JP5391537B2 - プロピレンの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを原料としてプロピレンを製造する方法に関するものである。
プロピレンを製造する方法としては、従来からナフサやエタンのスチームクラッキング、減圧軽油の流動接触分解が一般的に実施されており、近年ではエチレンと2−ブテンを原料としたメタセシス反応、炭素数4以上のオレフィンの接触クラッキング、さらにメタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料としたいわゆるMTOプロセス(メタノールからオレフィンを製造するプロセス)も注目を浴びている。また、オレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応させてプロピレンを製造する方法も知られており、原料のオレフィンとして炭素数4以上のオレフィンを用いた例(特許文献1)やエチレンを用いた例(特許文献2)が開示されている。
一方、ブテンを製造する方法として、エチレンを二量化する方法も開示されている(非特許文献1,2)。
米国特許第6888038号 WO2005/056504 Catalysis Today, 14, (1992) 28 工業化学雑誌、第66巻 第7号(1963)973
上記のプロピレン製造法の中ではスチームクラッキングによる方法が世界的に主流となっているが、エチレンとプロピレンの需給バランスの変化に応じて両者の収率バランスを変えるには限界があった。
エチレン需要に対してプロピレン需要の割合が増加した場合には、エチレンを原料としたプロピレン製造法が有効であり、その一つの例として前記したエチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応させてプロピレンを製造する方法が挙げられる。
しかしながら、本発明者らがエチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとの反応を検討した結果、エチレンの転化率を高くできる反応条件においては炭素数4以上のオレフィンの生成量が多く、高いプロピレン選択率を得られないことが分かった。一方、高選択的にプロピレンを得ることのできる反応条件においてはエチレンの転化率が低いため、反応器出口におけるエチレン/プロピレンの重量比が非常に大きくなってしまうことが分かった。即ち、従来においては、通常反応器出口におけるエチレン/プロピレンの重量比は2.0以上である。この場合、大量の未反応エチレンを反応器にリサイクルする必要があるため設備費用ならびに用役費用が非常に高くなってしまうという問題点があった。
本発明は、エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを原料としてプロピレンを製造する方法において、未反応のエチレンのリサイクル量が少なく、設備費用ならびに用役費用が低い新規なプロセスを提供することを目的とする。
本発明者らが炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応させてプロピレンを製造する方法について鋭意検討した結果、エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを直接反応させる代わりに、エチレンを炭素数4以上の炭化水素に変換したものに対してメタノールおよび/ジメチルエーテルを反応させた場合には、エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応させた場合と比較して、原料のオレフィン転化率が向上することを見出した。この時には、プロピレンの他にエチレンも副生するが、反応器出口のエチレン/プロピレン重量比は2.0を大きく下回る。したがって、反応器へのエチレンのリサイクル量を著しく低減させ、設備費用ならびに用役費用を削減することができることを見出した。
また、本発明者らがエチレンのリサイクル量を減らす方法を鋭意検討した結果、特定の反応条件でエチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応させてプロピレンおよび炭素数4以上のオレフィンを含む流体を得、該流体に含まれる炭素数4以上のオレフィンの少なくとも一部とメタノールおよび/またはジメチルエーテルを反応させることによりエチレンのリサイクル量を減らすと共に、高い選択率でプロピレンを製造できることを見出した。
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、その要旨は以下の通りである。
] エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料としてプロピレンを製造する方法において、
以下の工程(1A),(2A),(3A),(4A)および(5A)を含むプロセスよりなり、かつ、下記第1の反応器出口の温度が下記第2の反応器出口の温度よりも50℃以上低いことを特徴とするプロピレンの製造方法。
程(1A):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4A)よりリサイクルされた流体(F)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
工程(2A):原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)とを、第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)を得る工程
工程(3A):前記流体(A)と前記流体(B)を混合した流体(C)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4A):前記流体(D)の一部の流体(F)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5A):前記流体(E)の一部の流体(G)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
] []において、前記流体(C)に含まれるエチレンの量が同流体に含まれるプロピレンに対して重量比で2.0未満であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料としてプロピレンを製造する方法において、
以下の工程(1B),(2B),(3B),(4B)および(5B)を含むプロセスよりなり、かつ、下記第1の反応器出口の温度が下記第2の反応器出口の温度よりも50℃以上低いことを特徴とするプロピレンの製造方法。
工程(1B):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4B)からリサイクルされた流体(L)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
工程(2B):前記流体(A)と、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5B)からリサイクルされた流体(M)とを第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)を得る工程
工程(3B):前記流体(I)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4B):前記流体(J)の一部の流体(L)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5B):前記流体(K)の一部の流体(M)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
] []において、前記流体(I)に含まれるエチレンの量が同流体に含まれるプロピレンに対して重量比で2.0未満であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
] [1]ないし[]のいずれかにおいて、前記第2の反応器に、炭素数4以上のオレフィンを含有する流体を該プロセス外から供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
] [1]ないし[]のいずれかにおいて、下記式で算出される前記第1の反応器におけるエチレンの転化率が30%以上であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
エチレン転化率(%)=
{(第1の反応器入口のエチレン流量−第1の反応器出口のエチレン流量)
/第1の反応器入口のエチレン流量}×100
本発明によれば、エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを原料としてプロピレンを製造する方法において、エチレンのリサイクル量が少なく、設備費用ならびに用役費用が低いプロセスを提供することができる。
以下に、本発明を実施するための代表的な態様を具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の態様に限定されるものではない。
本発明の第1の実施形態に係るプロピレンの製造方法は、エチレン、或いはエチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを原料としてプロピレンを製造する方法において、該原料を第1の触媒の存在下、第1の反応器で反応させることにより炭素数4以上のオレフィンを含む流体(X)を得、前記流体(X)の少なくとも一部とメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを第2の触媒の存在下、第2の反応器で反応させることによりプロピレンを含む流体を得ることを特徴とするものである。
このプロピレンの製造方法は、好ましくは、エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料としてプロピレンを製造する方法において、第1の触媒の存在下、第1の反応器でエチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応させてプロピレンおよび炭素数4以上のオレフィンを含む流体(A)を得た後に、前記流体(A)に含まれる炭素数4以上のオレフィンの少なくとも一部とメタノールおよび/またはジメチルエーテルを、第2の触媒の存在下、第2の反応器で反応させることによりプロピレンを得ることにより実施され、より好ましくは、以下の5つの工程(1A),(2A),(3A),(4A)および(5A)を含むプロセス(以下「第1の態様」と称す場合がある。)、或いは、工程(1B),(2B),(3B),(4B)および(5B)を含むプロセス(以下「第2の態様」と称す場合がある。)よりなる。
<第1の態様>
工程(1A):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4A)よりリサイクルされた流体(F)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
工程(2A):原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)とを、第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)を得る工程
工程(3A):前記流体(A)と前記流体(B)を混合した流体(C)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4A):前記流体(D)の一部の流体(F)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5A):前記流体(E)の一部の流体(G)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
<第2の態様>
工程(1B):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4B)からリサイクルされた流体(L)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
工程(2B):前記流体(A)と、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5B)からリサイクルされた流体(M)とを第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)を得る工程
工程(3B):前記流体(I)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4B):前記流体(J)の一部の流体(L)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5B):前記流体(K)の一部の流体(M)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
また、本発明の第2の実施形態に係るプロピレンの製造方法は、エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを原料としてプロピレンを製造する方法において、メタノールおよび/またはジメチルエーテルと、エチレンの二量化反応によって得られる炭素数4のオレフィンとを反応させる工程を含むものであり、好ましくは、以下の5つの工程(1C),(2C),(3C),(4C)および(5C)を含むプロセス(以下「第3の態様」と称す場合がある。)よりなる。
<第3の態様>
工程(1C):原料としてのエチレンと、工程(4C)よりリサイクルされた流体(P)とを第1の反応器に供給して、エチレン二量化触媒と接触させることにより炭素数4のオレフィンを含む流体(Q)を得る工程
工程(2C):工程(1C)からの流体(Q)と、工程(5C)よりリサイクルされた流体(R)と、メタノールおよび/またはジメチルエーテルとを第2の反応器に供給して、プロピレン製造触媒と接触させることにより、プロピレン、エチレン、その他オレフィン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有する流体(S)を得る工程
工程(3C):工程(2C)からの流体(S)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(U)と、水に富んだ流体とに分離する工程
工程(4C):工程(3C)からの流体(T)の一部の流体(P)を第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
工程(5C):工程(3C)からの流体(U)の一部の流体(R)を第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
なお、本発明において「富んだ」とは、目的物の純度が50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上であることを意味する。例えば、「炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)」とは、「炭素数4以上の炭化水素」を50モル%以上、好ましくは70モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上含む流体である。
