JP2003077706A - サーミスタの製造方法 - Google Patents

サーミスタの製造方法

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JP2003077706A JP2002243573A JP2002243573A JP2003077706A JP 2003077706 A JP2003077706 A JP 2003077706A JP 2002243573 A JP2002243573 A JP 2002243573A JP 2002243573 A JP2002243573 A JP 2002243573A JP 2003077706 A JP2003077706 A JP 2003077706A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 ガラス層や焼付け電極層の保形性が良好で、
ガラス層の表面が平滑で見栄えが良く、はんだ耐熱性及
びはんだ付着性に優れ、焼付け電極層のめっき処理によ
る抵抗値の変化がなく、しかも抗折強度が高いサーミス
タを製造する。 【解決手段】 先ず上面に内部電極23を有するセラミ
ックグリーンシートを複数枚積み重ねた後に焼成して焼
結シート11を作る。次いで焼結シートの両面にガラス
ペーストを印刷して焼成することによりガラス層14を
形成する。次に上記焼結シートを所定の方向に切断して
短冊状サーミスタ素体13を作り、このサーミスタ素体
の両側の切断面に上記と同一のガラスペーストを印刷し
て焼成することによりガラス層を形成する。更にサーミ
スタ素体を所定の方向に切断してチップ15を作った後
に、チップの切断面を包むようにチップの両端部に端子
電極12を形成する。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種の電子機器の温度
補償用サーミスタや表面温度測定用センサに適するサー
ミスタに関する。更に詳しくはプリント回路基板等に表
面実装されるチップ型サーミスタに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のチップ型サーミスタは、
サーミスタ素体の両端部に銀−パラジウムを主成分とす
る電極が焼付けられている。電極成分に銀の他にパラジ
ウムを含有する理由は、基板にチップ型サーミスタをは
んだ付けする際に、銀がはんだ中に溶出して消失するこ
とを防止し、電極のはんだ耐熱性を得るためである。し
かし、パラジウムの含有量を増加すると電極のはんだ付
着性が低下して基板に対するサーミスタの固着力が弱く
なるため、パラジウムの含有量には一定の限界があっ
た。このため電極のはんだ付けが高温で長時間行われる
場合には、従来のチップ型サーミスタはなおはんだ耐熱
性が不十分であった。はんだ耐熱性とはんだ付着性を向
上させるために、チップ型コンデンサと同様に、焼付け
電極である下地電極の表面にめっき層を設けることが考
えられるが、サーミスタ素体はコンデンサ素体と異なり
導電性を有するため、このサーミスタ素体を露出したま
まめっき処理した場合、素体表面にめっきが付着してサ
ーミスタの抵抗値が所期の値と異なり、しかもサーミス
タ素体がめっき液で浸食されてサーミスタの信頼性が低
下する等の不具合を生じる。
【0003】この点を改善するため、本出願人は焼付け
電極層が接触する部分以外のサーミスタ素体の表面を軟
化点がこの電極層の焼付け温度とほぼ等しいガラス層で
被覆し、かつ焼付け電極層の表面にめっき層を形成した
チップ型サーミスタを特許出願した(特開平3−250
603)。
【0004】しかし、上記サーミスタは、はんだ付着性
及びはんだ耐熱性に優れ、かつ抵抗値のばらつきを減ら
すことができる反面、そのガラス層はその軟化点が電極
層の焼付け温度とほぼ等しいため、次の問題点があっ
た。第一にガラス層形成後に電極層を焼付けるときに、
図10(a)に示すようにサーミスタ素体1のエッジ部
のガラス層2が軟化してエッジ部より下方に移行し易
く、その程度が甚だしいとエッジ部のガラス層2が消失
して、サーミスタ素体1が露出することがあり、ガラス
層2の保形性が悪い。第二にサーミスタ素体を焼成台、
焼成さや等の焼成治具の上に載せて、或いは素体同士を
接触させて電極層を焼付けたときに、図10の斜視図に
示すように軟化したガラス層2が焼成治具や他のサーミ
スタ素体に融着し、その接触跡又は融着跡3がガラス層
2に生じる。第三に電極層を焼付けたときに、図10
(b)に示すように焼付け電極層4に含まれるガラスフ
リット成分がその下層のガラス層2と反応してガラス層
2に溶け込み、その程度が甚だしいとエッジ部のガラス
層2と焼付け電極層4がともに消失して、サーミスタ素
体1が露出してしまう。
【0005】このため、本出願人は上記ガラス層をガラ
スと、アルミナ、ジルコニア、マグネシア等の無機結晶
物とを含む無機複合材料で構成したサーミスタを特許出
願した(特開平3−250604)。このサーミスタで
はガラス成分と無機結晶物をそれぞれ粉末の状態で混合
し、この混合粉末に有機バインダと溶剤を加えてペース
トにした後、このペーストをサーミスタ素体の表面に印
刷・焼成してガラス層を形成している。このサーミスタ
のガラス層は、無機結晶物粉末の存在により前記特開平
3−250603号公報で示されるサーミスタのガラス
層より軟化点が高まり、上記問題点は解決される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平3−2
50604号公報に開示したサーミスタでは、このガラ
ス層を形成するためのペースト中でガラス粉末と無機結
晶物粉末が均一に混合しにくいため、このペーストが印
刷性に劣り印刷後のサーミスタ素体の表面が平滑になら
ない不具合があった。また無機複合材料の焼成時に無機
結晶物が存在することにより無機複合材料中に気泡が残
存し易い。この残存した気泡は開気孔(open pore)に
なり易く、後工程のめっき処理時にめっき液が開気孔内
に浸入してサーミスタ素体をめっき液で浸食し、サーミ
スタの信頼性を低下させる欠点があった。更に電極層の
