JP3379368B2 - 板形状および耐熱収縮性に優れた低熱膨張合金薄板の製造方法 - Google Patents

板形状および耐熱収縮性に優れた低熱膨張合金薄板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、シャドウマスクや
リードフレーム等の微細なエッチング加工を施す電子部
品用として使用されるFe−Ni系合金や、この合金に
さらにCoを添加したFe−Ni−Co系合金を用いた
低熱膨張合金薄板に関するものである。特に、テレビジ
ョンやコンピュータディスプレイに使用されるシャドウ
マスク用素材として好適な板形状や耐熱収縮性に優れた
Fe−Ni系合金やFe−Ni−Co系合金を用いた低
熱膨張合金薄板の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】Fe−Ni系合金薄板は低い熱膨張係数
でエッチング性に優れるため、シャドウマスクやICリ
ードフレームなどの各種電子部品に使用されるようにな
ってきた。以下に、シャドウマスクの場合について説明
する。
【0003】シャドウマスクは、テレビジョンおよびコ
ンピュータディスプレイのブラウン管に配設されてお
り、電子銃から発射された電子ビームをガラス体によっ
て支持された蛍光面上の所定の点に正確に照射して特定
の色調を与えるための細孔を有している。この時、発射
されたビームのうち蛍光体に照射される量は約2割で、
残りの約8割はシャドウマスクに衝突してしまうため、
シャドウマスクは蛍光面を支持するガラス体に比べて高
温になる。
【0004】その上、シャドウマスク用素材として従来
より用いられてきた低炭素リムド鋼や低炭素アルミキル
ド鋼等の軟鋼板は、蛍光面を支持するガラス体に比べて
熱膨張率がはるかに大きい。そのため、これらの鋼板を
素材とするシャドウマスクでは、発射されたビームがシ
ャドウマスクに衝突してシャドウマスク本体が高温にな
ると、相互に位置ずれを生じて、電子ビームを蛍光面上
の所定の点へ正確に照射することができなくなり、画像
が不鮮明になることが多かった。画像が不鮮明になるこ
とを防止するために、シャドウマスクの懸架装置となる
支持体の構造を工夫して、相互の位置ずれを補償するこ
とも試みられているが、必ずしも十分とはいえない。
【0005】さらに、近年は、テレビジョン画面の60
0〜1000mmあるいはそれ以上の寸法への大型化お
よびコンピュータディスプレイへの適用拡大とともに、
画像のきめ細かさや高輝度化への要求が一段と高まり、
位置ずれ、色ずれの問題がより顕在化してきた。
【0006】このために電子ビームの通過孔をより微細
で高精度に穿孔するようなエッチング加工が必要になっ
てきた。特に、コンピュータディスプレイに使用される
高精細シャドウマスクでは主として板厚0.15mm以
下の素材が使用され、例えば直径120μmの孔が27
0μmピッチで穿孔されており、さらにファインピッチ
化が試行されている。
【0007】このような微細な孔をエッチング面に精度
よく穿孔するために、今まで以上のエッチング技術の向
上とともに、原板形状の向上と、熱処理と加工を施す製
造過程における熱収縮を低下させることが必要になり、
そのための検討が行われている。
【0008】そこで、シャドウマスク用素材として、3
6wt%のFe−Ni系合金が検討され始め、その使用
が拡大している。この合金は従来の低炭素鋼に比べて熱
膨張係数が約1/10と小さく、高輝度大型画面におけ
る電子ビームによる加熱に対しても低熱膨張性が維持さ
れるため、これを素材として作られたシャドウマスクで
は、熱膨張による色ずれを生じにくい。
【0009】シャドウマスク用Fe−Ni系合金薄板
は、連続鋳造または造塊法によって合金鋼塊を調整し、
