JP2003026613A - 低級炭化水素から芳香族炭化水素と水素を製造する方法 - Google Patents

低級炭化水素から芳香族炭化水素と水素を製造する方法

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 メタン等の低級炭化水素からベンゼン、ナフ
タレン等の芳香族炭化水素と水素を同時に且つ触媒活性
の低下を招くことなく製造する方法を提供する。 【解決手段】 触媒の存在下で、メタンを少なくとも6
0モル%含有する低級炭化水素からベンゼン及びナフタ
レンを主成分とする芳香族炭化水素と水素を同時に製造
する際に、原料の低級炭化水素と、触媒の活性維持又は
活性が低下した触媒を再生するための水素含有ガスまた
は水素ガスをそれぞれ周期的に且つ交互に触媒と接触さ
せることを特徴とする低級炭化水素からの芳香族炭化水
素と水素の製造方法。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、天然ガス等の低級
炭化水素からプラスチック類などの各種化学製品の基礎
物質であるベンゼン及びナフタレンを主成分とする芳香
族炭化水素と高純度水素ガスの効率的な製造方法に関す
るものである。
【0002】
【従来の技術】従来、ベンゼン、トルエン、キシレン等
の芳香族炭化水素は主にナフサ及び石炭タールから製造
されている。前者は石油資源を出発原料とするが、芳香
族炭化水素の収率が低い点が問題である。一方、後者は
廉価な石炭を出発原料とするが、溶剤抽出法を使用する
ため、多量の有機溶剤を必要とする難点がある。
【0003】また、ナフタレンは従来、主に石炭タール
から溶剤抽出法により製造されている。この方法も多量
の有機溶剤を要し、且つ収量が極めて低い問題がある。
【0004】水素ガスの製造法としては、天然ガスやナ
フサの水蒸気改質法が世界の主流になっているが、90
0℃程度の高温を必要とし、また改質温度を維持するた
めに多量の原料を燃焼させ、また触媒の活性低下を防ぐ
ために理論必要量の3〜4倍の水蒸気を使用しており、
極めて多量のエネルギーを消費している。さらに、改質
・燃焼生成物として地球温暖化物質である二酸化炭素が
多量に発生するなどの問題点がある。
【0005】一方、低級炭化水素、特にメタンからベン
ゼン及びナフタレン等の芳香族炭化水素と水素を製造す
る方法としては、酸素ガスが存在しない系で、触媒上で
メタンを直接分解させる方法いわゆるメタンの直接転換
法が知られており、この場合の触媒としてはHZSM−5ゼ
オライトに担持されたモリブデン、レ二ウム等が有効と
されている〔例えば、「JOURNAL OF CATALYSIS」182,
92-103(1999)、「JOURNAL OF CATALYSIS」190,276-28
3(2000)等〕。しかしながら、これらの触媒を使用した
場合でも、炭素析出による触媒活性の著しい低下やメタ
ン転換率が低いという解決すべき問題を有している。
【0006】上記問題の解決策の一つとしては、数%の
一酸化炭素及び/又は二酸化炭素の共存下でメタンの直
接転換を行うことが提案されているが(特開平11−6
0514号公報)、一酸化炭素及び/又は二酸化炭素は
製造ガス中に残留し、主製品の一つである水素ガスの精
製・分離に大きな負荷をもたらすことになるため、実用
上問題がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、天然ガス等
の低級炭化水素からベンゼン、ナフタレン等の芳香族炭
化水素と高純度水素を同時に且つ触媒活性の低下を招く
ことなく製造する高効率な製造法を提供することを課題
とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記課題
を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成する
に至った。即ち、本発明によれば、以下に示す芳香族炭
化水素と水素を製造する方法が提供される。 (1)触媒の存在下で、メタンを少なくとも60モル%
含有する低級炭化水素から芳香族炭化水素と水素を製造
する方法であって、該低級炭化水素と、触媒の活性維持
又は活性が低下した触媒を再生するための水素含有ガス
