JP2004331997A - シャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、高強度化のための元素を添加することなくFe−Ni−Co系合金の落下強度を高めることを目的とする。
【解決手段】Ni:30〜35質量%、Co:2〜8質量%、Mn:0.50質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物もしくは随伴元素−但しC:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Al:0.05質量%以下、S:0.005質量%以下、P:0.005質量%以下−からなり、圧延加工組織より構成されるFe−Ni−Co系合金であり、750℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が9.5以上の再結晶組織が発現し、かつ、850℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が8.5以上の再結晶組織が発現することを特徴とするシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金。
【解決手段】Ni:30〜35質量%、Co:2〜8質量%、Mn:0.50質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物もしくは随伴元素−但しC:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Al:0.05質量%以下、S:0.005質量%以下、P:0.005質量%以下−からなり、圧延加工組織より構成されるFe−Ni−Co系合金であり、750℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が9.5以上の再結晶組織が発現し、かつ、850℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が8.5以上の再結晶組織が発現することを特徴とするシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金。
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャドウマスクの電子線透過部分の形状を完全フラットになるようにプレスしたとしても、ブラウン管に組み込んだ状態での落下衝撃による耐変形性に優れ、かつドーミングが生じない低熱膨張を維持できるフラットマスク用合金薄帯に関するもので、焼鈍軟化特性を制御することにより、耐落下衝撃変形性を向上させ、かつ低熱膨張性を維持した上記フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラーブラウン管では、電子銃から打ち出した電子ビームをガラスパネルの内側の蛍光体に当てることで画面を表示する。電子ビームの方向を磁力により制御するのが偏向ヨークである。ガラスパネルの手前には電子ビームを所定の蛍光体に当たるように画素単位に区切る機構が設けられており、マスクあるいは色選別機構と呼ばれている。カラーブラウン管用のマスクはマスク素材をドット状若しくはスロット状にエッチング加工した後プレス成型するシャドウマスク方式と、すだれ状にエッチング後枠材に上下に強い引張り力をかけて張り渡して架張するアパーチャグリル方式に大別される。それぞれの方式は一長一短があり、どちらの方式も市場で用いられている。
ところで、表示画面を平坦にするフラット画面の開発に向けて多くの試みが成されてきた。ここで、フラット画面とは、従来の球面表示画面がほぼ完全に近い平面形態を有するものである。ブラウン管の画面を平坦にしようとするとき大きな問題の一つになるのは、シャドウマスクやアパーチャグリルをどのようにして平坦に近づけるかである。それぞれに難題を抱えているが、プレスによりシャドウマスクの表面を平坦に近づけることは、アパーチャグリルのような架張方式のものよりも基本的に難しいとされている(例えば、NIKKEI ECTRONICS、1999.7.26(No.748)128頁)。
これは、シャドウマスクは金属シートをプレス成型して製造するため、架張方式と違って、自己保形力により形状を維持する必要があり、基本的には球形でないと形状維持ができないためである。一方、フラットマスクはマスクをほとんど平坦にするため、形状維持が困難である。これを解決するには、マスクの強度を上げるしか方法がない。ここで云う「マスク強度」とは、一般の金属の強度(例えば引張試験による強度)の意味とは違い、ブラウン管組み立て後、ブラウン管全体に衝撃を与え、マスクの変形が起きるかどうかである。具体的には、ブラウン管を一定高さから落下させ、マスクが変形するかどうかを試験する。このような衝撃変形に対し強い、すなわち耐落下衝撃変形性(以下、落下強度と称す)を向上させたマスクの開発が、フラット管には必要とされる。
また、フラット管には、優れたドーミング特性が要求される。つまり、マスクが球面からフラットになるに従い、マスクの四隅での電子銃から放出された電子ビームの入射角が鋭角となる。つまり、これは、マスクが熱膨張により僅かにずれるだけで、電子ビームがミスランディングし、色ずれ害の問題が発生することを意味する。これにより、熱膨張が従来のマスクより格段に低い低熱膨張マスクの開発が必要となる。