次いで、分塊圧延、熱間圧延し、冷間圧延と焼鈍を1回
または2回以上繰り返し、さらに、冷間圧延と、冷間圧
延後の鋼板形状の矯正を兼ねた歪み取り焼鈍を施して製
造される。さらに、この合金薄板にフォトエッチング加
工で電子ビームの通過孔を形成した後、焼鈍、成形加工
および黒化処理等の各工程を経てシャドウマスクが製造
される。エッチング加工後の焼鈍は、引続き施されるプ
レス加工が容易なように800℃以上の再結晶温度域で
行われる。
【0010】シャドウマスクのエッチング孔には高い加
工精度が必要とされるため、エッチング前の原板におい
ても良好な板形状すなわち平坦であることが要求され
る。また、シャドウマスクはエッチング加工後、再結晶
焼鈍されプレス成形されるが、再結晶焼鈍時の寸法変化
(熱収縮)が小さいことも必要とされる。熱収縮が大き
い場合、プレス成形後におけるエッチング孔の孔径の縦
と横の比率が、エッチング段階での縦横比からずれるた
め、解像度不良の一因となる。また、図3に示すように
シャドウマスク側位置決め穴2の位置とプレス型側の位
置決めガイド3の位置がずれてがたつき、プレス加工時
の生産性を損なうという問題が生じる。
【0011】すなわち、シャドウマスク用途に使用する
場合には、エッチング孔の加工精度を高めるとともに、
シャドウマスクの生産性を損なうことのないように、鋼
板の平坦度を高め、エッチグ加工後の再結晶焼鈍におい
て熱収縮の少ないFe−Ni系合金薄板が求められてい
る。
【0012】Fe−Ni系合金薄板は、リードフレーム
用途にも使用されている。しかし、製品寸法が100m
m程度の長さのリードフレーム用素材では、600〜1
000mmあるいはそれ以上の寸法のシャドウマスク用
素材のような厳しい板形状管理の必要がない。
【0013】また、リードフレーム用途では、エッチン
グ加工後に、シャドウマスクのように再結晶温度以上の
熱処理を行わないので、リードフレーム用素材では、シ
ャドウマスク用素材のような厳しいエッチング加工後の
耐熱収縮性は求められない。
【0014】シャドウマスクやリードフレーム用素材に
ついて、エッチング加工後の板形状あるいは耐熱収縮性
を改善する以下の技術が開示されている。
【0015】シャドウマスク用鋼板の板形状の改善につ
いては、特開平1−99721号公報に、Fe−Ni合
金か、アルミキルド鋼を対象としたものかは不明である
が、冷間圧延後のテンションレベラーによる塑性変形量
を規定することにより、冷間圧延後の残留応力を低減し
て、エッチング加工後の反りを改善する技術が開示され
ている。
【0016】また、特開平4−214821号公報に
は、リードフレーム用合金の製造方法として、Fe−
(40〜50)Ni低膨張合金を使用して、ローラーレ
ベラーによる形状矯正を行った後、2〜10kgf/m
2 の張力を加えながら、500〜600℃に3分間以
内の時間加熱する焼鈍条件でテンションアニールして、
残留応力を低減し、打ち抜き加工後の歪みを低減する技
術が開示されている。
【0017】一方、熱収縮の低下については、リードフ
レーム用合金の製造方法として、特開平2−16910
6号公報に、テンションレベラー矯正を行い、加工歪み
のばらつきを抑え、残留応力を低減することにより、エ
ッチング加工後の耐熱収縮性を改善する技術が開示され
ている。
【0018】
【発明が解決しようとする課題】ところがこれらの従来
技術を、高精度の微細エッチング孔が穿孔されるシャド
ウマスク用の熱膨張の低いFe−Ni系合金薄板に転用
しても、シャドウマスク用途において要求される優れた
板形状と耐熱収縮性を得るには不十分であった。
【0019】例えば、特開平1−99721号公報で
は、エッチング加工後の反りが考慮されているだけで、
実施例に示された板幅500mmの鋼板への伸長率0.
