JP3471465B2 - プレス性及びエッチング性に優れたシャドウマスク用材料 - Google Patents
プレス性及びエッチング性に優れたシャドウマスク用材料Info
- Publication number
- JP3471465B2 JP3471465B2 JP03155395A JP3155395A JP3471465B2 JP 3471465 B2 JP3471465 B2 JP 3471465B2 JP 03155395 A JP03155395 A JP 03155395A JP 3155395 A JP3155395 A JP 3155395A JP 3471465 B2 JP3471465 B2 JP 3471465B2
- Authority
- JP
- Japan
- Prior art keywords
- shadow mask
- etching
- elongation
- proof stress
- texture
- Prior art date
- Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
- Expired - Fee Related
Links
Landscapes
- Electrodes For Cathode-Ray Tubes (AREA)
Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エッチング性及びプレ
ス性に優れた高品質のシャドウマスク用材料に関する。 【0002】 【従来の技術】カラーテレビ用ブラウン管,OA機器用
ディスプレイ等の受像管には、多数の電子ビーム通過孔
が形成されたシャドウマスクが組み込まれている。電子
銃から射出された電子ビームは、特定の電子ビーム通過
孔を通過し、各色調に応じてそれぞれの蛍光部にビーム
スポットを投影する。シャドウマスク用材料としては、
電子ビーム通過孔が高精度で形成されるようにエッチン
グ性に優れていることが要求される。この点で、低炭素
Alキルド鋼がシャドウマスク用材料として従来から使
用されている。しかし、シャドウマスクは、電子ビーム
の衝突によって加熱され、熱膨張する。熱膨張は、電子
ビーム通過孔を変位させ、電子ビームが所定の蛍光面に
当らなくなるドーミング現象の原因となる。 【0003】ドーミング現象は、テレビ,ディスプレイ
等の高精密化や高輝度化に伴って大きな問題となってい
る。ドーミング現象を抑制するために、発生原因である
熱膨張に起因した電子ビーム通過孔の変位を小さくする
低熱膨張特性をもつ材料の使用が検討されている。たと
えば、特開昭61−78033号公報,特公平4−56
107号公報等では、シャドウマスク用材料としてFe
−36%Ni系アンバー合金が紹介されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】Fe−36%Ni系ア
ンバー合金は、多量のNiを含んでいることから低炭素
Alキルド鋼に比較して素材価格が高いことは勿論、高
強度のためプレス成形性に劣っている。また、ヤング率
が低く、シャドウマスクに必要な剛性が不足し、エッチ
ング速度が遅く、エッチング穿孔性にも問題がある。プ
レス成形性は、0.2%耐力の低下,結晶粒径の適正化
等で向上する。たとえば、Cr,Mnの添加により0.
2%耐力を低下させる方法(特開昭61−78033号
公報),結晶粒度を規制する方法(特開昭61−157
662号公報,特開昭62−112759号公報,特開
平2−305941号公報)等が知られている。また、
更にC含有量を低減することによってプレス成形性を改
善することも試みられている。 【0005】しかし、フラット化が進行している近年の
ブラウン管画面に適したシャドウマスクに関しては、こ
れらの方法でプレス成形性が改善された材料であっても
依然として要求特性を満足しない。そのため、シャドウ
マスクのプレス成形不良を完全に無くすことはできず、
形状不良に起因して歩留まりの低下や品質の低下を引き
起こす原因となっている。本発明は、このような問題を
