JP5135839B2 - プロピレンの製造方法 - Google Patents
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Description
本発明はまた、製造されたプロピレンを用いてポリプロピレンを製造する方法に関する。
<触媒活性成分>
まず、本発明で用いる触媒について説明する。
本発明で用いる触媒は、細孔径が0.5nm未満のアルミノシリケートを触媒活性成分とするものである。ここで言う細孔径とは、International Zeolite Association(IZA)が定める結晶学的なチャネル直径(Crystallographic free diameter of the channels)を示し、ATLAS OF ZEOLITE FRAMEWORKTYPES FIFTH RIVISED EDITION 2001(ELSEVIER)に記載されている。しかして、細孔径が0.5nm未満とは、細孔(チャネル)の形状が真円形の場合は、その直径が0.5nm未満であることをさすが、細孔の形状が楕円形の場合は、短径が0.5nm未満であることを意味する。
本発明で用いる触媒の調製方法は特に限定されず、一般的に水熱合成と呼ばれる公知の方法により調製することが可能である。また、水熱合成後にイオン交換、脱アルミニウム処理、含浸や担持などの修飾により組成を変えることも可能である。
本発明で使用する触媒は、反応に供する際に、上記物性、更には組成を有しているものであれば良く、いずれの方法によって調製されたものであっても良い。
次に、本発明で反応原料とするエタノール、エチレン等について説明する。
反応の原料に用いるエタノールとしては、特に限定されるものではない。例えば、エチレンの水和反応により製造されるもの、合成ガスから製造されるもの、植物由来の多糖類を原料として発酵により製造されるもの等の、公知の各種方法により得られるものを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因する化合物(特に水)が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したエタノールを用いても良い。
反応の原料に用いるエチレンとしては、特に限定されるものではない。例えば、石油供給原料から接触分解法または蒸気分解法等により製造されるもの、石炭のガス化により得られる水素/CO混合ガスを原料としてFT(フィッシャートロプシュ)合成を行うことにより得られるもの、エタンの脱水素法または酸化脱水素法により得られるもの、プロピレンのメタセシス反応およびホモロゲーション反応により得られるもの、MTO反応によって得られるもの、エタノールの脱水反応によって得られるもの等の公知に各種方法により得られるものを任意に用いることができ、このとき各製造方法に起因するエチレン以外の化合物が任意に混合した状態のものをそのまま用いても良いし、精製したエチレンを用いても良い。
また、本発明の方法によりプロピレンを製造する際、反応器出口ガス中に含まれるエチレンをリサイクルして用いても良い。
本発明において、反応原料中には、上記エタノールやエチレンの他に、炭素数4以上のオレフィンが存在していても良い。炭素数4以上のオレフィンとしては特に限定されないが、例えば、本発明の方法によりプロピレンを製造する際、反応器出口ガス中に含まれるオレフィンをリサイクルして用いても良い。炭素数4以上のオレフィンの一部はプロピレンに変換されるため、このように反応器出口ガス中のオレフィンをリサイクルすることにより、プロピレンの一貫収率を向上させることができる。
また、エタノール以外の含酸素化合物が存在しても良い。エタノール以外の含酸素化合物としては、例えばメタノールやジメチルエーテルが挙げられる。
以下に、前述の触媒および反応原料を用いる本発明のプロピレン製造反応の操作・条件について説明する。
(反応器)
本発明において、用いる反応器の形態に特に制限はないが、通常連続式の固定床反応器や流動床反応器が選ばれる。好ましくは流動床反応器である。
なお、流動床反応器に前述の触媒を充填する際、触媒層の温度分布を小さく抑えるために、石英砂、アルミナ、シリカ、シリカ−アルミナ等の反応に不活性な粒状物を、触媒と混合して充填しても良い。この場合、石英砂等の反応に不活性な粒状物の使用量は特に制限はない。なお、この粒状物は、触媒との均一混合性の面から、触媒と同程度の粒径であることが好ましい。
ここで、触媒の再生器としては、反応器から導入された触媒を、酸素を含有した窒素ガスや水蒸気などで処理することにより再生するものが挙げられる。
