イオン界面活性剤あるいは両性界面活性剤、露光後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料等の公知の添加物を加えることができる。
本発明に用いられるポジ型感光性組成物は、上記各成分を溶解する溶媒に溶かして支持体のアルミニウム板上に塗布される。ここで使用される溶媒としては、特開昭62−251739号公報に記載されているような有機溶剤が単独あるいは混合して用いられる。感光性組成物溶液の固形分濃度は、通常、2〜50質量%である。感光層の塗布量は用途により異なるが、一般的には、乾燥後の質量で0.3〜4.0g/mが好ましい。塗布量が小さくなるにつれて画像を得るための露光量は少なくて済むが、膜強度が低下する。塗布量が大きくなるにつれ、露光量を必要とするが感光膜は強くなり、印刷版として用いた場合、印刷可能枚数の高い(高耐刷の)印刷版が得られる。
本発明に用いられるポジ型感光性組成物には、塗布面質を向上するための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。好ましい添加量は、感光性組成物固形分の0.01〜1.0質量%であり、さらに好ましくは0.02〜0.5質量%である。
本発明に用いられるネガ型赤外線感光性組成物としては、例えば、特開平7−20629号公報、特開平7−271029号公報、特開平10−111564号公報、特開平11−84649号公報、特開平11−95419号公報、特開平11−119428号公報、特開平11−231509号公報、国際公開第98/51544号パンフレットおよび国際公開第98/31545号パンフレットに記載されている赤外線感光性組成物を挙げることができる。即ち、1)赤外線を吸収して発熱する赤外線吸収色素(光熱変換剤)、2)潜在性ブレンステッド酸、s−トリアジン化合物、分解して酸を発生する化合物等の酸発生剤、3)ノボラック樹脂やポリビニルフェノール等のバインダーであり被架橋ポリマー、および4)アルコキシメチル基またはヒドロキシメチル基を有するフェノール化合物、あるいはN−アルコキシメチル基またはN−ヒドロキシメチル基を有する化合物等の架橋剤を主成分とする赤外線感光性組成物である。
本発明に好適に用いられるポジ型赤外線感光性組成物として、例えば、特開平7−285275号公報、特開平11−44956号公報に記載されている赤外線感光性組成物、即ち、ノボラック樹脂等のフェノール性水酸基を有するアルカリ水可溶性樹脂、光を吸収し熱を発生する物質(光熱変換剤)、および必要に応じて種々のオニウム塩あるいはキノンジアジド化合物等を含有する赤外線感光性組成物を挙げることができる。
本発明においては、ポジ型赤外線感光性組成物として、以下に説明する2層以上の多層構成を形成する感光性組成物であるのが好ましい。
具体的には、水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂を含有する感光層下層(以下、単に「下層」という場合がある。)と、水不溶性かつアルカリ可溶性のアルカリ可溶性樹脂を含有する感光層最上層(以下、単に「最上層」という場合がある。)とをこの順に有し、該感光層下層および最上層の少なくとも一方に光熱変換剤を含有する。
該感光層に用いられる水不溶性かつアルカリ可溶性樹脂(以下、適宜、「アルカリ可溶性樹脂」という。)とは、高分子中の主鎖および/または側鎖に酸性基を含有する単独重合体、これらの共重合体またはこれらの混合物を包含する。したがって、この感光層は、アルカリ性現像液に接触すると溶解する特性を有するものである。本発明に使用されるアルカリ可溶性樹脂は、従来公知のものであれば特に制限はないが、(1)フェノール性水酸基、(2)スルホンアミド基、(3)活性イミド基、および(4)カルボン酸基から選ばれる少なくとも一つの酸性基を分子内に有する高分子化合物であることが好ましい。例えば以下のものが例示されるが、これらに限定されるものではない。
(1)フェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、例えば、フェノールホルムアルデヒド樹脂、m−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、p−クレゾールホルムアルデヒド樹脂、m−/p−混合クレゾールホルムアルデヒド樹脂、フェノール/クレゾール(m−,p−,またはm−/p−混合のいずれでもよい。)混合ホルムアルデヒド樹脂等のノボラック樹脂やピロガロールアセトン樹脂が挙げられる。
また、フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、置換フェノール類とアルデヒド類とを縮合してなる樹脂も好適なものとして挙げられる。
置換フェノール類の具体例としては、例えば、イソプロピルフェノール、t−ブチルフェノール、t−アミルフェノール、ヘキシルフェノール、シクロヘキシルフェノール、3−メチル−4−クロロ−6−t−ブチルフェノール、イソプロピルクレゾール、t−ブチルクレゾール、t−アミルクレゾールが挙げられる。中でも、t−ブチルフェノール、t−ブチルクレゾールが好ましい。
上記の置換フェノール類との縮合に使用されるアルデヒド類としては、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アクロレイン、クロトンアルデヒド等の脂肪族および芳香族アルデヒドが挙げられる。中でもホルムアルデヒドまたはアセトアルデヒドが好ましい。
フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としてはこの他に、側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物を挙げることができる。側鎖にフェノール性水酸基を有する高分子化合物としては、フェノール性水酸基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、あるいは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
フェノール性水酸基を有する重合性モノマーとしては、フェノール性水酸基を有するアクリルアミド、メタクリルアミド、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはヒドロキシスチレン等が挙げられる。かかるフェノール性水酸基を有する樹脂は、2種類以上を組み合わせて使用してもよい。
また、本発明に用いるフェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、特開
平11−288089号公報に記載の、上記フェノール性水酸基を有するアルカリ可溶性樹脂のフェノール性水酸基の少なくとも一部がエステル化されたアルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
(2)スルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、スルホンアミド基を有する重合性モノマーを単独重合、あるいは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。スルホンアミド基を有する重合性モノマーとしては、1分子中に、窒素原子上に少なくとも1つの水素原子が結合したスルホンアミド基−NH−SO−と、重合可能な不飽和結合をそれぞれ1つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーが挙げられる。その中でも、アクリロイル基、アリル基、またはビニロキシ基と、置換あるいはモノ置換アミノスルホニル基または置換スルホニルイミノ基とを有する低分子化合物が好ましい。
このスルホンアミド基を有するアルカリ可溶性樹脂の具体例としては、特公平7−69605号公報に記載のものが挙げられる。
(3)活性イミド基を有するアルカリ可溶性樹脂は、活性イミド基(−CO−NH−SO−)を分子内に有するものが好ましく、この高分子化合物としては、1分子中に活性イミド基と重合可能な不飽和結合をそれぞれ一つ以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、あるいは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。
このような化合物の具体例としては、例えば、N−(p−トルエンスルホニル)メタクリルアミド、N−(p−トルエンスルホニル)アクリルアミド等を好適に使用することができる。
(4)カルボン酸基を有するアルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボン酸基と重合可能な不飽和基とを分子内にそれぞれ1以上有する低分子化合物からなる重合性モノマーを単独重合、あるいは該モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物が挙げられる。カルボン酸基を有する重合性モノマーの具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等のα、β−不飽和カルボン酸類が挙げられる。また、側鎖にヒドロキシル基を有するアクリレートまたはメタクリレート(例えば、2−ヒドロキシエチルエチルアクリレートまたはメタクリレート等)のヒドロキシル基と、二塩基酸(例えば、コハク酸、グルタル酸、フタル酸等)とのモノエステルである不飽和カルボン酸も好適なものとして挙げられる。
さらに、本発明のアルカリ可溶性樹脂としては、上記フェノール性水酸基を有する重合性モノマー、スルホンアミド基を有する重合性モノマー、活性イミド基を有する重合性モノマー、およびカルボン酸基を有する重合性モノマーのうちの2種以上を重合させた高分子化合物、あるいはこれら2種以上の重合性モノマーに他の重合性モノマーを共重合させて得られる高分子化合物を使用することができる。
本発明において、アルカリ可溶性樹脂が上記酸性基(フェノール性水酸基、スルホンアミド基、活性イミド基、カルボン酸基)を有するモノマーと、他の重合性モノマーとの共重合体である場合には、アルカリ可溶性を付与するモノマーは10モル%以上含むことが好ましく、20モル%以上含むものがより好ましい。共重合成分が10モル%より少ないと、アルカリ可溶性が不十分となりやすい。
本発明においてアルカリ可溶性樹脂が、上記酸性基を有する重合性モノマーの単独重合体あるいは共重合体の場合、重量平均分子量が2,000以上が好ましい。さらに好ましくは、重量平均分子量が5,000〜300,000である。また、本発明においてアルカリ可溶性樹脂がフェノールホルムアルデヒド樹脂、クレゾールアルデヒド樹脂等の樹脂である場合には、重量平均分子量500〜50,000が好ましく、700〜20,000がより好ましく、1,000〜10,000が特に好ましい。
感光層最上層に用いられるアルカリ可溶性樹脂としては、未露光部では強い水素結合性を生起し、露光部においては、一部の水素結合が容易に解除される点においてフェノール性水酸基を有する樹脂が好ましくい。さらに好ましくはノボラック樹脂である。
また、本発明においては、アルカリ性水溶液に対し溶解速度の異なる2種類以上のアルカリ可溶性樹脂を混合して用いてもよく、その場合の混合比は自由である。感光層最上層である場合に好適に用いられるフェノール性水酸基を有する樹脂と混合するのに好適なアルカリ可溶性樹脂としては、フェノール性水酸基を有する樹脂と相溶性が低いことから、アクリル樹脂が好ましく、スルホアミド基またはカルボン酸基を有するアクリル樹脂がより好ましい。
