JP5391537B2 - プロピレンの製造方法 - Google Patents
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Description
エチレン需要に対してプロピレン需要の割合が増加した場合には、エチレンを原料としたプロピレン製造法が有効であり、その一つの例として前記したエチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応させてプロピレンを製造する方法が挙げられる。
以下の工程(1A),(2A),(3A),(4A)および(5A)を含むプロセスよりなり、かつ、下記第1の反応器出口の温度が下記第2の反応器出口の温度よりも50℃以上低いことを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(2A):原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)とを、第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)を得る工程
工程(3A):前記流体(A)と前記流体(B)を混合した流体(C)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4A):前記流体(D)の一部の流体(F)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5A):前記流体(E)の一部の流体(G)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
以下の工程(1B),(2B),(3B),(4B)および(5B)を含むプロセスよりなり、かつ、下記第1の反応器出口の温度が下記第2の反応器出口の温度よりも50℃以上低いことを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(1B):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4B)からリサイクルされた流体(L)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
工程(2B):前記流体(A)と、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5B)からリサイクルされた流体(M)とを第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)を得る工程
工程(3B):前記流体(I)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4B):前記流体(J)の一部の流体(L)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5B):前記流体(K)の一部の流体(M)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
エチレン転化率(%)=
{(第1の反応器入口のエチレン流量−第1の反応器出口のエチレン流量)
/第1の反応器入口のエチレン流量}×100
工程(1A):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4A)よりリサイクルされた流体(F)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
工程(2A):原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)とを、第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)を得る工程
工程(3A):前記流体(A)と前記流体(B)を混合した流体(C)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4A):前記流体(D)の一部の流体(F)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5A):前記流体(E)の一部の流体(G)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(1B):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4B)からリサイクルされた流体(L)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
工程(2B):前記流体(A)と、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5B)からリサイクルされた流体(M)とを第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)を得る工程
工程(3B):前記流体(I)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4B):前記流体(J)の一部の流体(L)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5B):前記流体(K)の一部の流体(M)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(1C):原料としてのエチレンと、工程(4C)よりリサイクルされた流体(P)とを第1の反応器に供給して、エチレン二量化触媒と接触させることにより炭素数4のオレフィンを含む流体(Q)を得る工程
工程(2C):工程(1C)からの流体(Q)と、工程(5C)よりリサイクルされた流体(R)と、メタノールおよび/またはジメチルエーテルとを第2の反応器に供給して、プロピレン製造触媒と接触させることにより、プロピレン、エチレン、その他オレフィン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有する流体(S)を得る工程
工程(3C):工程(2C)からの流体(S)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(U)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4C):工程(3C)からの流体(T)の一部の流体(P)を第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5C):工程(3C)からの流体(U)の一部の流体(R)を第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
本発明において「該プロセスから抜き出す」とは、本プロセスの第1の反応器と第2の反応器のいずれにもリサイクルしないことを意味する。
