JP2002356540A - ノルボルネン系樹脂成形体の製造方法 - Google Patents

ノルボルネン系樹脂成形体の製造方法

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JP2002356540A
JP2002356540A JP2001163960A JP2001163960A JP2002356540A JP 2002356540 A JP2002356540 A JP 2002356540A JP 2001163960 A JP2001163960 A JP 2001163960A JP 2001163960 A JP2001163960 A JP 2001163960A JP 2002356540 A JP2002356540 A JP 2002356540A
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Naoya Kishi
直哉 岸
Naoki Nishioka
直樹 西岡
Tomoo Sugawara
智雄 菅原
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Nippon Zeon Co Ltd
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  • Polyoxymethylene Polymers And Polymers With Carbon-To-Carbon Bonds (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 難燃性に優れ、毒性及び環境に対する負荷が
低減され、臭いの問題の無いノルボルネン系樹脂成形体
を生産性良く製造する方法を提供すること。 【解決手段】 メタセシス触媒により、難燃剤の存在下
にノルボルネン系モノマーを塊状重合するノルボルネン
系樹脂成形体の製造方法において、メタセシス触媒が少
なくとも2つ以上のカルベン炭素がルテニウム金属原子
に結合しており、該カルベン炭素のうち少なくとも一つ
には、ヘテロ原子を含む基が結合しているルテニウムカ
ルベン錯体であり、難燃剤が水分放出性化合物であるこ
とを特徴とする製造方法が提供される。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はノルボルネン系樹脂
成形体の製造方法に関し、さらに詳しくは、メタセシス
触媒により、難燃剤の存在下にノルボルネン系モノマー
を塊状重合するノルボルネン系樹脂成形体の製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】ノルボルネン系モノマーと、メタセシス
触媒としてのモリブデン錯体又はタングステン錯体とを
含む反応原液を用い、金型内で塊状重合する反応成形法
(RIM=リアクション・インジェクション・モールデ
ィング法、RTM=レジン・トランスファー・モールデ
ィング法など)は、公知の技術である(特公平3−37
568号公報)。この方法によれば、熱可塑性樹脂の射
出成形法に比べて簡易な金型・成形装置で大型の成形体
を得ることができる。
【0003】一方、ノルボルネン系樹脂成形体の難燃性
を改良することを目的として、難燃剤を、ノルボルネン
系モノマーの塊状重合時に存在させ、両者の複合材料と
する技術が実用化されている。従来、難燃剤としては、
赤燐や黄燐等のリン、ハロゲン化合物及びアンチモン化
合物が多用されてきた。しかし、これらを難燃剤として
複合させた場合、難燃剤の取り扱い時の毒性の問題及び
ノルボルネン系樹脂成形体を廃棄する時の環境に対する
負荷の問題があり、これらの問題の無い難燃化技術が求
められている。
【0004】このような毒性及び環境に対する負荷を改
善した難燃剤として、水分放出性化合物(以下、水分放
出性化合物ともいう)を使用したノルボルネン系樹脂成
形体が提案されている(特開平10−87793号公
報)。この公報では、難燃剤である水分放出性化合物と
して、結晶水含有化合物及び金属水酸化物が開示されて
いる。モリブデン錯体やタングステン錯体をメタセシス
触媒として用いて、水分放出性化合物の存在下に塊状重
合しようとすると、メタセシス触媒が失活することか
ら、該公報では、メタセシス触媒として、特定のリン化
合物がルテニウムに結合したルテニウムカルベン錯体を
用いるべきことが開示されている。
【0005】一般的にルテニウムカルベン錯体は、中心
金属であるルテニウム金属原子に、複数のイオン、原
子、多原子イオン及び/又は化合物が結合してなるルテ
ニウム錯体の一種で、中心金属原子であるルテニウム金
属原子にカルベン化合物が結合し、ルテニウム金属原子
とカルベン炭素が直接に結合した構造(下記式(1))
を錯体中に有するものである。
【0006】
【化1】
【0007】式(1)中、=C<(:C<とも記載する
ことがある)はカルベン炭素であり、カルベン化合物と
は、カルベン炭素すなわちメチレン遊離基を有する化合
物の総称であり、化学反応中に生じる不安定な中間体と
して存在する。Ru=Cの部分がメタセシス触媒として
の活性の中心(以下、「反応中心」ともいう)となる部
位である。本発明では、後述する他のカルベン炭素と区
別するため、上記カルベン炭素を「反応中心のカルベン
炭素」ともいい、ルテニウム金属原子と反応中心のカル
ベン炭素との結合を二重結合Ru=Cで表示する。
【0008】従来(特開平10−87793号公報)
は、ルテニウムカルベン錯体の中で、カルベン炭素が反
応中心のカルベン炭素だけであるルテニウムカルベン錯
体が用いられてきた。ところが、水分放出性化合物を十
分な量で存在させて、上記のルテニウムカルベン錯体に
よりノルボルネン系モノマーを塊状重合した場合には、
得られるノルボルネン系樹脂成形体は、未反応で残存す
るノルボルネン系モノマーに由来する臭いがするという
問題、またはその臭いを低減するために、成形後に加熱
処理を要し生産性が低いという問題があることが分かっ
てきた。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】従って、本発明の目的
は、難燃性に優れ、毒性及び環境に対する負荷が低減さ