感光層下層には、上記アルカリ可溶性樹脂が用いられるが、下層自体が、特に非画像部領域において、高いアルカリ可溶性を発現することを要する。また、印刷時において種々印刷薬品に対する耐性および各種印刷条件において安定した耐刷性を発現することも要する。このため、この特性を損なわない樹脂を選択することが好ましい。この観点から、アルカリ現像液に対する溶解性、各種印刷薬品に対する耐溶解性、物理的強度に優れた樹脂を選択することが好ましい。また、下層に用いるアルカリ可溶性樹脂としては、最上層を塗布する際にその塗布溶媒により溶解されない、溶剤溶解性の低い樹脂を選択することが好ましい。このような樹脂を選択することで、2つの層の界面における所望されない相溶が抑制される。
これらの観点から、上記アルカリ可溶性樹脂の中でも、アクリル樹脂が好ましい。中でも、スルホンアミド基を有するアクリル樹脂が好ましい。
2層構造の感光層において、最上層の全固形分中に対するアルカリ可溶性樹脂の含有量は、感光層の感度および耐久性の観点から40〜98質量%の添加量で用いられるのが好ましく、より好ましくは60〜97質量%である。
下層成分中のアルカリ可溶性樹脂の含有量は、下層全固形分中、40〜95質量%が好ましく、より好ましくは50〜90質量%である。
本発明の感光層には、そのインヒビション(溶解抑制能)を高める目的で、現像抑制剤を含有させることができる。特に感光層最上層に現像抑制剤を含有させることが好ましい。
現像抑制剤としては、上記アルカリ可溶性樹脂と相互作用を形成し、未露光部においては該アルカリ可溶性樹脂の現像液に対する溶解性を実質的に低下させ、かつ、露光部においては該相互作用が弱まり、現像液に対して可溶となり得るものであれば特に限定はされないが、特に第4級アンモニウム塩、ポリエチレングリコール系化合物等が好ましく用いられる。また後述する光熱変換剤、画像着色剤のなかにも現像抑制剤として機能する化合物があり、それらもまた好ましく挙げられる。
溶解抑制剤としては上記の他に、オニウム塩、o−キノンジアジド化合物、芳香族スルホン化合物、芳香族スルホン酸エステル化合物等の、熱分解性であり、かつ、分解しない状態では、アルカリ可溶性樹脂の溶解性を実質的に低下させる物質を併用することが画像部の現像液へのインヒビションの向上を図る点で好ましい。
添加量としては、最上層全固形分に対し、0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
上記感光層には、感光層下層および最上層の少なくとも一方に光熱変換剤を含有するが、下層および最上層の両層に添加するのが好ましい。
光熱変換剤としては、光を吸収して熱に変換する物質であれば特に制限はないが、特に赤外光を吸収し熱を発生する染料、即ち赤外線吸収剤が好ましい。
光熱変換剤としては、市販の染料および文献(例えば「染料便覧」有機合成化学協会編集、昭和45年刊)に記載されている公知のものが利用できる。具体的には、例えば、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、メチン染料、シアニン染料等の染料が挙げられる。本発明において、これらの染料のうち赤外光、もしくは近赤外光を吸収するものが、赤外光もしくは近赤外光を発光するレーザでの利用に適する点で特に好ましい。
そのような赤外光、もしくは近赤外光を吸収する染料としては例えば特開昭58−125246号、特開昭59−84356号、特開昭60−78787号の各公報、米国特許第4,973,572号明細書等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号、特開昭58−181690号、特開昭58−194595号の各公報等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号、特開昭58−224793号、特開昭59−48187号、特開昭59−73996号、特開昭60−52940号、特開昭60−63744号の各公報等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号公報等に記載されているスクワリリウム色素、英国特許434,875号明細書に記載されているシアニン染料等を挙げることができる。
また、染料として米国特許第5,156,938号明細書に記載の近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載されている置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号公報(米国特許第4,327,169号明細書)に記載されているトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号、特開昭58−220143号、特開昭59−41363号、特開昭59−84248号、特開昭59−84249号、特開昭59−146063号、特開昭59−146061号の各公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載されているシアニン色素、米国特許第4,283,475号明細書に記載されているペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号、特公平5−19702号の各公報に記載されているピリリウム化合物等が、市販品としては、エポリン社製のEpolight III−178、Epolight III−130、Epolight III−125等が、特に好ましく用いられる。
また、染料として特に好ましい別の例として米国特許第4,756,993号明細書中に式(I)、(II)として記載されている近赤外吸収染料を挙げることができる。
これらの光熱変換剤は、感度の観点から感光層の最上層あるいはその近傍に添加することが好ましい。特にシアニン色素の如き溶解抑制能を有するものを、上記フェノール基を有するアルカリ可溶性樹脂とともに添加すると、高感度化と同時に、未露光部に耐アルカリ溶解性を持たせることができる。また、これらの光熱変換剤は、下層に添加しても上層下層の双方に添加してもよい。下層に添加することでさらに高感度化することが可能である。最上層と下層の双方に光熱変換剤を添加する場合には、互いに同じ化合物を用いてもよく、また異なる化合物を用いてもよい。
光熱変換剤の添加量としては、感光層最上層に添加する場合、最上層全固形分に対し0.01〜50質量%、好ましくは0.1〜30質量%、特に好ましくは1.0〜30質量%である。添加量を上記範囲とすることで感光層の感度および耐久性が良好となる。
また、下層に添加する場合、下層全固形分に対し0〜20質量%、好ましくは0〜10質量%、特に好ましくは0〜5質量%の割合で添加することができる。下層に光熱変換剤を添加する場合、溶解抑制能を有する光熱変換剤を用いると下層の溶解性が低下するが、一方、光熱変換剤が赤外線レーザ露光時に発熱し、熱による下層の溶解性向上が期待できるため、これらのバランスを考慮して添加する化合物および添加量を選択すべきである。なお、支持体近傍の0.2〜0.3μmの領域では露光時に発生した熱が支持体に拡散する等して、熱による溶解性向上効果が得難く、赤外吸収染料添加による下層の溶解性低下が感度を低下させる要因となる場合がある。したがって、先に示した添加量の範囲の中においても、下層の現像液(25〜30℃)に対する溶解速度が30nm/secを下回る如き添加量は好ましくない。
上記感光層を形成するにあたっては、上記成分の他、本発明の効果を損なわない限りにおいて、さらに必要に応じて、種々の添加剤を添加することができる。なお、以下に挙げる添加剤は感光層下層のみに添加してもよいし、最上層のみに添加してもよいし、両方の層に添加してもよい。
上記感光層には、感度を向上させる目的で、酸無水物類、フェノール類、有機酸類等の現像促進剤を添加してもよい。
上記感光層には、塗布性を良化するため、また、現像条件に対する処理の安定性を広げるため、特開昭62−251740号公報や特開平3−208514号公報に記載されているような非イオン界面活性剤、特開昭59−121044号公報、特開平4−13149号公報に記載されているような両性界面活性剤、欧州特許第950517号明細書に記載されているようなシロキサン系化合物、特開昭62−170950号公報、特開平11−288093号公報、特開2003−057820号公報に記載されているようなフッ素含有モノマーの共重合体等の界面活性剤を添加することができる。
上記界面活性剤の感光層下層または最上層の、全固形分に占める割合は、0.01〜15質量%が好ましく、より好ましくは0.1〜5.0質量%、さらに好ましくは0.05〜2.0質量%である。
上記感光層には、露光による加熱後直ちに可視像を得るための焼き出し剤や、画像着色剤としての染料や顔料を加えることができる。
これらの染料は、感光層下層または最上層の全固形分に対し、0.01〜10質量%、好ましくは0.1〜3質量%の割合で添加することができる。
上記感光層には、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を添加してもよい。例えば、ブチルフタリル、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリル、アクリル酸またはメタクリル酸のオリゴマーおよびポリマー等が用いられる。
これらの可塑剤は、感光層下層または最上層の全固形分に対し、0.5〜10質量%、好ましくは1.0〜5.0質量%の割合で添加することができる。
上記単層の感光層または上記2層構造の感光相の最上層には、キズに対する抵抗性を付与する目的で、表面の静摩擦係数を低下させる化合物(WAX剤)を添加することもできる。具体的には、例えば、米国特許第6,117,913号明細書、あるいは本願出願人が先に提案した特願2001−261627号、特願2002−032904号、特願2002−165584号の各明細書に記載されているような、長鎖アルキルカルボン酸のエステルを有する化合物等を挙げることができる。添加量としては、感光層最上層中に占める割合が0.1〜10質量%が好ましく、より好ましくは0.5〜5質量%である。
<感光層の形成>
感光層は、通常上記各成分を溶剤に溶かして、塗布することにより形成することができる。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン等をあげることができるがこれらに限定されるものではない。これらの溶剤は単独あるいは混合して使用される。
なお、感光層下層および最上層は、原則的に2つの層を分離して形成することが好ましい。
2つの層を分離して形成する方法としては、例えば、下層に含まれる成分と最上層に含まれる成分との溶剤溶解性の差を利用する方法、または、最上層を塗布した後、急速に溶剤を乾燥、除去させる方法等が挙げられる。
これらの方法の詳細については、特開2002−251003号公報に記載されている。
また、新たな機能を付与するために、積極的に最上層および下層の部分相溶を行う場合もある。この場合、溶剤溶解性の差、最上層を塗布後の溶剤の乾燥速度、等を制御することにより部分相溶が可能となる。
支持体上に塗布される感光層用塗布液中の、溶剤を除いた上記成分(添加剤を含む全固
形分)の濃度は、好ましくは1〜50質量%であるのが好ましい。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができるが、例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げることができる。
特に、2層構造の感光層では最上層塗布時に下層へのダメージを防ぐため、最上層塗布方法は非接触式であることが好ましくい。また接触型ではあるが溶剤系塗布に一般的に用いられる方法としてバーコーター塗布を用いる事も可能であるが、下層へのダメージを防止するために順転駆動で塗布することが好ましくい。
平版印刷版用支持体上に塗布される下層成分の乾燥後の塗布量は、0.5〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.6〜2.5g/mの範囲である。0.5g/m以上とすることで耐刷性に優れ、また4.0g/m以下とすることで良好な画像再現性および感度が得られる。
