JP2005187886A - シャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条 - Google Patents

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Abstract

【課題】 シャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条について、その製造方法を最適化し、落下強度および磁気特性の両方を最大限のものに引き上げることが本発明の目標である。
【解決手段】 Ni:30〜35質量%、Co:2〜8質量%、Mn:0.50質量%以下を含有し、Nb:0.01〜0.8質量%、Ta:0.01〜0.8質量%およびHf:0.01〜0.8質量%から選択された1種または2種以上を合計で0.01〜0.8質量%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、圧延加工組織より構成されるシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条であり、800℃で15分及び900℃で15分の焼鈍を実施したとき各々の結晶粒径の平均値が15μm以下、20μm以下、かつ結晶粒径の標準偏差と平均値との比がいずれも0.7以下である再結晶組織が発現することを特徴とする。

Description

本発明は、シャドウマスクの電子線透過部分の形状を完全フラットになるようにプレスしたとしても、ブラウン管に組み込んだ状態での落下衝撃による耐変形性に優れ、かつドーミングが生じない低熱膨張を維持できるフラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯に関する。
カラーブラウン管では、電子銃から打ち出した電子ビームをガラスパネルの内側の蛍光体に当てることで画面を表示する。電子ビームの方向を磁力により制御するのが偏向ヨークである。ガラスパネルの手前には電子ビームを所定の蛍光体に当たるように画素単位に区切る機構が設けられており、マスクあるいは色選別機構と呼ばれている。カラーブラウン管用のマスクはマスク素材をドット状若しくはスロット状にエッチング加工した後プレス成型するシャドウマスク方式と、すだれ状にエッチング後上下に強い引張り力をかけて枠材に架張するアパーチャグリル方式に大別される。それぞれの方式は一長一短があり、どちらの方式も市場で用いられている。
表示画面を平坦にするフラット画面の開発に向けては、多くの試みが成されてきた。ここで、フラット画面とは、従来の曲面表示画面がほぼ完全に近い平面形態を有するものである。ブラウン管の画面を平坦にしようとするとき大きな問題の一つになるのは、シャドウマスクやアパーチャグリルをどのようにして平坦に近づけるかである。それぞれに難題を抱えているが、プレスによりシャドウマスクの表面を平坦に近づけることは、アパーチャグリルのような架張方式のものよりも基本的に難しいとされている(例えば、NIKKEI ELECTRONICS、1999.7.26(No.748)128頁)。
その理由は、シャドウマスクを金属シートをプレス成型して製造するため、架張方式と違って、自己保形力により形状を維持する必要があり、基本的には曲面でないと形状維持ができないためである。一方、フラットマスクはマスクをほとんど平坦にするため、形状維持が困難である。これを解決するには、マスクの強度を上げるしか方法がない。ここで云う「マスク強度」とは、一般の金属の強度(例えば引張試験による強度)の意味とは違い、ブラウン管組み立て後、ブラウン管全体に衝撃を与え、マスクの変形が起きるかどうかである。具体的には、ブラウン管を一定高さから落下させ、マスクが変形するかどうかを試験する。このような衝撃変形に対し強い、すなわち耐落下衝撃変形性(以下、「落下強度」と称す。)を向上させたマスクの開発が、フラット管には必要とされる。
また、フラット管には、優れたドーミング特性が要求される。つまり、マスクが曲面からフラットになるに従い、電子銃から放出された電子ビームの入射角がマスクの四隅で鋭角となる。つまり、このため、マスクが熱膨張により僅かにずれるだけで、電子ビームがミスランディングし、色ずれ害の問題が発生することを意味する。したがって、熱膨張が従来のマスク材より格段に低い低熱膨張マスク材の開発が必要となる。