れ、臭いの問題の無いノルボルネン系樹脂成形体を生産
性良く製造する方法を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、鋭意研究
の結果、メタセシス触媒として少なくとも2つのカルベ
ン炭素がルテニウム金属原子に結合しており、該カルベ
ン炭素のうち少なくとも一つには、ヘテロ原子を含む基
が結合しているルテニウムカルベン錯体を用い、難燃剤
として水分放出性化合物を使用することにより、難燃性
に優れ、毒性及び環境に対する負荷が低減され、臭いの
問題の無いノルボルネン系樹脂成形体を生産性良く製造
できることを見いだし、本発明を完成するに到った。更
に本発明者らは、塊状重合開始から終了までの昇温最高
速度を10°C/秒以上とすることが上記製造方法の生
産性を良くするために好ましいこと、及び水分放出性化
合物とノルボルネン系モノマーの比率を重量比で30/
70〜70/30とすることが上記ノルボルネン系樹脂
成形体の難燃性と製造方法の生産性とのバランス上好ま
しいことを見出した。
【0011】かくして、本発明によれば、メタセシス触
媒により、難燃剤の存在下にノルボルネン系モノマーを
塊状重合するノルボルネン系樹脂成形体の製造方法にお
いて、メタセシス触媒が、少なくとも2つのカルベン炭
素がルテニウム金属原子に結合しており、該カルベン炭
素のうち少なくとも一つには、ヘテロ原子を含む基が結
合しているルテニウムカルベン錯体であり、難燃剤が水
分放出性化合物であることを特徴とする製造方法が提供
される。
【0012】また、本発明によれば、塊状重合開始から
終了までの昇温最高速度が10°C/秒以上である上記
の製造方法が提供される。更に、本発明によれば、水分
放出性化合物とノルボルネン系モノマーの比率が重量比
で30/70〜70/30である上記の製造方法も提供
される。
【0013】
【発明の実施の形態】(ノルボルネン系モノマー)本発
明において用いることができるノルボルネン系モノマー
は、ノルボルネン環構造を有する二環若しくは三環以上
の多環炭化水素化合物(以下、ノルボルネン類ともい
う)であり、置換基を有するものであってもよい。
【0014】その具体例としては、ノルボルネン、ノル
ボルナジエン、メチルノルボルネン、ジメチルノルボル
ネン、エチルノルボルネン、塩素化ノルボルネン、エチ
リデンノルボルネン、クロロメチルノルボルネン、トリ
メチルシリルノルボルネン、フェニルノルボルネン、シ
アノノルボルネン、ジシアノノルボルネン、メトキシカ
ルボニルノルボルネン、ピリジルノルボルネン、ノルボ
ルネンのナヂック酸無水物、ノルボルネンのナヂック酸
イミドなどの二環ノルボルネン類;
【0015】ジシクロペンタジエン(シクロペンタジエ
ンの二量体)、ジヒドロジシクロペンタジエンやそのア
ルキル、アルケニル、アルキリデンまたはアリール置換
体などの三環ノルボルネン類;ジメタノヘキサヒドロナ
フタレン、ジメタノオクタヒドロナフタレンやそのアル
キル、アルケニル、アルキリデンまたはアリール置換体
などの四環ノルボルネン類;トリシクロペンタジエン
(シクロペンタジエンの三量体)などの五環ノルボルネ
ン類;ヘキサシクロヘプタデセンなどの六環ノルボルネ
ン類;ジノルボルネン等の二個のノルボルネン環を炭化
水素鎖またはエステル基などで結合した構造を有する化
合物;これらのアルキルまたはアリール置換体などのノ
ルボルネン環を含む化合物などが挙げられる。
【0016】上記ノルボルネン系モノマーにシクロブテ
ン、シクロペンテン、シクロオクテン、シクロドデセン
などの単環シクロオレフィンおよび置換基を有するそれ
らの誘導体を併用して用いて共(塊状)重合することも
できる。
【0017】前記ノルボルネン系モノマーは単独で用い
ても、二種以上を混合して用いてもよい。二種以上を用
いる場合には、熱可塑性樹脂となる、二重結合を1つ有
するノルボルネン系モノマーと、熱硬化性樹脂となる、
二重結合を複数有するノルボルネン系モノマーを適宜組
合せると、種々の物性を有するノルボルネン系樹脂成形
体を得ることができる。また、ノルボルネン系モノマー
を単独で使用する場合と比較して、二種以上を併用する
と凝固点降下により、凝固点温度が高いモノマーでも液
状として取扱えるという塊状重合時の利点がある。
【0018】これらのノルボルネン系モノマーの中でも
ジシクロペンタジエンを主たる成分として用いることが
好ましく、80重量%以上がジシクロペンタジエンであ
ることが更に好ましい。ジシクロペンタジエンは塊状重
合時の活性に優れ、得られるノルボルネン系樹脂成形体
の耐熱性が高いからである。ノルボルネン系モノマー
中、ジシクロペンタジエンは99重量%以上の純粋なも
のであってもよく、得られるノルボルネン系樹脂成形体
の機械的強度が優れることから、シクロペンタジエンの
三量体を例えば2〜20%の範囲で含むものであっても
良い。
【0019】(水分放出性化合物)本発明では、難燃剤
として、水分放出性化合物を用いる。水分放出性化合物
とは、150°C以下では水を放出しないが、150°
Cより高温で800°C未満の温度範囲で加熱されたと
きに、結晶水を脱水放出する化合物または化学分解によ
り水を放出する化合物である。放出する水分の量は、こ
れにより限定されないが、通常10〜70重量%、好ま
しくは20〜60重量%である。加熱されると結晶水を
脱水放出する化合物の具体的な例としては、FeSO
・7HO、MgSO・7HOやCaCl・6H
O等の常温から150°Cで安定な無機塩の水和物が
挙げられる。加熱されると化学分解により水を放出する
化合物としては、金属水酸化物であって加熱によりOH
イオンがHOに変化するもの、具体的には水酸化マ
グネシウム[Mg(OH)]、水酸化アルミニウム
[Al(OH)]、水酸化マンガン[Mn(O
H)]及びNa[Sn(OH)]を挙げることが
できる。これらの水分放出性化合物のうち、毒性が低い
ことによる取り扱い易さの点から、水酸化マグネシウム
[Mg(OH)]及び水酸化アルミニウム[Al(O
H)]が好ましい。
【0020】本発明で用いる水分放出性化合物は、表面
吸着水を含むものであっても良い。表面吸着水は150
°Cで1時間、熱風乾燥機中で乾燥することによる加熱
減量として測定される。表面吸着水の含有量は通常0.