また、最上層成分の乾燥後の塗布量は、0.05〜1.0g/mの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.08〜0.7g/mの範囲である。0.05g/m以上とすることで、良好な現像ラチチュード、耐傷性が得られ、1.0g/m以下とすることで良好な感度が得られる。
下層および最上層を合わせた乾燥後の塗布量としては、0.6〜4.0g/mの範囲にあることが好ましく、さらに好ましくは0.7〜2.5g/mの範囲である。0.6g/m以上とすることで良好な耐刷性が得られ、4.0g/m以下とすることで良好な画像再現性および感度が得られる。
また、本発明においては、上記した感光性組成物を含有する画像記録層の他に、以下に説明する感熱記録層が画像記録層として用いられる。
本発明の平版印刷版原版に用いられる感熱記録層は、(i)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、または、(ii)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルを含有する感熱層である。この感熱記録層を用いると、優れた機上現像性を有する赤外線領域の放射線で記録可能な平版印刷版原版を得ることができる。
上記(i)および(ii)の感熱層に共通の熱反応性官能基としては、例えば、重合反応を行うエチレン性不飽和基(例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基)、付加反応を行うイソシアネート基またはそのブロック体、その反応相手である活性水素原子を有する官能基(例えば、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基)、同じく付加反応を行うエポキシ基、その反応相手であるアミノ基、カルボキシ基またはヒドロキシ基、縮合反応を行うカルボキシ基とヒドロキシ基またはアミノ基、開環付加反応を行う酸無水物とアミノ基またはヒドロキシ基が挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基は、これらに限定されず、化学結合が形成されるならば、どのような反応を行う官能基でもよい。
まず、(i)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーについて説明する。
微粒子ポリマーに好適な熱反応性官能基としては、例えば、アクリロイル基、メタクリルロイル基、ビニル基、アリル基、エポキシ基、アミノ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、イソシアネート基、酸無水物基およびそれらを保護した基が挙げられる。熱反応性官能基のポリマー微粒子への導入は、ポリマーの重合時に行ってもよいし、重合後に高分子反応を利用して行ってもよい。
熱反応性官能基をポリマーの重合時に導入する場合は、熱反応性官能基を有するモノマーを用いて乳化重合または懸濁重合を行うのが好ましい。
熱反応性官能基を有するモノマーの具体例としては、アリルメタクリレート、アリルアクリレート、ビニルメタクリレート、ビニルアクリレート、グリシジルメタクリレート、グリシジルアクリレート、2−イソシアネートエチルメタクリレート、そのアルコール等によるブロックイソシアネート、2−イソシアネートエチルアクリレート、そのアルコール等によるブロックイソシアネート、2−アミノエチルメタクリレート、2−アミノエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、二官能アクリレート、二官能メタクリレートが挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基を有するモノマーは、これらに限定されない。
これらのモノマーと共重合可能な、熱反応性官能基を有しないモノマーとしては、例えば、スチレン、アルキルアクリレート、アルキルメタクリレート、アクリロニトリル、酢酸ビニルが挙げられる。本発明に用いられる熱反応性官能基を有しないモノマーは、これらに限定されない。
熱反応性官能基をポリマーの重合後に導入する場合に用いられる高分子反応としては、例えば、国際公開第96/34316号パンフレットに記載されている高分子反応が挙げられる。
上記熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの中でも、画像形成性の観点からは、微粒子ポリマー同志が熱により容易に融着、合体するものが好ましく、また、機上現像性の観点から、その表面が親水性で、水に分散するものが、特に好ましい。また、微粒子ポリマーのみを塗布し、凝固温度よりも低い温度で乾燥して作製したときの皮膜の接触角(空中水滴)が、凝固温度よりも高い温度で乾燥して作製したときの皮膜の接触角(空中水滴)よりも低くなることが好ましい。
微粒子ポリマー表面の親水性をこのような好ましい状態にするには、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール等の親水性ポリマーあるいはオリゴマー、または親水性低分子化合物を微粒子ポリマー表面に吸着させてやればよいが、微粒子の表面親水化方法はこれらに限定されるものではなく、公知の種々の表面親水化方法を適用することができる。
熱反応性官能基を有する微粒子ポリマーの熱融着温度は、70℃以上であることが好ましいが、経時安定性を考えると80℃以上がさらに好ましい。ただし、あまり熱融着温度が高いと感度の観点からは好ましくないので、80〜250℃の範囲が好ましく、100〜150℃の範囲であることがさらに好ましい。
該微粒子ポリマーの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましいが、その中でも0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.1〜1.0μmであるのが好ましい。この範囲内で良好な解像度と経時安定性が得られる。
該微粒子ポリマーの添加量は、感熱記録層固形分の50〜98質量%が好ましく、60〜95質量%がさらに好ましい。
次に、(ii)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルについて説明する。
マイクロカプセルに好適な熱反応性官能基としては、先に(i)および(ii)の感熱層に共通のものとして挙げた官能基の他、例えば、重合性不飽和基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、カルボキシレート基、酸無水物基、アミノ基、エポキシ基、イソシアネート基、イソシアネートブロック体等が挙げられる。
重合性不飽和基を有する化合物としては、エチレン性不飽和結合、例えば、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基、アリル基を少なくとも1個、好ましくは2個以上有する化合物であるのが好ましい。そのような化合物群は当該産業分野において広く知られるものであり、本発明においては、これらを特に限定されずに用いることができる。これらは、化学的形態としては、モノマー、プレポリマー、即ち、二量体、三量体およびオリゴマー、またはそれらの混合物、およびそれらの共重合体である。
具体的には、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、マレイン酸)、そのエステル、不飽和カルボン酸アミドが挙げられる。中でも、不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルおよび不飽和カルボン酸と脂肪族多価アミンとのアミドが好ましい。
また、ヒドロキシ基、アミノ基、メルカプト基等の求核性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたは不飽和カルボン酸アミドと単官能もしくは多官能のイソシアネートまたはエポキシドとの付加反応物、および、単官能もしくは多官能のカルボン酸との脱水縮合反応物等も好適に用いられる。
また、イソシアネート基、エポキシ基等の親電子性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単官能もしくは多官能のアルコール、アミンまたはチオールとの付加反応物、および、ハロゲン基やトシルオキシ基等の脱離性置換基を有する不飽和カルボン酸エステルまたはアミドと、単官能もしくは多官能アルコール、アミンまたはチオールとの置換反応物も好適である。
また、別の好適な例として、上記の不飽和カルボン酸を、不飽和ホスホン酸またはクロロメチルスチレンに置き換えた化合物が挙げられる。
不飽和カルボン酸と脂肪族多価アルコールとのエステルである重合性化合物のうち、アクリル酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、1,3−ブタンジオールジアクリレート、テトラメチレングリコールジアクリレート、プロピレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリス(アクリロイルオキシプロピル)エーテル、トリメチロールエタントリアクリレート、ヘキサンジオールジアクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ペンタエリスリトールジアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールジアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ソルビトールトリアクリレート、ソルビトールテトラアクリレート、ソルビトールペンタアクリレート、ソルビトールヘキサアクリレート、トリス(アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ポリエステルアクリレートオリゴマーが挙げられる。
メタクリル酸エステルとしては、例えば、テトラメチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、ヘキサンジオールジメタクリレート、ペンタエリスリトールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ジペンタエリスリトールジメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ソルビトールトリメタクリレート、ソルビトールテトラメタクリレート、ビス[p−(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル]ジメチルメタン、ビス−[p−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル]ジメチルメタンが挙げられる。
イタコン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイタコネート、プロピレングリコールジイタコネート、1,3−ブタンジオールジイタコネート、1,4−ブタンジオールジイタコネート、テトラメチレングリコールジイタコネート、ペンタエリスリトールジイタコネート、ソルビトールテトライタコネートが挙げられる。
クロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジクロトネート、テトラメチレングリコールジクロトネート、ペンタエリスリトールジクロトネート、ソルビトールテトラジクロトネートが挙げられる。
イソクロトン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジイソクロトネート、ペンタエリスリトールジイソクロトネート、ソルビトールテトライソクロトネートが挙げられる。