フラットマスクを対象にしたものではないが、熱膨張特性や落下強度の改善に効果があると考えられる試みとして、特許文献1では、27質量%のCoを含むFe−Ni−Co系合金(Super Invar)をシャドウマスクにすることで熱膨張係数を低下することが提案されている。しかしながら、Coを2〜7質量%含有させるだけでは不十分であり、フラットマスクとして必要な落下強度は得られない。プレス前にアニ−ル処理を行った後のマスクをフラットにした場合には、落下衝撃に耐えることができなかった。また、落下強度と関連する発明として、特許文献2では、Niが34〜38質量%のFe−Ni系合金にTi、Zr、B、Mo、Nb、N、P、Cuのうち1種又は2種以上を合計で0.01〜1.0質量%含ませることで、組み立て時の衝撃で座屈が起きるのを防ぐことが提案されているが、熱膨張係数が10×10−7/℃を超えており、マスクをフラットにした場合の色ズレ抑制の点では満足できるものではなかった。
合金元素を添加した高強度Fe−Ni−Co系合金条を、圧延と焼鈍のプロセスの工夫により改良した事例として特許文献3がある。本発明では、最終冷間圧延前の焼鈍における結晶粒度および最終冷間圧延の加工度に着目している。しかし、この発明は、プロセスでポイントとなる項目の抽出が不十分である。そのため、この発明から享受できる効果としてあげられるものは、プレス成型性を改善したことのみで、ブラウン管に組み込んだ際に要求される落下強度や磁気特性といった項目にまで及んでいない。
ところで、近年、画面がフラットであるだけでなく大型であることも、市場から要請されている。大型管には磁気ドリフトに関する問題がある。磁気ドリフトとは、外部磁場によって、電子線が本来の軌道からずれる現象である。一般に、画面端部においてずれが大きくなるので、大型管ではさらに大きくずれることになる。もともと、Fe−Ni−Co系合金条の磁気特性はFe−36Ni合金条と比較して劣っている。それに加え、高強度化のために種々の元素を添加したものは、炭化物、窒化物、炭窒化物が生成しやすい。特許文献3にあるように、これらの微細な析出物が多量に析出すると、磁気ドリフトは非常に大きくなる。
磁気ドリフトを引き起こす磁気として、地磁気があげられる。ブラウン管は、いったん、交流磁界中で消磁される。ところが、地磁気により磁化し、それにより生じる磁場が原因で電子線の軌道がずれる現象が生じる。ブラウン管の構造においては、前面のシャドウマスクと周囲をおおうインナーシールドと呼ばれる機構とで磁気を遮蔽している。したがって、シャドウマスク材の磁気特性が悪い場合、磁気シールド性を確保するため、シャドウマスク材やインナーシールド材は厚いものが必要になる。材料を厚くする方法は材料コストがかかるので、磁気特性の優れるシャドウマスク用高強度材が求められるようになっている。
シャドウマスク素材は、所定の組成の合金材料を例えば真空誘導溶解炉(VIM炉)で溶製後、インゴットに鋳造し、鍛造後、熱間圧延および冷間圧延し、その後光輝焼鈍と冷間圧延を繰り返し、最後に0.05〜0.3mm範囲の所定の厚みにまでダル加工した圧延ロールによる最終冷間圧延が施される。エッチング加工により製造される各種のシャドウマスク材の板厚は0.05〜0.30mmが一般的であり、特にプレス成型型のフラットマスクには板厚0.1〜0.13mmの材料が使用されている。その後、スリットして所定の板幅としてシャドウマスク用素材を得る。シャドウマスク用素材は、脱脂後、フォトレジストを両面に塗布してパターンを焼き付けて現像後、エッチング穿孔加工され、個々に切断されシャドウマスク素材ユニットとなる。
シャドウマスク素材ユニットは、非酸化性雰囲気、例えば還元性雰囲気中において700℃以上の温度でアニ−ルされてプレス成型性を付与される。プレアニ−ル法では、上記の焼鈍がエッチング前の最終冷間圧延材に対して行われる。シャドウマスク素材ユニットはレベラ加工を経た後、プレスによりフラットマスク形態に成型される。