フラットマスクを対象にしたものではないが、熱膨張特性や耐衝撃性を改善する試みとして、特許文献1では、2〜7質量%のCoを含むFe−Ni−Co系合金(Super Invar)をシャドウマスクにすることで熱膨張係数を低下することが提案されている。しかしながら、Coを2 ̄7質量%含有させるだけでは、プレス前にアニ−ル処理を行った後のマスクをフラットにした場合の落下衝撃に耐えることができなかった。また、特許文献2では、Niが34〜38質量%のFe−Ni系合金にTi、Zr、B、Mo、Nb、N、P、Cuのうち1種又は2種以上を合計で0.01〜1.0質量%含ませることで、組み立て時の衝撃で座屈が起きるのを防ぐことが提案されているが、熱膨張係数が10×10−7/℃を超えており、マスクをフラットにした場合の色ズレ抑制の点では満足できるものではなかった。
【0003】
シャドウマスク素材は、所定の組成の合金材料を例えば真空誘導溶解炉(VIM炉)で溶製後、インゴットに鋳造し、鍛造後、熱間圧延および冷間圧延し、その後光輝焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最後に0.05〜0.3mm範囲の所定の厚みにまでダル加工した圧延ロールによる最終冷間圧延が施される。エッチング加工により製造される各種のシャドウマスク材の板厚は0.05〜0.30mmが一般的であり、特にプレス成型型のフラットマスクには板厚0.1〜0.13mmの材料が使用されている。その後、スリットして所定の板幅としてシャドウマスク用素材を得る。シャドウマスク用素材は、脱脂後、フォトレジストを両面に塗布してパターンを焼き付けて現像後、エッチング穿孔加工され、個々に切断されシャドウマスク素材ユニットとなる。
シャドウマスク素材ユニットは、非酸化性雰囲気、例えば還元性雰囲気中において700℃以上の温度でアニ−ルされてプレス成型性を付与される。プレアニ−ル法では、上記の焼鈍がエッチング前に最終冷間圧延材に対して行われる。レベラ加工を経た後、プレスによりフラットマスク形態に成型される。
そして最後に、プレス成型されたフラットマスクは、脱脂後、大気またはCO/CO2ガス雰囲気中で黒化処理を施されて表面に黒色酸化膜を形成する。本発明のプレス成型型「フラットマスク」は例えば、外面曲率半径R:100,000mm以上そして平面度(画面曲面部の最大高さ/有効画面対角寸法):0.1%以下のほぼ完全に近い平面形態を有するものである。
【0004】
【特許文献1】
特許第2723718号公報
【特許文献2】
特許第1854642号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高強度化のための元素を添加することなくFe−Ni−Co系合金の落下強度を向上させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、この課題を解決するために鋭意、研究を重ねた結果、シャドウマスクの落下強度が、その耐力と極めて良い相関を持つことを見出した。そして、プレス成型前のアニ−ルを行った後に、高い耐力を得られるように、Fe−Ni−Co系合金を最適化し、同時にそのための製造方法を明らかにした。
【0007】
つまり、本発明は
(1)Ni:30〜35質量%、Co:2〜8質量%、Mn:0.50質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物もしくは随伴元素−但しC:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Al:0.05質量%以下、S:0.005質量%以下、P:0.005質量%以下−からなり、圧延加工組織より構成されるFe−Ni−Co系合金であり、750℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が9.5以上の再結晶組織が発現し、かつ、850℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が8.5以上の再結晶組織が発現することを特徴とするシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金、
(2)引張強さが630MPa以上であることを特徴とする,請求項1に記載のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金、
(3)スラブを熱間圧延し、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延を実施する工程で製造され、最終冷間圧延前の焼鈍にて結晶粒度番号を8.0以上に調整し、かつ、最終冷間圧延の加工度を30%以上とすることを特徴とする上記(1)および(2)のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金の製造方法、