マレイン酸エステルとしては、例えば、エチレングリコールジマレート、トリエチレングリコールジマレート、ペンタエリスリトールジマレート、ソルビトールテトラマレートが挙げられる。
その他のエステルとしては、例えば、特公昭46−27926号公報、同51−47334号公報、同57−196231号公報に記載されている脂肪族アルコール系エステル類や、特開昭59−5240号公報、同59−5241号公報、特開平2−226149号公報に記載されている芳香族系骨格を有するもの、特開平1−165613号公報に記載されているアミノ基を含有するものが挙げられる。
また、脂肪族多価アミン化合物と不飽和カルボン酸とのアミドのモノマーの具体例としては、メチレンビス−アクリルアミド、メチレンビス−メタクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−アクリルアミド、1,6−ヘキサメチレンビス−メタクリルアミド、ジエチレントリアミントリスアクリルアミド、キシリレンビスアクリルアミド、キシリレンビスメタクリルアミドが挙げられる。
その他の好ましいアミド系モノマーとしては、例えば、特公昭54−21726号公報に記載されているシクロへキシレン構造を有するものが挙げられる。
また、イソシアネートとヒドロキシル基の付加反応を用いて製造されるウレタン系付加重合性化合物も好適であり、具体的には、例えば、特公昭48−41708号公報に記載されている1分子に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物に、下記式(II)で示されるヒドロキシル基を有する不飽和モノマーを付加させて得られる、1分子中に2個以上の重合性不飽和基を含有するウレタン化合物が挙げられる。
CH=C(R)COOCHCH(R)OH 式(II)
(ただし、RおよびRは、それぞれHまたはCHを表す。)
また、特開昭51−37193号公報、特公平2−32293号公報、同2−16765号公報に記載されているようなウレタンアクリレートや、特公昭58−49860号公報、同56−17654号公報、同62−39417号公報、同62−39418号公報に記載されているエチレンオキサイド系骨格を有するウレタン化合物も好適なものとして挙げられる。
更に、特開昭63−277653号公報、同63−260909号公報、特開平1−105238号公報に記載されている、分子内にアミノ構造やスルフィド構造を有するラジカル重合性化合物も好適なものとして挙げられる。
その他の好適なものの例としては、特開昭48−64183号公報、特公昭49−43191号公報、同52−30490号公報に記載されているようなポリエステルアクリレート類、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸を反応させたエポキシアクリレート類等の多官能のアクリレートやメタクリレートが挙げられる。また、特公昭46−43946号公報、特公平1−40337号公報、同1−40336号公報に記載されている特定の不飽和化合物や、特開平2−25493号公報に記載されているビニルホスホン酸系化合物等も好適なものとして挙げられる。また、ある場合には、特開昭61−22048号公報に記載されているペルフルオロアルキル基を含有する化合物も好適に挙げられる。更に、日本接着協会誌、20巻7号、p.300〜308(1984年)に光硬化性モノマーおよびオリゴマーとして紹介されているものも好適に例示される。
好適なエポキシ化合物としては、例えば、グリセリンポリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ビスフェノール類もしくはポリフェノール類またはそれらの水素添加物のポリグリシジルエーテルが挙げられる。
好適なイソシアネート化合物としては、例えば、トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、シクロヘキサンフェニレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、シクロヘキシルジイソシアネート、または、それらをアルコールもしくはアミンでブロックした化合物が挙げられる。
好適なアミン化合物としては、例えば、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミン、プロピレンジアミン、ポリエチレンイミンが挙げられる。
好適なヒドロキシル基を有する化合物としては、例えば、末端メチロール基を有する化合物、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、ビスフェノール・ポリフェノール類が挙げられる。
好適なカルボキシル基を有する化合物としては、例えば、ピロメリット酸、トリメリット酸、フタル酸等の芳香族多価カルボン酸、アジピン酸等の脂肪族多価カルボン酸が挙げられる。
好適な酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸無水物が挙げられる。
エチレン状不飽和化合物の共重合体の好適なものとしては、例えば、アリルメタクリレートの共重合体が挙げられる。具体的には、例えば、アリルメタクリレート/メタクリル酸共重合体、アリルメタクリレート/エチルメタクリレート共重合体、アリルメタクリレート/ブチルメタクリレート共重合体が挙げられる。
マイクロカプセル化する方法としては、公知の方法が適用できる。例えば、マイクロカプセルの製造方法としては、米国特許第2,800,457号明細書、同第2,800,458号明細書に記載されているコアセルベーションを利用した方法、英国特許第99,0443号明細書、米国特許第3,287,154号明細書、特公昭38−19574号公報、同42−446号公報、同42−711号公報に記載されている界面重合法による方法、米国特許第3,418,250号明細書、同第3,660,304号明細書に記載されているポリマーの析出による方法、米国特許第3,796,669号明細書に記載されているイソシアネートポリオール壁材料を用いる方法、米国特許第3,914,511号明細書に記載されているイソシアネート壁材料を用いる方法、米国特許第4,001,140号明細書、同第4,087,376号明細書、同第4,089,802号明細書に記載されている尿素−ホルムアルデヒド系または尿素ホルムアルデヒド−レゾルシノール系壁形成材料を用いる方法、米国特許第4,025,445号明細書に記載されているメラミン−ホルムアルデヒド樹脂、ヒドロキシセルロース等の壁材を用いる方法、特公昭36−9163号公報、同51−9079号公報に記載されているモノマー重合によるin situ法、英国特許第930,422号明細書、米国特許第3,111,407号明細書に記載されているスプレードライング法、英国特許第952,807号明細書、同第967,074号明細書に記載されている電解分散冷却法が挙げられるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
マイクロカプセルに好適に用いられるマイクロカプセル壁は、三次元架橋を有し、溶剤によって膨潤する性質を有するものである。このような観点から、マイクロカプセルの壁材は、ポリウレア、ポリウレタン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアミド、またはこれらの混合物が好ましく、特に、ポリウレアおよびポリウレタンが好ましい。また、マイクロカプセル壁に熱反応性官能基を有する化合物を導入してもよい。
マイクロカプセルの平均粒径は、0.01〜20μmであるのが好ましく、0.05〜2.0μmであるのがより好ましく、0.10〜1.0μmであるのが特に好ましい。上記範囲内であると、良好な解像度と経時安定性が得られる。
熱反応性官能基を有するマイクロカプセルを用いた画像形成機構では、マイクロカプセル材料、そこに内包物された化合物、さらには、マイクロカプセルが分散された感熱層中に存在する他の任意成分等が、反応し、画像部領域即ち疎水性領域(親インク領域)を形成するものであればよく、例えば、上記したようなマイクロカプセル同士が熱により融着するタイプ、マイクロカプセル内包物のうち、塗布時にカプセル表面あるいはマイクロカプセル外に滲み出した化合物、あるいは、マイクロカプセル壁に外部から浸入した化合物が、熱により化学反応を起こすタイプ、あるいは、それらのマイクロカプセル材料や内包された化合物が添加された親水性樹脂、あるいは、添加された低分子化合物と反応するタイプ、2種類以上のマイクロカプセル壁材あるいはその内包物に、それぞれ異なる官能基で互いに熱反応するような官能基をもたせるものを用いることによって、マイクロカプセル同士を反応させるタイプ等が挙げられる。
従って、熱によってマイクロカプセル同志が、溶融合体することは画像形成上好ましいことであるが、必須ではない。
マイクロカプセルの感熱層への添加量は、固形分換算で、10〜60質量%であるのが好ましく、15〜40質量%であるのがより好ましい。上記範囲であると、良好な機上現像性と同時に、良好な感度および耐刷性が得られる。
マイクロカプセルを感熱層に添加する場合、内包物が溶解し、かつ、壁材が膨潤する溶剤をマイクロカプセル分散媒中に添加することができる。このような溶剤によって、内包された熱反応性官能基を有する化合物の、マイクロカプセル外への拡散が促進される。
このような溶剤は、マイクロカプセル分散媒、マイクロカプセル壁の材質、壁厚および内包物に依存するが、多くの市販されている溶剤から容易に選択することができる。例えば、架橋ポリウレア、ポリウレタン壁からなる水分散性マイクロカプセルの場合、アルコール類、エーテル類、アセタール類、エステル類、ケトン類、多価アルコール類、アミド類、アミン類、脂肪酸類等が好ましい。
具体的には、例えば、メタノール、エタノール、ターシャリーブタノール、n−プロパノール、テトラヒドロフラン、乳酸メチル、乳酸エチル、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、γ−ブチルラクトン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミドが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。また、これらの溶剤を2種以上併用してもよい。
マイクロカプセル分散液には溶解しないが、上記溶剤を混合すれば溶解する溶剤も用いることができる。添加量は、素材の組み合わせにより決まるものであるが、適性値より少ない場合は、画像形成が不十分となり、多い場合は分散液の安定性が劣化する。通常、塗布液の5〜95質量%であるのが好ましく、10〜90質量%であるのがより好ましく、15〜85質量%であるのが特に好ましい。
本発明に用いられる上記感熱層には、上記画像形成性を有する(i)熱反応性官能基を有する微粒子ポリマー、または、(ii)熱反応性官能基を有する化合物を内包するマイクロカプセルのほか、目的に応じて種々の添加剤を併用することができる。
(反応開始剤、反応促進剤)
本発明係る感熱層においては、必要に応じてこれらの反応を開始しまたは促進する化合物を添加してもよい。反応を開始しまたは促進する化合物としては、例えば、熱によりラジカルまたはカチオンを発生するような化合物が挙げられる。具体的には、例えば、ロフィンダイマー、トリハロメチル化合物、過酸化物、アゾ化合物、ジアゾニウム塩またはジフェニルヨードニウム塩等を含んだオニウム塩、アシルホスフィン、イミドスルホナートが挙げられる。
これらの化合物は、感熱層固形分の1〜20質量%の範囲で添加するのが好ましく、3〜10質量%の範囲であるのがより好ましい。上記範囲内であると、機上現像性を損なわず、良好な反応開始効果または反応促進効果が得られる。
(親水性樹脂)
