JP3469559B2 - 黒化処理後の低熱膨張性に優れたフラットマスク用Fe−Ni−Co系合金 - Google Patents
黒化処理後の低熱膨張性に優れたフラットマスク用Fe−Ni−Co系合金Info
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- C22C38/10—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing cobalt
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- C22C38/12—Ferrous alloys, e.g. steel alloys containing tungsten, tantalum, molybdenum, vanadium, or niobium
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- H01J—ELECTRIC DISCHARGE TUBES OR DISCHARGE LAMPS
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- H01J29/02—Electrodes; Screens; Mounting, supporting, spacing or insulating thereof
- H01J29/06—Screens for shielding; Masks interposed in the electron stream
- H01J29/07—Shadow masks for colour television tubes
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シャドウマスクの
電子線透過部分の形状を完全フラットにし、かつ高輝度
化で電子線の強度を高くしたとしても、ドーミングが生
じない低熱膨張性を有すると共に、ブラウン管に組み込
んだ状態での落下衝撃による耐変形性に優れる、プレス
成形型フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金に関す
るものである。本合金の特徴は、Ni、Co、Mnの割
合と高強度化元素としてのNbの選択とその添加量のコ
ントロールとによって高強度を維持しながら、黒化処理
後の熱膨張係数を小さくすることにある。ここで、「完
全フラット」とは、ブラウン管に組み立てた場合にその
前面ガラスがフラットな場合をいい、マスクが非常に大
きな曲率半径を持っている場合や、一方向にのみ曲率半
径を持っている場合も含む。
電子線透過部分の形状を完全フラットにし、かつ高輝度
化で電子線の強度を高くしたとしても、ドーミングが生
じない低熱膨張性を有すると共に、ブラウン管に組み込
んだ状態での落下衝撃による耐変形性に優れる、プレス
成形型フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金に関す
るものである。本合金の特徴は、Ni、Co、Mnの割
合と高強度化元素としてのNbの選択とその添加量のコ
ントロールとによって高強度を維持しながら、黒化処理
後の熱膨張係数を小さくすることにある。ここで、「完
全フラット」とは、ブラウン管に組み立てた場合にその
前面ガラスがフラットな場合をいい、マスクが非常に大
きな曲率半径を持っている場合や、一方向にのみ曲率半
径を持っている場合も含む。
【0002】
【従来の技術】カラーブラウン管では、電子銃から打ち
出した電子線をガラスパネルの内側の蛍光体に当てるこ
とで画面を表示する。電子線の方向を磁力により制御す
るのが偏向ヨークで、ガラスパネルの手前には、電子線
を所定の蛍光体に当たるように画素単位に区切る機構が
設けられており、マスクあるいは色選別機構と呼ばれて
いる。カラーブラウン管用のマスクは、マスク素材をド
ット状若しくはスロット状にエッチング加工した後プレ
ス成形するシャドウマスク方式と、すだれ状にエッチン
グ後、枠材に上下に強い引張り力をかけて張り渡して架
張するアパーチャグリル方式に大別される。それぞれの
方式は一長一短があり、どちらの方式も市場で用いられ
ている。
出した電子線をガラスパネルの内側の蛍光体に当てるこ
とで画面を表示する。電子線の方向を磁力により制御す
るのが偏向ヨークで、ガラスパネルの手前には、電子線
を所定の蛍光体に当たるように画素単位に区切る機構が
設けられており、マスクあるいは色選別機構と呼ばれて
いる。カラーブラウン管用のマスクは、マスク素材をド
ット状若しくはスロット状にエッチング加工した後プレ
ス成形するシャドウマスク方式と、すだれ状にエッチン
グ後、枠材に上下に強い引張り力をかけて張り渡して架
張するアパーチャグリル方式に大別される。それぞれの
方式は一長一短があり、どちらの方式も市場で用いられ
ている。
【0003】これまでのブラウン管の画面は、ある曲率
を持った球面構造をしているのが主流であったが、斜め
から見た時の画面の歪みや蛍光燈等の照明の反射が少な
いフラットな画面を持ったブラウン管が要求されるよう
になってきた。このような状況の中、架張のための枠材
(フレーム)が不要であるという大きな利点があるプレ
ス成形型のシャドウマスクにおいては、架張のための枠
材で強度を持たせることができないために、自己保形力
を高めるために高強度化元素を添加して強度を向上させ
ることが行われてきており、曲率半径を非常に大きくし
たフラット管用プレス成形型フラットマスクが実用化さ
れるようになってきた。プレス成形型フラットマスクに
おいては、ブラウン管組立後、ブラウン管全体に衝撃を
与え、マスクの変形が起きないことが重要である。その
