JP7320987B2 - インバー合金板およびその製造方法 - Google Patents
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Description
特許文献1では、インバー合金を低膨張化および高強度化する方法として、肉厚の薄いものでは冷間加工がしばしば用いられている一方、肉厚の厚い鋼板類において冷間加工を施すのは、製造方法的あるいは設備的に難しいと述べられている。
特許文献1では、圧延後の熱処理としてスプレー冷却が行われている。
本発明では、板厚が3mm以上のインバー合金を対象とする。板厚3mm以上の厚肉のインバー合金において、低膨張特性と等方性の両方を同時に実現するのが難しくなるからである。
(1)質量%で、Ni:35~40%を含有し、残部はFe及び不純物であり、
L方向(圧延方向)の線膨張係数αLおよびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数αTがいずれも1.5×10-6/℃以下であり、かつ0.95≦αL/αT≦1.05を有する厚さ3mm以上で80mm以下であり、
2000mmあたりの平坦度5mm以下の平坦度を有するインバー合金板。
ここで線膨張係数は、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。
(2)さらに質量%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Cr:0.3%以下、Mo:0.5%以下、V:0.05%以下、Al:0.01%以下、N:0.005%以下、B:0.005%以下、Co:0.25%以下の1種以上を含有することを特徴とする(1)に記載のインバー合金板。
L方向(圧延方向)の線膨張係数α L およびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数α T がいずれも1.5×10 -6 /℃以下であり、かつ0.95≦α L /α T ≦1.05を有する厚さ3mm以上で80mm以下のインバー合金板の製造方法であって、
前記インバー合金板の圧延後650℃以上で5min以上熱処理し、その後の冷却において600℃から300℃の温度範囲の冷却速度を1℃/s以上とすることを特徴とするインバー合金板の製造方法。
ここで線膨張係数は、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。
(4)前記インバー合金はさらに質量%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Cr:0.3%以下、Mo:0.5%以下、V:0.05%以下、Al:0.01%以下、N:0.005%以下、B:0.005%以下、Co:0.25%以下の1種以上を含有することを特徴とする(3)に記載のインバー合金板の製造方法。
(5)前記インバー合金板の0.2%耐力が、レベラー矯正前の0.2%耐力より3MPa以上、50MPa以下の強度上昇となるようにレベラー矯正を行うことを特徴とする(3)または(4)に記載のインバー合金板の製造方法。
(6)前記インバー合金板は、2000mmあたりの平坦度5mm以下の平坦度を有する(5)記載のインバー合金板の製造方法。
本発明で規定するインバー合金は、Feを主成分とし、Niを35~40質量%含有する合金を意味する。Fe、Ni以外の化学組成は特に限定しないが、好ましくは、Niを35~40質量%含有し、残部はFe及び不純物とする。以下の記載で、%は質量%を意味する。
Niはインバー合金の膨張特性に最も影響する元素であり、35~40%の添加で低膨張特性が得られる。より好ましくは35.5~37%で、この組成範囲で膨張特性は極小になる。
前述のとおり、本発明のインバー合金は、板厚が3mm以上のインバー合金を対象とする。板厚3mm以上の厚肉のインバー合金において、従来のインバー合金では膨張特性の異方性が大きくなることから、本発明を適用する効果が生まれるためである。一方、板厚の上限を80mmとする。板厚が80mmを超えると、本発明を適用しても低膨張特性を実現することが難しいためである。
本発明では、L方向(圧延方向)の線膨張係数αLおよびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数αTを評価対象とする。ここで線膨張係数は、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。
本発明のインバー合金は、αL、αTのいずれも1.5×10-6/℃以下であり、さらに0.95≦αL/αT≦1.05を満たすことを特徴とする。これにより、本発明のインバー合金は、膨張特性が等方的であり、同時に低膨張化も実現している。
本発明の好ましいインバー合金はさらに、2000mmあたりの平坦度5mm以下の優れた平坦度を有する。平坦度の測定は、JIS G 3193に則り、鋼板上側の面の任意の長さ2000mmについて、ひずみの最大値から鋼板の厚さを減じたものとする。