そして最後に、プレス成型されたフラットマスクは、脱脂後、大気またはCO/COガス雰囲気中で黒化処理を施されて表面に黒色酸化膜を形成する。本発明のプレス成型型「フラットマスク」は例えば、外面曲率半径R:100,000mm以上そして平面度:画面曲面部の最大高さ/有効画面対角寸法=0.1%以下のほぼ完全に近い平面形態を有するものである。
特許第2723718号公報 特許第1854642号公報 特開2003−73780号公報
合金元素の添加は、Fe−Ni−Co系合金条の落下強度を改善するのに有効な方法である。ところが、熱膨張特性および磁気特性が劣化することから、合金元素の添加量を増やす方法にはおのずと限界がある。熱膨張特性は、おもに合金組成に影響を受ける。それに対し、磁気特性は、合金組成と加工・処理条件の両方に影響を受ける。所定の合金元素を含有し、一定の熱膨張特性を有するFe−Ni−Co系合金条について、その製造方法を最適化し、シャドウマスクの落下強度および磁気特性の両方を最大限に引き上げることが本発明の目標である。
発明者らは、この課題を解決するために鋭意、研究を重ねた結果、シャドウマスクの落下強度および磁気特性は、その再結晶特性と極めて良い相関を持つことを見出した。そして、プレス成型前のアニ−ルを行った後に、良好な特性が得られるように、Fe−Ni−Co系合金条の製造方法を最適化した。
つまり、本発明は、
(1)Ni:30〜35質量%、Co:2〜8質量%、Mn:0.50質量%以下を含有し、さらに、Nb:0.01〜0.8質量%、Ta:0.01〜0.8質量%およびHf:0.01〜0.8質量%から選択された1種または2種以上を合計で0.01〜0.8質量%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、圧延加工組織より構成されるFe−Ni−Co系合金条であり、800℃で15分の焼鈍を実施したときには結晶粒径の平均値が15μm以下であり、かつ結晶粒径の標準偏差と平均値との比(標準偏差/平均値)が0.7以下である再結晶組織が発現し、さらに、900℃で15分の焼鈍を実施したときには結晶粒径の平均値が20μm以下であり、かつ結晶粒径の標準偏差と平均値との比(標準偏差/平均値)が0.7以下である再結晶組織が発現することを特徴とするシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条、
(2)引張強さが660N/mm以上であることを特徴とする、上記(1)のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条、
(3)不可避的不純物もしくは随伴元素を、C:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Al:0.05質量%以下、S:0.005質量%以下、P:0.005質量%以下に規制することを特徴とする上記(1)、(2)のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条、
(4)スラブを熱間圧延し、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延を行い製品板厚とする一連の製造工程において、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍にて(200)面X線回折強度構成比率を90%以下に、かつ、結晶粒径の平均値を25μm以下に調整し、最終冷間圧延にて圧延加工度を30%以上、好ましくは50%以上に設定することを特徴とする上記(1)、(2)、(3)のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条の製造方法、
に関するものである。
所定の添加元素を含有するFe−Ni−Co系合金条について、落下強度および磁気特性の両方を最大限のものに引き上げることが本発明により可能となる。
以下に本発明の限定理由を述べる。
(1)Fe、Ni、Coについて
本発明におけるFe−Ni−Co系合金条のNi含有量は30〜35質量%の範囲である。また、Co含有量は2〜8質量%の範囲である。
Ni含有量が30質量%未満であると、また35質量%を超えると、熱膨張係数が大きくなり、シャドウマスク用として不適当である。
