JP2003073780A - プレス成形型フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯 - Google Patents

プレス成形型フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯

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JP2003073780A JP2001263163A JP2001263163A JP2003073780A JP 2003073780 A JP2003073780 A JP 2003073780A JP 2001263163 A JP2001263163 A JP 2001263163A JP 2001263163 A JP2001263163 A JP 2001263163A JP 2003073780 A JP2003073780 A JP 2003073780A
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Abstract

(57)【要約】 【課題】 フラットブラウン管用に使用可能なプレス成
形型シャドウマスクを供給する。 【解決手段】 質量百分率(%)に基づいて(以下、%
と表記する) Ni:30〜35%、Co:2〜8%、
及びMn:0.01〜0.5%を含有し、更にNb:
0.01〜0.8%およびTi:0.01〜0.8%か
ら選択された1種または2種を合計で0.01〜0.8
%含有し、残部Fe及び不可避的不純物から成り、不可
避的不純物のうち、C:0.0020〜0.0070
%、Si:0.001〜0.030%、N:0.000
5〜0.0050%、S:0.0015%以下である板
厚が0.05mm〜0.3mmのFe−Ni−Co系合
金薄帯であって、この薄帯を700℃以上の温度で焼鈍
した後の板厚5%以上を表面から除去した面の(20
0)面X線回折強度構成比率が80%以下であり、軟化
焼鈍後のヤング率を向上させたことを特徴とするプレス
成形型フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シャドウマスクの
電子線透過部分の形状を完全フラットになるようにプレ
スし、ブラウン管に組み込んだ状態での落下衝撃による
耐変形性に優れ、かつドーミングが生じない低熱膨張を
維持できるフラットマスク用合金薄帯に関するもので、
特には結晶方位を制御することにより、耐落下衝撃変形
性の指標となるヤング率を向上させ、かつ低熱膨張性を
維持した上記フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金
薄帯に関する。
【0002】
【従来の技術】カラーブラウン管では、電子銃から打ち
出した電子ビームをガラスパネルの内側の蛍光体に当て
ることで画面を表示する。電子ビームの方向を磁力によ
り制御するのが偏向ヨークである。ガラスパネルの手前
には、電子ビームを所定の蛍光体に当たるように画素単
位に区切る機構が設けられており、マスクあるいは色選
別機構と呼ばれている。カラーブラウン管用のマスク
は、マスク素材をドット状若しくはスロット状にエッチ
ング加工した後プレス成形するシャドウマスク方式と、
すだれ状にエッチング後枠材に上下に強い引張り力をか
けて張り渡して架張するアパーチャグリル方式に大別さ
れる。それぞれの方式は一長一短があり、どちらの方式
も市場で用いられている。
【0003】ところで、表示画面を平坦にするフラット
画面の開発に向けて多くの試みが試されてきた。ここ
で、フラット画面とは、従来の球面表示画面がほぼ完全
に近い平面形態を有するものである。ブラウン管の画面
を平坦にしようとするとき大きな問題の一つになるの
は、シャドウマスクやアパーチャグリルをどのようにし
て平坦に近づけるかである。それぞれに難題を抱えてい
るが、プレスによりシャドウマスクの表面を平坦に近づ
けることは、アパーチャグリルのような架張方式のもの
よりも基本的に難しいとされている(例えば〔NKKE