ため、ブラウン管を一定高さから落下させ、マスクが変
形するかどうかを試験することが行われている。このよ
うな衝撃変形に強いマスクの開発がフラット管には必要
とされる。つまり、フラットマスクはブラウン管に組み
込んだ状態での落下衝撃による耐変形性に優れることが
必要である。
を持った球面構造をしているのが主流であったが、斜め
から見た時の画面の歪みや蛍光燈等の照明の反射が少な
いフラットな画面を持ったブラウン管が要求されるよう
になってきた。このような状況の中、架張のための枠材
(フレーム)が不要であるという大きな利点があるプレ
ス成形型のシャドウマスクにおいては、架張のための枠
材で強度を持たせることができないために、自己保形力
を高めるために高強度化元素を添加して強度を向上させ
ることが行われてきており、曲率半径を非常に大きくし
たフラット管用プレス成形型フラットマスクが実用化さ
れるようになってきた。プレス成形型フラットマスクに
おいては、ブラウン管組立後、ブラウン管全体に衝撃を
与え、マスクの変形が起きないことが重要である。その
ため、ブラウン管を一定高さから落下させ、マスクが変
形するかどうかを試験することが行われている。このよ
うな衝撃変形に強いマスクの開発がフラット管には必要
とされる。つまり、フラットマスクはブラウン管に組み
込んだ状態での落下衝撃による耐変形性に優れることが
必要である。
【0004】加えて、もともと、プレス成形型のシャド
ウマスクの隣接する電子線透過孔間には、ブリッジと呼
ばれる非透過孔部分が存在することから、マスクの熱膨
張によって電子銃から放出された電子線が本来照射され
るべき蛍光体の位置からずれる(以下、サーマルドリフ
ト)色ずれ現象が起き易い。フラット管においては、マ
スク曲率半径を大きくしたことによって、マスクの4隅
での電子銃から放出された電子線の入射角が鋭角とな
り、わずかなマスクの膨張でサーマルドリフトが起きる
ことに加えて、画面の高輝度化で電子線の照射エネルギ
ーが強くなる傾向にあることから、フラット管用マスク
には、高強度に加えて、熱膨張が非常に小さい材料が必
要となる。なお、サーマルドリフトとは温度上昇(重荷
は電子線の照射による)でマスクが膨脹し、電子線透過
孔と蛍光体の位置ずれが生じることを云う(電子線の経
路はずれていない)のに対して、ビームドリフトとは磁
気の影響により、電子線の経路がずれることを云う。
ウマスクの隣接する電子線透過孔間には、ブリッジと呼
ばれる非透過孔部分が存在することから、マスクの熱膨
張によって電子銃から放出された電子線が本来照射され
るべき蛍光体の位置からずれる(以下、サーマルドリフ
ト)色ずれ現象が起き易い。フラット管においては、マ
スク曲率半径を大きくしたことによって、マスクの4隅
での電子銃から放出された電子線の入射角が鋭角とな
り、わずかなマスクの膨張でサーマルドリフトが起きる
ことに加えて、画面の高輝度化で電子線の照射エネルギ
ーが強くなる傾向にあることから、フラット管用マスク
には、高強度に加えて、熱膨張が非常に小さい材料が必
要となる。なお、サーマルドリフトとは温度上昇(重荷
は電子線の照射による)でマスクが膨脹し、電子線透過
孔と蛍光体の位置ずれが生じることを云う(電子線の経
路はずれていない)のに対して、ビームドリフトとは磁
気の影響により、電子線の経路がずれることを云う。
【0005】フラットマスクを対象にしたものではない
が、熱膨張や耐衝撃性を改善する試みとして、特許第2
723718号では、2〜7%のCoを含むFe−Ni
系合金(Super Invar)をシャドウマスクに
することで熱膨張係数を低下させることが提案されてい
る。しかしながら、プレス前に軟化焼鈍を行なった後の
強度、特にヤング率はCoを含有することで低下し、マ
スクをフラットにした場合の落下衝撃に耐えるには十分
満足できるものではなかった。また、特許第18546
42号では、34.0〜38.0%のNiを含むFe−
Ni系合金に、Ti、Zr、B、Mo、Nb、N、P、
Cuのうち1種または2種以上を合計で0.01〜1.
0%含ませることにより、組み立て時の衝撃で座屈が起
きるのを防止することが提案されているが、熱膨張係数
が低熱膨張性の上限とされる1×10-6/℃を超えてお
り、マスクをフラットにした場合の色ずれ抑制の点では
満足できるものではなかった。
が、熱膨張や耐衝撃性を改善する試みとして、特許第2
723718号では、2〜7%のCoを含むFe−Ni
系合金(Super Invar)をシャドウマスクに
することで熱膨張係数を低下させることが提案されてい
る。しかしながら、プレス前に軟化焼鈍を行なった後の
強度、特にヤング率はCoを含有することで低下し、マ
スクをフラットにした場合の落下衝撃に耐えるには十分
満足できるものではなかった。また、特許第18546
42号では、34.0〜38.0%のNiを含むFe−
Ni系合金に、Ti、Zr、B、Mo、Nb、N、P、
Cuのうち1種または2種以上を合計で0.01〜1.
0%含ませることにより、組み立て時の衝撃で座屈が起
きるのを防止することが提案されているが、熱膨張係数
が低熱膨張性の上限とされる1×10-6/℃を超えてお
り、マスクをフラットにした場合の色ずれ抑制の点では
満足できるものではなかった。
【0006】そこで、本発明者らは、低熱膨張性を維持
しながら強度を向上させることを目的に研究し、Ni:
30〜35%、Co:2〜8%、Mn:0.01〜0.
5%、さらにNb、Ta、Hf各0.01〜0.8%か
ら選択された1種または2種以上を合計で0.01〜
0.8%含有し、残部Feからなる合金を開発した(特
願2000−31661号)。
しながら強度を向上させることを目的に研究し、Ni:
30〜35%、Co:2〜8%、Mn:0.01〜0.