01〜5重量%であり、好ましくは0.1〜3重量%、
特に好ましくは0.4〜2重量%である。少なすぎれば
ノルボルネン系樹脂成形体の製造工程で難燃剤の乾燥工
程を要するなど生産効率が低下する。通常の水分放出性
化合物は一般に1重量%以下程度の水分を含有している
ので、そのまま使用できる。
【0021】水分放出性化合物の粒の大きさは特に限定
されない。粒の大きさ(粒を三次元的に見たときの長手
方向と短手方向の長さの平均値)で、通常は0.000
1〜2mm、好ましくは0.0005〜1mm、特に好
ましくは0.001〜0.5mmのものである。水分放
出性化合物の粒の大きさがこの範囲にある時に、ノルボ
ルネン系樹脂成形体の生産性と、得られるノルボルネン
系樹脂成形体の難燃性とが優れ好ましい。水分放出性化
合物の粒径を揃えて使用しても良いし、大きな粒径から
小さな粒径まで混合した状態のものを用いても良い。水
分放出性化合物の粒径を揃えるためには、必要に応じて
篩で分級すれば良い。
【0022】水分放出性化合物の嵩比重は特に限定され
ない。嵩比重は、好ましくは0.2〜3.0g/cc、
特に好ましくは0.3〜2.0g/ccである。水分放
出性化合物の嵩比重がこの範囲にある時に、ノルボルネ
ン系樹脂成形体の生産性と、得られるノルボルネン系樹
脂成形体の難燃性とが優れ好ましい。嵩比重は、適当量
の水分放出性化合物をメスシリンダーに入れ、加重をか
けることなく、重量と体積を測定することにより、それ
らの比として測定される。
【0023】水分放出性化合物とノルボルネン系モノマ
ーとの比率は特に限定されないが、水分放出性化合物と
ノルボルネン系モノマーとの重量比で80/20〜20
/80であることが好ましく、70/30〜30/70
が特に好ましい。水分放出性化合物とノルボルネン系モ
ノマーとの比率がこの範囲にあるときに、ノルボルネン
系樹脂成形体の生産性と、得られるノルボルネン系樹脂
成形体の難燃性とが優れ好ましい。
【0024】(メタセシス触媒)本発明では、メタセシ
ス触媒として、少なくとも2つのカルベン炭素がルテニ
ウム金属原子に結合しており、該カルベン炭素のうち少
なくとも一つには、ヘテロ原子を含む基が結合している
ルテニウムカルベン錯体を用いる。本発明で用いるルテ
ニウムカルベン錯体は、上記式(1)の構造を有するも
のであって、更に、少なくとも1つのヘテロ原子含有カ
ルベン化合物が結合してなるルテニウムカルベン錯体で
あれば、特に限定されるわけではないが、通常、下記の
一般式(2)又は一般式(3)で表わされる。
【0025】
【化2】
【0026】
【化3】
【0027】(式中、=CR及び=C=CR
は反応中心のカルベン炭素を含むカルベン化合物であ
る。R及びRは、それぞれ独立して水素原子、ハロ
ゲン原子、又は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原
子若しくは珪素原子を含んでもよいC〜C20の炭化
水素基を表し、これらのカルベン化合物はヘテロ原子を
含有していてもいなくても良い。Lはヘテロ原子含有
カルベン化合物を表し、Lはヘテロ原子含有カルベン
化合物又は任意の中性の電子供与性化合物を表す。ヘテ
ロ原子含有カルベン化合物とは、カルベン炭素及びヘテ
ロ原子とを含有する化合物をいう。L及びLの両方
又Lは、ヘテロ原子含有カルベン化合物であり、これ
らに含まれるカルベン炭素にはルテニウム金属原子とヘ
テロ原子を含む基とが結合している。X及びXは、
それぞれ独立して任意のアニオン性配位子を示す。ま
た、R、R、X、X、L及びLの2個、3
個、4個、5個又は6個は、互いに結合して多座キレー
ト化配位子を形成してもよい。)
【0028】本発明において、ヘテロ原子とは、周期律
表第15族及び第16族の原子を意味し、具体的には、
N、O、P、S、As、Se原子等を挙げることができ
る。これらの中でも、安定なカルベン化合物が得られる
観点から、N、O、P、S原子等が好ましく、N原子が
特に好ましい。ヘテロ原子を含む基とは、上記のヘテロ
原子を含む炭化水素基をいう。
【0029】本発明のヘテロ原子含有カルベン化合物で
は、カルベン炭素には、好ましくはその両側に、ヘテロ
原子が隣接して結合していることが好ましい。そのよう
なヘテロ原子含有カルベン化合物の中でも、カルベン炭
素原子とその両側のヘテロ原子とを含むヘテロ環が構成
されているものが好ましく、当該ヘテロ環は二重結合を
含まない飽和環構造となっていることが特に好ましい。
カルベン炭素に隣接するヘテロ原子には嵩高い置換基を
有していることが好ましい。以上のような好ましい構造
を持つカルベン化合物が結合したルテニウムカルベン錯
体をメタセシス触媒として使用した場合に、塊状重合の
活性が特に高く、ノルボルネン系樹脂成形体の生産効率
が特に良くなる。
【0030】ヘテロ原子含有カルベン化合物の好ましい
例としては、下記の式(4)又は式(5)で示される化
合物が挙げられる。一般式(4)及び(5)で表される
化合物は、カルベン炭素原子の両側にヘテロ原子が結合
してヘテロ環を構成しており、一般式(4)の化合物は
ヘテロ環が飽和環構造のものであり、一般式(5)の化
合物はヘテロ環が二重結合を含む環構造のものである。
【0031】
【化4】
【0032】
【化5】
【0033】(式中、C:は反応中心外の炭素を表し、
〜Rは、それぞれ独立して水素原子、ハロゲン原
子、又は酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子若し
くはけい素原子を含んでもよいC〜C20の炭化水素
基を表す。また、R〜Rの2個、3個又は4個は、
互いに結合して環を形成してもよい。)
【0034】一般式(4)および(5)におけるR
びRとして、並びに上記ヘテロ原子含有カルベン化合
物のカルベン炭素に隣接するヘテロ原子に結合する置換