I ELECTRONICS〕1999.7.26(N
o.748)128)。
【0004】これは、シャドウマスクは金属シートをプ
レス成形して製造するため、架張方式と違って、自己保
形カにより形状を維持する必要があり、基本的には、球
状でないと形状維持ができないためである。一方、フラ
ットマスクは、マスクをほとんど平坦にするため、形状
維持が困難である。これを解決するには、マスクの強度
を上げるしか方法がない。ここで云う「マスク強度」と
は、一般の金属の強度(例えば引張試験による強度)の意
味とは違い、ブラウン管組み立て後、ブラウン管全体に
衝撃を与え、マスクの変形が起きるかどうかである。具
体的には、ブラウン管を一定高さから落下させ、マスク
が変形するかどうかを試験する。このような衝撃変形に
対し強い、すなわち耐落下衝撃変形性を向上させたマス
クの開発が、フラット管には必要とされる。
【0005】そしてまた、フラット管には、優れたドー
ミング特性が要求される。つまり、マスクが球面からフ
ラットになるに従い、マスクの四隅での電子銃から放出
された電子ビームの入射角が鋭角となる。つまり、これ
は、マスクが熱膨張により僅かにずれるだけで、電子ビ
ームがミスランディングし、色ずれ害の問題が発生する
ことを意味する。これにより、熱膨張が従来のマスクよ
り格段に低い低膨張マスクの開発が必要となる。フラッ
トマスクの設計の自由度を大きくし、色づれ問題を極力
起こさないようにするためには、30〜100℃の平均
熱膨張係数が7×10−7/℃以下、好ましくは2〜5
×10−7/℃を達成することが必要なフラットマスク
もある。本発明者らは、低い熱膨張特性と向上した耐落
下衝撃変形性を有するFe−Ni系合金(特願2000
−192249)を開発したが、30〜100℃の平均
熱膨張係数が8〜11×10−7/℃で、7×10−7
/℃以下を達成していない。
【0006】フラットマスクを対象にしたものではない
が、熱膨張特性や耐衝撃性を改善する試みとして、特許
第2723718号(権利者:ヤマハ株式会社)では、
2〜7%のCoを含むFe−Ni−Co系合金(Sup
er Invar)をシャドウマスクにすることで熱膨
張係数を低下することが提案されている。しかしなが
ら、Coを2〜7%含有させると高価格となるのに加え
て、プレス前に軟化焼鈍を行った後の引張強さ、特にヤ
ング率はマスクをフラットにした場合の落下衝撃に耐え
るには十分満足できるものではなかった。また、特許第
1854642号(権利者:日鉱金属株式会社)では、
Niが34〜38%のFe−Ni系合金にTi、Zr、
B、Mo、Nb、N、P、Cuのうち1種又は2種以上
を合計で0.01〜1.0%含ませることで、組み立て
時の衝撃で座屈が起きるのを防ぐことが提案されている
が、熱膨張係数が10×10−7/℃を超えており、マ
スクをフラットにした場合の色ズレ抑制の点では十分に
満足できるものではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】一般的にシャドウマス
クに使用されるFe−Ni系合金は、Niを36%含む
ものが使用されている。それはこの組成がシャドウマス
クの使用環境である室温から100℃の範囲での熱膨張
係数が最も小さくなるからである。この合金にNb等の
強度を向上させるための元素を添加すると熱膨張係数は
大きくなることから大量に添加することは好ましくな
い。また、添加によって原料費の増加を伴ってしまう。
30〜100℃の平均熱膨張係数が7×10−7/℃以
下を達成し、且つ耐落下衝撃変形性を向上させたプレス
成形型フラットマスクを製造するためにはFe−32%
Ni−5%Co合金をベースにして検討を重ねることと
した。
【0008】本発明の課題は、フラットブラウン管用に
使用可能なプレス成形型シャドウマスクを供給するた
め、ごく少量の添加元素によって耐落下衝撃変形性を向
上すべくプレス軟化焼鈍後のヤング率を増大させ、平面
タイプのシャドウマスクに使用されるFe−Ni−Co
系合金薄帯を開発することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明者は、ヤング率の