解消すべく案出されたものであり、成分が特定されたF
e−Ni系合金を軟化焼鈍した後の集合組織を制御する
ことにより、Fe−Ni系合金のエッチング性及びプレ
ス成形性を向上させ、高品質のシャドウマスク用材料を
提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明のシャドウマスク
用材料は、その目的を達成するため、Ni:34〜39
重量%,Cr:3重量%以下,Si:1重量%以下,M
n:1重量%以下を含み、残部が実質的にFeの組成を
もち、軟化焼鈍後において{111}の面強度比が30
〜45%,{200}の面強度比が30〜45%の集合
組織をもち、伸びが20%以上で、200℃での0.0
5%耐力が120N/mm2 以下であることを特徴とす
る。 【0007】 【作用】シャドウマスクは、通常、次の工程を経て製造
されている。 溶製 → 分塊 → 熱延 → 酸洗 → 冷延 →
光輝焼鈍 → 冷延→ エッチング → 軟化焼鈍 →
プレス加工 → 黒化処理 黒化膜の形成に先立って行われるプレス加工において、
Fe−36%Ni系合金は、200℃前後の温度に加熱
され、所定形状の金型を使用してシャドウマスク形状に
成形される。プレス不良は、プレス成形時にシャドウマ
スクの湾曲面の一部に陣笠状のヘコミとして発生するも
のであり、被加工材料の伸びが低く耐力が高いことに原
因があると考えられている。しかし、フラット化の進展
が著しい近年のブラウン管画面に組み込まれるシャドウ
マスクに対しては、従来からプレス成形性の評価として
使用されている0.2%耐力では十分に評価することが
できない。本発明者等の調査・研究によるとき、0.2
%耐力に替えて歪み量0.05%での耐力を使用する
と、プレス成形性を正確に評価できることが判った。
0.05%耐力は、歪み量が極めて小さく、すなわち弾
性領域に近い塑性領域での変形挙動を表し、曲率の大き
なシャドウマスクの成形を考慮したプレス成形性の評価
指標として有効である。 【0008】本発明者等は、更に調査・研究を進め、
0.05%耐力,伸び及び金属組織の面から、200℃
前後の温間におけるプレス成形性について詳細に検討し
た。その結果、軟化焼鈍材において、伸びが20%未満
で、且つ200℃での0.05%耐力が120N/mm
2 を超えると、プレス不良が発生することを見い出し
た。また、調査過程で、伸びと集合組織との間に相関関
係があることを解明した。集合組織に関しては、Fe−
Ni系合金のエッチング性に影響することが従来から知
られている。たとえば、特開昭62−243782号公
報は、圧延面に{100}結晶面を集合させ、表面粗さ
を規制するとき、エッチングスピードが向上することを
報告している。特公平2−9655号公報は、{10
0}結晶面を35%以上集合させるとき、高精度で且つ
均一なエッチングが可能になることを開示している。し
かし、シャドウマスク用Fe−Ni系合金について、プ
レス成形性の観点から集合組織を調査した例は、今まで
のところ知られていない。 【0009】本発明者等は、この集合組織が機械的性質
に影響を及ぼす因子であることに着目し、集合組織と機
械的性質との相関関係を詳細に調査した。そして、{1
11}の面強度比が30〜45%,{200}の面強度
比が30〜45%の集合組織が形成されたとき、伸びが
20%以上になることを見い出した。そして、この場合
の200℃での0.05%耐力が120N/mm2 以下
になると、プレス成形性が改善されるとの知見を得た。
本発明は、このような0.05%耐力,伸び及び金属組
織等に関する調査・研究の結果として完成されたもので
ある。以下、本発明シャドウマスク用材料に含まれる合
金元素等を説明する。 Ni:34〜39重量% Fe−Ni系合金の熱膨張係数を低く維持する上で重要
な合金元素である。Ni含有量が34〜39重量%の範
囲を外れると、熱膨張係数が増大し、シャドウマスクと
して使用したときに熱変形に起因するドーミング現象が
現れ易くなる。また、39重量%を超える多量のNiが
含まれると、耐力が上昇し、成形性が低下する。 【0010】Cr:0〜3重量% Fe−Ni系合金のエッチング速度を増大させる有効な