基としては、嵩高い基が好ましい。嵩高い基とは、2級
炭素若しくは3級炭素によりヘテロ原子に結合する基及
び炭素を含む環構造を有し環構造中の炭素からヘテロ原
子に結合する基である。嵩高い基の具体例としては、イ
ソプロピルやターシャリーブチル等の分岐構造を有する
アルキル基;シクロヘキシルやアダマンチル等の脂環式
炭化水素基;フェニル、メチルフェニル、メチルナフチ
ル、2,6−ジイソプロピルフェニルやメシチルなどの
置換若しくは非置換の芳香環基などが挙げられる。嵩高
い基が複数である場合には、ヘテロ原子含有カルベン化
合物の一分子中でそれらはお互いに同一でも異なってい
てもよく、また、異なる分子間でそれらはお互いに同一
(単一化合物)であっても異なっていても(混合物)よ
い。
【0035】前記式(4)及び(5)で表される化合物
の具体例としては、1,3−ジメシチルイミダゾリジン
−2−イリデン、1,3−ジ(1−アダマンチル)イミ
ダゾリジン−2−イリデン、1−シクロヘキシル−3−
メシチルイミダゾリジン−2−イリデン、1,3−ジメ
シチルオクタヒドロベンズイミダゾール−2−イリデ
ン、1,3−ジイソプロピル−4−イミダゾリン−2−
イリデン、1,3−ジ(1−フェニルエチル)−4−イ
ミダゾリン−2−イリデン、1,3−ジメシチル−2,
3−ジヒドロベンズイミダゾール−2−イリデン等が挙
げられる。
【0036】また、前記式(4)及び式(5)で示され
る化合物以外のヘテロ原子含有カルベン化合物として
は、1,3,4−トリフェニル−2,3,4,5−テト
ラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリ
デン等の1,3,4位が置換又は非置換の−2,3,
4,5−テトラヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾー
ル−5−イリデン類;1,3−ジシクロヘキシルヘキサ
ヒドロピリミジン−2−イリデン等の1,3位が置換又
は非置換のヘキサヒドロピリミジン−2−イリデン類;
N,N,N’,N’−テトライソプロピルホルムアミジ
ニリデン等のN位及びN位が置換又は非置換のホルムア
ミジニリデン類;1,3,4−トリフェニル−4,5−
ジヒドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリ
デン等の1,3,4位が置換又は非置換の4,5−ジヒ
ドロ−1H−1,2,4−トリアゾール−5−イリデン
類;および3−(2,6−ジイソプロピルフェニル)−
2,3−ジヒドロチアゾール−2−イリデン等の3位が
置換又は非置換の2,3−ジヒドロチアゾール−2−イ
リデン類も挙げることができる。
【0037】前記式(2)及び式(3)において、アニ
オン(陰イオン)性配位子X、X は、中心金属から
引き離されたときに負の電荷を持つ配位子であり、例え
ば、F、Cl、BrやI等のハロゲン原子;ジケトネー
ト基、アルコキシ基、アリールオキシ基やカルボキシル
基等の酸素を含む炭化水素基;塩化シクロペンタジエニ
ル基等のハロゲン原子で置換された脂環式炭化水素基等
を挙げることができる。これらの中でもハロゲン原子が
好ましく、塩素原子がより好ましい。
【0038】Lが中性の電子供与性化合物の場合は、
は中心金属から引き離されたときに中性の電荷を持
つ配位子であればいかなるものでもよい。その具体例と
しては、カルボニル類、アミン類、ピリジン類、エーテ
ル類、ニトリル類、エステル類、ホスフィン類、チオエ
ーテル類、芳香族化合物、オレフィン類、イソシアニド
類、チオシアネート類等が挙げられる。これらの中で
も、ホスフィン類やピリジン類が好ましく、トリアルキ
ルホスフィンがより好ましい。
【0039】前記一般式(2)で表わされるルテニウム
錯体としては、例えば、ベンジリデン(1,3−ジメシ
チルイミダゾリジン−2−イリデン)(トリシクロヘキ
シルホスフィン)ルテニウムジクロリド、(1,3−ジ
メシチルイミダゾリジン−2−イリデン)(3−メチル
−2−ブテン−1−イリデン)(トリシクロペンチルホ
スフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン(1,
3−ジメシチル−オクタヒドロベンズイミダゾール−2
−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニ
ウムジクロリド、ベンジリデン[1,3−ジ(1−フェ
ニルエチル)−4−イミダゾリン−2−イリデン](ト
リシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、
ベンジリデン(1,3−ジメシチル−2,3−ジヒドロ
ベンズイミダゾール−2−イリデン)(トリシクロヘキ
シルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジリデン
(トリシクロヘキシルホスフィン)(1,3,4−トリ
フェニル−2,3,4,5−テトラヒドロ−1H−1,
2,4−トリアゾール−5−イリデン)ルテニウムジク
ロリド、(1,3−ジイソプロピルヘキサヒドロピリミ
ジン−2−イリデン)(エトキシメチレン)(トリシク
ロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ベンジ
リデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−2−イリ
デン)ピリジンルテニウムジクロリド等のヘテロ原子含
有カルベン化合物と中性の電子供与性化合物が結合した
ルテニウムカルベン錯体;
【0040】ベンジリデンビス(1,3−ジシクロヘキ
シルイミダゾリジン−2−イリデン)ルテニウムジクロ
リド、ベンジリデンビス(1,3−ジイソプロピル−4
−イミダゾリン−2−イリデン)ルテニウムジクロリド