改善効果が知られているNb、Ti等の元素を利用して
できるだけ少量の添加でヤング率を大きくする方法を鋭
意調査研究した。その結果、シャドウマスクにプレス成
形前軟化焼鈍後のヤング率が、圧延薄帯を軟化焼鈍した
後の板厚内部の結晶方位で大きく変わることを見出し
た。
【0010】具体的には、上記元素を添加したFe−N
i−Co系合金を、加工度を変化させた数種類の冷間圧
延薄帯に加工して800℃焼鈍後のヤング率を調べた。
その結果、Nb又はTiを含有させ、特定の範囲の加工
度で冷間圧延した場合にヤング率が大きくなることを見
出した。詳細に調べた結果、ヤング率は軟化焼鈍後の薄
帯を表面から板厚の5%以上除去した面で測定した(2
00)面X線回折強度構成比率と強い相関を持ち、(2
00)面X線回折強度比率が75%を超えるとヤング率
が急激に減少し、80%以下では、(200)面X線回
折強度比率の減少とともにヤング率がわずかに増加する
ことがわかった。なお、軟化焼鈍後の表面から板厚の5
%以上を除去した板厚内部における(200)面X線回
折強度比率は薄帯のそれで殆ど決定されることがわかっ
た。
【0011】そして、薄帯を焼鈍軟化した後の板厚中央
部の(200)面X線回折強度比率を制御するには、最
終冷間圧延前の焼鈍で材料が800℃以上の温度で5秒
間以上保持されることが重要であることがわかった。こ
れは、Nb又はTiとの濃度積との炭化物、窒化物、硼
化物が焼鈍である程度解離して再固溶し、焼鈍後の冷却
過程で微細に再析出する事によるものと考えている。こ
の様にして最終焼鈍を行った後に30〜65%の冷間圧
延を行うことにより冷間圧延薄帯を軟化焼鈍した後の板
厚中央部の(200)面X線回折強度比率を所望の範囲
にすることができ、本発明を完成するに至った。
【0012】かくして、本発明は、 (1)質量百分率(%)に基づいてNi:30〜35
%、Co:2〜8%及びMn:0.01〜0.5%を含
有し、更にNb及びTiを1種又は2種の合計で0.0
1〜0.8%含有し、残部Fe及び不可避的不純物から
成り、不可避的不純物のうち、C:0.0020〜0.
0070%、Si:0.001〜0.030%、N:
0.0005〜0.0050%、S:0.0015%以
下である板厚が0.05mm〜0.3mmのFe−Ni
−Co系合金薄帯であって、この薄帯を700℃以上の
温度で焼鈍した後の板厚5%以上を表面から除去した面
の(200)面X線回折強度構成比率α(200)を式
で表すと、α(200)が80%以下であり、軟化焼
鈍後のヤング率を向上させたことを特徴とするプレス成
形型フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯。
【0013】
【数4】 (hkl):薄帯を700℃以上の温度で軟化焼鈍し
た後に板厚の5%以上を表面から除去した面の(hk
l)面X線回折強度
【0014】(2)質量百分率(%)に基づいてNi:
30〜35%、Co:2〜8%及びMn:0.01〜
0.5%を含有し、更にNb及びTiを1種又は2種の
合計で0.01〜0.5%含有し、残部Fe及び不可避
的不純物から成り、不可避的不純物のうち、C:0.0
020〜0.0070%、Si:0.001〜0.03
0%、N:0.0005〜0.0050%、S:0.0
015%以下である板厚が0.05mm〜0.3mmの
Fe−Ni−Co系合金薄帯であって、この薄帯を70
0℃以上の温度で焼鈍した後の板厚5%以上を表面から
除去した面の(200)面X線回折強度構成比率α
(200)を式で表すと、α(200)が80%以下
であり、且つ式で定義されるNi偏析が1.0%以下
である軟化焼鈍後のヤング率を向上させたことを特徴と
するプレス成形型フラットマスク用Fe−Ni−Co系
合金薄帯。
【0015】
【数5】 (hkl):薄帯を700℃以上の温度で軟化焼鈍し
た後に板厚の5%以上を表面から除去した面の(hk
l)面X線回折強度 ΔNi=C−C…… ΔNi:Ni偏析率 C:スジ部のNi含有率(%) C:スジ近傍部のNi含有率(%)