焼付け後にガラス層の表面が荒れ、サーミスタの外観を
損う問題点があった。
【0007】本発明の目的は、サーミスタ素体のエッジ
部のガラス層や、エッジ部の焼付け電極層が消失せず、
ガラス層や焼付け電極層の保形性が良好なサーミスタを
提供することにある。本発明の別の目的は、焼成後のガ
ラス層に焼成治具等との融着跡又は接触跡が残らず、ガ
ラス層の表面が平滑で見栄えの良いサーミスタを提供す
ることにある。本発明の別の目的は、はんだ耐熱性及び
はんだ付着性に優れ、焼付け電極層のめっき処理による
抵抗値の変化がなく、信頼性の高いサーミスタを提供す
ることにある。本発明の更に別の目的は、熱的ストレス
に起因した引張応力に対する強度が高いサーミスタを提
供することにある。
【0008】
【問題点を解決するための手段】図1及び図2に示すよ
うに、本発明のサーミスタ10は、サーミスタ素体11
と、このサーミスタ素体11の両端面を除く素体表面を
被覆する絶縁性ガラス層14と、このサーミスタ素体1
1の両端面を含む両端部に設けられた一対の端子電極1
2,12とを備え、これらの端子電極12,12がサー
ミスタ素体11の両端部に形成された焼付け電極層16
とこの焼付け電極層16の表面に形成されたNiめっき
層18及びSn又はSn/Pbめっき層19をそれぞれ
有するサーミスタの改良である。その特徴ある構成は、
ガラス層14の一部又は全部が結晶化ガラスからなり、
この結晶化ガラスを結晶化するために熱処理する前のガ
ラスのガラス転移点が400〜1000℃の範囲にあっ
て、その結晶化温度が前記ガラス転移点より高い温度で
あることにある。
【0009】本発明のサーミスタは、図1及び図2に示
されるもの以外に、図4又は図5に示すようにサーミス
タ素体11の両端面以外の素体表面にこれらの端子電極
12,12に電気的に接続する抵抗値調整用内部電極2
1を有し、ガラス層14が内部電極21を含む両端面以
外の素体表面を被覆するように構成され、このガラス層
14の一部又は全部が結晶化ガラスからなるサーミスタ
20を含む。
【0010】また本発明のサーミスタは、図7又は図8
に示すようにサーミスタ素体11の両端面以外の素体表
面にこれらの端子電極12,12に電気的に接続しない
抵抗値調整用内部電極22を有し、ガラス層14が内部
電極22を含む両端面以外の素体表面を被覆するように
構成され、このガラス層14の一部又は全部が結晶化ガ
ラスからなるサーミスタ30を含む。
【0011】また本発明のサーミスタは、図9に示すよ
うにサーミスタ素体11の素体内部に一対の端子電極1
2,12に電気的に接続する抵抗値調整用内部電極23
を有し、ガラス層14が両端面以外の素体表面を被覆す
るように構成され、このガラス層14の一部又は全部が
結晶化ガラスからなるサーミスタ40を含む。なお、図
示しないが、この内部電極23が一対の端子電極12,
12に電気的に接続しないサーミスタも含む。
【0012】図1及び図2に示したサーミスタ10は、
次の方法により製造される。図3に示すように、先ずサ
ーミスタ素体用のセラミック焼結シート11(同図
(a))を用意する。この焼結シート11はMn,F
e,Co,Ni,Cu,Al等の金属の酸化物粉末を1
種又は2種以上混合してこの混合物を仮焼し粉砕し、有
機結合材を加え混合して直方体に成形した後、焼成して
セラミック焼結ブロック(図示せず)を作製し、続いて
このブロックをバンドソーを用いてウエハ状に切断して
作られる。なお、金属酸化物の混合物を仮焼し粉砕した
後、有機結合材と溶剤を加え混練してスラリーを調製
し、このスラリーをドクターブレード法等により成膜乾
燥してグリーンシートを成形し、これを焼成して焼結シ
ート11としてもよい。
【0013】この焼結シート11の両面にガラスペース
トを印刷して焼成することにより絶縁性の結晶化ガラス
からなるガラス層14を形成する(同図(b))。次い
で両面がガラス層14で被覆された焼結シート11をダ
イヤモンドブレード付き切断機のようなダイシングソー
を用いて短冊状に切断した後(同図(c))、この短冊
状サーミスタ素体13の両側の切断面に前記と同じガラ
スペーストを印刷焼成して結晶化ガラスからなるガラス
層14を形成する(同図(d))。次に前記切断面と垂
直な方向にこの短冊状サーミスタ素体13を細かく切断
してチップ15を作る(同図(e))。このチップ15
の切断面を包むようにチップの両端部に貴金属粉末と無
機結合材を含む導電性ペーストを塗布し、焼成して電極
層を形成する。更にこの焼付け電極層を下地電極層とし
てこの表面にめっき層を形成して焼付け電極層とめっき
層からなる端子電極12を有するサーミスタ10を得る
(同図(f))。
【0014】図4に示したサーミスタ20は、次の方法
により製造される。図6に示すように、先ず前記と同様
にして作られたセラミック焼結シート11の両面に貴金
属粉末と無機結合材を含む導電性ペーストを帯状に間隔
をあけて印刷し乾燥して多数列の抵抗値調整用内部電極
21を形成する(同図(a))。次いでこのシート11
の両面にガラスペーストを印刷して焼成することにより
絶縁性の結晶化ガラスからなるガラス層14を形成する
(同図(b))。次に両面がガラス層14で被覆された
焼結シート11を電極21の列方向と直交する方向に短
冊状に切断した後(同図(c))、この短冊状サーミス
タ素体13の両側の切断面に前記と同じガラスペースト
を印刷焼成して結晶化ガラスからなるガラス層14を形
成する(同図(d))。次に前記切断面と垂直な方向に
かつ電極21の幅方向の中心線にそってこの短冊状サー
ミスタ素体13を細かく切断してチップ15を作る(同
図(e))。このチップ15の切断面を包むようにチッ
プの両端部に導電性ペーストを塗布し、焼成して電極層
を形成する。更にこの焼付け電極層を下地電極層として
この表面にめっき層を形成して焼付け電極層とめっき層
からなる端子電極12を有するサーミスタ20を得る
(同図(f))。
【0015】図5に示したサーミスタ20は、図6
(a)において抵抗値調整用内部電極21を上下両面で
1列ずつ交互に減らして形成する以外は、図6と同様に