または水素ガスとを、それぞれ周期的に且つ交互に触媒
と接触させることを特徴とする芳香族炭化水素と水素の
製造方法。 (2)該低級炭化水素と水素含有ガスまたは水素ガスと
を、それぞれ周期的にかつ交互に触媒と接触させる方式
として、当該2種類のガスの切り換え操作による方式ま
たは該低級炭化水素が流通している反応帯域と該水素含
有ガス又は水素ガスが流通している反応帯域との間を該
触媒粒子を循環させる方式を用いることを特徴とする前
記(1)に記載の芳香族炭化水素と水素の製造方法。 (3)該触媒の活性維持又は活性が低下した触媒を再生
するための水素含有ガスとして、水素濃度が1〜99モ
ル%範囲のもの、または反応生成物から回収される水素
ガスの一部を用いることを特徴とする前記(1)又は
(2)に記載の芳香族炭化水素と水素の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明では、触媒の存在下で、メ
タン等の低級炭化水素からベンゼン及びナフタレンを主
成分とする芳香族炭化水素と水素を製造するにあたり、
原料である低級炭化水素と水素含有ガス又は水素ガスを
それぞれ周期的に且つ交互に触媒と接触させることを特
徴とする。メタンの芳香族化反応の間、周期的に水素含
有ガス又は水素ガスを触媒に接触させることにより、反
応中に触媒上に副生した炭素を取り除くことができ、触
媒の活性維持又は活性が低下した触媒の再生ができる。
よって、低級炭化水素から芳香族炭化水素と高純度水素
を高効率で製造することができる。
【0010】本発明で触媒の活性維持又は活性が低下し
た触媒を再生するための水素含有ガスとしては、水素の
モル濃度が1〜99%範囲のものを用いることができる
が、その水素濃度は、好ましくは60〜99モル%、よ
り好ましくは80〜99モル%である。
【0011】本発明で原料として用いられる低級炭化水
素は、モル%で少なくとも60%、好ましくは、80%
以上のメタンを含有するものである。メタン含有量がこ
の範囲であれば、その他に炭素数が2〜5の飽和及び不
飽和炭化水素(例えば、エタン、エチレン、プロパン
等)が含まれていても良い。
【0012】本発明で用いる触媒としては、メタンを芳
香族化する活性を有するものであればよく、従来公知の
ものを用いることができる。このようなものには、特開
平10−272366号公報や特開平11−47606
号公報等に記載されているすべての低級炭化水素の芳香
族化触媒が包含される。これらの触媒の中では、特にモ
リブデン又はタングステン成分を担持したHZSM-5ゼオラ
イト触媒が好ましい。
【0013】また、本発明における触媒としては、文献
(「JOURNAL OF CATALYSIS」190,276-283(2000))に
示されたレ二ウム担持HZSM-5ゼオライト触媒を用いるこ
とができる。
【0014】本発明によるメタン等の低級炭化水素から
芳香族炭化水素と水素への転換反応は、原料の低級炭化
水素と水素含有ガスまたは水素ガスとがそれぞれ周期的
に且つ交互に触媒と接触する形式で実施される。このよ
うな反応の実施方式には、(i)触媒を含んだ反応器に
対して、低級炭化水素と水素含有ガス又は水素ガスと
を、切り換え操作により、周期的に且つ交互に切換えて
供給する方式、(ii)低級炭化水素が流通している反応
帯域(反応器)と、水素含有ガス又は水素ガスが流通し
ている反応帯域(反応器)との間を、触媒粒子を循環さ
せる方式等が包含される。
【0015】触媒に対して低級炭化水素を継続的に接触
させる時間は、その触媒活性が所定の最低水準よりも低
下するまでの時間である。この時間は、触媒の種類や反
応条件等により異なるが、通常、1〜20分、好ましく
は1〜10分程度である。
【0016】また、前記触媒に対して低級炭化水素を継
続的に接触させた後には、その触媒に対して、水素含有
ガス又は水素ガスを継続的に接触させるが、その接触時
間は、その触媒活性が再生されるまでの時間である。こ
の時間は、触媒の種類や反応条件等により異なるが、通
常、1〜30分、好ましくは5〜20分程度である。
【0017】本発明の転換反応の条件において、その反
応は、温度は650〜900℃、その圧力は1〜40気
圧、低級炭化水素及び水素含有ガスまたは水素ガスのそ
れぞれの体積時間空間速度(GHSV)は3000〜100