(4)スラブを熱間圧延し、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延を実施する工程で製造され、最終冷間圧延前の焼鈍にて結晶粒度番号を8.0以上に調整し、かつ、最終冷間圧延の加工度を50%以上とすることを特徴とする上記(1)および(2)のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金の製造方法、
(5)最終冷間圧延前の焼鈍にて、(200)面X線回折強度構成比率を90%以下に調整することを特徴とする上記(3)および(4)のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金の製造方法
に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の限定理由を述べる。
(1)Ni、Coについて
本発明におけるFe−Ni−Co系合金条のNi含有量は30〜35質量%の範囲である。また、Co含有量は2〜8質量%の範囲である。
Ni含有量が30質量%未満、または35質量%を超えると、熱膨張係数が大きくなり、シャドウマスク用として不適当である。
Coは熱膨張を低下させると同時に、再結晶後の耐力の向上にも寄与する。このためには2質量%以上の添加が必要であり、添加量が8質量%を超えると磁気特性を悪化させるので、2〜8質量%の範囲で添加される。
【0009】
(2)Mn、不純物及び随伴元素について
a)C含有量
Cが0.10質量%を超えると、炭化物の生成によってエッチング穿孔性が阻害され、合金条はシャドウマスク用素条として適さなくなる。従って、C含有量の上限を0.10質量%と定めた。
b)Si含有量
Siが0.10質量%を超えると、合金素条は、そのエッチング穿孔性が阻害されるので、シャドウマスク用素条として適さなくなる。従って、Si含有量の上限を0.10質量%と定めた。
c)Al含有量
Alが0.05質量%を超えると、アルミナ系の介在物の形成が著しく、合金条のエッチング穿孔性が阻害される。従って、Al含有量の上限を0.05質量%と定めた。
d)Mn含有量
Mnは熱間加工性を阻害するSを無害化するために鉄系合金に含有されている。その含有量が少ないと、十分な効果は得られない。しかしながら、0.5質量%を超えると合金条は硬くなり、その加工性が劣ることになる。従って、Mn含有量の上限を0.5質量%と定めた。好ましくは、0.05〜0.5質量%の範囲の添加が推奨される。
e)S含有量
Sは、0.005質量%を超えると、素条の熱間加工性を著しく阻害する。従って、S含有量の上限を0.005質量%と定めた。
f)P含有量
Pは、0.005質量%を超えると、合金条は、そのエッチング穿孔性が阻害され、シャドウマスク用素条として適さなくなる。従って、P含有量の上限を0.005質量%と定めた。
【0010】
(3)再結晶特性について
落下強度はシャドウマスクの状態での耐力と相関を有するため、プレス成形前に700〜950℃のアニ−ル処理を施した後の耐力が高いことが求められる。所望の耐力を発現するためには、750℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が9.5以上の再結晶組織が生じ、かつ、850℃、15分の焼鈍を施したときに結晶粒度番号が8.5以上の再結晶組織が生じるFe−Ni−Co系合金でなければならず、再結晶特性がこの規定より外れる場合には、シャドウマスクとして十分な落下強度が得られない。
(4)引張強さについて
再結晶特性は素材(最終圧延上がり)の引張強さと相関を持つ。引張り強さが630MPa以上であれば、上記の再結晶特性が得られる。
【0011】
(5)最終圧延前の焼鈍及び最終圧延加工度について
本発明では、最終圧延前の焼鈍における結晶粒微細化と最終圧延工程の強加工により、Fe−Ni−Co系合金に、上記の再結晶特性を付与する。つまり、最終圧延前の焼鈍で得られる結晶粒度番号が8.0以上の微細粒の状態で、加工度30%以上の強加工圧延を施すと所望の再結晶特性が得られる。最終圧延工程の加工度が30%未満の場合では所望の再結晶特性は得られない。従って本発明では最終圧延前の焼鈍で得られる結晶粒度番号を8.0以上、最終圧延工程の加工度を30%以上と規定する。より好ましい最終圧延加工度は50%以上である。
結晶粒度番号は、JIS G 0551に規定されている方法に準拠し測定する。また、圧延加工度(R)は次式で定義される。
R={(t0−t)/t0}×100%
ここで、
t:圧延後の厚み
t0:圧延前の厚み
【0012】
(6)最終圧延前の焼鈍における(200)面X線回折強度構成比率について
本発明では、最終圧延前の焼鈍において、(200)面X線回折強度構成比率を90%以下に調整する。(200)面X線回折強度構成比率は下記の式で定義される
(200)面X線回折強度構成比率=I200/(I111+I200+I220+I311)×100(%)
上記の式で、Ihklは(hkl)格子面のX線回折強度を示す。最終圧延前の焼鈍における(200)面X線回折強度構成比率は、最終圧延材の特性に影響を及ぼす。すなわち、(200)面X線回折強度構成比率が90%を超えると加工硬化能が低下する。そのため、(200)面X線回折強度構成比率が90%を超えると、最終圧延で強加工を施しても引張強さは低くなる。引張強さは再結晶特性と相関があるので、引張強さが低下すると所望の再結晶特性が得られないことになる。したがって、(200)面X線回折強度構成比率は90%以下に調整する。