本発明の感熱層には親水性樹脂を添加しても良い。親水性樹脂を添加することにより機上現像性が良好となるばかりか、感熱層自体の皮膜強度も向上する。
親水性樹脂としては、例えばヒドロキシ基、カルボキシ基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、アミノ基、アミノエチル基、アミノプロピル基、カルボキシメチル基等の親水基を有するものが好ましい。
親水性樹脂の具体的として、アラビアゴム、カゼイン、ゼラチン、澱粉誘導体、カルボキシメチルセルロースおよびそのナトリウム塩、セルロースアセテート、アルギン酸ナトリウム、酢酸ビニル−マレイン酸コポリマー類、スチレン−マレイン酸コポリマー類、ポリアクリル酸類およびそれらの塩、ポリメタクリル酸類およびそれらの塩、ヒドロキシエチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシエチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシプロピルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルメタクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ヒドロキシブチルアクリレートのホモポリマーおよびコポリマー、ポリエチレングリコール類、ヒドロキシプロピレンポリマー類、ポリビニルアルコール類、ならびに加水分解度が少なくとも60質量%、好ましくは少なくとも80質量%の加水分解ポリビニルアセテート、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール、ポリビニルピロリドン、アクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー、メタクリルアミドのホモポリマーおよびポリマー、N−メチロールアクリルアミドのホモポリマーおよびコポリマー等を挙げることができる。親水性樹脂の感熱層への添加量は、感光層固形分の5〜40質量%が好ましく、10〜30質量%がさらに好ましい。この範囲内で、良好な機上現像性と皮膜強度が得られる。
(光熱変換剤)
本発明の平版印刷版原版を、レーザー光の走査露光等により画像形成する場合には、平版印刷版原版に光エネルギーを熱エネルギーに変換するための光熱変換剤を含有させておくことが好ましい。
本発明の平版印刷版原版において、含有させてもよい光熱変換剤としては、紫外線、可視光線、赤外線、白色光線等の光を吸収して熱に変換し得る物質ならば全て使用でき、例えば、カーボンブラック、カーボングラファイト、顔料、フタロシアニン系顔料、金属粉、金属化合物粉等が挙げられる。特に、好ましいのは、波長760〜1200nmの赤外線を有効に吸収する染料、顔料、または金属粉、金属化合物粉である。
本発明において光熱変換剤として使用しうる顔料としては、市販の顔料及びカラーインデックス(C.I.)便覧、「最新顔料便覧」(日本顔料技術協会編、1977年刊)、「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)、「印刷インキ技術」CMC出版、1984年刊)に記載されている顔料が利用できる。
顔料の種類としては、黒色顔料、黄色顔料、オレンジ色顔料、褐色顔料、赤色顔料、紫色顔料、青色顔料、緑色顔料、蛍光顔料、金属粉顔料、その他、ポリマー結合色素が挙げられる。具体的には、不溶性アゾ顔料、アゾレーキ顔料、縮合アゾ顔料、キレートアゾ顔料、フタロシアニン系顔料、アントラキノン系顔料、ペリレン及びペリノン系顔料、チオインジゴ系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、染付けレーキ顔料、アジン顔料、ニトロソ顔料、ニトロ顔料、天然顔料、蛍光顔料、無機顔料、カーボンブラック等が使用できる。
顔料は表面処理を施さずに用いてもよく、表面処理を施して用いてもよい。表面処理の方法としては、例えば、親水性樹脂や親油性樹脂を表面コートする方法、界面活性剤を付着させる方法、反応性物質(例えば、シリカゾル、アルミナゾル、シランカップリング剤やエポキシ化合物、イソシアネート化合物)を顔料表面に結合させる方法が挙げられる。上記表面処理方法は、「金属石鹸の性質と応用」(幸書房)、「印刷インキ技術」(CMC出版、1984年刊)および「最新顔料応用技術」(CMC出版、1986年刊)に記載されている。これらの顔料中、赤外線を吸収するものが、赤外線を発光するレーザでの利用に適する点で好ましい。かかる赤外線を吸収する顔料としてはカーボンブラックが好ましい。
顔料の粒径は0. 01〜1μmの範囲にあるのが好ましく、0.01〜0.5μmの範囲にあるのがより好ましい。
染料としては、市販の染料および、文献(例えば、「染料便覧」(有機合成化学協会編集、昭和45年刊)、「化学工業」1986年5月号P.45〜51の「近赤外吸収色素」、「90年代機能性色素の開発と市場動向」第2章2.3項(1990)シーエムシー)または特許に記載されている公知の染料が利用できる。
具体的には、アゾ染料、金属錯塩アゾ染料、ピラゾロンアゾ染料、アントラキノン染料、フタロシアニン染料、カルボニウム染料、キノンイミン染料、ポリメチン染料、シアニン染料等の赤外線吸収染料が好ましい。
更に、例えば、特開昭58−125246号公報、同59−84356号公報、同60−78787号等に記載されているシアニン染料、特開昭58−173696号公報、同58−181690号公報、同58−194595号等に記載されているメチン染料、特開昭58−112793号公報、同58−224793号公報、同59−48187号公報、同59−73996号公報、同60−52940号公報、同60−63744号等に記載されているナフトキノン染料、特開昭58−112792号等に記載されているスクワリリウム染料、英国特許第434,875号明細書に記載されているシアニン染料、米国特許第4,756,993号明細書に記載されている染料、米国特許第4,973,572号明細書に記載されているシアニン染料、特開平10−268512号公報に記載されている染料、同11−235883号公報に記載されているフタロシアニン化合物が挙げられる。
また、染料として米国特許第5,156,938号明細書に記載されている近赤外吸収増感剤も好適に用いられ、また、米国特許第3,881,924号明細書に記載されている置換されたアリールベンゾ(チオ)ピリリウム塩、特開昭57−142645号に記載されているトリメチンチアピリリウム塩、特開昭58−181051号公報、同58−220143号公報、同59−41363号公報、同59−84248号公報、同59−84249号公報、同59−146063号公報、同59−146061号公報に記載されているピリリウム系化合物、特開昭59−216146号公報に記載されているシアニン染料、米国特許第4,283,475号明細書に記載されているペンタメチンチオピリリウム塩等や特公平5−13514号公報、同5−19702号公報に記載されているピリリウム化合物、エポリン社製のエポライトIII−178、エポライトIII−130、エポライトIII−125等も好適に用いられる。
以下にいくつかの具体例を示す。
Figure 2005186416
Figure 2005186416
光熱変換剤の感熱層への添加量は、顔料、又は染料の場合、感熱層全固形分の30質量%まで添加することができる。好ましくは1〜25質量%であり、特に好ましくは7〜20質量%である。
本発明に係る感熱層には、光熱変換剤として金属微粒子を用いることもできる。金属微粒子の多くは光熱変換性であって、かつ自己発熱性である。好ましい金属微粒子として、例えば、Si、Al、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Ag、Au、Pt、Pd、Rh、In、Sn、W、Te、Pb、Ge、Re、Sbの単体もしくは合金、または、それらの酸化物もしくは硫化物の微粒子が挙げられる。
これらの金属微粒子を構成する金属の中でも好ましい金属は、光照射時に熱による合体をしやすい、融点が約1000℃以下で赤外、可視または紫外線領域に吸収をもつ金属、例えば、Re、Sb、Te、Au、Ag、Cu、Ge、Pb、Snである。
また、特に好ましいのは、融点も比較的低く、赤外線に対する吸光度も比較的高い金属の微粒子、例えば、Ag、Au、Cu、Sb、Ge、Pbで、最も好ましい元素としては、Ag、Au、Cuが挙げられる。
また、例えば、Re、Sb、Te、Au、Ag、Cu、Ge、Pb、Sn等の低融点金属の微粒子と、Ti、Cr、Fe、Co、Ni、W、Ge等の自己発熱性金属の微粒子とを混合使用する等、2種以上の光熱変換物質で構成されていてもよい。また、Ag、Pt、Pd等の、微小片としたときに光吸収が特に大きい金属種の微小片と他の金属微小片とを組み合わせて用いることも好ましい。
本発明に用いうる金属微粒子の平均経は、好ましくは1〜500nm、より好ましくは1〜100nm、特に好ましくは1〜50nmである。その分散度は多分散でよいが、変動係数が30%以下の単分散の方が好ましい。
これらの粒子の粒径は、10μm以下であるのが好ましく、0.003〜5μmであるのがより好ましく、0.01〜3μmであるのが特に好ましい。上記範囲内であると、良好な感度と解像力が得られる。
本発明において、これらの金属微粒子を光熱変換剤として用いる場合、その添加量は、感熱層固形分の10〜50質量%であるのが好ましく、20〜45質量%であるのがより好ましく、30〜40質量%の範囲であるのが特に好ましい。上記範囲内であると、高い感度が得られる。
光熱変換剤は、必ずしも感熱層に含まれなくても、例えば、感熱記録層の隣接層である下塗層や、後述する水溶性オーバーコート層が含有してもよい。感熱層、下塗層およびオーバーコート層のうち少なくとも一つの層が光熱変換剤を含有することにより、赤外線吸収効率が高まり、感度を向上させることができる。
本発明の感熱層には、さらに必要に応じて上記以外に種々の化合物を添加してもよい。例えば、耐刷力を一層向上させるために多官能モノマーを感熱層マトリックス中に添加することができる。この多官能モノマーとしては、マイクロカプセル中に内包することができるモノマーとして例示したものを用いることができる。特に好ましいモノマーとしては、トリメチロールプロパントリアクリレートが挙げられる。
また、本発明の感熱層には、画像形成後、画像部と非画像部の区別をつきやすくするため、可視光域に大きな吸収を持つ染料を画像の着色剤として使用することができる。具体的には、オイルイエロー#101、オイルイエロー#103、オイルピンク#312、オイルグリーンBG、オイルブルーBOS、オイルブルー#603、オイルブラックBY、オイルブラックBS、オイルブラックT−505(以上オリエント化学工業(株)製)、ビクトリアピュアブルー、クリスタルバイオレット(CI42555)、メチルバイオレット(CI42535)、エチルバイオレット、ローダミンB(CI145170B)、マラカイトグリーン(CI42000)、メチレンブルー(CI52015)等、および特開昭62−293247号公報に記載されている染料を挙げることができる。また、フタロシアニン系顔料、アゾ系顔料、酸化チタン等の顔料も好適に用いることができる。添加量は、感熱層塗布液全固形分に対し、0.01〜10質量%の割合である。
また、本発明においては、感熱層塗布液の調製中または保存中においてエチレン性不飽和化合物の不要な熱重合を阻止するために、少量の熱重合防止剤を添加するのが好ましい。適当な熱重合防止剤としては、例えば、ハイドロキノン、p−メトキシフェノール、ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ピロガロール、t−ブチルカテコール、ベンゾキノン、4,4´−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2´−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、N−ニトロソ−N−フェニルヒドロキシルアミンアルミニウム塩が挙げられる。熱重合防止剤の添加量は、全組成物の質量に対して約0.01〜5質量%であるのが好ましい。