5%、さらにNb、Ta、Hf各0.01〜0.8%か
ら選択された1種または2種以上を合計で0.01〜
0.8%含有し、残部Feからなる合金を開発した(特
願2000−31661号)。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】特願2000−316
61号で提案した合金は、素材としての低熱膨張性は申
し分なかったが、ブラウン管に組み立てた後サーマルド
リフトを測定すると、素材の低熱膨張性からは説明がつ
かないほどの大きなサーマルドリフト量を示す場合があ
ることがその後改めて認識されるようになった。そこ
で、本発明の課題は、特願2000−31661号で提
案した合金を基礎として、ブラウン管に組み立てた状態
でサーマルドリフト量が小さいフラット管用マスク材料
を開発することにある。
61号で提案した合金は、素材としての低熱膨張性は申
し分なかったが、ブラウン管に組み立てた後サーマルド
リフトを測定すると、素材の低熱膨張性からは説明がつ
かないほどの大きなサーマルドリフト量を示す場合があ
ることがその後改めて認識されるようになった。そこ
で、本発明の課題は、特願2000−31661号で提
案した合金を基礎として、ブラウン管に組み立てた状態
でサーマルドリフト量が小さいフラット管用マスク材料
を開発することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】ところで、プレス成形型
シャドウマスクは、次のようにして製造される。所定の
組成のインゴットを鍛造後、熱間圧延および冷間圧延
し、その後は光輝焼鈍と冷間圧延とを繰り返し、最後に
0.1〜0.30mmの範囲で所定の厚みにまで最終冷
間圧延が施される。その後、スリットして所定の板巾と
してシャドウマスク素材を得る。シャドウマスク素材
は、脱脂後、フォトレジストを両面に塗布してパターン
を焼き付けて現像後、エッチング穿孔加工され、個々に
切断されシャドウマスク素材ユニットとなる。シャドウ
マスク素材ユニットは、非酸化性雰囲気中で焼鈍されて
プレス成形性を付与された後、プレス成形される。そし
て最後に、プレス成形された完全フラットマスクは、脱
脂後、大気またはCO/CO2ガス雰囲気中で黒化処理
を施されて表面に黒色酸化膜(黒化膜)を形成する。そ
の後、黒化膜を形成した完全フラットマスクは、ブラウ
ン管に組み込まれる。
シャドウマスクは、次のようにして製造される。所定の
組成のインゴットを鍛造後、熱間圧延および冷間圧延
し、その後は光輝焼鈍と冷間圧延とを繰り返し、最後に
0.1〜0.30mmの範囲で所定の厚みにまで最終冷
間圧延が施される。その後、スリットして所定の板巾と
してシャドウマスク素材を得る。シャドウマスク素材
は、脱脂後、フォトレジストを両面に塗布してパターン
を焼き付けて現像後、エッチング穿孔加工され、個々に
切断されシャドウマスク素材ユニットとなる。シャドウ
マスク素材ユニットは、非酸化性雰囲気中で焼鈍されて
プレス成形性を付与された後、プレス成形される。そし
て最後に、プレス成形された完全フラットマスクは、脱
脂後、大気またはCO/CO2ガス雰囲気中で黒化処理
を施されて表面に黒色酸化膜(黒化膜)を形成する。そ
の後、黒化膜を形成した完全フラットマスクは、ブラウ
ン管に組み込まれる。
【0009】サーマルドリフトがマスク温度上昇によっ
て生じる現象であることから、同じ量の電子線が照射さ
れた場合には、マスクの温度上昇が大きいほど、あるい
はマスクの熱膨張係数が大きいほど、サーマルドリフト
が大きくなると考えられる。さらに、マスクの温度上昇
については、マスクの体積(熱容量)、マスクの熱伝導
度、およびマスク(黒化膜)の放射率が関係し、そして
マスクの熱膨張係数については、素材の熱膨張係数と黒
化膜の熱膨張係数とが関係すると考えられる。本発明者
は、マスクの体積についてはマスク設計で決まるもので
あるから除外し、他の因子について、ビームドリフトと
の関係を鋭意研究した。その結果、黒化処理前後でマス
クの熱膨張係数に大きな変化が起きる場合があることを
究明するに至った。
て生じる現象であることから、同じ量の電子線が照射さ
れた場合には、マスクの温度上昇が大きいほど、あるい
はマスクの熱膨張係数が大きいほど、サーマルドリフト
が大きくなると考えられる。さらに、マスクの温度上昇
については、マスクの体積(熱容量)、マスクの熱伝導
度、およびマスク(黒化膜)の放射率が関係し、そして
マスクの熱膨張係数については、素材の熱膨張係数と黒
化膜の熱膨張係数とが関係すると考えられる。本発明者
は、マスクの体積についてはマスク設計で決まるもので
あるから除外し、他の因子について、ビームドリフトと
の関係を鋭意研究した。その結果、黒化処理前後でマス
クの熱膨張係数に大きな変化が起きる場合があることを
究明するに至った。
【0010】具体的には、図1に示すように、プレス成
形前の、即ち黒化処理前の素材の熱膨張係数(30℃か
ら100℃の平均熱膨張係数で、以下単に熱膨張係数と
表記する)とサーマルドリフト量との関係においては、
ほとんど相関がなかったものが、黒化処理後の熱膨張係
数とサーマルドリフト量とでは明確な正相関があり、黒
化処理を行なうと熱膨張係数が大きくなるものは、例え
素材の熱膨張係数が小さくてもフラットマスク用合金と
しては適さないと判定すべきことが判明した。なお、図
1のサーマルドリフト量は、Nbを0.01%〜0.4
0%、Coを0.01%〜5.5%の範囲で含有する上
記合金について、球面ブラウン管に一般的に使用されて
いる36%Ni−Fe合金の場合を1.0とした相対値
で表わしている。サーマルドリフト量は、外面曲率半径
が100000mmのほぼ平面に近いシャドウマスクに
成形してCO/CO2混合ガス中で黒化処理してからブ
ラウン管に組み立て、長辺方向の中央と端との中間位置
に電子線を照射し続けて、電子線が本来照射される位置
からのずれの最大値を測定した。36%Ni−Fe合金
の場合、球面から平面にすることでビームドリフトが
1.5倍以上になるといわれていることから、逆に平面
管でビームドリフトを36%Ni−Fe合金使用の球面
と同じにするには、黒化処理後の熱膨張係数が36%N
i−Fe合金のそれの70%以下になる材料が必要とい
える。
形前の、即ち黒化処理前の素材の熱膨張係数(30℃か
ら100℃の平均熱膨張係数で、以下単に熱膨張係数と
表記する)とサーマルドリフト量との関係においては、
ほとんど相関がなかったものが、黒化処理後の熱膨張係