(200)面X線回折強度構成比率の定義には、回折格子面として、(111)面、(200)面、(220)面、(311)面を織り込んでいる。これは、これら4つの回折格子面が、本発明で対象とするFe−Ni−Co系合金の、主要な回折格子面であることによる。
X線回折強度(cps)は、一般に用いられているX線ディフラクトメータにて測定する。管球は、Co管球を用いる。X線回折強度(cps)の測定には、ピークの高さを求める方法と、ピークの積分値を求める方法がある。本発明では、ピークの積分値を求める。
【0013】
【実施例】
実施例に示すシャドウマスク材の製造においては、まず、所定の化学組成のスラブを調製し、熱間圧延をおこない、表面の酸化スケールを除去し、厚さ3mmの板を得た。ここで、不純物濃度については、C:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Al:0.05質量%以下、S:0.005質量%以下、P:0.005質量%以下を満足するものであり、実施例、比較例とも、Ni:31〜33質量%、Co:4.5〜5.5質量%、Mn:0.2〜0.4質量%の範囲に組成を調整した。また、Nb等の強化元素は添加しておらず、例えばNbの分析値は0.01質量%未満であった。
得られた厚さ3mmの熱間圧延板を、つぎの工程で加工し、厚さ0.12mmの製品とした。
熱間圧延板→素圧延→中間焼鈍→中間圧延→最終圧延前の焼鈍→最終圧延
ここで、焼鈍はいずれも再結晶焼鈍であり、熱間圧延以外の圧延はいずれも冷間圧延である。各工程における加工条件あるいは目標品質を以下に示す。
(1)素圧延
中間圧延加工度、最終圧延加工度、および製品板厚から逆算し、素圧延で仕上げる板厚を設定した。
(2)中間焼鈍および中間圧延
最終圧延前の焼鈍において所定の(200)面X線回折強度構成比率(%)を得るには、中間焼鈍での結晶粒度番号と中間圧延での加工度を所定のものに設定しなくてはならない。本発明例では、中間焼鈍での結晶粒度番号を8.0に、中間圧延の加工度を72%に設定した。
(3)最終圧延前の焼鈍
焼鈍温度と焼鈍時間を制御し、本発明例では結晶粒度番号が9.0の焼鈍材を得た。
(4)最終圧延
板厚を0.12mmに圧延し製品とした。
【0014】
【表1】
【0015】
表1に発明例および比較例の特性を示す。
表1における最終圧延前焼鈍(200)面強度は、最終圧延前の焼鈍あがりの状態で測定した(200)面回折X線強度の構成比率(%)であり、次式より求めた。
(200)面回折X線強度構成比率=I200/(I111+I200+I220+I311)×100(%)
ここで、Ihklは(hkl)格子面のX線回折強度を示す。回折X線の強度(cps)は、X線ディフラクトメータにて測定した。管球は、Co管球を用いた。回折X線強度(cps)の測定では、ピークの積分値を求めた。測定試料の前処理として表層を化学研磨(エッチング)にて除去した。表層を除去するのは、表面に形成されている変質層の影響をなくすためである。除去量は、板厚の5%分とした。5%の除去量は、板厚内部の(200)強度の分布を確認したうえで設定したものである。
焼鈍前の引張強さは、0.12mm厚製品の引張強さ(MPa)を示す。製品結晶粒度(750℃)は、0.12mm厚製品の加熱試験(750℃×15分間:非酸化性雰囲気)後の結晶粒度を示す。製品結晶粒度(850℃)は、0.12mm厚製品の加熱試験(850℃×15分間:非酸化性雰囲気)後の結晶粒度を示す。アニ−ル後耐力は、シャドウマスクをプレス成型する前に行うアニ−ルを想定した熱処理(8%H2−N2,露点0℃,800℃×15分)を、0.12mm厚製品に施した後の0.2%耐力(MPa)である。
【0016】
発明例No.1〜5については、製品結晶粒度(750℃)が9.5以上、かつ、製品結晶粒度(850℃)が8.5以上であり、プレス成型前のアニ−ルを想定した熱処理後の耐力が高い。
一方、比較例1は、中間圧延加工度が78%と高いため、最終圧延前の焼鈍における(200)面回折X線強度構成比率が請求の範囲である90%を超えている。また、最終圧延前の焼鈍における結晶粒度も請求の範囲である8.0を下回っている。そのため、比較例1は、焼鈍前の引張強さ、製品結晶粒度(750℃)、製品結晶粒度(850℃)が請求の範囲からはずれ、アニ−ルを想定した熱処理後の耐力が低い。
また、比較例2は、最終圧延加工度が請求の範囲を満足していない。そのため、比較例2は、焼鈍前の引張強さ、製品結晶粒度(750℃)、製品結晶粒度(850℃)が請求の範囲からはずれ、アニ−ルを想定した熱処理後の耐力が低い。
さらに、比較例3は、最終圧延前の焼鈍における(200)面回折X線強度構成比率、最終圧延前の焼鈍における結晶粒度番号、最終圧延における圧延加工度のすべてが請求の範囲を満足していない。その結果、比較例3は、アニ−ルを想定した熱処理後の耐力が、全実施例の中で最も低い値になっている。
【0017】
【発明の効果】
Fe−Ni−Co系合金において、高強度化のための元素を添加することなく、低コストで、生産効率を阻害することなく、落下強度を高めたシャドウマスク材を提供することができる。
【発明の属する技術分野】