合金元素であり、必要に応じて添加される。Crの効果
は、0.001重量%以上の含有量で顕著になる。しか
し、熱膨張係数を増加させる欠点をもつことから、Cr
を添加する場合、Cr添加量の上限を3重量%に設定し
た。 Si:0〜1重量% 脱酸剤として添加される元素であり、所望の脱酸効果を
得るためには0.001重量%以上のSiを含有させる
ことが好ましい。しかし、1重量%を超えるSi含有量
は、Fe−Ni系合金の熱膨張係数を大きくすると共
に、仕上げ焼鈍された合金素材の表面に酸化物を形成
し、エッチング性や黒化膜特性を劣化させる。 Mn:0〜1重量% 脱酸剤として添加される元素であり、所望の脱酸効果を
得るためには0.01重量%以上のMnを含有させるこ
とが好ましい。しかし、1重量%を超えるMn含有量で
は、Fe−Ni系合金の熱膨張係数が大きくなり、ドー
ミング現象が生じ易くなる。 【0011】集合組織 以上に規制した合金元素を含有するFe−Ni系合金を
冷間圧延した後、還元雰囲気中での光輝焼鈍を施し、引
き続き仕上げ圧延する。そして、焼鈍後に集合組織の
{111}の面強度比が30〜45%,{200}の面
強度比が30〜45%となるように軟化焼鈍する。焼鈍
条件としては、温度700〜100℃,好ましくは75
0〜950℃の温度範囲,1気圧の大気下での露点−2
0〜+30℃の範囲が好適である。その結果、軟化焼鈍
された材料は、伸びが29%以上,200℃での0.0
5%耐力が120N/mm2 以下となり、エッチング性
及びプレス成形性に優れたシャドウマスク用材料とな
る。 【0012】集合組織の{111}面強度比及び{20
0}面強度比は、図1の(a)及び(b)にそれぞれ示
すように、伸びとの間に相関関係を持っている。{11
1}面強度比が30%以上で{200}面強度比が45
%以下のとき、20%以上の伸びが得られており、プレ
ス成形性が向上する。また、伸びと0.05%耐力との
間には図2に示す相関関係が成立しており、伸びが20
%以上で0.05%耐力が120N/mm2 以下とな
り、プレス成形性が向上する。集合組織は、エッチング
性にも影響する。図1における黒丸は、エッチング性が
不良のものを示す。図1(a)に示されるように{11
1}面強度比が45%以下であれば、良好なエッチング
性が得られている。また、図1(b)から、{200}
面強度比が30%以上で良好なエッチング性が得られて
いる。これらの点から、本発明では、{111}面強度
比を30〜45%,{200}面強度比を30〜45%
の範囲に定めた。 【0013】 【実施例】表1に示すFe−Ni系合金をVODプロセ
スで溶製し、分塊工程を経て板厚6mmの熱延コイルを
製造した。熱延コイルを更に冷延し、板厚0.3mmの
冷延板を得た。 【0014】 【表1】 【0015】冷延板に対し、還元雰囲気中で750〜1
050℃に加熱する仕上げ焼鈍を施し、次いで圧下率5
〜25%の仕上げ圧延を行った。得られた板材をエッチ
ングした後、650〜800℃の軟化焼鈍を施した。軟
化焼鈍された板材から試験片を切り出し、集合組織,引
張り特性,プレス性及びエッチング性を調査した。調査
結果を表2に示す。集合組織はX線回折装置で観察し、
次式に従って測定データから{111}面強度比及び
{200}面強度比を算出した。ただし、I(hkl)
は、X線回折による結晶面(hkl)の積分強度とし
た。 {111}面強度比=I(111)/[I(111)+
I(220)+I(311)+I(200)] {200}面強度比=I(200)/[I(111)+
I(220)+I(311)+I(200)] 【0016】引張り特性は、室温及び200℃で引張り
試験を行い、引張り試験後の室温での伸び及び200℃
での0.05%耐力を測定した。プレス成形性は、素材
をシャドウマスクに成形した後、マスク形状に発生した
不良の有無を目視観察することにより判定した。そし
て、プレス設計曲率に対してズレが±5%以内のものを
○,へこみの発生によりズレが±5%を超えたものを×
として評価した。エッチング性は、シャドウマスクパタ