まず、第1の態様の工程(1A)〜(5A)について説明する。
工程(1A)では、原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4A)よりリサイクルされた流体(F)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る。
第1の態様でいう「第1の触媒」とは第1の反応器で用いる触媒をいい、エチレンとメタノールおよび/又はジメチルエーテルとを反応させてプロピレンおよび炭素数4以上のオレフィンを製造することができる触媒をいう。
ここで、フレームワーク密度(単位:T/nm3)とは、ゼオライトの単位体積(1nm3)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
触媒中のアルミニウム含量は触媒調製の際の原料仕込み量でコントロールすることができ、また、調製後にスチーミング等によりAlを減らすこともできる。また、Alの一部をホウ素やガリウム等の他の元素に置き換えても良く、特にホウ素で置換することが好ましい。
本発明で使用する触媒は、反応に供する際に、上記物性ないし組成を有しているものであれば良く、いずれの方法によって調製されたものであっても良い。
反応の原料として用いるエチレンとしては、特に限定されるものではない。例えば、石油供給原料から接触分解法または蒸気分解法等により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、エタンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、プロピレンのメタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、エタノールの脱水反応によって得られるもの等の、公知の各種方法により得られるものを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因するエチレン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したエチレンを用いても良い。
「工程(4A)よりリサイクルされた流体(F)」とは、工程(4A)により得られるリサイクル流体(F)のことをいい、エチレンを含む流体である。この流体(F)は工程(3A)における炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)の一部である。ここでいう「一部」とは、通常、流体(D)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。この範囲を下回ると、新たな原料として第1の反応器に供給するエチレンの流量が増えるという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、メタンやエタンが第1の反応器ならびにリサイクル流体中に蓄積してしまうという不都合が生じるので好ましくない。
第1の反応器にリサイクルされる流体(F)は、メタンやエタンなどの反応に関与しない化合物が含まれていても良い。
第1の反応器で行われるのは気相反応である。この気相反応器の形態に特に制限はないが、通常、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。なお、固定床反応器に前述の触媒を充填する場合には、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
反応温度の下限としては、第1の反応器入口のガス温度として通常約300℃以上、好ましくは400℃以上であり、反応温度の上限としては、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、更にプロピレンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎるとプロピレンの収率が著しく低下すると共にエチレンの転化率が低下する傾向があるため好ましくない。
即ち、エチレンの供給モル量をMet、メタノールの供給モル量をMm、ジメチルエーテルの供給モル量をMdmとした場合、Metは(Mm+2Mdm)の0.2〜5倍、好ましくは0.5〜2倍である。
この供給濃度比が低すぎても高すぎても反応が遅くなり好ましくなく、特に、この供給濃度比が高すぎると、反応器出口のエチレンが多くなり、リサイクル流量が多くなるため好ましくない。
ここで供給濃度比は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応器に供給する際には、これらを別々に供給しても、予め一部または全部を混合した後に供給してもよい。
ここで基質濃度は、第1の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
従って、このような基質濃度となるように、後述の希釈ガスで反応基質を希釈する。基質濃度を制御する方法としては、プロセスから抜き出される流体の流量を制御する方法が挙げられる。プロセスから抜き出される流体の流量を変えることにより、第1の反応器にリサイクルされる希釈ガスの流量が変化し、基質濃度を変えることが可能である。
このような希釈ガスとしては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良いし、別途調製した希釈ガスを反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈ガスは第1の反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に第1の反応器に供給しても良い。
第1の反応器に供給するメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計に対して、第1の反応器出口のメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計は1%未満が好ましい。さらに好ましくは0.1%未満である。消費量が少なく、第1の反応器出口のメタノールやジメチルエーテルの量が増えすぎると、製品オレフィンの精製が困難になる。消費量を多くする方法としては、反応温度を上げたり、空間速度を下げたりする方法が挙げられる。
なお、本発明でいう「エチレンの転化率」とは、エチレンがエチレン以外の化合物に転化する割合のことをいい、次式で表される。
エチレン転化率(%)=
{(第1の反応器入口のエチレン流量−第1の反応器出口のエチレン流量)
/第1の反応器入口のエチレン流量}×100
また、エチレンの転化率はガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法および流量計によって定量化することができる。
「プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)」とは、第1の反応器の出口の流体を意味する。