本発明において「該プロセスから抜き出す」とは、本プロセスの第1の反応器と第2の反応器のいずれにもリサイクルしないことを意味する。
また、本発明は、好ましくは前述したような5つの工程(1A),(2A),(3A),(4A)および(5A)、或いは、工程(1B),(2B),(3B),(4B)および(5B)、或いは、工程(1C),(2C),(3C),(4C)および(5C)を含むものであるが、本発明の課題を解決するという目的に従う限り、それ以外の工程の存在を排除するものではなく、5つの工程の前後に他の工程が存在していてもよく、各工程の間に他の工程が存在していてもよい。
以下に、第1〜第3の態様の各工程に沿って、本発明のプロピレンの製造方法を説明するが、各態様には各々特徴があるため、プロセス全体の費用やプロピレンの収率を勘案して最適なプロセスが選定されることが好ましい。
{第1の態様}
まず、第1の態様の工程(1A)〜(5A)について説明する。
[工程(1A)の説明]
工程(1A)では、原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4A)よりリサイクルされた流体(F)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る。
<第1の触媒>
第1の態様でいう「第1の触媒」とは第1の反応器で用いる触媒をいい、エチレンとメタノールおよび/又はジメチルエーテルとを反応させてプロピレンおよび炭素数4以上のオレフィンを製造することができる触媒をいう。
この反応に用いられる触媒としては、ブレンステッド酸点を有する固体状のものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられ、例えば、カオリン等の粘土鉱物;粘土鉱物等の担体に硫酸、燐酸等の酸を含浸・担持させたもの;酸性型イオン交換樹脂;ゼオライト類;燐酸アルミニウム類;Al−MCM41等のメソポーラスシリカアルミナ等の固体酸触媒が挙げられる。
これらの固体酸触媒のうちでも、分子篩効果を有するものが好ましく、また、酸強度があまり高くないものが好ましい。
前記固体酸触媒のうち、分子篩効果を有するゼオライト類や燐酸アルミニウム類の構造としては、International Zeolite Association(IZA)が規定するコードで表すと、例えば、AEI、AET、AEL、AFI、AFO、AFS、AST、ATN、BEA、CAN、CHA、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、LEV、LTL、MAZ、MEL、MFI、MOR、MTT、MTW、MWW、OFF、PAU、RHO、STT、TON等が挙げられる。その中でも触媒のフレームワーク密度が18.0T/nm以下である触媒が好ましいく、このようなものとしては、好ましくは、MFI、MEL、MOR、MWW、FAU、BEA、CHAで、より好ましくは、MFI、MEL、MOR、MWW、CHA、特に好ましくはMFI、MEL、MWW、CHAが挙げられる。
ここで、フレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
更に、該固体酸触媒としてより好ましくは、細孔径が0.3〜0.9nmのミクロ細孔を有し、BET比表面積が200〜700m/g、細孔容積が0.1〜0.5g/ccである結晶性アルミノシリケート類、メタロシリケート類又は結晶性燐酸アルミニウム類等が好ましい。なお、ここで言う細孔径とは、International Zeolite Association(IZA)が定める結晶学的なチャネル直径(Crystallographic free diameter of the channels)を示し、細孔(チャネル)の形状が真円形の場合は、その直径をさし、細孔の形状が楕円形の場合は、短径をさす。
また、アルミノシリケートの中では、SiO/Alのモル比が10以上のものが好ましい。SiO/Alモル比が低すぎると触媒の耐久性が低下するため好ましくない。SiO/Alのモル比の上限は通常10000以下である。SiO/Alのモル比がこれより高すぎると触媒活性が低下してしまうため好ましくない。上記モル比は、蛍光X線や化学分析法などの常法により求めることができる。
触媒中のアルミニウム含量は触媒調製の際の原料仕込み量でコントロールすることができ、また、調製後にスチーミング等によりAlを減らすこともできる。また、Alの一部をホウ素やガリウム等の他の元素に置き換えても良く、特にホウ素で置換することが好ましい。
これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明においては、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゲル、石英、およびそれらの混合物等が挙げられる。
なお、上記した触媒組成は、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含まない触媒活性成分のみの組成である。しかして、本発明に係る触媒とは、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含む場合は、前述の触媒活性成分とこれらの反応に不活性な物質やバインダー等とを合わせて触媒と称し、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含まない場合は、触媒活性成分のみで触媒と称す。
本発明で用いる触媒活性成分の粒径は合成時の条件により異なるが、通常、平均粒径として0.01μm〜500μmである。触媒の粒径が大き過ぎると、触媒活性を示す表面積が小さくなり、小さ過ぎると取り扱い性が劣るものとなり、いずれの場合も好ましくない。この平均粒径は、SEM観察等により求めることができる。
本発明で用いる触媒の調製方法は特に限定されず、一般的に水熱合成と呼ばれる公知の方法により調製することが可能である。また、水熱合成後にイオン交換、脱アルミニウム処理、含浸や担持などの修飾により組成を変えることも可能である。
本発明で使用する触媒は、反応に供する際に、上記物性ないし組成を有しているものであれば良く、いずれの方法によって調製されたものであっても良い。
<反応原料>
反応の原料として用いるエチレンとしては、特に限定されるものではない。例えば、石油供給原料から接触分解法または蒸気分解法等により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、エタンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、プロピレンのメタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、エタノールの脱水反応によって得られるもの等の、公知の各種方法により得られるものを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因するエチレン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したエチレンを用いても良い。
また、反応の原料として用いるメタノールおよび/またはジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来の水素/COの混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したものを用いても良い。
<工程(4A)よりリサイクルされた流体(F)>
「工程(4A)よりリサイクルされた流体(F)」とは、工程(4A)により得られるリサイクル流体(F)のことをいい、エチレンを含む流体である。この流体(F)は工程(3A)における炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)の一部である。ここでいう「一部」とは、通常、流体(D)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。この範囲を下回ると、新たな原料として第1の反応器に供給するエチレンの流量が増えるという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、メタンやエタンが第1の反応器ならびにリサイクル流体中に蓄積してしまうという不都合が生じるので好ましくない。
第1の反応器にリサイクルされる流体(F)は、メタンやエタンなどの反応に関与しない化合物が含まれていても良い。
<第1の反応器>
第1の反応器で行われるのは気相反応である。この気相反応器の形態に特に制限はないが、通常、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。なお、固定床反応器に前述の触媒を充填する場合には、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
<反応条件>
反応温度の下限としては、第1の反応器入口のガス温度として通常約300℃以上、好ましくは400℃以上であり、反応温度の上限としては、通常600℃以下、好ましくは500℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、更にプロピレンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎるとプロピレンの収率が著しく低下すると共にエチレンの転化率が低下する傾向があるため好ましくない。
なお、第1の反応器出口の温度が後述する工程(2A)および/または工程(2B)における第2の反応器出口の温度よりも低いことが好ましく、第1の反応器出口の温度が第2の反応器出口の温度よりも50℃以上、例えば50〜200℃程度低いことがさらに好ましい。このような温度条件で第1の反応器および第2の反応器を運転することにより、エチレンのリサイクル量を減らした条件で高選択的にプロピレンを得ることが可能となる。
反応圧力の上限は通常2MPa(絶対圧、以下同様)以下、好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、反応圧力の下限は特に制限されないが、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力が高すぎるとパラフィン類や芳香族化合物等の好ましくない副生成物の生成量が増え、プロピレンの収率が低下する傾向がある。反応圧力が低すぎると反応速度が遅くなる傾向がある。
第1の反応器に供給するエチレンの量は、反応器に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で0.2以上、好ましくは0.5以上であって、5以下、好ましくは2以下である。
即ち、エチレンの供給モル量をMet、メタノールの供給モル量をMm、ジメチルエーテルの供給モル量をMdmとした場合、Metは(Mm+2Mdm)の0.2〜5倍、好ましくは0.5〜2倍である。
この供給濃度比が低すぎても高すぎても反応が遅くなり好ましくなく、特に、この供給濃度比が高すぎると、反応器出口のエチレンが多くなり、リサイクル流量が多くなるため好ましくない。
ここで供給濃度比は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応器に供給する際には、これらを別々に供給しても、予め一部または全部を混合した後に供給してもよい。
第1の反応器に供給する全供給成分中の、エチレンとメタノールとジメチルエーテルの合計濃度(基質濃度)は、全体の20体積%以上80体積%以下、好ましくは全体の30体積%以上70体積%以下である。
ここで基質濃度は、第1の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
この基質濃度が高すぎると芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著になりプロピレンの選択率が低下する傾向がある。逆に、この基質濃度が低すぎると、反応速度が遅くなるため多量の触媒が必要となり、さらに生成物の精製コストや反応設備の建設費も大きくなり経済的でない。
従って、このような基質濃度となるように、後述の希釈ガスで反応基質を希釈する。基質濃度を制御する方法としては、プロセスから抜き出される流体の流量を制御する方法が挙げられる。プロセスから抜き出される流体の流量を変えることにより、第1の反応器にリサイクルされる希釈ガスの流量が変化し、基質濃度を変えることが可能である。
第1の反応器内には、エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの他に、パラフィン類、芳香族類、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、および、それらの混合物といった、反応に不活性な気体を存在させることができる。なお、これらの希釈ガスのうち、パラフィン類や芳香族類は、反応条件によっては若干反応することがあるが、反応量が少ないことから、希釈ガスとして定義する。
このような希釈ガスとしては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良いし、別途調製した希釈ガスを反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈ガスは第1の反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に第1の反応器に供給しても良い。
空間速度は、0.1Hr−1から500Hr−1の間が好ましく、1.0Hr−1から100Hr−1の間が更に好ましい。空間速度が高すぎると原料のエチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率が低くなる。また、空間速度が低すぎると、一定の生産量を得るのに必要な触媒量が多くなり第1の反応器が大きくなりすぎると共に、芳香族化合物やパラフィン等の好ましくない副生成物が生成するため好ましくない。なお、ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるエチレンの流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。また、流量はエチレンの流量(重量/時間)である。
<反応による原料の消費量>
第1の反応器に供給するメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計に対して、第1の反応器出口のメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計は1%未満が好ましい。さらに好ましくは0.1%未満である。消費量が少なく、第1の反応器出口のメタノールやジメチルエーテルの量が増えすぎると、製品オレフィンの精製が困難になる。消費量を多くする方法としては、反応温度を上げたり、空間速度を下げたりする方法が挙げられる。
ここで、第1の反応器に供給するメタノールとジメチルエーテルならびにエチレンの流量は、第1の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量し、それぞれの流体の流量を測定することにより知ることができ、第1の反応器出口のメタノールとジメチルエーテルならびにエチレンの流量は、第1の反応器出口流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な手法で定量し、第1の反応器出口流体の流量を測定または計算することにより知ることができる。