Coは熱膨張を低下させると同時に、再結晶後の耐力の向上にも寄与する。このためには2質量%以上の添加が必要であり、添加量が8質量%を超えると磁気特性を悪化させるので、2〜8質量%の範囲で添加される。
(2)Nb、Ta、Hfについて
Nb、Ta、Hfは熱膨張を上昇させずに、希望する高耐力を得ることができ、さらにはヤング率を向上させる元素として添加される。0.01質量%未満では、その効果がなく、他方0.8質量%を超えると、エッチング性の低下および熱膨張の上昇をもたらす。単独で、0.01〜0.8質量%の範囲とすることが必要であるのみならず、それらの合計含有量が0.01〜0.8質量%の範囲とすることが必要である。
なお、本発明の合金条を製造するに当たっては、マスクのエッチング性の観点から、Ni偏析の発生に注意する必要がある。Fe−Ni−Co系合金条にNb、Ta、Hfを添加すると、固相線温度と液相線温度が変化し、鋳造、凝固時にNi偏析がおこりやすくなる。Ni偏析が発生すると、ヤング率は低下する。この低下理由は、Ni偏析が発生することにより、Fe−Ni−Co系合金条の結晶方位が変化し、ヤング率が変化すると推定される。Ni偏析は、Nb、Ta、Hf含有量だけでなく、当然鋳造および鍛造条件の影響も受けるが、Nb、Ta、Hf含有量がそれぞれ0.01〜0.5質量%でそれらの合計が0.01〜0.5質量%であれば、Ni偏析は低減し、Nb、Ta、Hfを添加しないFe−Ni−Co系合金条と同様にNi偏析によるスジムラが発生しにくくなる。よって、Nb、Ta、Hf含有量は、それぞれ0.01〜0.5質量%、それらの合計は0.01〜0.5質量%とすることが望ましい。
(3)Mn、不純物及び随伴元素について
a)Mn含有量
Mnは熱間加工性を阻害するSを無害化するために鉄系合金条に随伴される。その含有量が少ないと、十分な効果は得られない。しかしながら、0.5質量%を超えると合金条は硬くなり、その加工性が劣ることになる。従って、Mn含有量の上限を0.5質量%と定めた。好ましくは、0.05〜0.5質量%の範囲の添加が推奨される。
b)C含有量
Cが0.10質量%を超えると、炭化物の生成によってエッチング穿孔性が阻害され、合金条はシャドウマスク用素条として適さなくなる。従って、C含有量の上限を0.10質量%と定めた。
c)Si含有量
Siが0.10質量%を超えると、合金条は、そのエッチング穿孔性が阻害されるので、シャドウマスク用素条として適さなくなる。従って、Si含有量の上限を0.10質量%と定めた。
d)Al含有量
Alが0.05質量%を超えると、アルミナ系の介在物の形成が著しく、合金条のエッチング穿孔性が阻害される。従って、Al含有量の上限を0.05質量%と定めた。
e)S含有量
Sは、0.005質量%を超えると、素条の熱間加工性を著しく阻害する。従って、S含有量の上限を0.005質量%と定めた。
f)P含有量
Pは、0.005質量%を超えると、合金条は、そのエッチング穿孔性が阻害され、シャドウマスク用素条として適さなくなる。従って、P含有量の上限を0.005質量%と定めた。
(4)再結晶特性について
落下強度はシャドウマスクの状態での耐力と相関を有するため、プレス成形前に700〜950℃のアニ−ル処理を施した後の耐力が高いことが求められる。所望の耐力を発現するためには、圧延加工組織より構成される条を800℃で15分の焼鈍を実施したときには結晶粒径の平均値が15μm以下であり、かつ、900℃で15分の焼鈍を実施したときには結晶粒径の平均値が20μm以下である再結晶組織が発現するFe−Ni−Co系合金条でなければならず、再結晶特性がこの規定より外れる場合には、シャドウマスクとして十分な落下強度が得られない。
なお、本発明において、圧延加工組織より構成される条とは、最終圧延上がりの状態のものをいい、以下において「製品」と称す。
また、所望の磁気特性を発現するためには、製品を800℃で15分の焼鈍を実施したときに結晶粒径の標準偏差と平均値との比(標準偏差/平均値)が0.7以下である再結晶組織が発現し、かつ、900℃で15分の焼鈍を実施したときには結晶粒径の標準偏差と平均値との比(標準偏差/平均値)が0.7以下である再結晶組織が発現するFe−Ni−Co系合金条でなければならず、再結晶特性がこの規定より外れる場合には、シャドウマスクとして十分な磁気特性が得られない。