第1の反応器出口流体(A)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常5〜95重量%である。
未反応原料は、通常エチレンである。反応条件によってはメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが残らないような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になる。生成物としてはプロピレンのほか、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。
工程(2A)では、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)を、第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)を得る。
「第2の触媒」とは、第2の反応器で用いる触媒をいい、メタノールおよび/又はジメチルエーテルと炭素数4以上のオレフィンとを反応させて、プロピレンおよび炭素数4以上のオレフィンを製造することができる触媒をいう。
第2の触媒として用いられる触媒としては、前述の[工程(1A)の説明]にある「第1の触媒」に記載したものを利用することができる。この場合、第2の触媒として、第1の触媒として用いたものと全く同じ構造および組成の触媒を用いても、異なる構造および/または異なる組成の触媒を用いても良い。異なる組成の触媒を用いる場合、第2の触媒のSiO2/Al2O3モル比が第1の触媒のSiO2/Al2O3モル比よりも高い方が好ましい。これは、SiO2/Al2O3モル比が高いほどパラフィンや芳香族の生成が抑制されるため、SiO2/Al2O3モル比は高いほうが好ましいが、第1の触媒のSiO2/Al2O3モル比が高すぎると、エチレンの転化率が低くなる傾向があるためである。
反応原料として用いるメタノールおよび/またはジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来の水素/COの混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したものを用いても良い。
「工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)」とは、工程(5A)より得られるリサイクル流体(G)のことをいう。流体(G)は炭素数4以上の炭化水素を含む。この流体(G)は、工程(3A)における炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)の一部である。ここでいう「一部」とは、通常、流体(E)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。この範囲を下回ると、反応器にリサイクルされるオレフィンの量が少なくなりプロピレン収率が低下するという不都合が生じ、この範囲を上回ると、流体(E)に含まれるパラフィンが蓄積し、流体(B),(C),(G)の流量が増え、設備費用ならびに用役費用が高くなるという不都合が生じるので好ましくない。
第2の反応器で行われるのは気相反応である。この気相反応器の形態に特に制限はないが、通常、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。なお、固定床反応器に前述の触媒を充填する場合には、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
反応温度の下限としては、第2の反応器入口のガス温度として通常約300℃以上、好ましくは400℃以上であり、反応温度の上限としては、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、更にプロピレンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎるとプロピレンの収率が著しく低下する。
即ち、炭素数4以上のオレフィンの供給モル量をMc4、メタノールの供給モル量をMm、ジメチルエーテルの供給モル量をMdmとした場合、Mc4は(Mm+2Mdm)の0.2〜10倍、好ましくは0.5〜5倍である。
この供給濃度比が低すぎても高すぎても反応が遅くなり好ましくなく、特に、この供給濃度比が低すぎると、原料のオレフィンの消費量が減少するため好ましくない。
ここで供給濃度比は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを第2の反応器に供給する際には、これらを別々に供給しても、予め一部または全部を混合した後に供給してもよい。
この基質濃度が高すぎると芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著になりプロピレンの選択率が低下する傾向がある。逆に、この基質濃度が低すぎると、反応速度が遅くなるため多量の触媒が必要となり、さらに生成物の精製コストや反応設備の建設費も大きくなり経済的でない。
芳香族化合物濃度が高いと、第2の反応器内で芳香族化合物とメタノールおよび/またはジメチルエーテルとが反応し、必要以上にメタノールおよび/またはジメチルエーテルを消費してしまうため好ましくない。芳香族化合物濃度を低下させる方法としては、蒸留による分離法が挙げられる。
このような希釈ガスとしては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良いし、別途調製した希釈ガスを反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈ガスは第2の反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に第2の反応器に供給しても良い。
第2の反応器に供給するメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計に対して、第2の反応器出口のメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計は1%未満が好ましい。さらに好ましくは0.1%未満である。消費量が少なく、第2の反応器出口のメタノールやジメチルエーテルの量が増えすぎると、製品オレフィンの精製が困難になる。消費量を多くする方法としては、反応温度を上げたり、空間速度を下げたりする方法が挙げられる。
「プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)」とは、第2の反応器の出口の流体を意味する。
第2の反応器出口流体(B)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常5〜95重量%である。