また、第1の反応器におけるエチレンの転化率は通常は30%以上、好ましくは40%以上80%未満である。エチレンの転化率がこの範囲を下回ると未反応のオレフィンが多くなり、第1の反応器にリサイクルする流体の流量が大きくなりすぎて好ましくない。一方、この範囲を上回るとパラフィンや芳香族化合物など望ましくない化合物が副生するため好ましくない。
なお、本発明でいう「エチレンの転化率」とは、エチレンがエチレン以外の化合物に転化する割合のことをいい、次式で表される。
エチレン転化率(%)=
{(第1の反応器入口のエチレン流量−第1の反応器出口のエチレン流量)
/第1の反応器入口のエチレン流量}×100
また、エチレンの転化率はガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法および流量計によって定量化することができる。
<プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(A)>
「プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)」とは、第1の反応器の出口の流体を意味する。
第1の反応器出口流体(A)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常5〜95重量%である。
未反応原料は、通常エチレンである。反応条件によってはメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが残らないような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になる。生成物としてはプロピレンのほか、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。
[工程(2A)の説明]
工程(2A)では、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)を、第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)を得る。
<第2の触媒>
「第2の触媒」とは、第2の反応器で用いる触媒をいい、メタノールおよび/又はジメチルエーテルと炭素数4以上のオレフィンとを反応させて、プロピレンおよび炭素数4以上のオレフィンを製造することができる触媒をいう。
第2の触媒として用いられる触媒としては、前述の[工程(1A)の説明]にある「第1の触媒」に記載したものを利用することができる。この場合、第2の触媒として、第1の触媒として用いたものと全く同じ構造および組成の触媒を用いても、異なる構造および/または異なる組成の触媒を用いても良い。異なる組成の触媒を用いる場合、第2の触媒のSiO/Alモル比が第1の触媒のSiO/Alモル比よりも高い方が好ましい。これは、SiO/Alモル比が高いほどパラフィンや芳香族の生成が抑制されるため、SiO/Alモル比は高いほうが好ましいが、第1の触媒のSiO/Alモル比が高すぎると、エチレンの転化率が低くなる傾向があるためである。
<反応原料>
反応原料として用いるメタノールおよび/またはジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来の水素/COの混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したものを用いても良い。
<工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)>
「工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)」とは、工程(5A)より得られるリサイクル流体(G)のことをいう。流体(G)は炭素数4以上の炭化水素を含む。この流体(G)は、工程(3A)における炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)の一部である。ここでいう「一部」とは、通常、流体(E)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。この範囲を下回ると、反応器にリサイクルされるオレフィンの量が少なくなりプロピレン収率が低下するという不都合が生じ、この範囲を上回ると、流体(E)に含まれるパラフィンが蓄積し、流体(B),(C),(G)の流量が増え、設備費用ならびに用役費用が高くなるという不都合が生じるので好ましくない。
第2の反応器にリサイクルされる炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(G)としては、オレフィンを含有していれば特に限定されず、パラフィンや芳香族化合物が含まれていても良い。
<第2の反応器>
第2の反応器で行われるのは気相反応である。この気相反応器の形態に特に制限はないが、通常、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。なお、固定床反応器に前述の触媒を充填する場合には、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
<反応条件>
反応温度の下限としては、第2の反応器入口のガス温度として通常約300℃以上、好ましくは400℃以上であり、反応温度の上限としては、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、更にプロピレンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎるとプロピレンの収率が著しく低下する。
反応圧力の上限は通常2MPa(絶対圧、以下同様)以下好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、反応圧力の下限は特に制限されないが、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力が高すぎるとパラフィン類や芳香族化合物等の好ましくない副生成物の生成量が増え、プロピレンの収率が低下する傾向がある。反応圧力が低すぎると反応速度が遅くなる傾向がある。
第2の反応器に供給する炭素数4以上のオレフィンの量は、第2の反応器に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で0.2以上、好ましくは0.5以上であって、10以下、好ましくは5以下である。
即ち、炭素数4以上のオレフィンの供給モル量をMc4、メタノールの供給モル量をMm、ジメチルエーテルの供給モル量をMdmとした場合、Mc4は(Mm+2Mdm)の0.2〜10倍、好ましくは0.5〜5倍である。
この供給濃度比が低すぎても高すぎても反応が遅くなり好ましくなく、特に、この供給濃度比が低すぎると、原料のオレフィンの消費量が減少するため好ましくない。
ここで供給濃度比は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを第2の反応器に供給する際には、これらを別々に供給しても、予め一部または全部を混合した後に供給してもよい。
第2の反応器に供給する全供給成分中の、炭素数4以上のオレフィンとメタノールとジメチルエーテルの合計濃度(基質濃度)は、全体の20体積%以上80体積%以下、好ましくは全体の30体積%以上70体積%以下である。
ここで基質濃度は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
この基質濃度が高すぎると芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著になりプロピレンの選択率が低下する傾向がある。逆に、この基質濃度が低すぎると、反応速度が遅くなるため多量の触媒が必要となり、さらに生成物の精製コストや反応設備の建設費も大きくなり経済的でない。
従って、このような基質濃度となるように、後述の希釈ガスで反応基質を希釈する。基質濃度を制御する方法としては、プロセスから抜き出される流体の流量を制御する方法が挙げられる。プロセスから抜き出される流体の流量を変えることにより、第2の反応器にリサイクルされる希釈ガスの流量が変化し、基質濃度を変えることが可能である。
また、第2の反応器にリサイクルされる炭化水素流体中および/または炭素数4以上のオレフィン原料中にブタジエン化合物を含有している場合がある。第2の反応器に供給する全供給成分中のブタジエンの濃度としては、2.0体積%以下が好ましい。ここでブタジエン濃度は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。ブタジエン濃度が高いと触媒のコーキングによる劣化が速くなる。ブタジエン濃度を低下させる方法としては、該流体を水素添加触媒とさせてオレフィン類に変換する部分水添法が挙げられる。
また、第2の反応器にリサイクルされる炭化水素流体中に芳香族化合物を含有している場合がある。第2の反応器に供給される全てのガスに含まれる芳香族化合物の合計量が、第2の反応器に供給される全てのガスに含まれる炭素数4以上のオレフィンの合計量に対してモル比で0.05未満であることが好ましい。ここで上記の芳香族化合物の合計量と炭素数4以上のオレフィンの合計量の比は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
芳香族化合物濃度が高いと、第2の反応器内で芳香族化合物とメタノールおよび/またはジメチルエーテルとが反応し、必要以上にメタノールおよび/またはジメチルエーテルを消費してしまうため好ましくない。芳香族化合物濃度を低下させる方法としては、蒸留による分離法が挙げられる。
第2の反応器内には、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの他に、パラフィン類、芳香族類、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、および、それらの混合物といった、反応に不活性な気体を存在させることができる。なお、これらの希釈ガスのうち、パラフィン類や芳香族類は、反応条件によっては若干反応することがあるが、反応量が少ないことから、希釈ガスとして定義する。
このような希釈ガスとしては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良いし、別途調製した希釈ガスを反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈ガスは第2の反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に第2の反応器に供給しても良い。
空間速度は、0.1Hr−1から500Hr−1の間が好ましく、1.0Hr−1から100Hr−1の間が更に好ましい。空間速度が高すぎると原料のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率が低く、また、十分なプロピレン選択率が得られない。また、空間速度が低すぎると、一定の生産量を得るのに必要な触媒量が多くなり第2の反応器が大きくなりすぎると共に、芳香族化合物やパラフィン等の好ましくない副生成物が生成し、プロピレン選択率が低下するため好ましくない。なお、ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料である炭素数4以上のオレフィンの流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。また、流量は炭素数4以上のオレフィンの流量(重量/時間)である。
<反応による原料の消費量>
第2の反応器に供給するメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計に対して、第2の反応器出口のメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計は1%未満が好ましい。さらに好ましくは0.1%未満である。消費量が少なく、第2の反応器出口のメタノールやジメチルエーテルの量が増えすぎると、製品オレフィンの精製が困難になる。消費量を多くする方法としては、反応温度を上げたり、空間速度を下げたりする方法が挙げられる。
また、第2の反応器に供給する炭素数4以上のオレフィンのモル流量の合計に対して、第2の反応器出口の炭素数4以上のオレフィンのモル流量の合計は20%以上70%未満が好ましい。好ましくは25%以上60%未満である。
消費量が少なすぎると、未反応のオレフィンが多くなり、第2の反応器にリサイクルする流体の流量が大きくなりすぎて好ましくない。消費量が多すぎると、パラフィンや芳香族化合物など望ましくない化合物が副生し、プロピレン収率が低下するため好ましくない。消費量を調整する方法としては、反応温度や空間速度などを適切に設定する方法が挙げられる。
ここで第2の反応器に供給するメタノールとジメチルエーテルならびに炭素数4以上のオレフィンの流量は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量し、それぞれの流体の流量を測定することにより知ることができ、第2の反応器出口のメタノールとジメチルエーテルならびに炭素数4以上のオレフィンの流量は、第2の反応器出口流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な手法で定量し、第2の反応器出口流体の流量を測定または計算することにより知ることができる。
<プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)>
「プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)」とは、第2の反応器の出口の流体を意味する。
第2の反応器出口流体(B)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常5〜95重量%である。
未反応原料は、通常炭素数4以上のオレフィンである。反応条件によってはメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが残らないような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になる。副生成物としてはエチレン、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。
[工程(3A)の説明]
工程(3A)では、工程(2A)で得られた流体(B)を混合した流体(C)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)および水に富んだ流体に分離する。
この混合流体(C)に含まれるエチレンの量は、同流体に含まれるプロピレンに対して重量比で2.0未満であることが好ましく、この割合は、より好ましくは1.5未満であり、さらに好ましくは1.0未満である。これにより本プロセス全体の設備費用ならびに用役費用を著しく削減することが可能である。
流体(C)に含まれるエチレンとプロピレンの重量比は、同流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、流体(C)のエチレンとプロピレンの重量比は、第1の反応器および/または第2の反応器の反応温度や空間速度等の反応条件を調整することにより変えることができる。