ーンを用いて穿孔加工した後、穿孔径の精度,テーパー
部のがさつき等を検査し、穿孔径の精度が5%以下で、
テーパ部のがさつきがないものを○,精度が5%を超え
たもの又はがさつきのあるものをを×として評価した。 【0017】 【表2】【0018】表2から明らかなように、集合組織が{1
11}面強度比30〜45%,{200}面強度比30
〜45%の条件下で製造された試験番号1〜3の板材
は、伸びが20%以上,200℃での0.05%耐力が
120N/mm2 以下となり、良好なプレス成形性及び
エッチング性を示していた。これに対し、試験番号4,
5の比較例では、{200}面強度比が30%未満であ
り、伸びが大きく、0.05%耐力が120N/mm2
以下であることから、良好なプレス成形性を呈したもの
の、エッチング時に孔精度が悪くがさつきのある孔が穿
孔された。試験番号6〜8の比較例では、{200}面
強度比が45%を超えており、板材の伸びが20%以下
と小さく、0.05%耐力も130N/mm2 と高い値
を示した。そのため、エッチング性が良好であったもの
の、プレス成形性に劣っていた。試験番号9の比較例で
は、集合組織が{111}面強度比30%未満,{20
0}面強度比45%以下の条件下で板材が製造されてお
り、伸びが20%未満,0.05%耐力が121N/m
m2 で、プレス成形性及びエッチング性の双方に劣って
いた。この対比から明らかなように、{111}面強度
比30〜45%,{200}面強度比30〜45%の集
合組織を持つ材料は、伸びが大きく、温間の0.05%
耐力が120N/mm2 以下の低い値になっており、良
好なプレス成形性及びエッチング性を備えていることが
判る。 【0019】 【発明の効果】以上に説明したように、本発明のシャド
ウマスク用材料は、軟化焼鈍後の集合組織を{111}
面強度比30〜45%,{200}面強度比30〜45
%とすることにより、板材が軟質化され、プレス成形性
及びエッチング性の双方に優れている。しかも、黒化膜
密着性も良好で、高精密化,高輝度化,大型化,フラッ
ト化が著しい傾向にあるテレビ用ブラウン管やOA機器
用ディスプレイ等に使用される低熱膨張特性を活用した
シャドウマスク用材料となる。
ス性に優れた高品質のシャドウマスク用材料に関する。 【0002】 【従来の技術】カラーテレビ用ブラウン管,OA機器用
ディスプレイ等の受像管には、多数の電子ビーム通過孔
が形成されたシャドウマスクが組み込まれている。電子
銃から射出された電子ビームは、特定の電子ビーム通過
孔を通過し、各色調に応じてそれぞれの蛍光部にビーム
スポットを投影する。シャドウマスク用材料としては、
電子ビーム通過孔が高精度で形成されるようにエッチン
グ性に優れていることが要求される。この点で、低炭素
Alキルド鋼がシャドウマスク用材料として従来から使
用されている。しかし、シャドウマスクは、電子ビーム
の衝突によって加熱され、熱膨張する。熱膨張は、電子
ビーム通過孔を変位させ、電子ビームが所定の蛍光面に
当らなくなるドーミング現象の原因となる。 【0003】ドーミング現象は、テレビ,ディスプレイ
等の高精密化や高輝度化に伴って大きな問題となってい
る。ドーミング現象を抑制するために、発生原因である
熱膨張に起因した電子ビーム通過孔の変位を小さくする
低熱膨張特性をもつ材料の使用が検討されている。たと
えば、特開昭61−78033号公報,特公平4−56
107号公報等では、シャドウマスク用材料としてFe
−36%Ni系アンバー合金が紹介されている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】Fe−36%Ni系ア
ンバー合金は、多量のNiを含んでいることから低炭素
Alキルド鋼に比較して素材価格が高いことは勿論、高
強度のためプレス成形性に劣っている。また、ヤング率
が低く、シャドウマスクに必要な剛性が不足し、エッチ
ング速度が遅く、エッチング穿孔性にも問題がある。プ
レス成形性は、0.2%耐力の低下,結晶粒径の適正化
等で向上する。たとえば、Cr,Mnの添加により0.