製造される。図7又は図8に示したサーミスタ30は、
図6(d)において短冊状サーミスタ素体13の電極2
1と電極21の間をその切断面と垂直な方向に切断して
チップを作る以外は、図6と同様に形成される。図9に
示したサーミスタ40は、次の方法により製造される。
先ずサーミスタ素体用のセラミックグリーンシートを極
く薄く成形し、このシート上面に導電性ペーストを印刷
し乾燥して内部電極23を形成した後、複数のグリーン
シートを積み重ねてシート状の積層体にし、この積層体
を焼成して焼結シートを作る。以後、図6(b)〜
(f)に示す方法と同様にしてサーミスタ40を得る。
【0016】上述したガラス層14について詳しく説明
する。このガラス層はその一部又は全部が結晶化ガラス
からなる。このガラス層は後述するガラスペーストを印
刷又は塗布し乾燥した後、焼成することにより10〜3
0μm程度の厚さに形成される。ガラス層が部分的に結
晶化ガラスである場合には、結晶化率は10%以上であ
ることが本発明の目的を達成するために必要である。こ
こで、結晶化ガラスとは、均一な非晶質のガラスをその
軟化点付近で制御されたスケジュールに従って焼成し、
微細な結晶の集りに変える方法で作られたガラスセラミ
ックスである。結晶化ガラスにするためには、ガラスペ
ーストに含まれる非晶質のガラス粉末(原料ガラス粉
末)を結晶化可能となるように選択しかつ配合するこ
と、及びそのガラスペーストに含まれるガラスが結晶化
するように乾燥したペーストを所定の温度条件で焼成す
ることが必要である。
【0017】ガラスペースト焼成後のガラス層の緻密度
合いが良好になるように、結晶化ガラスを結晶化させる
ために熱処理する前のガラス(以下、前駆体ガラスとい
う)はそのガラス転移点が400〜1000℃の範囲に
あって、その結晶化温度がガラス転移点より高いことが
必要である。このガラス転移点の範囲は、電極層の焼成
温度を考慮して決められる。この電極層にAgを用いる
ときにはその焼成温度は600〜850℃であり、その
温度よりガラス転移点が大幅に低い場合、例えば結晶化
ガラスの前駆体ガラスのガラス転移点が400℃未満の
場合には結晶化温度が600℃を下回ることがあり、電
極層焼成時に結晶化ガラスが変質する恐れがある。また
前駆体ガラスのガラス転移点が1000℃を越えるとき
には、結晶化温度が1000℃より高くなりサーミスタ
素体が変質する恐れがある。
【0018】結晶化ガラスはその熱膨張係数がサーミス
タ素体の熱膨張係数の40%以上100%以下であるこ
とが好ましく、特に50%以上90%以下であることが
好ましい。上記40〜100%のときには、サーミスタ
の抗折強度がガラス層を設けないものと比べて増加する
ことは勿論、ガラス層が未結晶化ガラスからなるもので
あってその熱膨張係数が上記範囲にあるものと比べても
増加する。特に50〜90%のときには、抗折強度がガ
ラス層を設けないもの及びガラス層が未結晶化ガラスか
らなるものと比較してそれぞれ20〜70%増加する。
これに対して40〜100%の範囲外では、ガラス層を
設けないもの及びガラス層が未結晶化ガラスからなるも
のと比べて抗折強度が低下する。抗折強度とは、間隔を
あけて配置された2つの台にサーミスタの両端を置き、
サーミスタの中央部に荷重を加えたときの破壊強度をい
う。これは、サーミスタをプリント回路基板に表面実装
したときの実装機等による応力(機械的ストレス)、或
いははんだ等による熱や実装後の熱サイクルによって生
じる応力歪み(熱的ストレス)にどれだけ耐えることが
できるかの目安となる。
【0019】本発明のサーミスタの抗折強度が増加する
のは、サーミスタ素体表面のガラス層に圧縮応力が残留
するためと考えられる。即ち、ガラスの焼成時に熱膨張
していたサーミスタ素体とガラス層が冷えると、熱膨張
係数の大きなサーミスタ素体の方が縮み方が大きく、ガ
ラス層が圧縮された状態となる。この状態のサーミスタ
に折曲げ力を加えると、折曲げの内側には圧縮応力が生
じ、外側には引張応力が生じる。サーミスタ素体とガラ
ス層は、ともに圧縮応力に強く引張応力に弱い特徴があ
る。このため、予めガラス層により大きな圧縮応力を与
えておくと、ガラス層を設けないもの及びガラス層が未
結晶化ガラスからなるものに比べて、折曲げ力を加えた
ときにその曲げの外側の引張応力に対してクラックが生
じにくくなる。
【0020】
【作用】図2に示すように、サーミスタ素体11の両端
面を除く素体表面を絶縁性ガラス層14で被覆し、この
サーミスタ素体11の両端面を含む両端部に焼付け電極
層16を設けた後、めっき層18,19を設けることに
より、電極層16のみをめっき処理することができる。
このめっき処理時にサーミスタ素体11へのめっき液の
浸食及び素体11へのめっきの付着が防止されるため、
サーミスタの抵抗値が所期の値に対して変動しない。N
iめっき層18によりはんだ耐熱性が向上し、サーミス
タを基板にはんだ付けするときにはんだによる電極層1
6の電極食われが防止する。またSn又はSn/Pbめ
っき層19により端子電極12のはんだ付着性が向上す
る。これらのめっき層18,19は貴金属の焼付け電極
層16の表面を被覆するため、貴金属のイオン移動が発
生しにくい。
【0021】また、ガラス層14がガラスペーストの焼
成により結晶化ガラスになるため、電極層16の形成中
にガラス自身の粘度低下が少なく、サーミスタ素体のエ
ッジ部のガラス層や、エッジ部の焼付け電極層16が消
失せず、電極層形成後のガラス層14に焼成治具等との
融着跡又は接触跡が残らない。この結晶化ガラスとなる
ガラスペーストは従来のように無機結晶物を含まないた
め、印刷性が良好で、しかもガラス層の形成時にガラス
転移点を経て結晶化温度に達するため、焼成後のガラス
自身の緻密度合いが良好であり、従来のように気泡が残
存せず、表面が平滑なサーミスタが得られる。更に、結
晶化ガラスの熱膨張係数をサーミスタ素体の熱膨張係数
より適度に小さくすれば、作製されたサーミスタのガラ
ス層により大きな圧縮応力が与えられ、ガラス層がない
サーミスタ或いは未結晶化ガラスのガラス層を有するサ