流体(C)は冷却、圧縮および蒸留等の一般的な分離工程により、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)および水に富んだ流体に分離される。ここで、各流体は一つの流体とは限らず、複数の流体であっても良い。例えば、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(E)は、メタン、エチレン、エタンを含む一つの流体でも良いが、メタンに富んだ流体とエチレンとエタンに富んだ流体の二つの流体でも良い。
また、必要に応じてクエンチ、アルカリ洗浄、脱水等の処理を行うのが好ましい。流体(C)に含酸素化合物が含まれる場合にはクエンチ工程により、含酸素化合物の少なくとも一部が除去される。反応器出口ガスに二酸化炭素などの酸性ガスが含まれる場合にはアルカリ洗浄により酸性ガスの少なくとも一部が除去される。水の分離は主に圧縮と冷却により凝縮することにより可能である。
残った水分はモレキュラーシーブ等の吸着剤で除去するのが好ましい。凝縮および/または吸着により除去した水は活性汚泥等の廃水処理工程に供しても良いが、プロセス水等に使用することもできる。本プロセスがスチームクラッキングプロセスの近くにある場合にはクラッカーのスチーム源として利用することが好ましい。また、工程(1A)の第1の反応器および/または工程(2A)の第2の反応器にリサイクルして希釈ガスとして用いても良い。
また、得られたプロピレンに富んだ流体はさらに蒸留等の精製工程により純度の高いプロピレンを得るのが好ましい。プロピレンの純度としては95%以上であり、99%以上が好ましい。さらに好ましくは99.9%以上である。
製造されたプロピレンは一般的に製造されるプロピレン誘導体すべての原料として使用でき、例えばアンモ酸化によりアクリロニトリルの製造に、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸およびアクリル酸エステルの製造に、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、2−エチルヘキサノール等のオキソアルコールの製造に、プロピレンの重合によりポリプロピレンの製造に、プロピレンの選択酸化によりプロピレンオキサイドおよびプロピレングリコール等の製造に適用することができる。また、ワッカー反応によりアセトンが製造でき、更にアセトンよりメチルイソブチルケトンを製造することができる。アセトンからはまたアセトンシアンヒドリンが製造でき、これは最終的にメチルメタクリレートに転換される。またプロピレン水和によりイソプロピルアルコールも製造できる。また、ベンゼンをアルキル化することにより製造したキュメンを原料に、フェノール,ビスフェノールA,ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
[工程(4A)の説明]
工程(4A)では、工程(3A)における流体(D)の一部の流体(F)を第1の反応器にリサイクルし、残りの流体は本発明のプロセス(以下、「本プロセス」と称する場合がある)から抜き出す。
この時、流体(D)を分離工程に導入することなく、リサイクル流体(F)と抜き出される流体とに分割しても良いが、流体(D)を分離工程に導入し、流体(D)よりもエチレン濃度を高めた流体を第1の反応器にリサイクルしても良い。抜き出された流体は、エチレンなどの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
なお、「本プロセスから抜き出す」とは、本プロセスの第1の反応器と第2の反応器のいずれにもリサイクルしないことを意味する。
[工程(5A)の説明]
工程(5A)では、工程(3A)における流体(E)の一部の流体(G)を第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を本プロセスから抜き出す。この時、流体(E)を分離工程に導入することなく、リサイクル流体(G)と抜き出される流体とに分割しても良いが
、流体(E)を分離工程に導入し、流体(E)よりもブテン濃度を高めた流体を第2の反応器にリサイクルしても良い。抜き出された流体は、ブテンや芳香族化合物などの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
[反応原料の導入]
第1の態様においては、炭素数4以上のオレフィンを含有する流体を、新たに、プロピレン製造のための原料の一部として、前述の工程(2A)における第2の反応器に供給しても良い。
反応の原料として用いる炭素数4以上のオレフィンとしては、特に限定されるものではない。例えば、石油供給原料から接触分解法またはスチームクラッキング等により製造されるもの(BB留分、C4ラフィネート−1、C4ラフィネート−2等)、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、炭素数4以上のパラフィンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、アルコールの脱水反応によって得られるもの、炭素数4以上のジエン化合物の水素化反応により得られるもの等の、公知の各種方法により得られる、炭素数4以上、特に炭素数4〜10のオレフィンを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因する炭素数4以上のオレフィン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したオレフィンを用いても良い。
この中でも、パラフィン類を含んだオレフィン原料を使用する場合、パラフィンが希釈ガスの役割を果たすため反応温度の制御が容易になり、さらにパラフィン含有の原料は安価に入手可能であることが多いため好ましい。さらに好ましくはノルマルブタンおよび/またはイソブタンを含有したオレフィン原料である。これらの好ましい原料としては上記のBB留分、C4ラフィネート−1やC4ラフィネート−2が挙げられる。なお、BB留分についてはブタジエンを多く含むため、水素添加触媒に接触させてブタジエン濃度を低下させた流体を原料とするのが好ましい。
このプロセス外からの炭素数4以上のオレフィンを含有する流体の供給量は特に制限がない。
[工程(1A)〜(5A)のプロセスの特徴]
第1の態様である工程(1A)〜(5A)のプロセスの特徴としては、第1の反応器で生成したエチレンやプロピレンなど炭素数3以下の炭化水素が第2の反応器に供給されない点が挙げられる。このため、第1の反応器および第2の反応器それぞれで生成したプロピレンを製品として効率よく取り出すことが可能である。
[プロセスの実施態様]
以下に、図面を参照して第1の態様の実施形態について説明する。
図1は本発明プロセスの第1の態様を示す。
図1において、10は第1の反応器、20は第2の反応器、30は分離精製系である。101〜117はそれぞれ配管を示す。
エチレン原料、メタノールおよび/またはジメチルエーテル、分離精製系30からの炭素数2以下の炭化水素流体(F)はそれぞれ配管101、配管102、配管103および配管104を経て第1の反応器10に供給される。配管101および/または配管103を経て反応器に供給される流体には炭素数2以下のパラフィン類、例えばメタンやエタンなどが含まれていても良い。なお、配管104を経て導入される原料流体は配管101、配管102および配管103を経て供給される流体の合計を意味しているが、これらは必ずしも第1の反応器10に入る前に合流する必要は無く、別々に第1の反応器10に供給されても良い。第1の反応器10に供給された原料は第1の反応器10内で触媒と接触して反応し、プロピレン、炭素数4のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含む反応器出口流体(A)が得られる。
メタノールおよび/またはジメチルエーテル、分離精製系30からの炭素数4以上の炭化水素流体(G)はそれぞれ配管106、配管107および配管109を経て第2の反応器20に供給される。なお、炭素数4以上のオレフィン原料を配管108および配管109を通して第2の反応器20に供給しても良い。配管108および/または配管107を経て第2の反応器20に供給される流体には炭素数4以上のパラフィン類、例えばノルマルブタンやイソブタンなどが含まれていても良い。また、配管109を経て第2の反応器20に供給される原料流体中には、ブタジエン、芳香族化合物や水が含まれていても良い。なお、配管109を経て導入される原料流体は配管106、配管107、および必要に応じて配管108を経て供給される流体の合計を意味しているが、これらは必ずしも第2の反応器20に入る前に合流する必要は無く、別々に第2の反応器20に供給されても良い。第2の反応器20に供給された原料は第2の反応器20内で触媒と接触して反応し、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した反応器出口ガス流体(B)が得られる。
第1の反応器10の出口ガス流体(A)と第2の反応器20の出口ガス(B)はそれぞれ配管105および配管110を経て合流し、流体(C)が得られる。流体(C)は配管111を経て冷却、圧縮および蒸留等の一般的な分離精製系30に送給され、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)および水に富んだ流体に分離され、それぞれ配管112、配管113、配管114および配管115を経て取り出される。ここで、各流体は一つ以上の流体を示す。例えば炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)の場合は、メタン、エチレン、エタンを含む一つの流体でも良いが、メタンに富んだ流体とエチレンとエタンに富んだ流体の二つの流体でも良い。
炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)の一部(F)は配管103を経て第1の反応器10にリサイクルされ、残りの流体は配管116を経て該プロセスから抜き出される。この時、流体(D)を蒸留等の分離精製により、流体(D)よりもエチレン濃度を高めた流体を第1の反応器10にリサイクルしても良い。配管116を経て抜き出された流体は、エチレンなどの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
配管113を経て得られたプロピレンに富んだ流体は蒸留等の分離精製により純度の高いプロピレンを得るのが好ましい。
また、配管115を経て得られた水は活性汚泥等の廃水処理工程に供しても良いが、プロセス水等に使用することもできる。本プロセスがスチームクラッキングプロセスの近くにある場合にはクラッカーのスチーム源として利用することが好ましい。また、第1の反応器10および/または第2の反応器20にリサイクルして希釈ガスとして用いても良い。
一方、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)の一部(G)は配管107を経て第2の反応器20にリサイクルされ、残りの流体は配管117を経て該プロセスから抜き出される。この時、流体(E)を蒸留等の分離精製により、流体(E)よりもブテン濃度を高めた流体を第2の反応器20にリサイクルしても良い。配管117を経て抜き出された流体は、ブテンや芳香族化合物などの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
{第2の態様}
次に、第2の態様の工程(1B)〜(5B)について説明する。
[工程(1B)の説明]
工程(1B)では、原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4B)からリサイクルされた流体(L)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る。
この工程(1B)において、<第1の触媒>、<反応原料>、<第1の反応器>、<反応条件>、<反応による原料の消費量>、<プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(A)>は、{第1の態様}における[工程(1A)の説明]に記載したものと実質的に同一である。
<工程(4B)よりリサイクルされた流体(L)>
「工程(4B)よりリサイクルされた流体(L)」とは、工程(4B)により得られるリサイクル流体(L)のことをいい、エチレンを含む流体である。この流体(L)は工程(3B)における炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)の一部である。ここでいう「一部」とは、通常、流体(J)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。この範囲を下回ると、新たな原料として第1の反応器に供給するエチレンの流量が増えるという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、メタンやエタンが第1の反応器ならびにリサイクル流体中に蓄積してしまうという不都合が生じるので好ましくない。
第1の反応器にリサイクルされる流体(L)には、メタンやエタンが含まれていても良い。
[工程(2B)の説明]
工程(2B)では、工程(1B)で得られた流体(A)と、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5B)からリサイクルされた流体(M)とを第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)を得る。
この工程(2B)において、<第2の触媒>、<反応原料>、<第2の反応器>、<反応条件>、<反応による原料の消費量>は、{第1の態様}における[工程(2A)の説明]に記載したものと実質的に同一である。
<工程(5B)よりリサイクルされた流体(M)>
「工程(5B)よりリサイクルされた流体(M)」とは、工程(5B)による得られるリサイクル流体(M)のことをいい、炭素数4以上の炭化水素を含む流体である。この流体(M)は工程(3B)における炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)の一部である。ここでいう「一部」とは、通常、流体(K)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。この範囲を下回ると、反応器にリサイクルされるオレフィンの量が少なくなり、プロピレンの収率が低下するという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、流体(K)に含まれるパラフィンが蓄積し、流体(I),(M)の流量が増え、設備費用ならびに用役費用が高くなるという不都合が生じるので好ましくない。
第2の反応器にリサイクルされる流体(M)は、オレフィンを含有していれば特に限定されず、パラフィンや芳香族化合物を含んでいても良い。
<プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)>
「プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)」とは、工程(2B)における第2の反応器の出口の流体を意味する。