未反応原料は、通常炭素数4以上のオレフィンである。反応条件によってはメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが残らないような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になる。副生成物としてはエチレン、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。
工程(3A)では、工程(2A)で得られた流体(B)を混合した流体(C)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)および水に富んだ流体に分離する。
流体(C)に含まれるエチレンとプロピレンの重量比は、同流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、流体(C)のエチレンとプロピレンの重量比は、第1の反応器および/または第2の反応器の反応温度や空間速度等の反応条件を調整することにより変えることができる。
工程(4A)では、工程(3A)における流体(D)の一部の流体(F)を第1の反応器にリサイクルし、残りの流体は本発明のプロセス(以下、「本プロセス」と称する場合がある)から抜き出す。
この時、流体(D)を分離工程に導入することなく、リサイクル流体(F)と抜き出される流体とに分割しても良いが、流体(D)を分離工程に導入し、流体(D)よりもエチレン濃度を高めた流体を第1の反応器にリサイクルしても良い。抜き出された流体は、エチレンなどの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
なお、「本プロセスから抜き出す」とは、本プロセスの第1の反応器と第2の反応器のいずれにもリサイクルしないことを意味する。
工程(5A)では、工程(3A)における流体(E)の一部の流体(G)を第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を本プロセスから抜き出す。この時、流体(E)を分離工程に導入することなく、リサイクル流体(G)と抜き出される流体とに分割しても良いが
、流体(E)を分離工程に導入し、流体(E)よりもブテン濃度を高めた流体を第2の反応器にリサイクルしても良い。抜き出された流体は、ブテンや芳香族化合物などの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
第1の態様においては、炭素数4以上のオレフィンを含有する流体を、新たに、プロピレン製造のための原料の一部として、前述の工程(2A)における第2の反応器に供給しても良い。
第1の態様である工程(1A)〜(5A)のプロセスの特徴としては、第1の反応器で生成したエチレンやプロピレンなど炭素数3以下の炭化水素が第2の反応器に供給されない点が挙げられる。このため、第1の反応器および第2の反応器それぞれで生成したプロピレンを製品として効率よく取り出すことが可能である。
以下に、図面を参照して第1の態様の実施形態について説明する。
図1は本発明プロセスの第1の態様を示す。
図1において、10は第1の反応器、20は第2の反応器、30は分離精製系である。101〜117はそれぞれ配管を示す。
また、配管115を経て得られた水は活性汚泥等の廃水処理工程に供しても良いが、プロセス水等に使用することもできる。本プロセスがスチームクラッキングプロセスの近くにある場合にはクラッカーのスチーム源として利用することが好ましい。また、第1の反応器10および/または第2の反応器20にリサイクルして希釈ガスとして用いても良い。
次に、第2の態様の工程(1B)〜(5B)について説明する。
工程(1B)では、原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4B)からリサイクルされた流体(L)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る。
「工程(4B)よりリサイクルされた流体(L)」とは、工程(4B)により得られるリサイクル流体(L)のことをいい、エチレンを含む流体である。この流体(L)は工程(3B)における炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)の一部である。ここでいう「一部」とは、通常、流体(J)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。この範囲を下回ると、新たな原料として第1の反応器に供給するエチレンの流量が増えるという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、メタンやエタンが第1の反応器ならびにリサイクル流体中に蓄積してしまうという不都合が生じるので好ましくない。
第1の反応器にリサイクルされる流体(L)には、メタンやエタンが含まれていても良い。
工程(2B)では、工程(1B)で得られた流体(A)と、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5B)からリサイクルされた流体(M)とを第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)を得る。
「工程(5B)よりリサイクルされた流体(M)」とは、工程(5B)による得られるリサイクル流体(M)のことをいい、炭素数4以上の炭化水素を含む流体である。この流体(M)は工程(3B)における炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)の一部である。ここでいう「一部」とは、通常、流体(K)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。この範囲を下回ると、反応器にリサイクルされるオレフィンの量が少なくなり、プロピレンの収率が低下するという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、流体(K)に含まれるパラフィンが蓄積し、流体(I),(M)の流量が増え、設備費用ならびに用役費用が高くなるという不都合が生じるので好ましくない。
第2の反応器にリサイクルされる流体(M)は、オレフィンを含有していれば特に限定されず、パラフィンや芳香族化合物を含んでいても良い。
「プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)」とは、工程(2B)における第2の反応器の出口の流体を意味する。
第2の反応器出口流体(I)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常5〜95重量%である。
未反応原料は、通常炭素数4以上のオレフィンである。反応条件によってはメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが残らないような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になる。副生成物としてはエチレン、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。