数とサーマルドリフト量とでは明確な正相関があり、黒
化処理を行なうと熱膨張係数が大きくなるものは、例え
素材の熱膨張係数が小さくてもフラットマスク用合金と
しては適さないと判定すべきことが判明した。なお、図
1のサーマルドリフト量は、Nbを0.01%〜0.4
0%、Coを0.01%〜5.5%の範囲で含有する上
記合金について、球面ブラウン管に一般的に使用されて
いる36%Ni−Fe合金の場合を1.0とした相対値
で表わしている。サーマルドリフト量は、外面曲率半径
が100000mmのほぼ平面に近いシャドウマスクに
成形してCO/CO2混合ガス中で黒化処理してからブ
ラウン管に組み立て、長辺方向の中央と端との中間位置
に電子線を照射し続けて、電子線が本来照射される位置
からのずれの最大値を測定した。36%Ni−Fe合金
の場合、球面から平面にすることでビームドリフトが
1.5倍以上になるといわれていることから、逆に平面
管でビームドリフトを36%Ni−Fe合金使用の球面
と同じにするには、黒化処理後の熱膨張係数が36%N
i−Fe合金のそれの70%以下になる材料が必要とい
える。
【0011】黒化処理後に熱膨張係数が大きくなる理由
は、Nb等の酸化されやすい元素を含む場合、その酸化
物が熱膨張係数を大きくしている。つまり、高強度化の
ために添加する元素が、酸素との反応性が強い元素であ
る場合や、その添加量が多い場合には、黒化処理後の熱
膨張係数を大きくしてしまうのである。従って、先に提
唱された強化元素のうちHfとTaは好ましくなく、N
bも添加量の範囲が0.4%を超えると黒化処理後の熱
膨張係数の増加が大きくなることを見出し、更にNiと
Coとの含有量およびMn含有量も、従来より狭い範囲
で組成を調整することによって、黒化処理後の熱膨張係
数の増加を抑制できることを見出し、本発明を完成する
に至った。
は、Nb等の酸化されやすい元素を含む場合、その酸化
物が熱膨張係数を大きくしている。つまり、高強度化の
ために添加する元素が、酸素との反応性が強い元素であ
る場合や、その添加量が多い場合には、黒化処理後の熱
膨張係数を大きくしてしまうのである。従って、先に提
唱された強化元素のうちHfとTaは好ましくなく、N
bも添加量の範囲が0.4%を超えると黒化処理後の熱
膨張係数の増加が大きくなることを見出し、更にNiと
Coとの含有量およびMn含有量も、従来より狭い範囲
で組成を調整することによって、黒化処理後の熱膨張係
数の増加を抑制できることを見出し、本発明を完成する
に至った。
【0012】かくして、本発明は、(1)質量百分率
(%)に基づいて(以下、%と表記する)、Co:4.
0%〜6.0%、Ni+Co:36.0%〜38.0%
およびMn:0.01%〜0.40%を含有し、さらに
Nb:0.20%〜0.40%を含有し、残部Feおよ
び不可避的不純物からなる、黒化処理後の低熱膨張性に
優れたプレス成形型フラットマスク用Fe−Ni−Co
系合金を提供する。本発明はまた、所要の強度を確保し
ながら、特に黒化処理後の熱膨張係数を小さくする目的
には、(2)質量百分率(%)に基づいて(以下、%と
表記する)、Co:5.1%〜5.7%、Ni+Co:
36.7%〜37.4%およびMn:0.26%〜0.
33%を含有し、さらにNbを0.24〜0.29%含
有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる黒化処理
後の低熱膨張性に優れたプレス成形型フラットマスク用
Fe−Ni−Co系合金を提供する。
(%)に基づいて(以下、%と表記する)、Co:4.
0%〜6.0%、Ni+Co:36.0%〜38.0%
およびMn:0.01%〜0.40%を含有し、さらに
Nb:0.20%〜0.40%を含有し、残部Feおよ
び不可避的不純物からなる、黒化処理後の低熱膨張性に
優れたプレス成形型フラットマスク用Fe−Ni−Co
系合金を提供する。本発明はまた、所要の強度を確保し
ながら、特に黒化処理後の熱膨張係数を小さくする目的
には、(2)質量百分率(%)に基づいて(以下、%と
表記する)、Co:5.1%〜5.7%、Ni+Co:
36.7%〜37.4%およびMn:0.26%〜0.
33%を含有し、さらにNbを0.24〜0.29%含
有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる黒化処理
後の低熱膨張性に優れたプレス成形型フラットマスク用
Fe−Ni−Co系合金を提供する。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の基本は、Ni:30〜3
5%、Co:2〜8%、Mn:0.01〜0.5%、さ
らにNb、Ta、Hf各0.01〜0.8%から選択さ
れた1種または2種以上を合計で0.01〜0.8%含
有し、残部Feからなる先に提唱された合金においては
HfとTaは好ましくなく、更にNi、Co、Mnの割
合(Co:4.0%〜6.0%、Ni+Co:36.0
%〜38.0%およびMn:0.01%〜0.40%)
と、高強度化元素としてのNbの選択とそのNb添加量
の厳密なコントロール(Nb:0.20%〜0.40
%)とによって高強度を維持しながら、黒化処理後の熱
膨張係数を小さくすることにある。こうした選択によ
り、黒化処理後の熱膨張係数を小さくすることができる
ことは全く予想外の知見であった。以下、本発明に関与
する成分元素の限定理由を述べる。
5%、Co:2〜8%、Mn:0.01〜0.5%、さ
らにNb、Ta、Hf各0.01〜0.8%から選択さ
れた1種または2種以上を合計で0.01〜0.8%含
有し、残部Feからなる先に提唱された合金においては
HfとTaは好ましくなく、更にNi、Co、Mnの割
合(Co:4.0%〜6.0%、Ni+Co:36.0
%〜38.0%およびMn:0.01%〜0.40%)
と、高強度化元素としてのNbの選択とそのNb添加量
の厳密なコントロール(Nb:0.20%〜0.40
%)とによって高強度を維持しながら、黒化処理後の熱
膨張係数を小さくすることにある。こうした選択によ
り、黒化処理後の熱膨張係数を小さくすることができる
ことは全く予想外の知見であった。以下、本発明に関与
する成分元素の限定理由を述べる。
【0014】Co:Coは、熱膨張係数を低下させると
同時に、耐力の向上にも役割を果たす。 Co含有量が
4.0%未満または6.0%を超えると、黒化処理後の
熱膨張係数が大きくなる。従って、 Co含有量を4.