本発明は、シャドウマスクの電子線透過部分の形状を完全フラットになるようにプレスしたとしても、ブラウン管に組み込んだ状態での落下衝撃による耐変形性に優れ、かつドーミングが生じない低熱膨張を維持できるフラットマスク用合金薄帯に関するもので、焼鈍軟化特性を制御することにより、耐落下衝撃変形性を向上させ、かつ低熱膨張性を維持した上記フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯に関する。
【0002】
【従来の技術】
カラーブラウン管では、電子銃から打ち出した電子ビームをガラスパネルの内側の蛍光体に当てることで画面を表示する。電子ビームの方向を磁力により制御するのが偏向ヨークである。ガラスパネルの手前には電子ビームを所定の蛍光体に当たるように画素単位に区切る機構が設けられており、マスクあるいは色選別機構と呼ばれている。カラーブラウン管用のマスクはマスク素材をドット状若しくはスロット状にエッチング加工した後プレス成型するシャドウマスク方式と、すだれ状にエッチング後枠材に上下に強い引張り力をかけて張り渡して架張するアパーチャグリル方式に大別される。それぞれの方式は一長一短があり、どちらの方式も市場で用いられている。
ところで、表示画面を平坦にするフラット画面の開発に向けて多くの試みが成されてきた。ここで、フラット画面とは、従来の球面表示画面がほぼ完全に近い平面形態を有するものである。ブラウン管の画面を平坦にしようとするとき大きな問題の一つになるのは、シャドウマスクやアパーチャグリルをどのようにして平坦に近づけるかである。それぞれに難題を抱えているが、プレスによりシャドウマスクの表面を平坦に近づけることは、アパーチャグリルのような架張方式のものよりも基本的に難しいとされている(例えば、NIKKEI ECTRONICS、1999.7.26(No.748)128頁)。
これは、シャドウマスクは金属シートをプレス成型して製造するため、架張方式と違って、自己保形力により形状を維持する必要があり、基本的には球形でないと形状維持ができないためである。一方、フラットマスクはマスクをほとんど平坦にするため、形状維持が困難である。これを解決するには、マスクの強度を上げるしか方法がない。ここで云う「マスク強度」とは、一般の金属の強度(例えば引張試験による強度)の意味とは違い、ブラウン管組み立て後、ブラウン管全体に衝撃を与え、マスクの変形が起きるかどうかである。具体的には、ブラウン管を一定高さから落下させ、マスクが変形するかどうかを試験する。このような衝撃変形に対し強い、すなわち耐落下衝撃変形性(以下、落下強度と称す)を向上させたマスクの開発が、フラット管には必要とされる。
また、フラット管には、優れたドーミング特性が要求される。つまり、マスクが球面からフラットになるに従い、マスクの四隅での電子銃から放出された電子ビームの入射角が鋭角となる。つまり、これは、マスクが熱膨張により僅かにずれるだけで、電子ビームがミスランディングし、色ずれ害の問題が発生することを意味する。これにより、熱膨張が従来のマスクより格段に低い低熱膨張マスクの開発が必要となる。
フラットマスクを対象にしたものではないが、熱膨張特性や耐衝撃性を改善する試みとして、特許文献1では、2〜7質量%のCoを含むFe−Ni−Co系合金(Super Invar)をシャドウマスクにすることで熱膨張係数を低下することが提案されている。しかしながら、Coを2 ̄7質量%含有させるだけでは、プレス前にアニ−ル処理を行った後のマスクをフラットにした場合の落下衝撃に耐えることができなかった。また、特許文献2では、Niが34〜38質量%のFe−Ni系合金にTi、Zr、B、Mo、Nb、N、P、Cuのうち1種又は2種以上を合計で0.01〜1.0質量%含ませることで、組み立て時の衝撃で座屈が起きるのを防ぐことが提案されているが、熱膨張係数が10×10−7/℃を超えており、マスクをフラットにした場合の色ズレ抑制の点では満足できるものではなかった。
【0003】
シャドウマスク素材は、所定の組成の合金材料を例えば真空誘導溶解炉(VIM炉)で溶製後、インゴットに鋳造し、鍛造後、熱間圧延および冷間圧延し、その後光輝焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最後に0.05〜0.3mm範囲の所定の厚みにまでダル加工した圧延ロールによる最終冷間圧延が施される。エッチング加工により製造される各種のシャドウマスク材の板厚は0.05〜0.30mmが一般的であり、特にプレス成型型のフラットマスクには板厚0.1〜0.13mmの材料が使用されている。その後、スリットして所定の板幅としてシャドウマスク用素材を得る。シャドウマスク用素材は、脱脂後、フォトレジストを両面に塗布してパターンを焼き付けて現像後、エッチング穿孔加工され、個々に切断されシャドウマスク素材ユニットとなる。
シャドウマスク素材ユニットは、非酸化性雰囲気、例えば還元性雰囲気中において700℃以上の温度でアニ−ルされてプレス成型性を付与される。プレアニ−ル法では、上記の焼鈍がエッチング前に最終冷間圧延材に対して行われる。レベラ加工を経た後、プレスによりフラットマスク形態に成型される。
そして最後に、プレス成型されたフラットマスクは、脱脂後、大気またはCO/CO2ガス雰囲気中で黒化処理を施されて表面に黒色酸化膜を形成する。本発明のプレス成型型「フラットマスク」は例えば、外面曲率半径R:100,000mm以上そして平面度(画面曲面部の最大高さ/有効画面対角寸法):0.1%以下のほぼ完全に近い平面形態を有するものである。