流体(I)に含まれるエチレンの量は同流体に含まれるプロピレンに対して重量比で2.0未満であることが好ましく、この割合は、より好ましくは1.5未満であり、さらに好ましくは1.0未満である。これにより本プロセス全体の設備費用ならびに用役費用を著しく削減することが可能である。流体(I)に含まれるエチレンとプロピレンの重量比は、同流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、流体(I)のエチレンとプロピレンの重量比は、第1の反応器および/または第2の反応器の反応温度や空間速度等の反応条件を調整することにより変えることができる。
工程(3B)では、工程(2B)で得られた流体(I)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)および水に富んだ流体に分離する。
工程(4B)では、工程(3A)における流体(J)の一部の流体(L)を第1の反応器にリサイクルし、残りの流体は本発明のプロセスから抜き出す。
この時、流体(J)を分離工程に導入することなく、リサイクル流体(L)と抜き出される流体とに分割しても良いが、流体(J)を分離工程に導入し、流体(J)よりもエチレン濃度を高めた流体を第1の反応器にリサイクルしても良い。抜き出された流体は、エチレンなどの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
工程(5B)では、工程(3B)における流体(K)の一部の流体(M)を第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を本プロセスから抜き出す。
この時、流体(K)を分離工程に導入することなく、リサイクル流体(M)と抜き出される流体とに分割しても良いが、流体(K)を分離工程に導入し、流体(K)よりもブテン濃度を高めた流体を第2の反応器にリサイクルしても良い。抜き出された流体は、ブテンや芳香族化合物などの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
本発明においては、炭素数4以上のオレフィンを含有する流体を、新たに、プロピレン製造のための原料の一部として、前述の工程(2B)における第2の反応器に供給しても良い。
第2の態様である工程(1B)〜(5B)のプロセスの特徴としては、第1の反応器で生成したエチレンやプロピレンが第2の反応器に供給されるため、生成したプロピレンの一部が反応して他の化合物に変換されてしまう点が挙げられる。しかしながら、工程(3B)において分離精製系に供給される流体(I)の流量は第1の態様の工程(3A)において分離精製系に供給される流体(C)の流量に比べて非常に少ないため、分離精製系の用役費用および設備費用が小さいという特徴がある。
以下に、図面を参照して第2の態様の実施形態について説明する。
図2は本発明プロセスの第2の態様を示す。
図2において、12は第1の反応器、22は第2の反応器、32は分離精製系である。201〜217はそれぞれ配管を示す。
また、配管215を経て得られた水は活性汚泥等の廃水処理工程に供しても良いが、プロセス水等に使用することもできる。本プロセスがスチームクラッキングプロセスの近くにある場合にはクラッカーのスチーム源として利用することが好ましい。また、第1の反応器12および/または第2の反応器22にリサイクルして希釈ガスとして用いても良い。
次に、第3の態様の工程(1C)〜(5C)について説明する。
工程(1C)では、原料としてのエチレンと、工程(4C)よりリサイクルされた流体(P)とを第1の反応器に供給して、エチレン二量化触媒と接触させることにより炭素数4のオレフィンを含む流体(Q)を得る。
本発明に係る反応に用いられる「エチレン二量化触媒」(以下、工程(1C)において単に「触媒」という場合がある)とは、エチレンを原料として炭素数4のオレフィン(ブテン)を生成することができる能力を有する触媒をいう。
このような触媒としては、エチレンの二量化によりブテンを生成する反応に対して触媒機能を有するものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられる。
この触媒は錯体触媒でも良いし、固体触媒でも良い。例えば錯体触媒としては、テトラブトキシチタン−トリエチルアルミニウム複合触媒のようなチタンを含む触媒、その他ニッケルを含む触媒、パラジウムを含む触媒などが用いられる。一方、固体触媒としては、酸化ニッケル担持触媒のようなニッケルを含む触媒などが用いられる。反応を液相で行う場合には錯体触媒を用いるのが好ましく、気相で行う場合には固体触媒が好ましい。
これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
反応の原料として用いるエチレンとしては、特に限定されるものではない。例えば、石油供給原料から接触分解法または蒸気分解法等により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、エタンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、プロピレンのメタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、エタノールの脱水反応によって得られるもの等の、公知の各種方法により得られるものを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因するエチレン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したエチレンを用いても良い。
「工程(4C)よりリサイクルされた流体(P)」とは、工程(3C)において得られる、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)のうち、第1の反応器にリサイクルされる一部の流体であり、この流体(P)はエチレンを含む。ここでいう「一部」とは、通常、流体(T)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。流体(P)の割合がこの範囲を下回ると、新たな原料として反応器に供給するエチレンの流量が増えるという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、メタンやエタンが反応器ならびにリサイクル流体中に蓄積してしまうという不都合が生じるので好ましくない。
第1の反応器にリサイクルされる流体(P)としては、メタンやエタンなどの反応に関与しない化合物が含まれていても良い。
反応器の形式は特に限定されず、液相の反応器でも良いし、気相の反応器でも良い。液相で反応を行う場合には、反応器出口流体(Q)から触媒を除去する工程が組み込まれる。一方、気相で固体触媒を用いる場合には、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。