0%〜6.0%とする。好ましいCo含有量は、5.1
%〜5.7%である。Co+Ni:Niはマルテンサイ
ト等の有害な組織を発生させないことと低熱膨張を達成
するために必要であるが、Coを含有する場合、その総
量(Co+Ni)が、36.0%〜38.0%の範囲に
することが必要である。このため、Co+Niの総量で
規定した。黒化処理後の低熱膨張性やより高温まで低熱
膨張性を維持するためには、好ましくは36.5〜3
7.5%の範囲である。Ni量としては、通常30%〜
34%範囲である。Mn:Mnは脱酸剤として添加され
る。また、熱間加工性を阻害する不純物として含まれる
Sを無害化させるのに必要であり、0.01%未満の場
合はSの無害化が十分に行なえない。また、添加量の増
加にともなって熱膨張係数が大きくなり、特に、黒化処
理後の熱膨張係数に大きく影響を及ぼす。従って、 M
n含有量を0.01%〜0.40%とする。好ましいM
n含有量は、0.26%〜0.33%である。
同時に、耐力の向上にも役割を果たす。 Co含有量が
4.0%未満または6.0%を超えると、黒化処理後の
熱膨張係数が大きくなる。従って、 Co含有量を4.
0%〜6.0%とする。好ましいCo含有量は、5.1
%〜5.7%である。Co+Ni:Niはマルテンサイ
ト等の有害な組織を発生させないことと低熱膨張を達成
するために必要であるが、Coを含有する場合、その総
量(Co+Ni)が、36.0%〜38.0%の範囲に
することが必要である。このため、Co+Niの総量で
規定した。黒化処理後の低熱膨張性やより高温まで低熱
膨張性を維持するためには、好ましくは36.5〜3
7.5%の範囲である。Ni量としては、通常30%〜
34%範囲である。Mn:Mnは脱酸剤として添加され
る。また、熱間加工性を阻害する不純物として含まれる
Sを無害化させるのに必要であり、0.01%未満の場
合はSの無害化が十分に行なえない。また、添加量の増
加にともなって熱膨張係数が大きくなり、特に、黒化処
理後の熱膨張係数に大きく影響を及ぼす。従って、 M
n含有量を0.01%〜0.40%とする。好ましいM
n含有量は、0.26%〜0.33%である。
【0015】Nb:Nbは強度、特にヤング率を向上さ
せる元素として添加される。0.20%未満では、その
効果が小さく、0.40%を超えると黒化処理後の熱膨
張係数が急激に大きくなる。従って、Nb含有量は0.
20〜0.40%の範囲とする。好ましいNb含有量
は、0.24%〜0.29%の範囲である。強化元素と
してのNbの選択とその適正範囲での添加が所要の強度
を確保しながら、特に黒化処理後の熱膨張係数を小さく
するのに必要である。
せる元素として添加される。0.20%未満では、その
効果が小さく、0.40%を超えると黒化処理後の熱膨
張係数が急激に大きくなる。従って、Nb含有量は0.
20〜0.40%の範囲とする。好ましいNb含有量
は、0.24%〜0.29%の範囲である。強化元素と
してのNbの選択とその適正範囲での添加が所要の強度
を確保しながら、特に黒化処理後の熱膨張係数を小さく
するのに必要である。
【0016】所要の強度を確保しながら、特に黒化処理
後の熱膨張係数を小さくするには、Coを高めにしてN
bを低めにすることが好ましい。その目的には、5.1
%〜5.7%Co−36.7%〜37.4%Ni+Co
−0.26%〜0.33%Mn−0.24〜0.29%
Nbの一層選択された組成範囲が推奨される。
後の熱膨張係数を小さくするには、Coを高めにしてN
bを低めにすることが好ましい。その目的には、5.1
%〜5.7%Co−36.7%〜37.4%Ni+Co
−0.26%〜0.33%Mn−0.24〜0.29%
Nbの一層選択された組成範囲が推奨される。
【0017】不可避的不純物は、溶解原料や副原料およ
び溶解炉材から不可避的に混入するもので、C、S、
P、O、N、Si、Al、Ti、Mg、Ca、Cr、C
u等がある。いずれの元素も少ない方が好ましい。シャ
ドウマスク用として使用する場合、エッチング性やプレ
ス成形性等を考慮すると、Cは0.01%以下、Sは
0.005%以下、Pは0.005%以下、Oは0.0
07%以下、Nは0.005%以下、Siは0.04%
以下、Alは0.04%以下、Tiは0.02%以下、
Mgは0.005%以下、Caは0.005%以下、C
rは0.10%以下、Cuは0.10%以下が好まし
い。なお、これら不可避的不純物のうち、Sは粒界また
は粒内にSまたはS化合物として偏析し、熱間加工性を
劣化させる。本発明では、熱膨張係数の点でSをMnS
として無害化するMnの添加に限度がある。Mn含有量
が0.10%未満の場合には、S含有量は0.0015
%以下が好ましい。
び溶解炉材から不可避的に混入するもので、C、S、
P、O、N、Si、Al、Ti、Mg、Ca、Cr、C
u等がある。いずれの元素も少ない方が好ましい。シャ
ドウマスク用として使用する場合、エッチング性やプレ
ス成形性等を考慮すると、Cは0.01%以下、Sは
0.005%以下、Pは0.005%以下、Oは0.0
07%以下、Nは0.005%以下、Siは0.04%
以下、Alは0.04%以下、Tiは0.02%以下、
Mgは0.005%以下、Caは0.005%以下、C
rは0.10%以下、Cuは0.10%以下が好まし
い。なお、これら不可避的不純物のうち、Sは粒界また
は粒内にSまたはS化合物として偏析し、熱間加工性を