(5)引張強さについて
再結晶特性は製品の引張強さと相関を持つ。製品の引張強さが660N/mm以上であれば、上記の再結晶特性が得られる。
(6)最終圧延前の焼鈍及び最終圧延加工度について
本発明では、最終圧延前の焼鈍における結晶粒微細化と最終圧延工程での強加工により、Fe−Ni−Co系合金条に、上記の再結晶特性を付与する。つまり、最終圧延前の再結晶焼鈍で得られる結晶粒径の平均値が25μm以下の状態で、加工度30%以上の強加工圧延を施すと所望の再結晶特性が得られる。最終圧延工程の加工度が30%未満の場合では所望の再結晶特性は得られない。従って本発明では最終圧延前の再結晶焼鈍で得られる結晶粒径の平均値を25μm以下、最終圧延工程の加工度を30%以上と規定する。より好ましい最終圧延加工度は50%以上である。
結晶粒径は、JIS G 0551に規定されている方法に準拠し測定する。また、圧延加工度(R)は次式で定義される。
={(t−t)/t}×100%
ここで、
t:圧延後の厚み
:圧延前の厚み
(7)最終圧延前の焼鈍における(200)面X線回折強度構成比率について
本発明では、最終圧延前の焼鈍において、(200)面X線回折強度構成比率を90%以下に調整する。(200)面X線回折強度構成比率は下記の式で定義される。
(200)面X線回折強度構成比率=I200/(I111+I200+I220+I311)×100(%)
上記の式で、Ihklは(hkl)格子面のX線回折強度を示す。最終圧延前の焼鈍における(200)面X線回折強度構成比率は、最終圧延材の特性に影響を及ぼす。すなわち、(200)面X線回折強度構成比率が高いと加工硬化能が低下し、最終圧延で強加工を施しても引張強さは低くなる。引張強さは製品の再結晶特性と相関があるので、引張強さが低下すると所望の再結晶特性が得られないことになる。よって、(200)面X線回折強度構成比率は90%以下に規定する。
(200)面X線回折強度構成比率の定義には、回折格子面として、(111)面、(200)面、(220)面、(311)面を織り込んでいる。これは、これら4つの回折格子面が、本発明で対象とするFe−Ni−Co系合金条の主要な回折格子面であることによる。
X線回折強度(cps)は、一般に用いられているX線ディフラクトメータにて測定する。管球は、Co管球を用いる。X線回折強度(cps)の測定には、ピークの高さを求める方法と、ピークの積分値を求める方法がある。本発明では、ピークの積分値を求める。
実施例に示すシャドウマスク材の製造においては、まず、所定の化学組成のスラブを調製し、熱間圧延をおこない、表面の酸化スケールを除去し、厚さ3mmの板を得た。ここで、実施例に用いたシャドウマスク材の溶解チャージの不純物濃度は、C:0.0037質量%、Si:0.047質量%、Al:0.001質量%、S:0.0027質量%、P:0.0018質量%であった。また、主成分の濃度は、Ni:31.94質量%、Co:5.02質量%、Mn:0.26質量%、Nb:0.24質量%であった。
得られた厚さ3mmの熱間圧延板を、つぎの工程で加工し、厚さ0.12mmの製品とした。
熱間圧延板→中間圧延(1)→中間焼鈍→中間圧延(2)→最終圧延前の焼鈍→最終圧延
ここで、焼鈍はいずれも再結晶焼鈍であり、圧延はいずれも冷間圧延である。各工程における加工条件あるいは目標品質を以下に示す。
(1)中間圧延(1)
中間圧延(2)加工度、最終圧延加工度、および製品板厚から逆算し、中間圧延(1)で仕上げる板厚を設定した。
(2)中間焼鈍および中間圧延(2)
最終圧延前の焼鈍において所定の(200)面X線回折強度構成比率(%)を得るには、中間焼鈍での結晶粒径の平均値と中間圧延(2)での加工度を所定のものに設定しなくてはならない。本発明例では、焼鈍温度と焼鈍時間を制御し、中間焼鈍での結晶粒径の平均値を20〜25μmに制御した。また、中間圧延(2)の加工度を70%に設定した。
(3)最終圧延前の焼鈍
焼鈍温度と焼鈍時間を制御し、本発明例では(200)面X線回折強度構成比率が85〜90%であり、結晶粒径の平均値が20〜25μmである焼鈍材を得た。
(4)最終圧延
板厚を0.12mmに圧延した。
Figure 2005187886
表1に発明例および比較例の特性を示す。