35%では、板幅がより広い場合に板幅方向での板形状
の平坦度を確保できないという問題があった。また、耐
熱収縮性についての考慮もない。
【0020】また、特開平4−214821号公報で
は、製品寸法の小さいリードフレーム用途を対象とし
て、単に打ち抜き加工後の歪みの低減を考慮しているだ
けで、シャドウマスクのように製品寸法が大きく、再結
晶温度以上の高温の歪み取り焼鈍とプレス加工を施す場
合の形状や熱収縮性について考慮されておらず、シャド
ウマスクのような用途では平坦な形状を安定して確保す
ることができずまた熱収縮率が大きいという問題があ
る。
【0021】一方、特開平2−169106号公報で
は、熱収縮を改善する方法が示されているが、この方法
はあくまでリードフレーム用素材にのみ適用できる技術
である。すなわち、後述するように、シャドウマスクの
ように、プレス加工が容易なように再結晶焼鈍して軟化
させる用途では、熱収縮率は、再結晶温度未満で熱処理
する場合に比べて顕著に大きくなり、また、形状矯正の
際の伸長率によっても大きく異なる。この方法ではリー
ドフレーム用素材としての再結晶温度未満の300℃で
の熱収縮の改善のみに着目しており、シャドウマスク用
素材に不可欠な再結晶温度域での熱収縮についての考慮
が全くなされていない。さらに、シャドウマスクのよう
に寸法の大きな製品の場合に重要な鋼板の平坦度につい
ても全く考慮されていない。したがって、この方法は、
あくまでもリードフレーム用素材にのみ適用できる技術
にすぎず、製品寸法が大きく、製造方法も異なるシャド
ウマスク用素材には適用できないという問題がある。
【0022】したがって、前記に開示されるFe−Ni
系低熱膨張合金薄板を、製品寸法が大きく、再結晶焼鈍
を行うシャドウマスク用途に使用した場合、必要な鋼板
の平坦度や耐熱収縮性を確保できないため、エッチング
孔の加工精度の低下やプレス加工時の生産性が低下する
という問題がある。
【0023】本発明は上記の実情を鑑みて、シャドウマ
スク用素材として使用しても問題のない板形状や耐熱収
縮性に優れたFe−Ni系低熱膨張合金薄板あるいはF
e−Ni−Co系低熱膨張合金薄板の製造方法を提供す
ることを目的とするものである。
【0024】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、Fe−N
i系低熱膨張合金薄板をシャドウマスク素材として使用
するために必要な板形状や耐熱収縮性の品質水準、Fe
−Ni系低熱膨張合金薄板の板形状と再結晶焼鈍後の熱
収縮に及ぼす製造条件の影響等について種々の検討を行
った。その結果、シャドウマスクのような大きな寸法の
場合、エッチング孔の加工精度を良好にするとともに、
シャドウマスクの生産性を損なうことのないようにする
には、前記したように耐熱収縮率を小さくすることと鋼
板の平坦度を高めることが必要であるが、平坦度を従来
のように単に耳波や中伸びの高さで管理するだけでは不
十分であり、後記するように耳波や中伸びの高さとピッ
チを考慮した急峻度で管理する必要があること、および
急峻度や再結晶焼鈍後の耐熱収縮性が、歪み取り焼鈍前
に行う形状矯正条件や歪み取り焼鈍時の鋼板張力により
影響を受けること等を知見した。そこで、さらに検討を
進めた結果、歪み取り焼鈍の前の形状矯正条件と、歪み
取り焼鈍条件を組み合わせることにより、鋼板の平坦度
と再結晶焼鈍後の耐熱収縮性に対して最適条件が存在
し、この最適条件で製造したFe−Ni系合金薄板は、
寸法の大きなシャドウマスクに使用した場合にも、エッ
チング孔の加工精度が良好であり、またプレス加工時の
作業性にも優れていることが明らかになった。
【0025】本発明は上記のような知見に基づいてなさ
れたものであり、その要旨は次のとおりである。 (1)Niを32〜38wt%含むFe−Ni系合金
を、冷間圧延後、伸長率0.4〜3%の歪みを付与して
形状矯正を行い、引き続いて鋼板温度550〜690
℃、張力2kgf/mm2 以下の条件で歪み取り焼鈍を
行うことを特徴とする板形状および耐熱収縮性に優れた
Fe−Ni系低熱膨張合金薄板の製造方法である。 (2)Niを32〜38wt%、Coを7wt%以下含
み、かつNi+Coが30〜38wt%であるFe−N