【0004】
【特許文献1】
特許第2723718号公報
【特許文献2】
特許第1854642号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、高強度化のための元素を添加することなくFe−Ni−Co系合金の落下強度を向上させることを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
発明者らは、この課題を解決するために鋭意、研究を重ねた結果、シャドウマスクの落下強度が、その耐力と極めて良い相関を持つことを見出した。そして、プレス成型前のアニ−ルを行った後に、高い耐力を得られるように、Fe−Ni−Co系合金を最適化し、同時にそのための製造方法を明らかにした。
【0007】
つまり、本発明は
(1)Ni:30〜35質量%、Co:2〜8質量%、Mn:0.50質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物もしくは随伴元素−但しC:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Al:0.05質量%以下、S:0.005質量%以下、P:0.005質量%以下−からなり、圧延加工組織より構成されるFe−Ni−Co系合金であり、750℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が9.5以上の再結晶組織が発現し、かつ、850℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が8.5以上の再結晶組織が発現することを特徴とするシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金、
(2)引張強さが630MPa以上であることを特徴とする,請求項1に記載のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金、
(3)スラブを熱間圧延し、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延を実施する工程で製造され、最終冷間圧延前の焼鈍にて結晶粒度番号を8.0以上に調整し、かつ、最終冷間圧延の加工度を30%以上とすることを特徴とする上記(1)および(2)のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金の製造方法、
(4)スラブを熱間圧延し、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延を実施する工程で製造され、最終冷間圧延前の焼鈍にて結晶粒度番号を8.0以上に調整し、かつ、最終冷間圧延の加工度を50%以上とすることを特徴とする上記(1)および(2)のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金の製造方法、
(5)最終冷間圧延前の焼鈍にて、(200)面X線回折強度構成比率を90%以下に調整することを特徴とする上記(3)および(4)のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金の製造方法
に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の限定理由を述べる。
(1)Ni、Coについて
本発明におけるFe−Ni−Co系合金条のNi含有量は30〜35質量%の範囲である。また、Co含有量は2〜8質量%の範囲である。
Ni含有量が30質量%未満、または35質量%を超えると、熱膨張係数が大きくなり、シャドウマスク用として不適当である。
Coは熱膨張を低下させると同時に、再結晶後の耐力の向上にも寄与する。このためには2質量%以上の添加が必要であり、添加量が8質量%を超えると磁気特性を悪化させるので、2〜8質量%の範囲で添加される。
【0009】
(2)Mn、不純物及び随伴元素について
a)C含有量
Cが0.10質量%を超えると、炭化物の生成によってエッチング穿孔性が阻害され、合金条はシャドウマスク用素条として適さなくなる。従って、C含有量の上限を0.10質量%と定めた。
b)Si含有量
Siが0.10質量%を超えると、合金素条は、そのエッチング穿孔性が阻害されるので、シャドウマスク用素条として適さなくなる。従って、Si含有量の上限を0.10質量%と定めた。
c)Al含有量
Alが0.05質量%を超えると、アルミナ系の介在物の形成が著しく、合金条のエッチング穿孔性が阻害される。従って、Al含有量の上限を0.05質量%と定めた。
d)Mn含有量
Mnは熱間加工性を阻害するSを無害化するために鉄系合金に含有されている。その含有量が少ないと、十分な効果は得られない。しかしながら、0.5質量%を超えると合金条は硬くなり、その加工性が劣ることになる。従って、Mn含有量の上限を0.5質量%と定めた。好ましくは、0.05〜0.5質量%の範囲の添加が推奨される。
e)S含有量
Sは、0.005質量%を超えると、素条の熱間加工性を著しく阻害する。従って、S含有量の上限を0.005質量%と定めた。
f)P含有量