以下、本発明のインバー合金の製造方法について説明する。まず第1に、等方的かつ低膨張となる線膨張係数を実現するための製造方法について説明する。
本発明は、熱間圧延後に熱処理を施すことにより、等方的かつ低膨張となる線膨張係数を実現している。圧延後の熱処理によって膨張特性は等方的になる。0.95≦αL/αT≦1.05を満たす等方的な膨張特性を得るには、熱処理温度は650℃以上、好ましくは700℃以上であり、より高温であるほど短時間で効果を得られる。また、熱処理時間は5min以上、好ましくは10min以上であり、より長時間であるほど低温でも効果が得られる。等方的な膨張特性を得るためには圧延で導入されたひずみを回復・再結晶によって少なくすればよいので、熱処理温度および熱処理時間に上限は設けないが、高温での熱処理や長時間の熱処理は製造コストを増加させるとともに、表層のスケールが成長し表面性状の悪化や疵の原因になるため、熱処理温度は好ましくは1000℃以下であり、熱処理温度は好ましくは60分以下である。
平坦度を向上するためには、レベラー矯正を用いることができる。ただし、レベラー矯正の程度によっては、膨張特性の等方性が劣化してしまう。即ち、レベラー矯正の程度が大きくなるほど、板の平坦度が向上するが、膨張特性の等方性は劣化する。
L方向とT方向の線膨張係数の比(αL/αT)が0.95~1.05である等方的な膨張特性を有し、かつ2000mmあたりの平坦度5mm以下の優れた平坦度を有するインバー合金板を得るために、レベラー矯正前後の0.2%耐力の差を3MPa以上、50MPa以下とする。好ましくは5MPa以上、30MPa以下である。3MPa未満であると上記の平坦度を満足できず、50MPa超であると上記の等方的な膨張特性を満足できない。なお、レベラー矯正の程度を示す指標として、強度(0.2%耐力)の増加代で制御することは通常の製造方法で行われることである。
比較例20、24は熱処理温度が低すぎ、比較例9は熱処理時間が短く、比較例12、15、23、31はレベラー矯正でのΔPSが大きすぎ、いずれもαL/αTが本発明範囲からはずれ、膨張特性の等方性が不十分であった。
比較例6は板厚と熱処理の冷却速度が本発明範囲を外れ、線膨張係数が高い値となった。
Claims (6)
- 質量%で、Ni:35~40%を含有し、残部はFe及び不純物であり、
L方向(圧延方向)の線膨張係数αLおよびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数αTがいずれも1.5×10-6/℃以下であり、かつ0.95≦αL/αT≦1.05を有する厚さ3mm以上で80mm以下であり、
2000mmあたりの平坦度5mm以下の平坦度を有するインバー合金板。
ここで線膨張係数は、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。 - さらに質量%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Cr:0.3%以下、Mo:0.5%以下、V:0.05%以下、Al:0.01%以下、N:0.005%以下、B:0.005%以下、Co:0.25%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載のインバー合金板。
- 質量%で、Ni:35~40%を含有し、残部はFe及び不純物であり、
L方向(圧延方向)の線膨張係数α L およびT方向(圧延方向と直角の板幅方向)の線膨張係数α T がいずれも1.5×10 -6 /℃以下であり、かつ0.95≦α L /α T ≦1.05を有する厚さ3mm以上で80mm以下のインバー合金板の製造方法であって、
前記インバー合金板の圧延後650℃以上で5min以上熱処理し、その後の冷却において600℃から300℃の温度範囲の冷却速度を1℃/s以上とすることを特徴とするインバー合金板の製造方法。
ここで線膨張係数は、20~-170℃の平均線膨張係数を意味する。 - 前記インバー合金はさらに質量%で、C:0.1%以下、Si:1.0%以下、Mn:1.0%以下、P:0.025%以下、S:0.005%以下、Cr:0.3%以下、Mo:0.5%以下、V:0.05%以下、Al:0.01%以下、N:0.005%以下、B:0.005%以下、Co:0.25%以下の1種以上を含有することを特徴とする請求項3に記載のインバー合金板の製造方法。
- 前記インバー合金板の0.2%耐力が、レベラー矯正前の0.2%耐力より3MPa以上、50MPa以下の強度上昇となるようにレベラー矯正を行うことを特徴とする請求項3または請求項4に記載のインバー合金板の製造方法。
- 前記インバー合金板は、2000mmあたりの平坦度5mm以下の平坦度を有する請求項5に記載のインバー合金板の製造方法。
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