劣化させる。本発明では、熱膨張係数の点でSをMnS
として無害化するMnの添加に限度がある。Mn含有量
が0.10%未満の場合には、S含有量は0.0015
%以下が好ましい。
【0018】次に、製造方法について述べる。本発明の
Fe−Ni−Co系合金の溶解は、真空溶解でも、炉外
精錬でも良い。ただし、Nbは酸素との親和力が強く脱
酸で消費される場合があるため、溶解の最終段階で添加
することが好ましい。なお、S含有量を0.0015%
以下にする場合は、真空溶解では極低S原料を使用する
必要が生じることから、炉外精錬で脱硫を行なうことが
コスト的に好ましい。こうして、最終的に合金組成に調
整した後に鋳造するが、鋳造は下注ぎでも上注ぎでも良
い。さらに、このようにして得られた鋳塊を電極として
再溶解しても良い。
Fe−Ni−Co系合金の溶解は、真空溶解でも、炉外
精錬でも良い。ただし、Nbは酸素との親和力が強く脱
酸で消費される場合があるため、溶解の最終段階で添加
することが好ましい。なお、S含有量を0.0015%
以下にする場合は、真空溶解では極低S原料を使用する
必要が生じることから、炉外精錬で脱硫を行なうことが
コスト的に好ましい。こうして、最終的に合金組成に調
整した後に鋳造するが、鋳造は下注ぎでも上注ぎでも良
い。さらに、このようにして得られた鋳塊を電極として
再溶解しても良い。
【0019】得られたインゴットは鍛造後、表面の酸化
スケールを除去し、熱間圧延および冷間圧延し、その後
は光輝焼鈍と冷間圧延とを繰り返し、最後に0.1〜
0.30mmの範囲で所定の厚みにまで最終冷間圧延が
施される。その後、スリットして所定の板巾としてシャ
ドウマスク素材を得る。シャドウマスク素材は、脱脂
後、フォトレジストを両面に塗布してパターンを焼き付
けて現像後、エッチング穿孔加工され、個々に切断され
シャドウマスク素材ユニットとなる。シャドウマスク素
材ユニットは、非酸化性雰囲気、例えば還元性雰囲気中
で焼鈍(例えば、N2−H2混合ガス中、750℃〜95
0℃にて15〜30分間)されてプレス成形性を付与さ
れる。そして最後に、プレス成形された完全フラットマ
スクは、脱脂後、大気またはCO/CO2ガス雰囲気中
で黒化処理を施されて表面に黒色酸化膜を形成する。
スケールを除去し、熱間圧延および冷間圧延し、その後
は光輝焼鈍と冷間圧延とを繰り返し、最後に0.1〜
0.30mmの範囲で所定の厚みにまで最終冷間圧延が
施される。その後、スリットして所定の板巾としてシャ
ドウマスク素材を得る。シャドウマスク素材は、脱脂
後、フォトレジストを両面に塗布してパターンを焼き付
けて現像後、エッチング穿孔加工され、個々に切断され
シャドウマスク素材ユニットとなる。シャドウマスク素
材ユニットは、非酸化性雰囲気、例えば還元性雰囲気中
で焼鈍(例えば、N2−H2混合ガス中、750℃〜95
0℃にて15〜30分間)されてプレス成形性を付与さ
れる。そして最後に、プレス成形された完全フラットマ
スクは、脱脂後、大気またはCO/CO2ガス雰囲気中
で黒化処理を施されて表面に黒色酸化膜を形成する。
【0020】本発明でいうプレス成形型「完全フラット
マスク」は、例えば、外面曲率半径R:100,000
mm以上そして平面度:画面曲面部の最大高さ/有効画
面対角寸法0.1%以下のほぼ完全に近い平面形態を有
するものである。
マスク」は、例えば、外面曲率半径R:100,000
mm以上そして平面度:画面曲面部の最大高さ/有効画
面対角寸法0.1%以下のほぼ完全に近い平面形態を有
するものである。
【0021】本発明合金は、黒化処理後の熱膨張係数が
1.4×10-6/℃(36%Ni−Feの70%)を超
えることなく、0.2%耐力が300MPa(36%N
i−Feの120%)以上、ヤング率が135Gpa
(36%Ni−Fe)以上を充分に実現することができ
る。適正なNi、Co、Mnの割合とNb添加量を一層
選択することにより、黒化処理後の熱膨張係数が1.1
×10-6/℃(36%Ni−Feの70%)を超えるこ
となく、0.2%耐力が300MPa(36%Ni−F
eの120%)以上、ヤング率が135Gpa(36%
Ni−Fe)以上を充分に実現することができる。
1.4×10-6/℃(36%Ni−Feの70%)を超
えることなく、0.2%耐力が300MPa(36%N
i−Feの120%)以上、ヤング率が135Gpa
(36%Ni−Fe)以上を充分に実現することができ
る。適正なNi、Co、Mnの割合とNb添加量を一層
選択することにより、黒化処理後の熱膨張係数が1.1
×10-6/℃(36%Ni−Feの70%)を超えるこ
となく、0.2%耐力が300MPa(36%Ni−F
eの120%)以上、ヤング率が135Gpa(36%
Ni−Fe)以上を充分に実現することができる。
【0022】
【実施例】表1に実施例および比較例として用いた合金
の組成を示す。
の組成を示す。
【0023】これら組成の合金は、まず、鉄とニッケル
とコバルトとを真空溶解法でカーボン脱酸で溶解し、N
b以外の成分が所定値になった時点で、Nb原料を添加
して、所定の組成の溶湯にし、下注ぎで鋳造して鋳塊を
得た。得られた鋳塊の不可避的不純物は、Cが0.00
3%から0.007%、Sが0.001%から0.00
3%、Pが0.001%から0.003%、Oは0.0
02%から0.005%、Nは0.001%から0.0
02%、Siは0.01%から0.02%、Alは0.
