JP3348565B2 - 脱脂性に優れた電子部品用Fe−Ni系合金薄板ならびにFe−Ni−Co系合金薄板の製造方法 - Google Patents

脱脂性に優れた電子部品用Fe−Ni系合金薄板ならびにFe−Ni−Co系合金薄板の製造方法

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JP3348565B2 JP14077995A JP14077995A JP3348565B2 JP 3348565 B2 JP3348565 B2 JP 3348565B2 JP 14077995 A JP14077995 A JP 14077995A JP 14077995 A JP14077995 A JP 14077995A JP 3348565 B2 JP3348565 B2 JP 3348565B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、カラー受像管用等のシ
ャドウマスク、ICリードフレーム等の各種電子部品の
機能材料として用いられるFe−Ni系合金薄板および
Fe−Ni−Co系合金薄板の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】Niを26〜52%含むFe−Ni系合
金およびFe−Ni−Co系合金は室温から300℃に
わたる温度域で低い熱膨張係数を示し、これらの合金か
らなる薄板は、カラー受像管用等のシャドウマスク、I
Cリードフレーム等の各種電子部品の機能材料として広
く用いられる。
【0003】以下に、シャドウマスクを例に取って説明
する。シャドウマスク用素材の合金薄板は所定の板厚に
加工された後、脱脂後、レジストを両面に塗布した後、
パターンを焼付け、現像後、塩化第二鉄を主体とするエ
ッチング液を用いてエッチング穿孔、レジストを除去し
た後、個々に切断してフラットマスクにする。フラット
マスクは、成形性を向上するために非酸化性雰囲気中で
焼鈍され、次いでレベラー加工後プレス成形されてマス
ク形状に成形される。さらに、脱脂後、水蒸気または燃
焼ガス雰囲気中で黒化処理が施されて表面に黒色酸化膜
が形成され、シャドウマスクが作製される。
【0004】近年、コンピュータのディスプレィ装置等
への用途拡大と相まって、ディスプレイ画像のきめの細
かさに対する要求が一段と高まっている。そのために、
エッチング穿孔により形成される孔をさらに高密度で微
細にした孔径ピッチが300μm以下の高精細マスクが
要求されている。高精細マスクの場合、エッチング穿孔
により形成される細孔の径や形状のバラツキがあると画
像のきめの細かさに影響するので、これらのエッチング
むらを改善する技術が提案されている。
【0005】例えば、特開平1−56824号公報に
は、レジストの密着性のバラツキによりエッチング穿孔
により形成される細孔の径や形状にバラツキが生じるこ
とに着目して、シャドウマスク素材の製造に際して、最
終冷間圧延工程で、レーザ加工により表面ダル加工を施
した圧延ロールを用いて、素材の表面粗さRa(中心線
平均粗さ)を0.2〜1.0μm、RSm(基準長さ内
における表面粗さを示す粗さ曲線の凹凸の間隔の平均
値)を100μm以下にして、レジストの密着力を適切
な範囲にすることによりエッチングむらを改善する技術
が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前記の技術に
よるものは、レーザ加工による特別なロールを用いるこ
とが必要であり、そのための新たな設備が必要となり、
コスト上昇を招くという弊害がある。このため、新たな
装置を必要とすることなく、エッチングむらの少ない電
子部品用Fe−Ni系合金薄板ならびにFe−Ni−C
o系合金薄板を安価に得ることができる技術が望まれて
いた。
【0007】本発明はかかる事情を考慮してなされたも
のであり、新たな設備を必要とすることなく、エッチン
グむらの少ない電子部品用Fe−Ni合金薄板ならびに
Fe−Ni−Co系合金薄板の製造方法を提供すること