表1における最終圧延前焼鈍200面強度は、最終圧延前の焼鈍上がりの状態で測定した(200)面回折X線強度の構成比率(%)であり、次式より求めた。
(200)面回折X線強度構成比率=I200/(I111+I200+I220+I311)×100(%)
ここで、Ihklは(hkl)格子面のX線回折強度を示す。回折X線の強度(cps)は、X線ディフラクトメータにて測定した。管球は、Co管球を用いた。回折X線強度(cps)の測定では、ピークの積分値を求めた。測定試料の前処理として表層を化学研磨(エッチング)にて除去した。表層を除去するのは、表面に形成されている変質層の影響をなくすためである。除去量は、板厚の5%とした。5%の除去量は、板厚内部の(200)強度の分布を確認したうえで設定したものである。
最終圧延前焼鈍結晶粒径平均値は、最終圧延前の焼鈍あがりの状態で測定した結晶粒径の平均値である。
引張強さは、0.12mm厚製品の引張強さ(N/mm)である。
800℃結晶粒径平均値は、製品0.12mm厚の加熱試験(800℃×15分間:非酸化性雰囲気)における結晶粒径の平均値である。
800℃結晶粒径標準偏差比は、製品0.12mm厚の加熱試験(800℃×15分間:非酸化性雰囲気)における結晶粒径の標準偏差と平均値との比(標準偏差/平均値)である。
900℃結晶粒径平均値は、製品0.12mm厚の加熱試験(900℃×15分間:非酸化性雰囲気)における結晶粒径の平均値である。
900℃結晶粒径標準偏差比は、製品0.12mm厚の加熱試験(900℃×15分間:非酸化性雰囲気)における結晶粒径の標準偏差と平均値との比(標準偏差/平均値)である。
なお、上記の結晶粒径に関する項目は、JIS G 0551に準拠し測定した。
アニ−ル後耐力は、シャドウマスクをプレス成型する前に行うアニ−ルを想定した熱処理(8%H−N、露点0℃、850℃×15分)を0.12mm厚製品に施した後に測定した0.2%耐力(N/mm)である。
アニ−ル後磁気特性保磁力は、シャドウマスクをプレス成型する前に行うアニ−ルを想定した熱処理(8%H−N、露点0℃、850℃×15分)を0.12mm厚製品に施した後、磁化ヒステリシス曲線を測定し、曲線より求めた保磁力(A/m)である。測定は、JIS C 2531に準拠した。
磁化ヒステリシス曲線において、保磁力Hは、磁束密度が0となる磁界の強さである。保磁力Hの小さい材料は、小さな磁界の強さで磁束密度が0になる。したがって、シャドウマスクの磁気シールド特性を向上するには、保磁力Hは小さい方が良い。
発明例No.1〜5は、最終圧延前焼鈍における200面強度および結晶粒径平均値、最終圧延加工度、製品引張強さ、800℃加熱試験における結晶粒径の平均値および標準偏差比、900℃加熱試験における結晶粒径の平均値および標準偏差比がいずれも請求の範囲内である。その結果、プレス成型前のアニ−ルを想定した熱処理後の耐力は340N/mm以上の高い値を示した。また、保磁力は50A/m未満の低い値を示した。発明例No.1〜5は、高強度であり、かつ、磁気特性が優れている。
一方、比較例1および2は、中間圧延加工度が高く、最終圧延前焼鈍における200面強度が請求の範囲外である。そのため、800℃加熱試験における結晶粒径の標準偏差比,および,900℃加熱試験における結晶粒径の標準偏差比がいずれも請求の範囲外になった。その結果、プレス成型前のアニ−ルを想定した熱処理後の保磁力が50A/mを超える高い値を示した。比較例No.1および2は、高強度であるものの磁気特性が劣っている。
また、比較例3は、中間圧延(2)加工度が高く、最終圧延前の焼鈍における200面強度および結晶粒径平均値が請求の範囲外である。そのため、製品引張強さ、800℃加熱試験における結晶粒径の平均値、および、900℃加熱試験における結晶粒径の平均値がいずれも請求の範囲外になった。その結果、プレス成型前のアニ−ルを想定した熱処理後の耐力が340N/mm未満の低い値を示した。比較例No.3は、磁気特性が良好であるものの強度が劣っている。
さらに、比較例4は、最終圧延加工度が請求の範囲外である。そのため、製品引張強さ、800℃加熱試験における結晶粒径の平均値、900℃加熱試験における結晶粒径の平均値がいずれも請求の範囲外になった。その結果、プレス成型前のアニ−ルを想定した熱処理後の耐力が340N/mm未満の低い値を示した。比較例No.4は、磁気特性が良好であるものの強度が劣っている。