ーミスタに比べて、折曲げ力を加えたときにその曲げの
外側の引張応力に対してクラックが生じにくくなる。
【0022】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、ガ
ラス層を結晶化ガラスにより構成することにより、焼付
け電極層形成時にガラス層が軟化して変形したり焼成治
具等に融着したりせず、また電極層がガラス層に溶け込
まないため、ガラス層や焼付け電極層の保形性が良好に
なり、しかもガラス層表面が平滑でサーミスタの見栄え
が良くなる。電極層を形成した後、めっき処理するとき
に、ガラス層によりサーミスタ素体が保護され、抵抗値
の変化がなく、平滑なガラス層表面にはめっき液の浸食
もなく、信頼性の高いサーミスタが得られる。更に熱膨
張係数を適切に選択すれば、ガラス層が未結晶化ガラス
のサーミスタより抗折強度を増加させることができる。
【0023】
【実施例】次に本発明の具体的態様を示すために、本発
明を実施例を比較例とともに説明する。以下に述べる実
施例は本発明の技術的範囲を限定するものではない。 <実施例1>次の方法により図1〜図3に示すチップ型
サーミスタを作製した。先ず市販の酸化マンガン、酸化
コバルト及び酸化銅を出発原料とし、これらの各金属元
素が40:55:5となるように上記金属酸化物をそれ
ぞれ秤量した。秤量物をボールミルで16時間均一に混
合した後に脱水乾燥した。次いでこの混合物を900℃
で2時間仮焼し、この仮焼物を再びボールミルで粉砕し
て脱水乾燥した。粉砕物に対してポリビニルブチラール
を6重量%、エタノールを30重量%、ブタノールを3
0重量%それぞれ加え、混合スラリーを作製した。この
スラリーを用いてドクタブレード法により厚さ0.80
mmのグリーンシートを作製し、このシートをたて70
mm、よこ70mmの大きさに打抜いた。次にこのシー
トを1200℃で4時間焼成し、たて50mm、横50
mm、厚さ0.65mmの焼結シート11を得た(図3
(a))。
【0024】ガラス転移点が約650℃で結晶化温度が
約750℃であるSiO2,ZnO及びBaOを主成分
とする原料ガラス粉末を含むガラスペーストを調製し
た。ペースト中でガラス成分は均一に混じり合った。こ
のガラスペーストを焼結シート11の両面に印刷し乾燥
した。ガラスペーストが乾燥した焼結シート11を室温
から約30℃/分の速度で850℃まで昇温し、そこで
約10分間保持し、約30℃/分の速度で室温まで降温
して、厚さ約20μmのガラス層14をシート表面に形
成した(図3(b))。
【0025】次に、これを厚さ0.10mmのダイヤモ
ンドブレードを用いて、幅1.20mmの短冊状に切断
し(図3(c))、この短冊状体13の両側の切断面に
前記と同様の方法でガラスペーストを印刷焼成して同じ
構成のガラス層14を形成し、短冊状体の4面をガラス
層14で被覆した(図3(d))。続いて前記切断によ
り得られた切断面と垂直な方向に短冊状体13を長さ
1.90mmのチップ状に細かく切断した(図3
(e))。この切断面及びその周囲のガラス層14にA
gペーストを塗布した。このチップ15を室温から約3
0℃/分の速度で850℃まで昇温し、そこで約10分
間保持し、約30℃/分の速度で室温まで降温して焼付
け電極層を形成した。この焼成により4面のガラス層1
4は結晶化率約60%の結晶化ガラスとなった。得られ
たチップ15の寸法は長さ約2.0mm、幅約1.25
mm、厚さ約0.75mmであった。
【0026】最後にこのチップ15に電解めっき法によ
りめっき処理を施し、焼付け電極層の表面に厚さ2〜3
μmのNiめっき層と厚さ4〜5μmのSnめっき層と
を積層し、二重構造の電極表面層を形成した。これによ
り電極層とめっき層からなる端子電極12が両端部に形
成されたチップ型サーミスタ10を得た(図3
(f))。サーミスタ素体である図3(a)に示す焼結
シート11の熱膨張係数及び上記ガラスペーストを上記
と同一条件で焼成して得られた結晶化ガラスの熱膨張係
数をそれぞれ測定したところ、前者は約130×10-7
/℃であって、後者は約100×10-7/℃で前者の約
77%であった。
【0027】<比較例1>SiO2,PbO及びK2Oを
主成分とする軟化点が約500℃の原料ガラス粉末80
重量%と無機結晶物としてZr2O粉末20重量%を含
むガラスペーストを調製し、このガラスペーストを用い
た以外は実施例1と同様にしてチップ型サーミスタを得
た。ペースト中でガラス成分と無機結晶物は均一に混じ
り合わなかった。また実施例1の焼成条件ではこのサー
ミスタのガラス層は結晶化せず、未結晶化ガラスであっ
た。この未結晶化ガラスの熱膨張係数は約50×10-7
/℃であって、サーミスタ素体である焼結シートの約3
8%であった。
【0028】実施例1及び比較例1で得られたチップ型
サーミスタのガラスペーストの印刷性、焼付け電極層を
形成した後のガラス層と電極層の保形性、ガラス層に融
着跡の有無、ガラス層の気泡残存状態及びガラス層の表
面状態、及び抗折強度をそれぞれ調べた。その結果を表
1に示す。表中の数字は、全て抗折強度以外、調べたサ
ーミスタの全数(20個)に対する不良個数を示す。
【0029】
【表1】
【0030】表1より明らかなように、結晶化ガラスの
ガラス層を有する実施例1のサーミスタは全ての項目に
ついて未結晶化ガラスのガラス層を有する比較例1のサ
ーミスタより優れていた。
【0031】<実施例2>実施例1で用いた焼結シート
と同じたて50mm、横50mm、厚さ0.65mmの
焼結シートから図4に示す抵抗値調整用内部電極21を
有するサーミスタ20を作製した。即ち、前記焼結シー
ト11の両面に、図6(a)に示すように幅0.6mm
で幅方向の間隔1.4mmのパターンを用いてAgペー
ストを印刷し乾燥した。このとき、焼結シート11の両
面の電極21,21が焼結シートを挟んで互いに対向す
るように印刷した。この焼結シート11を820℃で焼
成し、厚さ約10μmの多数列の電極21を形成した。
【0032】次いで実施例1と同一のガラスペーストを
電極21が形成された焼結シート11の両面に印刷し乾