反応器に供給する全供給成分中のエタノールおよび/またはエチレンの濃度(即ち、基質濃度)に関して特に制限はないが、エタノールとエチレンの和は全供給成分中、90モル%以下が好ましい。さらに好ましくは5モル%以上70モル%以下である。この基質濃度が高すぎると芳香族化合物やパラフィン類の生成が顕著になり、プロピレンの収率が低下する傾向がある。基質濃度が低すぎると、反応速度が遅くなるため、多量の触媒が必要となり、反応器が大きくなりすぎる傾向がある。
従って、このような基質濃度となるように、必要に応じて以下に記載する希釈剤でエタノールおよび/またはエチレンを希釈することが好ましい。
反応器内には、エタノールおよび/またはエチレンの他に、ヘリウム、アルゴン、窒素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、水、パラフィン類、メタン等の炭化水素類、芳香族化合物類、および、それらの混合物など、反応に不活性な気体を存在させることができるが、この中でも水(水蒸気)が共存しているのが好ましい。
このような希釈剤としては、反応原料に含まれている不純物をそのまま使用しても良いし、別途調製した希釈剤を反応原料と混合して用いても良い。
また、希釈剤は反応器に入れる前に反応原料と混合しても良いし、反応原料とは別に反応器に供給しても良い。
(空間速度)
ここで言う空間速度とは、触媒(触媒活性成分)の重量当たりの反応原料であるエタノールおよび/またはエチレンの流量であり、ここで触媒の重量とは触媒の造粒・成型に使用する不活性成分やバインダーを含まない触媒活性成分の重量である。また、流量はエタノールおよび/またはエチレンの合計(即ち、エタノールとエチレンを用いる場合はその合計)の流量(重量/時間)である。
反応温度の下限としては、通常約200℃以上、好ましくは300℃以上であり、反応温度の上限としては、通常700℃以下、好ましくは600℃以下である。反応温度が低すぎると、反応速度が低く、未反応原料が多く残る傾向となり、さらにプロピレンの収率も低下する。一方で反応温度が高すぎるとプロピレンの収率が著しく低下する。
反応圧力の上限は通常2MPa(絶対圧、以下同様)以下好ましくは1MPa以下であり、より好ましくは0.7MPa以下である。また、反応圧力の下限は特に制限されないが、通常1kPa以上、好ましくは50kPa以上である。反応圧力が高すぎるとパラフィン類等の好ましくない副生成物の生成量が増え、プロピレンの収率が低下する傾向がある。反応圧力が低すぎると反応速度が遅くなる傾向がある。
本発明においては、エタノールおよび/またはエチレンの転化率(エタノールおよび/またはエチレンから、エタノールとエチレン以外の化合物への転化率)が20%以上80%以下となるような条件で反応を行うことが好ましい。より好ましくは、上限が70%以下である。
この転化率が20%未満では、未反応のエタノールまたはエチレンが多く、プロピレン収率が低いため好ましくない。一方、80%を超えると、パラフィン類等の望ましくない副生成物が増え、プロピレン収率が低下するため好ましくない。
流動床反応器で反応を行う場合には、触媒の反応器内の滞留時間と再生器内での滞留時間を調整することにより、好ましい転化率で運転することができる。
反応器出口ガス(反応器流出物)としては、反応生成物であるプロピレン、エチレン、副生成物および希釈剤を含む混合ガスが得られる。該混合ガス中のプロピレン濃度は通常1〜95重量%、好ましくは2〜80重量%である。
反応条件によってはこの混合ガス中にはエタノールが含まれるが、反応器出口ガス中にエタノールを全く含まないような反応条件で反応を行うことが好ましい。それにより、反応生成物と未反応原料との分離が容易になる。
この混合ガス中には通常エチレンが含まれるが、この混合ガス中のエチレンはその少なくとも一部を反応器にリサイクルして反応原料として再利用することが好ましい。
なお、副生成物としては炭素数が4以上のオレフィン類、パラフィン類、芳香族化合物および水が挙げられる。
反応器出口ガス物としての、反応生成物であるプロピレン、エチレン、副生成物および希釈剤を含む混合ガスは、公知の分離・精製設備に導入し、それぞれの成分に応じて回収、精製、リサイクル、排出の処理を行えば良い。
プロピレン以外の成分(オレフィン、パラフィン等)の一部または全て、特にエチレンは、上記分離・精製された後に反応原料と混合するか、または直接反応器に供給することでリサイクルするのが好ましい。また、副生成物のうち、反応に不活性な成分は希釈剤として再利用することができる。
本発明のポリプロピレンの製造方法は、上述の本発明のプロピレンの製造方法により製造されたプロピレンを用いてポリプロピレンを製造する方法である。
このポリプロピレンの製造方法は特に限定されず、常法に従ってプロピレン重合用触媒の存在下にプロピレンを重合反応させれば良い。