001%から0.005%、Tiは0.002%から
0.005%、Mgは0.001%以下、Caは0.0
01%以下、Crは0.01%から0.02%、そして
Cuは0.01%から0.02%であった。次に、鍛造
し、酸化スケールを機械的に除去した後に熱間圧延にて
3mm厚にし、酸洗を行ない冷間圧延前の素条を得た。
その後、冷間圧延と光輝焼鈍を繰り返し、約0.12m
m厚の冷間圧延材とした。これを必要に応じて形状矯正
や歪み取り焼鈍を行なった後に、スリットして所定の板
幅にすることでシャドウマスク素材を得た。
とコバルトとを真空溶解法でカーボン脱酸で溶解し、N
b以外の成分が所定値になった時点で、Nb原料を添加
して、所定の組成の溶湯にし、下注ぎで鋳造して鋳塊を
得た。得られた鋳塊の不可避的不純物は、Cが0.00
3%から0.007%、Sが0.001%から0.00
3%、Pが0.001%から0.003%、Oは0.0
02%から0.005%、Nは0.001%から0.0
02%、Siは0.01%から0.02%、Alは0.
001%から0.005%、Tiは0.002%から
0.005%、Mgは0.001%以下、Caは0.0
01%以下、Crは0.01%から0.02%、そして
Cuは0.01%から0.02%であった。次に、鍛造
し、酸化スケールを機械的に除去した後に熱間圧延にて
3mm厚にし、酸洗を行ない冷間圧延前の素条を得た。
その後、冷間圧延と光輝焼鈍を繰り返し、約0.12m
m厚の冷間圧延材とした。これを必要に応じて形状矯正
や歪み取り焼鈍を行なった後に、スリットして所定の板
幅にすることでシャドウマスク素材を得た。
【0024】このシャドウマスク素材の強度は、シャド
ウマスクにプレスする前の焼鈍として、還元性雰囲気中
で焼鈍(825℃×15分、水素中)して軟化した後の
強度で評価した。実際には、引張試験を行い、0.2耐
力を測定すると共に、「JIS R 1605」に従う
曲げ共振法により室温でヤング率を測定した。この方法
は、自由な曲げ振動をなし得るように駆動器側および検
出器側で吊り下げ糸により吊した試験片にその上下面に
発振器からの駆動力を加え、検出器を通して最大の振幅
を生じ且つ振動の節を測定して一次共鳴振動数を決定
し、一次共鳴振動数と試験片の質量および寸法から所定
の式に基づいて動的弾性率を算出するものである。さら
に、30〜100℃の間の平均熱膨張係数を、黒化処理
(600℃×15分、大気中)前後で測定した。そし
て、黒化処理後の平均熱膨張係数が36%Ni−Fe合
金の平均熱膨張係数(2.0×10-6/℃)の70%を
超えるものは、フラット管用のシャドウマスクとした場
合に、ビームドリフト量が大きくなると判断し、不適と
した。また、落下強度の点で、0.2%耐力が36%N
i−Fe合金の0.2%耐力(250MPs)の120
%以上でないもの、または、ヤング率が36%Ni−F
e合金のヤング率(135GPa)以上でないものを落
下衝撃によって変形が起きると判断し、不適とした。
ウマスクにプレスする前の焼鈍として、還元性雰囲気中
で焼鈍(825℃×15分、水素中)して軟化した後の
強度で評価した。実際には、引張試験を行い、0.2耐
力を測定すると共に、「JIS R 1605」に従う
曲げ共振法により室温でヤング率を測定した。この方法
は、自由な曲げ振動をなし得るように駆動器側および検
出器側で吊り下げ糸により吊した試験片にその上下面に
発振器からの駆動力を加え、検出器を通して最大の振幅
を生じ且つ振動の節を測定して一次共鳴振動数を決定
し、一次共鳴振動数と試験片の質量および寸法から所定
の式に基づいて動的弾性率を算出するものである。さら
に、30〜100℃の間の平均熱膨張係数を、黒化処理
(600℃×15分、大気中)前後で測定した。そし
て、黒化処理後の平均熱膨張係数が36%Ni−Fe合
金の平均熱膨張係数(2.0×10-6/℃)の70%を
超えるものは、フラット管用のシャドウマスクとした場
合に、ビームドリフト量が大きくなると判断し、不適と
した。また、落下強度の点で、0.2%耐力が36%N
i−Fe合金の0.2%耐力(250MPs)の120
%以上でないもの、または、ヤング率が36%Ni−F
e合金のヤング率(135GPa)以上でないものを落
下衝撃によって変形が起きると判断し、不適とした。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】本発明の合金No.1〜No.7は、黒化
処理後の熱膨張係数が1.4×10 -6/℃(36%Ni
−Feの70%)を超えることなく、0.2%耐力が3
00MPa(36%Ni−Feの120%)以上、ヤン
グ率が135Gpa(36%Ni−Fe)以上を充分に
実現した。これに対して、請求項1で規定したNb含有
量の範囲を超えるNo.8は、強度は申し分ないものの
黒化処理後の平均熱膨張係数が大きくフラット管用シャ
ドウマスクには適さない。また、請求項1で規定したN
b含有量の範囲に満たないNo.9は、黒化処理後の平
均熱膨張係数は十分に小さいが、強度が低くフラット管
用シャドウマスクには適さない。
処理後の熱膨張係数が1.4×10 -6/℃(36%Ni
−Feの70%)を超えることなく、0.2%耐力が3
00MPa(36%Ni−Feの120%)以上、ヤン
グ率が135Gpa(36%Ni−Fe)以上を充分に
実現した。これに対して、請求項1で規定したNb含有
量の範囲を超えるNo.8は、強度は申し分ないものの
黒化処理後の平均熱膨張係数が大きくフラット管用シャ
ドウマスクには適さない。また、請求項1で規定したN
b含有量の範囲に満たないNo.9は、黒化処理後の平
均熱膨張係数は十分に小さいが、強度が低くフラット管
用シャドウマスクには適さない。
【0028】No.10〜No.11は、Co含有量+
Ni含有量が請求項1の範囲をはずれるために、黒化処
理後の平均熱膨張係数が大きい。No.12とNo.1
3は、Co含有量が請求項1の範囲をはずれるために、
黒化処理後の平均熱膨張係数が大きい。また、No.1
2はCoが多いためにヤング率が小さく、No.13は
Coが少ないために0.2%耐力が小さく、落下衝撃に
対する強さの点でも十分とはいえない。No.14は、
Mnが請求項1の範囲に満たないため、熱間加工性が悪
いのに加えて0.2%耐力およびヤング率の点での十分
とはいえない。No.15は、Mnが請求項1の範囲を
超えるために、黒化処理後の熱膨張係数が大きい。N
o.16は、球面ブラウン管用に一般的に使用されてい
る36%−Fe合金であるが、熱膨張、強度ともにフラ
ット管には適さないことはいうまでもない。
Ni含有量が請求項1の範囲をはずれるために、黒化処