を目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記したよう
な実情に鑑み、検討を重ねて創案されたものであって、
その要旨とする構成は、以下のとおりである。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】()重量%で、Ni:26〜52%、S
n:0.1%以下を含有するFe−Ni系合金薄板を、
1回ないし2回以上、冷間圧延、焼鈍をくりかえした
後、仕上げ圧延、応力除去焼鈍してFe−Ni系合金薄
板を製造するにあたり、前記仕上げ圧延をダルロールを
用いて圧延率15〜80%で圧延し、その表面粗さをR
Sm:40〜200μm、Rsk:0.3〜1.5と
し、前記応力除去焼鈍を、H2 1vol%以上、O2
0.02vol%以下、残部実質的に不活性ガスからな
り、露点が−10〜−60℃の雰囲気で、昇温速度3〜
50℃/秒で昇温し、焼鈍温度450〜690℃で焼鈍
後、冷却速度3〜150℃/秒で冷却を行い、その表面
に厚さ10〜200Åの酸化膜を形成し、水滴接触角法
による表面の接触角を40〜90°とする脱脂性に優れ
た電子部品用Fe−Ni系合金薄板の製造方法。
【0014】()重量%で、Ni:26〜52%、C
o:1〜20%、Sn:0.1%以下を含有するFe−
Ni−Co系合金薄板を、1回ないし2回以上、冷間圧
延、焼鈍をくりかえした後、仕上げ圧延、応力除去焼鈍
してFe−Ni−Co系合金薄板を製造するにあたり、
前記仕上げ圧延をダルロールを用いて圧延率15〜80
%で圧延し、その表面粗さをRSm:40〜200μ
m、Rsk:0.3〜1.5とし、前記応力除去焼鈍
を、H2 1vol%以上、O2 0.02vol%以下、
残部実質的に不活性ガスからなり、露点が−10〜−6
0℃の雰囲気で、昇温速度3〜50℃/秒で昇温し、焼
鈍温度450〜690℃で焼鈍後、冷却速度3〜150
℃/秒で冷却を行い、その表面に厚さ10〜200Åの
酸化膜を形成し、水滴接触角法による表面の接触角を4
0〜90°とする脱脂性に優れた電子部品用Fe−Ni
−Co系合金薄板の製造方法。
【0015】
【作用】本発明者等は、前記した観点から安価なFe−
Ni系合金薄板およびFe−Ni−Co系合金薄板(以
下、Fe−Ni系合金薄板等という)を開発すべく、鋭
意研究を重ねた結果、以下の知見を得たことに基づくも
のである。
【0016】(1)エッチングむらにはエッチング穿孔
に先立って塗布されるレジストの膜厚のバラツキに起因
するものがあり、このバラツキがレジスト塗布前の合金
薄板の脱脂の程度を表す水滴接触角法による接触角の測
定値と密接に関係していること。
【0017】(2)Fe−Ni系合金薄板等の化学成
分、表面粗さ、Feリッチな酸化膜の厚さを適正な範囲
に規定することにより、優れた脱脂性の表面となり、レ
ジスト膜厚のバラツキを少なくできること。さらに、
(3)前記合金薄板の製造方法として、特定の成分組成
を持つFe−Ni系合金帯板等について、冷延、焼鈍を
1回ないし2回以上繰返した後、仕上げ圧延、応力除去
焼鈍して合金薄板を製造するに当たり、仕上げ圧延の圧
延率、応力除去焼鈍の雰囲気の組成と露点、焼鈍温度、
昇温速度、冷却速度を所定の範囲に規定することによ
り、優れた脱脂性のFe−Ni系合金薄板等を得ること
ができること。
【0018】以下に、本発明の限定理由について説明す
る。Niは、本発明の合金薄板を低熱膨張とするための
重要な成分元素である。シャドウマスク用材料の場合、
色ずれを防止するために要求される30〜100℃の温
度域における平均熱膨張係数の上限は3.0×10-6
℃である。この平均熱膨張係数の条件を満たすNi量は
Fe−Ni系合金の場合、30〜38%の範囲である。
従って、シャドウマスク用材料の場合、Ni量は30〜
38%の範囲に限定すべきである。なお、このようなN
i量の範囲内でも、平均熱膨張係数を低下させうるより
好ましいNi量は35〜37%である。
【0019】なお、Coを1%未満の範囲内で含有する
場合でも上記した平均熱膨張係数の上限を満足するNi
量は30〜38%であり、平均熱膨張係数を低下させる
好ましいNi量は35〜37%である。