第2の反応器出口流体(I)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常5〜95重量%である。
未反応原料は、通常炭素数4以上のオレフィンである。反応条件によってはメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが残らないような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になる。副生成物としてはエチレン、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。
流体(I)に含まれるエチレンの量は同流体に含まれるプロピレンに対して重量比で2.0未満であることが好ましく、この割合は、より好ましくは1.5未満であり、さらに好ましくは1.0未満である。これにより本プロセス全体の設備費用ならびに用役費用を著しく削減することが可能である。流体(I)に含まれるエチレンとプロピレンの重量比は、同流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、流体(I)のエチレンとプロピレンの重量比は、第1の反応器および/または第2の反応器の反応温度や空間速度等の反応条件を調整することにより変えることができる。
[工程(3B)の説明]
工程(3B)では、工程(2B)で得られた流体(I)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)および水に富んだ流体に分離する。
工程(2B)で得られた流体(I)は冷却、圧縮および蒸留等の一般的な分離工程により、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)および水に富んだ流体に分離される。ここで、各流体は一つの流体とは限らず、複数の流体であっても良い。例えば、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)は、メタン、エチレン、エタンを含む一つの流体でも良いが、メタンに富んだ流体とエチレンとエタンに富んだ流体の二つの流体でも良い。
また、必要に応じてクエンチ、アルカリ洗浄、脱水等の処理を行うのが好ましい。流体(I)に含酸素化合物が含まれる場合にはクエンチ工程により、含酸素化合物の少なくとも一部が除去される。反応器出口ガスに二酸化炭素などの酸性ガスが含まれる場合にはアルカリ洗浄により酸性ガスの少なくとも一部が除去される。水の分離は主に圧縮と冷却により凝縮することにより可能である。残った水分はモレキュラーシーブ等の吸着剤で除去するのが好ましい。凝縮および/または吸着により除去した水は活性汚泥等の廃水処理工程に供しても良いが、プロセス水等に使用することもできる。本プロセスがスチームクラッキングプロセスの近くにある場合にはクラッカーのスチーム源として利用することが好ましい。また、工程(1B)の第1の反応器および/または工程(2B)の第2の反応器にリサイクルして希釈ガスとして用いても良い。
また、得られたプロピレンに富んだ流体はさらに蒸留等の精製工程により純度の高いプロピレンを得るのが好ましい。プロピレンの純度としては95%以上であり、99%以上が好ましい。さらに好ましくは99.9%以上である。
製造されたプロピレンは一般的に製造されるプロピレン誘導体すべての原料として使用でき、例えばアンモ酸化によりアクリロニトリルの製造に、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸およびアクリル酸エステルの製造に、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、2−エチルヘキサノール等のオキソアルコールの製造に、プロピレンの重合によりポリプロピレンの製造に、プロピレンの選択酸化によりプロピレンオキサイドおよびプロピレングリコール等の製造に適用することができる。また、ワッカー反応によりアセトンが製造でき、更にアセトンよりメチルイソブチルケトンを製造することができる。アセトンからはまたアセトンシアンヒドリンが製造でき、これは最終的にメチルメタクリレートに転換される。またプロピレン水和によりイソプロピルアルコールも製造できる。また、ベンゼンをアルキル化することにより製造したキュメンを原料に、フェノール,ビスフェノールA,ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
[工程(4B)の説明]
工程(4B)では、工程(3A)における流体(J)の一部の流体(L)を第1の反応器にリサイクルし、残りの流体は本発明のプロセスから抜き出す。
この時、流体(J)を分離工程に導入することなく、リサイクル流体(L)と抜き出される流体とに分割しても良いが、流体(J)を分離工程に導入し、流体(J)よりもエチレン濃度を高めた流体を第1の反応器にリサイクルしても良い。抜き出された流体は、エチレンなどの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
なお、「本プロセスから抜き出す」とは、本プロセスの第1の反応器と第2の反応器のいずれにもリサイクルしないことを意味する。
[工程(5B)の説明]
工程(5B)では、工程(3B)における流体(K)の一部の流体(M)を第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を本プロセスから抜き出す。
この時、流体(K)を分離工程に導入することなく、リサイクル流体(M)と抜き出される流体とに分割しても良いが、流体(K)を分離工程に導入し、流体(K)よりもブテン濃度を高めた流体を第2の反応器にリサイクルしても良い。抜き出された流体は、ブテンや芳香族化合物などの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
[反応原料の導入]
本発明においては、炭素数4以上のオレフィンを含有する流体を、新たに、プロピレン製造のための原料の一部として、前述の工程(2B)における第2の反応器に供給しても良い。
反応の原料として用いる炭素数4以上のオレフィンとしては、特に限定されるものではない。例えば、石油供給原料から接触分解法またはスチームクラッキング等により製造されるもの(BB留分、C4ラフィネート−1、C4ラフィネート−2等)、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、炭素数4以上のパラフィンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、アルコールの脱水反応によって得られるもの、炭素数4以上のジエン化合物の水素化反応により得られるもの等の、公知の各種方法により得られる、炭素数4以上、特に炭素数4〜10のオレフィンを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因する炭素数4以上のオレフィン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したオレフィンを用いても良い。
この中でも、パラフィン類を含んだオレフィン原料を使用する場合、パラフィンが希釈ガスの役割を果たすため反応温度の制御が容易になり、さらにパラフィン含有の原料は安価に入手可能であることが多いため好ましい。さらに好ましくはノルマルブタンおよび/またはイソブタンを含有したオレフィン原料である。これらの好ましい原料としては上記のBB留分、C4ラフィネート−1やC4ラフィネート−2が挙げられる。なお、BB留分についてはブタジエンを多く含むため、水素添加触媒に接触させてブタジエン濃度を低下させた流体を原料とするのが好ましい。
このプロセス外からの炭素数4以上のオレフィンを含有する流体の供給量は特に制限がない。
[工程(1B)〜(5B)のプロセスの特徴]
第2の態様である工程(1B)〜(5B)のプロセスの特徴としては、第1の反応器で生成したエチレンやプロピレンが第2の反応器に供給されるため、生成したプロピレンの一部が反応して他の化合物に変換されてしまう点が挙げられる。しかしながら、工程(3B)において分離精製系に供給される流体(I)の流量は第1の態様の工程(3A)において分離精製系に供給される流体(C)の流量に比べて非常に少ないため、分離精製系の用役費用および設備費用が小さいという特徴がある。
[プロセスの実施態様]
以下に、図面を参照して第2の態様の実施形態について説明する。
図2は本発明プロセスの第2の態様を示す。
図2において、12は第1の反応器、22は第2の反応器、32は分離精製系である。201〜217はそれぞれ配管を示す。
エチレン原料、メタノールおよび/またはジメチルエーテル、分離精製系32からの炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(L)はそれぞれ配管201、配管202、配管203および配管204を経て第1の反応器12に供給される。配管201および/または配管203を経て反応器に供給される流体には炭素数2以下のパラフィン類、例えばメタンやエタンなどが含まれていても良い。なお、配管204を経て導入される原料流体は配管201、配管202および配管203を経て供給される流体の合計を意味しているが、これらは必ずしも第1の反応器12に入る前に合流する必要は無く、別々に反応器12に供給されても良い。第1の反応器12に供給された原料は第1の反応器12内で触媒と接触して反応し、プロピレン、炭素数4のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含む反応器出口流体(A)が得られる。
第1の反応器12の出口流体(A)、メタノールおよび/またはジメチルエーテル、分離精製系32からの炭素数4以上の炭化水素流体(M)はそれぞれ配管205、配管206、配管207および配管209を経て第2の反応器22に供給される。なお、炭素数4以上のオレフィン原料を配管208および配管209を通して第2の反応器22に供給しても良い。配管208および/または配管207を経て第2の反応器22に供給される流体には炭素数4以上のパラフィン類、例えばノルマルブタンやイソブタンなどが含まれていても良い。また、配管209を経て第2の反応器22に供給される原料流体中には、ブタジエン、芳香族化合物や水が含まれていても良い。なお、配管209を経て導入される原料流体は配管205、配管206、配管207および必要に応じて配管208を経て供給される流体の合計を意味しているが、これらは必ずしも第2の反応器22に入る前に合流する必要は無く、別々に反応器22に供給されても良い。第2の反応器22に供給された原料は反応器22内で触媒と接触して反応し、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した反応器出口流体(ガス)(I)が得られる。
第2の反応器22の出口ガス流体(I)は配管210を経て冷却、圧縮および蒸留等の一般的な分離精製系32に送給され、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)および水に富んだ流体に分離され、それぞれ配管212、配管213、配管214および配管215を経て取り出される。ここで、各流体は一つ以上の流体を示す。例えば炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)の場合は、メタン、エチレン、エタンを含む一つの流体でも良いが、メタンに富んだ流体とエチレンとエタンに富んだ流体の二つの流体でも良い。
炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)の一部(L)は配管203を経て第1の反応器12にリサイクルされ、残りの流体は配管216を経て該プロセスから抜き出される。この時、流体(J)を蒸留等の分離精製により、流体(J)よりもエチレン濃度を高めた流体を第1の反応器12にリサイクルしても良い。配管216を経て抜き出された流体は、エチレンなどの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
配管213を経て得られたプロピレンに富んだ流体は蒸留等の分離精製により純度の高いプロピレンを得るのが好ましい。
また、配管215を経て得られた水は活性汚泥等の廃水処理工程に供しても良いが、プロセス水等に使用することもできる。本プロセスがスチームクラッキングプロセスの近くにある場合にはクラッカーのスチーム源として利用することが好ましい。また、第1の反応器12および/または第2の反応器22にリサイクルして希釈ガスとして用いても良い。
一方、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)の一部(M)は配管207を経て第2の反応器22にリサイクルされ、残りの流体は配管217を経て該プロセスから抜き出される。この時、流体(K)を蒸留等の分離精製により、流体(K)よりもブテン濃度を高めた流体を第2の反応器22にリサイクルしても良い。配管217を経て抜き出された流体は、ブテンや芳香族化合物などの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
{第3の態様}
次に、第3の態様の工程(1C)〜(5C)について説明する。
[工程(1C)の説明]
工程(1C)では、原料としてのエチレンと、工程(4C)よりリサイクルされた流体(P)とを第1の反応器に供給して、エチレン二量化触媒と接触させることにより炭素数4のオレフィンを含む流体(Q)を得る。
<エチレン二量化触媒>
本発明に係る反応に用いられる「エチレン二量化触媒」(以下、工程(1C)において単に「触媒」という場合がある)とは、エチレンを原料として炭素数4のオレフィン(ブテン)を生成することができる能力を有する触媒をいう。
このような触媒としては、エチレンの二量化によりブテンを生成する反応に対して触媒機能を有するものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられる。
この触媒は錯体触媒でも良いし、固体触媒でも良い。例えば錯体触媒としては、テトラブトキシチタン−トリエチルアルミニウム複合触媒のようなチタンを含む触媒、その他ニッケルを含む触媒、パラジウムを含む触媒などが用いられる。一方、固体触媒としては、酸化ニッケル担持触媒のようなニッケルを含む触媒などが用いられる。反応を液相で行う場合には錯体触媒を用いるのが好ましく、気相で行う場合には固体触媒が好ましい。
これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
<反応原料>
反応の原料として用いるエチレンとしては、特に限定されるものではない。例えば、石油供給原料から接触分解法または蒸気分解法等により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、エタンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、プロピレンのメタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、エタノールの脱水反応によって得られるもの等の、公知の各種方法により得られるものを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因するエチレン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したエチレンを用いても良い。