また必要に応じて、酸素による重合阻害を防止するためにベヘン酸やベヘン酸アミドのような高級脂肪酸やその誘導体等を添加して、塗布後の乾燥の過程で感熱層の表面に偏在させてもよい。高級脂肪酸やその誘導体の添加量は、感熱層固形分の約0.1〜約10質量%であるのが好ましい。
更に、上記した感熱層には、必要に応じ、塗膜の柔軟性等を付与するために可塑剤を加えることができる。可塑剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、クエン酸トリブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジヘキシル、フタル酸ジオクチル、リン酸トリクレジル、リン酸トリブチル、リン酸トリオクチル、オレイン酸テトラヒドロフルフリルが挙げられる。
(感熱層の形成)
本発明の感熱層(i)および(ii)は、必要な上記各成分を溶剤に溶解、もしくは分散し、塗布液を調製し、上記支持体上に塗布される。
ここで使用する溶剤としては、エチレンジクロライド、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、メタノール、エタノール、プロパノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、2−メトキシエチルアセテート、1−メトキシ−2−プロピルアセテート、ジメトキシエタン、乳酸メチル、乳酸エチル、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、テトラメチルウレア、N−メチルピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、γ−ブチロラクトン、トルエン、水等を挙げることができるが、これに限定されるものではない。これらの溶剤は、単独または混合して使用される。塗布液の固形分濃度は、好ましくは1〜50質量%である。
また塗布、乾燥後に得られる支持体上の感熱層塗布量(固形分)は、用途によって異なるが、一般的に0.5〜5.0g/mが好ましい。この範囲より塗布量が少なくなると、見かけの感度は大になるが、画像記録の機能を果たす感熱層の皮膜特性は低下する。
塗布する方法としては、種々の方法を用いることができる。例えば、バーコーター塗布、回転塗布、スプレー塗布、カーテン塗布、ディップ塗布、エアーナイフ塗布、ブレード塗布、ロール塗布等を挙げられる。
感熱層塗布液には、塗布性を向上させるための界面活性剤、例えば、特開昭62−170950号公報に記載されているようなフッ素系界面活性剤を添加することができる。添加量は、感熱層全固形分の0.01〜1質量%であるのが好ましく、0.05〜0.5質量%であるのがより好ましい。
<オーバーコート層>
本発明の平版印刷版原版においては、親油性物質による感熱層表面の汚染防止のため、上記画像記録層上に、水溶性のオーバーコート層を設けることができる。本発明に使用される水溶性オーバーコート層は印刷時容易に除去できるものが好ましく、水溶性の有機高分子化合物から選ばれた樹脂を含有する。
水溶性の有機高分子化合物としては、塗布乾燥によってできた被膜がフィルム形成能を有するもので、具体的には、例えば、ポリ酢酸ビニル(ただし、加水分解率65%以上のもの)、ポリアクリル酸およびそのアルカリ金属塩あるいはアミン塩、ポリアクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリメタクリル酸共重合体およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリアクリルアミドおよびその共重合体、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ポリビニルピロリドンおよびその共重合体、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルメチルエーテル/無水マレイン酸共重合体、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸およびそのアルカリ金属塩またはアミン塩、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチル−1−プロパンスルホン酸共重合体およびそのアルカリ金属塩あるいはアミン塩、アラビアガム、繊維素誘導体(例えば、カルボキシメチルセルローズ、カルボキシエチルセルローズ、メチルセルローズ等)およびその変性体、ホワイトデキストリン、プルラン、酵素分解エーテル化デキストリン等を挙げることができる。また、目的に応じて、これらの樹脂を二種以上混合して用いることもできる。
また、オーバーコート層には、上記した光熱変換剤のうち水溶性のものを添加してもよい。さらに、オーバーコート層には塗布の均一性を確保する目的で、水溶液塗布の場合には、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル等の非イオン系界面活性剤を添加することができる。
オーバーコート層の乾燥塗布量は、0.1〜2.0g/mであるのが好ましい。この範囲内で、機上現像性を損なわず、指紋付着汚れ等の親油性物質による感熱層表面の良好な汚染防止ができる。
[製版方法(平版印刷版の製造方法)]
本発明により得られる平版印刷版用支持体を用いた平版印刷版原版は、画像記録層に応じた種々の処理方法により、平版印刷版とされる。
露光に用いられる活性光線の光源としては、例えば、水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、ケミカルランプが挙げられる。レーザビームとしては、例えば、ヘリウム−ネオンレーザ(He−Neレーザ)、アルゴンレーザ、クリプトンレーザ、ヘリウム−カドミウムレーザ、KrFエキシマーレーザ、半導体レーザ、YAGレーザ、YAG−SHGレーザが挙げられる。
上記露光の後、画像記録層がサーマルポジタイプ、サーマルネガタイプ、コンベンショナルネガタイプ、コンベンショナルポジタイプおよびフォトポリマータイプのいずれかである場合は、露光した後、現像液を用いて現像して平版印刷版を得るのが好ましい。
現像液は、アルカリ現像液であるのが好ましく、有機溶剤を実質的に含有しないアルカリ性の水溶液であるのがより好ましい。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液も好ましい。アルカリ金属ケイ酸塩を実質的に含有しない現像液を用いて現像する方法としては、特開平11−109637号公報に詳細に記載されている方法を用いることができる。
また、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いることもできる。
実質的にアルカリ金属ケイ酸塩を含有しない現像液を用いて現像する平版印刷版原版の処理方法を用いると、アルカリ金属ケイ酸塩を含有する現像液を用いて現像する場合における問題、即ち、SiOに起因する固形物が析出しやすいこと、現像液の廃液を処理する際の中和処理においてSiOに起因するゲルが生成すること等の問題の発生を防止することができる。
本発明の平版印刷版原版は、本発明の平版印刷版用支持体の表面に画像記録層を設けてなるため、その裏面への、運搬中、取扱い中等のキズ付きを防止でき、多数枚の版を積み重ねて長期間保存しても画像記録層が剥がれず、また、カット・集積時にずれを生じることもない。さらには、多孔質層により、平版印刷版原版の裏面のアルミニウムが溶出することを抑制できる。
以下に実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限られるものではない。
1.基板の作製
(基板1)
厚さ0.24mmのアルミニウム板(JIS1050材(住友軽金属社製))を、液温70℃のカセイソーダ水溶液(濃度26%)中に10秒間浸せきした後水洗し、さらに、液温60℃の硫酸(濃度36%)中に60秒浸せきし水洗して、アルカリ脱脂処理して、アルミニウム基板1を作製した。
(基板2)
紙厚180μmの上質紙(王子製紙(株)製)に、多用途ボンド(コニシ(株)製)を接着層厚50μmとなるように塗布し、さらに厚さ10μmのアルミニウム箔(住友軽金属(株)製)を積層し、ラミネーターDX−700(TOLAMI製)を用いて、アルミニウムをラミネートした紙基板2を作製した。
(基板3)
厚さ220μmのポリエチレンテレフタレート(PET)に、3000DXF(セメダイン(株)製)を接着層厚10μmとなるように塗布し、さらに厚さ10μmのアルミニウム箔(住友軽金属(株)製)を積層し、ラミネーターDX−700(TOLAMI製)を用いて、アルミニウムをラミネートしたPET基板3を作製した。
(基板4)
厚さ240μmの鉄鋼板(神戸製鋼(株))に、真空度10−6Torr、基板温度250℃の条件で最表層に99.9%のアルミニウムを蒸着して、基板4を作製した。
2.平版印刷版用支持体の作製
(1)実施例1〜21、比較例1〜5に用いる表面処理された基板5を、上記で得られた基板1に、以下の(a)〜(j)の各種処理を連続的に行う表面処理を施して作製した。なお、各処理および水洗の後にはニップローラで液切りを行った。
<表面処理>
(a)機械的粗面化処理
図1に示したような装置を使って、研磨剤(パミス)と水との懸濁液(比重1.12)を研磨スラリー液としてアルミニウム板の表面に供給しながら、回転するローラ状ナイロンブラシにより機械的粗面化処理を行った。図1において、1はアルミニウム板、2および4はローラ状ブラシ、3は研磨スラリー液、5、6、7および8は支持ローラである。研磨剤の平均粒径は40μm、最大粒径は100μmであった。ナイロンブラシの材質は6・10ナイロン、毛長は50mm、毛の直径は0.3mmであった。ナイロンブラシはφ300mmのステンレス製の筒に穴をあけて密になるように植毛した。回転ブラシは3本使用した。ブラシ下部の2本の支持ローラ(φ200mm)の距離は300mmであった。ブラシローラはブラシを回転させる駆動モータの負荷が、ブラシローラをアルミニウム板に押さえつける前の負荷に対して7kWプラスになるまで押さえつけた。ブラシの回転方向はアルミニウム板の移動方向と同じであった。ブラシの回転数は200rpmであった。
(b)アルカリエッチング処理
上記で得られたアルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%、温度70℃の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を行い、アルミニウム板を6g/m溶解した。その後、スプレーによる水洗を行った。
(c)デスマット処理
温度30℃の硝酸濃度1質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
(d)電気化学的粗面化処理(硝酸電解)
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、硝酸10.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L、アンモニウムイオンを0.007質量%含む。)、液温50℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的な粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で30A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で220C/dmであった。補助陽極には電源から流れる電流の5%を分流させた。その後、スプレーによる水洗を行った。
