JP7320987B2 - インバー合金板およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、インバー合金板とその製造方法に関係するものであって、構造物の変形防止や歩留りの向上などによる施工コストの低減に寄与するものである。
低膨張合金はその熱膨張係数が鉄やニッケルに対して1/10以下と著しく小さいことを特徴とする。低膨張合金には、インバー合金やスーパーインバー合金、ステンレスインバー合金、Fe-Pd合金などがあり、その中でも、Feに約36質量%のNiを含有させたインバー合金が代表的である。以下、Feに約36質量%のNiを含有させた合金を「インバー合金」と呼ぶ。
インバー合金を含むこれら低膨張合金の低膨張特性は、温度上昇による体積膨張と自発体積磁歪による体積収縮の相殺に起因している。例えばインバー合金においては、200~300℃付近にあるキュリー点以下では、磁気ひずみによって収縮し熱膨張を打ち消すが、キュリー点直上で膨張率が急増することが知られている。
低膨張合金の用途としては、標準尺、計測機器、ガラス封着材料、シャドーマスク、IC用フレーム合金、金型、極低温環境の構造物などがある。極低温構造物の具体的な用途としては、インバー合金の場合にはLNG貯蔵容器や配管などが挙げられる。
天然ガスは気体状態よりも液化した方が貯蔵や輸送の勝手がよいことから、天然ガスを加圧によって液化してLNGとして扱われる。液化過程で不純物が取り除かれることから、LNGは殆どメタンで構成されている。そのため、再度気化して使用する際、煤煙や硫黄酸化物などの大気汚染物質を殆ど排出しない。また、石炭や石油などの化石燃料に比べて二酸化炭素の排出量も少なく、クリーンなエネルギーとして需要がある。
LNGは約-164℃の沸点以下の温度域で扱われる。このような極低温環境の構造材料には、優れた低温靭性が必要であることから、面心立方構造を有する9%Ni鋼やアルミニウム合金、オーステナイト系ステンレス鋼、インバー合金などが用いられる。極低温環境用途の構造物では、熱応力による低温収縮を生じるため、構造物の変形防止を目的としてインバー合金に代表される低膨張合金が用いられる。
例えば、LNG貯蔵容器には液密保持のためのメンブレンと呼ばれる内張にインバー合金が適用されている。SUS304などのステンレス鋼製メンブレンには、低温収縮による熱応力の緩和のためにコルゲーションと呼ばれる人工のひだが設けられるが、低膨張合金の場合には必ずしもコルゲート構造は必要でなく、インバー合金の適用によって施工コストの削減が可能になる。
LNG気化器の付属配管やLNG貯蔵容器周りの配管、海底トンネルやカルバート内の配管にもインバー合金が適用されている。非特許文献1によるとLNG配管材料にはしばしばSUS304Lが適用されるが、この場合には低温収縮による熱応力への措置として、直管とエルボ管から成るコの字型のループ配管を設けることで、熱応力の緩和が必要である。LNG配管へのインバー合金の適用は、ループ配管の省略による施工コストの低減を可能にする。
インバー合金の低膨張特性は強い組成依存性を有しており、Ni量が36質量%で極小値をとることが知られている。また、C,Si,Mnなどの不純物元素が膨張係数を増加させることで知られている。構造物の変形防止や製品品質の向上のためには、不純物元素を低減して低膨張化することが望ましい。一方で、不純物元素は材料強度などを制御するために添加する必要もあるため、一概に高純度化できない場合がある。合金元素の添加量は、低膨張特性や材料強度、製造性などとの兼ね合いで決定される。
発明者の一人は、冷間域以外の温度域における累積圧下率を制御することにより、室温以下の温度域で線膨張係数を1.5×10-6/℃以下と小さくしつつ、高強度を図ったインバー合金板の製造方法を考案している(特許文献1)。
特許文献1では、インバー合金を低膨張化および高強度化する方法として、肉厚の薄いものでは冷間加工がしばしば用いられている一方、肉厚の厚い鋼板類において冷間加工を施すのは、製造方法的あるいは設備的に難しいと述べられている。
特許文献1では、圧延後の熱処理としてスプレー冷却が行われている。
特開平10-60528号号公報
片山典彦著 溶接学会誌 第73巻(2004)第7号 p19
しかしながら、従来のインバー合金において、肉厚が厚くなると、L方向(圧延方向)の線膨張係数αLおよびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数αTの評価値では、その比αL/αTはおよそ0.6~1.1で、膨張特性の異方性が認められる。歩留りの向上にはユーザーが方向性を考慮することなく材料を使用できることが望ましく、そのためには膨張特性は等方的であることが必要である。しかしながら、等方的な膨張特性を有するインバー合金板に関する知見は認められない。