Pは、0.005質量%を超えると、合金条は、そのエッチング穿孔性が阻害され、シャドウマスク用素条として適さなくなる。従って、P含有量の上限を0.005質量%と定めた。
【0010】
(3)再結晶特性について
落下強度はシャドウマスクの状態での耐力と相関を有するため、プレス成形前に700〜950℃のアニ−ル処理を施した後の耐力が高いことが求められる。所望の耐力を発現するためには、750℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が9.5以上の再結晶組織が生じ、かつ、850℃、15分の焼鈍を施したときに結晶粒度番号が8.5以上の再結晶組織が生じるFe−Ni−Co系合金でなければならず、再結晶特性がこの規定より外れる場合には、シャドウマスクとして十分な落下強度が得られない。
(4)引張強さについて
再結晶特性は素材(最終圧延上がり)の引張強さと相関を持つ。引張り強さが630MPa以上であれば、上記の再結晶特性が得られる。
【0011】
(5)最終圧延前の焼鈍及び最終圧延加工度について
本発明では、最終圧延前の焼鈍における結晶粒微細化と最終圧延工程の強加工により、Fe−Ni−Co系合金に、上記の再結晶特性を付与する。つまり、最終圧延前の焼鈍で得られる結晶粒度番号が8.0以上の微細粒の状態で、加工度30%以上の強加工圧延を施すと所望の再結晶特性が得られる。最終圧延工程の加工度が30%未満の場合では所望の再結晶特性は得られない。従って本発明では最終圧延前の焼鈍で得られる結晶粒度番号を8.0以上、最終圧延工程の加工度を30%以上と規定する。より好ましい最終圧延加工度は50%以上である。
結晶粒度番号は、JIS G 0551に規定されている方法に準拠し測定する。また、圧延加工度(R)は次式で定義される。
R={(t0−t)/t0}×100%
ここで、
t:圧延後の厚み
t0:圧延前の厚み
【0012】
(6)最終圧延前の焼鈍における(200)面X線回折強度構成比率について
本発明では、最終圧延前の焼鈍において、(200)面X線回折強度構成比率を90%以下に調整する。(200)面X線回折強度構成比率は下記の式で定義される
(200)面X線回折強度構成比率=I200/(I111+I200+I220+I311)×100(%)
上記の式で、Ihklは(hkl)格子面のX線回折強度を示す。最終圧延前の焼鈍における(200)面X線回折強度構成比率は、最終圧延材の特性に影響を及ぼす。すなわち、(200)面X線回折強度構成比率が90%を超えると加工硬化能が低下する。そのため、(200)面X線回折強度構成比率が90%を超えると、最終圧延で強加工を施しても引張強さは低くなる。引張強さは再結晶特性と相関があるので、引張強さが低下すると所望の再結晶特性が得られないことになる。したがって、(200)面X線回折強度構成比率は90%以下に調整する。
(200)面X線回折強度構成比率の定義には、回折格子面として、(111)面、(200)面、(220)面、(311)面を織り込んでいる。これは、これら4つの回折格子面が、本発明で対象とするFe−Ni−Co系合金の、主要な回折格子面であることによる。
X線回折強度(cps)は、一般に用いられているX線ディフラクトメータにて測定する。管球は、Co管球を用いる。X線回折強度(cps)の測定には、ピークの高さを求める方法と、ピークの積分値を求める方法がある。本発明では、ピークの積分値を求める。
【0013】
【実施例】
実施例に示すシャドウマスク材の製造においては、まず、所定の化学組成のスラブを調製し、熱間圧延をおこない、表面の酸化スケールを除去し、厚さ3mmの板を得た。ここで、不純物濃度については、C:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Al:0.05質量%以下、S:0.005質量%以下、P:0.005質量%以下を満足するものであり、実施例、比較例とも、Ni:31〜33質量%、Co:4.5〜5.5質量%、Mn:0.2〜0.4質量%の範囲に組成を調整した。また、Nb等の強化元素は添加しておらず、例えばNbの分析値は0.01質量%未満であった。
得られた厚さ3mmの熱間圧延板を、つぎの工程で加工し、厚さ0.12mmの製品とした。
熱間圧延板→素圧延→中間焼鈍→中間圧延→最終圧延前の焼鈍→最終圧延
ここで、焼鈍はいずれも再結晶焼鈍であり、熱間圧延以外の圧延はいずれも冷間圧延である。各工程における加工条件あるいは目標品質を以下に示す。
(1)素圧延
中間圧延加工度、最終圧延加工度、および製品板厚から逆算し、素圧延で仕上げる板厚を設定した。
(2)中間焼鈍および中間圧延
最終圧延前の焼鈍において所定の(200)面X線回折強度構成比率(%)を得るには、中間焼鈍での結晶粒度番号と中間圧延での加工度を所定のものに設定しなくてはならない。本発明例では、中間焼鈍での結晶粒度番号を8.0に、中間圧延の加工度を72%に設定した。
(3)最終圧延前の焼鈍
焼鈍温度と焼鈍時間を制御し、本発明例では結晶粒度番号が9.0の焼鈍材を得た。
(4)最終圧延
板厚を0.12mmに圧延し製品とした。
【0014】
【表1】
【0015】
表1に発明例および比較例の特性を示す。
表1における最終圧延前焼鈍(200)面強度は、最終圧延前の焼鈍あがりの状態で測定した(200)面回折X線強度の構成比率(%)であり、次式より求めた。