【0016】(3)冷間圧延薄帯の板厚の5%以上を表
面から除去した面の(200)面X線回折強度構成比率
β(200)を式で表すと、β(200)が25%〜
75%であり、軟化焼鈍後のヤング率を向上させた上記
(1)又は(2)記載のプレス成形型フラットマスク用
Fe−Ni−Co系合金薄帯。
【0017】
【数6】 I’(hkl):冷間圧延薄帯の板厚の5%以上を表面
から除去した面の(hkl)面X線回折強度
【0018】(4)最終冷間圧延前に薄帯の温度が5秒
間以上800℃以上になるように、かつ結晶粒径をJI
S G 0551に規定のオーステナイト結晶粒度番号
で8.0以上の細粒になるように再結晶焼鈍し、最終冷
間圧延を30%〜65%の加工度で行うことにより、軟
化焼鈍後のヤング率を向上させた上記(1)〜(3)記
載のプレス成形型フラットマスク用Fe−Ni−Co系
合金薄帯。
【0019】(5) 最終冷間圧延後に歪取り焼鈍を行
う上記(1)〜(4)記載のプレス成形型フラットマス
ク用Fe−Ni−Co系合金薄帯に関する。
【0020】
【発明の実施の形態】本発明の基本は、プレス前に行う
軟化焼鈍後のヤング率を板厚内部の(200)面X線回
折強度構成比率を制御するすることで、強度上昇元素の
添加を極力抑えることにあり、C,N含有量を規制する
ことが有効に働く。なお、製造方法としては最終圧延の
加工度とともに、その圧延前の焼鈍での材料温度と焼鈍
後の結晶粒径が重要になる。
【0021】以下に本発明に関する成分元素及び結晶方
位並びに製造条件の限定理由を述べる。 Ni:Niは、プレス加工成形性、熱膨張を増大させる
等の有害なマルテンサイト組織を発生させず、Coとの
相乗効果による低熱膨張を達成するため、30〜35
%、好ましくは31〜33%の範囲とする。 Co:Coは熱膨張を低下させると同時に、耐力の向上
にも役割を果たす。このためにはNi含有量とのバラン
スで2%以上の添加が必要とされるが、反面、添加量が
8%を超えるとNi含有量とのバランスで熱膨張を増大
させてしまう。更に含有量を高くすることは製造コスト
の面からも不利となり、得策ではない。Ni含有量を勘
案した上で、本発明目的では2〜8%、好ましくは4〜
6%の範囲で添加する。 Mn:Mnは、溶湯への脱酸剤として添加されるが、そ
の添加により熱膨張係数を増大させるため、30〜10
0℃の平均熱膨張係数が7×10-7/℃以下を達成する
ためには、0.001〜0.5%とし、好ましくは0.
001〜0.3%とすることが必要とされる。 Nb、Ti:熱膨張を上昇させずに希望する高耐力を得
ることができ、更にはヤング率を向上させる元素として
添加する。0.01%未満では、その効果がなく、他方
0.8%を超えるとエッチング性の低下及び熱膨張の上
昇をもたらす。単独で0.01%〜0.8%の範囲とす
ることが必要であるのみならず、それらの合計含有量が
0.01%〜0.8%の範囲とすることが必要である。
なお、本発明の合金を製造するに当たり、マスクのエッ
チング性の観点から、Ni偏析の発生に注意することが
必要であるが、本発明の知見によると、Nb、Tiを添
加すると、Fe−Ni−Co系合金における固相線温度
と液相線温度が変化し、鋳造、凝固時にNi偏析が起こ
りやすくなると推定される。また、本発明者は、Ni偏
析が発生した場合、ヤング率が低下することも見出し
た。この低下理由は、Ni偏析が発生することにより、
Fe−Ni−Co系合金の結晶方位が変化し、ヤング率
が変化すると推定される。Ni偏析は、Nb、Ti含有
量だけでなく、当然鋳造及び鍛造条件の影響も受ける
が、Nb、Ti含有量がそれぞれ0.01〜0.5%
で、それらの合計が0.01〜0.5%であれば、Ni
偏析率が1.0%以下となり、Nb、Tiを添加しない
Fe−Ni−Co系合金と同様にNi偏析によるスジム
ラが発生しないことがわかった。よってNb、Ti含有
量は、それぞれ0.01〜0.5%、それらの合計が
0.01〜0.5%とする。 Si:Siは溶湯への脱酸効果があるが、0.030%
を超えるとエッチング性を大きく劣化させるので、0.