等の2つのヘテロ原子含有カルベン化合物が結合したル
テニウムカルベン錯体;等が挙げられる。
【0041】また、前記一般式(3)で表わされる錯体
化合物としては、例えば、(1,3−ジメシチルイミダ
ゾリジン−2−イリデン)(フェニルビニリデン)(ト
リシクロヘキシルホスフィン)ルテニウムジクロリド、
(t−ブチルビニリデン)(1,3−ジイソプロピル−
4−イミダゾリン−2−イリデン)(トリシクロペンチ
ルホスフィン)ルテニウムジクロリド、ビス(1,3−
ジシクロヘキシル−4−イミダゾリン−2−イリデン)
フェニルビニリデンルテニウムジクロリド等が挙げられ
る。
【0042】本発明のメタセシス触媒の使用量は、ルテ
ニウムカルベン錯体中の金属ルテニウム/ノルボルネン
系モノマーのモル比として、通常1:2,000〜1:
2,000,000、好ましくは1:5,000〜1,
000,000、より好ましくは1:10,000〜
1:500,000である。これが小さすぎれば塊状重
合時の活性が十分でなく、大きすぎれば塊状重合の活性
が高すぎて反応ムラや金型への充填不良を生じやすくな
る。
【0043】本発明のメタセシス触媒は必要に応じて、
少量の不活性溶剤に溶解して使用することができる。か
かる不活性溶剤としては、例えば、ペンタン、ヘキサ
ン、ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素溶剤;シクロペ
ンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメ
チルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチ
ルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒド
ロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、
ヘキサヒドロインデンシクロヘキサン、シクロオクタン
などの脂環式炭化水素溶剤;ベンゼン、トルエン、キシ
レンなどの芳香族炭化水素溶剤;ニトロメタン、ニトロ
ベンゼン、アセトニトリルなどの含窒素炭化水素溶剤;
ジエチルエ−テル、テトラヒドロフランなどのエ−テル
系溶剤などを使用することができる。また、メタセシス
触媒としての活性を落とさないようなものであれば、液
状の老化防止剤、可塑剤やエラストマーを溶剤として用
いても良い。これらの溶剤の中では、工業的に汎用され
ている芳香族炭化水素溶剤、脂肪族炭化水素溶剤や脂環
式炭化水素溶剤が好ましい。
【0044】(その他の成分)本発明では、ルテニウム
錯体により、水分放出性化合物の存在下にノルボルネン
系モノマーを塊状重合するが、これらの成分の他に本発
明の目的を損なわない範囲でその他の成分を加えて塊状
重合しても良い。
【0045】本発明の製造方法では、水分放出性化合物
とノルボルネン系モノマーとが均一な混合状態となる前
に塊状重合反応が開始してしまうと、得られるノルボル
ネン系樹脂成形体が不均質となったり硬化不良を起こす
こととなるため、塊状重合の開始を遅らせる成分(遅延
剤)を用いることも好ましい。このような遅延剤の具体
的な例としては、トリシクロペンチルホスフィン、トリ
シクロヘキシルヘキシルホスフィン、トリフェニルホス
フィン、トリフェニルホスファイト、n−ブチルホスフ
ィンなどのリン原子を含むルイス塩基化合物が挙げら
れ、これらの中では、n−ブチルホスフィンなどの一般
式(6)で表される化合物が特に好ましい。 RCHPR (6) (式中、R、R及びRはアルキル基、アリール基などを表す。)
【0046】異なる遅延剤の例としては、n−ブチルア
ミン、ピリジン、4−ビニルピリジン、アセトニトリ
ル、エチレンジアミン、N−ベンジリデンメチルアミ
ン、ピラジン、ピペリジン、イミダゾールなどの窒素原
子を含むルイス塩基化合物が挙げられ、これらの中で
は、n−ブチルアミンなどの一級アミンが好ましい。さ
らに異なる遅延剤の例としては、ビニルノルボルネン、
プロペニルノルボルネン、イソプロペニルノルボルネン
などのオレフィン化合物が挙げられる。以上の各種の遅
延剤の添加量は、メタセシス触媒(遷移金属原子)1モ
ルに対して、好ましくは0.1〜1000モルの割合で
ある。
【0047】着色を目的として、チタンブラック、マイ
カ、ウルトラマリンブルー、ベルリンブルー、酸化コバ
ルト、チタニウムイエロー、ストロンチウムクロメー
ト、黒色酸化鉄、モリブデン赤、モリブデンホワイト、
エメラルドグリーン、コバルトブルーやチタンホワイト
などの無機顔料;カーボンブラック、アニリンブラッ
ク、フタロシアニンやアゾ顔料などの有機顔料;及び各
種の油溶性染料を用いることも好ましい。本発明により
得られるノルボルネン系樹脂成形体は、難燃剤を選択す
ることにより好ましくは無色不透明とすることができ、
各種顔料や染料により効果的に着色することが可能であ
り、各種用途に用いるための美観を付与することができ
る。この目的で用いる顔料または染料の使用量は、ノル
ボルネン系モノマー100重量部に対し、通常、0.0
005〜10重量部、好ましくは0.005〜5重量部
である。
【0048】得られるノルボルネン系樹脂成形体の耐衝
撃性改良のほか、塊状重合時のノルボルネン系モノマー
の粘度を調整することを目的として、塊状重合時に各種
のエラストマーを添加することもできる。エラストマー
としては、例えば、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイ
ソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)、
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(S