【0020】また、1〜8%のCoを含有するFe−N
i−Co系合金の場合、上述した平均熱膨張係数の条件
を満たすNi量は26〜38%であり、Ni量が30〜
33%、Co量が3〜8%の場合、平均熱膨張係数は更
に低く優れたものとなる。
【0021】また、ICリードフレーム用材料の場合、
半導体素子、ガラスおよびセラミックス等との熱膨張の
整合性を保つ必要があり、そのためには、Ni量を38
%以上、52%以下とする必要がある。従って、ICリ
ードフレーム用材料の場合、Ni量は38%以上、52
%以下の範囲に限定すべきである。このようなNi量の
範囲内で、半導体素子、ガラスおよびセラミックス等の
熱膨張係数に応じてNi量は適切に選択される。
【0022】なお、Coを1%未満の範囲内で含有する
場合、ICリードフレーム用としての熱膨張の整合性を
保つためのNi量は38〜52%である。また、ICリ
ードフレーム用材料としてはFe−Ni−Co系合金も
本発明の対象としているが、この場合、Co量は1〜2
0%、Ni量は26〜38%であれば、ICリードフレ
ーム用としての熱膨張の整合性を保つことができる。
【0023】さて、上記した化学成分のFe−Ni系合
金薄板等において、レジスト塗布前の合金薄板の脱脂性
を適切にすることにより、レジスト膜厚のバラツキを少
なくすることができる。
【0024】レジスト膜厚のバラツキを少なくするに
は、水滴接触角法により測定される接触角を40〜90
°にする必要がある。接触角が40°未満では脱脂後の
水きり性が悪く、水分の軽度の残存によりレジストの塗
布状態が不均一になる。接触角が90°を超えると、脱
脂の均一性が劣るため、油脂分等の局部的な残存によ
り、レジストの塗布状態が不均一になる。
【0025】接触角を前記した範囲にするためには、合
金薄板の表面粗さ(Rsk、RSm)の適正化、Feリ
ッチな酸化膜の形成および合金中のSn含有量の適正化
が必要である。
【0026】合金薄板表面の表面粗さは、Rsk(粗さ
曲線の高さ方向の片寄り比率)を0.3〜1.3、RS
m(基準長さ内における表面粗さを示す粗さ曲線の凹凸
の間隔の平均値)を40〜200μmにする必要があ
る。Rskが0.3未満、RSmが200μmを超える
と脱脂の均一性が悪くなる。一方、Rskが1.3超
え、RSmが40μm未満では、脱脂の水きり性が悪く
なる。
【0027】本発明においては、上記したような表面粗
度の規定に加え、厚さ10〜200ÅのFeリッチな酸
化膜の形成が必要である。この酸化膜の厚さが10Å未
満では、脱脂の水きり性が劣り、また、200Åを超え
ると、脱脂の均一性が得られない。酸化膜の厚さが10
〜200Åの場合、後述するSnの添加とも相まって本
発明で意図する水きり性に優れた脱脂性が得られる。
【0028】脱脂の均一性の向上のために。上記したF
eリッチな酸化膜厚さの適正化に加え、合金中のSn量
の規定が有効である。Snは本合金にあっては、鉄源の
スクラップ等から混入する不純物元素であるが、Sn量
が0.1%を超えると、本合金で要求される脱脂の均一
性が低下するため好ましくないため、その上限を0.1
%とする。Snは合金薄板の製造工程中では、酸化物を
生成しないため、酸化膜と合金下地の界面に濃縮し、F
eリッチな酸化膜の形成を促進する。
【0029】なお、本合金薄板において、前記したN
i、Co、Sn以外の成分組成は、優れた加工性を確保
するため、C:0.06wt%以下、O:0.005w
t%以下、S:0.003wt%以下、P:0.01w
t%以下、N:0.003wt%以下、H:3.0pp
m以下であることが好ましい。さらに、Mn:0.50
wt%以下、Si:0.001〜0.25wt%、B:
0.0005wt%以下とすることが望ましい。
【0030】Mnは高い黒色度を有する黒化膜の形成の
ためには有害な元素であり低減するこが好ましい。Mn
量が0.50wt%を超えるとMnを含むスピネル酸化
物が形成され、黒色度の優れた黒化膜が形成されにくい
ため、0.50wt%上限とする。なお、このMn量は
0.50wt%以下で低ければ低いほど黒色度は高ま
り、熱輻射率も高くすることができる。