燥した。このガラスペーストが乾燥した焼結シート11
を実施例1と同様の条件で焼成して厚さ約30μmのガ
ラス層14をシート表面に形成した(図6(b))。
【0033】次に厚さ0.10mmのダイヤモンドブレ
ードを用いて、両面がガラス層14で被覆された焼結シ
ート11を電極21の列方向と直交する方向に幅1.2
0mmの短冊状に切断した後(図6(c))、この短冊
状体13の両側の切断面に前記と同じガラスペーストを
同様に印刷焼成して同じ構成のガラス層14を形成し、
短冊状体の4面をガラス層14で被覆した(図6
(d))。続いて前記切断により得られた切断面と垂直
な方向にかつ電極21の幅方向の中心線にそってこの短
冊状体13を長さ1.90mmのチップ状に細かく切断
した(図6(e))。この切断面及びその周囲のガラス
層14にAgペーストを塗布した。このチップ15を実
施例1と同様に焼成して焼付け電極層を形成した。この
焼成により4面のガラス層14は結晶化率約60%の結
晶化ガラスとなった。得られたチップ15の寸法は長さ
約2.0mm、幅約1.3mm、厚さ約0.75mmで
あった。
【0034】最後にこのチップに電解めっき法によりめ
っき処理を施し、焼付け電極層の表面に厚さ2〜3μm
のNiめっき層と厚さ4〜5μmのSnめっき層とを積
層し、二重構造の電極表面層を形成した。これにより電
極層とめっき層からなる端子電極12が両端部に形成さ
れたチップ型サーミスタ20を得た(図6(f))。電
極21が形成される前の焼結シート11の熱膨張係数及
び上記ガラスペーストを上記と同一条件で焼成して得ら
れた結晶化ガラスの熱膨張係数をそれぞれ測定したとこ
ろ、前者は約130×10-7/℃であって、後者は約1
00×10-7/℃で前者の約77%であった。
【0035】<比較例2>比較例1と同じガラスペース
トを用いた以外は実施例2と同様にしてチップ型サーミ
スタを得た。ペースト中でガラス成分と無機結晶物は均
一に混じり合わなかった。また実施例2の焼成条件では
上記原料ガラスは結晶化せず、このサーミスタのガラス
層は未結晶化ガラスであった。この未結晶化ガラスの熱
膨張係数は約50×10-7/℃であって、サーミスタ素
体である焼結シートの約38%であった。
【0036】実施例2及び比較例2で得られたチップ型
サーミスタのガラスペーストの印刷性、焼付け電極層を
形成した後のガラス層と電極層の保形性、ガラス層に融
着跡の有無、ガラス層の気泡残存状態及びガラス層の表
面状態、及び抗折強度をそれぞれ調べた。その結果を表
2に示す。表中の数字の意味は実施例1と同じである。
【0037】
【表2】
【0038】表2より明らかなように、結晶化ガラスの
ガラス層を有する実施例2のサーミスタは全ての項目に
ついて未結晶化ガラスのガラス層を有する比較例2のサ
ーミスタより優れていた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサーミスタの外観斜視図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1のサーミスタの製造工程を説明する図。
【図4】本発明の抵抗値調整用内部電極を設けたサーミ
スタの断面図。
【図5】本発明の抵抗値調整用内部電極を設けた別のサ
ーミスタの断面図。
【図6】図4のサーミスタの製造工程を説明する図。
【図7】本発明の抵抗値調整用内部電極を設けた別のサ
ーミスタの断面図。
【図8】本発明の抵抗値調整用内部電極を設けた別のサ
ーミスタの断面図。
【図9】本発明の内部電極を設けた別のサーミスタの断
面図。
【図10】従来のサーミスタの外観斜視図。(a)は図
中のB−B線断面拡大図。(b)は図中のC−C線断面
拡大図。
【符号の説明】
10,20,30,40 サーミスタ 11 サーミスタ素体 12 端子電極 14 ガラス層 16 焼付け電極層 18 Niめっき層 19 Sn又はSn/Pbめっき層 21,22,23 抵抗値調整用内部電極
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成14年9月17日(2002.9.1
7)
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正内容】
【書類名】 明細書
【発明の名称】 サーミスタの製造方法
【特許請求の範囲】
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、各種の電子機器の
温度補償用サーミスタや表面温度測定用センサに適する
サーミスタの製造方法に関する。更に詳しくはプリント
回路基板等に表面実装されるチップ型サーミスタの製造
方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、この種のチップ型サーミスタは、
サーミスタ素体の両端部に銀−パラジウムを主成分とす
る電極が焼付けられている。電極成分に銀の他にパラジ
ウムを含有する理由は、基板にチップ型サーミスタをは
んだ付けする際に、銀がはんだ中に溶出して消失するこ
とを防止し、電極のはんだ耐熱性を得るためである。し
かし、パラジウムの含有量を増加すると電極のはんだ付
着性が低下して基板に対するサーミスタの固着力が弱く
なるため、パラジウムの含有量には一定の限界があっ
た。このため電極のはんだ付けが高温で長時間行われる
場合には、従来のチップ型サーミスタはなおはんだ耐熱
性が不十分であった。はんだ耐熱性とはんだ付着性を向
上させるために、チップ型コンデンサと同様に、焼付け
電極である下地電極の表面にめっき層を設けることが考
えられるが、サーミスタ素体はコンデンサ素体と異なり
導電性を有するため、このサーミスタ素体を露出したま
まめっき処理した場合、素体表面にめっきが付着してサ
ーミスタの抵抗値が所期の値と異なり、しかもサーミス
タ素体がめっき液で浸食されてサーミスタの信頼性が低
下する等の不具合を生じる。
【0003】この点を改善するため、本出願人は焼付け
電極層が接触する部分以外のサーミスタ素体の表面を軟
化点がこの電極層の焼付け温度とほぼ等しいガラス層で
被覆し、かつ焼付け電極層の表面にめっき層を形成した