反応条件は反応形式や触媒によって大きく異なる。通常、液相で錯体触媒を用いる場合には反応温度は300℃以下、例えば20〜200℃、反応圧力は0.5MPa以上、例えば1.0〜5.0MPaが好ましく、気相で固体触媒を用いる場合には200℃以上、例えば300〜700℃、1MPa以下、例えば0.1〜0.5MPaが好ましい。液相反応の場合には反応に溶媒を用いることもできるが、生成したブテンを溶媒として用いても良い。溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されないが、パラフィン類が好ましい。溶媒の濃度としては全体の90重量%未満、例えば0〜50重量%が好ましい。溶媒の濃度が高すぎると反応速度が遅くなるため好ましくない。気相反応の場合には反応に希釈ガスを用いることもできる。希釈ガスとしては、反応に不活性なものであれば特に限定されないが、パラフィン類、芳香族類、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、および、それらの混合物が挙げられる。希釈ガスの濃度としては全体の90体積%未満、例えば0〜80体積%が好ましい。希釈ガスの濃度が高すぎると反応速度が遅くなるため好ましくない。なお、溶媒の濃度または希釈ガスの濃度はガスクロマトグラフィー等の一般的な分析手法により知ることができる。
エチレンの消費量としては、第1の反応器に供給されるエチレンの量に対して50%以上が好ましい。エチレンの消費量が低すぎると未反応エチレンのリサイクル流量が増えるため好ましくない。消費量を上げる手段としては、反応温度や反応圧力を上げる方法や触媒量を増加させる方法が挙げられる。
「炭素数4のオレフィンを含む流体(Q)」とは、第1の反応器出口流体を意味する。
第1の反応器の出口流体(Q)には通常、目的物であるブテンの他に未反応のエチレンや副生物のヘキセンなどが含まれる。液相反応の場合には触媒を分離する工程が必要となるが、それ以外の分離は行わずにエチレン、ブテンおよびヘキセンを含む流体を工程(2C)の第2の反応器に導入することができる。ただし、未反応のエチレンを蒸留等の一般的な分離方法で分離し、分離したエチレンを第1の反応器にリサイクルすると共に、残りの流体を工程(2C)の第2の反応器に導入しても良い。また、流体(Q)の一部、例えば0〜80%は工程(2C)における第2の反応器に供給せずに、本発明のプロセス(以下、「本プロセス」と称する場合がある)外に抜き出しても良い。この場合には抜き出した流体からブテンを精製分離して他の目的のために用いるのが好ましい。他の目的の具体例としては、酸化脱水素反応または脱水素反応によるブタジエン製造用の原料が挙げられる。
なお、「本プロセス外に抜き出す」とは、本プロセスの第1の反応器と第2の反応器のいずれにもリサイクルしないことを意味する。
工程(2C)では、工程(1C)からの流体(Q)と、工程(5C)よりリサイクルされた流体(R)と、メタノールおよび/またはジメチルエーテルとを第2の反応器に供給して、プロピレン製造触媒と接触させることにより、プロピレン、エチレン、その他オレフィン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有する流体(S)を得る。
本発明でいう「プロピレン製造触媒」(以下、工程(2C)において単に「触媒」という場合がある)とは、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルからプロピレンを製造することが可能な触媒をいう。
この反応に用いられる触媒としては、ブレンステッド酸点を有する固体状のものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられ、例えば、カオリン等の粘土鉱物;粘土鉱物等の担体に硫酸、燐酸等の酸を含浸・担持させたもの;酸性型イオン交換樹脂;ゼオライト類;燐酸アルミニウム類;Al−MCM41等のメソポーラスシリカアルミナ等の固体酸触媒が挙げられる。
ここで、フレームワーク密度(単位:T/nm3)とは、ゼオライトの単位体積(1nm3)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
触媒中のアルミニウム含量は触媒調製の際の原料仕込み量でコントロールすることができ、また、調製後にスチーミング等によりAlを減らすこともできる。また、Alの一部をホウ素やガリウム等の他の元素に置き換えても良く、特にホウ素で置換することが好ましい。
本発明で使用する触媒は、反応に供する際に、上記物性ないし組成を有しているものであれば良く、いずれの方法によって調製されたものであっても良い。
反応原料として用いるメタノールおよび/またはジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来の水素/COの混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したものを用いても良い。
「工程(5C)よりリサイクルされた流体(R)」とは、工程(5C)により得られるリサイクル流体(R)をいい、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体である。この流体(R)は、工程(3C)における炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(U)のうち、第2の反応器にリサイクルされる一部の流体である。ここでいう「一部」とは、通常、流体(U)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。流体(R)の割合がこの範囲を下回ると、第2の反応器に供給される炭素数4以上のオレフィン流量が減り、プロピレン収率が低下するという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、パラフィンが反応器ならびにリサイクル流体中に蓄積してしまうという不都合が生じるので好ましくない。
第2の反応器にリサイクルされる流体(R)としては、オレフィンを含有していれば特に限定されず、パラフィンや芳香族化合物が含まれていても良い。
第2の反応器で行われるのは気相反応である。この気相反応器の形態に特に制限はないが、通常、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。なお、固定床反応器に前述の触媒を充填する場合には、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
反応温度の下限としては、反応器入口のガス温度として通常約300℃以上、好ましくは400℃以上であり、反応温度の上限としては、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、更にプロピレンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎるとプロピレンの収率が著しく低下する。