【0031】また、Siはシャドウマスク用Fe−Ni
系合金薄板によって作られたフラットマスクの焼鈍時に
おいて焼付防止に有効なSiを主体とする酸化膜をフラ
ットマスクの表面に形成し、フラットマスクの焼付を防
止する作用を有している。しかし、このSi含有量が
0.001wt%未満では、上述した作用に所望の効果
が得られない。一方、Si含有量が0.25wt%を超
えると、Fe−Ni系合金薄板のエッチング穿孔時に孔
界面が著しく荒れてエッチング穿孔性が悪くなる。従っ
て、Si含有量は0.001〜0.25wt%の範囲に
限定することが望ましい。
【0032】Bは、熱間加工性を向上させるが含有量が
多くなるとプレス前の焼鈍時に形成される再結晶粒の粒
界に偏析し、粒界を移動しにくくさせ、結果的にオース
テナイト結晶粒の成長性が阻害され、プレス成型前の焼
鈍後で所要のオーステナイト結晶粒径が得られなくな
る。粒成長の阻害作用はすべての結晶粒に対して一様に
働かないため結果的には著しい混粒組織を示し、プレス
成型時の伸びムラが発生し、透過ムラの原因となる。こ
のB量が0.0005wt%を超えると、プレス成型時
の形状凍結性向上、合金板の割れ発生抑制及びプレス成
型後の透過ムラ発生の防止のために要求される平均オー
ステナイト粒径(15〜45μm)が得られなくなり、
かつプレス時の透過ムラ等の問題も発生するため、B量
の上限は0.0005wt%とすることが望ましい。
【0033】前記した成分組成の合金帯板を、冷延・焼
鈍を1回ないし2回以上繰返した後、仕上げ圧延、応力
除去焼鈍して本発明のFe−Ni系合金薄板等を製造す
るに際して、前記仕上げ圧延条件と応力除去焼鈍条件の
適正化が必要である。
【0034】仕上げ圧延の圧延率は15〜80%とする
必要がある。圧延率が15%未満では、後述する最適な
応力除去焼鈍下で、Feリッチな酸化膜が10Å未満し
か形成されず、優れた脱脂の水きり性が得られない。一
方、圧延率が80%を超えると、最適な応力除去焼鈍下
でも、200Åを超える酸化膜が形成され、脱脂の均一
性が確保できない。
【0035】また、前記した本発明の合金薄板の表面粗
さは、仕上げ圧延において、表面粗さがRsk:−0.
5〜−1.3、RSm:40〜250μmの直径200
mm以下のダル仕上げのワークロールを用いて、15%
以上の圧延率で圧延することによって得ることができ
る。
【0036】応力除去焼鈍としては、雰囲気ガスを、H
2 が1vol%以上、O2 が0.02vol%以下、残
部を実質的に不活性ガスとし、その露点が−10〜−6
0℃の雰囲気で、昇温速度3〜50℃/秒で昇温し、焼
鈍温度450〜690℃で焼鈍後、冷却速度3〜150
℃/秒で冷却することが必要である。
【0037】昇温速度が50℃/秒超え、焼鈍温度が4
50℃未満、冷却速度が150℃/秒超え、露点が−6
0℃未満では、応力除去焼鈍でFeリッチな酸化膜の厚
さが10Å未満しか形成されないので、優れた脱脂の水
きり性を得ることができない。
【0038】また、昇温速度が3℃/秒未満、焼鈍温度
が690℃超、冷却速度が3℃/秒未満、露点が−10
℃より高い場合、H2 濃度が1vol%未満、O2 濃度
が0.02vol%超えでは、応力除去焼鈍で形成され
るFeリッチな酸化膜の厚さが200Åを超えるため、
優れた脱脂の均一性が確保できない。
【0039】
【実施例】以下に、実施例について説明する。
【0040】(実施例1)取鍋精錬によって、表1に示
す成分組成と残部がFeおよび不可避不純物からなる合
金鋼を溶製し、合金鋼A、C、J〜Mについては造塊法
で鋼塊とした後、鋼塊を手入れ、分塊圧延してスラブと
し、また合金鋼B、Dについては連続鋳造法でスラブと
した。これらのスラブについて、表面疵取り、熱間圧
延、疵取りして熱延コイルとした。この熱延コイルを、
冷間圧延−焼鈍−仕上げ圧延−応力除去焼鈍を施して、
板厚0.15mmの合金薄板No.1〜No.10を得
た。
【0041】仕上げ圧延は、径120mmのワークロー
ルを使用し、圧延率30%で圧延した。使用したワーク
ロールの表面粗さは、No.6についてはRsk−1.