チップ型サーミスタを特許出願した(特開平3−250
603)。
【0004】しかし、上記サーミスタは、はんだ付着性
及びはんだ耐熱性に優れ、かつ抵抗値のばらつきを減ら
すことができる反面、そのガラス層はその軟化点が電極
層の焼付け温度とほぼ等しいため、次の問題点があっ
た。第一にガラス層形成後に電極層を焼付けるときに、
図4(a)に示すようにサーミスタ素体1のエッジ部の
ガラス層2が軟化してエッジ部より下方に移行し易く、
その程度が甚だしいとエッジ部のガラス層2が消失し
て、サーミスタ素体1が露出することがあり、ガラス層
2の保形性が悪い。第二にサーミスタ素体を焼成台、焼
成さや等の焼成治具の上に載せて、或いは素体同士を接
触させて電極層を焼付けたときに、図4の斜視図に示す
ように軟化したガラス層2が焼成治具や他のサーミスタ
素体に融着し、その接触跡又は融着跡3がガラス層2に
生じる。第三に電極層を焼付けたときに、図4(b)に
示すように焼付け電極層4に含まれるガラスフリット成
分がその下層のガラス層2と反応してガラス層2に溶け
込み、その程度が甚だしいとエッジ部のガラス層2と焼
付け電極層4がともに消失して、サーミスタ素体1が露
出してしまう。
【0005】このため、本出願人は上記ガラス層をガラ
スと、アルミナ、ジルコニア、マグネシア等の無機結晶
物とを含む無機複合材料で構成したサーミスタを特許出
願した(特開平3−250604)。このサーミスタで
はガラス成分と無機結晶物をそれぞれ粉末の状態で混合
し、この混合粉末に有機バインダと溶剤を加えてペース
トにした後、このペーストをサーミスタ素体の表面に印
刷・焼成してガラス層を形成している。このサーミスタ
のガラス層は、無機結晶物粉末の存在により前記特開平
3−250603号公報で示されるサーミスタのガラス
層より軟化点が高まり、上記問題点は解決される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、特開平3−2
50604号公報に開示したサーミスタでは、このガラ
ス層を形成するためのペースト中でガラス粉末と無機結
晶物粉末が均一に混合しにくいため、このペーストが印
刷性に劣り印刷後のサーミスタ素体の表面が平滑になら
ない不具合があった。また無機複合材料の焼成時に無機
結晶物が存在することにより無機複合材料中に気泡が残
存し易い。この残存した気泡は開気孔(open pore)に
なり易く、後工程のめっき処理時にめっき液が開気孔内
に浸入してサーミスタ素体をめっき液で浸食し、サーミ
スタの信頼性を低下させる欠点があった。更に電極層の
焼付け後にガラス層の表面が荒れ、サーミスタの外観を
損う問題点があった。
【0007】本発明の目的は、サーミスタ素体のエッジ
部のガラス層や、エッジ部の焼付け電極層が消失せず、
ガラス層や焼付け電極層の保形性が良好なサーミスタの
製造方法を提供することにある。本発明の別の目的は、
焼成後のガラス層に焼成治具等との融着跡又は接触跡が
残らず、ガラス層の表面が平滑で見栄えの良いサーミス
タの製造方法を提供することにある。本発明の別の目的
は、はんだ耐熱性及びはんだ付着性に優れ、焼付け電極
層のめっき処理による抵抗値の変化がなく、信頼性の高
いサーミスタの製造方法を提供することにある。本発明
の更に別の目的は、熱的ストレスに起因した引張応力に
対する強度が高いサーミスタの製造方法を提供すること
にある。
【0008】
【問題点を解決するための手段】請求項1に係る発明
は、図2及び図3に示すように、サーミスタ素体用のセ
ラミックグリーンシートを薄く成形しこのシート上面に
導電性ペーストを印刷し乾燥して内部電極23を形成し
た後に内部電極23を有するセラミックグリーンシート
を複数枚積み重ねてシート状の積層体にしこの積層体を
焼成してセラミック焼結シート11を作る工程と、セラ
ミック焼結シート11の両面にガラスペーストを印刷し
て焼成することにより絶縁性のガラス層14を形成する
工程と、両面がガラス層14で被覆されたセラミック焼
結シート11を内部電極23の列方向と直交する方向に
短冊状に切断して短冊状サーミスタ素体13を作る工程
と、短冊状サーミスタ素体13の両側の切断面に上記ガ
ラスペーストと同一のガラスペーストを印刷して焼成す
ることによりガラス層14を形成する工程と、短冊状サ
ーミスタ素体13の両側の切断面と垂直な方向にかつ内
部電極23の幅方向の中心線に沿って短冊状サーミスタ
素体13を細かく切断してチップ15を作った後にこの
チップ15の切断面を包むようにチップ15の両端部に
焼付け電極層16,Niめっき層18及びSn/Pbめ
っき層19からなる端子電極12を形成する工程とを含
むサーミスタの製造方法である。また、上記ガラス層1
4は結晶化ガラスからなることが好ましい。
【0009】本発明の方法で製造されるサーミスタ10
は、図1に示すように、サーミスタ素体11と、このサ
ーミスタ素体11の両端面を除く素体表面を被覆する絶
縁性ガラス層14と、このサーミスタ素体11の両端面
を含む両端部に設けられた一対の端子電極12,12と
を備え、これらの端子電極12,12がサーミスタ素体
11の両端部に形成された焼付け電極層16とこの焼付
け電極層16の表面に形成されたNiめっき層18及び
Sn又はSn/Pbめっき層19をそれぞれ有する。上
記ガラス層14の一部又は全部は結晶化ガラスからな
り、この結晶化ガラスを結晶化するために熱処理する前
のガラスのガラス転移点は400〜1000℃の範囲に
あって、その結晶化温度は前記ガラス転移点より高い温
度である。
【0010】また上記サーミスタは、図2に示すように
サーミスタ素体11の素体内部に一対の端子電極12,
12に電気的に接続する複数の抵抗値調整用内部電極2
3を有し、ガラス層14が両端面以外の素体表面を被覆
するように構成され、このガラス層14の一部又は全部
が結晶化ガラスからなる。なお、図示しないが、この内
部電極23が一対の端子電極12,12に電気的に接続
しないサーミスタも含む。
【0011】図2に示したサーミスタ10は、次の方法
により製造される。図3に示すように、先ずサーミスタ