00hr-1の条件が好ましいが、これらの反応条件は、
触媒の種類や反応器の形式等に応じて適宜変更すればよ
く、特に限定されるものではない。
【0018】
【実施例】以下、実施例をもって本発明を詳細に説明す
る。なお、メタン転換率、ベンゼン生成速度、ナフタレ
ン生成速度、水素生成速度及び芳香族(ベンゼン+ナフ
タレン)選択率は以下のように定義した。メタンの転換
率(%)={(原料メタンモル数―未反応メタンモル
数)/原料メタンモル数}×100;ベンゼン生成速度
=触媒1g当たり、1秒間に生成したベンゼンのnmol
数;ナフタレン水素生成速度=触媒1g当たり、1秒間
に生成したナフタレンのnmol数;水素生成速度=触媒1
g当たり、1秒間に生成した水素のnmol数;芳香族(ベ
ンゼン+ナフタレン) 選択率={生成した芳香族(ベンゼン+ナフタレン)の
メタン換算モル数/(原料メタンモル数―未反応メタン
モル数)}×100。
【0019】参考例1 (HZSM−5にモリブデンを担持した触媒の調製方法)パ
ラモリブデン酸アンモニウム塩0.2845gを200
mlの蒸留水に溶かし、HZSM-5(シリカ/アルミナ比=
30、表面積400m/g)の粉末5.0gを加え、
十分に攪拌しながら回転式減圧エバポレーターで水を蒸
発させた後、110℃で1夜乾燥してパラモリブデン酸
アンモニウムのHZSM-5含浸体を得た。これを耐熱皿(直
径10cm、深さ2cm)に移し、触媒焼成炉(内容積
13.5L)を用いて空気中で500℃、6時間焼成し
て薄草色粉末を得た。さらに、この粉末を小型手動式加
圧成型器を用いて直径2cm、厚さ0.3cmの円柱体
に成型した後、粉砕、続いてふるいわけを行い、粒子サ
イズ250〜500μmのものを調製し、全触媒重量に
対して3%のモリブデンを担持したZSM-5触媒(以下Mo
(3%) /HZSM-5と略記する)を得た。
【0020】実施例1 (触媒の前処理及び反応の実施方法)参考例1で調製し
たMo(3%) /HZSM-5触媒0.30gを流通式固定床反応
装置の石英製反応管(内径8mm)に充填し、650℃
で30分、90%メタンガス気流下(17.5ml/
分)で炭化処理後、700℃まで昇温してメタンの転換
反応を開始した。所定の時間(例えば、5分)反応させ
た後、原料ガスである90%メタンガスを100%水素
ガス(17.5ml/分)に切り換え、メタンの芳香族
化反応に伴って触媒上に副生した炭素の水素化反応によ
る除去を所定時間(例えば、5分)行った。その後、同
様の操作を繰り返し、反応終了までメタンと水素ガスを
交互に触媒層に供給した。
【0021】実施例2 実施例1の方法に従い、700℃でメタンと水素をそれ
ぞれ5分の周期でMo(3%)/HZSM-5触媒層に流通させ
たときのメタン転換率、ベンゼン生成速度、ナフタレン
生成速度、水素生成速度及び芳香族(ベンゼン+ナフタ
レン)選択率の経時変化を図1、図2、図3、図4及び
図5にそれぞれ示す。これらの結果から、メタンの芳香
族化反応を短時間行った後に触媒層に水素ガスを流通さ
せることで、触媒の活性が維持できることがわかる。
【0022】実施例3 実施例1の方法に従い、700℃でメタンを80分、水
素を20分の周期でMo(3%)/HZSM-5触媒層に流通さ
せたときのメタン転換率、ベンゼン生成速度、ナフタレ
ン生成速度、水素生成速度及び芳香族(ベンゼン+ナフ
タレン)選択率の経時変化を図1、図2、図3、図4及
び図5にそれぞれ示す。これらの結果から、メタンの芳
香族化反応を長時間行った後でも触媒層に水素ガスを流
通させることで、芳香族化反応に伴って活性が低下した
触媒を再生できることがわかる。
【0023】比較例1 実施例2及び3の比較例として、水素ガスへの切り換え
がなく、メタンだけをMo(3%)/HZSM-5触媒層に5時
間流通させたときのベンゼン生成速度、ナフタレン生成
速度、水素生成速度及び芳香族(ベンゼン+ナフタレ
ン)選択率の経時変化を図1、図2、図3、図4及び図
5にそれぞれ示す。周期的に水素ガスを触媒層に流すこ
となくメタンだけを反応させた場合、メタンの芳香族化
反応に伴う炭素析出により触媒活性が著しく低下してし
まうことがわかる。
【0024】
【発明の効果】本発明によれば、触媒の存在下で、メタ
ン等の低級炭化水素からベンゼン及びナフタレンを主成