0、RSm280μm、No.8についてはRsk+
0.5、RSm105μm、No.6、No.8以外に
ついてはRsk−0.5〜−1.3、RSm40〜25
0μmである。
【0042】応力除去焼鈍は以下の条件によった。N
o.9については、H2 :60vol%、O2 :0.0
05vol%、残りがN2 からなり、露点が−50℃の
雰囲気で、70℃/秒で昇温し、540℃で0.2秒焼
鈍した後100℃/秒で冷却した。No.10について
は、No.9と同様の雰囲気で、3℃/秒で昇温し、5
40℃で400秒焼鈍した後1℃/秒で冷却した。その
他については、H2 :99vol%、O2 :0.005
vol%、残りがN2 からなり、露点が−50℃の雰囲
気で、25℃/秒で昇温し、540℃で300秒焼鈍し
た後50℃/秒で冷却した。
【0043】得られた合金薄板の表面粗さ、酸化膜厚
さ、接触角、脱脂性を調査した。酸化膜厚さは、オージ
ェ分光分析法により、Arイオンによって表面より深さ
方向にスパッタし、オージェ電子ピークを測定し、表面
からバルク(母材)と同一のオージェスペクトルが得ら
れるまでの厚さを測定し、酸化膜厚さとした。
【0044】接触角は、水滴接触角法、すなわち、試験
片上に水道水を滴下し、試験片上にできた水滴の角度を
分度器目盛り付きの倍率10倍の顕微鏡を用いて測定
し、図1に示す角度θから求めた。
【0045】均一性は、水滴接触角法で接触角が40°
以上を「○」、40°未満を「×」と評価した。また、
水きり性は水滴接触角法で接触角が90°以下を
「○」、90°超えを「×」と評価した。結果を表2に
示す。
【0046】
【表1】
【0047】
【表2】
【0048】この結果より、本発明例のNo.1〜N
o.4は、均一性、水きり性とも良好であり、優れた脱
脂性を示す。これに対して、Sn含有量が本発明の上限
を超えるNo.5とNo.7、Rskが本発明の下限を
下回るNo.8、冷却速度が本発明の下限を外れるN
o.10はいずれも均一性が劣る。また、RSmが本発
明の上限を超えるNo.6、昇温速度が本発明の上限を
超えるNo.9は水きり性が劣る。
【0049】(実施例2)取鍋精錬によって、表3に示
す成分組成と残部がFeおよび不可避不純物からなる合
金鋼を溶製し、合金鋼E、G、N〜Qについては造塊法
で鋼塊とした後、鋼塊を手入れ、分塊圧延してスラブと
し、また合金鋼F、H、Iについては連続鋳造法でスラ
ブとした。これらのスラブについて、表面疵取り、熱間
圧延、疵取りして熱延コイルとした。この熱延コイル
を、冷間圧延−焼鈍−仕上げ圧延−応力除去焼鈍を施し
て、板厚0.15mmの合金薄板No.11〜No.2
1を得た。
【0050】仕上げ圧延は、径120mmのワークロー
ルを使用し、圧延率70%で圧延した。使用したワーク
ロールの表面粗さは、No.17についてはRsk−
1.0、RSm300μm、No.19についてはRs
k−1.5、RSm120μm、No.17、No.1
9以外についてはRsk−0.5〜−1.3、RSm4
0〜250μmである。
【0051】歪取り焼鈍は以下の条件によった。No.