<工程(4C)よりリサイクルされた流体(P)>
「工程(4C)よりリサイクルされた流体(P)」とは、工程(3C)において得られる、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)のうち、第1の反応器にリサイクルされる一部の流体であり、この流体(P)はエチレンを含む。ここでいう「一部」とは、通常、流体(T)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。流体(P)の割合がこの範囲を下回ると、新たな原料として反応器に供給するエチレンの流量が増えるという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、メタンやエタンが反応器ならびにリサイクル流体中に蓄積してしまうという不都合が生じるので好ましくない。
第1の反応器にリサイクルされる流体(P)としては、メタンやエタンなどの反応に関与しない化合物が含まれていても良い。
<エチレン二量化の反応器(第1の反応器)>
反応器の形式は特に限定されず、液相の反応器でも良いし、気相の反応器でも良い。液相で反応を行う場合には、反応器出口流体(Q)から触媒を除去する工程が組み込まれる。一方、気相で固体触媒を用いる場合には、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。
<反応条件>
反応条件は反応形式や触媒によって大きく異なる。通常、液相で錯体触媒を用いる場合には反応温度は300℃以下、例えば20〜200℃、反応圧力は0.5MPa以上、例えば1.0〜5.0MPaが好ましく、気相で固体触媒を用いる場合には200℃以上、例えば300〜700℃、1MPa以下、例えば0.1〜0.5MPaが好ましい。液相反応の場合には反応に溶媒を用いることもできるが、生成したブテンを溶媒として用いても良い。溶媒としては、反応に不活性なものであれば特に限定されないが、パラフィン類が好ましい。溶媒の濃度としては全体の90重量%未満、例えば0〜50重量%が好ましい。溶媒の濃度が高すぎると反応速度が遅くなるため好ましくない。気相反応の場合には反応に希釈ガスを用いることもできる。希釈ガスとしては、反応に不活性なものであれば特に限定されないが、パラフィン類、芳香族類、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、および、それらの混合物が挙げられる。希釈ガスの濃度としては全体の90体積%未満、例えば0〜80体積%が好ましい。希釈ガスの濃度が高すぎると反応速度が遅くなるため好ましくない。なお、溶媒の濃度または希釈ガスの濃度はガスクロマトグラフィー等の一般的な分析手法により知ることができる。
<反応による原料の消費量>
エチレンの消費量としては、第1の反応器に供給されるエチレンの量に対して50%以上が好ましい。エチレンの消費量が低すぎると未反応エチレンのリサイクル流量が増えるため好ましくない。消費量を上げる手段としては、反応温度や反応圧力を上げる方法や触媒量を増加させる方法が挙げられる。
<炭素数4のオレフィンを含む流体(Q)>
「炭素数4のオレフィンを含む流体(Q)」とは、第1の反応器出口流体を意味する。
第1の反応器の出口流体(Q)には通常、目的物であるブテンの他に未反応のエチレンや副生物のヘキセンなどが含まれる。液相反応の場合には触媒を分離する工程が必要となるが、それ以外の分離は行わずにエチレン、ブテンおよびヘキセンを含む流体を工程(2C)の第2の反応器に導入することができる。ただし、未反応のエチレンを蒸留等の一般的な分離方法で分離し、分離したエチレンを第1の反応器にリサイクルすると共に、残りの流体を工程(2C)の第2の反応器に導入しても良い。また、流体(Q)の一部、例えば0〜80%は工程(2C)における第2の反応器に供給せずに、本発明のプロセス(以下、「本プロセス」と称する場合がある)外に抜き出しても良い。この場合には抜き出した流体からブテンを精製分離して他の目的のために用いるのが好ましい。他の目的の具体例としては、酸化脱水素反応または脱水素反応によるブタジエン製造用の原料が挙げられる。
なお、「本プロセス外に抜き出す」とは、本プロセスの第1の反応器と第2の反応器のいずれにもリサイクルしないことを意味する。
[工程(2C)の説明]
工程(2C)では、工程(1C)からの流体(Q)と、工程(5C)よりリサイクルされた流体(R)と、メタノールおよび/またはジメチルエーテルとを第2の反応器に供給して、プロピレン製造触媒と接触させることにより、プロピレン、エチレン、その他オレフィン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有する流体(S)を得る。
<プロピレン製造触媒>
本発明でいう「プロピレン製造触媒」(以下、工程(2C)において単に「触媒」という場合がある)とは、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルからプロピレンを製造することが可能な触媒をいう。
[触媒]
この反応に用いられる触媒としては、ブレンステッド酸点を有する固体状のものであれば特に限定されず、従来公知の触媒が用いられ、例えば、カオリン等の粘土鉱物;粘土鉱物等の担体に硫酸、燐酸等の酸を含浸・担持させたもの;酸性型イオン交換樹脂;ゼオライト類;燐酸アルミニウム類;Al−MCM41等のメソポーラスシリカアルミナ等の固体酸触媒が挙げられる。
これらの固体酸触媒のうちでも、分子篩効果を有するものが好ましく、また、酸強度があまり高くないものが好ましい。
前記固体酸触媒のうち、分子篩効果を有するゼオライト類や燐酸アルミニウム類の構造としては、International Zeolite Association(IZA)が規定するコードで表すと、例えば、AEI、AET、AEL、AFI、AFO、AFS、AST、ATN、BEA、CAN、CHA、EMT、ERI、EUO、FAU、FER、LEV、LTL、MAZ、MEL、MFI、MOR、MTT、MTW、MWW、OFF、PAU、RHO、STT、TON等が挙げられる。その中でも触媒のフレームワーク密度が18.0T/nm以下である触媒が好ましいく、このようなものとしては、好ましくは、MFI、MEL、MOR、MWW、FAU、BEA、CHAで、より好ましくは、MFI、MEL、MOR、MWW、CHA、特に好ましくはMFI、MEL、MWW、CHAが挙げられる。
ここで、フレームワーク密度(単位:T/nm)とは、ゼオライトの単位体積(1nm)当たりに存在するT原子(ゼオライトの骨格を構成する原子のうち、酸素以外の原子)の個数を意味し、この値はゼオライトの構造により決まるものである。
更に、該固体酸触媒としてより好ましくは、細孔径が0.3〜0.9nmのミクロ細孔を有し、BET比表面積が200〜700m/g、細孔容積が0.1〜0.5g/mlである結晶性アルミノシリケート類、メタロシリケート類又は結晶性燐酸アルミニウム類等が好ましい。なお、ここで言う細孔径とは、International Zeolite Association(IZA)が定める結晶学的なチャネル直径(Crystallographic free diameter of the channels)を示し、細孔(チャネル)の形状が真円形の場合は、その直径をさし、細孔の形状が楕円形の場合は、短径をさす。
また、アルミノシリケートの中では、SiO/Alのモル比が10以上のものが好ましい。SiO/Alモル比が低すぎると触媒の耐久性が低下するため好ましくない。SiO/Alのモル比の上限は通常10000以下である。SiO/Alのモル比がこれより高すぎると触媒活性が低下してしまうため好ましくない。上記モル比は、蛍光X線や化学分析法などの常法により求めることができる。
触媒中のアルミニウム含量は触媒調製の際の原料仕込み量でコントロールすることができ、また、調製後にスチーミング等によりAlを減らすこともできる。また、Alの一部をホウ素やガリウム等の他の元素に置き換えても良く、特にホウ素で置換することが好ましい。
これらの触媒は1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
本発明においては、反応に不活性な物質やバインダーを用いて、造粒・成型して、或いはこれらを混合して反応に用いても良い。該反応に不活性な物質やバインダーとしては、アルミナまたはアルミナゾル、シリカ、シリカゲル、石英、およびそれらの混合物等が挙げられる。
なお、上記した触媒組成は、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含まない触媒活性成分のみの組成である。しかして、本発明に係る触媒とは、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含む場合は、前述の触媒活性成分とこれらの反応に不活性な物質やバインダー等とを合わせて触媒と称し、これらの反応に不活性な物質やバインダー等を含まない場合は、触媒活性成分のみで触媒と称す。
本発明で用いる触媒活性成分の粒径は合成時の条件により異なるが、通常、平均粒径として0.01μm〜500μmである。触媒の粒径が大き過ぎると、触媒活性を示す表面積が小さくなり、小さ過ぎると取り扱い性が劣るものとなり、いずれの場合も好ましくない。この平均粒径は、SEM観察等により求めることができる。
本発明で用いる触媒の調製方法は特に限定されず、一般的に水熱合成と呼ばれる公知の方法により調製することが可能である。また、水熱合成後にイオン交換、脱アルミニウム処理、含浸や担持などの修飾により組成を変えることも可能である。
本発明で使用する触媒は、反応に供する際に、上記物性ないし組成を有しているものであれば良く、いずれの方法によって調製されたものであっても良い。
触媒としては、好ましくは前述の「エチレン二量化触媒」としてチタンまたはニッケルを含有する錯体触媒を用い、かつ、「プロピレン製造触媒」としてMFI構造またはMWW構造を有する触媒を用いる組み合わせを挙げることができる。
<反応原料>
反応原料として用いるメタノールおよび/またはジメチルエーテルの製造由来は特に限定されない。例えば、石炭および天然ガス、ならびに製鉄業における副生物由来の水素/COの混合ガスの水素化反応により得られるもの、植物由来のアルコール類の改質反応により得られるもの、発酵法により得られるもの、再循環プラスチックや都市廃棄物等の有機物質から得られるもの等が挙げられる。このとき各製造方法に起因するメタノールおよびジメチルエーテル以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したものを用いても良い。
<工程(5C)よりリサイクルされた流体(R)>
「工程(5C)よりリサイクルされた流体(R)」とは、工程(5C)により得られるリサイクル流体(R)をいい、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体である。この流体(R)は、工程(3C)における炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(U)のうち、第2の反応器にリサイクルされる一部の流体である。ここでいう「一部」とは、通常、流体(U)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。流体(R)の割合がこの範囲を下回ると、第2の反応器に供給される炭素数4以上のオレフィン流量が減り、プロピレン収率が低下するという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、パラフィンが反応器ならびにリサイクル流体中に蓄積してしまうという不都合が生じるので好ましくない。
第2の反応器にリサイクルされる流体(R)としては、オレフィンを含有していれば特に限定されず、パラフィンや芳香族化合物が含まれていても良い。
<プロピレン製造用の反応器(第2の反応器)>
第2の反応器で行われるのは気相反応である。この気相反応器の形態に特に制限はないが、通常、連続式の固定床反応器や流動床反応器から選ばれる。好ましくは固定床反応器である。なお、固定床反応器に前述の触媒を充填する場合には、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
<反応条件>
反応温度の下限としては、反応器入口のガス温度として通常約300℃以上、好ましくは400℃以上であり、反応温度の上限としては、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、更にプロピレンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎるとプロピレンの収率が著しく低下する。
反応圧力の上限は通常2MPa(絶対圧、以下同様)以下好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、反応圧力の下限は特に制限されないが、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力が高すぎるとパラフィン類や芳香族化合物等の好ましくない副生成物の生成量が増え、プロピレンの収率が低下する傾向がある。反応圧力が低すぎると反応速度が遅くなる傾向がある。
第2の反応器に供給する炭素数4以上のオレフィンの量は、反応器に供給するメタノールのモル数とジメチルエーテルのモル数の2倍との合計に対して、モル比で0.2以上、好ましくは0.5以上であって、10以下、好ましくは5以下である。
即ち、炭素数4以上のオレフィンの供給モル量をMc4、メタノールの供給モル量をMm、ジメチルエーテルの供給モル量をMdmとした場合、Mc4は(Mm+2Mdm)の0.2〜10倍、好ましくは0.5〜5倍である。この供給濃度比が低すぎても高すぎても反応が遅くなり好ましくなく、特に、この供給濃度比が低すぎると、原料のオレフィンの消費量が減少するため好ましくない。
ここで供給濃度比は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
なお、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルとを反応器に供給する際には、これらを別々に供給しても、予め一部または全部を混合した後に供給してもよい。
また、第2の反応器に供給する全供給成分中の、炭素数4以上のオレフィンとメタノールとジメチルエーテルの合計濃度(基質濃度)は、全体の20体積%以上80体積%以下、好ましくは全体の30体積%以上70体積%以下である。
ここで基質濃度は、反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
この基質濃度が高すぎると芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著になりプロピレンの選択率が低下する傾向がある。逆に、この基質濃度が低すぎると、反応速度が遅くなるため多量の触媒が必要となり、さらに生成物の精製コストや反応設備の建設費も大きくなり経済的でない。
従って、このような基質濃度となるように、下に記載する希釈ガスで反応基質を希釈する。基質濃度を制御する方法としては、プロセスから抜き出される流体の流量を制御する方法が挙げられる。プロセスから抜き出される流体の流量を変えることにより、反応器にリサイクルされる希釈ガスの流量が変化し、基質濃度を変えることが可能である。