理後の平均熱膨張係数が大きい。No.12とNo.1
3は、Co含有量が請求項1の範囲をはずれるために、
黒化処理後の平均熱膨張係数が大きい。また、No.1
2はCoが多いためにヤング率が小さく、No.13は
Coが少ないために0.2%耐力が小さく、落下衝撃に
対する強さの点でも十分とはいえない。No.14は、
Mnが請求項1の範囲に満たないため、熱間加工性が悪
いのに加えて0.2%耐力およびヤング率の点での十分
とはいえない。No.15は、Mnが請求項1の範囲を
超えるために、黒化処理後の熱膨張係数が大きい。N
o.16は、球面ブラウン管用に一般的に使用されてい
る36%−Fe合金であるが、熱膨張、強度ともにフラ
ット管には適さないことはいうまでもない。
【0029】
【発明の効果】以上、Fe−Ni−Co合金において、
Nbを適量添加するとともに、Co、Ni、Mn含有量
を調整することで、落下衝撃に耐える強度を維持しなが
ら、黒化処理後の平均熱膨張係数の上昇を抑えることが
できた。特に高強度化元素であるNbを添加した場合に
は、成分のバランスによって黒化処理前後の熱膨張係数
の変化が大きく、これらの含有量を調整することで、初
めてビームドリフトの小さいフラット管用マスク材料と
して最適な特性を有する材料にできるといっても過言で
はない。こうして、究極は完全フラットになると考えら
れるプレス成形型シャドウマスク用として、ブラウン管
での色ずれが無く、取り扱いに際しても変形しないFe
−Ni−Co系合金が得られた。
Nbを適量添加するとともに、Co、Ni、Mn含有量
を調整することで、落下衝撃に耐える強度を維持しなが
ら、黒化処理後の平均熱膨張係数の上昇を抑えることが
できた。特に高強度化元素であるNbを添加した場合に
は、成分のバランスによって黒化処理前後の熱膨張係数
の変化が大きく、これらの含有量を調整することで、初
めてビームドリフトの小さいフラット管用マスク材料と
して最適な特性を有する材料にできるといっても過言で
はない。こうして、究極は完全フラットになると考えら
れるプレス成形型シャドウマスク用として、ブラウン管
での色ずれが無く、取り扱いに際しても変形しないFe
−Ni−Co系合金が得られた。
【図1】黒化処理前と黒化処理後の熱膨張係数とサーマ
ルビームドリフト量(球面ブラウン管に一般的に使用さ
れている36%Ni−Fe合金の場合を1.0とした相
対値で表わす)との関係を示すグラフである。
ルビームドリフト量(球面ブラウン管に一般的に使用さ
れている36%Ni−Fe合金の場合を1.0とした相
対値で表わす)との関係を示すグラフである。
Claims (2)
- 【請求項1】 質量百分率(%)に基づいて(以下、%
と表記する)、Co:4.0%〜6.0%、Ni+C
o:36.0%〜38.0%およびMn:0.01%〜
0.40%を含有し、さらにNbを0.20%〜0.4
0%含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる黒
化処理後の低熱膨張性に優れたプレス成形型フラットマ
スク用Fe−Ni−Co系合金。 - 【請求項2】 質量百分率(%)に基づいて(以下、%
と表記する)、Co:5.1%〜5.7%、Ni+C
o:36.7%〜37.4%およびMn:0.26%〜
0.33%を含有し、さらにNbを0.24〜0.29
%含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる黒化
処理後の低熱膨張性に優れたプレス成形型フラットマス
ク用Fe−Ni−Co系合金。
Priority Applications (3)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001092312A JP3469559B2 (ja) | 2001-03-28 | 2001-03-28 | 黒化処理後の低熱膨張性に優れたフラットマスク用Fe−Ni−Co系合金 |
KR10-2002-0016155A KR100471525B1 (ko) | 2001-03-28 | 2002-03-25 | 흑화처리후의 저열팽창성이 우수한 플랫 마스크용Fe-Ni-Co계 합금 |
CNB021082529A CN1145712C (zh) | 2001-03-28 | 2002-03-28 | 黑化处理后低热膨胀性优良的平面屏框用铁-镍-钴类合金 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2001092312A JP3469559B2 (ja) | 2001-03-28 | 2001-03-28 | 黒化処理後の低熱膨張性に優れたフラットマスク用Fe−Ni−Co系合金 |
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JP2001092312A Expired - Fee Related JP3469559B2 (ja) | 2001-03-28 | 2001-03-28 | 黒化処理後の低熱膨張性に優れたフラットマスク用Fe−Ni−Co系合金 |
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KR (1) | KR100471525B1 (ja) |
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---|---|---|---|---|
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---|---|---|---|---|
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- 2001-03-28 JP JP2001092312A patent/JP3469559B2/ja not_active Expired - Fee Related
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- 2002-03-25 KR KR10-2002-0016155A patent/KR100471525B1/ko not_active IP Right Cessation
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---|---|
CN1392279A (zh) | 2003-01-22 |
KR100471525B1 (ko) | 2005-03-09 |
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