20については、H2 :60vol%、O2 :0.00
6vol%、残りがN2 からなり、露点が−40℃の雰
囲気で、60℃/秒で昇温し、540℃で0.1秒焼鈍
した後120℃/秒で冷却した。No.21について
は、No.20と同様の雰囲気で、15℃/秒で昇温
し、540℃で450秒焼鈍した後2.5℃/秒で冷却
した。その他については、H2 :70vol%、O2
0.005vol%、残りがN2 からなり、露点が−5
0℃の雰囲気で、5℃/秒で昇温し、540℃で300
秒加熱した後20℃/秒で冷却した。
【0052】得られた合金薄板の表面粗さ、酸化膜厚
さ、接触角、脱脂性を実施例1と同様にして調査,評価
した。結果を表4に示す。
【0053】
【表3】
【0054】
【表4】
【0055】この結果より、本発明例のNo.11〜N
o.15は、均一性、水きり性とも良好であり、優れた
脱脂性を示す。また、これらの材料のフォトエッチング
は良好であった。これに対して、Sn含有量が本発明の
上限を超えるNo.16とNo.18、RSmが本発明
の上限を超えるNo.17、冷却速度が本発明の範囲を
下回るNo.21、Rskが本発明の下限を下回るN
o.19はいずれも均一性が劣る。また、昇温速度が本
発明の範囲を上回るNo.20は水きり性が劣る。
【0056】(実施例3)実施例1の合金A〜Dを用い
てNo.1〜No.4の条件で作成した熱延コイルと同
様の熱延コイルを用いて、冷間圧延−焼鈍−仕上げ圧延
−応力除去焼鈍を行ない、板厚0.15mmの合金薄板
No.31〜No.51を得た。
【0057】仕上げ圧延は、Rsk−0.3〜−1.
3、RSm40〜250μmのロール径が120mmの
ワークロールを用いて圧延を行った。仕上げ圧延の圧延
率、応力除去焼鈍の条件を表5に示す。
【0058】得られた合金薄板の表面粗さ、酸化膜厚
さ、水ぬれ角、脱脂性を実施例1と同様にして調査,評
価した。結果を表6に示す。
【0059】
【表5】
【0060】
【表6】
【0061】本発明例のNo.43〜No.51は、本
発明規定範囲内の酸化膜厚さ、表面粗度を有し、脱脂性
の均一性および水きり性とも良好であり優れた脱脂性を
示す。1%以上のCoを含有するNo.51についても
良好な脱脂性を示している。
【0062】これに対して、仕上げ圧延の圧延率が本発
明規定上限を超えるNo.31、焼鈍温度が本発明の上
限を超えるNo.33、昇温速度が本発明の下限を下回
るNo.35、冷却速度が本発明の下限を下回るNo.
37、露点が本発明の上限を超えるNo.39、焼鈍雰
囲気中のO2 濃度が本発明の上限を超えるNo.41、
雰囲気中のH2 濃度が本発明の下限を下回るNo.42
は、いずれも酸化膜厚さが200Åを超え、接触角は本
発明の上限を超え、均一性が劣っている。
【0063】一方、仕上げ圧延の圧延率が本発明の下限
を外れるNo.32、焼鈍温度が本発明の範囲を下回る
No.34、昇温速度が本発明の上限を超えるNo.3
6、冷却速度が本発明の上限を超えるNo.38、露点
が本発明の下限を下回るNo.40は、いずれも酸化膜
厚さが10Å未満であり、水ぬれ角が本発明の下限を下
回り、水きり性が劣っている。
【0064】(実施例4)実施例2の合金E〜Iを用い
てNo.11〜No.15の条件で作成した熱延コイル
と同様の熱延コイルを用いて、冷延圧延−焼鈍−仕上げ
冷延−応力除去焼鈍を行ない、板厚0.15mmの合金
薄板No.62〜No.83を得た。
【0065】仕上げ圧延は、Rsk−0.5〜−1.