即ち、炭素数4以上のオレフィンの供給モル量をMc4、メタノールの供給モル量をMm、ジメチルエーテルの供給モル量をMdmとした場合、Mc4は(Mm+2Mdm)の0.2〜10倍、好ましくは0.5〜5倍である。この供給濃度比が低すぎても高すぎても反応が遅くなり好ましくなく、特に、この供給濃度比が低すぎると、原料のオレフィンの消費量が減少するため好ましくない。
ここで供給濃度比は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応器に供給する際には、これらを別々に供給しても、予め一部または全部を混合した後に供給してもよい。
ここで基質濃度は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
従って、このような基質濃度となるように、下に記載する希釈ガスで反応基質を希釈する。基質濃度を制御する方法としては、プロセスから抜き出される流体の流量を制御する方法が挙げられる。プロセスから抜き出される流体の流量を変えることにより、反応器にリサイクルされる希釈ガスの流量が変化し、基質濃度を変えることが可能である。
ここでブタジエン濃度は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
このブタジエン濃度が高いと触媒のコーキングによる劣化が速くなる。ブタジエン濃度を低下させる方法としては、該流体を水素添加触媒とさせてオレフィン類に変換する部分水添法が挙げられる。
この芳香族化合物濃度が高いと、反応器内で芳香族化合物とメタノールおよび/またはジメチルエーテルとが反応し、必要以上にメタノールおよび/またはジメチルエーテルを消費してしまうため好ましくない。芳香族化合物濃度を低下させる方法としては、蒸留による分離法が挙げられる。
このような希釈ガスとしては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良いし、別途調製した希釈ガスを反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈ガスは第2の反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に第2の反応器に供給しても良い。
第2の反応器に供給するメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計に対して、第2の反応器出口のメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計は1%未満が好ましい。さらに好ましくは0.1%未満である。この消費量が少なく、第2の反応器出口のメタノールやジメチルエーテルの量が増えすぎると、製品オレフィンの精製が困難になる。消費量を多くする方法としては、反応温度を上げたり、空間速度を下げたりする方法が挙げられる。
ここで第2の反応器に供給するメタノールとジメチルエーテルならびに炭素数4以上のオレフィンの流量は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量し、それぞれの流体の流量を測定することにより知ることができ、第2の反応器出口のメタノールとジメチルエーテルならびに炭素数4以上のオレフィンの流量は、第2の反応器出口流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な手法で定量し、第2の反応器出口流体の流量を測定または計算することにより知ることができる。
「プロピレン、エチレン、その他オレフィン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(S)」とは、第2の反応器の出口の流体を意味する。
第2の反応器の出口流体(S)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常5〜95重量%である。
未反応原料は、通常炭素数4以上のオレフィンである。反応条件によってはメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが残らないような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になる。
工程(3C)では、工程(2C)からの流体(S)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(U)および水に富んだ流体に分離する。
工程(4C)では、工程(3C)からの流体(T)の一部の流体(P)を第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す。
プロセス外に抜き出された流体は、エチレンなどの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
工程(5C)では、工程(3C)からの流体(U)の一部の流体(R)を第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す。
第3の態様においては、炭素数4以上のオレフィンを含有する流体を、新たに、プロピレン製造のための原料の一部として、前述の工程(2C)における第2の反応器に供給しても良い。
以下に、図面を参照して第3の態様の実施形態について説明する。
図3は本発明プロセスの第3の態様を示す。
図3において、13は第1の反応器、23は第2の反応器、33は分離精製系である。301〜315はそれぞれ配管を示す。
以下の実施例、比較例で用いた触媒は、次のようにして調製した。
<触媒調製例>
臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム(TPABr)26.6gおよび水酸化ナトリウム4.8gを順次、水280gに溶解し、次にコロイダルシリカ(SiO2=40重量%、Al<0.1重量%)75gと水35gとの混合液をゆっくり加え、十分攪拌して水性ゲルを得た。次に、このゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、300rpmで攪拌しながら170℃で72時間、水熱合成を行った。生成物は加圧濾過により固体成分を分離し、十分水洗を行った後に100℃で24時間乾燥した。乾燥後の触媒は、空気流通下550℃で6時間焼成を行い、Na型のアルミノシリケートを得た。
以下に上記触媒を用いたプロピレンの製造実施例及び比較例を示す。