001〜0.030%とする。 C:Cは溶解原料や副原料及び溶解炉材から不可避的不
純物として入る。CはNb又はTiと炭化物を形成して
所望の結晶方位に制御するのに有効に働く。その効果
は、0.0020%以上で発現する。しかしながら、C
が0.0070%を超えると炭化物を過剰に形成してエ
ッチング穿孔性を劣化させる。従って、0.0020〜
0.0070%、好ましくは0.0020〜0.005
0%とする。
【0022】N:Nは主に溶解雰囲気からの汚染による
不可避的不純物として入る。NはNb又はTiと窒化物
を形成して所望の結晶方位に制御するのに有効に働く。
その効果は、0.0005%以上で発現する。しかしな
がら、Nが0.0050%を超えると窒化物を過剰に形
成してエッチング穿孔性を劣化させるとともに焼鈍軟化
温度が高くなってプレス成形性が劣化する。従って、
0.0005%〜0.0050%、好ましくは0.00
05〜0.0030%とする。
【0023】S:Sは溶解原料や副原料及び溶解炉材か
ら不可避的不純物として入る。Mn含有量が少ない場合
のFe−Ni−Co系合金においては、Sを含有する場
合に熱間割れが起きやすくなる。熱間加工性を確保する
ために、0.0015%以下、好ましくは0.0010
%未満とする。 α(200):フラットマスクの強度、つまり耐落下衝
撃変形性を向上させるためには材料のヤング率を上昇さ
せる事が効果的である(特許第1854642号(権利
者:日鉱金属株式会社))と述べた。本発明者らは、プ
レス成形性を確保する目的で軟化焼鈍した材料の表面加
工層の影響を取り除いた状態での(200)面X線回折
強度構成比率α(200)と材料のヤング率の間に良い
相関があることを見出した。十分な耐落下衝撃変形性を
得るためには、材料のヤング率は120,000N/mm
上が必要であり、そのためには、α(200)は80%
以下が必要となる。 β(200):冷間圧延箔帯における表面加工層の影響
を取り除いた状態での(200)面X線回折強度構成比
率β(200)は、25〜75%が必要であり、この条
件を満たす材料を軟化焼鈍し、上述のα(200)を測
定すると80%以下となる。
【0024】シャドウマスク素材は、所要の組成の合金
材料を例えば真空誘導溶解炉(VIM炉)で溶製後、インゴ
ットに鋳造し、鍛造後、熱間圧延および冷間圧延し、そ
の後光輝焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最後に0.05〜
0.30mm範囲の所定の厚みにまでダル加工した圧延ロ
ールによる最終冷間圧延が施される。エッチング加工に
より製造される各種のシャドウマスク材の板厚は0.0
5〜0.30mmが一般的であり、特にプレス成形型の
フラットマスクには板厚0.1〜0.13mmの材料が
使用されている。その後、スリットして所定の板幅とし
てシャドウマスク素材を得る。シャドウマスク素材は、
脱脂後、フォトレジストを両面に塗布してパターンを焼
き付けて現像後、エッチング穿孔加工され、個々に切断
されシャドウマスク素材ユニットとなる。
【0025】シャドウマスク素材ユニットは、非酸化性
雰囲気、例えば還元性雰囲気中700℃以上で焼鈍(例
えば、水素中、900℃にて30分間)されてプレス成
形性を付与される。プレアニール法では、上記の焼鈍が
エッチング前に最終冷間圧延材に対して行われる。レベ
ラー加工を経た後、プレスによりフラットマスク形態に
成形される。
【0026】そして最後に、プレス成形されたフラット
マスクは、脱脂後、大気またはCO/COガス雰囲気
中で黒化処理を施されて表面に黒色酸化膜を形成する。
本発明のプレス成形型「フラットマスク」は、例えば、
外面曲率半径R:100,000mm以上そして平面度:
画面曲面部の最大高さ/有効画面対角寸法=0.1%以
下のほぼ完全に近い平面形態を有するものである。
【0027】本発明のプレス成形型フラットマスクは、
30〜100℃にわたっての平均熱膨張係数を7×10
−7/℃以下に維持したまま、上記プレス成形性を付与
するための焼鈍後、ヤング率が120,000N/mm