素体用のセラミックグリーンシートを極く薄く成形し、
このシート上面に導電性ペーストを印刷し乾燥して抵抗
値調整用の内部電極23を形成した後、複数のグリーン
シートを積み重ねてシート状の積層体にし、この積層体
を焼成して焼結シートを作る(図3(a))。上記セラ
ミックグリーンシートはMn,Fe,Co,Ni,C
u,Al等の金属の酸化物粉末を1種又は2種以上混合
してこの混合物を仮焼し粉砕し、有機結合材を加え混合
して薄い直方体に成形して作られる。なお、金属酸化物
の混合物を仮焼し粉砕した後、有機結合材と溶剤を加え
混練してスラリーを調製し、このスラリーをドクターブ
レード法等により成膜乾燥してセラミックグリーンシー
トを成形してもよい。
【0012】次いでこのセラミック焼結シート11の両
面にガラスペーストを印刷して焼成することにより絶縁
性の結晶化ガラスからなるガラス層14を形成する(図
3(b))。次に両面がガラス層14で被覆されたセラ
ミック焼結シート11を内部電極23の列方向と直交す
る方向に、ダイヤモンドブレード付き切断機のようなダ
イシングソーを用いて、短冊状に切断した後(図3
(c))、この短冊状サーミスタ素体13の両側の切断
面に前記と同じガラスペーストを印刷して後焼すること
により結晶化ガラスからなるガラス層14を形成する
(図3(d))。次に前記切断面と垂直な方向にかつ内
部電極23の幅方向の中心線に沿ってこの短冊状サーミ
スタ素体13を細かく切断してチップ15を作る(図3
(e))。このチップ15の切断面を包むようにチップ
の両端部に貴金属粉末と無機結合材を含む導電性ペース
トを塗布し、焼成して電極層を形成する。更にこの焼付
け電極層16を下地電極層としてこの表面にNiめっき
層及びSn/Pbめっき層19を形成して焼付け電極層
とNiめっき層とSn/Pbめっき層からなる端子電極
12を有するサーミスタ10を得る(図1、図2及び図
3(f))。
【0013】上述したガラス層14について詳しく説明
する。このガラス層はその一部又は全部が結晶化ガラス
からなる。このガラス層は後述するガラスペーストを印
刷又は塗布し乾燥した後、焼成することにより10〜3
0μm程度の厚さに形成される。ガラス層が部分的に結
晶化ガラスである場合には、結晶化率は10%以上であ
ることが本発明の目的を達成するために必要である。こ
こで、結晶化ガラスとは、均一な非晶質のガラスをその
軟化点付近で制御されたスケジュールに従って焼成し、
微細な結晶の集りに変える方法で作られたガラスセラミ
ックスである。結晶化ガラスにするためには、ガラスペ
ーストに含まれる非晶質のガラス粉末(原料ガラス粉
末)を結晶化可能となるように選択しかつ配合するこ
と、及びそのガラスペーストに含まれるガラスが結晶化
するように乾燥したペーストを所定の温度条件で焼成す
ることが必要である。
【0014】ガラスペースト焼成後のガラス層の緻密度
合いが良好になるように、結晶化ガラスを結晶化させる
ために熱処理する前のガラス(以下、前駆体ガラスとい
う)はそのガラス転移点が400〜1000℃の範囲に
あって、その結晶化温度がガラス転移点より高いことが
必要である。このガラス転移点の範囲は、電極層の焼成
温度を考慮して決められる。この電極層にAgを用いる
ときにはその焼成温度は600〜850℃であり、その
温度よりガラス転移点が大幅に低い場合、例えば結晶化
ガラスの前駆体ガラスのガラス転移点が400℃未満の
場合には結晶化温度が600℃を下回ることがあり、電
極層焼成時に結晶化ガラスが変質するおそれがある。ま
た前駆体ガラスのガラス転移点が1000℃を越えると
きには、結晶化温度が1000℃より高くなりサーミス
タ素体が変質するおそれがある。
【0015】結晶化ガラスはその熱膨張係数がサーミス
タ素体の熱膨張係数の40%以上100%以下であるこ
とが好ましく、特に50%以上90%以下であることが
好ましい。上記40〜100%のときには、サーミスタ
の抗折強度がガラス層を設けないものと比べて増加する
ことは勿論、ガラス層が未結晶化ガラスからなるもので
あってその熱膨張係数が上記範囲にあるものと比べても
増加する。特に50〜90%のときには、抗折強度がガ
ラス層を設けないもの及びガラス層が未結晶化ガラスか
らなるものと比較してそれぞれ20〜70%増加する。
これに対して40〜100%の範囲外では、ガラス層を
設けないもの及びガラス層が未結晶化ガラスからなるも
のと比べて抗折強度が低下する。抗折強度とは、間隔を
あけて配置された2つの台にサーミスタの両端を置き、
サーミスタの中央部に荷重を加えたときの破壊強度をい
う。これは、サーミスタをプリント回路基板に表面実装
したときの実装機等による応力(機械的ストレス)、或
いははんだ等による熱や実装後の熱サイクルによって生
じる応力歪み(熱的ストレス)にどれだけ耐えることが
できるかの目安となる。
【0016】本発明の方法で製造されたサーミスタの抗
折強度が増加するのは、サーミスタ素体表面のガラス層
に圧縮応力が残留するためと考えられる。即ち、ガラス
の焼成時に熱膨張していたサーミスタ素体とガラス層が
冷えると、熱膨張係数の大きなサーミスタ素体の方が縮
み方が大きく、ガラス層が圧縮された状態となる。この
状態のサーミスタに折曲げ力を加えると、折曲げの内側
には圧縮応力が生じ、外側には引張応力が生じる。サー
ミスタ素体とガラス層は、ともに圧縮応力に強く引張応
力に弱い特徴がある。このため、予めガラス層により大
きな圧縮応力を与えておくと、ガラス層を設けないもの
及びガラス層が未結晶化ガラスからなるものに比べて、
折曲げ力を加えたときにその曲げの外側の引張応力に対
してクラックが生じにくくなる。
【0017】図3に示すように、先ずセラミック焼結シ
ート11の内部に複数の抵抗値調整用の内部電極23を
形成し、この焼結シート11の両面にガラスペーストを
印刷して焼成することにより、結晶化ガラスからなるガ
ラス層14を形成する。次に上記焼結シート11を所定
の方向に切断して短冊状サーミスタ素体13を作り、こ
のサーミスタ素体13の両側の切断面に前記と同一のガ
ラスペーストを印刷して焼成することにより結晶化ガラ