2%耐力を低下させる方法(特開昭61−78033号
公報),結晶粒度を規制する方法(特開昭61−157
662号公報,特開昭62−112759号公報,特開
平2−305941号公報)等が知られている。また、
更にC含有量を低減することによってプレス成形性を改
善することも試みられている。 【0005】しかし、フラット化が進行している近年の
ブラウン管画面に適したシャドウマスクに関しては、こ
れらの方法でプレス成形性が改善された材料であっても
依然として要求特性を満足しない。そのため、シャドウ
マスクのプレス成形不良を完全に無くすことはできず、
形状不良に起因して歩留まりの低下や品質の低下を引き
起こす原因となっている。本発明は、このような問題を
解消すべく案出されたものであり、成分が特定されたF
e−Ni系合金を軟化焼鈍した後の集合組織を制御する
ことにより、Fe−Ni系合金のエッチング性及びプレ
ス成形性を向上させ、高品質のシャドウマスク用材料を
提供することを目的とする。 【0006】 【課題を解決するための手段】本発明のシャドウマスク
用材料は、その目的を達成するため、Ni:34〜39
重量%,Cr:3重量%以下,Si:1重量%以下,M
n:1重量%以下を含み、残部が実質的にFeの組成を
もち、軟化焼鈍後において{111}の面強度比が30
〜45%,{200}の面強度比が30〜45%の集合
組織をもち、伸びが20%以上で、200℃での0.0
5%耐力が120N/mm2 以下であることを特徴とす
る。 【0007】 【作用】シャドウマスクは、通常、次の工程を経て製造
されている。 溶製 → 分塊 → 熱延 → 酸洗 → 冷延 →
光輝焼鈍 → 冷延→ エッチング → 軟化焼鈍 →
プレス加工 → 黒化処理 黒化膜の形成に先立って行われるプレス加工において、
Fe−36%Ni系合金は、200℃前後の温度に加熱
され、所定形状の金型を使用してシャドウマスク形状に
成形される。プレス不良は、プレス成形時にシャドウマ
スクの湾曲面の一部に陣笠状のヘコミとして発生するも
のであり、被加工材料の伸びが低く耐力が高いことに原
因があると考えられている。しかし、フラット化の進展
が著しい近年のブラウン管画面に組み込まれるシャドウ
マスクに対しては、従来からプレス成形性の評価として
使用されている0.2%耐力では十分に評価することが
できない。本発明者等の調査・研究によるとき、0.2
%耐力に替えて歪み量0.05%での耐力を使用する
と、プレス成形性を正確に評価できることが判った。
0.05%耐力は、歪み量が極めて小さく、すなわち弾
性領域に近い塑性領域での変形挙動を表し、曲率の大き
なシャドウマスクの成形を考慮したプレス成形性の評価
指標として有効である。 【0008】本発明者等は、更に調査・研究を進め、
0.05%耐力,伸び及び金属組織の面から、200℃
前後の温間におけるプレス成形性について詳細に検討し
た。その結果、軟化焼鈍材において、伸びが20%未満
で、且つ200℃での0.05%耐力が120N/mm
2 を超えると、プレス不良が発生することを見い出し
た。また、調査過程で、伸びと集合組織との間に相関関
係があることを解明した。集合組織に関しては、Fe−
Ni系合金のエッチング性に影響することが従来から知
られている。たとえば、特開昭62−243782号公
報は、圧延面に{100}結晶面を集合させ、表面粗さ
を規制するとき、エッチングスピードが向上することを
報告している。特公平2−9655号公報は、{10
0}結晶面を35%以上集合させるとき、高精度で且つ
均一なエッチングが可能になることを開示している。し
かし、シャドウマスク用Fe−Ni系合金について、プ
レス成形性の観点から集合組織を調査した例は、今まで
のところ知られていない。 【0009】本発明者等は、この集合組織が機械的性質
に影響を及ぼす因子であることに着目し、集合組織と機
械的性質との相関関係を詳細に調査した。そして、{1
11}の面強度比が30〜45%,{200}の面強度
比が30〜45%の集合組織が形成されたとき、伸びが
20%以上になることを見い出した。そして、この場合
の200℃での0.05%耐力が120N/mm2 以下
になると、プレス成形性が改善されるとの知見を得た。
本発明は、このような0.05%耐力,伸び及び金属組
織等に関する調査・研究の結果として完成されたもので
ある。以下、本発明シャドウマスク用材料に含まれる合
金元素等を説明する。 Ni:34〜39重量% Fe−Ni系合金の熱膨張係数を低く維持する上で重要
な合金元素である。Ni含有量が34〜39重量%の範
囲を外れると、熱膨張係数が増大し、シャドウマスクと
して使用したときに熱変形に起因するドーミング現象が
現れ易くなる。また、39重量%を超える多量のNiが
含まれると、耐力が上昇し、成形性が低下する。 【0010】Cr:0〜3重量% Fe−Ni系合金のエッチング速度を増大させる有効な