CHA構造を有するプロトン型のアルミノシリケートであり、SiO2/Al2O3=36(モル比)のものを触媒として用い、エタノールを原料として本発明に従って、プロピレンの製造を行った。このアルミノシリケートは細孔径が短径、長径共に0.38nmのものである。
表1に反応結果を示した。
エタノールの空間速度を0.6Hr−1、エタノール濃度を30体積%、窒素を70体積%に変更した以外は、実施例1と同様の触媒ならびに反応条件で反応を行った。反応開始後4.5時間後にガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。
表2に反応結果を示した。
原料のエタノールをエチレンに変更し、エチレン濃度を30体積%、窒素濃度を70体積%とし、エチレンの空間速度を0.4Hr−1に変更した以外は、実施例1と同様の触媒ならびに反応条件で反応を行った。反応開始後3.3時間後にガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。表2に反応結果を示した。
触媒として、LEV構造を有するプロトン型のアルミノシリケートであり、SiO2/Al2O3=30(モル比)、細孔として、短径0.36nm,長径0.48nmの細孔を有するものを使用した以外のものを触媒として用いた以外は、実施例3と同様の反応条件で反応を行った。反応開始後1.0時間後にガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。表2に反応結果を示した。
触媒として、MFI構造を有するプロトン型のアルミノシリケート(H−ZSM5)であり、SiO2/Al2O3=311(モル比)、細孔として、短径0.51nm,長径0.55nmの細孔と、短径0.53nm,長径0.56nmの細孔を有するものを使用した以外は実施例1と同様の反応条件で反応を行った。反応開始後2.0時間後にガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。表1に反応結果を示した。
表1より明らかなように、転化率34.4%、プロピレン選択率32.2%、プロピレン収率11.1%であり、十分な収率が得られなかった。
触媒として、米国特許4440871号明細書に従って合成したCHA構造を有するプロトン型のシリコアルミノホスフェート(SAPO−34)を使用した以外は実施例1と同様の反応条件で反応を行った。反応開始後3.3時間後にガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。表1に反応結果を示した。なお、このシリコアルミノホスフェートは短径、長径が共に0.38nmの細孔を有するものである。
表1より明らかなように、転化率5.7%、プロピレン選択率88.5%、プロピレン収率5.0%であり、十分な収率が得られなかった。
触媒として、FAU構造を有するプロトン型のアルミノシリケートであり、SiO2/Al2O3=7(モル比)、短径、長径共に0.74nmの細孔径を有するものを使用した以外は実施例3と同様の反応条件で反応を行った。反応開始後5.7時間後にガスクロマトグラフィーで生成物の分析を行った。表2に反応結果を示した。
表2より明らかなように、転化率14.6%、プロピレン選択率10.5%、プロピレン収率1.5%であり、十分な収率が得られなかった。
Claims (7)
- エタノールおよび/またはエチレンを、反応器中で触媒と接触させてプロピレンを製造する方法において、前記触媒が、0.5nm未満、かつ8員環または9員環の細孔径を有するアルミノシリケートを触媒活性成分として含有することを特徴とするプロピレンの製造方法。
- アルミノシリケートの構造がCHAである請求項1に記載のプロピレンの製造方法。
- アルミノシリケートのSiO2/Al2O3モル比が5以上である請求項1または2に記載のプロピレンの製造方法。
- 流動床反応器と再生器を備えた設備にて、触媒を連続的に再生しながらプロピレンの製造を行う請求項1ないし3のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
- エタノールおよび/またはエチレンの転化率(エタノールおよび/またはエチレンから、エタノールとエチレン以外の化合物への転化率)が20%以上80%以下となるような条件で反応を行う請求項1ないし4のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
- 反応器出口ガス中に含まれるエチレンの少なくとも一部を反応器にリサイクルする請求項1ないし5のいずれかに記載のプロピレンの製造方法。
- 請求項1ないし6のいずれかに記載の方法で製造されたプロピレンを原料としてポリプロピレンを製造することを特徴とするポリプロピレンの製造方法。
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