最後に、比較例5は、中間圧延(2)加工度が高く、最終圧延前の焼鈍における200面強度および結晶粒径平均値、最終圧延加工度、製品引張強さ、800℃加熱試験における結晶粒径平均値および標準偏差比、900℃加熱試験における結晶粒径平均値および結晶粒径標準偏差比がいずれも請求の範囲外である。その結果、プレス成型前のアニ−ルを想定した熱処理後の耐力が340N/mm未満の低い値になった。比較例No.5は、磁気特性が良好であるものの強度が劣っている。
なお、比較例1および2は、結晶粒径標準偏差比が請求の範囲外であるため、磁気特性が劣化した。一方、比較例3および5は、結晶粒径標準偏差比が請求の範囲外であるにもかかわらず磁気特性が良好であった。これは、磁気特性は、結晶粒径標準偏差比だけでなく、結晶粒径平均値にも影響を受けることによる。すなわち、比較例3および5は、800℃加熱試験における結晶粒径の平均値、および、900℃加熱試験における結晶粒径の平均値が大きい。その影響で、結晶粒径標準偏差比が大きいにもかかわらず磁気特性が劣化しなかったものである。

Claims (5)

  1. Ni:30〜35質量%、Co:2〜8質量%、Mn:0.50質量%以下を含有し、さらに、Nb:0.01〜0.8質量%、Ta:0.01〜0.8質量%およびHf:0.01〜0.8質量%から選択された1種または2種以上を合計で0.01〜0.8質量%含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなり、圧延加工組織より構成されるFe−Ni−Co系合金条であり、800℃で15分の焼鈍を実施したときには結晶粒径の平均値が15μm以下であり、かつ結晶粒径の標準偏差と平均値との比の値(標準偏差/平均値)が0.7以下である再結晶組織が発現し、さらに、900℃で15分の焼鈍を実施したときには結晶粒径の平均値が20μm以下であり、かつ結晶粒径の標準偏差と平均値との比(標準偏差/平均値)が0.7以下である再結晶組織が発現することを特徴とするシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条。
  2. 引張強さが660N/mm以上であることを特徴とする、請求項1に記載のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条。
  3. 不可避的不純物もしくは随伴元素を、C:0.10質量%以下、Si:0.10質量%以下、Al:0.05質量%以下、S:0.005質量%以下、P:0.005質量%以下に規制することを特徴とする請求項1、2に記載のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条。
  4. スラブを熱間圧延した後、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延を行い製品板厚とする一連の製造工程において、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍にて(200)面X線回折強度構成比率を90%以下に、かつ、結晶粒径の平均値を25μm以下に調整し、最終冷間圧延にて圧延加工度を30%以上に設定することを特徴とする請求項1〜3に記載のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条の製造方法。
  5. スラブを熱間圧延した後、冷間圧延と再結晶焼鈍を繰り返し、最後に冷間圧延を行い製品板厚とする一連の製造工程において、最終冷間圧延前の再結晶焼鈍にて(200)面X線回折強度構成比率を90%以下に、かつ、結晶粒径の平均値を25μm以下に調整し、最終冷間圧延にて圧延加工度を50%以上に設定することを特徴とする請求項1〜3に記載のシャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金条の製造方法。
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