5、RSm40〜250μmでロール径が120mmの
ワークロールを用いて圧延を行った。仕上げ圧延の圧延
率、応力除去焼鈍の条件を表7に示す。
【0066】得られた合金薄板の表面粗さ、酸化膜厚
さ、接触角、脱脂性を実施例1と同様にして調査,評価
した。結果を表8に示す。
【0067】
【表7】
【0068】
【表8】
【0069】本発明例のNo.74〜No.83は、本
発明規定範囲内の酸化膜厚さ、表面粗度を有し、脱脂性
の均一性および水きり性が良好である。1%以上のCo
を含有するNo.82およびNo.83についても同様
に優れた脱脂性を示している。
【0070】これに対して、仕上げ圧延の圧延率が本発
明の上限を超えるNo.62、焼鈍温度が本発明の上限
を超えるNo.64、昇温速度が本発明の下限を外れる
No.66、冷却速度が本発明の下限を外れるNo.6
8、露点が本発明の上限を超えるNo.70、雰囲気中
のO2 濃度が本発明の上限を超えるNo.72、雰囲気
中のH2 濃度が本発明の下限を外れるNo.73は、い
ずれも酸化膜厚さが200Åを超え、接触角は本発明の
下限を下回り、均一性が劣っている。
【0071】一方、仕上げ圧延の圧延率が本発明の下限
を外れNo.63、焼鈍温度が本発明の下限を外れるN
o.65、昇温速度が本発明の上限を超えるNo.6
7、冷却速度が本発明の上限を超えるNo.69、露点
が本発明の下限を外れるNo.71は、いずれも酸化膜
厚さが10Å未満であり、接触角は本発明の範囲を超え
ており、水きり性が劣っている。
【0072】
【発明の効果】本発明によれば、脱脂性に優れるFe−
Ni系合金薄板およびFe−Ni−Co系合金薄板の
価な製造方法を提供することができ、これらの合金薄板
を素材としてより高精細なエッチング加工が可能とな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】水滴接触角法における接触角を示す図。
【符号の説明】
1 試験材 2 水滴 θ 接触角
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/10 C22C 38/10 (72)発明者 鹿毛 勇 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 若狭 浩 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−139850(JP,A) 特開 昭60−251249(JP,A) 特開 平5−220503(JP,A) 特開 平4−221024(JP,A) 特開 平8−13101(JP,A) 特開 平7−252601(JP,A) 特開 平7−252600(JP,A) 特開 平7−233443(JP,A) 特開 平8−73935(JP,A) 特開 平5−255757(JP,A) 特開 平5−301(JP,A) 特開 昭62−243780(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60 C21D 9/46,8/02

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、Ni:26〜52%、Sn:
    0.1%以下を含有するFe−Ni系合金薄板を、1回
    ないし2回以上、冷間圧延、焼鈍をくりかえした後、仕
    上げ圧延、応力除去焼鈍してFe−Ni系合金薄板を製
    造するにあたり、前記仕上げ圧延をダルロールを用いて
    圧延率15〜80%で圧延し、その表面粗さをRSm:
    40〜200μm、Rsk:0.3〜1.5とし、前記
    応力除去焼鈍を、H2 1vol%以上、O2 0.02v
    ol%以下、残部実質的に不活性ガスからなり、露点が
    −10〜−60℃の雰囲気で、昇温速度3〜50℃/秒
    で昇温し、焼鈍温度450〜690℃で焼鈍後、冷却速
    度3〜150℃/秒で冷却を行い、その表面に厚さ10
    〜200Åの酸化膜を形成し、水滴接触角法による表面
    の接触角を40〜90°としたことを特徴とする脱脂性
    に優れた電子部品用Fe−Ni系合金薄板の製造方法。
  2. 【請求項2】 重量%で、Ni:26〜52%、Co:
    1〜20%、Sn:0.1%以下を含有するFe−Ni
    −Co系合金薄板を、1回ないし2回以上、冷間圧延、
    焼鈍をくりかえした後、仕上げ圧延、応力除去焼鈍して
    Fe−Ni−Co系合金薄板を製造するにあたり、前記
    仕上げ圧延をダルロールを用いて圧延率15〜80%で
    圧延し、その表面粗さをRSm:40〜200μm、R
    sk:0.3〜1.5とし、前記応力除去焼鈍を、H2
    1vol%以上、O2 0.02vol%以下、残部実質
    的に不活性ガスからなり、露点が−10〜−60℃の雰
    囲気で、昇温速度3〜50℃/秒で昇温し、焼鈍温度4
    50〜690℃で焼鈍後、冷却速度3〜150℃/秒で
    冷却を行い、その表面に厚さ10〜200Åの酸化膜を
    形成し、水滴接触角法による表面の接触角を40〜90
    °としたことを特徴とする脱脂性に優れた電子部品用F
    e−Ni−Co系合金薄板の製造方法。
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