i−Co系合金を、冷間圧延後、伸長率0.4〜3%の
歪みを付与して形状矯正を行い、引き続いて鋼板温度5
50〜690℃、張力2kgf/mm2 以下の条件で歪
み取り焼鈍を行うことを特徴とする板形状および耐熱収
縮性に優れたFe−Ni−Co系低熱膨張合金薄板の製
造方法である。 (3)前記(1)または、(2)において、テンション
レベラーにより歪みを付与することを特徴とする板形状
および耐熱収縮性に優れた低熱膨張合金薄板の製造方法
である。
【0026】以下に本発明を詳細に説明する。本発明者
らは、Fe−Ni系低熱膨張合金薄板をシャドウマスク
用途に使用するために必要な板形状や耐熱収縮性の品質
水準について調査した結果、板形状を急峻度で0.5%
以下、熱収縮率を0.05%以下にすればよいことを知
見した。そこで、形状矯正条件および歪み取り焼鈍条件
と急峻度、熱収縮率の関係について検討した。
【0027】図1は、常法によりFe−36wt%Ni
系合金を溶製して製造した板厚0.13mmの冷間圧延
後の鋼板を、テンションレベラーにより異なる伸長率で
形状矯正した後、張力0.5kgf/mm2 の張力をか
けながら鋼板温度580℃で歪み取り焼鈍を行って得た
鋼板のテンションレベリングの伸長率と急峻度の関係を
示した図である。
【0028】ここで、急峻度は、板形状すなわち鋼板の
平坦度を表すパラメータで、耳波および中伸びの高さと
ピッチを測定し次式より求めた。 急峻度(%)=高さ(mm)/ピッチ(mm)×100
【0029】図1から、テンションレベリングの伸長率
が増加すると急峻度が改善され、逆に低伸長率では急峻
度が劣ることがわかる。
【0030】急峻度は、鋼板の幅方向および圧延方向に
おける局部的な残留応力の不均一によるマクロな残留応
力に関係しており、高伸長率ほど急峻度が低下する理由
は、冷間圧延後の鋼板において板幅方向に存在する中伸
びなどの歪みが、高伸長率を付与することによって局部
的な降伏伸びを生じて均一に伸ばされて前記の残留応力
の不均一が解消されるためと考えられる。
【0031】続いて、テンションアニールによる歪み取
り焼鈍を行った場合の張力と熱収縮の関係を調査した。
【0032】図2は、常法によりFe−36wt%Ni
系合金を溶製して製造した板厚0.12〜0.20mm
の冷間圧延後の鋼板を用いて、0.5〜3%の伸長率で
テンションレベリングを行った後、テンションアニール
による歪み取り焼鈍を行った場合の張力と熱収縮の関係
を示す図である。歪み取り焼鈍は、異なる張力をかけな
がら、鋼板温度600℃で5〜60秒間均熱後、20℃
/秒以上の冷却速度で冷却して行った。
【0033】熱収縮率は、前記で得た鋼板の板幅中央部
と鋼板端部から100mmの部分から、それぞれ鋼板の
長手方向に300mm(長さ)×100mm(幅)×全
厚の試験片を採取し、シャドウマスクのプレス成形前の
焼鈍工程をシミュレートした850〜900℃×30分
間の熱処理を行い、それぞれの熱処理前後の試験片の長
さの差をノギスで測定して最大収縮量を求め、その収縮
比率により評価した。ここで、850〜900℃の加熱
温度は本発明が規定するFe−Ni系合金やFe−Ni
−Co系合金が再結晶し軟化する温度域である。
【0034】図2から、熱収縮率は、歪み取り焼鈍時の
張力による影響だけでなく、歪み取り焼鈍前に付与した
伸長率の影響を受ける。張力が増加するほど、また伸長
率が増加するほど、熱収縮率が増加する傾向にある。
【0035】張力が増加するほど熱収縮率が増加する現
象の詳細なメカニズムは不明であるが、張力が付与され
るとによって、結晶粒界や結晶粒内外での塑性変形の差
によるミクロな残留応力が結晶に蓄積し、シャドウマス
ク製造工程の再結晶焼鈍において再結晶する際にミクロ
な残留応力が開放され熱収縮を引き起こすと考えられ
る。
【0036】また、伸長率を増加するほど熱収縮率が増
加する理由は、テンションレベリング時に、結晶粒およ
び粒界にミクロな残留応力(転位の蓄積)が導入される
が、伸長率を増加するほどこの量が増加し、再結晶焼鈍
によってこの残留応力が開放される結果、大きな熱収縮
が発生すると考えられる。再結晶温度以上の温度に加熱
すると、結晶粒の再配列によってミクロな残留応力が開