本発明では、LNG用途の構造物などに適用可能な、肉厚が厚いインバー合金板で、等方的かつ1.5×10-6/℃以下の低膨張特性および優れた平坦度を有するインバー合金板およびその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために、種々の板厚のインバー合金において、圧延後の熱処理の有無、冷却速度、L方向とT方向の線膨張係数(αL、αT)およびその比(αL/αT)、レベラー矯正、平坦度の関係を調査した。
本発明では、板厚が3mm以上のインバー合金を対象とする。板厚3mm以上の厚肉のインバー合金において、低膨張特性と等方性の両方を同時に実現するのが難しくなるからである。
製造方法的あるいは設備的には空冷や浸漬水冷する余地もあるため、熱間圧延後に熱処理を行い、熱処理後に様々な冷却方法により製造したインバー合金の線膨張係数(αL、αT)を評価した。線膨張係数は、αL、αTともに、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。その結果、熱間圧延後に適切な条件で熱処理を行うことにより、膨張特性の等方性(αL/αT)の改善を見出す一方、冷却方法の違いは膨張特性の等方性(αL/αT)に影響しないことを発見した。さらに、熱処理後の冷却速度が大きいほど、αL、αTともに線膨張係数が小さくなり、冷却速度を1℃/s以上に制御することで、αL、αTともに線膨張係数を1.5×10-6/℃以下にできることを見出した。
また、実製品では冷却過程などで生じる鋼板の撓みをレベラー矯正する必要があるが、レベラー矯正をすると膨張特性の異方性が大きくなる傾向を発見し、等方的な膨張特性が得られるレベラー矯正の上限を見出した。加えて、レベラー矯正によって高強度化と優れた平坦度、更なる線膨張係数の低下を実現した。
これらの実験を通して、等方的かつ1.5×10-6/℃以下の線膨張係数を有し、低膨張特性および優れた平坦度を有するインバー合金板が得られる製造条件範囲を明確にし、本発明の完成に至った。
圧延後の熱処理有無による線膨張係数の等方性を評価し、圧延後に適切な条件で熱処理を実施し回復させることで、L方向の線膨張係数αLとT方向の線膨張係数αTの比(αL/αT)が0.95~1.05の範囲である等方的な線膨張係数のインバー合金厚板を得られることを見出した。
また、上記熱処理後の冷却条件について、300~600℃区間の冷却速度と線膨張係数の関係性を評価し、冷却速度1℃/s以上であれば、αL、αTのいずれも1.5×10-6/℃以下の線膨張係数を有するインバー合金板を得られることを見出した。
板の平坦度を向上するため、レベラー矯正が用いられる。レベラー矯正の程度によっては、線膨張の等方性が失われる。レベラー矯正によって板の0.2%耐力は増加する。そして、矯正前後の0.2%耐力の差ΔPSが50MPa以下であれば、L方向とT方向の線膨張係数の比(αL/αT)が0.95~1.05の範囲である等方的な線膨張特性を有するインバー合金板を得られることを見出した。さらに、レベラー矯正によって優れた平坦度、更なる線膨張係数の低下を実現した。
すなわち、本発明の要旨とするところは以下の通りである。
(1)質量%で、Ni:35~40%を含有し、残部はFe及び不純物であり、
L方向(圧延方向)の線膨張係数αLおよびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数αTがいずれも1.5×10-6/℃以下であり、かつ0.95≦αL/αT≦1.05を有する厚さ3mm以上で80mm以下であり、
2000mmあたりの平坦度5mm以下の平坦度を有するインバー合金板。
ここで線膨張係数は、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。
(2)さらに質量%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Cr:0.3%以下、Mo:0.5%以下、V:0.05%以下、Al:0.01%以下、N:0.005%以下、B:0.005%以下、Co:0.25%以下の1種以上を含有することを特徴とする(1)に記載のインバー合金板。
(3)質量%で、Ni:35~40%を含有し、残部はFe及び不純物であり、
L方向(圧延方向)の線膨張係数α L およびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数α T がいずれも1.5×10 -6 /℃以下であり、かつ0.95≦α L /α T ≦1.05を有する厚さ3mm以上で80mm以下のインバー合金板の製造方法であって、