分とする芳香族化合物と水素を製造する場合、低級炭化
水素と水素含有ガス又は水素ガスをそれぞれ周期的に且
つ交互に触媒と接触させることにより、触媒活性の低下
を招くことなく安定的にベンゼン等の芳香族炭化水素と
水素を製造することができる。また同時に、ベンゼン等
の芳香族炭化水素と水素の生成速度がメタンの芳香族化
反応とともに低下した場合でも、水素含有ガス又は水素
ガスを触媒とある一定の時間接触させることで、再び高
い芳香族炭化水素及び水素の生成速度を得ることができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】Mo/HZSM-5触媒の存在下でメタンから芳香族及
び水素を同時に製造する際に、水素ガスを周期的に触媒
に接触させた時とさせない時のメタン転換率の経時変化
を示す。
【図2】Mo/HZSM-5触媒の存在下でメタンから芳香族及
び水素を同時に製造する際に、水素ガスを周期的に触媒
に接触させた時とさせない時のベンゼン生成速度の経時
変化を示す。
【図3】Mo/HZSM-5触媒の存在下でメタンから芳香族及
び水素を同時に製造する際に、水素ガスを周期的に触媒
に接触させた時とさせない時のナフタレン生成速度の経
時変化を示す。
【図4】Mo/HZSM-5触媒の存在下でメタンから芳香族及
び水素を同時に製造する際に、水素ガスを周期的に触媒
に接触させた時とさせない時の水素生成速度の経時変化
を示す。
【図5】Mo/HZSM-5触媒の存在下でメタンから芳香族及
び水素を同時に製造する際に、水素ガスを周期的に触媒
に接触させた時とさせない時の芳香族(ベンゼン+ナフ
タレン)選択率の経時変化を示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C07C 15/04 C07C 15/04 15/24 15/24 // C07B 61/00 300 C07B 61/00 300 (72)発明者 本田 一規 北海道札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番 1号 独立行政法人産業技術総合研究所 北海道センター内 (72)発明者 吉田 忠 北海道札幌市豊平区月寒東2条17丁目2番 1号 独立行政法人産業技術総合研究所 北海道センター内 Fターム(参考) 4G040 DA03 DB01 4G069 AA10 BA07B BC59B CB35 DA05 FA08 FB44 FB77 FC08 GA05 ZA11B 4H006 AA02 AB84 AC28 BA14 BA55 BA71 BA84 BD10 BD21 BD31 BD52 DA12 4H039 CA41 CH10

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 触媒の存在下で、メタンを少なくとも6
    0モル%含有する低級炭化水素から芳香族炭化水素と水
    素を製造する方法であって、該低級炭化水素と、触媒の
    活性維持又は活性が低下した触媒を再生するための水素
    含有ガスまたは水素ガスとを、それぞれ周期的に且つ交
    互に触媒と接触させることを特徴とする芳香族炭化水素
    と水素の製造方法。
  2. 【請求項2】 該低級炭化水素と水素含有ガスまたは水
    素ガスとを、それぞれ周期的にかつ交互に触媒と接触さ
    せる方式として、当該2種類のガスの切り換え操作によ
    る方式または該低級炭化水素が流通している反応帯域と
    該水素含有ガス又は水素ガスが流通している反応帯域と
    の間を該触媒粒子を循環させる方式を用いることを特徴
    とする請求項1に記載の芳香族炭化水素と水素の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 該触媒の活性維持又は活性が低下した触
    媒を再生するための水素含有ガスとして、水素濃度が1
    〜99モル%範囲のもの、または反応生成物から回収さ
    れる水素ガスの一部を用いることを特徴とする請求項1
    又は2に記載の芳香族炭化水素と水素の製造方法。
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