(e)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.25g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(f)デスマット処理
温度30℃の硫酸濃度15質量%水溶液(アルミニウムイオンを4.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーで水洗した。デスマット処理に用いた硝酸水溶液は、硝酸水溶液中で交流を用いて電気化学的粗面化処理を行う工程の廃液を用いた。
(g)電気化学的粗面化処理(塩酸電解)
60Hzの交流電圧を用いて連続的に電気化学的な粗面化処理を行った。このときの電解液は、塩酸7.5g/L水溶液(アルミニウムイオンを5g/L含む。)、温度35℃であった。交流電源波形は図2に示した波形であり、電流値がゼロからピークに達するまでの時間TPが0.8msec、duty比1:1、台形の矩形波交流を用いて、カーボン電極を対極として電気化学的粗面化処理を行った。補助アノードにはフェライトを用いた。使用した電解槽は図3に示すものを使用した。
電流密度は電流のピーク値で25A/dm、電気量はアルミニウム板が陽極時の電気量の総和で50C/dmであった。
その後、スプレーによる水洗を行った。
(h)アルカリエッチング処理
アルミニウム板をカセイソーダ濃度26質量%、アルミニウムイオン濃度6.5質量%の水溶液を用いてスプレーによるエッチング処理を32℃で行い、アルミニウム板を0.10g/m溶解し、前段の交流を用いて電気化学的粗面化処理を行ったときに生成した水酸化アルミニウムを主体とするスマット成分を除去し、また、生成したピットのエッジ部分を溶解してエッジ部分を滑らかにした。その後、スプレーによる水洗を行った。
(i)デスマット処理
温度60℃の硫酸濃度25質量%水溶液(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)で、スプレーによるデスマット処理を行い、その後、スプレーによる水洗を行った。
(j)陽極酸化処理
図4に示す構造の陽極酸化装置を用いて陽極酸化処理を行った。第一および第二電解部に供給した電解液としては、硫酸を用いた。電解液は、いずれも、硫酸濃度170g/L(アルミニウムイオンを0.5質量%含む。)、温度38℃であった。その後、スプレーによる水洗を行った。最終的な酸化皮膜量は2.7g/mであった。
(2)上記で得られた基板5の裏面に以下の化成処理を施して基板6を作製した。
即ち、基板5を、0.5質量%LiOH水溶液(液温90〜98℃)に5分間浸漬させた後、水洗して乾燥させ、基板6を得た。
(3)多孔質層塗布液の調製
金属化合物粒子、リン酸、反応促進剤として塩化アルミニウムおよび分散剤としてクエン酸を用いて、以下の方法により多孔質層塗布液を調製した。
即ち、クエン酸0.1gを添加した適当量の水に第1表に示す金属化合物粒子または二酸化チタンを該表に示す使用量(g)に従って添加し、超音波分散装置(超音波ホモジナイザ、VC−130、SONICS(株)製)およびホモジナイザ(オートセルマスタ、CM−200、アズワン(株)製)を使用して、回転数10000rpmで5分程度処理して金属化合物粒子または二酸化チタンを均一に分散させた。
その後、リン酸(85%)を該表に示す使用量(g)および塩化アルミニウム8.0gをそれぞれ添加し、さらに水を投入して、塗布液全体の質量を100gに調整し、各塗布液C1〜C7を得た。
Figure 2005186416
第1表に示す金属化合物粒子は市販品を用いた。
具体的には、金属化合物粒子1は水酸化アルミニウム粒子(UFH−20、平均粒径2μm、アルコアケミカル(株)製)であり、金属化合物粒子2は酸化アルミニウム粒子(UE−3083、平均粒径0.3μm、昭和電工(株)製)であり、金属化合物粒子3は酸化アルミニウム粒子(平均粒径0.031μm、シーアイ化成(株)製)であり、金属化合物粒子4はシリカ粒子(イタリアPUMEX社製)20gをガラスビーズ(平均粒径3mm)400gと水100gと混合し、ペイントシェカー(東洋精機製作所(株)製)にて90分間分散させて平均粒径を2μmに調整したものであり、二酸化チタン(TiO)は関東化学(株)製の試薬(平均粒径0.2μm)を用いた。
なお、第1表中、「−」は対応する欄の成分を用いていないことを示す。
(4)平版印刷版用支持体の作製
上記で得られた基板に、第2表に示す組み合わせで塗布液を市販のワイヤーバーで、乾燥後の多孔質層の層厚が第2表に示す層厚になるように塗布し、以下に示す乾燥温度で乾燥して、多孔質層を形成させた。乾燥温度は、塗布液C1のとき140℃、塗布液C2〜C5のとき180℃、塗布液C6のとき210℃、塗布液C7のとき140℃であった。乾燥時間は、多孔質層の層厚によって以下の時間にした。層厚が10μm未満の場合は2分、層厚が10μm以上30μm未満の場合は3分、層厚が30μm〜90μmの場合は6分とした。
乾燥後の多孔質層の層厚の調整は、市販のワイヤーバー(ワイヤー径1.0mmφ)を用いて、wet塗布量75cc/m(ワイヤー径1.0mmφ)で塗布した。乾燥後の層厚が30μmを越えるものは、多孔質層を複数重畳させて多層構造の多孔質層を形成させた。このとき、各層の間に中間層(接着層)として、結着剤のみ(リン酸と塩化アルミニウムの水溶液)を市販のワイヤーバー(ワイヤー径0.1mmφ)を用いて、wet塗布量7.5cc/mで塗布した(乾燥時間は180℃1分とした)。
比較例3では、本発明の多孔質層の代わりに、下記組成の混合溶液を40分間攪拌して発熱反応終了後メタノールをさらに200g添加して塗布液Aを調整し、乾燥後の塗布量が、1g/mとなるように塗布した後、120℃で1分間乾燥して、バックコート層を形成させた。
(バックコート層塗布液A組成)
・テトラエチルオルソシリケート 50g
・水 86g
・メタノール 11g
・85wt%りん酸 0.1g
Figure 2005186416
形成した多孔質層に、第2表に示す組み合わせで、以下に示す封孔処理条件により封孔処理を行い、本発明の平版印刷版用支持体を得た。
封孔処理条件S1は、LiOHの0.5質量%水溶液(液温98℃)に3分間浸せきさせた後、120℃で1分間乾燥させた。
封孔処理条件S2は、LiOHの0.5質量%水溶液(液温98℃)に1分間浸せきさせた後、120℃で1分間乾燥させた。
封孔処理条件S3は、LiOHの0.5質量%水溶液(液温98℃)に5分間浸せきさせた後、120℃で1分間乾燥させた。
封孔処理条件S4は、NaOHの0.1質量%水溶液(液温98℃)に5分間浸せきさせた後、120℃で1分間乾燥させた。
封孔処理条件S5は、KOHの0.1質量%水溶液(液温98℃)で5分間浸せきさせた後、120℃で1分間乾燥させた。
封孔処理条件S6は、3号ケイ酸ソーダ(Na2O:SiO2=1:3)(ケイ酸ソーダ3号:日本化学工業(株)製)8質量%に、エマルジョン樹脂としてアルマテックスE269(三井化学(株)製)0.08質量%を添加し、さらに純水77.12質量%の割合で混合し、塗布液とした。この塗布液を乾燥後の膜厚が0.8μmとなるように塗布し、120℃で3分間乾燥させた。
封孔処理条件S7は、コロイダルシリカST−20(固形分量20%、日産化学(株)製)に結着助剤としてアルマテックスE269(三井化学(株)製)1質量%を添加して、純粋で8倍に希釈した。この塗布液を乾燥後の膜厚が0.2μmとなるように塗布し、120℃で2分間乾燥させた。
封孔処理条件S8は、メタノールシリカ(日産化学(株)製)に親水化剤としてポリアクリル酸(PAA)を1質量%を添加して、純粋で3倍に希釈した。この塗布液を乾燥後の膜厚が0.2μmとなるように塗布し、120℃で3分間乾燥させた。
封孔処理条件9は、下記のゾル−ゲル反応液を乾燥後の塗布量が120mg/mとなるようにバーコーターで塗布し、100℃で30秒間乾燥させた。
(ゾル−ゲル反応液の調製)
・テトラエチルシリケート 50質量部
・水 90質量部
・メタノール 10質量部
・リン酸 0.1質量部
上記成分を混合して攪拌すると約30分で発熱した。さらに60分間攪拌して反応させた後以下に示す液を加えることによってゾル−ゲル反応液を調製した。
・レゾルシノール−ホルムアルデヒド縮合樹脂 5質量部
・マレイン酸ジブチル 5 質量部
・メガファックF−176(大日本インキ化学工業(株)製) 0.5質量部
・スノーテックス0(20%水溶液、日産化学工業(株)製) 80質量部)
・メタノール 900質量部
3.多孔質層および封孔層の評価
<多孔質層の表面の空隙率>
該多孔質層の表面の空隙率の測定は、得られた平版印刷版用支持体の多孔質層側の表面を、高分解能走査型電子顕微鏡(S−900、日立製作所社製)を用いて、蒸着処理を施さないで加速電圧12kVにて、観察倍率を5000倍と20000倍に設定して撮影した。得られた画像データ(写真)の3cm×3cmの範囲内において、暗部を空隙部分として、この面積割合を空隙率とした。この作業を10箇所で行い、それぞれの倍率における結果が標準偏差ばらつき内になるまで計測した。結果を第2表に示す。
<封孔処理後の空隙率>
封孔処理後の空隙率も、上記と同様にして算出した。結果を第2表に示す。
<表面粗さRの測定>
得られた各平版印刷版用支持体の裏面について、触針式粗さ計(sufcom575、東京精密社製)で2次元粗さ測定を行い、ISO4287に規定されている平均粗さRを5回測定し、その平均値を平均粗さRとした。その結果を第3表に示す。2次元粗さ測定の条件を以下に示す。
(測定条件)
カットオフ値0.8mm、傾斜補正FLAT−ML、測定長3mm、縦倍率10000倍、走査速度0.3mm/sec、触針先端径2μm
<耐キズ性>
上記で得られた各平版印刷版用支持体の多孔質層について、以下の方法で耐キズ性を評価した。その結果を第3表に示す。
即ち、多孔質層を引っ掻き試験して評価した。
引っ掻き試験は、連続加重式引っ掻き強度試験器SB−53(新東科学(株)製)を用いて、サファイヤ針0.4mmφ、針の移動速度10cm/秒の条件下、加重を順に、10g、30g、50g、80g、100g、150g、200gに変化させて試験した。評価は、目視および光学顕微鏡(倍率100倍)にて観察し、多孔質層に生じたキズがアルミニウム基板(またはアルミニウム表面)に達し、アルミニウムが露出した加重値で行った。
該加重値が、100g以上である場合を「○」、80gである場合を「○△」、50g以下である場合を「△」、30gである場合を「△×」、10gである場合を「×」で示した。該評価が、「△」以上であると、平版印刷版原版にしたときの巻き取り時および積層中における画像記録層への該キズの転写を抑制でき、非画像部の汚れを確認できなかった。
4.平版印刷版原版の作製
上記で得られた各平版印刷版用支持体に、以下のようにして画像記録層を設けて平版印刷版原版を得た。なお、画像記録層を設ける前には、後述するように下塗層を設けた。
平版印刷版用支持体上に、下記組成の下塗液をバーコーター塗布し、80℃で15秒間乾燥し、下塗層の塗膜を形成させた。乾燥後の塗膜の被覆量は17mg/mであった。
<下塗液組成>
・下記高分子化合物 0.3g
・メタノール 100g
・水 1g
Figure 2005186416
下記組成の感光層下層用塗布液を調製し、下塗層を形成させた平版印刷版用支持体に、この感光層下層用塗布液を乾燥後の塗布量が0.85g/mになるようバーコーターで塗布し、160℃で44秒間乾燥させて、直ちに17〜20℃の冷風で平版印刷版用支持体の温度が35℃になるまで冷却して感光層下層を形成させた。ついで、下記組成の感光層最上層用塗布液を調製し、感光層下層を形成させた平版印刷版用支持体に、この感光層最上層用塗布液を乾燥後の塗布量が0.22g/mになるようにバーコーターで塗布し、148℃で25秒間乾燥させて、更に20〜26℃の風で徐冷して感光層最上層を形成させた。