前記インバー合金板の圧延後650℃以上で5min以上熱処理し、その後の冷却において600℃から300℃の温度範囲の冷却速度を1℃/s以上とすることを特徴とするインバー合金板の製造方法。
ここで線膨張係数は、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。
(4)前記インバー合金はさらに質量%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Cr:0.3%以下、Mo:0.5%以下、V:0.05%以下、Al:0.01%以下、N:0.005%以下、B:0.005%以下、Co:0.25%以下の1種以上を含有することを特徴とする(3)に記載のインバー合金板の製造方法。
)前記インバー合金板の0.2%耐力が、レベラー矯正前の0.2%耐力より3MPa以上、50MPa以下の強度上昇となるようにレベラー矯正を行うことを特徴とする(3)または(4)に記載のインバー合金板の製造方法。
(6)前記インバー合金板は、2000mmあたりの平坦度5mm以下の平坦度を有する()記載のインバー合金板の製造方法
本発明により得られるインバー合金板は、等方的かつ1.5×10-6/℃以下の膨張係数と優れた平坦度を有する。発明鋼は極低温環境の構造物などでの熱応力に起因した変形を防止することや、使用の際の歩留りを向上させることができ、施工コストの低下に寄与する。
《成分組成》
本発明で規定するインバー合金は、Feを主成分とし、Niを35~40質量%含有する合金を意味する。Fe、Ni以外の化学組成は特に限定しないが、好ましくは、Niを35~40質量%含有し、残部はFe及び不純物とする。以下の記載で、%は質量%を意味する。
Niはインバー合金の膨張特性に最も影響する元素であり、35~40%の添加で低膨張特性が得られる。より好ましくは35.5~37%で、この組成範囲で膨張特性は極小になる。
一方、前述のように合金元素添加量は低膨張特性に影響するため、本発明における低膨張特性を実現するため、Fe、Niの他、以下に記載する元素を下記成分範囲で含有しても良い。
Cは膨張係数を増加させるため、好ましくは0.1%以下で、より好ましくは0.040%以下である。
SiおよびMnは膨張係数を増加させるため、好ましくはそれぞれ1.0%以下である。より好ましくは、Siは0.30%以下、Mnは0.70%以下である。
Pは凝固割れ感受性や溶接割れ感受性を著しく劣化させるため、好ましくは0.025%以下である。
Crは0.3%超の添加で膨張特性を著しく劣化させることから、好ましくは0.3%以下、より好ましくは0.15%以下である。
MoおよびVは膨張特性を劣化させる元素であるため、好ましくはMoは0.5%以下、Vは0.05%以下である。
Alは0.01%以上の添加で著しく熱間加工性を劣化させることから、好ましくは0.01%以下である。
Sは溶製時に混入する不可避的不純物で、合金の熱間加工性を劣化させる。好ましくは0.005%以下で、より好ましくは0.001%以下である。
Nは不可避的不純物元素であり、合金の熱間加工性を劣化させる。好ましくは0.005%以下である。
Bは膨張特性を劣化させる一方、合金の熱間加工性を改善する作用があるので、好ましくは0.005%以下である。
Coは膨張係数を小さくする作用があるが経済性を損ねるため、好ましくは0.25%以下とし、より好ましくは0.1%以下である。
本発明合金には不可避的不純物元素として、O,Be,Ca,Mg,Nb,Sr,Ti,W,Cu,Sn,Ti,Zr,Hf,Ta,REM等も混入する場合が多く、好ましくはいずれも0.1%以下である。
《インバー合金板の板厚》
前述のとおり、本発明のインバー合金は、板厚が3mm以上のインバー合金を対象とする。板厚3mm以上の厚肉のインバー合金において、従来のインバー合金では膨張特性の異方性が大きくなることから、本発明を適用する効果が生まれるためである。一方、板厚の上限を80mmとする。板厚が80mmを超えると、本発明を適用しても低膨張特性を実現することが難しいためである。
《線膨張係数》
本発明では、L方向(圧延方向)の線膨張係数αLおよびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数αTを評価対象とする。ここで線膨張係数は、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。
本発明のインバー合金は、αL、αTのいずれも1.5×10-6/℃以下であり、さらに0.95≦αL/αT≦1.05を満たすことを特徴とする。これにより、本発明のインバー合金は、膨張特性が等方的であり、同時に低膨張化も実現している。