BS)、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体(S
IS)、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー
(EPDM)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EV
A)およびこれらの水素化物などがあげられる。これら
の中でもスチレン骨格またはブタジエン骨格を持ったも
のが特に好ましい。エラストマーは、通常、ノルボルネ
ン系モノマーを含む反応溶液に予め溶解させて使用す
る。エラストマーを溶解させることにより、モノマーを
含む反応溶液が低粘度である場合には、その粘度を適度
なものに調節することができる。エラストマーの使用量
は、ノルボルネン系モノマー100重量部に対し、通
常、0.5〜20重量部、好ましくは1〜15重量部、
より好ましくは2〜10重量部である。エラストマーの
使用量が過度に少ないと得られるノルボルネン系樹脂成
形体の耐衝撃性付与効果が小さく、逆に過度に多くなる
と反応溶液の粘度が高くなり過ぎて、塊状重合時の操作
性が悪くなったり、得られるノルボルネン系樹脂成形体
の熱変形温度や曲げ弾性率が低くなる傾向がある。
【0049】更に、ノルボルネン系モノマーの保存安定
性を改良することを目的としてノルボルネン系モノマー
に可溶性の酸化防止剤を添加しておくことが好ましい。
また、得られるノルボルネン系樹脂成形体の保存安定性
や耐候性を改良することを目的として、ノルボルネン系
モノマーに可溶性の酸化防止剤、紫外線吸収剤や耐候安
定剤添加剤を、ノルボルネン系モノマーに予め添加、ま
たは反応性混合物の塊状重合時までに添加することも好
ましい。酸化防止剤としては、キノン類、ハイドロキノ
ン類、ヒンダードフェノール系酸化防止剤やリン系酸化
防止剤が挙げられるが、これらの中でも、2,6−ジ−
t−ブチル−4−メチルフェノール、2,6−ジ−t−
ブチル−4−エチルフェノール、ステアリル−β−
(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)
プロピオネート、テトラキス−〔メチレン−3−
(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェ
ニル)プロピオネート〕メタン、2,2’−メチレンビ
ス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,
2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェ
ノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−
ブチルフェノ−ル)、1,3,5−トリメチル−2,
4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロ
キシベンジル)ベンゼン、1,3,5−トリス(3’,
5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−
S−トリアジン−2,4,6−(1H、3H、5H)ト
リオン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤が効果が
優れるので好ましい。紫外線吸収剤としてはアゾ系、サ
リチル酸系、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系
やシアノアクリレート系の各種のものを挙げることがで
きる。耐候安定剤としては、ヒンダードアミン系の各種
のものを挙げることができる。酸化防止剤、耐候安定剤
及び紫外線吸収剤の添加量は、通常は、50〜10,0
00ppm以下であるが、10,000ppmを越えて
添加しても良い。
【0050】更に、塊状重合時に、本発明の目的を損な
わない範囲で低熱膨張化剤、増量剤、軽量化剤、導電付
与剤および帯電防止剤などの無機物質を添加することが
できる。また、得られるノルボルネン系樹脂成形体の機
械的強度を改良すること等を目的として、シリコーン樹
脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、ポリフェニレ
ンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、フェノー
ル系熱硬化性樹脂等の微粒子;アラミド繊維、ポリアミ
ド繊維、ポリエステル繊維等の単繊維のチョップ等を添
加しても良い。
【0051】(塊状重合)本発明のノルボルネン系樹脂
成形体の製造方法は、ノルボルネン系モノマーの塊状重
合であるが、メタセシス触媒を用いることにより、液状
のノルボルネン系モノマーと水分放出性化合物との混合
物から一挙にノルボルネン系樹脂成形体を得ることがで
きる。この塊状重合反応は急激なものであり、重合反応
速度の温度依存性が大きいため、一旦発熱が開始して温
度が上昇すると、重合反応速度が極めて速くなり、その
結果発熱時の温度の立ち上がり(温度上昇カーブ)が急
となる。塊状重合開始から終了までの昇温最高速度は、
好ましくは10°C/秒以上である。最高昇温速度の上
限は特にないが、好ましくは100°C/秒以下であ
る。このような最高昇温速度とすることにより、より臭
いの問題の無いノルボルネン系樹脂成形体をより生産性
良く製造することができるため好ましい。最高昇温速度
は、ノルボルネン系モノマーの種類の選択、温度の調
整、メタセシス触媒であるルテニウム触媒の選択により
調整可能である。最高昇温速度は金型中央部における、
反応中の樹脂温度の上昇曲線を時間微分したときの最大
値として測定する。
【0052】本発明のノルボルネン系樹脂成形体の製造
方法に用いる成形装置や成形方法は特に限定されない
が、レジントランスファーモールディング(RTM)法