合金元素であり、必要に応じて添加される。Crの効果
は、0.001重量%以上の含有量で顕著になる。しか
し、熱膨張係数を増加させる欠点をもつことから、Cr
を添加する場合、Cr添加量の上限を3重量%に設定し
た。 Si:0〜1重量% 脱酸剤として添加される元素であり、所望の脱酸効果を
得るためには0.001重量%以上のSiを含有させる
ことが好ましい。しかし、1重量%を超えるSi含有量
は、Fe−Ni系合金の熱膨張係数を大きくすると共
に、仕上げ焼鈍された合金素材の表面に酸化物を形成
し、エッチング性や黒化膜特性を劣化させる。 Mn:0〜1重量% 脱酸剤として添加される元素であり、所望の脱酸効果を
得るためには0.01重量%以上のMnを含有させるこ
とが好ましい。しかし、1重量%を超えるMn含有量で
は、Fe−Ni系合金の熱膨張係数が大きくなり、ドー
ミング現象が生じ易くなる。 【0011】集合組織 以上に規制した合金元素を含有するFe−Ni系合金を
冷間圧延した後、還元雰囲気中での光輝焼鈍を施し、引
き続き仕上げ圧延する。そして、焼鈍後に集合組織の
{111}の面強度比が30〜45%,{200}の面
強度比が30〜45%となるように軟化焼鈍する。焼鈍
条件としては、温度700〜100℃,好ましくは75
0〜950℃の温度範囲,1気圧の大気下での露点−2
0〜+30℃の範囲が好適である。その結果、軟化焼鈍
された材料は、伸びが29%以上,200℃での0.0
5%耐力が120N/mm2 以下となり、エッチング性
及びプレス成形性に優れたシャドウマスク用材料とな
る。 【0012】集合組織の{111}面強度比及び{20
0}面強度比は、図1の(a)及び(b)にそれぞれ示
すように、伸びとの間に相関関係を持っている。{11
1}面強度比が30%以上で{200}面強度比が45
%以下のとき、20%以上の伸びが得られており、プレ
ス成形性が向上する。また、伸びと0.05%耐力との
間には図2に示す相関関係が成立しており、伸びが20
%以上で0.05%耐力が120N/mm2 以下とな
り、プレス成形性が向上する。集合組織は、エッチング
性にも影響する。図1における黒丸は、エッチング性が
不良のものを示す。図1(a)に示されるように{11
1}面強度比が45%以下であれば、良好なエッチング
性が得られている。また、図1(b)から、{200}
面強度比が30%以上で良好なエッチング性が得られて
いる。これらの点から、本発明では、{111}面強度
比を30〜45%,{200}面強度比を30〜45%
の範囲に定めた。 【0013】 【実施例】表1に示すFe−Ni系合金をVODプロセ
スで溶製し、分塊工程を経て板厚6mmの熱延コイルを
製造した。熱延コイルを更に冷延し、板厚0.3mmの
冷延板を得た。 【0014】 【表1】 【0015】冷延板に対し、還元雰囲気中で750〜1
050℃に加熱する仕上げ焼鈍を施し、次いで圧下率5
〜25%の仕上げ圧延を行った。得られた板材をエッチ
ングした後、650〜800℃の軟化焼鈍を施した。軟
化焼鈍された板材から試験片を切り出し、集合組織,引
張り特性,プレス性及びエッチング性を調査した。調査
結果を表2に示す。集合組織はX線回折装置で観察し、
次式に従って測定データから{111}面強度比及び
{200}面強度比を算出した。ただし、I(hkl)
は、X線回折による結晶面(hkl)の積分強度とし
た。 {111}面強度比=I(111)/[I(111)+
I(220)+I(311)+I(200)] {200}面強度比=I(200)/[I(111)+
I(220)+I(311)+I(200)] 【0016】引張り特性は、室温及び200℃で引張り
試験を行い、引張り試験後の室温での伸び及び200℃
での0.05%耐力を測定した。プレス成形性は、素材
をシャドウマスクに成形した後、マスク形状に発生した
不良の有無を目視観察することにより判定した。そし
て、プレス設計曲率に対してズレが±5%以内のものを
○,へこみの発生によりズレが±5%を超えたものを×
として評価した。エッチング性は、シャドウマスクパタ
ーンを用いて穿孔加工した後、穿孔径の精度,テーパー
部のがさつき等を検査し、穿孔径の精度が5%以下で、
テーパ部のがさつきがないものを○,精度が5%を超え
たもの又はがさつきのあるものをを×として評価した。 【0017】 【表2】【0018】表2から明らかなように、集合組織が{1
11}面強度比30〜45%,{200}面強度比30
〜45%の条件下で製造された試験番号1〜3の板材
は、伸びが20%以上,200℃での0.05%耐力が
120N/mm2 以下となり、良好なプレス成形性及び
エッチング性を示していた。これに対し、試験番号4,
5の比較例では、{200}面強度比が30%未満であ
り、伸びが大きく、0.05%耐力が120N/mm2
以下であることから、良好なプレス成形性を呈したもの