《平坦度》
本発明の好ましいインバー合金はさらに、2000mmあたりの平坦度5mm以下の優れた平坦度を有する。平坦度の測定は、JIS G 3193に則り、鋼板上側の面の任意の長さ2000mmについて、ひずみの最大値から鋼板の厚さを減じたものとする。
《インバー合金の製造方法》
以下、本発明のインバー合金の製造方法について説明する。まず第1に、等方的かつ低膨張となる線膨張係数を実現するための製造方法について説明する。
インバー合金は、通常行われる熱間圧延によって製造される。熱間圧延は、厚板圧延と連続熱延(ホットストリップ)のいずれを用いても良い。
本発明は、熱間圧延後に熱処理を施すことにより、等方的かつ低膨張となる線膨張係数を実現している。圧延後の熱処理によって膨張特性は等方的になる。0.95≦αL/αT≦1.05を満たす等方的な膨張特性を得るには、熱処理温度は650℃以上、好ましくは700℃以上であり、より高温であるほど短時間で効果を得られる。また、熱処理時間は5min以上、好ましくは10min以上であり、より長時間であるほど低温でも効果が得られる。等方的な膨張特性を得るためには圧延で導入されたひずみを回復・再結晶によって少なくすればよいので、熱処理温度および熱処理時間に上限は設けないが、高温での熱処理や長時間の熱処理は製造コストを増加させるとともに、表層のスケールが成長し表面性状の悪化や疵の原因になるため、熱処理温度は好ましくは1000℃以下であり、熱処理温度は好ましくは60分以下である。
圧延後の熱処理での300~600℃の冷却速度は遅いほど線膨張係数は増加する。1.5×10-6/℃以下の線膨張係数を得るために、冷却速度を1℃/s以上とする。好ましくは2℃/s以上であり、より好ましくは3℃/s以上である。冷却方法は板厚に応じて空冷、強制空冷、油冷、水冷などから適宜選択できる。
第2に、優れた平坦度を実現するための製造方法について説明する。
平坦度を向上するためには、レベラー矯正を用いることができる。ただし、レベラー矯正の程度によっては、膨張特性の等方性が劣化してしまう。即ち、レベラー矯正の程度が大きくなるほど、板の平坦度が向上するが、膨張特性の等方性は劣化する。
L方向とT方向の線膨張係数の比(αL/αT)が0.95~1.05である等方的な膨張特性を有し、かつ2000mmあたりの平坦度5mm以下の優れた平坦度を有するインバー合金板を得るために、レベラー矯正前後の0.2%耐力の差を3MPa以上、50MPa以下とする。好ましくは5MPa以上、30MPa以下である。3MPa未満であると上記の平坦度を満足できず、50MPa超であると上記の等方的な膨張特性を満足できない。なお、レベラー矯正の程度を示す指標として、強度(0.2%耐力)の増加代で制御することは通常の製造方法で行われることである。
以下に実施例について記載する。表1にインバー合金の化学組成を示す。なお表1の成分No.Dは、FeとNi以外の成分は積極的に添加しておらず、不純物レベルにある。成分No.A~CのC、Si、Mnについては、意図的に成分を添加しているが、あくまで不純物としての含有量濃度が高い場合を想定して添加し、品質を評価したものである。
Figure 0007320987000001
表1に記載の成分を含有するインバー合金を溶製して鋼片とし、熱間圧延、熱処理、酸洗の工程を経て厚さ4~100mmのインバー合金板を製造した。熱間圧延として、厚板圧延を適用した。ストレート圧延とクロス圧延を適宜実施し、クロス圧延の場合、L方向はスラブ長手方向とした。得られたインバー合金板に750℃×10分の熱処理を施し、熱処理後の冷却中の600~300℃区間の冷却速度を0.4~120℃/sに変化させた後、試料によってはレベラー矯正を実施した。
ここで、表2における製造条件の項目について説明する。表2において、冷却速度は熱処理後の冷却中の600~300℃区間の冷却速度を示す。レベラー有無はレベラー矯正の実施有無を示す。αLおよびαTはそれぞれL方向とT方向の20~-170℃での平均線膨張係数を示し、その比をαL/αTと示す。平坦度は2000mmあたりの平坦度[mm]を示す。ΔPSはレベラー矯正後の0.2%耐力からレベラー矯正前の0.2%耐力を差し引いた値[MPa]を示す。
熱処理後の冷却速度は、板長さ中央の板厚中央に板端部より幅方向30mmのキリ孔を作製し、シース熱電対を挿入して測定した。
線膨張係数はL方向(圧延方向)とT方向(圧延方向に直角の板幅方向)それぞれについて、t/4部から採取した20mm×3mm角の試験片を用いて測定を行った。線膨張係数の測定はレーザー干渉法により-170~20℃で実施し、測定値をもとに平均線膨張係数を算出した。