図2におけるエチレン原料(図の配管201)の流量(重量/時間)を100、配管202および配管206から供給するメタノール原料の流量(重量/時間)を各225(合計250)とした場合の第1の反応器(12)入口(配管204)の模擬ガス(エチレン、メタノールを含む)を調製すると共に、第2の反応器(22)に新たに入る流体(配管206と配管207を合わせた流体)の模擬ガス(エチレン、メタノールおよびブテンを含む)を調製し、図2のように2つの反応器を直列に配置してプロピレンの製造を行った。2つの反応器共に前記触媒を充填し、常圧の条件で行ったが、第1の反応器(12)の反応器出口温度は450℃、第2の反応器(22)の反応器出口温度は550℃で行った。第2の反応器(22)の出口ガスの分離工程(32)は、アスペンプラスシミュレーターを用い、リサイクルガスを含む各流体の流量を求めた。得られたリサイクルガス(配管203および207)の流量を基に、前記第1の反応器入口および第2の反応器(22)に新たに入る流体(配管206と配管207を合わせた流体)のガス組成を計算し、再調製した模擬ガスを用いて再度反応を行った。これらの操作を10回程度繰り返すことにより、最終的に図2のプロセスにおける各流体の流量を実験とシミュレーションにより求めた。
また、第2の反応器(22)出口(配管210:流体(I)におけるプロピレン流量(重量/時間)は185、エチレン流量(重量/時間)は156、炭素数4以上のオレフィンは385となった。流体(I)に含まれるエチレンの量はプロピレンの量に対して重量比で0.84であった。
図3におけるエチレン原料(図の配管301)の流量(重量/時間)を100、メタノール原料(図の配管307)の流量(重量/時間)を250とした場合の第2の反応器(23)入口(配管308)の模擬ガス(エチレン、メタノールおよびブテンを含む)を調製し、前記触媒を用いて第2の反応器(23)出口温度550℃、常圧の条件でプロピレンの製造を行った。第2の反応器(23)の出口ガスの分離工程(33)は、アスペンプラスシミュレーターを用い、リサイクルガスを含む各流体の流量を求めた。また、エチレン二量化反応を行う第1の反応器(13)におけるエチレン転化率は90%と仮定した。得られたリサイクルガス(配管302および306)の流量を基に、前記第2の反応器入口のガス組成を計算し、再調製した模擬ガスを用いて再度反応を行った。これらの操作を10回程度繰り返すことにより、最終的に図3のプロセスにおける各流体の流量を実験とシミュレーションにより求めた。
比較例に係るプロセスである図4の態様を採用した。図4において、70は反応器、80は分離精製系を示す。401〜412はそれぞれ配管を示す。
20 第2の反応器
30 分離精製系
12 第1の反応器
22 第2の反応器
32 分離精製系
13 第1の反応器
23 第2の反応器
33 分離精製系
Claims (6)
- エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料としてプロピレンを製造する方法において、
以下の工程(1A),(2A),(3A),(4A)および(5A)を含むプロセスよりなり、かつ、下記第1の反応器出口の温度が下記第2の反応器出口の温度よりも50℃以上低いことを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(1A):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4A)よりリサイクルされた流体(F)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
工程(2A):原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)とを、第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)を得る工程
工程(3A):前記流体(A)と前記流体(B)を混合した流体(C)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4A):前記流体(D)の一部の流体(F)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5A):前記流体(E)の一部の流体(G)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程 - 請求項1において、前記流体(C)に含まれるエチレンの量が同流体に含まれるプロピレンに対して重量比で2.0未満であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
- エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料としてプロピレンを製造する方法において、
以下の工程(1B),(2B),(3B),(4B)および(5B)を含むプロセスよりなり、かつ、下記第1の反応器出口の温度が下記第2の反応器出口の温度よりも50℃以上低いことを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(1B):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4B)からリサイクルされた流体(L)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
工程(2B):前記流体(A)と、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5B)からリサイクルされた流体(M)とを第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)を得る工程
工程(3B):前記流体(I)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4B):前記流体(J)の一部の流体(L)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5B):前記流体(K)の一部の流体(M)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程 - 請求項3において、前記流体(I)に含まれるエチレンの量が同流体に含まれるプロピレンに対して重量比で2.0未満であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
- 請求項1ないし4のいずれか1項において、前記第2の反応器に、炭素数4以上のオレフィンを含有する流体を該プロセス外から供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
- 請求項1ないし5のいずれか1項において、下記式で算出される前記第1の反応器におけるエチレンの転化率が30%以上であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
エチレン転化率(%)=
{(第1の反応器入口のエチレン流量−第1の反応器出口のエチレン流量)
/第1の反応器入口のエチレン流量}×100
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