の、エッチング時に孔精度が悪くがさつきのある孔が穿
孔された。試験番号6〜8の比較例では、{200}面
強度比が45%を超えており、板材の伸びが20%以下
と小さく、0.05%耐力も130N/mm2 と高い値
を示した。そのため、エッチング性が良好であったもの
の、プレス成形性に劣っていた。試験番号9の比較例で
は、集合組織が{111}面強度比30%未満,{20
0}面強度比45%以下の条件下で板材が製造されてお
り、伸びが20%未満,0.05%耐力が121N/m
m2 で、プレス成形性及びエッチング性の双方に劣って
いた。この対比から明らかなように、{111}面強度
比30〜45%,{200}面強度比30〜45%の集
合組織を持つ材料は、伸びが大きく、温間の0.05%
耐力が120N/mm2 以下の低い値になっており、良
好なプレス成形性及びエッチング性を備えていることが
判る。 【0019】 【発明の効果】以上に説明したように、本発明のシャド
ウマスク用材料は、軟化焼鈍後の集合組織を{111}
面強度比30〜45%,{200}面強度比30〜45
%とすることにより、板材が軟質化され、プレス成形性
及びエッチング性の双方に優れている。しかも、黒化膜
密着性も良好で、高精密化,高輝度化,大型化,フラッ
ト化が著しい傾向にあるテレビ用ブラウン管やOA機器
用ディスプレイ等に使用される低熱膨張特性を活用した
シャドウマスク用材料となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 軟化焼鈍材の伸びと集合組織の面強度比との
関係 【図2】 軟化焼鈍材の伸びと0.05%耐力との関係
関係 【図2】 軟化焼鈍材の伸びと0.05%耐力との関係
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(56)参考文献 特開 平6−336654(JP,A)
特開 平7−150299(JP,A)
特開 平6−57382(JP,A)
特開 平4−341543(JP,A)
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
H01J 29/07
H01J 9/14
C22C 38/00
C22C 38/08
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 Ni:34〜39重量%,Cr:3重量
%以下,Si:1重量%以下,Mn:1重量%以下を含
み、残部が実質的にFeの組成をもち、軟化焼鈍後にお
いて{111}の面強度比が30〜45%,{200}
の面強度比が30〜45%の集合組織をもち、伸びが2
0%以上で、200℃での0.05%耐力が120N/
mm2 以下であるプレス性及びエッチング性に優れたシ
ャドウマスク用材料。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP03155395A JP3471465B2 (ja) | 1995-01-27 | 1995-01-27 | プレス性及びエッチング性に優れたシャドウマスク用材料 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP03155395A JP3471465B2 (ja) | 1995-01-27 | 1995-01-27 | プレス性及びエッチング性に優れたシャドウマスク用材料 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH08203443A JPH08203443A (ja) | 1996-08-09 |
JP3471465B2 true JP3471465B2 (ja) | 2003-12-02 |
Family
ID=12334385
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP03155395A Expired - Fee Related JP3471465B2 (ja) | 1995-01-27 | 1995-01-27 | プレス性及びエッチング性に優れたシャドウマスク用材料 |
Country Status (1)
Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3471465B2 (ja) |
Families Citing this family (1)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2001152292A (ja) * | 1999-11-25 | 2001-06-05 | Nippon Mining & Metals Co Ltd | 磁気特性に優れたセミテンションマスク用Fe−Ni系合金並びにそれを用いたセミテンションマスク及びカラーブラウン管 |
-