第2の反応器にリサイクルされる流体(R)中および/または後述のプロセス外から供給される炭素数4以上のオレフィン原料流体中にブタジエン化合物を含有している場合があるが、第2の反応器に供給する全供給成分中のブタジエンの濃度としては、2.0体積%以下が好ましい。
ここでブタジエン濃度は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
このブタジエン濃度が高いと触媒のコーキングによる劣化が速くなる。ブタジエン濃度を低下させる方法としては、該流体を水素添加触媒とさせてオレフィン類に変換する部分水添法が挙げられる。
また、第2の反応器にリサイクルされる流体(R)中に芳香族化合物を含有している場合があるが、第2の反応器に供給される全てのガスに含まれる芳香族化合物の合計量が、第2の反応器に供給される全てのガスに含まれる炭素数4以上のオレフィンの合計量に対してモル比で0.05未満であることが好ましい。ここで上記の芳香族化合物の合計量と炭素数4以上のオレフィンの合計量の比は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量することにより知ることができる。
この芳香族化合物濃度が高いと、反応器内で芳香族化合物とメタノールおよび/またはジメチルエーテルとが反応し、必要以上にメタノールおよび/またはジメチルエーテルを消費してしまうため好ましくない。芳香族化合物濃度を低下させる方法としては、蒸留による分離法が挙げられる。
第2の反応器内には、エチレン、炭素数4以上のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの他に、パラフィン類、芳香族類、水蒸気、二酸化炭素、一酸化炭素、窒素、アルゴン、ヘリウム、および、それらの混合物といった、反応に不活性な気体を存在させることができる。なお、これらの希釈ガスのうち、パラフィン類や芳香族類は、反応条件によっては若干反応することがあるが、反応量が少ないことから、希釈ガスとして定義する。
このような希釈ガスとしては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良いし、別途調製した希釈ガスを反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈ガスは第2の反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に第2の反応器に供給しても良い。
空間速度は、0.1Hr−1から500Hr−1の間が好ましく、1.0Hr−1から100Hr−1の間が更に好ましい。空間速度が高すぎると原料のオレフィンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルの転化率が低く、また、十分なプロピレン選択率が得られない。また、空間速度が低すぎると、一定の生産量を得るのに必要な触媒量が多くなり反応器が大きくなりすぎると共に、芳香族化合物やパラフィン等の好ましくない副生成物が生成し、プロピレン選択率が低下するため好ましくない。なお、ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料である炭素数4以上のオレフィンの流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。また、流量は炭素数4以上のオレフィンの流量(重量/時間)である。
<反応による原料の消費量>
第2の反応器に供給するメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計に対して、第2の反応器出口のメタノールのモル流量とジメチルエーテルのモル流量の2倍との合計は1%未満が好ましい。さらに好ましくは0.1%未満である。この消費量が少なく、第2の反応器出口のメタノールやジメチルエーテルの量が増えすぎると、製品オレフィンの精製が困難になる。消費量を多くする方法としては、反応温度を上げたり、空間速度を下げたりする方法が挙げられる。
また、第2の反応器に供給する炭素数4以上のオレフィンのモル流量の合計に対して、第2の反応器出口の炭素数4以上のオレフィンのモル流量の合計は20%以上70%未満が好ましい。好ましくは25%以上60%未満である。消費量が少なすぎると、未反応のオレフィンが多くなり、第2の反応器にリサイクルする流体の流量が大きくなりすぎて好ましくない。消費量が多すぎると、パラフィンや芳香族化合物など望ましくない化合物が副生し、プロピレン収率が低下するため好ましくない。消費量を調整する方法としては、反応温度や空間速度などを適切に設定する方法が挙げられる。
ここで第2の反応器に供給するメタノールとジメチルエーテルならびに炭素数4以上のオレフィンの流量は、第2の反応器に供給するそれぞれの流体または混合した後の流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な分析手法で定量し、それぞれの流体の流量を測定することにより知ることができ、第2の反応器出口のメタノールとジメチルエーテルならびに炭素数4以上のオレフィンの流量は、第2の反応器出口流体の組成をガスクロマトグラフィーなどの一般的な手法で定量し、第2の反応器出口流体の流量を測定または計算することにより知ることができる。
<プロピレン、エチレン、その他オレフィン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(S)>
「プロピレン、エチレン、その他オレフィン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(S)」とは、第2の反応器の出口の流体を意味する。
第2の反応器の出口流体(S)としては、反応生成物であるプロピレン、未反応原料、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常5〜95重量%である。
未反応原料は、通常炭素数4以上のオレフィンである。反応条件によってはメタノールおよび/またはジメチルエーテルが含まれるが、メタノールおよび/またはジメチルエーテルが残らないような反応条件で反応を行うのが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になる。
副生成物としてはエチレン、炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。ここで反応器出口流体(S)に含まれるエチレンの量が同流体に含まれるプロピレンに対して重量比で2.0未満であることが好ましく、この割合は、より好ましくは1.5未満であり、さらに好ましくは1.0未満である。この範囲を超えると、本プロセス全体の設備ならびに用役設備が巨大化し、建設コストが増大するという不利益がある。また、そのような設備は用益コストも著しく増大するため好ましくない。逆にこの範囲に収めることができれば、本プロセス全体の設備費用ならびに用役費用を著しく削減することが可能となる。
[工程(3C)の説明]
工程(3C)では、工程(2C)からの流体(S)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(U)および水に富んだ流体に分離する。
工程(2C)で得られた流体(S)は冷却、圧縮および蒸留等の一般的な分離工程により、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(U)および水に富んだ流体に分離される。ここで、各流体は一つの流体とは限らず、複数の流体であっても良い。例えば、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)は、メタン、エチレン、エタンを含む一つの流体でも良いが、メタンに富んだ流体とエチレンとエタンに富んだ流体の二つの流体でも良い。
また、必要に応じてクエンチ、アルカリ洗浄、脱水等の処理を行うのが好ましい。反応器出口流体(S)に含酸素化合物が含まれる場合にはクエンチ工程により、含酸素化合物の少なくとも一部が除去される。反応器出口ガスに二酸化炭素などの酸性ガスが含まれる場合にはアルカリ洗浄により酸性ガスの少なくとも一部が除去される。水の分離は主に圧縮と冷却により凝縮することにより可能である。
残った水分はモレキュラーシーブ等の吸着剤で除去するのが好ましい。凝縮および/または吸着により除去した水は活性汚泥等の廃水処理工程に供しても良いが、プロセス水等に使用することもできる。本プロセスがスチームクラッキングプロセスの近くにある場合にはクラッカーのスチーム源として利用することが好ましい。また、工程(2C)の第2の反応器にリサイクルして希釈ガスとして用いても良い。
また、得られたプロピレンに富んだ流体はさらに蒸留等の精製工程により純度の高いプロピレンを得るのが好ましい。プロピレンの純度としては95%以上であり、99%以上が好ましい。さらに好ましくは99.9%以上である。
製造されたプロピレンは一般的に製造されるプロピレン誘導体すべての原料として使用でき、例えばアンモ酸化によりアクリロニトリルの製造に、選択酸化によりアクロレイン、アクリル酸およびアクリル酸エステルの製造に、オキソ反応によりノルマルブチルアルコール、2−エチルヘキサノール等のオキソアルコールの製造に、プロピレンの重合によりポリプロピレンの製造に、プロピレンの選択酸化によりプロピレンオキサイドおよびプロピレングリコール等の製造に適用することができる。また、ワッカー反応によりアセトンが製造でき、更にアセトンよりメチルイソブチルケトンを製造することができる。アセトンからはまたアセトンシアンヒドリンが製造でき、これは最終的にメチルメタクリレートに転換される。またプロピレン水和によりイソプロピルアルコールも製造できる。また、ベンゼンをアルキル化することにより製造したキュメンを原料に、フェノール,ビスフェノールA,ポリカーボネート樹脂を製造することができる。
[工程(4C)の説明]
工程(4C)では、工程(3C)からの流体(T)の一部の流体(P)を第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す。
この時、流体(T)を分離工程に導入することなく、リサイクル流体(P)と抜き出される流体とに分割しても良いが、流体(T)を分離工程に導入し、流体(T)よりもエチレン濃度を高めた流体を第1の反応器にリサイクルしても良い。
プロセス外に抜き出された流体は、エチレンなどの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
なお、ここでいう「一部」とは、前述の如く、通常、流体(T)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。この範囲を下回ると、新たな原料として第1の反応器に供給するエチレンの流量が増えるという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、メタンやエタンが第1の反応器ならびにリサイクル流体中に蓄積してしまうという不都合が生じるので好ましくない。
[工程(5C)の説明]
工程(5C)では、工程(3C)からの流体(U)の一部の流体(R)を第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す。
この時、流体(U)を分離工程に導入することなく、リサイクル流体(R)と抜き出される流体とに分割しても良いが、流体(U)を分離工程に導入し、流体(U)よりもブテン濃度を高めた流体を第2の反応器にリサイクルしても良い。抜き出された流体は、ブテンや芳香族化合物などの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
なお、ここでいう「一部」とは、前述の如く、通常、流体(U)の流量のうち10〜99重量%の範囲、好ましくは50〜95重量%の範囲である。この範囲を下回ると、第2の反応器に供給される炭素数4以上のオレフィン流量が減り、プロピレン収率が低下するという不都合が生じ、逆にこの範囲を上回ると、パラフィンが第2の反応器ならびにリサイクル流体中に蓄積してしまうという不都合が生じるので好ましくない。
[反応原料の導入]
第3の態様においては、炭素数4以上のオレフィンを含有する流体を、新たに、プロピレン製造のための原料の一部として、前述の工程(2C)における第2の反応器に供給しても良い。
反応の原料として用いる炭素数4以上のオレフィンとしては、特に限定されるものではない。例えば、石油供給原料から接触分解法またはスチームクラッキング等により製造されるもの(BB留分、C4ラフィネート−1、C4ラフィネート−2等)、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、炭素数4以上のパラフィンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、アルコールの脱水反応によって得られるもの、炭素数4以上のジエン化合物の水素化反応により得られるもの等の、公知の各種方法により得られる、炭素数4以上、特に炭素数4〜10のオレフィンを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因する炭素数4以上のオレフィン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したオレフィンを用いても良い。
この中でも、パラフィン類を含んだオレフィン原料を使用する場合、パラフィンが希釈ガスの役割を果たすため反応温度の制御が容易になり、さらにパラフィン含有の原料は安価に入手可能であることが多いため好ましい。さらに好ましくはノルマルブタンおよび/またはイソブタンを含有したオレフィン原料である。これらの好ましい原料としては上記のBB留分、C4ラフィネート−1やC4ラフィネート−2が挙げられる。尚、BB留分についてはブタジエンを多く含むため、水素添加触媒に接触させてブタジエン濃度を低下させた流体を原料とするのが好ましい。
このプロセス外からの炭素数4以上のオレフィンを含有する流体の供給量については特に制限はない。
[プロセスの実施形態]
以下に、図面を参照して第3の態様の実施形態について説明する。
図3は本発明プロセスの第3の態様を示す。
図3において、13は第1の反応器、23は第2の反応器、33は分離精製系である。301〜315はそれぞれ配管を示す。
エチレン原料、分離精製系33からの炭素数2以下の炭化水素に富んだ炭化水素流体(P)はそれぞれ配管301、配管302および配管303を経て第1の反応器13に供給される。配管301および/または配管302を経て反応器13に供給される流体には炭素数2以下のパラフィン類、例えばメタンやエタンなどが含まれていても良い。なお、配管303を経て導入される原料流体は配管301および配管302を経て供給される流体の合計を意味しているが、これらは必ずしも第1の反応器13に入る前に合流する必要は無く、別々に反応器13に供給されても良い。第1の反応器13に供給された原料は反応器13内でエチレン二量化触媒と接触して反応し、炭素数4のオレフィンを含む反応器出口流体(Q)が得られる。
なお、図3においては、第1の反応器13は液相の反応器として示されているが、気相の反応器でも良い。液相の反応器の場合は反応器の後に触媒分離操作が行われる。また、図3においては、流体(Q)の全てが配管304および配管308を経て第2の反応器23に供給されているが、必要に応じて一部を抜き出して他の目的のために使用しても良い。