<感光層下層用塗布液組成>
・N−(4−アミノスルホニルフェニル)メタクリルアミド/アクリロニトリル/メタクリル酸メチル(モル比36/34/30、重量平均分子量50,000、酸価2.65) 2.1g
・下記式で表されるシアニン染料A 0.13g
・4,4′−ビスヒドロキシフェニルスルホン 0.13g
・テトラヒドロフタル酸無水物 0.19g
・p−トルエンスルホン酸 0.008g
・3−メトキシ−4−ジアゾジフェニルアミンヘキサフルオロホスフェート 0.032g
・エチルバイオレットの対イオンを6−ヒドロキシ−2−ナフタレンスルホンに変えたもの 0.078g
・下記式で表される塗布面状改良フッ素系界面活性剤B(重量平均分子量35,000) 0.007g
・メチルエチルケトン 25.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 13.0g
・γ−ブチロラクトン 13.0g
Figure 2005186416
<感光層最上層用塗布液組成>
・m,p−クレゾール−ノボラック樹脂(m/p比=6/4、重量平均分子量4,500、未反応クレゾール0.8質量%含有、ガラス転移点75℃) 0.35g
・下記式で表されるアクリル系樹脂C 0.042g
・上記式で表されるシアニン染料A 0.019g
・下記式で表されるアンモニウム化合物D 0.004g
・上記式で表される塗布面状改良フッ素系界面活性剤B 0.0045g
・下記式で表されるフッ素系界面活性剤E 0.0033g
・メチルエチルケトン 10.0g
・1−メトキシ−2−プロパノール 20.0g
Figure 2005186416
5.平版印刷版原版の評価
<静止摩擦係数の測定>
得られた平版印刷版原版を2枚用意し、平版印刷版原版の裏面と平版印刷版原版の画像記録層との静止摩擦係数を東洋精機(株)製摩擦係数測定機により測定した。即ち、平版印刷版原版の裏面が上面になるようにして平面に固定した。この上に、他方の平版印刷版原版を65mm×110mmの長方形に切断して裏面と画像記録層が接触するように重ねた。なお、一方の平版印刷版原版のサイズを他方の平版印刷版原版のサイズ(65mm×110mmの長方形)よりも大きくした。他方の平版印刷版原版の上に、他方の平版印刷版用支持体の上に、1000gの荷重を載せ、一方の平版印刷版原版を載せた平面を一定の速度(2.7度/秒)で傾斜させていき、他方の平版印刷版用持体が移動(滑り)を開始する傾斜角度(θ)を測定した。摩擦係数をtan(θ)として計算した。結果を第3表に示す。
上記静止摩擦係数が0.30以上であると、多数枚の平版印刷版原版を積み重ねて長期間保存しても画像記録層の剥離を防止でき、また、カット・集積時のずれを抑制できた。
<ずれ試験>
得られた平版印刷版原版を、50mm×50mmに切断して20枚の試験版を得た。これらの試験版20枚を、合紙を挟まずに試験版のみを(多孔質層と画像記録層とが接するように)積層し、さらにその上部に1000gの重りを載せた。この検体をゆっくりと傾けていき、積層した試験版がずれ始めた角度を測定した。評価は、該試験版がずれ始めた角度で行い、該角度が46度以上であったものを「○」、36〜45度であったものを「○△」、26〜35度であったものを「△」、16〜25度であったものを「△×」、15度以下であったものを「×」とした。その結果を第3表に示す。
<アルミニウム溶出試験>
ケイ酸カリウム水溶液(SiO2/K2Oモル比1.2、SiO2濃度1.5質量%)1000mLにエチレンジアミン・エチレンオキシド30モル付加物0.4gを添加した現像液を30℃に保ち、400mm×250mmの大きさの平版印刷版原版を12秒間浸した後、現像液中のアルミニウムを蛍光X線分析で定量し、溶出量を平版印刷版原版1m2当たりの量に換算した。その結果を第3表に示す。溶出量は、15mg/m以下であるのが好ましく、10mg/m以下であるのがより好ましい。
<剥離試験>
角度90度の金属の角(半径1mm)に、平版印刷版原版の裏面が外側(金属と接しない)となるように平版印刷版原版を押し当てて折り曲げた。折り曲げ部分に、日東電工製PETテープを貼って、剥がし、裏面に形成した多孔質層、封孔層等が剥がれるか否かを目視にて判断した。評価は、多孔質層等の剥離がない場合を「○」、一部分が僅かに剥離している場合を「○△」、わずかに剥離している場合を「△」、ほとんど剥離した場合を「×」とした。その結果を第3表に示す。
Figure 2005186416
第3表から明らかなように、本発明の平版印刷版用支持体は、画像記録層を設けて平版印刷版原版にしても、平版印刷版原版の裏面に運搬中、取扱い中等のキズ付きを防止でき、多数枚の版を積み重ねて長期間保存しても画像記録層が剥がれず、また、カット・集積時にずれを生じることもなかった。さらには、平版印刷版原版の裏面のアルミニウムが溶出することを抑制できた。
また、上記多孔質層の上に封孔層が設けられた本発明の平版印刷版用支持体は、画像記録層を設けて平版印刷版原版にしても、上記特性を備える上、平版印刷版原版の裏面のアルミニウムの溶出をより効果的に抑制できた。
上記で得られた各平版印刷版原版を下記の方法で画像露光および現像処理を行い、平版印刷版を得た。
平版印刷版原版を出力500mW、波長830nm、ビーム径17μm(1/e)の半導体レーザを装備したCREO社製TrenndSetter3244を用いて主走査速度5m/秒、版面エネルギー量140mJ/cmで像様露光した。
その後、非還元糖と塩基とを組み合わせたD−ソルビット/酸化カリウムKOよりなるカリウム塩5.0質量%およびオルフィンAK−02(日信化学工業社製)0.015質量%を含有する水溶液1LにC1225N(CHCHCOONa)を添加したアルカリ現像液を用いて現像処理を行った。現像処理は、上記アルカリ現像液を満たした自動現像機PS900NP(富士写真フイルム(株)製)を用いて、現像温度25℃、12秒の条件で行った。現像処理が終了した後、水洗工程を経て、ガム(GU−7(1:1))等で処理して、製版が完了した平版印刷版を得た。
得られた平版印刷版を、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mに取り付け、大日本インキ化学工業社製のGEOS−G(N)墨のインキを用いて印刷した。
得られた平版印刷版原版または平版印刷版の感度、耐汚れ性および耐刷性を評価したところ、裏面に本発明の多孔質層を設けない場合と同様に良好な印刷物を得ることができた。
上記実施例1〜24で得られた平版印刷版用支持体に、以下に示す微粒子ポリマー型の画像記録層を設けて、平版印刷版原版を得た。すなわち、上記で得られた各平版印刷版用支持体に、下記組成の微粒子ポリマー型の画像記録層の感熱層塗布液を塗布し、オーブンにて60℃で150秒間乾燥して、それぞれ平版印刷版原版を得た。微粒子ポリマー型の画像記録層の感熱層の乾燥後の塗布量は0.5g/mであった。
<微粒子ポリマー型の画像記録層の感熱層塗布液の組成>
・以下に示す合成方法により合成した微粒子ポリマーを含有する液(ポリマー固形分換算で) 5g
・ポリヒドロキシエチルアクリレート(重量平均分子量2.5万) 0.5g
・上記化学式IR−11で表される光熱変換剤 0.3g
・水 100g
微粒子ポリマーの合成
アリルメタクリレート7.5g、ブチルメタクリレート7.5g、ポリオキシエチレンノニルフェノール水溶液(濃度9.84×10−3mol/L)200mLを加え、250rpmで攪拌しながら、系内を窒素ガスで置換した。この液を25℃にした後、セリウム(IV)アンモニウム塩水溶液(濃度0.984×10−3mol/L)10mLを添加した。この際、硝酸アンモニウム水溶液(濃度58.8×10−3mol/L)を加え、pHを1.3〜1.4に調整した。その後、8時間攪拌して、微粒子ポリマーを含有する液を得た。得られた液の固形分濃度は9.5%であり、微粒子ポリマーの平均粒径は0.2μmであった。
得られた各平版印刷版原版について、上記実施例と同様にして、静止摩擦係数の測定、すれ試験、アルミニウム溶出試験および剥離試験を行ったところ、上記実施例と同様の結果が得られた。
上記で得られた各平版印刷版原版を下記の方法で画像露光を行い平版印刷版を得た。
すなわち、平版印刷版原版を、水冷式40W赤外線半導体レーザーを搭載したクレオ社製トレンドセッター3244VFSを用いて、解像度2400dpiの条件で出力して露光した。得られた平版印刷版を、現像処理せずに印刷機のシリンダーに取り付け、湿し水を供給した後、インキを供給し、更に紙を供給して印刷を行った。印刷機としては、ハイデルベルグ社製印刷機SOR−Mを用いた。得られた平版印刷版原版または平版印刷版の感度、耐汚れ性および耐刷性を評価したところ、裏面に本発明の多孔質層を設けない場合と同様に良好な印刷物を得ることができた。
本発明の平版印刷版用支持体の作成における機械粗面化処理に用いられるブラシグレイニングの工程の概念を示す側面図である。 本発明の平版印刷版用支持体の作成における電気化学的粗面化処理に用いられる交番波形電流波形図の一例を示すグラフである。 本発明の平版印刷版用支持体の作成における交流を用いた電気化学的粗面化処理におけるラジアル型セルの一例を示す側面図である。 本発明の平版印刷版用支持体の作成における陽極酸化処理に用いられる陽極酸化処理装置の概略図である。
符号の説明
1 アルミニウム板
2、4 ローラ状ブラシ
3 研磨スラリー液
5、6、7、8 支持ローラ
11 アルミニウム板
12 ラジアルドラムローラ
13a、13b 主極
14 電解処理液
15 電解液供給口
16 スリット
17 電解液通路
18 補助陽極
19a、19b サイリスタ
20 交流電源
40 主電解槽
50 補助陽極槽
410 陽極酸化処理装置
412 給電槽
414 電解処理槽
416 アルミニウム板
418、426 電解液
420 給電電極
422、428 ローラ
424 ニップローラ
430 電解電極
432 槽壁
434 直流電源

Claims (9)

  1. アルミニウム表面を有する基板の画像記録層が設けられる表面の反対側の表面に、
    水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子およびシリカ粒子からなる群より選択される1種以上の粒子が、アルミニウム原子およびケイ素原子の少なくとも1種の原子とリン原子を含む化合物によって結着してなる多孔質層を有する平版印刷版用支持体。
  2. 上記多孔質層が、水酸化アルミニウム粒子、酸化アルミニウム粒子およびシリカ粒子からなる群より選択される1種以上の粒子とリン酸を含む塗布液を塗布した後乾燥させて形成される多孔質層である請求項1に記載の平版印刷版用支持体。
  3. 上記基板が、上記反対側の表面に化成処理が施されている基板である請求項1または2に記載の平版印刷版用支持体。
  4. 上記多孔質層の上に、さらに封孔層を設けた請求項1〜3のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
  5. 上記封孔層が、化成処理により形成される封孔層である請求項4に記載の平版印刷版用支持体。
  6. 上記封孔層が、シリケートおよび/またはシリカを含む溶液を塗布した後乾燥させて形成される封孔層である請求項4に記載の平版印刷版用支持体。
  7. 上記化成処理が、アルカリ金属化合物を含む水溶液中に浸せきさせる処理である請求項3または5に記載の平版印刷版用支持体。
  8. 上記基板が、アルミニウム基板、あるいは、アルミニウムで被覆した紙基板、樹脂基板または金属基板である請求項1〜7のいずれかに記載の平版印刷版用支持体。
  9. 請求項1〜8のいずれかに記載の平版印刷版用支持体上に、画像記録層を有する平版印刷版原版。
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