放されるために、再結晶焼鈍時の熱収縮率は、再結晶温
度未満の場合に比べて顕著に大きくなる。
【0037】以上の結果をもとに、形状矯正条件および
歪み取り焼鈍条件と急峻度、熱収縮率の関係について更
に検討を重ねたところ、形状矯正時の伸長率および歪み
取り焼鈍の焼鈍温度と張力を一定の範囲内に規定するこ
とにより、前記した急峻度と熱収縮率の両方を同時に満
足できることがわかった。
【0038】以下に形状矯正条件と歪み取り焼鈍条件に
ついて説明する。板形状と耐熱収縮性をともに満足させ
るためには、冷間圧延後、特定範囲の伸長率による鋼板
の形状矯正とその後の特定条件の歪み取り焼鈍を組み合
わせて行うことが必要である。形状矯正に際して、鋼板
に付与する伸長率は0.4〜3%の範囲にすることが必
要である。伸長率が0.4%未満では、急峻度が大きく
なって鋼板の平坦度が損なわれ、伸長率が3%を超える
と、歪み取り焼鈍後の熱収縮率が大きくなることに加え
て、板厚が0.15mm以下の薄鋼板の場合、鋼板表面
にしわが発生するからである。形状矯正はテンションレ
ベラーにより行うのが好ましい。この場合、鋼板の伸長
率は、テンションレベラーの入側と出側のラインスピー
ドを調整することで制御することができる。
【0039】また、熱収縮率を低下するために、形状矯
正後の歪み取り焼鈍は、鋼板温度は550〜690℃、
張力は2kgf/mm2 以下にする必要がある。550
℃未満では、歪み取り焼鈍の効果が少ないため、熱収縮
率を低下させることができない。690℃を超える温度
では、鋼板が軟化するとともに冷却の際に熱応力が発生
し熱収縮率が増加する。また。2kgf/mm2 を超え
る張力では熱収縮率が過大となる。張力の下限は、鋼板
の通板に支障のない張力であればよい。より好ましい張
力の下限は0.01kgf/mm2 である。
【0040】なお、本発明では、焼鈍温度は鋼板温度で
表すものとする。加熱炉の温度は鋼板温度と数十〜百数
十℃のバイアスがあることが一般的であり、また季節に
よってそのバイアスが異なる。したがって、温度管理を
厳密に行う必要があるので、鋼板温度を基準にした。放
射温度計を利用することで鋼板温度のオンライン測定が
可能である。
【0041】焼鈍の際の均熱時間は5〜60秒間が望ま
しい。均熱時間を5秒以上にすると熱収縮率がより低下
し、また均熱時間が60秒を超えると鋼板が軟化しやす
くなるからである。
【0042】冷却速度は20〜300℃/秒が望まし
い。冷却速度を300℃/秒以下にすると熱応力の発生
が少なくなり熱収縮率がより低下し、また、冷却速度が
20℃/秒未満になると、再結晶による鋼板の軟化が生
じやすくなるためである。
【0043】次に本発明の成分限定理由について述べ
る。まず、本合金は、必須成分としてNiを32〜38
wt%含むものとする。これは、製品性能を低下させる
電子部品の寸法変化や位置ずれが起こらないような十分
な低熱膨張特性を得るためである。これにより、室温〜
100℃の平均熱膨張係数が2.0×10-6/℃以下の
合金薄板を得ることができる。
【0044】また、7wt%以下のCoを添加した場合
でも同様の低熱膨張性を得ることができるが、この場合
には、(Ni+Co)量を30〜38wt%にする必要
がある。なお、Coは7wt%を超えて添加するとエッ
チング性の著しい低下をもたらすため、7wt%を上限
とする。
【0045】さらに、本合金は、Si≦0.07wt
%、Mn≦0.5wt%の範囲で含有しても本発明の効
果が損なわれない。Siは本合金の溶製時に脱酸元素と
して用いるものであるが、0.07wt%を超えるとシ
ャドウマスクのプレス成形前の焼鈍時に合金表面にSi
の酸化膜が形成され、この酸化膜によりプレス成形時に
金型とのなじみが悪くなり、金型をかじるようになる。
したがって、Si量は0.07wt%以下であることが
望ましい。Si量をさらに低減することにより合金薄板
と金型とのなじみをさらに良くすることができ、本発明
では0wt%(無添加)の場合を含むものとする。
【0046】Mnは、高Ni鋼において、不純物である
Sと結びつき熱間加工性を良好にするため、0.1wt
%以上添加することが望ましい。しかし、Mn量が0.