以上であることを特徴とする。ヤング率が120,0
00N/mm以上であると、前記したブラウン管落下
試験で完全平面ブラウン管にしてもマスク変形は起きな
い。ヤング率を向上させるためには、本発明で規定した
成分を満たす冷間圧延薄帯を700℃以上の温度で軟化
焼鈍した後の板厚5%以上を表面から除去した面の(2
00)面X線回折強度構成比率α(200)を式で表
すと、α(200)が80%以下であることを規定す
る。
【0028】
【数7】 (hkl):薄帯を700℃以上の温度で軟化焼鈍し
た後に板厚の5%以上を表面から除去した面の(hk
l)面X線回折強度
【0029】ここで、軟化焼鈍とはマスク加工メーカー
が材料にプレス成形性を確保するために実施するもので
あり、一方、材料表面から5%以上を表面から除去する
のは、材料の表面加工層の影響を取り除いた状態での
(200)面X線回折強度構成比率α(200)と材料
のヤング率の間に良い相関があることを本発明者が見出
した事による。例えば、図1によればα(200)が8
0%以下であれば、ヤング率は、120,000N/m
以上となり、好ましいものが得られる。
【0030】薄帯の板厚の5%以上を表面から除去した
面の(200)面X線回折強度構成比率β(200)
式で表すと、β(200)が25%〜75%であるこ
とを規定する。α(200)とβ(200)の関係を示
す図2からもα(200)が80%以下の範囲であるの
は、β(200)が25%〜75%であり、この範囲が
好ましいことが把握される。
【0031】
【数8】 I’(hkl):薄帯の板厚の5%以上を表面から除去
した面の(hkl)面X線回折強度
【0032】薄帯の材料表面から5%以上を表面から除
去するのは、軟化焼鈍材の場合と同様に材料の表面加工
層の影響を取り除いた状態での(200)面X線回折強
度構成比率β(200)と材料のヤング率の間に良い相
関があることを本発明者が見出した事による。
【0033】これまでに示したように、ヤング率を向上
させたシャドウマスク材を製造するための具体的な製造
条件の範囲を述べる。最終冷間圧延前に薄帯の温度が5
秒間以上800℃以上になるように、かつ結晶粒径をJ
IS G 0551に規定のオーステナイト結晶粒度番
号で8.0以上の細粒になるように再結晶焼鈍を行い、
最終の冷間圧延を30%〜65%の加工度で行う。更に
好ましくは最終冷間圧延後に歪取り焼鈍を行う。これに
より軟化焼鈍後のヤング率を向上させたプレス成形型フ
ラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯が製造でき
る。
【0034】本発明のプレス成形型フラットマスクは、
ヤング率:140,000N/mm 以上を実現するこ
とができ、さらにはヤング率:150,000N/mm
以上を実現することが可能である。
【0035】
【実施例】表1に実施例および比較例として用いた合金
の組成を示す。
【0036】
【表1】
【0037】これら組成の合金を真空誘導溶解炉(VI
M炉)で溶製した。溶製後、鍛造および熱間圧延にて3
mm厚にした後、冷間圧延と光輝焼鈍を繰り返し、約
0.12mm厚の冷間圧延材とした。その後、スリットし
て所定の板幅としたシャドウマスク素材を還元性雰囲気
中で焼鈍(900℃×30分水素中)してプレス成形性を
付与した。
【0038】この焼鈍材及び圧延材より試料を採取し、
表裏面の板厚の5〜6%をエッチング除去した後、当該
合金の主要回折格子面である、(111)、(20
0)、(220)及び(311)面についてX線回折強
度を測定し、式及び式によってα(200)及びβ
(200)を求めた。また、この焼鈍後の材料に対し
て、「JIS R 1605」に従う曲げ共振法により
室温でヤング率を測定した。
【0039】この方法は、自由な曲げ振動をなし得るよ
うに駆動器側および検出器側つりさげ糸によりつるした
試験片にその上下面に発振器からの駆動力を加え、検出
器を通して最大の振幅を生じ且つ振動の節を測定して一
次共鳴振動数を決定し、一次共鳴振動数と試験片の質量