や反応射出成形(RIM)法により、ノルボルネン系モ
ノマーを金型内において塊状重合する方法が有用であ
る。金型は所定形状の成形物を得るために使用する。か
かる塊状重合においては、従来からRTM機やRIM機
として公知の成形機を使用することができる。これらの
成形方法で使用する金型は、割型構造すなわちコア型と
キャビティー型を有する金型であっても良いし、上面が
開口した構造の金型であっても良い。
【0053】成形方法として、ハンドレイアップ(手積
み成形)法も好ましく用いることができる。この成形方
法では金型は上面が開口した構造のものが一般的であ
る。
【0054】成形方法として、反応押出成形法(スクリ
ューにより金型中に反応性混合物を連続的に加圧供給
し、金型中で反応性混合物を連続的に塊状重合させる成
形方法)も好ましく用いることができる。反応押出成形
法によれば、押出成形機中でスクリューにより各成分を
混合しながら、適当なダイから押し出すことにより、丸
太状、角材状または筒状などのノルボルネン系樹脂成形
体を連続的に得ることができ、本発明のノルボルネン系
樹脂成形体を得る方法として特に好ましい。反応引き抜
き成形法(特開2000−290382号公報)も、同
様な形状の成形体が得られるため、好ましく用いること
ができる。
【0055】必須成分であるメタセシス触媒とノルボル
ネン系モノマーと水分放出性化合物とを混合する順序は
特に限定されないが、メタセシス触媒、必要に応じて共
触媒と、ノルボルネン系モノマーとを均一に混合して反
応性混合物とした後に、塊状重合が始まって粘度が急激
に上昇する前に、この反応性混合物と水分放出性化合物
とを均一に混合することが好ましい。反応性混合物の調
製には、公知の攪拌機、ホモジナイザー、スタティック
ミキサーや衝突混合機が使用可能である。それぞれの混
合状態が均一になったかどうかは例えば目視などで確認
する。このような順序とすることにより、得られるノル
ボルネン系樹脂成形体が均質なものとなり、硬化不良が
発生しにくくなり好ましい。また、ハンドレイアップ法
などのように上面が開口した構造の金型を使用する場合
には、反応性混合物と水分放出性化合物とを均一に混合
する工程を金型中で行うことも好ましい。その他の成分
を、どこの工程で混合するかは特に限定されないが、例
えば、ノルボルネン系モノマーに溶解できる成分は反応
性混合物を調製する前までに、ノルボルネン系モノマー
に不溶性の成分は水分放出性化合物と混合しておくこと
も好ましい。
【0056】塊状重合反応が開始する前の、ノルボルネ
ン系モノマーまたは反応性混合物、および水分放出性化
合物の温度は特に限定されず、室温(20°C程度)で
も良いし、塊状重合の活性を上げるため20〜80°C
の間で昇温させても良い。しかし、本発明のノルボルネ
ン系樹脂の製造方法では、水分放出性化合物とノルボル
ネン系モノマーとが均一な混合状態となる前に塊状重合
反応が開始してしまうと、得られるノルボルネン系樹脂
成形体が不均質となったり硬化不良を起こすこととなる
ため、成形方法によっては、塊状重合の開始を遅らせる
ために、ノルボルネン系モノマーまたは反応性混合物を
室温以下に冷却することも好ましい。冷却する場合の温
度は、例えば−20〜20°Cの範囲である。
【0057】水分放出性化合物と、ノルボルネン系モノ
マーまたは反応性混合物とを混合する際には、水分放出
性化合物は固形物であるために混合しにくい。これらを
混合するには、公知の回転式攪拌機やスタティックミキ
サーなどの不溶性固形物を混合するのに適した混合機で
十分に混合する必要がある。混合は塊状重合反応が開始
して反応性混合物の粘度が上昇し始めるまでに行う必要
がある。押出機のスクリューにより混合と成形を同時に
行うという方法も考えられる。
【0058】ノルボルネン系モノマーとメタセシス触媒
とを混合してから、通常は数分で塊状重合が開始、温度
が上昇し、重合反応が進行する。
【0059】(ノルボルネン系樹脂成形体)ノルボルネ
ン系樹脂成形体は、割型構造の金型の場合は塊状重合終
了後に必要に応じて一定時間冷却後に金型を開いて取り
出すことにより得られる。上面開口型の金型の場合は、
塊状重合終了後に必要に応じて一定時間冷却後に金型か
ら取り出すことにより得られる。反応押出成形法や反応
引き抜き成形法の場合は、ダイから連続的にノルボルネ
ン系樹脂成形体が得られる。
【0060】本発明の方法によって得られるノルボルネ
ン系樹脂成形体は、そのままでも、各種の形状に成形す
ることが可能であり、各種の用途に使用できる。また、
得られたノルボルネン系樹脂成形品を、切削や切断等の
加工をして他の形状の物品を作るための原材料として用
いることもできる。更に、ノルボルネン系樹脂成形体の
表面に、着色塗装や透明塗装を施して用いても良い。着
色塗装や透明塗装に用いる塗料は、ノルボルネン系樹脂
成形体の耐候安定性を改良することを目的として各種の
紫外線吸収剤、耐候安定剤や老化防止剤を含んだもので
あってもよい。
【0061】
【実施例】以下に実施例および比較例を挙げて、本発明
についてさらに具体的に説明するが、本発明は、これら
の実施例に限定されるものではない。特にことわりのな
いかぎり部、%は重量基準である。
【0062】(実施例1)複数の撹拌翼を備えた回転式
攪拌機を備えた500mlの反応器に、ノルボルネン系
モノマーとしてジシクロペンタジエン(約10%のシク
ロペンタジエン三量体を含む)75gを入れ、液温が1
0°Cになるまで氷浴で冷却した。メタセシス触媒とし
てベンジリデン(1,3−ジメシチルイミダゾリジン−
2−イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテ
ニウムジクロリド(Org.Lett.1999年、1
巻、953頁の記載に基づいて合成したもの)46.5