5wt%を超えるとMnを含むスピネル酸化物が形成さ
れ、黒色度の優れた黒化膜が形成されにくくなる。した
がって、Mn量は0.5wt%以下が望ましい。なお、
Mn量は0.5wt%以下で低ければ低いほど黒色度は
高まり、熱輻射率も高くすることができる。
【0047】上記により得られる鋼板は、鋼板の平坦度
と再結晶焼鈍後の耐熱収縮性に優れている。
【0048】
【発明の実施の形態】次に、本発明の板形状および耐熱
収縮性に優れた低熱膨張合金薄板の製造方法について述
べる。歪み取り焼鈍工程に至る工程は特に限定されず、
Fe−Ni系合金およびFe−Ni−Co系合金薄板を
製造する常法でよい。一例を述べると下記のとおりであ
る。
【0049】本発明が規定する成分組成の鋼を溶製後、
インゴットもしくは連続鋳造により鋼塊とする。必要が
あれば、さらに分塊圧延を行う。また、インゴットもし
くは連続鋳造スラブの段階で均熱処理を行い、成分偏析
を軽減しておくことが望ましい。また、さらに1150
〜1250℃で1〜50時間の熱処理を行うことによ
り、一層のNiのミクロ偏析の均質化効果が得られる。
【0050】次いで、所定の温度に加熱後、熱間圧延を
行う。加熱温度は1050〜1250℃の範囲が好まし
く、30分以上の保持が推奨される。得られた熱延板を
酸洗後、冷間圧延と焼鈍を1回または2回以上繰り返し
て施す。焼鈍温度は750℃にすることが望ましい。次
いで、冷間圧延後、歪み取り焼鈍を行う。
【0051】本発明は、エッチング加工される電子部品
用Fe−Ni系合金薄板全般を対象とするが、特に、高
精度のエッチング加工と低熱膨張性が要求されるシャド
ウマスク用素材として好適である。低熱膨張性のFe−
Ni系合金薄板を素材とするシャドウマスクは熱膨張に
よる位置ズレが少ないので、これを用いたブラウン管の
画像は一段と鮮明になる。
【0052】
【実施例】本発明例および比較例の合金鋼の化学組成を
表1に示す。成分組成は、シャドウマスク用素材として
必要な低熱膨張特性、黒化処理性およびプレス成形性が
得られるものとし、鋼A〜Cの3種類を溶製した。
【0053】
【表1】
【0054】次に、表1に示す成分組成に溶製した鋼塊
を1150〜1250℃×1〜50時間の熱処理後に分
塊圧延し、スラブを製造した。このスラブを1100℃
×1〜5時間の熱処理後に熱間圧延して3.0mmの熱
延鋼板を得た。さらに、脱スケール、冷間圧延と750
℃以上の焼鈍を施した後、冷間圧延して板厚0.10〜
0.22mmの薄板を得た。前記で得た薄板をテンショ
ンレベラーで所定の伸長率で形状矯正後所定の歪み取り
焼鈍を行って、No.1〜25の薄板を製造した。ま
た、比較のために、テンションレベラーによる形状矯正
だけを行ったNo.26の薄板を製造した。ここで、N
o.15〜17、22は760mm幅、他のNo.1〜
14、18〜21、23〜26は990mm幅である。
【0055】テンションレベリング条件と歪み取り焼鈍
条件を表2に示す。また、前記で得た薄板の板形状およ
び熱収縮率を調査した。板形状は耳波、中伸びの高さと
ピッチを測定し、急峻度により評価した。
【0056】熱収縮率は、前記で得た薄板の板幅中央部
と板幅端部から100mmの部分から、それぞれ薄板の
長手方向に300mm(長さ)×100mm(幅)×全
厚の試験片を採取し、850〜900℃×30分間の熱
処理を行い、それぞれの熱処理前後の試験片の長さの差
をノギスで測定して求めた最大収縮量の比率により評価
した。急峻度、熱収縮率の調査結果を表2に併せて記載
した。
【0057】
【表2】
【0058】本発明例のNo.1〜20では、急峻度が
0.5%以下の良好な板形状、0.05%以下の熱収縮
率を示した。
【0059】一方、比較例の鋼板では、それぞれ以下の
問題が発生した。すなわち、No.21ではテンション
レベリングの伸長率が低いため、急峻度が0.5%を超