および寸法から所定の式に基づいて動的弾性率を算出す
るものである。さらに、30〜100℃の間の平均熱膨
張係数を測定すると共に、その表面に60℃で45ボー
メの塩化第2鉄水溶液を0.3MPaの圧力で1分間ス
プレーしてエッチング面の状態を観察した。これらの結
果を表2に示す。
【0040】
【表2】
【0041】本発明の試料No.1〜9は、熱膨張係数
を許容水準とされている(7×10 /℃)を超えるこ
となく、目標とするヤング率が120,000N/mm
以上を充分に実現し、特に試料No.1〜6は、ヤン
グ率:140,000N/mm 以上を実現した。
【0042】合金No.1の焼鈍材の(200)面X線
回折強度構成比率α(200)とヤング率の関係を図1
に示す。横軸に焼鈍材後の(200)面X線回折強度構
成比率α(200)、縦軸にヤング率を示し、焼鈍の条
件は800℃×30分間、水素ガス雰囲気中とした。図
1からα(200)が、80%以下であれば、ヤング率
は、120,000N/mm以上となり、好ましいも
のが得られる。
【0043】試料No.4は、NbとTi添加量の合計
0.5%を超え、試料No.5〜9は不純物元素のM
n、C、Si、S、Nがそれぞれ請求項1の規定水準を
超えるために、エッチング面の状態が良好でなく、微小
な凹凸および異物のエッチング痕が観察されたが、使用
上問題のない範囲あった。
【0044】これに対して、試料No.10は、Ni及
びCo含有量が規定範囲を外れたため、平均熱膨張係数
が高い。試料No.11は、Ni含有量が低いため、平
均熱膨張係数が高い。試料No.12は、Co含有量が
高いため、平均熱膨張係数が高い。試料No.13は、
Nb、Tiの添加がないため、ヤング率が低く、強度特
性に非常に乏しい。試料No.14は、Mn含有量が高
いため平均熱膨張係数が高い。試料No.15はNbと
Ti添加量の合計0.8%を超えており、平均熱膨張係
数が高く、エッチング面の結果が悪い。Nb、Tiを添
加しないため、ヤング率が低く、強度特性に非常に乏し
い。試料No.16〜19は、C、Si、S、N含有量
が過大なため、エッチング面の状態が悪い結果を示し
た。
【0045】試料No.20〜22は、焼鈍後の(20
0)面X線回折強度α(200)が80%を超えている
ため、ヤング率が低く、エッチング面の状態が悪い結果
を示した。
【0046】
【発明の効果】以上、適切なニッケルとコバルト濃度を
含むFe−Ni−Co系合金に含有するMn含有量を低
く制御して低熱膨張を達成しながら、不足する耐落下衝
撃変形性をNb、Tiを適量添加する合金を基礎とし
て、この材料の焼鈍後の(200)面X線回折強度α
(200)を制御することで、プレス成形型フラットマ
スク用Fe−Ni−Co系合金が製造できるようになっ
た。こうして、今後のフラット型カラーブラウン管に対
処して、色づれが無く、取り扱いに際して変形しない良
好なプレス成形型フラットマスクの安定した効率的な製
造が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例で紹介した合金No.1の焼鈍材後の
(200)面X線回折強度構成比率α(200)とヤン
グ率の関係を示す図である。
【図2】合金No.1の圧延材と焼鈍材の(200)面
X線回折強度構成比率β(20 0)とα(200)の関
係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4K037 EA04 EA10 EA15 EA18 EA19 EA21 EA25 EA27 EA31 EB02 EB03 FB00 FG00 FG03 FH00 FH05 FM01 FM04 GA00 HA00 JA01 JA06

Claims (5)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 質量百分率(%)に基づいて(以下、%
    と表記する) Ni:30〜35%、Co:2〜8%、
    及びMn:0.01〜0.5%を含有し、更にNb:
    0.01〜0.8%およびTi:0.01〜0.8%か