平坦度はJIS G 3193に則り、鋼板上側の面の任意の長さ2000mmについて、ひずみの最大値から鋼板の厚さを減じたものを測定した。
レベラー矯正前後の0.2%耐力はT方向のt/4部から板厚3mmの13号B試験片を採取し、JIS Z 2241に準拠した引張試験から測定した。
Figure 0007320987000002
製造条件および上記の結果をまとめて表2に示す。表2の備考欄に「発明例」と記載した本発明のインバー合金板は、等方的かつ低膨張となる線膨張係数であり、本発明が目的とする優れた特性を有することが明らかである。特に、本発明の好適条件でレベラー矯正を行った発明例は、平坦度が5mm以下の良好な平坦度を実現することができた。
比較例14は熱処理の冷却速度が本発明範囲を外れ、線膨張係数が高い値となった。
比較例20、24は熱処理温度が低すぎ、比較例9は熱処理時間が短く、比較例12、15、23、31はレベラー矯正でのΔPSが大きすぎ、いずれもαL/αTが本発明範囲からはずれ、膨張特性の等方性が不十分であった。
比較例6は板厚と熱処理の冷却速度が本発明範囲を外れ、線膨張係数が高い値となった。
本発明によれば鋼の製造条件の範囲を規定することにより、0.95≦αL/αT≦1.05の等方的かつ1.5×10-6/℃以下の線膨張係数および優れた平坦度を有するインバー合金板を提供することができる。本発明はLNG関連用途の構造部材に適しているが、その用途以外にも例えば極低温環境の構造物、配管類、輸送機器部品、貯蔵容器などの低温での熱応力による変形防止が重要な用途に広範囲に適用できるものである。さらに、等方的かつ低膨張となる線膨張係数を実現によって、製品品質と歩留りの向上に寄与する。

Claims (6)

  1. 質量%で、Ni:35~40%を含有し、残部はFe及び不純物であり、
    L方向(圧延方向)の線膨張係数αLおよびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数αTがいずれも1.5×10-6/℃以下であり、かつ0.95≦αL/αT≦1.05を有する厚さ3mm以上で80mm以下であり、
    2000mmあたりの平坦度5mm以下の平坦度を有するインバー合金板。
    ここで線膨張係数は、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。
  2. さらに質量%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Cr:0.3%以下、Mo:0.5%以下、V:0.05%以下、Al:0.01%以下、N:0.005%以下、B:0.005%以下、Co:0.25%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のインバー合金板。
  3. 質量%で、Ni:35~40%を含有し、残部はFe及び不純物であり、
    L方向(圧延方向)の線膨張係数α L およびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数α T がいずれも1.5×10 -6 /℃以下であり、かつ0.95≦α L /α T ≦1.05を有する厚さ3mm以上で80mm以下のインバー合金板の製造方法であって、
    前記インバー合金板の圧延後650℃以上で5min以上熱処理し、その後の冷却において600℃から300℃の温度範囲の冷却速度を1℃/s以上とすることを特徴とするインバー合金板の製造方法。
    ここで線膨張係数は、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。
  4. 前記インバー合金はさらに質量%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Cr:0.3%以下、Mo:0.5%以下、V:0.05%以下、Al:0.01%以下、N:0.005%以下、B:0.005%以下、Co:0.25%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載のインバー合金板の製造方法。
  5. 前記インバー合金板の0.2%耐力が、レベラー矯正前の0.2%耐力より3MPa以上、50MPa以下の強度上昇となるようにレベラー矯正を行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のインバー合金板の製造方法。
  6. 前記インバー合金板は、2000mmあたりの平坦度5mm以下の平坦度を有する請求項に記載のインバー合金板の製造方法
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