mgをトルエン2.7mlに溶解したもの(ルテニウム
錯体/ノルボルネン系モノマー=1/10000(mo
l/mol))を上記の反応器に加え反応性混合物とし
(時刻0秒)、攪拌機により目視で均一となるまで撹拌
した。ここに水分放出性化合物として水酸化アルミニウ
ム(表面吸着水0.54重量%、粒の大きさ0.005
mm、嵩比重0.64g/cc)75gを上記の反応器
に加え(水分放出性化合物とノルボルネン系モノマーと
の重量比50/50)、攪拌機により目視で均一になる
まで撹拌し、その後攪拌機を外した。水分放出性化合物
を混合完了した時の時刻は90秒であった。金型とし
て、底面が100mm×100mmの正方形のSUS製
容器を用意し、反応器の内容物を素早くSUS製容器に
流し込み、その上から100mm×100mmの板状蓋
を載せ(蓋は密閉構造ではなく、適当なベント隙間を設
けてある)、10Kgの重りで押さえた。金型中央部で
厚みの中央部にK型熱電対を予めとりつけ、反応中の樹
脂温度を測定した。時刻約200秒で温度が上昇し始
め、重合反応が開始し、その後終了した。反応最高昇温
速度は18°C/秒であった。重合反応終了後に金型を
室温で放置し、十分に金型が冷えてから取り出した。
【0063】得られたノルボルネン系樹脂成形体(試験
片1)は、100mm×100mm×厚さ8.3mmの
大きさであった。試験片1の臭いを嗅いだところ、ほと
んど臭気はなく、塊状重合は均一に進んでおり、硬化不
良を起こした部位が無いことが分かった。外観を確認し
たところ、成形品の表面に発泡の跡は認められず、表面
に大きな凸凹は無かった。試験片1を鉄工用の鋸でほぼ
同じ大きさに2つに切断したところ、鋸の歯と試験片1
が融着することなく加工することができた。切断面を確
認したが、ボイド状の空隙は無かった。試験片1の切断
面を含む部分から少量の試験片を採取し、VOC法(揮
発性有機化合物モニタ測定法)により、未反応モノマー
分を測定したところ、0.02重量%であった。UL−
94法により、難燃性の試験を行ったところ、V−0で
あった。
【0064】(実施例2)水分放出性化合物として水酸
化マグネシウム(表面吸着水0.48重量%、粒の大き
さ0.003mm、嵩比重0.55g/cc)を50g
用いた(水分放出性化合物とノルボルネン系モノマーと
の重量比40/60)ほかは実施例1と同様の操作を行
った。水分放出性化合物を混合完了した時の時刻は90
秒であった。時刻約200秒で温度が上昇し始め、重合
反応が開始し、その後終了した。最高昇温速度は15°
C/秒であった。得られたノルボルネン系樹脂成形体
(試験片2)は、100mm×100mm×厚さ8.0
mmの大きさであった。試験片2の臭いを嗅いだとこ
ろ、ほとんど臭気はなく、塊状重合は均一に進んでお
り、硬化不良を起こした部位が無いことが分かった。外
観を確認したところ、成形品の表面に発泡の跡は認めら
れず、表面に大きな凸凹は無かった。実施例1と同様に
切断し、切断面を確認したが、ボイド状の空隙は無かっ
た。未反応モノマー分は、0.003重量%であった。
難燃性試験結果はV−0であった。
【0065】(比較例1)ルテニウム錯体としてベンジ
リデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウ
ムジクロリドを用いたほかは実施例1と同様の操作を行
った。水分放出性化合物を混合完了した時の時刻は90
秒であった。時刻約500秒で温度が上昇し始め、重合
反応が開始し、その後終了した。最高昇温速度は7.2
°C/秒であった。得られたノルボルネン系樹脂成形体
(試験片3)は、100mm×100mm×厚さ8.3
mmの大きさであった。試験片3の臭いを嗅ぎ、手で触
ったところ、未反応モノマーに由来する臭気と表面のベ
タツキがあり、塊状重合が均一で無く、硬化不良を起こ
した部位があることが分かった。未反応モノマー分を測
定したところ、0.4重量%であった。
【0066】
【発明の効果】本発明の方法により得られるノルボルネ
ン系樹脂成形体は、難燃性に優れ、毒性及び環境に対す
る負荷が低減され、臭いの問題の無いものである。本発
明の方法により得られるノルボルネン系樹脂成形体は、
例えば例えば壁・天井・床・屋根などの建築材料;コイ
ル、配線板、半導体、電線・ケーブルの被覆材などの電
子・電気用の絶縁材料;CTスキャナーの筐体、血液分
析装置の筐体などの医療器具;エンジンカバー、内装部
品などの自動車、鉄道用材料など難燃性を要求される用
途に使用可能である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 4J032 CA34 CA35 CA36 CA38 CA68 CB01 CB03 CD02 CE05 CE06 CE16 CG07

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 メタセシス触媒により、難燃剤の存在下
    にノルボルネン系モノマーを塊状重合するノルボルネン
    系樹脂成形体の製造方法において、メタセシス触媒が、
    少なくとも2つのカルベン炭素がルテニウム金属原子に
    結合しており、該カルベン炭素のうち少なくとも一つに
    は、ヘテロ原子を含む基が結合しているルテニウムカル
    ベン錯体であり、難燃剤が水分放出性化合物であること
    を特徴とする製造方法。
  2. 【請求項2】 塊状重合開始から終了までの昇温最高速
    度が10°C/秒以上である請求項1に記載の製造方
    法。
  3. 【請求項3】 水分放出性化合物とノルボルネン系モノ
    マーの比率が重量比で30/70〜70/30である請
    求項1又は請求項2に記載の製造方法。
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