スからなるガラス層14を形成する。更に上記短冊状サ
ーミスタ素体13を所定の方向に切断してチップ15を
作り、このチップ15の切断面を包むようにチップの両
端部に、焼付け電極層16を設けた後、めっき層18,
19を設けることにより、図2に示すサーミスタ10が
作られる。このめっき処理時にサーミスタ素体11への
めっき液の浸食及び素体11へのめっきの付着が防止さ
れるため、サーミスタの抵抗値が所期の値に対して変動
しない。Niめっき層18によりはんだ耐熱性が向上
し、サーミスタを基板にはんだ付けするときにはんだに
よる電極層16の電極食われが防止する。またSn又は
Sn/Pbめっき層19により端子電極12のはんだ付
着性が向上する。これらのめっき層18,19は貴金属
の焼付け電極層16の表面を被覆するため、貴金属のイ
オン移動が発生しにくい。
【0018】また、ガラス層14がガラスペーストの焼
成により結晶化ガラスになるため、電極層16の形成中
にガラス自身の粘度低下が少なく、サーミスタ素体のエ
ッジ部のガラス層や、エッジ部の焼付け電極層16が消
失せず、電極層形成後のガラス層14に焼成治具等との
融着跡又は接触跡が残らない。この結晶化ガラスとなる
ガラスペーストは従来のように無機結晶物を含まないた
め、印刷性が良好で、しかもガラス層の形成時にガラス
転移点を経て結晶化温度に達するため、焼成後のガラス
自身の緻密度合いが良好であり、従来のように気泡が残
存せず、表面が平滑なサーミスタが得られる。更に、結
晶化ガラスの熱膨張係数をサーミスタ素体の熱膨張係数
より適度に小さくすれば、作製されたサーミスタのガラ
ス層により大きな圧縮応力が与えられ、ガラス層がない
サーミスタ或いは未結晶化ガラスのガラス層を有するサ
ーミスタに比べて、折曲げ力を加えたときにその曲げの
外側の引張応力に対してクラックが生じにくくなる。
【0019】
【発明の効果】以上述べたように、本発明によれば、ガ
ラス層を結晶化ガラスにより構成することにより、焼付
け電極層形成時にガラス層が軟化して変形したり焼成治
具等に融着したりせず、また電極層がガラス層に溶け込
まないため、ガラス層や焼付け電極層の保形性が良好に
なり、しかもガラス層表面が平滑でサーミスタの見栄え
が良くなる。電極層を形成した後、めっき処理するとき
に、ガラス層によりサーミスタ素体が保護され、抵抗値
の変化がなく、平滑なガラス層表面にはめっき液の浸食
もなく、信頼性の高いサーミスタが得られる。更に熱膨
張係数を適切に選択すれば、ガラス層が未結晶化ガラス
のサーミスタより抗折強度を増加させることができる。
特に、本発明のような積層型サーミスタでは、品質上の
課題として、デラミネーション(層間剥離)に起因する
サーマルショック性能や温度サイクル性能が低下するお
それがあるけれども、サーミスタ素体の両端面以外の素
体表面を結晶化ガラスからなる絶縁性ガラス層で被覆す
ることにより、素体強度が向上し、その結果としてサー
マルショック性能や温度サイクル性能を改善することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のサーミスタの外観斜視図。
【図2】図1のA−A線断面図。
【図3】図1のサーミスタの製造工程を説明する図。
【図4】従来のサーミスタの外観斜視図。(a)は図中
のB−B線断面拡大図。(b)は図中のC−C線断面拡
大図。
【符号の説明】 10 サーミスタ 11 サーミスタ素体 12 端子電極 14 ガラス層 16 焼付け電極層 18 Niめっき層 19 Sn又はSn/Pbめっき層 23 抵抗値調整用内部電極
【手続補正2】
【補正対象書類名】図面
【補正対象項目名】全図
【補正方法】変更
【補正内容】
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
フロントページの続き (72)発明者 角田 匡清 埼玉県秩父郡横瀬町大字横瀬2270番地 三 菱マテリアル株式会社セラミックス研究所 内 (72)発明者 越村 正己 埼玉県秩父郡横瀬町大字横瀬2270番地 三 菱マテリアル株式会社セラミックス研究所 内 Fターム(参考) 5E034 BA09 BB06 DA02 DB14 DC01 DE07

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 サーミスタ素体(11)と、前記サーミスタ
    素体(11)の両端面を除く素体表面を被覆する絶縁性ガラ
    ス層(14)と、前記サーミスタ素体(11)の両端面を含む両
    端部に設けられた一対の端子電極(12,12)とを備え、前
    記一対の端子電極(12,12)が前記サーミスタ素体(11)の
    両端部に形成された焼付け電極層(16)と前記焼付け電極
    層(16)の表面に形成されためっき層(18,19)をそれぞれ
    有するサーミスタ(10)において、 前記ガラス層(14)の一部又は全部が結晶化ガラスからな
    り、前記結晶化ガラスを結晶化させるために熱処理する
    前のガラスのガラス転移点が400〜1000℃の範囲
    にあって、その結晶化温度が前記ガラス転移点より高い
    温度であることを特徴とするサーミスタ。
  2. 【請求項2】 結晶化ガラスはその熱膨張係数がサーミ
    スタ素体(11)の熱膨張係数の40%以上100%以下で
    ある請求項1記載のサーミスタ。
  3. 【請求項3】 サーミスタ素体(11)は両端面以外の素体
    表面に前記端子電極に電気的に接続し又は接続しない抵
    抗値調整用内部電極(21,22)を有し、 ガラス層(14)が前記内部電極(21,22)を含む両端面以外
    の素体表面を被覆するように構成された請求項1記載の
    サーミスタ。
  4. 【請求項4】 サーミスタ素体(11)は素体内部に一対の
    端子電極(12,12)に電気的に接続し又は接続しない抵抗
    値調整用内部電極(23)を有する請求項1記載のサーミス
    タ。
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