えた。No.22では、テンションレベリングの伸長率
が高いため、急峻度は0.5%以下であったが、鋼板表
面にしわが発生した。No.23では、歪み取り焼鈍の
張力が高いため、熱収縮率が0.05%を超えた。N
o.24では、歪み取り焼鈍時の鋼板温度が低いため、
ミクロな残留応力の緩和効果が小さくなり、熱収縮率が
0.05%を超えた。No.25では、歪み取り焼鈍時
の鋼板温度が高いため、熱応力が発生し、熱収縮率が
0.05%を超えた。
【0060】形状矯正だけを行ったNo.26は耐熱収
縮性が劣り、形状矯正だけでは問題のあることがわか
る。
【0061】
【発明の効果】本発明によれば、板形状および耐熱収縮
性に優れたFe−Ni系低熱膨張合金薄板やFe−Ni
−Co系低熱膨張合金薄板を得ることができる。本発明
により製造されたFe−Ni系低熱膨張合金薄板やFe
−Ni−Co系低熱膨張合金薄板は、特にテレビジョン
やコンピュータディスプレイし使用されるシャドウマス
ク用素材として好適である。シャドウマスクの製造工程
のプレス加工の作業性に優れ、また、エッチング孔の加
工精度に優れるので、これを用いたブラウン管の画像は
一段と鮮明になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】張力と急峻度の関係を示す図である。
【図2】張力と熱収縮の関係を示す図である。
【図3】シャドウマスクにおけるプレス型のセット状態
を示す模式図である。
【符号の説明】
1 シャドウマスク 2 シャドウマスク側位置決め穴 3 プレス型側位置決めガイド
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 尾崎 大介 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 森田 保弘 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 丸山 俊明 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−271936(JP,A) 特開 平6−264140(JP,A) 特開 昭62−290828(JP,A) 特公 平7−11034(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 - 9/48 C21D 8/00 - 8/04 C22C 38/00 - 38/60

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Niを32〜38wt%含むFe−Ni
    系合金を、冷間圧延後、伸長率0.4〜3%の歪みを付
    与して形状矯正を行い、引き続いて鋼板温度550〜6
    90℃、張力2kgf/mm2 以下の条件で歪み取り焼
    鈍を行うことを特徴とする板形状および耐熱収縮性に優
    れたFe−Ni系低熱膨張合金薄板の製造方法。
  2. 【請求項2】 Niを32〜38wt%、Coを7wt
    %以下含み、かつNi+Coが30〜38wt%である
    Fe−Ni−Co系合金を、冷間圧延後、伸長率0.4
    〜3%の歪みを付与して形状矯正を行い、引き続いて鋼
    板温度550〜690℃、張力2kgf/mm2 以下の
    条件で歪み取り焼鈍を行うことを特徴とする板形状およ
    び耐熱収縮性に優れたFe−Ni−Co系低熱膨張合金
    薄板の製造方法。
  3. 【請求項3】 テンションレベラーにより歪みを付与す
    ることを特徴とする請求項1または請求項2記載の板形
    状および耐熱収縮性に優れた低熱膨張合金薄板の製造方
    法。
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