1995
- 1995-01-27 JP JP03155395A patent/JP3471465B2/ja not_active Expired - Fee Related
Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPH08203443A (ja) | 1996-08-09 |
Similar Documents
Publication | Publication Date | Title |
---|---|---|
KR100486326B1 (ko) | 프레스 성형형 플랫 마스크용 Fe-Ni계 또는 Fe-Ni-Co계 합금 박대 | |
JP3471465B2 (ja) | プレス性及びエッチング性に優れたシャドウマスク用材料 | |
KR100484481B1 (ko) | 프레스 성형형 완전 평탄한 마스크용Fe-Ni-Co합금과, 이를 이용한 완전 평탄한 마스크및 컬러 음극선관 | |
US20020117241A1 (en) | Method of manufacturing Fe-Ni alloy material for pressed flat mask | |
JPH1060525A (ja) | 板形状および耐熱収縮性に優れた低熱膨張合金薄板の製 造方法 | |
JP2871414B2 (ja) | プレス成形性に優れたシャドウマスク用合金薄板およびその製造方法 | |
JP3379368B2 (ja) | 板形状および耐熱収縮性に優れた低熱膨張合金薄板の製造方法 | |
JP3406722B2 (ja) | シャドウマスク用低熱膨張合金 | |
JP3802326B2 (ja) | 耐落下衝撃変形性及び低熱膨張性Fe−Ni系合金材の、熱間圧延割れを防止する製造方法 | |
JP3401308B2 (ja) | 温間プレス性に優れたシャドウマスク用材料及び製造方法 | |
JP3379301B2 (ja) | 板形状および耐熱収縮性に優れたシャドウマスク用低熱膨張合金薄板の製造方法 | |
JP3401307B2 (ja) | 再結晶特性に優れたシャドウマスク用材料及び製造方法 | |
JP3467020B2 (ja) | プレス成形型フラットマスク用Fe−Ni系合金並びにそれを用いるフラットマスクおよびカラーブラウン管 | |
JP3515769B2 (ja) | プレス成形型フラットマスク用Fe−Ni−Co系合金薄帯 | |
JP3892312B2 (ja) | ブラウン管フレーム用高強度鋼板の製造方法 | |
JP2004331997A (ja) | シャドウマスク用高強度Fe−Ni−Co系合金 | |
JP3346781B2 (ja) | シャドウマスク用原板およびシャドウマスク | |
JP2933913B1 (ja) | Fe−Ni系シャドウマスク用材料およびその製造方法 | |
JP3536059B2 (ja) | プレス成形型フラットマスク用Fe−Ni系合金薄帯 | |
JP3322370B2 (ja) | 高強度高エッチング性シャドウマスク材料およびシャドウマスクの製造方法 | |
JP3623620B2 (ja) | シャドウマスク用素材のエッチング性評価方法及びエッチング後にスジむらが発生しないシャドウマスク用素材 | |
JP3793122B2 (ja) | カラー受像管用マスク用材料の製造方法 | |
JP3615300B2 (ja) | スジむら発生のないシャドウマスク用素材の製造方法 | |
JP2002294406A (ja) | プレス成形型フラットマスク用Fe−Ni系合金薄帯 | |
JP3600818B2 (ja) | カラー受像管用マスク用材料、カラー受像管用マスクおよびカラー受像管 |
Legal Events
Date | Code | Title | Description |
---|---|---|---|
A01 | Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model) |
Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01 Effective date: 20030902 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20080912 Year of fee payment: 5 |
|
FPAY | Renewal fee payment (event date is renewal date of database) |
Free format text: PAYMENT UNTIL: 20090912 Year of fee payment: 6 |
|
LAPS | Cancellation because of no payment of annual fees |