    ら選択された1種または2種を合計で0.01〜0.8
    %含有し、残部Fe及び不可避的不純物から成り、不可
    避的不純物のうち、C:0.0020〜0.0070
    %、Si:0.001〜0.030%、N:0.000
    5〜0.0050%、S:0.0015%以下である板
    厚が0.05mm〜0.3mmのFe−Ni−Co系合
    金薄帯であって、この薄帯を700℃以上の温度で焼鈍
    した後の板厚5%以上を表面から除去した面の(20
    0)面X線回折強度構成比率α(200)を式で表す
    と、α(200)が80%以下であり、軟化焼鈍後のヤ
    ング率を向上させたことを特徴とするプレス成形型フラ
    ットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯。 【数1】 (hkl):薄帯を700℃以上の温度で軟化焼鈍し
    た後に板厚の5%以上を表面から除去した面の(hk
    l)面X線回折強度
  2. 【請求項2】 質量百分率(%)に基づいて(以下、%
    と表記する) Ni:30〜35%、Co:2〜8%、
    及びMn:0.01〜0.5%を含有し、更にNb:
    0.01〜0.5%およびTi:0.01〜0.5%か
    ら選択された1種または2種を合計で0.01〜0.5
    %含有し、残部Fe及び不可避的不純物から成り、不可
    避的不純物のうち、C:0.0020〜0.0070
    %、Si:0.001〜0.030%、N:0.000
    5〜0.0050%、S:0.0015%以下である板
    厚が0.05mm〜0.3mmのFe−Ni−Co系合
    金薄帯であって、この薄帯を700℃以上の温度で焼鈍
    した後の板厚5%以上を表面から除去した面の(20
    0)面X線回折強度構成比率α(200)を式で表す
    と、α(200)が80%以下であり、且つ式で定義
    されるNi偏析が1.0%以下である軟化焼鈍後のヤン
    グ率を向上させたことを特徴とするプレス成形型フラッ
    トマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯。 【数2】 (hkl):薄帯を700℃以上の温度で軟化焼鈍し
    た後に板厚の5%以上を表面から除去した面の(hk
    l)面X線回折強度 ΔNi=C−C…… ΔNi:Ni偏析率 C:スジ部のNi含有率(%) C:スジ近傍部のNi含有率(%)
  3. 【請求項3】 冷間圧延薄帯の板厚の5%以上を表面か
    ら除去した面の(200)面X線回折強度構成比率β
    (200)を式で表すと、β(200)が25%〜7
    5%であり、軟化焼鈍後のヤング率を向上させたことを
    特徴とする請求項1又は請求項2に記載のプレス成形型
    フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯。 【数3】 I’(hkl):冷間圧延薄帯の板厚の5%以上を表面
    から除去した面の(hkl)面X線回折強度
  4. 【請求項4】 最終冷間圧延前に薄帯の温度が5秒間以
    上800℃以上になるように、かつ結晶粒径をJIS
    G 0551に規定のオーステナイト結晶粒度番号で
    8.0以上の細粒になるように再結晶焼鈍し、最終冷間
    圧延を30%〜65%の加工度で行うことにより軟化焼
    鈍後のヤング率を向上させたことを特徴とする請求項1
    から請求項3に記載のプレス成形型フラットマスク用F
    e−Ni−Co系合金薄帯。
  5. 【請求項5】 最終冷間圧延後に歪取り焼鈍を行うこと
    を特徴とする請求項1から請求項4に記載のプレス成形
    型フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯。
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