(200)面回折X線強度構成比率=I200/(I111+I200+I220+I311)×100(%)
ここで、Ihklは(hkl)格子面のX線回折強度を示す。回折X線の強度(cps)は、X線ディフラクトメータにて測定した。管球は、Co管球を用いた。回折X線強度(cps)の測定では、ピークの積分値を求めた。測定試料の前処理として表層を化学研磨(エッチング)にて除去した。表層を除去するのは、表面に形成されている変質層の影響をなくすためである。除去量は、板厚の5%分とした。5%の除去量は、板厚内部の(200)強度の分布を確認したうえで設定したものである。
焼鈍前の引張強さは、0.12mm厚製品の引張強さ(MPa)を示す。製品結晶粒度(750℃)は、0.12mm厚製品の加熱試験(750℃×15分間:非酸化性雰囲気)後の結晶粒度を示す。製品結晶粒度(850℃)は、0.12mm厚製品の加熱試験(850℃×15分間:非酸化性雰囲気)後の結晶粒度を示す。アニ−ル後耐力は、シャドウマスクをプレス成型する前に行うアニ−ルを想定した熱処理(8%H2−N2,露点0℃,800℃×15分)を、0.12mm厚製品に施した後の0.2%耐力(MPa)である。
【0016】
発明例No.1〜5については、製品結晶粒度(750℃)が9.5以上、かつ、製品結晶粒度(850℃)が8.5以上であり、プレス成型前のアニ−ルを想定した熱処理後の耐力が高い。
一方、比較例1は、中間圧延加工度が78%と高いため、最終圧延前の焼鈍における(200)面回折X線強度構成比率が請求の範囲である90%を超えている。また、最終圧延前の焼鈍における結晶粒度も請求の範囲である8.0を下回っている。そのため、比較例1は、焼鈍前の引張強さ、製品結晶粒度(750℃)、製品結晶粒度(850℃)が請求の範囲からはずれ、アニ−ルを想定した熱処理後の耐力が低い。
また、比較例2は、最終圧延加工度が請求の範囲を満足していない。そのため、比較例2は、焼鈍前の引張強さ、製品結晶粒度(750℃)、製品結晶粒度(850℃)が請求の範囲からはずれ、アニ−ルを想定した熱処理後の耐力が低い。
さらに、比較例3は、最終圧延前の焼鈍における(200)面回折X線強度構成比率、最終圧延前の焼鈍における結晶粒度番号、最終圧延における圧延加工度のすべてが請求の範囲を満足していない。その結果、比較例3は、アニ−ルを想定した熱処理後の耐力が、全実施例の中で最も低い値になっている。
【0017】
【発明の効果】
Fe−Ni−Co系合金において、高強度化のための元素を添加することなく、低コストで、生産効率を阻害することなく、落下強度を高めたシャドウマスク材を提供することができる。
Claims (5)
- Ni:30〜35質量%、Co:2〜8質量%、Mn:0.50質量%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物もしくは随伴元素−但しC:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Al:0.05質量%以下、S:0.005質量%以下、P:0.005質量%以下−からなり、圧延加工組織より構成されるFe−Ni−Co系合金であり、750℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が9.5以上の再結晶組織が発現し、かつ、850℃、15分の焼鈍を実施したときに結晶粒度番号が8.5以上の再結晶組織が発現することを特徴とするシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金。
- 引張強さが630MPa以上であることを特徴とする,請求項1に記載のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金。
- スラブを熱間圧延し、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延を実施する工程で製造され、最終冷間圧延前の焼鈍にて、結晶粒度番号を8.0以上に調整し、最終冷間圧延の加工度を30%以上とすることを特徴とする請求項1、2に記載のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金の製造方法。
- スラブを熱間圧延し、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延を実施する工程で製造され、最終冷間圧延前の焼鈍にて、結晶粒度番号を8.0以上に調整し、最終冷間圧延の加工度を50%以上とすることを特徴とする請求項1、2に記載のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金の製造方法。
- 最終冷間圧延前の焼鈍にて、下記の式で定義される(200)面X線回折強度構成比率を90%以下に調整することを特徴とする請求項3、4に記載のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金の製造方法、
(200)面X線回折強度構成比率=I200/(I111+I200+I220+I311)×100(%)
ここで、Ihklは(hkl)格子面のX線回折強度を示す。
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