反応器出口流体(Q)、分離精製系33からの炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(R)、メタノールおよび/またはジメチルエーテルはそれぞれ配管304、配管306、配管307および配管308を経て第2の反応器23に供給される。なお、炭素数4以上のオレフィン原料を配管305および配管308を通して第2の反応器23に供給しても良い。配管306および/または配管305を経て第2の反応器23に供給される流体には炭素数4以上のパラフィン類、例えばノルマルブタンやイソブタンなどが含まれていても良い。また、配管308を経て第2の反応器23に供給される原料流体中には、ブタジエン、芳香族化合物や水が含まれていても良い。なお、配管308を経て導入される原料流体は、配管304、配管306、配管307、および必要に応じて配管305を経て供給される流体の合計を意味しているが、これらは必ずしも第2の反応器23に入る前に合流する必要は無く、別々に第2の反応器23に供給されても良い。第2の反応器23に供給された原料は第2の反応器23内でプロピレン製造触媒と接触して反応し、プロピレン、エチレン、その他オレフィン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した反応器出口流体(ガス)(S)が得られる。
第2の反応器23の出口ガス流体(S)は冷却、圧縮および蒸留等の一般的な分離精製系33に送給され、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)、プロピレンに富んだ流体、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(U)および水に富んだ流体に分離され、それぞれ配管310、配管311、配管312および配管313を経て取り出される。ここで、各流体は一つ以上の流体を示す。例えば炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)の場合は、メタン、エチレン、エタンを含む一つの流体でも良いが、メタンに富んだ流体とエチレンとエタンに富んだ流体の二つの流体でも良い。
炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(T)の一部(P)は配管302を経て第1の反応器13にリサイクルされ、残りの流体は配管314を経て該プロセスから抜き出される。この時、流体(T)を蒸留等の分離精製により、流体(T)よりもエチレン濃度を高めた流体を第1の反応器13にリサイクルしても良い。配管314を経て抜き出された流体は、エチレンなどの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
配管311を経て得られたプロピレンに富んだ流体は、蒸留等の分離精製により純度の高いプロピレンを得るのが好ましい。また、配管313を経て得られた水は活性汚泥等の廃水処理工程に供しても良いが、プロセス水等に使用することもできる。本プロセスがスチームクラッキングプロセスの近くにある場合にはクラッカーのスチーム源として利用することが好ましい。また、第2の反応器23にリサイクルして希釈ガスとして用いても良い。
一方、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(U)の一部(R)は配管306を経て第2の反応器にリサイクルされ、残りの流体は配管315を経て該プロセスから抜き出される。この時、流体(U)を蒸留等の分離精製により、流体(U)よりもブテン濃度を高めた流体を第2の反応器23にリサイクルしても良い。配管315を経て抜き出された流体は、ブテンや芳香族化合物などの有効成分を回収するために精製しても良いし、燃料として使用しても良い。またスチームクラッキングの原料として利用しても良い。
以下に実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[触媒調製]
以下の実施例、比較例で用いた触媒は、次のようにして調製した。
<触媒調製例>
臭化テトラ−n−プロピルアンモニウム(TPABr)26.6gおよび水酸化ナトリウム4.8gを順次、水280gに溶解し、次にコロイダルシリカ(SiO=40重量%、Al<0.1重量%)75gと水35gとの混合液をゆっくり加え、十分攪拌して水性ゲルを得た。次に、このゲルを1000mlのオートクレーブに仕込み、自圧下、300rpmで攪拌しながら170℃で72時間、水熱合成を行った。生成物は加圧濾過により固体成分を分離し、十分水洗を行った後に100℃で24時間乾燥した。乾燥後の触媒は、空気流通下550℃で6時間焼成を行い、Na型のアルミノシリケートを得た。
このNa型のアルミノシリケート2.0gを1Mの硝酸アンモニウム水溶液40mlに懸濁させ、80℃で2時間攪拌した。処理後の液は吸引濾過により固体成分を分離し、十分水洗を行った後、再度1Mの硝酸アンモニウム水溶液40mlに懸濁させ、80℃で2時間攪拌した。処理後の液は吸引濾過により固体成分を分離し、十分水洗を行った後、100℃で24時間乾燥した。乾燥後の触媒は、空気流通下500℃で4時間焼成を行い、H型のアルミノシリケートを得た。
この触媒は、XRD(X線回折)によりゼオライトの構造がMFI型であることを確認した。触媒の組成を化学分析により定量したところ、SiO/Al=1100(モル比)であった。
[プロピレンの製造]
以下に上記触媒を用いたプロピレンの製造実施例及び比較例を示す。
<実施例1>
図2におけるエチレン原料(図の配管201)の流量(重量/時間)を100、配管202および配管206から供給するメタノール原料の流量(重量/時間)を各225(合計250)とした場合の第1の反応器(12)入口(配管204)の模擬ガス(エチレン、メタノールを含む)を調製すると共に、第2の反応器(22)に新たに入る流体(配管206と配管207を合わせた流体)の模擬ガス(エチレン、メタノールおよびブテンを含む)を調製し、図2のように2つの反応器を直列に配置してプロピレンの製造を行った。2つの反応器共に前記触媒を充填し、常圧の条件で行ったが、第1の反応器(12)の反応器出口温度は450℃、第2の反応器(22)の反応器出口温度は550℃で行った。第2の反応器(22)の出口ガスの分離工程(32)は、アスペンプラスシミュレーターを用い、リサイクルガスを含む各流体の流量を求めた。得られたリサイクルガス(配管203および207)の流量を基に、前記第1の反応器入口および第2の反応器(22)に新たに入る流体(配管206と配管207を合わせた流体)のガス組成を計算し、再調製した模擬ガスを用いて再度反応を行った。これらの操作を10回程度繰り返すことにより、最終的に図2のプロセスにおける各流体の流量を実験とシミュレーションにより求めた。
その結果、第1の反応器(12)入口(配管204)のエチレン流量(重量/時間)は244、第1の反応器(12)出口(配管205)のエチレン流量(重量/時間)は144、第2の反応器(22)にリサイクルされる流体(配管207)の炭素数4以上のオレフィン流量(重量/時間)は381となった。第1の反応器(12)におけるエチレン転化率は41%であった。
また、第2の反応器(22)出口(配管210:流体(I)におけるプロピレン流量(重量/時間)は185、エチレン流量(重量/時間)は156、炭素数4以上のオレフィンは385となった。流体(I)に含まれるエチレンの量はプロピレンの量に対して重量比で0.84であった。
<実施例2>
図3におけるエチレン原料(図の配管301)の流量(重量/時間)を100、メタノール原料(図の配管307)の流量(重量/時間)を250とした場合の第2の反応器(23)入口(配管308)の模擬ガス(エチレン、メタノールおよびブテンを含む)を調製し、前記触媒を用いて第2の反応器(23)出口温度550℃、常圧の条件でプロピレンの製造を行った。第2の反応器(23)の出口ガスの分離工程(33)は、アスペンプラスシミュレーターを用い、リサイクルガスを含む各流体の流量を求めた。また、エチレン二量化反応を行う第1の反応器(13)におけるエチレン転化率は90%と仮定した。得られたリサイクルガス(配管302および306)の流量を基に、前記第2の反応器入口のガス組成を計算し、再調製した模擬ガスを用いて再度反応を行った。これらの操作を10回程度繰り返すことにより、最終的に図3のプロセスにおける各流体の流量を実験とシミュレーションにより求めた。
その結果、第2の反応器(23)入口のエチレン流量(重量/時間)は18、炭素数4以上のオレフィン流量(重量/時間)は556となり、第2の反応器(23)出口(配管309:流体(S)におけるプロピレン流量(重量/時間)は189、エチレン流量(重量/時間)は83、炭素数4以上のオレフィンは404となった。流体(S)に含まれるエチレンの量はプロピレンの量に対して重量比で0.44であった。
<比較例1>
比較例に係るプロセスである図4の態様を採用した。図4において、70は反応器、80は分離精製系を示す。401〜412はそれぞれ配管を示す。
図4におけるエチレン原料(図の配管401)の流量(重量/時間)を100、メタノール原料(図の配管402)の流量(重量/時間)を250とした場合の反応器(70)入口(配管404)の模擬ガス(エチレン、メタノールおよびブテンを含む)を調製し、前記触媒を用いて反応器(70)出口温度550℃、常圧の条件でプロピレンの製造を行った。反応器(70)の出口ガスの分離工程(80)は、アスペンプラスシミュレーターを用い、リサイクルガスを含む各流体の流量を求めた。得られたリサイクルガス(配管403および411)の流量を基に、前記反応器(70)入口のガス組成を計算し、再調製した模擬ガスを用いて再度反応を行った。これらの操作を10回程度繰り返すことにより、最終的に図4のプロセスにおける各流体の流量を実験とシミュレーションにより求めた。
その結果、反応器(70)入口のエチレン流量(重量/時間)は589、炭素数4以上のオレフィン流量(重量/時間)は321となり、反応器(70)出口(配管405)におけるプロピレン流量(重量/時間)は171、エチレン流量(重量/時間)は504、炭素数4以上のオレフィンは328となった。反応器(70)出口流体に含まれるエチレンの量はプロピレンの量に対して重量比で2.95であり、実施例1および実施例2と比較して大きな値となった。
本発明のプロピレンの製造方法の実施形態の一例を示す系統図である。 本発明のプロピレンの製造方法の実施形態の他の例を示す系統図である。 本発明のプロピレンの製造方法の実施形態の他の例を示す系統図である。 比較例のプロピレンの製造方法を示す系統図である。
符号の説明
10 第1の反応器
20 第2の反応器
30 分離精製系
12 第1の反応器
22 第2の反応器
32 分離精製系
13 第1の反応器
23 第2の反応器
33 分離精製系

Claims (6)

  1. エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料としてプロピレンを製造する方法において、
    以下の工程(1A),(2A),(3A),(4A)および(5A)を含むプロセスよりなり、かつ、下記第1の反応器出口の温度が下記第2の反応器出口の温度よりも50℃以上低いことを特徴とするプロピレンの製造方法。
    工程(1A):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4A)よりリサイクルされた流体(F)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
    工程(2A):原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5A)よりリサイクルされた流体(G)とを、第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(B)を得る工程
    工程(3A):前記流体(A)と前記流体(B)を混合した流体(C)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(D)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(E)と、水に富んだ流体とに分離する工程
    工程(4A):前記流体(D)の一部の流体(F)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
    工程(5A):前記流体(E)の一部の流体(G)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
  2. 請求項において、前記流体(C)に含まれるエチレンの量が同流体に含まれるプロピレンに対して重量比で2.0未満であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
  3. エチレンとメタノールおよび/またはジメチルエーテルを原料としてプロピレンを製造する方法において、
    以下の工程(1B),(2B),(3B),(4B)および(5B)を含むプロセスよりなり、かつ、下記第1の反応器出口の温度が下記第2の反応器出口の温度よりも50℃以上低いことを特徴とするプロピレンの製造方法。
    工程(1B):原料としてのエチレンと、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(4B)からリサイクルされた流体(L)とを第1の反応器に供給し、第1の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体を含む流体(A)を得る工程
    工程(2B):前記流体(A)と、原料としてのメタノールおよび/またはジメチルエーテルと、工程(5B)からリサイクルされた流体(M)とを第2の反応器に供給し、第2の触媒と接触させることにより、プロピレン、炭素数4以上のオレフィン、エチレン、パラフィン、芳香族化合物および水を含有した流体(I)を得る工程
    工程(3B):前記流体(I)を、炭素数2以下の炭化水素に富んだ流体(J)と、プロピレンに富んだ流体と、炭素数4以上の炭化水素に富んだ流体(K)と、水に富んだ流体とに分離する工程
    工程(4B):前記流体(J)の一部の流体(L)を前記第1の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
    工程(5B):前記流体(K)の一部の流体(M)を前記第2の反応器にリサイクルし、残りの流体を該プロセスから抜き出す工程
  4. 請求項において、前記流体(I)に含まれるエチレンの量が同流体に含まれるプロピレンに対して重量比で2.0未満であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
  5. 請求項1ないしのいずれか1項において、前記第2の反応器に、炭素数4以上のオレフィンを含有する流体を該プロセス外から供給することを特徴とするプロピレンの製造方法。
  6. 請求項1ないしのいずれか1項において、下記式で算出される前記第1の反応器におけるエチレンの転化率が30%以上であることを特徴とするプロピレンの製造方法。
    エチレン転化率(%)=
    {(第1の反応器入口のエチレン流量−第1の反応器出口のエチレン流量)
    /第1の反応器入口のエチレン流量}×100
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